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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03F |
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管理番号 | 1254202 |
審判番号 | 不服2011-8607 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-04-22 |
確定日 | 2012-03-22 |
事件の表示 | 特願2010-152684「光硬化性着色組成物およびそれを用いて形成されるカラーフィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 2日出願公開、特開2010-271729〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は原出願 2005-86767号(原出願日 平成17年 3月24日)の分割出願であって、 平成22年 7月 5日に出願され、 同年11月10日付けで通知された拒絶理由に対して、 同年12月24日付けで手続補正書が提出されたが、 平成23年 1月17日付けで拒絶査定され、これに対して、 同年 4月22日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると共に、同日付けで手続補正書が提出された後、 同年 8月 8日付けで当審の審尋に対する回答書が提出され、 同年10月19日付けで当審による拒絶理由が通知され、 同年12月19日付けで手続補正書が提出されたものである。 第2.本願発明について 本願の請求項1に係る発明は、平成23年12月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認められる。 【請求項1】 エチレン性不飽和化合物、透明樹脂、赤色または緑色の有機顔料、および光重合開始を含有する光硬化性着色組成物において、前記光重合開始剤の含有量が光硬化性着色組物中の全固形物の重量を基準として18.0?30重量%であり、かつ赤色または緑色有機顔料の含有量が、光硬化性着色組成物中の全固形分の重量を基準として35?50重量%であって、光重合開始剤が、365nmにおける吸光度(1cm、0.001重量%アセトニトリル溶液)が0.01?0.15である光重合開始剤と2,4-ジエチルチオサントンまたは4,4’?ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンとを含有することを特徴とする光硬化性着色組成物。 第3.引用刊行物 本願の原出願日前に頒布され、当審の拒絶理由通知で引用した 引用刊行物1(特開2004-287230号公報、当審拒絶理由における引用刊行物1)、 引用刊行物2(特開平11-211911号公報、当審拒絶理由における引用刊行物3)、 には、それぞれ次の事項が記載されている。 各引用刊行物に対する下線は当審にて付与した。 1.引用刊行物1 【請求項4】固形分で、前記光重合開始剤(b)を5重量%以上含有する、請求項1乃至3いずれかに記載の着色パターン用硬化性樹脂組成物。 【0009】 アルカリ現像可能な光硬化性樹脂を用いて画素やブラックマトリックス等の着色層を形成する場合には、着色剤の配合割合を多くすることにより高い着色濃度が得られる。着色剤として顔料を用いる場合には、顔料分散剤の配合割合も多くなる。また、光硬化性樹脂は、光重合開始剤の配合割合を多くすると感度が上がり、少ない露光量で速やかに硬化できるようになる。しかしながら、着色剤、分散剤及び/又は光重合開始剤等の配合割合が高くなると、アルカリ可溶性バインダーの配合割合が少なくなるため、樹脂の硬化性、アルカリ現像性、現像後の形状等が悪くなる。 【0016】 本発明の硬化性樹脂組成物は、酸素クエンチャーである3級アミン構造を分子内に有する光重合開始剤(b)を多量に配合し、さらに着色剤及び分散剤を多量に配合しても、光硬化性化合物(c)を配合することによって架橋密度とアルカリ可溶性を高くできることから、硬化性とアルカリ現像性に優れ、露光時には感度が高く、現像時には現像速度が高い。また、着色濃度が高く、順テーパー形状で、精度が高い微細な着色パターンを形成することができ、露出部の残渣も少ない。 【0031】 着色剤は、充分な着色濃度を得るために、本発明の硬化性樹脂組成物中に固形分比で、通常20?80重量%、好ましくは25?60重量%の割合で配合する。本発明の硬化性樹脂組成物は、着色剤を多量に配合しても、後述する酸性多官能光硬化性化合物(c)を配合することにより架橋密度及びアルカリ可溶性を上げることができるので、優れた硬化性とアルカリ現像性が得られる。 【0036】 重合開始剤(b)は、硬化性樹脂組成物中に通常、固形分比で、5?25重量%の範囲で配合するが、感度を充分に上げるためには10重量%以上、特に13重量%以上とすることが好ましい。本発明においては、後述する酸性多官能光硬化性化合物(c)を含有するため、硬化性樹脂組成物の架橋密度及びアルカリ可溶性を悪化させることなく、重合開始剤(b)を10重量%以上に増量し感度を上げることが可能であり、優れた硬化性とアルカリ現像性が得られる。 【0115】 本発明の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤(b)の配合割合を高くすることができ、しかも、酸性多官能光硬化性化合物(c)を配合することにより架橋密度を高くできることから、硬化性に優れている。すなわち、露光時には感度が高く、少ない露光量で速やかに硬化し、硬化後の塗膜に硬度、強度、密着性等の諸点で優れた物性を付与することができる。 【0123】 本発明の硬化性樹脂組成物は、カラーフィルターのブラックマトリックス層及び着色層を形成するのに特に適している。 【0147】 【実施例】(製造例1)重合体1の合成 重合槽中にベンジルメタクリレートを15.6重量部、スチレンを37.0重量部、アクリル酸を30.5重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを16.9重量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を200重量部、仕込み、攪拌し溶解させた後、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を0.8重量部、添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下で、85℃で2時間攪拌し、さらに100℃で1時間反応させた。さらに得られた溶液に2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9重量部、トリエチルアミンを0.5重量部、及び、ハイドロキノンを0.1重量部、添加し、100℃で5時間攪拌し、目的とする重合体1(固形分37.2%)を得た。 【0148】(実施例1、比較例1)ブラックマトリックス用樹脂組成物の調製分散液組成物(顔料、分散剤、及び溶剤)にビーズを加え、ペイントシェーカーで3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、クリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤、及び溶剤)とを混合して、第1表に示す割合の組成物を調製した。 【0149】【表1】 【0150】(実施例2、比較例2)赤色パターン用樹脂組成物の調製分散液組成物(顔料、分散剤、及び溶剤)にビーズを加え、ペイントシェーカーで3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、クリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤、及び溶剤)とを混合して、第2表に示す割合の組成物を調製した。 【0151】【表2】 【0152】(実施例3、比較例3)緑色パターン用樹脂組成物の調製分散液組成物(顔料、分散剤、及び溶剤)にビーズを加え、ペイントシェーカーで3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液と、クリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤、及び溶剤)とを混合して、第3表に示す割合の組成物を調製した。 【0153】【表3】 これらの記載事項を含む引用刊行物1の全記載事項から、引用刊行物1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。(引用刊行物1【0151】【表2】の赤色パターン用組成物の実施例2、【0153】【表3】の緑色パターン用組成物の実施例3を中心として認定した。) 引用発明1: 「C.I.ピグメントレッド177及びC.I.ピグメントイエロー139を合計6.0重量部、或いは、C.I.ピグメントグリーン36及びC.I.ピグメントイエロー138を合計6.0重量部、分散剤3重量部、製造例1の重合体5重量部、酸性多官能光硬化性化合物としてTO1382(東亞合成製)4重量部、光重合開始剤としてイルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)2.8重量部、同様に光重合開始剤として2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール1.2重量部、溶剤78重量部からなる、赤色パターン或いは緑色パターン用樹脂組成物」 ここで、引用発明1において用いられている「酸性多官能光硬化性化合物としての『TO1382』」は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートの二塩基酸無水物付加物とジペンタエリスリトールヘキサアクリレートからなり、それらを質量比3:7の割合で含む混合物であって、東亞合成(株)製品である。(特開2004-287227号公報【0199】参照。) 引用発明1の製造例1の重合体は、製造例1に記載されているモノマー組成からこれが透明であることは自明であり、また、カラーフィルターの着色層に適用される着色パターン用樹脂組成物の樹脂であるから、これが透明性の樹脂であることは技術常識に照らしても明らかである。 2.引用刊行物2 【0002】 【従来の技術】従来、感放射線性組成物を用いてカラーフィルタを製造するに当たっては、基板上あるいは予め所望のパターンの遮光層を形成した基板上に、感放射線性組成物を塗布、乾燥したのち、乾燥した塗膜に所望のパターンに放射線を照射し、現像することにより、各色の画素を得ている。このようにして製造されたカラーフィルタは、現像の際に、未露光部の基板上あるいは遮光層上に残渣や地汚れを生じやすいという問題があり、その程度は感放射線性組成物に含まれる顔料濃度が高くなるにつれて著しくなる傾向があり、そのため十分な色濃度を達成することが困難であった。しかも、このような問題は、パターン形状にも悪影響を与えることが多く、これらの問題を解決しうるカラーフィルタ用感放射線性組成物の開発が望まれていた。 【0043】 実施例5〔液状組成物の調製〕(A)着色剤としてC.I.ピグメントグリーン7 90重量部、(B)アルカリ可溶性樹脂としてメタクリル酸/2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体(共重合重量比=12.5/12.5/65/10、Mw=30,000)60重量部、(C)多官能性単量体としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート60重量部、(D)光ラジカル発生剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド40重量部、添加剤としてマロン酸6重量部、および溶媒として3-エトキシプロピオン酸エチル1000重量部を混合して、感放射線性組成物の液状組成物を調製した。この液状組成物を、組成物(G2)とする。 〔画素アレイの作製〕組成物(R1)の代わりに組成物(G2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、緑色の画素アレイを作製した。〔評価〕得られた画素アレイを光学顕微鏡にて観察したところ、基板上に未溶解物の残存は認められず、かつ画素パターンのエッジにスカムは認められなかった。また、画素アレイの残膜率は95%と良好であった。さらに、画素パターンの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、アンダーカットは認められなかった。 これらの記載事項を含む引用刊行物2の全記載事項から、引用刊行物2には次の事項が記載されている。 「(A)着色剤としてC.I.ピグメントグリーン7 90重量部、(B)アルカリ可溶性樹脂としてメタクリル酸/2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー共重合体(共重合重量比=12.5/12.5/65/10、Mw=30,000)60重量部、(C)多官能性単量体としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート60重量部、(D)光ラジカル発生剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド40重量部、添加剤としてマロン酸6重量部、および溶媒として3-エトキシプロピオン酸エチル1000重量部を混合した、感放射線性組成物の液状組成物」 上記のとおりであるから、引用刊行物2に記載されている当該感放射線性液状組成物中の固形分量に対する顔料比率は、35.15重量%である。 第4.当審の判断 1.対比・判断 請求項1に係る発明と引用発明1とを対比すると、 引用発明1における 「C.I.ピグメントレッド177」と「C.I.ピグメントグリーン36」、 「製造例1の重合体」、はそれぞれ、 請求項1に係る発明における 「赤色または緑色の有機顔料」、 「透明性樹脂」、 に相当する。 引用発明1において用いられている「酸性多官能光硬化性化合物としての『TO1382』」は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートの二塩基酸無水物付加物とジペンタエリスリトールヘキサアクリレートからなり、それらを質量比3:7の割合で含む混合物であるから、 請求項1に係る発明における「エチレン性不飽和化合物」に相当する。 引用発明1における光硬化性着色組成物中の全固形分の重量を基準とした有機顔料の含有量は、27.27重量%であり、光硬化性着色組成物の全固形分の重量を基準とした光重合開始剤の含有量は18.18重量%である。 引用発明1において光重合開始剤として用いられているイルガキュア907 (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)の365nmにおける吸光度については、引用刊行物1中に記載されていないが、 本願明細書【0012】には、「365nmにおける吸光度が0.01?0.15である光重合開始剤の中では、特に2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、・・・(中略)・・・等が量子効率が良好なため好適に用いられる」と記載され、 本願明細書【0039】【表2】実施例16に光重合開始剤Dとして使用されている光重合開始剤:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、「イルガキュア907」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)であることから、 当該引用発明1におけるイルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)の365nmの吸光度は0.01?0.15であるものと認められる。 してみると、請求項1に係る発明と引用発明1とは、 「エチレン性不飽和化合物、透明樹脂、赤色または緑色の有機顔料、および光重合開始剤を含有する光硬化性着色組成物において、前記光重合開始剤が、365nmにおける吸光度(1cm、0.001重量%アセトニトリル溶液)が0.01?0.15である光重合開始剤と、他の光重合開始剤を含有し、前記光重合開始剤の含有量が光硬化性着色組成物中の全固形分の重量を基準として18?30重量%である光硬化性着色組成物」の点で一致し、 以下の点で相違している。 [相違点1] 請求項1に係る発明においては、赤色または緑色の有機顔料の含有量が35?50重量%であるのに対して、引用発明1においては27.27重量%であって、請求項1に規定される数値範囲外である。 [相違点2] 請求項1に係る発明においては、365nmにおける吸光度(1cm、0.001重量%アセトニトリル溶液)が0.01?0.15である光重合開始剤と、2,4-ジエチルチオキサントン(光重合開始剤)または4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(増感剤)とを組み合わせて用いる構成を有しているのに対して、引用発明1において組み合わせている光重合開始剤は、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールであって、組み合わせて用いる光重合開始剤が違う。 [相違点1]について検討すると、 引用刊行物1【0016】には、光重合開始剤を大量に配合し、さらに着色剤及び分散剤を多量に配合しても、架橋密度とアルカリ可溶性を高くでき、硬化性とアルカリ現像性に優れ、露光時には感度が高く、現像時には現像速度が高く、着色濃度が高く、順テーパ形状で、精度が高い微細な着色パターンを形成することができるようになることが記載されており、 更に、顔料に関して、引用刊行物1【0031】に着色剤は十分な着色濃度を得るために、硬化性樹脂組成物中に固形分比率で、好ましくは25?60重量%の割合で配合することができ、そのように多量に顔料を配合しても、架橋密度とアルカリ可溶性、硬化性、アルカリ現像性が担保されることが記載されている。 引用刊行物2には、実際に顔料の含有割合が約35.2%まで高めた光硬化性着色剤組成物が記載されているのであるから、引用発明1の光硬化性着色組成物における顔料割合を、引用刊行物2に記載されているように35重量%以上とし、かつ、引用刊行物1に示唆されているように、更に35重量%よりも高め、より十分な着色濃度を有する光硬化性着色剤組成物となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、引用刊行物1【0016】には着色濃度が高くても順テーパ形状が得られることが記載されている。そして、このような光硬化性着色組成物を使ったフォトレジスト技術により製造されるカラーフィルターの着色層において、適用可能な顔料の量が多く設定できれば色再現性の選択性が広がることは当業者には自明の事項に過ぎない。 [相違点2]について検討すると、 引用刊行物1【0149】【表1】に記載されているように、主たる光重合開始剤としてイルガキュア907を用いた場合、2,4-ジエチルチオキサントン(光重合開始剤)と4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(増感剤)の組合せ組成は、極めて周知の光重合開始剤・増感剤セットであり、引用刊行物1のほかに、特開2004-285271号公報【0180】【表3】等にも記載されているとおりである。 したがって、引用発明1の光重合開始剤組合せとして、当該組合せを採用することに格別の困難性はなく、その効果についても当業者にとっては自明な事項にすぎない。 2.平成23年12月19日付け意見書における請求人の主張について 請求人は、意見書において、以下の点を主張している。 主張(1)引用刊行物1には、相違点1のように、着色剤含有量が多い場合についての記載も示唆もないことから、本願のような着色剤の含有量が多くなることで、カラーフィルタの色再現性向上が可能であり、さらに着色剤が多くなり、それにより顔料担体が少なくなる事で問題となるフィルタセグメントの断面形状の悪化等を、特定の光重合開始剤を含み、かつ光重合開始剤が光硬化性着色剤組成物中の全固形分の重量を基準として18.0?30重量%有することで改善できることは記載も示唆もされていない。 主張(2)引用刊行物1、2には、いずれも光重合開始剤として、「365nmにおける吸光度(1cm、0.001重量%アセトニトリル溶液)が0.01?0.15である光重合開始剤と2,4-ジエチルチオキサントンまたは4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン」を用いることも記載も示唆もされていない。 主張(3)引用刊行物1には、「365nmにおける吸光度(1cm、0.001重量%アセトニトリル溶液)が0.01?0.15である光重合開始剤」と併用する光重合開始剤として「2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール」が記載されているが、出願当初の明細書【0013】「365nmにおける吸光度(1cm、0.001重量%アセトニトリル溶液)が0.01?0.15である光重合開始剤と、2,4-ジエチルチオキサントン(光重合開始剤)または4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(増感剤)とを組み合わせて用いると、365nmにおける吸光度が0.01?0.15である光重合開始剤が効率良く増感される」との記載の通り、従来から用いられている開始剤、増感剤のなかでも、特定の開始剤または増感剤である2,4-ジエチルチオキサントン(光重合開始剤)または4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(増感剤)を用いた場合にのみ、着色剤含有量が多くても高感度で、膜厚が厚くとも、パターン形状が優れたフィルタセグメントの形成が可能となるのであって、「2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4-テトラフェニル-1,2’-ビスイミダゾール」と併用して用いても、本願発明のような着色剤の含有量が多い場合にも高感度で、膜厚が厚くとも、パターン形状が優れたフィルタセグメントを形成することができるものではない。 請求人の主張(1)についても検討すると、 引用刊行物1【0009】には「アルカリ現像可能な光硬化性樹脂を用いて、画素やブラックマトリックスなどの着色層を形成する場合には、着色剤の配合割合を多くすることにより高い着色濃度が得られる。」と記載されており、着色剤含有量の高い光硬化性着色組成物によりカラーフィルターを製造しようとすることについて示唆されており、 更に、引用刊行物1【0016】には、「(引用刊行物1記載の発明は)光重合開始(b)を多量に配合し、さらに着色剤及び分散剤を多量に配合しても、・・・(中略)・・硬化性とアルカリ現像性に優れ、露光時には感度が高く、現像時には現像速度が高いまた、着色濃度が高く、順テーパー形状で、精度が高い微細な着色パターンを形成するとができ、露出部の残渣も少ない。」と記載され、着色剤を高い含有割合で含有させても光重合開始剤を多量に配合することにより、現像性、露光感度、現像速度、パターン形性能の改善が期待できることも記載されているから、カラーフィルター用の光硬化性着色組成物において、高濃度の着色剤含有率を目的としていることが記載されている。 また、着色剤含有量を多く設定することができれば、カラーフィルタにおける色再現の設計において有利であることは当業者であれば通常有している技術常識でもある。 したがって、引用発明1において、その着色剤含有量を引用刊行物1の【0031】に記載されている数値範囲の中で、高い数値に設定しようとすることには十分な動機付けが存在するといえるから、引用刊行物2に記載されている程度の高濃度で含有させ、請求項1に規定される着色剤含有量の数値範囲を満たすようにすることは当業者が容易に想起し得た事項である。 よって、引用刊行物1に直接的な記載がないことを以て、[相違点1]が容易でないとする請求人の主張(1)は採用することができない。 請求人の主張(2)及び(3)について検討すると、 引用刊行物1には、「365nmにおける吸光度(1cm、0.001重量%アセトニトリル溶液)が0.01?0.15である光重合開始剤」として、『イルガキュア07(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)』が記載されているが、これと併用される光重合開始剤又は増感剤として「2,4-ジエチルチオキサントン」(光重合開始剤)または「4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン」(増感剤)が特に好ましいとは記載されていない。 しかしながら、「365nmにおける吸光度(1cm、0.00重量%アセトニトリル溶液)が0.01?0.15である光重合開始剤」と「2,4-エチルチオキサントン」(光重合開始剤)、または、「4,4’-ビス(ジエチルアミノベンゾフェノン」(増感剤)との組合せは、前記検討したとり、極めて周知の光重合開始剤並びに増感剤の組合せであって、引用発明1において光重合開始剤・増感剤を当該組合せにすることは当業者であれば適宜なし得る事項である。 そして、本願の出願当初明細書に記載されていた本願実施例1?16並びに本願比較例を参酌すると、 光重合開始剤として、「365nmにおける吸光度(1cm、0.00重量%アセトニトリル溶液)が0.01?0.15である光重合開始剤」である光重合始剤A?Eを単独で使用した本願実施例1?2、4、6?9、11?14も、 「365mにおける吸光度(1cm、0.001重量%アセトニトリル溶液)が0.01?0.5である光重合開始剤」と「2,4-ジエチルチオキサントン」(光重合開始剤)、または、「4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン」(増感剤)を組み合わせた本願実施例3、5、10、15?16と同様に、 良好なパターン直線性とパターン断面形が得られており(本願の出願当初明細書【0044】【表3】及び【表4】)、 請求人の主張するような「365nmにおける吸光度(1cm、0.001重量%アセトニトリル溶液)が0.01?0.15である光重合開始剤」と「2,4-ジエチルチオキサントン(光重合開始剤)、または、「4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン」(増感剤)との組合せを用いた場合にのみ、着色剤含有量が多くても高感度で、膜厚が厚くともパターン形状が優れたフィルタセグメントの形成が可能であるという特有の効果は認められない。 3.まとめ 上記「第4.1」及び「第4.2」における検討の結果、本願の請求項1に係る発明は、引用刊行物1及び引用刊行物2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、その効果についても、引用刊行物1及び引用刊行物2に記載された事項から予測される効果を超える効果、ないしは、異質な効果は認められない。 第5.むすび 第4.において検討したとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項については検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-01-17 |
結審通知日 | 2012-01-24 |
審決日 | 2012-02-06 |
出願番号 | 特願2010-152684(P2010-152684) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石附 直弥 |
特許庁審判長 |
木村 史郎 |
特許庁審判官 |
清水 康司 磯貝 香苗 |
発明の名称 | 光硬化性着色組成物およびそれを用いて形成されるカラーフィルタ |