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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) F25D
管理番号 1251515
判定請求番号 判定2011-600041  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2012-03-30 
種別 判定 
判定請求日 2011-09-20 
確定日 2012-02-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第3610005号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号物件目録に示す「横型冷蔵庫」は、特許第3610005号発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1 請求の趣旨と手続の経緯
判定請求人の請求の趣旨は、イ号物件目録に示す横型冷蔵庫は、特許第3610005号(以下「本件特許」という。)の請求項1?3に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

また、本件に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
平成12年12月 4日 本件特許に係る特許出願
平成16年 9月24日 特許査定
平成16年10月22日 本件特許登録
平成23年 9月20日 本件判定請求
平成23年11月11日 判定請求答弁書
平成23年11月28日 審尋
平成23年12月27日 判定請求回答書(請求人)
平成23年12月27日 判定請求回答書(被請求人)

第2 本件特許発明
1.本件特許発明の構成
本件特許発明は、願書に添付した明細書及び図面(以下「特許明細書」という。)の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものであり、請求項1ないし3に係る発明(以下「本件特許発明1ないし3」という。)の構成要件を分説すると以下のとおりである。

(1)本件特許発明1
A 天板(19)が配設される天井部に冷気用の開口部が形成されていない断熱箱体(16)に内部画成した冷蔵室(17)を、
B 冷凍機構(24)の冷却器(27)により冷却された空気を強制対流させることで冷却すると共に、
C 前記断熱箱体(16)における天板(19)の上面にショーケース(12)が配置された横型冷蔵庫において、
D 前記ショーケース(12)は、
E 外箱(37)と、
F この外箱(37)の内部に所要の空間を存して設けられた内箱(38)と、
G 両箱(37,38)間に充填した断熱材(39)とから前記断熱箱体(16)とは別体に構成されて、前記断熱箱体(16)の上面に断熱的に完全に遮断された状態で配置されると共に、その上部にのみ開口部(12a)が設けられ、
H 前記冷凍機構(24)に接続する冷却パイプ(47)が前記内箱(38)の断熱材(39)側の外面に接触するよう配設されて内箱(38)を冷却し、
I 該内箱(38)に接触して冷却された空気が自然対流することによりショーケース(12)に内部画成した収納室(40)を冷却するよう構成したことを特徴とする横型冷蔵庫。

(2)本件特許発明2
A 天板(19)が配設される天井部に冷気用の開口部が形成されていない断熱箱体(16)に内部画成した冷蔵室(17)を、
B 冷凍機構(24)の冷却器(27)により冷却すると共に、
C 前記断熱箱体(16)における天板(19)の上面にショーケース(12)が配置された横型冷蔵庫において、
D 前記ショーケース(12)は、
E 外箱(37)と、
F この外箱(37)の内部に所要の空間を存して設けられた内箱(38)と、
G 両箱(37,38)間に充填した断熱材(39)とから前記断熱箱体(16)とは別体に構成されて、前記断熱箱体(16)の上面に断熱的に完全に遮断された状態で配置されると共に、その上部にのみ開口部(12a)が設けられ、
H 前記冷凍機構(24)に接続する冷却パイプ(47)が前記内箱(38)の断熱材(39)側の外面に接触するよう配設され、
I 該冷却パイプ(47)を介してショーケース(12)に内部画成した収納室(40)を冷却するよう構成すると共に、
J 前記外箱(37)と内箱(38)との前後の上端部間にレール部材(43,44)が配設されて、両レール(43,44)間に該開口部(12a)を開閉する断面コ字状の扉(45)を載置することで、
K 前記ショーケース(12)の開口部(12a)に該扉(45)が着脱可能でかつスライド可能に配設されていることを特徴とする横型冷蔵庫。

(3)本件特許発明3
A 前記冷却器(27)による冷蔵室(17)の冷却を継続したまま、
B 前記冷却パイプ(47)による収納室(40)の冷却を停止させる停止手段(64)を備える請求項1または2記載の横型冷蔵庫。

2.本件特許発明1ないし3の目的及び効果
(1)特許明細書における本件特許発明1ないし3の目的及び効果の記載(下線は当審で付与。以下、同様。)
ア.目的(段落【0007】)
「本発明は、前述した欠点に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、冷蔵室および収納室の冷却効率を向上すると共に、冷却能力が低下するのを抑制し得、併せてショーケースを使用しない場合の冷蔵室側の冷却効率の低下を防止し得る横型冷蔵庫を提供することを目的とする。」
イ.作用効果(段落【0033】?【0035】)
「以上説明した如く、本発明に係る横型冷蔵庫では、冷蔵室を画成する断熱箱体における天板上に断熱的に完全に遮断された状態で設置される断熱構造のショーケースには、その上部にのみ開口部が設けられるから、ショーケースに画成される収納室と前記冷蔵室とでの空気の流通はなく、冷蔵室を冷却する冷却器に短時間で多くの霜が付いて冷凍能力が低下するのは抑制される。しかも、ショーケースの収納室は、冷却パイプにより冷却される内箱に接触して冷却された冷気の自然対流方式であるから、収納されている食材等を乾燥させることなく長期に亘って鮮度を維持した状態で保冷することができる。また、開口部はショーケースの上部にのみ開設されているから、該開口部からの収納室内の冷気の流出を抑制し得ると共に、室外の湿った軽い暖気の開口部からの流入も抑制され、収納室の冷却能力が低下するのを抑えると共に収納室の温度変化を少なくして、食材等が劣化するのを防ぐことができる。
更に、断熱箱体からショーケースを分離して断熱箱体側のみを使用する場合に、該断熱箱体の天井部には冷気用の開口部は形成されていないから、該天井部の断熱性能の低下や強度低下を生ずることはない。すなわち、断熱箱体における冷蔵室の冷却能力が低下したり、断熱箱体に配設された天板上での調理に際してたわみや沈み込み等が発生することはない。またショーケースの開口部を開閉する扉は、該ショーケースに着脱可能でかつスライド可能に配設されるから、開口部を全開状態で使用することができ、食材等の収納作業性も向上する。しかも、開口部は上部にのみあるので、開口部を全開としても冷気の損失を最小限に抑えることができ、食材等の鮮度を維持し得る利点がある。
また、ショーケースを使用しない場合は、停止手段によって冷蔵室の冷却を継続したまま収納室の冷却のみを停止することができ、省エネ効果を期待し得ると共に、冷蔵室の効率的な冷却を達成し得る。これにより、圧縮機負荷を小さくすることができ、該圧縮機の寿命を延ばし得ると共に、消費電力を小さくしてランニングコストを低廉に抑えることができる。なお、冷蔵室の冷却を継続した状態で、停止手段により収納室の冷却を停止することで、該収納室の除霜処置を行なってから清掃することが可能であり、清掃性が良いと云う利点を有する。」

(2)まとめ
上記(1)の記載を考慮すると、本件特許発明1ないし3は、以下の効果を奏するものであると認められる。
ア.ショーケースの収納室と冷蔵室とを断熱的に完全に遮断された状態で設置し、ショーケースの上部にのみ開口部が設けられることで、冷蔵室および収納室の冷凍能力が低下するのを抑制する。
イ.ショーケースの収納室を、冷却パイプにより冷却される内箱に接触して冷却された冷気の自然対流で冷却することで、収納されている食材等を乾燥させることなく長期に亘って鮮度を維持した状態で保冷する。
ウ.ショーケースの開口部を開閉する扉を該ショーケースに着脱可能でかつスライド可能に配設することで、開口部を全開状態で使用することができ、食材等の収納作業性も向上する。
エ.ショーケースを使用しない場合は、停止手段によって冷蔵室の冷却を継続したまま収納室の冷却のみを停止することで、冷蔵室の効率的な冷却を達成する。

第3 イ号物件
1.イ号物件説明書の記載
平成23年12月27日付け請求人回答書
「被請求人が製造・販売するネタケース付コールドテーブル冷蔵庫(型式番号:RXC-40RM7-NC)(以下、イ号物件という)は、この目録に添付したイ号図面に示したように、横型の冷蔵庫本体50の天板51上面に寿司ネタを収納するネタケース40を載置固定して構成されている。 冷蔵庫本体50の内部に画成した冷蔵室においては、同冷蔵庫本体の左側に設けた冷凍機構53の冷却器により冷却された空気が庫内ファンの作動により強制対流するようになっている。
ネタケース40は、外箱41と内箱42の間の空間に断熱材47を充填して冷蔵庫本体とは別体に構成され、その上部にのみ開口部43が設けられている。開口部43は、外箱41と内箱42との前後の上端部間に配設した一対のレール部材44、44に載置した透明なスライド扉45によって開閉される。内箱42の断熱材側の外面(底壁の外面)に均熱シート71を介して蛇行状の冷却パイプ70がアルミ泊テープにより固定されている。この冷却パイプ70は冷蔵庫本体50の前記冷却機構53に接続されている。ネタケース40の内部に画成した収納室46は、内箱42の内面に接触して冷却された空気により冷却される。ネタケース40の不使用時には、冷凍機構53の冷却器による冷蔵室の冷却を継続した状態にて冷却パイプ70による収納室46の冷却を停止できるようになっている。」

2.当審によるイ号物件の認定
イ号物件の図面をみると、図2にも明示されているように、外箱41と内箱42との前後の上端部間にレール部材44、44が配設されるものである。また、図1も参酌すると、両レール部材44、44間に開口部43を開閉する断面コ字状のスライド扉45を載置することで、ネタケース40の開口部43に該スライド扉45が着脱可能でかつスライド可能に配設されているものと認められる。

そうしてみると、イ号物件は、その構成を本件特許発明の分説に合わせて、構成a?kに分説すると、次のとおりのものと認められる。

a 天板51が配設される天井部に冷気用の開口部が形成されていない横型の冷蔵庫本体50の内部に画成した冷蔵室52を、
b 冷凍機構53の冷却器により冷却された空気を庫内ファンの作動により強制対流させることで冷却すると共に、
c 前記冷蔵庫本体50の天板51上面にネタケース40が配置され、
d ネタケース40は、
e 外箱41と、
f 外箱41の内部に空間を存して設けられた内箱42と、
g 外箱41と内箱42の間に充填した断熱材とにより前記冷蔵庫本体50とは別体に構成されて、同冷蔵庫本体50の上面に断熱的に完全に遮断された状態で配置されると共に、その上部にのみ開口部43が設けられ、
h 前記冷凍機構53に接続する冷却パイプ70が前記内箱42の断熱材側の外面(底壁の外面)に均熱シート71を介して配置されて前記内箱42を冷却し、
i 前記内箱42の内面に接触して冷却された空気によりネタケース40の内部に画成した収納室46を冷却するように構成し、
j 前記外箱41と内箱42との前後の上端部間にレール部材44、44が配設されて、両レール部材44、44間に前記開口部43を開閉する断面コ字状のスライド扉45を載置することで、前記ネタケース40の開口部43に該スライド扉45が着脱可能でかつスライド可能に配設され、
k 前記冷凍機構53の冷却器による前記冷蔵室52の冷却を継続した状態にて前記冷却パイプ70による前記収納室46の冷却を停止できる横型冷蔵庫。

第4 当事者の主張
イ号物件が本件特許発明1の構成要件B、D?Fを充足すること、本件特許発明2の構成要件B、D?Fを充足すること、および、本件特許発明3の構成要件A、Bを充足することについて、請求人と被請求人との間に争いはない。
当事者間に争いのある、本件特許発明の構成要件についての、請求人及び被請求人の主張の概要は、以下のとおりである。

1.本件特許発明1および2の構成要件A、Cについて
(1)請求人の主張
ア.イ号物件におけるネタケースは、寿司ネタを収納するケースであることにおいて、本件特許発明1におけるショーケース(12)と同じである。従って、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件A,B,Cにより特定した横型冷蔵庫と同じ構成を備えている。同様に、イ号物件は、本件特許発明2の構成要件A,B,Cにより特定した横型冷蔵庫と同じ構成を備えている。

(2)被請求人の主張
ア.判定請求人は、イ号物件説明書およびイ号図面において、冷蔵庫本体が断熱箱体に内部区画した冷蔵室を備えるものである点について何ら立証しておらず、冷蔵庫本体が断熱箱体を備えるものである点、および当該断熱箱体には冷気用の開口部が形成されていない点について何ら立証されていない。具体的には、イ号図面には冷蔵庫本体の記載はあるものの、断熱箱体について全く記載が無い。加えて、「4 イ号物件の構成」の欄(判定請求書第5頁)における構成a等の分説においても、イ号物件における断熱箱体の存在について判定請求人は全く言及していない。従って、判定請求人のイ号物件の特定に拠れば、イ号物件は、その冷蔵庫本体に断熱箱体に内部区画した冷蔵室を具備しないものとなり、また、当該断熱箱体には冷気用の開口部が形成されていないものとなる。

2.本件特許発明1および2の構成要件Hについて
(1)請求人の主張
ア.イ号物件においては、冷凍機構に接続した冷却パイプ70が均熱シート71を介してネタケース40の内箱42の断熱材側外面(底壁の外面)に配置されているので、イ号物件は文言解釈において本件特許発明1および2の構成要件Hを充足していないことについては認める。
イ.均熱シートは、内箱42の断熱材側の外面(底壁の外面)に固着して介在することにより、内箱42の内面が冷却パイプ70によって均一に冷却される役目を果たしているに過ぎない。因みに、この種の均熱シートは、冷蔵庫、冷凍庫等に組み込まれる冷却板に冷却パイプを配設するとき必要に応じて使用されるのであって、このことは、例えば、本件特許発明1?3の出願前に公開された、特開平4-335979号公報における記載事項によっても明らかなとおり、当業者に周知の技術事項である。この意味において、イ号物件における均熱シートは、単なる付加に過ぎない。
ウ.本件特許発明1および2とイ号物件とは技術的な主要部が共通しており、冷却パイプ(47)を内箱の断熱材側外面に接触するように配置するか、或いはイ号物件におけるように均熱シートを介して配置するかは、この種の技術分野における当業者にとって単なる設計上の問題に過ぎない。
エ.冷蔵庫、冷凍機等の冷凍機構に組込まれる冷却パイプは、熱伝導性の良好な金属性の冷却板に鉛によって半田付けされるのが普通であって、この場合には溶融した鉛の層が冷却パイプと冷却板の間に介在して当該冷却板を均一に冷却する役目を果たしている。これと同様に、イ号物件における均熱シート71は、内箱42の断熱材側外面に固着して介在することにより、内箱42の内面が冷却パイプ70によって均一に冷却されるようにする役目を果たしているに過ぎない。
オ.イ号物件における均熱シート71は内箱42の底壁の外面に接着して裏打ちされているのであって、この均熱シート71の断熱材側外面が本件特許発明1及び2における内箱(38)の断熱材側外面に対応していると解した場合には、イ号物件における冷却パイプ70は本件特許発明におけるものと同様に内箱42の断熱材側外面に接触して配置されていると看做される。

(2)被請求人の主張
ア.本件特許発明1および2では、冷凍機構(24)に接続する冷却パイプ(47)が内箱(38)の断熱材(39)側の外面に接触するように配置されて内箱(38)を冷却していることを必須の構成要件とするのに対して、イ号物件では、冷凍機構(53)に接続する冷却パイプ(70)が均熱シート(71)を介してネタケース(40)の内箱(42)の断熱材側の外面に配置されており、該冷却パイプ(70)が内箱(42)の断熱材側の外面に接触するように配置されておらず、イ号物件が本件特許発明1および2の構成要件Hを充足しないことは、判定請求人も認める争いの無い事実である(判定請求書第8頁の「相違点:」の欄参照)。
イ.判定請求人は、「イ号物件における「均熱シート」は本件特許発明1および2における構成要件Hの単なる付加にすぎない。」と主張するが(判定請求書第10頁の「争点:」の欄参照)、上記のように、文言解釈に基づけばイ号物件は構成Hを充足しないこと、および判定請求人が文言解釈以上のクレーム解釈論を述べていないことに鑑みれば、均熱シートが単なる付加であるか否かという争いとは無関係に、イ号物件は本件特許発明1および2の構成要件Hを充足せず、イ号物件は本件特許発明1および2の技術的範囲には属さないとの結論に至る。
ウ.均熱シート(71)を配しない場合には、底壁の下方にのみ冷却パイプ(70)を配した場合であっても、内箱(42)内に自然対流が生じるおそれがあり、伝熱のみによる冷却を行う形態では、均熱シート(71)が不可欠である。このため、均熱シート(71)が単なる付加であるとは全く言えず、判定請求人による「イ号物件における均熱シートは単なる付加に過ぎない。」旨の主張は失当である。

3.本件特許発明1の構成要件Iについて
(1)請求人の主張
ア.本件特許発明1に記載の「自然対流」は、明細書の段落【0003】に記載した横型冷蔵庫におけるように庫内ファンによって冷却空気が強制的に対流するのではなく、ショーケースの内箱の内面に接触して冷却された空気が収納室内にて自然に対流することを意味しているのであって、イ号物件においてもネタケースの内箱底壁に接触して冷却された空気が収納室内にて強制的に対流されることなく自然に対流することは明らかである。
イ.本件特許発明1のショーケースにおける内箱(38)の断熱材(39)側の外面には冷却パイプ(47)によって直ちに冷却される部分と冷却され難い部分があるため、内箱(38)の内面に接触して冷却される空気の温度差により自然に冷却空気の対流が生じるのであって、この現象はイ号物件におけるように均熱シートを介して冷却パイプを内箱の外面に配設しても、不可避的に同様に生じることは明らかである。
ウ.内箱42の底壁下面に均熱シートを介在させたとしても、内箱42の底面が冷却パイプ70に給送される冷媒によって完全に均一に冷却されることはありえず、ネタケースの収納室内に収納された寿司ネタ等の影響により内箱の内部に冷却空気の温度差が生じて、冷却空気の自然対流が生じることは明らかである。

(2)被請求人の主張
ア.「4 イ号物件の構成」の欄(判定請求書第5頁)における各構成の分説においても、判定請求人はイ号物件が自然対流することによって収納室が冷却されるものであることを全く言及していない。
イ.本件特許発明1では内箱に接触して冷却された空気が自然対流することによりショーケースに内部区画した収納室を冷却するように構成されていることを構成要件として含むものとなっており、イ号物件が本件特許発明1の構成要件Iを充足するとの結論に至るためには、イ号物件において「自然対流」という自然現象が、イ号物件のネタケースの収納室内で生じている事実を判定請求人が立証する必要があるところ、判定請求人は当該事実の立証を全く怠っている。
ウ.イ号物件においては、「伝導」のみにより、収納室(46)の内箱(42)内を冷却している。かかる「伝導」による冷却を実現するため、イ号物件では、内箱(42)の底壁の下方のみ、均熱シート(71)を介して冷却パイプ(70)を配している。このため、イ号物件においては、均熱シート(71)によって、底壁の全体が均一に冷却パイプ(70)を流れる冷媒により「伝導」により冷却され、次いで、このように均一に冷却された底壁により、該底壁に接する内箱(42)内の最下方の空気が「伝導」により底壁および均熱シート(71)を介して冷却パイプ(70)を流れる冷媒により冷却され、次いで、内箱(42)内の上方の空気から最下方の空気に向かって「伝導」により熱が伝熱され、これらによって、内箱(42)内の全体が冷却されるようにしている(乙第4号証)。すなわち、イ号物件では、内箱(42)内で空気の「自然対流」は一切生じず、「伝導」のみにより、内箱(42)内の空気が下方から上方に向かって冷却されるようにしている。
エ.以上のような「伝導」のみによる冷却を実現するためには、均熱シート(71)の存在は技術的に大いに意味がある。よって、均熱シート(71)を介して冷却パイプ(70)を内箱(42)の外面に配設しても、不可避的に自然対流が生じているとは全く言えず(イ号物件では自然対流は生じておらず)、判定請求人による「均熱シートを介して冷却パイプを内箱の外面に配設しても、不可避的に自然対流が生じている」旨の主張は失当である。

4.作用効果について
(1)請求人の主張
ア.本件特許発明1および2においては、天井部に冷気用の開口部が形成されていない断熱箱体(16)の天板(19)に上部にのみ開口部を設けて配置したショーケース(12)において、その収納室(40)内を冷却するために内箱(38)の断熱材側外面に冷却パイプを配置したことに構成上の特徴があり、断熱箱体(16)の内部に画成した冷蔵室(17)が冷却空気の強制対流により冷却され、ショーケース(12)の内部に画成した収納室(40)が冷却空気の自然対流により冷却されることに機能上の特徴がある。これと対比して、イ号物件は上述した構成上の特徴と機能上の特徴を有していることは明らかである。

(2)被請求人の主張
ア.判定請求人は、イ号物件が本件特許発明1および2の作用効果を奏するか否かについて全く検討しておらず、イ号物件は本件特許発明1および2の作用効果を奏しないものと言わざるを得ない。

第5 当審の判断
イ号物件の構成が、本件特許発明1ないし3の各構成要件を充足するか否かについて検討する。

1.本件特許発明1とイ号物件との対比・判断
(1)構成要件B、D?Fについて
イ号物件の「冷凍機構53」、「冷却器」、「ネタケース40」、「外箱41」、「内箱42」は、それぞれ、本件特許発明1の「冷凍機構(24)」、「冷却器(27)」、「ショーケース(12)」、「外箱(37)」、「内箱(38)」に相当するから、イ号物件の構成b、d?fは、本件特許発明1の構成要件B、D?Fに該当することは明らかであって、当事者間にも争いはない。
よって、イ号物件は本件特許発明1の構成要件B、D?Fを充足する。

(2)構成要件A、C、Gについて
イ号物件の「天板51」、「冷蔵室52」、「ネタケース40」、「外箱41と内箱42」、「断熱材」、「開口部43」は、それぞれ、本件特許発明1の「天板(19)」、「冷蔵室(17)」、「ショーケース(12)」、「両箱(37,38)」、「断熱材(39)」、「開口部(12a)」に相当するから、本件特許発明1の構成要件A、C、Gとイ号物件の構成a、c、gとを対比すると、本件要件A、C、Gが「断熱箱体(16)」を備えているのに対し、構成a、c、gが「断熱箱体(16)」に相当するものを備えていない点で一応相違する。
ここで、冷蔵庫の技術分野において、冷蔵室を断熱箱体の内部に画成することは技術常識であり、イ号物件においても、「冷蔵庫本体50」内に断熱箱体が配置され、当該断熱箱体の内部に「冷蔵室52」が画成されていることは明らかである。
よって、イ号物件は本件特許発明1の構成要件A、C、Gを充足する。

(3)構成要件Hについて
本件特許発明1の構成要件Hとイ号物件の構成hとを対比すると、本件要件Hが「冷却パイプ(47)が前記内箱(38)の断熱材(39)側の外面に接触するよう配設されて」いるのに対し、構成hが「冷却パイプ70が前記内箱42の断熱材側の外面(底壁の外面)に均熱シート71を介して配置されて」いる点で一応相違する。しかしながら、以下に検討するようにこの相違は構成hが構成要件Hを充足することに影響しないものである。

本件特許発明1の構成要件Hに関して、明細書には以下の記載がある。
ア.段落【0003】
「【発明が解決しようとする課題】
前述した横型冷蔵庫では、予め下ごしらえされた多数の食材等をショーケースの収納室に収納しておき、調理時には収納室から取出してショーケースより手前側の断熱箱体上面で調理等を行なっている。この場合において、冷蔵庫の冷却方式が、前記冷蔵室および収納室に冷気を庫内ファンを用いて強制的に対流させる方式であるため、収納室に収納されている食材等は冷気の流れによって乾燥し、鮮度が低下し易くなる難点が指摘される。なお、冷蔵室から導入される冷気により冷却される伝熱パネルをショーケースに配設し、該伝熱パネルにより冷却された冷気の自然対流によって、収納室を冷却する方式が提案されている。この自然対流方式の冷却では、収納室内の食材等の乾燥は抑制されるが、該ショーケースに開設される取出口には伝熱パネルを配設できないため、該パネルによる冷却面積は少なく、冷却効率が低い問題がある。」
イ.段落【0016】
「図1に示す如く、前記内箱38の底面部および後面部における断熱材側の外面には、前記冷凍機構24に接続する冷却パイプ47が接触する状態で蛇行状に配設され、冷凍機構24から供給される冷媒の循環により内箱38の全体を冷却するよう構成される。すなわち、前記収納室40は、内箱38により冷却された冷気の自然対流により冷却されるようになっている。なお内箱38は、熱伝導性の良好な材料で形成され、収納室40の効率的な冷却を行ない得るよう構成してある。」
ウ.段落【0018】
「・・・また凝縮器34で凝縮された液化冷媒の一部が第2キャピラリーチューブ57を介して冷却パイプ47にも分岐供給され、該冷却パイプ47において第2キャピラリーチューブ57を経て減圧された液化冷媒が膨張気化することで熱交換がなされ、該冷却パイプ47により冷却される内箱38を介して収納室40を冷却するよう構成してある。」
エ.段落【0025】
「また、前記第2キャピラリーチューブ57を流通する液化冷媒は、前記第2熱交換部63において前記冷却パイプ47の第2帰還管60との間で熱交換して過冷却された後に、冷却パイプ47中で一挙に膨張して蒸発することにより、前記内箱38と熱交換を行なって冷却させている。内箱38は熱伝導性の良好な材料で形成されているから、該内箱38の底面部、前面部、後面部および両側面部が効率的に冷却され、前記収納室40内において内箱38に接触する空気が冷却され、この冷気が自然対流することで収納室40が冷却される。すなわち、ショーケース12においては、収納室40は冷気の自然対流方向により冷却されているから、該収納室40に収納されている食材等が冷気の流れによって乾燥するおそれはない。」
オ.段落【0027】
「・・・しかも、ショーケース12は、その内箱38の底面部、前面部、後面部および両側面部の全てが断熱材39で覆われており、かつ冷却パイプ47が接触する内箱38を熱伝導性の良好な材料で形成しているから、断熱性能が良好で、内箱38の全体を均一かつ効率的に冷却し、これによって収納室40内で温度ムラが生ずるのを抑制し得る。」
カ.段落【0033】
「【発明の効果】
・・・しかも、ショーケースの収納室は、冷却パイプにより冷却される内箱に接触して冷却された冷気の自然対流方式であるから、収納されている食材等を乾燥させることなく長期に亘って鮮度を維持した状態で保冷することができる。・・・」

上記記載を検討すると、構成要件Hは、冷却方式が庫内ファンによる強制対流だと食材の乾燥による鮮度低下の問題があり、一方伝熱パネルによる自然対流では食材の乾燥は抑制できるが冷却面積が少なく冷却効率が低いとの課題があり、これらの課題に対応してなされた構成である。また、上記記載によれば、「自然対流」は庫内ファンなどにより冷却空気が強制的に対流するのではなく、冷却空間に冷却用の部材を配置することにより冷却された冷却空気の自然に生じる対流を意味するものである。
そして、構成要件Hの「冷却パイプ(47)が前記内箱(38)の断熱材(39)側の外面に接触する」は、上記課題の一つである自然対流方式のための伝熱パネルでは冷却面積が少ないことに対応して冷却に内箱全体を利用することで広い冷却面積を得ようとするためのものであり、かつ、「冷却パイプ」が「内箱」に「接触」することは、実施例に記載された「冷却パイプ47が接触する状態で蛇行状に配設」することや「内箱38は、熱伝導性の良好な材料で形成」することで「内箱38の全体を均一かつ効率的に冷却」するものであることからみて、冷却パイプの熱を内箱全体に効率的に伝えるための構成といえる。
してみると、構成要件Hは冷凍機構に接続する冷却パイプからの熱を内箱全体に効率よく伝えることに技術的意義があるものである。

本来、本件特許発明1の構成要件Hと同様の構成、つまり、均熱シートを介さず冷却パイプを内箱の断熱材側の外面に接触するよう(蛇行状に)配設すれば、内箱全体を均一かつ効率的に冷却するという本件特許発明の技術的意義は満たされるが、イ号物件においては、内箱全体をより均一に冷却するという作用を奏させるために、均熱シートを介して冷却パイプと内箱の断熱材側の外面とを接触させたものであり、均熱シートは冷却パイプからの熱を内箱に伝えるに際して、より均一に伝えるためのものであって、本件特許発明1の課題を解決するための付加的な構成といえるものである。そして、この付加的な構成である均熱シートは、内箱に接触して冷却パイプの熱により内箱を冷却するものであるから、冷却パイプの一部と解することができるものである。
してみると、冷却パイプの一部である均熱シートが内箱の断熱材側の外面に接触していることから、イ号物件の構成hは、冷却パイプが内箱の外面に接触しているものと解される。
したがって、イ号物件の構成hは本件特許発明1の構成要件Hに該当する。
なお、このような熱をより均一に伝える作用を奏させるために、冷蔵庫、冷凍庫等に組み込まれる冷却パイプを均熱シートを介して配置することは、当業者にとって周知の技術事項である。
また、上記相違について、被請求人は、「文言解釈に基づけばイ号物件は構成Hを充足しないこと、および判定請求人が文言解釈以上のクレーム解釈論を述べていないことに鑑みれば、均熱シートが単なる付加であるか否かという争いとは無関係に、イ号物件は本件特許発明1および2の構成要件Hを充足せず、イ号物件は本件特許発明1および2の技術的範囲には属さないとの結論に至る。」と主張している。
しかし、均熱シートは、上記のとおり冷却パイプと一体のものと解されるものであるから、上記被請求人の主張は採用できない。
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件Hを充足するものである。

(4)構成要件Iについて
本件特許発明1の構成要件Iとイ号物件の構成iとを対比すると、本件要件Iが「内箱(38)に接触して冷却された空気が自然対流することによりショーケース(12)に内部画成した収納室(40)を冷却する」のに対し、構成iが「内箱42の内面に接触して冷却された空気によりネタケース40の内部に画成した収納室46を冷却する」点で一応相違する。しかしながら、以下のとおり、この相違は構成iが構成要件Iを充足することに影響しないものである。
すなわち、本件特許発明1の「自然対流」とは、上記(3)で述べたとおり庫内ファンなどにより冷却空気が強制的に対流するのではなく、冷却空間に冷却用の部材を配置することにより、自然に生じる対流を意味するものであって、イ号物件においてはネタケース内の空気はファンによって強制的に対流されるものではなく、内箱が冷却パイプにより冷却されることによってネタケース内が冷却されるものであり、ネタケース内は自然対流により冷却されるものである。
この点について、被請求人は、「イ号物件では、内箱(42)の底壁の下方のみ、均熱シート(71)を介して冷却パイプ(70)を配している。このため、イ号物件においては、均熱シート(71)によって、底壁の全体が均一に冷却パイプ(70)を流れる冷媒により「伝導」により冷却され、次いで、このように均一に冷却された底壁により、該底壁に接する内箱(42)内の最下方の空気が「伝導」により底壁および均熱シート(71)を介して冷却パイプ(70)を流れる冷媒により冷却され、次いで、内箱(42)内の上方の空気から最下方の空気に向かって「伝導」により熱が伝熱され、これらによって、内箱(42)内の全体が冷却されるようにしている(乙第4号証)。すなわち、イ号物件では、内箱(42)内で空気の「自然対流」は一切生じず、「伝導」のみにより、内箱(42)内の空気が下方から上方に向かって冷却されるようにしている。」と主張している。
しかしながら、内箱の底壁下面に均熱シートを介在させたとしても、内箱の底面が冷却パイプに給送される冷媒によって完全に均一に冷却されることはありえないこと、および、ネタケースの収納室内に収納された寿司ネタ等の影響により、内箱の内部に冷却空気の温度差が生じて、冷却空気の自然対流が生じると解されることから、上記被請求人の主張は採用できない。
よって、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件Iを充足する。

(5)本件特許発明1とイ号物件の作用効果
イ号物件においても、ネタケース40は、冷蔵庫本体50とは別体に構成されて、同冷蔵庫本体50の上面に断熱的に完全に遮断された状態で配置されると共に、その上部にのみ開口部43が設けられることで、冷蔵庫本体50内の冷蔵室52およびネタケース40内の収納室46の冷凍能力が低下するのを抑制することができるものである。また、冷却パイプ70が内箱42の断熱材側の外面に均熱シート71を介して配置されて前記内箱42を冷却し、前記内箱42に接触して冷却された空気によりネタケース40内の収納室46を冷却する、つまり、収納室46内で強制対流させずに冷却することで、収納されている食材等を乾燥させることなく長期に亘って鮮度を維持した状態で保冷するものである。
よって、イ号物件の作用効果は本件特許発明1の作用効果と格別差異があるとはいえない。

(6)以上、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件A?Iの全てを充足するものであり、かつ作用効果においても格別差異は認められないので、本件特許発明1の技術的範囲に属するものといえる。

2.本件特許発明2とイ号物件との対比・判断
(1)構成要件B、D?Fについて
イ号物件の「冷凍機構53」、「冷却器」、「ネタケース40」、「外箱41」、「内箱42」は、それぞれ、本件特許発明2の「冷凍機構(24)」、「冷却器(27)」、「ショーケース(12)」、「外箱(37)」、「内箱(38)」に相当するから、イ号物件の構成b、d?fは、本件特許発明2の構成要件B、D?Fに該当することは明らかであって、当事者間にも争いはない。
よって、イ号物件は本件特許発明2の構成要件B、D?Fを充足する。

(2)構成要件A、C、Gについて
上記「1.本件特許発明1とイ号物件との対比・判断」の「(2)構成要件A、C、Gについて」での検討と同様の検討により、イ号物件は本件特許発明2の構成要件A、C、Gを充足する。

(3)構成要件Hについて
本件特許発明2の構成要件Hとイ号物件の構成hとを対比すると、本件要件Hが「冷却パイプ(47)が前記内箱(38)の断熱材(39)側の外面に接触するよう配設され」ているのに対し、構成hが「冷却パイプ70が前記内箱42の断熱材側の外面(底壁の外面)に均熱シート71を介して配置され」ている点で一応相違する。
しかし、上記「1.本件特許発明1とイ号物件との対比・判断」の「(3)構成要件Hについて」での検討と同様の検討により、イ号物件の構成hは本件特許発明2の構成要件Hに該当する。
よって、イ号物件は、本件特許発明2の構成要件Hを充足するものである。

(4)構成要件Iについて
本件特許発明2の構成要件Iとイ号物件の構成iとを対比すると、本件要件Iが「該冷却パイプ(47)を介してショーケース(12)に内部画成した収納室(40)を冷却する」のに対し、構成iが「前記内箱42の内面に接触して冷却された空気によりネタケース40の内部に画成した収納室46を冷却する」点で一応相違する。
しかし、イ号物件の構成hの「前記冷凍機構53に接続する冷却パイプ70が前記内箱42の断熱材側の外面(底壁の外面)に均熱シート71を介して配置されて前記内箱42を冷却し」から明らかなように、イ号物件においては「冷却パイプ70」が「内箱42」を冷却し、当該「内箱42」に接触して冷却された空気により「収納室46」を冷却することから、「冷却パイプ70」を介して「収納室46」を冷却するという点においては、本件特許発明2の構成要件Iとの間に差異は認められない。
よって、イ号物件は、本件特許発明2の構成要件Iを充足するものである。

(5)構成要件J、Kについて
イ号物件の「外箱41」、「内箱42」、「レール部材44、44」、「開口部43」、「スライド扉45」、「ネタケース40」は、それぞれ、本件特許発明2の「外箱(37)」、「内箱(38)」、「レール部材(43,44)」、「開口部(12a)」、「扉(45)」、「ショーケース(12)」に相当するから、イ号物件の構成jは、本件特許発明2の構成要件J、Kに該当することは明らかである。
よって、イ号物件は本件特許発明2の構成要件J、Kを充足する。

(6)本件特許発明2とイ号物件の作用効果
イ号物件においても、本件特許発明2と同様、両レール部材44、44間に開口部43を開閉する断面コ字状の扉スライド45を載置し、ネタケース40の開口部43に該スライド扉45が着脱可能でかつスライド可能に配設することで、開口部を全開状態で使用することができ、食材等の収納作業性も向上するものであるから、イ号物件の作用効果は本件特許発明2の作用効果と格別差異があるとはいえない。

(7)以上、イ号物件は、本件特許発明2の構成要件A?Kの全てを充足するものであり、かつ作用効果においても格別差異は認められないので、本件特許発明2の技術的範囲に属するものといえる。

3.本件特許発明3とイ号物件との対比・判断
(1)構成要件A、Bについて
イ号物件の「冷却器」、「冷蔵室52」、「冷却パイプ70」、「収納室46」は、それぞれ、本件特許発明3の「冷却器(27)」、「冷蔵室(17)」、「冷却パイプ(47)」、「収納室(40)」に相当するから、イ号物件の構成kは、本件特許発明3の構成要件A、Bに該当することは明らかであって、当事者間にも争いはない。
よって、イ号物件は本件特許発明3の構成要件A、Bを充足する。

(2)本件特許発明3とイ号物件の作用効果
イ号物件においても、本件特許発明3と同様、冷凍機構53の冷却器による冷蔵室52の冷却を継続した状態にて冷却パイプ70による収納室46の冷却を停止できることで、冷蔵室52の効率的な冷却を達成するものであるから、イ号物件の作用効果は本件特許発明3の作用効果と格別差異があるとはいえない。

(3)以上、イ号物件は、本件特許発明3の構成要件の全てを充足するものであり、かつ作用効果においても格別差異は認められないので、本件特許発明3の技術的範囲に属するものといえる。

第6 むすび
以上のとおりであるから、イ号物件目録に示された横型冷蔵庫は、本件特許の請求項1?3に係る発明の技術的範囲に属するものである。

よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2012-02-01 
出願番号 特願2000-368949(P2000-368949)
審決分類 P 1 2・ 1- YA (F25D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長崎 洋一  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 松下 聡
青木 良憲
登録日 2004-10-22 
登録番号 特許第3610005号(P3610005)
発明の名称 横型冷蔵庫  
代理人 長谷 照一  
代理人 森本 聡  

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