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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C22F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C22F
管理番号 1253302
審判番号 不服2010-18195  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-11 
確定日 2012-03-09 
事件の表示 特願2005-506911「電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法、電解コンデンサ電極用アルミニウム材、電解コンデンサ用電極材の製造方法およびアルミニウム電解コンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月23日国際公開、WO2004/112065〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一 手続の経緯
本件審判に係る出願は、特願2003年第157904号(出願日平成15年6月3日)を国内優先権の基礎として平成16年6月3日に出願されたものであって、平成22年4月27日付けで拒絶査定された。
本件審判は、この拒絶査定を不服として、平成22年8月11日付けで、審判請求されたものであって、同日付けで特許請求の範囲についての手続補正がなされた。

第二 本願発明について
1.本願発明は、平成22年8月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?31に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は以下のとおりのものである(以下、「本件発明」という。)。

「冷間圧延を施したアルミニウム材の表面を酸水溶液に接触させ、その後の焼鈍を、不活性ガス雰囲気中で、450℃以上の一定の温度で保持する時間(x)と保持温度(y)との関係が、1.5時間≦x<8時間のとき450℃≦y≦580℃、8時間≦x<10時間のとき450℃≦y≦(660-10x)℃、10時間≦xのとき450℃≦y≦560℃を満たす条件で行うことを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。」
2.原査定の拒絶理由の概要
本件発明は、補正前の旧請求項1を引用する旧請求項5に対応しており、原査定の拒絶理由の概要は以下のとおりである。
〈理由1〉
本件発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

1.国際公開第03/015112号

3.当審の判断
(1)刊行物1に記載された事項
(刊行物1)
(1a)「背景技術
・・・
例えば、直流エッチング法でトンネル状ピットを生成させる電解コンデンサ用アルミ二ウム材の製造において、通常は、(100)面の結晶方位を発達させるために、500℃前後の温度にて不活性雰囲気もしくは真空中で最終焼鈍することが行われている。なお、最終焼鈍とは、仕上げ冷間圧延の後もしくは仕上げ冷間圧延、洗浄の後に実施する工程である。」(1頁下から3行?2頁10行)

(1b)「(第3の実施形態)
・・・
アルミニウム材を加熱体との接触により加熱する接触加熱は、加熱体接触面により短時間でアルミニウム材表面を目的の温度に到達させることが出来る
・・・
以下に、本発明による電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法を説明する。
・・・
アルミニウム材は、一般には、アルミニウム材料の溶解・成分調整・スラブ鋳造、均熱処理、熱間圧廷、冷間圧延、中間焼鈍、仕上冷間圧延(低圧下圧延.)の各工程を経て製造される。
・・・
最終圧延後のアルミニウム材をアルミニウムを溶解し得る液で洗浄し、その後、接触加熱を行う。アルミニウムを溶解しうる液としては、酸・・・が挙げられ,最終圧延後アルカリ洗浄または酸洗浄の少なくともどちらかの洗浄を行うことが好ましい。
・・・
次に、アルミニウムを溶解し得る液での洗浄を施したアルミニウム材を、加熱体との接触により加熱する。
・・・
接触加熱後、アルミニウム材の結晶組織の方位を(100)方位に整えてエッチング特性を向上させることを主目的とし最終焼鈍がなされる。
・・・
この最終焼鈍における処理雰囲気は・・・具体的には、アルゴン、窒素等の不活性ガス中あるいは0.1Pa以下の真空中で加熱することが好ましい
・・・
最終焼鈍時の保持温度、時間は・・・アルミニウム実体温度450?600℃にて、10分?50時間焼鈍するのが好ましい・・・。
特に好ましい温度は、アルミニウム実体温度で460?560℃、時間は30分?40時間である。」(18頁2行?22頁下から9行)

(1c)「[第3の実施例]
この実施例は、第3の実施形態に対応するものである。
・・・
(実施例301)
・・・
接触加熱後のアルミニウム箔を重ねた状態でアルゴン雰囲気下でアルミニウム箔の実体温度を室温から500℃まで50℃/hで昇温させた後、500℃にて24時間保持させ、次いで冷却した後炉出しし、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。」(48頁下から5行?50頁11行)

(2)対比・判断
〈理由1〉について
刊行物1の(1b)、(1c)には、整理すると、
「アルミニウム材を、仕上冷間圧延後、酸洗浄を行い、加熱体との接触により加熱し、最終焼鈍を、不活性ガス中で、460?560℃、時間は30分?40時間(第3の実施例では、500℃にて24時間)の条件で行う電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。」(以下「引用発明a」という。)が記載されている。

引用発明aと本件発明とを対比すると、
引用発明aの「アルミニウム材を、仕上冷間圧延後、酸洗浄」を行うことは、本件発明の「冷間圧延を施したアルミニウム材の表面を酸の水溶液に接触させ」ることに相当する。

引用発明aの最終焼鈍を、「460?560℃、時間は30分?40時間(第3の実施例では、500℃にて24時間)の条件」で行うことは、本件発明のその後の焼鈍を、「450℃以上の一定の温度で保持する時間(x)と保持温度(y)との関係が、1.5時間≦x<8時間のとき450℃≦y≦580℃、8時間≦x<10時間のとき450℃≦y≦(660-10x)℃、10時間≦xのとき450℃≦y≦560℃を満たす条件」で行うことと、焼鈍温度及び時間の範囲が重複している。
したがって、本件発明は、刊行物1に記載された発明である。

なお、請求人は平成23年10月28日付け回答書の2頁下から11行以下において
(ア)本件発明は、酸の水溶液に接触させて洗浄した後、最終焼鈍前に、どのような処理をするか、何もしないか、特定がないのに対して、
(イ)引用発明は、酸洗浄を行った後、「加熱体との接触により加熱し」、最終焼鈍を行っている点で両者は相違する旨を主張している。

しかし、本件発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「 〔焼鈍〕
酸水溶液に接触させた後のアルミニウム材は、水洗、乾燥された後焼鈍される。
乾燥の方法は特に限定されないが、空気中加熱、不活性雰囲気加熱、真空加熱あるいは加熱体とアルミニウム材の接触加熱を用いることができる。」(8頁13行?16行)。

すなわち、本件発明は、発明の詳細な説明において、酸の水溶液に接触させて洗浄した後、最終焼鈍前に、乾燥の方法として「加熱体との接触により加熱」することを排除しないものである。そして、乾燥のための接触加熱も、引用発明における目的温度に到達させるための接触加熱も(1b)、接触加熱という点で同じであり、したがって、上記の点は相違点となり得ない。

また、本件発明に対する原審の拒絶理由ではないものの、請求人は平成22年8月11日付け審判請求書4頁下から8行以下において、特開昭60-92489号公報(刊行物3)に対する進歩性の存在について主張しているので、念のために、これについて検討すると、以下のとおりである。

刊行物3には、以下の事項が記載されている。
(3a)「以下に本発明を詳細に説明するに電解コンデンサー用アルミニウム箔の製造において
・・・
本発明は硝酸を、主成分とする洗浄剤を使用する洗浄処理を、冷間の箔圧延工程の前および/又は後に行うことを特徴とする。
・・・
以上のようにして洗浄処理したアルミニウム箔は公知の方法、例えば、真空無酸素雰囲気で250?600℃、2?10時間保持して焼鈍処理する。」(2頁右上欄7行?3頁左上欄下から6行)

(3b)「実施例1
二次電解アルミニウムのスラブを熱間圧延し、ついで、冷間圧延して箔地とし、さらに、冷間箔圧延して、・・・硝酸を主体とする洗浄浴中に入れて・・・水濡れ性および耐蝕性を調査した。」(3頁右上欄下から7行?左下欄1行)

(3c)「実施例2
前記表1に示す処理条件で洗浄処理して得られた実施例および比較例のアンモニウム(当審注・アルミニウムの誤記と解される。)箔を10^(-3)Torrの真空下、温度570℃で6時間焼鈍した・・・」(4頁右下欄下から11行?下から8行)

上記記載を整理すると、刊行物3には、
「アルミニウムの冷間の箔圧延工程の後に、硝酸を使用する洗浄処理を、公知の方法、例えば、真空無酸素雰囲気で250?600℃、2?10時間(実施例2では、10^(-3)Torrの真空下、温度570℃、6時間)保持して焼鈍処理する電解コンデンサー用アルミニウム箔の製造方法。」(以下「引用発明b」という。)が記載されている。

引用発明bの「アルミニウムの冷間の箔圧延工程の後に、硝酸を使用する洗浄処理」を行うことは、
本件発明の「冷間圧延を施したアルミニウム材の表面を酸の水溶液に接触させ」ることに相当する。

引用発明bの、焼鈍を「250?600℃、2?10時間(実施例2では、温度570℃、6時間)」の条件で行うことは、
本件発明の、焼鈍を「450℃以上の一定の温度で保持する時間(x)と保持温度(y)との関係が、1.5時間≦x<8時間のとき450℃≦y≦580℃、8時間≦x<10時間のとき450℃≦y≦(660-10x)℃、10時間≦xのとき450℃≦y≦560℃を満たす条件」で行うことと、焼鈍温度及び時間の範囲が重複している。

したがって、本件発明と引用発明bとは、以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「冷間圧延を施したアルミニウム材の表面を酸水溶液に接触させ、その後の焼鈍を、450℃以上の一定の温度で保持する時間(x)と保持温度(y)との関係が、1.5時間≦x<8時間のとき450℃≦y≦580℃、8時間≦x<10時間のとき450℃≦y≦(660-10x)℃、10時間≦xのとき450℃≦y≦560℃を満たす条件で行うことを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。」

(相違点)
本件発明は、焼鈍を「不活性ガス雰囲気中で」行うのに対して、
引用発明は、「公知の方法、例えば、真空無酸素雰囲気」で行う点。

相違点について、
焼鈍を「不活性ガス雰囲気中で」行うことは、以下の周知例のように周知である。
刊行物1の(1a)の背景技術
特開平11-36053号公報 段落0004
特開平8-296009号公報 段落0004
特開昭63-86878号公報(本件発明の詳細な説明の1頁の背景技術に記載されている。)2頁右下欄下から5行?3頁左上欄4行

したがって、引用発明において、公知の方法として、上記周知の焼鈍を「不活性ガス雰囲気中で」行なうことは、当業者であれば適宜なし得たものであり、請求人の主張は認められない。

4.むすび
以上のとおり、本件発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-12-22 
結審通知日 2012-01-10 
審決日 2012-01-23 
出願番号 特願2005-506911(P2005-506911)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C22F)
P 1 8・ 121- Z (C22F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀧口 博史  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 佐藤 陽一
山本 一正
発明の名称 電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法、電解コンデンサ電極用アルミニウム材、電解コンデンサ用電極材の製造方法およびアルミニウム電解コンデンサ  
代理人 高田 健市  
代理人 清水 久義  
代理人 清水 義仁  

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