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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) H04N
管理番号 1253401
判定請求番号 判定2011-600048  
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2012-04-27 
種別 判定 
判定請求日 2011-10-19 
確定日 2012-02-20 
事件の表示 上記当事者間の特許第3549195号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「超字幕」をインストールしたコンピュータは、特許第3549195号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、
イ号図面並びにその説明書に示す「超字幕」をインストールしたコンピュータ(以下、「イ号物件」という。)は、特許第3549195号の請求項1に記載された発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、
との判定を求めるものである。

第2 本件特許発明

1 本件特許発明

本件特許発明は、本件特許明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1に記載されたとおりのものであって、平成23年10月19日付けの判定請求書(以下「請求書」という。)に倣って構成毎に(特-1)?(特-7)の符号を付して示せば、次のとおりのものと認める(以下、構成(特-1)などという。)。

(特-1)開始位置と終了位置とによって特定部分を再生可能な記録媒体(a)を再生するための記録媒体再生装置において、
(特-2)システムの制御、処理を行うコンピュータと、該コンピュータに対して夫々接続される表示装置、入力装置、記録媒体制御装置、記憶装置、音響装置を備え、
(特-3) 前記コンピュータは、再生出力機能を有するアプリケーションソフトがインストールされており、
(特-4) 記録媒体(a)及び記録媒体(b)は、記録媒体制御装置を介してコンピュータに接続され、
(特-5) 前記記録媒体(b)は、記録媒体(a)の前記特定部分に対応する句(p1)の開始位置及び終了位置の位置情報と句(p1)に関連づける情報(P)とを有するフレームカードと、制御情報とを保持してなる制御ファイルを備え、
(特-6) 前記記録媒体(b)内の制御情報と、記録媒体(a)の特定部分が同一番号を有するひとつの制御系となる構成とし、
(特-7) 前記コンピュータは、前記記録媒体(b)に記録されるフレームカード内の前記位置情報から句(p1)に対応する前記記録媒体(a)の特定部分を、音響装置若しくは表示装置へ再生出力可能とするとともに、音響装置若しくは表示装置へ情報(P)の出力を可能としたことを特徴とする記録媒体再生装置。

2 本件特許発明の目的および効果

本件特許明細書の段落【0010】の【発明が解決しようとする課題】によれば、「従来のマルチメディア媒体を自在に活用することができ、学習効果を上げることができるシステムの提供を課題とするものである。即ち、再生個所の分割、再編成、さらには、再生に関連付けて、新たに映像と音声とテキストを提供でき、」とし、その後に、具体的な使用例を例示して課題を説明しており、
本件特許発明の目的は、「従来のマルチメディア媒体を自在に活用することができ、」「再生個所の分割、再編成、さらには、再生に関連付けて、新たに映像と音声とテキストを提供」することにより「学習効果を上げることができるシステムの提供」と認められる。
また、本件特許明細書の段落【0024】によれば、本件特許発明の効果は、「従来、再生個所や再生順、再生方法についての自由度がきわめて低い記録媒体aの内容を、句の開始位置からの特定部分の再生を行なうことができることとなり、利用目的に添ってソフト的に自在に再生でき、コンピュータが、句p1に対応する特定部分の開始位置からの音声装置若しくは表示装置に再生出力を行なうことが可能となるとともに、記録媒体aの再生時に、再生個所に関連した画像や文字などの情報を提供することによって、新しい表現空間を提供することができる」というものである。

第3 イ号物件

1 イ号物件の認定について

請求人が請求書に添付して提出した「イ号の説明」(甲第10号証)において、甲第3号証ないし甲第9号証から、イ号物件の各構成(イ-1)ないし(イ-7)を説明している。この説明をもとに、各構成(イ-1)ないし(イ-7)を検討する。なお、各構成の認定の際に請求人が認定した構成から変更して認定した箇所には下線を引いた。

(1)構成(イ-1)について

請求人が説明する構成(イ-1)は、「動画再生装置において」としているが、請求の趣旨(上述の第1)および上記「イ号の説明」(甲第10号証)における<イ号の特定>によれば、「パーソナルコンピュータにおいて」とするのが相当であるから、構成(イ-1’)として、以下のものを認める。

(イ-1’)動画「オバマ演説」をハードディスクに記録しない方式でアプリケーションソフト「超字幕/オバマ演説(USB版)」がインストールされており、動画「オバマ演説」の時間「(例えば)00:00:34→00:00:42」の部分が記録されたUSBメモリの部分を再生可能なパーソナルコンピュータにおいて、

(2)構成(イ-2)について

請求人が説明する構成(イ-2)は、上記「イ号の説明」における<イ号の特定>において説明するアプリケーションソフトがインストールされている対象と同一ではないが、「●(イ-2)の説明」によれば、甲第6号証を理由に、「イ号は、当該前提を満たすよう
・ディスプレイ装置
・キーボード・マウス、
・ハードディスクドライバなどからなるハードディスクの制御装置
・USBインターフェイスなどからなるUSBメモリの制御装置、
・ハードディスクを格納した装置
・スピーカー、
・これらの装置からなるシステムの制御、処理を行うコンピュータ
を備え」と説明していることから、イ号の対象とする「パーソナルコンピュータ」は、「ディスプレイ装置、キーボード・マウス、ハードディスクドライバなどからなるハードディスクの制御装置、USBインターフェイスなどからなるUSBメモリの制御装置、ハードディスクを格納した装置、スピーカーおよびこれらの装置からなるシステムの制御、処理を行うコンピュータ
」を備えるものと認められる。
よって、以下のものを構成(イ-2’)として認める。

(イ-2’)ディスプレイ装置、キーボード・マウス、ハードディスクドライバなどからなるハードディスクの制御装置、USBインターフェイスなどからなるUSBメモリの制御装置、ハードディスクを格納した装置、スピーカーおよびこれらの装置からなるシステムの制御、処理を行うコンピュータを備え、

(3)構成(イ-3)について

請求人が説明するように構成(イ-3)を以下のとおり認める。

(イ-3)前記コンピュータには、アプリケーションソフト「超字幕/オバマ演説(USB版)」と「WindowsMediaPlayer11」がインストールされており、

(4)構成(イ-4)について

上述(2)のように構成(イ-2)を構成(イ-2’)としたことに伴い、構成(イ-4’)として以下のとおり認める。

(イ-4’)USBメモリはUSBインターフェイスなどからなるUSBメモリの制御装置を介してコンピュータに接続され、ハードディスクはハードディスクドライバなどからなるハードディスクの制御装置を介してコンピュータに接続され、

(5)構成(イ-5)について

A 「関連付け」について

請求人が「●(イ-5)の説明」において説明する甲第4号証および甲第8号証から理解されることは、表示画面および操作に対する現象(動作)であって、各データの関連について把握されるものではないから、
「動画の時間「00:00:34→00:00:42」の部分に関連付けられた字幕「who still wonder if ・ ・ ・ 建国者たちの夢が・・・」」および
「動画の時間「00:00:28→00:00:34」の部分に関連付けられたフレーズ番号「N0.3」」を認定することはできない。
すなわち、関連付けの存否は、直接に甲第4号証および甲第8号証から理解される事項ではない。

B 「プログラムファイル」について

請求人は、「オバマ演説」フォルダに存在するファイルとして、単に「プログラムファイル」を特定するが、当該「プログラムファイル」は、請求書43?47頁の「●(特-5)と(イ-5)の点」の説明からも明らかなように、『「timeline.ukd」、「PresetWord.ukd」、「Japanese.ukd」などの「.ukd」拡張子が付いたプログラムファイル』である。

C 「コンテンツID」について

請求人は、『コンテンツIDが内部に記載された「contents.xml」ファイル』と説明するが、正しくは、『content idが内部に記載された「contents.xml」ファイル』である。

D まとめ

以上、まとめると、構成(イ-5’)として以下のものが認められる。

(イ-5’)前記コンピュータは、
アプリケーション「超字幕」の「超字幕スタートパネル オバマ演説」画面において「スタート」ボタンに対するクリック操作を受け付けると「超字幕再生」画面を表示し、「超字幕再生」画面の右側の縦方向に配列した各区画にて動画の各フレーズに対応する字幕を表示し、
字幕「who still wonder if ・ ・ ・ 建国者たちの夢が・・・」が表示された区画をポインターで選択する操作と、「リピート再生」ボタンをクリックする操作を受け付けると、画面左側の領域にて対応する動画の部分をその開始時間「00:00:34」から終了時間「00:00:42」までリピート再生することが可能であり、
アプリケーション「超字幕」の「超字幕スタートパネル オバマ演説」画面において「お気に入り字幕」ボタンに対するクリック操作を受け付けると「超字幕 お気に入り字幕・単語帳」画面を表示し、「超字幕 お気に入り字幕・単語帳」画面のリストにて各フレーズの番号と、英語字幕、日本語字幕などを関連付けて表示し、
フレーズ番号「N0.3」の列をポインターで選択する操作と、画面左下の再生画面の「再生」ボタンをクリックする操作を受け付けるとフレーズ番号「No.3」に対応する動画の部分をその開始時間「00:00:28」から終了時間「00:00:34」まで再生することが可能であり、
前記USBメモリには、「Movie」フォルダが存在し、「Movie」フォルダには再生すべき動画ファイル「C_ OBAMA_SPEECH_PRO.wmv」が格納され、
前記ハードディスクには、「超字幕/オバマ演説(USB版)」のインストールによって生成される、アプリケーション「超字幕/オバマ演説(USB版)」用の「timeline.ukd」、「PresetWord.ukd」、「Japanese.ukd」などの「.ukd」拡張子が付いたプログラムファイルが格納された「オバマ演説」フォルダが存在し、
「オバマ演説」フォルダには、content idが内部に記載された「contents.xml」ファイルが格納され、

(6)構成(イ-6)について

A 「installerIniPath」について

請求人は、「●(イ-6)の説明」において『「Installer.ini」ファイルが「contents.xml」に記載されたPath「installerIniPath」先に存在し』と説明するが、甲第3号証ないし甲第9号証からでは、『Path「installerIniPath」先』が特定できない。

B 「関連付け」について

請求人は、「●(イ-6)の説明」において甲第5号証を用いて『「Installer.ini」ファイルは、前記ハードディスクの「contents.xml」ファイルに記載された番号「C68E0F0C-5907-44FD-B394-51CD4E121B75」と前記USBメモリに記録された動画「C_OBAMA_SPEECH_PRO.wmv」へのPATH「Setup\\InstallData\\Movie\\C_OBAMA_SPEECH_PRO.wmv」とを関連付けており、』と説明するが、甲第5号証から理解できることは、書き換えを行った場合に対する現象(動作)であって、各データの関連について把握されるものではない。
すなわち、関連付けの存否は、甲第5号証の記載から理解されることではない。
よって、ファイルの書き換えをしなければ普通に動作することを前提として、甲第5号証から理解される現象として、
『「contents.xml」ファイルに記載されたcontent id「C68E0F0C-5907-44FD-B394-51CD4E121B75」および「Installer.ini」ファイルのcontentsIDが同一の番号である場合は、普通に動作し、
「contents.xml」ファイルのcontent idを書き換えた場合、「オバマ演説」を選択して「超字幕スタートパネル」画面を起動しようとすると「データの読み込み」ができなくなり、
「installer.ini」ファイルのcontentsIDを書き換えた場合、「データの読み込み」はできるが、「スタート」ボタンをクリックして動画を再生しようとすると「ムービーファイルがインストール」されていないと判断され、
「installer.ini」ファイルの「MoviePath」のファイル名を「FutureCar.wmv」に書き換えて、該「MoviePath」先に、「FutureCar.wmv」を格納すると、該「FutureCar.wmv」が再生されるが、字幕表示とその時間範囲(「00:00:34→00:00:42」)は、変更されず、』を認定することができる。

C まとめ

以上、まとめると、構成(イ-6’)として以下のものが認められる。

(イ-6’)前記USBメモリには、前記ハードディスクの「contents.xml」ファイルに記載されたcontent id「C68E0F0C-5907-44FD-B394-51CD4E121B75」と同一の番号を有する「Installer.ini」ファイルが存在し、
「contents.xml」ファイルに記載されたcontent id「C68E0F0C-5907-44FD-B394-51CD4E121B75」および「Installer.ini」ファイルのcontentsIDが同一の番号である場合は、普通に動作し、
「contents.xml」ファイルのcontent idを書き換えた場合、「オバマ演説」を選択して「超字幕スタートパネル」画面を起動しようとすると「データの読み込み」ができなくなり、
「installer.ini」ファイルのcontentsIDを書き換えた場合、「データの読み込み」はできるが、「スタート」ボタンをクリックして動画を再生しようとすると「ムービーファイルがインストール」されていないと判断され、
「installer.ini」ファイルの「MoviePath」のファイル名を「FutureCar.wmv」に書き換えて、該「MoviePath」先に、「FutureCar.wmv」を格納すると、該「FutureCar.wmv」が再生されるが、字幕表示とその時間範囲(「00:00:34→00:00:42」)は、変更されず、
動画「C_OBAMA_SPEECH_PR0.wmv」の時間「00:00:34→00:00:42」の部分が記録された前記USBメモリの部分は、前記USBにおいて動画「C_OBAMA_SPEECH_PRO.wmv」が記録された部分の一部であり、

(7)構成(イ-7)について

上述(1)のように構成(イ-1)を構成(イ-1’)としたことおよび上述(5)のように構成(イ-5)を構成(イ-5’)としたことに伴い、構成(イ-7’)として以下のとおり認める。

(イ-7’)前記コンピュータは、
アプリケーション「超字幕」の「超字幕スタートパネル オバマ演説」画面において「スタート」ボタンに対するクリック操作を受け付けると「超字幕再生」画面を表示し、字幕「who still wonder if ・ ・ ・ 建国者たちの夢が・・・」が表示された区画をポインターで選択する操作と、「リピート再生ボタン」をクリックする操作を受け付けると、画面左側の領域にて対応する動画の部分をその開始時間「00:00:34」から終了時間「00:00:42」までリピート再生することが可能であり、
字幕「who still wonder if ・ ・ ・ 建国者たちの夢が・・・」は、ディスプレイ装置へ出力可能であり、
動画の時間「00:00:34→00:00:42」の部分は、ディスプレイ装置とスピーカーヘ再生出力可能であり、
アプリケーション「超字幕」の「超字幕スタートパネル オバマ演説」画面において「お気に入り字幕」ボタンに対するクリック操作を受け付けると「超字幕 お気に入り字幕・単語帳」画面を表示し、フレーズ番号「No.3」の列をポインターで選択する操作と、画面左下の再生画面の「再生」ボタンをクリックする操作を受け付けるとフレーズ番号「No.3」に対応する動画の部分をその開始時間「00:00:28」から終了時間「00:00:34」まで再生することが可能であり、
フレーズ番号「No.3」の列の英語字幕「who still doubt that ・ ・ ・アメリカでは・・・」などは、ディスプレイ装置へ出力可能であり、
動画の時間「00:00:28→00:00:34」の部分は、ディスプレイ装置とスピーカーヘ再生出力可能であり、
前記USBメモリには、「Movie」フォルダが存在し、「Movie」フォルダには再生すべき動画ファイル「C_OBAMA_SPEECH_PR0.wmv」が格納され、
前記ハードディスクには、「超字幕/オバマ演説(USB版)」のインストールによって生成される、アプリケーション「超字幕/オバマ演説(USB版)」用の「timeline.ukd」、「PresetWord.ukd」、「Japanese.ukd」などの「.ukd」拡張子が付いたプログラムファイルが格納された「オバマ演説」フォルダが存在する、
ことを特徴とするパーソナルコンピュータ。

2 イ号物件の構成

以上、まとめると、イ号物件は次のとおり特定されるものと認める。

(イ-1’)動画「オバマ演説」をハードディスクに記録しない方式でアプリケーションソフト「超字幕/オバマ演説(USB版)」がインストールされており、動画「オバマ演説」の時間「(例えば)00:00:34→00:00:42」の部分が記録されたUSBメモリの部分を再生可能なパーソナルコンピュータにおいて、

(イ-2’)ディスプレイ装置、キーボード・マウス、ハードディスクドライバなどからなるハードディスクの制御装置、USBインターフェイスなどからなるUSBメモリの制御装置、ハードディスクを格納した装置、スピーカーおよびこれらの装置からなるシステムの制御、処理を行うコンピュータを備え、

(イ-3)前記コンピュータには、アプリケーションソフト「超字幕/オバマ演説(USB版)」と「WindowsMediaPlayer11」がインストールされており、

(イ-4’)USBメモリはUSBインターフェイスなどからなるUSBメモリの制御装置を介してコンピュータに接続され、ハードディスクはハードディスクドライバなどからなるハードディスクの制御装置を介してコンピュータに接続され、

(イ-5’)前記コンピュータは、
アプリケーション「超字幕」の「超字幕スタートパネル オバマ演説」画面において「スタート」ボタンに対するクリック操作を受け付けると「超字幕再生」画面を表示し、「超字幕再生」画面の右側の縦方向に配列した各区画にて動画の各フレーズに対応する字幕を表示し、
字幕「who still wonder if ・ ・ ・ 建国者たちの夢が・・・」が表示された区画をポインターで選択する操作と、「リピート再生」ボタンをクリックする操作を受け付けると、画面左側の領域にて対応する動画の部分をその開始時間「00:00:34」から終了時間「00:00:42」までリピート再生することが可能であり、
アプリケーション「超字幕」の「超字幕スタートパネル オバマ演説」画面において「お気に入り字幕」ボタンに対するクリック操作を受け付けると「超字幕 お気に入り字幕・単語帳」画面を表示し、「超字幕 お気に入り字幕・単語帳」画面のリストにて各フレーズの番号と、英語字幕、日本語字幕などを関連付けて表示し、
フレーズ番号「N0.3」の列をポインターで選択する操作と、画面左下の再生画面の「再生」ボタンをクリックする操作を受け付けるとフレーズ番号「No.3」に対応する動画の部分をその開始時間「00:00:28」から終了時間「00:00:34」まで再生することが可能であり、
前記USBメモリには、「Movie」フォルダが存在し、「Movie」フォルダには再生すべき動画ファイル「C_ OBAMA_SPEECH_PRO.wmv」が格納され、
前記ハードディスクには、「超字幕/オバマ演説(USB版)」のインストールによって生成される、アプリケーション「超字幕/オバマ演説(USB版)」用の「timeline.ukd」、「PresetWord.ukd」、「Japanese.ukd」などの「.ukd」拡張子が付いたプログラムファイルが格納された「オバマ演説」フォルダが存在し、
「オバマ演説」フォルダには、content idが内部に記載された「contents.xml」ファイルが格納され、

(イ-6’)前記USBメモリには、前記ハードディスクの「contents.xml」ファイルに記載されたcontent id「C68E0F0C-5907-44FD-B394-51CD4E121B75」と同一の番号を有する「Installer.ini」ファイルが存在し、
「contents.xml」ファイルに記載されたcontent id「C68E0F0C-5907-44FD-B394-51CD4E121B75」および「Installer.ini」ファイルのcontentsIDが同一の番号である場合は、普通に動作し、
「contents.xml」ファイルのcontent idを書き換えた場合、「オバマ演説」を選択して「超字幕スタートパネル」画面を起動しようとすると「データの読み込み」ができなくなり、
「installer.ini」ファイルのcontentsIDを書き換えた場合、「データの読み込み」はできるが、「スタート」ボタンをクリックして動画を再生しようとすると「ムービーファイルがインストール」されていないと判断され、
「installer.ini」ファイルの「MoviePath」のファイル名を「FutureCar.wmv」に書き換えて、該「MoviePath」先に、「FutureCar.wmv」を格納すると、該「FutureCar.wmv」が再生されるが、字幕表示とその時間範囲(「00:00:34→00:00:42」)は、変更されず、
動画「C_OBAMA_SPEECH_PR0.wmv」の時間「00:00:34→00:00:42」の部分が記録された前記USBメモリの部分は、前記USBにおいて動画「C_OBAMA_SPEECH_PRO.wmv」が記録された部分の一部であり、

(イ-7’)前記コンピュータは、
アプリケーション「超字幕」の「超字幕スタートパネル オバマ演説」画面において「スタート」ボタンに対するクリック操作を受け付けると「超字幕再生」画面を表示し、字幕「who still wonder if ・ ・ ・ 建国者たちの夢が・・・」が表示された区画をポインターで選択する操作と、「リピート再生ボタン」をクリックする操作を受け付けると、画面左側の領域にて対応する動画の部分をその開始時間「00:00:34」から終了時間「00:00:42」までリピート再生することが可能であり、
字幕「who still wonder if ・ ・ ・ 建国者たちの夢が・・・」は、ディスプレイ装置へ出力可能であり、
動画の時間「00:00:34→00:00:42」の部分は、ディスプレイ装置とスピーカーヘ再生出力可能であり、
アプリケーション「超字幕」の「超字幕スタートパネル オバマ演説」画面において「お気に入り字幕」ボタンに対するクリック操作を受け付けると「超字幕 お気に入り字幕・単語帳」画面を表示し、フレーズ番号「No.3」の列をポインターで選択する操作と、画面左下の再生画面の「再生」ボタンをクリックする操作を受け付けるとフレーズ番号「No.3」に対応する動画の部分をその開始時間「00:00:28」から終了時間「00:00:34」まで再生することが可能であり、
フレーズ番号「No.3」の列の英語字幕「who still doubt that ・ ・ ・アメリカでは・・・」などは、ディスプレイ装置へ出力可能であり、
動画の時間「00:00:28→00:00:34」の部分は、ディスプレイ装置とスピーカーヘ再生出力可能であり、
前記USBメモリには、「Movie」フォルダが存在し、「Movie」フォルダには再生すべき動画ファイル「C_OBAMA_SPEECH_PR0.wmv」が格納され、
前記ハードディスクには、「超字幕/オバマ演説(USB版)」のインストールによって生成される、アプリケーション「超字幕/オバマ演説(USB版)」用の「timeline.ukd」、「PresetWord.ukd」、「Japanese.ukd」などの「.ukd」拡張子が付いたプログラムファイルが格納された「オバマ演説」フォルダが存在する、
ことを特徴とするパーソナルコンピュータ。

第4 本件特許発明およびイ号物件についての当事者の主張

1 請求人の主張

(1)本件特許発明の構成(特-5)について

ア 解釈による一致

(ア)「フレームカード」について
「timeline.ukd」は、開始位置及び終了位置の情報を格納している可能性が高く、開始時間及び終了時間の情報のデータソースと推定され、
「PresetWord.ukd」や「Japanese.ukd」は、そのファイル名から字幕の情報を格納している可能性が高く、字幕の情報のデータソースと推定され、
字幕の情報と開始時間及び終了時間の位置情報が紐付けられて存在していることは明らか。
「フレームカード」相当するものは、字幕の情報のデータソースと、その情報に紐付けられる開始時間及び終了時間の情報のデータソースである。

(イ)「制御情報」について
「制御情報」のデータソースに相当するのは、「contents.xml」である。

(ウ)「制御ファイル」について
「制御ファイル」に相当するものは『「オバマ演説」フォルダ』である。

イ 均等の主張

『「オバマ演説」フォルダ』が「制御ファイル」に該当しないという立場をとったとしても、
本件特許発明の特徴は、記録媒体(b)が、記録媒体(a)の特定部分に対応する句(p1)の開始位置及び終了位置の位置情報と句(p1)に関連付ける情報(P)とを有するフレームカードと、制御情報とを保持していることによるものであり、
その差異は均等の範囲に含まれる。

(2)本件特許発明の構成(特-6)について

「同一番号を有するひとつの制御系」に相当するものは、番号「C68E0F0C-5907-44FD-B397-51CD4E121B75」が記載された「contents.xml」及び「installer.ini」ファイルによって番号「C68E0F0C-5907-44FD-B397-51CD4E121B75」が関連付けられた動画「C_OBAMA_SPEECH_PRO.wmv」を要素とするシステムである。

(3)本件特許発明の構成(特-7)について

対応する動画の部分をその開始時間「00:00:34」から終了時間「00:00:42」までリピート再生する際に、開始時間「00:00:34」と終了時間「00:00:42」に関する情報を用いていることは明らかである。

2 被請求人の主張

(1)本件特許発明の構成(特-5)について

構成(特-5)の構成要件の一である「フレームカード」という語は、ソフトウェア技術分野においても、一般的に用いられる語ではなく、その意味がわからない。
「フレームカード」が、「記録媒体(a)の前記特定部分に対応する句(p1)の開始位置及び終了位置の位置情報と句(p1)に関連づける情報(P)とを有する」ことはわかるが、「フレームカード」自体がどのようなものであり、何を指し示すのかは不明である。
よって、「フレームカード」は不明りょうな記載であり、本件特許発明の構成(特-5)を満足するか否か判断することができない。

(2)本件特許発明の構成(特-6)について

ア 不明りょうな構成

構成(特-6)の記載はそれ自体極めて不明りょうであり、出願時の技術水準を考慮してもその意味が理解できない。


イ 番号「C68E0F0C-5907-44FD-B397-51CD4E121B75」

「動画『C_OBAMA_SPEECH_PRO.wmv』の時間『00:00:34→00:00:42』の部分が記録された前記USBメモリの部分」は、番号「C68E0F0C-5907-44FD-B397-51CD4E121B75」を有していない。
番号「C68E0F0C-5907-44FD-B397-51CD4E121B75」は、ハードディスク内の「contents.xml」と動画「C_OBAMA_SPEECH_PRO.wmv」を関連付ける上でなんらの役割をもたず、無関係である。
ハードディスク内の「contents.xml」と動画「C_OBAMA_SPEECH_PRO.wmv」を関連付ける物は、ハードディスク内の「installer.ini」に記載された動画パスである。

(3)本件特許発明として特定される事項について

本件特許発明は、引用文献1に記載された発明より当業者が容易に想到し得たものであるから無効であり、本件特許発明として特定される事項は字義通りのものとして解するべきであり、その拡大解釈はわずかも許されない。

第5 対比および判断

1 本件特許発明の構成(特-1)について

イ号の構成(イ-1’)における「USBメモリ」および『動画「オバマ演説」の(例えば)00:00:34→00:00:42」の部分が記録されたUSBメモリの部分』は、それぞれ「記録媒体(a)」および「特定部分」といえ、
イ号の構成(イ-1’)は、該「部分」を「開始位置と終了位置とによって」「再生可能」か否かを規定しないが、
イ号の構成(イ-5’)によれば、「字幕「who still wonder if ・ ・ ・ 建国者たちの夢が・・・」が表示された区画をポインターで選択する操作と、「リピート再生」ボタンをクリックする操作を受け付けると、画面左側の領域にて対応する動画の部分をその開始時間「00:00:34」から終了時間「00:00:42」までリピート再生することが可能」であり、
該「対応する動画の部分」は、『動画「オバマ演説」の(例えば)00:00:34→00:00:42」の部分が記録されたUSBメモリの部分』のことであり、
該「リピート再生」するためには、開始位置と終了位置の情報が必要であることは明らかであるから、
イ号物件における「USBメモリ」は、
『開始時間「00:00:34」』に対応する開始位置と『終了時間「00:00:42」』に対応する終了位置とによって、『対応する動画の部分をその開始時間「00:00:34」から終了時間「00:00:42」までリピート再生することが可能』であるから、
該「USBメモリ」は、本件特許発明の構成(特-1)が規定する「開始位置と終了位置とによって特定部分を再生可能な記録媒体(a)」を充足する。
また、該「USBメモリ」(記録媒体(a))を「再生可能なパーソナルコンピュータ」は、本件特許発明の構成(特-1)が規定する「再生するための記録媒体再生装置」を充足する。
よって、イ号物件は、本件特許発明の構成(特-1)を充足する。

2 本件特許発明の構成(特-2)について

イ号の構成(イ-2’)における、「ディスプレイ装置」、「キーボード・マウス」、「ハードディスクドライバなどからなるハードディスクの制御装置、USBインターフェイスなどからなるUSBメモリの制御装置」、「ハードディスクを格納した装置」および「スピーカー」は、それぞれ、本件特許発明の構成(特-2)における「表示装置」、「入力装置」、「記録媒体制御装置」、「記憶装置」および「音響装置」といえる。
そして、イ号の構成(イ-2’)における、上記「ディスプレイ装置」、「キーボード・マウス」、「ハードディスクドライバなどからなるハードディスクの制御装置、USBインターフェイスなどからなるUSBメモリの制御装置」、「ハードディスクを格納した装置」および「スピーカ」は、
「これらの装置からなるシステムの制御、処理を行うコンピュータ」にそれぞれ接続されていることは明らかであるから、
イ号物件は、本件特許発明の構成(特-2)を充足する。

3 本件特許発明の構成(特-3)について

イ号の構成(イ-3)における、『アプリケーションソフト「超字幕/オバマ演説(USB版)」と「WindowsMediaPlayer11」』は、「再生出力機能を有するアプリケーションソフト」といえるから、
イ号の構成(イ-3)は、本件特許発明の構成(特-3)を充足する。

4 本件特許発明の構成(特-4)について

イ号の構成(イー4’)における「USBメモリ」および「ハードディスク」はそれぞれ、「記録媒体(a)」および「記録媒体(b)」といえる。
また、イ号の構成(イ-4’)における「USBインターフェイスなどからなるUSBメモリの制御装置」および「ハードディスクドライバなどからなるハードディスクの制御装置」は、「記録媒体制御装置」といえるから、
イ号の構成(イ-4’)における「USBメモリはUSBインターフェイスなどからなるUSBメモリの制御装置を介してコンピュータに接続され、ハードディスクはハードディスクドライバなどからなるハードディスクの制御装置を介してコンピュータに接続され、」は、
「記録媒体(a)及び記録媒体(b)は、記録媒体制御装置を介してコンピュータに接続され、」といえ、
イ号の構成(イ-4’)は、本件特許発明の構成(特-4)を充足する。

5 本件特許発明の構成(特-5)について

(1)「フレームカード」の明確性

構成(特-5)について、被請求人は「フレームカード」が不明りょうであると主張する(第4 2(1))ので以下に「フレームカード」について検討する。

被請求人は、「フレームカード」という語については、ソフトウェア技術分野においても、一般的に用いられる語ではないと主張しており、確かに、「フレームカード」という語から直ちにはその意義を理解できないが、
「フレーム」に関する「カード」であることは理解できる。
そして、本件特許発明において「フレームカード」は、「記録媒体(a)の前記特定部分に対応する句(p1)の開始位置及び終了位置の位置情報と句(p1)に関連づける情報(P)とを有する」と規定していることから、
「フレーム」は、「特定部分」というひとつの枠組みに関するものであることから与えられた語に過ぎないと認められ、
「カード」という語も、ソフトウェア技術分野において、情報単位を扱う際に広く用いられる語でありそのように解釈することを妨げる理由も認められない。
すなわち、本件特許発明における「フレームカード」は、
「特定部分」というひとつの枠組みに関する情報単位として、
「記録媒体(a)の前記特定部分に対応する句(p1)の開始位置及び終了位置の位置情報と句(p1)に関連づける情報(P)とを有する」ものであると理解される。

このことは、本件特許明細書の記載及び図面から解釈される「フレームカード」とも符合する。
すなわち、
「制御ファイルa1はひとつのデータベースであり、ヘッダー部と本体部に分かれ、ヘッダー部にはタイトル、識別番号、画像や文字や音声の出力制御情報、仮想トラック情報などの総体的情報が記録され、本体部には開始位置、終了位置などの再生制御情報、関連画像や文字や音声の出力制御情報、ディクテーション情報など各句固有情報を持つフレームカードp2がリスト状に記録される。」(段落【0012】)、
「制御ファイルa1の情報を利用するときには、目的に応じて本体部のリストの中からフレームカードp2を選択収集し、」(段落【0013】)、
「つぎに、プレーボタン23をクリックすると再生フレームリストのフレームカードp2(図7)にしたがって記録媒体aが再生されるとともに、再生がすすむにつれ、再生個所を示すマーク33が再生位置と同調して右へ移動する。再生が終了したとき、オートポーズボタン34が有効であれば再生は一時停止状態になり、利用者からの次の指示を待ち、オートポーズボタン34が無効であれば、再生フレームリストの次のフレームカードp2の再生に進む。」(段落【0019】、【図7】)、
「シャッフルボタン24を有効にしてからプレーボタン23をクリックすると再生フレームリストにおけるフレームカードの通し番号41の順番が、シャッフルしたあとのフレームカードの通し番号51として図5に示すようにランダムな順列に変更され、再生順が無作為になる。」(段落【0020】)、
「フレームカードp2の時間情報は、タイミング編集ボックス(図9)で、範囲取り込み操作ボタン91を有効にした状態で、目的の個所が再生されている間コントロールボタンを押す(以下範囲取り込み操作という)ことによって、そのタイミングから、開始位置と終了位置の設定窓92における開始位置と終了位置を取得して記録し、関連情報は、メモ編集ボックス(図10)で記録する。これらのフレームカードp2は、範囲取り込み操作を繰り返すことによって、プレーヤーMintのなかにフレームカードリスト111として蓄積されるので、それにタイトル、識別番号115、画像や文字や音声の出力制御情報113、仮想ディスク情報(仮想トラックリスト)114などのヘッダー部112を添付し、制御ファイルa1として記録媒体bに保存する。」(段落【0023】、【図11】)
等の記載から解釈される「フレームカード」とも符合するものである。

この点、被請求人は、本件特許発明の明細書から「フレームカード」が「記録媒体(a)の前記特定部分に対応する句(p1)の開始位置及び終了位置の位置情報と句(p1)に関連づける情報(P)とを有する」ことはわかるが、「フレームカード」自体がどのようなものであり、何を指し示すのかは不明であるとも主張する。
しかしながら、上述のように「記録媒体(a)の前記特定部分に対応する句(p1)の開始位置及び終了位置の位置情報と句(p1)に関連づける情報(P)とを有するフレームカード」を理解することができ、
また、「フレームカード」が情報として何を有するかは段落【0012】に記載されているし、具体的構成も【図7】および【図11】に具体的に示されており、さらに、関連情報の種類と実施形態についても段落【0015】に記載されていることからも、「フレームカード」自体がどのようなものであり、何を指し示すのかは不明であるとはいえず、
本件特許発明における「フレームカード」は、「記録媒体(a)の前記特定部分に対応する句(p1)の開始位置及び終了位置の位置情報と句(p1)に関連づける情報(P)とを有する」と規定していることから、発明の詳細な説明の段落【0012】に「開始位置、終了位置などの再生制御情報、関連画像や文字や音声の出力制御情報、ディクテーション情報など各句固有情報を持つ」とされる様々な「各句固有情報」の内の2つ、すなわち、
「開始位置、終了位置」および
「関連画像や文字や音声の出力制御情報」
のみを規定していることは普通に理解され、上記2つのみを規定すれば、本件特許発明の効果が達成されることも当業者であれば普通に理解されることであり、それ以上に限定して解釈する必要性も認められない。
よって、「フレームカード」自体がどのようなものであり、何を指し示すのかは上述のとおり理解されるから、本件特許発明における「フレームカード」が、不明りょうであるとはいえない。

(2)本件特許発明の構成(特-5)の充足性

イ号物件は、本件特許発明の構成(特-5)が規定する「フレームカード」を有さない。すなわち、上述(1)のとおり、本件特許発明における「フレームカード」は、(記録媒体(a)の前記特定部分に対応する)「句(p1)」について、「記録媒体(a)の前記特定部分に対応する句(p1)の開始位置及び終了位置の位置情報」と「句(p1)に関連づける情報(P)」を「フレームカード」という情報単位として扱うことにより関連づけるものであり、「制御ファイル」が保持するものであるのに対し、
請求人が「制御ファイル」に相当すると主張する『「オバマ演説」フォルダ』(第4 1(1)ア(ウ))には、該「フレームカード」と認められる情報は存在しない。
請求人は「Presetword.udk」および「Japanese.ukd」というファイルを字幕の情報のデータソース、「timeline.ukd」というファイルをその情報に紐付けられる開始時間及び終了時間の情報のデータソースとして、それぞれ対応付け、字幕の情報と開始時間及び終了時間の位置情報が紐付けられて存在していることは明らかであり、その両データソースが「フレームカード」に相当すると主張する(第4 1(1)ア(ア))が、字幕の情報のデータソースである「Presetword.ukd」というファイル、「Japanese.ukd」というファイル、開始時間及び終了時間のデータソースである「Timeline.ukd」というファイルは、それぞれ別々のファイルであり、これらファイルの情報が紐付けられて存在しているとしても、「制御ファイル」が保持する「句(p1)」(イ号物件における「各フレーズ」)の「フレームカード」として対応付けられないことは明らかである。
すなわち、請求人が主張する(第4 1(1)ア(ア))ように、紐付けが存在するのであれば、イ号物件における「timeline.ukd」は、「記録媒体(a)の前記特定部分に対応する句(p1)の開始位置及び終了位置の位置情報」に対応する情報および「紐付け」のための情報が情報単位として存在し、「句(p1)に関連づける情報(P)」に対応付けて請求人が主張する「Presetword.udk」および「Japanese.ukd」も同様に「句(p1)に関連付ける情報(P)」に対応する情報および「紐付け」のための情報が情報単位として存在する、あるいは、それぞれのファイルの情報を紐付けるための仕組みが存在すると解するのが自然であり、そのように別々のファイルに存在する情報に対し、紐付けの情報あるいは紐付けのための仕組みを必要とする構成が本件特許発明の構成(特-5)に規定された「制御ファイル」が保持する「フレームカード」とはいえない。

また、上述の『「オバマ演説」フォルダ』が「制御ファイル」に相当する(第4 1(1)ア(ウ))との請求人の主張についても、本件特許明細書段落【0012】の「制御ファイルa1はひとつのデータベースであり、ヘッダー部と本体部に分かれ、ヘッダー部にはタイトル、識別番号、画像や文字や音声の出力制御情報、仮想トラック情報などの総体的情報が記録され、本体部には開始位置、終了位置などの再生制御情報、関連画像や文字や音声の出力制御情報、ディクテーション情報など各句固有情報を持つフレームカードp2がリスト状に記録される。」との記載から見て、本件特許発明でいう「制御ファイル」が、「ヘッダ部と本体部」といった構成を想定しない一般的な複数ファイルの保管場所としての「フォルダ」という概念のものを含むとは認められないから、該一般的な複数ファイルの保管場所としての「フォルダ」が想定されるイ号物件における『「オバマ演説」フォルダ』が「制御ファイル」であるとはいえない。

さらに、請求人が「制御情報」のデータソースに相当すると主張する「contents.xml」(第4 1(1)ア(イ))はファイルであるから、該「contents.xml」を、本件特許発明における「制御ファイル」と対応付けて検討しても、
「制御ファイル」が保持してなるとされる「制御情報」を、イ号物件の構成(イ-5’)における「content id」と対応付けることはできるが、
該「contents.xml」は、本件特許発明において「制御ファイル」が保持してなるとしている「記録媒体(a)の前記特定部分に対応する句(p1)の開始位置及び終了位置の位置情報と句(p1)に関連づける情報(P)とを有するフレームカード」に対応づけられる情報を保持していないし、
請求人の主張のように「字幕の情報と開始時間及び終了時間の位置情報が紐付けられて存在していることは明らか。」(第4 1(1)ア(ア))であるとしても、該「contents.xml」に「字幕の情報と開始時間及び終了時間の位置情報」を紐付けるための情報の存在は認められない。

よって、イ号物件は本件特許発明の構成(特-5)を充足しない。

6 本件特許発明の構成(特-6)について

(1)明確性

被請求人は、構成(特-6)は不明りょうであると主張する(第4 2(2)ア)ので以下に検討する。

構成(特-6)は、「前記記録媒体(b)内の制御情報と、記録媒体(a)の特定部分が同一番号を有するひとつの制御系となる構成」と規定するものであり、
「ひとつの制御系となる構成」であること、および、
その「ひとつの制御系」は、「前記記録媒体(b)内の制御情報と、記録媒体(a)の特定部分が同一番号を有する」ことを要件としており、
構成(特-6)は、「前記記録媒体(b)内の制御情報と、記録媒体(a)の特定部分が同一番号を有するひとつの制御系となる構成」は、
上記理解による「前記記録媒体(b)内の制御情報と、記録媒体(a)の特定部分が同一番号を有する」ということを要件として「ひとつの制御系」が構成されることを規定するものであり、不明りょうであるとはいえない。

(2)本件特許発明の構成(特-6)の充足性

請求人は上述第4 1(2)のように主張し、被請求人は、上述第4 2(2)イのように主張するが、
本件特許発明の構成(特-6)における「制御情報」は、上述5(2)のとおり本件特許発明の構成(特-5)において「制御ファイル」が保持してなるものであることが規定されているところ、イ号物件が、該「制御ファイル」の構成を充足しないことは、上述5(2)のとおりであるから、
該「制御ファイル」が保持してなる「制御情報」を有さないイ号物件は、構成(特-6)を充足しない。

7 本件特許発明の構成(特-7)について

上述5(2)のとおり、イ号物件の『「オバマ演説」フォルダ』には、本件特許発明における「フレームカード」が存在しないから、「フレームカード内の前記位置情報」を用いるイ号物件の構成(イ-7’)は、構成(特-7)を充足しない。

この点、請求人は上述第4 1(3)のように主張するが、開始時間および終了時間に関する情報を用いていることが明らかであっても、該情報が「フレームカード内の前記位置情報」であることにはならないから、該主張は採用できない。

8 まとめ
よって、イ号物件は、本件特許発明の技術範囲に属しない。

9 均等の主張について

請求人は、『「オバマ演説」フォルダ』と「制御ファイル」の相違が、単に「フォルダとファイル」の相違であるとして均等の範囲にあることを主張する(第4 1(1)イ)が、
本件特許発明における「制御ファイル」は、「フレームカード」を保持するものであり、上述5(2)のとおり、イ号物件は、本件特許発明の(特-5)が規定する該「フレームカード」を充足しないから、単に「ファイル」を「フォルダ」に置換可能であるとしても、均等の範囲にあるとはいえない。
よって、請求人が主張する点について、均等論の要件を検討するまでもなく、「フレームカード」の構成を有さないイ号物件の『「オバマ演説」フォルダ』を構成とする構成(イ-5’)は、本件特許発明の構成(特-5)を充足しない。

なお、「フレームカード」に関して上述のようにイ号物件が充足しないことを無視したとしても、均等の範囲にあるための要件のひとつとして、本件特許発明の構成中のイ号物件と異なる部分が発明の本質的な部分ではないことを要するところ、以下のとおり、該「制御ファイル」が、発明の本質的な部分ではないとはいえないから、均等の範囲にあるための要件を満たさない。
すなわち、本件特許発明の目的および効果は、上述「第2 2 本件特許発明の目的および効果」のとおりであることから、
本件特許発明は、「従来のマルチメディア媒体」すなわち「記録媒体a」は従来のまま、構成(特-5)に規定するように「記録媒体b」に「制御ファイル」を備え、該「制御ファイル」が保持する「制御情報」を用いて構成(特-6)のような「制御系」を構成しつつ、該「制御ファイル」が同様に保持する「フレームカード」により、構成(特-7)のように制御することにより、「従来、再生個所や再生順、再生方法についての自由度がきわめて低い記録媒体aの内容を、句の開始位置からの特定部分の再生を行なうことができることとなり、利用目的に添ってソフト的に自在に再生でき、コンピュータが、句p1に対応する特定部分の開始位置からの音声装置若しくは表示装置に再生出力を行なうことが可能となるとともに、記録媒体aの再生時に、再生個所に関連した画像や文字などの情報を提供することによって、新しい表現空間を提供することができる」ようにするものである。
そうしてみると、本件特許発明は、構成(特-5)が規定する「制御ファイル」を備えることにより、上記のように制御系を構成しつつ、フレームカードを用いた制御が可能となるものであり、該「制御ファイル」が本件特許発明の本質的な部分ではないとはいえないことは明らかであり、均等論の他の要件について検討するまでもなく、イ号物件が本件特許発明と均等なものとはいえない。

また、被請求人は、上述第4 2(3)において、拡大解釈が許されない旨を主張するが、上述のとおり、請求人の均等の主張は採用されないものであり、被請求人の「当業者が容易に想到し得たものであるから無効であり」、「その拡大解釈はわずかも許されない」という主張を検討するまでもなく、構成(特-5)について、均等の主張による拡大解釈はできないものである。なお、被請求人も答弁書において認めているように、公知技術からの容易性の主張は、別途無効審判を請求しその中で主張すべき事項であり、被請求人の上記主張は採用できない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。


 
判定日 2012-02-09 
出願番号 特願2001-55901(P2001-55901)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 明  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 梅本 達雄
小池 正彦
登録日 2004-04-30 
登録番号 特許第3549195号(P3549195)
発明の名称 記録媒体再生装置、記録媒体再生方法、及び記録媒体  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  
代理人 工藤 一郎  

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