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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) B25J
管理番号 1249736
判定請求番号 判定2011-600033  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2012-02-24 
種別 判定 
判定請求日 2011-07-14 
確定日 2012-01-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第3866025号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「吸着搬送装置およびそれに用いる流路切換ユニット」は、特許第3866025号発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1.請求の趣旨と手続の経緯
判定請求人の請求の趣旨は、イ号カタログに示すZBシリーズの「小型真空ユニット」は、特許第3866025号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び3に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

また、本件に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
平成12年 9月 6日 本件特許に係る特許出願
平成16年10月28日 刊行物提出書提出
平成18年 6月20日 拒絶理由通知書発送
平成18年 8月 2日 面接
平成18年 8月21日 意見書及び補正書提出
平成18年 9月12日 特許査定発送
平成18年10月13日 本件特許登録
平成23年 7月14日 本件判定請求
平成23年 9月 5日 答弁書提出
平成23年 9月14日 請求人上申書提出
平成23年10月13日 審尋発送
平成23年11月10日 被請求人上申書提出
平成23年11月14日 請求人回答書提出
平成23年12月 9日 被請求人上申書(以下、「第2上申書」という。)提出


第2.本件特許発明
1.本件特許発明の構成
本件特許発明は、願書に添付した明細書及び図面(以下,「特許明細書」という。)の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものであり,そのうちの請求項1及び3に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件特許発明1」といい、請求項3に係る発明を「本件特許発明3」という。)の構成要件を分説すると以下のとおりである。

(1)本件特許発明1
A.上下動部材の先端に設けられた吸着具の吸着面にワークを吸着させてワークを搬送する吸着搬送装置であって、

B.正圧源に正圧流路を介して連通する正圧供給ポート、および前記吸着具の着脱路に連通する出力ポートを有し、前記正圧供給ポートを前記出力ポートに連通させる状態と前記正圧供給ポートを遮断する状態とに作動する真空破壊制御弁と、

C.真空源に真空流路を介して連通する真空供給ポート、前記着脱路に連通する真空ポート、および大気に開放され大気を前記着脱路に供給するとともに前記正圧供給ポートからの正圧空気の一部を排出する大気開放ポートを有し、前記真空ポートを前記真空供給ポートに連通させる状態と前記真空ポートを前記大気開放ポートに連通させる状態とに作動する真空供給制御弁とを有し、

D.前記正圧源からの正圧空気を前記着脱路に連通させてワークの吸着を停止する際に、前記真空供給制御弁の前記真空ポートを前記大気開放ポートに連通させ、前記真空破壊制御弁の前記正圧供給ポートを前記出力ポートに連通させることにより、前記大気開放ポートを前記正圧供給ポートと前記着脱路に連通させることを特徴とする吸着搬送装置。

(2)本件特許発明3
F.上下動部材の先端に設けられた吸着具の吸着面にワークを吸着させてワークを搬送する吸着搬送装置に使用する流路切換ユニットであって、

G.正圧源に正圧流路を介して連通する正圧供給ポート、前記吸着具の着脱路に連通する出力ポート、真空源に真空流路を介して連通する真空供給ポート、前記着脱路に連通する真空ポート、および大気に開放され大気を前記着脱路に供給するとともに前記正圧供給ポートからの正圧空気の一部を排出する大気開放ポートが形成された流路ブロックと、

H.前記流路ブロックに設けられ、前記正圧供給ポートを前記出力ポートに連通させる状態と前記正圧供給ポートを遮断する状態とに作動する真空破壊制御弁と、

I.前記流路ブロックに設けられ、前記真空ポートを前記真空供給ポートに連通させる状態と前記真空ポートを前記大気開放ポートに連通させる状態とに作動する真空供給制御弁とを有し、

J.前記正圧源からの正圧空気を前記着脱路に連通させてワークの吸着を停止する際に、前記真空供給制御弁の前記真空ポートを前記大気開放ポートに連通させ、前記真空破壊制御弁の前記正圧供給ポートを前記出力ポートに連通させることにより、前記出力ポートと前記真空ポートとを連通させて前記流路ブロックに形成された流路を介して前記大気開放ポートを前記正圧供給ポートと前記着脱路とに連通させることを特徴とする流路切換ユニット。

なお、請求人は、本件特許発明3の構成要件を分説するにあたり、AないしEの記号を用いたが、本件特許発明1の構成要件との混同を避けるために、本件判定では上記のFないしJの記号を用いる。


2.本件発明が解決しようとする課題及び効果、並びに作用
(1)課題に関する特許明細書の記載
本件特許発明の解決しようとする課題について、特許明細書の段落【0006】ないし【0008】には、以下の記載がある。
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
昨今、吸着搬送される被吸着物であるICなどの電子部品は、その形状がますます小さく、かつ軽くなってきており、被吸着物を吸着具から離脱させるために吸着具に真空破壊用の正圧空気を供給したときに、被吸着物が正圧空気によって吹き飛ばされて、所定の位置に正確に搭載することができない場合がある。
【0007】
流量調整用のニードル弁により正圧流路を絞ると、着脱路に供給される真空破壊用の正圧空気の流量を、圧力を変化させることなく、低下させることができるので、正圧流路を絞ったり、正圧空気の圧力を低下させると、真空破壊時に被吸着物であるワークが吹き飛ばされることを防止できる。
【0008】
しかしながら、真空破壊用の正圧空気の流量を低下させたり、圧力を低下させると、吸着具から被吸着物を離脱させるまでに時間がかかり、チップマウンタの場合には電子部品の搭載に要するタクトタイムが長くなり、生産性が低下してしまう。」

(2)効果に関する特許明細書の記載
本件特許発明の効果について、特許明細書の段落【0038】ないし【0039】には、以下の記載がある。
「【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、吸着具に吸着されたワークを吸着具から離反つまり離脱させる際には、着脱路は大気開放ポートに連通するとともに正圧源に連通することになり、迅速にワークを離脱させることができる。これにより、電子部品を実装基板などの被搭載物に搭載するためのタクトタイムを短くすることができる。
【0039】
離脱時にはワークが吸着具から吹き飛ばされることがないので、ワークはずれることなく、所定の被搭載位置に高精度に位置決めしてワークを搭載することができる。」

(3)作用に関する特許明細書の記載
本件特許発明の作用について、特許明細書の段落【0026】には、以下の記載がある。
「【0026】
このように、真空状態の着脱路14には大気圧の空気と正圧空気とが大気開放ポートTと正圧供給ポートPの両方から供給されることになり、迅速に所定の圧力に設定されることになる。着脱路14が大気圧以上となると、正圧供給ポートPからの正圧空気は着脱路14に流入するとともに、大気開放ポートTから一部が排気されることになるので、高い圧力の圧縮空気が大量にワークWに吹き付けられることが防止される。しかも、大気開放ポートTから大気を導入しないで、正圧空気のみを着脱路14に供給する場合には、着脱路14内の圧力と正圧空気の圧力との差圧が大きいので、吸着されているワークWには大きな衝撃力が作用することになるが、大気開放ポートTを着脱路14に連通させることによって、ワークの離脱動作を遅くすることなく、ワークの吹き飛びを確実に防止することができる。」

(4)平成18年8月21日付けの意見書における作用についての主張
本件特許発明に係る出願の審査において提出された、平成18年8月21日付けの意見書の【意見の内容】の「2.本願発明について」の欄において、本件特許発明の作用に関して、出願人、すなわち判定請求人は、「比較図」を示したうえで、以下のとおり主張した。
「 ・・・・・(前略)
従来の吸着搬送装置は、段落[0005]に記載のように、真空供給制御弁と真空破壊制御弁として、いずれも2ポート電磁弁が使用されており、別紙の比較図にこの従来例を示しました。従来例では吸着具からワークを離脱させるために吸着具に真空破壊用の正圧空気を供給すると、正圧空気が全て吸着具に流れるために、段落[0006]に記載したように、小型の電子部品は真空破壊用の空気により吹き飛ばされることがありました。正圧空気を全て吸着具に流した場合の着脱路の圧力変化特性が別紙の比較図に示されております。電子部品が吹き飛ばされないようにするために流路を絞ると、着脱路は比較図に示す場合よりもゆっくりと変化することになりますが、それでは吸着物の離脱に時間がかかることになります。
別紙比較図における参考例は、真空破壊のために正圧空気を供給することなく、大気を吸着具に供給した場合の着脱路の圧力変化特性を示しております。このように大気を導入して真空破壊を行うと、正圧空気を供給する場合に比して、吸着物の離脱に時間がかかることになります。
本願発明においては、真空供給制御弁24の大気開放ポートTを着脱路に大気を供給するために利用するとともに正圧供給ポートPからの正圧空気の一部を排出つまり逃がすために使用しております。すなわち、大気開放ポートTは大気を外部から導入するだけでなく、正圧空気の一部を外部に逃がすためにも利用しております。
これにより、本願発明においては、別紙比較図に示すように切換初期には、吸着具10に正圧空気と大気圧空気とが流入することになり、流入正圧と流入大気とが合流して吸着具10に流れることから、吸着物を迅速に離脱させることができるのであります。
しかも、着脱路が大気圧以上になると正圧空気の一部は、正圧供給ポートPが大気開放ポートTに連通されるので、大気開放ポートTから外部に排気されて外部に逃げることになり、ワークの吹き飛びを確実に防止することができるという特段の効果が得られるのであります([0026])。
このように、本願発明は吸着を停止する際に、停止初期には、大気開放ポートTを正圧供給ポートPと真空ポートVとに連通させ、大気開放ポートTからの大気圧空気を吸着具に正圧空気とともに供給して迅速に吸着物の離脱を行う一方、大気開放ポートTから正圧空気を逃がして吸着具に吸着されていた吸着物が吹き飛ばされないようにするという技術思想を有する発明であります。・・・・・(後略)」

(5)まとめ
上記(1)ないし(3)の記載や、上記(4)の主張を考慮すると、本件特許発明1及び3は、被吸着物を吸着具から離脱させるために吸着具に真空破壊用の正圧空気を供給したときに、「比較図」の「従来例」に示すように、真空破壊の圧力が高くなりすぎて、被吸着物が吹き飛ばされ、逆に、被吸着物が吹き飛ばされないように、真空破壊用の正圧空気の流量や圧力を低下させると、「比較図」の「参考例」に示すように、吸着物の離脱に時間がかかるという課題を解決しようとするものである。そして、大気開放ポートを、着脱路に大気を供給するために利用するとともに正圧供給ポートからの正圧空気の一部を排出するために使用することにより、流入正圧と流入大気とが合流して吸着具に流れる作用によって、迅速に着脱路の圧力を高め、また、着脱路が大気圧以上になると、正圧空気の一部は大気開放ポートから外部に排気される結果、「比較図」の「本願発明」に示すように、圧力が高くなりすぎることがないから、ワークが吸着具から吹き飛ばされることがなく、迅速にワークを吸着具から離脱させることができるという効果を奏するものであると認める。


第3.イ号物件
1.イ号物件についての証拠
判定請求書及び平成23年9月14日付けの上申書、並びに平成23年11月14日付けの回答書を参照すると、本件特許発明1、3の技術的範囲に含まれるか否かを判断する対象物、すなわちイ号物件は、甲第2号証の1に示されているZBシリーズの小型真空ユニットのうち、真空ポンプ型の物であるとして、以下、判定する。
そして、当該イ号物件について、以下の書証が提出されている。
なお、請求人及び被請求人は、「イ号物件」という用語のほかに、「イ号製品」という用語を使用しているが、「イ号物件」という用語に統一して表記する。

甲第2号証の1 イ号物件のカタログの写し(請求書添付)
甲第2号証の2 イ号物件の取扱説明書の写し(請求書添付)
甲第2号証の3 甲2号証の1の第3ページ左上側部の参照符号付き拡大図(回答書添付)
甲第2号証の4 甲2号証の1の第3ページ右下側部の参照符号付き拡大図(回答書添付)
甲第4号証 イ号物件比較図(請求書添付)
甲第6号証の1 イ号物件の真空吸着時における空気の流れを示す断面図(回答書添付)
甲第6号証の2 イ号物件の真空破壊時(着脱路が大気圧以下)における空気の流れを示す断面図(回答書添付)
甲第6号証の3 イ号物件の真空破壊時(着脱路が大気圧以上)における空気の流れを示す断面図(回答書添付)
甲第7号証 イ号物件の写真の写し(回答書添付)
甲第8号証 乙第2号証に参照符号を付した図面(回答書添付)

乙第1号証 イ号物件の断面図(答弁書添付)
乙第2号証 イ号物件の空気流路図(答弁書添付)


2.各証拠によって示されるイ号物件に関する事項
上記の各証拠を総合すると、イ号物件について、以下の事項を認めることができる。
なお、符号については、乙第1及び2号証、並びに甲第6号証の1ないし3、及び甲第7号証における符号を用いたが、乙第2号証の「入口114」及び「出口120」と、甲第7号証の「着脱路112A」及び「着脱路122A」とは同じ部分を示すから、乙第2号証の符号で統一した。
(1)イ号物件の全体的構成について
ZBシリーズの小型真空ユニットのうち、真空ポンプ型の小型真空ユニットは、以下の部分で構成されている。
・真空破壊弁25
・真空供給弁24
・流量調整ニードル弁102
・フィルタケース100
・流路ブロック31

(2)真空破壊弁25の構造及び動作について
真空破壊弁25は、ポートJ1ないしJ3を有し、ポートJ1とJ2とが連通する状態と、ポートJ1とJ2とが遮断され、ポートJ2とポートJ3とが連通する状態とに切り換えるように動作する。

(3)真空供給弁24の構造及び動作について
真空供給弁24は、ポートK1ないしK3を有し、ポートK1とK2とが連通する状態と、ポートK3とK2とが連通する状態とに切り換えるように動作する。

(4)流量調整ニードル弁102の構造について
流量調整ニードル弁102は、以下の構造を有している。

ア.真空破壊弁25のポートJ1に連通する連通孔106Aがあり、当該連通孔106Aは、流路ブロック31の流路106に連通している。

イ.真空破壊弁25のポートJ2に連通する開口110があり、当該開口110は流路ブロックの溝112を介して流量調整ニードル弁102の入口114に連通している。

ウ.流量調整ニードル弁102の出口120があり、当該出口120は流路ブロック31の流路122に連通している。

エ.真空供給弁24のポートK1に連通する連通孔116Aがあり、当該連通孔116Aは流路ブロック31の流路116に連通している。

オ.真空供給弁24のポートK2に連通する連通孔118Aがあり、当該連通孔118Aは流路ブロック31の流路118に連通している。

カ.真空供給弁24のポートK3に連通する溝K3A-2があり、当該溝K3A-2は大気に開放されている。

(5)フィルタケース100の構造について
フィルタケース100は、真空ポートVと、流路ブロック31の流路122に連通する第1の通路と、流路ブロック31の流路118に連通する第2の通路とを有し、当該第2の通路にフィルタ124が設けられ、フィルタ124の下流の連通箇所126で第1及び第2の通路が連通して、さらに真空ポートVに連通しており、真空ポートVは吸着具10に連通している。

(6)流路ブロック31の構造について
流路ブロック31は、以下の構造を有している。

ア.真空供給ポートVSを有しており、当該真空供給ポートVSは、真空源20に連通するとともに、流路116を介して流量調整ニードル弁102の連通孔116Aと連通している。

イ.正圧供給ポートPを有しており、当該正圧供給ポートPは、正圧源17に連通するとともに、流路106を介して流量調整ニードル弁102の連通孔106Aと連通している。

ウ.溝112を有しており、当該溝112は、流量調整ニードル弁102の開口110及び入口114と連通し、当該溝112と流量調整ニードル弁102とで出力ポートAが構成されている。

エ.流路122を有しており、当該流路122は、流量調整ニードル弁102の出口120とフィルタケース100の第1の通路とに連通している。

オ.流路118を有しており、当該流路118は、流量調整ニードル弁102の連通孔118Aとフィルタケース100の第2の通路とを連通している。

カ.流量調整ニードル弁102の溝K3A-2と、流路ブロック31の上面とで、大気開放口Tが構成されている。

(7)イ号物件の作用について
甲第2号証の1の第2ページ(左下の隅に「特長1」と表示されているページ)の中段左側には、横軸を「時間[ms]」、縦軸を「真空(V)ポート圧力」とするグラフが示されており、当該グラフには、「ZB(大気開放口あり)」と示された線図が記載されている。
そして、当該図面は、真空供給弁24のポートK3を大気開放にすることで、ポンプシステムにおける真空破壊が即座に行われ、破壊圧力の上がりすぎを抑制できることを示している。

(8)イ号物件の用途について
イ号物件の用途について、以下の事項を認めることができる。

ア.甲第2号証の1の第9ページ(右下に「6」と表示されているページ)の右下の下から2行目ないし末行には、「通気性のあるワークや漏れのあるワークを吸着させる場合は、真空圧力があまり高くなりませんので注意が必要です。」との記載がある。

イ.甲第2号証の2の第41ページ(下側中央に「-40-」と表示されているページ)の「流量特性グラフについて」という欄の第18行ないし22行には、「ワーク吸着状態に置き換えて考えますと・・・(中略)・・・ワークの吸着面では真空圧力が低下します。・・・(中略)・・・通気性のあるワークや漏れのある吸着状態でご使用される場合、真空圧力が高くなりませんので、吸着搬送状態の十分な検証や事前テストが必要です。」との記載がある。

ウ.甲第2号証の2の第43ページ(下側中央に「-42-」と表示されているページ)の「トラブルシューティング」という表の「要因」欄の最上部には、「吸着面積が小さい=ワーク質量と搬送時に加わる力に対し、吸着力が弱い。」との記載がある。

エ.甲第2号証の1の第3ページ(右下の隅に「特長2」と表示されているページ)の右側中段には、「アプリケーション例」として示された図面が記載されており、当該図面は、「アプリケーション例」として示された装置に「ZB」と示されたユニットが適用されていることを示している。
さらに、当該図面を参照すると、「ZB」と示されたユニットの下側には、水平な左右方向に延びるレール状の部材が存在し、当該左右方向に延びるレール状の部材の下方には、水平な前後方向に延びる2本のレール状の部材が存在している。
また、左右方向に延びるレール状の部材の手前側には、「ZB」と示されたユニットに接続して上下方向に延在する部材があり、当該上下方向に延在する部材の下方に、緑色の長方形の部材が存在しており、当該緑色の長方形の部材は、左右方向に延びるレール状の部材と平行に、水平方向に3つ描かれている。


3.イ号物件の構成
以上の事項を踏まえ、本件特許発明1及び3の記載に沿って、イ号物件の構成要件を整理すると、イ号物件は、以下のとおりのものと認めることができる。

(1)イ号物件の1

b.正圧源17に正圧流路を介して連通する正圧供給ポートPに連通する第1ポートJ1、および前記吸着具10の着脱路に連通する真空ポートVに連通する出力ポートAに連通する第2ポートJ2を有し、前記第1ポートJ1を前記第2ポートJ2に連通させる状態と前記第1ポートJ1を遮断する状態とに作動する真空破壊弁25と、

c.真空源20に真空流路を介して連通する真空供給ポートVSに連通する第1ポートK1、前記着脱路に連通する真空ポートVに連通する第2ポートK2、および大気に開放される大気開放口Tに連通する第3ポートK3を有し、前記第2ポートK2を前記第1ポートK1に連通させる状態と前記第2ポートK2を前記第3ポートK3に連通させる状態とに作動する真空供給弁24とを有する、ZBシリーズの真空ポンプ型の小型真空ユニット。

(2)イ号物件の2
f.吸着具10の吸着面にワークを吸着させてワークを搬送する吸着搬送装置に使用するZBシリーズの真空ポンプ型の小型真空ユニットであって、

g.正圧源17に正圧流路を介して連通する正圧供給ポートP、及び真空源20に真空流路を介して連通する真空供給ポートVSが形成され、また、前記吸着具10の着脱路に連通する出力ポートAを流量調整ニードル弁102とで構成し、前記着脱路に連通する真空ポートVが形成されたフィルタケース100が接続され、また、大気に開放される大気開放口Tを流量調整ニードル弁102とで構成する流路ブロック31と、

h.前記流路ブロック31に設けられ、前記正圧供給ポートP及び真空破壊弁25の第1ポートJ1を前記出力ポートAに連通させる状態と前記正圧供給ポートAを遮断する状態とに作動する真空破壊弁25と、

i.前記流路ブロック31に設けられ、前記フィルタケース100の真空ポートV及び真空供給弁24の第2ポートK2を前記真空供給ポートVSに連通させる状態と前記フィルタケース100の真空ポートV及び真空供給弁24の第2ポートK2を大気開放口Tに連通させる状態とに作動する真空供給弁24とを有する、ZBシリーズの真空ポンプ型の小型真空ユニット。


第4.本件各特許発明及びイ号物件についての当事者の主張
1.本件特許発明1について
イ号物件が、本件特許発明1の構成要件A.ないしD.を充足しているか否かについて、請求人及び被請求人の主張は、以下のとおりである。

(1)請求人の主張
ア.構成要件A.の充足性について(請求書第8ページ第8ないし20行、並びに回答書第9ページ第20ないし29行、及び第10頁第26行ないし第11ページ第1行)
イ号物件は、吸着搬送装置に適用されるものであるから、イ号物件は構成要件A.を充足する。また、被請求人は、イ号物件が吸着搬送装置に使用されることを認めているから、構成要件A.を充足することを認めたことになる。
イ.構成要件B.の充足性について(請求書第8ページ第8ないし20行、及び回答書第10ページ第1ないし7行)
イ号物件の真空破壊弁25は、構成要件B.を充足する。
被請求人は、イ号物件の出力ポートAが流路ブロックに設けられていないことを理由に、構成要件B.を充足しない旨主張しているが、真空破壊弁25のポートJ2は出力ポートAとなっている。

ウ.構成要件C.の充足性について(請求書第8ページ第8ないし20行、及び回答書第10ページ第8ないし14行)
イ号物件の真空供給弁24は、構成要件C.を充足する。
被請求人は、イ号物件の大気開放ポートTが流路ブロックに設けられていないことを理由に、構成要件C.を充足しない旨主張しているが、流路ブロック31と流量調整ニードル弁102との間に大気開放ポートTが形成されており、当該大気開放ポートTは真空供給弁24のポートK3に連通しているから、真空供給弁24は大気開放ポートを有している。

エ.構成要件D.の充足性について(請求書第8ページ第8ないし20行、及び回答書第10ページ第15ないし20行)
イ号物件は、真空破壊時に正圧空気と大気圧と着脱路とを連通状態とさせているから、構成要件D.を充足する。
被請求人は、イ号物件が大気開放ポートを有していないことを理由に、構成要件D.を充足しない旨主張しているが、イ号物件は大気開放ポートを有している。

(2)被請求人の主張
ア.イ号物件について
(ア)大気開放ポートTについて(第2上申書第2ないし3ページ(1)欄)
「ポート」とは、JIS B0142の1607によれば、「配管を接続するための機器流路の開口部分」であるところ、「配管を接続するため」とは、流路と流路とを繋ぐことができる機能を有するものであり、流路と流路とを繋ぐ際に流体が洩れるものは、ポートとは呼べない。
イ号物件は、真空供給弁24のポートK3と流量調整ニードル弁102の流路K3Aとの間にシールがなく、その間を流れる流体に漏れが生じるから、イ号物件の流路ブロックは大気開放ポートTが設けられていない。

(イ)出力ポートAについて(第2上申書第3ないし4ページ(2)欄、及び答弁書第6ページ第26行ないし第7ページ第7行)
イ号物件の出力ポートAは、流量調整ニードル弁102と流路ブロック31とで形成されているポートである。

(ウ)真空破壊弁について(第2上申書第4ないし5ページ(3)欄、並びに答弁書第7ページ第8ないし17行、及び第8ページ第2ないし13行)
イ号物件の真空破壊弁25に正圧供給ポートPと出力ポートAとがあり、流路ブロックについても正圧供給ポートPと出力ポートAとがあるとするならば、イ号物件の特定が不明確となるから、イ号物件の真空破壊弁25は、正圧供給ポートPと出力ポートAとを有していない。

(エ)真空供給弁について(第2上申書第5ないし6ページ(4)欄、並びに答弁書第7ページ第18行ないし第8ページ第1行、及び第8ページ第14ないし28行)
イ号物件の真空供給弁24に真空供給ポートVSと真空ポートVとがあり、また、流路ブロック31にも真空供給ポートVSがあり、フィルタケース100にも真空ポートVがあるとするならば、イ号物件の特定が不明確となるから、イ号物件の真空供給弁24は、真空供給ポートVSと真空ポートVとを有していない。

(オ)真空破壊について(答弁書第8ページ最終行ないし第9ページ第12行及び第2上申書第6ページ(5)欄)
イ号物件の真空破壊は、正圧源17からの正圧空気を吸着具10の着脱路に連通させてワークWの吸着を停止する際には、真空供給弁24によってフィルタケース100の真空ポートVを真空供給弁24の第3ポートK3に連通させ、真空破壊弁25によって流路ブロック31の正圧供給ポートPを出力ポートAに連通させることにより、真空供給弁24の第3ポートK3を流路ブロック31の正圧供給ポートPとフィルタケース100の真空ポートVの着脱路に連通させるようにしているものである。

イ.構成要件の充足性について
(ア)構成要件A.の充足性について(答弁書第12ページ第4ないし5行、並びに第2上申書第9ページ第21行ないし第10ページ第4行及び第12ページ第4ないし12行)
イ号物件は、吸着搬送装置ではなく、真空ポンプ型の小型真空ユニットであるから、本件特許発明の構成要件A.を充足しない。
また、イ号物件が吸着搬送装置に使用される流路切換ユニットとして使用されることがあるとしても、イ号物件は吸着搬送装置ではないから、本件特許発明1の構成要件A.を充足しない。

(イ)構成要件B.の充足性について(答弁書第12ページ第6ないし17行、並びに第2上申書第6ページ第18行ないし第9ページ第20行及び第10ページ第5ないし末行)
本件特許発明1の出願経過を参酌すると、出力ポートは、流路ブロック内に設けられたポートであると解するべきであるところ、イ号物件の出力ポートAは、流路ブロック内に設けられていないから、構成要件B.を充足しない。

(ウ)構成要件C.の充足性について(答弁書第12ページ第18行ないし第14ページ第23行及び第2上申書第11ページ第1ないし21行)
本件特許発明1の出願経過を参酌すると、大気開放ポートは、流路ブロック内に設けられたポートであると解するべきであるところ、イ号物件は大気開放ポートを有していないから、構成要件C.を充足しない。
また、本件特許発明1の大気開放ポートは制御弁本体に形成されたポートとして規定され、本件特許発明3の大気開放ポートは流路ブロックに形成されたポートとして規定されるとすると、用語の規定内容が異なることになり、特許請求の範囲の記載が不明確となるから、本件特許発明1の大気開放ポートは流路ブロックに形成されたポートと認定することで、用語の規定内容が統一されることになる。
また、本件特許発明1の出願経過を参酌すると、真空ポートは、流路ブロック内に設けられたポートであると解するべきであるところ、イ号物件の真空ポートは、流路ブロック内に設けられていないから、構成要件C.を充足しない。
イ号物件は、フィルタケース100を設けることにより、構造的特徴及び作用効果が得られ、当該効果等の利点から、流路ブロック31とフィルタケース100とを別個に構成しているので、技術的観点からすれば、イ号物件の流路ブロック31とフィルタケース100とを1つの流路ブロックとしてみなすことはできない。
さらに、請求人は、平成18年8月21日付けの意見書において、請求項1を説明するにあたり、「VS」「V」「T」という符号を付して説明しており、当該符号は図4の記載からみて、流路ブロック31に設けられたポートを示す符号であることからも、本件特許発明1の真空供給ポートVS、真空ポートV及び大気開放ポートTが、流路ブロック31に設けられたポートであることは、明らかである。

(エ)構成要件D.の充足性について(答弁書第14ページ第24行ないし第28行及び第2上申書第11ページ第22行ないし第12ページ第3行)
イ号物件は大気開放ポートを有していないから、構成要件D.を充足しない。


2.本件特許発明3について
イ号物件が構成要件F.及びH.を充足することについては、争いはない。
そして、イ号物件が、本件特許発明3の構成要件G.及びI.ないしJ.を充足しているか否かについて、請求人及び被請求人の主張は、以下のとおりである。

(1)請求人の主張
ア.構成要件G.の充足性について(請求書第8ページ第21ないし26行及び回答書第11ページ第5ないし12行)
イ号物件は、真空供給弁24と真空破壊弁25とが取り付けられるブロックを有しており、ブロックには正圧源17、真空源20、吸着具10が接続されるから、構成要件G.を充足する。
被請求人は、イ号物件の真空ポートVがフィルタケース100に設けられていることを理由に、構成要件G.を充足しない旨主張しているが、真空供給弁24のポートK2は真空ポートVであるから、イ号物件は構成要件G.を充足する。

イ.構成要件I.の充足性について(請求書第8ページ第27ないし30行及び回答書第11ページ第13ないし17行)
イ号物件の真空供給弁24は、構成要件I.と同一の構成である。
被請求人は、イ号物件が大気開放ポートTを有していないことを理由に、構成要件I.を充足しない旨主張しているが、真空供給弁24のポートK3は大気開放ポートであるから、構成要件I.を充足する。

ウ.構成要件J.の充足性について(請求書第8ページ第27ないし30行、並びに回答書第11ページ第13ないし17行及び第22ないし30行)
イ号物件の真空破壊弁25と真空供給弁24は、構成要件J.と同一の構成である。
被請求人は、イ号物件が大気開放ポートTを有していないことを理由に、構成要件J.を充足しない旨主張しているが、真空供給弁24のポートK3は大気開放ポートであるから、構成要件J.を充足する。
また、被請求人は、流路ブロック31とフィルタケース100とを1つの一体的な流路ブロックとしてみなすことはできない旨主張しているが、流路ブロックを複数のブロックを組み合わせて製造することは、当該技術分野において通常なされている構造上の便宜であるから、イ号物件がフィルタケース100を備えていることをもって、構成要件J.を充足しないとはいえない。

(2)被請求人の主張
ア.イ号物件について
(ア)大気開放ポートについて
上記第4.1.(2)ア.(ア)記載のとおり。

(イ)出力ポートAについて
上記第4.1.(2)ア.(イ)記載のとおり。

(ウ)真空破壊弁について
上記第4.1.(2)ア.(ウ)記載のとおり。

(エ)真空供給弁について
上記第4.1.(2)ア.(エ)記載のとおり。

(オ)真空破壊について
上記第4.1.(2)ア.(オ)記載のとおり。

イ.構成要件の充足性について
(ア)構成要件G.の充足性について(答弁書第15ページ第21ないし29行及び第2上申書第12ページ第13行ないし第13ページ第8行)
イ号物件は、真空ポートVがフィルタケース100に設けられているうえに、出力ポートAが流路ブロック31と流量調整ニードル弁102とで形成されており、また、大気開放ポートTを有していない。結局、流路ブロック31内には、真空ポートV、出力ポートA及び大気開放ポートTのいずれも設けられていないから、イ号物件は構成要件G.を充足しない。
また、構成要件G.は、流路ブロックについての構成要件であるから、真空供給弁24の第2ポートK2が真空ポートVであるとする請求人の主張は失当である。

(イ)構成要件I.の充足性について(答弁書第16ページ第5ないし6行、及び第2上申書第13ページ第9ないし末行)
イ号物件は、大気開放ポートTを有していないから、構成要件I.を充足しない。
また、構成要件G.は、流路ブロックについての構成要件であるから、真空供給弁24の第3ポートK3が大気開放ポートであるとする請求人の主張は失当である。

(ウ)構成要件J.の充足性について(答弁書第16ページ第5ないし22行、及び第2上申書第13ページ第9ないし末行)
イ号物件は、流路ブロックに設けていないから、構成要件J.を充足しない。
また、構成要件J.の「前記流路ブロックに形成された流路を介して前記大気開放ポートを前記正圧供給ポートと前記着脱路とに連通させる」という記載は、大気開放ポートと吸着具の着脱路とを連通する流路と、正圧供給ポートと吸着具の着脱路とを連通する流路とが流路ブロック31内で連通している意味に解すべきところ、イ号物件は、真空供給弁24の第3ポートK3と真空ポートVとを連通する流路118と、流路調整ニードル弁102と真空ポートVとを連通する流路122とは、流路ブロック31内ではなく、フィルタケース100内で連通しているし、流路ブロック31とフィルタケース100とを1つの一体的な流路ブロックとしてみなすべきではないから、イ号物件は、構成要件J.を充足しない。


第5.対比及び判断
1.本件特許発明1とイ号物件の1との対比及び判断について

ア.構成要件A.の充足性について
上記第3.2.(8)ア.ないしウ.に摘示する記載は、ZBシリーズの真空ユニットを、ワークの吸着や搬送を行う装置に適用することを前提とした記載であるといえるし、上記第3.2.(8)エ.で指摘した甲第2号証の1の第3ページのアプリケーション例に示される図面を参照すると、「アプリケーション例」として示された装置は、ワークの吸着搬送装置であると認められる。
そして、アプリケーション例に示される図面の「ZB」と示されたユニットがZBシリーズの真空ユニットであることを考慮すると、当該真空ユニットに接続する上下方向に延在する部材の下端が吸着具10を示し、当該吸着具10の下方に存在する緑色の長方形の部材がワークを示すことになり、イ号物件の1の吸着搬送装置は、吸着具10によりワークを上方から吸着し、水平な左右方向に延びるレール状の部材や、水平な前後方向に延びる2本のレール状の部材に沿って、ワークを左右方向または前後方向に搬送する装置であると理解できる。
しかし、上記第3.3.(1)に認定するように、イ号物件の1は、ZBシリーズの真空ポンプ型の小型真空ユニットであって、吸着搬送装置ではないから、イ号物件がワークの吸着搬送装置に適用されることがあるとしても、イ号物件が、文言上、構成要件A.を充足しているとはいえない。

イ.請求人の主張について
請求人は、上記第4.1.(1)において、イ号物件は、吸着搬送装置に適用されるものであるから、イ号物件は構成要件A.を充足する旨、主張している。
しかし、イ号物件の1は、ZBシリーズの真空ポンプ型の小型真空ユニットであって、当該小型真空ユニットは吸着搬送装置ではない。
また、上記第1.に示すとおり、請求人に対しては、甲第2号証に示された「アプリケーション例」の具体的な構成や構造を示すように審尋したが、請求人は、当該「アプリケーション例」の図面や写真等を示していないばかりか、当該「アプリケーション例」の製品名や型式さえも明らかにしていない。
そして、イ号物件の1が吸着搬送装置ではない以上、イ号物件の1が吸着搬送装置に使用される流路切換ユニットとして用いられるものであるとしても、上記ア.に示す判断を妨げるものではない。
以上から、請求人の主張は採用できない。

ウ.本件特許発明1とイ号物件の1との対比及び判断についてのむすび
以上のとおり、イ号物件の1は、本件特許発明1の構成要件A.を充足しないから、他の構成要件B.ないしD.について検討するまでもなく、イ号物件の1は、本件特許発明1の技術的範囲に属さない。


2.本件特許発明3とイ号物件の2との対比及び判断について
ア.争いのない点について
イ号物件の2が、本件特許発明3の構成要件F.及びH.を充足することは、上記第4.2.に示すように、被請求人も認めるところである。

イ.構成要件G.の充足性
本件特許発明3の構成要件G.は、流路ブロックに、正圧供給ポート、出力ポート、真空供給ポート、真空ポート及び大気開放ポートの各ポートを形成することを特定しているところ、流路ブロックに、流量調整ニードル弁やフィルタを付加することを排除する特定はない。
また、一般に「ブロック」という用語は、「かたまり」を意味するから、流路ブロックとは、流路を形成しているかたまり状の部材を意味するといえるところ、上記第3.3.(2)g.に示すように、イ号物件の2の流路ブロック31は、流量調整ニードル弁102及びフィルタケース100が接続されている。そして、甲第2号証の1のカタログの内容や、甲第2号証の2の取扱説明書の内容を参照すると、それらの流路ブロック31、流量調整ニードル弁102及びフィルタケース100は、配管の取り付けや部品の交換等の場合を除いて、一体として流通及び使用されるものであり、取り外して個別に使用することが想定されていない関係にあるといえるから、当該流路ブロック31、流量調整ニードル弁102及びフィルタケース100は、一つの「かたまり」状態の部材として認識できるものである。
そして、そのように流路ブロック31、流量調整ニードル弁102及びフィルタケース100を、一つのかたまり状の部材として認識すれば、流量調整ニードル弁102及びフィルタケース100の内部にも開口や通路があり、それらは流路といえるから、当該一つのかたまり状の部材は、一つの流路ブロックとして認識し得る。
そうすると、上記第3.3.(2)g.に示すように、イ号物件の2は、流路ブロック31に正圧供給ポートP及び真空供給ポートVSがあり、流路ブロック31と流量調整ニードル弁102とで出力ポートAを構成し、フィルタケース100に真空ポートVが形成されているから、一つの流路ブロックとして認識し得る流路ブロック31、流量調整ニードル弁102及びフィルタケース100には、正圧供給ポートP、出力ポートA、真空供給ポートVS及び真空ポートVの各ポートが形成されていることになり、それらは構成要件G.の「正圧供給ポート」、「出力ポート」、「真空供給ポート」及び「真空ポート」に対応する。
さらに、イ号物件の2は、流量調整ニードル弁102と流路ブロック31とで大気開放口Tを構成しているから、一つの流路ブロックとして認識し得る流路ブロック31、流量調整ニードル弁102及びフィルタケース100には、大気開放口Tも形成されているということができる。
当該大気開放口Tについて、さらに検討すると、上記第3.2.(7)に摘示するように、甲第2号証の1の第2ページの中段左側には、グラフが示されており、当該グラフは、イ号物件の2の真空ユニットの特徴を示している。
そして、当該グラフにおける「ZB(大気開放口あり)」と示された線図は、上記第2.2.(4)に摘示する平成18年8月21日付けの意見書における「比較図」の「本願発明」というグラフの「本願発明」という線図に対応している。
そして、当該「本願発明」という線図が表している技術的な意味は、上記第2.2.(4)に示すとおり、大気開放ポートを着脱路に大気を供給するために利用するとともに正圧供給ポートからの正圧空気の一部を排出するために使用することにより、流入正圧と流入大気とが合流して吸着具に流れる作用によって、迅速に着脱路の圧力を高め、また、着脱路が大気圧以上になると、正圧空気の一部は大気開放ポートから外部に排気される結果、真空破壊の圧力が高くなりすぎないように抑制することであるところ、甲第2号証の1の第2ページの中段左側にも、「真空破壊が即座に行われ、破壊圧力の上がりすぎを抑制」との記載があるから、イ号物件の2の大気開放口Tは、本件特許発明3の真空供給制御弁の大気開放ポートと同様の作用を奏しているといえる。
そうすると、イ号物件の2の大気開放口Tは、単に、大気に開放されているというだけでなく、着脱路に大気を供給するために利用するとともに正圧供給ポートからの正圧空気の一部を排出するためにも使用されるといえるから、イ号物件の2の大気開放口Tは、構成要件G.の「大気開放ポート」に対応することになる。
以上から、イ号物件の2は、構成要件G.を充足する。

ウ.構成要件I.の充足性
上記第3.3.(2)i.に示すように、イ号物件の2は、流路ブロック31に設けられ、フィルタケース100の真空ポートV及び真空供給弁24の第2ポートK2を真空供給ポートVSに連通させる状態と前記フィルタケース100の真空ポートV及び真空供給弁24の第2ポートK2を大気開放口Tに連通させる状態とに作動する真空供給弁24を有しており、真空供給ポートVSが構成要件I.の「真空供給ポート」に対応し、また、上記イ.に示すように、一つの流路ブロックとして認識し得る流路ブロック31、流量調整ニードル弁102及びフィルタケース100の大気開放口Tが「大気開放ポート」に対応し、真空ポートVが「真空ポート」に対応する。
以上から、イ号物件の2は、構成要件I.を充足する。

エ.構成要件J.の充足性
上記イ.に示すとおり、イ号物件の2の真空ユニットは、甲第2号証の1の第2ページの中段左側のグラフにおいて、「ZB(大気開放口あり)」と示された線図に示す特徴を有しており、当該線図の表す技術的な意味は、上記第2.2.(4)に示したとおり、大気開放ポートを着脱路に大気を供給するために利用するとともに正圧供給ポートからの正圧空気の一部を排出するために使用することにより、流入正圧と流入大気とが合流して吸着具に流れる作用によって、迅速に着脱路の圧力を高め、また、着脱路が大気圧以上になると、正圧空気の一部は大気開放ポートから外部に排気される結果、真空破壊の圧力が高くなりすぎないように抑制することである。
そして、そのような技術的な意味を考慮すると、イ号物件の2においても、正圧源からの正圧空気を着脱路に連通させてワークの吸着を停止する際に、真空供給弁24の第2ポートK2を大気開放口Tに連通させ、真空破壊弁25の第1ポートJ1を出力ポートAに連通させることにより、大気開放口Tを正圧供給ポートPと着脱路に連通させているということができ、構成要件J.の「正圧源からの正圧空気を着脱路に連通させてワークの吸着を停止する際に、真空供給制御弁の真空ポートを大気開放ポートに連通させ、真空破壊制御弁の正圧供給ポートを出力ポートに連通させること」に対応する。
また、イ号物件の2の出力ポートAと真空ポートVとは連通しているし、上記ウ.に示すように、真空供給弁24は真空ポートVを大気開放口Tに連通させている。
そして、真空供給弁24を介して大気開放口Tに連通する流路118と、真空ポートVに連通する流路122とは、上記第3.2.(5)に示すように、フィルタケース100内に形成された連通箇所126を介して連通しているところ、上記イ.に示すように、流路ブロック31、流量調整ニードル弁102及びフィルタケース100を一つの流路ブロックとして認識し得るから、当該連通箇所126は、流路ブロックに形成されていると認識できる。
そうすると、イ号物件の2は、出力ポートAと真空ポートVとを連通させて、流路ブロックに形成された流路を介して大気開放口Tを正圧供給ポートPと着脱路とに連通させているということができ、構成要件J.の「出力ポートと真空ポートとを連通させて流路ブロックに形成された流路を介して大気開放ポートを正圧供給ポートと着脱路とに連通させること」に対応する。
以上から、イ号物件の2は、構成要件J.を充足する。

オ.被請求人の主張について
(ア)イ号物件の大気開放ポートに関する主張について
被請求人は、上記第4.2.(2)ア.(ア)において、JISの定義によれば「ポート」とは、「配管を接続するための機器流路の開口部分」であることを前提として、流路と流路とを繋ぐ際に流体が洩れるものは、ポートとは呼べないのであり、イ号物件は、真空供給弁24のポートK3と流量調整ニードル弁102の流路K3Aとの間にシールがなく、その間を流れる流体に漏れが生じるから、イ号物件の流路ブロックは大気開放ポートTを有していない旨、主張している。
しかし、本件特許発明3には、大気開放ポートに配管を接続することの特定がないから、本件特許発明3における「ポート」を、「配管を接続するための機器流路の開口部分」と限定して解釈するべき理由がない。
そうすると、被請求人の主張は前提を欠くことになるから、採用できない。

(イ)イ号物件の出力ポートに関する主張について
被請求人は、上記第4.2.(2)ア.(イ)において、イ号物件の出力ポートAは、流量調整ニードル弁102と流路ブロック31とで形成されている旨を主張している。
被請求人が主張するとおり、イ号物件の2の出力ポートAは、流量調整ニードル弁102と流路ブロック31とで形成されているが、上記イ.に示すように、本件特許発明3は、流路ブロックに、流量調整ニードル弁やフィルタを付加することを排除する特定がなく、流路ブロック31、流量調整ニードル弁102及びフィルタケース100を一つの流路ブロックと認識できるから、イ号物件の2の流路ブロックには、真空ポート、出力ポート及び大気開放ポートが設けられることになり、被請求人の主張は、上記イ.ないしエ.の判断を妨げるものではない。

(ウ)イ号物件の真空破壊弁に関する主張について
被請求人は、上記第4.2.(2)ア.(ウ)において、イ号物件の真空破壊弁25に正圧供給ポートPと出力ポートAとがあり、流路ブロックについても正圧供給ポートPと出力ポートAとがあるとするならば、イ号物件の特定が不明確となるから、イ号物件の真空破壊弁25は、正圧供給ポートPと出力ポートAとを有していない旨、主張している。
しかし、上記エ.で説示するように、イ号物件の2の真空破壊弁25の第1ポートJ1が、構成要件J.の「真空破壊制御弁の正圧供給ポート」に対応し、イ号物件の2の流路ブロック31の正圧供給ポートPが、構成要件G.ないしH.及びJ.の「正圧供給ポート」に対応するから、イ号物件の2の特定が不明確となるわけではない。
また、真空破壊弁25が出力ポートAを有していない旨の主張については、そのように解したとしても、上記イ.ないしエ.の判断を妨げるものではない。
以上から、イ号物件の真空破壊弁に関する主張は、採用できない。

(エ)イ号物件の真空供給弁に関する主張について
被請求人は、上記第4.2.(2)ア.(エ)において、イ号物件の真空供給弁24に真空供給ポートVSと真空ポートVとがあり、また、流路ブロック31にも真空供給ポートVSがあり、フィルタケース100にも真空ポートVがあるとするならば、イ号物件の特定が不明確となるから、イ号物件の真空供給弁24は、真空供給ポートVSと真空ポートVとを有していない旨、主張している。
しかし、上記エ.で説示するように、イ号物件の2の真空供給弁24の第2ポートK2が、構成要件J.の「真空供給制御弁の真空ポート」に対応し、上記イ.で説示するように、一つの流路ブロックとして認識し得る流路ブロック31、流量調整ニードル弁102及びフィルタケース100の真空ポートVが、構成要件G.ないしH.及びJ.の「真空ポート」に対応するから、イ号物件の2の特定が不明確となるわけではない。
また、真空供給弁24が真空供給ポートVSを有していない旨の主張については、そのように解したとしても、上記イ.ないしエ.の判断を妨げるものではない。
以上から、イ号物件の真空供給弁に関する主張は、採用できない。

(オ)イ号物件の真空破壊に関する主張について
被請求人は、上記第4.2.(2)ア.(オ)において、イ号物件の真空破壊に関して、正圧源17からの正圧空気を吸着具10の着脱路に連通させてワークWの吸着を停止する際には、真空供給弁24によってフィルタケース100の真空ポートVを真空供給弁24の第3ポートK3に連通させ、真空破壊弁25によって流路ブロック31の正圧供給ポートPを出力ポートAに連通させることにより、真空供給弁24の第3ポートK3を流路ブロック31の正圧供給ポートPとフィルタケース100の真空ポートVの着脱路に連通させるようにしているものである旨、主張しているが、当該主張は、そのように解したとしても、上記イ.ないしエ.の判断を妨げるものではない。

(カ)構成要件G.の充足性に関する主張について
被請求人は、上記第4.2.(2)イ.(ア)において、イ号物件の流路ブロック31内には、真空ポートV、出力ポートA及び大気開放ポートTのいずれも設けられていないから、構成要件G.を充足しない旨主張している。
しかし、上記イ.に示すように、本件特許発明3は、流路ブロックに、流量調整ニードル弁やフィルタを付加することを排除する特定がなく、イ号物件の2の流路ブロック31、流量調整ニードル弁102及びフィルタケース100を一つの流路ブロックと認識できるから、当該流路ブロックには、真空ポートV、出力ポートA及び大気開放ポートTが設けられることになり、被請求人の主張は採用できない。
また、被請求人は、真空供給弁24のポートK2が真空ポートVであるとする請求人の主張は失当である旨、主張しているが、上記エ.では、真空供給弁24の第2ポートK2が、構成要件J.の「真空供給制御弁の真空ポート」に対応するとの判断はしたものの、上記イ.ないしエ.において、真空供給弁24のポートK2が真空ポートVに対応すると判断したわけではない。
したがって、当該主張は、上記のイ.ないしエ.の判断を妨げることにはならない。

(キ)構成要件I.の充足性に関する主張について
被請求人は、上記第4.2.(2)イ.(イ)において、イ号物件は、大気開放ポートを流路ブロックに設けていないから、構成要件I.を充足しない旨主張しているが、上記(カ)と同様の理由により、当該主張は採用できない。

(ク)構成要件J.の充足性に関する主張について
被請求人は、上記第4.2.(2)イ.(ウ)において、イ号物件は、大気開放ポートを流路ブロックに設けていないから、構成要件J.を充足しないことや、イ号物件は、真空供給弁24の第3ポートK3と真空ポートVとを連通する流路118と、流路調整ニードル弁102と真空ポートVとを連通する流路122とは、流路ブロック31内ではなく、フィルタケース100内で連通しているから、構成要件J.を充足しない旨主張しているが、上記(カ)と同様の理由により、当該主張は採用できない。
なお、被請求人は、構成要件C.の充足性に関連して、上記第4.1.(2)イ.(ウ)において、イ号物件は、フィルタケース100を設けることにより、構造的特徴及び作用効果が得られ、当該効果等の利点から、流路ブロック31とフィルタケース100とを別個に構成しているので、技術的観点からすれば、イ号物件の流路ブロック31とフィルタケース100とを1つの流路ブロックとしてみなすことはできない旨主張している。
当該主張は、構成要件J.の充足性に関する主張ともいえるので検討すると、上記イ.に示すように、本件特許発明3は、流路ブロックに流量調整ニードル弁やフィルタを付加することを排除する特定がないし、そのような流量調整ニードル弁やフィルタを付加したことにより、本件特許発明3の作用効果の一部が阻害されているわけではないうえに、本件特許発明3の目的が達成されないことになるわけでもないから、イ号物件の2において、フィルタを付加したことによる効果があるとしても、本件特許発明3の構成要件を充足しない理由にはならない。
また、イ号物件の2のフィルタケース100は、流路ブロック31と一体として流通及び使用されるものであり、取り外して個別に使用することが想定されていない関係にあるといえるから、一つの「かたまり」状態の部材として認識できることは、上記イ.に示したとおりである。
したがって、被請求人の主張は採用できない。

カ.本件特許発明3とイ号物件の2との対比及び判断についてのむすび
以上のとおり、イ号物件の2は、本件特許発明3の構成要件F.ないしJ.を全て充足するから、イ号物件の2は、本件特許発明3の技術的範囲に属する。


第6.むすび
したがって、イ号物件の1は、本件特許発明1の技術的範囲に属さず、イ号物件の2は、本件特許発明3の技術的範囲に属する。

よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2011-12-28 
出願番号 特願2000-269677(P2000-269677)
審決分類 P 1 2・ 1- YA (B25J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 一浩松浦 陽  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 長屋 陽二郎
刈間 宏信
登録日 2006-10-13 
登録番号 特許第3866025号(P3866025)
発明の名称 吸着搬送装置およびそれに用いる流路切換ユニット  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 小塚 善高  
代理人 筒井 大和  
代理人 仲宗根 康晴  
代理人 筒井 章子  
代理人 大内 秀治  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 山野 明  
代理人 坂井 志郎  
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