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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B41J
審判 全部無効 2項進歩性  B41J
審判 全部無効 特126 条1 項  B41J
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B41J
管理番号 1250262
審判番号 無効2009-800101  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-05-19 
確定日 2011-12-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3793216号「液体インク収納容器、液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジ」の特許無効審判事件についてされた平成22年 1月26日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成22年(行ケ)第10056号平成23年2月8日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続きの経緯の概要
本件特許第3793216号に係る手続の経緯は以下のとおりである。
平成16年11月15日 特願2004-330952号出願
(優先権主張日 平成15年12月26日、平成
16年10月22日)
平成18年 4月14日 本件特許第3793216号の設定登録(請求項
1?16)
平成21年 1月 9日 株式会社オーム電機による特許第3793216
号の請求項1に係る発明についての特許無効審判
請求(無効2009-800006号)
平成21年 1月 9日 フューチャーウェルホールディングリミテッドに
よる特許第3793216号の請求項1に係る発
明についての特許無効審判請求(無効2009-
800007号)
平成21年 1月28日 無効2009-800006号及び無効2009 (起案日) -800007号の併合
平成21年 4月 6日 訂正請求(無効2009-800006号及び無
効2009-800007号に対して)
平成21年 5月 8日 田口哲也他2名による特許第3793216号
明の特許請求の範囲の請求項1及び請求項5に記
載された発明についての特許無効審判請求(無効
2009-800091号)
平成21年 5月19日 株式会社プレジール他4名による特許第3793
216号の請求項1?16に係る発明についての
特許無効審判請求(本件無効2009-8001
01号)
平成21年 5月29日 株式会社オーム電機による特許第3793216
号の請求項5に係る発明についての特許無効審判
請求(無効2009-800113号)
平成21年 5月29日 フューチャーウェルホールディングリミテッドに
よる特許第3793216号の請求項5に係る発
明についての特許無効審判請求(無効2009-
800114号)
平成21年 6月16日 無効2009-800113号及び無効2009 (起案日) -800114号の併合
平成21年 6月30日 エステー産業株式会社による特許第379321
6号の請求項1及び5に係る発明についての特許
無効審判請求(無効2009-800141号)
平成21年 7月27日 訂正請求(無効2009-800091号に対し
て)
平成21年 8月 3日 訂正請求(本件無効審判に対して、以下「本件訂
正」という、訂正後の請求項の数7)
平成21年 8月 3日 本件無効審判に対して答弁書の提出(被請求人)
平成21年 8月18日 訂正請求(無効2009-800113号及び無
効2009-800114号に対して)
平成21年 8月24日 無効2009-800006号及び無効2009
(起案日) -800007号につき「特許第3793216
号の請求項1に係る発明についての特許を無効と
する。」との審決(以下「第1審決」という。平
成21年4月6日付けの訂正は認めていない。)
平成21年 9月14日 無効2009-800006号についての審決取
消訴訟(平成21年(行ケ)第10275号)
平成21年 9月14日 無効2009-800007号についての審決取
消訴訟(平成21年(行ケ)第10276号)
平成21年 9月15日 特許第3793216号についての訂正審判請求
(訂正2009-390110号)
平成21年 9月24日 訂正請求(無効2009-800141号に対し
て)
平成21年10月 9日 本件無効審判に対して弁駁書の提出(請求人)
平成21年11月 5日 無効2009-800007号の第1審決につい
ての差戻し決定(平成21年(行ケ)第1027
6号)
平成21年11月 6日 無効2009-800006号の第1審決につい
ての差戻し決定(平成21年(行ケ)第1027
5号)
平成21年12月17日 無効2009-800091号及び無効2009
(起案日) -800141号事件の手続中止
平成21年12月21日 訂正審判請求の取下げ(訂正2009-3901
10号)
平成21年12月25日 無効2009-800006号、無効2009-
800007号、無効2009-800113号
及び無効2009-800114号の無効審判
請求の取下げ
平成22年 1月26日 本件につき「訂正を認める。特許3793216
(起案日) 号の請求項1ないし7に係る特許を無効とする。
」との審決(以下「本件1次審決」という。)
平成22年 2月 5日 本件1次審決の謄本の送達(請求人)
本件1次審決の謄本の送達(被請求人)
平成22年 2月17日 本件1次審決に対する審決取消訴訟(平成22年
(行ケ)第10056号)
平成23年 2月 8日 本件1次審決を取り消すとの判決(平成22年(
行ケ)第10056号)
平成23年 2月 8日 特許第3793216号の請求項1(本件訂正後
の請求項1)及び請求項5(本件訂正後の請求項
3)についての特許権侵害差止請求控訴事件(平
成22年(ネ)第10063号及び平成22年(
ネ)第10064号)判決
平成23年 9月29日 本件1次審決を取り消すとの判決(平成22年(
行ケ)第10056号)確定
なお、本件1次審決で認めた本件訂正のうち、特許請求の範囲について、請求項3、請求項4、請求項6ないし10、請求項14、請求項15を削除する訂正、及び、明細書について、段落0014ないし段落0016の記載を削除する訂正は、本件1次審決の謄本が当事者へ送達されたことにより平成22年2月5日に確定した(当該訂正に対する本件1次審決は、後述の(参考)を参照のこと。)。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
被請求人が平成21年8月3日付け訂正請求書と、これに添付した訂正明細書(以下「本件訂正明細書」という。)及び訂正特許請求の範囲(以下「本件訂正特許請求の範囲」という。)とによって求めた訂正(本件訂正)の内容は、次のとおりのものである。(下線は本件訂正明細書及び本件訂正特許請求の範囲のとおりである。)
(1)特許請求の範囲について
ア 訂正事項A-1
請求項1を以下のとおり訂正する。
「【請求項1】
複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。」

イ 訂正事項A-2
請求項2を以下のとおり訂正する。
「【請求項2】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。」

ウ 訂正事項A-3
請求項3、請求項4、請求項6乃至10、請求項14及び請求項15を削除する。

エ 訂正事項A-4
請求項5を、請求項3とすると共に以下のとおり訂正する。
「【請求項3】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、
前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、を備える液体インク供給システムにおいて、
前記液体インク収納容器は、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有し、
前記受光部は、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され、
前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出することを特徴とする液体インク供給システム。」

オ 訂正事項A-5
請求項11を、請求項4とすると共に以下のとおり訂正する。
「【請求項4】
複数の液体インク収納カートリッジを互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納カートリッジに備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納カートリッジが入れ替わるように配置され前記液体インク収納カートリッジの発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する液体インク収納カートリッジ位置検出手段と、
搭載される液体インク収納カートリッジそれぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納カートリッジの前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段は前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納カートリッジにおいて、
液体インクを吐出することで記録を行う記録ヘッドと、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納カートリッジのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納カートリッジ。」

カ 訂正事項A-6
請求項12を、請求項5とすると共に以下のとおり訂正する。
「【請求項5】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記液体インク収納容器内に収納される液体インクと、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
収納される液体インクのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。」

キ 訂正事項A-7
請求項13を、請求項6とすると共に以下のとおり訂正する。
「【請求項6】
複数の液体インク収納容器が装着可能な装着部を備えて移動するキャリッジと、
共通の信号線に接続される複数の装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
前記共通の信号線に接続され色情報に係る信号を発生するための電気回路と、
を備え、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装着部に装着されることにより、前記複数の装置側接点に接続可能な接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された前記発光部と、
前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点および前記接点を介して入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を具えたことを特徴とする液体インク収納容器。」

ク 訂正事項A-8
請求項16を、請求項7とすると共に以下のとおり訂正する。
「【請求項7】
複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に、前記接点から前記色情報と共に入力される前記発光部の制御に係る信号に基づいて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。」

(2)明細書について
ア 訂正事項B-1
発明の名称を以下のとおり訂正する。
「【発明の名称】液体インク収納容器、液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジ」

イ 訂正事項B-2
段落0001の記載を以下のとおり訂正する。
「 【0001】
本発明は、液体インク収納容器、液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジに関し、詳しくは、インクジェット記録で用いられるインクタンクのインク残量など、液体インク収納容器の状態に関する報知をLEDなどの発光手段によって行う構成で用いられる液体インク収納容器、液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジに関するものである。」

ウ 訂正事項B-3
段落0010の記載を以下のとおり訂正する。
「 【0010】
本発明はこのような問題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い、この場合でもインクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の発光制御をすることを可能とすることにある。」

エ 訂正事項B-4
段落0011の記載を以下のとおり訂正する。
「 【0011】
そのために本発明では、複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、前記受光手段に投光するための光を発先する前記発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、を有することを特徴とする。」

オ 訂正事項B-5
段落0012の記載を以下のとおり訂正する。
「 【0012】
また、本発明は、複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有することを特徴とする。」

カ 訂正事項B-6
段落0013の記載を以下のとおり訂正する。
「 【0013】
さらに、本発明は、複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、を備える液体インク供給システムにおいて、前記液体インク収納容器は、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有し、前記受光部は、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出することを特徴とする。」

キ 訂正事項B-7
段落0014ないし段落0016の記載を削除する。

ク 訂正事項B-8
段落0017の記載を以下のとおり訂正する。
「 【0017】
さらに加えて、本発明は、複数の液体インク収納カートリッジを互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納カートリッジに備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納カートリッジが入れ替わるように配置され前記液体インク収納カートリッジの発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する液体インク収納カートリッジ位置検出手段と、搭載される液体インク収納カートリッジそれぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納カートリッジの前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段は前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納カートリッジにおいて、液体インクを吐出することで記録を行う記録ヘッドと、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納カートリッジのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有することを特徴とする。」

ケ 訂正事項B-9
段落0018の記載を以下のとおり訂正する。
「 【0018】
また、本発明は、複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記液体インク収納容器内に収納される液体インクと、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、収納される液体インクのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有することを特徴とする。
また、本発明は、複数の液体インク収納容器が装着可能な装着部を備えて移動するキャリッジと、共通の信号線に接続される複数の装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、前記共通の信号線に接続され色情報に係る信号を発生するための電気回路と、を備え、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記装着部に装着されることにより、前記複数の装置側接点に接続可能な接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された前記発光部と、前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点および前記接点を介して入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、を具えたことを特徴とする。
さらに本発明は、複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、前記接点から人力される前記色情報に係る信号と前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に、前記接点から前記色情報と共に入力される前記発光部の制御に係る信号に基づいて前記発光部の発光を制御する制御部と、を有することを特徴とする。」

コ 訂正事項B-10
段落0019の記載を以下のとおり訂正する。
「 【0019】
以上の構成によれば、記録装置の本体側の接点(コネクタ)と接続する液体インク収納容器であるインクタンクの接点(パッド)を介して入力される信号と、そのインクタンクの色情報とに基づいて発光部の発光を制御するので、先ず、搭載される複数のインクタンクが共通の信号線によってその同じ制御信号を受け取ったとしても、色情報に合致するインクタンクのみがその発光制御を行うことができ、これにより、インクタンクを特定した発光部の点灯など発光制御が可能となる。次に、このようなインクタンクを特定した発光制御が可能な場合、例えばキャリッジに搭載された複数のインクタンクについて、その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに、上記所定の位置での発光を検出するようにすることにより、発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識できる。 これにより、例えば、ユーザに対してインクタンクを正しい位置に再装着することを促す処理をすることができ、結果として、インクタンクごとにその搭載位置を特定することができる。」

サ 訂正事項B-11
段落0020の記載を以下のとおり訂正する。
「 【0020】
この結果、複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い、この場合でもインクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の発行制御をすることが可能となる。」

シ 訂正事項B-12
段落0135の記載を以下のとおり訂正する。
「 【0135】
また、参考例として、キャリッジ上に搭載される記録ヘッドとは別体にインクタンクを記録装置の固定部位に取り付け、可撓性チューブを介してその固定インクタンクと記録ヘッドとを連結してインクを供給するチューブを用いる形態の連続供給方式について説明する。この形態において、インクタンクと記録ヘッドとの中間タンクとして機能するインクタンクが記録ヘッドないしキャリッジ上に搭載される構成であってもよい。」

ス 訂正事項B-13
図面の簡単な説明の図38の記載を以下のとおり訂正する。
「 【図38】参考例に係る構造を有したプリンタを示す斜視図である。」

2 本件訂正についての請求人の主張
請求人は、平成21年10月9日付け弁駁書で、本件訂正は、次の(1)ないし(7)のとおりであるから、特許請求の範囲の減縮に該当せず、明りょうでない記載の釈明にも誤記の訂正にも該当せず、特許法第134条の2第1項ただし書き各号に規定する何れをも目的としない訂正を含むから、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項に適合しておらず、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正を含むから、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるので、認められない旨主張する。
(1)「受光手段」や「受光部」は液体インク収納容器や液体インク収納カートリッジに係る発明の構成要件ではないから、「発光部」を「…受光手段に投光するための光を発光する前記発光部」とか「…受光部に投光するための光を発光する前記発光部」と訂正したところで、それによって液体インク収納容器又はカートリッジに設ける発光部を格別の構成を有するものに限定したことにならない。(弁駁書11頁5行?12頁7行)

(2)「受光手段に投光するための光を発光する発光部」、「液体インク収納容器位置検出手段の受光手段に投光するための光を発光する発光部」、「液体インク収納カートリッジ位置検出手段の受光部に投光するための光を発光する発光部」、「液体インク収納容器位置検出手段」といった記載は設定登録時明細書(以下「本件訂正前明細書」という。)のどこにも存在しないから、本件訂正により新たに加えられた構成であり、本件訂正は実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。(弁駁書12頁8?21行及び16頁14?24行)

(3)「受光手段」が「キャリッジの移動により対向する液体インク収納容器が入れ替わるように配置され」るかどうか、「受光部」が「キャリッジの移動により対向する液体インク収納容器や液体インク収納カートリッジが入れ替わるように配置され」るかどうかは、液体インク収納容器又はカートリッジを実際に記録装置に搭載したときに確認できることであるから、液体インク収納容器又はカートリッジに係る発明の構成を限縮するものではないので、本件訂正は液体インク収納容器又はカートリッジの構成を限縮するものではない。(弁駁書12頁22行?13頁21行)

(4)「キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の液体インク収納容器又はカートリッジの発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器又はカートリッジ位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」との構成が付加されているが、「前記キャリッジの位置に応じて特定された」という意味が不明確である上、本件訂正前明細書には、「液体インク収納容器又はカートリッジ位置検出手段」についての説明はなく、「キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の液体インク収納容器又はカートリッジの発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器又はカートリッジ位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」ことを可能とするための具体的構成は本件訂正前明細書に開示されていないので、これがいかなる機構を指すのかが不明であることから、「液体インク収納容器又はカートリッジ位置検出手段」とは、本件訂正により新たに加えられた構成であって、本件訂正は実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。(弁駁書13頁22行?14頁10行及び16頁25行?17頁15行)

(5)記録装置が液体インク収納容器や液体インク収納カートリッジが正しい位置に搭載されているか否かを判断できるという効果は、複数の液体インク収納容器又はカートリッジの内、あるインク色の液体インク収納容器又はカートリッジが来るべきタイミングが記録装置側であらかじめ分かっており、そのタイミングで所定のインク色の液体インク収納容器又はカートリッジの発光部を光らせ、その光が受光されたか否かを判断する手段が記録装置側に備わっていて初めて得られるものであって、液体インク収納容器又は液体インク収納カートリッジ側の構成によって実現される効果ではないから、本件訂正は液体インク収納容器又はカートリッジの構成を限縮するものではない。(弁駁書14頁11?24行)

(6)記録装置側の接点と液体インク収納容器又は液体インク収納カートリッジの接点との間の接触の状態につき、本件訂正前に「接合」と「接続」の区別が存在していた。「結合」は「結び合うこと。結び合わせること。」を意味する語句であり、「接続」は「つなぐこと。つながること。」を意味する語句であって語句自体が意味するところに不明瞭なところはない。「接合」と「接続」に書き分けていたものを、確たる理由もなく「接続」に統一する本件訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものではなく、むしろ、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものである。(弁駁書14頁25行?15頁17行及び17頁16行?18頁6行)

(7)「発光部」を「…受光部に投光するための光を発光する前記発光部」と訂正したところで、それによって、液体インク収納システム(審決注:「収納」は「供給」の誤記であると認定した。)の発光部を格別の構成を有するものに限定したことにならない。(弁駁書15頁下から2行目?16頁13行)

3 本件訂正の可否についての当審の判断
(1)本件訂正の可否についての判断対象について
本件訂正の可否についての判断対象は、本件訂正の訂正内容のうち、本件1次審決の謄本が当事者へ送達されたことにより平成22年2月5日に確定した「特許請求の範囲について、請求項3、請求項4、請求項6ないし10、請求項14、請求項15を削除する訂正、及び、明細書について、段落0014ないし段落0016の記載を削除する訂正」(訂正事項A-3及び訂正事項B-7)を除いた残余の訂正事項である。

(2)訂正事項A-1について
この訂正事項が特許法第134条の2の訂正要件を充たすか否かについて検討するに、次のアないしキのとおり、この訂正事項は、特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)ないし明りょうでない記載の釈明(同項ただし書き第3号)を目的とするものであり、かつ、同条第5項において準用される同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものであるから、適法な訂正であると認められる(なお、以下の説示中においては、本件訂正に係る訂正部分を下線で示すものとする。)。
ア 「液体インク収納容器」
本件訂正前の「液体収納容器」を液体インクを収納する容器であることに限定したものであるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。また、上記訂正の内容は、例えば、本件訂正前明細書の段落【0022】に「インクタンク」として記載されているから、同訂正は、明細書に記載した事項の範囲内において行われたもの(特許法第134条の2第5項、同法第126条第3項)であると認められる。

イ 「複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジ」及び「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器」
請求項1に係る発明が、キャリッジを備えた記録装置の該キャリッジに搭載される容器であることを限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。また、上記訂正の内容は、例えば、本件訂正前明細書の段落【0068】ないし段落【0070】に「…プリンタ200は、…インクタンクを搭載したキャリッジが…移動をして記録を行う機構など…が…覆われているプリンタ本体と、…とを備えたものである。」、「インクタンク1K、1Y、1M、1C(以下では、これらのインクタンクを同一の符号「1」で示す場合もある)を搭載したキャリッジ205が移動する…」、「キャリッジ205には、インクタンクホルダを一体に備えた記録ヘッドユニット105が着脱自在に装着され、この記録ヘッドユニット105に対してそれぞれのインクタンク1がカートリッジの形態にて着脱自在に装着される。すなわち、キャリッジ205に記録ヘッドユニット105を装着し、さらに記録ヘッドユニット105にインクタンク1を装着することが可能であり、本実施形態ではインクタンク1は記録ヘッドユニット105を介してキャリッジ205に着脱可能である。」と記載されているから、同訂正は、明細書に記載した事項の範囲内において行われたもの(特許法第134条の2第5項、同法第126条第3項)であると認められる。

ウ 「該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」及び「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点」
「液体収納容器に備えられる接点」と「記録装置が有する装置側接点」との関係については、本件訂正前特許請求の範囲に、「該液体収納容器に備えられる接点と電気的に結合可能な装置側接点」、「搭載される液体収納容器それぞれの前記接点と結合する前記装置側接点」及び「前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点」(【請求項1】、【請求項2】、【請求項5】、【請求項12】、【請求項16】参照。)と、接点間の状態について「結合」と「接続」とが混在していた。この訂正は、これを「接続」に統一して明確にしたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認められる。
また、インクタンクに備えられる接点と装置側接点とが接触する関係を「接続」と表現することについては、本件訂正前明細書に、「ホルダ150に設けられた接点(以下コネクタと称す)152と、インクタンクに設けられた基板100の外側に向かって位置する面に設けられた接点としての電極パッド102(図5(b))とが接触し、電気的接続が可能になる。」(段落【0033】)、「接点としてのパッド102およびコネクタ152は金属などの比較的剛性の高い導電部材であり、これらの間には良好な電気接続性が確保されるべきである。」(段落【0057】)などと記載されているから、上記訂正は、明細書に記載した事項の範囲内において行われたもの(特許法第134条の2第5項、同法第126条第3項)であると認められる。

エ 「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」及び「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置」
請求項1に係る発明が、上記の構成を有する記録装置に搭載される容器であることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
先ず、「受光手段」に関しては、例えば、本件訂正前明細書の段落【0073】、段落【0110】、段落【0111】及び図29に「第1受光部210」として記載されている。特に、図29からは、インクタンクの搭載位置の検出に使用する「第1受光部210」は一つであり、キャリッジ205に搭載された複数のインクタンクのうち、第1受光部210に対向するインクタンクが入れ替わるようにキャリッジ205を移動させていることが把握される。
さらに、上記訂正に関して、本件訂正前明細書には、段落【0079】に「第1受光部210は、インクタンク1のLED101からの発光を受けて、それに応じた信号を制御回路300へ出力する。制御回路300は、後述のように、この信号に基づき、それぞれのインクタンク1のキャリッジ205における位置を判断することができる。また、…エンコーダスケール209が設けられ…エンコーダセンサ211が設けられ…このセンサの検出信号は…制御回路300に入力し、これにより、キャリッジ205の移動位置を知ることができる。」と、段落【0101】ないし段落【0107】に「A番目のインクタンクが装着されていると判断したときは、…該当する色情報のインクタンク1のLED101を点灯する。…4つのインクタンク総てについて装着確認制御が終了し…総てのインクタンクについて、LED101の点灯がされたか否かを判断する。いずれかのインクタンクのLED101が点灯していないと判断したときは、ステップS302以降の処理を繰り返す。…総てのインクタンクのLEDが点灯したと判断したときは、…正常にインクタンクが装着されたか否かを判断する。装着が正常と判断したときは、…着脱処理が正常終了したか否かを判断する。…着脱処理が正常に終了したと判断したときは、…カバー201が閉じられたか否かを判断する。ここで、本体カバーが閉じられたと判断したときは、ステップS105の光照合処理に移行する。」と、段落【0108】に「光照合処理は、正常に装着されたインクタンクそれぞれが正しい位置に装着されているか否かを判断する処理である。本実施形態では、インクタンクの装着位置について、…誤って装着される可能性がある。このため、本光照合処理を行い、誤って装着される場合は、ユーザにその旨を知らせるものである。」と、段落【0110】ないし段落【0113】に「最初に、イエローインクのインクタンク1Yが装着されるべき位置のインクタンクが第1受光部210に対向する位置で、インクタンク1YのLED101を発光させる(図24にて説明したように、実際は点灯して所定時間後消灯すること、以下、本照合処理では同様)。インクタンクの本来の正しい位置に装着されているとき、第1受光部210はLED101の発光を受光することができ、制御回路300は、その装着位置にはインクタンク1Yが正しく装着していると判断する。…キャリッジ205を移動しつつ、同様にして、図29(b)に示すように、マゼンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置のインクタンクが第1受光部210に対向する位置で、インクタンク1MのLED101を発光させる。同図に示す例は、インクタンク1Mが正しい位置に装着されていて第1受光部210はその発光を受光することを示している。順次、図29(b)?(d)に示すように、判断する装着位置を変えながら発光を行って行く。これらの図は、正しい位置に装着されている例を示している。…これに対し、図30(b)に示すように、マゼンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置にシアンインクのインクタンク1Cが誤って装着されているときは、第1受光部210に対向しているインクタンク1CのLED101は発光せず、別の位置に搭載されているインクタンク1MのLED101が発光する。この結果、このタイミングでは、第1の受光部210は受光できないことから、制御回路300は、その装置位置にはインクタンク1M以外のインクタンクが装着されていると判断する。これに対応して、図30(c)に示すように、シアンインクのインクタンク1Cが装着されるべき位置にマゼンタインクのインクタンク1Mが誤って装着されており、第1受光部210に対向しているインクタンク1CのLED101が発光する。…以上説明した光照合処理を行うことにより、制御回路300は本来の位置に装着されていないインクタンクを特定することができる。また、装着されるべき位置に正しいインクタンクが装着されていなかった場合には、その装着位置において、他の3色のインクタンクを順に発光させる制御を行うことによって、その装着位置に誤って何色のインクタンクが装着されてしまったかを特定することもできる。」と、それぞれ記載されている。
これらの記載からみて、本件訂正前明細書には、インクジェットプリンタ200が、「第1受光部210」、「制御回路300」と共に、「キャリッジ205の移動位置を知る」手段、「インクタンクが装着されていると判断したときは、該当する色情報のインクタンク1のLED101を点灯」させる手段、「4つのインクタンク総てのインクタンクについて、LED101の点灯がされたか否かを判断する」手段、「正常に装着されたインクタンクそれぞれが正しい位置に装着されているか否かを判断する光照合処理」を行う手段、及び、「装着されるべき位置に誤って何色のインクタンクが装着されてしまったかを特定する」手段を備えていることが把握でき、これらの手段により「キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の液体インク収納容器又はカートリッジの発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器又はカートリッジ位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」ことを可能とするインクジェットプリンタの構成を具体的に構築することは、本件訂正前明細書に記載された事項に基づいて当業者が十分に実施できることである。
してみると、「第1受光部210、制御回路300と共に、これらの手段を備えているインクジェットプリンタ200」が「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」及び「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置」の根拠となり得るから、この訂正内容は、本件訂正前明細書に記載された事項の範囲内において行われたもの(特許法第134条の2第5項、同法第126条第3項)であると認められる。

オ 「前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」
請求項1に係る発明が、色情報に係る信号を発生する電気回路を備えた記録装置に搭載される容器であることを限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
図20の記載から「インクタンク1K、1C、1M、1Yのそれぞれの端子102とバス接続するように、制御回路300からフレキシブルケーブル206を介して延長されている信号線DATAの終端が端子152である」ことが見て取れるとともに、本件訂正前明細書に「ホルダ150に設けられた接点(以下コネクタと称す。)152と、インクタンクに設けられた基板100の外側に向かって位置する面に設けられた接点としての電極パッド102(図5(b))とが接触し、電気的接続が可能になる。」(段落【0033】)、「本体側の制御回路300からインクタンク1の制御部103における入出力制御回路103Aに対し、信号線DATA(図20)を介して『開始コード+色情報』…の各データ信号が…送られてくる。」(段落【0087】)、「『色情報』は、…インクの色『K』、『C』、『M』、『Y』に対応したコードを有しており、入出力制御回路103Aは、このコードが示す色情報とメモリーアレイ103Bに格納されている自身の色情報とを比較し一致しているときにのみ、それ以降のデータ信号を取り込む処理を行い、一致しないときは、それ以降のデータ信号の取り込みを無視する処理を行う。」(段落【0088】)などと、「インクタンクに設けられた接点としての電極パッド102と接触して電気的接続する端子152、すなわちインクタンク1K、1C、1M、1Yのそれぞれの端子102とバス接続する端子152まで、フレキシブルケーブル206を介して延長されている信号線DATAを介して色情報を含む各データ信号を送る本体側の制御回路300」が記載されているから、同訂正は、本件訂正前明細書に記載した事項の範囲内において行われたもの(特許法第134条の2第5項、同法第126条第3項)であると認められる。

カ 「少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」及び「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部」
本件訂正前明細書には、「図21はこれら制御部などが設けられた基板の詳細を示す回路図である。同図に示すように、制御部103は、…メモリーアレイ103B…を有して構成される。…メモリーアレイ103Bは、…収納するインクの色情報の他、そのインクタンクの固有番号や製造ロット番号などの製造情報等のインクタンク個体情報を記憶することができる。なお、色情報は…その収納しているインクの色に対応して、メモリーアレイ103Bの所定のアドレスに書き込まれる。例えばこの色情報は、図23、図24にて後述されるように、インクタンクの識別情報(個体情報)として用いられ、これにより、インクタンクを特定してメモリーアレイ103Bに対応するデータの書き込みやメモリーアレイ103Bからデータの読み出しを行い、また、そのインクタンクのLED101の点灯、消灯を制御することが可能となる。」(段落【0083】)と記載されており、この「メモリーアレイ103B」及び「インクタンクの識別情報(個体情報)として用いられ、その収納しているインクの色に対応する色情報」が、それぞれ「情報保持部」及び「少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報」の実施例であることが明らかであり、上記オで述べた段落【0088】に記載の「インクの色『K』、『C』、『M』、『Y』に対応したコードを有している『色情報』」及び「入出力制御回路103Aは、このコードが示す色情報とメモリーアレイ103Bに格納されている自身の色情報とを比較し一致しているときにのみ、それ以降のデータ信号を取り込む処理を行い、一致しないときは、それ以降のデータ信号の取り込みを無視する処理を行う。」が、それぞれ、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号」及び「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部」の実施例であるといえるから、同訂正は、本件訂正前明細書に記載した事項の範囲内において行われたもの(特許法第134条の2第5項、同法第126条第3項)であると認められる。
そして、本件訂正前特許請求の範囲に記載されている「液体収納容器の個体情報」は、上記のとおり「インクタンクの識別情報(個体情報)として用いられ、その収納しているインクの色に対応する色情報」の他、「そのインクタンクの固有番号や製造ロット番号などの製造情報等のインクタンク個体情報」も含む概念の情報であるところ、これらの個体情報のうちから、「インクタンクの識別情報(個体情報)として用いられ、その収納しているインクの色に対応する色情報」が相当する「液体インク収納容器のインク色を示す色情報」に限定する訂正内容は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。

キ 「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部」
この訂正内容は、例えば、図3(a)の「第1発光部(LED)101からの光の光軸(矢印)が第1受光部210に向かっている」記載及び本件訂正前明細書の「図3(a)に示すように、…キャリッジの走査範囲の端部にあって、図の右上方向に投光される光を受容する位置に受光部を配置し、その部位にキャリッジが位置したときに第1発光部101の発光を制御することで、記録装置側は受光部の受光内容からインクタンク1に係る所定の情報を認識することが可能となる。」(段落【0036】)の記載、あるいは、段落【0038】ないし段落【0047】、段落【0073】、段落【0079】、段落【0110】及び段落【0111】、並びに、図面の図4(a)、図8、図9、図11、図12(a)、図18及び図29の記載からみて、同訂正は、本件訂正前明細書に記載した事項の範囲内において行われたもの(特許法第134条の2第5項、同法第126条第3項)であると認められる。
本件訂正前特許請求の範囲の記載では、「受光部」が液体収納容器からの光を受光することは特定されてはいたが、液体収納容器からの光が発光部からの光であるとは特定されておらず、発光部の配置や発光部からの光に指向性がある場合の光軸方向などは、受光部の配置や向きとの関係で何ら特定されていなかった。本件訂正により、その液体収納容器からの光が発光部からの光であることが限定されるとともに、この補正内容により「発光部」が受光手段に投光するための光を発光するものであことが特定されるのであるから、発光部の配置や発光部からの光に指向性がある場合の光軸方向などは、液体インク収納容器がそのキャリッジに対して装着された記録装置が一つ備える受光部の配置や向きとの関係で限定されたものになる。
したがって、この訂正内容は、発光部を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。

(3)訂正事項A-2について
上記(2)と同様の理由で、訂正事項A-2は、特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)ないし明りょうでない記載の釈明(同項ただし書き第3号)を目的とするものであり、かつ、同条第5項において準用される同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものであるから、適法な訂正であると認められる。

(4)訂正事項A-4について
上記(2)と同様の理由で、訂正事項A-4は、特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)ないし明りょうでない記載の釈明(同項ただし書き第3号)を目的とするものであり、かつ、同条第5項において準用される同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものであるから、適法な訂正であると認められる。

(5)訂正事項A-5について
「容器」を「カートリッジ」とする訂正は誤記の訂正を目的とし、記録ヘッドが吐出する「液体」を「液体インク」とする訂正は特許請求の範囲の限縮を目的とするものであることが明らかであり、他は上記(2)と同様であるから、訂正事項A-5は、特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)、誤記の訂正(同項ただし書き第2号)及び明りょうでない記載の釈明(同項ただし書き第3号)を目的とするものであり、かつ、同条第5項において準用される同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものであるから、適法な訂正であると認められる。

(6)訂正事項A-6について
上記(2)と同様の理由で、訂正事項A-6は、特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)ないし明りょうでない記載の釈明(同項ただし書き第3号)を目的とするものであり、かつ、同条第5項において準用される同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものであるから、適法な訂正であると認められる。

(7)訂正事項A-7について
「前記共通信号線」を「前記共通の信号線」とする訂正は誤記訂正を目的とし、「液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された発光部」における「発光部」を「前記発光部」とする訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とすることが明らかであり、他の訂正事項は上記(2)と同様であるから、訂正事項A-7は、特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)、誤記の訂正(同項ただし書き第2号)及び明りょうでない記載の釈明(同項ただし書き第3号)を目的とするものであり、かつ、同条第5項において準用される同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものであるから、適法な訂正であると認められる。

(8)訂正事項A-8について
上記(2)と同様の理由で、訂正事項A-8は、特許請求の範囲の減縮(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)ないし明りょうでない記載の釈明(同項ただし書き第3号)を目的とするものであり、かつ、同条第5項において準用される同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものであるから、適法な訂正であると認められる。

(9)訂正事項B-1ないしB-6、B-8、B-9、B-11について
訂正事項B-1ないしB-6、B-8、B-9、B-11は、特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載とに齟齬が生じないように訂正したものである。
したがって、訂正事項B-1ないしB-6、B-8、B-9、B-11は、明りょうでない記載の釈明(特許法第134条の2第1項ただし書第3号)を目的とするものであり、かつ、同条第5項において準用される同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものであるから、適法な訂正であると認められる。

(10)訂正事項B-10について
訂正事項B-10は、特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載とに齟齬が生じないように訂正したものである。
また、本件訂正前の「上記処置の位置での発光を検出するようにすることにより」を、「上記所定の位置での発光を検出するようにすることにより」に誤記訂正したものである。
したがって、訂正事項B-10は、誤記の訂正(特許法第134条の2第1項ただし書き第2号)及び明りょうでない記載の釈明(同項ただし書き第3号)を目的とするものであり、かつ、同条第5項において準用される同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものであるから、適法な訂正であると認められる。

(11)訂正事項B-12及びB-13について
訂正事項B-12及びB-13は、訂正後の各請求項に係る発明に含まれない例を参考例とし、該発明に含まれる実施形態と区別したものである。
したがって、訂正事項B-12及びB-13は、明りょうでない記載の釈明(特許法第134条の2第1項ただし書第3号)を目的とするものであり、かつ、同条第5項において準用される同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものであるから、適法な訂正であると認められる。

(12)請求人の主張について
本件訂正についての請求人の主張について以下で検討する。
ア 請求人は、「受光手段」や「受光部」は液体インク収納容器や液体インク収納カートリッジに係る発明の構成要件ではないと主張(上記2(1)参照。)するが、液体インク収納容器や液体インク収納カートリッジは、本件訂正明細書の記載からみて、記録装置のキャリッジに着脱自在に装着して使用するものであるから、液体インク収納容器や液体インク収納カートリッジをそのキャリッジに着脱自在に装着できる記録装置が備えている要素との関係で液体インク収納容器や液体インク収納カートリッジの構成を特定することは不可能ではない。
本件訂正後の特許請求の範囲に記載されている液体インク収納容器や液体インク収納カートリッジは、液体インク収納容器や液体インク収納カートリッジをそのキャリッジに着脱自在に装着できる記録装置が備えている要素との関係でその構成を特定できているので、請求人のこの主張には理由がない。
また、請求人は、「受光手段」が「キャリッジの移動により対向する液体インク収納容器が入れ替わるように配置され」るかどうか、「受光部」が「キャリッジの移動により対向する液体インク収納容器や液体インク収納カートリッジが入れ替わるように配置され」るかどうかは、液体インク収納容器又はカートリッジを実際に記録装置に搭載したときに確認できることであるから、液体インク収納容器又はカートリッジに係る発明の構成を限縮するものではないとも主張(上記2(3)参照。)するが、組み合わせる装置(本件では、インクタンクを装着するプリンタ本体。)の構成を構成要件とすることにより、組み合わされる装置(本件では、インクタンク。)の構成を特定するものであるということができるから、プリンタ側の構成に係る構成要件も、インクタンクの構成を特定するために必要なものであることが認められる。したがって、記録装置の構成に関するものである上記訂正も、発明の対象となる液体インク収納容器を、上記の構成を有する記録装置に着脱可能な容器に限定するものであるという意味で、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められ、請求人のこの主張には理由がない。

イ 請求人は、「受光手段に投光するための光を発光する発光部」、「液体インク収納容器位置検出手段の受光手段に投光するための光を発光する発光部」、「液体インク収納カートリッジ位置検出手段の受光部に投光するための光を発光する発光部」、「液体インク収納容器位置検出手段」といった記載は本件訂正前明細書のどこにも存在しない旨主張(上記2(2)参照。)するが、本件訂正前明細書にそのとおりの記載が在るか否かということと、本件訂正前明細書にその技術事項が記載されているか否かということとは別の問題であるから、本件訂正前明細書にそのとおりの記載が存在しないことのみで、その技術事項が本件訂正により新たに加えられた構成であるとはいえないので、請求人のこの主張には理由がない。

ウ 請求人は、「前記キャリッジの位置に応じて特定された」という意味が不明確である上、本件訂正前明細書には、「液体インク収納容器又はカートリッジ位置検出手段」についての説明はなく、「キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の液体インク収納容器又はカートリッジの発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器又はカートリッジ位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」ことを可能とするための具体的構成は本件訂正前明細書に開示されていないので、これがいかなる機構を指すのかが不明であることから、「液体インク収納容器又はカートリッジ位置検出手段」とは、本件訂正により新たに加えられた構成であるなどと主張する(上記2(4)参照。)が、これを可能とするための具体的構成は上記(2)エで述べたとおり本件訂正前明細書に開示されており、「前記キャリッジの位置に応じて特定された」という意味が、移動するキャリッジの位置に応じてインク色が特定されることであることは明らかであるので、請求人のこの主張には理由がない。

エ 請求人は、「記録装置が液体インク収納容器や液体インク収納カートリッジが正しい位置に搭載されているか否かを判断できるという効果」は、「液体インク収納容器又は液体インク収納カートリッジ側の構成によって実現される効果」ではない旨主張(上記2(5)参照。)するが、本件訂正が液体インク収納容器を限定するものであることは上記アで述べたとおりであるから、請求人のこの主張には理由がない。

オ 請求人は、「接合」と「接続」に書き分けていたものを、確たる理由もなく「接続」に統一する本件訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものではなく、むしろ、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものであるなどと主張(上記2(6)参照。)するが、この訂正が明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、明細書に記載した事項の範囲内において行われたものであると認められることについては、前記(2)ウのとおりである。また、本件訂正前明細書における、インクタンクに設けられた接点と、プリンタのホルダに設けられた接点との関係について記載した部分(段落【0033】、【0057】?【0061】、【0072】、【0080】、図20?24など)をみれば、本件訂正前特許請求の範囲における「液体収納容器に備えられる接点」と「装置側接点」との「電気的」な「結合」ないし「接続」とは、接点同士の接触により電気信号のやり取りが可能な状態となることを意味するものであることは、明らかである。したがって、請求人のこの主張には理由がない。

カ 請求人は、「発光部」を「…受光部に投光するための光を発光する前記発光部」と訂正したところで、液体インク供給システムの発光部を格別の構成を有するものに限定したことにならない旨主張(上記2(7)参照。)するが、このような限定により、本件訂正発明3が後述する課題(「第7 1(2)」参照。)を解決するために役立っていることは、その実施形態(「第7 1(3)」参照。)からみて明らかであり、そもそも、特許請求の範囲を限縮する訂正は格別の構成を有するようにしなければならないといった制限はないので、請求人のこの主張には理由がない。

(13)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正のうち、本件1次審決の送達によりすでに確定した訂正事項A-3及び訂正事項B-7を除いた残余の訂正は適法な訂正であるので、これらの訂正を認める。

第3 本件訂正発明
上記のとおり、本件訂正のうち、訂正事項A-3及び訂正事項B-7は、これを認めた本件1次審決の送達によりすでに確定しており、本件訂正のうち残余の訂正事項も訂正が認められるから、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明7」という。)は、本件訂正明細書、本件訂正特許請求の範囲及び本件図面の記載からみて、本件訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりの次のものである。

「【請求項1】
複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。
【請求項2】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から人力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。
【請求項3】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、
前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、を備える液体インク供給システムにおいて、
前記液体インク収納容器は、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有し、
前記受光部は、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され、
前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出することを特徴とする液体インク供給システム。
【請求項4】
複数の液体インク収納カートリッジを互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納カートリッジに備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納カートリッジが入れ替わるように配置され前記液体インク収納カートリッジの発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する液体インク収納カートリッジ位置検出手段と、
搭載される液体インク収納カートリッジそれぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納カートリッジの前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段は前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納カートリッジにおいて、
液体インクを吐出することで記録を行う記録ヘッドと、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納カートリッジのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納カートリッジ。
【請求項5】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記液体インク収納容器内に収納される液体インクと、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
収納される液体インクのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。
【請求項6】
複数の液体インク収納容器が装着可能な装着部を備えて移動するキャリッジと、
共通の信号線に接続される複数の装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
前記共通の信号線に接続され色情報に係る信号を発生するための電気回路と、を備え、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装着部に装着されることにより、前記複数の装置側接点に接続可能な接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された前記発光部と、
前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点および前記接点を介して入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を具えたことを特徴とする液体インク収納容器。
【請求項7】
複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から人力される前記色情報に係る信号と前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に、前記接点から前記色情報と共に入力される前記発光部の制御に係る信号に基づいて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。」

第4 請求人が主張する無効理由
1 無効理由1(特許法第123条第1項第4号)
(1)明確性要件違反
ア(ア)本件訂正発明1、2、5ないし7は「液体インク収納容器」についての発明であり、本件訂正発明4は「液体インク収納カートリッジ」についての発明である。これらは、「液体インク収納容器」、「液体インク収納カートリッジ」の発明として、それ自体で技術的特徴を備え、特許請求の対象である物の発明として特定できるものでなければ、請求項の記載が明確とはいえない。
ところが、本件訂正発明1、2、4ないし7の各請求項は、その液体インク収納容器又はカートリッジが装着されるであろう記録装置側の構造や、記録装置から送られてくる信号及びそれに基づく制御の形態について記載されている。
(イ)物の発明のクレームの記載において、その「特許請求されている物」自体の構造、動作を特定するのではなく、関連する「他の物」の構造や動作により「特許請求されている物」を特定する記載表現を用いることが直ちに請求項の記載を不明確なものとする訳ではないが、そのような記載表現が許容されるのは、「他の物」の構造等を記載することによって、「特許請求されている物」の発明が明確に特定できる場合に限ると解すべきである。「他の物」についての記載事項により「特許請求されている物」の発明特定事項が特定でき、かつ、それによって「特許請求されている物」の技術的特徴が把握される場合でなければ、上記のような記載表現は、明確性要件を欠くものといわざるを得ない。
(ウ)しかし、本件訂正発明1、2、4ないし7の場合は、「他の物」(記録装置)の構造等が記載されているが、それによって、「特許請求されている物」(液体インク収納容器、液体インク収納カートリッジ)の発明特定事項が明確に特定されることになっているとは、到底認めることができない。
したがって、本件訂正発明1、2、4ないし7の各請求項の記載は、記録装置に関する記載によって、特許請求の範囲が不明確となっている。
(エ)サブコンビネーション発明とは、「特定構造のネジ山を有するボルト」と「該ボルトと嵌合する特定構造のネジ溝を有するナット」の例からも明らかなように、他方の物の構成に密接に関連する「特定のねじ構造」が明確に特定されているボルトとナットなどについてのものであり、このような密接に関連する構造が存在しない本件訂正発明1、2、4ないし7のケースとは明らかに異なるものである。
(オ)本件訂正発明1、2、4ないし7の「受光手段(又は受光部)に投光するための光を発光する発光部」及び「液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段(又は受光部)」における「投光するための光を発光する」と「液体インク収納容器の発光部からの光」との関係が不明確である。しかも、受光時における、発光部と受光手段(又は受光部)との位置関係が不明確である。「投光するための光を発光する」と光の目的を記載しても、例えば、発光部が発光する光をミラーで反射させた反射光を受光手段(又は受光部)に投光する実施形態までが含まれるように、発光部と受光手段(又は受光部)の位置関係は定まらない。
(カ)そもそも、「投光するための光を発光する」という記載は、目的を示したものに過ぎず、液体インク収納容器のどの位置に、どのような構成の「発光部」を設けるのかは何ら具体的に特定されていない。具体的な特定がなければ、「発光部」から発せられた光が「受光手段」(又は受光部)に投光されるか否かは、液体インク収納容器又はカートリッジ側では特定しようがなく、このようなクレームの記載は、液体インク収納容器又は液体インク収納カートリッジの発明特定事項としては不明確といわざるを得ない。

イ 本件訂正発明6において、液体インク収納容器は「液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された前記発光部」を有し、記録装置は「受光手段」を有するが、「液体の収納空間を介さずに」という記載は、具体的に何を意味するのか不明である。本件訂正明細書の段落【0025】には、インクタンク1の内部がインクタンク収納室11と負圧発生部材収納室12に分割されていることの説明があるのみで、本件訂正発明6にいう「液体の収納空間」とは、これらインクタンク収納室11と負圧発生部材収納室12との両方を含む概念であるのか、何れか一方であるのか、本件訂正明細書には、その点についての説明が一切ない。本件訂正発明6にいう「液体の収納空間を介さず」がインク収納室11と負圧発生部材収納室12の双方によって実現されるとか、何れか一方によって実現されるとの記載もない。
したがって、本件訂正発明6において「発光部」を設ける位置は不明というほかなく、本件訂正発明6は、その記載から発明を明確に特定することができず、技術的にも不明確なものとなっている。

ウ(ア)本件訂正発明1ないし7の「前記キャリッジの位置に応じて特定された…」は、キャリッジ内部の各インクタンクの装着箇所に応じて特定されたという意味とも理解し得るし、移動するキャリッジのシャフト上における位置に応じて特定されたという意味とも理解できるという点で、二義的に解釈できる記載となっており、不明確である。
したがって、本件訂正発明1ないし7は、その記載から発明を明確に特定することができず、技術的にも不明確なものとなっている。
(イ)また、仮に、上記構成における「キャリッジの位置に応じて特定された」が移動するキャリッジのシャフト上における位置に応じて特定されたという意味だと仮定しても、キャリッジがシャフト上のいかなる位置に来たときに、キャリッジ内のどのインクタンクを「光らせ」るのかについて、本件訂正発明1ないし7の構成要件は明らかにしていない。
その結果、本件訂正発明1ないし7のクレームは、液体インク収納容器の発光部が受光手段と対向する位置ではなく、対向する位置と隣接する位置やさらに離れた位置において発光する場合はおろか、そもそもキャリッジ自体が受光手段から著しく離れた位置や障害物により光が遮断される位置にある場合など、受光手段が発光部からの発光を受光できず、結果として液体インク収納容器の位置を検出できないようなケースで特定色の液体インク収納容器の発光部を光らせる場合も含まれることになっている。
しかし、受光手段が発光部からの発光を受光できないような場合には、そもそも発光部と受光手段との間に技術的な関連性がないといえ、本件訂正発明1ないし7は、特許請求の範囲が明確でないために、かかる技術的に意味がないような不当に広い範囲にまで特許権が及ぶおそれがあるものといえる。したがって、本件訂正発明1ないし7は、権利範囲が不当に広いという観点から見ても、明確性要件違反の無効理由があるというべきである。

エ 本件訂正発明3の「液体インク収納容器位置検出手段」が本件訂正明細書の段落【0021】以下に記載されている実施形態の記録装置のどの構成に対応するのかについての説明が一切存在しない。つまり、本件訂正発明3は、「液体インク収納容器位置検出手段」を実現するための具体的構成が例示されておらず、当該手段の意味するところが不明となっている。
そのため、本件訂正明細書の記載からは、本件訂正発明3にいう「液体インク収納容器位置検出手段」が、どのような機構によって位置を検出するのか不明であり、「液体インク収納容器位置検出手段」と液体インク収納容器の「発光部」との位置関係や制御関係も不明であるため、本件訂正発明3を特定することができない。
したがって、本件訂正発明3は、本件訂正後の請求項3の記載から発明を明確に特定することができず、技術的にも不明確なものとなっている。

オ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1ないし7は、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件を満たしていない。

(2)サポート要件違反
ア 本件訂正明細書にいう「制御」とは、「発光部」の発光を、いつ、どのタイミングで、点灯、点滅、消灯の何れの状態とするのかについて、自身でコントロールし、また「発光部」の点滅速度を自身で調節し得る機構を指すものというべきである。
ところが、本件訂正明細書には、記録装置側に設けた「制御回路300」が光照合処理等を実現すべく、「発光部」の発光を制御する構成が記載されているのみで、液体インク収納容器側に「発光を制御する制御部」や「発光部を発光させる制御部」を設ける構成はどこにも記載されていない。
したがって、液体インク収納容器側に「発光を制御する制御部」や「発光部を発光させる制御部」が存在することになっている本件訂正発明1ないし7は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、裏付けを欠くものとなっている。
液体インク収納容器側の「入出力制御回路103A」は、記録装置側から送られてくる「色情報」と自身が保持している「色情報」の一致不一致により、点灯、消灯の「制御コード」の受入、無視の処理を行っているものの、自身が「発光部の発光を制御する」ことなく、そのような発光部の点灯制御は記録装置側の「制御回路300」で行っていることは明らかである。

イ 本件訂正発明1ないし7の「…前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」ことに関し、入れ違えによる誤装着の場合に液体インク収納容器の「搭載位置を検出する」ことは、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されていない。
本件訂正明細書には、例えばマゼンタとシアンの入れ違えがあった場合、受光センサは、図30(b)に示すように、マゼンタの液体インク収納容器(1M)からの光を受光しないことにより、マゼンタの液体インク収納容器(1M)がマゼンタの所定位置(M)に装着されていないことを検出できる構成は記載されている。
しかしながら、この場合、シアン(C)の所定位置に装着されたマゼンタの液体インク収納容器(1M)からの光を受光できる訳ではないから、マゼンタの液体インク収納容器(1M)がどの位置に誤装着されているかを検出することはできない。
つまり、本件訂正明細書には、入れ違いによる誤装着の場合に、対象の液体インク収納容器が所定の位置に装着されていないことが検出される実施形態が記載されているのみで、対象の液体インク収納容器の「搭載位置を検出する」ことまでは開示がない。
したがって、本件訂正発明1ないし7は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、裏付けを欠く部分が生じている。

ウ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1ないし7は、特許を受けようとする発明が、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件を満たしていない。

(3)実施可能要件違反
ア 本件訂正発明1ないし7の液体インク収納容器又はカートリッジの「受光手段に投光するための光を発光する発光部」、「液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部」、「液体インク収納カートリッジ位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部」に関して、「発光部」と「受光手段」若しくは「受光部」との位置関係は特定されていない。
すなわち、本件訂正発明1ないし7における「投光するための光」との記載は、謂わば願望の記載に止まるもので、「発光部」と「受光手段」若しくは「受光部」との位置関係を具体的に特定するものではない。
したがって、本件訂正発明1ないし7は、液体インク収納容器又はカートリッジの任意の位置に「発光部」が存在し、それに対していかなる位置に「受光手段」や「受光部」が存在しようとも「発光部」からの光を受光することができ、それによって液体インク収納容器又はカートリッジの搭載位置が検出できることとなっており、いかなる位置関係であっても技術的範囲に含まれるように特許請求されているに等しい。
しかし、本件訂正明細書には、いかなる位置関係であっても「発光部」から投光可能とするための実現手段は開示されていない。
したがって、本件訂正明細書は、発光部と受光手段若しくは受光部がいかなる位置関係であっても当業者が本件訂正発明1ないし7を実施できるように明確かつ十分にその発明の実現手段が開示されているとはいえない。

イ 本件訂正発明1ないし7は、キャリッジがシャフトのいかなる位置に来たときに、キャリッジ内のどのインクタンクを「光らせ」るかについての特定がなされていないところ、本件訂正明細書には、液体インク収納容器の発光部が受光手段と対向する位置ではなく、そもそもキャリッジ自体が受光手段から著しく離れた位置や障害物により光が遮断される位置にある場合であっても、「発光部」から「受光手段」への投光を可能とする実現手段は開示されていない。
したがって、本件訂正明細書には、当業者が本件訂正発明1ないし7を実施できるように明確かつ十分にその発明の実現手段が開示されているとはいえない。

ウ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1ないし7は、発明の詳細な説明の記載が、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件を満たしていない。

(4) まとめ
したがって、本件訂正発明1ないし7は、特許法第123条第1項第4号により無効とされるべきである。

2 無効理由2(特許法第123条第1項第2号)
(1)本件訂正発明1ないし7は、以下のアないしエのとおり、甲第1号証、甲第5号証に記載された発明及び周知技術(甲第2ないし4、6ないし15号証)に基づいて、その最先の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、同法第123条第1項第2号により無効とされるべきである。
ア 甲第1号証発明において、液体インク収納容器の外部からの色情報に係る信号と、情報保持部の保持する色情報とを比較した判断結果を記録装置に伝える仕方として、甲第1号証発明の電気配線を通じた伝送を、甲第3号証に記載された技術、甲第14号証に記載された技術における、発光部の発光による記録装置への伝達に置き換えて、本件訂正発明1と甲第1号証発明との相違点に係る構成を備えることは、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 甲第5号証発明において、液体インク収納容器の外部からの色情報に係る信号と、情報保持部の保持する色情報とを比較した判断結果を記録装置に伝える仕方として、甲第5号証発明の電気配線を通じた伝送を、甲第3号証に記載された技術、甲第14号証に記載された技術における、発光部の発光による記録装置への伝達に置き換えて、本件訂正発明3と甲第5号証発明との相違点に係る構成を備えることは、当業者が容易に想到し得ることである。

ウ 本件訂正発明2、4ないし7は、上記ア及びイと同様の理由により、当業者が容易に想到し得ることである。

エ 被請求人は答弁書において、検出原理が異なる点及び搭載位置を入れ違えて液体インク収納容器又はカートリッジが搭載された場合でも誤装着を検出できる点を主張するが、液体インク収納容器と記録装置との間の伝送方式をどのようにするかは設計事項であるから、甲第1号証発明又は甲第5号証発明の電気配線を通じた伝送に、甲第3号証や甲第14号証に記載されている発光部と受光手段とを用いた情報伝送を適用することに困難性は認められない。また、そのように構成すれば、その結果として、液体インク収納容器の位置を特定し得ることは明らかである。

(2)甲各号証
甲第 1号証 特開2002-370378号公報
甲第 2号証 特開2001-293883号公報
甲第 3号証 特開2002-5818号公報
甲第 4号証 特開平4-275156号公報
甲第 5号証 国際公開第02/40275号
甲第 6号証 特開2002-120379号公報
甲第 7号証 特開2002-234187号公報
甲第 8号証 特開2000-103087号公報
甲第 9号証 特開平10-44451号公報
甲第10号証 特開2002-301829号公報
甲第11号証 特開平10-230616号公報
甲第12号証 特開2003-300358号公報
甲第13号証 特開2002-86697号公報
甲第14号証 特開2002-5724号公報
甲第15号証 特開2002-14870号公報

なお、請求人は、審判請求書において、甲第1?15号証に加えて甲第16?20号証を挙げている。
甲第18号証「株式会社講談社発行『日本語大辞典』1064頁」には、「精気」?「制限漢字」までの語句が収録されている。
(本件訂正発明1ないし7と関連する語句としては、「制御」、「制限」が収録されているが、その意味として、それぞれ、「調節すること」、「限界を定めること」が記載されている。)
甲第16、17、19?20号証は、本件特許及びその特許出願に関するもの並びに本件特許と技術的に関連する他の特許出願の審査の経緯に関するものである。

第5 被請求人の主張
被請求人は、答弁書において、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件訂正明細書及び本件訂正特許請求の範囲の記載は、次の(1)のとおり、無効理由1には該当せず、本件訂正発明1?7は、次の(2)のとおり、請求人のいう無効理由2では特許法第29条第2項の規定に該当しないと主張する。
(1)無効理由1に対して
ア 本件訂正発明1、2、4ないし7では、記録装置と組み合わされる該容器ないしカートリッジを規定したサブコンビネーション発明として、発光部と受光手段ないし受光部との関係を明確に規定しているので、発明の明確性を欠くものにはなっていない。本件訂正特許請求の範囲の記載において、「発光部」と「受光手段ないし受光部」との関係も、「電気回路」と「液体インク収納容器又はカートリッジ」との関係も明確であって、受光手段ないし受光部は発光部からの光を受光するものであり、液体インク収納容器又はカートリッジの搭載位置が検出されることも、発光部が受光手段又は受光部に投光するための構成も、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されており、また、「液体インク収納容器又はカートリッジ」は「電気回路」を備えた「記録装置」に装着可能なものである。
イ 本件訂正発明7における「液体の収容空間」には、インク収納室11及び負圧発生部材収納室12のいずれも該当する。
ウ 本件訂正発明3の「液体インク収納容器位置検出手段」に対応する構成の説明は、段落【0079】、【0108】ないし【0113】に記載されているので、該手段は明確である。
エ 請求人による「制御」の意味の解釈には根拠がなく、本件訂正特許請求の範囲に記載の「制御部」は本件訂正明細書の実施形態にサポートされている。

(2)甲第1号証や甲第5号証は、インクカートリッジの誤装着を検出する構成を開示するが、検出原理が本件訂正発明1ないし7と全く異なる。
本件訂正発明1ないし7の搭載位置検出原理は、代表例として、本件訂正発明3について言うと、
「本件訂正発明3において、記録装置側の受光部は、キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置されている。よって、キャリッジの移動により、液体インク収納容器の発光部と受光部との相対位置関係が変化する。
そして、本件訂正発明3は、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する。」というものである。
甲第1号証や甲第5号証のものは、共通バス接続方式採用の下、該共通バスを利用したデータ通信を利用したものであり、本件訂正発明1ないし7の上記検出原理とは全く異なる。このような検出原理の相違は、本件訂正発明1ないし7によれば、液体インク収納容器ないしカートリッジが正しい搭載位置に搭載されているか否かを検出することができるという効果においても顕著に現れる。
甲第1号証発明や甲第5号証発明においても、全てのインクカートリッジが正しく装着された状態から一つのインクカートリッジを交換する場合には、誤ったインク色のカートリッジの装着を誤装着として検出できるものの、インクカートリッジが正しい装着位置に装着されているか否かを検出することができないため、複数のインクカートリッジが同時に取り外され、対応するインク色のインクカートリッジが装着位置を入れ間違えて装着された場合には、インクカートリッジが誤った装着位置に装着されていることを検出することができない。
本件訂正発明1ないし7は、液体インク収納容器ないしカートリッジが正しい搭載位置に搭載されているか否かを検出することができるため、複数の液体インク収納容器又はカートリッジが同時に取り外され、対応するインク色の液体インク収納容器又はカートリッジが装着位置を入れ間違えて装着された場合であっても、誤った搭載位置に搭載された液体インク収納容器又はカートリッジを特定して誤装着を検出することができる。この点で甲第1号証発明や甲第5号証発明よりも格段に優れている。
以上のことから、本件訂正発明1ないし7は、特許法第29条第2項の規定には該当しない。

第6 甲各号証及び先行技術文献の記載事項
1 甲第1号証の記載事項
(1)甲第1号証には、図とともに次の記載がある。
ア 【特許請求の範囲】
【請求項11】
識別情報を格納する記憶装置を備える印刷記録材容器が複数装着される印刷装置であって、
前記複数の印刷記録材容器に備えられた各記憶装置をバス接続にて接続する信号線と、
前記印刷記録材容器の交換要求を検出する交換要求検出手段と、
前記印刷記録材容器の交換完了を検出する交換完了検出手段と、
前記複数の印刷記録材容器が全て装着されているか否かを判定する装着判定手段と、
前記複数の印刷記録材容器が全て装着されていると判定された場合には、前記信号線を介して前記各記憶装置と通信できるか否かを判定する通信判定手段と、
前記各記憶装置と通信できないと判定された場合には、前記識別情報に基づいて、通信できなかった記憶装置を備える印刷記録材容器を特定する第1の印刷記録材容器特定手段とを備える印刷装置。

イ 【発明の詳細な説明】
(ア)【発明の属する技術分野】
本発明は、バス接続されている記憶装置を備えた印刷記録材容器が複数個用いられる場合に、印刷記録材容器の有無を検出する技術に関する。(段落【0001】)
(イ)【従来の技術】
記憶装置を備える印刷記録材容器、例えば、インクカートリッジが実用化されている。記憶装置には、例えば、印刷記録材(インク)の量に関するデータ、インクの種類に関するデータ、インクカートリッジの製造年月日情報等が格納されている。カラープリンタでは、通常、少なくともシアンインク、マゼンタインク、イエロインク、ブラックインクの4色が用いられる。したがって、ブラックインクカートリッジとカラーインクカートリッジといった2個のインクカートリッジ、または各インク色毎に4個のインクカートリッジがプリンタに装着される。(段落【0002】)
また、インクカートリッジに備えられた各記憶装置と制御回路とを接続する信号線数を低減するために、各記憶装置を識別するための信号線を廃止し、共通のバスを用いて各記憶装置を接続するバス接続の技術が知られている。この技術では、バス接続されている各記憶装置を特定(識別)するために、各記憶装置に対してユニークに割り当てられた識別子が利用される。(段落【0003】)
(ウ)【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、バス接続形式では、インクカートリッジの取り外しは検出できるものの、複数のインクカートリッジが同時に取り外された場合には、どのインクカートリッジが取り外されたかを特定することができないという問題があった。さらに、インクカートリッジに備えられた各記憶装置とプリンタの制御回路との通信が正常に行われない場合には、いずれの記憶装置(インクカートリッジ)に異常が発生しているか報知されず、ユーザは全てのインクカートリッジを脱着して確認しなければならなかった。(段落【0004】)
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、バス接続されている記憶装置を備える印刷記録材容器が印刷装置に複数装着される際に、印刷記録材容器に発生している通信異常を検出し、報知することを目的とする。また、いずれの印刷記録材容器が装着されていないかを検出することを目的とする。さらに、記憶装置と印刷装置との通信が正常に行われない場合に、いずれの印刷記録材容器に備えられている記憶装置が異常であるかを検出することを目的とする。(段落【0005】)
(エ)【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題を解決するために本発明の第1の態様は、識別情報を格納する記憶装置が備えられた印刷記録材容器の異常検出装置を提供する。本発明の第1の態様に係る異常検出装置は、前記複数の印刷記録材容器に備えられた各記憶装置をバス接続にて接続する信号線と、前記信号線を介して全ての前記印刷記録材容器に備えられている前記記憶装置と通信できるか否かを判定する通信判定手段と、前記通信判定手段によって、全ての前記記憶装置と通信できないと判定された場合には、前記識別情報に基づいて、通信異常の発生した記憶装置を備える印刷記録材容器を特定する異常印刷記録材容器特定手段を備えることを特徴とする。(段落【0006】)
本発明の第1の態様に係る異常検出装置によれば、複数の印刷記録材容器に備えられている記憶装置と通信できるか否かを判定し、通信異常が発生している場合には、識別情報を用いて通信異常の発生した記憶装置を備える印刷記録材容器を特定するので、バス接続されている記憶装置を備える印刷記録材容器が印刷装置に複数装着される際に、いずれの印刷記録材容器に通信異常が発生しているかを検出することができる。ここで、通信異常の発生した記憶装置を備える印刷記録材容器を特定は、例えば、記憶装置に対して識別情報を送信し、送信した識別情報に対して記憶装置が応答するか否かに基づいて特定しても良い。あるいは、記憶装置に格納されている識別情報を検索して、目的とする識別情報が存在するか否かに基づいて特定しても良い。(段落【0007】)
本発明の第1の態様に係る異常検出装置はさらに、前記複数の印刷記録材容器を、印刷記録材容器の取り外しができない位置まで移動させて前記印刷記録材容器が装着されているか否かを判定する装着判定手段と、前記印刷記録材容器が装着されていないと判定された場合には、前記通信異常は、印刷記録材容器が装着されていないことに起因すると判定する通信異常理由判定手段とを備えても良い。かかる場合には、印刷記録材容器の脱着を許容しない構造を備えることによって、印刷記録材容器の有無をより確実に検出することができると共に、通信異常の理由が、印刷記録材容器の非装着に起因するものであると判断することができる。(段落【0008】)
本発明の第1の態様に係る異常検出装置において、前記異常印刷記録材容器特定手段は、前記複数の印刷記録材容器に対応する各識別情報を順次、検索し、検索できなかった識別情報が格納されている記憶装置を有する印刷記録材容器を、前記通信異常の発生した印刷記録材容器として特定しても良い。(段落【0011】)
本発明の第2の態様に係る報知装置において、前記印刷記録材容器に備えられている記憶装置は、互いにバス接続にて接続されており、前記記憶装置には固有の識別情報が格納されており、前記印刷記録材容器特定手段は、前記識別情報に基づいて、通信異常の発生した記憶装置を備える印刷記録材容器を特定しても良い。かかる構成を備える場合には、本発明の第1の態様に係る異常検出装置と同様の作用効果を得ることができる。(段落【0017】)
カラープリンタ10は、図示するように、キャリッジ11に搭載された印字ヘッドIH1?IH6を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、このキャリッジ11をキャリッジモータ12によってプラテン13の軸方向に往復動させる機構と、紙送りモータ14によって印刷用のカット紙Pを搬送する機構と、制御回路30とから構成されている。キャリッジ11をプラテン13の軸方向に往復動させる機構は、プラテン13の軸と並行に架設されたキャリッジ11を摺動可能に保持する摺動軸15と、キャリッジモータ12との間に無端の駆動ベルト16を張設するプーリ17等から構成されている。カラープリンタ10には、インクカートリッジCAの交換を初めとする、プリンタ10対する各種指示を入力するための操作ボタン、表示ランプ351を備える操作パネル35が備えられている。(段落【0033】)
制御回路30は、プリンタ10を印刷記録材容器(インクカートリッジ)の異常検出装置として機能させる他、プリンタ10の操作パネル35と信号をやり取りしつつ、紙送りモータ14やキャリッジモータ12、印字ヘッドIH1?IH6の動きを適切に制御する。キャリッジ11にはインクカートリッジCA1?CA6が装着されている。例えば、インクカートリッジCA1には黒(K)インク、インクカートリッジCA2にはシアン(C)インク、インクカートリッジCA3にはライトシアン(LC)インク、インクカートリッジCA4にはマゼンタ(M)インク、インクカートリッジCA5にはライトマゼンタ(LM)インク、インクカートリッジCA6にはイエロー(Y)インクの各インクが収納されている。(段落【0034】)
次に、図2および図3を参照してインクカートリッジに備えられている記憶装置と制御回路30(パーソナルコンピュータPC)との接続状態について説明する。図2はキャリッジ11上に装着されているインクカートリッジCA1?CA6と制御回路との接続状態を概略的に示す説明図である。図3はインクカートリッジCA1?CA6に備えられている各記憶装置21?26と制御回路30(パーソナルコンピュータPC)との接続状態を示すブロック図である。なお、図3では説明を容易にするために、記憶装置21、22、23、26を備えるインクカートリッジCA1、CA2、CA3、CA6とが代表して模式的に示されている。また、本実施例に係る印刷記録材容器の異常検出装置の構成は、図3に示す構成に限定されるものではない。(段落【0036】)
各記憶装置21?26は、既述のように、インクジェットプリンタ用の6色のインクカートリッジCA1?CA6それぞれ備えられている。また、本実施例では、記憶装置として不揮発的に記憶内容を保持すると共に記憶内容を書き換え可能なEEPROMを用いた。各記憶装置21?26は、その内部に、識別情報を格納する記憶素子(メモリアレイ)、送信されてきた識別情報と記憶素子内に格納されている識別情報とを比較するIDコンパレータ、命令コードを解析するオペレーションデコーダ、アドレス位置をカウントアップするアドレスカウンタ、記憶素子に対する読み出し/書き込みを制御するI/Oコントローラ等を備えている。(段落【0037】)
各記憶装置21?26内の記憶素子に格納されている識別情報は、それぞれインクカートリッジCA1?CA6内に収容されているインク色を識別するための識別情報である。各記憶装置21?26は、制御回路30から識別情報が送信されてくると送信されてきた識別情報と自己の識別情報とを比較解析し、解析した識別情報が記憶素子内に格納されている識別情報と一致する場合には、アクセス許可の応答信号を制御回路30に対して送り返す。これによって、制御回路30は、アクセスを所望するインクカートリッジCA1?CA6に対して選択的にアクセスすることができる。また、識別情報が書き込みデータと共にデータ列として送信されてきた場合には、識別情報の一致を確認後、書き込みデータの書き込みを許容する。(段落【0038】)
各記憶装置21?26のデータ信号端子DT、クロック信号端子CT、リセット信号端子RTは、データバスDB、クロックバスCB、リセットバスRBを介してそれぞれ接続されている。制御回路30は、データ信号線DLへ送出するためのデータ列を一時的に格納しておくバッファメモリを備えている。なお、信号線は、例えば、フレキシブル・フィード・ケーブル(FFC)として実現され得る。(段落【0039】)
制御回路30の電源正極端子VDDHと各記憶装置21?26の電源正極端子VDDMとは電源供給線VDLを介して接続されている。また、各記憶装置21?26の電源負極端子VSSは、キャリッジ11上の接地線GDLに接続されている。キャリッジ11上には、インクカートリッジCA1?CA6に備えられているカートリッジアウト検出用端子CAOTをカスケードに接続するカートリッジアウト検出線CDLが配置されている。カートリッジアウト検出線CDLの一端は接地されており、他端はカートリッジアウト信号線COLを介してパーソナルコンピュータPCのカートリッジアウト検出端子COTと接続されている。(段落【0040】)
制御回路30は、CPU31を介して、クロック信号生成機能、リセット信号生成機能、電源監視機能、電源回路、データ記憶回路および各回路を制御する制御機能を実現する制御装置であり、記憶装置21?26に対するアクセスを制御する。制御回路30は、カラープリンタ10の本体側に配置されており、電源がオンされると、データ信号線DL記憶装置21?26から、インク消費量、インクカートリッジの装着時間といったデータを取得しデータ記憶回路に記憶する。また、電源がオフされる際には、データ信号線DLを介して記憶装置21?26に対して、それぞれインク消費量、インクカートリッジの装着時間といったデータを書き込む。(段落【0042】)
制御回路30は、インクジェットプリンタの電源投入時、インクカートリッジの交換時、印刷ジョブの終了時、インクジェットプリンタの電源遮断時等に、記憶装置21?26に対するアクセスを実行する。制御回路30は、記憶装置21?26に対してアクセスする場合には、リセット信号生成回路に対してリセット信号RSTの生成を要求する。制御回路30は、インクカートリッジCAの装着の有無、通信の状態を検出する際には、インクカートリッジCA1?CA6に対応する識別情報を順次、データ信号線DL上に送出する。これに対して、アクセスを所望するインクカートリッジCAが決まっている場合には、アクセスを所望するインクカートリッジCAの識別情報が先頭列に格納されているデータ列をデータ信号線DL上に送出して、各インクカートリッジCA1?CA6の記憶装置21?26に送信する。(段落【0043】)
一方、制御回路30は、いずれかのインクカートリッジCAが装着されておらずCO≠0である、すなわち入力値が1であると判定した場合には(ステップS130:NO)、存在しない、すなわち、装着されていないインクカートリッジCAを検出する(ステップS150)。装着されていないインクカートリッジCAの検出に際しては、制御回路30は、各記憶装置21?26に割り当てられている識別情報を順次、データ信号線DLへ送出する。本実施例における記憶装置21?26は、送出されてきた識別情報と自己が格納する識別情報とが一致する場合には、応答信号を制御回路30に対して送り返すので、制御回路30は、応答信号の無い記憶装置を備えるインクカートリッジCAを装着されていないインクカートリッジCAとして検出する。(段落【0051】)
制御回路30は、装着されていないインクカートリッジCAを検出すると、装着されていないインクカートリッジCAを報知する(ステップS160)。報知の態様としては、例えば、パーソナルコンピュータPCを介して印刷処理が実行されている場合には、表示モニタMN上に表示されているインクカートリッジCAのステータスウィンドウにおいて、装着されていないインクカートリッジCAを表示したり、インクカートリッジが装着されていない旨を警告する警告文を表示するようにしても良い。あるいは、プリンタ10の操作パネル35上に各インクカートリッジに対応して備えられている表示ランプ351を点滅させるようにしても良い。(段落【0052】)

ウ 図1の記載から、複数のインクカートリッジ(印刷用記録材容器)CA1ないしCA6が、移動するキャリッジ11の互いに異なる位置に搭載されていることが見て取れる。

(2)甲第1号証に記載の発明
以上の記載から、甲第1号証には、
「複数のインクカートリッジ(印刷用記録材容器)を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該インクカートリッジに備えられるデータ信号端子と電気的に接続可能なプリンタ側端子と、
各インクカートリッジに対応して設けられ、装着されていない又は通信異常のあるインクカートリッジを点灯して示す操作パネル上の表示ランプと、
搭載されるインクカートリッジそれぞれの前記端子と接続され、インクカートリッジを識別するための識別情報を送出するためのデータバスとを有し、装着されていない又は通信異常のあるインクカートリッジに対応する操作パネル上の表示ランプを点灯させ、その点灯結果に基づいて装着されていない又は通信異常のあるインクカートリッジを報知するカラープリンタのキャリッジに対して着脱可能なインクカートリッジであって、
前記データバスに接続可能な前記データ信号端子と、
インクカートリッジのインク色を識別するための識別情報を格納する記憶素子(メモリアレイ)、送信されてきた識別情報と記憶素子内に格納されている識別情報とを比較するIDコンパレータ等を内部に備え、前記データ信号端子から入力される識別情報と、前記記憶素子(メモリアレイ)に格納されている識別情報とが一致する場合に、応答信号をカラープリンタ側の制御回路に対して送り返す、EEPROMを用いた記憶装置とを有し、
前記カラープリンタ側の制御回路は、前記応答信号の無い記憶装置を備えるインクカートリッジを、装着されていないインクカートリッジとして検出し、装着されていないインクカートリッジを前記表示ランプを点滅させて報知するようになっているカラープリンタに対して着脱可能なインクカートリッジ。」の発明(以下「甲第1号証発明」という。)が開示されているものと認められる。

2 甲第2号証の記載事項
(1)甲第2号証には、以下の記載が存在する。
ア 【特許請求の範囲】
【請求項21】 立体形半導体素子からの伝達を受信する手段を有する請求項19または20に記載のインクジェット記録装置。

イ 【発明の詳細な説明】
また本発明のインクジェット記録装置は、上記のインクタンクを搭載したものである。この場合の記録装置は、インクタンク内の立体形半導体素子へ、前記エネルギー変換手段が変換する外部エネルギーとして起電力を供給する手段を有することが好ましい。前記起電力は電磁誘導または熱または光または放射線が考えられる。更に、上記のインクジェット記録装置は、立体形半導体素子からの伝達を受信する手段を有することが好ましい。(段落【0025】)
(第3の実施の形態)図5は本発明の第3の実施の形態による立体形半導体素子の内部構成および外部とのやり取りを表したブロック構成図である。この図で示す形態の立体形半導体素子31は、外部Aから素子31に向かって非接触で供給された起電力32を電力33に変換するエネルギー変換手段34と、エネルギー変換手段34で得た電力を用いて浮力を発生させる浮力発生手段35とを備え、インクタンク内のインク中に配される。(段落【0059】)
図7は素子31の位置を確認し、タンク交換の必要性を判断するためのフローチャートである。図5及び図7のステップS31?S34を参照すると、外部A又は外部B(例えばインクジェット記録装置)により素子31に向けて光を発信し、その光を外部A又は外部B(例えばインクジェット記録装置)又は外部Cで受信することにより素子31の位置が検知され、この素子の位置によりインクタンク交換の必要があるか等をインクジェット記録装置が判断し、必要がある場合はタンク交換を音や光等で報知する。(段落【0062】)
この素子の位置の検出は、発光手段と受光手段が対向して設けられていて、素子の部分が光を通さないことにより位置が確認されるもの、もしくは発光手段から発した光が受光手段に向けて反射することにより確認されるものなどが用いられる。(段落【0063】)
本実施形態によれば、液体の比重が異なるなど素子が用いられる環境により素子に必要な浮力などが変化する場合においても、外部からの起電力をエネルギー変換手段により変換して所望の位置に常に素子が存在するように設定することができるので、素子が置かれる環境に関わらず素子を使用することが可能である。(段落【0064】)
なお、本実施形態は上述した第1及び第2の実施の形態に適宜組み合わせることも可能である。(段落【0065】)

(2)以上の記載から、甲第2号証には、インクジェット記録装置からインクタンク内の素子に光を発信し、インクジェット記録装置で受信することにより素子の位置を検出する受光手段を設けることが開示されていると認められる。

3 甲第3号証の記載事項
(1)甲第3号証には、以下の記載が存在する。
ア 【特許請求の範囲】
【請求項1】 外部からのエネルギーを異なる種類のエネルギーに変換するエネルギー変換手段と、該エネルギー変換手段で変換されたエネルギーにより発光する発光手段とを有する立体形半導体素子。
【請求項4】 前記エネルギー変換手段が変換する外部エネルギーは非接触で供給される、請求項1から3のいずれか1項に記載の立体形半導体素子。
【請求項5】 前記エネルギー変換手段で変換されたエネルギーは電力である、請求項1から4のいずれか1項に記載の立体形半導体素子。
【請求項6】 請求項1から5のいずれか1項に記載の立体形半導体素子が少なくとも1つ配されたインクタンク。
【請求項7】 請求項6に記載のインクタンクが搭載されるインクジェット記録装置であって、前記インクタンク内に配された前記立体形半導体素子の発光手段で発光され、前記インクタンク内に収容されたインクを透過した光を受光する受光手段を備えているインクジェット記録装置。
【請求項8】 複数の前記インクタンクの各々が、それぞれの前記インクタンク内に収容されたインクの種類に従って所定の位置に装着されるように構成されており、前記光を受光した前記受光手段によって前記インクタンクが不適切な位置に装着されたことが検知されたときにユーザーに警告を発する手段を備えている、請求項7に記載のインクジェット記録装置。

イ 【発明の詳細な説明】
(ア)【発明の属する技術分野】
本発明は、外部からエネルギーが供給されると発光する立体形半導体素子に関する。(段落【0001】)
また本発明は、上記の立体形半導体素子が配されたインクタンク、および該インクタンクが着脱可能に搭載される、ファクシミリ・プリンター・複写機等に用いられるインクジェット記録装置に関する。(段落【0002】)
(イ)【従来の技術】
従来、記録ヘッドに設けた複数の噴射ノズルからインクを噴射させながら、記録ヘッドを搭載したキャリッジを印字方向に移動することで、画像をドットパターンで用紙に印字するようにしたインクジェット記録装置においては、記録用のインクを収容したインクタンクを設け、そのインクタンクのインクをインク供給路を介して記録ヘッドに供給するようにしている。そこで、そのインクタンクのインクの残量を検出するようにしたインク残量検出装置が実用に供されることについても、種々提案されている。(段落【0003】)
(ウ)【発明が解決しようとする課題】
上述した従来公報に代表するような、インクタンク内のインク残量を検出する構成が知られているが、このような構成ではインクタンク内に検出用の電極を配置する必要がある。また、電極間の導通状態によりインク残量を検知するため、インク成分に金属イオンを用いることができない等、使用するインクに制約が生じてしまう。また、上記の構成ではインク残量しか検知することができず、インクタンク内に収容されているインクの種類等のタンク内情報を知ることができない。(段落【0006】)
さらに、複数のインクを用いて印字するインクジェット記録装置では、インクを無駄なく使うために、各色ごとの複数のインクタンクを所定の位置に装着する場合がある。そのようなインクジェット記録装置では、ユーザーがインクタンクを不適切な位置に装着するのを防止するために、各色のインクタンクを異なる形状にし、不適切な位置では装着できないようにすることが一般的である。しかしながら、インクの色の数だけインクタンクの形状を異ならせることで、インクタンクのコストアップに繋がる場合があった。したがって、インクタンクの形状は同じでありつつ、誤装着を防止することが可能なインクタンクが望まれている。(段落【0007】)
上記のようなインクタンクを開発するにあたって、本発明者らは、直径1ミリのシリコン・ボールの球面上に半導体集積回路を形成するというボール・セミコンダクター社のボール・セミコンダクターに着目した。このボールセミコンダクターは球形であるため、これをインクタンク内に収容すれば、外部との情報のやり取りを平面形に比べて非常に効率良く行えることが予想された。しかしながら、このような機能を持つものを調査したところ、USP5877943号のようにボール・セミコンダクター同士を電気配線で接続する技術などが存在するだけで、上記の機能を持つ素子自体の開発が必要となった。また、この素子がインクタンクに有効に適用できるものである為には、クリアしなければならない課題もあった。課題の一つは、タンク内に収容された素子を起動させるための電力の供給である。素子の起動のための電源をインクタンクに持たせるとタンクが大型になったり、タンク外部に電源を備える場合でも電源と素子との接続手段が必要になり、タンクの製造コストが増え、タンクカートリッジが高価になるので、外部より非接触で素子を起動させねばならない。(段落【0008】)
本発明の目的は、インクタンク内に収容されているインクの種類等の検出に用いられる立体形半導体素子を提供することにある。(段落【0010】)
また、本発明の更なる目的は、上記素子が配されたインクタンク、および該インクタンクが搭載されるインクジェット記録装置を提供することにある。(段落【0011】)
(エ)【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の立体形半導体素子は、外部からのエネルギーを異なる種類のエネルギーに変換するエネルギー変換手段と、該エネルギー変換手段で変換されたエネルギーにより発光する発光手段とを有する。(段落【0012】)
上記のように構成された本発明の立体形半導体素子では、外部からのエネルギーを供給すると、その外部エネルギーはエネルギー変換手段によってそれとは異なるエネルギーに変換される。立体形半導体素子の発光手段は、エネルギー変換手段によって変換されて生成したエネルギーによって発光する。エネルギー変換手段および発光手段が立体形の半導体素子に作り込まれており、3次元的にエネルギー伝達が可能なので、平板形の半導体素子を用いる場合と比べて、エネルギー伝達の方向の制限も少ない。このため、外部からのエネルギーの供給および光の放射を効率良く行うことができる。(段落【0013】)
一般に、インクジェット記録装置等において用いられるインクは、インク色ごとに光の吸収スペクトルが異なるので、インクを透過した光のある波長における強度を検出することによって、その光が透過したインクの色種類を判別することができる。したがって、立体形半導体素子で発光した光をインク中に透過させ、その透過光のある波長における強度を検出することにより、そのインクの種類を判別することが可能になる。(段落【0014】)
さらに、前記エネルギー変換手段が変換する外部エネルギーは非接触で供給される構成とすることにより、素子の起動のためのエネルギー源をインクタンクに持たせたり、エネルギー供給用の配線を素子に接続する必要がなく、外部との直接的な配線を施すことが困難な箇所に使用することができる。(段落【0017】)
さらには、前記エネルギー変換手段で変換されたエネルギーは電力である構成としてもよい。この構成によれば、外部エネルギー変換手段として発振回路の導電体コイルを立体形半導体素子の外表面に巻き付けるように形成することにより、外部の共振回路との間で電磁誘導によって導電体コイルに電力を発生させて、素子に非接触で電力を供給することができる。(段落【0018】)
また、本発明のインクジェット記録装置は、上記本発明のインクタンクが搭載されるインクジェット記録装置であって、前記インクタンク内に配された前記立体形半導体素子の発光手段で発光され、前記インクタンク内に収容されたインクを透過した光を受光する受光手段を備えている。(段落【0020】)
さらに、複数の前記インクタンクの各々が、それぞれの前記インクタンク内に収容されたインクの種類に従って所定の位置に装着されるように構成されており、前記光を受光した前記受光手段によって前記インクタンクが不適切な位置に装着されたことが検知されたときにユーザーに警告を発する手段を備えている構成としてもよい。これによれば、ユーザはインクタンクを適切な位置に装着し直すことができる。(段落【0021】)
(オ)【発明の実施の形態】
外部エネルギーの供給方法としては、インクジェット記録装置に用いられる場合、素子に外部エネルギーとして起電力を供給する手段は、回復ポジション、リターンポジション、もしくはキャリッジ、記録ヘッド等に設ければ良い。(段落【0028】)
本発明の立体形半導体素子を備えたインクタンクを搭載するインクジェット記録装置の構成例を図5に概略図で示す。図5に示されるインクジェット記録装置600に搭載されたヘッドカートリッジ601は、印字記録のためにインクを吐出する液体吐出ヘッドと、その液体吐出ヘッドに供給される液体を保持する図2?図4に示したようなインクタンクとを有するものである。また、該インクタンク内に配された立体形半導体素子へ外部エネルギーである起電力を供給する手段622や前記素子から放射された光を受光する手段(不図示)が記録装置600内に設置されている。(段落【0032】)
ヘッドカートリッジ601は、図5に示すように、駆動モータ602の正逆回転に連動して駆動力伝達ギヤ603および604を介して回転するリードスクリュー605の螺旋溝606に対して係合するキャリッジ607上に搭載されている。駆動モータ602の動力によってヘッドカートリッジ601がキャリッジ607ともとにガイド608に沿って矢印aおよびbの方向に往復移動される。(段落【0033】)。
図6において、外部共振回路101のコイルLaに隣接して、発振回路102の導電体コイルLを置き、外部共振回路101を通じてコイルLaに電流Iaを流すと、電流Iaによって発振回路102のコイルLを貫く磁束Bが生じる。ここで、電流Iaを変化させるとコイルLを貫く磁束Bが変化するので、コイルLには誘導起電力Vが生じる。したがって、球状シリコンにエネルギー発生手段としての発振回路102を作り込み、素子外部の例えばインクジェット記録装置に外部共振回路101を、素子側の発振回路102の導電体コイルLと素子外部の共振回路101のコイルLaとが隣接するように配設することにより、外部からの電磁誘導による誘導起電力で、素子を動作させる電力を発生することが出来る。(段落【0040】)
図7は、本発明の立体形半導体素子を用いたインクタンクの概略構成図である。この図で示す立体形半導体素子526は、インクタンク521内の生インク522の液面付近に浮遊しており、インクタンク521外の外部共振回路(不図示)によって電磁誘導による起電力を誘起させられ、立体形半導体素子526の表面に付近に配設されたフォトダイオードが駆動されることで、光を発する。その光は、インク522を透過し、インクタンク521の外部の光センサ550で受光される。(段落【0057】)
図8に、代表的なインク(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の吸光波長を示す。図8からわかるように、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色のインクは、300?700nmの波長帯において吸光率のピークが分散している。各色のインクの吸光率のピークは、イエローが約390nm、マゼンダが約500nm、ブラックが約590nm、シアンが約620nmである。そのため、300?700nmの範囲の波長を含む光を立体形半導体素子から発光させ、その光をインク中に透過させてインクタンク外にある光センサ550(図7参照)で受光し、どの波長が最も吸収されたかを検知することで、光が透過したインクの色が上記のうちのいずれであるかを判別することができる。(段落【0058】)
また、複数のインクタンクの各々が、それぞれのインクタンク内に収容されたインクの種類に従って所定の位置に装着されるように構成されているインクジェット記録装置においては、インクタンク内のインクを透過した光を受光した光センサ550によってインクタンクが不適切な位置に装着されたことが検知されたときにユーザーに警告を発する手段が備えられていてもよい。この場合の警告手段としては、ランプ等の発光手段やブザー等の鳴音手段などを用いることができる。ユーザーは、警告手段による警告によってインクタンクを誤った位置に装着したことを知り、そのインクタンクを本来の位置に装着し直すことができる。(段落【0061】)
【図6】

【図7】


(2)甲第3号証に記載の発明
上記各記載によれば、甲第3号証には、「複数のインクタンクを搭載して移動するキャリッジと、前記インクタンクの発光手段からの光を受光する光センサを備えたインクジェット記録装置に対して着脱可能なインクタンクにおいて、前記光センサに投光するための光を発光する前記発光手段を有するインクタンク。」の発明(以下「甲第3号証発明」という。)が開示されているものと認められる。

4 甲第4号証の記載事項
(1)甲第4号証には、以下の記載が存在する。
ア 【特許請求の範囲】
【請求項1】 インクタンクと印字ヘッドとを一体化したインクカードリッジを着脱自在に搭載するインクジェットプリンタにおいて、前記印字ヘッドの通電回数をカウントするカウント手段と、このカウント手段によるカウント値を累積記憶する記憶手段と、この記憶手段による記憶値に基づいて前記インクタンクのインク残量を報知する報知手段とを具備したことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】 インクタンクと印字ヘッドとを一体化したインクカードリッジ本体と、このインクカートリッジ本体に着脱自在に装着され、前記印字ヘッドの通電回数累積値を記憶する記憶手段、及びこの記憶手段による記憶値に基づいて前記インクタンクのインク残量を報知する報知手段を備えたアダプタとからなることを特徴とするインクカートリッジ。

イ 【発明の詳細な説明】
(ア)【課題を解決するための手段】
本発明は、インクタンクと印字ヘッドとを一体化したインクカードリッジを着脱自在に搭載するインクジェットプリンタにおいて、印字ヘッドの通電回数をカウントするカウント手段と、このカウント手段によるカウント値を累積記憶する記憶手段と、この記憶手段による記憶値に基づいてインクタンクのインク残量を報知する報知手段とを備えたものである。(段落【0007】)
(イ)【実施例】
19はインクカートリッジであって、インクタンク20と印字ヘッド21とを一体的に構成したものである。インクタンク20内には、図示しないがインクを染み込ませたスポンジが充填されている。またインクタンク20の上面には、インクエンド表示用のLED22とニアエンド表示用のLED23が取付けられている。さらに、上記インクタンク20の側面にPC板24が取付けられている。このPC板24には、前記印字ヘッド21の制御回路、各LED22、23の表示回路及び後述するEEPROM(電気的消去形プログラマブルROM)41が装備されている。また、インクタンク20から突出している部分が接点パターンになっており、この部分を前記PC板コネクタ17に挿入することによって、インクカートリッジ19がキャリッジ16に着脱自在に装着されることになる。(段落【0015】)

ウ 【図1】


(2)上記各記載によれば、甲第4号証には、インクジェットプリンタにおいて、印字ヘッドの通電回数をカウントし、通電回数累積値が一定値に達するとインク残量が少なくなった旨をインクタンクに設けたLEDで報知する構成が開示されている。

5 甲第5号証の記載事項
(1)甲第5号証には、以下の記載が存在する。
ア 請求の範囲
(第1項)
印刷装置に装着されると共に識別情報を格納する記憶装置を有する印刷記録材容器を識別する識別装置であって、
前記記憶装置に格納されている識別情報を利用して、前記装着された印刷記録材容器が装着されるべき正しい印刷記録材容器であるか否かを判定する判定手段とを備える印刷記録材容器の識別装置。(45頁2行?6行)
(第2項)
請求の範囲第1項に記載の印刷記録材容器の識別装置はさらに、
前記判定手段によって、前記装着された印刷記録材容器が装着されるべき正しい印刷記録材容器でないと判定された場合には、誤った印刷記録材容器が装着された旨を報知する報知手段を備える印刷記録材容器の識別装置。(45頁8行?11行)
(第4項)
請求の範囲第1項ないし請求の範囲第3項のいずれかに記載の印刷記録材容器の識別装置において、
前記印刷装置には複数の印刷記録材容器が既定の装着位置にそれぞれ装着されており、
前記判定手段は、前記各装着位置に装着されるべき印刷記録材容器と前記装着位置とを関連付ける装着位置情報を有し、前記装着された印刷記録材容器に装着されている記憶装置の識別情報と前記装着位置情報とに基づいて、前記装着された印刷記録材容器が装着されるべき正しい印刷記録材容器であるか否かを判定することを特徴とする印刷記録材容器の識別装置。(45頁19行?46頁1行)
(第16項)
収容されている印刷記録材の種類に対応した識別情報を格納する記憶装置を有する複数の印刷記録材容器が装着される印刷装置における印刷記録材容器の交換制御装置であって、
印刷記録材の交換要求を検出する交換要求検出手段と、
前記交換の要求された印刷記録材を内包する印刷記録材容器を交換位置まで移動させる印刷記録材容器移動手段と、
前記交換位置に移動された前記印刷記録材容器の取り外しを検出すると共に、取り外しに続く印刷記録材容器の装着を検出する脱着検出手段と、
前記識別情報を利用して、前記装着された印刷記録材容器が交換の要求された印刷記録材を内包する正しい印刷記録材容器であるか否かを判定する判定手段とを備える印刷記録材容器の交換制御装置。(49頁26行?50頁10行)

イ 技術分野
本発明は、印刷装置における印刷記録材容器の識別技術に関し、さらに詳細には印刷記録材容器交換に際して正しい印刷記録材容器が装着されたか否かを識別する技術に関する。(1頁5行?7行)

ウ 発明の背景
複数色のインクカートリッジ(印刷記録材容器)を備えるカラープリンタにおいて、インクカートリッジの交換時におけるインクカートリッジの誤装着、すなわち、交換されるべきインク色とは異なるインクカートリッジの装着、を防止するための技術が提案されている。例えば、インク色毎にインクカートリッジの外形形状を変更し、誤ったインクカートリッジが物理的に装着できないようにする技術が知られている。
また、同一の外形形状を有するインクカートリッジを用いる場合には、一個のインクカートリッジのみが脱着可能な開口部を有するカバーをプリンタ上に設け、交換されるべきインクカートリッジを開口部まで移動させて、交換されるべきインクカートリッジのみの脱着を許容する技術が知られている。
しかしながら、インク色毎に異なる外形形状を有するインクカートリッジを用いる場合には、インクカートリッジを再利用する際にインク色毎にしかインクカートリッジを再利用することができず、リサイクル効率が悪いという問題があった。また、インクカートリッジの誤装着は防止できても交換を要しないインクカートリッジを誤まって取り外してしまうという問題は防止することができなかった。さらに、インク色毎にインクカートリッジ用の異なる金型を作成しなければならず、コスト高になるという問題があった。
インクカートリッジを所定の交換位置まで移動させる技術では、交換されるべきでないインクカートリッジの誤った取り外しは防止できても、装着されたインクカートリッジが正しいインクカートリッジであるか否かまでは検出することはできず、誤装着は防止できないという問題があった。(1頁10行?2頁4行)

エ 発明の開示
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、外形的な識別形状を用いることなく印刷記録材容器交換時における印刷記録材容器の誤装着を防止することを目的とする。また、交換されるべきでない印刷記録材容器の誤った取り外しを防止することを目的とする。(2頁7行?10行)
本発明の第3の態様は、印刷記録材の種類に対応する識別情報を格納する記憶装置を備えると共に前記印刷記録材の種類に応じて印刷装置上に既定の位置に装着される印刷記録材容器の識別方法を提供する。本発明の第3の態様に係る印刷記録材容器の識別方法は、前記印刷記録材容器の取り外しを検出し、前記取り外された印刷記録材容器が装着されていた装着位置を記憶し、前記印刷記録材容器の装着を検出し、前記記憶装置に格納されている識別情報を利用して、前記装着された印刷記録材容器の印刷記録材の種類を識別し、前記装着された印刷記録材容器の装着位置と、前記装着された印刷記録材容器の印刷記録材の種類とに基づいて、正しい印刷記録材容器が装着されたか否かを判定しても良い。
本発明の第3の態様に係る印刷記録材容器の識別方法によれば、取り外された印刷記録材容器の装着位置と、記憶装置に格納されている識別情報を利用して、装着された印刷記録材容器が装着されるべき正しい印刷記録材容器であるか否かを判定するので、外形的な識別形状を用いることなく印刷記録材容器交換時における印刷記録材容器の誤装着を検出することができる。
本発明の第3の態様に係る印刷記録材容器の識別方法において、誤った印刷記録材容器が装着されたものと判定した場合には、誤った印刷記録材容器の装着を報知しても良い。(6頁11行?7頁1行)

オ 発明を実施するための最良の形態
[第1実施例]
図3はカラープリンタ10の制御回路30の内部構成を示す説明図である。(15頁4行?5行)
制御回路30は、パーソナルコンピュータPCから受信した制御信号に従ってプリンタ10の各部の動作を制御する。(16頁19行?20行)
制御回路30の内部構成について、図3を参照して説明する。制御回路30には、CPU31、PROM32、RAM33、インクカートリッジCA1?CA4に備えられた記憶装置、紙送りモータ105やキャリッジモータ103等とデータのやり取りを行う周辺機器入出力部(PIO)34、タイマ35、駆動バッファ36等が設けられている。駆動バッファ36は、インク吐出用ヘッドPN1?PN4にドットのオン・オフ信号を供給するバッファとして使用される。(17頁2行?7行)
制御回路30は、インクカートリッジCAの交換時には、取り外されたインクカートリッジと新たに装着されたインクカートリッジCAとが同一のインク種を内包するインクカートリッジであるか否かを識別する。(中略)制御回路30によって実行される詳細なインクカートリッジの識別処理の流れについては、以下に説明する。(17頁12行?18行)
各記憶装置20、21、22、23は、図5に示すようにインクジェットプリンタ用の4色のインクカートリッジCA1、CA2、CA3、CA4それぞれ備えられているものとする。(18頁1行?3行)
各記憶装置20、21、22、23のデータ信号端子DT、クロック信号端子CT、リセット信号端子RTは、データバスDB、クロックバスCB、リセットバスRBを介してそれぞれ接続されている(図4および図7参照)。パーソナルコンピュータPCとデータバスDB、クロックバスCB、リセットバスRBとは、データ信号線DL、クロック信号線CL、リセット信号線RLを介して接続されている。(18頁8行?13行)
記憶装置20は、メモリアレイ201、アドレスカウンタ202、IDコンパレータ203、オペレーションコードデコーダ204、I/Oコントローラ205および工場設定ユニット206を備えている。(20頁17行?19行)
IDコンパレータ203は、クロック信号端子CT、データ信号端子DT、リセット信号端子RTと接続されており、データ信号端子DTを介して入力されたデータ列に含まれる識別データとメモリアレイ201に格納されている識別データとが一致するか否かを判定する。(中略)IDコンパレータ203は、両識別データが一致する場合には、アクセス許可信号ENをオペレーションコードデコーダ204に送出する。(21頁13行?24行)
オペレーションコードデコーダ204は、アクセス許可信号ENが入力されると、取得した書き込み/読み出しコマンドを解析してI/Oコントローラ205に対して書き込み処理要求または読み出し処理要求を送出する。(22頁3行?6行)
I/Oコントローラ205は、データ信号端子DT、メモリアレイ201と接続されており、オペレーションコードデコーダ204からの要求に従ってメモリアレイ201に対するデータ転送方向ならびにデータ信号端子DTに対する(データ信号端子DTと接続されている信号線の)データ転送方向を切り換え制御する。(22頁9行?13行)
パーソナルコンピュータPCは、既述のようにカートリッジアウト信号COOに基づいてインクカートリッジCA1が装着されるまで待機し(ステップS220:No)、インクカートリッジCA1が装着されると(ステップS220:Yes)、インクカートリッジCA1の記憶装置20が保有する識別データに対応する識別データをデータバスDB上に送信する(ステップS230)。
パーソナルコンピュータPCは送信した識別データに対して応答があるか否かを判定する(ステップS240)。すなわち、装着されるべきインクカートリッジCA1が装着されている場合には、送信された識別データに対応する識別データを保有する記憶装置20が応答し、誤ったインクカートリッジCAが装着されている場合には、いずれの記憶装置も記憶装置20に対応する識別データに対して応答することができない。パーソナルコンピュータPCは、応答がない場合には(ステップS240:No)、誤ったインクカートリッジCAが装着されている旨を報知し(ステップS250)、ステップS220に戻り、再度、正しいインクカートリッジCAの装着を検出する。誤ったインクカートリッジCAの装着の報知は、例えば、操作パネル13上配置されているランプLMを点滅させても良い。(26頁21行?27頁10行)

[第3実施例]
第3実施例に係るインクカートリッジの識別処理は、交換用開口部14を備えず、ユーザが任意のインクカートリッジCAを脱着可能なプリンタに適している。なお、第3実施例に係るインクカートリッジの識別処理は、交換用開口部14および交換対象となるインクカートリッジCAの移動を必要としないものの、第1実施例に係るインクカートリッジの識別装置に対して適用可能であるから、以下の説明では第1実施例に係るインクカートリッジの識別装置において用いた符号と同一の符合を用いるものとする。(31頁5行?11行)
第3実施例に係るインクカートリッジの識別処理は、インクカートリッジCA1?CA4の初期装着終了後、インクカートリッジCAが空になったとき等に実行される。(31頁14行?16行)
パーソナルコンピュータPCは、インク交換要求が発生したと判定した場合には(ステップS400:Yes)、インクカートリッジ特定処理を実行する(ステップS410)。本実施例では、ユーザによって任意のインクカートリッジCAが脱着され得るので、取り外されたインクカートリッジCAが、交換を要求されたインクカートリッジCAと同一であるか否かを特定するためのインクカートリッジ特定処理が必要となる。(31頁25行?32頁4行)
パーソナルコンピュータPCは、先ず、交換を要求されたインクカートリッジCAを特定する(ステップS4100)。(中略)以下の説明では、説明の便宜上、インクカートリッジCA1の交換要求が発生したものとする。 パーソナルコンピュータPCは、カートリッジアウト信号COOの入力値COが1となるまで、すなわち、インクカートリッジCAが取り外されるまで待機する(ステップS4110:No)。かかる場合、パーソナルコンピュータPCは、どのインクカートリッジCAが取り外されたかまでは特定することはできず、いずれかのインクカートリッジCAの取り外しを待機することとなる。パーソナルコンピュータPCは、カートリッジアウト信号COOの入力値CO=1を検出すると(ステップS4110:Yes)、先に特定したインクカートリッジCA1に対応する識別データをデータバスDB上に送出する(ステップS4120)。
パーソナルコンピュータPCは、データバスDB上に送出した識別データに対して応答があるか否かを判定する(ステップS4130)。既述のように各インクカートリッジCA1?CA4の記憶装置20?23は、自己の保有する識別データと一致する識別データを受信しない限り応答しないので、識別データをデータバスDB上に送出することによって交換を要求されたインクカートリッジCA1が正しく取り外されたか否かを検出することができる。パーソナルコンピュータPCは、インクカートリッジCA1に備えられている記憶装置20からの応答を検出しない場合には(ステップS4130:No)、交換を要求されたインクカートリッジCA1が正しく取り外されたものと判定し、図16の処理ルーチンにリターンする。すなわち、以上の処理により、交換要求されたインクカートリッジCA1と取り外されたインクカートリッジCAとが同種のインクカートリッジCAであることが識別される。そして、次に、図15に示す処理ルーチンにて、装着されたインクカートリッジCAがインクカートリッジCA1と同種のインクカートリッジCAであるか否かを判定する。
一方、パーソナルコンピュータPCは、インクカートリッジCA1に備えられている記憶装置20からの応答を検出した場合には(ステップS4130:Yes)、全ての記憶装置20?23が保有する識別データに対応する識別データを順次、データバスDB上に送出する(ステップS4140)。かかる場合には、交換を要求されたインクカートリッジCA1以外のインクカートリッジCAが取り外されており、いずれのインクカートリッジCAが取り外されたかを特定する必要があるからである。
パーソナルコンピュータPCは、データバスDB上に順次、送出した識別データのうち、応答のなかった識別データに対応する記憶装置を備えるインクカートリッジCAを特定すると共に、実際に取り外されたインクカートリッジCAの情報として図示しないRAM上に一時的に格納する(ステップS4150)。パーソナルコンピュータPCは、誤ったインクカートリッジCAが取り外された旨を報知し(ステップS4160)、図16に示す処理ルーチンにリターンする。以上の処理によって、交換要求のあったインクカートリッジCA1に代わって実際に取り外されたインクカートリッジCAを特定(識別)することができる。このインクカートリッジ特定処理を実行することによって、取り外されたインクカートリッジCAと装着されたインクカートリッジCAとが同一種のインクカートリッジCAであるか否かを判定することができる。(32頁6行?34頁3行)
パーソナルコンピュータPCは、新たなインクカートリッジCAの装着を検出するまで、すなわち、CO=0を検出するまで待機する(ステップS420:No)。パーソナルコンピュータPCは、CO=0を検出すると(ステップS420:Yes)、インクカートリッジ特定処理において特定したインクカートリッジCAに対応する識別データをデータバスDB上に送信する(ステップS430)。
パーソナルコンピュータPCは、特定したインクカートリッジCA(あるいは、インクカートリッジCA1)に備えられている記憶装置(あるいは、記憶装置20)からの応答を検出した場合には(ステップS440:Yes)、新たなインクカートリッジCAが正しく装着されたものと判断し、本処理ルーチンを終了する。一方、パーソナルコンピュータPCは、特定したインクカートリッジCAに備えられている記憶装置からの応答を検出しなかった場合には(ステップS440:No)、先に取り外されたインクカートリッジCAと同種のインクカートリッジCAが装着されなかったものと判断し、誤ったインクカートリッジCAが装着された旨を報知し(ステップS450)、正しいインクカートリッジCAの装着を再度、試みる(ステップS410?ステップS440)。なお、誤ったインクカートリッジCAの報知は、第1実施例において説明した形態に準じて実行される。(34頁8行?25行)

[その他の実施例]
図21に示す実施例では、搭載されているインクカートリッジCAに対応する数だけキャリッジ101上にLED18が備えられている。インクカートリッジCAの交換時には、制御回路30は、キャリッジ101をインク交換位置19まで移動させた後、交換の対象となるインクカートリッジCAに対応するLED18を点灯または点滅させて、交換対象となるインクカートリッジCAをユーザに指し示す。(41頁17行?22行)
上記実施例では、パーソナルコンピュータPCによってインクカートリッジCAの識別処理が実行されているが、これら一連の処理をカラープリンタ20の制御回路30によって実行してもよい。かかる場合には、インクカートリッジCAの識別処理をカラープリンタ20単独で実行することができる。(43頁1行?4行)

カ 第2図、第21図の記載から、複数のインクカートリッジ(印刷用記録材容器)CA1ないしCA4が、移動するキャリッジ101の互いに異なる位置に搭載されていることが見て取れる。

(2) 甲第5号証に記載の発明
以上の記載から、甲第5号証には、
「複数のインクカートリッジ(印刷用記録材容器)を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該インクカートリッジに備えられるデータ信号端子と電気的に接続可能なプリンタ側端子と、
各インクカートリッジに対応して設けられ、交換対象となるインクカートリッジを点灯して示すキャリッジ上のLEDと、
搭載されるインクカートリッジそれぞれの前記端子と接続され、インクカートリッジを識別するための識別データを送出するためのデータバスとを有し、交換対象となるインクカートリッジに対応するキャリッジ上のLEDを点灯させ、その点灯結果に基づいて交換対象となるインクカートリッジを報知するカラープリンタのキャリッジに対して着脱可能なインクカートリッジであって、
前記データバスに接続可能な前記データ信号端子と、
インクカートリッジの識別データを格納するメモリアレイ、前記データ信号端子から入力される識別データと、前記メモリアレイに格納されている識別データとに応じて応答するIDコンパレータ等を備え、前記データ信号端子から入力される識別情報と、前記記憶素子(メモリアレイ)に格納されている識別情報とが一致する場合に、カラープリンタ側の制御回路に対して応答する記憶装置とを有し、
前記カラープリンタ側の制御回路は、前記応答がない記憶装置を備えるインクカートリッジを、装着されていないインクカートリッジとして検出するようになっているカラープリンタに対して着脱可能なインクカートリッジ。
」の発明(以下「甲第5号証発明」という。)が開示されているものと認められる。

6 甲第10号証の記載事項
甲第10号証には、以下の記載がある。
(1)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体にインクを吐出口から吐出する記録ヘッドと、該記録ヘッドに供給するためのインクを貯蔵するインクタンクと、前記記録ヘッド及びインクタンクを搭載するキャリッジを有するインクジェット記録装置において、
前記キャリッジ上にインク色と同じ色相の警告ランプを設け、前記インクタンク内のインク残量を検知する検知手段によってインクタンク内のインクが無くなった場合に対応する前記警告ランプを点灯させるようにしたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記警告ランプをインクタンクに設けたことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。

(2)【発明の詳細な説明】
斯かる従来のインクジェット記録装置において、インク残量が殆ど無いことを警告する手段としては、警告音・本体上部に警告灯の点灯・点滅等の方法がある。(段落【0003】)
しかし、従来のインクジェット記録装置には、インクタンク付近には残量検知表示が設けられていないため、交換すべきインクタンクを誤認する可能性があった。(段落【0004】)
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、インクの残量が少量又は空のインクタンクをユーザーが容易且つ間違いなく判別することができるインクジェット記録装置を提供することにある。(段落【0005】)
図3及び図4に示すように、ほぼ箱状のキャリッジ3内には、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローのインクをそれぞれ吐出することができる4つのインクジェット記録ヘッドから成る記録ヘッド1と、各インクジェット記録ヘッドにブラック、シアン、マゼンタ及びイエローのインクをそれぞれ供給する4つのインクタンク2bk、2c、2m、2yとが収容されている。(段落【0020】)

7 甲第14号証の記載事項
甲第14号証には、以下の記載がある。
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来公報に代表するような、インクタンク内のインク残量を検出する構成が知られているが、このような構成ではインクタンク内に検出用の電極を配置する必要がある。また、電極間の導通状態によりインク残量を検知するため、インク成分に金属イオンが用いられない等の、使用するインクに制約が生じてしまう。(段落【0006】)
(作用)
上記のとおりの立体形半導体素子では、素子外部から非接触で電磁波の信号を与えると、受信兼エネルギー変換手段はその電磁波を電力へと変換し、この変換された電力により情報入手手段、判断手段、情報蓄積手段、および情報伝達手段が起動する。判断手段は、受信兼エネルギー変換手段で受信した電磁波の信号が所定の応答条件を満たした場合に前記情報入手手段により素子周囲の環境情報を入手させ、この入手情報とこれに対応する前記情報蓄積手段に蓄積された情報とを比較し、情報伝達の必要性を判断する。そして、情報伝達の必要があると判断した場合に、判断手段は入手情報を情報伝達手段により外部へ伝達させる。(段落【0029】)
さらに、立体形半導体素子を動作させるための電力を非接触で供給する構成であるので、素子の起動のための電源をインクタンクに持たせたり、電力供給用の配線を素子に接続する必要がなく、外部との直接的な配線を施すことが困難な箇所に使用することができる。(段落【0033】)
例えば、発振回路の導電体コイルを立体形半導体素子の外表面に巻き付けるように形成することにより、外部の共振回路との間で電磁誘導によって導電体コイルに電力を発生させて、素子に非接触で電力を供給することができる。(段落【0034】)

【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。特に、各色のインクタンク中にそれぞれ立体形半導体素子を配置した場合の実施形態について詳細に説明する。尚、この素子はインクタンクのみに収納するものでなく、他の対象物中に配して用いても同様の効果が得られる。(段落【0037】)
各色のインクタンクにはそれぞれ応答条件が異なる通信機能を有する立体形半導体素子11が配されていて、インクタンク500外に設けられたインクジェット記録装置600の通信回路150と通信可能となっている。(段落【0039】)
通信回路150は周波数変調器152と誘導コイル151からなる共振回路102によって、インクタンク500に設けられた立体形半導体素子11の通信手段と通信可能になっている。立体形半導体素子11は共振回路102の電磁誘導による共振で通信できる構成になっている。このような通信機能を持たせるために、立体形半導体素子11の表面には図2に示すように誘導コイルLが巻き付けられている。また、各色ごとの素子の応答条件を変更するために、特に本例では各色ごとに立体形半導体素子上のコイルLの巻き数や長さなどを変えて、各色ごとの立体形半導体素子11においてそれぞれ共振周波数を異ならせている。通信回路150は周波数変調器152により電磁誘導周波数を変調することが可能で、これにより通信したい色に対応した立体形半導体素子の共振周波数に同調させて、色ごとに独立した通信を可能としている。例えば通信回路150によってシアン色に対応する共振周波数に同調させた信号を送ると、その信号に対しシアン色のタンク内の素子のみが応答する。(段落【0040】)
立体形半導体素子11は、記録装置600内の通信回路150から送られてきた電磁波12の信号を受信し、その電磁波12を電力13に変換する受信兼エネルギー変換手段(コイルを備えた発振回路)14と、通信兼エネルギー変換手段14で得た電力により起動する情報入手手段15と判断手段16と情報蓄積手段17と情報伝達手段18を備えている。通信手段14、情報入手手段15および情報伝達手段18は立体形半導体素子11の表面もしくは表面付近に形成されていることが望ましい。(段落【0044】)
判断手段16は、受信兼エネルギー変換手段(コイルを備えた発振回路)14が受信した電磁波12によって共振している場合は電磁波12の信号を受け入れ、共振しない場合は受け入れない。そして、電磁波12の信号を受け入れると、情報入手手段15に素子11の周囲環境情報であるインクタンク内の情報(例えば、インク残量、インク色材濃度、ph、温度など)を入手させ、この入手したタンク内部情報と情報蓄積手段17に記憶してある情報とを比較し、入手したタンク内部情報を外部へ伝達する必要があるかを判断する。情報蓄積手段17は、入手するタンク内部情報と比較する諸条件や情報入手手段15より入手したタンク内部情報を蓄積する。ここで、情報蓄積手段17に予め設定してある条件に基づく判断手段16の判断は、例えばインク残量が2ミリリットル以下になったり、インクのphが大きく変化したりした為にタンク交換が必要との判断を行うことが挙げられる。(段落【0045】)
情報伝達手段18は、判断手段16の命令によって電力を、タンク内情報を外部へ伝達するためのエネルギーに変換して、外部へインク内部情報を表示、伝達する。この伝達するためのエネルギーは磁界、光、形、色、電波、音などを使用することが可能であり、例えばインク残量が2ミリリットル以下になったと判断された場合には音を鳴らしてタンク交換が必要であることを外部に伝達する。また、伝達先はインクジェット記録装置の通信回路150のみでなく、特に光、形、色や音などの場合は人の視覚や聴覚に伝達してもよい。さらに、インク残量が2ミリリットル以下になったと判断された場合には音で、インクのphが大きく変化したときには光で知らせるなど、情報に応じてその伝達方法を変えてもよい。(段落【0046】)
本形態によれば、各色のインクタンクにそれぞれ異なる周波数で応答する通信機能を有する立体形半導体素子を配しているので、所望の色のタンクと個別に情報のやりとりを行なうことができる。(段落【0047】)
図4は、記録装置本体側の通信回路150と立体形半導体素子11の間で電磁誘導によりディジタルIDをやり取りする概念の説明図である。この図を参照すると、まずディジタルIDをD3h(hはD3が16進数表示であることを示す添え字である。)とすると(同図(a))、通信回路150はこれを2進数「11010011」に変換し(同図(b))、これに対応した電磁誘導波形にする(同図(c))。ディジタル値1を1周期の正弦波、0を出力0とする。これを通信回路150により電磁誘導で発信すると(同図(d))、インクタンク内の立体形半導体素子11は同調して、素子11上のコイルLで同様の波形を得る(同図(e))。これを素子11はコンパレータ回路等でディジタル2進数列に変換し(同図(f))、ディジタルIDであるD3hを得ることができる(同図(g))。(段落【0050】)
そして判断手段16は、入手した16進数のIDを情報蓄積手段17に予め記憶されている16進数の識別IDと比較する。比較が一致した場合はIDの後に続く情報を受け入れ、一致しない場合は受け入れない。(段落【0052】)

【図3】


8 先行技術文献1の記載事項
本件特許の最先の優先日前に日本国内において頒布された刊行物であり、本件1次審決で引用された刊行物である特開2003-291364号公報(以下「先行技術文献1」という。)には、図とともに次の(1)ないし(3)の記載がある。

(1)【特許請求の範囲】
【請求項21】
請求項1から11のいずれか1項に記載の液体収納容器を搭載可能なキャリッジと、光によって前記液体収納容器を識別するための検出手段とを有し、前記液体収納容器の液体を吐出して記録する液体吐出記録装置。
【請求項22】
前記検出手段は発光源と受光部を有し、前記発光源は点光源である請求項21に記載の液体吐出記録装置。

(2)【発明の効果】
反射体を構成するルーフ状ミラーのパターン(数、幅などの変更)により多種の反射光分布パターンが得られるので、ルーフ状ミラーのパターン構成の異なる反射体を各々のインクタンクごとに配置し、反射体からの反射光の光量分布における位置、幅、強度等のパターンの違いを利用することにより、色ごとの液体収納容器(インクタンク)を識別することができる。このため、液体収納容器をその収容液の色に対応する所定の位置に装着する液体吐出記録装置(インクジェット記録装置)において、別の色の位置への誤装着を検出でき、誤った記録画像を記録することが防止できる。(段落【0114】)

(3)図2から、フォトセンサPSは1つであることが看取できる。

9 先行技術文献2の記載事項
本件特許の最先の優先日前に日本国内において頒布された刊行物であり、1次審決で引用された刊行物である特開平11-263025号公報(以下「先行技術文献2」という。)には、図とともに以下の(1)ないし(3)の記載がある。
(1)【特許請求の範囲】
【請求項6】
インク用にキャリッジ内の交換可能インク・カートリッジのアイデンティティに基づいてプリンタ動作を制御するための装置において、
前記プリンタ内を通る印刷媒体の移動に対して横方向に移動可能である、2つ以上のカートリッジ位置を含むキャリッジと、
キャリッジ移動手段と、
前記キャリッジに着脱自在に取り付けられたインク・リザーバ及び印刷ヘッドを含む2つ以上の交換可能インク・カートリッジと、
前記カートリッジ上の少なくとも1つの指標装置であり、前記キャリッジのどのカートリッジ位置にどのインク・リザーバが取り付けられているかを前記コントローラに識別させる符号化された情報を含み、第1の光信号の反射或は吸収のための光学的反射画像及び光学的無反射画像を含み、前記第1の光信号の反射部分が第2の光信号を構成していることから成る指標装置と、
光信号読取り装置であり、前記カートリッジが当該読取り装置に対して横方向に移動する際に前記指標装置上に符号化情報を読み取り、反射及び/或は吸収した光信号に応じて前記プリンタ・コントローラに電気的出力信号を生成する光信号読取り装置であり、前記指標装置を照射するために前記指標装置に向かって前記第1の光信号を放出するための発光ダイオードと、前記指標装置が当該光信号読取り装置に対して横方向に移動する際に前記指標装置上に前記第1の光信号を集束させるための少なくとも1つのレンズと、前記指標装置から反射された前記第2の光信号を受け取り、前記プリンタ・コントローラに前記電気的出力信号を作成するための検出器とを含むことから成る光信号読取り装置と、を備える装置。
【請求項9】
前記インク・カートリッジが、イェローのインク・カートリッジと、シアンのインク・カートリッジと、マゼンタのインク・カートリッジとを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項10】 前記読取り装置からの前記電気的出力信号に応じて、1つ或は複数の間違ったインク・カートリッジ位置に対してプリンタ動作をロックアウトするためのプリンタ制御アルゴリズムを更に含む、請求項6に記載の装置。

(2)【発明の実施の形態】
複数キャリッジの場合、或は単一キャリッジ上に複数のカートリッジ位置がある場合、カートリッジ或はキャリッジに関する全ての符号化された情報がコード読取り器54に隣接して通過できるように、コード読取り器54は、好ましくは、サポート・レール60に沿ったキャリッジ移動距離に対して略中央に配置される。前の実施例のように、指標装置(複数も可)がコード読取り器54近辺を通過し、該コード読取り器が符号化情報を読み取れるように、カートリッジを交換するか或はプリンタに電源を投入すると、キャリッジ(複数も可)は矢印5が示す方向に十分な距離だけ移動させられる。(段落【0026】)
プリンタ・コントローラへの電気的出力信号をプリンタ制御アルゴリズムと組み合わせて使用でき、カートリッジ内に含まれるインクのタイプ或は色に応じて印刷ヘッド上のヒータの動作温度或は発火パラメータを変更する。異なるカラー・インクを含む複数カートリッジの場合、プリンタ・アルゴリズムは、異なる色の隣接カートリッジに対する、ある色のインク・カートリッジの位置も示すことができる。特定の色のインク・カートリッジがキャリッジ内の間違った位置に取り付けられた場合、プリンタ・コントローラ内のアルゴリズムを使用でき、プリンタをロックアウトし、間違ったカートリッジ位置をユーザに通知するか、或は特定のインク・カラーが必要とする動作パラメータに対応するように印刷ヘッド動作を調整する。」(段落【0027】)

(3)図2から、検出器26が1つであることが看取できる。

第7 当審の判断
1 本件訂正発明1ないし7の課題
(1) 本件訂正明細書には、次のとおりの記載がある。
ア 「このようなプリンタでは、特に信号線の数が増すことはコストを増すなどの要因となる。一方で、配線数を削減するためにはバス接続といった所謂共通の信号線の構成が有効であるが、単にバス接続のような共通の信号線を用いる構成では、インクタンクもしくはその搭載位置を特定することができないことは明らかである。」(段落【0009】)

イ 「本発明はこのような問題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い、この場合でもインクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の発光制御をすることを可能とすることにある。」(段落【0010】)

ウ 「以上の構成によれば、記録装置の本体側の接点(コネクタ)と接続する液体インク収納容器であるインクタンクの接点(パッド)を介して入力される信号と、そのインクタンクの色情報とに基づいて発光部の発光を制御するので、先ず、搭載される複数のインクタンクが共通の信号線によってその同じ制御信号を受け取ったとしても、色情報に合致するインクタンクのみがその発光制御を行うことができ、これにより、インクタンクを特定した発光部の点灯など発光制御が可能となる。次に、このようなインクタンクを特定した発光制御が可能な場合、例えば、キャリッジに搭載された複数のインクタンクについて、その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに、上記所定の位置での発光を検出するようにすることにより、発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識できる。これにより、例えば、ユーザに対してインクタンクを正しい位置に再装着することを促す処理をすることができ、結果として、インクタンクごとにその搭載位置を特定することができる。」(段落【0019】)

エ 「この結果、複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い、この場合でもインクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の発行制御をすることが可能となる。」(段落【0020】)

オ 「第1受光部210は、インクタンク1のLED101からの発光を受けて、それに応じた信号を制御回路300へ出力する。制御回路300は、後述のように、この信号に基づき、それぞれのインクタンク1のキャリッジ205における位置を判断することができる。また、…エンコーダスケール209が設けられ…エンコーダセンサ211が設けられ…このセンサの検出信号は…制御回路300に入力し、これにより、キャリッジ205の移動位置を知ることができる。」(段落【0079】)

カ 「A番目のインクタンクが装着されていると判断したときは、…該当する色情報のインクタンク1のLED101を点灯する。…4つのインクタンク総てについて装着確認制御が終了し…総てのインクタンクについて、LED101の点灯がされたか否かを判断する。いずれかのインクタンクのLED101が点灯していないと判断したときは、ステップS302以降の処理を繰り返す。…総てのインクタンクのLEDが点灯したと判断したときは、…正常にインクタンクが装着されたか否かを判断する。装着が正常と判断したときは、…着脱処理が正常終了したか否かを判断する。…着脱処理が正常に終了したと判断したときは、…カバー201が閉じられたか否かを判断する。ここで、本体カバーが閉じられたと判断したときは、ステップS105の光照合処理に移行する。」(段落【0101】ないし段落【0107】)

キ 「光照合処理は、正常に装着されたインクタンクそれぞれが正しい位置に装着されているか否かを判断する処理である。本実施形態では、インクタンクの装着位置について、例えば、インクタンクと装着位置の形状を他のインクのインクタンクが装着できないような形状とし、それぞれの色のインクタンクに対応して装着位置を定めるような構成をとらないことから、それぞれの色のインクタンクについて本来の位置でないところに誤って装着される可能性がある。このため、本光照合処理を行い、誤って装着されている場合は、ユーザにその旨を知らせるものである。これにより、特に、インクタンクの形状を色ごとに異ならせることなく、インクタンクの製造の効率化や低コスト化を図ることができる。」(段落【0108】)

ク 「図29(a)に示すように、先ず、第1受光部210に対して、図中左側から右側へ移動キャリッジ205を開始する。そして、最初に、イエローインクのインクタンク1Yが装着されるべき位置のインクタンクが第1受光部210に対向する位置で、インクタンク1YのLED101を発光させる(図24にて説明したように、実際は点灯し所定時間後消灯すること、以下、本照合処理では同様)。インクタンク本来の正しい位置に装着されているとき、第1受光部210はLED101の発光を受光することができ、制御回路300は、その装着位置にはインクタンク1Yが正しく装着されていると判断する。
キャリッジ205を移動しつつ、同様にして、図29(b)に示すように、マゼンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置のインクタンクが第1受光部210に対向する位置で、インクタンク1MのLED101を発光させる。同図に示す例は、インクタンク1Mが正しい位置に装着されていて第1受光部210はその発光を受光することを示している。順次、図29(b)?(d)に示すように、判断する装着位置を変えながら発光を行って行く。これらの図は、正しい位置に装着されている例を示している。
これに対し、図30(b)に示すように、マゼンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置にシアンインクのインクタンク1Cが誤って装着されているときは、第1受光部210に対向しているインクタンク1CのLED101は発光せず、別の位置に搭載されているインクタンク1MのLED101が発光する。この結果、このタイミングでは、第1受光部210は受光できないことから、制御回路300は、その装着位置にはインクタンク1M以外のインクタンクが装着されていると判断する。これに対応して、図30(c)に示すように、シアンインクのインクタンク1Cが装着されるべき位置にマゼンタインクのインクタンク1Mが誤って装着されており、第1受光部210に対向しているインクタンク1MのLED101は発光せず、別の位置に搭載されているインクタンク1CのLED101が発光する。
以上説明した光照合処理を行うことにより、制御回路300は本来の位置に装着されていないインクタンクを特定することができる。また、装着されるべき位置に正しいインクタンクが装着されていなかった場合には、その装着位置において、他の3色のインクタンクを順に発光させる制御を行うことによって、その装着位置に誤って何色のインクタンクが装着されてしまったかを特定することもできる。」(段落【0110】ないし段落【0113】)

(2)上記(1)のアないしエの記載によれば、本件訂正発明1ないし7の課題は、キャリッジに複数の液体インク収納容器を搭載して使用する記録装置において、コストを低減するため、記録装置と液体インク収納容器との間の配線の方式に、全液体インク収納容器に共通の信号線を用いる共通バス接続の方式を採用した場合でも、各液体インク収納容器がインク色に従ってキャリッジの所定の位置に正しく装着されているか否かを検出することにある。
すなわち、共通バス接続の方式を採用した場合に、記録装置側からの要求に応じて、単純に液体インク収納容器が保持するインク色の情報と合致する場合に当該液体インク収納容器から応答の信号が返るようにしても、例えばイエローの液体インク収納容器とマゼンタの液体インク収納容器の搭載位置を逆にして装着した場合には、それぞれの液体インク収納容器がキャリッジ内にあることだけが検出されるだけで、それ以上にどの搭載位置につき誤装着があるかを検出できないので、その余の構成を加えて、共通バス接続の方式を採用した場合でも液体インク収納容器の搭載位置の誤り(誤装着)を検出できるようにするというものである。

(3)そして、上記(1)のオないしクの記載によれば、本件訂正発明1ないし7の実施形態として、本件訂正明細書には次のものが記載されているものと認められる
「液体インク収納容器であるインクタンクのそれぞれに発光部であるLED101を1つずつ設け、
記録装置の本体側に第1受光部となる受光手段を1つ設け、
記録装置のキャリッジに、例えば4色で1組である4つのインクタンクをそのインクタンクのインク色に対応して決まっている箇所に装着し、装着されたインクタンクの接点(パッド)が本体側の接点(コネクタ)と当接して電気的に接続した状態で、
記録装置の本体側の制御回路300は、本体側の接点(コネクタ)へ1番目の色情報を指定する信号を出力し、各インクタンクの制御部は、記録装置の本体側の接点(コネクタ)と接続するインクタンクの接点(パッド)を介して本体側から入力される信号の1番目の色情報と、そのメモリアレイ103Bに記憶されている色情報とを比較し、両色情報に基づいてそれらが一致したと判断した場合には、そのメモリアレイ103Bに記憶されている1番目の色情報を前記制御回路300に読み出させて、前記制御回路300は、メモリアレイ103Bに記憶されている1番目の色情報を読み出すことができた場合は、1番目のフラグF(1)を“1”にセットして当該インクタンクのLED101を発光させ、メモリアレイ103Bに記憶されている1番目の色情報を読み出すことができなかった場合には、1番目のフラグF(1)を“0”のままにしておき、2番目、3番目、4番目と、各色情報について同様の処理を順次行って、4つの色情報に対応する4つのフラグF(1)ないしF(4)がすべて“1”にセットされて総てのインクタンクのLED101が点灯したと判断した後に、
1番目の色情報が示すインク色のインクタンクが装着されるべきキャリッジの箇所に装着されたインクタンクのLED101が発光した光は前記第1受光部に投光されるがキャリッジの他の箇所に装着されたインクタンクのLED101が発光した光は前記第1受光部に投光されない位置にキャリッジを移動させ、前記制御回路300から1番目の色情報とともにLED101の点灯を指示する信号を出力し、各インクタンクの制御部は、本体側から入力される信号の1番目の色情報と、そのメモリアレイ103Bに記憶されている色情報とを比較し、両色情報に基づいてそれらが一致したと判断した場合には、そのインクタンクのLED101を発光させるとともに、このとき、このLED101からの光は、1番目の色情報が示すインク色のインクタンクがキャリッジの正しい箇所に装着されていれば前記第1受光部に受光され、1番目の色情報が示すインク色のインクタンクがキャリッジの正しい箇所に装着されていなければ前記第1受光部に受光されないから、前記第1受光部がLED101からの光を受光したか否かを前記第1受光部からの出力が入力されている前記制御回路300が判断し、2番目、3番目、4番目と、各色情報について同様の処理を順次行って、前記第1受光部からの入力で発光が検出されなかった色情報が示すインク色のインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識し、装着されるべき位置に正しいインクタンクが装着されていなかった場合には、キャリッジのその装着されるべき位置に装着されたインクタンクのLED101が発光した光は前記第1受光部に投光されるがキャリッジの他の箇所に装着されたインクタンクのLED101が発光した光は前記第1受光部に投光されない位置にキャリッジを位置させておいて、他の3つの色情報について、色情報とともにLED101の点灯を指示する信号を順に前記制御回路300から出力させて他の3つのインクタンクのうち、そのメモリアレイ103Bに記憶されている色情報が本体側から入力される信号の色情報と一致するインクタンクを順に発光させ、前記第1受光部で発光したLEDからの光を受光したことを検出することによって、そのとき前記制御回路300から出力した信号の色情報が示すインク色のインクタンクがその装着されるべき位置に誤って装着されてしまったインクタンクであることを特定するようにして、インクタンクごとにその搭載位置を特定することができるようにしたもの。」

2 無効理由1について
(1)明確性要件違反について
ア(ア)物の発明のクレームの記載において、その「特許請求されている物」自体の構造、動作を特定するのではなく、関連する「他の物」の構造や動作により「特許請求されている物」を特定する記載表現を用いることが直ちに請求項の記載を不明確なものとする訳ではないことは、請求人のいうとおりであり、そのことにより、請求項に係る発明が明確でない場合にはじめて明確性要件違反に該当する。
(イ)請求人は、本件訂正発明1、2、4ないし7の「受光手段(又は受光部)に投光するための光を発光する発光部」及び「液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段(又は受光部)」における「投光するための光を発光する」と「液体インク収納容器の発光部からの光」との関係が不明確であると主張するとともに、受光時における、発光部と受光手段(又は受光部)との位置関係が不明確であり、「投光するための光を発光する」と光の目的を記載しても、例えば、発光部が発光する光をミラーで反射させた反射光を受光手段(又は受光部)に投光する実施形態までも含まれるように、発光部と受光手段(又は受光部)の位置関係は定まらない、「投光するための光を発光する」という記載は、目的を示したものに過ぎず、具体的な特定がないので、「発光部」から発せられた光が「受光手段」(又は受光部)に投光されるか否かは、液体インク収納容器又はカートリッジ側では特定しようがなく、このようなクレームの記載は、液体インク収納容器又は液体インク収納カートリッジの発明特定事項としては不明確といわざるを得ないなどと主張する。
(ウ)「液体インク収納容器又はカートリッジ」は、記録装置本体に装着して印刷などに用いるものであるが、「液体インク収納容器又はカートリッジ」と「記録装置本体」とは別々にも販売され、特に、交換用の「液体インク収納容器又はカートリッジ」は、記録装置とは別に単独で販売されるものであるところ、どんな「液体インク収納容器又はカートリッジ」であっても、どの「記録装置本体」にでも装着して用いることができる訳ではなく、「液体インク収納容器又はカートリッジ」の種類と「記録装置本体」の種類とが対応するもの同士を組み合わせて利用するものであることは一般常識である。
(エ)上記1の(2)、(3)及び上記(ウ)からみて、本件訂正発明1ないし7の「液体インク収納容器又はカートリッジ」と「記録装置本体」との関係は、請求人がいうところの「特定構造のネジ山を有するボルト」と「該ボルトと嵌合する特定構造のネジ溝を有するナット」との関係と同様の関係であって、本件訂正発明1、2、4ないし7の「液体インク収納容器又はカートリッジ」は「記録装置本体」との関係において、サブコンビネーション発明といえるものである。
(オ)本件訂正発明1ないし7は、上記1(2)の「キャリッジに複数の液体インク収納容器を搭載して使用する記録装置において、コストを低減するため、記録装置と液体インク収納容器との間の配線の方式に、全液体インク収納容器に共通の信号線を用いる共通バス接続の方式を採用した場合に、記録装置側からの要求に応じて、単純に液体インク収納容器が保持するインク色の情報と合致する場合に当該液体インク収納容器から応答の信号が返るようにしても、例えば黄色の液体インク収納容器とマゼンタの液体インク収納容器の搭載位置を逆にして装着した場合には、それぞれの液体インク収納容器がキャリッジ内にあることだけが検出されるだけで、それ以上にどの搭載位置につき誤装着があるかを検出できない」という課題を解決するために、その余の構成を加えて、共通バス接続の方式を採用した場合でも液体インク収納容器の搭載位置の誤り(誤装着)を検出できるようにするというものであり、上記1(3)の実施形態から明らかであるが、本件訂正発明1ないし7は、「液体インク収納容器又はカートリッジ」と「記録装置本体」とにそれぞれその余の構成を加えて、それぞれその余の構成が加わった「液体インク収納容器又はカートリッジ」と「記録装置本体」とを組み合わせて使用することによって、上記課題が解決されるものである。
(カ)したがって、本件訂正発明1ないし7の「液体インク収納容器又はカートリッジ」と、これと組み合わせて印刷等に利用する「記録装置」とを、互いの構成の相互の関係である「受光手段(又は受光部)に投光するための光を発光する発光部」及び「液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段(又は受光部)」といった表現で特定すること自体が明確でないといったことはなく、「投光するための光を発光する」と「液体インク収納容器の発光部からの光」との関係が不明確であるということはなく、上記1(2)の課題や上記1(3)の実施形態からみて、装着されたそれぞれのインクタンクのLED101が発光した光が所定のタイミングで第1受光部に投光され、所定のタイミングで第1受光部がその光を受光できればよいのであって、受光時における、発光部と受光手段(又は受光部)との具体的位置関係をそれ以上に特定しなければならないことはない。また、そのようなことを「受光手段(又は受光部)に投光するための光を発光する発光部」と表現したことを明確でないとまではいえない。「液体インク収納容器又はカートリッジ」の構成である「発光部」から発せられた光が「記録装置」側の構成である「受光手段」(又は受光部)に投光されるか否かを、「液体インク収納容器又はカートリッジ」のみで直接的に特定することは困難であるので、「液体インク収納容器又はカートリッジ」がそのキャリッジに搭載される「記録装置」側の構成を特定することで、「液体インク収納容器又はカートリッジ」を間接的に特定した点を問題にして明確でないとはいえない。

イ(ア)請求人は、本件訂正発明6において、液体インク収納容器は「液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された前記発光部」を有し、記録装置は「受光手段」を有するが、「液体の収納空間を介さずに」という記載は、具体的に何を意味するのか不明であるから、本件訂正発明6は、その記載から発明を明確に特定することができず、技術的にも不明確なものとなっている旨主張する。
(イ)本件訂正発明6は「液体インク収納容器」の発明であるところ、「液体インク収納容器」が液体インクを収納するために「液体の収納空間」を有していることは当業者に自明の事項である。
(ウ)してみると、本件訂正発明6において、「液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された前記発光部」とは、「液体インク収納容器」が「発光部」を具え、該「発光部」が「液体の収納空間」を介さずに「記録装置」側の「受光手段」に対し投光可能位置に固定して配置されることを意味しており、このことは、「液体インク収納容器」が具えている「発光部」は、「液体インク収納容器」が「記録装置のキャリッジ」に装着された状態で、キャリッジが所定の位置にあるときに発光すると、その発光による光が「液体インク収納容器」が液体インクを収納するために有している「液体の収納空間」を通過することなく「記録装置」側の「受光手段」に到達するような「液体インク収納容器」の位置に、固定して配置されることを意味していることが明らかである。
(エ)したがって、本件訂正発明6の「液体の収納空間を介さずに」という点が明確でないとはいえない。

ウ(ア)請求人は、本件訂正発明1ないし7の「前記キャリッジの位置に応じて特定された…」は、キャリッジ内部の各インクタンクの装着箇所に応じて特定されたという意味とも理解し得ると主張するが、「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器又はカートリッジ」との記載における「前記キャリッジ」はその記載より前に記載されている「キャリッジ」を指していることが明らかであるところ、本件訂正特許請求の範囲の各請求項の記載では「前記キャリッジ」の記載より前に「移動するキャリッジ」と記載されている。してみると、「前記キャリッジの位置に応じて特定された…」は、移動するキャリッジの位置に応じてインク色が特定されることを意味しているのであって、キャリッジ内部の各インクタンクの装着箇所に応じてインク色が特定されたという意味に理解することはできない。
(イ)また、請求人は、キャリッジがシャフト上のいかなる位置に来たときに、キャリッジ内のどのインクタンクを「光らせ」るのかについて、本件訂正発明1ないし7の構成要件は明らかにしていない結果、受光手段が発光部からの発光を受光できないなどと主張する。
しかしながら、上記1(3)の実施形態からみて、本件訂正発明1ないし7の「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色」とは、液体インク収納容器又はカートリッジの搭載位置を検出するために発光部を発光して光を受光手段又は受光部に投光するために、液体インク収納容器又はカートリッジに備えられる接点から入力されるインク色を示す色情報に係る信号と、液体インク収納容器又はカートリッジの情報保持部の保持する少なくとも液体インク収納容器又はカートリッジのインク色を示す色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する際に、入力する信号の色情報が示すインク色とキャリッジを移動すべき位置とが対応させてあることを前提にしているから、キャリッジの位置とインク色とが対応し、キャリッジの位置に応じてインク色が特定できるものと解される。
また、本件訂正発明1、2、5ないし7では、「受光部」は「液体インク収納容器の発光部からの光を受光する」ものであり、本件訂正発明4では、受光部」は「液体インク収納カートリッジの発光部からの光を受光する」ものであり、本件訂正発明3では、「位置検出用の受光部」は「液体インク収納容器からの光を受光する」ものであって、「液体インク収納容器」は前記受光部に投光するための光を発光する発光部を有するものであるから、本件訂正発明1ないし7には、受光手段又は受光部が発光部からの発光を受光できないものは含まれない。

エ(ア)請求人は、本件訂正発明3の「液体インク収納容器位置検出手段」は、本件訂正明細書の段落【0021】以下に記載されている実施形態の記録装置のどの構成に対応するのかについての説明が一切存在しないため、本件訂正明細書の記載からは、どのような機構によって位置を検出するのか不明であり、「液体インク収納容器位置検出手段」と液体インク収納容器の「発光部」との位置関係や制御関係も不明であって、本件訂正発明3は、本件訂正後の請求項3の記載から発明を明確に特定することができず、技術的にも不明確なものとなっている旨主張する。
(イ)しかし、上記1(3)で述べた実施形態により、移動するキャリッジの互いに異なる位置に搭載した複数の液体インク収納容器からの光を受光する受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出することができることが明らかであり、上記1(3)で述べた実施形態における「発光部であるLED101を1つずつ設けたインクタンク」、「記録装置の本体側に1つ設けた第1受光部となる受光手段」及び「例えば4色で1組である4つのインクタンクをそのインクタンクのインク色に対応して決まっている箇所に装着した記録装置のキャリッジ」が、それぞれ、本件訂正発明3の「液体インク収納容器」、「液体インク収納容器からの光を受光する受光部」及び「複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジ」に相当するから、本件訂正発明3の「液体インク収納容器位置検出手段」の実施例は、上記1(3)で述べた実施形態として、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているといえる。しかるところ、本件訂正発明3では、「位置検出用の受光部」は「液体インク収納容器からの光を受光する」ものであって、「液体インク収納容器」は前記受光部に投光するための光を発光する発光部を有するものであるから、「液体インク収納容器からの光」は「液体インク収納容器」が有する「前記受光部に投光するための光を発光する発光部」からの光であると解するのが妥当であり、そのように解することは、上記1(3)で述べた実施形態の内容と整合する。
したがって、本件訂正発明3の「液体インク収納容器位置検出手段」は、本件訂正明細書の段落【0021】以下に記載されている実施形態の記録装置のどの構成に対応するのかについての説明がないとしても、本件訂正明細書の記載からは、どのような機構によって位置を検出するのかは当業者であれば把握でき、「液体インク収納容器位置検出手段」と液体インク収納容器の「発光部」との相互の関係も相互の制御関係も明確でないとまではいえない。よって、本件訂正発明3は、本件訂正後の請求項3の記載から発明を特定することができないとまではいえない。

オ 以上のとおりであるから、上記「第4 1(1)」のアないしオの請求人が主張する理由によって、本件訂正発明1ないし7は特許を受けようとする発明が明確でないとまではいえず、本件訂正発明1ないし7は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

(2)サポート要件違反について
ア(ア)請求人は、液体インク収納容器側に「発光を制御する制御部」や「発光部を発光させる制御部」が存在することになっている本件訂正発明1ないし7は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、裏付けを欠くものとなっている旨主張するとともに、本件訂正明細書の記載では、液体インク収納容器側の「入出力制御回路103A」は、記録装置側から送られてくる「色情報」と自身が保持している「色情報」の一致不一致により、点灯、消灯の「制御コード」の受入、無視の処理を行っているものの、自身が「発光部の発光を制御する」ことなく、そのような発光部の点灯制御は記録装置側の「制御回路300」で行っていることは明らかであるなどと主張する。
(イ)本件訂正明細書の段落【0082】には「一方、各インクタンク1の基板100には、これら4本の信号線の信号によって動作する制御部103およびそれによって動作するLED101が設けられている。」と記載されており、図20には、インクタンク1K、1C、1M、1Yのそれぞれに制御部103が設けられていることが記載されている。また、本件訂正明細書の段落【0083】には「制御部103は、入出力制御回路(I/O CTRL)103A、メモリーアレイ103BおよびLEDドライバ103Cを有して構成される。入出力制御回路103Aは、本体側の制御回路300からフレキシブルケーブル206を介して送られてくる制御データに応じて、LED101の表示駆動やメモリーアレイ103Bに対するデータの書き込みおよび読み出しを制御する。」と記載されており、図21には、基板100に制御部103とLED101が設けられ、制御部103には入出力制御回路103A、メモリアレイ103B及びLEDドライバ103Cが設けられていることが記載されている。
(ウ)してみると、本件訂正明細書及び図面に記載されている「本体側の制御回路300からフレキシブルケーブル206を介して送られてくる制御データに応じて、LED101の表示駆動などを制御する入出力制御回路103A」又は「該入出力制御回路103A及びLEDドライバ103Cを有して構成され、各インクタンク1の基板100に設けられ、4本の信号線の信号によって動作する制御部103」が、本件訂正発明1ないし7の「液体インク収納容器又はカートリッジ」が有する「発光部の発光を制御する制御部」又は「発光部を発光させる制御部」の裏付けとなることが明らかである。

イ(ア)請求人は、本件訂正明細書には、入れ違いによる誤装着の場合に、対象の液体インク収納容器が所定の位置に装着されていないことが検出される実施形態が記載されているのみで、例えばマゼンタとシアンの入れ違えがあった場合、シアン(C)の所定位置に装着されたマゼンタの液体インク収納容器(1M)からの光を受光できる訳ではないから、マゼンタの液体インク収納容器(1M)がどの位置に誤装着されているかを検出すること、すなわち、対象の液体インク収納容器の「搭載位置を検出する」ことまでは開示がないなどと主張する。
(イ)しかしながら、上記1(3)で、本件訂正明細書に記載されていると認めた本件訂正発明1ないし7の実施形態では、「装着されるべき位置に正しいインクタンクが装着されていなかった場合には、キャリッジのその装着位置に装着されたインクタンクのLED101が発光した光は前記第1受光部に投光されるがキャリッジの他の箇所に装着されたインクタンクのLED101が発光した光は前記第1受光部に投光されない位置にキャリッジを位置させておいて、他の3つの色情報について、色情報とともにLED101の点灯を指示する信号を順に前記制御回路300から出力させて他の3つのインクタンクのうち、そのメモリアレイ103Bに記憶されている色情報が本体側から入力される信号の色情報と一致するインクタンクを順に発光させ、前記第1受光部で発光したLEDからの光を受光したことを検出することによって、そのとき前記制御回路300から出力した信号の色情報が示すインク色のインクタンクがその装着位置に誤って装着されてしまったインクタンクであることを特定するようにして、インクタンクごとにその搭載位置を特定することができる」から、上記(ア)の主張には理由がない。

ウ 以上のとおりであるから、上記「第4 1(2)」のアないしウの請求人が主張する理由によって、本件訂正発明1ないし7は本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されていないとはいえず、本件訂正発明1ないし7は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

(3)実施可能要件違反について
ア(ア)請求人は、本件訂正発明1ないし7は、液体インク収納容器又はカートリッジの任意の位置に「発光部」が存在し、それに対していかなる位置に「受光手段」や「受光部」が存在しようとも「発光部」からの光を受光することができ、それによって液体インク収納容器又はカートリッジの搭載位置が検出できることとなっており、いかなる位置関係であっても技術的範囲に含まれるように特許請求されているに等しいが、本件訂正明細書には、いかなる位置関係であっても「発光部」から「受光手段」あるいは「受光部」に投光可能とするための実現手段は開示されていないので、本件訂正明細書は、発光部と受光手段若しくは受光部がいかなる位置関係であっても当業者が本件訂正発明1ないし7を実施できるように明確かつ十分にその発明の実現手段が開示されているとはいえない旨主張する。
(イ)しかし、上記(1)ウで述べたとおり、本件訂正発明1、2、5ないし7では、「受光部」は「液体インク収納容器の発光部からの光を受光する」ものであり、本件訂正発明4では、「受光部」は「液体インク収納カートリッジの発光部からの光を受光する」ものであり、本件訂正発明3では、「位置検出用の受光部」は「液体インク収納容器からの光を受光する」ものであって、「液体インク収納容器」は前記受光部に投光するための光を発光する発光部を有するものであるから、本件訂正発明1ないし7には、受光手段又は受光部が発光部からの発光を受光できるようにされているものである。
したがって、本件訂正発明1ないし7において、液体インク収納容器又はカートリッジに存在する「発光部」と、液体インク収納容器又はカートリッジがそのキャリッジに装着される記録装置に存在する「受光手段」や「受光部」とは、液体インク収納容器又はカートリッジが「記録装置のキャリッジ」に装着された状態で、キャリッジが所定の位置にあるときに「発光部」が発光すると、その発光による光が「記録装置」側の「受光手段」に到達するような位置に、それぞれが配置されていることが特定されていると解される。
よって、本件訂正発明1ないし7は、液体インク収納容器又はカートリッジの任意の位置に「発光部」が存在し、それに対していかなる位置に「受光手段」や「受光部」が存在しようとも「発光部」からの光を受光することができるなどといった請求人の主張は誤りである。

イ(ア)請求人は、本件訂正発明1ないし7は、キャリッジがシャフトのいかなる位置に来たときに、キャリッジ内のどのインクタンクを「光らせ」るかについての特定がなされていないところ、本件訂正明細書には、液体インク収納容器の発光部が「受光手段」や「受光部」と対向する位置ではなくても、「発光部」から「受光手段」や「受光部」への投光を可能とする実現手段は開示されていないので、本件訂正明細書には、当業者が本件訂正発明1ないし7を実施できるように明確かつ十分にその発明の実現手段が開示されているとはいえないなどと主張する。
(イ)しかしながら、上記ア(イ)で述べたとおり、本件訂正発明1ないし7において、液体インク収納容器又はカートリッジに存在する「発光部」と、液体インク収納容器又はカートリッジがそのキャリッジに装着される記録装置に存在する「受光手段」や「受光部」とは、液体インク収納容器又はカートリッジが「記録装置のキャリッジ」に装着された状態で、キャリッジが所定の位置にあるときに「発光部」が発光すると、その発光による光が「記録装置」側の「受光手段」や「受光部」に到達するような位置に、それぞれが配置されていることが特定されていると解されるから、本件訂正明細書には、上記1(3)で述べた本件訂正発明1ないし7の実施形態などとして、インクタンクのLED101が発光した光が前記第1受光部に投光される形態が記載されているといえる。
したがって、仮に「液体インク収納容器の発光部が受光手段と対向する位置ではなくても、「『発光部』から『受光手段』への投光を可能とする実現手段」が本件訂正明細書に開示されていないとしても、本件訂正明細書には、当業者が本件訂正発明1ないし7を実施できるように明確かつ十分にその発明の実現手段が開示されていないとはいえない。

ウ 以上のとおりであるから、上記「第4 1(3)」のアないしウの請求人が主張する理由によって、本件訂正発明1ないし7は、発明の詳細な説明の記載が、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえず、本件訂正発明1ないし7は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

(4)まとめ
したがって、請求人が主張する上記無効理由1により、本件訂正発明1ないし7を特許法第123条第1項第4号により無効とすることはできない。

3 無効理由2について
(1) 本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と甲第1号証発明との対比・判断
(ア)対比
甲第1号証発明の「インクカートリッジ」及び「インクカートリッジに備えられるデータ信号端子」は、それぞれ、本件訂正発明1の「液体インク収納容器」及び「液体インク収納容器に備えられる接点」に相当するものと認められる。また、甲第1号証には、本件訂正発明1の「液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」を備える点について明示の記載はないが、「インクカートリッジに備えられるデータ信号端子」がキャリッジに設けられたデータバスに接続されていることから、キャリッジ側に対応する端子(接点)が設けられていることは当業者にとって自明であって、甲第1号証発明は、「液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」及び「前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点」を備えていると認められる。
甲第1号証発明の「データバス」は、各インクカートリッジのデータ信号端子と接続し、バス接続、すなわち、共通な電気的接続となっており、インクカートリッジ(の色)を識別するための識別データを送信するための配線を有した電気回路であると認められる。したがって、甲第1号証発明は、本件訂正発明1の「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」を備えていると認められる。
甲第1号証発明の「インクカートリッジのインク色を識別するための識別情報」は、インク色を示すものであるから、甲第1号証発明の「インクカートリッジの識別情報を格納する記憶素子(メモリアレイ)」は、本件訂正発明1の「液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」に相当するものと認められる。
したがって、本件訂正発明1と甲第1号証発明とは、
「複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
を有する液体インク収納容器。」点で一致し、以下の点で相違すると認められる。

相違点1:
前記「記録装置」が、本件訂正発明1では、「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」及び「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」構成を有するのに対して、甲第1号証発明ではこれを有しない点。

相違点2:
本件訂正発明1では、前記「液体インク収納容器」に「受光手段に投光するための光を発光する発光部」が備えられているのに対して、甲第1号証発明では、前記インクカートリッジ(液体インク収納容器)に発光部が備えられておらず、プリンタ側の操作パネルに、装着されていない又は通信異常のあるインクカートリッジを報知するための表示ランプ(発光部)が備えられており、本件訂正発明1では、前記「液体インク収納容器」に「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部」を備えるのに対して、甲第1号証発明では、前記インクカートリッジ(液体インク収納容器)内のEEPROMを用いた記憶装置(制御部)は、プリンタとの接点から入力される色情報(識別情報)に係る信号と、記憶装置の保持する前記色情報(識別情報)とが一致した場合に、応答信号をプリンタ側の制御回路に対して送り返す動作を制御するものの、上記EEPROMを用いた記憶装置(制御部)においてプリンタ側の表示ランプ(発光部)を発光させるものではない点。

(イ)判断
請求人は、本件訂正発明1と甲第1号証発明との相違点に係る構成は、甲第3号証及び甲第14号証等に記載されている技術であるから、これらの技術を甲第1号証発明に適用することは当業者にとって容易であったと主張する。
しかしながら、次のaないしcのとおり、上記相違点1及び2に相当する構成は、甲第3号証及び甲第14号証等に開示されているとは認められず、このほかに、上記相違点1及び2に相当する構成が本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったことを認めるに足りる証拠もない。
したがって、請求人のこの主張には理由がない。
a 甲第3号証の記載
甲第3号証には、「複数のインクタンクを搭載して移動するキャリッジと、前記インクタンクの発光手段からの光を受光する光センサを備えたインクジェット記録装置に対して着脱可能なインクタンクにおいて、前記光センサに投光するための光を発光する前記発光手段を有するインクタンク。」の発明(甲第3号証発明)が開示されている(上記「第6 3(2)」参照。)。
しかしながら、甲第3号証に記載の発明は、インク色ごとに光の吸収スペクトルが異なることに着目し、立体形半導体素子から一定の範囲の波長を含む光を発光させ、その光をインク中に透過させて、インクタンク外にある受光手段で受光させ、どの波長が最も吸収されたかを検知することで、当該インクの種類を判別するものであって(上記「第6 3(1)」の段落【0014】、【0020】、【0057】、【0058】参照。)、上記立体形半導体素子に当該インクタンクのインク色を示す色情報が保持されるものではない。
このように、甲第3号証に記載の発明における発光部及び受光部と、本件訂正発明1における発光部及び受光部とは、これらを用いることにより当該インクタンク(本件訂正発明1においては、受光部に対向するインクタンク)の色情報を判別するための原理も、その果たす役割も、全く異なるものであり、甲第3号証中に、本件訂正発明1における「『前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部』を光らせ、その光の受光結果に基づき、『前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段』によって、前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」ような構成や技術思想を示唆する記載は存在しない。
さらに、甲第3号証に記載の発明は、従来の構成ではインクタンク内に検出用の電極を配置する必要があったため、インク成分に金属イオンを用いることができないなど、使用するインクに制約が生じてしまうという課題があることを解決するために、立体形半導体素子への外部エネルギーの供給を非接触で行う構成としたものであるから(上記「第6 3(1)」の段落【0006】、【0017】参照。)、甲第1号証発明のように、立体形半導体素子とプリンタとを電気的につなぐための接点を設けることは、むしろ、上記発明の技術思想に反するものであるということができる。
したがって、甲第1号証発明に甲第3号証発明を適用する動機付けはなく、仮に甲第1号証発明に甲第3号証に記載の構成を組み合わせても、本件訂正発明1に想到することが容易であるということはできない。

b 甲第14号証の記載
甲第14号証には、各インクタンク内に配置された、インクタンクの色ごとに応答条件が異なる通信機能を有する立体形半導体素子が、インクジェット記録装置側に設けられた通信回路と、外部と非接触の無線によって、インクタンクの色ごとに独立した通信を行うことが開示されていると認められる(上記「第6 7」の段落【0037】、【0039】、【0040】、【0044】?【0047】、【0050】、【0052】、図3等参照。)。
このように、甲第14号証には、インクタンク内の立体形半導体素子とインクジェット記録装置側とが、インクタンクの色ごとに独立した通信を行うことが可能な構成が開示されているものの、本件訂正発明1における、インクタンクの誤装着を検出する方法、すなわち、「『前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部』を光らせ、その光の受光結果に基づき、『前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段』によって、前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」に係る記載ないし同構成を示唆する記載は存在しないものと認められる。
また、甲第14号証に記載の発明も、甲第3号証に記載の発明と同様、外部からのエネルギーをインクタンク内の立体形半導体素子に非接触で供給することを技術的特徴とするものであるから(上記「第6 7」の段落【0006】、【0029】、【0033】及び【0034】参照。)、甲第1号証発明のように、立体形半導体素子とプリンタとを電気的につなぐための接点を設けることは、同発明の技術思想に反するものであるということができる。
したがって、甲第14号証に記載の発明を甲第1号証発明に組み合わせる動機付けはなく、また、甲第14号証には、相違点1に係る構成のすべて及び相違点2に係る構成のうち「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部」及びこの制御部にその発光を制御される「受光手段に投光するための光を発光する発光部」に相当する構成については、開示されていないと認められるから、甲第1号証発明に甲第14号証に記載の構成を組み合わせても、本件訂正発明1に想到することが容易であるということはできない。

c その他の公報について
請求人は、甲第2号証、甲第4ないし13号証及び甲第15号証も挙げているが、いずれの公報にも、発光部、受光部等の構成が断片的に記載されているだけで、上記相違点1、2に係る構成は開示されていないと認められ、これらの公報の記載を総合しても、上記相違点に係る構成が周知技術であったと認めることはできない。

イ 本件訂正発明1と甲第5号証発明との対比・判断
請求人は、甲第5号証には、甲第1号証とほぼ同様の構成が開示されており、甲第1号証発明の構成は甲第5号証に記載された発明の構成と置き換えが可能である旨主張するので(審判請求書55頁の「ク 予備的主張」)、以下に検討する。
(ア)対比
甲第5号証発明の「インクカートリッジ」及び「インクカートリッジに備えられるデータ信号端子」は、それぞれ、本件訂正発明1の「液体インク収納容器」及び「液体インク収納容器に備えられる接点」に相当するものと認められる。また、甲第5号証には、本件訂正発明1の「液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」を備える点について明示の記載はないものの、「インクカートリッジに備えられるデータ信号端子」がキャリッジに設けられたデータバスに接続されていることから、キャリッジ側に対応する端子(接点)が設けられていることは当業者にとって自明であるから、甲第5号証発明は、「液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」及び「前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点」を備えていると認められる。
甲第5号証発明の「データバス」は、各インクカートリッジのデータ信号端子と接続し、バス接続、すなわち、共通な電気的接続となっており、インクカートリッジ(の色)を識別するための識別データを送信するための配線を有した電気回路であると認められる。したがって、甲第5号証発明は、本件訂正発明1の「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」を備えていると認められる。
甲第5号証発明の「識別データ」は、インク色を示すものであるから、甲第5号証発明の「インクカートリッジの識別データを格納するメモリアレイ」は、本件訂正発明1の「液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」に相当するものと認められる。
したがって、本件訂正発明1と甲第5号証発明は、
「複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
を有する液体インク収納容器。」である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。

相違点3:
前記「記録装置」が、本件訂正発明1では、「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」及び「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置」の構成を有するのに対して、甲第5号証発明ではこれを有しない点。

相違点4:
本件訂正発明1では、前記「液体インク収納容器」に「受光手段に投光するための光を発光する発光部」が備えられているのに対し、甲第5号証発明では、インクカートリッジ(液体インク収納容器)に、発光部が備えられておらず、プリンタ側のキャリッジに、交換対象となるインクカートリッジを報知するためのLED(発光部)が備えられており、また、本件訂正発明1では、前記「液体インク収納容器」に「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部」を備えるのに対して、甲第5号証発明では、インクカートリッジ(液体インク収納容器)の記憶装置(制御部)は、プリンタとの接点から入力される識別情報(色情報)に係る信号と、メモリアレイの保持する前記識別情報(色情報)とが一致した場合に、応答信号をプリンタ側の制御回路に対して送り返す動作を制御するものの、上記記憶装置(制御部)においてプリンタ側のキャリッジ上のLED(発光部)を発光させるものではない点。

(イ)判断
請求人は、本件訂正発明1と甲第5号証発明との相違点に係る構成は、甲第3号証及び甲第14号証等に記載されているから、これらの技術を甲第5号証発明に適用することは当業者にとって容易であったと主張する。
しかしながら、次のaないしdのとおり、上記相違点3及び4に相当する構成は、甲第3号証及び甲第14号証等に開示されているとは認められず、このほかに、上記相違点に相当する構成が本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったことを認めるに足りる証拠もない。
したがって、請求人のこの主張には理由がない。
a 甲第5号証には、インクカートリッジ上に発光部を設ける構成に係る記載ないし同構成を示唆する記載は存在しない。また、本件訂正発明1の「発光部」とは、単に光を発すれば足りるものではなく、「前記受光手段に投光するための光を発光する」ものである必要があり、本件訂正発明1では、インクタンクの本来装着されるべき位置が、プリンタに設けた受光手段に投光する位置にある状態で、当該インクタンクに設けた発光部を発光させ、その光を上記受光手段が受光することによって、前記液体インク収納容器の搭載位置の検出を実現するものであるから、本件訂正発明1において、発光の目的は重要な技術的意義を有するものと認められる。これに対し、甲第5号証発明におけるプリンタ側のキャリッジ上の発光部は、前記のとおり、交換対象となるインクカートリッジを(ユーザーに)報知するためのものであるから、本件訂正発明1における発光部とは、発光の目的を異にする。
これらの点からみると、甲第5号証発明における発光部と本件訂正発明1における発光部とは実質的に相違するというべきである。

b 甲第3号証には、外部からのエネルギーをインクタンク内の立体形半導体素子に非接触で供給する構成が開示されているだけであり、上記立体形半導体素子とプリンタをつなぐための電気的に接続可能な接点に係る記載ないし同構成を示唆する記載は存在しないものと認められる。甲第3号証に記載の発明は、従来の構成ではインクタンク内に検出用の電極を配置する必要があったため、インク成分に金属イオンを用いることができないなど、使用するインクに制約が生じてしまうという課題があることを解決するために、立体形半導体素子への外部エネルギーの供給を非接触で行う構成としたものであるから(上記「第6 3(1)」の段落【0006】、【0017】参照。)、立体形半導体素子とプリンタとを電気的につなぐための接点を設けることは、むしろ、上記発明の技術思想に反するものであるということができる。また、甲第3号証に記載の構成は、インク色ごとに光の吸収スペクトルが異なることに着目し、立体形半導体素子から一定の範囲の波長を含む光を発光させ、その光をインク中に透過させて、インクタンク外にある受光手段で受光させ、どの波長が最も吸収されたかを検知することで、当該インクの種類を判別するものであって(上記「第6 3(1)」の段落【0014】、【0020】、【0057】、【0058】参照。)、上記立体形半導体素子に当該インクタンクのインク色を示す色情報が保持されるものではないと認められるから、本件訂正発明1における「『前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部』を光らせ、その光の受光結果に基づき、『前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段』によって、前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」ような構成が甲第3号証に開示されているともいえない。したがって、甲第3号証に本件訂正発明1の「『前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部』を光らせ、その光の受光結果に基づき、『前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段』によって、前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」構成を備える発明が開示されているとは認められない。

c 甲第3号証に記載されたものは、前記bのとおり、上記相違点3に相当する構成を有するものではなく、上記相違点4のうち、「インクタンク内に、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部を備える」構成も有しないと認められる。また、甲第3号証における発光部及び受光部と、本件訂正発明1における発光部及び受光部とは、これらを用いることにより当該インクタンク(本件訂正発明1においては、受光部に対向するインクタンク)の色情報を判別するための原理も、その果たす役割も、全く異なるものであるというべきことは、前記a、bのとおりであり、甲第3号証中に、本件訂正発明1における「『前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部』を光らせ、その光の受光結果に基づき、『前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段』によって、前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」構成や技術思想を示唆する記載が存在しないことも、上記bのとおりである。
したがって、甲第5号証発明に甲第3号証に記載の事項を組み合わせても、上記相違点3及び4に係る構成に想到することが容易であるということはできない。

d その他の公報について
甲第14号証についても上記ア(イ)bと同様であり、請求人は、甲第2号証、甲第4ないし甲第15号証も挙げているが、いずれの公報にも、発光部、受光部等の構成が断片的に記載されているだけで、上記相違点3、4に係る構成は開示されていないと認められ、これらの公報の記載を総合しても、上記相違点に係る構成が周知技術であったと認めることはできない。

ウ まとめ
したがって、本件訂正発明1を、請求人が主張する無効理由2により無効とすることはできない。

(2) 本件訂正発明3について
ア 本件訂正発明3と甲第1号証発明との対比・判断
請求人は、甲第1号証には、甲第5号証とほぼ同様の構成が開示されており、甲第5号証発明の構成は甲第1号証に記載された発明の構成と置き換えが可能である旨主張するので(審判請求書76頁の「ク 予備的主張」)、本件訂正発明3と本件1次審決で引用した甲第1号証に記載された発明との対比判断を先に検討する。
(ア)対比
甲第1号証発明において、キャリッジに複数のインクカートリッジを装着したカラープリンタには、各インクカートリッジから収納しているインクが供給されることになるから、甲第1号証発明の「カラープリンタとインクカートリッジとからなるもの」は、本件訂正発明3の「液体インク供給システム」に相当する。
本件訂正発明3は、本件訂正発明1の記録装置及び液体インク収納容器を備える液体インク供給システムにおいて、キャリッジへの複数の液体インク収納容器の搭載を「互いに異なる位置に」するとともに、液体インク収納容器位置検出手段が備える受光手段を、液体インク収納容器位置検出手段の「位置検出用の受光部」とみなし、制御部が、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて制御する前記発光部の発光制御を、両色情報が一致した場合に前記発光部を発光させるものとしたものに相当するところ、甲第1号証発明は、「カラープリンタとインクカートリッジとからなり、各インクカートリッジから収納しているインクを供給するシステム」の発明でもあり、複数の液体インク収納容器を移動するキャリッジの互いに異なる位置に搭載するものであり、EEPROMを用いた記憶装置は、前記データ信号端子から入力される識別情報と、前記記憶素子(メモリアレイ)に格納されている識別情報とが一致する場合に、応答信号をカラープリンタ側の制御回路に対して送り返すものであるから、本件訂正発明3と甲第1号証発明とは、
「複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、
前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、を備える液体インク供給システムにおいて、
前記液体インク収納容器は、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
を有する液体インク供給システム。」である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。

相違点5:
本件訂正発明3では、前記記録装置が、「該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」を有し、上記「受光部」は、「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わる」ように配置されているのに対し、
甲第1号証発明では、前記記録装置は、「液体インク収納容器位置検出手段」を有しておらず、液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部さえも備えていない点。

相違点6:
本件訂正発明3では、前記液体インク収納容器が、前記「液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部([相違点5]参照。)」に投光するための光を発光する「発光部」を有するとともに、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部」も有しているのに対して、
甲第1号証発明では、インクカートリッジ内のEEPROMを用いた記憶装置(制御部)は、プリンタとの接点から入力される色情報(識別情報)に係る信号と、記憶素子(メモリアレイ)に格納されている前記色情報(識別情報)とが一致した場合に、応答信号をプリンタ側の制御回路に対して送り返す動作を制御するものの、上記EEPROMを用いた記憶装置(制御部)においてプリンタ側の表示ランプ(発光部)を発光させるものではない点。

相違点7:
本件訂正発明3では、「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」のに対して、
甲第1号証発明では、応答信号の有無により装着されていないインクカートリッジを検出し、表示ランプで報知するものの、インクカートリッジの搭載位置を検出することはできない点。

(イ)判断
上記相違点5ないし7について検討する。
甲第3号証、先行技術文献1、2に記載されている「液体インク収納容器」において、「記録装置」と「液体インク収納容器」の間の接続方式につき「共通バス接続方式」が採用されているかは不明であって、少なくとも甲第3号証、先行技術文献1、2においては、「共通バス接続方式」を採用した場合における「液体インク収納容器」の誤装着の検出という本件訂正発明3の技術的課題(上記1(2)参照。)は開示も示唆もされていないというべきである。そして、上記技術的課題に着目してその解決手段を模索する必要がないのに、記録装置側がする色情報に係る要求に対して、わざわざ本件訂正発明3のような光による応答を行う新たな装置(部位)を設けて対応する必要はなく、このような装置を設ける動機付けに欠けるものというべきである。
そうすると、甲第3号証、先行技術文献1、2に記載された事項は、解決すべき技術的課題の点においても既に本件訂正発明3と異なるものであって、共通バス接続方式を採用する甲第1号証発明に適用するという見地を考慮しても、本件訂正発明3と甲第1号証発明との相違点、とりわけ相違点6、7に係る構成を想到する動機付けに欠けるものというべきである。
また、甲第3号証の「記録装置」において、「受光手段」が一つだけ設けられているかは不明であるから、上記「記録装置」において、「受光手段を一つだけ設け、キャリッジの移動により順次液体インク収納容器からの光の受光を行う」構成が採用されているとはいうことができない。
「複数の液体インク収納容器をキャリッジに装着して使用する記録装置において、記録装置側に発光部及び受光部を有する検知器を一つ設け、キャリッジで移動する液体インク収納容器の残量検知部が上記検知器に対向する位置に来たときに、上記検知器から発光する光を液体インク収納容器の残量検知部に照射(投光)し、返ってくる光を上記検知器で受光し、解析することにより、当該液体インク収納容器のインク残量を順次検出する」構成が公知であったとしても、また、本件訂正明細書の段落【0043】及び図9に、同様のインク残量検知器及び液体インク収納容器のインク残量検知部の構成が開示されていても、上記のインク残量検知器等の構成は、記録装置と液体インク収納容器との間の接続の方式のいかんにかかわらず適用し得る性格のものであって、本件訂正発明3が、共通バス接続方式下で液体インク収納容器の誤装着の問題解決を技術的課題としていることに対する適用可能性はないというべきであるから、上述のインク残量検知器及び液体インク収納容器のインク残量検知部の構成をもって、当業者が、甲第3号証、先行技術文献1、2の構成から、受光部側の構成のみを取り出して上記相違点5ないし7に係る本件訂正発明3の構成となすことが容易想到であるとすることの裏付けとすることはできない。
甲第3号証には、「このような構成ではインクタンク内に検出用の電極を配置する必要がある。また、電極間の導通状態によりインク残量を検知するため、インク成分に金属イオンを用いることができない等、使用するインクに制約が生じてしまう。」(上記「第6 3(1)」の段落【0006】)と液体インク収納容器内の発光素子に液体インク収納容器外から有線で電力を供給することに難点がある旨の記載があるし、段落【0008】では外部から非接触で発光素子を起動する必要がある旨が、段落【0012】、【0013】では立体形半導体素子が外部からのエネルギーを異なる種類のエネルギーに変換する手段を有し、変換されたエネルギーによって駆動する必要がある旨が、図6や段落【0018】、【0040】では立体形半導体素子のエネルギー変換手段として共振回路を用い、電磁誘導によって必要な電力を外部から得る構成がそれぞれ記載されているから(上記「第6 3(1)」参照。)、甲第3号証の立体形半導体素子が、専ら無線方式でプリンタと接続されることは明らかである。
そして、甲第3号証の段落【0017】には、「前記エネルギー変換手段が変換する外部エネルギーは非接触で供給される構成とすることにより、素子の起動のためのエネルギー源をインクタンクに持たせたり、エネルギー供給用の配線を素子に接続する必要がなく、外部との直接的な配線を施すことが困難な箇所に使用することができる。」との記載(上記「第6 3(1)」参照。)は、立体形半導体素子を無線方式(非接触方式)で設けることのメリットに係るものであることが明らかで、上記記載は有線方式を排除した趣旨のものであるというべきである。
そうすると、甲第3号証には立体形半導体素子を有線の電気配線で記録装置側と接続する構成は記載されていないというべきであるし、前記のとおりの本件訂正発明3の構成等との相違に照らせば、甲第1号証発明において応答信号を電気配線を通じて記録装置に伝送している点を、甲第3号証の発光部の発光による伝達に置き換える動機付けは存しないというべきである。
したがって、甲第1号証発明において応答信号を電気配線を通じて記録装置に伝送している点を、甲第3号証の発光部の発光による伝達に置き換えることは当業者が容易に想到し得ることであるなどとすることはできない。
また、甲第5号証の記録装置及び液体インク収納容器は、共通バス接続方式の下で、液体インク収納容器が誤りなく装着されているか否かを検出するための機構を備えているものであるが、記録装置の識別装置は電気配線を通じて液体インク収納容器からインク色等に係る情報(信号)を取得するだけで、本件訂正発明3のような、光を利用して液体インク収納容器の識別を行う構成(とりわけ相違点7)は開示も示唆もされていないというべきである(なお、甲第5号証の記録装置のキャリッジ上に備えられているLED(41頁17?22行、上記「第6 5(1)」参照。)は、液体インク収納容器を交換する際に、交換すべき液体インク収納容器の搭載位置をユーザに視覚を通じて指し示すものにすぎず、その機能はあくまで受動的なものである。上記LEDは本件訂正発明3の発光部のように、能動的に液体インク収納容器の異同を検出・識別するために動作するものではない。)。
請求人は、本件訂正発明3と甲第1号証発明との相違点に係る構成は、甲第3号証及び甲第14号証等に記載されているから、これらの技術を甲第1号証発明に適用することは当業者にとって容易であったと主張する。
しかしながら、上記(1)と同様に、上記相違点5ないし7に相当する構成は、甲第3号証及び甲第14号証等に開示されているとは認められず、このほかに、上記相違点に相当する構成が本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったことを認めるに足りる証拠もない。

イ 本件訂正発明3と甲第5号証発明との対比・判断
(ア)対比
甲第5号証発明において、キャリッジに複数のインクカートリッジを装着したカラープリンタには、各インクカートリッジから収納しているインクが供給されることになるから、甲第5号証発明の「カラープリンタとインクカートリッジとからなるもの」は、本件訂正発明3の「液体インク供給システム」に相当する。
本件訂正発明3は、本件訂正発明1の記録装置及び液体インク収納容器を備える液体インク供給システムにおいて、キャリッジへの複数の液体インク収納容器の搭載を「互いに異なる位置に」するとともに、液体インク収納容器位置検出手段が備える受光手段を、液体インク収納容器位置検出手段の「位置検出用の受光部」とみなし、制御部が、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて制御する前記発光部の発光制御を、両色情報が一致した場合に前記発光部を発光させるものとしたものに相当するところ、甲第5号証発明は、「カラープリンタとインクカートリッジとからなり、各インクカートリッジから収納しているインクを供給するシステム」の発明でもあり、複数の液体インク収納容器を移動するキャリッジの互いに異なる位置に搭載するものであり、記憶装置は、前記データ信号端子から入力される識別情報と、前記記憶素子(メモリアレイ)に格納されている識別情報とが一致する場合に、カラープリンタ側の制御回路に対して応答するものであるから、本件訂正発明3と甲第5号証発明とは、
「複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、
前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、を備える液体インク供給システムにおいて、
前記液体インク収納容器は、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
を有する液体インク供給システム。」である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。

相違点8:
本件訂正発明3では、前記記録装置が、「該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」を有し、上記「受光部」は、「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わる」ように配置されているのに対し、
甲第5号証発明では、前記記録装置は、「液体インク収納容器位置検出手段」を有しておらず、液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部さえも備えていない点。

相違点9:
本件訂正発明3では、前記液体インク収納容器が、前記「液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部([相違点8]参照。)」に投光するための光を発光する「発光部」を有するとともに、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部」も有しているのに対して、
甲第5号証発明では、インクカートリッジの記憶装置(制御部)は、プリンタとの接点から入力される色情報(識別情報)に係る信号と、記憶素子(メモリアレイ)に格納されている前記色情報(識別情報)とが一致した場合に、カラープリンタ側の制御回路に対して応答し、プリンタ側のキャリッジ上にLED(発光部)を備えているものの、上記インクカートリッジの記憶装置(制御部)においてプリンタ側のキャリッジ上のLED(発光部)を点灯させるものではない点。

相違点10:
本件訂正発明3では、「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」のに対して、
甲第5号証発明では、応答がない記憶装置を備えるインクカートリッジを、装着されていないインクカートリッジとして検出するものの、インクカートリッジの搭載位置を検出することはできない点。

(イ)判断
上記相違点8ないし10について検討する。
請求人は、本件訂正発明3と甲第5号証発明との相違点に係る構成は、甲第3号証及び甲第14号証等に記載されているから、これらの技術を甲第5号証発明に適用することは当業者にとって容易であったと主張する。
しかしながら、上記(1)と同様に、上記相違点8ないし10に相当する構成は、甲第3号証及び甲第14号証等に開示されているとは認められず、このほかに、上記相違点に相当する構成が本件特許の最先の優先日当時において周知慣用技術であったことを認めるに足りる証拠もない。

ウ まとめ
したがって、本件訂正発明3を、請求人が主張する無効理由2により無効とすることはできない。

(3)本件訂正発明2、4ないし7について
ア 本件訂正発明2は、本件訂正発明1とは、(ア)液体インク収納容器の搭載位置につき「互いに異なる位置に」との限定が付されている点、(イ)本件訂正発明1の「受光手段」が「受光部」に置き換えられている点、(ウ)液体インク収納容器の情報保持部が色情報を「保持可能」とされているのではなく「保持する」と限定されている点、(エ)液体インク収納容器からの光の宛先が「前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に」とより限定されている点、(オ)本件訂正発明1において制御部の動作につき「前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する」とされているのを、「前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる」と、より動作を特定している点がそれぞれ異なるものである。

イ 本件訂正発明4は、本件訂正発明1とは、(ア)本件訂正発明1の「液体インク収納容器」が「液体インク収納カートリッジ」に置き換えられている点、(イ)液体インクカートリッジの搭載位置につき「互いに異なる位置に」との限定が付されている点、(ウ)本件訂正発明1の「受光手段」が「受光部」に置き換えられている点、(エ)液体インク収納カートリッジの構成要素として「液体インクを吐出することで記録を行う記録ヘッド」が加えられている点、(オ)液体インク収納カートリッジの情報保持部が色情報を「保持可能」とされているのではなく「保持する」と限定されている点、(カ)液体インク収納カートリッジの発光部からの光の宛先が「前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段の前記受光部に」とより限定されている点、(キ)本件訂正発明1において制御部の動作につき「前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する」とされているのを、「前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる」と、より動作を特定している点がそれぞれ異なるものである。

ウ 本件訂正発明5は、本件訂正発明1とは、(ア)液体インク収納容器の搭載位置につき「互いに異なる位置に」との限定が付されている点、(イ)本件訂正発明1の「受光手段」が「受光部」に置き換えられている点、(ウ)液体インク収納容器の構成要素として「液体インク収納容器内に収納される液体インク」が加えられている点、(エ)液体インク収納容器の情報保持部が色情報を「保持可能」とされているのではなく「保持する」と限定されている点、(オ)液体インク収納容器の発光部からの光の宛先が「前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に」とより限定されている点、(カ)本件訂正発明1において制御部の動作につき「前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する」とされているのを、「前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に前記発光部を発光させる」と、より動作が特定されている点がそれぞれ異なるものである。

エ 本件訂正発明6は、本件訂正発明1とは、(ア)キャリッジが「複数の液体インク収納容器が装着可能な装着部を備えている」構成が加えられている点、(イ)電気回路、装置側接点及び液体インク収納容器に備えられる接点(以下、(イ)では、「容器側接点」という。)の相互の関係について、本件訂正発明1で、容器側接点及び装置側接点が、「電気的に接続可能」であり、複数の容器がキャリッジに搭載されると「電気回路が有する配線」により「共通に電気的接続」される旨表現されていたものを、複数の装置側接点と電気回路とが「共通の信号線」で接続され、容器がキャリッジに装着されると、前記装置側接点と容器側接点とが「接続可能」である旨の表現にした点、(ウ)「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部」を「液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された前記発光部」とし発光部の配置をより特定した点、(エ)「前記接点から」入力される前記色情報に係る信号が「前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点および前記接点を介して」入力されることを特定した点がそれぞれ異なるものである。

オ 本件訂正発明7は、本件訂正発明1とは、(ア)液体インク収納容器(インクタンク)と記録装置(プリンタ)側との接点から発光制御信号が入力される構成が加えられている点、(イ)本件訂正発明1において制御部の動作につき「前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する」とされているのを、「前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に、前記接点からの前記色情報と共に入力される前記発光部の制御に係る信号に基づいて前記発光部の発光を制御する」と、より動作が特定されている点がそれぞれ異なるものである。

カ 請求人は、本件訂正発明2、4ないし7は、本件訂正発明1、3と同様の理由により、当業者が容易に想到し得たことであると主張する。

キ しかしながら、本件訂正発明2、4ないし7と甲第1号証発明あるいは甲第5号証発明との相違点に係る構成について、発明の進歩性に係る判断の事情は本件訂正発明1、3と異なるものではなく、本件訂正発明2、4ないし7は、本件訂正発明1、3と同様に、甲第1号証発明あるいは甲第5号証発明との相違点に係る構成について、請求人が主張する理由により、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
したがって、本件訂正発明2、4ないし7を、請求人が主張する無効理由2により無効とすることはできない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1ないし7は、請求人が主張する無効理由2により、無効にすることができない。

第8 むすび
以上のとおり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とすることができない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲








(参考)
審決


無効2009-800101

大阪府大阪市浪速区下寺1-6-7
請求人 株式会社 プレジール

大阪府大阪市西区靭本町1-10-4 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 溝上 哲也

大阪府大阪市西区靱本町1-10-4 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 岩原 義則

大阪府大阪市西区靭本町1-10-4本町井出ビル2階 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 山本 進

大阪府大阪市西区靱本町1-10-4本町井出ビル2階 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 江村 一宏

大阪府大阪市浪速区下寺1-6-7
請求人 株式会社 エム・エス・シー

大阪府大阪市西区靭本町1-10-4 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 溝上 哲也

大阪府大阪市西区靱本町1-10-4 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 岩原 義則

大阪府大阪市西区靭本町1-10-4本町井出ビル2階 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 山本 進

大阪府大阪市西区靱本町1-10-4本町井出ビル2階 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 江村 一宏

東京都中央区日本橋小伝馬町4番2号
請求人 株式会社 サップ

大阪府大阪市西区靭本町1-10-4 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 溝上 哲也

大阪府大阪市西区靱本町1-10-4 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 岩原 義則

大阪府大阪市西区靭本町1-10-4本町井出ビル2階 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 山本 進

大阪府大阪市西区靱本町1-10-4本町井出ビル2階 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 江村 一宏

東京都中央区日本橋小伝馬町4番2号
請求人 株式会社 スリーイーコーポレーション

大阪府大阪市西区靭本町1-10-4 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 溝上 哲也

大阪府大阪市西区靱本町1-10-4 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 岩原 義則

大阪府大阪市西区靭本町1-10-4本町井出ビル2階 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 山本 進

大阪府大阪市西区靱本町1-10-4本町井出ビル2階 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 江村 一宏

東京都中央区日本橋小伝馬町4番2号
請求人 オフィネット・ドットコム 株式会社

大阪府大阪市西区靭本町1-10-4 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 溝上 哲也

大阪府大阪市西区靱本町1-10-4 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 岩原 義則

大阪府大阪市西区靭本町1-10-4本町井出ビル2階 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 山本 進

大阪府大阪市西区靱本町1-10-4本町井出ビル2階 溝上法律特許事務所
代理人弁理士 江村 一宏

東京都大田区下丸子3丁目30番2号
被請求人 キヤノン 株式会社

東京都千代田区紀尾井町3番6号 紀尾井町パークビル7階 大塚国際特許事務所
代理人弁理士 大塚 康徳

東京都千代田区紀尾井町3番6号 紀尾井町パークビル7階 大塚国際特許事務所
代理人弁理士 西川 恵雄

東京都千代田区紀尾井町3番6号 秀和紀尾井町パークビル7階 大塚国際特許事務所
代理人弁理士 高柳 司郎

東京都千代田区紀尾井町3番6号 紀尾井町パークビル7階 大塚国際特許事務所
代理人弁理士 大塚 康弘

東京都千代田区紀尾井町3-6秀和紀尾井町パークビル7階 大塚国際特許事務所
代理人弁理士 木村 秀二

東京都港区高輪1-5-33 高輪パークマンション708号室 長尾特許事務所
代理人弁理士 長尾 達也




上記当事者間の特許第3793216号発明「液体インク収納容器、液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結 論
訂正を認める。
特許第3793216号の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理 由
第1 手続きの経緯
主な手続の経緯は以下のとおりである。
・出願
平成16年11月15日
(優先権主張日 平成15年12月26日,平成16年10月22日)
・設定登録(請求項1?16)
平成18年4月14日
・無効審判請求(請求項1?16に対して)
平成21年5月19日(差出日)
・上申書提出(請求人)
平成21年5月19日(差出日)
・訂正請求書及び答弁書提出(被請求人)
平成21年8月3日
・訂正請求書及び答弁書に対する弁駁書提出(請求人)
平成21年10月9日

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
被請求人が訂正請求書により求めた訂正の内容は、次のとおりのものである。(下線は訂正請求書に添付した明細書及び特許請求の範囲のとおりである。)
1-1 特許請求の範囲について
(1)訂正事項A-1
請求項1を以下の通り訂正する。
『【請求項1】
複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。』

(2)訂正事項A-2
請求項2を以下の通り訂正する。
『【請求項2】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。』

(3)訂正事項A-3
請求項3、請求項4、請求項6乃至10、請求項14及び請求項15を削除する。

(4)訂正事項A-4
請求項5を、請求項3とすると共に以下の通り訂正する。
『【請求項3】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、
前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、を備える液体インク供給システムにおいて、
前記液体インク収納容器は、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有し、
前記受光部は、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され、
前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出することを特徴とする液体インク供給システム。』

(5)訂正事項A-5
請求項11を、請求項4とすると共に以下の通り訂正する。
『【請求項4】
複数の液体インク収納カートリッジを互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納カートリッジに備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納カートリッジが入れ替わるように配置され前記液体インク収納カートリッジの発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する液体インク収納カートリッジ位置検出手段と、
搭載される液体インク収納カートリッジそれぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納カートリッジの前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段は前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納カートリッジにおいて、
液体インクを吐出することで記録を行う記録ヘッドと、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納カートリッジのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納カートリッジ。』

(6)訂正事項A-6
請求項12を、請求項5とすると共に以下の通り訂正する。
『【請求項5】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記液体インク収納容器内に収納される液体インクと、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
収納される液体インクのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。』

(7)訂正事項A-7
請求項13を、請求項6とすると共に以下の通り訂正する。
『【請求項6】
複数の液体インク収納容器が装着可能な装着部を備えて移動するキャリッジと、
共通の信号線に接続される複数の装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
前記共通の信号線に接続され色情報に係る信号を発生するための電気回路と、
を備え、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装着部に装着されることにより、前記複数の装置側接点に接続可能な接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された前記発光部と、
前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点および前記接点を介して入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を具えたことを特徴とする液体インク収納容器。』

(8)訂正事項A-8
請求項16を、請求項7とすると共に以下の通り訂正する。
『【請求項7】
複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に、前記接点から前記色情報と共に入力される前記発光部の制御に係る信号に基づいて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。』

1-2 明細書について
(1)訂正事項B-1
発明の名称を以下の通り訂正する。
『【発明の名称】液体インク収納容器、液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジ』

(2)訂正事項B-2
段落0001の記載を以下の通り訂正する。
『 【0001】
本発明は、液体インク収納容器、液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジに関し、詳しくは、インクジェット記録で用いられるインクタンクのインク残量など、液体インク収納容器の状態に関する報知をLEDなどの発光手段によって行う構成で用いられる液体インク収納容器、液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジに関するものである。』

(3)訂正事項B-3
段落0010の記載を以下の通り訂正する。
『 【0010】
本発明はこのような問題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い、この場合でもインクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の発光制御をすることを可能とすることにある。』

(4)訂正事項B-4
段落0011の記載を以下の通り訂正する。
『 【0011】
そのために本発明では、複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、前記受光手段に投光するための光を発先する前記発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、を有することを特徴とする。』

(5)訂正事項B-5
段落0012の記載を以下の通り訂正する。
『 【0012】
また、本発明は、複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有することを特徴とする。』

(6)訂正事項B-6
段落0013の記載を以下の通り訂正する。
『 【0013】
さらに、本発明は、複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、を備える液体インク供給システムにおいて、前記液体インク収納容器は、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有し、前記受光部は、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出することを特徴とする。』

(7)訂正事項B-7
段落0014乃至段落0016の記載を削除する。

(8)訂正事項B-8
段落0017の記載を以下の通り訂正する。
『 【0017】
さらに加えて、本発明は、複数の液体インク収納カートリッジを互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納カートリッジに備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納カートリッジが入れ替わるように配置され前記液体インク収納カートリッジの発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する液体インク収納カートリッジ位置検出手段と、搭載される液体インク収納カートリッジそれぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納カートリッジの前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段は前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納カートリッジにおいて、液体インクを吐出することで記録を行う記録ヘッドと、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納カートリッジのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有することを特徴とする。』

(9)訂正事項B-9
段落0018の記載を以下の通り訂正する。
『 【0018】
また、本発明は、複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記液体インク収納容器内に収納される液体インクと、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、収納される液体インクのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有することを特徴とする。
また、本発明は、複数の液体インク収納容器が装着可能な装着部を備えて移動するキャリッジと、共通の信号線に接続される複数の装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、前記共通の信号線に接続され色情報に係る信号を発生するための電気回路と、を備え、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記装着部に装着されることにより、前記複数の装置側接点に接続可能な接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された前記発光部と、前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点および前記接点を介して入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、を具えたことを特徴とする。
さらに本発明は、複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、上記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、前記接点から人力される前記色情報に係る信号と前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に、前記接点から前記色情報と共に入力される前記発光部の制御に係る信号に基づいて前記発光部の発光を制御する制御部と、を有することを特徴とする。』

(10)訂正事項B-10
段落0019の記載を以下の通り訂正する。
『 【0019】
以上の構成によれば、記録装置の本体側の接点(コネクタ)と接続する液体インク収納容器であるインクタンクの接点(パッド)を介して入力される信号と、そのインクタンクの色情報とに基づいて発光部の発光を制御するので、先ず、搭載される複数のインクタンクが共通の信号線によってその同じ制御信号を受け取ったとしても、色情報に合致するインクタンクのみがその発光制御を行うことができ、これにより、インクタンクを特定した発光部の点灯など発光制御が可能となる。次に、このようなインクタンクを特定した発光制御が可能な場合、例えばキャリッジに搭載された複数のインクタンクについて、その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに、上記所定の位置での発光を検出するようにすることにより、発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識できる。 これにより、例えば、ユーザに対してインクタンクを正しい位置に再装着することを促す処理をすることができ、結果として、インクタンクごとにその搭載位置を特定することができる。』

(11)訂正事項B-11
段落0020の記載を以下の通り訂正する。
『 【0020】
この結果、複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い、この場合でもインクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の発行制御をすることが可能となる。』

(12)訂正事項B-12
段落0135の記載を以下の通り訂正する。
『 【0135】
また、参考例として、キャリッジ上に搭載される記録ヘッドとは別体にインクタンクを記録装置の固定部位に取り付け、可撓性チューブを介してその固定インクタンクと記録ヘッドとを連結してインクを供給するチューブを用いる形態の連続供給方式について説明する。この形態において、インクタンクと記録ヘッドとの中間タンクとして機能するインクタンクが記録ヘッドないしキャリッジ上に搭載される構成であってもよい。』

(13)訂正事項B-13
図面の簡単な説明の図38の記載を以下の通り訂正する。
『 【図38】参考例に係る構造を有したプリンタを示す斜視図である。』

2 訂正の可否についての判断
2-1 訂正事項A-1について
(1)「液体インク収納容器」
訂正前の「液体収納容器」を液体インクを収納する容器であることに限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0022に記載されている。

(2)「複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジ」及び「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器」
請求項1に係る発明が、キャリッジを備えた記録装置の該キャリッジに搭載される容器であることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0068乃至段落0070に記載されている。

(3)「該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」及び「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点」
訂正前においては、接点間の同一状態の表現について「結合」と「接続」とが混在していたものを「接続」に統一して明確にしたものである。なお、設定登録時の明細書においては、例えば、段落0033、段落0057等に見られるように「接続」と表現されている。

(4)「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段をーつ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」及び「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置」
請求項1に係る発明が、上記の構成を有する記録装置に搭載される容器であることを限定したものである。
この内容のうち、「受光手段」に関しては、例えば、設定登録時の明細書の段落0073、段落0110、段落0111及び図29に第1受光部210として記載されている。特に、図29からは、インクタンクの搭載位置の検出に使用する第1受光部210は一つであり、キャリッジ205に搭載された複数のインクタンクのうち、第1受光部210に対向するインクタンクが、キャリッジ205の移動により入れ替わることが理解される。
次に、「液体インク収納容器位置検出手段」に関しては、例えば、設定登録時の明細書の段落0079、段落0108乃至段落0113に記載されている。
また、「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」については、例えば、設定登録時の明細書の段落0019、段落0108乃至段落0113に記載されている。

(5)「前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」
請求項1に係る発明が、色情報に係る信号を発生する電気回路を備えた記録装置に搭載される容器であることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0086乃至段落0094に記載されている。

(6)「少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」及び「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部」
訂正前の「液体収納容器の個体情報」を、液体インク収納容器のインク色を示す色情報に限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0083に記載されている。

(7)「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部」
訂正前の「発光部」が、記録装置の受光手段に投光する光を発光するものであることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の図3(a)、明細書の段落0036、段落0038乃至段落0047、段落0073、段落0079に記載されている(第1発光部(LED)101、第1受光部210に関する記載)。

(8)小括
以上の通り、訂正事項A-1は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号、3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明りようでない記載の釈明を目的とするものである。また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

2-2 訂正事項A-2について
(1)「液体インク収納容器」
訂正前の「液体収納容器」を液体インクを収納する容器であることに限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0022に記載されている。

(2)「複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジ」及び「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器」
請求項2に係る発明が、キャリッジを備えた記録装置の該キャリッジに搭載される容器であることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0068乃至段落0070に記載されている。

(3)「該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」及び「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点」
訂正前においては、接点間の同一状態の表現について「結合」と「接続」とが混在していたものを「接続」に統一して明確にしたものである。なお、設定登録時の明細書においては、例えば、段落0033、段落0057等に見られるように「接続」と表現されている。

(4)「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部をーつ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」及び「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置」
請求項2に係る発明が、上記の構成を有する記録装置に搭載される容器であることを限定したものである。
この内容のうち、「受光部」に関しては、例えば、設定登録時の明細書の段落0073、段落0110、段落0111及び図29に第1受光部210として記載されている。特に、上記の図29からは、インクタンクの搭載位置の検出に使用する第1受光部210は一つであり、キャリッジ205に搭載された複数のインクタンクのうち、第1受光部210に対向するインクタンクが、キャリッジ205の移動により入れ替わることが理解される。
次に、「液体インク収納容器位置検出手段」に関しては、例えば、設定登録時の明細書の段落0079、段落0108乃至段落0113に記載されている。
また、「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」については、例えば、設定登録時の明細書の段落0019、段落0108乃至段落0113に記載されている。

(5)「前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」
請求項2に係る発明が、色情報に係る信号を発生する電気回路を備えた記録装置に搭載される容器であることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0086乃至段落0094に記載されている。

(6)「少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」及び「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部」
訂正前の「個体情報」を色情報に限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0083に記載されている。

(7)「前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部」
訂正前の「発光部」が、記録装置の受光部に投光する光を発光するものであることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の図3(a)、明細書の段落0036、段落0038乃至段落0047、段落0073、段落0079に記載されている(第1発光部(LED)101、第1受光部210に関する記載)。

(8)小括
以上の通り、訂正事項A-2は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号、3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明りようでない記載の釈明を目的とするものである。また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

2-3 訂正事項A-3について
訂正事項A-3は、請求項の削除であり、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

2-4 訂正事項A-4について
(1)請求項5から請求項3への項番号の変更は、上記訂正事項A-3による請求項の削除に伴う訂正である。

(2)「液体インク収納容器」及び「液体インク供給システム」
訂正前の「液体収納容器」を液体インクを収納する容器であることに限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0022に記載されている。
上記限定により、「液体収納容器」に収納される液体が液体インクになり、「液体供給システム」が供給する液体が液体インクになることに合わせて、「液体供給システム」を液体インク供給システムと限定したものである。

(3)「複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジ」及び「前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器」
記録装置がキャリッジを備えた点、液体インク収納容器がこのキャリッジに着脱可能な点、を限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0068乃至段落0070に記載されている。

(4)「該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」及び「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点」
訂正前においては、接点間の同一状態の表現について「結合」と「接続」とが混在していたものを「接続」に統一して明確にしたものである。なお、設定登録時の明細書においては、例えば、段落0033、段落0057等に見られるように「接続」と表現されている。

(5)「該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」、「前記受光部は、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され」
液体インク収納容器位置検出手段が受光部を備える点、及び、受光部の配置を限定したものである。
この内容のうち、「受光部」に関しては、例えば、設定登録時の明細書の段落0073、段落0110、段落O111及び図29に第1受光部210として記載されている。特に、図29からは、インクタンクの搭載位置の検出に使用する第1受光部210は一つであり、キャリッジ205に搭載された複数のインクタンクのうち、第1受光部210に対向するインクタンクが、キャリッジ205の移動により入れ替わることが理解される。
次に、「液体インク収納容器位置検出手段」に関しては、例えば、設定登録時の明細書の段落0079、段落0108乃至段落0113に記載されている。

(6)「前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」
記録装置が、色情報に係る信号を発生する電気回路を備えることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0086乃至段落0094に記載されている。

(7)「少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」及び「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部」
訂正前の「個体情報」を色情報に限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0083に記載されている。

(8)「前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部」
訂正前の「発光部」が、記録装置の受光部に投光するための光を発光するものであることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の図3(a)、明細書の段落0036、段落0038乃至段落0047、段落0073、段落0079に記載されている(第1発光部(LED)101、第1受光部210に関する記載)。

(9)「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出すること」
液体インク供給システムが行う処理を限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0019、段落0108乃至段落0113に記載されている。

(10)小括
以上の通り、訂正事項A-4は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号、3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明りようでない記載の釈明を目的とするものである。また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

2-5 訂正事項A-5について
(1)請求項11から請求項4への項番号の変更は、上記訂正事項A-3による請求項の削除に伴う訂正である。

(2)「液体インク収納カートリッジ」
訂正前の「液体収納容器」を液体インクを収納する容器であることに限定し、更に、「カートリッジ」とすべき「容器」との誤記を訂正したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0022に記載されている。

(3)「複数の液体インク収納カートリッジを互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジ」及び「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納カートリッジ」
請求項4に係る発明が、キャリッジを備えた記録装置の該キャリッジに搭載されるカートリッジであることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0068乃至段落0070に記載されている。

(4)「該液体インク収納カートリッジに備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」及び「搭載される液体インク収納カートリッジそれぞれの前記接点と接続する前記装置側接点」
訂正前においては、接点間の同一状態の表現について「結合」と「接続」とが混在していたものを「接続」に統一して明確にしたものである。なお、設定登録時の明細書においては、例えば、段落0033、段落0057等に見られるように「接続」と表現されている。

(5)「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納カートリッジが入れ替わるように配置され前記液体インク収納カートリッジの発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する液体インク収納カートリッジ位置検出手段」及び「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納カートリッジの前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段は前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する記録装置」
請求項4に係る発明が、上記の構成を有する記録装置に搭載されるカートリッジであることを限定したものである。
この内容のうち、「受光部」に関しては、例えば、設定登録時の明細書の段落0073、段落0110、段落0111及び図29に第1受光部210として記載されている。特に、図29からは、インクタンクの搭載位置の検出に使用する第1受光部210は一つであり、キャリッジ205に搭載された複数のインクタンクのうち、第1受光部210に対向するインクタンクが、キャリッジ205の移動により入れ替わることが理解される。
次に、「液体インク収納容器位置検出手段」に関しては、例えば、設定登録時の明細書の段落0079、段落0108乃至段落0113に記載されている。
また、「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」については、例えば、設定登録時の明細書の段落0019、段落0108乃至段落0113に記載されている。

(6)「前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」
請求項4に係る発明が、色情報に係る信号を発生する電気回路を備えた記録装置に搭載される容器であることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0086乃至段落0094に記載されている。

(7)「液体インクを吐出することで記録を行う記録ヘッド」
記録ヘッドが吐出する液体が液体インクであることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0124に記載されている。

(8)「少なくとも液体インク収納カートリッジのインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」及び「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部」
訂正前の「個体情報」を色情報に限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0083に記載されている。

(9)「前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部」
訂正前の「発光部」が、記録装置の受光部に投光する光を発光するものであることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の図3(a)、明細書の段落0036、段落0038乃至段落0047、段落0073、段落0079に記載されている(第1発光部(LED)101、第1受光部210に関する記載)。

(10)小括
以上の通り、訂正事項A-5は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号乃至3号に規定する特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正及び明りようでない記載の釈明を目的とするものである。また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

2-6 訂正事項A-6について
(1)請求項12から請求項5への項番号の変更は、上記訂正事項A-3による請求項の削除に伴う訂正である。

(2)「液体インク収納容器」及び「液体インク」
訂正前の「液体収納容器」を液体インクを収納する容器であることに限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0022に記載されている。

(3)「複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジ」及び「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器」
請求項5に係る発明が、キャリッジを備えた記録装置の該キャリッジに搭載される容器であることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0068乃至段落0070に記載されている。

(4)「該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」及び「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点」
訂正前においては、接点間の同一状態の表現について「結合」と「接続」とが混在していたものを「接続」に統一して明確にしたものである。なお、設定登録時の明細書においては、例えば、段落0033、段落0057等に見られるように「接続」と表現されている。

(5)「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部をーつ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」及び「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置」
請求項5に係る発明が、上記の構成を有する記録装置に搭載される容器であることを限定したものである。
この内容のうち、「受光部」に関しては、例えば、設定登録時の明細書の段落0073、段落0110、段落0111及び図29に第1受光部210として記載されている。特に、図29からは、インクタンクの搭載位置の検出に使用する第1受光部210は一つであり、キャリッジ205に搭載された複数のインクタンクのうち、第1受光部210に対向するインクタンクが、キャリッジ205の移動により入れ替わることが理解される。
次に、「液体インク収納容器位置検出手段」に関しては、例えば、設定登録時の明細書の段落0079、段落0108乃至段落0113に記載されている。
また、「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」については、例えば、設定登録時の明細書の段落0019、段落0108乃至段落0113に記載されている。

(6)「前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」
請求項5に係る発明が、色情報に係る信号を発生する電気回路を備えた記録装置に搭載される容器であることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0086乃至段落0094に記載されている。

(7)「収納される液体インクのインク色を示す色情報を保持する情報保持部」及び「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に前記発光部を発光させる」
訂正前の「インクに関する情報」を色情報に限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0083に記載されている。

(8)「前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部」
訂正前の「発光部」が、記録装置の受光部に投光する光を発光するものであることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の図3(a)、明細書の段落0036、段落0038乃至段落0047、段落0073、段落0079に記載されている(第1発光部(LED)101、第1受光部210に関する記載)。

(9)小括
以上の通り、訂正事項A-6は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号、3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明りようでない記載の釈明を目的とするものである。また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

2-7 訂正事項A-7について
(1)請求項13から請求項6への項番号の変更は、上記訂正事項A-3による請求項の削除に伴う訂正である。

(2)「液体インク収納容器」
訂正前の「液体収納容器」を液体インクを収納する容器であることに限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0022に記載されている。

(3)「複数の液体インク収納容器が装着可能な装着部を備えて移動するキャリッジ」及び「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器」
請求項6に係る発明が、キャリッジを備えた記録装置の該キャリッジに搭載される容器であることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0068乃至段落0070に記載されている。

(4)「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段をーつ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」及び「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置」
請求項6に係る発明が、上記の構成を有する記録装置に搭載される容器であることを限定したものである。
この内容のうち、「受光手段」に関しては、例えば、設定登録時の明細書の段落0073、段落0110、段落0111及び図29に第1受光部210として記載されている。特に、図29からは、インクタンクの搭載位置の検出に使用する第1受光部210は一つであり、キャリッジ205に搭載された複数のインクタンクのうち、第1受光部210に対向するインクタンクが、キャリッジ205の移動により入れ替わることが理解される。
次に、「液体インク収納容器位置検出手段」に関しては、例えば、設定登録時の明細書の段落0079、段落0108乃至段落0113に記載されている。
また、「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」については、例えば、設定登録時の明細書の段落0019、段落0108乃至段落0113に記載されている。

(5)「前記共通の信号線に接続され色情報に係る信号を発生するための電気回路」
請求項6に係る発明が、色情報に係る信号を発生する電気回路を備えた記録装置に搭載される容器であることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0086乃至段落0094に記載されている。

(6)「前記装着部に装着されることにより、前記複数の装置側接点に接続可能な接点」
訂正前においては、接点間の同一状態の表現について「結合」と「接続」とが混在していたものを「接続」に統一して明確にしたものである。なお、設定登録時の明細書においては、例えば、段落0033、段落0057等に見られるように「接続」と表現されている。

(7)「少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」及び「前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点および前記接点を介して入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて前記発光部の発光を制御する制御部」
訂正前の「個体情報」を色情報に限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0083に記載されている。
また、訂正前の「前記共通信号線」を「前記共通の信号線」に誤記訂正したものである。

(8)「液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された前記発光部」
請求項6の前段部分に「発光部」を規定したことから、「発光部」が前段部分に規定した「発光部」を指すことを明らかにしたものである。

(9)小括
以上の通り、訂正事項A-7は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号乃至3号に規定する特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正及び明りようでない記載の釈明を目的とするものである。また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

2-8 訂正事項A-8について
(1)請求項16から請求項7ヘの項番号の変更は、上記訂正事項A-3による請求項の削除に伴う訂正である。

(2)「液体インク収納容器」
訂正前の「液体収納容器」を液体インクを収納する容器であることに限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0022に記載されている。

(3)「複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジ」及び「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器」
請求項7に係る発明が、キャリッジを備えた記録装置の該キャリッジに搭載される容器であることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0068乃至段落0070に記載されている。

(4)「該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」及び「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点」
訂正前においては、接点間の同一状態の表現について「結合」と「接続」とが混在していたものを「接続」に統一して明確にしたものである。なお、設定登録時の明細書においては、例えば、段落0033、段落0057等に見られるように「接続」と表現されている。

(5)「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」及び「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置」
請求項7に係る発明が、上記の構成を有する記録装置に搭載される容器であることを限定したものである。
この内容のうち、「受光手段」に関しては、例えば、設定登録時の明細書の段落0073、段落0110、段落0111及び図29に第1受光部210として記載されている。特に、図29からは、インクタンクの搭載位置の検出に使用する第1受光部210は一つであり、キャリッジ205に搭載された複数のインクタンクのうち、第1受光部210に対向するインクタンクが、キャリッジ205の移動により入れ替わることが理解される。
次に、「液体インク収納容器位置検出手段」に関しては、例えば、設定登録時の明細書の段落0079、段落0108乃至段落0113に記載されている。
また、「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」については、例えば、設定登録時の明細書の段落0019、段落0108乃至段落0113に記載されている。

(6)「前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」
請求項7に係る発明が、色情報に係る信号を発生する電気回路を備えた記録装置に搭載される容器であることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の明細書の段落0086乃至段落0094に記載されている。

(7)「少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」及び「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に、前記接点から前記色情報と共に入力される前記発光部の制御に係る信号に基づいて前記発光部の発光を制御する制御部」
訂正前の「個体情報」を色情報に限定したものである。この内容は、例えば設定登録時の明細書の段落0083に記載されている。

(8)「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部」
訂正前の「発光部」が、記録装置の受光手段に投光する光を発光するものであることを限定したものである。この内容は、例えば、設定登録時の図3(a)、明細書の段落0036、段落0038乃至段落0047、段落0073、段落0079に記載されている(第1発光部(LED)101、第1受光部210に関する記載)。

(9)小括
以上の通り、訂正事項A-8は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号、3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明りようでない記載の釈明を目的とするものである。また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

2-9 訂正事項B-1乃至B-9について
訂正事項B-1乃至B-9は、特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載とに齟齬が生じないように訂正したものである。
したがって、訂正事項B-1乃至B-9は、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

2-10 訂正事項B-10について
訂正事項B-10は、特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載とに齟齬が生じないように訂正したものである。
また、訂正前の「上記処置の位置での発光を検出するようにすることにより」を、「上記所定の位置での発光を検出するようにすることにより」に誤記訂正したものである。
したがって、訂正事項B-10は、特許法第134条の2第1項ただし書き第2号、3号に規定する誤記の訂正及び明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の
範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

2-11 訂正事項B-11について
訂正事項B-11は、特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載とに齟齬が生じないように訂正したものである。
したがって、訂正事項B-11は、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明りようでない記載の釈明を目的とするものである。また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

2-12 訂正事項B-12及びB-13について
訂正事項B-12及びB-13は、訂正後の各請求項に係る発明に含まれない例を参考例とし、該発明に含まれる実施形態と区別したものである。
したがって、訂正事項B-12及びB-13は、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に規定する明りようでない記載の釈明を目的とするものである
。また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもなく、特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

括り
以上のとおりであるから、平成21年8月3日付けの訂正請求書による訂正は、適法な訂正と認める。

第3 本件の請求項1?7に係る発明
上記のとおり訂正が認められるから、本件の請求項1?7に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。
【請求項2】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から人力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。
【請求項3】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、
前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、を備える液体インク供給システムにおいて、
前記液体インク収納容器は、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有し、
前記受光部は、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され、
前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出することを特徴とする液体インク供給システム。
【請求項4】
複数の液体インク収納カートリッジを互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納カートリッジに備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納カートリッジが入れ替わるように配置され前記液体インク収納カートリッジの発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する液体インク収納カートリッジ位置検出手段と、
搭載される液体インク収納カートリッジそれぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク芭の前記液体インク収納カートリッジの前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段は前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納カートリッジにおいて、
液体インクを吐出することで記録を行う記録ヘッドと、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納カートリッジのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納カートリッジ。
【請求項5】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記液体インク収納容器内に収納される液体インクと、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
収納される液体インクのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。
【請求項6】
複数の液体インク収納容器が装着可能な装着部を備えて移動するキャリッジと、
共通の信号線に接続される複数の装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
前記共通の信号線に接続され色情報に係る信号を発生するための電気回路と、
を備え、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装着部に装着されることにより、前記複数の装置側接点に接続可能な接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された前記発光部と、
前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点および前記接点を介して入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を具えたことを特徴とする液体インク収納容器。
【請求項7】
複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から人力される前記色情報に係る信号と前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に、前記接点から前記色情報と共に入力される前記発光部の制御に係る信号に基づいて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。」
(以下、各請求項に係る発明を、それぞれ「本件発明1」?「本件発明7」という。)

第4 当事者の主張
1 請求人の主張
(1)請求人は、審判請求書において、本件特許第3793216号の請求項1?16に係る発明についての特許を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、以下の4つの理由を主張している。

無効理由1 明確性要件違反
本件特許の請求項1?13,請求項15?16に係る発明は、特許請求の範囲に記載された特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件を満たしていないから、同法123条第1項第4号により無効とされるべきである。

無効理由2 サポート要件違反
本件特許の請求項1?13,請求項15?16に係る発明は、特許請求の範囲に記載された特許を受けようとする発明が、明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件を満たしていないから、同法123条第1項第4号により無効とされるべきである。

無効理由3 実施可能要件違反
本件特許の請求項1?12,請求項16に係る発明は、発明の詳細な説明の記載が、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件を満たしていないから、同法123条第1項第4号により無効とされるべきである。

無効理由4 進歩性の欠如
本件特許の請求項1?16に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された甲第1?15号証に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、同法123条第1項第2号により無効とされるべきである。

甲第 1号証 特開2002-370378号公報
甲第 2号証 特開2001-293883号公報
甲第 3号証 特開2002-5818号公報
甲第 4号証 特開平4-275156号公報
甲第 5号証 WO02/40275号
甲第 6号証 特開2002-120379号公報
甲第 7号証 特開2002-234187号公報
甲第 8号証 特開2000-103087号公報
甲第 9号証 特開平10-44451号公報
甲第10号証 特開2002-301829号公報
甲第11号証 特開平10-230616号公報
甲第12号証 特開2003-300358号公報
甲第13号証 特開2002-86697号公報
甲第14号証 特開2002-5724号公報
甲第15号証 特開2002-14870号公報

なお、上記「その出願前」は、本件の最先の優先権主張日である平成15年12月26日(以下「優先日」という。)前を指すと解される。また、答弁書において、被請求人はこう解することを妨げる主張をしていない。そして、甲第1?15号証は優先日前に日本国内において頒布された刊行物である。

(2)請求人は、審判請求書において、甲第1?15号証に加えて甲第16?20号証を挙げている。

甲第18号証「株式会社講談社発行「日本語大辞典」1064頁」は、「精気」?「制限漢字」までの語句が収録されている。
(本件特許の発明と関連する可能性がある語句としては、「制御」と「制限」が収録されているが、その意味としては「制御(調節すること)」、「制限(限界を定めること)」という常識的な解釈が記載されている。)

甲第16、17、19?20号証は、本件特許の発明と技術的に関連する他の特許出願の審査の経緯を示すものである。(よって、本件特許の発明の進歩性の判断を直ちに規定するものではない。)

(3)請求人は、弁駁書において、本件訂正は、特許請求の範囲の減縮に該当せず、特許法第134条の2第1項ただし書各号に規定する何れをも目的としない訂正を含むから、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項に適合しておらず、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正を含むから、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるので、認められない旨、及び仮に本件訂正が認められた場合でも、無効理由1?4が解消されていない旨を主張している。(本件訂正は、上記「第2 訂正の適否」で検討したとおり適法な訂正であるから、本件訂正が認められない旨の主張は採用できない。)

2 被請求人の主張
被請求人は、答弁書において、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、無効理由3に関し、訂正後の請求項1?7の記載は、請求人のいう明確性要件、サポート要件、実施可能要件のいずれをも満たすので審判請求人の主張は失当である旨主張し、無効理由4に関し、訂正後の請求項1?7に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に該当しないと主張している。

第5 甲各号証及び先行技術文献の記載事項
1 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、図示とともに以下のa.?j.の記載がある。なお、「・・・」は記載を省略した部分を示す(以下同様)。
a.「【請求項11】 識別情報を格納する記憶装置を備える印刷記録材容器が複数装着される印刷装置であって、
前記複数の印刷記録材容器に備えられた各記憶装置をバス接続にて接続する信号線と、
前記印刷記録材容器の交換要求を検出する交換要求検出手段と、
前記印刷記録材容器の交換完了を検出する交換完了検出手段と、
前記複数の印刷記録材容器が全て装着されているか否かを判定する装着判定手段と、
前記複数の印刷記録材容器が全て装着されていると判定された場合には、前記信号線を介して前記各記憶装置と通信できるか否かを判定する通信判定手段と、
前記各記憶装置と通信できないと判定された場合には、前記識別情報に基づいて、通信できなかった記憶装置を備える印刷記録材容器を特定する第1の印刷記録材容器特定手段とを備える印刷装置。」

b.「【0033】カラープリンタ10は、図示するように、キャリッジ11に搭載された印字ヘッドIH1?IH6を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う・・・キャリッジ11を摺動可能に保持する摺動軸15・・・」

c.「【0034】・・・キャリッジ11にはインクカートリッジCA1?CA6が装着されている。例えば、インクカートリッジCA1には黒(K)インク、インクカートリッジCA2にはシアン(C)インク、インクカートリッジCA3にはライトシアン(LC)インク、インクカートリッジCA4にはマゼンタ(M)インク、インクカートリッジCA5にはライトマゼンタ(LM)インク、インクカートリッジCA6にはイエロー(Y)インクの各インクが収納されている。」

d.「【0037】各記憶装置21?26は、既述のように、インクジェットプリンタ用の6色のインクカートリッジCA1?CA6それぞれ備えられている。また、本実施例では、記憶装置として不揮発的に記憶内容を保持すると共に記憶内容を書き換え可能なEEPROMを用いた。各記憶装置21?26は、その内部に、識別情報を格納する記憶素子(メモリアレイ)、送信されてきた識別情報と記憶素子内に格納されている識別情報とを比較するIDコンパレータ、命令コードを解析するオペレーションデコーダ、アドレス位置をカウントアップするアドレスカウンタ、記憶素子に対する読み出し/書き込みを制御するI/Oコントローラ等を備えている。
【0038】各記憶装置21?26内の記憶素子に格納されている識別情報は、それぞれインクカートリッジCA1?CA6内に収容されているインク色を識別するための識別情報である。各記憶装置21?26は、制御回路30から識別情報が送信されてくると送信されてきた識別情報と自己の識別情報とを比較解析し、解析した識別情報が記憶素子内に格納されている識別情報と一致する場合には、アクセス許可の応答信号を制御回路30に対して送り返す。これによって、制御回路30は、アクセスを所望するインクカートリッジCA1?CA6に対して選択的にアクセスすることができる。また、識別情報が書き込みデータと共にデータ列として送信されてきた場合には、識別情報の一致を確認後、書き込みデータの書き込みを許容する。」

e.「【0039】各記憶装置21?26のデータ信号端子DT、クロック信号端子CT、リセット信号端子RTは、データバスDB、クロックバスCB、リセットバスRBを介してそれぞれ接続されている。制御回路30は、データ信号線DLへ送出するためのデータ列を一時的に格納しておくバッファメモリを備えている。なお、信号線は、例えば、フレキシブル・フィード・ケーブル(FFC)として実現され得る。
【0040】制御回路30の電源正極端子VDDHと各記憶装置21?26の電源正極端子VDDMとは電源供給線VDLを介して接続されている。・・・」

f.「【0042】制御回路30は、CPU31を介して、クロック信号生成機能、リセット信号生成機能、電源監視機能、電源回路、データ記憶回路および各回路を制御する制御機能を実現する制御装置であり、記憶装置21?26に対するアクセスを制御する。制御回路30は、カラープリンタ10の本体側に配置されており、電源がオンされると、データ信号線DL記憶装置21?26から、インク消費量、インクカートリッジの装着時間といったデータを取得しデータ記憶回路に記憶する。また、電源がオフされる際には、データ信号線DLを介して記憶装置21?26に対して、それぞれインク消費量、インクカートリッジの装着時間といったデータを書き込む。
【0043】制御回路30は、インクジェットプリンタの電源投入時、インクカートリッジの交換時、印刷ジョブの終了時、インクジェットプリンタの電源遮断時等に、記憶装置21?26に対するアクセスを実行する。制御回路30は、記憶装置21?26に対してアクセスする場合には、リセット信号生成回路に対してリセット信号RSTの生成を要求する。制御回路30は、インクカートリッジCAの装着の有無、通信の状態を検出する際には、インクカートリッジCA1?CA6に対応する識別情報を順次、データ信号線DL上に送出する。これに対して、アクセスを所望するインクカートリッジCAが決まっている場合には、アクセスを所望するインクカートリッジCAの識別情報が先頭列に格納されているデータ列をデータ信号線DL上に送出して、各インクカートリッジCA1?CA6の記憶装置21?26に送信する。」

g.「【0052】・・・装着されていないインクカートリッジCAの検出に際しては、制御回路30は、各記憶装置21?26に割り当てられている識別情報を順次、データ信号線DLへ送出する。本実施例における記憶装置21?26は、送出されてきた識別情報と自己が格納する識別情報とが一致する場合には、応答信号を制御回路30に対して送り返すので、制御回路30は、応答信号の無い記憶装置を備えるインクカートリッジCAを装着されていないインクカートリッジCAとして検出する。
【0052】制御回路30は、装着されていないインクカートリッジCAを検出すると、装着されていないインクカートリッジCAを報知する(ステップS160)。報知の態様としては、例えば、パーソナルコンピュータPCを介して印刷処理が実行されている場合には、表示モニタMN上に表示されているインクカートリッジCAのステータスウィンドウにおいて、装着されていないインクカートリッジCAを表示したり、インクカートリッジが装着されていない旨を警告する警告文を表示するようにしても良い。あるいは、プリンタ10の操作パネル35上に各インクカートリッジに対応して備えられている表示ランプ351を点滅させるようにしても良い。」

h.「【0064】上記実施例では、主にプリンタ10がパーソナルコンピュータPCに接続されている場合について説明したが、本実施例は、スタンドアローンタイプのプリンタに対しても適用可能であることはいうまでもない。かかる場合には、インクカートリッジCAの非装着の報知、通信異常の報知は、操作パネル上の表示ランプ、あるいは、表示ディスプレイが備えられている場合には、表示ディスプレイを介して実行される。」

i.【図1】からは、上記b.にいう「キャリッジ11に搭載された印字ヘッドIH1?IH6」が、各インクカートリッジCA1?CA6にそれぞれ対応する位置に設けられていること、及び上記d.の【0037】にいう「6色のインクカートリッジCA1?CA6」が、キャリッジ11の摺動軸15に沿って所定の順序で、キャリッジ11に搭載されていることが看取できる。

j.【図3】からは、制御回路30から延びる1本の電源電圧供給線VDLと3本の信号線(クロック信号線CL、データ信号線DL、リセット信号線RL)の合わせて4本の線が各インクカートリッジ(CA1?CA6)に向かうべく分岐している(つまりバス接続されている)こと、その分岐点がキャリッジ11を示す点線の矩形内でかつ各インクカートリッジ(CA1?CA6)を示す上下に接して並ぶ矩形の外に黒丸で示されていること、分岐した各4本の線が各インクカートリッジ(CA1?CA6)に入力する点が白丸で示されていること、が看取できる。

k.上記d.の【0038】に「各記憶装置21?26は、制御回路30から識別情報が送信されてくると送信されてきた識別情報と自己の識別情報とを比較解析し、解析した識別情報が記憶素子内に格納されている識別情報と一致する場合には、アクセス許可の応答信号を制御回路30に対して送り返す。これによって、制御回路30は、アクセスを所望するインクカートリッジCA1?CA6に対して選択的にアクセスすることができる。また、識別情報が書き込みデータと共にデータ列として送信されてきた場合には、識別情報の一致を確認後、書き込みデータの書き込みを許容する。」とあることから、制御回路30から送信されてくる識別情報と記憶素子内に格納されている識別情報とが一致した場合に、識別情報と共に送信されて来る書き込みデータの記憶素子への書き込みが許容される。

l.印刷記録材容器であるインクカートリッジ(CA1?CA6)はキャリッジ11に着脱されるものであるから、上記j.における制御回路30とインクカートリッジ(CA1?CA6)との4本の線の結合はコネクタ等により接続切り離し自在でなければならず、この接続切り離し地点(上記j.における白丸)の制御回路30側を印刷装置側接点、印刷記録材容器側を印刷記録材容器の接点と呼べる。

m.上記i.より、6色のインクカートリッジCA1?CA6は、キャリッジ11の摺動軸15に沿って所定の順序でキャリッジ11に搭載されているから、印刷装置内の摺動軸15近傍の所定位置から見れば、キャリッジ11の移動により印刷記録材容器が入れ替わるように通過することになる。

n.上記e.,j.より、印刷装置は、印刷記録材容器の接点と接続する印刷装置側接点に対して共通に電気接続する配線(上記j.の4本の線)を有した制御回路30を有する。

o.上記d.の「【0038】各記憶装置21?26内の記憶素子に格納されている識別情報は、それぞれインクカートリッジCA1?CA6内に収容されているインク色を識別するための識別情報である。」との記載より、印刷記録材容器は、印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を保持する記憶素子を有する。

p.上記d.より、印刷記録材容器は、印刷記録材容器の接点から入力される識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する識別情報とを比較解析し、解析した識別情報が記憶素子内に格納されている識別情報と一致する場合には、アクセス許可の応答信号を制御回路30に対して送り返す機能のある記憶装置を有する。
よって、印刷記録材容器は、印刷記録材容器の接点から入力される識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する識別情報とに応じて、アクセス許可の応答信号を配線を通じて印刷装置側の制御回路30に対して送り返す動作を制御する記憶装置を有するといえる。(なお、上記j.の4本の線のうち、上記e.より、電源電圧供給線VDLは印刷装置側から印刷記録材容器側に電力を送るものであり、上記f.より、クロック信号線CLとリセット信号線RLは印刷装置側から印刷記録材容器側にそれぞれクロック信号SCKとリセット信号RSTを送るものであるから、印刷記録材容器側からアクセス許可の応答信号を印刷装置側の制御回路30に対して送り返す動作は残るデータ信号線DLによって行われると考えられる。)

q.【図1】には、パーソナルコンピュータPCとプリンタ10とからなる記録装置が記載されているが、上記h.より、両者が一体となった記録装置でもよい。
本件発明3では、記録装置と記録装置のキャリッジに搭載される液体インク収納容器を合わせたものを「液体インク供給システム」と称しているから、これに倣って、甲第1号証記載の発明においても、記録装置と、記録装置に装着された印刷記録材容器とを合わせたものを、「印刷記録材供給システム」と称することができる。

r.上記g.より、制御回路30は、応答信号が無いことから装着されていない印刷記録材容器を検出し、そのことを、プリンタ10に各印刷記録材容器に対応して備えられている表示ランプ351の発光で表示する。

以上のことから、上記記載a.?j.を含む甲第1号証には、
「複数の印刷記録材容器をキャリッジ移動方向に並ぶ互いに異なる位置に装着して移動するキャリッジと、
印刷記録材容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
各印刷記録材容器に対応して設けられ、装着されていない印刷記録材容器を発光で表示する表示ランプと、
装着される印刷記録材容器それぞれの接点と接続する装置側接点に対して共通に電気的接続し印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を送信するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、
記録装置のキャリッジに対して着脱可能な印刷記録材容器と、
を備える印刷記録材供給システムにおいて、
印刷記録材容器は、
装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を保持する記憶素子と、
前記接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に、応答信号を前記配線を通じて印刷装置側の制御回路に対して送り返す動作を制御する記憶装置と、を有し、
前記制御回路は、応答信号の有無により装着されていない印刷記録材容器を検出して表示ランプの発光で表示する印刷記録材供給システム」(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、図示とともに以下のA.,B.の記載がある。
A.「【請求項7】 請求項6に記載のインクタンクが搭載されるインクジェット記録装置であって、前記インクタンク内に配された前記立体形半導体素子の発光手段で発光され、前記インクタンク内に収容されたインクを透過した光を受光する受光手段を備えているインクジェット記録装置。
【請求項8】 複数の前記インクタンクの各々が、それぞれの前記インクタンク内に収容されたインクの種類に従って所定の位置に装着されるように構成されており、前記光を受光した前記受光手段によって前記インクタンクが不適切な位置に装着されたことが検知されたときにユーザーに警告を発する手段を備えている、請求項7に記載のインクジェット記録装置。」

B.「【0086】なお、本実施例ではインクジェット記録装置の外装は不図示であるが、外装のカバーを半透明など中の状態が見れるものを用い、インクタンクも半透明のものを用いた場合には、タンクの光をユーザーが見れるので、例えば「タンクを交換したい」ことが分かり易く、ユーザーに、タンクを交換しようとする意欲を持たせることができる。(従来は装置本体のボタンが光るが、いくつかの表示機能を兼ねているため、光っても何を知らせたいのかユーザーには分かりにくい。)」

3 甲第10号証の記載事項
甲第10号証には、図示とともに以下のア.?ウ.の記載がある。
ア.「【請求項1】被記録媒体にインクを吐出口から吐出する記録ヘッドと、該記録ヘッドに供給するためのインクを貯蔵するインクタンクと、前記記録ヘッド及びインクタンクを搭載するキャリッジを有するインクジェット記録装置において、
前記キャリッジ上にインク色と同じ色相の警告ランプを設け、前記インクタンク内のインク残量を検知する検知手段によってインクタンク内のインクが無くなった場合に対応する前記警告ランプを点灯させるようにしたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】前記警告ランプをインクタンクに設けたことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。」

イ.「【0003】斯かる従来のインクジェット記録装置において、インク残量が殆ど無いことを警告する手段としては、警告音・本体上部に警告灯の点灯・点滅等の方法がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のインクジェット記録装置には、インクタンク付近には残量検知表示が設けられていないため、交換すべきインクタンクを誤認する可能性があった。
【0005】本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、インクの残量が少量又は空のインクタンクをユーザーが容易且つ間違いなく判別することができるインクジェット記録装置を提供することにある。」

ウ.「【0020】図3及び図4に示すように、ほぼ箱状のキャリッジ3内には、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローのインクをそれぞれ吐出することができる4つのインクジェット記録ヘッドから成る記録ヘッド1と、各インクジェット記録ヘッドにブラック、シアン、マゼンタ及びイエローのインクをそれぞれ供給する4つのインクタンク2bk,2c,2m,2yとが収容されている。」

上記ア.、ウ.によれば、インクジェット記録装置のキャリッジに収納された4つの異なる色用のインクタンクのそれぞれに、インクが無いことを警告するランプが設けられている。

上記イ.によれば、インク残量が殆ど無いことを警告する警告灯を従来はインクジェット記録装置本体に設けていたが、これをインクタンクに設けると、インクタンクを誤認せずユーザーが容易且つ間違いなく判別することができるという効果が生じる。

4 先行技術文献1の記載事項
優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2003-291364号公報(以下「先行技術文献1」という。)には、図示とともに以下のあ.?う.の記載がある。
なお、先行技術文献1は、本件特許発明と同じくインクジェット記録装置に関するものであって、被請求人自身が出願したものであるから、被請求人は先行技術文献1の存在とその記載内容を知るはずのものである。

あ.「【請求項21】 請求項1から11のいずれか1項に記載の液体収納容器を搭載可能なキャリッジと、光によって前記液体収納容器を識別するための検出手段とを有し、前記液体収納容器の液体を吐出して記録する液体吐出記録装置。
【請求項22】 前記検出手段は発光源と受光部を有し、前記発光源は点光源である請求項21に記載の液体吐出記録装置。」

い.「【0114】さらに、反射体を構成するルーフ状ミラーのパターン(数、幅などの変更)により多種の反射光分布パターンが得られるので、ルーフ状ミラーのパターン構成の異なる反射体を各々のインクタンクごとに配置し、反射体からの反射光の光量分布における位置、幅、強度等のパターンの違いを利用することにより、色ごとの液体収納容器(インクタンク)を識別することができる。このため、液体収納容器をその収容液の色に対応する所定の位置に装着する液体吐出記録装置(インクジェット記録装置)において、別の色の位置への誤装着を検出でき、誤った記録画像を記録することが防止できる。」

う.図2から、フォトセンサPSは1つであることが看取できる。

5 先行技術文献2の記載事項
優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平11-263025号公報(以下「先行技術文献2」という。)には、図示とともに以下のα.?δ.の記載がある。

α.「【請求項6】 インク用にキャリッジ内の交換可能インク・カートリッジのアイデンティティに基づいてプリンタ動作を制御するための装置において、
前記プリンタ内を通る印刷媒体の移動に対して横方向に移動可能である、2つ以上のカートリッジ位置を含むキャリッジと、
キャリッジ移動手段と、
前記キャリッジに着脱自在に取り付けられたインク・リザーバ及び印刷ヘッドを含む2つ以上の交換可能インク・カートリッジと、
前記カートリッジ上の少なくとも1つの指標装置であり、前記キャリッジのどのカートリッジ位置にどのインク・リザーバが取り付けられているかを前記コントローラに識別させる符号化された情報を含み、第1の光信号の反射或は吸収のための光学的反射画像及び光学的無反射画像を含み、前記第1の光信号の反射部分が第2の光信号を構成していることから成る指標装置と、
光信号読取り装置であり、前記カートリッジが当該読取り装置に対して横方向に移動する際に前記指標装置上に符号化情報を読み取り、反射及び/或は吸収した光信号に応じて前記プリンタ・コントローラに電気的出力信号を生成する光信号読取り装置であり、前記指標装置を照射するために前記指標装置に向かって前記第1の光信号を放出するための発光ダイオードと、前記指標装置が当該光信号読取り装置に対して横方向に移動する際に前記指標装置上に前記第1の光信号を集束させるための少なくとも1つのレンズと、前記指標装置から反射された前記第2の光信号を受け取り、前記プリンタ・コントローラに前記電気的出力信号を作成するための検出器とを含むことから成る光信号読取り装置と、を備える装置。」

β.「【請求項9】 前記インク・カートリッジが、イェローのインク・カートリッジと、シアンのインク・カートリッジと、マゼンタのインク・カートリッジとを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項10】 前記読取り装置からの前記電気的出力信号に応じて、1つ或は複数の間違ったインク・カートリッジ位置に対してプリンタ動作をロックアウトするためのプリンタ制御アルゴリズムを更に含む、請求項6に記載の装置。」

γ.「【0026】複数キャリッジの場合、或は単一キャリッジ上に複数のカートリッジ位置がある場合、カートリッジ或はキャリッジに関する全ての符号化された情報がコード読取り器54に隣接して通過できるように、コード読取り器54は、好ましくは、サポート・レール60に沿ったキャリッジ移動距離に対して略中央に配置される。前の実施例のように、指標装置(複数も可)がコード読取り器54近辺を通過し、該コード読取り器が符号化情報を読み取れるように、カートリッジを交換するか或はプリンタに電源を投入すると、キャリッジ(複数も可)は矢印5が示す方向に十分な距離だけ移動させられる。
【0027】プリンタ・コントローラへの電気的出力信号をプリンタ制御アルゴリズムと組み合わせて使用でき、カートリッジ内に含まれるインクのタイプ或は色に応じて印刷ヘッド上のヒータの動作温度或は発火パラメータを変更する。異なるカラー・インクを含む複数カートリッジの場合、プリンタ・アルゴリズムは、異なる色の隣接カートリッジに対する、ある色のインク・カートリッジの位置も示すことができる。特定の色のインク・カートリッジがキャリッジ内の間違った位置に取り付けられた場合、プリンタ・コントローラ内のアルゴリズムを使用でき、プリンタをロックアウトし、間違ったカートリッジ位置をユーザに通知するか、或は特定のインク・カラーが必要とする動作パラメータに対応するように印刷ヘッド動作を調整する。」

δ.図2から、検出器26が1つであることが看取できる。

第6 本件発明3と引用発明の対比
引用発明の「印刷記録材容器」、「複数の印刷記録材容器をキャリッジ移動方向に並ぶ互いに異なる位置に装着して移動するキャリッジ」、「印刷記録材容器に備えられる接点」、「印刷記録材容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」、「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報」、「装着される印刷記録材容器それぞれの接点と接続する装置側接点に対して共通に電気的接続し印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を送信するための配線を有した電気回路」、「記録装置のキャリッジに対して着脱可能な印刷記録材容器」、「印刷記録材供給システム」、「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を保持する記憶素子」、「前記接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合」は、それぞれ、本件発明3の「液体インク収納容器」、「複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジ」、「該液体インク収納容器に備えられる接点」、「該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」、「色情報に係る信号」、「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」、「前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器」、「液体インク供給システム」、「少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部」、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合」に相当する。

引用発明の「記憶装置」は、「前記接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に、応答信号を前記配線を通じて印刷装置側の制御回路に対して送り返す動作を制御する」ものであり、本件発明3の「制御部」は、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる」ものであるから、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に応答する制御を行う」点で、本件発明3の「制御部」と共通している。

すると、引用発明と本件発明3の一致点と相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、
前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、を備える液体インク供給システムにおいて、
前記液体インク収納容器は、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に応答する制御を行う制御部と、を有する液体インク供給システム。」

[相違点1]
記録装置に関して、本件発明3は、「該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と・・・を有する」、「前記受光部は、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され」と特定されているのに対し、引用発明は、受光部及び液体インク収納容器位置検出手段について明示がない点。

[相違点2]
液体インク収納容器に関して、本件発明3は、「前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有し、」と特定されるのに対して、引用発明の液体インク収納容器(液体インク収納容器)の制御部(記憶装置)は、接点から入力される色情報(識別情報)に係る信号と、情報保持部(記憶素子)の保持する前記色情報とが一致した場合に応答信号を配線を通じて印刷装置側の制御回路に対して送り返す動作を制御するものの、引用発明の液体インク収納容器は、発光部を有しておらず、制御部は、発光部を発光させるものでない点。

[相違点3]
液体インク供給システム(印刷記録材供給システム)が実行する検出内容に関して、本件発明3は、「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」と特定されるのに対して、引用発明は、応答信号の有無により装着されていない印刷記録材容器を検出するものの、本件発明3のような検出内容でない点。

第7 本件発明3についての当審の判断
相違点1?3について検討する。

a.甲第1号証段落【0046】に「インクカートリッジCAの交換要求を検出すると」と記載されているように、引用発明の液体インク収納容器(印刷記録材容器)は、必要に応じて交換されるものである。複数の液体インク収納容器がキャリッジの所定位置に搭載された記録装置において、交換されるべき液体インク収納容器が誤りなく選択されることは自明の課題であり、交換すべき液体インク収納容器をユーザにわかりやすく表示するべく液体インク収納容器に発光部を設けることは、周知技術(甲第3号証段落【0086】、甲第10号証参照。)であるから、該周知技術を引用発明に適用して、液体インク収納容器に発光部を設けることは当業者が容易になし得る程度のことである。
b.甲第1号証段落【0060】に「インク交換に際して、1つのインクカートリッジCAが交換される場合はもちろん、2以上のインクカートリッジCAが交換される場合にも有用である。」と記載されているから、引用発明は、2つ以上の液体インク収納容器が取り外されることを想定している。液体インク供給システムにおいて、複数の液体インク収納容器が取り外された場合、誤った位置に液体インク収納容器が装着される可能性がある。
c.搭載位置を検出すべく、検出対象である液体インク収納容器を受光部に対向させ、検出対象である液体インク収納容器からの色情報で誤装着を検出する検出手段を設けることが周知技術(甲第3号証、先行技術文献1(特開2003-291364号公報)、先行技術文献2(特開平11-263025号公報)参照)であり、受光部の数をいくつにするかは設計事項にすぎず、受光部を記録装置側に一つ設けることも周知技術(先行技術文献1(特開2003-291364号公報)、先行技術文献2(特開平11-263025号公報)参照)であるから、引用発明に周知技術を適用し、検出対象である液体インク収納容器に対向させ、受光部を記録装置側に一つ設け、検出対象である液体インク収納容器からの色情報で誤装着を検出する検出手段を設けるようとすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。
d.引用発明は「接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に、応答信号を前記配線を通じて印刷装置側の制御回路に対して送り返す動作」をするもの、即ち、検出対象である液体インク収納容器の色情報を発するものであるから、上記aで検討した発光部を利用し、cで検討した受光部に受光させるべく、引用発明の液体インク収納容器の制御部(記憶装置)を接点から入力される色情報に係る信号と、情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に発光部を発光させるような制御部とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。
e.引用発明は、「複数の印刷記録材容器」が「キャリッジ移動方向に並ぶ互いに異なる位置に装着」されるもの、即ち、記録装置の特定の一点に対し、キャリッジの移動により対向する液体インク収納容器が入れ替わることが可能なものであるから、cで検討した一つの受光部でdで検討した発光部からの光を受光するべく、一つ設けられる受光部をキャリッジの移動により対向する液体インク収納容器が入れ替わる位置に配置(特開2003-291364号公報、特開平11-263025号公報の受光部もキャリッジの移動により対向する液体インク収納容器が入れ替わる位置に配置されている。)することは当業者が容易になし得る程度のことであり、前記受光部を本件発明3に倣って、「位置検出用の受光部」と称することができるから、引用発明は、相違点1の構成を有することになる。
f.上記dで検討したように、接点から入力される色情報に係る信号と、情報保持部の保持する色情報とが一致した場合に発光部を発光させる制御部を有することが想到容易であり、上記eで検討したように、受光部は、キャリッジの移動により対向する液体インク収納容器が入れ替わる位置に配置されることが想到容易であるから、前記発光部を液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部ということができる。その結果、引用発明は、相違点2の構成を有することになる。
g.上記a、c、dで検討したように、受光部を記録装置側に一つ設け、検出対象である液体インク収納容器からの色情報で誤装着を検出する検出手段を設け、液体インク収納容器の制御部(記憶装置)を接点から入力される色情報に係る信号と、情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に発光部を発光させるような制御部とすることが想到容易であり、引用発明のキャリッジは、複数の印刷記録材容器をキャリッジ移動方向に並ぶ互いに異なる位置に装着して移動するものであるから、受光部で検出できるように、受光部に対向した位置で特定されたインク色の液体インク収納容器の発光部を光らせることは当然のことであり、その結果、引用発明は、相違点3の構成を有することになる。

以上のことから、引用発明において、本件発明3の相違点1?3に係る構成を備えることは、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。
また、該構成を備えることによる効果も当業者が予測し得る程度のものである。
したがって、本件発明3は、引用発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

念のため、被請求人が答弁書において主張する本件発明の特徴1、特徴2について検討する。
特徴1:個別制御
「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気接続」する配線方式(バス接続方式)という、比較的簡便な接続方式を採用しながら、液体インク収納容器を個別に制御できる。(答弁書P.11第16?19行)

特徴2:搭載位置検出
液体インク収納容器がキャリッジ上の正しい搭載位置に搭載された場合と、誤った搭載位置に搭載された場合とで、液体インク収納容器の発光部が発光する位置が異なり、「受光部」との相対位置関係が異なるので、これが「受光部」により受光された光の受光強度の変化という受光結果に現れる。その結果、液体インク収納容器が正しい搭載位置にあるか否かを検出することができる。(答弁書P.12第21?26行)

「特徴1:個別制御」について
引用発明でも「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気接続」する配線方式(バス接続方式)を採用しており、それにより液体インク収納容器(記録材収納容器)の記憶装置にアクセスしてアクセス許可の応答信号に応じて「電源がオフされる際には、データ信号線DLを介して記憶装置21?26に対して、それぞれインク消費量、インクカートリッジの装着時間といったデータを書き込む。」のであるから、液体インク収納容器(記録材収納容器)を個別に制御できている。
よって、「特徴1:個別制御」が本件発明の奏する格別の効果である旨の主張は採用できない。

「特徴2:搭載位置検出」について
「特徴2:搭載位置検出」にいう「液体インク収納容器が正しい搭載位置にあるか否かを検出することができる。」は、本件発明3の相違点1?3に係る構成を備えることによる効果と同じことを意味する。
したがって、引用発明が、周知の技術事項に基づいて、本件発明3の相違点1?3に係る構成を備えれば、「特徴2:搭載位置検出」にいう効果が生じることになる。
よって、「特徴2:搭載位置検出」が本件発明の奏する格別の効果である旨の主張は採用できない。

第8 本件発明1、2、4?7についての判断
1 本件発明1について
本件発明1は、液体インク収納容器とそれを搭載する記録装置を組み合わせたシステムの発明である本件発明3のうちの液体インク収納容器の発明に相当する。
よって、本件発明3が、引用発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるからには、本件発明1が、引用発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであることは自明であるが、念のため、以下検討する。

1-1 本件発明1
本件発明1を再録する。
「【請求項1】
複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。」

1-2 引用容器発明
印刷記録材容器とそれを装着する側の記録装置からなる引用発明を、印刷記録材容器の観点から把握することにより、甲第1号証には、以下の発明が記載されていると認められる。
「複数の印刷記録材容器をキャリッジ移動方向に並ぶ互いに異なる位置に装着して移動するキャリッジと、
印刷記録材容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
各印刷記録材容器に対応して設けられ、装着されていない印刷記録材容器を発光で表示する表示ランプと、
装着される印刷記録材容器それぞれの接点と接続する装置側接点に対して共通に電気的接続し印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を送信するための配線を有した電気回路とを有する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な印刷記録材容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を保持する記憶素子と、
前記接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に、応答信号を前記配線を通じて印刷装置側の制御回路に対して送り返す動作を制御する記憶装置と、
を有する印刷記録材容器。」(以下「引用容器発明」という。)

1-3 本件発明1と引用容器発明の対比
引用容器発明の「印刷記録材容器」、「複数の印刷記録材容器をキャリッジ移動方向に並ぶ互いに異なる位置に装着して移動するキャリッジ」、「印刷記録材容器に備えられる接点」、「印刷記録材容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」、「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報」、「装着される印刷記録材容器それぞれの接点と接続する装置側接点に対して共通に電気的接続し印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を送信するための配線を有した電気回路」、「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な印刷記録材容器」、「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を保持する記憶素子」、「前記接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に」は、それぞれ、本件発明1の「液体インク収納容器」、「複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジ」、「該液体インク収納容器に備えられる接点」、「該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」、「色情報に係る信号」、「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」、「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器」、「少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて」に相当する。

引用容器発明の「記憶装置」は、「前記接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に、応答信号を前記配線を通じて印刷装置側の制御回路に対して送り返す動作を制御する」ものであり、本件発明1の「制御部」は、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する」ものであるから、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて応答する制御を行う」点で、本件発明1の「制御部」と共通している。

すると、引用容器発明と本件発明1の一致点と相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、 記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて応答する制御を行う制御部と、
を有する液体インク収納容器。」

[相違点1]
本件発明1は、「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が搭載される側の記録装置が、「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」を有し「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」記録装置、と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

[相違点2]
本件発明1は、「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が、「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、・・・を有する」、と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

[相違点3]
本件発明1は、「制御部」が、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部」、と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

1-4 本件発明1についての判断
相違点2について
上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のa.で述べたとおり、複数の液体インク収納容器が記録装置のキャリッジの所定位置に搭載される場合において、交換されるべき液体インク収納容器が誤りなく選択されるように、交換すべき液体インク収納容器をユーザにわかりやすく表示するべく引用容器発明の液体インク収納容器に発光部を設けることは、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得る程度のことである。

本件発明1は液体インク収納容器の発明であり、液体インク収納容器の発光部からの光を受光する受光手段を記録装置が備えるか否かは記録装置側の構成に依存するから、相違点2における「前記受光手段に投光するための」との限定は、液体インク収納容器の発光部の構成を限定するものではない。
また、液体インク収納容器の発光部からの光を受光する受光手段を記録装置に設けることは、上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のc.で述べたとおり、周知技術を適用して当業者が容易になし得ることであり、そうした場合、液体インク収納容器の発光部は「受光手段に投光するための光を発光する発光部」となる。

以上のことから、引用容器発明において、本件発明1の相違点2に係る構成を備えることは、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

相違点3について
引用容器発明の制御部(記憶装置)は、上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のd.で述べたと同様に、検出対象である液体インク収納容器の色情報を発するものであるから、引用容器発明の液体インク収納容器に発光部を設ける際に、該発光部を利用して受光部が受光できるよう、引用発明の液体インク収納容器の制御部(記憶装置)を、接点から入力される色情報に係る信号と、情報保持部の保持する前記色情報とに応じて発光部を発光させるような制御部とし、引用容器発明が、本件発明1の相違点3に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

相違点1について
本件発明1は液体インク収納容器の発明である。これに対して、本件発明1の相違点1に係る構成は、液体インク収納容器が搭載される側の記録装置の構成であるから、相違点1は実質的な相違点ではない。
なお、本件発明1の液体インク収納容器が搭載される側の記録装置の構成を、本件発明1の相違点1に係る構成を備えた記録装置とすることが、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得た点については、上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のc.?e.で述べたのと同様である。

まとめ
上記相違点1?3についての検討結果より、本件発明1は、引用容器発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 本件発明2について
2-1 本件発明2と引用容器発明の対比
引用容器発明の「印刷記録材容器」、「複数の印刷記録材容器をキャリッジ移動方向に並ぶ互いに異なる位置に装着して移動するキャリッジ」、「印刷記録材容器に備えられる接点」、「印刷記録材容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」、「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報」、「装着される印刷記録材容器それぞれの接点と接続する装置側接点に対して共通に電気的接続し印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を送信するための配線を有した電気回路」、「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な印刷記録材容器」、「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を保持する記憶素子」、「前記接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に」は、それぞれ、本件発明2の「液体インク収納容器」、「複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジ」、「該液体インク収納容器に備えられる接点」、「該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」、「色情報に係る信号」、「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」、「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器」、「少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部」、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に」に相当する。

引用容器発明の「記憶装置」は、「前記接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に、応答信号を前記配線を通じて印刷装置側の制御回路に対して送り返す動作を制御する」ものであり、本件発明2の「制御部」は、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部の発光を制御する」ものであるから、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に応答する制御を行う」点で、本件発明2の「制御部」と共通している。

すると、引用容器発明と本件発明2の一致点と相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、 記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に応答する制御を行う制御部と、
を有する液体インク収納容器。」

[相違点1]
本件発明2は、「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が搭載される側の記録装置が、「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」を有し「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」記録装置、と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

[相違点2]
本件発明2は、「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が、「前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、・・・を有する」、と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

[相違点3]
本件発明2は、「制御部」が、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部の発光を制御する制御部」、と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

2-2 本件発明2についての判断
相違点2について
上記「1 本件発明1について 1-4 本件発明1についての判断」における相違点2についての判断と同様に、引用容器発明において、本件発明2の相違点2に係る構成を備えることは、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

相違点3について
引用容器発明の制御部(記憶装置)は、上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のd.で述べたと同様に、検出対象である液体インク収納容器の色情報を発するものであるから、引用容器発明の液体インク収納容器に発光部を設ける際に、該発光部を利用して受光部が受光できるよう、引用発明の液体インク収納容器の制御部(記憶装置)を、接点から入力される色情報に係る信号と、情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に発光部を発光させるような制御部とし、引用容器発明が、本件発明2の相違点3に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

相違点1について
本件発明2は液体インク収納容器の発明である。これに対して、本件発明2の相違点1に係る構成は、液体インク収納容器が搭載される側の記録装置の構成であるから、相違点1は実質的な相違点ではない。
なお、本件発明2の液体インク収納容器が搭載される側の記録装置の構成を、本件発明2の相違点1に係る構成を備えた記録装置とすることが、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得た点については、上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のc.?e.で述べたのと同様である。

まとめ
上記相違点1?3についての検討結果より、本件発明2は、引用容器発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 本件発明4について
3-1 本件発明4と引用容器発明の対比
上記「第5 甲各号証及び先行技術文献の記載事項 1 甲第1号証の記載事項」の記載事項a.にいう「印刷記録材容器」は、記載事項c.,d
.,f.?h.では「インクカートリッジ」と称されているが、上記「第5
甲各号証及び先行技術文献の記載事項 1 甲第1号証の記載事項」の
記載事項b.の「キャリッジ11に搭載された印字ヘッドIH1?IH6」から、引用容器発明の印字ヘッドは「印刷記録材容器」ではなくキャリッジに備えられると解される。
一方、本件発明4は「液体インクを吐出することで記録を行う記録ヘッドと、・・・を有する」、と特定されているから、本件発明4の「液体インク収納カートリッジ」は記録ヘッドを備えている。
このように、引用容器発明の「印刷記録材容器」は印字ヘッドを備えていないものの、「液体インク収納手段」である点で、本件発明4の「液体インク収納カートリッジ」と共通している。

すると、引用容器発明の「複数の印刷記録材容器をキャリッジ移動方向に並ぶ互いに異なる位置に装着して移動するキャリッジ」、「印刷記録材容器に備えられる接点」、「印刷記録材容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」、「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報」、「装着される印刷記録材容器それぞれの接点と接続する装置側接点に対して共通に電気的接続し印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を送信するための配線を有した電気回路」、「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な印刷記録材容器」、「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を保持する記憶素子」、「前記接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に」は、それぞれ、本件発明4の「複数の液体インク収納カートリッジを互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジ」、「該液体インク収納カートリッジに備えられる接点」、「該液体インク収納カートリッジに備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」、「色情報に係る信号」、「搭載される液体インク収納カートリッジそれぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」、「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納カートリッジ」、「少なくとも液体インク収納カートリッジのインク色を示す色情報を保持する情報保持部」、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に」と、「複数の液体インク収納手段を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジ」、「該液体インク収納手段に備えられる接点」、「該液体インク収納手段に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」、「色情報に係る信号」、「搭載される液体インク収納手段それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」、「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納手段」、「少なくとも液体インク収納手段のインク色を示す色情報を保持する情報保持部」、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に」として共通している。

引用容器発明の「記憶装置」は、「前記接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に、応答信号を前記配線を通じて印刷装置側の制御回路に対して送り返す動作を制御する」ものであり、本件発明4の「制御部」は、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部の発光を制御する」ものであるから、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に応答する制御を行う」点で、本件発明4の「制御部」と共通している。

すると、引用容器発明と本件発明4の一致点と相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「複数の液体インク収納手段を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納手段に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
搭載される液体インク収納手段それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、
記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納手段において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納手段のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に応答する制御を行う制御部と、
を有する液体インク収納手段。」

[相違点1]
本件発明4は「液体インク収納手段」である「液体インク収納カートリッジ」が、「液体インクを吐出することで記録を行う記録ヘッドと、・・・を有する」、と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

[相違点2]
本件発明4は、「液体インク収納手段」である「液体インク収納カートリッジ」が搭載される側の記録装置が、「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納カートリッジが入れ替わるように配置され前記液体インク収納カートリッジの発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する液体インク収納カートリッジ位置検出手段」を有し「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納カートリッジの前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段は前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する」記録装置、と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

[相違点3]
本件発明4は、「液体インク収納手段」である「液体インク収納カートリッジ」が、「前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、・・・を有する」、と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

[相違点4]
本件発明4は、「制御部」が、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部の発光を制御する制御部」、と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

3-2 本件発明4についての判断
相違点1について
インクジェット記録装置の分野において液体インク収納容器に記録ヘッドを備えることは周知であり、例えば、甲第3号証(図3、図12参照)、甲第4号証(【請求項2】に「インクタンクと印字ヘッドを一体化したインクカートリッジ」とある。)に記載されている。
よって、引用容器発明において、本件発明4の相違点1に係る構成を備えることは、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

相違点3について
上記「1 本件発明1について 1-4 本件発明1についての判断」における相違点2についての判断と同様に、引用容器発明において、本件発明4の相違点3に係る構成を備えることは、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

相違点4について
引用容器発明の制御部(記憶装置)は、上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のd.で述べたのと同様に、検出対象である液体インク収納容器の色情報を発するものであるから、引用容器発明の液体インク収納容器に発光部を設ける際に、該発光部を利用して受光部が受光できるよう、引用発明の液体インク収納容器の制御部(記憶装置)を、接点から入力される色情報に係る信号と、情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に発光部を発光させるような制御部とし、引用容器発明が、本件発明4の相違点4に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

相違点2について
本件発明4は液体インク収納カートリッジの発明である。これに対して、本件発明4の相違点2に係る構成は、液体インク収納カートリッジが搭載される側の記録装置の構成であるから、相違点2は実質的な相違点ではない。
なお、本件発明4の液体インク収納カートリッジが搭載される側の記録装置の構成を、本件発明4の相違点2に係る構成を備えた記録装置とすることが、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得た点については、上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のc.?e.で述べたのと同様である。

まとめ
上記相違点1?4についての検討結果より、本件発明4は、引用容器発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 本件発明5について
4-1 本件発明5と引用容器発明の対比
引用容器発明の「印刷記録材容器」内に「印刷記録材」が収納されなければ各「印刷記録材容器」のインク色が定まらず、引用容器発明の「記憶素子」が「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報」を保持することができないから、引用容器発明の「印刷記録材容器」内に「印刷記録材」が収納され、引用容器発明が、「印刷記録材容器内に収納される印刷記録材」を有することは自明である。
よって、引用容器発明の「印刷記録材」は本件発明5の「液体インク」及び「液体インク収納容器内に収納される液体インク」に相当し、引用容器発明の「印刷記録材容器」は本件発明5の「液体インク収納容器」に相当する。

引用容器発明の「複数の印刷記録材容器をキャリッジ移動方向に並ぶ互いに異なる位置に装着して移動するキャリッジ」、「印刷記録材容器に備えられる接点」、「印刷記録材容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」、「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報」、「装着される印刷記録材容器それぞれの接点と接続する装置側接点に対して共通に電気的接続し印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を送信するための配線を有した電気回路」、「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な印刷記録材容器」、「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を保持する記憶素子」、「前記接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に」は、それぞれ、本件発明5の「複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジ」、「該液体インク収納容器に備えられる接点」、「該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」、「色情報に係る信号」、「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」、「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器」、「収納される液体インクのインク色を示す色情報を保持する情報保持部」、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に」に相当する。

引用容器発明の「記憶装置」は、「前記接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に、応答信号を前記配線を通じて印刷装置側の制御回路に対して送り返す動作を制御する」ものであり、本件発明5の「制御部」は、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に前記発光部の発光を制御する」ものであるから、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に応答する制御を行う」点で、本件発明5の「制御部」と共通している。

すると、引用容器発明と本件発明5の一致点と相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、 記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記液体インク収納容器内に収納される液体インクと、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
収納される液体インクのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に応答する制御を行う制御部と、
を有する液体インク収納容器。」

[相違点1]
本件発明5は、「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が搭載される側の記録装置が、「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」を有し「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」記録装置、と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

[相違点2]
本件発明5は、「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が、「前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、・・・を有する」、と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

[相違点3]
本件発明5は、「制御部」が、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に前記発光部の発光を制御する制御部」、と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

4-2 本件発明5についての判断
相違点2について
上記「1 本件発明1について 1-4 本件発明1についての判断」における相違点2についての判断と同様に、引用容器発明において、本件発明5の相違点2に係る構成を備えることは、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

相違点3について
引用容器発明の制御部(記憶装置)は、上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のd.で述べたと同様に、検出対象である液体インク収納容器の色情報を発するものであるから、引用容器発明の液体インク収納容器に発光部を設けることとした場合、該発光部を利用して受光部が受光できるよう、引用発明の液体インク収納容器の制御部(記憶装置)を、接点から入力される色情報に係る信号と、情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に発光部を発光させるような制御部とし、引用容器発明が、本件発明5の相違点3に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

相違点1について
本件発明5は液体インク収納容器の発明である。これに対して、本件発明5の相違点1に係る構成は、液体インク収納容器が搭載される側の記録装置の構成であるから、相違点1は実質的な相違点ではない。
なお、本件発明5の液体インク収納容器が搭載される側の記録装置の構成を、本件発明5の相違点1に係る構成を備えた記録装置とすることが、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得た点については、上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のc.?e.で述べたとおりである。

まとめ
上記相違点1?3についての検討結果より、本件発明5は、引用容器発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5 本件発明6についての当審の判断
5-1 引用容器発明2の認定
引用発明は「装着される印刷記録材容器それぞれの接点と接続する装置側接点に対して共通に電気的接続し印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を送信するための配線を有した電気回路」を有していた。各印刷記録材容器に識別情報を送信するための配線が共通に電気的接続されているか個別の配線であるかは記録装置側の構成であり、印刷記録材容器側の構成ではないが、この、配線が共通に電気的接続されている点も加味して引用発明を印刷記録材容器の観点から把握することにより、甲第1号証には、以下の発明が記載されていると認められる。
「複数の印刷記録材容器を装着して移動するキャリッジと、
共通の信号線に接続される複数の装置側接点と、
共通の信号線に接続され印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を発生するための電気回路と、
を有する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な印刷記録材容器において、
前記複数の装置側接点に接続可能な接点と、
印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を保持する記憶素子と、
前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点及び前記接点を介して入力される前記印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、前記記憶素子の保持する前記印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に、応答信号を前記配線を通じて印刷装置側の制御回路に対して送り返す動作を制御する記憶装置と、
を具えた印刷記録材容器。」(以下「引用容器発明2」という。)

5-2 本件発明6と引用容器発明2の対比
引用容器発明2のキャリッジが複数の印刷記録材容器を装着する装着部を有することは明らかであるから、引用容器発明2の「印刷記録材容器」、「複数の印刷記録材容器を装着して移動するキャリッジ」、「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報」、「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を保持する記憶素子」、「前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点及び前記接点を介して入力される前記印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、前記記憶素子の保持する前記印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合」は、それぞれ、本件発明6の「液体インク収納容器」、「複数の液体インク収納容器が装着可能な装着部を備えて移動するキャリッジ」、「色情報に係る信号」、「「少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」、「「前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点及び前記接点を介して入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて」に相当する。

引用容器発明2の「記憶装置」は「前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点及び前記接点を介して入力される前記印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、前記記憶素子の保持する前記印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に、応答信号を前記配線を通じて印刷装置側の制御回路に対して送り返す動作を制御する」ものであり、本件発明6の「制御部」は「前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点および前記接点を介して入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて前記発光部の発光を制御する」ものであるから、「前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点および前記接点を介して入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて応答する制御を行う」点で、本件発明6の「制御部」と共通している。

すると、引用容器発明2と本件発明6の一致点と相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「複数の液体インク収納容器を装着して移動するキャリッジと、
共通の信号線に接続される複数の装置側接点と、
前記共通の信号線に接続され色情報に係る信号を発生するための電気回路と、
を備えた記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記複数の装置側接点に接続可能な接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点および前記接点を介して入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて応答する制御を行う制御部と、
を具えた液体インク収納容器。」

[相違点1]
本件発明6は、「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が搭載される側の記録装置が「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」を有し「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」記録装置と特定されるのに対して、引用容器発明2は該特定を有しない点。

[相違点2]
本件発明6は「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)側の接点が「前記装着部に装着されることにより、前記複数の装置側接点に接続可能な接点」と特定されるのに対して、引用容器発明2は該特定を有しない点。

[相違点3]
本件発明6は、「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が「液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された前記発光部と、・・・を具えた」と特定されるのに対して、引用容器発明2は該特定を有しない点。

[相違点4]
本件発明6は、「制御部」が「前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点および前記接点を介して入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて前記発光部の発光を制御する制御部」と特定されるのに対して、引用容器発明2は該特定を有しない点。

5-3 本件発明6についての判断
相違点2について
液体インク収納容器がキャリッジに装着されたときに、液体インク収納容器の接点と記録装置の接点が接続することは、接点の機能からして自明である。
よって、本件発明6の相違点2に係る構成は、接点の当然の作用を表現したものにすぎないから、相違点2は実質的には存在しない。

相違点3について
上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のa.で述べたとおり、複数の液体インク収納容器が記録装置のキャリッジの所定位置に搭載される場合において、交換されるべき液体インク収納容器が誤りなく選択されるように、交換すべき液体インク収納容器をユーザにわかりやすく表示するべく引用容器発明2の液体インク収納容器に発光部を設けることは、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得る程度のことである。

引用容器発明2の液体インク収納容器に発光部を設ける際に、液体の収納空間を介すると光が液体に吸収されて発光部から受光手段に至る光が弱くなるから、発光部を液体の収納空間を介さないよう液体インク収納容器の外部に設けることは、技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
甲第10号証に、発光部を液体インク収納容器の内部ではなく外部に固定して配置した構成が記載されていることもこのことを裏付ける。
また、液体インク収納容器2に設けた発光部からの光を受光する受光手段を記録装置に設けることは、上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のc.で述べたとおり、周知技術を適用して当業者が容易になし得ることである。
そうした場合、発光部の光が受光手段に投光されるよう発光部を受光手段に対し投光可能位置に固定して配置することは、技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
以上のことから、引用容器発明2において、本件発明6の相違点3に係る構成を備えることは、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

相違点4について
引用容器発明2の制御部(記憶装置)は、上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のd.で述べたと同様に、検出対象である液体インク収納容器の色情報を発するものであるから、引用容器発明2の液体インク収納容器に発光部を設ける際に、該発光部を利用して受光部が受光できるよう、引用容器発明2の液体インク収納容器の制御部(記憶装置)を、接点から入力される色情報に係る信号と、情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて発光部を発光させるような制御部とし、引用容器発明2が、本件発明6の相違点4に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

相違点1について
本件発明6は液体インク収納容器の発明である。これに対して、本件発明6の相違点1に係る構成は、液体インク収納容器が搭載される側の記録装置の構成であるから、相違点2は実質的な相違点ではない。
なお、本件発明6の液体インク収納容器が搭載される側の記録装置の構成を、本件発明6の相違点1に係る構成を備えた記録装置とすることが、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得た点については、上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のc.?e.で述べたのと同様である。

まとめ
上記相違点1?4についての検討結果より、本件発明6は、引用容器発明2及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6 本件発明7について
6-1 本件発明7と引用容器発明の対比
引用容器発明の「印刷記録材容器」、「複数の印刷記録材容器をキャリッジ移動方向に並ぶ互いに異なる位置に装着して移動するキャリッジ」、「印刷記録材容器に備えられる接点」、「印刷記録材容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」、「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報」、「装着される印刷記録材容器それぞれの接点と接続する装置側接点に対して共通に電気的接続し印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を送信するための配線を有した電気回路」、「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な印刷記録材容器」、「印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報を保持する記憶素子」、「前記接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に」は、それぞれ、本件発明7の「液体インク収納容器」、「複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジ」、「該液体インク収納容器に備えられる接点」、「該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点」、「色情報に係る信号」、「搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路」、「記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器」、「少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部」、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に」に相当する。

引用容器発明の「記憶装置」は、「前記接点から入力される印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報に係る信号と、記憶素子の保持する印刷記録材容器のインク色を識別するための識別情報とが一致した場合に、応答信号を前記配線を通じて印刷装置側の制御回路に対して送り返す動作を制御する」ものであり、本件発明7の「制御部」は、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に、前記接点から前記色情報と共に入力される前記発光部の制御に係る信号に基づいて前記発光部の発光を制御する」ものであるから、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に応答する制御を行う」点で、本件発明7の「制御部」と共通している。

すると、引用容器発明と本件発明7の一致点と相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、 記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に応答する制御を行う制御部と、
を有する液体インク収納容器。」

[相違点1]
本件発明7は、「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が搭載される側の記録装置が、「前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段」を有し「前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する」記録装置、と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

[相違点2]
本件発明7は、「液体インク収納容器」(印刷記録材容器)が、「前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、・・・を有する」と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

[相違点3]
本件発明7は、「制御部」が、「前記接点から入力される前記色情報に係る信号と前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に、前記接点から前記色情報と共に入力される前記発光部の制御に係る信号に基づいて前記発光部の発光を制御する制御部」と特定されるのに対して、引用容器発明は該特定を有しない点。

6-2 本件発明7についての判断
相違点2について
上記「1 本件発明1について 1-4 本件発明1についての判断」における相違点2についての判断と同様に、引用容器発明において、本件発明7の相違点2に係る構成を備えることは、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

相違点3について
(i)引用容器発明の制御部(記憶装置)は、上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のd.で述べたと同様に、検出対象である液体インク収納容器の色情報を発するものであるから、周知技術に基づいて、引用容器発明の液体インク収納容器に発光部を設ける際に、該発光部を利用して受光部が受光できるよう、引用発明の液体インク収納容器の制御部(記憶装置)を、接点から入力される色情報に係る信号と、情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に、発光部を発光させるような制御部とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

(ii)発光手段を単に点灯させるのではなく点滅させたり発光強度を変えたり種々に発光させるため、発光手段の制御に係る信号に基づいて発光手段を制御することは周知である。
よって、色情報とともに発光の仕方を制御する制御信号を送ることは、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

(iii)甲第1号証には「【0042】・・・電源がオフされる際には、データ信号線DLを介して記憶装置21?26に対して、それぞれインク消費量、インクカートリッジの装着時間といったデータを書き込む。・・・【0043】・・・アクセスを所望するインクカートリッジCAが決まっている場合には、アクセスを所望するインクカートリッジCAの識別情報が先頭列に格納されているデータ列をデータ信号線DL上に送出して、各インクカートリッジCA1?CA6の記憶装置21?26に送信する。」と記載されている。(上記「第5 甲号証及び先行技術文献の記載事項 1 甲第1号証の記載事項」のf.参照。)
これは、色情報(インクカートリッジCAの識別情報)に記憶装置の制御に係る信号(記憶装置に書き込みという制御を行うためのインク消費量、インクカートリッジの装着時間といったデータ)を加えることである。そして、甲第1号証に記載された引用容器発明の記憶装置は発光を制御するものではないが、液体インク収納容器に備わるのであるから、液体インク収納容器側の構成要素の記憶装置を色情報に加えるデータで制御することが甲第1号証には記載されていることになる。
そこで、液体インク収納容器に発光部がありそれを制御したい場合に、甲第1号証に記載された上記の「色情報に加えるデータを、液体インク収納容器側にある制御機能を有する部材(記憶装置)に送る技術」を用いて、その制御機能を有する部材によって発光部を制御することは、甲第1号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。

上記(i)?(iii)より、引用容器発明において、本件発明7の相違点3に係る構成を備えることは、周知技術及び甲第1号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点1について
本件発明7は液体インク収納容器の発明である。これに対して、本件発明7の相違点1に係る構成は、液体インク収納容器が搭載される側の記録装置の構成であるから、相違点1は実質的な相違点ではない。
なお、本件発明7の液体インク収納容器が搭載される側の記録装置の構成を、本件発明7の相違点1に係る構成を備えた記録装置とすることが、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得た点については、上記「第7 本件発明3についての当審の判断」のc.?e.で述べたとおりである。

まとめ
上記相違点1?3についての検討結果より、本件発明7は、引用容器発明、甲第1号証の記載及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第9 むすび
以上のとおり、本件発明1?7についての特許は、特許法第29条第2項に規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。

平成22年 1月26日

審判長 特許庁審判官 江成 克己
特許庁審判官 湯本 照基
特許庁審判官 長島 和子




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〔審決分類〕P1113.57 -ZA (B41J)
121
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液体インク収納容器、液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体インク収納容器、液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジに関し、詳しくは、インクジェット記録で用いられるインクタンクのインク残量など、液体インク収納容器の状態に関する報知をLEDなどの発光手段によって行う構成で用いられる液体インク収納容器、液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラの普及に伴って、パーソナルコンピュータ(PC)を介さずにデジタルカメラと記録装置としてのプリンタとを直接接続して印刷する用途(ノンPC記録)が増えつつある。さらにデジタルカメラに着脱可能に用いられる情報記憶媒体であるカードタイプの情報記憶媒体を直接プリンタに装着してデータ転送を行い、印刷を行う形態(ノンPC記録)も増えつつある。一般的にプリンタのインクタンク内のインク残量はPCを介してモニタ上で確認する手法が知られているが、上記ノンPC記録を行う場合においても、PCを介することなくインクタンク内のインク残量を把握したいという要望が高まっていた。つまりユーザが、インクタンク内のインク残量が少ないことが分かれば、例えば、記録を始める前に予め新しいインクタンクに交換し記録の途中でインク量不足のために記録が実質的にできなくなる事態を未然に防止できる。
【0003】
従来、このようなインクタンクの状態をユーザに報知する構成として、LEDなどの表示素子を用いたものが知られている。特許文献1には、記録ヘッドと一体のインクタンクに2つのLEDが設けられ、これらが2段階のインク残量に応じてそれぞれ点灯することが記載されている。また、特許文献2にも同様に、インク残量に応じて点灯するランプをインクタンクに設けることが記載されている。同文献では、記録装置で用いる4つのインクタンクそれぞれに上記のランプを設けることも開示されている。
【0004】
一方、さらなる高画質化の要求から従来の4色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)インクに、濃度の薄い淡色マゼンタ、淡色シアンといったインクが使われるようになってきており、さらにはレッド、ブルーインクといったいわゆる特色インクの使用も提案されてきている。このような場合、インクジェットプリンタに対しては7?8個といったインクタンクを個別に搭載することになる。その際に、間違った装着位置へのインクタンクの搭載を防止する機構が必要となってくる。特許文献3には、インクタンクがキャリッジに搭載される際の、キャリッジの搭載部とインクタンク相互の係合の形状をインクタンクごとに異ならせ、これにより、インクタンクが誤った位置に装着されることを防止している構成が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平4-275156号公報
【特許文献2】特開2002-301829号公報
【特許文献3】特開2001-253087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献2に記載されているようにインクタンクにランプが設けられている場合であっても、インク残量が少ないとして認識しているインクタンクを本体側制御部が特定する場合には、そのような認識に基づくランプの点灯などのために信号を送るべきインクタンクを特定しなければならない。例えばインクタンクが間違った位置に装着されていた場合には、インクがなくなっていないインクタンクについてインク残量なしと間違って表示する可能性がある。従って、ランプ等表示器の発光制御では、搭載されるインクタンクの搭載位置を特定することが必要となる。
【0007】
インクタンクの搭載位置を特定する構成としては、上述したように、搭載部とインクタンクが係合する相互の形状を搭載位置ごとに異ならせるものがある。しかしながら、この場合は特に、インクの色ないし種類ごとに異なる形状のインクタンクを製造する必要があり、製造効率やコストの点で不利となる。
【0008】
他の構成として、インクタンクの電気接点とキャリッジ等の搭載位置における本体側の電気接点とが接続して形成される回路の信号線を、搭載位置ごとに個別のものとする構成が考慮される。例えば、インクタンクのインク色情報をそのインクタンクから読み出し、LEDの点灯などを制御するための信号線を搭載位置ごとに個別のものとすることにより、読み出した色情報がその搭載位置に適合していなければインクタンクが誤って搭載されていることを知ることができる。
【0009】
しかしながら、このような信号線をインクタンクもしくは搭載位置ごとに個別なものとする構成は、信号線の数を増すものである。特に、上述したように最近のインクジェットプリンタなどでは、用いるインクの種類を多くすることにより画質の向上を図るのが一つの傾向としてある。このようなプリンタでは、特に信号線の数が増すことはコストを増すなどの要因となる。一方で、配線数を削減するためにはバス接続といった所謂共通の信号線の構成が有効であるが、単にバス接続のような共通の信号線を用いる構成では、インクタンクもしくはその搭載位置を特定することができないことは明らかである。
【0010】
本発明はこのような問題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い、この場合でもインクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の発光制御をすることを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために本発明では、複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明は、複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、を備える液体インク供給システムにおいて、前記液体インク収納容器は、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有し、前記受光部は、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出することを特徴とする。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
さらに加えて、本発明は、複数の液体インク収納カートリッジを互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納カートリッジに備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納カートリッジが入れ替わるように配置され前記液体インク収納カートリッジの発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する液体インク収納カートリッジ位置検出手段と、搭載される液体インク収納カートリッジそれぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納カートリッジの前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段は前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納カートリッジにおいて、液体インクを吐出することで記録を行う記録ヘッドと、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納カートリッジのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記液体インク収納容器内に収納される液体インクと、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、収納される液体インクのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有することを特徴とする。
また、本発明は、複数の液体インク収納容器が装着可能な装着部を備えて移動するキャリッジと、共通の信号線に接続される複数の装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、前記共通の信号線に接続され色情報に係る信号を発生するための電気回路と、を備え、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記装着部に装着されることにより、前記複数の装置側接点に接続可能な接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された前記発光部と、前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点および前記接点を介して入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、を具えたことを特徴とする。
さらに本発明は、複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、前記接点から入力される前記色情報に係る信号と前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に、前記接点から前記色情報と共に入力される前記発光部の制御に係る信号に基づいて前記発光部の発光を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上の構成によれば、記録装置の本体側の接点(コネクタ)と接続する液体インク収納容器であるインクタンクの接点(パッド)を介して入力される信号と、そのインクタンクの色情報とに基づいて発光部の発光を制御するので、先ず、搭載される複数のインクタンクが共通の信号線によってその同じ制御信号を受け取ったとしても、色情報に合致するインクタンクのみがその発光制御を行うことができ、これにより、インクタンクを特定した発光部の点灯など発光制御が可能となる。次に、このようなインクタンクを特定した発光制御が可能な場合、例えば、キャリッジに搭載された複数のインクタンクについて、その移動に伴い所定の位置で順次その発光部を発光させるとともに、上記所定の位置での発光を検出するようにすることにより、発光が検出されないインクタンクは誤った位置に搭載されていることを認識できる。これにより、例えば、ユーザに対してインクタンクを正しい位置に再装着することを促す処理をすることができ、結果として、インクタンクごとにその搭載位置を特定することができる。
【0020】
この結果、複数のインクタンクの搭載位置に対して共通の信号線を用いてLEDなどの表示器の発光制御を行い、この場合でもインクタンクなど液体インク収納容器の搭載位置を特定した表示器の発行制御をすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、次の流れに沿って本発明の実施形態を詳細に説明する。
1.機械的構成
1.1 インクタンク
1.2 変形例
1.3 インクタンク取り付け部
1.4 記録装置
2.制御系の構成
2.1 全体構成
2.2 接続部の構成
2.3 制御手順
3.他の実施形態
【0022】
1.機械的構成
1.1 インクタンク(図1?図5)
図1(a)、(b)および(c)は、それぞれ、本発明の第1の実施形態に係る液体収納容器であるインクタンクの側面図、正面図および底面図、図2はその側断面図である。なお、本説明において、インクタンクの正面とは、ユーザに向き合うことでその操作(着脱操作等)およびユーザへの情報提供(後述するLEDの発光)を可能とする面を言う。
【0023】
図1において、本実施形態のインクタンク1は正面側の下部に支持された支持部材3を有している。支持部材3はインクタンク1の外装と一体に、樹脂により形成されており、後述するタンクホルダへの装着操作等を行う際に被支持部を中心に変位可能な構成である。インクタンク1の背面側および正面側には、タンクホルダ側の係止部にそれぞれ係合可能な第1係合部5および第2係合部6(本例では支持部材3に一体化されている)が設けられ、これらの係合によってインクタンク1のタンクホルダへの装着状態が確保される。この装着時の動作については図15により後述する。
【0024】
インクタンク1の底面には、タンクホルダへの装着時に、後述する記録ヘッドのインク導入口と結合してインク供給を行うためのインク供給口7が設けられている。この底面と正面とが交わる部分にあって、支持部材3の支持部分の底面側には、本実施形態の主要部をなす基体が設けられている。基体の形状としてはチップ形状でも板状であっても良いが、以下では基板100として説明する。
【0025】
図2はインクタンク1の側断面図である。インクタンク1の内部は、支持部材3および基板100が設けられる正面側に位置するインク収納室11と、背面側に位置してインク供給口7に連通する負圧発生部材収納室12とに分割されており、両者は連通口13を介して接続されている。インク収納室11にはインクがそのまま貯留される一方、負圧発生部材収納室12には、インクを含浸保持するスポンジや繊維集合体等のインク吸収体15(以下、便宜的に多孔質部材と示す)が設けられている。この多孔質部材15は、記録ヘッドのインク吐出用のノズル部に形成されるメニスカスの保持力と平衡してインク吐出部からのインク漏れを防止するに十分で、かつ記録ヘッドのインク吐出動作が可能な範囲にある適切な負圧を発生するためのものである。
【0026】
負圧発生部材収納室12の上面には、記録ヘッドへのインク供給に伴って増大する負圧を緩和し、これを好ましい所定範囲に維持すべく外気を導入するための大気連通部12Aが設けられている。
【0027】
また、図2のインクタンク1は、後述の基板が配設されたインクタンク1の本体を用意してから、内部にインクを注入することで製造することができる。その方法を実施するためのインクの注入口は、例えばインク収納室11の上面に形成しておくことができる。そして、インク注入後に、注入口を封止部材11Aによって封止することができる。
【0028】
インクタンク1の使用が開始され、インクが消費されはじめた以降、例えば収納するインク残量が実質的になくなってから、封止部材11Aを取り外し、またはこれを破壊することで注入口を再形成し、注射器等を用いてインクを注入してから、必要に応じ封止部材11Aまたはその代替部材で注入口を封止することも可能である。あるいは、そのような当初形成されていた注入口を利用する代わりに、例えばインク収納室11の上面の別の部位に開口を形成し、この開口を通してインクを注入してから、必要に応じてこれを封止することも可能である。例えば収納するインク残量が実質的になくなったインクタンクに対しそれらのようにしてインクを注入することも、本発明に係るインクタンク製造方法の実施に含まれる。
【0029】
さらに、インク供給口7に対しては、製造されたインクタンク1の物流時や保管時等におけるインク漏出を防止するための封止部材7Aが着脱可能である。この封止部材7Aはキャップやテープ状の部材など、所定の封止性能が発揮され、かつ記録ヘッドへインクタンクの取り付けを行う際に取り外し可能なものであればいかなる形態でもよい。また、使用開始後において記録ヘッドからインクタンクを取り外した場合に、封止部材7Aまたはその代替部材でインク供給口7の封止を行うようにすることもできる。
【0030】
なお、インクタンク1の内部構成は、このような多孔質部材の収納室とインクをそのまま貯留する収納室とに分かれた形態に限られない。例えば、多孔質部材がインクタンク内部空間の実質的に全体に充填されるものでもよい。また、負圧発生手段として多孔質部材を用いるのではなく、容積を拡張する方向に張力を発生するゴム等の弾性材料で形成した袋状部材内にインクをそのまま充填し、この袋状部材が発生する張力によって内部のインクに負圧を作用するようにしたものでもよい。さらには、インク収容空間の少なくとも一部を可撓性部材で構成し、その空間内にインクだけを収容するとともに、可撓性部材にばね力を作用させることで負圧を発生させるようにしたものでもよい。これらの場合も上述と同様のインク注入を行うことでインクタンクを製造することが可能である。また、これらの場合、記録ヘッドへのインク供給に伴って増大するインク収容空間内の負圧を緩和し、これを好ましい所定範囲に維持すべくインク収容空間内に外気を導入するための大気連通部が設けられるが、その大気連通部位を利用してインク注入を行うようにすることもできる。
【0031】
インク収納室11の底部には、インクタンク1の装置への装着時において装置側に設けられたインク残量検出用センサ(後述)と対向可能な部位に、被検出部17が設けられている。本実施形態において、インク残量検出用センサは発光部および受光部を有する光センサである。また、被検出部17は、透明もしくは半透明な材質からなり、かつインク非収納時には適切に発光部からの光を反射させて受光部(後述)に戻すことができるように形状,角度等が定められた斜面部を有したプリズム状のものである。
【0032】
図3?図5を用い、本実施形態の主要部である基板100の構成および機能について説明する。ここで、図3(a)および(b)は本発明の第1の実施形態に係るインクタンクに配置される基板の機能の概略を説明するための模式的側面図、図4(a)および(b)は、それぞれ、図3の主要部の拡大図およびそのIVb方向断面の矢視図、図5(a)および(b)は、それぞれ、第1の実施形態に係るインクタンクに取り付けられる制御基板100の一例を示す側面図および正面図である。
【0033】
記録ヘッド105’を備えた記録ヘッドユニット105に一体化されているホルダ150の第1係止部155および第2係止部156に対し、インクタンク1の第1係合部5および第2係合部6がそれぞれ係合することで、インクタンク1がホルダ150に装着され、固定される。またこのとき、ホルダ150に設けられた接点(以下コネクタと称す)152と、インクタンクに設けられた基板100の外側に向かって位置する面に設けられた接点としての電極パッド102(図5(b))とが接触し、電気的接続が可能となる。
【0034】
インクタンク1の内側に向かって位置する基板100の面には、LEDなど可視光を発生する第1発光部101と、この発光部を制御する制御素子103とが設けられており、コネクタ152よりパッド102を介して供給される電気信号により、制御素子103は第1発光部101の発光の制御を行う。なお、図5(a)は、制御素子103を基板100に実装した後に、保護用の封止剤でこれを被覆した状態を示している。また、インクタンクが収納しているインクの色やインク残量などの情報を記憶させておくメモリ素子を搭載する場合にも、これを同じ位置に実装して封止剤で被覆することができる。
【0035】
ここで、上述したように、インクタンク1の底面および正面をなす両面が交わる部分にあって、支持部材3の支持部分の下方には、本実施形態の主要部をなす基板100が配設されている。この配設部位において、インクタンク1には両面をつなぐ斜面が形成されている。従って、第1発光部101が発光すると、その一部は斜面に沿ってインクタンク1の正面側から外に向かって投光される。
【0036】
かかる配置とした基板100を用いることで、記録装置(ひいてはこれが接続されるコンピュータなどのホスト装置)だけでなく、ユーザに対しても、第1発光部101を兼用してインクタンク1に係る所定の情報を直接提示することが可能となる。すなわち、図3(a)に示すように、ホルダ150を搭載するキャリッジの走査範囲の端部にあって図の右上方向に投光される光を受容する位置に受光部を配置し、その部位にキャリッジが位置したときに第1発光部101の発光を制御することで、記録装置側は受光部の受光内容からインクタンク1に係る所定の情報を認識することが可能となる。また、例えば走査範囲の中央にキャリッジを位置させて第1発光部101の発光を制御することで、図3(b)に示すように、ユーザはその発光状態を目視することによりインクタンク1に係る所定の情報を認識することが可能となる。
【0037】
インクタンク(液体収容容器)1の所定の情報とは、インクタンク1の装着状態の良否(すなわち装着が完全であるか否か)、装着位置の適否(インク色に対応して予め定められているホルダ上の装着位置に正しく装着されているか否か)、さらにはインク残量の有無(十分なインク量が残っているか否か)などであり、発光の有無や発光の状態(点滅など)によりそれらの情報の提示が可能となるのである。発光の制御およびそれに伴う情報提示の態様については、制御系の構成の説明の項において詳述する。
【0038】
上記基板100ないし第1発光部101の配置および動作に好ましい構成としては、図4(a)および(b)に示すものが挙げられる。すなわち、第1発光部101および制御素子103が設けられている基板100の面に対向するインクタンク1の部分には、第1発光部101により発光された光が第1受光部210やユーザの視界に円滑に到達するようにする目的で、少なくとも光軸(矢印)に沿って空間1Aを形成しておくことが望ましい。また、同じ目的のために、支持部材3の配設位置および形状を適切に定めることで、光軸が遮断されないようにする。さらに、ホルダ150には光軸を確保するための穴(もしくは光透過性の部分)150Hが設けられている。
【0039】
1.2 変形例(図6?図13)
以上述べた構成は例示であって、第1発光部101を兼用して記録装置およびユーザに対しインクタンク1に係る所定の情報を提示することが可能であれば、適宜の変形を行うことができる。この項ではそのいくつかについて説明する。
【0040】
図6(a)および(b)は、それぞれ、第1の実施形態に係るインクタンクに取り付けられる制御基板の変形例を示す側面図および正面図である。この例は、光が特に第1受光部210およびユーザの目の位置に向う方向に指向するようにしたものである。このためには、第1発光部101の姿勢を適切に定めた配置を行うほか、当該指向を行わせるための部材(レンズ等)を設けることができる。
【0041】
図7(a)および(b)に示す例は、インクタンク1の内側に向かって位置する基板100の面には第1発光部101のみが位置するようになし、制御素子103を電極パッド102とともに基板100の外側に向かって位置する面に設けたものである。この結果、第1発光部101が発する光は制御素子103に遮られることがないので、基板100の面に沿って斜め上方だけでなく斜め下方にも向かうものとなる。
【0042】
図8はかかる構成の制御基板が配設されたインクタンクの使用態様を説明するための側面図である。この図から明らかなように、第1発光部101はユーザが目視可能な図の右上方向だけでなく、左下方向にも投光する。そこでこの左下方向に向かう光軸上に第1受光部210を配置することで、記録装置側がインクタンク1に係る所定の情報を受け取ることが可能となる。
【0043】
図9は図7の制御基板が配設されたインクタンクの使用態様の他の例を説明するための側面図である。この例は、インクタンク1の装置への装着時において、プリズム状の被検出部17に対向可能に、光センサ形態のインク残量検出用センサ117を記録装置に設ける場合に適している。すなわち、インク残量検出用センサ117は発光部117Aおよび受光部117Bを有し、インクタンク1のインク室11のインク残量が少ない状態では、発光部117Aからの光がプリズム状被検出部17で反射されて受光部117Bに戻されることで、装置はその状態を認識できる。本例はこの受光部117Bを第1発光部101からの光の受光部に兼用し、インクタンク1の装着の有無や適否をも装置が認識することができるようにしたものである。
【0044】
図10(a)および(b)に示す例は、インクタンク1の内側に向かって位置する基板100の面に制御素子103を配置する一方、第1発光部101を電極パッド102とともに基板100の外側に向かって位置する面に設けたものである。この結果、第1発光部101が発する光は基板100の面から外側に向かう方向にも進行するものとなる。
【0045】
図11はかかる構成の制御基板が配設されたインクタンクの使用態様を説明するための側面図である。この図から明らかなように、第1発光部101はユーザが目視可能な図の右上方向だけでなく、右下方向にも投光する。そこでこの右下方向に向かう光軸上に第1受光部210を配置することで、記録装置側がインクタンク1に係る所定の情報を受け取ることが可能となる。
【0046】
以上の各構成においては、ユーザの目や受光部に向かう光軸が積極的に確保されるように、光軸を遮る部材の位置や形状を適切に定めたり、開口や透光性の部分を設けたりすることが好ましい。しかしこれによらずとも、ユーザの目や受光部に光を導く構成を採ることは可能である。
【0047】
図12(a)および(b)は、そのための構成例を示すものであり、第1発光部101が発する光を所要の位置に向けて導くための光ファイバなどの導光性部材154を配設してある。すなわち、かかる導光性部材154によって、第1受光部210(図12(a))およびユーザの目(図12(b))に対し、インクタンク1に係る所定の情報を伝達することが可能となる。
【0048】
以上は主として、制御基板の第1発光部101に関連した諸構成例であるが、パッド102に対しても適切な配置を行うことができる。
【0049】
図13(a)および(b)は、それぞれ、インクタンクに取り付けられる制御基板のさらに他の例を示す側面図および正面図である。上述の諸例では複数の電極パッド102を基板100の面に整列させて設けたが(例えば図5(b))、本例はこれら複数の電極パッド102を基板100の面に分散して(図では千鳥状に)配置している。この配置が有利な点は、コネクタ152との当接状態において基板に掛かる荷重を分散することで、比較的高い当接圧力を得る場合にも基板100の歪みを抑制できることである。
【0050】
1.3 インクタンク取り付け部(図14?図16)
図14は第1の実施形態に係るインクタンクが着脱可能に構成された記録ヘッドユニットの一例を示す斜視図、図15(a)?(c)はインクタンクを記録ヘッドユニットに装着する際の動作を説明するための図である。
【0051】
記録ヘッドユニット105は、概して、複数(図では4個)のインクタンクを着脱可能に保持するホルダ150と、底面側に配置される記録ヘッド105’(図14では不図示)とからなっている。そしてインクタンクをホルダ150に装着することで、ホルダ底部に位置する記録ヘッド側のインク導入口107とインクタンク側のインク供給口7とが結合し、両者間のインク連通路が形成される。
【0052】
記録ヘッド105’としては、ノズルを構成する液路内に電気熱変換素子を設け、これに記録信号となる電気パルスを与えることによりインクに熱エネルギを付与し、そのときのインクの相変化により生じる発泡(沸騰)時の圧力をインクの吐出に利用するものを用いることができる。そして、後述するキャリッジ203に設けられた信号伝達用の電気接点部(不図示)と記録ヘッドユニット105側の電気接点部157とのコンタクトが行われ、配線部158を介して記録ヘッド105’の電気熱変換素子駆動回路への記録信号の伝達が行われる。また、電気接点部157からはコネクタ152に至る配線部159も延設されている。
【0053】
インクタンク1を記録ヘッドユニット105に装着する場合には、ホルダ150の上方でインクタンク1を取り扱い(図15(a))、インクタンク背面側に設けられた突起状の第1係合部5を、ホルダ背面側に設けられた貫通孔状の第1係止部155に挿通した状態でホルダ底面上に載置する(図15(b))。この状態でインクタンク1の正面側上端を矢印Pに示すように押下すると、インクタンク1は第1係合部5および第1係止部155の係合部分を回動支点として矢印R方向に回動し、インクタンク正面側が下方に変位してゆく。この過程で、インクタンク正面側の支持部材3に設けられた第2係合部5の側面がホルダ正面側に設けられた第2係止部156に押されながら、支持部材3も矢印Q方向に変位してゆく。
【0054】
そして第2係合部5の上面が第2係止部156の下方に至ると、支持部材3は自身の弾性力によってQ’方向に変位し、第2係合部5が第2係止部156によって係止される。この状態(図15(c))では、第2係止部155が支持部材3を介してインクタンク1を水平方向に弾性的に付勢し、インクタンク1の背面がホルダ150の背面に当接する。
また、インクタンク1上方への変位は、第1係合部5が係合した第1係止部155および第2係合部6が係合した第2係止部156によって抑制される。これがインクタンク1の装着完了状態であり、このときインク供給口7およびインク導入口107、またパッド102およびコネクタ152が接合した状態となる。
【0055】
「てこ」の作動にたとえると、図15(b)に示すような装着動作の過程では、第1係合部5および第1係止部155の係合部分が支点、インクタンク1の正面側が力点となる。インク供給口7およびインク導入口107の結合部分は作用点となって、これは力点と支点との間、好ましくは支点近くに位置する。従って、インク供給口7はインクタンク1の回動に伴って大きな力でインク導入口107に押し付けられる。両者の結合部分には通常、インク連通性の確保やインク漏洩の防止を目的としてフィルタ,吸収体,パッキンなど比較的可撓性に富む弾性部材が配設されている。
【0056】
従って、本例のような構成配置および装着動作を採用し、比較的大なる力をもってそれら部材を弾性変形させた状態とすることは、それらの配設目的に照らして好ましいことである。また、装着動作が完了すると、第1係合部5が係合した第1係止部155および第2係合部6が係合した第2係止部156によってインクタンク1の浮き上がりが阻止され、従ってそれら弾性部材の復元が抑制されるので、それらの部材は適切に弾性変形した状態に保持される。
【0057】
一方、接点としてのパッド102およびコネクタ152は金属など比較的剛性の高い導電部材であり、これらの間には良好な電気接続性が確保されるべきである。一方、過大な力をもってそれらを当接させることは、損傷防止や耐久性の観点から好ましくない。本例ではまず、支点から極力離れた部位、すなわちインクタンクの正面近傍にそれらを配置することで、当接力を好ましく小とする。
【0058】
このためには、インクタンク底面上、正面直近の部位に基板のパッドを配置することが考えられる。これとは逆に、インクタンク正面に基板のパッドを配置することも考えられる。しかしいずれの場合でも、第1受光部210およびユーザの目に適切に投光するための第1発光部101の基板上の配置に制約が生じる。また、インクタンク底面上、正面直近の部位に基板を配置する場合、インクタンク1の装着完了直前の状態においてパッド102およびコネクタ152は正対しつつ接近し、そのまま接合することになる。両者の表面の状態によらず良好な電気的接続が行われるようにするためには、大きな装着力を及ぼさなければならず、この結果パッドおよびコネクタに過剰な力が作用する恐れがある。また、万一、インク供給口7およびインク導入口107の結合部分からの漏洩が生じた場合、漏洩インクがインクタンク底面を伝ってパッドおよびコネクタの接続部分まで至る恐れもある。インクタンク正面に基板を配置する場合には、インクタンクの装置本体からの離脱が困難になる可能性がある。
【0059】
これに対し、本例では、インクタンク1の底面および正面をなす両面が交わる部分にあって、両面をつなぐ斜面に基板100を配置している。ここで、装着完了直前においてパッド102がコネクタ152に当接した状態での、この当接部分のみでの力の釣り合いを考えると、鉛直方向下方に作用する装着力に釣り合ってコネクタ152がパッド102に及ぼす反力(鉛直方向上向きの力)は、コネクタ152およびパッド102間の実際の当接圧(斜面に垂直な方向の力)の分力となる。従って、ユーザが装着完了位置に向けてインクタンクを押下するとき、基板およびコネクタ間の電気的接続を行わせるためのインクタンク装着力の増加分も少なく、ユーザの操作性を著しく低下させることもない。
【0060】
また、装着完了位置(第1係合部5と第1係止部155、および第2係合部6と第2係止部156が係合する位置)に向けてインクタンク1を押圧すると、その押圧力によって基板100の平面に平行な方向の分力(パッド102にコネクタ152上を摺動させる力)も生じる。よって、両者間での良好な電気接続性も確保された装着完了状態を得ることができる。また、この状態では電気的接続部分がインクタンク底面から高い部位に位置するので、漏洩インクが伝わってくる恐れも極めて少ない。さらに、第1受光部210およびユーザの目への第1発光部101の光軸も確保できることになる。
【0061】
すなわち、本例のような電気的接続部分の構成配置は、第1投光部101を第1受光部およびユーザの目への投光に兼用する際の投光経路の確保にとって好ましいだけでなく、インクタンク装着力の大きさ、電気的接触状態の確保、および漏洩インクからの保護など、種々の点を勘案した適切なものと言い得るのである。
【0062】
本発明の第1実施形態または変形例に係るインクタンクの取り付け部分の構成は、図14に示したものに限られない。
【0063】
図16を用いてこれを説明する。同図(a)はインクタンクからインクの供給を受けて記録動作を実行する記録ヘッドユニットの他の構成例及びこれを組み込むキャリッジの斜視図、(b)は両者を結合した状態を示す斜視図である。
【0064】
この例に係る記録ヘッドユニット405は、インクタンク全体を固定保持する上例のようなホルダ150と異なり、図16(a)に示すように、インクタンク正面側に対応したホルダ部分、およびここに配設されていた第2係止部およびコネクタなどを有していない。その他は上例とほぼ同様であり、底面上にはインク供給口7に接続されるインク導入口107を、また背面側には第1係止部155を、さらにその裏面には信号伝達用の電気接点部(不図示)を有している。
【0065】
一方、シャフト417に沿って移動可能なキャリッジ415には、図16(b)に示すように、記録ヘッドユニット405を装着・固定するためのレバー419及び記録ヘッド側電気接点部と接続されている電気接点部418のほか、インクタンク正面側の構成に対応したホルダ部分が設けられている。すなわち、第2係止部156、コネクタ152およびコネクタへの配線部159はキャリッジ側に配設されている。
【0066】
かかる構成にあって、図16(b)に示すように記録ヘッドユニット405をキャリッジ415に装着した状態とすればインクタンクの取り付け部分の全体が構成される。つまり図15と同様の装着動作を経て、インク供給口7およびインク導入口107の接合並びにパッド102およびコネクタ152の接続が行われて装着動作が完了する。
【0067】
1.4 記録装置(図17?図18)
図17は、以上説明したインクタンクを装着して記録を行うインクジェットプリンタ200の外観を示す図であり、図18は、図17に示す本体カバー201を開放した状態を示す斜視図である。
【0068】
図17に示すように、本実施形態のプリンタ200は、記録ヘッドおよびインクタンクを搭載したキャリッジが走査のための移動をして記録を行う機構などプリンタの主要部分が、本体カバー201およびその他のケース部分によって覆われているプリンタ本体と、その前後にそれぞれ設けられる排紙トレイ203と、自動給紙装置(ASF)202とを備えたものである。また、本体カバーを閉じた状態および開いた状態の両方で本プリンタの状態を表示するための表示器、電源スイッチおよびリセットスイッチを備えた操作部213が設けられている。
【0069】
本体カバー201を開放した状態では、図18に示すように、ユーザは、記録ヘッドユニット105およびインクタンク1K、1Y、1M、1C(以下では、これらのインクタンクを同一の符号「1」で示す場合もある)を搭載したキャリッジ205が移動する範囲およびその周辺を見ることができる。実際は、本体カバー201を開けると、キャリッジ205が自動的に同図に示すほぼ中央の位置(以下、「タンク交換位置」ともいう)へ移動するシーケンスが実行され、ユーザは、このタンク交換位置でそれぞれのインクタンクの交換操作などを行うことができる。
【0070】
本実施形態のプリンタは、記録ヘッドユニット105に各色のインクに対応したチップ形態の記録ヘッド(不図示)が設けられ、これら各色の記録ヘッドがキャリッジ205の移動によって用紙などの記録媒体に対して走査を行い、この走査の間に記録媒体にインクを吐出して記録を行うものである。すなわち、キャリッジ205は、その移動方向に延在するガイド軸207と摺動可能に係合するとともに、キャリッジモータおよびその駆動力伝達機構によって、上述の移動をすることができる。そして、K、Y、M、Cのインクに対応したそれぞれの記録ヘッドでは、フレキシブルケーブル206を介して本体側の制御回路から送られる吐出データに基づいてインク吐出が行われる。また、紙送りローラや排紙ローラなどの紙送り機構が設けられ、自動給紙装置202から給紙された記録媒体(不図示)を排紙トレイ203まで搬送することができる。また、キャリッジ205には、インクタンクホルダを一体に備えた記録ヘッドユニット105が着脱自在に装着され、一方、この記録ヘッドユニット105に対してそれぞれのインクタンク1がカートリッジの形態にて着脱自在に装着される。すなわち、キャリッジ205に記録ヘッドユニット105を装着し、さらに記録ヘッドユニット105にインクタンク1を装着することが可能であり、本実施形態ではインクタンク1は記録ヘッドユニット105を介してキャリッジ205に着脱可能である。また、記録ヘッドユニット105にインクタンク1を装着することで、本発明液体供給システムの一実施形態が構成される。
【0071】
記録動作では、記録ヘッドが上記の移動によって走査しその間にそれぞれの記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録ヘッドにおける吐出口に対応した幅の領域に記録を行うとともに、この走査と次の走査の間に、上記紙送り機構によって上記幅に応じた所定量の紙送りを行うことにより、記録媒体に対して順次記録を行ってゆく。また、上記のキャリッジ移動による記録ヘッドの移動範囲の端部には、各記録ヘッドについてその吐出口が配設された面を覆うキャップなどの吐出回復ユニットが設けられている。これにより、記録ヘッドは所定の時間間隔で回復ユニットが設けられた位置へ移動して、予備吐出などの回復処理を行う。
【0072】
各インクタンク1のタンクホルダ部を備えた記録ヘッドユニット105には、前述したように、各インクタンクに対応してコネクタが設けられており、それぞれのコネクタは装着されるインクタンク1に設けられている基板のパッドと接触する。これにより、それぞれのLED101について、図25?図27にて後述されるシーケンスに従った点灯ないし点滅の制御が可能となる。
【0073】
具体的には、上記のタンク交換位置では、それぞれのインクタンク1についてインク残量が少なくなったとき、その該当するインクタンク1のLED101を点灯もしくは点滅させる。また、キャリッジの移動範囲において、上述の回復ユニットが設けられた位置と反対側の端部付近には、受光素子を有した第1受光部210が設けられている。これにより、キャリッジ205の移動に伴ってそれぞれのインクタンク1のLED101がこの受光部210を通過する際にLED101を発光させ、その光を受光したときのキャリッジ205の位置に基づいてキャリッジ205におけるそれぞれのインクタンク1の位置を検出することができる。さらに、LEDの点灯などの制御の他の例として、上記タンク交換位置で、インクタンク1が正しく装着されたときにそのタンクのLED101を点灯させる制御を行う。これらの制御は、記録ヘッドのインク吐出などの制御と同様、フレキシブルケーブル206を介して本体側の制御回路からそれぞれのインクタンクに対して制御データ(制御信号)が送られることによって実行される。
【0074】
2.制御系の構成
2.1 全体構成(図19)
図19は、上述したインクジェットプリンタの制御系の構成例を示すブロック図であり、プリンタ本体におけるPCB(プリント配線基板)形態の制御回路とそれによって制御される、インクタンクのLEDの発光などに関する構成を主に示している。
【0075】
図19において、制御回路300は本プリンタに関するデータ処理および動作制御を実行する。具体的には、CPU301は、ROM303に格納されているプログラムに従い、図25?図28にて後述される処理などを実行する。また、RAM302は、CPU301による処理実行の際に、ワークエリアとして用いられる。
【0076】
図19において模式的に示されるように、キャリッジ205に搭載された記録ヘッドユニット105は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各インクを吐出するための複数の吐出口が形成されたそれぞれの記録ヘッド105K、105Y、105M、105Cを備えている。そして、記録ヘッドユニット105のホルダには、これらの記録ヘッドに対応してインクタンク1K、1Y、1M、1Cが着脱自在に搭載される。
【0077】
それぞれのインクタンク1には、前述したように、LED101、その表示制御回路、および、接触端子であるパッドなどが設けられた基板100が取り付けられている。そして、インクタンク1が記録ヘッドユニット105に正しく装着されたとき、上記基板100上のパッドが記録ヘッドユニット105においてインクタンク1にそれぞれ対応して設けられたコネクタと接触する。また、キャリッジ205に設けられたコネクタ(不図示)と本体側の制御回路300とはフレキシブルケーブル206を介して信号接続する。さらに、キャリッジ205に記録ヘッドユニット105が装着されることにより、キャリッジ205の上記コネクタと記録ヘッドユニット105の上記コネクタとが信号接続する。以上の接続構成により、本体側の制御回路300とそれぞれのインクタンク1との間で信号の授受を行うことが可能となる。これにより、制御回路300は、図25?図27にて後述されるシーケンスに従った点灯ないし点滅の制御を行うことができる。
【0078】
記録ヘッド105K、105Y、105M、105Cにおけるそれぞれのインク吐出の制御についても、同様に、フレキシブルケーブル206、キャリッジ205のコネクタ、および記録ヘッドユニットのコネクタを介してそれぞれの記録ヘッドに設けられた駆動回路などが、本体側の制御回路300と信号接続し、これにより、制御回路300はそれぞれの記録ヘッドにおけるインク吐出などを制御することができる。
【0079】
キャリッジ205の移動範囲の一方の端部近傍に設けられる第1受光部210は、インクタンク1のLED101からの発光を受けて、それに応じた信号を制御回路300へ出力する。制御回路300は、後述のように、この信号に基づき、それぞれのインクタンク1のキャリッジ205における位置を判断することができる。また、キャリッジ205の移動経路に沿ってエンコーダスケール209が設けられるともに、キャリッジ205にはエンコーダセンサ211が設けられる。このセンサの検出信号はフレキシブルケーブル206を介して制御回路300に入力し、これにより、キャリッジ205の移動位置を知ることができる。この位置情報は、各記録ヘッド吐出制御に用いられるとともに、図25などにて後述される、インクタンク位置を検出する光照合処理において用いられる。さらに、キャリッジ205の移動範囲における所定の位置の近傍に設けられる第2発光/受光部214は、発光素子と受光素子とを有し、キャリッジ205に搭載されるそれぞれのインクタンク1のインク残量に係る信号を制御回路300に出力する。そして、制御回路300は、この信号に基づき、インク残量を検出することができる。
【0080】
2.2 接続部の構成(図20?図24)
図20は、フレキシブルケーブル206における、インクタンク1との信号接続のための信号配線の構成を、各インクタンクの基板100との関係で示す図である。
【0081】
図20に示すように、インクタンク1に対する信号配線は、4本の信号線からなり、また、4つのインクタンク1に共通の信号配線(所謂バス接続)である。すなわち、それぞれのインクタンク1に対する信号配線は、インクタンクにおけるLED101の発光およびその駆動などを行う機能素子群103の動作などの電力供給にかかる電源信号線「VDD」およびアース信号線「GND」と、後述されるように、制御回路300から、LED101の点灯、点滅などの処理に関する制御信号(制御データ)などを送るための信号線「DATA」およびそのクロック信号線「CLK」の4本の信号線から構成される。本実施例においては4本の信号線による説明を行うが、本発明はこれに限定されるものでなく例えばアース信号を別構成で達成することにより「GND」線を省略することも可能である。また「CLK」と「DATA」の信号線を共有して一本で構成することも可能である。
【0082】
一方、各インクタンク1の基板100には、これら4本の信号線の信号によって動作する制御部103およびそれによって動作するLED101が設けられている。
【0083】
図21はこれら制御部などが設けられた基板の詳細を示す回路図である。同図に示すように、制御部103は、入出力制御回路(I/O CTRL)103A、メモリーアレイ103BおよびLEDドライバ103Cを有して構成される。入出力制御回路103Aは、本体側の制御回路300からフレキシブルケーブル206を介して送られてくる制御データに応じて、LED101の表示駆動やメモリーアレイ103Bに対するデータの書き込みおよび読み出しを制御する。メモリーアレイ103Bは、本実施形態ではEEPROMの形態のものであり、インク残量、収納するインクの色情報の他、そのインクタンクの固有番号や製造ロット番号などの製造情報等のインクタンク個体情報を記憶することができる。なお、色情報はインクタンクの出荷時または製造時に、その収納しているインクの色に対応して、メモリーアレイ103Bの所定のアドレスに書き込まれる。例えばこの色情報は、図23、図24にて後述されるように、インクタンクの識別情報(個体情報)として用いられ、これにより、インクタンクを特定してメモリーアレイ103Bに対するデータの書き込みやメモリーアレイ103Bからデータの読み出しを行い、また、そのインクタンクのLED101の点灯、消灯を制御することが可能となる。メモリーアレイ103Bに書き込まれ、また、読み出されるデータには、例えば、インク残量のデータがある。本実施形態のインクタンクには、前述したようにその底部にプリズムが設けられ、インクの残量が少なくなったときはこのプリズムを介して光学的にその旨を検出することができる。本実施形態では、これに加え、制御回路300は、吐出データに基づいて記録ヘッドごとの吐出数をカウントし、それに基づいてインクタンクごとのインク残量を計算する。そして、この残量情報をそれぞれ対応するインクタンクのメモリーアレイ103Bに書き込み、また、読み出す処理を行う。これにより、メモリーアレイ103Bはその時点のインク残量の情報を保持することができ、この情報は、例えば、上記プリズムを用いたインク残量検出と併用したより精度の高い残量検出に用いられたり、装着されたインクタンクが新しいものか、あるいは一度用いられて再装着されたものであるかなどを判断するために用いられたりする。
【0084】
LEDドライバ103Cは、入出力制御回路103Aから出力される信号がオンのときLED101に電源電圧を印加するよう動作し、これにより、LED101を発光させる。従って、入出力制御回路103Aから出力される信号がオンの状態にあるとき、LED101は点灯状態となり、上記信号がオフの状態にあるとき、LED101は消灯状態となる。
【0085】
図22は、図21に示した基板100の構成の変形例を示す回路図である。この変形例が図21に示す例と異なる点は、LED101に対して電源電圧を印加する構成において、電源がインクタンクの基板100内部に設けられたVDD電源パターンから供給されるものである。制御部103は半導体基板上にまとめて作りこまれることが一般的であり、この半導体基板上の接続端子をLED接続端子のみとした構成である。接続端子数少なくすることで、半導体基板の占有面積に大きく影響するので、半導体基板のコストダウンにつながるものである。
【0086】
図23は、上述したメモリーアレイ103Bに対するデータの書き込みおよび読み出しの動作をそれぞれ説明するためのタイミングチャートであり、図24は、LED101の点灯および消灯の動作をそれぞれ説明するタイミングチャートである。
【0087】
図23に示すように、メモリーアレイ103Bへの書き込みでは、本体側の制御回路300からインクタンク1の制御部103における入出力制御回路103Aに対し、信号線DATA(図20)を介して「開始コード+色情報」、「制御コード」、「アドレスコード」、「データコード」の各データ信号が、クロック信号CLKに同期してこの順で送られてくる。「開始コード+色情報」は、その「開始コード」信号によって、一連のデータ信号の始まりを意味し、また、「色情報」信号によってこの一連のデータ信号の対象となっているインクタンクを特定する。なお、ここでのインクの「色」とはY、M、C等のインク色だけでなく濃度の異なるインクをも含むものである。
【0088】
「色情報」は、同図に示すように、インクの色「K」、「C」、「M」、「Y」に対応したコードを有しており、入出力制御回路103Aは、このコードが示す色情報とメモリーアレイ103Bに格納されている自身の色情報とを比較し一致しているときにのみ、それ以降のデータ信号を取り込む処理を行い、一致しないときは、それ以降のデータ信号の取り込みを無視する処理を行う。これにより、図20に示した共通の信号線「DATA」を介して、本体側からデータ信号をそれぞれのインクタンクに共通に送っても、それに上述の色情報を含めることによってインクタンクを特定することができ、書き込み、読み出し、LEDの点灯、消灯など、その後のデータ信号に基づく処理を、その特定したインクタンクに関してのみ行うことが可能となる。この結果、4つのインクタンクに対して共通の(1本の)データ信号線を介して送信されるデータによってデータの書き込みなどのほか、LEDの点灯、消灯の制御を行うことができ、これらの制御に要する信号線の数を本発明のように少なくすることが可能となる。なお、このような共通の(1本の)データ信号線を用いる構成は、インクタンクの数に限定されずに同じものとすることができることは、以上の説明からも明らかである。
【0089】
本実施形態の「制御コード」は、図23に示すように、後述するLEDの点灯、消灯制御に用いられる「OFF」、「ON」のコードと、メモリーアレイに対する読み出しおよび書き込みを示すそれぞれ「READ」および「WRITE」のコードを有している。本書き込み動作では、「WRITE」のコードがインクタンクを特定する上記「色情報」のコードの後に続くことになる。次の「アドレスコード」は、書き込み先であるメモリーアレイのアドレスを示し、最後の「データコード」は書き込む内容を表している。
【0090】
なお、「制御コード」が表す内容は上記の例に限られないことはもちろんであり、例えば、ベリファイコマンド、連続読み出しコマンドなどに関する制御コードを加えて用いることもできる。
【0091】
読み出しでは、上記の書き込みの場合とデータ信号の構成は同じであり、また、「開始コード+色情報」のコードは、上記の書き込みの場合と同様、総てのインクタンクの入出力制御回路103Aによって取り込まれ、それ以降のデータ信号は「色情報」が一致したインクタンクの入出力制御回路103Aだけが取り込む。異なる点は、アドレスコードによってアドレスを指定した後、最初のクロック(図23では13クロック目)の立ち上がりに同期して、読み出したデータの出力が行われる。複数のインクタンクのデータ信号端子が、このような共通の(1本の)データ信号線に接続されていても、読み出したデータが他の入力信号とぶつからないように入出力制御回路103Aが調停を行っているのである。
【0092】
LED101の点灯または消灯では、図24に示すように、上記と同様、先ず、「開始コード+色情報」のデータ信号が、本体側から信号線DATAを介して入出力制御回路103Aに送られてくる。上述したように、「色情報」によってインクタンクが特定され、その後に送られてくる「制御コード」に基づくLED101の点灯、消灯は特定されたインクタンクのみで行われる。点灯、消灯にかかる「制御コード」は、図23にて上述したように、「ON」または「OFF」のコードがあり、「ON」によってLED101の点灯が行われ、「OFF」によって消灯が行われる。すなわち、制御コードが「ON」のとき、入出力制御回路103Aは、図22にて前述したように、LEDドライバ103Cに対してオン信号を出力し、それ以降もその出力状態を維持する。逆に、制御コードが「OFF」のとき、入出力制御回路103Aは、LEDドライバ103Cに対してオフ信号を出力し、それ以降もその出力状態を維持する。なお、LED101の点灯または消灯の実際のタイミングは、図24に示す各データ信号についてクロックCLKの7クロック目以降に行われる。
【0093】
同図に示す例では、最初、同図の最左端のデータ信号にあるように、ブラックKのインクタンクが特定されて、インクKのタンクのLED101が点灯されている。次に、2番目のデータ信号の「色情報」はマゼンタインクMを指定するものであり、「制御コード」は点灯を指示するものであるから、インクKのタンクのLED101が点灯したまま、インクMのタンクのLED101も点灯する。そして、3番目のデータ信号は、インクKのタンクについて、「制御コード」が消灯を指示するものであるから、インクKのタンクについてのみそのLED101が消灯する。
【0094】
LEDの点滅制御は、上記の説明からも分かるように、本体側の制御回路300が、点灯と消灯の「制御コード」をそれぞれ含むデータ信号をそのインクタンクを特定して送ることによって可能となる。その場合に、その信号を送る周期を定めることによって、点滅の周期を制御することができる。
【0095】
2.3 制御手順(図25?図31)
図25は、以上説明した本実施形態の構成に基づくインクタンクの着脱に関する制御手順を示すフローチャートであり、特に、本体側の制御回路300による各インクタンク1のLED101の点灯、消灯の制御を示すものである。
【0096】
図25に示す処理は、ユーザが本実施形態のプリンタの本体カバー201を開いたとき、所定のセンサによってこれを検知して起動される処理である。本処理が起動されると、先ず、ステップS101で、インクタンク着脱処理を実行する。
【0097】
図26は、このインクタンク着脱処理の詳細を示すフローチャートである。同図に示すように、着脱処理では、先ず、ステップS201で、キャリッジ205を移動するとともにそのとき搭載されているそれぞれのインクタンクについて状態情報(インクタンクの個体情報報)を取得する。取得される状態情報としてはそのときのインク残量などであり、これらがそのインクタンクの固有番号とともに、メモリーアレイ103Bから読み出される。そして、ステップS202で、キャリッジ205が図18にて説明したインクタンク交換位置に到達したか否かを判断する。
【0098】
キャリッジ205がインクタンク交換位置に到達したと判断すると、ステップS203でインクタンク装着確認制御を行う。
【0099】
図27は、この装着確認制御の詳細を示すフローチャートである。先ず、ステップS301で、キャリッジ205に搭載されるインクタンクの数を示すパラメータNを設定するとともに、このインクタンクの数に応じてLEDの発光を確認するためのフラグF(k)を初期化する。本実施形態では、Nとして、K、C、M、Yのインクタンクの数で4が設定される。これに従い、F(1)、k=1?4、の4つのフラグが用意され、これらが総て初期化されてその内容が“0”とされる。
【0100】
次に、ステップS302で上記フラグのインクタンクの装着判定順序に関る変数Aを1に設定し、ステップS303で、A番目のインクタンクについて装着確認制御を行う。この制御は、ユーザがインクタンクを記録ヘッドユニット105のホルダ150に正しい位置に装着することにより、前述したホルダ150のコンタクト152とインクタンクのコンタクト102とが接触し、これにより、本体側の制御回路300が、前述したように、インクタンクの個体情報である色情報によってインクタンクを特定しつつ、その特定したタンクのメモリーアレイ103Bに格納されている色情報を順次読み出す動作である。また、上記特定するための色情報は、それまでに既に読み出されているものについては、用いないことはもちろんである。さらに、本制御では、この読み出した色情報が、本処理が起動された後、それまでに読み出された色情報と異なるものか否かの判断も行う。
【0101】
そして、ステップS304では、色情報を読み出すことができ、かつその色情報がそれまでに読み出されたものと異なるとき、その色情報のインクタンクがA番目のインクタンクとして装着されたと判断する。それ以外の場合は、A番目のインクタンクが装着されていないと判断する。尚、ここで説明するA番目というのは単にインクタンクの判定を行う順番を説明するものであり、インクタンクの装着位置を示す順番ではない。A番目のインクタンクが装着されていると判断したときは、ステップS305で、そのフラグF(A)、すなわち、用意された4つのフラグF(k)、k=1?4のうち、k=Aに該当するフラグ(A)の内容を“1”とし、図24にて上述したようにして、該当する色情報のインクタンク1のLED101を点灯する。装着されていないと判断したときは、ステップS311で、そのフラグF(A)の内容を“0”とする。
【0102】
次に、ステップS306で、変数Aを1インクリメントし、ステップS307で、この変数AがステップS301で設定したN(本実施形態のプリンタの場合はN=4)より大きいか否かを判断する。ここで、変数AがN以下であると判断したときは、ステップS303以降の処理を繰り返す。また、変数AがNより大きいと判断したときは、4つのインクタンク総てについて装着確認制御が終了したとして、ステップS308で、本体カバー201が開放された状態か否かを、上記のセンサの出力に基づいて判断する。すなわち、本体カバーが閉じた状態であるときは、ユーザが、例えば、インクタンクのいくつかを未装着あるいは装着が不完全なままカバーを閉じた可能性があるとして、ステップS312で異常状態のステータスを図26の処理ルーチンへ返して本処理を終了する。
【0103】
ステップS308で、本体カバー201が開いた状態であると判断したときは、4つのフラグF(k)、k=1?4、の総てについてその内容が“1”か否か、すなわち、総てのインクタンクについて、LED101の点灯がされたか否かを判断する。いずれかのインクタンクのLED101が点灯していないと判断したときは、ステップS302以降の処理を繰り返す。すなわち、ユーザが、LED101が点灯していないインクタンクについて、装着し、または装着動作をやり直し、そのインクタンクのLEDが点灯するまで、上記の処理を繰り返す。
【0104】
総てのインクタンクのLEDが点灯されたと判断したときは、ステップS310で正常終了動作を行い、本処理を終了し、処理は図26に示す処理ルーチンに戻る。図28(a)は、総てのインクタンクについて正しく装着され、それぞれのLEDが点灯した状態を示す図である。
【0105】
再び、図26を参照すると、ステップS203のインクタンク装着確認制御を上記のように実行した後、ステップS204で、その制御正常終了したか否か、すなわち、正常にインクタンクが装着されたか否かを判断する。装着が正常と判断したときは、ステップS205で操作部213の表示器(図17、図18)を、例えばグリーンに点灯し、ステップS206で正常終了して図25に示す処理ルーチンに戻る。また、装着が異常と判断したときは、ステップS207で操作部213の表示器を、例えば、オレンジで点滅し、ステップS208で異常終了して図25に示す処理ルーチンに戻る。記録装置を制御するホストPCが接続されている場合は、同時にPCモニタを通して装着異常表示を行うこともできる。
【0106】
図25において、ステップS101のインクタンク着脱処理を終了すると、ステップS102で、上記着脱処理が正常終了したか否かを判断する。異常終了であると判断したときは、ステップS108で、ユーザが本体カバー201を開けるのを待ち、カバー201が開けられたことによってステップS101の処理が起動され、図26にて説明した処理を繰り返す。
【0107】
ステップS102で、着脱処理が正常に終了したと判断したときは、ステップS103で、ユーザが本体カバー201を閉じるのを待ち、ステップS104でカバー201が閉じられたか否かを判断する。ここで、本体カバーが閉じられたと判断したときは、ステップS105の光照合処理に移行する。この際、図28(b)に示すように、本体カバー201が閉じられたことを検出すると、キャリッジ205は光照合のための位置へ移動するとともに、点灯されているそれぞれのインクタンクのLED101を消灯する。
【0108】
光照合処理は、正常に装着されたインクタンクそれぞれが正しい位置に装着されているか否かを判断する処理である。本実施形態では、インクタンクの装着位置について、例えば、インクタンクと装着位置の形状を他のインクのインクタンクが装着できないような形状とし、それぞれの色のインクタンクに対応して装着位置を定めるような構成をとらないことから、それぞれの色のインクタンクについて本来の位置でないところに誤って装着される可能性がある。このため、本光照合処理を行い、誤って装着されている場合は、ユーザにその旨を知らせるものである。これにより、特に、インクタンクの形状を色ごとに異ならせることなく、インクタンクの製造の効率化や低コスト化を図ることができる。
【0109】
図29(a)?(d)および図30(a)?(d)は、この光照合処理を説明する図である。
【0110】
図29(a)に示すように、先ず、第1受光部210に対して、図中左側から右側へ移動キャリッジ205を開始する。そして、最初に、イエローインクのインクタンク1Yが装着されるべき位置のインクタンクが第1受光部210に対向する位置で、インクタンク1YのLED101を発光させる(図24にて説明したように、実際は点灯し所定時間後消灯すること、以下、本照合処理では同様)。インクタンク本来の正しい位置に装着されているとき、第1受光部210はLED101の発光を受光することができ、制御回路300は、その装着位置にはインクタンク1Yが正しく装着されていると判断する。
【0111】
キャリッジ205を移動しつつ、同様にして、図29(b)に示すように、マゼンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置のインクタンクが第1受光部210に対向する位置で、インクタンク1MのLED101を発光させる。同図に示す例は、インクタンク1Mが正しい位置に装着されていて第1受光部210はその発光を受光することを示している。順次、図29(b)?(d)に示すように、判断する装着位置を変えながら発光を行って行く。これらの図は、正しい位置に装着されている例を示している。
【0112】
これに対し、図30(b)に示すように、マゼンタインクのインクタンク1Mが装着されるべき位置にシアンインクのインクタンク1Cが誤って装着されているときは、第1受光部210に対向しているインクタンク1CのLED101は発光せず、別の位置に搭載されているインクタンク1MのLED101が発光する。この結果、このタイミングでは、第1受光部210は受光できないことから、制御回路300は、その装着位置にはインクタンク1M以外のインクタンクが装着されていると判断する。これに対応して、図30(c)に示すように、シアンインクのインクタンク1Cが装着されるべき位置にマゼンタインクのインクタンク1Mが誤って装着されており、第1受光部210に対向しているインクタンク1MのLED101は発光せず、別の位置に搭載されているインクタンク1CのLED101が発光する。
【0113】
以上説明した光照合処理を行うことにより、制御回路300は本来の位置に装着されていないインクタンクを特定することができる。また、装着されるべき位置に正しいインクタンクが装着されていなかった場合には、その装着位置において、他の3色のインクタンクを順に発光させる制御を行うことによって、その装着位置に誤って何色のインクタンクが装着されてしまったかを特定することもできる。
【0114】
図25において、上述したステップS105の光照合処理の後、ステップS106でこの処理が正常終了したか否かを判断する。光照合が正常終了したと判断したときは、ステップS107で、操作部213の表示器を例えばグリーンに点灯して、本処理を終了する。一方、正常の終了でないと判断したときは、ステップS109で操作部213の表示器を例えばオレンジで点滅するとともに、ステップS110で、ステップS105で特定した、本来の正しい位置に装着されていないインクタンクのLED101を、例えば点滅あるいは点灯する。これにより、ステップS108で、ユーザが本体カバー201を開けたとき、本来の正しい位置に装着されていないインクタンクを知ることができ、正しい位置への再装着を促すことができる。
【0115】
図31は、本実施形態にかかる記録処理を示すフローチャートである。本処理では、先ず、ステップS401で、インク残量確認処理を行う。この処理は、これから記録しようとしているジョブについて、記録データからその記録量を求め、この量とそれぞれのインクタンクの残量とを比較して、上記ジョブの記録に十分な量があるか否かを確認する処理である。なお、この処理では、上記のインク残量は、制御回路300でそのときの残量としてカウントして求めたものを用いることができる。
【0116】
ステップS402では、上記の確認処理に基づいて記録に必要なインク量があるか否かを判断する。十分なインク量があるときは、ステップS403で記録動作を行い、ステップS404で操作部213の表示器をグリーンに点灯して正常終了を行う。一方、ステップS402で十分なインク量がないと判断したときは、ステップS405で、操作部213の表示器をオレンジに点滅するとともに、ステップS406で、インク残量が少ないインクタンク1のLED101を点滅または点灯させて、異常終了する。記録装置を制御するホストPCが接続されている場合は、同時にPCモニタを通してインク残量表示を行うこともできる。
【0117】
3.他の実施形態(図32?図40)
上述の第1の実施形態では、インクタンク背面側にある第1係合部5をホルダ奥側の第1係止部155に挿通し、インクタンク正面側を押下しつつ挿通部分を回動支点としてインクタンク1を回動させながら装着動作を行う構成であった。これにとって好ましい基板100の配設位置は上述のように回動支点から離れた正面側に位置し、またこれに伴って、第1受光部210およびユーザの目に投光するのに兼用される第1発光部101も基板100に一体化した構成とした。
【0118】
しかし、基板にとって好ましい配設位置と発光部に求められる配設位置とが、インクタンクやその取り付け部の構成に応じて異なる場合があり、その場合には基板および発光部をそれぞれ適宜の位置に配設し得る。すなわち、両者は必ずしも一体化されたものでなくてもよい。
【0119】
図32(a)?(c)は、本発明の他の実施形態に係るインクタンクおよびその取り付け部の構成例およびその装着動作を説明するための図である。
【0120】
図32(a)において、本実施形態のインクタンク501には、正面上部にLEDなどの発光部601、上面奥側にパッド602が設けられた基板600が配置されている。従って、発光部601が発光すると、正面側から投光される。そこで、キャリッジの走査範囲の端部にあって図の左方向に投光される光を受容する位置に受光部620を配置し、その部位にキャリッジが位置したときに発光部601の発光を制御することで、記録装置側は受光部の受光内容からインクタンク501に係る所定の情報を認識することが可能となる。また、例えば走査範囲の中央にキャリッジを位置させて発光部601の発光を制御することで、ユーザはその発光状態を目視することによりインクタンク501に係る所定の情報を認識することが可能となる。
【0121】
記録ヘッドユニット605は、図32(c)に示すように、複数(図では2個)のインクタンクを着脱可能に保持するホルダ650と、底面側に配置される記録ヘッド605’とからなっている。そしてインクタンク501をホルダ650に装着することで、ホルダ底部に位置する記録ヘッド側のインク導入口607とインクタンク底部に位置するインク供給口507とが結合し、両者間のインク連通路が形成される。ホルダ650は、インクタンク501を装着する際の回動中心となる係合部655を正面側に、装着完了位置にインクタンク501を係止する係止部656を背面側上部に有している。また、係止部656近傍には、基板500のパッド502と接続されるコネクタ652が設けられている。
【0122】
インクタンク501を記録ヘッドユニット605に装着する場合には、ホルダ650の正面からインクタンク501を取り扱い、図32(b)に示すように、インクタンク背面下縁部をホルダ650の背面に押し当て、インクタンク正面の部位をホルダ650の係合部655に係合させた状態とする。この状態でインクタンク501の正面上部を背面方向に押圧すると、インクタンク501は係合部655を中心に矢印方向に回動しながらホルダ内に装着されて行く。図32(a)および(c)はインクタンク501の装着完了状態であり、このときインク供給口507およびインク導入口607、またパッド602およびコネクタ652が接合した状態となる。また、パッド602およびコネクタ652は、装着時の回動中心から極力離れた部位に位置しており、インクタンク501の装着完了直前において両者が当接し、両者間での良好な電気接続性が確保された装着完了状態を得ることができる。
【0123】
なお、ホルダ650側の係合部655および係止部656、あるいはこれらに対応したインクタンク501側の構成は適宜定めることができる。また、図示の例では基板600がインクタンク501の上面に平行な面として設けられているが、第1の実施形態のように斜面に配置することも可能であるのは勿論である。さらに、ホルダ650および関連した構成部材をヘッドユニットが有する構成としなくてもよい。
【0124】
図33は図32の構成の変形例を示す斜視図であり、ここではインクタンク501および記録ヘッド605’を一体に構成してなる2本の記録ヘッドユニット(液体収納カートリッジ)が示されている。本実施形態において、一方はブラックインク用、他方はイエロー、マゼンタおよびシアンインク用のカートリッジである。
【0125】
このような構成に対応して、上記ホルダ650と同様の構成をキャリッジに設ければよい。また、本例においては、正面側に位置する発光部601の制御回路はヘッドユニットの適宜の部位に設けた基板上に構成されたものでもよいが、記録ヘッド605’に一体化された駆動回路基板に制御回路を形成しておき、不図示の配線を介して発光部601への接続を行うこともできる。この場合、記録ヘッド605’の駆動回路および発光部601の制御回路は、配線部657さらには不図示の電気接点部を介して、キャリッジ側電気接点部に接続される。
【0126】
図34は、上述した他の実施形態にかかる構造を有したインクタンクを搭載して記録を行うプリンタを示す斜視図であり、本体カバーを開いた状態で示すものである。同図において、図17、図18等で説明した要素と同様の要素には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0127】
図34に示すように、ブラックインクを収納したインクタンク501Kとシアン、マゼンタ、イエローの各インクを収納する収納室を一体に形成したインクタンク501CMYがそれぞれ、キャリッジ205上の記録ヘッドユニット605のホルダに装着される。そして、各インクタンクにおいて、上述したように、LED601は基板とは別体に設けられ、インクタンクが装着された状態(のインクタンク交換位置)で、ユーザは正面にこれらLED601を見ることができる。また、このLEDの位置に対応して、受光部210が、キャリッジ205の移動範囲の一方の端部近傍に設けられている。
【0128】
図35(a)および(b)は、それぞれ、本発明のさらに他の実施形態に係るインクタンクの模式的側面図および正面図であり、第1の実施形態に係るインクタンクにおいて基板および発光部を別の位置に配設した例である。
【0129】
本例では、インクタンク正面上部にLEDなどの発光部101およびこれを搭載する基板100-2が設けられている。そして、上述と同様にキャリッジ側のコネクタ152との良好な接続およびインクからの保護にとって好ましい斜面部に配設した基板100と、基板100-2ないし発光部101とを、配線部159-2を介して接続することで、電気信号の授受を行うようになっている。なお、3Hは配線部159-2をインクタンク筐体に沿わせて配置するために支持部材3の根元部分に設けた穴である。
【0130】
本例において、発光部101が発光すると、正面側から投光される。そこで、キャリッジの走査範囲の端部にあって図の右方向に投光される光を受容する位置に受光部210を配置し、その部位にキャリッジが位置したときに発光部101の発光を制御することで、記録装置側は受光部の受光内容からインクタンク1に係る所定の情報を認識することが可能となる。また、例えば走査範囲の中央にキャリッジを位置させて発光部101の発光を制御することで、図の括弧部分に示すように、ユーザはその発光状態をより容易に目視して、インクタンク1に係る所定の情報を認識することが可能となる。
【0131】
図36は図35の実施形態の変形例に係るインクタンクの模式的側面図である。本例では支持部材3の、特にユーザが操作する部分である操作部3Mの裏面側のインクタンク正面位置に、発光部101およびこれを搭載する基板100-2が設けられている。この例でも上例と同様の動作を行い、同様の効果を得ることができる。さらに本例では、例えば走査範囲の中央にキャリッジを位置させて発光部101の発光させたとき、支持部材3の操作部3Mにも光が照射されるので、ユーザはインクタンク交換その他の所要の操作をより直感的に理解することが可能となる。なお、操作部3Mの照射状態をより視認し易くするために、操作部3Mには適当量の光を透過または散乱させる部分が付加されていてもよい。
【0132】
図37はさらに他の変形例に係るインクタンクの模式的側面図である。本例は、支持部材3の操作部3Mの正面側に発光部101およびこれを搭載する基板100-2を設けたものである。基板100と基板100-2ないし発光部101とは、支持部材3の根本部分に設けた穴3Hを介して支持部材3に沿わせた配線部159-2によって接続されている。この例でも、図36と同様の効果を得ることができる。
【0133】
なお、図35?図37の構成において、フレキシブルプリントケーブル(FPC)を用いることで、基板100、配線部159-2および基板100-2を一体の部材とすることもできる。
【0134】
以上の各実施形態は、吐出されたインク量に対応した量のインクが常に、プリントヘッドに対し言わば連続的に供給されるように供給系を構成した方式のもの(以下、連続供給方式という)にあって、キャリッジ等に搭載されて往復移動(主走査)する記録ヘッドに分離可能に取り付けられる形態のインクタンクを用いる構成に本発明を適用した場合について説明した。しかし本発明は、記録ヘッドに対して一体不可分に取り付けられたインクタンクを用いる構成に適用することもできる。そのような構成であっても、装着位置が異なれば異なる色のデータを受け取ったり、あるいは色の重なり順が設計とは異なることによって所望の記録品位が得られなくなることが考えられるからである。
【0135】
また、参考例として、キャリッジ上に搭載される記録ヘッドとは別体にインクタンクを記録装置の固定部位に取り付け、可撓性チューブを介してその固定インクタンクと記録ヘッドとを連結してインクを供給するチューブを用いる形態の連続供給方式について説明する。この形態において、インクタンクと記録ヘッドとの中間タンクとして機能するインクタンクが記録ヘッドないしキャリッジ上に搭載される構成であってもよい。
【0136】
図38はかかる構成のインクジェット記録装置の一例を示す。
図において、710はカセット形態の給紙トレイであり、ここに積載された記録媒体は1枚ずつ分離・送給され、折り返し状の搬送経路に沿って搬送されてキャリッジ803に搭載された記録ヘッド(不図示)による記録領域を通過した後、排紙トレイ703に排出される。キャリッジ803はガイド軸807によって支持・案内され、図の左右方向に移動して記録ヘッドの記録走査を行わせる。
【0137】
キャリッジ803には、各色インク用の記録ヘッドが搭載されるとともに、各色インク用の記録ヘッドにはそれぞれ専用の中間タンク(例えば、ブラックインク用、シアンインク用、マゼンタインク用およびイエローインク用のインクタンク811K?811Y)が搭載される。また、これらの中間タンクには、装置の固定部位に着脱可能に設けられた比較的大容量の固定タンク701K?701Yからそれぞれのインクが供給される。また、850はキャリッジ803の移動に追従するフレキシブルな追従部であり、キャリッジに搭載される各記録ヘッド等に所要の電気信号を伝達する電気配線部のほか、各固定タンクから各中間タンクへのインク供給チューブ群をまとめて総括的に示すものである。また、供給チューブ群は、不図示の連通管を介して、固定タンクとインク連通している。
【0138】
記録動作に関しては上述した実施形態と同様であるが、本例では、上述の発光部101と同様の機能を果たす発光部801を固定タンク701K?701Yのそれぞれに設けてある。また、発光部801に対応して、主走査の過程でその発光状態を検出可能な受光部810をキャリッジ803に搭載している。すなわち、これらの機構により、固定タンク701K?701Yに関して、そのインク残量の有無や、装着の有無ないしは装着状態の良否につき、上述したのと同様、各固定タンクの状態を認識して所要の制御を行うことが可能となる。また、ユーザは発光部801の発光状態を視認することで、各固定タンクに関する情報を認識することができる。なお、固定タンクは着脱可能なものだけでなく、インク残量に応じてインクを補充することが可能な、実質的に半恒久的に取り付けられているものであってもよい。
【0139】
さらに、このような構成は、チューブを用いた連続供給方式によるものだけでなく、記録ヘッドに比較的少量のインクを貯留する貯留部を備えるとともに、その貯留部に対し比較的大量のインクを貯留する供給源(上記と同様の固定タンク)から適切なタイミングで言わば間欠的にインクが供給されるように供給系を構成した方式のもの(間欠供給方式;所謂ピットイン供給方式)に対しても適用が可能である。
【0140】
その態様としては、中間タンクへのインク充填を行う際にのみ固定タンクとのインク供給系が空間的に接続される形態のものとすることができる。あるいは、図38と同様な両タンクの接続構造を採りつつも、その接続構造に電磁弁等を介挿し、これを適宜開閉制御することによって、両タンク間を流体的に絶縁および接続するような構成を有するものであってもよい。また中間タンク部に気液分離膜(気体は通すが液体を通さない膜)を設け、その膜を介してタンク内のエアーを吸引することで中間タンク内にインク供給を行うピットイン方式にも適用可能である。
【0141】
図39は本発明のさらに他の実施形態の制御部103などが設けられた基板100の詳細を示す回路図である。同図に示すように、制御部103は、入出力制御回路(I/O CTRL)103A、LEDドライバ103Cを有して構成される。
【0142】
入出力制御回路103Aは、本体側の制御回路300からフレキシブルケーブル206を介して送られてくる制御データに応じて、LED101の表示駆動を制御する。
【0143】
LEDドライバ103Cは、入出力制御回路103Aから出力される信号がオンのときLED101に電源電圧を印加するよう動作し、これにより、LED101を発光させる。従って、入出力制御回路103Aから出力される信号がオンの状態にあるとき、LED101は点灯状態となり、上記信号がオフの状態にあるとき、LED101は消灯状態となる。
【0144】
本実施形態が図21に示す第一の実施形態と異なる点はメモリアレイ103Bが無いことである。メモリアレイ上に記憶されている個体情報(例えば色情報)が無い場合でもインクタンクを特定して、そのインクタンクのLED101の点灯、消灯を制御する方法を図40に示すタンミングチャートで以下に説明する。
【0145】
本体側の制御回路300からインクタンク1の制御部103における入出力制御回路入出力制御回路103Aに対し、信号線DATA(図20)を介して「開始コード+色情報」、「制御コード」が、クロック信号CLKに同期して送られて来る。入出力制御回路入出力制御回路103Aは送られて来る「色情報」+「制御コード」を合わせて「コマンド」として識別し、LEDドライバ103Cへの出力信号のオン、オフを決定するコマンド識別部103Dを内部に有して構成される。1Kから1Yまでの各色のインクタンクにはそれぞれ異なるコマンド識別部103Dを有する制御部103が搭載されており、それぞれの色における点灯、消灯を制御するコマンドが図40に示すように構成されている。即ち、各色のコマンド識別部103D内には各色の個体情報(色情報)が含まれて構成されていることになり、これと入力された「コマンド」の「色情報」部分を比較、識別して各種の動作を制御する。これにより、例えばインクタンク1Kを点灯させる「K-ON」の色情報+制御コード「000100」を本体が開始コードと共に送信すると、インクタンク1Kのコマンド識別部103Dのみが識別し、インクタンク1Kのみが点灯する、という制御が可能になる。本実施形態では各色毎に制御部103を異ならせて構成する必要があるが、メモリアレイ103Bを搭載する必要が無い点で有利である。
【0146】
また、コマンド識別部103Dは図40に示すように各色毎のLED101の点灯、消灯のコマンドだけではなく、例えば全色のLED101を点灯、消灯させるコマンド「ALL-ON」、「ALL-OFF」や、各色を指定して、制御部103からの応答信号を出力させる「CALL」コマンドなど、複数のコマンドを識別する機能を持っていても良い。
【0147】
さらに別の例として、本体側の制御回路300からインクタンク1に対して送られてくる色情報+制御コードからなるコマンドをインクタンク内の色情報(個体情報)と直接比較しない場合も本発明として適用可能である。つまり上記入力されたコマンドを制御部103において変換(演算)し、その変換した結果の値と、メモリアレイ103Bもしくはコマンド識別部103D内に保持する所定値とを比較して、その比較結果が所定の関係に対応した場合に点灯もしくは消灯等の制御を行っても良い。
【0148】
また上記例とは別に、本体側から送られてくる信号を制御部103において変換(演算)し、さらにメモリアレイ103Bもしくはコマンド制御部103D内に保持する値も制御部103において変換(演算)し、変換した値同士を比較して、その比較結果が所定の関係に対応した場合に、点灯もしくは消灯等の制御を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】(a)、(b)および(c)は、それぞれ、本発明の第1の実施形態に係るインクタンクの側面図、正面図および底面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るインクタンクの側断面図である。
【図3】(a)および(b)は本発明の第1の実施形態に係るインクタンクに配設される基板の機能の概略を説明するための模式的側面図である。
【図4】(a)および(b)は、それぞれ、図3の主要部の拡大図およびそのIVb方向矢視図である。
【図5】(a)および(b)は、それぞれ、第1の実施形態に係るインクタンクに取り付けられる制御基板の一例を示す側面図および正面図である。
【図6】(a)および(b)は、それぞれ、第1の実施形態に係るインクタンクに取り付けられる制御基板の変形例を示す側面図および正面図である。
【図7】(a)および(b)は、それぞれ、第1の実施形態に係るインクタンクに取り付けられる制御基板のさらに他の変形例を示す側面図および正面図である。
【図8】図7の制御基板の使用態様を説明するための側面図である。
【図9】図7の制御基板の使用態様の他の例を説明するための側面図である。
【図10】(a)および(b)は、それぞれ、第1の実施形態に係るインクタンクに取り付けられる制御基板の別の変形例を示す側面図および正面図である。
【図11】図10の制御基板の使用態様を説明するための側面図である。
【図12】(a)および(b)は第1の実施形態に係るインクタンクの主要部の他の構成例および動作の概略を説明するための模式的側面図である。
【図13】(a)および(b)は、それぞれ、インクタンクに取り付けられる制御基板のさらに他の例を示す側面図および正面図である。
【図14】第1の実施形態に係るインクタンクが取り付けられるホルダを有する記録ヘッドユニットの一例を示す斜視図である。
【図15】(a)?(c)は、第1の実施形態に係るインクタンクを図14に示すホルダに着脱する際の動作を説明するための模式的側面図である。
【図16】(a)および(b)は、第1の実施形態に係るインクタンク取り付け部分の構成の他の例を示す斜視図である。
【図17】上記第1の実施形態のインクタンクを装着して記録を行うインクジェットプリンタの外観を示す図である。
【図18】図17に示す本体カバー201を取り外して示す斜視図である。
【図19】上記インクジェットプリンタの制御構成を示すブロック図である。
【図20】上記インクジェットプリンタのフレキシブルケーブルにおける、インクタンクとの信号接続のための信号配線の構成を、各インクタンクの基板との関係で示す図である。
【図21】制御部などが設けられた上記基板の詳細を示す回路図である。
【図22】図21に示した基板の構成の変形例を示す回路図である。
【図23】上記基板のメモリーアレイに対するデータの書き込みおよび読み出しの動作をそれぞれ説明するためのタイミングチャートである。
【図24】LED101の点灯および消灯の動作をそれぞれ説明するタイミングチャートである。
【図25】本発明の一実施形態に係るインクタンクの着脱に関する制御手順を示すフローチャートである。
【図26】図25におけるインクタンク着脱処理の詳細を示すフローチャートである。
【図27】図26における装着確認制御の詳細を示すフローチャートである。
【図28】(a)は、上記インクタンクの着脱に関する制御における、総てのインクタンクについて正しく装着され、それぞれのLEDが点灯した状態を示す図であり、(b)は、上記点灯の後、本体カバーが閉じられたことにより、キャリッジが光照合のための位置へ移動することを説明する図である。
【図29】(a)?(d)は、この光照合処理を説明する図である。
【図30】(a)?(d)は、同様に、光照合処理を説明する図である。
【図31】上記実施形態にかかる記録処理を示すフローチャートである。
【図32】(a)?(c)は、本発明の他の実施形態に係るインクタンクおよびその取り付け部の構成例およびその装着動作を説明するための図である。
【図33】図32の構成の変形例を示す斜視図である。
【図34】上記他の実施形態に係る構造を有したインクタンクを搭載して記録を行うプリンタを示す斜視図である。
【図35】(a)および(b)は、それぞれ、本発明のさらに他の実施形態に係るインクタンクの模式的側面図および正面図である。
【図36】図35の構成の変形例を示す模式的側面図である。
【図37】図35の構成の他の変形例を示す模式的側面図である。
【図38】参考例に係る構造を有したプリンタを示す斜視図である。
【図39】本発明の別の実施形態に係る制御部などが設けられた基板の詳細を示す回路図である。
【図40】図39の実施形態に係るタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0150】
1、1K、1C、1M、1Y、501 インクタンク
3 支持部材
3M 支持部材操作部
5 第1係合部
6 第2係合部
7、507 インク供給口
100、100-2 基板
101、601 発光部(LED)
102、152、602 パッド(コンタクト端子)
103 制御素子(制御部)
103A 入出力制御回路入出力制御回路
103B メモリーアレイ
103C LEDドライバ
103D コマンド識別部
105、605 記録ヘッドユニット
105’、105K、105C、105M、105Y、605’ 記録ヘッド
107、607 インク導入口
150、650 ホルダ
152、652 コネクタ
154 導光性部材
155 第1係止部
156 第2係止部
157 電気接点部
158、159、159-2 配線部
201 本体カバー
206 フレキシブルケーブル
209 エンコーダスケール
210、810 第1受光部
211 エンコーダセンサ
213 操作部
214 第2発光/受光部
301 CPU
302 RAM
303 ROM
701K、701C、701M、701Y 固定タンク
811K、811C、811M、811Y 中間タンク
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とに応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。
【請求項2】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。
【請求項3】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
該液体インク収納容器からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有する記録装置と、
前記記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器と、を備える液体インク供給システムにおいて、
前記液体インク収納容器は、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、を有し、
前記受光部は、前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され、
前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出することを特徴とする液体インク供給システム。
【請求項4】
複数の液体インク収納カートリッジを互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納カートリッジに備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納カートリッジが入れ替わるように配置され前記液体インク収納カートリッジの発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する液体インク収納カートリッジ位置検出手段と、
搭載される液体インク収納カートリッジそれぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納カートリッジの前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段は前記液体インク収納カートリッジの搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納カートリッジにおいて、
液体インクを吐出することで記録を行う記録ヘッドと、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納カートリッジのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納カートリッジ位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納カートリッジ。
【請求項5】
複数の液体インク収納容器を互いに異なる位置に搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光部を一つ備え、該受光部で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記液体インク収納容器内に収納される液体インクと、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
収納される液体インクのインク色を示す色情報を保持する情報保持部と、
前記液体インク収納容器位置検出手段の前記受光部に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報とが対応した場合に前記発光部を発光させる制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。
【請求項6】
複数の液体インク収納容器が装着可能な装着部を備えて移動するキャリッジと、
共通の信号線に接続される複数の装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
前記共通の信号線に接続され色情報に係る信号を発生するための電気回路と、を備え、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装着部に装着されることにより、前記複数の装置側接点に接続可能な接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
液体の収納空間を介さずに前記受光手段に対し投光可能位置に固定して配置された前記発光部と、
前記電気回路から前記共通の信号線、前記装置側接点および前記接点を介して入力される前記色情報に係る信号と、前記情報保持部の保持する前記色情報と、に応じて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を具えたことを特徴とする液体インク収納容器。
【請求項7】
複数の液体インク収納容器を搭載して移動するキャリッジと、
該液体インク収納容器に備えられる接点と電気的に接続可能な装置側接点と、
前記キャリッジの移動により対向する前記液体インク収納容器が入れ替わるように配置され前記液体インク収納容器の発光部からの光を受光する位置検出用の受光手段を一つ備え、該受光手段で該光を受光することによって前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する液体インク収納容器位置検出手段と、
搭載される液体インク収納容器それぞれの前記接点と接続する前記装置側接点に対して共通に電気的接続し色情報に係る信号を発生するための配線を有した電気回路とを有し、前記キャリッジの位置に応じて特定されたインク色の前記液体インク収納容器の前記発光部を光らせ、その光の受光結果に基づき前記液体インク収納容器位置検出手段は前記液体インク収納容器の搭載位置を検出する記録装置の前記キャリッジに対して着脱可能な液体インク収納容器において、
前記装置側接点と電気的に接続可能な前記接点と、
少なくとも液体インク収納容器のインク色を示す色情報を保持可能な情報保持部と、
前記受光手段に投光するための光を発光する前記発光部と、
前記接点から入力される前記色情報に係る信号と前記情報保持部の保持する前記色情報とが一致した場合に、前記接点から前記色情報と共に入力される前記発光部の制御に係る信号に基づいて前記発光部の発光を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体インク収納容器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2010-01-07 
結審通知日 2010-01-14 
審決日 2010-01-26 
出願番号 特願2004-330952(P2004-330952)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (B41J)
P 1 113・ 536- YA (B41J)
P 1 113・ 85- YA (B41J)
P 1 113・ 537- YA (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門 良成  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 鈴木 秀幹
星野 浩一
登録日 2006-04-14 
登録番号 特許第3793216号(P3793216)
発明の名称 液体インク収納容器、液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジ  
代理人 江村 一宏  
代理人 長尾 達也  
代理人 溝上 哲也  
代理人 溝上 哲也  
代理人 岩原 義則  
代理人 高柳 司郎  
代理人 溝上 哲也  
代理人 大塚 康徳  
代理人 西川 恵雄  
代理人 岩原 義則  
代理人 岩原 義則  
代理人 西川 恵雄  
代理人 大塚 康徳  
代理人 江村 一宏  
代理人 江村 一宏  
代理人 山本 進  
代理人 江村 一宏  
代理人 岩原 義則  
代理人 長尾 達也  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  
代理人 山本 進  
代理人 江村 一宏  
代理人 高柳 司郎  
代理人 山本 進  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  
代理人 山本 進  
代理人 岩原 義則  
代理人 溝上 哲也  
代理人 山本 進  
代理人 溝上 哲也  

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