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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F02B
管理番号 1250327
審判番号 無効2011-800088  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-05-31 
確定日 2012-01-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第4487880号発明「インタークーラ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4487880号の請求項1ないし13に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由
第1.手続の経緯の概要

本件特許第4487880号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし13に係る発明についての出願は、平成17年7月28日に特許出願されたものであって、平成22年4月9日にその設定登録がなされたものである。
これに対し、請求人(株式会社ティラド)より平成23年5月31日付けで本件特許の無効審判の請求がなされ、当審において平成23年5月31日付けの審判請求書(以下、「審判請求書」という。)に対し平成23年6月23日付けで手続補正指令書(方式)を送付し、これに対して平成23年6月29日付けで手続補正書(方式)(以下、「手続補正書」という。)が提出され、審判請求書及び手続補正書の副本が被請求人(株式会社デンソー)に送達されたが、指定された期間内に答弁書が提出されなかったものである。

第2.請求人の主張及び提出された証拠

請求人が提出した審判請求書及び手続補正書を参酌すると、請求人は、以下の4.ないし6.の主張をしたものであるが、全体としての主張の概要は以下の1.及び2.のとおりであって、この主張を立証する証拠として以下の3.を提出した。

1.本件特許の請求項1?請求項6に記載の発明は、甲第1号証または甲第2号証の存在により、あるいはそれらと甲第3号証?甲第5号証のいずれか1以上との組み合わせにより、特許法第29条第1項第2号または3号或いは、同第2項に基づき、同法第123条の規定により無効とすべきものである。(以下、当該主張を「無効理由1」という。)

2.本件特許の請求項7?請求項13に記載の発明は、甲第7号証?甲第9号証のいずれかの存在、またはそれらと甲第6号証、甲第3号証?甲第5号証との組み合わせにより、特許法第29条第1項第2号または第3号或いは、同第2項に基づき、同法第123条の規定により無効とすべきものである。(以下、当該主張を「無効理由2」という。)

3.請求人から提出された証拠

甲第1号証 : 特開平8-313183号公報
甲第2号証 : インタークーラコア購入証明書
甲第3号証 : 過給気圧180kPa,200kPaのde/(S/Swa)-ρ比の比較
シュミレーション
甲第4号証 : 特開2003-176741号公報
甲第5号証 : 特開2004-92921号公報
甲第6号証 : 特開平6-159971号公報
甲第7号証 : 特開平10-148493号公報
甲第8号証 : 実開平2-122983号公報
甲第9号証 : 出願前公用インタークーラおよび本件発明に対応する米
出願経過

4.「3(原本では丸付き3) 本件発明の一つの細流路のdeは、4swa/lである
・・・(中略)・・・
本件発明の一つの細流路とは、インナーフィンの1/2ピッチ分、即ち図3左図でd/2分の流路(右図、網かけ部)をいう。
本件明細書の段落【0007】に定義された、細流路の相当円直径deは、一般的な流体直径と同一である。
また、【0007】では、チューブの厚みを入れて定義しているが、フィン高さh=(Th-2tt)を用いれば、そのチューブの厚みは不要である。即ち、(Th-2tt)はTh:チューブ高さと、2tt:チューブ板厚の2倍との差であり、上図でフィン高さhを意味する。
従って、チューブの厚みが不明であっても、deの計算および、de/(S/Swa)の計算が可能である。
結果、de=4swa/lである。(swaは一つの細流路断面積e・c、lはその細流路の濡れ縁長さ2c+2e)。
何故ならば、同段落【0007】の
de=4(Th-2tt-ti)×(d/2-ti)/(2(Th-2tt-ti)×(d/2-ti))の分子の (Th-2tt-ti)×(d/2-ti)は、図3において、フィンの1/2ピッチ分とチューブ内面で囲まれた細流路面積swa:(e・c)であり、
分母の(2(Th-2tt-ti)+(d/2-ti))はフィンの1/2ピッチ分の細流路の濡れ縁長さl:(2c+2e)である。
従って、de=4(Th-2tt-ti)×(d/2-ti)/(2(Th-2tt-ti)×(d/2-ti))=4swa/lとなる。
結局、本件発明の細流路の相当円直径deは一般に使用されている通常の流体直径の定義と、全く同一で、流路面積の4倍を濡れ縁長さで除した値である。

4(原本では丸付き4) 本件発明の修正相当直径de/(S/Swa)は4swa^(2)/1・sである
本件発明のチューブ内断面積Sは、N・swa、細流路の合計面積S=N・sとなる。
ここにNは細流路の数、sは上図でフィンの厚みを0とした細流路面積 (d/2)・h、swaは厚みを持つフィンの内側の細流路断面積(e・c)、lはその細流路の濡れ縁長さ(2c+2e)
よって、修正相当直径のde/(S/Swa)は、
de/(S/Swa)=(4swa/l)×(Swa/S)=(4swa/l)×(N・swa/N・s)=4swa^(2)/l・sとなる。
即ち、本件発明の修正相当直径は、de/(S/Swa)=4swa^(2)/l・sである。
以下、各甲号証の計算は、de/(S/Swa)=4swa^(2)/l・sを用いる。」(審判請求書の第5ページ第18行ないし第6ページ末行)

5.「その結果、甲第1号証のインタークーラのインナーフィンは、ti=0.08mm P=d=1.7mm H=Th-2tt=3.8mm、ストレートフィン(図1)であり、
de/(S/Swa)=1.12となる。その計算は、次のとおりである。

ti=0.08 mm P=d=1.7mm H=Th-2tt=3.8mm、
swa=(3.8-0.08)×(1.7/2-0.08)=2.86、s=3.8×1.7/2 = 3.23
l=2(3.8-0.08)+2(1.7/2-0.08)=8.98
de/(S/Swa)=4swa^(2)/l・s=4×2.86^(2)/8.98×3.23=1.12(mm)」(審判請求書の第8ページ第6行ないし第12行)

6.「さらに、甲第7号証の図1および段落【0005】・・・(中略)・・・
即ち、板厚ti=0.08mm、フィンピッチd=2mm、フィンの高さTh-2tt=3.5mm、オフセット量= 0.5mmである。これらのde/(S/Swa)を求める各数値は、甲第2号証の各数値と同一である。そのため、そのde/(S/Swa)も、甲第2号証と同一の1.31となる。
そのde/(S/Swa)の1.31 mmの値は、本件発明の請求項7?請求項9のde/(S/Swa)の各範囲に含まれる。」(審判請求書の第18ページ【図1】の下から第1行ないし第22行)

第3.無効理由の判断

1.本件特許発明

本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の特許登録時の明細書及び特許請求の範囲並びに図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
内燃機関の吸気を加圧する過給器の吸気流れ下流側に配置され、吸気と冷却流体とを熱交換させて吸気を冷却するインタークーラであって、
吸気が流れる流路を内部に形成するチューブ(10)と、前記チューブ(10)内の流路を複数の細流路(100)に分割するようにして前記チューブ(10)内に配設され、吸気と冷却流体との熱交換を促進するインナーフィン(11)とを備え、
前記インナーフィン(11)は、前記細流路(100)を分割する壁面(110)が吸気の流れ方向に直線的に延びているストレートフィンであり、且つ過給気圧が200kPa以上となるインタークーラにおいて、
1つの前記チューブ(10)内の断面積をSとし、1つの前記チューブ(10)における前記細流路(100)の合計流路面積をSwaとし、1つの前記細流路(100)の相当円直径をde(単位:mm)としたとき、
de/(S/Swa)が、0.2?7.5であることを特徴とするインタークーラ。
【請求項2】
de/(S/Swa)が、0.3?4.5であることを特徴とする請求項1に記載のインタークーラ。
【請求項3】
de/(S/Swa)が、0.5?3.5であることを特徴とする請求項1に記載のインタークーラ。
【請求項4】
内燃機関の吸気を加圧する過給器の吸気流れ下流側に配置され、吸気と冷却流体とを熱交換させて吸気を冷却するインタークーラであって、
吸気が流れる流路を内部に形成するチューブ(10)と、前記チューブ(10)内の流路を複数の細流路(100)に分割するようにして前記チューブ(10)内に配設され、吸気と冷却流体との熱交換を促進するインナーフィン(11)とを備え、
前記インナーフィン(11)は、前記細流路(100)を分割する壁面(110)が吸気の流れ方向に直線的に延びているストレートフィンであり、且つ前記チューブ(10)および前記インナーフィン(11)が銅または銅合金からなるインタークーラにおいて、
1つの前記チューブ(10)内の断面積をSとし、1つの前記チューブ(10)における前記細流路(100)の合計流路面積をSwaとし、1つの前記細流路(100)の相当円直径をde(単位:mm)としたとき、
de/(S/Swa)が、0.2?7.5であることを特徴とするインタークーラ。
【請求項5】
de/(S/Swa)が、0.3?4.5であることを特徴とする請求項4に記載のインタークーラ。
【請求項6】
de/(S/Swa)が、0.5?3.5であることを特徴とする請求項4に記載のインタークーラ。
【請求項7】
内燃機関の吸気を加圧する過給器の吸気流れ下流側に配置され、吸気と冷却流体とを熱交換させて吸気を冷却するインタークーラであって、
吸気が流れる流路を内部に形成するチューブ(10)と、前記チューブ(10)内の流路を複数の細流路(100)に分割するようにして前記チューブ(10)内に配設され、吸気と冷却流体との熱交換を促進するインナーフィン(11)とを備え、
前記インナーフィン(11)は、前記細流路(100)を分割する壁面(110)が吸気の流れ方向に沿って千鳥状に配置されているオフセットフィンであり、且つ過給気圧が200kPa以上となるインタークーラにおいて、
1つの前記チューブ(10)内の断面積をSとし、1つの前記チューブ(10)における前記細流路(100)の合計流路面積をSwaとし、1つの前記細流路(100)の相当円直径をde(単位:mm)としたとき、
de/(S/Swa)が、0.4?9.5であることを特徴とするインタークーラ。
【請求項8】
de/(S/Swa)が、0.6?7.2であることを特徴とする請求項7に記載のインタークーラ。
【請求項9】
de/(S/Swa)が、0.8?6.2であることを特徴とする請求項7に記載のインタークーラ。
【請求項10】
内燃機関の吸気を加圧する過給器の吸気流れ下流側に配置され、吸気と冷却流体とを熱交換させて吸気を冷却するインタークーラであって、
吸気が流れる流路を内部に形成するチューブ(10)と、前記チューブ(10)内の流路を複数の細流路(100)に分割するようにして前記チューブ(10)内に配設され、吸気と冷却流体との熱交換を促進するインナーフィン(11)とを備え、
前記インナーフィン(11)は、前記細流路(100)を分割する壁面(110)が吸気の流れ方向に沿って千鳥状に配置されているオフセットフィンであり、且つ前記チューブ(10)および前記インナーフィン(11)が銅または銅合金からなるインタークーラにおいて、
1つの前記チューブ(10)内の断面積をSとし、1つの前記チューブ(10)における前記細流路(100)の合計流路面積をSwaとし、1つの前記細流路(100)の相当円直径をde(単位:mm)としたとき、
de/(S/Swa)が、0.4?9.5であることを特徴とするインタークーラ。
【請求項11】
de/(S/Swa)が、0.6?7.2であることを特徴とする請求項10に記載のインタークーラ。
【請求項12】
de/(S/Swa)が、0.8?6.2であることを特徴とする請求項10に記載のインタークーラ。
【請求項13】
前記インナーフィン(11)の板厚は、0.15mm未満であることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか1つに記載のインタークーラ。」

2.当審の判断

2.-1 無効理由1
(1)本件特許の請求項3に係る発明(以下、「本件特許発明3」という。)について
(1)-1 甲各号証記載の発明
(1)-1-1 甲第1号証記載の発明
甲第1号証には、図面とともに、例えば次の事項が記載されている。

ア.「【0021】
【実施例】次に、この発明の熱交換器を、空冷式のインタークーラに適用した実施例に基づいて説明する。
【0022】〔第1実施例の構成〕図1ないし図6はこの発明の第1実施例を示したもので、図1はインタークーラ用インナーフィンを示した図で、図2は空冷式のインタークーラを示した図で、図3はその空冷式のインタークーラの主要部を示した図である。」(段落【0021】及び【0022】)

イ.「【0023】空冷式のインタークーラ1は、例えば自動車のエンジンルーム内の前方に装着され、過給機によって高温高圧となった過給気を冷却風(大気)と熱交換させて冷却する空冷式の積層型熱交換器である。この空冷式のインタークーラ1は、アルミニウムを主体とする金属合金製の成形プレートを2枚対向させて接合することによって偏平管形状に形成された偏平チューブ2とアウターフィン3とを交互に複数積層して構成されている。
【0024】アウターフィン3は、過給機から供給される過給気の高放熱量化(熱交換効率の向上化)を図るための正弦波形状のコルゲートフィンである。このアウターフィン3には、熱交換効率を更に向上させるために多数のルーバー4が形成されている。」(段落【0023】及び【0024】)

ウ.「【0025】偏平チューブ2は、両端部側に入口タンク部5および出口タンク部6を有し、これらの間に入口タンク部5と出口タンク部6とを連通する熱交換部7を有している。入口タンク部5は、過給機(図示せず)に連結される吸入管8を接合している。また、出口タンク部6は、エンジンの吸気管(図示せず)に連結される吐出管9を接合している。なお、複数の偏平チューブ2、複数のアウターフィン3、吸入管8および吐出管9は、ろう付け等の手段を用いて接合されている。」(段落【0025】)

エ.「【0026】そして、偏平チューブ2の熱交換部7内には、インナーフィン10が配設されており、過給機から供給される過給気の高放熱量化(熱交換効率の向上化)および過給気の低圧力損失化を図っている。このインナーフィン10は、板厚が0.08mmのアルミニウムを主体とする金属合金板よりなり、過給気の流れ方向に対して直交する方向に矩形波形状となるように熱交換部7内に挿入されている。
【0027】インナーフィン10は、本発明の熱交換器用コルゲートフィンであって、並設された側壁部11、12、隣設する側壁部11、12の一端部(上端部)同士を連結する天壁部13、隣設する側壁部11、12の他端部(下端部)同士を連結する底壁部14から構成されている。そして、インナーフィン10は、側壁部11、12、天壁部13および底壁部14を偏平チューブ2の幅方向に連続的に多数設けることによって、矩形波形状に形成されている。なお、隣設する側壁部11、12およびこれらの側壁部11、12の一端部(上端部)同士を連結する天壁部13によって、インナーフィン10の山部15が構成される。」(段落【0026】及び【0027】)

オ.「【0028】側壁部11、12は、偏平チューブ2の幅方向に延長され、所定のフィンピッチP(例えば1.7mm)で交互に配設されている。この側壁部11、12は、インナーフィン10の高さ方向に所定の間隔で並設された縦壁部であって、これらにより熱交換部7内を偏平チューブ2の幅方向に複数の流体通路に区画している。なお、インナーフィン10による熱交換性能(放熱性能)を更に向上させるために側壁部11、12に多数のルーバーを形成しても良い。
【0029】天壁部13および底壁部14は、偏平チューブ2の幅方向に延長され、偏平チューブ2の各成形プレートの内側面にそれぞれ接触してろう付け等の手段を用いて接合されている。なお、インナーフィン10(側壁部11、12、天壁部13、底壁部14)のフィン幅Bは例えば80mm?120mmで、インナーフィン10(側壁部11、12)の高さHは例えば3.8mmである。」(段落【0028】及び【0029】)

カ.「【0043】過給機の作動によって高温高圧となった過給気は、吸入管8から複数の偏平チューブ2の入口タンク部5を通って熱交換部7内に流入し、インナーフィン10の多数の山部15および複数のスリット16、17により攪乱される。そして、過給気は、インナーフィン10の側壁部11、12から天壁部13および底壁部14、偏平チューブ2、アウターフィン3を伝って冷却風へ放熱されることにより冷却され、出口タンク部6および吐出管9を通ってエンジンの吸気管内に吸入される。」(段落【0043】)

以上、ア.ないしカ.及び図面の記載から、甲第1号証には以下のことが記載されていることが分かる。

キ.上記イ.、ウ.及びカ.の記載から、過給気は過給機の作動によって高温高圧にされたものであるから、過給機はエンジンの吸気を加圧するものであることが分かる。

ク.上記イ.ないしエ.及びカ.の記載から、過給機とインタークーラ1とは吸入管8で連結され、インタークーラ1は過給機から過給気が供給されるものであるから、インタークーラ1は、過給機の吸気流れ下流側に配置されていることが分かる。

ケ.上記ウ.及びカ.の記載から、過給気は、吸入管8から偏平チューブ2の熱交換部7内に流入し、吐出管9を通ってエンジンの吸気管内に吸入されることから、偏平チューブ2は、過給気が流れる流路を内部に形成していることが分かる。

コ.上記イ.及びエ.の記載から、インナーフィン10は、過給機から供給される過給気の高放熱量化(熱交換効率の向上化)を図っているものであるから、インナーフィン10は、過給気と冷却風との熱交換を促進するものであることが分かる。

サ.上記エ.及びオ.並びに図1の記載から、インナーフィン10は熱交換器用コルゲートフィンであって、流体通路を区画するインナーフィン10の側壁部11、12が過給気の流れ方向に直線的に延びていることが分かる。

したがって、上記ア.ないしサ.を総合すると、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)。

「エンジンの吸気を加圧する過給機の吸気流れ下流側に配置され、過給気と冷却風とを熱交換させて過給気を冷却するインタークーラ1であって、
過給気が流れる流路を内部に形成する偏平チューブ2と、前記偏平チューブ2内の流路を複数の流体通路に区画するようにして前記偏平チューブ2内に配設され、過給気と冷却風との熱交換を促進するインナーフィン10とを備え、
前記インナーフィン10は、前記流体通路を区画する側壁部11、12が過給気の流れ方向に直線的に延びている熱交換器用コルゲートフィンであるインタークーラ1において、
インナーフィン10の板厚が0.08mm、フィンピッチが1.7mm、高さが3.8mmであるインタークーラ1。」

(1)-1-2 甲第4号証記載の発明
甲第4号証には、図面とともに、例えば次の事項が記載されている。

ア.「【0018】過給装置60は、過給圧を変更可能な例えばVN(可変ノズル:Variable Nozzle)ターボなどの可変ターボチャージャーであり、排気タービン61、吸気タービン62およびターボアクチュエータ63を有している。排気タービン61は排気管31の途中に設置され、排気の流れにより回転駆動される。吸気タービン62は吸気管21の途中に設置されている。吸気タービン62は、排気タービン61の回転にともなって回転駆動され、吸気管21を流れる吸気を過給する。ターボアクチュエータ63は、排気タービン61の本体とこの本体が収容されているタービンケースとの間に形成される隙間の間隔を可変する。排気タービン61の本体とタービンケースとの間隔が可変されることにより、過給される吸気の過給圧が変更される。過給装置60の吸気タービン62により過給された吸気は、インタークーラ24で冷却された後、エンジン本体10のシリンダ11へ供給される。」(段落【0018】)

イ.「【0035】ここで、本実施例の高負荷状態における制御が実施される際に、実際に適用したデータを以下に示す。本願の発明者は、鋭意研究の結果、以下に示した各種のデータによって上記の結果が得られることを発見した。
(設定条件)
(1)暖機運転終了後におけるエンジン本体10の回転数を2600rpmとする。
(2)エンジン本体10に加えられる負荷を50%とする。
(3)VVT14による吸気弁12の閉弁時期の遅角をABDC(After Bottom Dead Center)50°とする。なお、閉弁時期を遅角しない場合、ABDC30°である。
(4)過給装置60による過給圧を210kPaとする。なお、吸気弁12の閉弁時期を遅角しない場合、過給圧の設定値は154kPaである。
(5) EGR率を30%とする。
(6) 燃料の噴射時期をBTDC(Before Top Dead Center)1°とする。」(段落【0035】)

以上、ア.及びイ.並びに図面の記載から、甲第4号証には以下のことが記載されていることが分かる。

ウ.上記ア.及びイ.並びに図1の記載から、過給装置60による過給圧が210kPaで、過給装置60の吸気タービン62により過給された吸気は、インタークーラ24で冷却された後、エンジン本体10のシリンダ11へ供給されることから、インタークーラ24に供給される過給された吸気の過給圧は210kPaであることが分かる。

したがって、上記ア.ないしウ.を総合すると、甲第4号証には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「甲第4号証記載の発明」という。)。

「インタークーラ24に供給する過給された吸気の過給圧を210kPaとする。」

(1)-2 対比
本件特許発明3と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明における「エンジン」は、その機能及び構造又は技術的意義からみて、本件特許発明3における「内燃機関」に相当し、以下同様に、「過給機」は「過給器」に、「過給気」は「吸気」に、「冷却風」は「冷却流体」に、「偏平チューブ2」は「チューブ(10)」に、「流体通路」は「細流路(100)」に、「区画する」は「分割する」に、「インナーフィン10」は「インナーフィン(11)」に、「側壁部11、12」は「壁面(110)」に、「インタークーラ1」は「インタークーラ」に、それぞれ相当する。また、甲第1号証記載の発明における「熱交換器用コルゲートフィン」は、側壁部11、12が過給気の流れ方向に直線的に延びているから、本件特許発明3における「ストレートフィン」に相当する。

してみると、本件特許発明3と甲第1号証記載の発明とは、
「内燃機関の吸気を加圧する過給器の吸気流れ下流側に配置され、吸気と冷却流体とを熱交換させて吸気を冷却するインタークーラであって、
吸気が流れる流路を内部に形成するチューブ(10)と、前記チューブ(10)内の流路を複数の細流路(100)に分割するようにして前記チューブ(10)内に配設され、吸気と冷却流体との熱交換を促進するインナーフィン(11)とを備え、
前記インナーフィン(11)は、前記細流路(100)を分割する壁面(110)が吸気の流れ方向に直線的に延びているストレートフィンであるインタークーラ。」の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。

<相違点1>
本件特許発明3においては、過給気圧が200kPa以上となるインタークーラであるのに対し、甲第1号証記載の発明においては、そのように特定されていない点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
本件特許発明3においては、1つの前記チューブ(10)内の断面積をSとし、1つの前記チューブ(10)における前記細流路(100)の合計流路面積をSwaとし、1つの前記細流路(100)の相当円直径をde(単位:mm)としたとき、de/(S/Swa)が、0.5?3.5であるのに対し、甲第1号証記載の発明においては、そのようになっているか否か不明である点(以下、「相違点2」という。)。

(1)-3 判断
上記各相違点について検討する。
ア.相違点1について
甲第4号証記載の発明における「インタークーラ24」は、その機能及び構造又は技術的意義からみて、本件特許発明3における「インタークーラ」に相当し、同様に、「過給圧」は「過給気圧」に相当する。
してみると、甲第4号証記載の発明は、本件特許発明3の用語を用いると、「インタークーラに供給する過給された吸気の過給気圧を210kPaとする。」と言い換えることができる。
そして、甲第1号証記載の発明と甲第4号証記載の発明とは、ともにインタークーラの技術分野に属するから、甲第1号証記載の発明において、甲第4号証記載の発明を適用して、相違点1に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ.相違点2について
イ.-1 相当円直径deについて
本件特許の図3において、細流路100における、図3の左右方向の長さをe、インナーフィン11の高さ方向(図3の上下方向)の長さをcとし、細流路100の断面積をswaとした場合、swa=e×cなる。
また、細流路100の濡れ縁の長さをlと定義した場合、l=2×(e+c)となる。

ここで、本件特許の明細書の段落【0007】で定義された相当円直径de=4×(Th-2×tt-ti)×(d/2-ti)/〔2×((Th-2×tt-ti)+(d/2-ti))〕に関し、上記した細流路100における、長さe及びc並びに細流路100の断面積swaを用いて変形すると、相当円直径de=4×c×e/2×(c+e)=4×swa/lと表すことができる。

なお、この相当円直径deの数式変形について、請求人も審判請求書(第5ページ第18行ないし第6ページ第23行)において同様の主張をしているが、被請求人からは何ら反論がなされていない。

イ.-2 de/(S/Swa)について
ここで、チューブ内に、高さがh、フィンピッチがdであるインナーフィンが配設され、チューブにおける細流路の合計流路面積Swaが、上記細流路の断面積swaのN個分に対応しているとした場合、チューブにおける細流路の合計流路面積Swaは、Swa=N×swaと表すことができる。
また、インナーフィンの厚みを0とした細流路面積をsとした場合、s=(d/2)×hとなるから、チューブ内の断面積Sは、S=N×((d/2)×h)と表すことができる。
したがって、上記イ.-1で検討したde=4×swa/lを用いると、
de/(S/Swa)=4×swa/l×(Swa/S)
=4×swa^(2)/(l×((d/2)×h))と表すことができる。

そして、このde/(S/Swa)について、請求人も審判請求書(第6ページ第24行ないし末行)において同様の主張をしているが、被請求人からは何ら反論がなされていない。なお、審判請求書の第6ページ第25行ないし第26行に記載された「チューブ内断面積Sは、N・swa、細流路の合計面積S=N・sとなる。」は、後続の計算式展開を参酌すると、「チューブ内断面積Sは、N・s、細流路の合計面積Swa=N・swaとなる。」の誤記と認める。

イ.-3 相違点2の判断
甲第1号証記載の発明では、インナーフィン10の板厚は0.08mm、フィンピッチは1.7mm、高さは3.8mmであるから、上記イ.-1及びイ.-2で検討したswa、s、l、de/(S/Swa)は、それぞれ以下のとおりとなる。(なお、以下の計算では小数点第3位を四捨五入する。)
swa=(3.8-0.08)×((1.7/2)-0.08)=2.86
s=(1.7/2)×3.8=3.23
l=2×((3.8-0.08)+(1.7/2)-0.08)=8.98
よって、de/(S/Swa)=4×swa^(2)/(l×((d/2)×h))
=4×2.86^(2)/(8.98×3.23)
=1.13

なお、このde/(S/Swa)の算出結果について、請求人も審判請求書(第8ページ第6行ないし第12行)において同様の主張をしているが、被請求人からは何ら反論がなされていない。

したがって、甲第1号証記載の発明のde/(S/Swa)=1.13は、本件特許発明3のde/(S/Swa)=0.5?3.5の範囲内に含まれるものであるから、上記相違点2は実質的な相違点ではない。

そして、本件特許発明3は、全体としてみても、甲第1及び4号証記載の発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

ウ.まとめ
以上のとおり、本件特許発明3は、甲第1及び4号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件特許発明1及び2」という。)について
本件特許発明3におけるde/(S/Swa)の数値範囲は、本件特許発明1及び2におけるde/(S/Swa)の数値範囲よりも狭く包含されており、本件特許発明3は、本件特許発明1及び2よりも下位概念化されたものである。
そうすると、本件特許発明1及び2よりも下位概念化された本件特許発明3が、上記(1)で記載したとおり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないのと同様の理由により、本件特許発明1及び2は、甲第1及び4号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)本件特許の請求項6に係る発明(以下、「本件特許発明6」という。)について
(3)-1 甲各号証記載の発明
(3)-1-1 甲第5号証記載の発明
甲第5号証には、図面とともに、例えば次の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、過給されたエンジン燃焼用空気を冷却するインタークーラに用いて好適な熱交換器に関するものである。」(段落【0001】)

イ.「【0021】
コア部130は、フィン131およびチューブ132が複数積層され、最外方フィン131の更に外方にサイドプレート133が設けられ、更にチューブ132の長手方向両端部にコアプレート134が設けられたものである。上記各部材は、一体でろう付けされコア部130を形成している。尚、チューブ132内には、伝熱面積を拡大すると共に流通す
る空気に対して乱流効果を与えて熱伝達を向上させるためのインナーフィンが挿入されている。」(段落【0021】)

ウ.「【0023】
ここで、本発明の特徴部として、各インタークーラ100および200を形成する各部材の材質が異なるようにしている。具体的には、第1インタークーラ100を形成する各部材は、銅材あるいは銅系材(以下、銅材)から成り、第2インタークーラ200を形成する各部材は、アルミニウム材あるいはアルミニウム系材(以下、アルミ材)から成るようにしている。銅材は、アルミ材に比べて温度に対する強度特性、例えば引張り強さが図3に示すように優れている。」(段落【0023】)

エ.「【0026】
しかしながら、本発明のように第1インタークーラ100と第2インタークーラ200とを有するものにおいては、それぞれのインタークーラ100、200に流入する空気温度に応じて材質設定が可能であり、コスト増加を抑えて耐熱性を向上させることができる。
【0027】
即ち、流入空気温度の高い第1インタークーラ100の材質を引張り強さがアルミ材よりも優れる銅材としているので、耐熱性を向上できることになり、コスト増加は第1インタークーラ100の分だけで済む。尚、銅材による強度アップ分に対して、各部材の板厚を更に調整することで最適な強度確保が可能であり、コスト増加も更に抑えることができる。」(段落【0026】及び【0027】)

以上、ア.ないしエ.並びに図面の記載から、甲第5号証には以下のことが記載されていることが分かる。

オ.第1インタークーラ100を形成する部材であるチューブ132及びインナーフィンを、アルミ材に比べて温度に対する強度特性に優れた銅材にて構成することが分かる。

したがって、上記ア.ないしオ.を総合すると、甲第5号証には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「甲第5号証記載の発明」という。)。

「チューブ132およびインナーフィンをアルミ材に比べて温度に対する強度特性に優れた銅材で構成する。」

(3)-2 対比
本件特許発明6と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明における「エンジン」は、その機能及び構造又は技術的意義からみて、本件特許発明6における「内燃機関」に相当し、以下同様に、「過給機」は「過給器」に、「過給気」は「吸気」に、「冷却風」は「冷却流体」に、「偏平チューブ2」は「チューブ(10)」に、「流体通路」は「細流路(100)」に、「区画する」は「分割する」に、「インナーフィン10」は「インナーフィン(11)」に、「側壁部11、12」は「壁面(110)」に、「インタークーラ1」は「インタークーラ」に、それぞれ相当する。また、甲第1号証記載の発明における「熱交換器用コルゲートフィン」は、側壁部11、12が過給気の流れ方向に直線的に延びているから、本件特許発明6における「ストレートフィン」に相当する。

してみると、本件特許発明6と甲第1号証記載の発明とは、
「内燃機関の吸気を加圧する過給器の吸気流れ下流側に配置され、吸気と冷却流体とを熱交換させて吸気を冷却するインタークーラであって、
吸気が流れる流路を内部に形成するチューブ(10)と、前記チューブ(10)内の流路を複数の細流路(100)に分割するようにして前記チューブ(10)内に配設され、吸気と冷却流体との熱交換を促進するインナーフィン(11)とを備え、
前記インナーフィン(11)は、前記細流路(100)を分割する壁面(110)が吸気の流れ方向に直線的に延びているストレートフィンであるインタークーラ。」の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。

<相違点1>
本件特許発明6においては、チューブ(10)およびインナーフィン(11)が銅または銅合金からなるのに対し、甲第1号証記載の発明においては、そのように特定されていない点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
本件特許発明6においては、1つの前記チューブ(10)内の断面積をSとし、1つの前記チューブ(10)における前記細流路(100)の合計流路面積をSwaとし、1つの前記細流路(100)の相当円直径をde(単位:mm)としたとき、de/(S/Swa)が、0.5?3.5であるのに対し、甲第1号証記載の発明においては、そのようになっているか否か不明である点(以下、「相違点2」という。)。

(3)-3 判断
上記相違点について検討する。
ア.相違点1について
甲第5号証記載の発明における「チューブ132」は、その機能及び構造又は技術的意義からみて、本件特許発明6における「チューブ(10)」に相当し、以下同様に、「インナーフィン」は「インナーフィン(11)」に、「銅材」は「銅」に、それぞれ相当する。
してみると、甲第5号証記載の発明は、本件特許発明6の用語を用いると、「チューブおよびインナーフィンをアルミ材に比べて温度に対する強度特性に優れた銅で構成する。」と言い換えることができる。
そして、甲第1号証記載の発明と甲第5号証記載の発明とは、ともにインタークーラの技術分野に属するから、甲第1号証記載の発明において、甲第5号証記載の発明を適用して、相違点1に係る本件特許発明6の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ.相違点2について
上記(1)-3のイ.相違点2についてで検討したとおり、
甲第1号証記載の発明のde/(S/Swa)は、de/(S/Swa)=1.13となり、本件特許発明6のde/(S/Swa)=0.5?3.5の範囲内に含まれるものであるから、上記相違点2は実質的な相違点ではない。

そして、本件特許発明6は、全体としてみても、甲第1及び5号証記載の発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

ウ.まとめ
以上のとおり、本件特許発明6は、甲第1及び5号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)本件特許の請求項4及び5に係る発明(以下、「本件特許発明4及び5」という。)について
本件特許発明6におけるde/(S/Swa)の数値範囲は、本件特許発明4及び5におけるde/(S/Swa)の数値範囲よりも狭く包含されており、本件特許発明6は、本件特許発明4及び5よりも下位概念化されたものである。
そうすると、本件特許発明4及び5よりも下位概念化された本件特許発明6が、上記(3)で記載したとおり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないのと同様の理由により、本件特許発明4及び5は、甲第1及び5号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)無効理由1のむすび
以上のとおり、本件特許発明1ないし6についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

2.-2 無効理由2
(1)本件特許の請求項9に係る発明(以下、「本件特許発明9」という。)について
(1)-1 甲各号証記載の発明
(1)-1-1 甲第6号証記載の発明
甲第6号証には、図面とともに、例えば次の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば自動車のインタークーラ等に使用されるアルミニウム製の熱交換器に関するものである。」(段落【0001】)

イ.「【0010】図1と図2において、この発明によるアルミニウム製熱交換器は、例えば自動車のインタークーラ(20)として使用されるものであり、これは平面よりみて波形のインナーフィン(10)が収められた並列状の垂直偏平管(2) および隣り合う垂直偏平管(2) 同志の間に介在されかつ正面よりみて波形のアウターフィン(3) よりなるコア部(1) と、上下両ヘッダ(4)(5)と、左右両外側に配置されたサイドプレート(13)(13)とによって構成されている。」(段落【0010】)

ウ.「【0014】図3に示すように、この実施例では、インナーフィン(10)として、いわゆるマルチエントリー・フィンが用いられており、これは平面よりみて波形の凹凸部(17)(18)の列(19)がフィン(10)の長さ方向に並列状にかつ相互に隣り合うもの同志が半ピッチずつずれた状態に形成せられているものである。」(段落【0014】)

エ.「【0025】上記インタークーラ(20)の流体導入管(22)から、加圧されたチャージ・エアが、上部ヘッダ(4) 内に導入されると、チャージ・エアは上部ヘッダ(4) より多数の偏平管(2) 内に分かれて流れ込み、各偏平管(2) 内を通過する間に、管壁およびインナーフィン(10)と接触し、さらにアウターフィン(3) を介して外部空気と熱交換され、冷却される。冷却後のチャージ・エアは下部ヘッダ(5) を経て流体排出管(23)より排出される。この場合、偏平管(2) の内側に、マルチエントリー・フィンよりなるインナーフィン(10)が収められているので、熱の伝達が非常に速やかであり、従って放熱量が多く、冷却性能がすぐれている。そのうえ、インタークーラ(20)は、コンパクトであってその寸法が小さくてすみ、従って自動車の車体等への取付けに広いスペースを要せず、自動車エンジン部の高性能化およびコンパクト化に寄与し得るものである。」(段落【0025】)

以上、ア.ないしエ.及び図面の記載から、甲第6号証には以下のことが記載されていることが分かる。

オ.上記エ.の記載から、加圧されたチャージ・エアがインタークーラ(20)に導入されることから、エンジンの吸気を加圧する過給機があり、その過給機の吸気流れ下流側にインタークーラ(20)が配置されていることが分かる。

カ.上記イ.及びエ.の記載から、加圧されたチャージ・エアは、上部ヘッダ(4) 内に導入されると、多数の偏平管(2) 内に分かれて流れ込み、冷却後のチャージ・エアは下部ヘッダ(5) を経て流体排出管(23)より排出されことから、偏平管(2)は、チャージ・エアが流れる流路を内部に形成していることが分かる。

キ.上記イ.ないしエ.及びカ.並びに図1及び3の記載から、インナーフィン(10)は、偏平管(2)内の流路を複数の細流路に分割するようにして偏平管(2)内に収められていることが分かる。

ク.上記エ.の記載から、インナーフィン(10)が収められることによって、熱の伝達を非常に速やかにして、冷却性能をすぐれたものにしているから、インナーフィン(10)は、チャージ・エアと外部空気との熱交換を促進するものであることが分かる。

ケ.上記ウ.、エ.及びキ.並びに図1及び3の記載から、インナーフィン(10)はマルチエントリー・フィンであって、細流路を分割するインナーフィン(10)の壁面がチャージ・エアの流れ方向に沿って千鳥状に配置されていることが分かる。

したがって、上記ア.ないしケ.を総合すると、甲第6号証には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「甲第6号証記載の発明」という。)。

「エンジンの吸気分かるを加圧する過給器分かるの吸気流れ下流側に配置され分かる、チャージ・エアと外部空気とを熱交換させてチャージ・エアを冷却するインタークーラ(20)であって、
チャージ・エアが流れる流路を内部に形成する偏平管(2)と、前記偏平管(2)内の流路を複数の細流路に分割するようにして前記偏平管(2)内に収められ、チャージ・エアと外部空気との熱交換を促進するインナーフィン(10)とを備え、
前記インナーフィン(10)は、前記細流路を分割する壁面が吸気の流れ方向に沿って千鳥状に配置されているマルチエントリー・フィンであるインタークーラ(20)。」

(1)-1-2 甲第7号証記載の発明
甲第7号証には、図面とともに、例えば次の事項が記載されている。

ア.「【0002】
【従来の技術】・・・(中略)・・・また、インタークーラのインナーフィンとして用いる場合の如く熱交換媒体が気体の場合には、放熱面積をより大きくする必要があるためフィンピッチPを小さくしていた。図9?図11は、この場合に考えられるオフセットフィンの斜視図および正面図並びに横断面図である。」(段落【0002】)

イ.「【0005】
【発明の実施の形態】・・・(中略)・・・このようにしてなるオフセットフィンは、図1において波の稜線1と平行な方向に熱交換媒体9が流通する。
【0006】
【実施例】図1?図3における実施例は、板厚が0.08mmの金属条材を順送りプレスにより連続的に形成したものを、適宜長さに切断してなる。そのフィンピッチPは2mmであり、フィンの高さHが 3.5mm、立ち上がり部オフセット面7,立ち下がり部オフセット面8の夫々のオフセット量が 0.5mmである。・・・(後略)・・・」(段落【0005】及び【0006】)

以上、ア.及びイ.並びに図面の記載から、甲第7号証には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「甲第7号証記載の発明」という。)。

「インタークーラのインナーフィンとして、板厚が0.08mm、フィンピッチが2mm、高さが3.5mmのオフセットフィンを用いる。」

(1)-2 対比
本件特許発明9と甲第6号証記載の発明とを対比すると、甲第6号証記載の発明における「エンジン」は、その機能及び構造又は技術的意義からみて、本件特許発明9における「内燃機関」に相当し、以下同様に、「チャージ・エア」は「吸気」に、「外部空気」は「冷却流体」に、「偏平管(2)」は「チューブ(10)」に、「収められ」は「配設され」に、「インナーフィン(10)」は「インナーフィン(11)」に、「インタークーラ(20)」は「インタークーラ」に、それぞれ相当する。また、甲第6号証記載の発明における「マルチエントリー・フィン」は、細流路を分割する壁面がチャージ・エアの流れ方向に沿って千鳥状に配置されているから、本件特許発明9における「オフセットフィン」に相当する。

してみると、本件特許発明9と甲第6号証記載の発明とは、
「内燃機関の吸気を加圧する過給器の吸気流れ下流側に配置され、吸気と冷却流体とを熱交換させて吸気を冷却するインタークーラであって、
吸気が流れる流路を内部に形成するチューブ(10)と、前記チューブ(10)内の流路を複数の細流路(100)に分割するようにして前記チューブ(10)内に配設され、吸気と冷却流体との熱交換を促進するインナーフィン(11)とを備え、
前記インナーフィン(11)は、前記細流路(100)を分割する壁面(110)が吸気の流れ方向に沿って千鳥状に配置されているオフセットフィンであるインタークーラ。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件特許発明9においては、過給気圧が200kPa以上となるインタークーラであるのに対し、甲第6号証記載の発明においては、そのように特定されていない点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
本件特許発明9においては、1つの前記チューブ(10)内の断面積をSとし、1つの前記チューブ(10)における前記細流路(100)の合計流路面積をSwaとし、1つの前記細流路(100)の相当円直径をde(単位:mm)としたとき、de/(S/Swa)が、0.8?6.2であるのに対し、甲第6号証記載の発明においては、そのようになっているか否か不明である点(以下、「相違点2」という。)。

(1)-3 判断
上記相違点について検討する。
ア.相違点1について
甲第4号証記載の発明は、上記2.-1の(1)-1-2で記載したとおりである。ここで、甲第4号証記載の発明における「インタークーラ24」は、その機能及び構造又は技術的意義からみて、本件特許発明9における「インタークーラ」に相当し、同様に、「過給圧」は「過給気圧」に相当する。
してみると、甲第4号証記載の発明は、本件特許発明9の用語を用いると、「インタークーラに供給する過給された吸気の過給気圧を210kPaとする。」と言い換えることができる。
そして、甲第6号証記載の発明と甲第4号証記載の発明とは、ともにインタークーラの技術分野に属するから、甲第6号証記載の発明において、甲第4号証記載の発明を適用して、相違点1に係る本件特許発明9の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ.相違点2について
甲第6号証記載の発明と甲第7号証記載の発明とは、ともにオフセットフィンを用いたインタークーラの技術分野に属するから、甲第6号証の記載に発明において、甲第7号証記載の発明のオフセットフィンを採用することを阻害する特段の要因は見いだせない。
そこで、第6号証記載の発明に、甲第7号証記載の発明のオフセットフィンを採用した場合における、de/(S/Swa)について検討する。
de/(S/Swa)は、上記2.-1における(1)-3のイ.-1及びイ.-2で検討したとおり、
de/(S/Swa)=4×swa/l×Swa/S
=4×swa^(2)/(l×((d/2)×h))と表すことができる。

そして、甲第7号証記載の発明では、インナーフィンの板厚は0.08mm、フィンピッチは2mm、高さは3.5mmであるから、上記2.-1における(1)-3のイ.-1及びイ.-2で検討したswa、s、l、de/(S/Swa)は、それぞれ以下のとおりとなる。(なお、以下の計算では少数第3位を四捨五入する。)

swa=(3.5-0.08)×((2/2)-0.08)=3.15
s=(2/2)×3.5=3.5
l=2×((3.5-0.08)+(2/2)-0.08)=8.68
よって、de/(S/Swa)=4×swa^(2)/(l×((d/2)×h))
=4×3.15^(2)/(8.68×3.5)
=1.31

なお、このde/(S/Swa)の算出結果について、請求人も審判請求書(第18ページ【図1】の下から第1行ないし第22行)において同様の主張をしているが、被請求人からは何ら反論がなされていない。

したがって、甲第6号証記載の発明に、甲第7号証記載の発明のオフセットフィンを採用した場合における、de/(S/Swa)=1.31は、本件特許発明9のde/(S/Swa)=0.8?6.2の範囲内に含まれるものであって、また、甲第6号証記載の発明において、甲第7号証記載の発明のオフセットフィンを採用することに特段の阻害要因がないことは前述のとおりであるから、甲第6号証記載の発明に、甲第7号証記載の発明を採用して、相違点2に係る本件特許発明9の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本件特許発明9は、全体としてみても、甲第4、6及び7号証記載の発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

ウ.まとめ
以上のとおり、本件特許発明9は、甲第4、6及び7号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)本件特許の請求項7及び8に係る発明(以下、「本件特許発明7及び8」という。)について
本件特許発明9におけるde/(S/Swa)の数値範囲は、本件特許発明7及び8におけるde/(S/Swa)の数値範囲よりも狭く包含されており、本件特許発明9は、本件特許発明7及び8よりも下位概念化されたものである。
そうすると、本件特許発明7及び8よりも下位概念化された本件特許発明9が、上記(1)で記載したとおり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないのと同様の理由により、本件特許発明7及び8は、甲第4、6及び7号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)本件特許の請求項12を引用する請求項13に係る発明(以下、「本件特許発明13」という。)について
(3)-1 対比
本件特許発明13と甲第6号証記載の発明とを対比すると、甲第6号証記載の発明における「エンジン」は、その機能及び構造又は技術的意義からみて、本件特許発明13における「内燃機関」に相当し、以下同様に、「チャージ・エア」は「吸気」に、「外部空気」は「冷却流体」に、「偏平管(2)」は「チューブ(10)」に、「収められ」は「配設され」に、「インナーフィン(10)」は「インナーフィン(11)」に、「インタークーラ(20)」は「インタークーラ」に、それぞれ相当する。また、甲第6号証記載の発明における「マルチエントリー・フィン」は、細流路を分割する壁面がチャージ・エアの流れ方向に沿って千鳥状に配置されているから、本件特許発明13における「オフセットフィン」に相当する。

してみると、本件特許発明13と甲第6号証記載の発明とは、
「内燃機関の吸気を加圧する過給器の吸気流れ下流側に配置され、吸気と冷却流体とを熱交換させて吸気を冷却するインタークーラであって、
吸気が流れる流路を内部に形成するチューブ(10)と、前記チューブ(10)内の流路を複数の細流路(100)に分割するようにして前記チューブ(10)内に配設され、吸気と冷却流体との熱交換を促進するインナーフィン(11)とを備え、
前記インナーフィン(11)は、前記細流路(100)を分割する壁面(110)が吸気の流れ方向に沿って千鳥状に配置されているオフセットフィンであるインタークーラ。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件特許発明13においては、チューブ(10)およびインナーフィン(11)が銅または銅合金からなるのに対し、甲第6号証記載の発明においては、そのように特定されていない点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
本件特許発明13においては、1つの前記チューブ(10)内の断面積をSとし、1つの前記チューブ(10)における前記細流路(100)の合計流路面積をSwaとし、1つの前記細流路(100)の相当円直径をde(単位:mm)としたとき、de/(S/Swa)が、0.8?6.2であり、インナーフィン(11)の板厚が、0.15mm未満であるのに対し、甲第6号証記載の発明においては、そのようになっているか否か不明である点(以下、「相違点2」という。)。

(3)-2 判断
上記相違点について検討する。
ア.相違点1について
甲第5号証記載の発明は、上記2.-1の(3)-1-1で記載したとおりのものである。
ここで、甲第5号証記載の発明における「チューブ132」は、その機能及び構造又は技術的意義からみて、本件特許発明13における「チューブ(10)」に相当し、以下同様に、「インナーフィン」は「インナーフィン(11)」に、「銅材」は「銅」に、それぞれ相当する。
してみると、甲第5号証記載の発明は、本件特許発明13の用語を用いると、「チューブおよびインナーフィンをアルミ材に比べて温度に対する強度特性に優れた銅で構成する。」と言い換えることができる。
そして、甲第6号証記載の発明と甲第5号証記載の発明とは、ともにインタークーラの技術分野に属するから、甲第6号証記載の発明において、甲第5号証記載の発明を適用して、相違点1に係る本件特許発明13の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ.相違点2について
甲第6号証記載の発明と甲第7号証記載の発明とは、ともにオフセットフィンを用いたインタークーラの技術分野に属するから、甲第6号証の記載に発明において、甲第7号証記載の発明のオフセットフィンを採用することを阻害する特段の要因は見いだせない。
また、上記2.-2における(1)-3のイ.相違点2についてで検討したとおり、甲第6号証記載の発明に、甲第7号証記載の発明のオフセットフィンを採用した場合におけるde/(S/Swa)は、de/(S/Swa)=1.31となり、本件特許発明13のde/(S/Swa)=0.8?6.2の範囲内に含まれるものであり、また、甲第7号証記載の発明のオフセットフィンの板厚は0.08mmで、本件特許発明13の0.15未満を満たすものであって、また、甲第6号証記載の発明において、甲第7号証記載の発明のオフセットフィンを採用することに特段の阻害要因がないことは前述のとおりであるから、甲第6号証記載の発明に、甲第7号証記載の発明を採用して、相違点2に係る本件特許発明13の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明13は、全体としてみても、甲第5ないし7号証記載の発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

ウ.まとめ
以上のとおり、本件特許発明13は、甲第5ないし7号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)本件特許の請求項10ないし12に係る発明(以下、「本件特許発明10ないし12」という。)について
本件特許発明13におけるde/(S/Swa)の数値範囲は、本件特許発明10及び11におけるde/(S/Swa)の数値範囲よりも狭く包含されており、本件特許発明13は、本件特許発明10及び11よりも下位概念化されたものである。また、本件特許発明13は、本件特許発明12の発明特定事項を全て含んでいる。
そうすると、本件特許発明10及び11よりも下位概念化され、また、本件特許発明12の発明特定事項を全て含む本件特許発明13が、上記(3)で記載したとおり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないのと同様の理由により、本件特許発明10ないし12は、甲第5ないし7号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)無効理由2のむすび
以上のとおり、本件特許発明7ないし13についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

第4.むすび

以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし13についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-09 
結審通知日 2011-11-14 
審決日 2011-11-30 
出願番号 特願2005-219021(P2005-219021)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (F02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 水野 治彦  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 岡崎 克彦
中川 隆司
登録日 2010-04-09 
登録番号 特許第4487880号(P4487880)
発明の名称 インタークーラ  
代理人 窪田 卓美  
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