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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1254257 |
審判番号 | 不服2010-10738 |
総通号数 | 149 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-05-19 |
確定日 | 2012-03-21 |
事件の表示 | 特願2007- 31955「デジタル機器の状態情報提供方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月30日出願公開、特開2007-220115〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成19年2月13日(パリ条約による優先権主張2006年2月17日、韓国)の出願であって、平成21年8月7日付けの拒絶理由通知に対し、同年11月11日付けで意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、平成22年1月5日付けで拒絶査定がなされたため、これに対し、同年5月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。 2.平成22年5月19日付け手続補正についての補正却下の決定 [結論] 平成22年5月19日付け手続補正を却下する。 [理由] (1)本件補正 平成22年5月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成21年11月11日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項(以下「補正前の請求項」という。)1?12を、平成22年5月19日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項(以下「補正後の請求項」という。)1?12に補正したものである。ここで、補正前の請求項1と補正後の請求項1は、以下のとおりである。 [補正前の請求項1] 「【請求項1】 ホームネットワーク上のデジタル機器から変更された状態情報データを受信する第1のネットワークポートと、 前記デジタル機器に送信したデータ要請に対する応答として前記デジタル機器のデータを受信する第2のネットワークポートと、 前記受信された状態情報データに基づいて前記デジタル機器の状態情報を更新する制御モジュールとを含むデジタル機器の状態情報提供装置。」 [補正後の請求項1] 「【請求項1】 ホームネットワーク上のデジタル機器から変更された状態情報データを受信する第1のネットワークインターフェースモジュールと、 前記デジタル機器に送信したデータ要請に対する応答として前記デジタル機器のデータを受信する第2のネットワークインターフェースモジュールと、 前記受信された状態情報データに基づいて前記デジタル機器の状態情報を更新する制御モジュールとを含むデジタル機器の状態情報提供装置。」 本件補正は、補正前の請求項1の「第1のネットワークポート」を「第1のネットワークインターフェースモジュール」とする補正、補正前の請求項1の「第2のネットワークポート」を「第2のネットワークインターフェースモジュール」とする補正をしたものである。 (2)補正事項の検討 本件補正における「第1のネットワークインターフェースモジュール」と「第2のネットワークインターフェースモジュール」は、本願の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)に記載されていた事項であるので、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 しかしながら、当初書明細書等の段落【0044】に「ここで、ポートとは、論理的な接続場所を意味する。特に、TCP/IPを用いる時にはクライアントプログラムがネットワーク上の特定サーバプログラムを指定する方法として用いられる。ウェブプロトコルであるHTTPのように、TCP/IPの上位プロトコルを用いる応用プログラムはインターネット・アサインド・ナンバー・オーソリティ(IANA)により予め指定されたポート番号を有する。他のアプリケーションプロセスは接続する度にポート番号が新しく付与される。」との記載があるように、「ネットワークポート」は論理的な接続場所を示すものであるのに対し、「ネットワークインターフェースモジュール」は当初書明細書等の段落【0055】にあるように、ソフトウエアまたはハードウエア構成要素を示すものであり、用語として示す技術範囲が異なるものであるので、本件補正における「第1のネットワークポート」を「第1のネットワークインターフェースモジュール」とする補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものとは認められない。また、「ネットワークポート」が「ネットワークインターフェースモジュール」の構成要素の一部であると考えた場合、「ネットワークポート」を「ネットワークインターフェースモジュール」とする補正は、技術的範囲を拡張する補正となる。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。 さらに、本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号、第3号、第4号の請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明の何れを目的とするものでもないことは明らかである。 よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反する。 (3)補正却下の決定についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年11月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ホームネットワーク上のデジタル機器から変更された状態情報データを受信する第1のネットワークポートと、 前記デジタル機器に送信したデータ要請に対する応答として前記デジタル機器のデータを受信する第2のネットワークポートと、 前記受信された状態情報データに基づいて前記デジタル機器の状態情報を更新する制御モジュールとを含むデジタル機器の状態情報提供装置。」 4.引用例の記載 原査定の拒絶の理由において引用された、本願出願日前に頒布された特開2002-215483号公報(平成14年8月2日公開。以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 A.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、映像、音響又は情報に関するデータの中の何れか1つ以上を取り扱う、少なくとも2つ以上の機器が、伝送路を介して接続されてなるAVC(Audio Video Computer)システムに接続された機器の操作を、AVCシステムを構成するネットワークを通して行う機器制御システム、及びこの機器制御システムに用いるデバイス及びコントローラに関するものである。」(段落【0001】) B.「【0009】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記のような構成では、デバイスがコントローラの要求に対してデバイスの情報を送信するため、他のコントローラからの制御や使用者の直接操作、さらには、デバイスの内部状態変化により、デバイスの状態が変化した場合、次回コントローラがデバイスに要求を出すまでデバイスの状態の変化を検出できないという問題と、状態が変化していない場合にもコントローラがデバイスの状態情報を要求するため、コントローラ及びデバイスで本来不必要な処理が増加し、伝送路上の不要な通信が増大するという問題点を有していた。 【0010】また、デバイスが自身の状態変化を、状態が変化した時点でコントローラに通知する場合、状態変化が頻発すると、コントローラがこのデバイスの状態変化に応じた処理を行えず、コントローラで使用されない状態情報のために伝送路上の通信が増大してしまうという問題点を有していた。 【0011】そこで本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、デバイスの状態変化に応じて、即座に、コントローラがその変化を検知して最新の状態情報を取得可能であり、また、状態変化を検知し状態情報を取得する際に、コントローラやデバイスの無駄な処理や伝送路上で不必要な通信がなく、さらに、デバイスの状態変化が頻発しても、無駄な通信がなく、コントローラがこの状態変化に応じた処理が可能であり、さらに、コントローラが必要な状態情報を必要なときに得ることができる機器制御システム並びに、機器制御システムにおけるコントローラ及びデバイスを提供することである。 【0012】つまり、本発明は、制御対象であるデバイスとそのデバイスを制御するコントローラとで構成される機器制御システムにおいて前記デバイスの状態が変化した場合に、前記コントローラが即座に状態変化後の前記デバイスの状態を把握することができる機器制御システム並びに、その機器制御システムを構成するコントローラ及びデバイスを提供することを目的とする。」(段落【0009】-【0012】) C.「【0042】 【発明の実施の形態】以下、本発明に係る機器制御システム、及び機器制御システムに用いるデバイス並びにコントローラの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずしもこの実施の形態に限定されるものではない。 【0043】又、以下に述べる、本発明の実施の形態における機器制御システムを利用するAVCシステムのネットワーク構成としては、例えば、図3に示すような映像/音響/情報機器(以下単に「機器」とする。)による構成が考えられる。 【0044】なお、本明細書において、コントローラとは制御対象である機器(デバイス)を制御する機器であり、デバイスとはコントローラにより制御される制御対象である機器のことをいう。 【0045】図3において、21はテレビ、22はテレビ用のリモコン、23はパーソナルコンピュータ(PC)、31は録再可能なDVD、32はDV方式のデジタルVTR(DVC)、33はVHS方式のデジタルVTR(DVHS)、34はDV方式のデジタルムービー(DVCムービー)、35はCSデジタル放送等のセットトップボックス(STB)である。これらの機器は、伝送路1によって接続され、AVCシステムを構成する。」(段落【0042】-【0045】) D.「【0061】(実施の形態1)本発明に係る、AVCシステムに用いる機器制御システム、及び機器制御システムに用いるデバイス並びにコントローラの一例を、第1の実施の形態として、図面を参照しつつ説明する。 【0062】まず、本実施の形態における機器制御システムに用いるデバイスについて、図1を参照しつつ説明する。 【0063】図1は本実施の形態におけるデバイスのブロック図を示す。この図1において、1は伝送路、2はパケット送受信手段、3は同期データ送受信手段、4はデバイス信号処理手段、5は非同期データ送受信手段、6はデバイス非同期データ処理手段、7は機器構成情報、9は機器内部制御手段であり、15は機器状態管理手段、16は通知先情報管理手段である。 【0064】次に、デバイスを構成する各部材の動作について説明する。 【0065】伝送路1は、ここではIEEE1394規格(IEEE1394-1995及びこれと互換性のある上位規格)で定められたシリアルバス(1394バス)としている。このシリアルバスは、時分割等の方法で、同期データ及び非同期データを送受信可能である。さらに、同期データは、時分割等の方法で分割された複数のチャンネルを用いて伝送でき、この各チャンネルの帯域は個々に設定可能である。なお、伝送路1は必ずしも1394バスである必要はなく、ATM、イ-サーネットや赤外線伝送等の伝送路を用いても良い。 【0066】パケット送受信手段2は伝送路1との物理的、電気的インターフェースを取るとともに、バスの使用権の調停、同期転送用のサイクル制御等も行う。さらに、パケット送受信手段2は伝送路1上のパケットを宛先に応じて取捨選択して受信することや、伝送路1上へパケットの送信を行う。」(段落【0061】-【0066】) E.「【0084】次に、本実施の形態における機器制御システムに用いるコントローラについて、図2を参照しつつ説明する。 【0085】図2は本実施の形態におけるコントローラのブロック図を示す。この図2において、10はコントローラ信号処理手段、11はコントローラ非同期データ処理手段、14は機器制御ソフトである。なお、図2において、図1と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略する。 【0086】次に、コントローラを構成する各部材の動作について説明する。 【0087】コントローラ信号処理手段10は、同期データを同期データ送受信手段3から受け取り、このコントローラに応じた信号処理を行う。例えば、このコントローラが、ビデオモニタ等の映像表示機器であれば、同期データ、例えば、MPEG2のストリーム等を復号し、画面上へ表示する。 【0088】なお、ここで、同期データ送受信手段3、コントローラ信号処理手段10等の構成要素は、コントローラの機能に応じて任意に構成しても良く、なくてもよい。 【0089】コントローラ非同期データ処理手段11は、非同期データ送受信手段5から受け取った非同期データを処理し、このコントローラ内の適切な構成要素に伝達する。また、伝達する際に同期データ用の帯域やチャンネル確保、設定等を行う。また、コントローラ非同期データ処理手段11は、パケット送受信手段2から新規デバイスの接続や、既存デバイスの取り外し等、伝送路1上のデバイスの情報等を非同期データ送受信手段5経由で受け取り、必要に応じて機器制御ソフト14に伝達する。 【0090】ここで、機器制御ソフト14は必要な情報を事前にコントローラ非同期データ処理手段11に登録しておき、この登録された情報がコントローラ非同期データ処理手段11に到来した際に、この情報がコントローラ内の登録済みの各構成要素に伝達される。なお、機器制御ソフト14が要求した時に、要求された情報をコントローラ非同期データ処理手段11が伝達することも可能である。 【0091】さらに、コントローラ非同期データ処理手段11は機器制御ソフト14からの指示に基づいて、機器制御ソフト14自身またはコントローラ内の構成要素から非同期データ(コマンドまたはレスポンス)を非同期データ送受信手段5へ送出する。ここで、非同期データ送受信手段5とコントローラ非同期データ処理手段11は、1つの手段として構成しても良い。 【0092】また、コントローラとデバイスを同一の機器内で構成する場合、コントローラ信号処理手段10とデバイス信号処理手段4、コントローラ非同期データ処理手段11とデバイス非同期データ処理手段6は各同一のものとして構成しても良い。 【0093】機器制御ソフト14は、デバイスの制御を行うためのソフトウエアであり、コントローラの画面上に、デバイスの情報や機能、状態等を示す表示部品、例えば映像/音声/文字情報等を用いて、操作画面を作成し、画面上に表示して、使用者へ通知すると共に、使用者の操作に応じて機能の選択や各機能の実行指示等を行なう。 【0094】また、機器制御ソフト14は、コントローラが使用者の指示等により、該当デバイスの操作画面を表示する際、まず、デバイスに対して、状態変化時の通知先として、本コントローラを登録する非同期データ(コマンド)の送信をコントローラ非同期データ処理手段11に依頼する。 【0095】さらに、機器制御ソフト14は、デバイスから、コマンドとして、コントローラ非同期データ処理手段11を経由し、状態情報の変化通知を受け取った際には、この最新状態情報に応じて、操作画面を修正して表示画面上に表示し、使用者へデバイスの状態変化を通知する。つまり、最新状態情報にふさわしい表示になるように、表示部品の変更等を行い、操作画面を更新する。」(段落【0084】-【0095】) F.【図面の簡単な説明】及び【図2】の記載 「【図面の簡単な説明】 【図2】第1の実施の形態に係る機器制御システムに用いるコントローラのブロック図である。」 また、【図2】の記載から、伝送路1に接続されたパケット送受信手段2を介して接続された同期データ送受信手段3と非同期データ送受信手段5があり、また、上位にコントローラ信号処理手段10、コントローラ非同期データ処理手段11、機器制御ソフト14があることが読み取れる。 上記の摘記A.?F.によれば、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「映像、音響又は情報に関するデータの中の何れか1つ以上を取り扱う、少なくとも2つ以上の機器が、伝送路を介して接続されてなるAVC(Audio Video Computer)システムに接続された機器の操作を、AVCシステムを構成するネットワークを通して行い、 デバイスの状態変化に応じて、即座に、コントローラがその変化を検知して最新の状態情報を取得可能であり、状態変化を検知し状態情報を取得する際に、コントローラやデバイスの無駄な処理や伝送路上で不必要な通信がなく、コントローラが必要な状態情報を必要なときに得ることができる機器制御システムにおいて、 テレビ、パーソナルコンピュータ(PC)、録再可能なDVD、DV方式のデジタルVTR(DVC)、VHS方式のデジタルVTR(DVHS)、DV方式のデジタルムービー(DVCムービー)、CSデジタル放送等のセットトップボックス(STB)の機器は、伝送路1によって接続され、AVCシステムを構成しており、 コントローラとは制御対象である機器(デバイス)を制御する機器であり、デバイスとはコントローラにより制御される制御対象である機器であり、 コントローラには、伝送路1に接続されたパケット送受信手段2を介して接続された同期データ送受信手段3と非同期データ送受信手段5があり、 伝送路1は、シリアルバス(1394バス)、ATM、イ-サーネットや赤外線伝送等の伝送路を用いることができ、 パケット送受信手段2は伝送路1との物理的、電気的インターフェースを取るとともに、バスの使用権の調停、同期転送用のサイクル制御等も行うものであり、 コントローラ信号処理手段10は、同期データを同期データ送受信手段3から受け取り、このコントローラに応じた信号処理を行い、このコントローラが、ビデオモニタ等の映像表示機器であれば、同期データ、MPEG2のストリーム等を復号し、画面上へ表示し、 コントローラ非同期データ処理手段11は、非同期データ送受信手段5から受け取った非同期データを処理し、このコントローラ内の適切な構成要素に伝達し、 機器制御ソフト14は、デバイスから、コマンドとして、コントローラ非同期データ処理手段11を経由し、状態情報の変化通知を受け取った際には、この最新状態情報に応じて、操作画面を修正して表示画面上に表示し、使用者へデバイスの状態変化を通知し、最新状態情報にふさわしい表示になるように、表示部品の変更等を行い、操作画面を更新する、コントローラ。」 なお、上記摘記E.段落【0085】には「図2において、図1と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略する。」と記載されているので、コントローラの構成要素で図1と同一の構成要素で説明が省略されている構成要素については、図1に関する記載を用いて引用発明を認定した。 5.対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の機器(デバイス)であるテレビ、パーソナルコンピュータ(PC)、録再可能なDVD、DV方式のデジタルVTR(DVC)、VHS方式のデジタルVTR(DVHS)、DV方式のデジタルムービー(DVCムービー)、CSデジタル放送等のセットトップボックス(STB)等は、本願発明の「デジタル機器」に相当する。 また、上記の引用発明の機器(デバイス)は、伝送路1によって接続され、AVCシステムを構成しているので、ホームネットワークを構成しているといえる。 引用発明の、デバイスからの「状態情報の変化通知」は、本願発明の「変更された状態情報データ」に相当する。 引用発明のコントローラ非同期データ処理手段11は、非同期データ送受信手段5から受け取った非同期データを処理し、このコントローラ内の適切な構成要素に伝達し、機器制御ソフト14は、デバイスから、コマンドとして、コントローラ非同期データ処理手段11を経由し、状態情報の変化通知を受け取るものであるので、引用発明の「非同期データ送受信手段5」と、本願発明の「第1のネットワークポート」は、共に、「ホームネットワーク上のデジタル機器から変更された状態情報データを受信する第1の」受信部、である点で共通する。 引用発明のコントローラ信号処理手段10は、同期データを同期データ送受信手段3から受け取り、このコントローラに応じた信号処理を行い、このコントローラが、ビデオモニタ等の映像表示機器であれば、同期データ、MPEG2のストリーム等を復号し、画面上へ表示しているので、引用発明の「同期データ送受信手段3」と本願発明の「第2のネットワークポート」は、共に「前記デジタル機器のデータを受信する第2の」受信部、である点で共通する。 引用発明の機器制御ソフト14は、デバイスから、コマンドとして、コントローラ非同期データ処理手段11を経由し、状態情報の変化通知を受け取った際には、この最新状態情報に応じて、操作画面を修正して表示画面上に表示し、使用者へデバイスの状態変化を通知し、最新状態情報にふさわしい表示になるように、表示部品の変更等を行い、操作画面を更新しているので、引用発明の「機器制御ソフト14」と本願発明の「制御モジュール」は、「前記受信された状態情報データに基づいて前記デジタル機器の状態情報を更新する」点で一致する。 そして、引用発明の「コントローラ」は状態情報提供も行っているので、引用発明の「コントローラ」は本願発明の「状態情報提供装置」に対応するものである。 すると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。 一致点 「ホームネットワーク上のデジタル機器から変更された状態情報データを受信する第1の受信部と、 前記デジタル機器のデータを受信する第2の受信部と、 前記受信された状態情報データに基づいて前記デジタル機器の状態情報を更新する制御モジュールとを含むデジタル機器の状態情報提供装置。」 一方、両者は次の点で相違する。 (相違点1) 本願発明は、デジタル機器から変更された状態情報データを受信する第1のネットワークポートと、デジタル機器のデータを受信する第2のネットワークポートとを有しているのに対し、引用発明は、デジタル機器から変更された状態情報データを受信する第1受信部と、デジタル機器のデータを受信する第2の受信部とを有しているが、当該第1及び第2の受信部が別々の第1のネットワークポートと第2のネットワークポートであることの特定がなされていない点。 (相違点2) 本願発明は、デジタル機器に送信したデータ要請に対する応答としてデジタル機器のデータを受信しているのに対し、引用発明では、デジタル機器のデータの受信を行っているものの、デジタル機器に送信したデータ要請に対する応答としてのデータの受信であるかは明らかではない点。 6.当審の判断 (相違点1について) TCP/IPに代表されるデータ通信方式において、1つの通信用モジュールにおいて複数のポートを介してデータ通信を行うことや、複数の通信用モジュールを用いてポートを介してデータ通信を行うことは周知の技術である。また、より具体的な方式として、制御対象機器に対して、要求なしに制御対象機器から状態情報を受け取るポートと、要求をして管理情報を受け取るポートを異ならせる構成も周知の技術である(原査定の拒絶査定時に提示した文献:「大鐘久生、TCP/IPとOSIネットワーク管理、日本、株式会社ソフト・リサーチ・センター、1993年4月15日、p.57-59」を参照。)。 そのため、引用発明におけるデータの受信部をより具体的な構成であるネットワークポートに特定して、本願発明のように構成することは当業者であれば容易に成し得ることである。 (相違点2について) 引用発明は、映像、音響又は情報に関するデータの中の何れか1つ以上を取り扱う、少なくとも2つ以上の機器が、伝送路を介して接続されてなるAVCシステムに接続された機器の操作を、AVCシステムを構成するネットワークを通して行うものであり、かつ、同期データを受け取り、コントローラに応じた信号処理を行い、コントローラが、ビデオモニタ等の映像表示機器であれば、同期データ、MPEG2のストリーム等を復号し、画面上へ表示する構成を有しているので、引用発明におけるAVCシステムのような構成において、MPEG2のストリーム等のデジタル機器のデータを受信し表示する場合に、コントローラからデジタル機器へデータ要請をして、その応答としてデータを受信するような構成とすることは、当業者であれば当然想到し得ることである。したがって、引用発明において、デジタル機器に送信したデータ要請に対する応答としてデジタル機器のデータを受信するような構成とすることに格別の困難性は認められない。 そして、本願発明のように構成したことによる効果も、引用発明及び周知技術から予測できる程度のものである。 7.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-10-19 |
結審通知日 | 2011-10-25 |
審決日 | 2011-11-07 |
出願番号 | 特願2007-31955(P2007-31955) |
審決分類 |
P
1
8・
57-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高瀬 勤 |
特許庁審判長 |
江口 能弘 |
特許庁審判官 |
安久 司郎 鈴木 重幸 |
発明の名称 | デジタル機器の状態情報提供方法および装置 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠重 |