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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1250698
審判番号 不服2008-23656  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-16 
確定日 2012-01-18 
事件の表示 特願2002- 60836「熱可塑性充填ポリアミドの成形材料」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月9日出願公開、特開2002-294071〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年3月6日[パリ条約による優先権主張 2001年3月15日 欧州特許庁(EP)]の出願であって、平成19年11月16日付けで拒絶理由が通知され、平成20年3月10日に意見書と手続補正書が提出され、同年3月11日に手続補足書が提出されたが、同年6月10日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年9月16日付けで拒絶査定に対する審判が請求され、同年10月16日に手続補正書が提出され、同年12月1日に手続補正書(方式)が提出され、平成21年1月6日付けで前置報告がなされ、同年6月8日に上申書が提出され、平成23年2月15日付けで、当審から審尋がなされ、同年5月16日に回答書が提出されたものである。


第2.補正却下の決定
[結論]
平成20年10月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
平成20年10月16日付け手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は審判請求の日から30日以内にされた補正であって、その内容は、平成20年3月10日付け手続補正書により補正された明細書(以下、「補正前明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係るポリアミド成形材料の(B)成分を形成するモノマーについて、
「(B1)存在する酸の総量を基準として55?100モル%のイソフタル酸と、
(B2)存在する酸の総量を基準として0?45モル%のテレフタル酸と、
(B3)4?25炭素原子を有する100モル%の少なくとも一つの線状又は枝状の脂肪族又は脂環式ジアミン」
を、
「(B1)存在する酸の総量を基準として60?80モル%のイソフタル酸と、
(B2)存在する酸の総量を基準として20?40モル%のテレフタル酸と、
(B3)存在するジアミンの総量を基準として100モル%のヘキサメチレンジアミン」とする補正事項(以下、「補正事項1」という。)を含むものである。

2.本件手続補正の適否について
(1)新規事項の追加の有無
補正事項1については、本願の願書に最初に添付された明細書(以下、「当初明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項6などに記載されており、新規事項を追加するものではない。

(2)補正の目的について
補正事項1の補正の目的について検討する。
補正前明細書の特許請求の範囲の請求項(以下、「補正前請求項」という。)と、本件手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項(以下、「補正後請求項」という。)の対応関係について検討すると、補正前請求項7には、
「【請求項7】 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のポリアミド成形材料において、
前記非結晶性又は低結晶性の(コ)ポリアミド(B)が、
60?80モル%のイソフタル酸と、
20?40モル%のテレフタル酸と、
100モル%のヘキサメチレンジアミンとから成るものであり、
フタル酸が100モル%で、かつジアミンが100モル%であることを特徴とするポリアミド成形材料。」
と記載されており、この記載事項は補正事項1の補正内容に対応していることから、補正事項1の補正の目的について、一応、次の2つの考え方が採れる。
a.補正前請求項1ないし6を削除した上で、補正前請求項7を補正後請求項1ないし6として分けたとみる考え方
b.補正前の請求項1を、補正前請求項7の記載事項に基いて限定したとみる考え方

上記a.の考え方を採るとすると、
*補正後請求項1は、補正前請求項1を引用する補正前請求項7に相当し、
*補正後請求項2は、補正前請求項2を引用する補正前請求項7に相当し、
*補正後請求項3は、補正前請求項3を引用する補正前請求項7に相当し
*補正後請求項4は、補正前請求項4を引用する補正前請求項7に相当し、
*補正後請求項5は、補正前請求項5を引用する補正前請求項7に相当するといえるとしても、補正前請求項7は補正前請求項6を引用していないので、補正後請求項6は補正前請求項7を分けることによって導き出されるものではない。
したがって、上記a.の考え方を採用することはできない。

一方、上記b.の考え方は、ごく普通の限定の考え方であり、何らの矛盾なく採用することができる。

以上のことから、補正事項1の補正の目的は、補正前請求項7の記載事項などに基いて、補正前請求項1に係るポリアミド成形材料の(B)成分を形成するモノマーの量及び種類を限定するものと認められる。
よって、補正事項1は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされた同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものである。

(3)独立特許要件について
上記第2.2.(2)のとおり、本件手続補正に含まれる補正事項1は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであるので、次に、本件手続補正が特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満足する否かについて、以下に検討する。
1)補正後の発明について
本件手続補正により補正された明細書(以下、「補正明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、補正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「ポリアミド組成物の良質の表面品質及び流動性、並びに良好な熱寸法安定性を有し、ポリアミド組成物を含む強化熱可塑性ポリアミド成形材料であって、
該ポリアミド組成物が、
少なくとも240℃の融点を有する92?85重量%の部分結晶性の一部芳香族のコポリアミドであり、
(A1)存在する酸の総量を基準として50?80モル%のテレフタル酸と、
(A2)存在する酸の総量を基準として20?50モル%のイソフタル酸で、ジカルボン酸の合計が100モル%であるものと、
(A3)4?25炭素原子を有する100モル%の少なくとも一つの線状又は枝状の脂肪族のジアミンで、前記部分結晶性の一部芳香族のコポリアミドにおけるフタル酸が100モル%であり、かつジアミンが100モル%である物と、で組成されたコポリアミド(A)と、
8?15重量%の非結晶性又は低結晶性のコポリアミドで融解エンタルピーが1cal/gを越えず、
(B1)存在する酸の総量を基準として60?80モル%のイソフタル酸と、
(B2)存在する酸の総量を基準として20?40モル%のテレフタル酸と、
(B3)存在するジアミンの総量を基準として100モル%のヘキサメチレンジアミンとからなり、前記部分結晶性の一部芳香族のコポリアミドにおけるフタル酸が100モル%で、かつジアミンが100モル%である物と、で組成されたコポリアミド(B)と、を含み、
前記成形材料はさらに、
25?70重量%のファイバー状若しくは粒状の充填剤、又はその混合物(C)と、
0?20重量%のゴム弾性の重合でできた重合体(D)と、
前記成形材料の総量の30重量%以下の一般の添加剤及び加工助剤(E)と、
を含むことを特徴とするポリアミド成形材料。」

2)刊行物に記載された事項
○本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-90178号公報(原査定の拒絶理由における「引用文献1」。以下、「引用例A」という。)には、以下の事項が記載されている。
(A-1)「【請求項1】 (A)テレフタル酸単位30?100モル%とテレフタル酸単位以外の芳香族ジカルボン酸単位0?40モル%及び/又は脂肪族ジカルボン酸単位0?70モル%とからなるジカルボン酸単位(a)(但し、ジカルボン酸単位の合計を100モル%とする。)と、脂肪族アルキレンジアミン単位及び/又は脂環族アルキレンジアミン単位(b)とからなる融解熱3cal/g以上の結晶性芳香族ポリアミド樹脂:95?25重量部、
(B)融解熱1cal/g以下の非結晶性ないし低結晶性ポリアミド樹脂:5?75重量部、
(C)無機繊維:上記ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)との合計100重量部に対して5?200重量部、とからなることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)

(A-2)「【産業上の利用分野】本発明は、射出成形や押出成形等により成形品、シート等として利用できる新規な熱可塑性樹脂組成物に関するものである。詳しくは、常温で高い曲げ強度、衝撃強度等を有するのみならず、高温時においてもかかる機械的性質を保持しうる、耐熱性に優れかつ成形加工性が良好なポリアミド樹脂組成物に関するものである。」(段落【0001】)

(A-3)「・・・本発明において、(A)、(B)成分の配合割合は(A)及び(B)の合計重量を100重量部とした場合、以下の通りである。
(A)成分:95?25重量部、好ましくは90?45重量部、より好ましくは80?55重量部である。95重量部を超えると、流動性が低下し、25重量部未満では本発明の意図する耐熱性の効果が得られない。
(B)成分:5?75重量部、好ましくは10?55重量部、より好ましくは20?45重量部である。5重量部未満では流動性が悪く、75重量部を超えると、本発明の意図する耐熱性の効果が得られない。」(段落【0034】?【0035】)

(A-4)「本発明による組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて先の重合体成分以外の熱可塑性又は熱硬化性樹脂、ラバー成分、酸化防止剤、耐候性改良剤、造核剤、スリップ剤、難燃剤、各種着色剤、帯電防止剤、離型剤等の成分を添加することもできる。本発明において、結晶性芳香族ポリアミド樹脂(A)、非結晶性ないし低結晶性のポリアミド樹脂(B)、無機繊維(C)の配合方法は特に限定されず、公知の溶融混練方法を用いることができる。溶融混練装置としては、押出機、ニーダー、ロールなどを用いることができる。」(段落【0037】)

(A-5)「実施例1
結晶性芳香族ポリアミド樹脂(A-1)としてポリアミド6T/6I(テレフタル酸に少量のイソフタル酸を加えた芳香族ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド樹脂)(三井石油化学工業(株)製、商品名:アーレンA3000、融解熱9.3cal/g)37重量部、非結晶性ポリアミド(B-1)(三菱化成(株)製、商品名:ノバミッドX21.F07(イソフタル酸と少量のテレフタル酸とからなる芳香族ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンとからなるポリアミド樹脂)、相対粘度=2.3、ノバミッドは登録商標;尚、このものの融点はDSCでゆっくり測定したが、明確な融点は現れなかった。)13重量部を、連続二軸押出機(TEX30HCT、(株)日本製鋼所製)の第1ホッパーより投入し、さらに第1ホッパーとベント孔の間に設けた第2ホッパーよりガラス繊維(C-1)(日本電気硝子(株)製、商品名:ECS03T-289H/P)50重量部を定量フィーダーを用いて投入した。」(段落【0045】)

○本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-202358号公報(原査定の拒絶理由における「引用文献4」。以下、「引用例B」という。)には、以下の事項が記載されている。
(B-1)「(1)結晶性ポリアミドと繊維状強化物とからなる成形品の製造において、イソフタル酸50?10モル%とテレフタル酸0?40モル%とヘキサメチレンジアミン50モル%とから得られる非晶性共重合ポリアミドを3?40重量%存在せしめることを特徴とする結晶性ポリアミド成形品の光沢度改良法。」(特許請求の範囲の請求項1)

(B-2)「しかし、かかる結晶性ポリアミドと繊維状強化物とからなる成形品は寸法安定性および力学特性の異方性が発生し易く、しばしば射出成形機等で成形した成形品の表面の光沢を損失することがあった。・・・
(発明が解決しようとする課題)
本発明の目的は、結晶性ポリアミドと繊維状強化物とからなる成形品の耐熱性、剛性あるいは衝撃強度の低下を惹起することなく、効果的に光沢損失の発生を防止することにある。
(課題を解決するための手段)
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、結晶性ポリアミドと繊維状強化物とからなる成形品に特定の非晶性共重合ポリアミドを特定量存在せしめることにより、本発明の目的がことごとく達成されることを見出し本発明に到達したものである。」(1頁右下欄7行?2頁左上欄9行)

(B-3)「(実施例)
参考例:非晶性共重合ポリアミド(PA-1)
イソフタル酸35モル%、テレフタル酸15モル%、ヘキサメチレンジアミン50モル%の割合で、これらの原料10kgを5kgの純水と共に反応槽に仕込み、・・・反応終了後、生成した非晶性共重合ポリアミドを反応槽から払出し切断してペレットを得た。得られたペレットの相対粘度(前述と同一の測定法)は1.50でガラス転移温度は150℃であった。この非晶性共重合ポリアミドをPA-1とする。」(3頁右上欄11行?左下欄6行)

3)引用例Aに記載された発明
摘示事項(A-1)、(A-2)及び(A-5)の記載からみて、引用例Aには、
「ポリアミド組成物を含む強化熱可塑性ポリアミド成形材料であって、該ポリアミド組成物が、
(A)結晶性芳香族ポリアミド樹脂である、ポリアミド6T/6I(テレフタル酸に少量のイソフタル酸を加えた芳香族ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド樹脂)(三井石油化学工業(株)製、商品名:アーレンA3000、融解熱9.3cal/g):95?25重量部と、
(B)融解熱1cal/g以下の非結晶性ポリアミド樹脂である、イソフタル酸と少量のテレフタル酸とからなる芳香族ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンとからなるポリアミド樹脂:5?75重量部とからなり、
前記成形材料はさらに、
(C)無機繊維:上記ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)との合計100重量部に対して5?200重量部
を含むポリアミド成形材料」に係る発明(以下、[引用発明」という。)が記載されていると認められる。

4)対比・判断
補正発明と引用発明とを対比すると、「融解エンタルピー」と「融解熱」とは同義であることは、本願出願時における技術常識であることから、両者は、
「ポリアミド組成物を含む強化熱可塑性ポリアミド成形材料であって、該ポリアミド組成物が、
(A)結晶性芳香族コポリアミド、
(B)イソフタル酸と少量のテレフタル酸とからなる芳香族ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンとからなり、融解エンタルピーが1cal/g以下である非結晶性コポリアミドとからなり、
前記成形材料はさらに、
(C)ファイバー状充填剤
を含むポリアミド成形材料」
である点で一致し、次の点で相違している。

○相違点1
ポリアミド成形材料における、(A)成分ないし(C)成分の添加量の範囲が、補正発明では、(A)成分が92?85重量%、(B)成分が8?15重量%及び(C)成分が25?70重量%であるのに対し、引用発明では、(A)成分が95?25重量部、(B)成分が5?75重量部及び(C)成分が5?200重量部である点。

○相違点2
(A)成分の結晶性芳香族コポリアミド樹脂が、補正発明では、
「少なくとも240℃の融点を有するコポリアミドであり、
(A1)存在する酸の総量を基準として50?80モル%のテレフタル酸と、(A2)存在する酸の総量を基準として20?50モル%のイソフタル酸で、ジカルボン酸の合計が100モル%であるものと、(A3)4?25炭素原子を有する100モル%の少なくとも一つの線状又は枝状の脂肪族のジアミンで、前記部分結晶性の一部芳香族のコポリアミドにおけるフタル酸が100モル%であり、かつジアミンが100モル%である物と、で組成されたコポリアミド」(以下、「補正発明の結晶性芳香族コポリアミド樹脂」という。)であるのに対し、引用発明では、
「ポリアミド6T/6I(テレフタル酸に少量のイソフタル酸を加えた芳香族ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド樹脂)(三井石油化学工業(株)製、商品名:アーレンA3000、融解熱9.3cal/g)」である点。

○相違点3
(B)の非結晶性コポリアミド樹脂が、補正発明では、
「(B1)存在する酸の総量を基準として60?80モル%のイソフタル酸と、(B2)存在する酸の総量を基準として20?40モル%のテレフタル酸と、(B3)存在するジアミンの総量を基準として100モル%のヘキサメチレンジアミンとからなり、前記部分結晶性の一部芳香族のコポリアミドにおけるフタル酸が100モル%で、かつジアミンが100モル%である物と、で組成されたコポリアミド」であるのに対し、引用発明では、
「イソフタル酸と少量のテレフタル酸とからなる芳香族ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンとからなるポリアミド樹脂」である点。

○相違点4
強化熱可塑性ポリアミド成形材料の成分として、補正発明では、
「強化熱可塑性ポリアミド成形材料の総量の30重量%以下の一般の添加剤及び加工助剤(E)」を含むのに対し、引用発明ではこのような規定がされていない点。

○相違点5
強化熱可塑性ポリアミド成形材料が、補正発明では、
「ポリアミド組成物の良質の表面品質及び流動性、並びに良好な熱寸法安定性を有し、」と規定されているのに対し、引用発明ではこのような規定がなされていない点。

以下で、上記相違点1?5について検討する。
○相違点1について
引用発明では、(A)成分ないし(C)成分の添加量が「重量部」で示されているが、(A)成分と(B)成分の合計量を100重量%とした場合の添加量を「重量%」で表現すると、(A)成分:95?25重量%、(B)成分:5?75重量%及び(C)成分:5?200重量%となる。
このように、ポリアミド成形材料における、(A)成分ないし(C)成分の添加量の範囲(以下、「添加範囲」という。)については、補正発明の添加範囲は、引用発明の添加範囲に包含されているので、両者の添加範囲は重複一致していることとなる。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

なお、補正発明の添加範囲は、引用発明の添加範囲よりも狭い、すなわち、限定されたものとなっているが、補正明細書には、添加範囲を限定した技術的意味について「結局、この特徴は本発明において、次のようなポリアミド組成の成形材料によって達成することができた。つまり、請求項に(B)として記載した多様な8-15重量%、殊に10-15重量%の非結晶性又は低結晶性のコポリアミドを含む成形材料である。この組成物(B)の添加物は、前述の量が範囲以下の場合、表面の品質改善にはまったく効力を発さないか、発しても僅かである。」(【0036】段落)と記載されている程度であること、及び「実施例によって得られた評価を示す。」とされる【表1】(【0064】段落)は空欄であり、ポリアミド成形材料の成分の配合割合、評価データは一切示されていないことからみて、補正発明の添加範囲が限定されていることより、補正発明が、選択発明といえるような格別顕著な効果を奏するとはいえない。

○相違点2について
補正明細書における、
「(4)表1に示した成形材料の説明
第1列目の第2-6行目には、成形材料の各組成物(PA6T/6I?グラスファイバー)が示されている。各組成物についての詳細を説明する。
○1[審決注:「○1」は1を○で囲んだ丸数字である。]PA6T/6Iの例として、下記の2商品をあげる。
・商品名はArlen(登録商標)A3000(メーカー:三井化学(日本))。70モル%テレフタル酸と芳香族ジカルボン酸として30モル%のイソフタル酸。」(段落【0065】)との記載からみて、「Arlen(登録商標)A3000(メーカー:三井化学(日本))」は、補正発明の結晶性芳香族コポリアミド樹脂に相当するものといえる。
そして、引用発明においては、(A)成分の結晶性芳香族コポリアミド樹脂として、「ポリアミド6T/6I(テレフタル酸に少量のイソフタル酸を加えた芳香族ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド樹脂)(三井石油化学工業(株)製、商品名:アーレンA3000、融解熱9.3cal/g)」が用いられているので、(A)成分の結晶性芳香族コポリアミド樹脂は両者で重複一致しているといえる。
したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。

○相違点3について
(B)の非結晶性コポリアミド樹脂における、イソフタル酸とテレフタル酸の配合割合(審決注:イソフタル酸とテレフタル酸の合計は100モル%である。)について、補正発明では、イソフタル酸が「60?80モル%」、テレフタル酸が「20?40モル%」と具体的な数値範囲が規定されているが、引用発明では、「イソフタル酸と少量のテレフタル酸」と規定されているだけではある。
しかしながら、引用発明における「イソフタル酸と少量のテレフタル酸」との規定は、少なくとも、イソフタル酸が「50モル%を越え100モル%未満」、テレフタル酸が「0モル%を越え50モル%未満」との数値範囲を規定している解されるので、イソフタル酸とテレフタル酸の配合割合については、引用発明の範囲は、補正発明の範囲を包含しているといえる。

そして、引用例Aには、「常温で高い曲げ強度、衝撃強度等を有するのみならず、高温時においてもかかる機械的性質を保持しうる、耐熱性に優れかつ成形加工性が良好なポリアミド樹脂組成物に関する」旨の記載(摘示A-3)及び「(B)成分が5重量部未満では流動性が悪い」旨の記載(摘示A-3)がされていることからみて、成形加工性・流動性などの性能を考慮して、引用発明のイソフタル酸とテレフタル酸の配合割合のさらに好ましい範囲を設定することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が適宜行い得る事項である。
さらに、引用例Bには、「結晶性ポリアミドと繊維状強化物とからなる成形品に発生する、寸法安定性および力学特性の異方性の問題、表面光沢の損失の問題を解決すること」(摘示B-2)を課題として、「イソフタル酸35モル%、テレフタル酸15モル%、ヘキサメチレンジアミン50モル%の割合で反応させた非晶性共重合ポリアミド」(摘示B-2)を配合することが記載されており、成形加工性・流動性などの性能に加えて、さらに、寸法安定性、表面光沢の損失などの問題解決を狙って、引用発明のイソフタル酸とテレフタル酸の配合割合のさらに好ましい範囲として、引用例Bに記載された「イソフタル酸35モル%、テレフタル酸15モル%」(イソフタル酸とテレフタル酸の合計を100モル%と設定した場合には「イソフタル酸70モル%、テレフタル酸30モル%」となる。)を採用することは、当業者が容易に想到しうることと認められる。
また、補正発明において、イソフタル酸が「60?80モル%」、テレフタル酸が「20?40モル%」と数値範囲が規定したことによる効果について検討しても、補正明細書において、「実施例によって得られた評価を示す。」とされる【表1】(【0064】段落)は空欄であって、ポリアミド成形材料の成分の配合割合、評価データは一切示されていないことから、この規定により補正発明が格段の効果が奏するとは認められない。

○相違点4について
引用例Aには、「本発明による組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて先の重合体成分以外の熱可塑性又は熱硬化性樹脂、ラバー成分、酸化防止剤、耐候性改良剤、造核剤、スリップ剤、難燃剤、各種着色剤、帯電防止剤、離型剤等の成分を添加することもできる。」と記載されており(摘示A-4)、引用発明は、一般の添加剤及び加工助剤に相当するスリップ剤を態様を包含している。
さらに、一般の添加剤及び加工助剤の添加量を、強化熱可塑性ポリアミド成形材料の総量の30重量%以下とすることについても、樹脂組成物の添加剤の添加量を多くしすぎると、樹脂成分によってもたらされる各種の優れた特性を阻害することは本願出願時における技術常識であるので、引用発明は、一般の添加剤及び加工助剤の添加量を、強化熱可塑性ポリアミド成形材料の総量の30重量%以下とする態様を包含している。
したがって、相違点4は実質的な相違点ではない。

○相違点5について
上記「相違点3について」の項でも説示したように、成形加工性・流動性などの性能を考慮して、引用発明の(B)の非結晶性コポリアミド樹脂における、イソフタル酸とテレフタル酸の配合割合のさらに好ましい範囲を設定すること、及び成形加工性・流動性などの性能に加えて、さらに、寸法安定性、表面光沢の損失などの問題解決を狙って、引用発明のイソフタル酸とテレフタル酸の配合割合のさらに好ましい範囲として、引用例Bに記載されたイソフタル酸70モル%、テレフタル酸30モル%」を採用することは、当業者が容易に想到しうることと認められるので、このようにして非結晶性コポリアミド樹脂における、イソフタル酸とテレフタル酸の配合割合が設定された、引用発明の強化熱可塑性ポリアミド成形材料が、ポリアミド組成物の良質の表面品質及び流動性、並びに良好な熱寸法安定性を有することは、当然のことである。
したがって、相違点5は実質的な相違点ではない。

5)小活
よって、補正発明は、引用例A及びBに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.独立特許要件についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年10月16日付けの手続補正は、上記の通り却下されたので、本願の請求項1?15に係る発明は、平成20年3月10日付け手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1?15に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「ポリアミド組成物の良質の表面品質及び流動性、並びに良好な熱寸法安定性を有し、ポリアミド組成物を含む強化熱可塑性ポリアミド成形材料であって、
少なくとも240℃の融点を有する92?85重量%の部分結晶性の一部芳香族の(コ)ポリアミドであり、
(A1)存在する酸の総量を基準として50?80モル%のテレフタル酸と、
(A2)存在する酸の総量を基準として20?50モル%のイソフタル酸で、ジカルボン酸の合計が100モル%であるものと、
(A3)4?25炭素原子を有する100モル%の少なくとも一つの線状又は枝状の脂肪族のジアミンで、前記部分結晶性の一部芳香族の(コ)ポリアミドにおけるフタル酸が100モル%であり、かつジアミンが100モル%である物と、で組成された(コ)ポリアミド(A)と、
8?15重量%の非結晶性又は低結晶性の(コ)ポリアミドで融解エンタルピーが1cal/g以下であり、
(B1)存在する酸の総量を基準として55?100モル%のイソフタル酸と、
(B2)存在する酸の総量を基準として0?45モル%のテレフタル酸と、
(B3)4?25炭素原子を有する100モル%の少なくとも一つの線状又は枝状の脂肪族又は脂環式ジアミンで、存在するジアミンの総量を基準として、前記部分結晶性の一部芳香族の(コ)ポリアミドにおけるフタル酸が100モル%で、かつジアミンが100モル%である物と、で組成された(コ)ポリアミド(B)と、を含み、
前記成形材料はさらに、
25?70重量%のファイバー状若しくは粒状の充填剤、又はその混合物(C)と、
0?20重量%のゴム弾性の重合でできた重合体(D)と、
前記成形材料の総量の30重量%以下の一般の添加剤及び加工助剤(E)と、
を含むことを特徴とするポリアミド成形材料。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由として、平成20年6月10日付け拒絶査定(以下、単に「拒絶査定」という。)には、「この出願については、平成19年11月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由2?4によって、拒絶をすべきものです。」と記載されており、さらに、拒絶査定の備考(1)欄には、「理由2、3については、請求項1?7、9?11、13?15に係る発明について、引用文献1を用いる」旨の記載がされている。
そして、平成19年11月16日付け拒絶理由通知書(以下、単に「拒絶理由通知書」という。)には、上記理由について、次のように記載されている。
○理由1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。(以下、「29条1項3号の理由」という。)
○理由2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(以下、「29条2項の理由」という。)
○理由3.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。(以下、「36条4項の理由」という。)
○理由4.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。(以下、「36条6項2号の理由」という。)
上記の拒絶査定及び拒絶理由通知書の記載から、原査定の拒絶の理由には、「請求項1?7、9?11、13?15に係る発明は、理由2、3(すなわち、29条2項の理由、36条4項の理由)により、引用文献1を用いて拒絶をすべき」ことが含まれていることとなる。
しかしながら、拒絶査定の備考(1)欄には、具体的な拒絶の理由として、「したがって、出願人の上記主張を採用できないから、本願の請求項1?7、9?11、13?15に係る発明は、依然として、引用文献1に記載された発明である。」と記載されており、この記載は、理由2(すなわち、29条1項3号の理由)について説示していることは明らかである。
したがって、拒絶査定に記載された「理由2」は「理由1」の誤記であることは明らかであって、原査定の拒絶の理由には、「この出願の請求項1?7、9?11、13?15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」との理由が含まれていると解するのが相当である。

また、平成20年12月1日に提出された手続補正書(方式)で補正された審判請求書の、「2.拒絶査定の要点」の項において、「このうち理由2は、具体的には、(1)引例1に記載のポリアミドは、本願発明に係る融点を有し、本願発明に係る成分のモル%を有するものと認められるから、本願の前記請求項に係る発明は引例1に記載された発明である、・・・というものである。」と記載していることからみて、審判請求人は、原査定の拒絶の理由には、「この出願の請求項1?7、9?11、13?15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」との理由が含まれていると正しく解釈しているといえる。さらに、「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(e)本願発明と引用発明との対比」の項において、本願発明と引例1に記載の発明との対比を行い、両者は同一ではない旨の反論を行っていることからみて、審判請求人は、正しく解釈して原査定の拒絶の理由に対して、必要な反論をおこなっているといえる。

以上の検討したように、原査定の拒絶の理由には、「この出願の請求項1?7、9?11、13?15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」との理由が含まれていると解釈するのが相当であり、また、審判請求人も、この解釈を採用し、必要な反論を行っているといえるので、審決における以下の判断は、この拒絶査定の理由の解釈に基いて行うこととする。

3.当審の判断
1)引用文献1に記載された事項及び引用文献1に記載された発明
本願発明が、前記引用文献1として挙げられた特開平7-90178号公報(この「引用文献1」は、上記第2.2.(3)2)における「引用例A」である。以下、「引用例A」という。)に記載された発明であるか否か検討する。
引用例Aには、上記第2.2.(3)2)に記載した事項が記載されており、上記第2.2.(3)3)で認定した発明、すなわち、
「ポリアミド組成物を含む強化熱可塑性ポリアミド成形材料であって、該ポリアミド組成物が、
(A)結晶性芳香族ポリアミド樹脂である、ポリアミド6T/6I(テレフタル酸に少量のイソフタル酸を加えた芳香族ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド樹脂)(三井石油化学工業(株)製、商品名:アーレンA3000、融解熱9.3cal/g):95?25重量部と、
(B)融解熱1cal/g以下の非結晶性ポリアミド樹脂である、イソフタル酸と少量のテレフタル酸とからなる芳香族ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンとからなるポリアミド樹脂:5?75重量部とからなり、
前記成形材料はさらに、
(C)無機繊維:上記ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)との合計100重量部に対して5?200重量部
を含むポリアミド成形材料」に係る発明(以下、[引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2)対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、上記第2.2.(3)4)に記載したように、両者は、
「ポリアミド組成物を含む強化熱可塑性ポリアミド成形材料であって、該ポリアミド組成物が、
(A)結晶性芳香族コポリアミド、
(B)イソフタル酸と少量のテレフタル酸とからなる芳香族ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンとからなり、融解エンタルピーが1cal/g以下である非結晶性コポリアミドとからなり、
前記成形材料はさらに、
(C)ファイバー状充填剤
を含むポリアミド成形材料」
である点で一致し、次の点で一応相違している。

○相違点1
ポリアミド成形材料における、(A)成分ないし(C)成分の添加量の範囲が、補正発明では、(A)成分が92?85重量%、(B)成分が8?15重量%及び(C)成分が25?70重量%であるのに対し、引用発明では、(A)成分が95?25重量部、(B)成分が5?75重量部及び(C)成分が5?200重量部である点。

○相違点2
(A)成分の結晶性芳香族コポリアミド樹脂が、本願発明では、
「少なくとも240℃の融点を有する(コ)ポリアミドであり、
(A1)存在する酸の総量を基準として50?80モル%のテレフタル酸と、(A2)存在する酸の総量を基準として20?50モル%のイソフタル酸で、ジカルボン酸の合計が100モル%であるものと、(A3)4?25炭素原子を有する100モル%の少なくとも一つの線状又は枝状の脂肪族のジアミンで、前記部分結晶性の一部芳香族の(コ)ポリアミドにおけるフタル酸が100モル%であり、かつジアミンが100モル%である物と、で組成された(コ)ポリアミド」(以下、「本願発明の結晶性芳香族コポリアミド樹脂」という。)であるのに対し、引用発明では
「ポリアミド6T/6I(テレフタル酸に少量のイソフタル酸を加えた芳香族ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド樹脂)(三井石油化学工業(株)製、商品名:アーレンA3000、融解熱9.3cal/g)」である点。

○相違点3
(B)の非結晶性コポリアミド樹脂が、本願発明では、
「(B1)存在する酸の総量を基準として55?100モル%のイソフタル酸と、(B2)存在する酸の総量を基準として0?45モル%のテレフタル酸と、(B3)4?25炭素原子を有する100モル%の少なくとも一つの線状又は枝状の脂肪族又は脂環式ジアミンで、存在するジアミンの総量を基準として、前記部分結晶性の一部芳香族の(コ)ポリアミドにおけるフタル酸が100モル%で、かつジアミンが100モル%である物と、で組成された(コ)ポリアミド」であるのに対し、引用発明では、
「イソフタル酸と少量のテレフタル酸とからなる芳香族ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンとからなるポリアミド樹脂」である点。

○相違点4
強化熱可塑性ポリアミド成形材料の成分として、本願発明では、「強化熱可塑性ポリアミド成形材料の総量の30重量%以下の一般の添加剤及び加工助剤(E)」を含むのに対し、引用発明ではこのような規定がされていない点。

○相違点5
強化熱可塑性ポリアミド成形材料が、本願発明では、「ポリアミド組成物の良質の表面品質及び流動性、並びに良好な熱寸法安定性を有し、」と規定されているのに対し、引用発明ではこのような規定がなされていない点。

以下で、上記相違点1?5について検討する。
○相違点1について
引用発明では、(A)成分ないし(C)成分の添加量が「重量部」で示されているが、(A)成分と(B)成分の合計量を100重量%とした場合の添加量を「重量%」で表現すると、(A)成分:95?25重量%、(B)成分:5?75重量%及び(C)成分:5?200重量%となる。
このように、ポリアミド成形材料における、(A)成分ないし(C)成分の添加量の範囲(以下、「添加範囲」という。)については、本願発明の添加範囲は、引用発明の添加範囲に包含されているので、両者の添加範囲は重複一致していることとなる。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

なお、本願発明の添加範囲は、引用発明の添加範囲よりも狭い、すなわち、限定されたものとなっているが、本願明細書には、添加範囲を限定した技術的意味について「結局、この特徴は本発明において、次のようなポリアミド組成の成形材料によって達成することができた。つまり、請求項に(B)として記載した多様な8-15重量%、殊に10-15重量%の非結晶性又は低結晶性のコポリアミドを含む成形材料である。この組成物(B)の添加物は、前述の量が範囲以下の場合、表面の品質改善にはまったく効力を発さないか、発しても僅かである。」(【0036】段落)と記載されている程度であること、及び「実施例によって得られた評価を示す。」とされる【表1】(【0064】段落)は空欄であり、ポリアミド成形材料の成分の配合割合、評価データは一切示されていないことからみて、本願発明の添加範囲が限定されていることにより、本願発明が、選択発明といえるような格別顕著な効果を奏するとはいえない。

○相違点2について
本願明細書における、
「(4)表1に示した成形材料の説明
第1列目の第2-6行目には、成形材料の各組成物(PA6T/6I?グラスファイバー)が示されている。各組成物についての詳細を説明する。
○1[審決注:「○1」は1を○で囲んだ丸数字である。]PA6T/6Iの例として、下記の2商品をあげる。
・商品名はArlen(登録商標)A3000(メーカー:三井化学(日本))。70モル%テレフタル酸と芳香族ジカルボン酸として30モル%のイソフタル酸。」(段落【0065】)との記載からみて、「Arlen(登録商標)A3000(メーカー:三井化学(日本))」は、本願発明の結晶性芳香族コポリアミド樹脂に相当するものといえる。
そして、引用発明においては、(A)成分の結晶性芳香族コポリアミド樹脂として、「ポリアミド6T/6I(テレフタル酸に少量のイソフタル酸を加えた芳香族ジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド樹脂)(三井石油化学工業(株)製、商品名:アーレンA3000、融解熱9.3cal/g)」が用いられているので、(A)成分の結晶性芳香族コポリアミド樹脂は両者で重複一致しているといえる。
したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。

○相違点3について
(B)の非結晶性コポリアミド樹脂における、イソフタル酸とテレフタル酸の配合割合(審決注:イソフタル酸とテレフタル酸の合計は100モル%である。)について、本願発明では、イソフタル酸が「55?100モル%」、テレフタル酸が「0?45モル%」と具体的な数値範囲が規定されているが、引用発明では、「イソフタル酸と少量のテレフタル酸」と規定されているだけではある。
しかしながら、引用発明における「イソフタル酸と少量のテレフタル酸」との規定は、少なくとも、イソフタル酸が「50モル%を越え100モル%未満」、テレフタル酸が「0モル%を越え50モル%未満」との数値範囲を規定している解されるので、本願発明と引用発明における、イソフタル酸とテレフタル酸の配合割合は、ほとんどの範囲において重複一致している。
したがって、相違点3は実質的な相違点ではない。

○相違点4について
引用例Aには、「本発明による組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて先の重合体成分以外の熱可塑性又は熱硬化性樹脂、ラバー成分、酸化防止剤、耐候性改良剤、造核剤、スリップ剤、難燃剤、各種着色剤、帯電防止剤、離型剤等の成分を添加することもできる。」と記載されており(摘示A-4)、引用発明は、一般の添加剤及び加工助剤に相当するスリップ剤を態様を包含している。
さらに、一般の添加剤及び加工助剤の添加量を、強化熱可塑性ポリアミド成形材料の総量の30重量%以下とすることについても、樹脂組成物の添加剤の添加量を多くしすぎると、樹脂成分によってもたらされる各種の優れた特性を阻害することは本願出願時における技術常識であるので、引用発明は、一般の添加剤及び加工助剤の添加量を、強化熱可塑性ポリアミド成形材料の総量の30重量%以下とする態様を包含している。
したがって、相違点4は実質的な相違点ではない。

○相違点5について
上記「相違点1について」から「相違点4について」の項で説示したように、本願発明と引用発明のポリアミド成形材料は、その成分及び配合量において実質的な差異はないので、その性質・性能である「表面品質」、「流動性」及び「熱寸法安定性」においても、両者に差異があるとはいえない。
したがって、相違点5は実質的な相違点ではない。

3)小活
よって、本願発明と引用発明には実質的な差異があるとはいえず、本願発明は引用例A(特開平7-90178号公報)に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、原査定の理由1は妥当なものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


【回答書において示された補正案について】
なお、審判請求人は、平成23年5月16日に提出した回答書(平成23年2月15日付け審尋に対するもの)において補正案を示しており、この補正案は、補正発明のポリアミド成形材料が、(A)?(E)成分に加えて、さらに(F)成分として、「0.5%のm-クレゾール溶液中で測った相対粘性が1.01?1.30であり、前記コポリアミド(A)および(B)と同一種類又は異種類である0.1?20重量%のプレポリマーのポリアミド(F)」を含むことを規定することを主旨とするものである。
しかしながら、ポリアミド成形材料の溶融成形性を考慮して、ポリアミドの分子量、分子量分布などを調整して溶融粘度を調整することは、本願出願時における技術常識といえ、さらに、補正明細書において、「実施例によって得られた評価を示す。」とされる【表1】(【0064】段落)は空欄であって、ポリアミド成形材料の成分の配合割合、評価データは一切示されていないことから、上記の規定により補正発明が奏する効果は何ら具体的に確認できない。
したがって、上記補正案をみても、上記第2.2.(3)の項で示した、独立特許要件についての判断が、直ちに覆せるとはいえない。
 
審理終結日 2011-08-22 
結審通知日 2011-08-23 
審決日 2011-09-05 
出願番号 特願2002-60836(P2002-60836)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08L)
P 1 8・ 121- Z (C08L)
P 1 8・ 575- Z (C08L)
P 1 8・ 536- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 玲奈小出 直也渡辺 陽子  
特許庁審判長 小林 均
特許庁審判官 大島 祥吾
▲吉▼澤 英一
発明の名称 熱可塑性充填ポリアミドの成形材料  
代理人 萩原 誠  
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