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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する E05B
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する E05B
管理番号 1250250
審判番号 訂正2011-390118  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2011-10-27 
確定日 2012-01-06 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4008302号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4008302号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件の手続の経緯は以下のとおりである。

平成14年 8月 5日 本件出願(特願2002-226833号)
(優先権主張番号:特願2001-316885号,
優先日:平成13年10月15日)
平成19年 9月 7日 本件特許の設定登録(請求項1?3)
(特許第4008302号)
平成22年 1月20日 無効審判請求
(無効2010-800013号)
平成22年11月 8日 審決(請求項1?3を無効とする。)
平成22年12月17日 被請求人による知的財産高等裁判所出訴
(平成22年(行ケ)第10391号)
平成23年 1月 8日 訂正審判請求
(訂正2011-390004号:後日取下げ)
平成23年 2月 7日 差戻し決定(審決取消)
平成23年 3月 4日 被請求人による訂正請求書提出
平成23年 8月30日 審決(請求項1?3を無効とする。
訂正請求は全てにおいて認められない。)
平成23年10月 6日 被請求人による知的財産高等裁判所出訴
(平成23年(行ケ)第10322号)
平成23年10月27日 本件訂正審判請求


第2 請求の趣旨
本件審判の請求の趣旨は,本件特許に係る明細書(以下,「特許明細書」という。)を,審判請求書に添付した訂正明細書のとおり,すなわち,以下の各訂正事項のとおり訂正すること(以下,「本件訂正」という。)を求めるものである。

[1]請求項1に関して
訂正事項1:「鍵孔」を,
「前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔」と訂正する。

訂正事項2:「形成し,剛性を高めるため環状に成形したロータリーディスクタンブラー」を,
「形成した環状ロータリーディスクタンブラー」と訂正する。

訂正事項3:「合鍵のブレードの平面部又は端縁部と干渉する係合突起」を,
「リバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起」と訂正する。

訂正事項4:「係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき」を,
「突出量が一定である前記係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードの平面部に形成された対応する有底で複数種類の大きさと深さを有する摺り鉢形の窪みと係合したとき」と訂正する。

訂正事項5:「各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし」を,
「該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし」と訂正する。

訂正事項1’?5’:課題を解決する手段(【0017】)において,請求項1の上記訂正事項1?5と同様に訂正。

[2]請求項2に関して
訂正事項6:「鍵孔」を,
「前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔」と訂正する。

訂正事項7:「形成し,剛性を高めるため環状に成形したロータリーディスクタンブラー」を,
「形成した環状ロータリーディスクタンブラー」と訂正する。

訂正事項8:「合鍵のブレードの平面部又は端縁部と干渉する係合突起」を,
「リバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起」と訂正する。

訂正事項9:「係合突起の先端と整合するブレードの部位に,有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成し」を,
「突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し」と訂正する。

訂正事項10:「係合突起と係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし」を,
「前記係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし」と訂正する。

訂正事項6’?10’:課題を解決する手段(【0018】)において,請求項2の上記訂正事項6?10と同様に訂正。


第3 当審の判断
本件審判の請求が,特許法第126条第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とし,同条第3項から第5項までの規定に適合するか否かについて,以下に検討する。

1 特許法第126条第1項ただし書各号(訂正の目的)について
[1]請求項1に関して
訂正事項1は,請求項1に係る発明を特定するための事項である鍵孔について,「内筒の中心軸線に関して点対称に形成された」ものである点を限定したものであり,特許請求の範囲の減縮に該当する。

訂正事項2は,請求項1に係る発明を特定するための事項であるロータリーディスクタンブラーについて,「剛性を高めるため」との記載を削除し,「環状に成形した」との記載を「環状」と記載したものである。「剛性を高めるため」との記載は,「環状」であることによる自明な作用であって構成としては明りょうとはいえず,「環状に成形した」との記載は「環状」であることを「剛性を高めるため」との作用と結びつけるために「成形した」との表現を用いていたものと認められる。そうすると,訂正事項2は明りょうとはいえない「剛性を高めるため」との記載を削除したものであり,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項3は,請求項1に係る発明を特定するための事項である係合突起が干渉する部位について,「平面部又は端縁部」であったものから,その択一的構成のうちの「端縁部」との構成を削除し,さらに,干渉する合鍵を「リバーシブルである」と限定したものであるので,特許請求の範囲の減縮に該当する。

訂正事項4は,請求項1に係る発明を特定するための事項である係合突起について,「突出量が一定」とし,係合する窪みについては「ブレードの平面部に形成された対応する有底で複数種類の大きさと深さを有する摺り鉢型」とすることにより,係合突起及び窪みの性状を限定したものであり,特許請求の範囲の減縮に該当する。

訂正事項5は,請求項1に係る発明を特定するための事項である,解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するのは,「タンブラー群が摺り鉢型の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより」である点を限定したものであり,特許請求の範囲の減縮に該当する。

訂正事項1’?5’は課題を解決する手段(【0017】)において請求項1に対応させたものであり,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

[2]請求項2に関して
訂正事項6は,請求項2に係る発明を特定するための事項である鍵孔について,「内筒の中心軸線に関して点対称に形成された」ものである点を特定したものであり,鍵の形状を限定しているので特許請求の範囲の減縮に該当する。

訂正事項7は,請求項2に係る発明を特定するための事項であるロータリーディスクタンブラーについて,「剛性を高めるため」との記載を削除し,「環状に成形した」との記載を「環状」と記載したものである。「剛性を高めるため」との記載は,「環状」であることによる自明な作用であって構成としては明りょうとはいえず,「環状に成形した」との記載は「環状」であることを「剛性を高めるため」との作用と結びつけるために「成型した」との表現を用いていたものと認められる。そうすると,訂正事項7は明りょうとはいえない「剛性を高めるため」との記載を削除したものであり,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項8は,請求項2に係る発明を特定するための事項である係合突起が干渉する部位について,「平面部又は端縁部」であったものから,その択一的構成のうちの「端縁部」との構成を削除し,さらに,干渉する合鍵を「リバーシブルである合鍵」と限定したものであので,特許請求の範囲の減縮に該当する。

訂正事項9は,請求項2に係る発明を特定するための事項である鍵のブレードに形成した窪みについて,「所定の深さ」であったものを,「複数種類の大きさと深さ」であって「平面部」に形成したと限定している。
また,係合突起の先端の突出量を変えてロータリーディスクタンブラーの揺動量を変える場合は窪みが深くなってもブレードの平面部における窪みの位置は変わらないが,ブレードと整合する係合突起の先端の突出量が一定であると,窪みが深くなるほどブレードの平面部の中心に近い位置に窪みが形成される。
そうすると,当該訂正事項では,ブレードと整合する「係合突起の先端」の「突出量が一定」であることを規定することにより,窪みが深くなるほどブレードの平面部の中心に近い位置に窪みが形成される鍵であることを限定しているので,特許請求の範囲の減縮に該当する。

訂正事項10は,請求項2に係る発明を特定するための事項である,解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するのは,「タンブラー群が摺り鉢型の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより」である点を特定したものであり,鍵の窪みの形状等が限定されるから特許請求の範囲の減縮に該当する。
また,「係合突起と係合したとき」の係合突起が「前記」のものであることを明りょうにしたので,明りょうでない記載の釈明も目的とするものである。

訂正事項6’?10’は,課題を解決する手段(【0018】)において請求項2に対応させたものであり,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

[3]まとめ
したがって,全ての訂正事項は特許請求の範囲の減縮か,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

2 特許法第126条第3,4項(新規事項,実質拡張又は変更)について
上記訂正事項1?10,1’?10’は,いずれも特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。
また,上記訂正事項1?10,1’?10’は,特許明細書又は図面の記載全体からみて,いずれも特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3 特許法第126条第第5項(独立特許要件)について
[1]訂正後の特許請求の範囲
訂正後の特許請求の範囲は,平成23年10月27日付け訂正明細書の請求項1?3に記載された,以下のとおりのものである(以下,それぞれを「訂正発明1」等という。)。
「【請求項1】
内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,
この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔4を貫通させた内筒と,
この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,
上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,
その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,
一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,
各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,
他方,これらのタンブラー群の突出量が一定である前記係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードの平面部に形成された対応する有底で複数種類の大きさと深さを有する摺り鉢形の窪みと係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,
以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠。

【請求項2】
内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,
この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,
この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,
上記仕切板の間の各スロットに,中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し,
その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,
一方,鍵挿通孔の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し,
各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,
他方,これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,
鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に,有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し,
この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,
以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。

【請求項3】
上記ロータリーディスクタンブラーを捩りコイルばねによって付勢するようにしたことを特徴とする請求項1記載のロータリーディスクタンブラー錠。」
なお,当審にて見やすいように改行を行った。

[2] 文献記載事項
本件特許(特許第4008302号)に関して,平成22年1月20日に請求された無効審判(無効2010-800013号)で示された文献である甲号各証からみて,特許法第29条の要件を満たしているか検討する。
当該甲号各証の記載事項は,以下のとおりである。

1.甲第1号証(特開平9-144398号公報)
甲第1号証には,「リバーシブルキー及びその製作方法」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,レバータンブラー錠用のリバーシブルキー及びその製作方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のレバータンブラー錠用のリバーシブルキー,すなわち,任意数のC字状のレバータンブラーに当接して各レバータンブラーを解錠位置に整合変位させるための選択された深さの刻みを,平板状のキー本体の両側辺に設けたリバーシブルキーとしては,図12に示されるようなものが知られている。
【0003】リバーシブルキーは,そのキー本体の平板面14,14の表裏を逆にしても鍵孔に挿入することができ,かつ錠を施解錠することができる利便さがある。
【0004】しかしながら,図12に示す従来のリバーシブルキーにおいては,両側辺で対をなす刻み20,20の谷の底部30,30が,キー本体の平板面14,14と直角をなしかつキー本体の中心軸線lを含む平面Pに関し互に平行をなすように形成され,また,キー本体の横断端面が前記平面Pに関し面対称をなすように形成してある。
【0005】その為,一つには,ならい鍵切り機等により複製が不正に行われ易いこと,他の一つには,レバータンブラー錠でC字状のレバータンブラーを表裏逆に入れても(レバータンブラーは,鍵違いを増やす為,それを表裏逆にしてC字状又は逆C字状として装着できるようにしてある),同じリバーシブルキーによって施解錠可能であるから鍵違い数の減少が余儀なくされることなど,未解決の問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明はレバータンブラー錠用として提供されるリバーシブルキーは,前記の問題を悉く解決しようとするものである。すなわち,キー本体の刻みの形状を新規なものに変えることによって複製をしにくくし,かつ鍵違い数の減少を排除することを目的とする。」
(1b)「【0011】
【発明の実施の形態】以下,図面に示す実施例に基いてこの発明について説明する。図1?図3において,符号1はつまみ11及び平板状のキー本体12から成るリバーシブルキー,13はキー本体12の長さ方向に沿ってその平板面14,14に設けた横断面を任意形状としたウォードである。…
【0012】この発明のリバーシブルキー1が差し込まれて用いられるレバータンブラー錠2は,図3?図6に示すように,内周面の母線に沿ってカム溝21を形成した外筒22と,その外筒22に回転自在に嵌合し,間隙を隔てて列設された複数の仕切板23を備えると共に,前後方向に鍵孔24を貫通させた内筒部25と,その内筒部25の母線に沿って延在し,内筒部25の半径方向に移動可能に装着されると共に,押しばね26により外方に向け付勢されたロッキングバー27とを有する。
【0013】そして,前記の仕切板23が形成する複数のスロット内に,それぞれの先端部分にロッキングバー27を選択的に受け入れる解錠切欠き28を形成したC字状のレバータンブラー29を支軸31で枢着し,各レバータンブラー29は,鍵孔24に差し込まれるキーの側辺部と干渉する方向にタンブラーばね32で付勢される。
【0014】レバータンブラー錠は,合鍵が鍵孔24に挿入されたとき,これらのタンブラー群29のそれぞれが鍵孔24に挿通された合鍵の対応する刻みと係合し,各タンブラー29の解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにしてある。
【0015】そしてその状態で合鍵を回すと,カム溝21とロッキングバー27との間に生じる楔作用によりロッキングバー27が内筒半径方向に移動するので,バックアップピン33を含み,前方のキーガイド34,仕切板23,周囲を囲むリテーナ35及び後方の尾栓36等から成る内筒部25は全体として解錠方向又は施錠方向に回動できる。
【0016】なお,前記のC字状のタンブラー29はその開口部を任意に逆方向に向けて,換言すれば逆C字状をなすようにして装着され得ることは言うまでもない。
【0017】このようなレバータンブラー錠は実公昭59-19099号公報又は特公昭60-6432号公報等にも示され周知であるから,構造や作動についての更に詳しい説明は省略する。」
(1c)「【0018】この発明に係るリバーシブルキーに戻って説明を加えると,そのキーの特徴はキー本体12の両側辺に共に設けた刻みにある。
【0019】キー本体12の両側辺において中心軸線lと直角をなす平面上で対をなすようにして設けた刻みの谷の底部3,3aは,図2に明示するように,キー本体12の厚さ方向でともに傾斜させてあり,一対の谷の底部3,3aの傾斜は,図2に示す平面P,すなわち,キー本体12の平面板14,14と直角をなしかつキー本体12の中心軸線lを含む平面,に関し互に逆向きにしてある。
【0020】言い換えると,前記の対をなす谷の底部3,3aにおける傾斜は,キー本体12の平板面14,14と直角をなしかつキー本体12の中心軸線lを含む平面Pに関し面対称ではなく,キー本体12の横断端面において点対称をなすように形成されている。
【0021】更にまた,傾斜させた各谷の底部3(3a)は図示例では内に凸の曲面に形成してある。底部3(3a)の傾斜面をこのように曲面にすると,キーの不正な複製を一層難しくするが,その傾斜面は平面としてもよい。
【0022】キー本体12の各刻みにおける底部3(3a)の傾斜面は,それが対応するタンブラー29の正面形の違いに応じて形成されるが,例えば,図2に示すように,切削前のキー本体(図7に示す鍵材10の本体のこと)に対しある定点Aを通る直線がその定点Aを中心として角度を変えた時,キー本体(12)の一側辺の稜線とぶつかる直線AOを基準として,角度を変える直線がキー本体(12)をよぎる角度的深さd1,d2,・・・dnを対応するタンブラー29の種類に応じて選択し,その深さdnの刻みを切削する。図2で示す谷の底部3,3aの深さはd2である。
【0023】前記のような構成のこの発明のリバーシブルキーは,両側辺で対をなす1組の刻みにおいても鍵違いを生ずる。その鍵違いについて図5及び図6で説明する。
【0024】図5に示すレバータンブラー29はC字状をなすように装着されており,また,図6に示すレバータンブラー29は同じ列で正面形が同じものを表裏を逆にして逆C字状をなすようにして装着してある。
【0025】図5のC字状のタンブラー29は,本発明のキーにおける長さ方向の所定位置の刻みで押されて解錠切欠き28が解錠位置に至っているが,図6の逆C字状のタンブラー29は同じキーを用いても傾斜している刻みの底部3aの浅い部分が衝接することになる。
【0026】その為,図12の従来のリバーシブルキーとは異なり,解錠切欠き28は解錠位置を占めることにはならず,内筒部25は外筒22に対し回動不能である。このことは本発明のキーがリバーシブルであるに関わらず,鍵違い数の減少を排除していることを示している。」
(1d)「【0037】
【発明の効果】以上に説明したこの発明のリバーシブルキーによれば,両側辺の刻みにおける対をなす谷の底部を互に逆向き傾斜面に形成してあるから,不正な複製を困難にするほか,リバーシブルキーにしたことによる鍵違い数の減少を排除できる効果を奏する。
【0038】また,前記底部の斜面を曲面としたものは,不正な複製を更に難しいものとする。
【0039】更に,この発明では,傾斜させた谷の底部を内に凸の曲面とした特殊なリバーシブルキーを正確にして効率よく製作する方法を提案している。」
(1e)
「図1」


「図2」


「図3」


「図4」


「図5」


「図6」



(1f)そして,特に,上記(1b)の記載を参照して,上掲の図1?6をみると,
カム溝21が略V字形の横断面形状であること,複数の仕切板23が錠の中心軸線方向に間隙を介して積層されて内筒部25に設けられていること,鍵孔24が錠の中心軸線に沿って貫通されて内筒部25に設けられていることは,何れも明らかであり,
また,ロッキングバー27が,内筒部25の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,カム溝21と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されて装着されるものであって,合鍵と一体的に内筒部25を回動させたとき,内筒部25を外筒22に対し相対回動できるように,内筒部25の中心軸方向に移動するものであることは,明らかであり,
さらに,レバータンブラー29が,その中央部に鍵孔24を包囲し得る大きさの鍵挿通切欠が形成されて,この鍵挿通切欠の開口端縁に鍵孔24に挿入されたリバーシブルである合鍵のキー本体12の端縁部と干渉する係合縁部が設けられ,この係合縁部が合鍵に近接する方向にタンブラーばね32で付勢されると共に,常態では内筒部25を軸線方向に貫通するバックアップピン33に係止するものであって,その実体部の1ヵ所としての一端部が内筒部25を軸線方向に貫通する支軸31に揺動可能に軸支されると共に,その実体部としての先端部分が鍵挿通切欠を挟んで支軸31と対峙する円弧の一部をなす自由端部となっており,その外側端縁に解錠切欠き28が形成されるものであることは,明らかである。
そして,係合縁部の夫々が鍵孔24に挿通された合鍵のキー本体12に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みと係合したとき,当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合することも明らかである。
また,(1c)の【0021】,【0022】の記載,及び(1e)の図5からみて,係合縁部は凸状であって,開口端縁に一体的に突設されていると認められる。

上記(1a)?(1f)の記載及び当業者の技術常識によれば,甲第1号証には,次のような,レバータンブラー錠の発明(以下,「甲1発明1」という。),及び,レバータンブラー錠用の鍵の発明(以下,「甲1発明2」という。),が記載されているものと認められる。

<甲1発明1>
「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝21を形成した外筒22と,
この外筒22に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板23を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔24を貫通させた内筒部25と,
この内筒部25の母線に沿って延在し,内筒部25の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝21と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバー27とを有し,
上記仕切板23の間の各スロットに,中央部に点対称に形成された鍵孔24を包囲し得る大きさの鍵挿通切欠を形成したC字状のレバータンブラー29を挿設し,
その実体部の1ヵ所を,内筒部25を軸線方向に貫通する支軸31に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通切欠を挟んで上記支軸31と対峙するレバータンブラー29の実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠き28を形成し,
一方,鍵挿通切欠の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔24に挿入されたリバーシブルである合鍵のキー本体12の端縁部と干渉する係合縁部を一体的に突設し,
各レバータンブラー29をこの係合縁部が合鍵に近接する方向にタンブラーばね32で付勢すると共に,常態では内筒部25を軸線方向に貫通するバックアップピン33に係止し,
他方,これらのレバータンブラー29群の係合縁部の夫々が鍵孔24に挿通された合鍵のキー本体12に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みと係合したとき,当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにし,
以て,合鍵と一体的に内筒部25を回動させたとき,カム溝21とロッキングバー27との間に生じる楔作用によりロッキングバー27を内筒部25中心軸方向に移動させ,内筒部25を外筒22に対し相対回動できるようにした
レバータンブラー錠。」

<甲1発明2>
「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝21を形成した外筒22と,
この外筒22に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板23を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔24を貫通させた内筒部25と,
この内筒部25の母線に沿って延在し,内筒部25の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝21と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバー27とを有し,
上記仕切板23の間の各スロットに,中央部に点対称に形成された鍵孔24を包囲し得る大きさの鍵挿通切欠を形成したC字状のレバータンブラー29を挿設し,
その実体部の1ヵ所を,内筒部25を軸線方向に貫通する支軸31に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通切欠を挟んで上記支軸31と対峙するレバータンブラー29の実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠き28を形成し,
一方,鍵挿通切欠の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔24に挿入されたリバーシブルである合鍵のキー本体12の端縁部と干渉する係合縁部を設け,
各レバータンブラー29をこの係合縁部が合鍵に近接する方向にタンブラーばね32で付勢すると共に,常態では内筒部25を軸線方向に貫通するバックアップピン33に係止し,
他方,これらのレバータンブラー29群の係合縁部の夫々が鍵孔24に挿通された合鍵のキー本体12の端縁部に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みと係合したとき,当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにしたレバータンブラー錠用の合鍵であって,
鍵孔24に挿入されたときレバータンブラー29の係合縁部と整合するキー本体12の部位に,谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みを形成し,この刻みが係合縁部と係合したとき,各レバータンブラー29の解錠切欠き28がロッキングバー27の内側縁と整合するようにし,
以て,合鍵と一体的に内筒部25を回動させたとき,カム溝21とロッキングバー27との間に生じる楔作用によりロッキングバー27を内筒部25中心軸方向に移動させ,内筒部25を外筒22に対し相対回動できるようにした
レバータンブラー錠用の鍵。」

2.甲第2号証(実公平6-28616号公報)
甲第2号証には,「ディスクタンブラ型シリンダ錠」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(2a)「(作用)
このシリンダ錠装置では,内筒5の鍵孔7に鍵板9を挿入すると,鍵板9の操作凹部13又は操作凹部14(当審注:「操作凹部12又は操作凹部13」の誤り。以下同様。)或いは該操作凹部間の鍵板側面に各受動突起14が押されて,各ディスクタンブラ2が内筒5の受溝6に沿って上下摺動し,鍵板9が所定長さだけ充分に挿入された段階では,特定のディスクタンブラ2の受動突起14が特定の操作凹部13,14に係合する。
これによって各ディスクタンブラ2の錠止端部が錠本体1の溝部3,4から脱出するため,錠本体1に対する内筒5の錠止が解除され,内筒5は錠本体1内で回転可能となる。そこで,鍵板9を所定方向に回すと,止め金板20が解錠位置に回動し,固定枠体に対する取付パネル23の施錠が解除される。」(4欄18?31行)
(2b)「前記鍵孔7も該横方向中心線l_(1)に関して上下対称で該縦方向中心線l_(2)に関して左右対称に形成されている。」(5欄3?4行)
(2c)「(考案の効果)
以上のように本考案のディスクタンブラ型シリンダ錠装置では,内筒5の受溝6を上下対称及び左右対称に形成し,該受溝6の中央部に鍵孔7を貫通させ,バネ受孔8を該鍵孔7の上下両側部分の中央部に縦長に設け,ディスクタンブラ2の外周形状を左右対称に形成し,該ディスクタンブラ2の中央部に鍵板9の挿入用透孔10を設け,バネ受切欠11を該透孔10の錠止端部2a側の孔縁部中央に縦長に設け,錠止端部2aとは反対側の透孔10の孔縁部に受動突起14を左右一側にずらせて突設してあるため,受溝6に対するディスクタンブラ2の組込み方向が一方向に限定されず,複数枚のディスクタンブラ2の一部又は全部を上下半転して挿入したり,表裏半転して挿入したり,上下半転と表裏半転を共にして挿入することができ,これによって複数の受動突起14で形成されるキーウェイを様々に変更することができ,鍵違いを飛躍的に多くすることができる。」(6欄1?17行)
(2d)そして,第3,4,6?9図等をみると,ディスクタンブラ2の挿入用透孔10の孔縁部に受動突起14が一体に突設されていること,また,鍵板9の操作凹部12,13が有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みとして形成されていることは,明らかである。

3.甲第3号証(実公昭55-32998号公報)
甲第3号証には,「解錠装置」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(3a)「鍵1の側面に任意位置と任意深さに解錠穴2a,2b,2c……を設け,錠前3のシリンダー4に鍵孔5を穿設し,該鍵孔5に直交する方向を有する数個のタンブラー嵌入孔9を穿設し,該タンブラー嵌入孔9にタンブラー6を発条7を介して埋設し,該タンブラー6に前記鍵1の解錠穴に適合すべき位置と突出度を夫々有し,該解錠穴に挿入可能に先端を先細状に成形した解錠穴と同数の解錠突起8を錠前3の鍵孔5方向に突出するよう斜状に突設したことを特徴とする解錠装置。」(実用新案登録請求の範囲)
(3b)「本案は鍵に解錠穴と又之に適合すべき斜状の突起を錠前のタンブラーに設け,両者の複雑な適合によつてのみ解錠出来る様にした解錠装置に係るもので,使用者以外の者の解錠の困難な解錠装置を提供せんとするものである。」(1欄27?31行)
(3c)「…タンブラー6の中央部には下方より鍵貫通孔15を穿設する。該鍵貫通孔15に解錠突起8を,該孔15を一部遮る如く突設する…」(2欄33?35行)
(3d)そして,第2?4図をみると,タンブラー6の鍵貫通孔15の開口端縁に先端を先細状に成形した解錠突起8が一体に突設されていること,また,鍵1の解錠穴2a,2b,2cが有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みとして形成されていることは,明らかである。

4.甲第4号証(意匠登録第965697号公報)
甲第4号証には,正面図,背面図,B-B線断面図等をみると,ブレードに有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成した「電気機器用錠の鍵」が記載されている。

5.甲第5号証(意匠登録第1110356号公報)
甲第5号証には,【山切り加工状態を示す参考正面図】をみると,ブレードに有底で所定の深さの摺り鉢形の窪みを形成した「鍵材」が記載されている。

6.甲第6号証(実願昭57-149628号(実開昭59-51958号)のマイクロフィルム)
甲第6号証には,「シリンダ錠の鍵」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
「鍵(A)は断面大略矩形状の帯板状で,その鍵片部における側面(A1)に鍵部(10)を,ピンタンブラ(6)をレベル合致状態に作動し得るよう所定の深さ関係に凹設する,一方板面(A2)にはその両面に鍵部(11)(11)を,ピンタンブラ(7)(7)をレベル合致状態に作動し得るよう所定の深さ関係に凹設する。
各鍵部(10)(11)(11)は夫々大略倒円錐台形状に凹設形成する。」(明細書4頁3?10行)

7.甲第7号証(実願平4-89007号(実開平6-51443号)のCD-ROM)
甲第7号証には,「シリンダ錠」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
「【0012】

鍵孔11に挿入されるキーKは,先端に傾斜面14が形成され,挿入されたときに各タンブラピン13と相対するディンプル15a?15eが設けられる(図2及び図4参照)。
【0013】
ディンプル15a?15eは,小判形状のアウトラインをもった凹状に形成され,底面には楔状の斜面を有する楔状凹部16が設けられる(図5参照)。
楔状凹部16の向きは,それぞれキーの幅方向に対して設定した角度を有し,本実施例では,ディンプル15aの楔状凹部16は反時計方向に15度,ディンプル15bの楔状凹部16は時計方向に15度,ディンプル15cの楔状凹部16は反時計方向に30度,ディンプル15dの楔状凹部16は0度,ディンプル15eの楔状凹部16は時計方向に15度の角度を有する(図4参照)。」

8.甲第8号証(実公昭51-15730号公報)
甲第8号証には,「シリンダー錠」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(8a)「第1図,第2図及び第3図を説明すると,キー1の平面にタンブラーピン4,17に合致し,鍵違いを構成する挿入穴11とタンブラーピン4,17を挿入させない部分10とタンブラーピン4,17を途中までしか挿入させない様に穴11を皿もみして面取りした穴12と穴13がある。」(1欄28?33行)
(8b)「…又,キーの穴は図面に示すものは貫通穴になつているが凹穴にしてしもよく,又皿穴の様に面取りだけで円錐状になつていてもよい。」(4欄27?30行)

9.甲第9号証(特開2000-96889号公報)
甲第9号証には,「シリンダ錠と鍵との組合せ」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(9a)「【0021】図において,1は,錠の鍵2によって回動可能な錠シリンダ3を収容する錠本体を示す。特に,本発明の両方向に操作可能な実施例を示す図1を参照して,錠シリンダ3は,錠の開放組合せを決め且つ錠シリンダ3に回動不能に支持された中間円板5によって互いから分離された,一組のコードロック円板4を囲う。さらに,円板4,5を含む円板の組の各端に,錠の中で鍵が回動されるとき,鍵と共に連続的に回動する,所謂リフトゼロのロック円板6がある。ロック作用の観点からは,特に最前部ゼロロック円板が該円板の組の鍵挿入端で最初の円板である必要がないが,実際にはしばしばこれがあり得る。ロック円板4及び6は,鍵用の対抗面を含む,それぞれ,鍵開口4a及び6a並びに両回動方向に,それぞれ,周辺切欠き4b及び6bを有する。」
(9b)「【0026】図1の錠機構の基本作用によれば,該機構を開け又は解放すべきときは,錠の鍵2によってロック円板4及び6が回動される。特に,各ロック円板が問題のロック円板のために該鍵に作った組合せ面によって決る通りに回動し,周辺切欠き4b又は6bがそれぞれ錠シリンダ3のスロット8及びロックバー7の位置にあるようにする。それで,周辺切欠き4b及び6bで一様なチャンネルができ,その中へロックバー7が動け,それによって錠シリンダ3を錠本体1に対して回動できるように解放する。」
(9c)そして,図5a?g,図7,図8a?c,図9a,bをみると,コードロック円板4が,その中央部に鍵用の対抗面を含む鍵開口4aを有するとともに,その周囲にロックバー7が入る周辺切欠き4bを有するものであって,環状に成形されたものであることは,明らかである。

上記(9a)?(9c)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば,甲第9号証には,次の発明(以下,「甲9発明」という。)が記載されているものと認められる。
「錠シリンダ3に回動不能に支持された中間円板5の間に,中央部に鍵開口4aが形成されるとともに周囲にロックバー7が入る周辺切欠き4bが形成された環状のコードロック円板4を,回動自在に挿設した,シリンダ錠。」

10.甲第10号証(特開昭62-194374号公報)
甲第10号証には,「錠装置」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(10a)「…外筒と内筒との間にサイドバー,内筒中に前記サイドバーの動作を規制する複数のディスクを配備した錠装置において,前記各ディスクは,サイドバーと直交して往復動自在に配備され,それぞれ面内にはスリット状鍵孔および鍵孔の対角線上に位置したコーナ部に鍵の傾斜刻みに適合する高さおよび傾斜角の突部を形成すると共に,一側辺にはサイドバーの係合する凹部,他の側辺には,該凹部をサイドバー位置からずらせるバネを連繋して成るを特徴とする錠装置。
…ディスクは,金属板の打抜き成形体である特許請求の範囲第1項記載の錠装置。
…ディスクの凹部はサイドバーの端部断面形状に適合する形状に形成されている特許請求の範囲第1項記載の錠装置。」(特許請求の範囲)
(10b)「…ディスク4は,内筒1の装填部21に適合する幅および内筒直径より摺動分だけ短い長さの金属製平板に形成し,装填部21中ヘサイドバー3に直交してそれぞれ往復可能に配備され,面内には,鍵軸断面と一致するスリット状の鍵孔41および鍵孔41の対角線上に位置したコーナ部に,鍵を挿入したとき,対応する鍵の傾斜刻みに適合する高さおよび傾斜角の突部42を形成している。また各ディスク4のサイドバー3と対応する側辺には,突部42の高さに応じて鍵孔方向に位置をずらせてサイドバー3の適合する凹部43,該凹部の側方には多数のV状凹凸部45を形成している。更に,他の側辺には凹部44を形成して内筒2のバネ装填部23に係合したU状復帰バネ7の両バネ片71を係合し,各凹部43をサイドバー3の位置からずらせている。」(3頁左上欄14行?右上欄10行)
(10c)そして,第1,3,4図等をみると,鍵孔16は内筒2の中心軸線に関して点対称である。

11.甲第11号証(実願平5-42779号(実開平7-14041号)のCD-ROM)
甲第11号証には,「シリンダ錠」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(11a)「【0009】
ケース1に回動可能に嵌挿されるロータ5は,前端部に鍔部6が周設され後部に角軸部7が延設され,角軸部の角に雄ねじ8が螺設される(図1参照)。
鍔部6の外周面に,鍵孔9を有するキャップ10が嵌着され,ロータ5の前端部の開口11にピン12の両端部が固着され,ピン12に枢着されるシャッタ13が,ピン12に巻回されるスプリング14により,鍵孔9を閉鎖する方向に付勢される(図6参照)。
【0010】
ロータ5の内部に形成される収容室15は,前部の開口11に連通し,収容室15に設けられる隔壁16により4つの区画に区分される(図1参照)。
ロータ5の外周面に設けられるバー挿入孔18は,ロータ5の長手方向に平行な長溝18aと,長溝18aより収容室15に貫通する細長孔18bとにより構成される(図2参照)。
収容室15の内壁面には,バー挿入孔18の反対側に穿設された孔により,後述するディスクタンブラ23の突起26が係合する突起係合部19が形成される。

【0013】
収容室15の各区画にそれぞれ挿入されるディスクタンブラ23は,ほぼ中央部にキー挿入孔24が設けられ,外周面の一側(図2において右側)に,サイドバー20の後端部20bが係脱する係合溝25が設けられ,他側に突起26が形成される。
突起26は,収容室15の突起係合部19に係入するが,突起係合部19に対して滑り接触が可能である。
【0014】
ディスクタンブラ23の右側上面と収容室15の上壁面との間にスプリング27が挿入され,ディスクタンブラ23は,突起26を支点として時計方向に付勢され(図2参照),キー挿入孔24がキーに押されたときに,ディスクタンブラ23が反時計方向に回動して,係合溝25とバー挿入孔18が一致し,サイドバー20が係合溝25に係入するようになっている。
【0015】
キー挿入孔24は,突起26と係合溝25のほぼ中央に位置するので,突起26を支点としてディスクタンブラ23が回動するとき,係合溝25の移動量はキー挿入孔24の移動量の約2倍になる。
…」
(11b)「【0019】
正規のキーを鍵孔9に挿通すると,キーが各ディスクタンブラ23のキー挿入孔24の内面を押動し,各ディスクタンブラ23は突起26を支点として反時計方向に回動し,係合溝25がバー挿入用孔18に一致する(図3参照)。
次に,キーに解錠方向の回動力を加えると,ロータ5と共に回動しようとするサイドバー20の先端部20aがケース1のバー挿入溝22から押し出され,後端部20bが係合溝25に挿入されるので,ロータ5が回動可能になり(図4参照),キーにより解錠操作することができる。」
(11c)図6及び【0009】より,鍵孔9は内筒に相当するロータ5の中心軸線に関して点対称であると認められる。

ディスクタンブラ23は,【0013】のほぼ中央部にキー挿入孔24が設けられているとの記載,および図2?5からみて環状である。そうすると,上記(11a),(11b)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば,甲第11号証には,次の発明(以下,「甲11発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ロータ5の内部に形成される収容室15が隔壁16により4つの区画に区分され,当該区分された区画内に,中央部にキー挿入孔24が形成されるとともに外周面の一側にサイドバー20の後端部20bが係脱する係合溝25が形成された環状のディスクタンブラ23を,収容室15の内壁面に形成された突起係合部19とディスクタンブラ23の外周面の他側に形成された突起26との係合部分を支点として回動自在に挿設した,環状ディスクタンブラ型のシリンダ錠。」

12.甲第12号証(特開昭62-189269号公報)
甲第12号証には,「回転ディスク型シリンダー錠装置」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(12a)「扉に固定される外筒1と,該外筒1に回転可能に収容される内筒2と,該内筒2に設けた溝状孔部3に収容され,外筒1の内壁面の溝部4に一部を没入することにより内筒2を錠止するロックバー5と,内筒2に収容され,鍵6の挿入時にその外周面の錠止受溝7がロックバー5の内側突部が没入可能な位置,すなわち,ロックバー5が外筒の前記溝部4から脱出可能な位置に来るまで回転する複数枚のディスクタンブラー8と,内筒2の前面の内筒カバー9と内筒2の後部の2箇所で固定され,該ディスクタンブラー8の中心部を貫く案内軸棒10とから成る回転ディスク型シリンダー錠装置。」(特許請求の範囲)
(12b)「(作用)
施錠状態においてディスクタンブラー8は,各ディスクタンブラー8のバネ入れ凹部11に収容されて一端が該凹部11の壁面12に当接し,他端がスペーサー13のバネ受突起14に当接したコイルバネ15の弾発作用を受けている。ディスクタンブラー8の該バネ15による回転は,ディスクタンブラー8の停止用突起16が内筒2に設けた回転切欠17の端面に衝接することによって規制され,内筒2はロックバー5の介在によって外筒lに対して回転不能に錠止されている。
装置正面の鍵挿入口24より鍵6を挿入すると
ディスクタンブラー8の鍵孔18の一端面が鍵6の先端部に形成されている斜面によって押されるので,各ディスクタンブラー8は前記バネ15の弾発作用に抗して回転する。鍵山形状に対応した角度だけ各ディスクタンブラー8がそれぞれ回転したとき,各ディスクタンブラー8の錠止受溝7はロックバー5の内側凸部19が没入可能なように一直線上に整列している。
ロックバー5は上記凸部19と内筒の溝状孔部3との間に挿入されたコイルバネ20の弾発作用によって,その一部を外筒lの溝部4に没入させている。ここで,鍵6を操作して内筒2を外筒lに対して回転させる力を加えると,ロックバー5が上記溝部4の斜面に押されて該溝部4から脱出して,内側凸部19が錠止受溝に没入する。これによって内筒2とディスクタンブラー8は一体回転可能となり,案内軸棒10を中心に回転する。」(2頁左上欄19行?左下欄7行)

ディスクタンブラー8は第3?5図,第13図からみて環状である。そうすると,上記(12a),(12b)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば,甲第12号証には,次の発明(以下,「甲12発明」という。)が記載されているものと認められる。
「内筒2のスペーサー13の間に,中央部に中心から偏らせて鍵孔18が形成されるとともに外周面にロックバー5の内側突部が没入する錠止受溝7が形成された環状のディスクタンブラー8を,案内軸棒10を中心として回動自在に挿設した,回転ディスク型シリンダー錠。」

13.甲第13号証(特開平6-346639号公報)
甲第13号証には,「シリンダ錠とキーの組合わせ」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(13a)「【0015】
【実施例】図中,1は,回転可能な内部シリンダ2をその内部に有するシリンダハウジングを示す。内部シリンダ2は,円板の堆積を包囲する。この堆積は,ロック機構の開口部の組合わせを決定する周辺ノッチ20とキー開口部7とを有し錠のキー12で回転可能な幾つかの標準的なロック用円板4と,キー開口部6を有する少くとも1つの持上げO-ロック用円板3とを含む。ロック用円板は,キー開口部8を有する中間円板5によって相互に分離される。また,ロック機構は,その施錠位置でシリンダハウジング1に対する内シリンダ2の回転を阻止する様にシリンダハウジング1の溝30に部分的に配置されて,内部シリンダのスロット9に部分的に配置されるロック用バー10を有している。ロック用円板は,所定の位置へ錠のキー12によって回転されてもよく,その位置では,周辺ノッチ20は,均等なチャンネルを錠の軸線方向において内部シリンダ2のスロット9の位置に形成する。ロック用バー10は,シリンダハウジング1の溝30からこのチャンネルへ進入し,これにより,シリンダハウジング1に対してキーと一緒に回転する様に内部シリンダ2を解放する。…」
(13b)「【0019】図2は,錠に含まれる標準的なロック用円板4を示す。ロック用円板4のキー開口部7は,2つの対称的に配置された段21を有し,段21は,キーにおいて切削されるべき組合わせ面27(図5参照)と協働する組合わせ面22と,戻し面23とを有し,戻し面23は,キーがロック機構のロックを解いた後に最初の位置に戻されるとき,案内要素14の作用の下で,上述の様にロック機構の施錠位置に対応するロック用円板4の最初の位置に戻る円板4の回転を生じさせる。また,キー開口部7は,周辺ノッチ20とキー開口部7との間の距離Aが製造技術および強さの点で充分である様に,即ち,距離Aが好ましくは少くとも1mmである様に,形成された彎曲面24を有している。」

ロック用円板4は図2および中央部に開口部7が形成されるとの記載からみて環状である。そうすると,上記(13a),(13b)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば,甲第13号証には,次の発明(以下,「甲13発明」という。)が記載されているものと認められる。
「内部シリンダ2に設けた中間円板5の間に,中央部にキー開口部7が形成されるとともに周囲にロック用バー10が入る周辺ノッチ20が形成された環状のロック用円板4を,回動自在に挿設した,シリンダ錠。」

14.甲第14号証(特開平9-41742号公報)
甲第14号証には,「シリンダ錠」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
(14a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,ピンタンブラー錠,ディスクタンブラー錠及びレバータンブラー錠(ロータリーディスクタンブラー錠)を含むシリンダー錠に係り,特にピッキングによる不正解錠を不可能にした新規なシリンダ錠に関する。」
(14b)「【0030】…レバータンブラー錠は,合鍵の鍵溝によりタンブラー3を動かして,その自由外端縁に形成された解錠切欠19を,内筒2の母線に沿って延在するロッキングバー21の内端縁に整合させ,内筒の回動時,外筒1の内周面の母線に沿って形成された断面V字形の溝に係合するロッキングバー21を楔作用により内筒の半径方向に変位させて,内筒を回動可能にするものであり,…」
(14c)そして,図6をみると,従来のタンブラー3が,ほぼ中央に鍵挿通孔を形成した環状のものであることは,明らかである。

15.甲第15号証(「工業大事典 15 ハ_(ケ)-フ_(タ)」)
甲第15号証には,「〔コイルばね〕helical spring」の項に,「コイルばねは細長い材料を円筒の表面にらせん状に巻いた形状をしており,最も用途の広い代表的なばねである。コイルばねは負荷の面から圧縮コイルばね,引張りコイルばねおよびねじりコイルばねの3種類に分類され,…」(85頁右欄)と記載されている。

16.甲第16号証(「商品大辞典」)
甲第16号証には,「コイルばね(coiled spring)」の項に,「広く機械部品として使用されているもので,形状は図8のように材料をつるまき状に巻いたもので,使用時の荷重作用によって圧縮,引張り,ねじりを冠して呼ばれる.…」(172頁左欄)と記載されている。

17.甲第17号証(「図解 機械用語辞典 第3版」)
甲第17号証には,「コイルばね coiled spring,helical spring」の項に,「鋼線をコイル形に巻いて作ったばね.丸棒または角棒を円筒形に巻いた機械部品として最も多く用いられているばね,圧縮ばね,引張ばね,ねじりばねがあり,…」(186頁)と記載されている。

18.甲第18号証(「広辞苑」第二版)
甲第18号証には,「コイルばね【-発条】(coiled spring)」の項に,「丸棒・角棒を円筒状に巻いて作ったばね。機械部品として最も多く使用。」(725頁上段)と記載されている。

19.甲第19号証(実願平3-104745号(実開平6-65631号)のCD-ROM)
甲第19号証には,「一方向クラッチ装置」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
「【請求項1】…一方向クラッチ装置において,前記押圧手段は,回転体の外周近傍にねじりコイルばね或いは板ばねを支持し,…」(実用新案登録請求の範囲)

20.甲第20号証(特開平6-248843号公報)
甲第20号証には,「蓋体の開閉機構」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
「【請求項4】前記位置保持手段(4)は,トーションバー,ねじりコイルばね,板ばねのうちのいずれか一つのばねである…蓋体の開閉機構。」(特許請求の範囲)

21.甲第21号証(特開2000-87610号公報)
甲第21号証には,「カップ錠」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
「【0031】そして,図11に示すように,2つで対をなすようにして装着した1組のタンブラー12,12間に,共通のタンブラーばね18としての開脚ばねが掛け渡してある(図11及び図12参照)。
【0032】このタンブラーばね18は,中間にコイル部を形成し,両端に上記ばね掛け突起17に巻装されるループを形成したばね部材で,左右で互いに逆向きに装着した各タンブラー12の一端12aが外筒2の胴部に向かうように付勢させてある。」

22.甲第22号証(実公昭59-19099号公報)
甲第22号証には,「レバ-タンブラーシリンダー錠」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。
「…全体の形状が鍵穴hを半ば包囲する略C字形で一端を回動自在に軸支され,かつ鍵穴hに近接する方向に付勢されたレバータンブラー1の複数を内筒部の軸線方向に沿つて列設するとともに,上記レバータンブラー1の自由端外縁に,正しい鍵が鍵穴hに挿入された時,内筒部の円周方向において相互に整合するロッキングバー係合溝14を形成し,…」(実用新案登録請求の範囲)

23.甲第23号証(「MIWA 総合カタログ 2008年版」)
甲第23号証には,「シリンダーの種類」の項に,「U9シリンダー(ロータリーシリンダー)」(当審注:図からC字状のタンブラーを用いたシリンダー錠であることが解る。)の「原理」の説明(63頁右欄)と,「PRシリンダー(集合住宅用)(2WAYロータリーシリンダー・リバーシブルキータイプ)」(当審注:図から環状のタンブラーを用いたシリンダー錠であることが解る。)の「原理」の説明(65頁上段)とが,記載されている。

[3]訂正発明1について
1.訂正発明1と甲1発明1との対比
訂正発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「内筒部25」が訂正発明1の「内筒」に相当し,以下同様に,「解錠切欠き28」が「解錠切欠」に相当し,「キー本体12」が「ブレード」に相当する。
また,甲1発明1の「鍵挿通切欠」と訂正発明1の「鍵挿通孔」とが「鍵挿通部」で共通し,甲1発明1の「C字状のレバータンブラー(29)」は回転するディスクタンブラーであるから,訂正発明1の「環状ロータリーディスクタンブラー」と「ロータリーディスクタンブラー」で共通する。
さらに,甲1発明1の「キー本体12の端縁部と干渉」し,「キー本体12に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻みと係合したとき,当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わ」る「係合縁部」と,訂正発明1の「ブレードの平面部と干渉」し,「ブレードの平面部に形成された対応する有底で複数種類の大きさと深さを有する摺り鉢形の窪みと係合したとき,該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わる」「係合突起」とは,
「ブレードと干渉」し,「ブレードに形成された対応する有底で複数種類の大きさと深さを有する窪みと係合したとき,タンブラー群が前記窪みの深さや位置に対応して揺動角度が変わる」「係合部」で共通する。

そうすると,両者は,
「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,
この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,
この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,
上記仕切板の間の各スロットに,中央部に点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通部を形成したロータリーディスクタンブラーを挿設し,
その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通部を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,
一方,鍵挿通部の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードと干渉する係合部を一体的に突設し,
各ロータリーディスクタンブラーをこの係合部が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,
他方,これらのタンブラー群の係合部の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,タンブラー群が前記窪みの深さや位置に対応して揺動角度が変わって解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,
以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたとき,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにした
ロータリーディスクタンブラー錠。」
の点で一致し,次の点で相違する。

<相違点1>
点対称に形成された鍵孔について
訂正発明1では「内筒の中心軸線に関して」点対称に形成されているのに対し,甲1発明1では「内筒の中心軸線に関して」点対称に形成されているか不明である点。

<相違点2>
鍵挿通部及びロータリーディスクタンブラーの構成について
訂正発明1では,鍵挿通部が「鍵挿通孔」であって,この「鍵挿通孔」を中央部に形成したロータリーディスクタンブラーが「環状ロータリーディスクタンブラー」であるのに対して,
甲1発明1では,鍵挿通部が「鍵挿通切欠」であって,この「鍵挿通切欠」を中央部に形成したディスクタンブラーが「C字状のレバータンブラー」である点。

<相違点3>
ディスクタンブラーの解錠切欠とロッキングバーの内側縁とを整合させるための「係合部」と「窪み」について
訂正発明1では,先端の移動軌跡が合鍵のブレードの「平面部」と干渉する「係合突起」を有し,「ロータリーディスクタンブラー」の開口端縁に一体に「突出量が一定」に突設した「係合突起」と,合鍵のブレードの「平面部」に形成された「有底で複数種類の大きさと深さを有する摺り鉢形の窪み」との係合により,「タンブラー群が摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより」上記整合を行うものであるのに対して,
甲1発明1では,「C字状のレバータンブラー」の開口端縁に一体に突設した「係合縁部」と,合鍵のブレードの端縁部と干渉して,当該端縁部に形成された対応する「本体12に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻み」との係合により,「当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって」上記整合を行うものである点。

2.相違点の検討
<相違点1について>
鍵孔を「内筒の中心軸線に関して」点対称に形成することは,甲第2号証の(2b)及び第13図,甲第10号証の(10c),甲第11号証の(11c)等からみても明らかなように当業者に周知な技術事項であって,甲1発明1において鍵孔を内筒の中心軸線に関して鍵孔を点対称に形成することは当業者が容易になし得たことである。

<相違点2について>
相違点2について検討すると,甲第9,11?13号証に示されるように,中央部に鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔を形成してなる環状のロータリーディスクタンブラーを回動自在に挿設したロータリー型のディスクタンブラー錠は,当業者に周知な技術事項にすぎない。
そして,甲1発明1のディスクタンブラー錠においても,ディスクタンブラーとして,高い剛性が必要であることは明らかであるから,上記甲第9,11?13号証に開示された周知の環状に成形してなるロータリーディスクタンブラーを採用して,上記相違点1に係る訂正発明1の構成を想到することは,当業者が容易になし得たことである。

<相違点3について>
甲第2号証?甲第23号証には,訂正発明1の相違点3に係る構成が記載されていない。
そして,訂正発明1における相違点3に係る構成により,錠の係合突起の先端と合鍵のブレード平面部に形成された対応する窪みとの関係は,ディスクタンブラーが回転することから,係合突起の先端が深い窪みに入るほどブレードの平面幅方向中心にずれるものである。すなわち,鍵の窪みの深さに応じてその中心位置がブレードの幅方向において微妙に変化することとなる。さらに,鍵のブレードの平面部で窪みに接する係合突起の先端はブレードの端縁部で接するよりも支軸との距離が小さくなるので,当該先端の動きが小さくても解錠切欠の動きが大きくなる。そうすると,合鍵の窪みの深さや位置のわずかなずれにより解錠切欠がずれて解錠できなくなるために合鍵の複製が困難になり,錠前としての安全性が向上する効果が認められる。
よって,訂正発明1の相違点3に係る構成は,甲1発明1及び甲第2号証?甲第23号証に記載された発明から容易に想到できず,その作用効果も,これらの発明から当業者が予測しうるものではない。

したがって,訂正発明1は甲第1号証?甲第23号証に記載された発明から容易に発明をすることができたものではない。

[4]訂正発明2について
1.訂正発明2と甲1発明2との対比
訂正発明2と甲1発明2とを対比する。
訂正発明2と甲1発明2との相当ないし共通関係は,訂正発明1及び甲1発明1が「錠」に係るものであり,訂正発明2及び甲1発明2が「錠用の鍵」に係るものであるものの,上記[3]1.で説示した訂正発明1と甲1発明1との相当ないし共通関係がほぼそのまま成り立つ。

そうすると,両者は,
「内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と,
この外筒に回転自在に嵌合し,間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に,中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と,
この内筒の母線に沿って延在し,内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に,上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し,
上記仕切板の間の各スロットに,中央部に点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通部を形成したロータリーディスクタンブラーを挿設し,
その実体部の1ヵ所を,内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に,鍵挿通部を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり,円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し,
一方,鍵挿通部の開口端縁に,先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードと干渉する係合部を一体的に突設し,
各ロータリーディスクタンブラーをこの係合部が合鍵に近接する方向に付勢すると共に,常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し,
他方,これらのタンブラー群の係合部の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって,
鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの係合部と整合するブレードに対応する窪みを形成し,この窪みが対応する係合部と係合したとき,各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし,
以て,合鍵と一体的に内筒を回動させたとき,カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ,内筒を外筒に対し相対回動できるようにした
ロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。」
の点で一致し,次の点で相違,又は一応相違する。

<相違点4>
訂正発明2では「内筒の中心軸線に関して」点対称に形成されている鍵孔を有する錠用の鍵であるのに対し,甲1発明2ではそのような鍵孔を有しない錠用の鍵である点。

<相違点5>
訂正発明2では,鍵挿通部が「鍵挿通孔」であって,この「鍵挿通孔」を中央部に形成したロータリーディスクタンブラーが「環状ロータリーディスクタンブラー」である錠用の鍵であるのに対して,
甲1発明2では,鍵挿通部が「鍵挿通切欠」であって,この「鍵挿通切欠」を中央部に形成したディスクタンブラーが「C字状のレバータンブラー」である錠用の鍵である点。

<相違点6>
ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠とロッキングバーの内側縁とを整合させるための構成について
訂正発明2では,「ロータリーディスクタンブラー」の開口端縁に一体に「突出量が一定」に突設した「係合突起」の,その先端と,合鍵のブレード「平面部」に形成された「有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪み」との係合により,「タンブラー群が摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより」上記整合を行うものであるのに対して,
甲1発明2では,「C字状のレバータンブラー」の開口端縁に一体に突設した「係合縁部」と,合鍵のブレードの端縁部と干渉して,当該端縁部に形成された対応する「キー本体12の端縁部に谷の底部3,3aを内に凸の曲面の傾斜面として形成された刻み」との係合により,「当該刻みに対応して各レバータンブラー29の揺動角度が変わって」上記整合を行うものである点。

2.相違点の検討
<相違点4,5について>
相違点4,5については,訂正発明2は「鍵」であり,錠の構成である鍵孔の位置やディスクタンブラーが環状かC字状かによって鍵の構成に差異が生じるものではなく,実質的に相違点ではない。

<相違点6について>
当該相違点は訂正発明1における相違点3と実質的に同じであり,[3]2.<相違点3について>で検討した事項は,鍵である訂正発明2においても成り立つ。すなわち,訂正発明2の鍵は,当該鍵が用いられる錠の構成によって,その窪みの深さと位置が特定の関係を有して合鍵の複製が困難になるものである。
よって,訂正発明2の相違点6に係る構成は,甲1発明2及び甲第2号証?甲第23号証に記載された発明から容易に想到できず,その作用効果も,これらの発明から当業者が予測しうるものではない。

したがって,訂正発明2は甲第1号証?甲第23号証に記載された発明から容易に発明をすることができたものではない。

[5]訂正発明3について
訂正発明3と甲1発明1との対比をすると,訂正発明3は訂正発明1を引用するものであり,訂正発明1に「ロータリーディスクタンブラーを捩りコイルばねによって付勢するようにした」との限定事項を付加したものである。

そうすると,訂正発明1は甲第1号証?甲第23号証に記載された発明から容易に発明をすることができたものではないから,訂正発明1の構成を含む訂正発明3も甲第1号証?甲第23号証に記載された発明から容易に発明をすることができたものではない。

[6]まとめ
以上のように,訂正発明1?3は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。


第4 むすび
したがって,本件訂正は,特許請求の範囲の減縮,明りょうでない記載の釈明を目的とし,いずれも,願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
以上のとおりであるから,本件審判の請求は,特許法第126条第1項ただし書き各号に掲げる事項を目的とし,同条第3項ないし5項の規定に適合する。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ロータリーディスクタンブラー錠及び鍵
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と、この外筒に回転自在に嵌合し、間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に、中心軸線に沿って鍵孔4を貫通させた内筒と、この内筒の母線に沿って延在し、内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し、上記仕切板の間の各スロットに、中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し、その実体部の1ヵ所を、内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に、鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し、一方、鍵挿通孔の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し、各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に、常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し、他方、これらのタンブラー群の突出量が一定である前記係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードの平面部に形成された対応する有底で複数種類の大きさと深さを有する摺り鉢形の窪みと係合したとき、該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき、カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠。
【請求項2】
内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と、この外筒に回転自在に嵌合し、間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に、中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と、この内筒の母線に沿って延在し、内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し、上記仕切板の間の各スロットに、中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し、その実体部の1ヵ所を、内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に、鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し、一方、鍵挿通孔の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し、各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に、常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し、他方、これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって、鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に、有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し、この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき、該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき、カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とするロータリーディスクタンブラー錠用の鍵。
【請求項3】
上記ロータリーディスクタンブラーを捩りコイルばねによって付勢するようにしたことを特徴とする請求項1記載のロータリーディスクタンブラー錠。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、新規なロータリーディスクタンブラー錠に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリンダ錠には種々の型式のものがあるが、本出願人の主力製品であり、比較的安全性が高いと認められているシリンダ錠に例えばレバータンブラー錠がある。
【0003】
このレバータンブラー錠は、図1及び図2に示すように、内周面の母線に沿ってカム溝1を形成した外筒2と、この外筒に回転自在に嵌合し、間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板3、3を設けると共に、中心軸線に沿って鍵孔4を貫通させた内筒5と、この内筒5の母線に沿って延在し、内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝1と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバー6とを有している。
【0004】
また、仕切板の間の各スロット7に、夫々全体の形状が略C字形で一端部を揺動自在に軸支され、鍵孔に挿入された鍵の側端縁と干渉する方向に付勢されると共に、常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピン8に係止され、かつ自由端部外側端縁にロッキングバー6の内側縁を受入れる解錠切欠9を形成したレバータンブラー11が挿設されている。
【0005】
そして、これらのタンブラー群の夫々が鍵孔に挿通された合鍵の対応する鍵溝と係合したとき、各レバータンブラー11の解錠切欠9がロッキングバー6の内側縁と整合する(図示せず)ように構成されている。
【0006】
したがって、合鍵を鍵孔4に挿入して内筒5を外筒2内で相対的に回動させると、カム溝1とロッキングバー6との間に生じる楔作用による、ロッキングバー6の内筒中心軸方向への移動が可能になり、換言すればシリンダ錠は解錠状態となって内筒5は解錠方向に回動する。
【0007】
なお、通常のレバータンブラー錠では、複数の仕切板3、3、キーガイド12及びテールピース13を装着したテールプラグ14(図1参照)を、図3に示す第1リテーナー15及びこの第1リテーナー15と面対称となる第2リテーナー(図示せず)を介して一体に結合して内筒5を構成する。
【0008】
すなわち、リテーナー15は、円筒の一部をなし、前端に抜け止めのフランジ16を形成すると共に、その母線に沿って複数固の縦長の矩形の受入れ孔17、17を形成した板状体で、フランジ16に一番近いものと遠い受入れ孔17を除いて、各受入れ孔17に仕切板の外周部に形成された挿入片18(図4参照)を挿入し、反対側の図示しない第2リテーナーと共にこれら複数固の仕切板3、3を一体的に結合する。
【0009】
そして、フランジ16に一番近い受入れ孔17には、キーガイド12の外周面に形成された上記挿入片18と同様の挿入片(図示せず)を挿入し、同様にして、リテーナー15の内端(図3で右端)にテールプラグ14(図1参照)を装着し、このようにして構成された内筒を外筒2と嵌合させることにより、内筒5が分解しないように包持する。
【0010】
なお、内筒5の内端には、リテーナー15のフランジ16と同様の抜け止めの機能を有する蛇の目状のストッパー板19を装着し、止め輪21で固定する。
【0011】
なお、図4において符号22は各仕切板に形成されたロッキングバー6用の案内溝を示す。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように構成されたレバータンブラー錠は勿論所期の機能を発揮し、特にロッキングバー6が内筒の回動時クリック感を呈するので使用感に優れ、また、ピッキングが困難であることから、住宅の扉口用の錠前として多用されている。
【0013】
しかしながら、一方では、レバータンブラー11の形状が略C字形であることから、剛性が比較的小さく、強い力で異鍵を回すと変形する場合が絶無であるとは言えない。
【0014】
また、合鍵の鍵孔内に挿入される本体部(以下ブレードという)の側端縁に鍵溝を形成するから、鍵溝の形成箇所を多くすることができず、したがって鍵違いの数にも限界がある。
【0015】
更にまた、鍵の断面形状が上下非対称であるから、ブレードの裏表に関係なく鍵孔に挿入できる所謂リバーシブルの鍵を作れない、等未だ改良の余地がある。
【0016】
そこでこの発明は、タンブラーの剛性が大きくて丈夫であり、リバーシブルの鍵が可能であってしかも鍵違いも大きな新規なロータリーディスクタンブラー錠及びその鍵を提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と、この外筒に回転自在に嵌合し、間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に、中心軸線に沿って鍵孔4を貫通させた内筒と、この内筒の母線に沿って延在し、内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し、上記仕切板の間の各スロットに、中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し、その実体部の1ヵ所を、内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に、鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し、一方、鍵挿通孔の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し、各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に、常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し、他方、これらのタンブラー群の突出量が一定である前記係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードの平面部に形成された対応する有底で複数種類の大きさと深さを有する摺り鉢形の窪みと係合したとき、該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき、カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、内周面の母線に沿って横断面形状が略V字形のカム溝を形成した外筒と、この外筒に回転自在に嵌合し、間隙を介して中心軸線方向に積層された複数の仕切板を設けると共に、中心軸線に沿って鍵孔を貫通させた内筒と、この内筒の母線に沿って延在し、内筒の外周部において半径方向に移動可能に案内されると共に、上記カム溝と係合する外側縁が外方に突出する方向に付勢されたロッキングバーとを有し、上記仕切板の間の各スロットに、中央部に前記内筒の中心軸線に関して点対称に形成された鍵孔を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状ロータリーディスクタンブラーを挿設し、その実体部の1ヵ所を、内筒を軸線方向に貫通する支軸に揺動可能に軸支すると共に、鍵挿通孔を挟んで上記支軸と対峙するロータリーディスクタンブラーの実体部であり、円弧の一部をなす自由端部外側端縁に解錠切欠を形成し、一方、鍵挿通孔の開口端縁に、先端の移動軌跡が鍵孔に挿入されたリバーシブルである合鍵のブレードの平面部と干渉する係合突起を一体に突設し、各ロータリーディスクタンブラーをこの係合突起が合鍵に近接する方向に付勢すると共に、常態では内筒を軸線方向に貫通するバックアップピンに係止し、他方、これらのタンブラー群の係合突起の夫々が鍵孔に挿通された合鍵のブレードに形成された対応する窪みと係合したとき、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにしたロータリーディスクタンブラー錠の合鍵であって、鍵孔に挿入されたときロータリーディスクタンブラーの突出量が一定である前記係合突起の先端と整合するブレードの平面部に、有底で複数種類の大きさと深さの摺り鉢形の窪みを形成し、この窪みが対応する前記係合突起と係合したとき、該タンブラー群が前記摺り鉢形の窪みの深さやブレードの幅方向の位置に対応して揺動角度が変わることにより、各ロータリーディスクタンブラーの解錠切欠がロッキングバーの内側縁と整合するようにし、以て、合鍵と一体的に内筒を回動させたさせたとき、カム溝とロッキングバーとの間に生じる楔作用によりロッキングバーを内筒中心軸方向に移動させ、内筒を外筒に対し相対回動できるようにしたことを特徴とする。
【0019】
【実施例】
以下、この発明を図5乃至図12を参照して説明する。
図1乃至図4に示す従来のレバータンブラー錠とこの発明によるロータリーディスクタンブラー錠との大きな違いは、タンブラーの形状が環状であること、及び、ブレードの側端縁の鍵溝の代りに合鍵の平面部及び端縁部に窪みを形成したことの2点である。
【0020】
すなわち、図5はこの発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠のスロット7を示し、このスロット7は、従来のレバータンブラー錠のそれのように、フランジ16付のリテーナー15によって相互に結合された複数の仕切板3、3間に形成されている。
【0021】
また、内筒の中心軸線に沿って形成された鍵孔4を間に挟むようにして、図5で上方には支軸23が、下方にはバックアップピン8が、夫々内筒5を鍵孔に平行に貫通するように設けられている(図1参照)。
【0022】
なお、図5に示すバックアップピン8の断面形状は、図1に示すものと異なり縦長の矩形の上隅部を面取りしたような形状であるが、このバックアップピン8の形状はこの発明の要旨ではなく、図1に示すように丸棒でもよい。
【0023】
また、図5に示すような断面形状の鍵孔4には、同じ断面形状の合鍵24が挿入されるが、これら鍵孔4或いは合鍵24の断面形状はこの発明の要旨ではない。
【0024】
図示の実施例で鍵孔4の横断面形状を図示のように複雑にしたのは、所謂ウォードの種類を多くして鍵違いを多くする目的の他、鍵孔4内におけるピッキング工具の操作を困難にするためである。
【0025】
また、鍵孔4(合鍵24)の断面形状を内筒5の中心軸線に関して点対称としたのは、合鍵の裏表に関係無く合鍵を鍵孔4に挿入できる所謂リバーシブルキーにするためである。
【0026】
そして、この発明によるロータリーディスクタンブラー錠の施解錠操作に用いられる合鍵24は、図6及び図7に示すように、鍵孔4に挿入される本体部(以下単にブレードという)の先端が円弧状に成形され、かつ面取りされると共に、図6に示す平面部、及び図7に示す端縁部の所定の箇所に窪み25が形成されている。
【0027】
この窪み25の断面形状は、例えば図5に示すように、図面を明瞭にするためハッチングを施さない合鍵24の断面形状において点線で示すように、また、図6及び図7に示すように、有底の逆台形であり、複数種類の深さ(図示の実施例では4種類)がある。
【0028】
上記窪み25の形成位置及び深さについては、後述するロータリーディスクタンブラーとの関連において後にもう一度説明する。
【0029】
一方、図1及び図2に示す従来の所謂レバータンブラー錠、ディスクタンブラー錠、或いはピンタンブラー錠においては、ブレードの側端縁にV字形の鍵溝が形成されており、窪みではないことは周知の通りである。
【0030】
なお、図5において図1及び図2と等符号を付した部分は、相互に均等な部分を示すので、更に詳細な説明は省略する。
【0031】
他方、上記スロット7、7の夫々には、図8に示すように、中央部に鍵孔4を包囲し得る大きさの鍵挿通孔26を形成した環状のロータリーディスクタンブラー27が挿設されている。
【0032】
此でロータリーディスクタンブラー27が環状であるという意味は、鍵挿通孔26を包囲するロータリーディスクタンブラー27の実体部が閉曲線をなすという意味で、ロータリーディスクタンブラー27の外形は、図示のように略円形である。
【0033】
各ロータリーディスクタンブラー27は、その実体部の1ヵ所(図示の実施例では上端部)を支軸22によって揺動可能に軸支されている。
【0034】
そして、ロータリーディスクタンブラー27の自由端部(図8で下端部)の内側縁及び外側縁の双方とも支軸22を中心とする円弧状に成形されている。
【0035】
また、ロータリーディスクタンブラー27の自由端部外側縁の所定の角度位置には、例えば矩形の解錠切欠9が形成されている。
【0036】
この解錠切欠9の形成角度位置は、前記合鍵の窪み25の深さに応じて、例えば4種類あり、これによってロータリーディスクタンブラー錠の鍵違いを得るようにしている。
【0037】
更にまた、ロータリーディスクタンブラー27の自由端部内側縁はバックアップピン8の下端を掠めるように形成され、その図8における左端部には係止段部28が形成されている。
【0038】
なお、この係止段部28は、段部ではなく突起でもよいことは勿論である。
【0039】
一方、鍵挿通孔26の開口端縁には、図8に示すように、先端の移動軌跡が合鍵24のブレードの平面部と干渉する係合突起29が一体に突設されている。
【0040】
なお、この係合突起29は、図9に示すように、先端の移動軌跡がブレードの端縁部と干渉するように、突設位置をずらせて突設する場合もある。
【0041】
そして、各ロータリーディスクタンブラー27は、従来のレバータンブラー錠と同様に、薄い板ばねによるタンブラーばね31の弾力により、その係合突起29が合鍵24に近接する方向に付勢されている。
【0042】
図8及び図9に示すように鍵孔4に合鍵24が挿入されていない場合には、各ロータリーディスクタンブラー27の前記係止段部28がバックアップピン8に弾接するように係止され、各ロータリーディスクタンブラー27は図8及び図9に示す角度位置に係止される。
【0043】
しかしながら、鍵孔4に合鍵24が挿入され、各ロータリーディスクタンブラー27の係合突起29が対応する合鍵の窪み25に係入したとき、図10及び図11に示すように、全ロータリーディスクタンブラー27、27の解錠切欠9、9がロッキングバー6の内側縁と整合するように、係合突起29の突出量、窪み25の深さ及び解錠切欠9の角度位置が設定されている。
【0044】
図示の実施例では、係合突起29の突出量を一定にしておき、換言すれば、支軸23の中心に関し係合突起29の先端の位置を一定にしておき、係合突起29の先端が合鍵のブレードの窪み25に係入してその底面に当接したとき、窪み25の深さに応じてロータリーディスクタンブラー27の揺動角度を変化させ、図8に示す複数の解錠切欠9、9の内選択されたものをロッキングバー6の内側縁に整合させるようにしている。
【0045】
なお、この発明におけるロータリーディスクタンブラー錠においても、従来のレバータンブラー錠と同様に、相互に隣接するロータリーディスクタンブラー27は、係合突起29が左右対称になるように配設するのがよい。
【0046】
それは、係合突起が係入する合鍵の窪み25、25の相互の間隔を長くし、特に窪みが深いときに隣接する窪みが干渉しないようにするためである。
【0047】
上記のように構成されたこの発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠は、鍵孔4に合鍵24を差込まれていない場合、或いは合鍵とは異なる異鍵を鍵孔4に挿入した場合、少なくとも1枚のロータリーディスクタンブラー27の解錠切欠9がロッキングバー6の内側縁と角度的にずれる(図8及び図9参照)。
【0048】
この状態で内筒5を回そうとすると、ロッキングバー6とカム溝1との間に生じる楔作用により、ロッキングバー6がカム溝1から押出されようとするが、その動きはロータリーディスクタンブラー27の自由端部外側縁に阻止されて内筒5を回すことはできない。すなわち、このロータリーディスクタンブラー錠は解錠されない。
【0049】
一方、鍵孔4に合鍵24が挿入された場合には、前記したように、また、図10及び図11に示すように、全ロータリーディスクタンブラー27、27の解錠切欠9、9がロッキングバーの内側縁と整合する。
【0050】
この状態で内筒を回すと、従来のレバータンブラー錠と同様に、内筒5と外筒2との相互回動によるロッキングバー6の内筒中心軸線方向の移動が可能になり、このロータリーディスクタンブラー錠は解錠されることになる。
【0051】
なお、合鍵及び異鍵を鍵孔に挿入するとき、ブレードの窪みが無い部分が係合突起29と係合し、係合突起29が鍵孔4から退避する場合でも、図12に示すように、鍵挿通孔26が鍵孔4と干渉しないように、その大きさ及び開口位置が設定されているものとする。
【0052】
また、図8及び図9に示す施錠状態では、内筒を回そうとする力はロッキングバー6を上方に押上げる方向に作用するので、ロータリーディスクタンブラー27とバックアップピン8との間の摩擦を無くして前者の揺動を円滑にするため図示のように両者の間に隙間を設ける場合には、この力は支軸23に担持されることになる。
【0053】
それはそれで作動上問題はないが、この力を分散してバックアップピン8にも担持させようとする場合には、選択された、或いは全ロータリーディスクタンブラー27の支軸23と嵌合する支軸孔を例えば上下に長い長穴とするのがよい。
【0054】
この場合、ロータリーディスクタンブラー27がロッキングバー6から力を受けた場合、ロータリーディスクタンブラー27が上方に移動する結果、その自由端部がバックアップピン8に当接して負荷はバックアップピンに担持される。
【0055】
なお、この発明は、図示の実施例に限定されることなく、種々に変形して実施することが可能である。
【0056】
例えば、以上の説明では、図9及び図11に示すブレードの端縁部の窪み25を探るロータリーディスクタンブラー27を、ブレードの平面部の窪みを探るものと同じに用いるものとしたが、ブレードの端縁は薄くて窪みの深さの種類が例えば2種類しか採れないので、これを別の用途に用いるとキープランが容易になる。
【0057】
すなわち、図7に示すブレードの端縁部に形成された窪み25、25を探るタイプのロータリーディスクタンブラー27、27のみを有するロータリーディスクタンブラー錠を例えばマンションの共通扉口に設け、上記ブレードの端縁部に形成された窪みを探るタンブラーを共通に組込んで、ブレードの平面部の窪みを探るタンブラーを違えて鍵違いとしたものを居住者用の錠前とする。
【0058】
すると、各居住者は自己の部屋と共通扉口の錠前を一つの合鍵で解錠することができ、所謂逆マスターキー装置を構成することができる。
【0059】
この場合、ブレードの平面部から逆マスターキー装置用にタンブラーを間引きしなくてもよいので、換言すれば、平面部に形成された窪みに対応するロータリーディスクタンブラーを全て居住者用の鍵違いに用いることができるので、居住者用の鍵違いが大幅に増大する。
【0060】
これに対し、従来の錠前、例えばレバータンブラー錠やディスクタンブラー錠でも逆マスターキー装置を構成することは可能であるが、従来の錠前では鍵違いに用いるべきタンブラーを逆マスターキー装置用に振替えるので、居住者用の鍵違いが減少するのである。
【0061】
また、以上の説明では、ロータリーディスクタンブラー27の係合突起29の突出量を一定にし、合鍵の窪みの深さに応じてタンブラーの揺動角度を変えるようにしたが、これは、係合突起29の突出量を窪み25の深さに応じて変化させるようにしてもよい。
【0062】
このとき、例えば窪み25が深いときに係合突起29の突出量を大きくすれば、窪みの深さが変ってもタンブラーの揺動角度を同一にできるので、解錠切欠9(図8参照)の角度位置を同一にしても、図示の実施例によるロータリーディスクタンブラー錠と同数の鍵違いを得ることができる。
【0063】
図13は請求項1に記載の発明の他の実施例を示し、この実施例は、支軸23の位置を内筒中心軸から離間させる方向に移動させ、この支軸23とロッキングバー6との間の距離を稼いで、合鍵24の断面形状の長い方を垂直にして鍵孔4に挿入できるように、換言すれば、合鍵を所謂縦差しするようにしたものである。
【0064】
なお、図13において他の図と等符号を付した部分は、相互に均等な部分を示す。
【0065】
このように構成することにより、少なくとも錠前の種類を倍増することができるばかりでなく、顧客の好みに応じ、人間工学的に操作し易い錠前を選択させることができる。
【0066】
また、支軸23と解錠切欠9との距離が増大するので、係合突起29の形成位置を支軸23に近接する方向に移動させれば、窪み25の深さの僅かの変化でも解錠切欠9の移動距離を大きくすることができ、合鍵の識別感度を向上させることができる、という別の利点が生じる。
【0067】
図14は請求項3に記載の発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠を示し、この実施例は、支軸23に関しバックアップピン8とは反対側にこれらと平行にばね支軸32を設け、各ロータリーディスクタンブラー27を、捩りコイルばねとしてのタンブラーばね31により付勢するようにしたものである。
【0068】
この場合、各タンブラーばね31のコイル部をばね支軸32に巻装するようにし、このコイル部に接続される開脚ばねの先端を相互に反対方向、かつ紙面方向に折り曲げ、タンブラーばね31が狭いスロット7内に収容できるようにする。
【0069】
タンブラーばね31を捩りコイルばねにしてそのコイル部にばね支軸32を挿通させれば、従来のタンブラーばね31(図8及び図9参照)のように細長いばね板の一端を丸めてロータリーディスクタンブラー27の同形の穴に嵌め込む装着方法に較べ、タンブラーばねが外れてロータリーディスクタンブラー錠が作動不良になることを完全に防止できる。
【0070】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、この発明は、タンブラーの形状を環状にしたので、従来のレバータンブラー錠と比較してタンブラーの剛性を格段に向上させることができ、錠前としての強度及び安全性を向上させることができる。
【0071】
また、従来のレバータンブラー錠における合鍵と異なり、ブレードの端縁部に形成されたV字形の鍵溝ではなく、窪みの深さによって鍵違いを得るようにしたので、一の窪み25と隣接する他の窪み25の間隔を従来の鍵溝間のそれより短くすることができる。
【0072】
換言すれば、規格によって外形寸法に制約がある内筒においてタンブラーの数を増大させることができ、その分鍵違いを多くすることができる。例えば、従来のレバータンブラー錠には高々7枚のタンブラーしか入らなかったが、この発明によるロータリーディスクタンブラー錠においては11枚入る(図6参照)。
【0073】
更にまた、ブレードの平面部だけではなく端縁部にも窪みを形成することができ、この端縁部の窪みを利用して例えばマンションの共通扉口に於ける逆マスターキー装置を構成すれば、居住者用の鍵違いを従来のものと比較して格段に多くすることができる。
【0074】
また、ロータリーディスクタンブラーの係合突起の突出量を一定にする場合でも、或いは変化させる場合でも、窪みの深さに応じてその中心位置をブレードの幅方向、或いはブレードの端縁部の幅方向において微妙に変化させなくてはならないので、合鍵の複製が困難になり、錠前としての安全性が向上する、等種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のレバータンブラー錠の一例を示す縦断面図。
【図2】その横断面図。
【図3】リテーナーの外観斜視図。
【図4】仕切板の正面図。
【図5】この発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠の縦断面図でタンブラーを外した状態を示す。
【図6】この発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠の合鍵の平面図。
【図7】この発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠の合鍵の側面図。
【図8】この発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠の横断面図で、合鍵のブレードの平面部に当接する係合突起を設けたタンブラーを装着した状態を示す。
【図9】この発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠の横断面図で、合鍵のブレードの端縁部に当接する係合突起を設けたタンブラーを装着した状態を示す。
【図10】図8と同様のロータリーディスクタンブラー錠の横断面図で、鍵孔に合鍵が挿入された状態を示す。
【図11】図9と同様のロータリーディスクタンブラー錠の横断面図で、鍵孔に合鍵が挿入された状態を示す。
【図12】図8と同様のロータリーディスクタンブラー錠の横断面図で、鍵孔に合鍵が挿入され、かつ係合突起の先端がブレードの表面に乗った状態を示す。
【図13】請求項1に記載の発明の他の実施例によるロータリーディスクタンブラー錠の図8と同様の横断面図。
【図14】請求項3に記載の発明の一実施例によるロータリーディスクタンブラー錠の図8と同様の横断面図。
【符号の説明】
1 カム溝
2 外筒
3 仕切板
4 鍵孔
5 内筒
6 ロッキングバー
7 スロット
8 バックアップピン
9 解錠切欠
11 レバータンブラー
12 キーガイド
14 テールプラグ
15 リテーナー
16 フランジ
17 受入れ孔
18 挿入片
19 ストッパー板
21 止め輪
22 案内溝
23 支軸
24 合鍵
25 窪み
26 鍵挿通孔
27 ロータリーディスクタンブラー
28 係止段部
29 係合突起
31 タンブラーばね
32 ばね支軸
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2011-12-20 
出願番号 特願2002-226833(P2002-226833)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (E05B)
P 1 41・ 851- Y (E05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 多田 春奈住田 秀弘  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 山口 由木
土屋 真理子
宮崎 恭
仁科 雅弘
登録日 2007-09-07 
登録番号 特許第4008302号(P4008302)
発明の名称 ロータリーディスクタンブラー錠及び鍵  
代理人 三浦 光康  
代理人 三浦 光康  
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