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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10K
管理番号 1253995
審判番号 不服2010-21638  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-27 
確定日 2012-03-14 
事件の表示 特願2008-255323「再生装置及び受信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月 5日出願公開、特開2009-258607〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成20年9月30日(国内優先権主張 平成20年3月28日)の出願であって、平成22年4月8日付けの拒絶理由通知に対し、平成22年6月4日付けで手続補正がなされたが、平成22年7月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年9月27日に審判請求がなされたものである。

第2.本願発明について
1.本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成22年6月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「再生指示された第1の放送チャンネルのアドレス情報及び前記第1の放送チャンネルの周辺の放送チャンネルである複数の第2の放送チャンネルのアドレス情報を登録するための受信チャンネルリストと、
複数の前記放送チャンネルのデータを受信する受信部と、
複数のバッファ手段と、
前記受信部が受信した放送チャンネルのデータを前記バッファ手段へ格納する受信制御手段と、
前記第1の放送チャンネルが変更された場合に、前記第1の放送チャンネルの変更内容を判断する判断手段と、
前記受信チャンネルリストを更新する更新手段とを備え、
前記更新手段が、前記変更内容に応じて前記第2の放送チャンネルを決定し、決定した前記第2の放送チャンネルのアドレス情報を前記受信チャンネルリストに登録し、
前記受信制御手段が、前記受信部で受信する複数の放送チャンネルのデータのうち、前記受信チャンネルリストにアドレス情報が登録されている放送チャンネルのデータを、放送チャンネル毎に異なるバッファへ格納し、
前記受信チャンネルリストが、前記第1の放送チャンネルのアドレス情報が登録される第1の領域と、前記第2の放送チャンネルのアドレス情報が登録される複数の第2の領域とを有し、
前記更新手段が、前記変更内容が第1の方向へ向かうチャンネル変更である場合、変更後の前記第1の放送チャンネルよりも第1の方向側の放送チャンネルのアドレス情報を登録する前記第2の領域を増やし、前記変更内容が第1の方向と逆の第2の方向へ向かうチャンネル変更である場合、変更後の前記第1の放送チャンネルよりも第2の方向側の放送チャンネルのアドレス情報を登録する前記第2の領域を増やし、
前記変更内容が、所定の放送チャンネル数以上のチャンネル変更である場合(もしくは、異なるカテゴリへのチャンネル変更である場合)、前記更新手段が、前記受信チャンネルリストにおける中心の領域を前記第1の領域として設定する、再生装置。」

2.刊行物の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2006-345169号公報(以下、「刊行物1」という)には、次の(1)ないし(5)の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、デジタルテレビ信号を受信するテレビ受信端末装置における選局手法に関する。」

(2)「【0026】
また、第4の局面は、デジタルテレビ放送信号を受信するデジタルテレビ受信端末装置であって、少なくともデジタルテレビ放送信号を受信し、特定チャンネルの放送ストリームを取得するN(N≧2)個の受信手段と、N個の受信手段により受信されたN個の放送ストリームから、出力すべきチャンネルのものを選択するチャンネル選択手段と、受信可能なチャンネルと、各チャンネル間の隣接関係とを示すチャンネルリストを管理するチャンネルリスト管理手段とを備える。N個の受信手段は、チャンネルリスト管理手段により管理されるチャンネルリストに基づいて、チャンネル選択手段により選択されたチャンネルと、選択されたチャンネルと隣接関係にあるチャンネルのN個の放送ストリームを取得し、出力すべきチャンネルをチャンネル選択手段が変更したとき、今回選択されたチャンネルと、今回選択されたチャンネルと隣接関係にあるチャンネルのN個の放送ストリームを取得する。」

(3)「【0029】
また、第4の局面によれば、今回選択されたチャンネル(視聴対象チャンネル)および隣接チャネルの放送ストリームが受信されるので、チャンネル切換後ビデオ表示を開始するまでの時間を短縮することができる。」

(4)「【0111】
(第7の実施形態)
図12は、本発明の第7の実施形態に係るデジタルテレビ受信端末装置の機能的なブロック図である。図12において、デジタルテレビ受信端末装置は、第1の実施形態のそれと比較すると、チャンネルリストを管理するチャンネルリスト管理部1001をさらに備える点で相違する。それ以外に、両デジタルテレビ受信端末装置の間に相違点は無い。それ故、図12において、図1の構成に相当するものには同一の参照符号を付け、それぞれの説明を省略する。
【0112】
チャンネルリストとは、図13に示すように、受信可能なチャンネル番号(特定の周波数に対応)とチャンネル名(局名)とを対応させた表である。据え置き型の受信端末装置では、デジタル放送の受信エリアに対応したチャンネルリストがあらかじめ端末に保持されていて、受信エリアを指定することでチャンネルリストを特定することが一般的である。一方、携帯型の受信端末装置の場合は、電源起動時などにいずれか1つの受信部を用いて受信可能なチャンネルをスキャンし、その結果から都度チャンネルリストを生成する方法がある。
【0113】
以下、上記構成のデジタルテレビ受信端末装置の動作について、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0114】
図12において、チャンネルリスト管理部1001には、図13のようなチャンネルリストが生成済みであるとする。受信制御部103は、視聴対象のチャンネル、およびその隣接チャンネルを各受信部で受信するように制御する。その後、選局要求により視聴対象チャンネルが隣接チャンネルに移行したとき、受信制御部103はチャンネルリスト管理部1001を参照して常にチャンネル切換後の視聴対象チャンネルとその隣接チャンネルを受信するように制御する。」

(5)「【0120】
通常、据え置き型の受信端末装置においては、図15Aに示すリモコンボタンにより、
任意の受信可能なチャンネルへの選局が可能である。一方、携帯型の受信端末装置では、
機器サイズの制約から図15Aのようなリモコンボタンを実装することは困難であるため、図15Bに示すように、例えば上下方向のような2方向の矢印キーを用いて、チャンネル番号に従って逐次的に選局する方法が考えられる。
【0121】
携帯型の受信端末装置のように2方向矢印キーを用いて選局を行う場合、3個の受信部を用いれば、常に本実施形態による効果を得ることができる。」

以上の記載から、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されている。

「チャンネルリスト管理部を参照して、選局要求により選局された視聴対象チャンネルとその隣接チャンネルを受信するよう複数の受信部を制御する受信制御部と、
前記複数の受信部で受信したビデオストリームをそれぞれ保持する複数のビデオバッファと、を備え、
前記複数の受信部は、チャンネルリスト管理手段により管理されるチャンネルリストに基づいて、チャンネル選択手段により選択されたチャンネルと、選択されたチャンネルと隣接関係にあるチャンネルの複数の放送ストリームを取得し、出力すべきチャンネルをチャンネル選択手段が変更したとき、今回選択されたチャンネルと隣接関係にあるチャンネルの複数の放送ストリームを取得する、
デジタルテレビ受信端末装置。」

また、原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2000-101467号公報(以下、「刊行物2」という)には、次の(6)ないし(10)の事項が記載されている。

(6)「【発明の属する技術分野】本発明は、差分符号化方式によるディジタル放送を受信するディジタル放送受信端末装置に関する。」

(7)「【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明に係るディジタル放送受信端末装置は、以下のように構成される。
(1)差分符号化方式による複数のチャンネルのディジタル放送を選択的に受信するディジタル放送受信端末装置において、互いに独立して指定されるチャンネルのディジタル放送データを受信する複数のチューナと、予め設定された手順に従って自動的に次のチャンネル候補を決定し、前記複数のチューナのいずれかに表示チャンネルを指定し、他のチューナにそれぞれ次チャンネル候補を指定するチャンネル指定部と、このチャンネル指定部により指定された情報を保持するチャンネル状態保持手段と、前記複数のチューナにより受信された受信データからチャンネル指定部により指定されたチャンネルを表示し、次チャンネル候補の受信データを保持するチャンネル選択・番組情報保存部とこのチャンネル選択・番組情報保存部から出力されるデータを表示する表示部とを具備する。」

(8)「【0017】上記チャンネル指定部12は、リモコン(図示せず)等からのチャンネル番号入力あるいは次選局ボタン選択入力があると、チューナ状態DB15を参照して各チューナ111?113に次のチャンネル設定を行う。
【0018】上記構成において、以下に次チャンネルを特定するための本発明の手法について説明する。まず、図2を参照して、次選局ボタン選択時の次チャンネル候補決定方法について説明する。
【0019】リモコンで次選局ボタンが押された時は、表示すべきチャンネル番号は現在表示されているチャンネル番号から1増加した値とする。つまり、チャンネル番号3を表示中ならチャンネル番号4とする。次選局ボタン選択時の次チャンネル候補決定は、例えば以下のような処理で行われる。
【0020】チューナ状態DB15には、図2(a)に示すように、各チューナ毎に受信中の「チャンネル」、現在表示中かどうかを示す「表示中フラグ」(1で表示中)、前回チャンネル変更時に該当するチューナのチャンネルが変更されたかを示す「変更フラグ」(変更ならば1)が保存されている。図2(a)の場合、チューナ1、2、3は各々チャンネル12、18、11を受信中であり、チューナ3のチャンネル11が表示中であり、前回チャンネル変更時にはチューナ2のみ受信するチャンネルが変更されたことを示している。
【0021】ここで、次選局ボタンが選択されたとき、図2(b)に示すように、現在表示中のチャンネル11の次であるため、次チャンネルは12となる。次チャンネル候補としては、チューナ数が3つであるため、12を1つずつ増加させたチャンネル番号13、14の2つが得られる。その結果、チューナ状態DB15は図2(c)に示すように更新される。」

(9)「【0030】最後にチューナ状態が変更されたことを各チューナ111?113、及びチャンネル選択・番組情報保存部13に通知する(ステップS20)。続いて、前選局ボタン選択時の次チャンネル候補決定方法について説明する。
【0031】まず、前選局ボタンが押された時は、表示すべきチャンネル番号は現在表示されているチャンネル番号から1を減じた値とする。つまり、チャンネル番号3を表示中ならチャンネル番号2とする。
【0032】次選局ボタン選択時と同様に図2を例にして説明する。前選局ボタンが選局された時、現在表示中のチャンネル11の前チャンネルは10となる。次チャンネル候補としては、チューナ数が3つであるため、10を1づつ減少させたチャンネル番号9、8の2つが得られる。そこで、図3の処理手順において、X、Y、Zを設定するところを、X=X-1、Y=X-2、Z=X-3とすればよい。その他の処理は次選局ボタン選択時と同様である。」

(10)「【0044】次に、数字キーによるチャンネル選択における次チャンネル候補決定方法について説明する。数字キーによりチャンネル選択を行う場合には、数字キーで始まるチャンネル(の全て乃至始めの幾つか)を次チャンネル候補とすることができる。例えばユーザが「2」を押した場合、2、20、21…を候補とする。」

以上の記載から、刊行物2には次の発明(以下、「刊行物2発明」という)が記載されている。

「リモコンにより次選局ボタンが選択されたとき、表示すべきチャンネル番号を、現在表示されているチャンネル番号Xから1増加した値X+1とし、次チャンネル候補を、チューナ数が3つの場合、表示すべきチャンネル番号をさらに1つずつ増加させたチャンネル番号X+2、X+3とし、
リモコンにより前選局ボタンが選択されたとき、表示すべきチャンネル番号を、現在表示されているチャンネル番号Xから1減少した値X-1とし、次チャンネル候補を、チューナ数が3つの場合、表示すべきチャンネル番号をさらに1つずつ減少させたチャンネル番号X-2、X-3とし、
表示すべきチャンネルの受信データを表示し、次チャンネル候補の受信データを保持するディジタル放送受信端末装置。」

3.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

刊行物1発明において、受信制御部は、チャンネルリスト管理部を参照して、選局要求により選局された視聴対象チャンネルとその隣接チャンネルを受信するよう複数の受信部を制御するものであるから、選局された視聴対象チャンネル(本願発明の「再生指示された第1の放送チャンネル」に相当)及びその隣接チャンネル(本願発明の「前記第1の放送チャンネルの周辺の放送チャンネルである複数の第2の放送チャンネル」に相当)を特定するための情報(本願発明の「アドレス情報」に相当)が登録されているのは明らかである。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「再生指示された第1の放送チャンネルのアドレス情報及び前記第1の放送チャンネルの周辺の放送チャンネルである複数の第2の放送チャンネルのアドレス情報を登録するための受信チャンネルリスト」を備える点で一致する。

刊行物1発明の「(選局されたチャンネルを受信する)複数の受信部」、「複数のビデオバッファ」は、それぞれ、本願発明の「複数の前記放送チャンネルのデータを受信する受信部」、「複数のバッファ手段」に相当するものであり、刊行物1発明は、複数の受信部で受信したビデオストリームをそれぞれ複数のビデオバッファに保持するものであるから、本願発明の「前記受信部が受信した放送チャンネルのデータを前記バッファ手段へ格納する受信制御手段」に相当する構成を備えているといえる。

刊行物1発明は、「前記複数の受信部は、チャンネルリスト管理手段により管理されるチャンネルリストに基づいて、チャンネル選択手段により選択されたチャンネル(本願発明の「第1の放送チャンネル」に相当)と、選択されたチャンネルと隣接関係にあるチャンネル(本願発明の「第2の放送チャンネル」に相当)の複数の放送ストリームを取得し、出力すべきチャンネルをチャンネル選択手段が変更したとき、今回選択されたチャンネルと隣接関係にあるチャンネルの複数の放送ストリームを取得する」ものであるから、本願発明と刊行物1発明とは、「前記第1の放送チャンネルが変更された場合に、前記第1の放送チャンネルの変更内容を判断する判断手段と、前記受信チャンネルリストを更新する更新手段とを備え、前記更新手段が、前記変更内容に応じて前記第2の放送チャンネルを決定し、決定した前記第2の放送チャンネルのアドレス情報を前記受信チャンネルリストに登録し、前記受信制御手段が、前記受信部で受信する複数の放送チャンネルのデータのうち、前記受信チャンネルリストにアドレス情報が登録されている放送チャンネルのデータを、放送チャンネル毎に異なるバッファへ格納し、前記受信チャンネルリストが、前記第1の放送チャンネルのアドレス情報が登録される第1の領域と、前記第2の放送チャンネルのアドレス情報が登録される複数の第2の領域とを有」する点で一致しているといえる。

刊行物1発明は、出力すべきチャンネルをチャンネル選択手段が変更したとき、今回選択されたチャンネルと隣接関係にあるチャンネルの複数の放送ストリームを取得するものである。ここで、今回選択されたチャンネルとその隣接関係にあるチャンネルとの複数の放送ストリームにおいて、今回選択されたチャンネル(本願発明の「第1の放送チャンネル」に相当)はその中心にあるといえることから、本願発明と刊行物1発明とは、「前記更新手段が、前記受信チャンネルリストにおける中心の領域を(第1の放送チャンネルのアドレス情報が登録される)前記第1の領域として設定する」点で一致する。

以上をまとめると、本願発明と刊行物1発明の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
再生指示された第1の放送チャンネルのアドレス情報及び前記第1の放送チャンネルの周辺の放送チャンネルである複数の第2の放送チャンネルのアドレス情報を登録するための受信チャンネルリストと、
複数の前記放送チャンネルのデータを受信する受信部と、
複数のバッファ手段と、
前記受信部が受信した放送チャンネルのデータを前記バッファ手段へ格納する受信制御手段と、
前記第1の放送チャンネルが変更された場合に、前記第1の放送チャンネルの変更内容を判断する判断手段と、
前記受信チャンネルリストを更新する更新手段とを備え、
前記更新手段が、前記変更内容に応じて前記第2の放送チャンネルを決定し、決定した前記第2の放送チャンネルのアドレス情報を前記受信チャンネルリストに登録し、
前記受信制御手段が、前記受信部で受信する複数の放送チャンネルのデータのうち、前記受信チャンネルリストにアドレス情報が登録されている放送チャンネルのデータを、放送チャンネル毎に異なるバッファへ格納し、
前記受信チャンネルリストが、前記第1の放送チャンネルのアドレス情報が登録される第1の領域と、前記第2の放送チャンネルのアドレス情報が登録される複数の第2の領域とを有し、
前記更新手段が、前記受信チャンネルリストにおける中心の領域を前記第1の領域として設定する、再生装置。

[相違点]
本願発明では、「前記更新手段が、前記変更内容が第1の方向へ向かうチャンネル変更である場合、変更後の前記第1の放送チャンネルよりも第1の方向側の放送チャンネルのアドレス情報を登録する前記第2の領域を増やし、前記変更内容が第1の方向と逆の第2の方向へ向かうチャンネル変更である場合、変更後の前記第1の放送チャンネルよりも第2の方向側の放送チャンネルのアドレス情報を登録する前記第2の領域を増やし、
前記変更内容が、所定の放送チャンネル数以上のチャンネル変更である場合(もしくは、異なるカテゴリへのチャンネル変更である場合)、前記更新手段が、前記受信チャンネルリストにおける中心の領域を前記第1の領域として設定する」のに対し、刊行物1発明では、出力すべきチャンネルをチャンネル選択手段が変更したとき、常に、今回選択されたチャンネルと隣接関係にあるチャンネルの複数の放送ストリームを取得する(本願発明の「前記受信チャンネルリストにおける中心の領域を前記第1の領域として設定する」ことに相当)点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。

公知の刊行物2には、上述のとおり、「リモコンにより次選局ボタンが選択されたとき、表示すべきチャンネル番号を、現在表示されているチャンネル番号Xから1増加した値X+1とし、次チャンネル候補を、チューナ数が3つの場合、表示すべきチャンネル番号をさらに1つずつ増加させたチャンネル番号X+2、X+3とし、
リモコンにより前選局ボタンが選択されたとき、表示すべきチャンネル番号を、現在表示されているチャンネル番号Xから1減少した値X-1とし、次チャンネル候補を、チューナ数が3つの場合、表示すべきチャンネル番号をさらに1つずつ減少させたチャンネル番号X-2、X-3とし、
表示すべきチャンネルの受信データを表示し、次チャンネル候補の受信データを保持するディジタル放送受信端末装置」の発明が記載されている。
刊行物2発明の「リモコンにより次選局ボタンが選択されたとき」、「リモコンにより前選局ボタンが選択されたとき」は、それぞれ、本願発明の「変更内容が第1の方向へ向かうチャンネル変更である場合」、「変更内容が第1の方向と逆の第2の方向へ向かうチャンネル変更である場合」に対応付けられる。

刊行物1発明と刊行物2発明とは、何れも、現在再生表示すべき受信チャンネル以外に次に再生表示すると予想される受信チャンネルのデータをも受信しておくことで、チャンネル切り換え時の表示時間を短縮するという共通の課題を持つものである。
また、刊行物1発明は、選局の方法として、リモコンボタンにより任意のチャンネルの選局を行う方法、あるいは、2方向の矢印キーにより逐次的に選局を行う方法が例示されている(上記2.(5))から、刊行物1発明において、2方向の矢印キーにより逐次的に選局を行う場合に、刊行物2発明を適用し、リモコンにより次選局ボタンが選択されたとき、表示すべきチャンネル番号を、現在表示されているチャンネル番号Xから1増加した値X+1とし、次チャンネル候補を、チューナ数が3つの場合、表示すべきチャンネル番号をさらに1つずつ増加させたチャンネル番号X+2、X+3とし、リモコンにより前選局ボタンが選択されたとき、表示すべきチャンネル番号を、現在表示されているチャンネル番号Xから1減少した値X-1とし、次チャンネル候補を、チューナ数が3つの場合、表示すべきチャンネル番号をさらに1つずつ減少させたチャンネル番号X-2、X-3とする制御を行うこと、すなわち、本願発明の文言を使用すれば、「前記更新手段が、前記変更内容が第1の方向へ向かうチャンネル変更である場合、変更後の前記第1の放送チャンネルよりも第1の方向側の放送チャンネルのアドレス情報を登録する前記第2の領域を増やし、前記変更内容が第1の方向と逆の第2の方向へ向かうチャンネル変更である場合、変更後の前記第1の放送チャンネルよりも第2の方向側の放送チャンネルのアドレス情報を登録する前記第2の領域を増や」す構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、チャンネルの変更の方法として、リモコンボタンによって任意のチャンネルの選択を行うことにより、所定の放送チャンネル数以上のチャンネル変更(もしくは、異なるカテゴリへのチャンネル変更)を行うことは、一般的によく行われているチャンネル変更方法であり、刊行物1発明において、このようなチャンネル変更を行った場合には、2方向の矢印キーでチャンネル変更を行った場合と異なり、次に増加方向のチャンネルが選択されるのか減少方向のチャンネルが選択されるのか予想がつかないものであるから、今回選択された放送チャンネルに対して一方向の放送チャンネルの複数の放送ストリームを取得する刊行物2発明の態様を採ることはできず、今回選択されたチャンネルと隣接関係にあるチャンネルの複数の放送ストリームを取得すること(本願発明の「前記更新手段が、前記受信チャンネルリストにおける中心の領域を前記第1の領域として設定する」ことに相当)に自ずとなるというべきである。なお、この点に関して、刊行物2には、「数字キーによりチャンネル選択を行う場合には、数字キーで始まるチャンネル(の全て乃至始めの幾つか)を次チャンネル候補とすることができる。例えばユーザが「2」を押した場合、2、20、21…を候補とする。」(上記2.(10))と、本願発明と異なる候補の設定の態様が記載されているが、この態様は、ユーザが2チャンネルを選択するのか「2」キーに続けて「0」キーや「1」キーを押すことにより20チャンネルや21チャンネルを選択するのかが直ちに判断できないことに対応したものであり、いったん、例えば、20チャンネルが選択されたときには、ユーザが次に増加方向のチャンネルを選択するのか減少方向のチャンネルを選択すのか予想がつかないものであることは上述したとおりである。ゆえに、この記載が、刊行物1発明に刊行物2発明を適用した際に、所定の放送チャンネル数以上のチャンネル変更である場合(もしくは、異なるカテゴリへのチャンネル変更である場合)、今回選択されたチャンネルと隣接関係にあるチャンネルの複数の放送ストリームを取得する態様とすることを妨げる理由とはならない。

よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明、及び、刊行物2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-01-12 
結審通知日 2012-01-16 
審決日 2012-01-30 
出願番号 特願2008-255323(P2008-255323)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G10K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨澤 直樹  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 千葉 輝久
溝本 安展
発明の名称 再生装置及び受信方法  

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