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審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A23K 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A23K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23K |
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管理番号 | 1251453 |
審判番号 | 不服2010-24451 |
総通号数 | 147 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-10-29 |
確定日 | 2012-02-01 |
事件の表示 | 特願2004-561669「コンパニオンアニマルのための食餌を最適化する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年7月8日国際公開,WO2004/056197,平成18年 3月30日国内公表,特表2006-510377〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成15年12月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:平成14年12月20日,イギリス)を国際出願日とする特許出願であって,平成22年6月22日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年10月29日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同時に提出された手続補正書により特許請求の範囲の補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。 その後,平成23年4月8日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年7月7日に回答書が提出されたものである。 第2.本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を,以下に記載する「補正前」のものから,「補正後」のものに補正しようとする補正事項を含むものである(下線は補正前後で相違する箇所に当審にて付与)。 (補正前:平成22年1月25日受付の手続補正書) 「【請求項1】 個々のコンパニオンアニマルのための食餌の最適な多量養素内容を特定する方法であって、 脂肪、タンパク質および炭水化物の豊富な供給源を提供する飼料組成物を、前記コンパニオンアニマルが脂肪、タンパク質および炭水化物の最適な消費を達成するために好みの量の前記飼料組成物を選択し消費できるように該コンパニオンアニマルに提供し、 前記コンパニオンアニマルに、前記組成物から好みの量の脂肪、タンパク質および炭水化物を消費させ、 前記組成物からの脂肪、タンパク質および炭水化物の消費量から、前記個々のコンパニオンアニマルについての食餌の最適な多量養素内容を特定する、 各工程を含むことを特徴とする方法。」 (補正後) 「【請求項1】 個々のコンパニオンアニマルのための食餌の最適な多量養素内容を特定する方法であって、該方法が、未経験の自主的選択段階、学習段階および経験を積んだ自主的選択段階を含み、該経験を積んだ自主的選択段階が、 脂肪、タンパク質および炭水化物の豊富な供給源を提供する飼料組成物を、前記コンパニオンアニマルが好みの量の前記飼料組成物を選択し消費することによって脂肪、タンパク質および炭水化物の最適な消費を達成できるように該コンパニオンアニマルに提供し、 前記コンパニオンアニマルに、前記組成物から好みの量の脂肪、タンパク質および炭水化物を消費させ、 前記組成物からの脂肪、タンパク質および炭水化物の消費量から、前記個々のコンパニオンアニマルについての食餌の最適な多量養素内容を特定する、 各工程を含むことを特徴とする方法。」 2.補正の適否の判断1(補正の目的) 本件補正により,請求項1に記載された方法発明が,「未経験の自主的選択段階、学習段階および経験を積んだ自主的選択段階を含」む旨が追加された。 しかしながら,これら三段階のうち,「未経験の自主的選択段階」については,補正前の請求項1に記載された何れの発明特定事項とも関係していない。また,「学習段階」については,補正前の請求項4に「3日以上の期間の学習段階を含むことを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の方法。」との記載があるものの,当該請求項から見た場合,補正後の請求項1に係る発明は,「学習段階」について「3日以上の期間」との限定が外されている。 よって,本件補正は,補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定するものとは認められず,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,単に「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものではない。また,本件補正が,改正前特許法第17条の2第4項に掲げられたその他の目的,すなわち,請求項の削除(第1号),誤記の訂正(第3号)又は明りょうでない記載の釈明(第4号)の,いずれにも該当しないことは明らかである。 なお,審判請求人は,本件補正の目的について,審判請求書及び平成22年12月9日受付の審判請求書の手続補正書において,何ら説明していない。 よって,本件補正は,改正前特許法第17条の2第4項各号に掲げられたいずれの事項を目的とする訂正とも認められず,同項の規定に違反する。 3.補正の適否の判断2(独立特許要件) 本件補正による上記補正事項のうち,補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項として記載された「各工程」を,「経験を積んだ自主的選択段階」における工程であると減縮した点については,改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮に該当すると認められるので,補正後の請求項1(以下,本欄(3.欄)において,単に「請求項1」という。)に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下に検討する。 (1)第36条第6項第1号の要件について 本願補正発明は,本願明細書の段落【0044】に記載されるように「一時的な感覚上の嗜好と対照的に動物の代謝必要性に基づいて個々のペットまたはコンパニオンアニマルのための最適な食事を提供する」ものである。 そして,本願の発明の詳細な説明に記載された実施例1?7では,何れも,コンパニオンアニマルに対し,食餌についての所定の「学習段階」を経験させることにより,風味等の一時的な感覚上の嗜好に基づく食餌の摂取行動から,栄養バランスを考慮した代謝必要性に基づく食餌の摂取行動へと移行することを説明している。この「学習段階」については,本願明細書の段落【0138】において,「ネコは食餌選択を変化させる前に反復的に与えられる『学習』段階を必要とするので、給餌方法はこの場合重要である。」と説明されている。 このように,請求項1に記載された「個々のコンパニオンアニマルのための食餌の最適な多量養素内容を特定する」ためには,代謝必要性に基づく食餌の摂取行動へと移行できるような「学習段階」を経ることが不可欠であるにもかかわらず,請求項1には,単に本願の方法発明が「学習段階…を含」ことが特定されるのみである。 よって,請求項1には,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題を解決するための手段が反映されておらず,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているので,本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (2)第36条第6項第2号の要件について (イ)請求項1には,単に「学習段階」が含まれる旨が記載されるのみで,同請求項の記載では,当該「学習段階」が,何についてどのように学習する段階であるのかが不明である。 (ロ)請求項1には,「飼料組成物を選択し消費する」と記載されているが,どのような飼料組成物から,どのように選択させるのかが不明である。 つまり,「飼料組成物」が一つであるのか複数であるのかが不明であり,また,複数である場合には,その脂肪,タンパク質及び炭水化物の含有量に相違があるのかないのかが不明である。さらに,「選択し消費する」ことが,混合物飼料から選り分けて食べることであるのか,複数の飼料を食べ分けることであるのかも不明である。 また,上記「飼料組成物を選択し消費する」ことと,請求項1に記載された「組成物から好みの量の脂肪、タンパク質および炭水化物を消費させ」ることとの関係も不明である。 なお,審判請求人は,上記回答書において,「本願の請求項1においては、…各飼料組成物は、脂肪、あるいはタンパク質、あるいは炭水化物のいずれかが豊富であり、これによってコンパニオンアニマルが各組成物の一部を食べることによって、自主的選択を行い最適なバランスの多量要素を達成することが可能となるものであります。」と説明し,本願は記載要件の「規定を満たすものであると確信致します。」と主張している。 回答書における上記説明は,「各飼料組成物は、脂肪、あるいはタンパク質、あるいは炭水化物のいずれかが豊富であり」との表現及び「各組成物の一部を食べる」との表現に見られるように,成分の異なる複数の飼料組成物が存在し,それを食べ分けることを前提としているが,上記(ロ)欄に記載したように,そのような前提については,請求項1において特定されておらず,上記主張は,特許請求の範囲の記載に基づくものでないから採用できない。 (3)まとめ 以上のとおり,本願補正発明は,特許法第36条第6項第1項及び第2項に規定される要件を満たさないので,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 したがって,本件補正は,改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。 4.むすび 以上のとおり,本件補正は,改正前特許法第17条の2第4項及び第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,[補正の却下の決定の結論]欄に記載のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願の特許請求の範囲 本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?10に係る発明は,平成22年1月25日受付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載されたものと認められ,そのうち請求項1及び4?7は(以下,本欄(第3.欄)の3.欄以降において,単に「請求項1」,「請求項4」…という。),以下のとおりである。 「 【請求項1】 個々のコンパニオンアニマルのための食餌の最適な多量養素内容を特定する方法であって、 脂肪、タンパク質および炭水化物の豊富な供給源を提供する飼料組成物を、前記コンパニオンアニマルが脂肪、タンパク質および炭水化物の最適な消費を達成するために好みの量の前記飼料組成物を選択し消費できるように該コンパニオンアニマルに提供し、 前記コンパニオンアニマルに、前記組成物から好みの量の脂肪、タンパク質および炭水化物を消費させ、 前記組成物からの脂肪、タンパク質および炭水化物の消費量から、前記個々のコンパニオンアニマルについての食餌の最適な多量養素内容を特定する、 各工程を含むことを特徴とする方法。 【請求項2】,【請求項3】 <略> 【請求項4】 3日以上の期間の学習段階を含むことを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の方法。 【請求項5】 前記脂肪の供給源が、脂肪:エネルギー比で50%から75%までの脂肪を含むことを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の方法。 【請求項6】 前記タンパク質の供給源が、タンパク質:エネルギー比で50%から75%までのタンパク質を含むことを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の方法。 【請求項7】 前記炭水化物の供給源が、炭水化物:エネルギー比で25%から50%までの炭水化物を含むことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の方法。 【請求項8】?【請求項10】 <略>」 2.原査定の拒絶理由の概要 原査定の理由となった,平成21年9月14日付けの拒絶理由通知書により通知された拒絶理由のうち,理由1及び2の概要は以下のとおりである。 (1)理由1(第36条第6項第1号違反) 「請求項1に係る発明は、多量養素内容の特定に用いるコンパニオンアニマルの脂肪、タンパク質、炭水化物の消費時期について全く特定していないので、飼料組成物の提供開始直後の消費量のデータに基づいて多量養素内容を特定することを含むものである。しかし、発明の詳細な説明に記載された実施例において未経験の自主的選択の段階では、摂取量は味による差が大きく、出願人が主張するような多量養素内容を決定し得るものではない。」(上記拒絶理由通知書から引用) (2)理由2(第36条第6項第2号違反) (イ)「学習段階」について 「1.請求項4に『3日以上の期間の学習段階』と記載されているが、コンパニオンアニマルにどのようなことをさせる工程を学習段階とするのか不明である。」(上記拒絶理由通知書から引用) (ロ)数値限定の技術的矛盾について 「2.請求項6は『タンパク質:エネルギー比で50%から75%までのタンパク質を含むこと』と発明特定事項としており、脂肪の供給源が炭水化物やタンパク質の供給源と同じであることを除外していない。また、請求項6は、請求項5を引用しているが、請求項5は『脂肪:エネルギー比で50%から75%までの脂肪を含むこと』を発明特定事項とし、タンパク質、脂肪以外にも炭水化物を含むそうすると、タンパク質+脂肪+炭水化物:エネルギー比が100%を超えることとなり、発明特定事項に矛盾が生じている。請求項7の発明特定事項についても同様である。」(上記拒絶理由通知書から引用) 3.当審の判断 (1)理由1(第36条第6項第1号違反)について 上記第2. 3.(1)欄に記載したように,本願の発明の詳細な説明に記載された実施例1?7の記載から,請求項1に記載された「個々のコンパニオンアニマルのための食餌の最適な多量養素内容を特定する」ためには,代謝必要性に基づく食餌の摂取行動へと移行できるような「学習段階」を経ることが不可欠である。 しかしながら,請求項1には,このような「学習段階」について何ら記載しておらず,当該「学習段階」を経験させない段階,すなわち,各実施例に記載された「未経験の自主的選択の段階」における,コンパニオンアニマルによる飼料組成物からの脂肪,タンパク質及び炭水化物の消費量から多量養素内容を特定するものをも包含している。 してみると,請求項1には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているので、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない(参考:「特許・実用新案審査基準」第I部第1章2.2.1.1(4)欄(http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tjkijun_i-1.pdf))。 よって,請求項1の記載は,特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない。 (2)理由2(第36条第6項第2号違反)について (イ)「学習段階」について 上記第2. 3.(2)(イ)欄に記載したのと同様,請求項4のように,単に「学習段階を含む」と記載するのみでは,当該「学習段階」が,何についてどのように学習する段階であるのかが不明である。 (ロ)数値限定の技術的欠陥について 請求項1には,「飼料組成物」が「脂肪、タンパク質および炭水化物の豊富な供給源を提供する」ものである旨が記載され,実施例においても,これら三栄養素のうちの個々の栄養素を単独で含む飼料については開示されていない。また,請求項1には,請求項2に記載されるように,「飼料組成物が,2以上の異なる組成物として提供され」との限定も存在しないことから,「飼料組成物」が一つの組成物からなるものをも包含している。 そして,請求項5を引用する請求項6に係る発明は, ・脂肪の供給源が,「エネルギー比で50%から75%までの脂肪を含 む」 ・タンパク質の供給源が,「エネルギー比で50%から75%までのタ ンパク質を含む」 ことを発明特定事項とし,それらの脂肪及びタンパク質の供給源は,請求項1に記載された「飼料組成物」であるが,一方の栄養素の最大成分量75%と,他方の栄養素の最小成分量50%との和が100%を超えており,技術的に正しくない記載を含んでいる。 また,請求項5を引用する請求項6をさらに引用する請求項7に係る発明は,上記二つの栄養素に加え,さらに, ・炭水化物の供給源が,「炭水化物:エネルギー比で25%から50% までの炭水化物を含む」 ことを発明特定事項としているが,これら三栄要素の最小成分量(脂肪:50%,タンパク質:50%,炭水化物:25%)の合計も100%を超えており,技術的に正しくない記載である。 してみると,請求項6及び7は,発明特定事項の内容に技術的な欠陥を有しており,その結果,発明が不明確となっている(参考:「特許・実用新案審査基準」第I部第1章2.2.2.1(2)欄の例1(http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tjkijun_i-1.pdf))。 よって,請求項6及び7の記載は,特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。 4.むすび 以上のとおり,本願は,特許請求の範囲の請求項1,4並びに6及び7の記載が特許法第36条第6項第1号又は第2号の要件を満たしていないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,拒絶をすべきものである。 |
審理終結日 | 2011-09-02 |
結審通知日 | 2011-09-06 |
審決日 | 2011-09-20 |
出願番号 | 特願2004-561669(P2004-561669) |
審決分類 |
P
1
8・
57-
Z
(A23K)
P 1 8・ 575- Z (A23K) P 1 8・ 537- Z (A23K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松本 隆彦 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
鈴野 幹夫 仁科 雅弘 |
発明の名称 | コンパニオンアニマルのための食餌を最適化する方法 |
代理人 | 佐久間 剛 |
代理人 | 柳田 征史 |