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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1253040 |
審判番号 | 不服2009-10251 |
総通号数 | 148 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-05-25 |
確定日 | 2012-02-27 |
事件の表示 | 特願2008- 76587「デジタルビデオ符号化処理における可変精度ピクチャ間タイミング指定方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月14日出願公開、特開2008-187735〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 経緯 1 経緯 本願は、2003年7月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年7月15日、2002年11月8日米国)を国際出願日とする出願(特願2005-505120号)の一部を新たに特許出願したものであって、平成20年5月16日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成20年11月27日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がなされたが、平成21年2月12日付け(発送日同年2月24日)で拒絶査定がなされたものである 本件は、本願についてなされた上記拒絶査定を不服として平成21年5月25日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、平成21年5月25日付けで手続補正がなされ、さらに、平成21年6月23日付けで手続補正がなされたものである。 2 査定の概要 原査定の理由は、概略、次のとおりである。 [査定の理由] A.この出願の請求項1?18に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.Joint Video Team (JVT) of ISO/IEC MPEG and ITU-T VCEG, Working Draft Number 2, Revision 0 (WD-2) (JVT-B118), p.1,21,22,62-67, [online], 2001年12月3日, Joint Video Team (JVT), [2008年5月13日検索], インターネット C.この出願の請求項1?18に係る発明は、その出願の日前の出願であって、その出願後に特許法第41条第3項の規定により出願公開されたものとみなされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 記 先願1.特願2002-193027号(特開2004-088737号) D.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 ・理由D(2) 請求項1の記載からは、依然としてどのように特定の値を計算するのか不明である。(請求項10についても同様。) ・理由D(3) 請求項1の記載からは、依然として、第3ビデオピクチャがどのピクチャを参照画像にして符号化されているのかが明らかでないから、どのピクチャと第3ビデオピクチャの間の動きベクトルであるのか不明である。(「第2ビデオピクチャのための動きベクトル」についても同様に不明。)(請求項10についても同様。) ・理由D(4) 請求項2における「特定のビデオピクチャのための順序値は、ビデオピクチャのシーケンスにおける前記特定のビデオピクチャのための位置を指定するためのものである」との記載は、依然としてシーケンスにおける位置がいかなる位置であるのか不明である。例えば、表示順のシーケンスにおける位置、符号化順のシーケンスにおける位置、メモリのアドレス位置等が考えられ、これらのうちのいずれか又はそれ以外なのか不明である。(請求項11についても同様。) E.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 請求項7,16における「前記第2のビデオピクチャの前記順序値は、前記第2ビデオピクチャと関連するスライスヘッダに格納される値から得られる」との記載について、発明の詳細な説明には、順序差値がスライスヘッダに格納されることは記載されているが、順序値がスライスヘッダに格納されることについては記載がない。 よって、請求項7,16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 第2 補正却下の決定 1 平成21年5月25日付けの手続補正について次のとおり決定する。 [補正却下の決定の結論] 平成21年5月25日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容及び目的 平成21年5月25日付けの手続補正(以下「本件補正1」という。)は、特許請求の範囲についてする補正である。 補正前の請求項5、6、8、14、15、17を削除する補正は、請求項の削除を目的とするものである。 請求項1、2、7、8、17、22についてする補正は、補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 請求項3?6、9?16、18?21についてする補正は、請求項1または7を引用するものであり、請求項1,7についてする補正は上記のとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、請求項3?6、9?16、18?21についてする補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)独立特許要件 上記のとおり本件補正1は特許請求の範囲の減縮を目的としているので、本件補正1後における発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを、以下に検討する。 (3)補正後発明 補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明1」という。)は、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された下記のとおりのものである。 記(補正後発明1) 「第1ビデオピクチャ、第2ビデオピクチャおよび第3ビデオピクチャのセットの内の少なくとも一つのビデオピクチャを復号化する方法であって (i)第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第1の順序差値に反比例するとともに、 (ii)第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第2の順序差値に比例する 特定値を計算するステップと、 前記特定値と前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルとを乗算して前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルを計算するステップであって、前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルが第3ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルであり、前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルが第2ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルである、ステップと、 前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトルを用いて復号化するステップと、 を含むことを特徴とする方法。」 補正後発明1は、復号化する方法である。しかしながら、発明の詳細な説明には符号化に関する記載はあるものの、復号化に関する記載はほとんどない(段落【0021】に「デジタルビデオデコーダ」という文言があるだけである)。画像の符号化と復号化は、表裏一体の技術であり、符号化に関する記載から、復号化に関することが想定でき、符号化したものを復号化することが開示されていると認められる。 発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 「各Bマクロブロックは2つの動きベクトルを使用する。1つは上記前のビデオピクチャを参照する第1動きベクトルであり、もう1つは後の(未来の)ビデオピクチャを参照する第2動きベクトルである。これら2つの動きベクトルから、2つの予測マクロブロックが計算される。そして2つの予測マクロブロックは所定の関数を利用して組み合わせられ、最終的な予測マクロブロックが作られる。上記したように、Bフレームピクチャの実際のマクロブロックと最終的な予測マクロブロックの差が符号化されて伝送される。」(段落【0020】) 「Pマクロブロックの場合と同じように、Bマクロブロックの各動きベクトル(MV)を、予測符号化処理により伝送してもよい。つまり、この場合、予測動きベクトルは、近傍の動きベクトルを使用して形成される。そして、実際の動きベクトルと予測動きベクトルの差が符号化されて伝送される。 しかし、Bマクロブロックの場合、最も近い記録ピクチャマクロブロックの動きベクトルから動きベクトルを内挿する機会がある。このような内挿は、デジタルビデオエンコーダとデジタルビデオデコーダの双方で実行される。 この動きベクトル内挿は、カメラが静止背景にゆっくり近づいたり遠のいたりするときのビデオシーケンスのビデオピクチャに非常に有効である。事実、このような動きベクトル内挿はそれ単独で利用してもよいくらいである。つまり、これは、内挿を使用して符号化される上記Bマクロブロック動きベクトルに関して、差分情報を計算したり伝送したりする必要が無いことを意味する。」(段落【0021】) 補正後発明1は、「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトルを用いて復号化するステップ」を有しているが、発明の詳細な詳細をみても「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトル」のみ「を用いて復号化する」ことは示されておらず、上記記載には、2つの動きベクトルから符号化することが示されており、このことから、2つの動きベクトルから復号化することが示されていると認められる。 そうすると、補正後発明1の「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトルを用いて復号化するステップ」は、「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトルを用いて復号化」すればよく、「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトル」と他の動きベクトル「を用いて復号化する」ことを排除するものではないと認められる。 [理由1] (4)先願1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された特願2002-193027号(特開2004-088737号、上記先願1)の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に対応する上記特開2004-088737号公報の記載は次のとおりである。 「 【0002】 【従来の技術】 近年、マルチメディアアプリケーションの発展に伴い、画像、音声、及びテキストなど、あらゆるメディアの情報を統一的に扱うことが一般的になってきた。 これにより、全てのメディアをディジタル化することにより統一的にメディアを扱うことが可能になる。 【0003】 しかしながら、ディジタル化された画像は膨大なデータ量を持つため、蓄積又は伝送のためには、画像の情報圧縮技術が不可欠である。一方で、圧縮した画像データを相互運用するためには、圧縮技術の標準化も重要である。画像圧縮技術の標準規格としては、ITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)のH.261、H.263、ISO(国際標準化機構)のMPEG(Moving Picture Experts Group)-1、MPEG-2、MPEG-4などがある(例えば、非特許文献1参照。)。また、ITUでは、現在、最新の画像符号化規格としてH.264が標準化中であり、標準化過程におけるドラフト案はH.26Lと呼ばれる。 【0004】 MPEG-1,2,4及びH.263などの動画像符号化方式に共通の技術として動き補償を伴うピクチャ間予測がある。これらの動画像符号化方式の動き補償では、入力画像のピクチャを所定のサイズの矩形領域(以降、ブロックと呼ぶ)に分割し、各ブロック毎にピクチャ間の動きを示す動きベクトルから予測画素を生成する。」 「 【0005】 以下、動き補償を伴うピクチャ間予測を説明するため、次の(1)?(6)に示す内容を説明する。 (1)Bピクチャの概念 (2)補間予測 (3)ピクチャ番号と参照インデックス (4)ダイレクトモード (5)従来の画像符号化装置 (6)従来の画像復号化装置」 「 【0006】 (1)Bピクチャの概念 H.26LのBピクチャ(2方向予測[Bi-predictive]ピクチャ)について、図30を用いて説明する。 【0007】 図30は、Bピクチャの概念図である。 ピクチャTPは符号化対象のBピクチャであり、ピクチャRP1,RP2,RP3,RP4はそれぞれ符号化済のピクチャである。ブロックB1は、ブロックRB1とブロックRB2とを参照してピクチャ間予測されたブロックであり、ブロックB2は、ブロックRB21とブロックRB22とを参照してピクチャ間予測されたブロックであり、ブロックB3は、ブロックRB31とブロックRB32とを参照してピクチャ間予測されたブロックである。」 「 【0009】 (2)補間予測 補間予測について、図31を用いて説明する。 図31は、補間予測の説明図である。 ブロックRB1とブロックRB2は、補間予測に使用される2つの参照ブロックであり、ブロックPBは補間処理により得られた予測ブロックを示す。ここでは、ブロックサイズは4×4画素として説明する。 【0010】 X1(i)は参照ブロックRB1の画素値を示し、X2(i)は参照ブロックRB2の画素値を示し、P(i)は予測ブロックPBの画素値を示す。画素値P(i)は次式のような線形予測式により得ることができる。 P(i)=A・X1(i)+B・X2(i)+C 【0011】 ここで、A,B,Cは線形予測係数である。この線形予測係数には、MPEG-1,2のように、平均値(A=1/2,B=1/2,C=0の場合)のみが使用される場合もあるし(厳密には、X1(i)+X2(i)を1/2した値を最も近い整数値に丸めた値)、明示的に他の値に設定される場合もある。他の値に設定される場合には、その値は、画像符号化信号中に格納されて画像符号化装置から画像復号化装置に伝送される。 【0012】 このように複数の参照ピクチャから画素補間によりピクチャ間予測されるブロックを「補間予測ブロック」と呼ぶ。Bピクチャは、補間予測ブロックをピクチャ内に含むことが可能なピクチャである。 【0013】 MPEG-1,MPEG-2などの画像符号化方式のBピクチャに含まれる補間予測ブロックは、図30に示すブロックB1のように符号化対象ピクチャTPに対し表示順が前の参照ピクチャRP1と、後の参照ピクチャRP3とから予測される補間予測ブロックしかなかった。 【0014】 一方、最近検討されている新しいBピクチャでは、加えて、図30に示すブロックB2,B3のように、参照ピクチャが2枚とも符号化対象ピクチャより前又は後となる補間予測ブロックも含むことができる。 【0015】 図32は、補間予測ブロックの2枚の参照ピクチャが、補間予測ブロックを有する符号化対象ピクチャより表示順が前にある場合の一例を説明するための説明図である。 【0016】 ピクチャP7は符号化対象ピクチャであって、各ピクチャは、ピクチャP1,P2,P3,P4,P5,P6,P7の順に符号化される。つまり、ピクチャP1,P2,P5,P6は、符号化対象ピクチャP7よりも先に符号化されてマルチフレームバッファ(メモリ)に格納されている。 【0017】 そして、符号化対象ピクチャP7に含まれる補間予測ブロックは、ピクチャP1及びピクチャP6に含まれる画素を参照して符号化される。 【0018】 図33は、補間予測ブロックの2枚の参照ピクチャが、補間予測ブロックを有する符号化対象ピクチャより表示順が後にある場合の一例を説明するための説明図である。 ピクチャP4は符号化対象ピクチャであって、各ピクチャは、ピクチャP1,P2,P3,P4,P5の順に符号化される。つまり、ピクチャP1,P2,P3は、符号化対象ピクチャP4よりも先に符号化されてマルチフレームバッファに格納されている。 【0019】 そして、符号化対象ピクチャP4に含まれる補間予測ブロックは、ピクチャP2及びピクチャP3に含まれる画素を参照して符号化される。 なお、補間予測ブロックを含まずに、1枚の参照ピクチャからピクチャ間予測を行うブロックを含むことが可能なピクチャをPピクチャと呼び、ピクチャ間予測を行わない面内予測ブロックのみから構成されるピクチャをIピクチャと呼ぶ。 【0020】 H.26Lでは、Bピクチャのブロックの符号化には、最大2枚の参照ピクチャが使用される。そこで、2枚の参照ピクチャを区別するため、各参照ピクチャを第1参照ピクチャ及び第2参照ピクチャと呼ぶ。また、第1参照ピクチャ及び第2参照ピクチャのそれぞれに基づく動きベクトルを、第1動きベクトル及び第2動きベクトルと呼ぶ。 【0021】 例えば図30では、符号化対象ブロックB1に対して、ピクチャRP1が第1参照ピクチャとなり、ピクチャRP3が第2参照ピクチャとなり、動きベクトルMV1が第1動きベクトルとなり、動きベクトルMV2が第2動きベクトルとなる。また、第1参照ピクチャのみからの予測を第1参照ピクチャ予測、第2参照ピクチャのみからの予測を第2参照ピクチャ予測と呼ぶ。 【0022】 なお、1枚の参照ピクチャからピクチャ間予測されたブロックに対しては、参照ピクチャや動きベクトルを第1、第2に区別する必要はないが、説明の都合上、1枚の参照ピクチャからピクチャ間予測されたブロックの参照ピクチャ及び動きベクトルを、第1参照ピクチャ及び第1動きベクトルと呼ぶ。」 「 【0023】 (3)ピクチャ番号及び参照インデックス 図34は、ピクチャ番号と参照インデックスを説明するための説明図である。 ピクチャ番号及び参照インデックスは、マルチフレームバッファに格納された参照ピクチャを一意に識別するための情報である。H.26Lでは、ピクチャが 参照ピクチャとしてメモリに蓄積される毎に1増加する値が、その参照ピクチャに対するピクチャ番号として割り当てられる。 【0024】 一方、参照インデックスは、符号化対象ブロックのピクチャ間予測に使用される参照ピクチャを指示するために使用される。 また、参照インデックスは、第1参照ピクチャを指示するための第1参照インデックスと、第2参照ピクチャを指示するための第2参照インデックスとから構成される。 【0025】 以下、第1参照インデックス、第2参照インデックスの割り当て方法について、図34の(a)を用いて説明する。 まず、符号化対象ピクチャより前の表示時刻を持つ参照ピクチャに対し、符号化対象ピクチャに近い順より0から始まる値が、第1参照インデックスとして割り当てられる。符号化対象ピクチャより前の表示時刻を持つ参照ピクチャの全てに対し0から始まる値が割り当てられたら、次に符号化対象ピクチャより後の表示時刻を持つ参照ピクチャに対し、符号化対象ピクチャに近い順から、その続きの値が割り当てられる。 【0026】 そして、符号化対象ピクチャより後の表示時刻を持つ参照ピクチャに対し、符号化対象ピクチャに近い順より0から始まる値が、第2参照インデックスの値として割り当てられる。符号化対象ピクチャより後の表示時刻を持つ参照ピクチャの全てに対し0から始まる値が割り当てられたら、次に符号化対象ピクチャより前の表示時刻を持つ参照ピクチャに対し、符号化対象ピクチャに近い順から、その続きの値が割り当てられる。 【0027】 例えば、図34の(a)に示すように、第1参照インデックスが0として指示された場合、第1参照ピクチャはピクチャ番号「14」のBピクチャであり、第2参照インデックスが1として指示された場合、第2参照ピクチャはピクチャ番号「13」のBピクチャである。 【0028】 一方、H.26Lでは、画像符号化信号中のバッファ制御信号(図37中に示すヘッダ1内のRPSL7)を用いて明示的に指示することにより、参照ピクチャに対する第1参照インデックス及び第2参照インデックスの割り当てを任意に変更することができる。この割り当ての変更により、第2参照インデックスが0の参照ピクチャをマルチフレームバッファ内の任意の参照ピクチャにすることが可能で、例えば、図34の(b)に示すように、ピクチャ番号に対する第1参照インデックス及び第2参照インデックスの割り当てが変更される。 【0029】 なお、ブロック中の参照インデックスは、可変長符号語により表現され、値が小さいほど短い符号長のコードが割り当てられている。」 「 【0030】 (4)ダイレクトモード ダイレクトモードについて、図35を用いて説明する。 図35は、従来の画像符号化装置が行うダイレクトモードの説明図である。 ここでダイレクトモードとは、符号化対象ブロックに対する参照ピクチャ及び動きベクトルを、参照ピクチャの符号化時に使用した動きベクトル及び参照ピクチャの符号化時に参照したピクチャから以下に説明する方法により決定し、画素補間によりピクチャ間予測を行うモードである。 【0031】 ピクチャTPは符号化対象のBピクチャであり、ピクチャRP1,RP2,RP3,RP4は参照ピクチャとして用いられるようにマルチフレームバッファ内にある復号済のピクチャである。また、図35中点線に示すピクチャは、非参照ピクチャであって、マルチフレームバッファに含まれないものである。 【0032】 そして、ピクチャRP1の第1参照インデックスRI1は0であり、ピクチャRP2の第1参照インデックスRI1は1であり、ピクチャRP3の第2参照インデックスRI2は0であり、ピクチャRP4の第2参照インデックスRI2は1である。 【0033】 ブロックB0はダイレクトモードで符号化されるブロックであり、ブロックB00はピクチャRP3内で符号化対象ブロックB0と相対的に同じ位置にあるブロックである。また、ブロックRB01はピクチャRP1に含まれる参照ブロックであり、ブロックRB02は参照ピクチャRP3に含まれる参照ブロックである。動きベクトルMV0は、ブロックB00を符号化した際の第1動きベクトルであって、ピクチャRP1を参照先とする。また、動きベクトルMV0をスケーリング用ベクトルと呼ぶ。 【0034】 符号化対象ブロックB0の予測に使用される第1動きベクトルMV01と第2動きベクトルMV02とは、次の式により計算される。 MV01=TR1×MV0/TR0 MV02=-TR2×MV0/TR0 【0035】 上式において、係数TR1,TR2,TR0は、ダイレクトモード用の動きベクトルの計算時に使用される値であり、例えばピクチャ間の表示時刻差が用いられる。図35の場合、TR1=2,TR2=1,TR0=3となる。 【0036】 画面内での符号化対象ブロックを含む物体の動きが一定であると仮定した場合、第1動きベクトルMV01と第2動きベクトルMV02は、符号化対象ピクチャTPと第1参照ピクチャRP1の表示時刻差と、符号化対象ピクチャTPと第2参照ピクチャRP2の表示時刻差とによって、動きベクトルMV0を内分することによって求められる。 【0037】 なお、表示時刻差に限らずピクチャ番号の差や、ピクチャ間のピクチャ枚数等を用いても第1動きベクトルMV01及び第2動きベクトルMV02を求めることができる。 また、上述のような係数TR1,TR2,TR0の値の組をダイレクトモード用スケーリング係数SPと呼ぶ。 【0038】 MPEG-4では、ダイレクトモードにおける後方参照ピクチャは最大1枚しかないため、第2参照ピクチャとして使用されるピクチャは一意に決まる。しかし、H.26Lでは、第2参照ピクチャと成り得るピクチャが複数あるため、第2参照インデックスRI2が0のピクチャを、ダイレクトモード時の第2参照ピクチャとしている。 【0039】 また、ダイレクトモードにおいては、各ピクチャごとに伝送されたダイレクトモード用スケーリング係数SPが、ピクチャに含まれる全ブロックに共通して使用される。または、各ピクチャの表示時刻情報を用いて、表示時刻差に比例するようにスケーリングを行う。 【0040】 なお、図35を図34の(a)と対応させるとすると、図35のピクチャTPは図34の(a)の中央のBピクチャ(点線のピクチャ)に対応し、図35のピクチャRP3は図34の(a)のピクチャ番号「15」のBピクチャに対応し、図35のピクチャRP4は図34の(a)のピクチャ番号「13」のBピクチャに対応し、図35のピクチャRP1は図34の(a)のピクチャ番号「14」のBピクチャに対応し、図35のピクチャRP2は図34の(a)のピクチャ番号「12」のBピクチャに対応する。図35のピクチャTP等の点線で示されている非参照ピクチャは、他のピクチャから参照されることがないため、マルチフレームバッファには保存されない。よって、図34の(a)に示すピクチャのようにそのピクチャを参照するための参照インデックスが割り当てられることは無い。」 【図35】 「 【0042】 (5)従来の画像符号化装置 次に従来の画像符号化装置について、図36を参照して説明する。 図36は、従来の画像符号化装置の構成を示すブロック図である。以下、この画像符号化装置について説明する。 画像符号化装置900は、ブロックに分割された画像信号Imgを入力し、ブロック毎に処理を行う。 【0043】 減算器901は、画像信号Imgから予測画像信号Preを減算し、残差信号Resを出力する。 画像符号化部902は、残差信号Resを取得して、DCT変換及び量子化などの画像符号化処理を行い、量子化済DCT係数などを含む残差符号化信号ERを出力する。 【0044】 画像復号化部904は、残差符号化信号ERを取得し、逆量子化及び逆DCT変換などの画像復号処理を行い、残差復号信号DRを出力する。 加算器905は、残差復号信号DRと予測画像信号Preを加算し、再構成画像信号Recを出力する。 【0045】 再構成画像信号Recで、以降のピクチャ間予測で参照される可能性がある信号は、マルチフレームバッファ907に格納される。マルチフレームバッファ907のメモリ量は有限なため、マルチフレームバッファ907内で以降のピクチャ間予測に使用されないピクチャのデータはマルチフレームバッファ907から除去される。 【0046】 動き推定部909は、マルチフレームバッファ907に格納された参照ピクチャRPを取得して動き推定を行い、面内予測、第1参照ピクチャ予測、第2参照ピクチャ予測、補間予測による予測の中から所定の方法で最適な予測種別を選択し(ピクチャ種別により選択できる予測種別は異なる)、符号化対象ブロックに対する第1動きベクトルMV1、第2動きベクトルMV2、第1参照インデックスRI1、及び第2参照インデックスRI2を出力する。 【0047】 動き推定部909における予測種別の選択方法には、例えば、各予測種別による予測誤差が最小となる予測種別を選択する方法がある。選択された予測種別が面内予測の場合には、動きベクトル及び参照インデックスは出力されず、第1参照ピクチャ予測の場合には、第1参照インデックス及び第1動きベクトルのみが出力され、第2参照ピクチャ予測の場合には、第2参照インデックス及び第2動きベクトルのみが出力され、補間予測の場合には、第1参照インデックス、第2参照インデックス、第1動きベクトル、及び第2動きベクトルが出力される。 【0048】 上述のように、H.26Lでは、ダイレクトモード時の第2参照ピクチャとして第2参照インデックスrRI2が0の参照ピクチャが使用される。よって、値0の第2参照インデックスrRI2はベクトル用バッファ914とダイレクトモード処理部910とに入力される。 【0049】 ベクトル用バッファ914には、スケーリング用ベクトルrMVとスケーリング用ベクトルrMVの参照先となるピクチャを示すピクチャ番号とが記憶されている。スケーリング用ベクトルrMVにより符号化されたブロックを含む参照ピクチャは、第2参照インデックスrRI2により示される参照ピクチャであるため、ベクトル用バッファ914は、値0の第2参照インデックスrRI2を入力し、スケーリング用ベクトルrMVと、スケーリング用ベクトルrMVの参照先となるピクチャを示す第1参照インデックスrRI1とを出力する。 【0050】 ダイレクトモード処理部910は、ダイレクトモード用スケーリング係数SP、スケーリング用ベクトルrMV、第1参照インデックスrRI1、及び第2参照インデックスrRI2を入力し、上記に説明したダイレクトモードの処理により、ダイレクトモード時の第1動きベクトルsMV1、第2動きベクトルsMV2、第1参照インデックスrRI1、及び第2参照インデックスrRI2を出力する。 【0051】 予測種別選択部908は、画像信号Imgと、参照ピクチャRPと、「ダイレクトモード」の参照ブロックの位置を示す参照インデックスrRI1,rRI2及び動きベクトルsMV1,sMV2と、「ダイレクトモード以外」の予測時に使用する参照ブロックの位置を示す参照インデックスRI1,RI2及び動きベクトルMV1,MV2を入力する。そして、予測種別選択部908は、ブロックの予測にダイレクトモードを使用すべきか否かを決定し、決定した予測種別を示す種別情報PTを可変長符号化部903に出力する。 【0052】 ここで、予測種別選択部908は、例えば、入力画素に対する「ダイレクトモード時」の予測誤差と、「ダイレクトモード以外の予測時」の予測誤差とで、予測誤差の小さい方を選択することで、予測種別の選択を行う。 【0053】 よって、予測種別には、動き推定部909で選択される面内予測、第1参照ピクチャ予測、第2参照ピクチャ予測、ダイレクトモード以外の補間予測に加えて、ダイレクトモードが加わることになる。 【0054】 そして、予測種別がダイレクトモードを示す場合には、スイッチ911は"1"側に切り替わり、参照インデックスrRI1,rRI2及び動きベクトルsMV1,sMV2が参照インデックスRI1,RI2、動きベクトルMV1,MV2として使用される。 【0055】 一方、予測種別がダイレクトモード以外を示す場合には、スイッチ911は"0"側に切り替わる。 【0056】 また、ダイレクトモード時には、符号化済ピクチャのブロックを符号化した際に用いられた第1動きベクトルsMV1がスケーリング用ベクトルとして使用される。そして、その第1動きベクトルsMV1の参照先となるピクチャが、ダイレクトモードの一方の参照ピクチャとして使用される。従って、符号化した第1参照インデックスRI1、第1動きベクトルMV1の中で、符号化したピクチャ以降のピクチャでダイレクトモードで使用される可能性がある第1参照インデックスRI1、第1動きベクトルMV1はベクトル用バッファ914に格納される。 【0057】 予測種別の決定後、マルチフレームバッファ907に第1参照インデックスRI1と第1動きベクトルMV1とが入力され、入力された第1参照インデックスRI1と第1動きベクトルMV1とに対応する参照ブロックRB1がマルチフレームバッファ907から画素補間部906に出力される。予測種別により2つの参照ブロックが必要とされるときには、さらに第2参照インデックスRI2と第2動きベクトルMV2とに対応する参照ブロックRB2がマルチフレームバッファ907から画素補間部906に出力される。 【0058】 画素補間部906は、補間予測時には、2個の参照ブロックRB1,RB2の互いに対応する位置の画素値を補間し、補間ブロックRePを出力する。 【0059】 スイッチ912は、予測種別が補間予測を示す場合には、"1"側に切り替わり、補間ブロックRePを予測画像信号Preとして扱う。 【0060】 マルチフレームバッファ907は、第1参照ピクチャ予測時には、第1参照インデックスRI1と第1動きベクトルMV1とに対応する参照ブロックRBを出力する。また、第2参照ピクチャ予測時には、マルチフレームバッファ907は第2参照インデックスRI2と第2動きベクトルMV2とに対応する参照ブロックRBを出力する。なお、面内予測時には、面内予測結果の画素からなるブロックRBがマルチフレームバッファ907から出力される。 【0061】 そして予測種別が補間予測以外の予測方法を示す場合には、スイッチ912は"0"側に切り替わり、参照ブロックRBを予測画像信号Preとして扱う。 【0062】 可変長符号化部903は、残差符号化信号ER、参照インデックスRI1,RI2、動きベクトルMV1,MV2、ダイレクトモード用スケーリング係数SP、及び種別情報PTを可変長符号化し、その結果を画像符号化信号BS0に含めて出力する。 【0063】 図37は、画像符号化信号BS0のフォーマットの概念図である。 この図37は、画像符号化信号BS0中の1ピクチャ分の情報が含まれる部分のフォーマットを示す。 この部分は、ヘッダ1と、ダイレクトモードにより符号化されたブロックの第1ブロック符号化信号2と、ダイレクトモード以外の補間予測により符号化されたブロックの第2ブロック符号化信号3とを含む。 【0064】 第2ブロック符号化信号3は、種別情報PTが符号化された種別符号化信号9と、参照インデックスRI1,RI2が符号化された第1インデックス符号化信号10及び第2インデックス符号化信号11と、動きベクトルMV1,MV2が符号化されたMV1符号化信号12及びMV2符号化信号13とを含む。第2ブロック符号化信号3では、第1インデックス符号化信号10及び第2インデックス符号化信号11と、MV1符号化信号12及びMV2符号化信号13とが、画像符号化信号BS0中に、図37に示す順で含まれる。 【0065】 また、参照インデックスRI1,RI2のいずれを使用するかは種別符号化信号9により判断され、第1参照ピクチャと第2参照ピクチャとは、画像符号化信号BS0中の第1インデックス符号化信号10及び第2インデックス符号化信号11のデータ位置で決まる。 【0066】 一方、第1ブロック符号化信号2は、ブロックがダイレクトモードで符号化された場合を示しており、種別情報PTが符号化された種別符号化信号8を含むが、参照インデックス及び動きベクトルを示す情報を含まない。 【0067】 また、ヘッダ1には、図35に示す係数TR1,TR2,TR0がそれぞれ符号化された第1時間差情報4、第2時間差情報5、及び時間差情報6と、参照ピクチャに対する第1参照インデックス又は第2参照インデックスの割り当て変更を示す内容のRPSL7が含まれる。ただし、ダイレクトモードでの動きベクトルのスケーリングの際に、各ピクチャの表示時刻情報を用いる場合には、これらの情報はヘッダ中には記述されず、ヘッダには表示時刻情報のみが記述される。」 「 【0068】 (6)従来の画像復号化装置 図38は、従来の画像復号化装置の構成を示すブロック図である。 ここで、この画像復号化装置950が備えるマルチフレームバッファ958、画素補間部957、ベクトル用バッファ960、及びダイレクトモード処理部954はそれぞれ、図36に示す画像符号化装置900のマルチフレームバッファ907、画素補間部906、ベクトル用バッファ914、及びダイレクトモード処理部910のそれぞれと同様の機能を有するため、詳細な説明を省略する。また、図38中、図36に示す信号と同一の信号に対しては同一の符号を付して説明を省略する。 【0069】 可変長復号部951は、画像符号化信号BS0を入力し可変長復号を行い、残差符号化信号ER、動きベクトルMV1,MV2、参照インデックスRI1,RI2、ダイレクトモード用スケーリング係数SP(または、各ピクチャの表示時刻情報)、及び種別情報PTを出力する。画像復号部952は、残差符号化信号ERを入力し、これに対して逆量子化及び逆DCT変換などの画像復号処理を行い、残差復号信号DRを出力する。加算器953は、残差復号信号DRと予測画像信号Preを加算し、復号画像信号DImを画像復号化装置950外に出力する。マルチフレームバッファ958は、ピクチャ間予測のために必要な復号画像信号DImを格納する。 【0070】 ベクトル用バッファ960には、スケーリング用ベクトルrMVと、スケーリング用ベクトルrMVの参照先となるピクチャを識別するための情報(第1参照インデックスrRI1)とが記憶されている。また、ベクトル用バッファ960は値0の第2参照インデックスrRI2を入力し、スケーリング用ベクトルrMVと第1参照インデックスrRI1とを出力する。 【0071】 ダイレクトモード処理部954は、図36のダイレクトモード処理部910と同じ処理を行う。 予測種別がダイレクトモード以外を示す場合、スイッチ955は"0"側に切り替わる。そして、マルチフレームバッファ958は、参照インデックスRI1,RI2及び動きベクトルMV1,MV2を取得する。 【0072】 予測種別がダイレクトモードを示す場合、スイッチ955は"1"側に切り替わる。そして、マルチフレームバッファ958は、参照インデックスrRI1,rRI2及び動きベクトルsMV1,sMV2を、参照インデックスRI1,RI2及び動きベクトルMV1,MV2として取得する。 【0073】 マルチフレームバッファ958は、補間予測時は、第1参照インデックスRI1及び第1動きベクトルMV1に対応する参照ブロックRB1と、第2参照インデックスRI2及び第2動きベクトルMV2に対応する参照ブロックRB2とを出力する。そして、画素補間部957は2個の参照ブロックRB1,RB2のそれぞれに対応する画素値を補間して、補間ブロックRePを出力する。 【0074】 マルチフレームバッファ958は、第1参照ピクチャ予測時には、第1参照インデックスRI1と第1動きベクトルMV1に対応する参照ブロックRBを出力する。また、第2参照ピクチャ予測時には、マルチフレームバッファ958は、第2参照インデックスRI2と第2動きベクトルMV2に対応する参照ブロックRBを出力する。なお、面内予測時には面内予測結果の画素からなるブロックRBがマルチフレームバッファ958から出力される。 【0075】 予測種別が補間予測を示す場合には、スイッチ956は"0"側に切り替わり、補間ブロックRePが予測画像信号Preとして使用される。 予測種別が補間予測以外の予測方法を示す場合には、スイッチ956は"1"側に切り替わり、参照ブロックRBが予測画像信号Preとして使用される。 【0076】 そして、復号された第1参照インデックスRI1及び第1動きベクトルMV1のうち、復号されたピクチャ以降のピクチャでダイレクトモードに使用される可能性がある第1参照インデックスRI1及び第1動きベクトルMV1はベクトル用バッファ960に格納される。 【0077】 このような画像復号化装置950は、上述のように説明した処理により画像符号化信号BS0を復号して、これを画像復号信号DImとして出力する。」 (5)補正後発明1と先願1に記載された発明との対比・判断 ア 先願1に記載された発明 動き補償を伴うピクチャ間予測は、MPEG-1,2,4及びH.263などの動画像符号化方式に共通の技術であり、これらの動画像符号化方式の動き補償では、入力画像のピクチャを所定のサイズの矩形領域(以降、ブロックと呼ぶ)に分割し、各ブロック毎にピクチャ間の動きを示す動きベクトルから予測画素を生成する。(段落【0004】) Bピクチャは、2方向予測[Bi-predictive]ピクチャで(段落【0006】)、Bピクチャは、補間予測ブロックをピクチャ内に含むことが可能なピクチャであり(段落【0012】)、補間予測ブロックは、複数の参照ピクチャから画素補間によりピクチャ間予測されるブロックである(段落【0012】)。 ブロックRB1とブロックRB2は、補間予測に使用される2つの参照ブロックで、ブロックPBは補間処理により得られた予測ブロックとし、X1(i)は参照ブロックRB1の画素値、X2(i)は参照ブロックRB2の画素値、P(i)は予測ブロックPBの画素値をすると、画素値P(i)は次式のような線形予測式により得ることができる。 P(i)=A・X1(i)+B・X2(i)+C ここで、A,B,Cは線形予測係数である(段落【0009】?【0011】)。 ダイレクトモードとは、符号化対象ブロックに対する参照ピクチャ及び動きベクトルを、参照ピクチャの符号化時に使用した動きベクトル及び参照ピクチャの符号化時に参照したピクチャから以下に説明する方法により決定し、画素補間によりピクチャ間予測を行うモードである(段落【0030】)。 ピクチャTPは符号化対象のBピクチャであり、ピクチャRP1,RP2,RP3,RP4は参照ピクチャとして用いられるようにマルチフレームバッファ内にある復号済のピクチャである(段落【0031】)。 そして、ピクチャRP1の第1参照インデックスRI1は0であり、ピクチャRP2の第1参照インデックスRI1は1であり、ピクチャRP3の第2参照インデックスRI2は0であり、ピクチャRP4の第2参照インデックスRI2は1である(段落【0032】)。 ブロックB0はダイレクトモードで符号化されるブロックであり、ブロックB00はピクチャRP3内で符号化対象ブロックB0と相対的に同じ位置にあるブロックである。また、ブロックRB01はピクチャRP1に含まれる参照ブロックであり、ブロックRB02は参照ピクチャRP3に含まれる参照ブロックである。動きベクトルMV0(スケーリング用ベクトル)は、ブロックB00を符号化した際の第1動きベクトルであって、ピクチャRP1を参照先とする(段落【0033】)。 符号化対象ブロックB0の予測に使用される第1動きベクトルMV01と第2動きベクトルMV02とは、次の式により計算される。 MV01=TR1×MV0/TR0 MV02=-TR2×MV0/TR0 上式において、係数TR1,TR2,TR0は、ダイレクトモード用の動きベクトルの計算時に使用される値であり、例えばピクチャ間の表示時刻差が用いられる(段落【0034】?【0035】)。 画面内での符号化対象ブロックを含む物体の動きが一定であると仮定した場合、第1動きベクトルMV01と第2動きベクトルMV02は、符号化対象ピクチャTPと第1参照ピクチャRP1の表示時刻差と、符号化対象ピクチャTPと第2参照ピクチャRP2の表示時刻差とによって、動きベクトルMV0を内分することによって求められる(段落【0036】)。 表示時刻差に限らずピクチャ番号の差や、ピクチャ間のピクチャ枚数等を用いても第1動きベクトルMV01及び第2動きベクトルMV02を求めることができる。 また、係数TR1,TR2,TR0の値の組をダイレクトモード用スケーリング係数SPと呼ぶ(段落【0037】)。 ダイレクトモードにおいては、各ピクチャごとに伝送されたダイレクトモード用スケーリング係数SPが、ピクチャに含まれる全ブロックに共通して使用される。または、各ピクチャの表示時刻情報を用いて、表示時刻差に比例するようにスケーリングを行う(段落【0039】)。 上記段落【0042】?【0067】には、画像符号化装置について記載されている。 画像符号化装置900は、ブロックに分割された画像信号Imgを入力し、ブロック毎に処理を行(段落【0042】)い、(可変長符号化部903は、)残差符号化信号ER、参照インデックスRI1,RI2、動きベクトルMV1,MV2、ダイレクトモード用スケーリング係数SP、及び種別情報PTを可変長符号化し、その結果を画像符号化信号BS0に含めて出力する(段落【0062】)。ここで、参照インデックスは、符号化対象ブロックのピクチャ間予測に使用される参照ピクチャを指示するために使用され、参照インデックスは、第1参照ピクチャを指示するための第1参照インデックスと、第2参照ピクチャを指示するための第2参照インデックスとから構成される(段落【0024】)ものである。 画像符号化装置900における画像符号化の予測種別には、面内予測、第1参照ピクチャ予測、第2参照ピクチャ予測、ダイレクトモード以外の補間予測、ダイレクトモードの補間予測がある(段落【0053】)。 動き推定部909は、マルチフレームバッファ907に格納された参照ピクチャRPを取得して動き推定を行い、面内予測、第1参照ピクチャ予測、第2参照ピクチャ予測、補間予測による予測の中から所定の方法で最適な予測種別を選択し(ピクチャ種別により選択できる予測種別は異なる)、符号化対象ブロックに対する第1動きベクトルMV1、第2動きベクトルMV2、第1参照インデックスRI1、及び第2参照インデックスRI2を出力する(段落【0046】)。 ダイレクトモード処理部910は、ダイレクトモード用スケーリング係数SP、スケーリング用ベクトルrMV、第1参照インデックスrRI1、及び第2参照インデックスrRI2を入力し、ダイレクトモードの処理により、ダイレクトモード時の第1動きベクトルsMV1、第2動きベクトルsMV2、第1参照インデックスrRI1、及び第2参照インデックスrRI2を出力する(段落【0050】)。 そして、予測種別がダイレクトモードを示す場合には、スイッチ911は"1"側に切り替わり、参照インデックスrRI1,rRI2及び動きベクトルsMV1,sMV2が参照インデックスRI1,RI2、動きベクトルMV1,MV2として使用される(段落【0054】)。 ダイレクトモード時には、符号化済ピクチャのブロックを符号化した際に用いられた第1動きベクトルsMV1がスケーリング用ベクトルとして使用される。そして、その第1動きベクトルsMV1の参照先となるピクチャが、ダイレクトモードの一方の参照ピクチャとして使用される。従って、符号化した第1参照インデックスRI1、第1動きベクトルMV1の中で、符号化したピクチャ以降のピクチャでダイレクトモードで使用される可能性がある第1参照インデックスRI1、第1動きベクトルMV1はベクトル用バッファ914に格納される(段落【0056】)。 予測種別の決定後、マルチフレームバッファ907に第1参照インデックスRI1と第1動きベクトルMV1とが入力され、入力された第1参照インデックスRI1と第1動きベクトルMV1とに対応する参照ブロックRB1がマルチフレームバッファ907から画素補間部906に出力される。予測種別により2つの参照ブロックが必要とされるときには、さらに第2参照インデックスRI2と第2動きベクトルMV2とに対応する参照ブロックRB2がマルチフレームバッファ907から画素補間部906に出力される(段落【0057】)。 画素補間部906は、補間予測時には、2個の参照ブロックRB1,RB2の互いに対応する位置の画素値を補間し、補間ブロックRePを出力し、補間ブロックRePを予測画像信号Preとして扱う(段落【0058】?【0059】)。 可変長符号化部903は、残差符号化信号ER、参照インデックスRI1,RI2、動きベクトルMV1,MV2、ダイレクトモード用スケーリング係数SP、及び種別情報PTを可変長符号化し、その結果を画像符号化信号BS0に含めて出力する(段落【0062】)。 上記段落【0068】?【0077】には、画像復号化装置が記載されている。 可変長復号部951は、画像符号化信号BS0を入力し可変長復号を行い、残差符号化信号ER、動きベクトルMV1,MV2、参照インデックスRI1,RI2、ダイレクトモード用スケーリング係数SP(または、各ピクチャの表示時刻情報)、及び種別情報PTを出力する。画像復号部952は、残差符号化信号ERを入力し、これに対して逆量子化及び逆DCT変換などの画像復号処理を行い、残差復号信号DRを出力する。加算器953は、残差復号信号DRと予測画像信号Preを加算し、復号画像信号DImを画像復号化装置950外に出力する。マルチフレームバッファ958は、ピクチャ間予測のために必要な復号画像信号DImを格納する(段落【0069】)。 ベクトル用バッファ960には、スケーリング用ベクトルrMVと、スケーリング用ベクトルrMVの参照先となるピクチャを識別するための情報(第1参照インデックスrRI1)とが記憶されている。また、ベクトル用バッファ960は値0の第2参照インデックスrRI2を入力し、スケーリング用ベクトルrMVと第1参照インデックスrRI1とを出力する(段落【0070】)。 予測種別がダイレクトモードを示す場合、ダイレクトモード処理部954は、ダイレクトモード用スケーリング係数SP、スケーリング用ベクトルrMV、第1参照インデックスrRI1、及び第2参照インデックスrRI2を入力し、ダイレクトモード時の第1動きベクトルsMV1、第2動きベクトルsMV2、第1参照インデックスrRI1、及び第2参照インデックスrRI2を出力する(段落【0071】、【0050】)。 予測種別がダイレクトモードを示す場合、スイッチ955は"1"側に切り替わる。そして、マルチフレームバッファ958は、参照インデックスrRI1,rRI2及び動きベクトルsMV1,sMV2を、参照インデックスRI1,RI2及び動きベクトルMV1,MV2として取得する(段落【0072】)。 マルチフレームバッファ958は、補間予測時は、第1参照インデックスRI1及び第1動きベクトルMV1に対応する参照ブロックRB1と、第2参照インデックスRI2及び第2動きベクトルMV2に対応する参照ブロックRB2とを出力する。そして、画素補間部957は2個の参照ブロックRB1,RB2のそれぞれに対応する画素値を補間して、補間ブロックRePを出力する(段落【0073】)。 予測種別が補間予測を示す場合には、補間ブロックRePが予測画像信号Preとして使用される(段落【0075】)。 画像復号化装置950は、画像符号化信号BS0を復号して、これを画像復号信号DImとして出力する(段落【0077】)。 画像復号化装置におけるダイレクトモードの動作を方法の発明として認定する。 復号化におけるダイレクトモードの動作は、符号化におけるダイレクトモードの動作の逆である。ダイレクトモードは、上記段落【0030】?【0040】に記載され、画像符号化装置については、上記段落【0042】?【0067】に記載されている。また、画像復号化装置については、上記段落【0068】?【0077】に記載されている。 可変長復号部951は、画像符号化信号BS0を入力し可変長復号を行い、残差符号化信号ER、動きベクトルMV1,MV2、参照インデックスRI1,RI2、ダイレクトモード用スケーリング係数SP(または、各ピクチャの表示時刻情報)、及び種別情報PTを出力する。画像復号部952は、残差符号化信号ERを入力し、これに対して逆量子化及び逆DCT変換などの画像復号処理を行い、残差復号信号DRを出力する。加算器953は、残差復号信号DRと予測画像信号Preを加算し、復号画像信号DImを画像復号化装置950外に出力し、マルチフレームバッファ958は、ピクチャ間予測のために必要な復号画像信号DImを格納する。 ベクトル用バッファ960には、スケーリング用ベクトルrMVと、スケーリング用ベクトルrMVの参照先となるピクチャを識別するための情報(第1参照インデックスrRI1)とが記憶され、ベクトル用バッファ960は値0の第2参照インデックスrRI2を入力し、スケーリング用ベクトルrMVと第1参照インデックスrRI1とを出力し、 予測種別がダイレクトモードを示す場合、ダイレクトモード処理部954は、ダイレクトモード用スケーリング係数SP、スケーリング用ベクトルrMV、第1参照インデックスrRI1、及び第2参照インデックスrRI2を入力し、ダイレクトモード時の第1動きベクトルsMV1、第2動きベクトルsMV2、第1参照インデックスrRI1、及び第2参照インデックスrRI2を出力する。 ここで、 sMV1=TR1×rMV/TR0 sMV2=-TR2×rMV/TR0 である。 予測種別がダイレクトモードを示す場合、マルチフレームバッファ958は、参照インデックスrRI1,rRI2及び動きベクトルsMV1,sMV2を、参照インデックスRI1,RI2及び動きベクトルMV1,MV2として取得し、 マルチフレームバッファ958は、補間予測時は、第1参照インデックスRI1及び第1動きベクトルMV1に対応する参照ブロックRB1と、第2参照インデックスRI2及び第2動きベクトルMV2に対応する参照ブロックRB2とを出力し、画素補間部957は2個の参照ブロックRB1,RB2のそれぞれに対応する画素値を補間して、補間ブロックRePを出力し、 予測種別が補間予測を示す場合には、スイッチ956は"0"側に切り替わり、補間ブロックRePが予測画像信号Preとして使用され、 画像復号化装置950は、画像符号化信号BS0を復号して、これを画像復号信号DImとして出力する。 以上より、先願1には、下記の発明(以下「先願1発明」という。)が記載されている。 記 (先願1発明) 画像復号化装置950におけるダイレクトモードの動作は、復号化する方法であり、1つのビデオピクチャを復号化する方法である。 ダイレクトモードでは、ダイレクトモード用スケーリング係数SP(係数TR1,TR2,TR0:ダイレクトモード用の動きベクトルの計算時に使用される値であり、例えばピクチャ間の表示時刻差)、スケーリング用ベクトルrMVから、次式によりダイレクトモード時の第1動きベクトルsMV1、第2動きベクトルsMV2を求める。 sMV1=TR1×rMV/TR0 sMV2=-TR2×rMV/TR0 また、第1参照ピクチャを指示するための第1参照インデックスRI1及び第1動きベクトルsMV1に対応する参照ブロックRB1と、第2参照ピクチャを指示するための第2参照インデックスRI2及び第2動きベクトルsMV2に対応する参照ブロックRB2とを出力し、2個の参照ブロックRB1、RB2のそれぞれに対応する画素値を補間して、補間ブロックRePを出力し、補間ブロックRePが予測画像信号Preとし、画像符号化信号を復号した残差復号信号DRと予測画像信号Preとを加算し、復号画像信号とするものである。 イ 補正後発明1と先願1発明との対比・判断 (ア)「第1ビデオピクチャ、第2ビデオピクチャおよび第3ビデオピクチャのセットの内の少なくとも一つのビデオピクチャを復号化する方法」 先願1発明の方法は、第1参照ピクチャ、第2参照ピクチャを用いて1つのビデオピクチャを復号するもので、「第1ビデオピクチャ、第2ビデオピクチャおよび第3ビデオピクチャのセットの内の少なくとも一つのビデオピクチャを復号化する方法」といえる。 (イ)「(i)第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第1の順序差値に反比例するとともに、 (ii)第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第2の順序差値に比例する 特定値を計算するステップと、 前記特定値と前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルとを乗算して前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルを計算するステップであって、前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルが第3ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルであり、前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルが第2ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルである、ステップ」 図35及び段落【0030】?【0037】のダイレクトモードの記載によると、 スケーリング用ベクトルrMVは、第2参照ピクチャと第1参照ピクチャの動きベクトルであり、 第1動きベクトルsMV1は、復号化するビデオピクチャと第1参照ピクチャの動きベクトルであり、 第2動きベクトルsMV2は、復号化するビデオピクチャと第2参照ピクチャの動きベクトルであり、 第1動きベクトルsMV1は sMV1=TR1×rMV/TR0 第2動きベクトルsMV2は sMV2=-TR2×rMV/TR0 として求めるものである。 第1参照ピクチャ、復号化するピクチャ、第2参照ピクチャは、それぞれピクチャであるから、第1ビデオピクチャ、第2ビデオピクチャ、第3ビデオピクチャといえる。 スケーリング用ベクトルrMVは、第2参照ピクチャと第1参照ピクチャの動きベクトルであるから、第3ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルであり、第3ビデオピクチャのための動きベクトルといえる。 第1動きベクトルsMV1は、復号化するビデオピクチャと第1参照ピクチャの動きベクトルであるから、第2ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルであり、第2ビデオピクチャのための動きベクトルといえる。 第1動きベクトルsMV1は sMV1= TR1×rMV/TR0 :式1 として求めるから、第2ビデオピクチャのための動きベクトルといえる第1動きベクトルsMV1は、TR1に比例し、TR0に反比例し、TR1と第3ビデオピクチャのための動きベクトル、TR0により求められる。 画面内での符号化対象ブロックを含む物体の動きが一定であると仮定した場合、第1動きベクトルMV01と第2動きベクトルMV02は、符号化対象ピクチャTPと第1参照ピクチャRP1の表示時刻差と、符号化対象ピクチャTPと第2参照ピクチャRP2の表示時刻差とによって、動きベクトルMV0を内分することによって求められ(段落【0036】)、動きベクトルMV0はスケーリング用ベクトルである(段落【0033】)から、第1動きベクトルsMV1はスケーリング用ベクトルrMVを内分することによって求められる。 第1動きベクトルsMV1は、上記式1で求められるところ、上記式1自体から、第1動きベクトルsMV1は、TR1に比例し、TR0に反比例し、TR1、第3ビデオピクチャのための動きベクトルといえるスケーリング用ベクトルrMV、TR0により計算されるといえ、さらに、乗算、除算の計算の順序を変えて、TR1/TR0を計算し、スケーリング用ベクトルrMVを掛けるようにしても計算の結果が同じになることは明らかであって、上記式1から当業者はTR1/TR0を計算し、スケーリング用ベクトルrMVを掛ける手法を認識するものと認められる。 したがって、第1動きベクトルsMV1を上記式1で求めることは、TR0に反比例するとともに、TR1に比例する特定値を計算するステップと、前記特定値と第3ビデオピクチャのための動きベクトルといえるスケーリング用ベクトルrMVとを乗算して第2ビデオピクチャのための動きベクトルである第1動きベクトルsMV1計算するステップにより、第1動きベクトルsMV1を求めることを開示するものと認められる。 TR0は、第1参照ピクチャと第2参照ピクチャ間の表示時間差であり、第1参照ピクチャと第2参照ピクチャには順序があり、順序には値があるから、第1参照ピクチャと第2参照ピクチャ間の表示時間差は、第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャ順序値との間の第1順序値差といえる。また、TR1は、復号化するビデオピクチャと第1参照ピクチャ間の表示時間差であり、復号化するビデオピクチャと第1参照ピクチャには順序があり、順序には値があるから、復号化するピクチャと第1参照ピクチャ間の表示時間差は、第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャ順序値との間の第2順序値差といえる。 そうすると、第1の動きベクトルを式1で求めることは、 「(i)第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第1の順序差値に反比例するとともに、 (ii)第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第2の順序差値に比例する 特定値を計算するステップと、 前記特定値と前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルとを乗算して前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルを計算するステップであって、前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルが第3ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルであり、前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルが第2ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルである、ステップ」 といえ、先願1発明は、これらのステップを含んでいるいえる。 (ウ)「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトルを用いて復号化するステップ」 上記(3)に記載したとおり、補正後発明1の「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトルを用いて復号化するステップ」は、「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトルを用いて復号化」すればよく、「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトル」と他の動きベクトル「を用いて復号化する」ことを排除するものではないと認められる。 先願1発明は、 「また、第1参照ピクチャを指示するための第1参照インデックスRI1及び第1動きベクトルsMV1に対応する参照ブロックRB1と、第2参照ピクチャを指示するための第2参照インデックスRI2及び第2動きベクトルsMV2に対応する参照ブロックRB2とを出力し、2個の参照ブロックRB1、RB2のそれぞれに対応する画素値を補間して、補間ブロックRePを出力し、補間ブロックRePが予測画像信号Preとし、画像符号化信号を復号した残差復号信号DRと予測画像信号Preとを加算し、復号画像信号とするものである」であり、このことは、第2ビデオピクチャを(第2ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルである)第2ビデオピクチャのための動きベクトルといえる第1動きベクトルsMV1と、第2動きベクトルsMV2を用いて復号するステップを有するといえ、このことは、上記(3)の記載の認定から、「第2ビデオピクチャを第2ビデオピクチャの動きベクトルを用いて復号化するステップ」を有するといえる。 また、第2ビデオピクチャの動きベクトルは、上記(イ)のとおり計算されるものである。 したがって、先願1発明は、「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトルを用いて復号化するステップ」を含んでいる。 (エ)まとめ 以上のとおり、補正後発明1は、先願1発明と同一である。 特許法第41条第3項の規定により、先願1は出願公開がされたものであり、 先願1発明の発明者が補正後発明の発明者と同一の者ではなく、先願1の出願人が本件特許出願の出願人と同一の者ではない。 そして、本件補正1後の請求項1に係る発明は、先願1の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 よって、本件補正1は特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に反している。 [理由2] (6)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された「Joint Video Team (JVT) of ISO/IEC MPEG and ITU-T VCEG, Working Draft Number 2, Revision 0 (WD-2) (JVT-B118), p.1,21,22,62-67, [online], 2001年12月3日, Joint Video Team (JVT), [2008年5月13日検索], インターネット 「This document presents the Working Draft Number 2 (WD-2) released by the Joint Video Team (JVT). The JVT is being formed by ITU-T SG16 Q.6 (VCEG) and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 (MPEG). This document is a description of a reference coding method to be used for the development of a new video compression method called JVT Coding as ITU-T Recommendation (H.26L) and ISO/IEC JTC1 Standard (MPEG-4, Part 10).」(1頁10?15行) [訳:このドキュメントは、JVT(Joint Video Team)によりリリースされたワーキングドラフトNo.2(WD-2)を提供するものである。JVTは、ITU-T SG16 Q.6(VCED)とISO/IEC jtc 1/SC 29/WG 11(MPEG)により作られている。このドキュメントは、ITU-T勧告(H.26L)とISO/IEC JTC1 規格 (MPEG-4, Part 10)として、JVTコーディングと呼ばれている新しいビデオ圧縮法の発展のために使われる参照コーディング方法の記述である。] 「7.4 Decoder Process for motion vector」(62頁下から5行) [訳:7.4 動きベクトルのためのデコーダ処理] 「7.4.2 Motion vectors in direct mode In direct mode the same block structure as for the co-located macroblock in the temporally subsequent picture is used. For each of the sub-blocks the forward and backward motion vectors are computed as scaled versions of the corresponding vector components of the co-located macroblock in the temporally subsequent picture as described below. If the multiple reference frame prediction is used, the forward reference frame for the direct mode is the same as the one used for the corresponding macroblock in the temporally subsequent reference picture. The forward and backward motion vectors for direct mode macroblocks are calculated differently depending on whether PSTRUCT and the reference are fields or frames. Also note that if the subsequent reference picture is an intra-coded frame or the reference macroblock is an intra-coded block, the motion vectors are set to zero. With possible adaptive switch of frame/field coding at picture level, a B-frame or its future reference frame can be coded in either frame structure or field structure. Hence, there can be four different combinations of frame or field coding for a pair of a MB in B and its collocated MB in the future reference. Calculations of the two MVs in direct mode are slightly different for the four cases.」(63頁5?18行) [訳:7.4.2 ダイレクトモードにおける動きベクトル ダイレクトモードにおいて、現在のサブシーケンスピクチャの同じ位置を示す(co-located)マクロブロックとして、同じブロックストラクチャが使われる。サブブロックのそれぞれのために、現在のサブシーケンスピクチャの同じ位置を示すマクロブロックの一致するベクトル成分のスケールされたバージョンとして、以下に記述するように、フォワードとバックワード動きベクトルが計算される。 もし複数のリファレンスフレーム予測を使うならば、ダイレクトモードのフォワードリファレンスフレームは、現在のサブシーケンスリファレンスピクチャの相当するマクロブロックのために使われるフレームと同じである。ダイレクトモードマクロブロックのフォワードとバックワード動きベクトルは、PSTRUCT(picture structure)とリファレンスとがフィールド又はフレームかに基づいて、異なって計算される。もしシーケンスリファレンスピクチャがイントラコーデッドフレーム又はリファレンスマクロブロックがイントラコーデッドブロックならば、動きベクトルはゼロにセットされることもノートする。ピクチャレベルでコードされたフレーム/フィールドのポッシブルアダプティブスイッチを用いて、Bフレーム又はそのフューチャリファレンスフレームは、フレームストラクチャ又はフィールドストラクチャでコードされる。それゆえ、Bの中のMBとフューチャリファレンスのその対応するMBのペアのフレーム又はフィールドのコーディングの4つのコンビネーションがある。ダイレクトモードの2つのMVの計算は、4つの場合でわずかに違いがある。] 「Case 1: Both the current MB and its collocated are in frame mode Both the current B and its future reference are in frame structure, as shown in Fig. 4. The forward reference is the frame pointed by the forward MV of the collocated MB and the backward reference is the immediate future reference frame of I or P. Two MVs (MVF,MVB)are calculated by (see Fig. 4) MVF=TRB・MV/TRD MVB=(TRB-TRD)・MV/TRD where TRB is the temporal distance between the current B frame and the reference frame pointed by the forward MV of the collocated MB, and TRD is the temporal distance between the future reference frame and the reference frame pointed by the forward MV of the collocated MB.」(63頁19?27行) [訳:ケース1:現在のMBとその同じ位置を示すものの両方がフレームモードである。 Fig.4に示すように、現在Bとそのフューチャリファレンスとの両方がフレームストラクチャである。フォワードリファレンスは、同じ位置を示すMBのフォワードMVによって示されるフレームであり、バックワードリファレンスはI又はPであるすぐのフューチャリファレンスフレームである。2つのMV(MVF、MVB)は次のように計算される(Fig.4参照) MVF=TRB・MV/TRD MVB=(TRB-TRD)・MV/TRD ここで、TRBは、現在のBフレームと同じ位置を示すMBのフォワードMVによって示されたレファレンスフレームとの時間の距離であり、TRDは、フューチャリファレンスフレームと同じ位置を示すMBのフォワードMVによって示されたリファレンスフレームとの時間の距離である。] FIGURE21(63頁) 「Both the current MB in B and its collocated MB in the future reference of I or P are in frame mode. Solid-line is for frames and dot-line for fields. f1 stands for field 1 and f2 for field 2. 」(64頁1?2行) [訳:Bにおける現在のMBとI又はPのフューチャレファレンスにおけるその同じ位置を示すMBとの両方はフレームの中にある。直線はフレームであり、点線はフィールドである。f1はフィールド1であり、f2はフィールド2である。] (7)補正後発明1と引用文献1に記載された発明との対比 ア 引用文献1に記載された発明 引用文献1に記載されたケース1の動きベクトルの計算の仕方を方法の発明(以下「引用発明」という。)として認定すると下記のとおりである。 記(引用発明) 動きベクトルを計算する方法であって、 フォワードリファレンスは、同じ位置を示すMBのフォワードMVによって示されるフレームであり、バックワードリファレンスはI又はPであるすぐのフューチャリファレンスフレームであり、2つのMV(MVF、MVB)は次のように計算される。 MVF=TRB・MV/TRD MVB=(TRB-TRD)・MV/TRD ここで、TRBは、現在のBフレームと同じ位置を示すMBのフォワードMVによって示されたレファレンスフレームとの時間の距離であり、TRDは、フューチャリファレンスフレームと同じ位置を示すMBのフォワードMVによって示されたリファレンスフレームとの時間の距離である。 イ 補正後発明1と引用発明との対比 (ア)「第1ビデオピクチャ、第2ビデオピクチャおよび第3ビデオピクチャのセットの内の少なくとも一つのビデオピクチャを復号化する方法」 引用発明の方法は、現在のBフレーム、バックワードリファレンスフレーム、フォワードリファレンスを用いて動きベクトルを計算する方法といえるものの、「第1ビデオピクチャ、第2ビデオピクチャおよび第3ビデオピクチャのセットの内の少なくとも一つのビデオピクチャを復号化する方法」ではなく、補正後発明1と相違する。 (イ)「(i)第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第1の順序差値に反比例するとともに、 (ii)第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第2の順序差値に比例する 特定値を計算するステップと、 前記特定値と前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルとを乗算して前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルを計算するステップであって、前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルが第3ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルであり、前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルが第2ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルである、ステップ」 フレームは、ビデオピクチャといえ、フォワードリファレンス及びバックワードリファレンスはフレームであるから、フォワードリファレンス(リファレンスフレーム)、現在のBフレーム、バックワードリファレンス(フューチャリファレンスフレーム)は、第1ビデオピクチャ、第2ビデオピクチャ、第3ビデオピクチャといえる。 フォワードリファレンスは、同じ位置を示すMBのフォワードMVによって示されるフレームであり、同じ位置を示すMBはフューチャリファレンスフレームにある(FIGURE21参照)から、MVは、第3ビデオピクチャと第1ピクチャ間の動きベクトルであり、第3ビデオピクチャのための動きベクトルといえる。 動きベクトルMVFは現在のBフレームからフォワードリファレンスへのものであるから、動きベクトルMVFは第2ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルであり、第2ビデオピクチャのための動きベクトルといえる。 動きベクトルMVFは MVF=TRB・MV/TRD :式2 として計算されるから、第2ビデオピクチャのための動きベクトルといえる動きベクトルMVFは、TRBに比例し、TRDに反比例し、TRBと第3ビデオピクチャのための動きベクトル、TRDにより計算される。 TRDは、フューチャリファレンスフレームと同じ位置を示すMBのフォワードMVによって示されたリファレンスフレームとの時間の距離であり、フューチャリファレンスフレームと同じ位置を示すMBのフォワードMVによって示されたリファレンスフレームには順序があり、順序には値があるから、フューチャリファレンスフレームと同じ位置を示すMBのフォワードMVによって示されたリファレンスフレームとの時間の距離は、第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャ順序値との間の第1順序値差といえる。 TRBは、現在のBフレームと同じ位置を示すMBのフォワードMVによって示されたレファレンスフレームとの時間の距離であり、現在のBフレームとリファレンスフレームには順序があり、順序には値があるから、現在のBフレームと同じ位置を示すMBのフォワードMVによって示されたレファレンスフレームとの時間の距離は、第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャ順序値との間の第2順序値差といえる。 そうすると、補正後発明1と引用発明とは、 「(i)第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第1の順序差値に反比例し、 (ii)第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第2の順序差値に比例し、 前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルとを乗算して前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルを計算するステップであって、前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルが第3ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルであり、前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルが第2ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルである、ステップ」 を含んでいる方法である点で一致し、 次の点で相違する。 補正後発明1においては、上記ステップが 「(i)第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第1の順序差値に反比例するとともに、 (ii)第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第2の順序差値に比例する 特定値を計算するステップ」と、 「前記特定値と前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルとを乗算して前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルを計算するステップ」とからなるのに対し、 引用発明においては、そうではない点。 (ウ)「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトルを用いて復号化するステップ」 引用発明は、動きベクトルを計算する方法であるので、「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトルを用いて復号化するステップ」を含んでいない。補正後発明1と相違する。 ウ 一致点、相違点 以上より、補正後発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。 [一致点] (i)第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第1の順序差値に反比例し、 (ii)第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第2の順序差値に比例し、 前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルとを乗算して前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルを計算するステップであって、前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルが第3ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルであり、前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルが第2ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルである、ステップ を含む方法。 [相違点1] 補正後発明1は、「第1ビデオピクチャ、第2ビデオピクチャおよび第3ビデオピクチャのセットの内の少なくとも一つのビデオピクチャを復号化する方法」であり、「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトルを用いて復号化するステップ」を含んでいるのに対し、引用発明は、現在のBフレーム、バックワードリファレンスフレーム、フォワードリファレンスを用いて動きベクトルを計算する方法であり、「ビデオピクチャを復号化する方法」ではなく、「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトルを用いて復号化するステップ」を含んでいない点。 [相違点2] 「動きベクトルを計算するステップ」が、 補正後発明1においては、 「(i)第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第1の順序差値に反比例するとともに、 (ii)第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第2の順序差値に比例する 特定値を計算するステップ」と、 「前記特定値と前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルとを乗算して前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルを計算するステップ」とからなるのに対し、 引用発明においては、そうではない点。 エ 相違点の判断等 (ア)相違点1について 引用文献1は、1頁の記載から、MPEGやH.26Lのようなビデオ圧縮に関連するものである。「Bフレーム」という文言は双方向予測フレームを意味することが明らかであり、引用文献1のケース1における動きベクトルは、符号化や復号化に使われることも明らかである。 そうすると、引用文献1に接した当業者は、引用文献1のケース1における動きベクトルを用いて現在のBフレームを復号化するようにすることは容易である。 上記ア(イ)のとおり、動きベクトルMVFはケース1における現在のBピクチャの動きベクトルで、計算されるものであり、現在のBピクチャは第2ビデオピクチャであるから、引用発明に「前記第2ビデオピクチャを前記計算された該第2ビデオピクチャの動きベクトルを用いて復号化するステップ」を設け、復号化する方法にすることは当業者が容易に想到できることである。 (イ)相違点2について 引用発明において、動きベクトルMVFは MVF=TRB・MV/TRD :式2 として計算されるから、第2ビデオピクチャのための動きベクトルといえる動きベクトルMVFは、TRBに比例し、TRDに反比例し、TRBと第3ビデオピクチャのための動きベクトル、TRDにより計算される。 動きベクトルMVFは、上記式2で計算されるところ、乗算、除算の計算の順序を変えても計算の結果が同じになることは明らかであり、TRB/TRDを計算し、その値にMVを掛けることは普通に想定できるから、引用発明における動きベクトルを計算するステップを、TRB/TRDを計算するステップとその値にMVを乗算するステップとからなるように、 動きベクトルを計算するステップを 「(i)第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第1の順序差値に反比例するとともに、 (ii)第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第2の順序差値に比例する 特定値を計算するステップと、 前記特定値と前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルとを乗算して前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルを計算するステップであって、前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルが第3ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルであり、前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルが第2ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルである、ステップ」 とすることは、当業者にとって容易である。 (ウ)効果等 以上のように、相違点1?2に係る構成はいずれも当業者が容易に想到できたものである。そして、これらの相違点に係る構成を総合しても、補正後発明1が奏する効果は、当業者が容易に予測できたものである。 したがって、補正後発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 よって、本件補正1は特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に反している。 (8)まとめ 以上のとおり、本件補正1は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。 2 平成21年6月23日付け手続補正について次のとおり決定する。 [補正却下の決定の結論] 平成21年6月23日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容及び目的 平成21年5月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、平成21年6月23日付けの手続補正(以下「本件補正2」という。)は、平成20年11月27日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲についてする補正である。 補正前の請求項5、6、8、14、15、17を削除する補正は、請求項の削除を目的とするものである。 請求項1、2、7、8、17、22についてする補正は、補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 請求項3?6、9?16、18?21についてする補正は、請求項1または7を引用するものであり、請求項1,7についてする補正は上記のとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、請求項3?6、9?16、18?21についてする補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)独立特許要件 上記のとおり本件補正2は特許請求の範囲の減縮を目的としているので、本件補正2後における発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを、以下に検討する。 (3)検討 本件補正2の請求項1に係る発明は、上記1の補正後の請求項1に係る発明と同じであるから、上記1の[理由]を援用する。 そうすると、同じ理由で、本件補正2は特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に反している。 (4)まとめ 以上のとおり、本件補正2は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成21年5月25日付けの手続補正及び平成21年6月23日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成20年11月27日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の各請求項に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は下記のとおりである。 記(本願発明1) 「第1ビデオピクチャ、第2ビデオピクチャおよび第3ビデオピクチャのセットの内の少なくとも一つのビデオピクチャを復号化する方法であって (i)第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第1の順序差値と、 (ii)第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第2の順序差値と に基づき特定値を計算するステップと、 前記特定値と前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルに基づいて前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルを計算するステップと、 少なくとも1つのビデオピクチャを前記計算された動きベクトルを用いて復号化するステップと、 を含むことを特徴とする方法。」 2 本願発明1と先願1に記載された発明との対比・判断 本願発明1は、補正後発明1の 「(i)第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第1の順序差値に反比例するとともに、 (ii)第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第2の順序差値に比例する 特定値を計算するステップ」における「反比例する」、「比例する」の限定をなくし、 「(i)第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第1の順序差値と、 (ii)第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第2の順序差値と に基づき特定値を計算するステップ」とするものであり、 補正後発明1の 「前記特定値と前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルとを乗算して」における「乗算して」の限定をなくし、 「前記特定値と前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルに基づいて」とするものであり、さらに、 補正後発明1の「前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルが第3ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルであり、前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルが第2ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルである、」という限定をなくすものである。 原査定の拒絶の理由に引用された先願1の記載事項は、上記第2の2(4)に記載したとおりであり、先願1に記載された発明は、上記第2の2(5)アに記載した先願1発明と同じである。 本願発明1を限定した補正後発明1は、上記第2の2(5)のとおり、先願1の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるから、同様の理由により、本願発明1は、先願1の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 3 本願発明1と引用文献1に記載された発明との対比・判断 本願発明1は、補正後発明1の 「(i)第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第1の順序差値に反比例するとともに、 (ii)第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第2の順序差値に比例する 特定値を計算するステップ」における「反比例する」、「比例する」の限定をなくし、 「(i)第3ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第1の順序差値と、 (ii)第2ビデオピクチャの順序値と第1ビデオピクチャの順序値との間の第2の順序差値と に基づき特定値を計算するステップ」とするものであり、 補正後発明1の 「前記特定値と前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルとを乗算して」における「乗算して」の限定をなくし、 「前記特定値と前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルに基づいて」とするものであり、さらに、 補正後発明1の「前記第3ビデオピクチャのための動きベクトルが第3ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルであり、前記第2ビデオピクチャのための動きベクトルが第2ビデオピクチャと第1ビデオピクチャ間の動きベクトルである、」という限定をなくすものである。 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の2(6)に記載したとおりであり、引用文献1に記載された発明は、上記第2の2(7)アに記載した引用発明と同じである。 本願発明1を限定した補正後発明1は、上記第2の2(7)のとおり、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、同様の理由により本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、先願1の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 また、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、残る請求項2?28に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のように審決する。 |
審理終結日 | 2011-09-28 |
結審通知日 | 2011-10-03 |
審決日 | 2011-10-14 |
出願番号 | 特願2008-76587(P2008-76587) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N) P 1 8・ 575- Z (H04N) P 1 8・ 121- Z (H04N) P 1 8・ 161- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 横田 有光、坂本 聡生 |
特許庁審判長 |
奥村 元宏 |
特許庁審判官 |
小池 正彦 渡邊 聡 |
発明の名称 | デジタルビデオ符号化処理における可変精度ピクチャ間タイミング指定方法及び装置 |
代理人 | 坂田 恭弘 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 下山 治 |
代理人 | 永川 行光 |
代理人 | 高柳 司郎 |