• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1254870
審判番号 不服2011-8324  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-19 
確定日 2012-04-05 
事件の表示 特願2008-332607「複合ICカード及び複合ICカード用ICモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月16日出願公開、特開2009- 80850〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
(1)出願までの経緯
平成10年3月24日付けで特願平10-075691号(以下「始祖出願」と記す。)が出願され、
平成16年11月1日付けで、該始祖出願を原出願とする特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(以下「分割出願」と記す。)として、特願2004-318327号が出願され、
平成17年12月19日付けで、同始祖出願を原出願とする分割出願として、特願2005-365255号(以下、「親出願」と記す。)が出願され、
平成20年12月26日付けで、該親出願を原出願とする分割出願として、本件審判請求に係る出願(以下、「本願」と記す。)が出願された。

(2)出願後の経緯
本願は、
平成20年12月26日の出願と同日付けで審査請求がなされ、
平成22年1月8日付けで拒絶理由通知(平成22年1月19日発送)がなされ、
同年3月19日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
同年6月10日付けで拒絶理由通知(同年6月15日発送)(以下、「原審拒絶理由通知」と記す。)がなされ、
同年8月13日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
平成23年1月20日付けで拒絶査定(平成23年1月25日発送)(以下「原審拒絶査定」と記す。)がなされたものである。

そして、本件審判請求は、該原審拒絶査定を不服として
同年4月19日付けでなされたものである。
(なお同日付けで、本願を原出願とする分割出願として、特願2011-093153号が出願されている。)


2.拒絶理由・補正の内容・請求人の主張

(1)本願発明の詳細な説明及び図面の記載
ア.本願の願書に添付された明細書の発明の詳細な説明には以下のとおりの記載がある。(下線は当審付与。)
『<前略>
【0045】
次に、上記無線コンビカード300内の詳細な構成を、図2、図3を用いて説明する。
【0046】
無線コンビカード300には、図2、図3に示すように、カード表面に端末装置との接触端子C1(VCC)、C2(RST)、C3(CLK)、C4(将来のための予備端子:RFU)、C5(GND)、C6(VPP:未使用)、C7(I/O)、C8(将来のための予備端子:RFU)が接触式インターフェイス401として配置されている。
【0047】
無線コンビカード300のカード内には、図2、図3に示すような1チップマイクロプロセッサ310が埋め込まれている。
【0048】
この1チップマイクロプロセッサ310は、図3に示すように、上記制御ロジック回路305に相当する制御用のCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)405、制御プログラムを記憶するROM406、暗証番号(たとえば4桁)、およびデータなどが記録されるEEPROMで構成されるデータメモリ407、UART等で構成されるインターフェイス回路408、一時記憶用のRAM409、暗号回路402などからなる一連のデータ処理装置を有している。
【0049】
そして、このような無線コンビカード300による接触式でのデータ交換に際しては、カード300を挿入した端末装置より、接触端子C1からVCC(通常5V))端子へ電圧が供給されるとともに、接触端子C3、C2、C5を通してCLK(クロック)端子、RST(リセット)端子、GND(接地電位)端子に信号が入力され、同時に接触端子C7とI/Oポートが接続されてデータ交信が行われる。
【0050】
上記各部はICチップで構成され、1つの基板上に設けられている。
【0051】
また、上記各端子とは配線により接続されていると共に、各端子とICチップを搭載した基板とは、一体化されて、ICモジュールとしてハンドリングされることにより、図2に示すように、カード表面に各端子が露出するようにカードに埋込まれている。
【0052】
また、カード300内には非接触式でのデータ交換のために、並列同調回路301が設けられている。
【0053】
すなわち、並列同調回路301は、無線カードリーダ・ライタ200の送信アンテナ201からの2相位相変調波信号(第1の2相位相変調波信号)を受信するとともに、f0/2の搬送波周波数の2相位相変調波信号(第2の2相位相変調波信号)で送信も行われるものであり、ループ状アンテナコイル301aおよび同調コンデンサ301bにより構成されている。
【0054】
この並列同調回路301において、ループ状アンテナコイル301aからは受信と同時にf0/2の搬送波周波数で送信も行わせているが、受信電波から電源生成のための電力の確保を効率良く行わせる必要があり、このために受信した2相位相変調波信号の搬送波周波数f0に同調するようになっている。
【0055】
上記送信のための搬送波周波数が受信する2相位相変調波信号の搬送波周波数の1/2ではなく、整数分の1であっても良い。
【0056】
なお、ループ状アンテナコイル301aは単に信号の授受のためのものであり、これらは1個のコイルを送受信用に兼用に設けてもよいが、送信用と受信用で別々にするようにしてもよい。
【0057】
上記1チップマイクロプロセッサ310には、非接触式でのデータ交換のために、並列同調回路301を介してデータ交換を行なう非接触インターフェイス回路400が内蔵されている。
【0058】
この非接触インターフェイス回路400には、上記並列同調回路301からの2相位相変調波信号により無線コンビカード300内の回路全体に供給するための電源を生成する電源生成部302、並列同調回路301を介して受信したアナログ信号から動作用のクロックを生成するクロック生成回路(クロック生成手段)307、並列同調回路301を介して受信したアナログ信号を1チップマイクロプロセッサ310内のCPU405に読み込ませるためのデジタル信号に変換する復調回路(復調手段)303、CPU405から送出される信号で発振回路出力を変調して並列同調回路301のループ状アンテナ(送信)コイル301aから送信するための変調回路(変調手段)304、クロック生成回路(クロック生成手段)307により生成されたクロックに基づきリセット信号を生成するリセット信号生成回路308などによって構成されている。
【0059】
上記無線コンビカード300内には、非接触式インターフェイス400と並列同調回路301のループ状アンテナコイル301aとの導通をON/OFFするスイッチ(SW1)309が設けられている。
【0060】
このスイッチ(SW1)309は、初期状態では、通常ON(接続)状態となっているが、接触式インターフェイス401の接触端子C1からVCC(通常5V)端子へVcc電圧が印可されている場合には、CPU405によって、このスイッチ(SW1)309をOFFとするように構成されている。
【0061】
そして、さらに、第1の実施の形態においては、上記スイッチ(SW1)309の他に、接触端子C1(VCC)、C2(RST)、C3(CLK)、C7(I/O)の各々に対応してスイッチ(SW2,SW3,SW4,SW5)312?315が設けられる。
【0062】
これらのスイッチ(SW2,SW3,SW4,SW5)312?315の各一方の入力端が、接触端子C1(VCC)、C2(RST)、C3(CLK)、C7(I/O)の各々に対応して接続されている。
【0063】
そして、スイッチ(SW2)312の他方の入力端が、非接触式インターフェイス400の電源生成部302にて生成されたVcc電圧が入力されるように電源生成部302と接続されている。
【0064】
ここで、スイッチ(SW2)312は、CPU405によって制御される選択回路(sel)320の出力により、いずれか一方の入力端がイネーブル状態に選択される。
【0065】
なお、スイッチ(SW2)312は、CPU405によって、初期状態では接触端子C1からVCC電圧が入力されるように、他方の入力端が選択されている。
【0066】
また、スイッチ(SW3)313の他方の入力端が、非接触式インターフェイス400のリセット信号生成回路308にて生成されたリセット信号が入力されるようにリセット信号生成回路308と接続されている。
【0067】
ここで、スイッチ(SW3)313は、CPU405によって制御される選択回路(sel)320の出力により、いずれか一方の入力端がイネーブル状態に選択される。
【0068】
なお、スイッチ(SW3)313は、CPU405によって、初期状態ではリセット信号生成回路308にて生成されたリセット信号が入力されるように、他方の入力端が選択されている。
【0069】
また、スイッチ(SW4)314の他方の入力端が、非接触式インターフェイス400のクロック生成回路307にて生成されたクロック信号が入力されるようクロック生成回路307と接続されている。
【0070】
ここで、スイッチ(SW4)314は、CPU405によって制御される選択回路(sel)320の出力により、いずれか一方の入力端がイネーブル状態に選択される。
【0071】
なお、スイッチ(SW4)314は、CPU405によって、初期状態ではクロック生成回路307にて生成されたクロック信号が入力されるように、他方の入力端が選択されている。
【0072】
また、スイッチ(SW5)315の他方の入力端が、非接触式インターフェイス400の復調回路(復調手段)303と接続されている。
【0073】
また、スイッチ(SW5)315の一方の出力端が、非接触式インターフェイス400の変調回路(変調手段)304と接続されている。
【0074】
ここで、スイッチ(SW5)315は、CPU405によって制御される選択回路(sel)320の出力により、復調回路(復調手段)303の出力端、変調回路(変調手段)304の入力端若しくは接触端子C7(I/O)と選択的に接続されるように、いずれか一方の入力端若しくは出力端がイネーブル状態に選択される。
【0075】
なお、スイッチ(SW5)315は、CPU405によって、初期状態では復調回路(復調手段)303の出力端、変調回路(変調手段)304の入力端が選択されて接続されている。
【0076】
一方、接触式インターフェイス401の接触端子C1及び電源生成部302の出力は、各々CPU405の端子A,Bに入力されており、無線コンビカード300が起動されて初期化動作を行なう際に、CPU405において接触式インターフェイス401により駆動されているのか、若しくは、非接触式インターフェイス400により駆動されているのかが判別されるようになっている。
【0077】
そして、CPU405は、ROM406に記憶されている初期化動作を行うためのプログラムを読み出して初期化動作を行うようになされている。
【0078】
次に、このような構成による無線コンビカードの動作を図4に示すフローチャートに従って説明する。
【0079】
例えば、カード300を端末装置に挿入すると、カード300の接触式インターフェイス401の接触端子C1からVCC(通常5V))電圧が印可される(ST1)。
【0080】
ここで、接触端子C1からVCC(通常5V)端子へVcc電圧が印可されると、カード300の選択回路(sel)320は、接触端子C1(VCC)、C2(RST)、C3(CLK)、C7(I/O)の各々を選択して接続するようスイッチ(SW2,SW3,SW4,SW5)312?315の各々に対して選択信号「1」を出力する(ST101)。
【0081】
その後、CLK端子C3、RST端子C2から各々クロック信号、リセット信号が供給される(ST2,ST2)と、CPU405は初期化動作を開始する(ST102)。
【0082】
この初期化動作時において、CPU405は、入力端子A,Bの状態を確認し、無線コンビカード300が、CPU405において接触式インターフェイス401により起動されているか、非接触式インターフェイス400により起動されているのかを判別する(ST103)。
【0083】
すなわち、入力端子Aが「1」で、入力端子Bが「0」での状態判別は、非接触式インターフェイス400により、起動されていることとなる。
【0084】
また、入力端子Aが「0」で、入力端子Bが「1」での状態判別は、接触式インターフェイス401により、起動されていることとなる。
【0085】
そして、入力端子Aが「0」で、入力端子Bが「0」若しくは、入力端子Aが「1」で、入力端子Bが「1」での状態判別は、エラーとなる。
【0086】
そして、エラーの場合、CPU405は動作を停止する。
【0087】
この場合、接触式インターフェイス401により起動されており、CPU405は、入力端子A,Bの状態をRAM409の所定エリアに保持する(ST104)。
【0088】
非接触式インターフェイス400による起動の場合には、RAM409の所定エリアに(1,0)を記憶し、接触式インターフェイス401による起動の場合には、RAM409の所定エリアに(0,1)を記憶する。
【0089】
次に、CPU405はRAM409に格納されている情報により、カード300が接触式インターフェイス401により起動されているか否か、すなわち、RAM409に格納されているパターンが(0,1)であるか否かを判別する(ST105)。
【0090】
接触式インターフェイス401により起動され、RAM409の所定エリアのパターンが(0,1)の場合、CPU405は、上記スイッチ(SW1)309をOFFにする選択信号を出力する(ST106)。
【0091】
この選択信号により、スイッチ(SW1)309はOFFとされる。
【0092】
また、この選択信号は選択回路(sel)320にも供給され、スイッチ(SW2,SW3,SW4,SW5)312?315の各々が接触端子C1(VCC)、C2(RST)、C3(CLK)、C7(I/O)の各々を選択した状態を維持するよう選択回路(sel)320を制御する(ST106)。
【0093】
この選択回路(sel)320の選択により、スイッチ(SW2,SW3,SW4,SW5)312?315の各々が接触端子C1(VCC)、C2(RST)、C3(CLK)、C7(I/O)の各々を選択した状態が維持され、以後、端末装置からのI/Oポートを介してコマンドを受信し、コマンドに応じてI/Oポートを介しての接触式でのデータ交換が行われる。
【0094】
すなわち、接触式でのデータ交換が行われている間は、上記スイッチ(SW1)309はOFFにされていると共に、スイッチ(SW2,SW3,SW4,SW5)312?315の各々が接触端子C1(VCC)、C2(RST)、C3 (CLK)、C7(I/O)の各々を選択した状態が維持されるので、接触式でのデータ交換が行われている間、若しくは、接触式で駆動されている間に、並列同調回路301の受信アンテナコイル301aに何らかの電波を受けたとしても、無線コンビカード300は誤動作することなく、接触式での駆動若しくは、接触式でのデータ交換が確保される。
【0095】
一方、非接触式インターフェイス400により起動される場合、スイッチ(SW1)309は通常ON(接続)状態となっているので、並列同調回路301の受信アンテナコイル301aにより電波を受信し(ST201)、上述した電源生成部302、クロック生成回路(クロック生成手段)307、復調回路(復調手段)303、変調回路(変調手段)304、リセット信号生成回路が動作する(ST202)。
【0096】
電源生成部302から電圧が印可されると、選択回路(sel)320は、選択信号「0」を出力する(ST202)。
【0097】
スイッチ(SW2,SW3,SW4,SW5)312?315の各々は初期状態では電源生成部302、クロック生成回路(クロック生成手段)307、復調回路(復調手段)303、変調回路(変調手段)304、リセッ卜信号生成回路308の各々を選択して接続しており、選択信号「0」は各スイッチスイッチ(SW2,SW3,SW4,SW5)312?315の状態を変化させない。
【0098】
その後、クロック生成回路(クロック生成手段)307、リセット信号生成回路308から各々クロック信号、リセット信号が供給されることにより、CPU405は初期化動作を開始する(ST102)。
【0099】
この初期化動作時において、CPU405は入力端子A,Bの状態を確認し、無線コンビカード300が、CPU405において接触式インターフェイス401により起動されているのか、非接触式インターフェイス400により起動されているのかを判別する(ST103)。
【0100】
この場合、非接触式インターフェイス400により起動されており、CPU405は入力端子A,Bの状態をRAM409の所定エリアに(1,0)として記憶する(ST103)。
【0101】
次に、CPU405はRAM409に格納されている情報により、カード300が接触式インターフェイス401により起動されているのか、非接触式インターフェイス400により起動されているのかを判別する(ST105,ST107)。
【0102】
非接触式インターフェイス400により起動され、RAM409の所定エリアのパターンが(1,0)であることが判別されると(ST106)、CPU405は選択回路(sel)320及びスイッチ(SW1)309に対して選択信号「0」を出力する(ST108)。
【0103】
この選択信号「0」は各スイッチを初期状態に保持する。
【0104】
その後、スイッチ(SW2,SW3,SW4,SW5)312?315の各々は電源生成部302、クロック生成回路(クロック生成手段)307、復調回路(復調手段)303、変調回路(変調手段)304、リセット信号生成回路308の各々を選択して接続しており、それぞれ非接触インターフェイス400が接続された状態となっている。
【0105】
以上のステップST102乃至ステップST108によりCPU405による初期化動作が完了する。
【0106】
なお、初期化動作としては、他にもROM406,RAM409,EEPROM407等のハードウェアチェック等が行われている。
【0107】
初期化動作が完了すると、カード300は外部とのデータの送受信が可能となる。
【0108】
接触式インターフェイス401によりカード300を駆動している場合、外部装置(リーダライタ)は接触端子C3にクロックの供給を開始してから、4万クロックが経過した後に、接触端子C2に印可しているリセット信号を解除するようになっている。
【0109】
また、リセット信号生成回路308も同様に、クロック生成回路307によるクロックの供給が開始されてから、所定数のクロックが経過した後に、リセット信号を解除するようになっている。
【0110】
そして、CPU405は、接触端子C2に印可されているリセット信号が解除されるか、リセット信号生成回路308からのリセット信号が解除されると、接触式インターフェイス401、非接触式インターフェイス400のうち選択されている一方を介して初期応答信号(ATR)を外部装置(リーダライタ)に出力する。
【0111】
外部装置(リーダライタ)はカード300より初期応答信号(ATR)を受信すると、カード300とのコマンドの送受信が可能となり、カード300に対してコマンドの送信を行う。
【0112】
カード300は接触式インターフェイス401、非接触式インターフェイス400のうち、現在、選択されている一方を介してコマンドを受信する(ST110)。
【0113】
コマンドを受信すると、CPU405は入力端子A,Bの状態を判別し、RAM409に格納されているパターン(初期状態)と比較する(ST111)。
【0114】
入力端子A,Bの状態とRAM409に格納されているパターン(初期状態)とが同一であることが確認されると(ST112)、CPU405は受信したコマンドを実行し、その処理結果を外部に出力する(ST113)。
【0115】
そして、以後、同様に外部装置との間でのコマンドおよびデータの送受信が行われる。
【0116】
外部からの不正な試みや異常が発生していない場合には、入力端子A,Bの状態とRAM409に格納されているパターン(初期状態)とは同一でなければならず、ステップ112において、入力端子A,Bの状態とRAM409に格納されているパターン(初期状態)とが同一でないことが確認されるとCPU405はエラー出力を行って動作を停止する(ST114)。
【0117】
なお、並列同調回路301の受信アンテナコイル301aを通して受信された信号は、復調回路(復調手段)303でデジタル信号に変換されると共に、UART(I/O)408を通してCPU405に取り込まれて適宜信号処理された後、必要に応じてRAM409等に記憶される。
【0118】
また、端末側に送信すべき信号は、UART(I/O)408から変調回路304へ出力され、クロック生成回路307の出力を変調して並列同調回路301のアンテナコイルを通して送信される。
【0119】
こうして、非接触式でのデータ交換が行われる。
【0120】
この実施の形態においては、CPU405は初期化時に、入力端子A,Bの状態を確認し、無線コンビカード300が、CPU405において接触式インターフェイス401により起動されているのか、非接触式インターフェイス400により起動されているのかを判別し、その結果をRAM409に保持するようにしている。
【0121】
そして、端末機器との情報交換中に入力端子A,Bの状態を監視し、RAM409に保持しているパターンと比較することにより、状態が変化したか否かを判別することができる。
【0122】
CPU405は、入力端子A,Bの状態を監視し、RAM409に保持しているパターンと同一の場合には正常状態であり問題なしとするが、入力端子A,Bの状態とRAM409に保持しているパターンとが異なる場合には何らかの異常状態が発生していることが予想されるため、端末機器に対してはエラーレスポンスを出力して、CPU405の動作を停止状態とすることができる。
【0123】
なお、スイッチ(SW2,SW3,SW4,SW5)312?315の各々を初期状態において接触端子C1(VCC)、C2(RST)、C3(CLK)、C7(I/O)の各々を選択した状態とする場合には、図5に示すように選択回路(sel)320の出力信号を反転したものを選択信号として用いることにより、同様の動作を行うことができる。
【0124】
したがって、以上のような第1の実施の形態によれば、接触式インターフェイス401を介して駆動されている間、非接触式インターフェイス400の動作を動作禁止状態とする禁止手段を有するので、接触式インターフェイス401を介して情報交換されている間に周囲で電波が放射されても誤動作しない。
【0125】
また、以上のような第1の実施の形態によれば、非接触式インターフェイス400と並列同調回路301のアンテナコイル301aとの導通を遮断する手段により構成されているので、接触式インターフェイス401を介して情報交換されている間に周囲で電波が放射されても受信することなく、誤動作しない。
【0126】
また、以上のような第1の実施の形態によれば、マイクロプロセッサ310の非接触式インターフェイス400は並列同調回路301の出力により動作する電源生成部302、クロック生成回路(クロック生成手段)307、復調回路(復調手段)303、変調回路(変調手段)304、リセット信号生成回路308を有し、非接触式インターフェイス400と並列同調回路301の導通をON/OFFするスイッチ309を有し、接触式インターフェイス401を介してVcc電圧が印可されている場合には、このスイッチ309をOFFとするように構成されているので、接触式インターフェイスを介して情報交換されている間に、周囲で電波が放射されても、非接触式インターフェイス400は全く動作せず、誤動作しない。
<後略>』

イ.そして、ここで参照される図3、4は以下のとおりのものである。


(2)原審拒絶理由
上記原審拒絶理由通知で通知された拒絶理由(以下、「原審拒絶理由」と記す。)は概略以下のとおりのものである。
『 理 由

理由A. この出願の請求項1、3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、この出願の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<中略>
理由B. この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項、及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



本願請求項1に係る発明については、平成22年 3月19日付けの手続補正書において、「前記接触式インターフェイスから電圧が印加されているとき、前記非接触式インターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止する」旨が特定された。
すなわち、上記補正前においては、「前記接触式インターフェイスから電圧が印加されているとき」に、入出力が禁止される対象は、前記非接触式インターフェイスを介しての「信号」とされていたのに対して、上記補正によって、入出力が禁止される対象として、前記非接触式インターフェイスを介しての「駆動電力の供給」が加えられた一方で、「前記非接触式インターフェイスから電圧が印加されているとき」に、入出力が禁止される対象については、補正されることなく、前記接触式インターフェイスを介しての「信号」の入出力のみとなっている。
しかるに、本願明細書及び図面の記載を参酌しても、「非接触式インターフェイスから電圧が印加されているとき」に、「接触式インターフェイス」を介しての「駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止する」旨については、説明の記載は認められるものの、「接触式インターフェイス」を介しての「信号」のみの入出力を禁止する旨についての記載は認められない。にもかかわらず、上記補正においては、「前記接触式インターフェイスから電圧が印加されているとき」のみ、「前記非接触式インターフェイス」からの「駆動電力の供給」も禁止の対象とされ、「前記非接触式インターフェイスから電圧が印加されているとき」については、「前記接触式インターフェイス」からの「駆動電力の供給」は禁止の対象とされないことの根拠が不明であるので、ここでは、上記のいずれの場合についても、他方のインターフェイスからの「駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止する」ものと解して検討する。

上記のように、本願の補正された請求項1?4に係る発明においては、一方の「インターフェイス」から電圧が印加されているとき、他方の「インターフェイス」を介しての「駆動電力の供給」と「信号」の入出力とを「共に禁止する」ように構成されているが、このような構成の前提として、いずれの「インターフェイス」からの電圧の立ち上げによっても、「駆動電力の供給」の開始が可能となるように構成することが必須であることは自明である。すなわち、いずれの一方の「インターフェイス」からの電圧の立ち上げによっても、「駆動電力の供給」
が開始されることができなければ、そもそも、他方の「インターフェイス」からの「駆動電力の供給」を禁止するということ自体が、意味をなさないことは自明である。

しかしながら、本願の明細書及び図面を参酌すると、いずれの「インターフェイス」からの電圧の立ち上げによっても、「駆動電力の供給」の開始が可能であり、かつ、一方の「インターフェイス」から電圧が印加されているとき、他方の「インターフェイス」を介しての「駆動電力の供給」と「信号」の入出力とを「共に禁止する」旨についての、文言上での動作の説明はあるものの、それを実現するための手段である、選択回路(sel)320、スイッチ(SW1)309、スイッチ(SW2)312を、具体的にどのように構成して組み合わせれば、
上記の文言上の動作を実現できるかについては、実体的な説明の記載が認められない。
すなわち、上記の選択回路(sel)320、スイッチ(SW1)309、スイッチ(SW2)312は、上記の文言上の動作を実現するために願望される機能を備えたシンボルとして示されているにすぎず、いずれの「インターフェイス」からの電圧の立ち上げによっても、「駆動電力の供給」の開始が可能であるということと、一方の「インターフェイス」から電圧が印加されているとき、他方の「インターフェイス」を介しての「駆動電力の供給」を「禁止する」ということを、互いに矛盾なく実現するための具体的な構成については、説明の記載が認められない。
従って、具体的にどのように構成すれば、本願の補正された請求項1?4に係る発明を実施することができるのかが不明である。(特許法第36条第4項)


また、本願の補正された請求項1?4において、「前記接触式インターフェイス」あるいは「前記非接触式インターフェイス」から「電圧が印加されている」
と言う場合に、上記の「前記接触式インターフェイス」あるいは「前記非接触式インターフェイス」から、何処に対して「電圧が印加されている」のかが特定されておらず不明であり、また、同様に、「駆動電力」の「供給」と言う場合に、
何処に対しての「供給」を意味しているのかが特定されておらず不明であり、さらには、それぞれの「インターフェイス」を介しての「駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止」する「禁止手段」自身は、何処から、どのように「駆動電力の供給」を受けて、上記「禁止」の未然の状態から、上記「禁止」の状態へと、その制御状態をどのようなメカニズムで変遷させるものであるのかも不明である。
従って、本願請求項1?4に係る発明は、その技術的意義及び技術的範囲が不明瞭である。(特許法第36条第6項第2号)


よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

また、請求項1?4に係る発明は明確でない。
<後略>』

(3)平成22年8月13日付け手続補正書
上記平成22年8月13日付けの手続補正書は特許請求の範囲を以下のとおりに補正するとともに、これに併せて発明の詳細な説明の段落【0009】を補正するものである。

「【請求項1】
アンテナと、
前記アンテナで受信した信号に基づいて駆動電力を生成するとともに、その生成された駆動電力を用いて前記アンテナを介して送受信される信号に変復調処理を施す非接触式インターフェイスと、
外部の電力供給端子と接触して駆動電力の供給を受けるための第1の接触端子と、外部の信号入出力端子と接触して信号の入出力を行なうための第2の接触端子とを備えた接触式インターフェイスとを有し、
前記接触式インターフェイスまたは前記非接触式インターフェイスにより駆動される複合ICカードにおいて、
前記接触式インターフェイスから駆動電力が供給されているとき、前記非接触式インターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止するとともに、前記非接触式インターフェイスから駆動電力が供給されているとき、前記接触式インターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止する禁止手段を具備し、
前記禁止手段は、
前記アンテナと前記非接触式インターフェイスとの間を導通状態及び遮断状態のいずれか一方に選択的に切り替えるもので、初期状態では導通状態に制御される第1の切替手段と、
前記非接触式インターフェイスで生成された駆動電力または前記接触式インターフェイスの第1の接触端子に供給された駆動電力を用いて、前記非接触式インターフェイスに対して入出力される信号または前記接触式インターフェイスの第2の接触端子を介して入出力される信号に対して信号処理を施す信号処理手段と、
前記非接触式インターフェイスで生成された駆動電力及び前記接触式インターフェイスの第1の接触端子に供給された駆動電力のいずれか一方を選択的に前記信号処理手段に導出する第2の切替手段と、
前記非接触式インターフェイスで変復調処理の施される信号及び前記接触式インターフェイスの第2の接触端子を介して入出力される信号のいずれか一方を選択的に前記信号処理手段での信号処理に供させるように切り替えられる第3の切替手段と、
前記非接触式インターフェイスで生成された駆動電力が供給されることにより、前記第2の切替手段を前記非接触式インターフェイスで生成された駆動電力を前記信号処理手段に導出するように切り替えるとともに、前記第3の切替手段を前記非接触式インターフェイスで変復調処理の施される信号を前記信号処理手段での信号処理に供させるように切り替え、前記接触式インターフェイスの第1の接触端子で受けた駆動電力が供給されることにより、前記第2の切替手段を前記接触式インターフェイスの第1の接触端子に供給された駆動電力を前記信号処理手段に導出するように切り替えるとともに、前記第3の切替手段を前記接触式インターフェイスの第2の接触端子に対して入出力される信号を前記信号処理手段での信号処理に供させるように切り替える選択手段と、
前記接触式インターフェイスの第1の接触端子で受けた駆動電力が前記信号処理手段に供給されている状態で、前記第1の切替手段を遮断状態に制御する制御手段とを備えることを特徴とする複合ICカード。
【請求項2】
アンテナを介して受信した信号に基づいて駆動電力を生成するとともに、その生成された駆動電力を用いて無線により送受信される信号に変復調処理を施す非接触式インターフェイスと、
外部の電力供給端子と接触して駆動電力の供給を受けるための第1の接触端子と、外部の信号入出力端子と接触して信号の入出力を行なうための第2の接触端子とを備えた接触式インターフェイスとを有し、
前記接触式インターフェイスまたは前記非接触式インターフェイスにより駆動される複合ICカード用ICモジュールにおいて、
前記接触式インターフェイスから駆動電力が供給されているとき、前記非接触式インターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止するとともに、前記非接触式インターフェイスから駆動電力が供給されているとき、前記接触式インターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止する禁止手段を具備し、
前記禁止手段は、
前記アンテナと前記非接触式インターフェイスとの間を導通状態及び遮断状態のいずれか一方に選択的に切り替えるもので、初期状態では導通状態に制御される第1の切替手段と、
前記非接触式インターフェイスで生成された駆動電力または前記接触式インターフェイスの第1の接触端子に供給された駆動電力を用いて、前記非接触式インターフェイスに対して入出力される信号または前記接触式インターフェイスの第2の接触端子を介して入出力される信号に対して信号処理を施す信号処理手段と、
前記非接触式インターフェイスで生成された駆動電力及び前記接触式インターフェイスの第1の接触端子に供給された駆動電力のいずれか一方を選択的に前記信号処理手段に導出する第2の切替手段と、
前記非接触式インターフェイスで変復調処理の施される信号及び前記接触式インターフェイスの第2の接触端子を介して入出力される信号のいずれか一方を選択的に前記信号処理手段での信号処理に供させるように切り替えられる第3の切替手段と、
前記非接触式インターフェイスで生成された駆動電力が供給されることにより、前記第2の切替手段を前記非接触式インターフェイスで生成された駆動電力を前記信号処理手段に導出するように切り替えるとともに、前記第3の切替手段を前記非接触式インターフェイスで変復調処理の施される信号を前記信号処理手段での信号処理に供させるように切り替え、前記接触式インターフェイスの第1の接触端子で受けた駆動電力が供給されることにより、前記第2の切替手段を前記接触式インターフェイスの第1の接触端子に供給された駆動電力を前記信号処理手段に導出するように切り替えるとともに、前記第3の切替手段を前記接触式インターフェイスの第2の接触端子に対して入出力される信号を前記信号処理手段での信号処理に供させるように切り替える選択手段と、
前記接触式インターフェイスの第1の接触端子で受けた駆動電力が前記信号処理手段に供給されている状態で、前記第1の切替手段を遮断状態に制御する制御手段とを備えることを特徴とする複合ICカード用ICモジュール。」

(4)意見書
上記平成22年8月13日付けの意見書(以下、単に「意見書」と記す。)における意見の内容は概略以下のとおりのものである。
『【意見の内容】
(1) 本願は、その請求項1及び3に係る発明が、引用文献1(特開平9-16737号公報)に記載された発明であると認定されるとともに、その請求項1乃至4に係る発明が、引用文献1及び引用文献2(特開平9-305736号公報)に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであると認定され、さらに、その請求項1乃至4に係る発明が拒絶理由通知書でご指摘の点につき不明確であるとの認定を受けました。以下、出願人は、別途手続補正書を提出して本願発明の要旨を一層明確にするとともに、意見を申し述べます。
(2) すなわち、本願発明の要旨は、別途提出の手続補正書によってより一層明らかとなるように補正された請求項1及び2に記載されている通りのものであります。
今回補正した請求項1は、前回(平成22年3月19日付け提出の手続補正書により)補正した請求項1に対し、
本願明細書の段落番号[0058]の記載に基づいて、非接触式インターフェイスが、アンテナで受信した信号に基づいて駆動電力を生成するとともに、その生成された駆動電力を用いてアンテナを介して送受信される信号に変復調処理を施すものである点と、
本願明細書の段落番号[0046]の記載に基づいて、接触式インターフェイスが、外部の電力供給端子と接触して駆動電力の供給を受けるための第1の接触端子と、外部の信号入出力端子と接触して信号の入出力を行なうための第2の接触端子とを備えている点とが明確となるように訂正を施すとともに、
禁止手段が、
本願明細書の段落番号[0059]及び[0060]の記載に基づいて、アンテナと非接触式インターフェイスとの間を導通状態及び遮断状態のいずれか一方に選択的に切り替えるもので、初期状態では導通状態に制御される第1の切替手段を備える点と、
本願明細書の段落番号[0048],[0049]及び[0057]の記載に基づいて、非接触式インターフェイスで生成された駆動電力または接触式インターフェイスの第1の接触端子に供給された駆動電力を用いて、非接触式インターフェイスに対して入出力される信号または接触式インターフェイスの第2の接触端子を介して入出力される信号に対して信号処理を施す信号処理手段を備える点と、
本願明細書の段落番号[0049],[0062]及び[0063]の記載に基づいて、非接触式インターフェイスで生成された駆動電力及び接触式インターフェイスの第1の接触端子に供給された駆動電力のいずれか一方を選択的に信号処理手段に導出する第2の切替手段を備える点と、
本願明細書の段落番号[0049],[0061],[0062],[0072]及び[0073]の記載に基づいて、非接触式インターフェイスで変復調処理の施される信号及び接触式インターフェイスの第2の接触端子を介して入出力される信号のいずれか一方を選択的に信号処理手段での信号処理に供させるように切り替えられる第3の切替手段を備える点と、
本願明細書の段落番号[0079],[0080],[0095]乃至[0097]の記載に基づいて、非接触式インターフェイスで生成された駆動電力が供給されることにより、第2の切替手段を非接触式インターフェイスで生成された駆動電力を信号処理手段に導出するように切り替えるとともに、第3の切替手段を非接触式インターフェイスで変復調処理の施される信号を信号処理手段での信号処理に供させるように切り替え、接触式インターフェイスの第1の接触端子で受けた駆動電力が供給されることにより、第2の切替手段を接触式インターフェイスの第1の接触端子に供給された駆動電力を信号処理手段に導出するように切り替えるとともに、第3の切替手段を接触式インターフェイスの第2の接触端子に対して入出力される信号を信号処理手段での信号処理に供させるように切り替える選択手段を備える点と、
本願明細書の段落番号[0060]の記載に基づいて、接触式インターフェイスの第1の接触端子で受けた駆動電力が信号処理手段に供給されている状態で、第1の切替手段を遮断状態に制御する制御手段を備える点とが明確となるように訂正を施したものであります。
また、今回補正した請求項2は、前回補正した請求項3に対し、今回補正した請求項1と同様な主旨での訂正を施したものであります。
今回補正した請求項1及び2は、いずれも、前回補正した請求項1及び3において記載した、非接触式インターフェイス、接触式インターフェイス及び禁止手段を、それぞれ原出願の明細書及び図面に記載された範囲内で明確となるように訂正したものであって、特許請求の範囲の減縮に相当し、最後の拒絶理由に対しての補正の制限を十分に満たすものであります。そして、今回補正した請求項1及び2の記載によれば、拒絶理由通知書で指摘された不明確な点は全て解消されるものと思慮いたします。
また、今回補正した請求項1及び2に係る本願発明によれば、接触式及び非接触式のいずれのインターフェイスから駆動された場合でも誤動作を防止することができ、複合ICカードとしての信頼性を十分に確保することが可能となります。特に、接触式インターフェイスから電圧が印加されているとき、非接触式インターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止するようにしているので、周囲で電波が放射されても非接触式インターフェイスから影響が及ぼされることを確実に防止して、誤動作を防止することができようになります。
(3) これに対し、上記引用文献1には、
<中略>
(4) 以上に述べたように、今回補正した請求項1及び2に係る本願発明は、引用文献1及び2にみられない特有な構成をして格別な作用効果を奏するものでありますから、出願人は、審査官殿の再度の御審査により本願は特許査定されるべきものと信ずる次第であります。』

(5)拒絶査定
原審拒絶査定は「この出願については、平成22年 6月10日付け拒絶理由通知書に記載した理由B. によって、拒絶をすべきものです。」と言うものであり、その備考には以下のとおりの説明がある。
『本願請求項1に係る発明については、平成22年 8月13日付けの手続補正書において、「複合ICカード」が有する「禁止手段」、すなわち「前記接触式インターフェイスから駆動電力が供給されているとき、前記非接触式インターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止するとともに、前記非接触式インターフェイスから駆動電力が供給されているとき、前記接触式インターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止する禁止手段」は、「前記アンテナと前記非接触式インターフェイスとの間を導通状態及び遮断状態のいずれか一方に選択的に切り替えるもので、初期状態では導通状態に制御される第1の切替手段」と、「前記非接触式インターフェイスで生成された駆動電力または前記接触式インターフェイスの第1の接触端子に供給された駆動電力を用いて、前記非接触式インターフェイスに対して入出力される信号または前記接触式インターフェイスの第2の接触端子を介して入出力される信号に対して信号処理を施す信号処理手段」と、「前記非接触式インターフェイスで生成された駆動電力及び前記接触式インターフェイスの第1の接触端子に供給された駆動電力のいずれか一方を選択的に前記信号処理手段に導出する第2の切替手段」と、「前記非接触式インターフェイスで変復調処理の施される信号及び前記接触式インターフェイスの第2の接触端子を介して入出力される信号のいずれか一方を選択的に前記信号処理手段での信号処理に供させるように切り替えられる第3の切替手段」と、「前記非接触式インターフェイスで生成された駆動電力が供給されることにより、前記第2の切替手段を前記非接触式インターフェイスで生成された駆動電力を前記信号処理手段に導出するように切り替えるとともに、前記第3の切替手段を前記非接触式インターフェイスで変復調処理の施される信号を前記信号処理手段での信号処理に供させるように切り替え、前記接触式インターフェイスの第1の接触端子で受けた駆動電力が供給されることにより、前記第2の切替手段を前記接触式インターフェイスの第1の接触端子に供給された駆動電力を前記信号処理手段に導出するように切り替えるとともに、前記第3の切替手段を前記接触式インターフェイスの第2の接触端子に対して入出力される信号を前記信号処理手段での信号処理に供させるように切り替える選択手段」と、「前記接触式インターフェイスの第1の接触端子で受けた駆動電力が前記信号処理手段に供給されている状態で、前記第1の切替手段を遮断状態に制御する制御手段」とを備えてなるものである旨が特定された。

ここで、上記の「前記接触式インターフェイスから駆動電力が供給されているとき、前記非接触式インターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止するとともに、前記非接触式インターフェイスから駆動電力が供給されているとき、前記接触式インターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止する禁止手段」なる記載によれば、一方の「インターフェイス」から駆動電力が供給されているとき、他方の「インターフェイス」を介しての「駆動電力の供給」と「信号」の入出力とを「共に禁止する」ように構成する旨が特定されていることになるが、当該特定事項は、実質的には上記補正前においても特定されていた事項であり、上記拒絶理由通知書にて指摘したように、当該特定事項の前提として、いずれの「インターフェイス」からの駆動電力の電圧の立ち上げによっても、「駆動電力の供給」の開始が可能となるように構成することが必須であることは自明である。(いずれの一方の「インターフェイス」からの駆動電力の電圧の立ち上げによっても、「駆動電力の供給」が開始されることができなければ、そもそも、他方の「インターフェイス」からの「駆動電力の供給」を禁止するということ自体が、意味をなさないことは自明である。)

しかしながら、本願の明細書及び図面を参酌すると、いずれの「インターフェイス」からの駆動電力の電圧の立ち上げによっても、「駆動電力の供給」の開始が可能であり、かつ、一方の「インターフェイス」から駆動電力が供給されているとき、他方の「インターフェイス」を介しての「駆動電力の供給」を「禁止する」旨についての、文言上での動作の説明はあるものの、それを実現するための手段であって、上記「禁止手段」を構成している上記の「第1の切替手段」、「第2の切替手段」、及び「選択手段」を、具体的にどのように構成して組み合わせれば、上記の文言上の動作を実現できるかについては、実体的な説明の記載が認められない。
すなわち、本願の明細書及び図面の記載によれば、上記「第1の切替手段」は「スイッチ(SW1)309」に、上記「第2の切替手段」は「スイッチ(SW2)312」に、「選択手段」は「選択回路(sel)320」に、それぞれ対応するものと認められるが、これらの「スイッチ(SW1)309」、「スイッチ(SW2)312」、及び「選択回路(sel)320」を、具体的にどのように構成して組み合わせれば、上記の文言上の動作を実現できるかについては、実体的な説明の記載が認められない。言い換えれば、上記の「スイッチ(SW1)309」、「スイッチ(SW2)312」、及び「選択回路(sel)320」は、上記の文言上の動作を実現するために願望される機能を備えたシンボルとして示されているにすぎず、いずれの「インターフェイス」からの駆動電力の電圧の立ち上げによっても、「駆動電力の供給」の開始が可能であるということと、一方の「インターフェイス」から駆動電力が供給されているとき、他方の「インターフェイス」を介しての「駆動電力の供給」を「禁止する」ということ、及びその場合に、「前記接触式インターフェイスの第1の接触端子で受けた駆動電力が前記信号処理手段に供給されている状態」で、「前記第1の切替手段を遮断状態に制御する」ということとを、互いに矛盾なく実現するための具体的な構成については、説明の記載が認められない。

たとえば、上記において、「前記アンテナと前記非接触式インターフェイスとの間を導通状態及び遮断状態のいずれか一方に選択的に切り替えるもので、初期状態では導通状態に制御される第1の切替手段」、及び、「前記接触式インターフェイスの第1の接触端子で受けた駆動電力が前記信号処理手段に供給されている状態で、前記第1の切替手段を遮断状態に制御する制御手段」と言う場合の、「初期状態」では「導通状態」に「制御」され、かつ、「前記接触式インターフェイスの第1の接触端子で受けた駆動電力が前記信号処理手段に供給されている状態」では「遮断状態」に制御される上記「第1の切替手段」とは、本願明細書及び図面上においては、アンテナコイル301aと非接触式インターフェイス400(電源生成部302、クロック発生回路307、復調回路303)との間に介在する上記「スイッチ(SW1)309」に対応するものであると認められるが、段落【0095】には、確かに文言上では、「非接触式インターフェイス400により起動される場合、スイッチ(SW1)309は通常ON(接続)状態となっているので、並列同調回路301の受信アンテナコイル301aにより電波を受信し(ST201)、上述した電源生成部302、クロック生成回路(クロック生成手段)307、復調回路(復調手段)303、変調回路(変調手段)304、リセット信号生成回路が動作する(ST202)。」との記載がなされている。
しかしながら、上記の「非接触式インターフェイス400により起動される場合」とは、当然ながら、いずれのインターフェイスからも電源が供給されていない「初期状態」からの「起動」の場合ということになるが、このように電源が与えられていない「初期状態」で、「導通状態」(ON状態あるいは接続状態)に「制御」され、「接触端子で受けた駆動電力が前記信号処理手段に供給されている状態」では、「遮断状態」に制御される「第1の切替手段」(スイッチSW1)とは、「ICカード」上において具体的に如何なる実体的構成によって、どのように矛盾なく実現できるものであって、電源が与えられていない「初期状態」における上記「制御」とは、如何なるメカニズムによる、どのような内容の「制御」であるのかが不明である。


以上のように、本願明細書及び図面においては、上記の「第1の切替手段」としての「スイッチ(SW1)309」、「第2の切替手段」としての「スイッチ(SW2)312」、及び「選択手段」としての「選択回路(Sel)302」は、いずれも上述の文言上の動作を実現するために願望される機能を備えたシンボルとして示されているにすぎず、上記の如くの「スイッチ(SW1)309」、「スイッチ(SW2)312」、及び「選択回路(Sel)302」を、具体的にどのように構成して組み合わせれば、上述の文言上の動作が実現されて、本願請求項1に係る発明が実施できるのかは、依然として不明である。
従って、この出願の発明の詳細な説明は、依然として、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。


また、本願の補正された請求項2に係る発明についても、上記と同様である。


よって、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないので、拒絶すべきものと認められる。』


(6)審判請求書
本件審判請求の趣旨は「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」と言うものであり、その理由は概略以下のとおりのものである。
『3. 本願発明が特許されるべき理由
(1) しかしながら、本願発明は、上述したような理由によって拒絶されるべきものではなく、当然に特許を受けることができるものであります。
(2) すなわち、本願発明の主たる要旨は、平成22年8月13日付け提出の手続補正書によってより一層明らかとなるよう補正しましたように、
「 [請求項1]
アンテナと、
<中略>
前記接触式インターフェイスの第1の接触端子で受けた駆動電力が前記信号処理手段に供給されている状態で、前記第1の切替手段を遮断状態に制御する制御手段とを備えることを特徴とする複合ICカード用ICモジュール。」
にあります。
そして、上記した請求項1及び2に係る本願発明によれば、非接触式インターフェイスで生成された駆動電力が供給されることにより、第2の切替手段を非接触式インターフェイスで生成された駆動電力を信号処理手段に導出するように切り替えるとともに、第3の切替手段を非接触式インターフェイスで変復調処理の施される信号を信号処理手段での信号処理に供させるように切り替え、接触式インターフェイスの第1の接触端子で受けた駆動電力が供給されることにより、第2の切替手段を接触式インターフェイスの第1の接触端子に供給された駆動電力を信号処理手段に導出するように切り替えるとともに、第3の切替手段を接触式インターフェイスの第2の接触端子に対して入出力される信号を信号処理手段での信号処理に供させるように切り替えるようにしているので、接触式及び非接触式のいずれのインターフェイスから駆動された場合でも誤動作を防止することができ、複合ICカードとしての信頼性を十分に確保することが可能となります。特に、接触式インターフェイスからの駆動電力が信号処理手段に供給されている状態では、第1の切替手段によりアンテナと非接触式インターフェイスとの間を遮断状態とするようにしているので、周囲で電波が放射されても非接触式インターフェイスから影響が及ぼされることを確実に防止して、誤動作を防止することができようになります。
(3) これに対し、審査官殿は、上記の拒絶査定において、「ここで、上記の『前記接触式インターフェイスから駆動電力が供給されているとき、前記非接触式インターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止するとともに、前記非接触式インターフェイスから駆動電力が供給されているとき、前記接触式インターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止する禁止手段』なる記載によれば、一方の『インターフェイス』から駆動電力が供給されているとき、他方の『インターフェイス』を介しての『駆動電力の供給』と『信号』の入出力とを『共に禁止する』ように構成する旨が特定されていることになるが、当該特定事項は、実質的には上記補正前においても特定されていた事項であり、上記拒絶理由通知書(平成22年6月10日付け)にて指摘したように、当該特定事項の前提として、いずれの『インターフェイス』からの駆動電力の電圧の立ち上げによっても、『駆動電力の供給』の開始が可能となるように構成することが必須であることは自明である。」と述べた後、
「しかしながら、本願の明細書及び図面を参酌すると、いずれの『インターフェイス』からの駆動電力の電圧の立ち上げによっても、『駆動電力の供給』の開始が可能であり、かつ、一方の『インターフェイス』から駆動電力が供給されているとき、他方の『インターフェイス』を介しての『駆動電力の供給』を『禁止する』旨についての、文言上での動作の説明はあるものの、それを実現するための手段であって、上記『禁止手段』を構成している上記の『第1の切替手段』、『第2の切替手段』、及び『選択手段』を、具体的にどのように構成して組み合わせれば、上記の文言上の動作を実現できるかについては、実体的な説明の記載が認められない。」と述べ、
「すなわち、本願の明細書及び図面の記載によれば、上記『第1の切替手段』は『スイッチ(SW1)309』に、上記『第2の切替手段』は『スイッチ(SW2)312』に、『選択手段』は『選択回路(sel)320』に、それぞれ対応するものと認められるが、これらの『スイッチ(SW1)309』、『スイッチ(SW2)312』、及び『選択回路(sel)320』を、具体的にどのように構成して組み合わせれば、上記の文言上の動作を実現できるかについては、実体的な説明の記載が認められない。」と主張しています。
(4) しかしながら、本願の明細書及び図面におきまして、上記した請求項1及び2に記載された「禁止手段」を構成している「第1の切替手段」、「信号処理手段」、「第2の切替手段」、「第3の切替手段」、「選択手段」及び「制御手段」について、「いずれのインターフェイスからも駆動電力の供給開始が可能であり、一方のインターフェイスから駆動電力が供給されているとき、他方のインターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止する」という動作を実現するための実体的な説明が、既に明確かつ十分に記載されていることは明白であります。
すなわち、第1の切替手段については、平成22年8月13日付け提出の意見書においても説明されていますように、本願明細書の段落番号[0059]及び[0060]の記載に基づいて述べられています。また、信号処理手段については、本願明細書の段落番号[0048]、[0049]及び[0057]の記載に基づいて述べられています。さらに、第2の切替手段については、本願明細書の段落番号[0049]、[0062]及び[0063]の記載に基づいて述べられています。また、第3の切替手段については、本願明細書の段落番号[0049]、[0061]、[0062]、[0072]及び[0073]の記載に基づいて述べられています。さらに、選択手段については、本願明細書の段落番号[0079]及び[0080]、[0095]乃至[0097]の記載に基づいて述べられています。また、制御手段については、本願明細書の段落番号[0060]の記載に基づいて述べられています。
そして、上記した「いずれのインターフェイスからも駆動電力の供給開始が可能であり、一方のインターフェイスから駆動電力が供給されているとき、他方のインターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止する」という「禁止手段」の動作を実現するために、「第1の切替手段」、「信号処理手段」、「第2の切替手段」、「第3の切替手段」、「選択手段」及び「制御手段」をどのように構成して組み合わせるかについては、本願発明の技術分野に係わる通常の知識を有する者(当業者)であれば、上記した本願明細書の対応箇所における段落番号の記載から十分に理解することが可能であります。すなわち、「いずれのインターフェイスからも駆動電力の供給開始が可能であり、一方のインターフェイスから駆動電力が供給されているとき、他方のインターフェイスを介しての駆動電力の供給と信号の入出力とを共に禁止する」動作について、それを実現するための手段であって、上記「禁止手段」を構成している「第1の切替手段」、「信号処理手段」、「第2の切替手段」、「第3の切替手段」、「選択手段」及び「制御手段」を、具体的にどのように構成して組み合わせれば上記の動作を実現できるかについての実体的な説明は、既に本願明細書に明確かつ十分に記載されているものであります。
4.むすび
以上により、上記した請求項1及び2に係る本願発明に対しては、拒絶の理由が全て解消されたものと思慮し、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないので特許を受けることができないものではないので、出願人は、本願発明が当然に特許を受けることができるものと信ずる次第であります。』


3.当審判断

(1)本願特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明(以下「本願発明」と記す。)は、上記2.(3)に記載のとおりのものであり、該本願発明をどのように実施するかを示す発明の実施の形態のうち特許出願人が最良と思うもの(以下「実施例」と記す。)が【発明を実施するための最良の形態】として本願の発明の詳細な説明の段落【0011】?【0141】及び【図1】?【図6】に開示されている。(なお、実施例の詳細な構成および動作の説明は、主に上記2.(1)に示した段落【0045】?【0126】及び【図3】、【図4】に記載されている。)

(2)原審拒絶査定の理由は、要は、本願の発明の詳細な説明には、本願発明の発明特定事項である「選択手段」、「信号処理手段」と「制御手段」、「第1の切替手段」、「第2の選択手段」にそれぞれ対応するものであるところの、該実施例における「選択回路(sel)320」、「CPU405」、「スイッチ(SW1)309」、「スイッチ(SW2)312」等を具体的にどのように構成して組み合わせれば、そこに説明される動作を実現できるかについて、実体的な説明の記載が認められないと言うものである。

(3)そこで、該「選択回路(sel)320」、「CPU405」、「スイッチ(SW1)309」、「スイッチ(SW2)312」等を、本願の発明の詳細な説明及び図面の記載から、当業者が作ることができるか否かについて検討するに、段落【0045】?【0126】の記載、【図3】等から、各素子間には下記のような接続関係があることが把握できる。

<接続関係>
『「CPU405」の電源端子に「スイッチ(SW2)312」からの駆動電力が給電され、
「CPU405」の入力端子「B」に「VCC端子C1」が接続され、
「CPU405」の入力端子「A」に「電源生成部302」の出力が接続され、
「CPU405」の「選択信号」の出力端子が「スイッチ(SW1)309」の制御端子及び「選択回路(sel)320」の第1の入力端子に接続され、
「選択回路(sel)320」の第2の入力端子に「VCC端子C1」が接続され、
「選択回路(sel)320」の第3の入力端子に「電源生成部302」の出力が接続され、
「選択回路(sel)320」の出力端子が「スイッチ(SW2)312」及び「スイッチ(SW3,SW4,SW5)313?315」の制御端子に接続され、
「スイッチ(SW2)312」の第1の入力端子に「VCC端子C1」が接続され、
「スイッチ(SW2)312」の第2の入力端子に「電源生成部302」の出力が接続されている。』

(4)次に、実施例の動作について検討するに、「選択回路(sel)320」、「CPU405」、「スイッチ(SW1)309」、「スイッチ(SW2)312」等は、次の動作1?3を実現するものでなければならないことが把握できる。

<動作1>
「CPU405」は、段落【0060】、【0065】等に記載されるように、初期状態では自らが出力する「選択信号」によって、「スイッチ(SW1)309」を「ON」状態にし、同「選択信号」によって「選択回路(sel)320」が「スイッチ(SW2)312」を「接触式インターフェイス」側を選択するように制御する。

<動作2>
「選択回路(sel)320」は、段落【0079】?【0080】や段落【0095】?【0096】等に記載されるように、これに印加される「VCC端子C1」からの電圧と「電源生成部302」からの電圧とに基づいて、「スイッチ(SW2)312」及び「スイッチ(SW3,SW4,SW5)313?315」への「選択信号」を出力する。

<動作3>
「選択回路(sel)320」は、段落【0090】?【0093】、【0102】?【0103】【図4】の「ST106」、「ST108」に記載されるように、「CPU405」からの「選択信号」によって、「スイッチ(SW2)312」及び「スイッチ(SW3,SW4,SW5)313?315」を「維持」「保持」するよう制御する。
(なお、当該「維持」「保持」が何のための如何なる具体的動作を意味するのかは、本願発明の詳細な説明及び図面の記載から正確に理解しうるものではなく(原審で引用された特開平9-16737号公報等を参酌すれば、該「維持」「保持」とは、動作中に電源の変動等によって「スイッチ(SW2)312」及び「スイッチ(SW3,SW4,SW5)313?315」の切替がなされてしまうと言う誤動作を防止するために、動作中には電源の変動に関わりなく「スイッチ(SW2)312」及び「スイッチ(SW3,SW4,SW5)313?315」の状態を固定するような制御を行うことを意味すると想定することができるものの、該「維持」「保持」をこのようなものと仮定すると、段落【0126】等に記載される「スイッチ(SW1)309」を設けることの技術的意義が不明確となってしまう(「スイッチ(SW1)309」の有る無しが「スイッチ(SW2)312」及び「スイッチ(SW3,SW4,SW5)313?315」の誤動作に影響するものではなくなってしまう。))、本願発明の詳細な説明及び図面の記載は、この点においても明確かつ十分なものではないと言える。)

(5)しかしながら、これらの「選択回路(sel)320」、「CPU405」、「スイッチ(SW1)309」、「スイッチ(SW2)312」自体の内部の回路図等の具体的な構成に関しての直接的な記載は見当たらない。
そこで、かかる直接的な記載はなくとも、上記接続関係と上記動作1、2、3等から、該動作1、2及び3を実現し得る「選択回路(sel)320」、「CPU405」、「スイッチ(SW1)309」、「スイッチ(SW2)312」等を、当業者が作ることができるか否かを検討する。

ア.まず「スイッチ(SW1)309」や「スイッチ(SW2)312」としては、半導体スイッチ等の周知のスイッチング素子を採用し、これらにCPU等からの2値の制御信号を入力してその制御を行う構成が想定できるものの、上記動作1は、電源が供給されていない「CPU405」が「スイッチ(SW1)309」や「スイッチ(SW2)312」を制御することを意味し、技術常識からみて明らかに不合理であり、このような動作をする「CPU405」は当業者と言えども到底作ることができるものではない。

イ.次に、仮に該「CPU405」への電源供給の問題が解決し得ると仮定して、さらに「選択回路(sel)320」について検討するに、本願の発明の詳細な説明や図面には、上記した回路図等の具体的な構成の開示が無いだけでなく、入出力の関係を示す真理値表等の開示や設計手法などの開示すら見当たらない。
このため、本願発明の詳細な説明及び図面の記載からは、「選択回路(sel)320」内において「VCC端子C1」、「電源生成部302」及び「CPU405」からの入力を「スイッチ(SW2)312」及び「スイッチ(SW3,SW4,SW5)313?315」への「選択信号」に如何に反映させれれば、上記動作1、2及び3を実現し得るのかを理解することもできない。

ウ.さらに、類似する他の発明において採用される構成等をも参酌し、例えば、上記動作2の動作を実現する回路として、原審で引用された特開平3-209592号公報や特開平9-16737号公報等に示される様な、二つの駆動電圧をアナログコンパレータで比較しその出力で「スイッチ(SW2)312」及び「スイッチ(SW3,SW4,SW5)313?315」を制御する構成を想定することができるものの、このような構成では、上記動作1の「初期状態」への制御も動作3の「維持」「保持」の動作も実現することはできないことは明らかである。

エ.また、当業者であれば、動作3の「維持」「保持」の動作をさせるために、フリップフロップの応用も想起し得、現に請求人は上記始祖出願の拒絶査定不服審判の審理において、フリップフロップを変形した回路を提示しているが、これも所望の動作をするものではない。

オ.他にも、「スイッチ(SW1)309」、「スイッチ(SW2)312」及び「スイッチ(SW3,SW4,SW5)313?315」等を特殊な構造のものとしたり、選択信号を特殊な信号としたり等々、様々な実現策を想定し得るものの、何れも、本願の出願時に常用されているような、技術常識的な構成ではなく、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤等無しにこれを実現し得るものではない。

カ.以上のように、当業者の技術知識をもってしても、上記接続関係で上記動作1、2及び3を実現し得るものを作ることは不可能、あるいは、仮に可能であるとしても、そのためには当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤等を要し、当業者と言えども容易になし得るものではない。

(6)なお、実施例の記載に何らかの錯誤(例えば、
ア.「スイッチ(SW1)309」や「スイッチ(SW2)312」は自ら初期状態を決めるスイッチ(所謂常閉・常開スイッチ)であるところを、初期状態で「CPU405」がこれを制御すると説明してしまった。
イ.「スイッチ(SW2)312」及び「スイッチ(SW3,SW4,SW5)313?315」を「維持」「保持」するものと、「スイッチ(SW1)309」を制御するものは別個の解決策として案出された別個の実施例であったにも関わらず、これらを混在させた実施例として説明してしまった。
ウ.「CPU」から「スイッチ(SW1)309」への「選択信号」と、「選択回路(sel)320」への「選択信号」とは別個の信号であるにも関わらず共通のものとして記載してしまった。
エ.「選択回路(sel)320」へは「VCC端子C1」からの電圧と「電源生成部302」からの電圧が供給されないにも関わらず、従来例と混同してこれらが供給されるものとして記載してしまった。
等々。)があった可能性も否定できないが、原審での意見書においても、審判請求書等においても、かかる錯誤があった旨の釈明は全くなされていないことからみて、このような斟酌をすることも妥当ではない。

(7)以上のように、本願の発明の詳細な説明及び図面には、本願発明を構成する各手段の接続関係や動作等の説明はあるものの、該手段の具体的構成の記載はない上、該接続関係で該動作を実現し得るものを作ることは、当業者と言えども不可能、あるいは、容易になし得ないものである。

(8)したがって、「この出願の発明の詳細な説明は、依然として、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」「本願の補正された請求項2に係る発明についても、上記と同様である。」とした、原審の判断は妥当なものである。


4.以上のとおり、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1、2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであるから、本願の明細書の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、本願は特許を受けることができない。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-06 
結審通知日 2012-02-07 
審決日 2012-02-21 
出願番号 特願2008-332607(P2008-332607)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 充裕  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 清木 泰
石井 茂和
発明の名称 複合ICカード及び複合ICカード用ICモジュール  
代理人 白根 俊郎  
代理人 村松 貞男  
代理人 中村 誠  
代理人 峰 隆司  
代理人 岡田 貴志  
代理人 福原 淑弘  
代理人 砂川 克  
代理人 河野 哲  
代理人 野河 信久  
代理人 佐藤 立志  
代理人 河野 直樹  
代理人 堀内 美保子  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 竹内 将訓  
代理人 幸長 保次郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ