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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1249622
審判番号 不服2010-27158  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-01 
確定日 2012-01-06 
事件の表示 特願2000-116488「ホログラムカラーフィルターを用いた反射型画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月31日出願公開、特開2001-305517〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成12年4月18日の出願であって、平成22年2月10日に手続補正がなされたが、同年9月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。(以下、平成22年12月1日になされた手続補正を「本件補正」という。)

II.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成14年改正前特許法」という。)第17条の2第1項第3号の場合においてする補正であって、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1について、補正前の
「【請求項1】 斜めに入射する光を色分散しかつ集光する要素ホログラムの繰り返しからなるホログラムカラーフィルターと反射型空間変調素子との組み合わせからなる反射型画像表示装置において、前記ホログラムカラーフィルターによる回折光の緑成分の主光線の方向が、前記ホログラムカラーフィルターの法線から前記ホログラムカラーフィルターを透過した0次透過光に近づく方向、若しくは、遠ざかる方向に所定角度をなして斜めになるように構成されており、前記所定角度が、空気中の角度に換算して10°?20°の範囲にあることを特徴とするホログラムカラーフィルターを用いた反射型画像表示装置。」

「【請求項1】 同じ入射角で斜めに入射する複数の異なる波長の光を色分散しかつ集光する屈折率変調型の要素ホログラムの繰り返しからなるホログラムカラーフィルターと反射型空間変調素子との組み合わせからなる反射型画像表示装置において、
前記ホログラムカラーフィルターによる回折光の緑成分の主光線の方向が、前記ホログラムカラーフィルターの法線から前記ホログラムカラーフィルターを透過した0次透過光に近づく方向、若しくは、遠ざかる方向に所定角度をなして斜めになるように構成されており、
前記同じ入射角で入射する複数の異なる波長の光の入射方向と前記緑成分の主光線の方向とのなす角度を空気中の角度に換算したときにその角度が40°であり、
前記所定角度が、空気中の角度に換算して10°?20°の範囲にあることを特徴とするホログラムカラーフィルターを用いた反射型画像表示装置。」
と補正することを含むものであり、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められるので、以下に、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について、独立特許要件の検討を行う。

2.引用例
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-189809号公報(以下「引用例」という。)には、次の発明が記載されている。

「【請求項5】 読出し光を放射する光源、少なくともホログラフィレンズアレイで構成したカラーフィルタと光変調層と反射層とを含んで構成される空間光変調部、前記光源から放射された読出し光を前記空間光変調部へ入射させる入射光学系、及び前記空間光変調素子によって変調された前記読出し光をスクリーンに投射する投射光学系を具備した反射方式のカラー画像表示装置において、各ホログラフィレンズが、所定の入射角でカラーフィルタへ入射する読出し光について、S偏光成分又はP偏光成分の内の一方の偏光成分(以下、「第1の偏光成分」という)の回折効率を略最大としながら、その第1の偏光成分の回折効率と他方の偏光成分(以下、「第2の偏光成分」という)の回折効率の差が30%以上になる特性を有し、主に第1の偏光成分を回折・分光して対応した色画素に集光させるように構成されており、前記入射光学系が前記の所定の入射角で読出し光を前記カラーフィルタへ入射させる場合に、平面的に見て各ホログラフィレンズの中心と各ホログラフィレンズに対応する色画素面の中心が一定距離だけずれた状態で前記カラーフィルタと前記反射層の平面的相対位置が設定されており、前記の各ホログラフィレンズが回折・分光した光を対応する色画素面の中心に集光させ、前記光変調層を通過して前記反射層で反射され、再び前記光変調層を通過して前記カラーフィルタへ入射した光の内、前記光変調層で変調されて前記カラーフィルタで回折されずに透過する偏光成分を前記投射光学系がスクリーンに投射することを特徴としたカラー画像表示装置。」(以下「引用発明」という。)

また、引用例には、図と共に次の記載がある。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像表示や撮像のためのシステム、その他の画像処理システム等に適用されるカラーフィルタ及びカラー画像表示装置に係り、特に反射方式のカラー画像表示装置において総合的な光利用率を向上させるための改善に関する。」

イ 「【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明のカラーフィルタ及びカラー画像表示装置の実施形態を図1から図26を用いて詳細に説明する。
《実施形態1》先ず、図1は反射方式の投射型カラー画像表示装置に適用される空間光変調部の構造を模式的に表した断面図である。同図において、1はLCDパネル、2は薄板ガラス層、3はカラーフィルタ、4はガラス基板、5はカップリングプリズムを示す。ここに、LCDパネル1は、ガラス基板又はSi基板11と、その基板11上に形成されたアクティブマトリクス駆動回路12と、そのアクティブマトリクス駆動回路12によって選択的に制御駆動される画素電極13r,13g,13bを規則的に配列せしめた画素電極層13と、誘電体ミラー膜14と、配向膜15と、スペーサで液晶を封止した光変調層16と、配向膜17と、透明な共通電極膜18とを順に積層させた構造を有している。」

ウ 「【0021】次に、前記の各構成要素の内、既に説明したものや自明のもの以外の構成要素について説明を加えておく。画素電極層13の画素電極13r,13g,13bはR,G,Bの各色に対応したものであり、それらサブ画素が一組となって一画素を構成するものであるが、その平面的配列態様としては、図2の(A)?(C)に示されるモザイク配列、ストライプ配列、又はデルタ配列が一般的であり、デルタ配列の場合には、図3に示すような六角稠密状の配設態様が採用されることが多い。この実施形態では、図3の配設態様を採用し、同図に示すように横方向にR,G,Bの順で整列すると共に、平面的にみると各画素電極13r,13g,13bが相互に隣接している。また、画素電極層13とアクティブマトリクス駆動回路12の間には、読出し光が基板11へ浸入してフォトコンダクションを発生させることを防止するために遮光層を設けることもある。
【0022】光変調層16には、TNモード、HFEモード、FLCモード、DSモード等の動作モードをとる液晶を適用できるが、配向膜15,17は適用される液晶の種類に応じて設けられるものであり、DSモードをとる散乱型液晶等を用いる場合には省略される。カップリングプリズム5は、平板状のガラス板で構成されているが、その一方の端面が読出し光の入射方向に対して垂直に形成されており、その端面が読出し光の入射面となり、上側面が投射光の出射面となる。また、図1ではカップリングプリズム5とカラーフィルタ3の間にガラス基板4が介装されているが、それらは一体的に構成されてもよく、何れにしてもカラーフィルタ3の表面に密着せしめられる。尚、図1ではガラス基板4とカップリングプリズム5の厚みが薄板ガラス層2よりも薄く描かれているが、装置の構造と光学的機能を明確にするためにそのように描いたのであり、実際の装置では一般的にガラス基板4とカップリングプリズム5の厚みが薄板ガラス層2の厚みより大きくなっている。」

エ 「【0023】カラーフィルタ3は、本願発明に係る重要な構成要素であり、特に詳細に解説しておく。このカラーフィルタ3は、特開平2-500937号と同様に透過型ホログラムをホログラフィレンズアレイで構成したものであり、R,G,Bの3原色を含んだ入射光を各原色毎に回折・分光し、LCDパネル1の対応した画素電極13r,13g,13bの位置へ略垂直に集光する機能を有している。即ち、光束の主光線を画素電極13r,13g,13bに対して略垂直に入射させ、且つそのレンズ作用によって光束を画素電極13r,13g,13bに集束させる。尚、厳密には誘電体ミラー膜14が施されているためにその膜に集光させることになるが(図1ではそのように表現されている)、誘電体ミラー膜14の膜厚は画素電極13r,13g,13bのサイズと比較して極めて薄いものであるため、以降、画素電極13r,13g,13bの表面に集光させることとして説明する。
【0024】そして、この透過型ホログラムはR用のホログラフィレンズアレイ層3rとG用のホログラフィレンズアレイ層3gとB用のホログラフィレンズアレイ層3rとからなる3層構造を有している。各ホログラフィレンズアレイ層3r,3g,3bは単位ホログラムに相当するホログラフィレンズ3re,3ge,3beを平面的に配設させているが、各層3r,3g,3bの各ホログラフィレンズ3re,3ge,3beの光軸はそれぞれのLCDパネル1側の対応した各画素電極13r,13g,13bの略中央を通過するように位置決めされている。この実施形態の場合、各画素電極13r,13g,13bは図3に示した六角稠密状の配設態様が採用されているため、各ホログラフィレンズ3re,3ge,3beもそれに応じて同図に示す配設態様となる。即ち、個々のホログラフィレンズアレイ層3r,3g,3bについてみると、そのホログラフィレンズがそれぞれの対応色に係る画素電極の縦横のピッチと同一ピッチで配設されているが、3層を積層させた状態で平面的にみると、各色に係るホログラフィレンズ3re,3ge,3beは相互間で部分的に重複し合い、1色の画素電極のピッチに対して3色のホログラフィレンズ3re,3ge,3beが1/3のピッチで配設された位置関係になっている。
【0025】ところで、各ホログラフィレンズアレイ層3r,3g,3bの単位ホログラムに相当するホログラフィレンズ3re,3ge,3beは、そのホログラムが主にそれぞれ対応色に係る波長帯域のS偏光成分を回折・分光させるように作成されている。そして、その特性は図4を用いて説明される。同図は、一例として、入射光の波長を540nm、ホログラム感材に対する屈折率の変調量Δnを0.03とし、各ベンドアングルにおいてS偏光成分の回折効率が100%となるようにホログラムの厚みtを設定した条件下で、P偏光成分の回折効率を計算によって求めたものである。この図から明らかなように、ベンドアングルが大きいとS偏光成分とP偏向成分の両方をほぼ100%回折する特性が得られ、ベンドアングルを120°以下にするとP偏光成分の回折効率を50%以下にすることができ、90°に近づけることで0%にすることができる。
【0026】また、その回折効率の特性は入射光の波長に対して大きな依存性を示すが、逆にその波長依存性を利用することにより、所望の波長に対してS偏光成分が100%に近い回折効率で回折され、P偏光成分の回折効率が極めて小さくなるような最適設計を行うこともできる。従って、透過型ホログラムで構成したカラーフィルタを、R,G,Bの各色について、それぞれの波長帯域のS偏光成分だけを高い回折効率で回折させると共にP偏光成分の回折効率を抑制させるようなホログラフィレンズアレイとして構成することができる。
【0027】図5から図7は、ベンドアングルを75°とした場合における最適設計条件に基づいたR,G,B用の各ホログラムの回折効率と入射光の波長の関係を示す。各図において、実線はS偏光成分を、破線はP偏光成分を示し、それぞれR,G,Bの中心波長付近でS偏光成分について約100%の回折効率が得られ、P偏光成分の回折効率について約18%以下に抑制されている。そして、前記の図5から図7の特性を有したホログラムで構成したカラーフィルタを図1のカラーフィルタ3に用いた場合、読出し光のカラーフィルタ3に対する入射角θを75°(=180-105;ベンドアングル=105°)にすると、各色に係るホログラフィレンズ3re,3ge,3beはS偏光成分のみを主に回折させ、そのS偏光成分を対応色の画素電極13r,13g,13b側へ垂直に射出させることができる。
【0028】尚、この実施形態におけるカラーフィルタ3では、R,G,Bの分光色毎に用意した各ホログラム感材に対して回折効率に波長依存性があるホログラフィレンズアレイ3r,3g,3bを各分光色毎に記録し、それらを積層させた構成のものを用いているが、単板のホログラム感材に対して前記と同様に回折効率に波長依存性があるホログラフィレンズアレイ3r,3g,3bを多重記録したものであってもよく、その場合には各層を機械的に位置合わせする必要がなく、計算機ホログラム等を適用できる。」

オ 「【0029】光源(図示せず)から放射された読出し光は入射光学系(図示せず)を介してカップリングプリズム5の入射面に垂直に入射され、カップリングプリズム5とガラス基板4を透過してカラーフィルタ3へ入射角75°で入射する。カラーフィルタ3に入射する読出し光は、先ずR色用のホログラフィレンズアレイ層3rによって分光・回折される。そして、このアレイ層3rの各ホログラフィレンズ3reはR色に係る波長帯域の光の内のS偏光成分だけを主に回折させるものであり、読出し光に含まれている他の波長帯域の成分及びR色に係る波長帯域におけるP偏光成分はそのまま透過させる。具体的には、各ホログラフィレンズ3reは、R色に係る波長帯域についてS偏光成分を100%に近い回折効率で回折させながら、P偏光成分の回折効率を20%以下に抑制した条件で回折させ、且つその回折光をレンズ機能によってその光軸上に位置するLCDパネル1側のR色の画素電極13rをターゲットとした集光性光束とする。尚、R色に係る波長帯域のP偏光成分も僅かに回折光となってS偏光成分と同様に集束性光束となる。従って、このアレイ層3rの各ホログラフィレンズ3reは、R色の波長帯域に係るS偏光成分とその帯域の僅かなP偏光成分からなる集束性光束をG色用のホログラフィレンズアレイ層3gへ垂直に入射させ、またR色の波長帯域以外の成分と回折しなかったR色の波長帯域のP偏光成分を透過させて読出し光の進行方向のままG色用のホログラフィレンズアレイ層3gへ入射させる。
【0030】次に、G色用のホログラフィレンズアレイ層3gでは、その各ホログラフィレンズ3geがG色に係る波長帯域の光の内のS偏光成分だけを主に回折させるものであるため、R色用のホログラフィレンズアレイ層3rをそのまま透過した光の内のG色に係る波長帯域のS偏光成分を100%に近い回折効率で回折させながら、P偏光成分の回折効率を20%以下に抑制した条件で回折させ、そのレンズ3geの光軸上に位置するLCDパネル1側のG色の画素電極13gをターゲットとした集光性光束とする。一方、垂直に入射したR色の波長帯域に係るS偏光成分とその帯域の僅かなP偏光成分からなる集束性光束はB色用のホログラフィレンズアレイ層3bへそのまま入射させ、またR色用のホログラフィレンズアレイ層3rをそのまま透過した光の内で、この層3gにおいて回折作用の対象外となった成分(R色とG色の波長帯域以外の成分,R色の波長帯域のP偏光成分,回折しなかったG色の波長帯域のP偏光成分)もそのまま透過させて読出し光の進行方向でB色用のホログラフィレンズアレイ層3bへ入射させる。
【0031】次に、ホログラフィレンズアレイ層3bの各ホログラフィレンズ3beはB色に係る波長帯域の光の内のS偏光成分だけを主に回折させるものであるため、R色用とG色用の各ホログラフィレンズアレイ層3r,3gをそのまま透過した光の内のB色に係る波長帯域のS偏光成分を100%に近い回折効率で回折させながら、P偏光成分の回折効率を20%以下に抑制した条件で回折させ、そのレンズ3beの光軸上に位置するLCDパネル1側のG色の画素電極13bをターゲットとした集光性光束とする。一方、垂直に入射したR色とG色に係る各集束性光束はそのまま薄板ガラス層2へ射出させ、またG色用のホログラフィレンズアレイ層3gをそのまま透過した光の内で、前記2層3r,3gにおいて回折作用の対象外となった成分(R色とG色とB色の波長帯域以外の成分,R色とG色の波長帯域のP偏光成分,回折しなかったB色の波長帯域のP偏光成分)もそのまま透過させて読出し光の進行方向で薄板ガラス層2へ射出させる。
【0032】以上の結果、カラーフィルタ3からは、R色の波長帯域のS偏光成分とその各帯域の僅かなP偏光成分からなり、画素電極13rをターゲットとした集束性光束、G色の波長帯域のS偏光成分とその各帯域の僅かなP偏光成分からなり、画素電極13gをターゲットとした集束性光束、B色の波長帯域のS偏光成分とその各帯域の僅かなP偏光成分からなり、画素電極13bをターゲットとした集束性光束、及び各色の波長帯域以外の成分と各色の波長帯域のP偏光成分からなる0次光が射出されることになる。
【0033】前記の?の集光性光束は、薄板ガラス層2を介してLCDパネル1へ入射した後、共通電極膜18と配向膜17と光変調層16と配向膜15を通じて画素電極層13の対応した各画素電極13r,13g,13bへ集光せしめられ、各画素電極13r,13g,13bの表面の誘電体ミラー膜14で反射され、発散光束となってカラーフィルタ3の対応したホログラフィレンズ3re,3ge,3beへ再入射することになる。但し、各画素電極13r,13g,13bにはアクティブマトリクス駆動回路12で一画素の状態を決定する映像信号に対応した制御電圧が個別に印加され、共通電極膜18と各画素電極13r,13g,13bとの間の電位によって光変調層の液晶が配向状態を変化させるため、前記の?のS偏光成分はカラーフィルタ3とLCDパネル1の間を往復する過程で前記の制御電圧に対応した変調を受けてホログラフィレンズ3re,3ge,3beへ再入射することになる。即ち、X%の変調を受けた場合には、(100-X)%はS偏光成分のままであるが、X%がP偏光成分となってホログラフィレンズ3re,3ge,3beへ再入射する。
【0034】そして、その状態をG色の波長帯域のS偏光成分について模式的に示すと図8のようになる。ホログラフィレンズ3geで回折されたS偏光成分は、そのレンズの光軸上にある画素電極13gの略中心に集光せしめられるが、光変調層16の液晶によって変調を受けるとその一部又は全部がP偏光成分に変換されてホログラフィレンズ3geへ入射する。このとき、変調後の光線は前記の光軸に関して画素電極13gへの入射光路と対称な関係を有する光路を経てホログラフィレンズ3geに再入射する。尚、図8では画素電極13gに対する入射角と反射角が大きく表現されているが、実際にはホログラフィレンズ3geが微小なものであるためにその角度は極めて小さい。
【0035】ところで、ホログラフィレンズ3geは前記のように入射光の内のS偏光成分をほぼ100%の回折効率で、P偏光成分を約20%程度の回折効率で回折させて画素電極13gの略中心へ向かう集光光束とするものであった。従って、変調を受けて再入射するP偏光成分の内の20%程度は光逆進の法則に基づいてホログラフィレンズ3geで回折されて入射光(読出し光)の方向へ戻るが、その他のP偏光成分はホログラフィレンズ3geをそのまま透過する。また、以上の作用はR色とG色についても同様である。その結果、変調により得られた各色に係るP偏光成分はカラーフィルタ3をそのまま透過することになり、図1に示すように、ガラス基板4からカップリングプリズム5を透過してその出射面から射出される。そして、カップリングプリズム5の出射面から射出された変調光は投射光学系(図示せず)でスクリーンに投射される。もっとも、変調の割合に応じたS偏光成分と、読出し光がカラーフィルタ3で回折されたP偏光成分の変調によるS偏光成分は、後述のようにカラーフィルタ3をそのまま透過するが、これらは投射光学系側にP偏光成分のみを通過させる偏光手段を設けることで除去できる。
【0036】一方、の0次光は薄板ガラス層2の中を進行して読出し光の入射角と同一の入射角75°でLCDパネル1に入射し、誘電体ミラー膜14で反射角75°で反射してカラーフィルタ3へ-75°の入射角で再入射するが、カラーフィルタ3を構成している各ホログラフィレンズアレイ層3r,3g,3bの各ホログラフィレンズ3re,3ge,3beはその入射角(-75°)に対する回折特性を有しておらず、再入射した0次光はカラーフィルタ3を透過し、ガラス基板4からカップリングプリズム5を通過して読出し光の入射面とは反対側の端面から射出する。
【0037】ところで、この実施形態ではカラーフィルタ3に対する読出し光の入射角が75°である場合について主に説明した。一般に、読出し光の光束の断面積Srとカラーフィルタ3に対する照射面積Saと入射角θの間にはSr=Sa・cosθの関係があり、Saが一定であることから入射角θが大きくなるとSrが極めて小さくなって、読出し光の照明効率が低下する。投射型のカラー画像表示装置において、コントラスト比や色再現性を向上させるには可能な限り平行光に近い読出し光が照射されることが望ましいが、光源は有限の大きさをもつために完全な平行光を得ることができない。従って、前記のカラーフィルタ3のように小さい面積に対して読出し光を効率良く絞り込むことができず、読出し光の断面積Srは可能な限り大きくしておいた方が照明光の利用率が大きくなる。しかし、「可能な限り投射光に寄与するS偏光成分の回折効率を大きくとりながら、P偏光成分の回折効率を小さくして、光利用率を向上させながら高いコントラスト比を得るために読出し光の入射角θを大きくとる」という条件と、前記の読出し光の照明効率を大きくするための条件が背反する。この実施形態では前記のように入射角θを75°としたが、それを60°にすると照明効率を約2倍にすることができる。そして、その入射角θを60°とした場合においては、前記の回折効率に係る条件を若干低下させるものの、読出し光の照明効率の向上によって表示画像の品質が入射角θ=75°の場合よりもコントラスト比等に関して良好になることが確認された。即ち、読出し光の照明効率の問題を加味すると、むしろ入射角θは60°が最適条件となる。」

カ 「【0038】《実施形態2》この実施形態は、前記の実施形態1の装置において、カラーフィルタ3から変調されたP偏光成分を射出する際に、その一部が読出し光の光源方向へ戻ってしまい、光の利用率が低減することを防止するための改善に係る。図8において、読出し光の光線はホログラフィレンズ3geに入射した後にその入射点で主にS偏光成分が回折され、ホログラフィレンズ3geの光軸上に位置する画素電極13gの略中心に入射し、その反射面に相当する画素電極13gとの間を往復する間に変調を受けて変調度合いに応じたS偏光成分となってホログラフィレンズ3geへ再入射するが、各光線についてみると、前記の再入射点は対応した読出し光の光線の入射点との関係でホログラフィレンズ3geの光軸に関して対称位置となる。そして、その再入射点に対する入射方向は、読出し光の光線がその再入射点に入射した際に回折・分光されて画素電極13gの略中心へ向かう方向と合致する。
【0039】ところで、実施形態1で説明したように、ホログラフィレンズ3geは読出し光のS偏光成分をほぼ100%の回折効率で回折させるが、同時にP偏光成分を約20%近く回折させる特性を有している。また、ホログラフィレンズ3geに再入射する光は光変調層16の変調度合いに対応したP偏向成分であり、ホログラフィレンズ3geが読出し光を主に回折する偏光成分と同一である。その結果、前記の再入射点では変調光であるP偏向成分の再入射に対して読出し光の入射方向へ戻すための最適な回折条件を与えてしまうことになり、本来投射光になるべきP偏向成分の内の約20%近くが失われる。また、前記の再入射点の近傍領域では、最適条件ではないにしても近似した条件が成立し、同様の現象が生じることになる。そして、その現象は他のホログラフィレンズ3re,3beでも同様に発生し、カラーフィルタ3から出射して投射光として利用できる光の一部が失われてしまい、当然に光の利用率の低下を招く。
【0040】そこで、この実施形態では、各ホログラフィレンズ3re,3ge,3beの中心と対応した各画素電極13r,13g,13Bの中心を平面的に見て一定距離だけずらせる態様で、カラーフィルタ3と画素電極層13の平面的相対位置を設定する。具体的には、図9にG色に係るホログラフィレンズアレイ3gと画素電極層13の位置関係を示す。同図において、ホログラフィレンズアレイ3gのレンズ3geの中心と画素電極層13の対応した画素電極13gの中心がホログラフィレンズ3geのサイズの1/2だけずらされている。
【0041】そして、ホログラフィレンズ3geは入射角θで入射した読出し光を回折・分光して画素電極13gの中心に集光させる。従って、その集光性光束は画素電極13gの表面に対して垂直に入射するのではなく、図9において矢印を付した実線で示すように、一定の傾斜した集光性光束として画素電極13gの中心に集光し、その中心で反射して矢印を付した点線で示すように発散性光束となるが、その発散性光束は画素電極13gの中心を通過する法線に関して前記の集光性光束と対称な光束となって隣接したホログラフィレンズ3ge'へ入射することになる。
【0042】従って、この実施形態によれば、隣接したホログラフィレンズ3ge'へ入射する発散性光束は、そのホログラフィレンズ3ge'の読出し光に対する回折条件とは全く相違した条件で入射し、結果的に発散性光束の全てがホログラフィレンズ3ge'を透過することになる。そして、カラーフィルタ3と画素電極層13の平面的相対位置を前記のように設定しておけば、当然にR色及びG色に関しても同様の条件が成立するためにカラーフィルタ3へ再入射する変調後のP偏光成分の全てを投射光として利用でき、図8の場合と比較して原理的に20%程度光利用率を向上させることが可能になる。更に一般化すると、各ホログラフィレンズ3re,3ge,3beでの入射光のP偏光成分に対する回折効率が大きくなっても、この実施形態で課題とした光利用率の低下の問題については影響を受けないことになる。」

キ 「【0043】尚、図9では、画素電極13gで反射した発散性光束が読出し光の入射側にある隣接したホログラフィレンズ3ge'へ入射するようになっているが、図10に示すように、発散性光束が前記とは逆側にある隣接したホログラフィレンズ3ge'へ入射するように構成させてもよく、その場合にも同様の効果が得られることは当然である。また、この実施形態では、各ホログラフィレンズアレイ3r,3g,3bのレンズ3re,3ge,3beの中心と画素電極層13の対応した各画素電極13r,13g,13bの中心とのずれをホログラフィレンズ3re,3ge,3beのサイズの0.5倍とした条件で説明したが、0.25倍乃至0.5倍の範囲で選択すれば十分な効果が得られる。更に、この実施形態では、カラーフィルタ3が読出し光のS偏光成分を主に回折・分光させるものである場合について説明したが、その原理からP偏光成分を主に回折・分光させるものに対しても適用できる。」

3.対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「ホログラフィレンズ」が本願補正発明の「要素ホログラム」に相当するところであり、引用発明の「ホログラフィレンズアレイで構成したカラーフィルタ」は、本願補正発明の「要素ホログラムの繰り返しからなるホログラムカラーフィルター」といえる。
また、引用発明の「ホログラフィレンズ」は、「所定の入射角でカラーフィルタへ入射する読出し光について、…、主に第1の偏光成分を回折・分光して対応した色画素に集光させるように構成されて」いるから、本願補正発明の「同じ入射角で斜めに入射する複数の異なる波長の光を色分散しかつ集光する要素ホログラム」といえる。
さらに、引用発明の「ホログラフィレンズ」は、上記2.エ【0025】に「ホログラム感材に対する屈折率の変調量Δnを0.03とし」の記載があることから、「屈折率変調型の要素ホログラム」であるといえる。
また、引用発明の「光変調層と反射層とを含んで構成される空間光変調部」は、本願補正発明の「反射型空間変調素子」に相当する。
以上のことから、引用発明は、本願補正発明と同様に「同じ入射角で斜めに入射する複数の異なる波長の光を色分散しかつ集光する屈折率変調型の要素ホログラムの繰り返しからなるホログラムカラーフィルターと反射型空間変調素子との組み合わせからなる反射型画像表示装置」といえる。

引用発明は、「前記入射光学系が前記の所定の入射角で読出し光を前記カラーフィルタへ入射させる場合に、平面的に見て各ホログラフィレンズの中心と各ホログラフィレンズに対応する色画素面の中心が一定距離だけずれた状態で前記カラーフィルタと前記反射層の平面的相対位置が設定されており、前記の各ホログラフィレンズが回折・分光した光を対応する色画素面の中心に集光させ」るものであり、これに対応する実施形態が上記カ、キに実施形態2として記載されるとともに、図9及び図10に図示されているところである。
この図9及び図10において、「S」の符号が付される3本の矢印のうちの真ん中の矢印の方向が本願補正発明の「前記ホログラムカラーフィルターによる回折光の緑成分の主光線の方向」に相当するところであり、引用例の図9に示される実施形態は、「前記ホログラムカラーフィルターによる回折光の緑成分の主光線の方向が、前記ホログラムカラーフィルターの法線から前記ホログラムカラーフィルターを透過した0次透過光に(対して)遠ざかる方向に所定角度をなして斜めになるように構成されて」おり、また、引用例の図10に示される実施形態は、「前記ホログラムカラーフィルターによる回折光の緑成分の主光線の方向が、前記ホログラムカラーフィルターの法線から前記ホログラムカラーフィルターを透過した0次透過光に近づく方向に所定角度をなして斜めになるように構成されて」いることが理解される。
したがって、引用発明と本願補正発明は、「前記ホログラムカラーフィルターによる回折光の緑成分の主光線の方向が、前記ホログラムカラーフィルターの法線から前記ホログラムカラーフィルターを透過した0次透過光に近づく方向、若しくは、遠ざかる方向に所定角度をなして斜めになるように構成されており」の点で一致する。

以上のことから、両者は、
「同じ入射角で斜めに入射する複数の異なる波長の光を色分散しかつ集光する屈折率変調型の要素ホログラムの繰り返しからなるホログラムカラーフィルターと反射型空間変調素子との組み合わせからなる反射型画像表示装置において、
前記ホログラムカラーフィルターによる回折光の緑成分の主光線の方向が、前記ホログラムカラーフィルターの法線から前記ホログラムカラーフィルターを透過した0次透過光に近づく方向、若しくは、遠ざかる方向に所定角度をなして斜めになるように構成されているホログラムカラーフィルターを用いた反射型画像表示装置。」の点で一致する。

一方、次の点で相違する。
a.本願補正発明は、「前記同じ入射角で入射する複数の異なる波長の光の入射方向と前記緑成分の主光線の方向とのなす角度を空気中の角度に換算したときにその角度が40°であり」とされているのに対し、引用発明がこのようなものであるか不明な点。
b.本願補正発明は、「前記所定角度が、空気中の角度に換算して10°?20°の範囲にある」とされているのに対し、本願補正発明がこのようなものであるか不明な点。

4.相違点についての検討
上記相違点について検討する。
相違点aについて検討するに、入射光線の入射する方向と緑成分の主光線の方向とのなす角度(引用例の図10でいえば、「(読み出し光)」と記載される矢印の方向と、「S」の符号が付される3本の矢印のうちの真ん中の矢印の方向とのなす角度)をどの程度のものとするかは単なる設計事項にすぎず、空気中の角度に換算したときの角度が40°のものを採用することに何らの困難性も認められない。

相違点bについて検討するに、引用発明において「各ホログラフィレンズの中心と各ホログラフィレンズに対応する色画素面の中心が一定距離だけずれた状態で前記カラーフィルタと前記反射層の平面的相対位置が設定されて」いるのは、上記2.カ、キに記載されるように、画素電極13gで反射した発散性光束が読出し光の入射側にある隣接したホログラフィレンズ3ge'へ入射するようになすことにより、光利用率の低下を防止するためである。
してみれば、「ホログラムカラーフィルターの法線」と「回折光の緑成分の主光線の方向」とのなす角度である「前記所定角度」(引用例の図10でいえば、ホログラフィレンズレンズアレイ3gの法線と、「S」の符号が付される3本の矢印のうちの真ん中の矢印とがなす角度、反射光でいえば、前記法線と、「P」の符号が付される3本の矢印のうちの真ん中の矢印とがなす角度)は、画素電極13gで反射した発散性光束が読出し光の入射側にある隣接したホログラフィレンズ3ge'へ入射するようにとの観点から決定されるものであるところ、この角度として上記相違点bに係る範囲内のものを採用することに困難性は認められない。

また、本願補正発明が奏する効果についても、引用例に記載された事項に基づいて当業者が予測可能なものであって、格別のものとはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成22年2月10日に補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記II.[理由]1.において、本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.判断
本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付したものである本願補正発明が、前記II.[理由]2.?4.において検討したように、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであることに照らせば、本願発明が引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであることは、明らかである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-04 
結審通知日 2011-11-09 
審決日 2011-11-22 
出願番号 特願2000-116488(P2000-116488)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02F)
P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣田 かおり  
特許庁審判長 稲積 義登
特許庁審判官 岡▲崎▼ 輝雄
江成 克己
発明の名称 ホログラムカラーフィルターを用いた反射型画像表示装置  
代理人 韮澤 弘  
代理人 菅井 英雄  
代理人 青木 健二  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 内田 亘彦  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 小山 卓志  
代理人 米澤 明  

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