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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1254995
審判番号 不服2010-5950  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-17 
確定日 2012-04-04 
事件の表示 特願2000-548844「マルチステーション環境におけるスマートカードの個人専用化」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月18日国際公開、WO99/59109、平成14年 5月21日国内公表、特表2002-514826〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯、先行技術等

1.手続の経緯
本件の出願は、
1999年5月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年5月11日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、
平成12年11月13日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面、及び、特許法第184条の4第1項の規定による国際出願日における明細書、請求の範囲、図面の翻訳文(図面の中の説明に限る。)(以下、単に「翻訳文」と記す。)が提出され、
平成18年5月10日付けで審査請求がなされ、
平成20年7月22日付けで拒絶理由通知(同年7月29日発送)(以下、「原審拒絶理由通知」と記す。)がなされ、
平成21年1月29日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
平成21年11月10日付けで拒絶査定(同年11月17日発送)(以下、「原審拒絶査定」と記す。)がなされたものである。

そして、該査定を不服として、
平成22年3月17日付けで本件審判請求がなされると共に、同日付けで手続補正書が提出された。

なお、平成22年11月17日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、
平成23年2月25日付けで、当該報告に対する意見を求める旨の審尋(同年3月1日発送)がなされたが、これに対する回答はなかった。


2.特許請求の範囲の記載

(1)原審拒絶査定時の特許請求の範囲
上記平成21年1月29日付け手続補正書によって本願の特許請求の範囲は下記のものに補正された。

「 【請求項1】 複数の個人専用化ステーションを有するシステムにおいて携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御する方法において、
カードオブジェクトをカード発行者管理システムから受信するステップであって、該カードオブジェクトが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報から成るステップと、
前記個人専用化ステーションの一つからプログラミング要求を受信するステップと、
前記カードオブジェクトを使用して前記個人専用化ステーションが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするように前記個人専用化ステーションを制御するステップとを含む方法。
【請求項2】 データ源からデータを得るステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】 前記データ源が前記カード発行者管理システムである請求項2に記載の方法。
【請求項4】 セキュリティ源からセキュリティサービスを得るステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】 サポートサービスを提供するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】 プログラミング要求を受信するステップが、
カードオブジェクト識別子を受信するステップと、
前記カードオブジェクト識別子を前記カードオブジェクトに関連付けるステップとを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】 セキュリティ源からセキュリティサービスを得るステップをさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項8】 サポートサービスを提供するステップをさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】 プログラミング要求を受信するステップが、
カードオブジェクト識別子を受信するステップと、
前記カードオブジェクトを前記カードオブジェクト識別子に関連させるステップとを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】 複数の個人専用化ステーションのすべてにわたり、携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御するためのコンピュータ化システムであって、
さらに多くの資源の一つからサービスを得て、前記個人専用化ステーションの一つにカード情報を転送し、そして前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御するための個人専用化サーバインタフェースと、
前記カード情報を前記個人専用化サーバインタフェースから受信し、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアの一つをプログラムするための個人専用化ステーションインタフェースとを含むコンピュータ化システム。
【請求項11】 前記個人専用化サーバインタフェースにより得られるサービスがデータサービスである請求項10に記載のコンピュータ化システム。
【請求項12】 前記個人専用化サーバインタフェースにより得られるサービスがセキュリティサービスである請求項10に記載のコンピュータ化システム。
【請求項13】 前記個人専用化サーバインタフェースにより得られるサービスがサポートサービスである請求項10に記載のコンピュータ化システム。
【請求項14】 カードオブジェクト識別子を受信し、該カードオブジェクト識別子を前記個人専用化ステーションの一つに送るためのコントローラをさらに含む請求項10に記載のコンピュータ化システム。
【請求項15】 複数の個人専用化ステーションのすべてにわたり、携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御するためのコンピュータ化システムにおいて、
カード発行者管理システムから一つ以上のカードオブジェクトを受信するための手段であって、該カードオブジェクトが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報を含む手段と、
前記個人専用化ステーションからプログラミング要求を受信する手段と、
前記カードオブジェクトを使用して前記個人専用化ステーションが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするように前記個人専用化ステーションを制御する手段とを含むコンピュータ化システム。
【請求項16】 セキュリティ源からセキュリティサービスを得るための手段をさらに含む請求項15に記載のコンピュータ化システム。
【請求項17】 データ源からデータを得るための手段を更に含む請求項15に記載のコンピュータ化システム。
【請求項18】 前記データ源が前記カード発行者管理システムである請求項17に記載のコンピュータ化システム。
【請求項19】 サポートサービスを提供するための手段をさらに含む請求項15に記載のコンピュータ化システム。
【請求項20】 前記プログラミング要求が固有のカードオブジェクト識別子を含む請求項15に記載のコンピュータ化システム。
【請求項21】 携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御する方法をコンピュータに実行させるために記憶されたコンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ読み取り可能媒体において、前記方法が、
カード発行者管理システムから一つ以上のカードオブジェクトを受信するステップであって、該カードオブジェクトが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報から成るステップと、
個人専用化ステーションの一つからプログラミング要求を受信するステップと、
前記カードオブジェクトを使用して前記個人専用化ステーションが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするように前記個人専用化ステーションを制御するステップとを含むコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項22】 セキュリティ源からセキュリティサービスを得るためのコンピュータ実行可能命令をさらに含む請求項21に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項23】 データ源からデータを得るためのコンピュータ実行可能命令をさらに含む請求項21に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項24】 前記データ源が前記カード発行者管理システムである請求項23に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項25】 サポートサービスを提供するためのコンピュータ実行可能命令をさらに有する請求項21に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項26】 データ構造を記憶しているコンピュータ読み取り可能媒体であって、
携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするためのカードオブジェクトを表わすデータを含む第1のデータフィールドと、
前記第1のデータフィールドによって表わされるカードオブジェクトを識別するための固有のカードオブジェクト識別子を表わすデータを含む第2のデータフィールドとから成るコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項27】 携帯可能なプログラムされるデータキャリアを発行するためのシステムにおいて、
同じ複数のカードオブジェクト識別子によって識別される複数のカードオブジェクトと、
前記カードオブジェクト識別子を受信し、該カードオブジェクト識別子によって識別されるカードオブジェクトに含まれる情報を使用して前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための複数の個人専用化ステーションと、
各個人専用化ステーションに前記カードオブジェクト識別子を提供するためのコントローラと、
前記個人専用化ステーションの一つからの要求に応答して携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御するための個人専用化サーバであって、前記カードオブジェクトを命令とデータに変換しかつ該命令とデータを前記要求を行う前記個人専用化ステーションに転送する個人専用化サーバとを含むシステム。
【請求項28】 前記個人専用化サーバが前記個人専用化ステーションの一つからの要求に応答して一つ以上の資源からサービスを得る請求項27に記載のシステム。
【請求項29】 サーバと個人専用化ステーションを有するシステムで携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムする方法であって、
前記個人専用化ステーションによってカードオブジェクト識別子を受信するステップと、 前記個人専用化ステーションによって、前記サーバから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報を要求するステップと、
前記個人専用化ステーションによって、前記サーバの制御の下に前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするステップとを含む方法。
【請求項30】 サーバと複数の個人専用化ステーションを有するシステムで携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御する方法において、
前記サーバによって、カード発行者管理システムからカードオブジェクトを受信するステップであって、該カードオブジェクトが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報から成るステップと、
前記サーバによって、前記個人専用化ステーションの一つからプログラミング要求を受信するステップと、
前記サーバによって、前記カードオブジェクトを使用して前記個人専用化ステーションが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするように該個人専用化ステーションを制御するステップとを含む方法。
【請求項31】 前記サーバによってデータ源からデータを得るステップをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】 前記データ源が前記カード発行者管理システムである請求項31に記載の方法。
【請求項33】 前記サーバによってセキュリティ源からセキュリティサービスを得るステップをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項34】 前記サーバによってサポートサービスを提供するステップをさらに含む請求項30に記載の方法。
【請求項35】 前記サーバによって、プログラミング要求を受信するステップが、
カードオブジェクト識別子を受信するステップと、
前記カードオブジェクト識別子を前記カードオブジェクトに関連させるステップとを含む請求項30に記載の方法。
【請求項36】 複数の個人専用化ステーションのすべてにわたり、携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御するためのコンピュータ化システムにおいて、
前記個人専用化ステーションの一つからのプログラミング要求に対応して、資源の一つ以上からサービスを得て、前記個人専用化ステーションの一つにカードオブジェクト識別子と関連するカード情報を転送し、そして前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御するための個人専用化サーバインタフェースと、
前記カードオブジェクト識別子と関連する前記カード情報を前記個人専用化サーバインタフェースから要求し、受信し、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアの一つをプログラムするための個人専用化ステーションインタフェースと、
前記個人専用化ステーションインタフェースに前記カードオブジェクト識別子を提供するためのコントローラインタフェースを備えるコンピュータ化システム。
【請求項37】 前記個人専用化サーバインタフェースにより得られるサービスがデータサービスである請求項36に記載のコンピュータ化システム。
【請求項38】 前記個人専用化サーバインタフェースにより得られるサービスがセキュリティサービスである請求項36に記載のコンピュータ化システム。
【請求項39】 前記個人専用化サーバインタフェースにより得られるサービスがサポートサービスである請求項36に記載のコンピュータ化システム。
【請求項40】 複数の個人専用化ステーションのすべてにわたり、携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御するためのコンピュータ化システムにおいて、
サーバによりカード発行者管理システムから一つ以上のカードオブジェクトを受信するための手段であって、該カードオブジェクトが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報から成る手段と、
個人専用化ステーションによりコントローラから固有のカードオブジェクト識別子を受信する手段と、
前記固有のカードオブジェクト識別子に基づいて、前記個人専用化ステーションにより、前記サーバから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアの一つをプログラムするための情報を要求する手段と、
前記サーバにより、前記個人専用化ステーションから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアを個人専用化するための前記固有のカードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求を受信する手段と、
前記サーバにより、前記プログラミング要求中の前記固有のカードオブジェクト識別子を前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクトに関係づける手段と 前記サーバにより、前記個人専用化ステーションが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするように該個人専用化ステーションを制御するために前記カードオブジェクトを使用する手段を備えるコンピュータ化システム。
【請求項41】 セキュリティ源からセキュリティサービスを得るための手段をさらに含む請求項40に記載のコンピュータ化システム。
【請求項42】 データ源からデータを得るための手段を更に含む請求項41に記載のコンピュータ化システム。
【請求項43】 前記データ源が前記カード発行者管理システムである請求項40に記載のコンピュータ化システム。
【請求項44】 サポートサービスを提供するための手段をさらに含む請求項41に記載のコンピュータ化システム。
【請求項45】 携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御する方法をコンピュータに実行させるために記憶されたコンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ読み取り可能媒体において、 前記方法が、
サーバによりカード発行者管理システムから一つ以上のカードオブジェクトを受信するステップであって、該カードオブジェクトが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報から成るステップと、
個人専用化ステーションによりコントローラからカードオブジェクト識別子を受信するステップと、
前記カードオブジェクト識別子に基づいて、前記個人専用化ステーションにより、前記サーバから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアの一つをプログラムするための情報を前記要求するステップと、
前記サーバにより、前記個人専用化ステーションの一つから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求を受信するステップと、
前記サーバにより、前記プログラミング要求中の前記カードオブジェクト識別子を前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクトに関係づけるステップと、
前記サーバによって、前記カードオブジェクトを使用して前記個人専用化ステーションが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするように該個人専用化ステーションを制御するステップを含む、
コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項46】 セキュリティ源からセキュリティサービスを得るためのコンピュータ実行可能命令をさらに含む請求項45に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項47】 データ源からデータを得るためのコンピュータ実行可能命令をさらに含む請求項45に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項48】 前記データ源が前記カード発行者管理システムである請求項47に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項49】 サポートサービスを提供するためのコンピュータ実行可能命令をさらに有する請求項45に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項50】 データ構造を記憶しているコンピュータ読み取り可能媒体であって、
個人専用化ステーションによって携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御するために個人化専用サーバが利用するためのデータとコマンドを含む、カードオブジェクトを表わすデータを含む第1のデータフィールドと、
個人専用化サーバが、前記個人専用化ステーションからのプログラミング要求に対応して、前記第一のデータフィールドで表現された前記カードオブジェクトを識別するための固有のカードオブジェクト識別子を表わすデータを含む第2のデータフィールドであって、前記個人専用化ステーションがコントローラから固有のカードオブジェクト識別子を受信する、第2のデータフィールドと、
から成るコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項51】 携帯可能なプログラムされるデータキャリアを発行するためのシステムにおいて、
同じ複数のカードオブジェクト識別子によって識別される複数のカードオブジェクトと、
前記カードオブジェクト識別子を受信し、該カードオブジェクト識別子によって識別されるカードオブジェクトに含まれる情報を使用して前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための複数の個人専用化ステーションであって、複数の個人専用化ステーションが、少なくとも二つの異なるタイプの個人専用化ステーション装置を有する複数の個人専用化ステーションと、
複数のコントローラの各々が複数のカードオブジェクト識別子を複数の個人専用化ステーションの一つに提供する複数のコントローラと、
前記個人専用化ステーションの一つからの要求に応答して携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御するための個人専用化サーバであって、前記カードオブジェクトを命令とデータに変換しかつ該命令とデータを前記要求を行う前記個人専用化ステーションに転送する個人専用化サーバを含むシステム。
【請求項52】 前記個人専用化サーバが前記個人専用化ステーションの一つからの要求に応答して一つ以上の資源からサービスを得る請求項51に記載のシステム。
【請求項53】 サーバと個人専用化ステーションとコントローラを有するシステムにおいて携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムする方法であって、
該個人専用化ステーションによりコントローラからカードオブジェクト識別子を受信するステップと、
前記個人専用化ステーションにより、前記サーバから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報を前記要求するステップと、
前記個人専用化ステーションによって、前記サーバの制御の下に前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするステップを含む方法。
【請求項54】 サーバと複数の個人専用化ステーションとコントローラを有するシステムで携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御する方法において、
前記サーバによって、カード発行者管理システムからカードオブジェクトを受信するステップであって、該カードオブジェクトが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報から成るステップと、
前記個人専用化ステーションによりコントローラからカードオブジェクト識別子を受信するステップと、
前記カードオブジェクト識別子に基づいて、前記個人専用化ステーションにより、前記サーバから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアの一つをプログラムするための情報を前記要求するステップと、
前記サーバにより、前記個人専用化ステーションの一つから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求を受信するステップと、
前記サーバにより、前記プログラミング要求中の前記カードオブジェクト識別子を前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクトに関係づけるステップと、
前記サーバによって、前記カードオブジェクトを使用して前記個人専用化ステーションが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするように該個人専用化ステーションを制御するステップを含む方法。
【請求項55】 前記サーバによってデータ源からデータを得るステップをさらに含む請求項54に記載の方法。
【請求項56】 前記データ源が前記カード発行者管理システムである請求項55に記載の方法。
【請求項57】 前記サーバによってセキュリティ源からセキュリティサービスを得るステップをさらに含む請求項54に記載の方法。
【請求項58】 前記サーバによってサポートサービスを提供するステップをさらに含む請求項54に記載の方法。」



(2)審判請求時の特許請求の範囲
上記平成22年3月17日付け手続補正書は特許請求の範囲を下記のものに補正しようとするものである。
なお、該手続補正書における下線は、補正箇所を正しく示していなかったので、下記の特許請求の範囲における下線は当審で付与しなおしたものである。

「 【請求項1】 サーバと複数の個人専用化ステーションを有するシステムで携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御する方法において、
前記サーバによって、カード発行者管理システムからカードオブジェクトを受信するステップであって、該カードオブジェクトが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報から成るステップと、
前記サーバによって、前記個人専用化ステーションの一つからプログラミング要求を受信するステップと、
前記サーバによって、前記カードオブジェクトを使用して前記個人専用化ステーションが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするように該個人専用化ステーションを制御するステップとを含む方法。
【請求項2】 前記サーバによってデータ源からデータを得るステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】 前記データ源が前記カード発行者管理システムである請求項2に記載の方法。
【請求項4】 前記サーバによってセキュリティ源からセキュリティサービスを得るステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】 前記サーバによってサポートサービスを提供するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】 前記サーバによって、プログラミング要求を受信するステップが、
カードオブジェクト識別子を受信するステップと、
前記カードオブジェクト識別子を前記カードオブジェクトに関連させるステップとを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】 複数の個人専用化ステーションのすべてにわたり、携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御するためのコンピュータ化システムにおいて、
前記個人専用化ステーションの一つからのプログラミング要求に対応して、資源の一つ以上からサービスを得て、前記個人専用化ステーションの一つにカード情報を転送し、そして前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御するための個人専用化サーバインタフェースと、
前記カードオブジェクト識別子と関連する前記カード情報を前記個人専用化サーバインタフェースから要求し、受信し、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアの一つをプログラムするための個人専用化ステーションインタフェースと、
前記個人専用化ステーションインタフェースに前記カードオブジェクト識別子を提供するためのコントローラインタフェースを備えるコンピュータ化システム。
【請求項8】 前記個人専用化サーバインタフェースにより得られるサービスがデータサービスである請求項7に記載のコンピュータ化システム。
【請求項9】 前記個人専用化サーバインタフェースにより得られるサービスがセキュリティサービスである請求項7に記載のコンピュータ化システム。
【請求項10】 前記個人専用化サーバインタフェースにより得られるサービスがサポートサービスである請求項7に記載のコンピュータ化システム。
【請求項11】 複数の個人専用化ステーションのすべてにわたり、携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御するためのコンピュータ化システムにおいて、
サーバによりカード発行者管理システムから一つ以上のカードオブジェクトを受信するための手段であって、該カードオブジェクトが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報から成る手段と、
個人専用化ステーションによりコントローラから固有のカードオブジェクト識別子を受信する手段と、
前記固有のカードオブジェクト識別子に基づいて、前記個人専用化ステーションにより、前記サーバから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアの一つをプログラムするための情報を前記要求する手段と、
前記サーバにより、前記個人専用化ステーションから、個人専用化された前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアのための前記固有のカードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求を受信する手段と、
前記サーバにより、前記プログラミング要求中の前記固有のカードオブジェクト識別子を個人専用化された前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアに関係づける手段と
前記サーバにより、前記個人専用化ステーションが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするように該個人専用化ステーションを制御するために前記カードオブジェクトを使用する手段を備えるコンピュータ化システム。
【請求項12】 セキュリティ源からセキュリティサービスを得るための手段をさらに含む請求項11に記載のコンピュータ化システム。
【請求項13】 データ源からデータを得るための手段を更に含む請求項12に記載のコンピュータ化システム。
【請求項14】 前記データ源が前記カード発行者管理システムである請求項11に記載のコンピュータ化システム。
【請求項15】 サポートサービスを提供するための手段をさらに含む請求項12に記載のコンピュータ化システム。
【請求項16】 携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御する方法をコンピュータに実行させるために記憶されたコンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ読み取り可能媒体において、
前記方法が、
サーバによりカード発行者管理システムから一つ以上のカードオブジェクトを受信するステップであって、該カードオブジェクトが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報から成るステップと、個人専用化ステーションによりコントローラからカードオブジェクト識別子を受信するステップと、
前記カードオブジェクト識別子に基づいて、前記個人専用化ステーションにより、前記サーバから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアの一つをプログラムするための情報を前記要求するステップと、
前記サーバにより、前記個人専用化ステーションの一つから、個人専用化された前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアのための前記カードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求を受信するステップと、
前記サーバにより、前記プログラミング要求中の前記カードオブジェクト識別子を個人専用化された前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアに関係づけるステップと、
前記サーバによって、前記カードオブジェクトを使用して前記個人専用化ステーションが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするように該個人専用化ステーションを制御するステップを含む、コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項17】 セキュリティ源からセキュリティサービスを得るためのコンピュータ実行可能命令をさらに含む請求項16に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項18】 データ源からデータを得るためのコンピュータ実行可能命令をさらに含む請求項16に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項19】 前記データ源が前記カード発行者管理システムである請求項18に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項20】 サポートサービスを提供するためのコンピュータ実行可能命令をさらに有する請求項16に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項21】 データ構造を記憶しているコンピュータ読み取り可能媒体であって、
個人専用化ステーションによって携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御するために個人化専用サーバが利用するためのデータとコマンドを含む、カードオブジェクトを表わすデータを含む第1のデータフィールドと、
個人専用化サーバが、前記個人専用化ステーションからのプログラミング要求に対応して、前記第一のデータフィールドで表現された前記カードオブジェクトを識別するための固有のカードオブジェクト識別子を表わすデータを含む第2のデータフィールドであって、前記個人専用化ステーションがコントローラから固有のカードオブジェクト識別子を受信する、第2のデータフィールドと、
から成るコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項22】 携帯可能なプログラムされるデータキャリアを発行するためのシステムにおいて、
同じ複数のカードオブジェクト識別子によって識別される複数のカードオブジェクトと、
前記カードオブジェクト識別子を受信し、該カードオブジェクト識別子によって識別されるカードオブジェクトに含まれる情報を使用して前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための複数の個人専用化ステーションであって、複数の個人専用化ステーションが、少なくとも二つの異なるタイプの個人専用化ステーション装置を有する複数の個人専用化ステーションと、
複数のコントローラの各々が複数のカードオブジェクト識別子を複数の個人専用化ステーションの一つに提供する複数のコントローラと、
前記個人専用化ステーションの一つからの要求に応答して携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御するための個人専用化サーバであって、前記カードオブジェクトを命令とデータに変換しかつ該命令とデータを前記要求を行う前記個人専用化ステーションに転送する個人専用化サーバを含むシステム。
【請求項23】 前記個人専用化サーバが前記個人専用化ステーションの一つからの要求に応答して一つ以上の資源からサービスを得る請求項22に記載のシステム。
【請求項24】 サーバと個人専用化ステーションとコントローラを有するシステムにおいて携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムする方法であって、
該個人専用化ステーションによりコントローラからカードオブジェクト識別子を受信するステップと、
前記個人専用化ステーションにより、前記サーバから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報を前記要求するステップと、
前記個人専用化ステーションによって、前記サーバの制御の下に前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするステップを含む方法。
【請求項25】 サーバと複数の個人専用化ステーションとコントローラを有するシステムで携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御する方法において、
前記サーバによって、カード発行者管理システムからカードオブジェクトを受信するステップであって、該カードオブジェクトが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報から成るステップと、
前記個人専用化ステーションによりコントローラからカードオブジェクト識別子を受信するステップと、
前記カードオブジェクト識別子に基づいて、前記個人専用化ステーションにより、前記サーバから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアの一つをプログラムするための情報を前記要求するステップと、
前記サーバにより、前記個人専用化ステーションの一つから、個人専用化された前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアのための前記カードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求を受信するステップと、
前記サーバにより、前記プログラミング要求中の前記カードオブジェクト識別子を個人専用化された前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアに関係づけるステップと、
前記サーバによって、前記カードオブジェクトを使用して前記個人専用化ステーションが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするように該個人専用化ステーションを制御するステップを含む方法。
【請求項26】 前記サーバによってデータ源からデータを得るステップをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】 前記データ源が前記カード発行者管理システムである請求項26に記載の方法。
【請求項28】 前記サーバによってセキュリティ源からセキュリティサービスを得るステップをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項29】 前記サーバによってサポートサービスを提供するステップをさらに含む請求項25に記載の方法。」


3.先行技術

(1)引用文献
本願の優先日の前に頒布され、原審の拒絶の査定の理由である原審拒絶理由通知の理由Aにおいて引用された、下記引用文献には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)


<引用文献1>
特開平8-212310号公報(平成8年8月20日出願公開)

<引用文献記載事項1-1>
「【請求項1】 カードのカスタム化の対象である各個人に関するものであって、それぞれ各個人に固有の情報要素を含むファイルを有するデータベースを使用し、カスタム化すべき各カードごとに、上記カード上及び/またはカード内への所定のファイルの情報要素の一部を書き込むカスタム化段階を複数回行う、カードのバッチ式カスタム化方法であって、
カスタム化すべき新規のカードの各々と、データベースのファイルのうちの1つのファイルに、識別データの1つを割当て、データベースにおいて、上記1つの識別データと上記1つのファイルとを関連させ、さらに上記1つの識別データを表す識別要素で新規のカードをマークすることからなる予備識別段階を含み、さらに、カードのカスタム化操作の各段階の開始時に、上記カード上に存在する識別要素を読み取り、対応する1つの識別データを決定し、続いて、当該1つの識別データに関連するファイルの情報要素の一部にアクセスする操作を行うことを特徴とする方法。」

<引用文献記載事項1-2>
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カードのカスタム化、例えば、磁気トラックまたはプログラム可能なメモリを内蔵する集積回路のような記憶要素を備えたタイプまたはそれらを備えていないタイプの身分証明カードまたは銀行カードのようなカードのカスタム化に関するものである。」

<引用文献記載事項1-3>
「【0009】
【実施例】図1は、本発明による方法を実施するカスタム化システムの概略を示している。このシステムは、カードのカスタム化の対象となる個人に関する全てのファイルをまとめている中央データベースを含む中央管理システムSG0を有する。中央システムSG0は、通信ネットワークZを介して数個のカスタム化工場A1と通信を行う。それぞれの工場は、管理システムSGを有し、この管理システムSGは、第1にネットワークZに接続されて、第2に1つまたは複数のカスタム化ラインCPの様々なステーションに接続されている。工場の管理システムSGはそれぞれ、中央データベースから取り出されたデータベースBD、BD1を有し、それらデータベースBD、BD1は各々、カスタム化すべき1つのバッチに属するカードに対応する全ファイルを含んでいる。」

<引用文献記載事項1-4>
「【0010】図に示すように、各カスタム化ラインCPはそれぞれ、数個のステーションP0、P1、P2、P3を有し、これらのステーションはそれぞれ、本発明方法の対応する段階E0、E1、E2、E3を実行する。各ステーションは制御ユニットCUを有し、この制御ユニットCUは、例えばローカルネットワークのバスBを介して管理システムSGに接続されている。本発明のカスタム化方法は、各カスタム化ラインCPの開始位置に置かれた識別ステーションP0によって実行される予備識別段階E0を含む。識別ステーションP0は、カスタマイスすべきブランクのカードまたはあらかじめプリントされたカードを積み上げた山から取り出すためのシステムC、カードCiを運搬するための装置EC、印刷手段IMおよび読み取り装置Lを備えている。識別ステーションP0の出口で、カードは受け取りトレーに集められてもよい。または、下流のステーション(単数または複数)P1に向かって連続的に送り出すことも可能である。図に示した実施例では、第1のカスタム化段階E1は、並行して動作する数個のステーションによって実行される。このような構成は、段階E1が、このカスタム化方法における上流および下流の段階よりもはるかに長い時間を必要とする場合に選択することができる。これは特に、メモリーカードを電気的にカスタム化する段階などに言えることである。メモリカードのプログラミングには、印刷段階の10倍もの時間がかかる。従ってその場合、電気的にカスタム化を行うためのステーションを10個並列で使用することになる。」

<引用文献記載事項1-5>
「【0013】以下、図3のフローチャートを用いて、カスタム化段階、例えばE1を説明する。対応するカスタム化ステーションP1によって実行される動作を図の左側に示し、管理システムSGによって実行される動作を右側に示すものとする。カスタム化ステーションP1が、カスタム化すべきカードが送られてきたことを検出すると(段階10)、識別要素E1の読み取りが行われ、その読み出した識別要素EIから、対応する1つのデジタル識別データDIを導き出す(段階11)。その後、カスタム化ステーションP1が、管理システムSGに、上記1つの識別データ(DI)に関するデータを要求することを知らせる要求RD(DI)を送る。この要求に応じて、管理システムSGが、上記1つの識別データDIに関するファイルFIを探す。このファイルが同定されたならば、そのデータDT(FI)の全てまたは一部がカスタム化ステーションP1に送信される(段階14および15)。ファイルFIのデータのこの一部は、少なくともカスタム化段階の実行に必要な全データを含んでいる。」

<引用文献記載事項1-6>
「【0014】その後カスタム化ステーションP1が、カスタム化データをカード上またはカード内に記録し、次いで再読み出しによって記録されたデータをチェックする(段階16)。エラーが検出されなければ、カスタム化ステーションP1が、管理システムSGに、動作の終了を知らせる通知END(DI)を送る(段階17)。この通知に答えて、システムSGが、1つの識別データDIに関するファイルについての段階E1を承認する(段階18)。この承認は、たった今実行されたカスタム化段階を表すデータの1つをファイルに記録するというものであってもよい。それが最後のカスタム化段階である場合は、承認と供に1つの識別データ(DI)が解放されて、この1つの識別データが同じバッチの別のカードに再度使用されるようになっていてもよい。反対に、もし1つの識別データと関連するファイルとの対応を保持することが望まれる場合には、この解放は行われない。」

<引用文献記載事項1-7>
「【0015】カスタム化データの記録(段階16)後に再読み取りによるチェックを行わない場合には、段階17と18を省略することができる。その場合、段階13、14のいずれかにおいてあらかじめ承認を行い、この承認が、その後のカスタム化段階の実行の開始時に確認されるのが適当である。カスタム化段階を、同一の制御ユニットCUによって制御される連続する数個のサブステップに分割することができることに注意されたい。そのような場合には、それぞれのサブステップを識別要素の読み取りで開始することもできる。つまり、第1のサブステップを除けば、制御ユニットが第1のサブステップにおいてすでに対応するデータを受けとっている場合、この対応するデータへのアクセスは、管理システムSGからでなく単に制御ユニットのメモリからのファイルの転送を要求することによって行われる。」


<引用文献2>
国際公開第97/39424号(1997年10月23日国際公開。特表2000-508794号公報に対応。)

<引用文献記載事項2-1>
「What is claimed is:
1. A method for issuing portable programmed data carriers comprising the step of:
acquiring a personalization equipment identifier and personalization data for a cardholder from a card issuer management system;
acquiring equipment characteristic data for a personalization equipment type from a record in a database identified by the personalization equipment identifier; and
transferring the personalization data to personalization equipment as specified by the equipment characteristic data for the type of personalization equipment to issue the data carrier.」
(対応する公表公報の記載:
「【特許請求の範囲】
1.パーソナル化用設備の識別子と、カード保持者に対するパーソナル化データと、をカード発行者管理システムから獲得する段階と、
上記パーソナル化用設備の識別子により指定されたデータベース内レコードから、パーソナル化用設備の形式に対する設備特性データを獲得する段階と、
上記形式のパーソナル化用設備に対する設備特性データにより指定されたパーソナル化用設備に対してパーソナル化データを転送しデータ担体を発行する段階と、
を備え、可搬のプログラムされたデータ担体を発行する方法。」


(2)参考文献
本願の優先日前に頒布された刊行物である下記参考文献には、それぞれ、下記参考文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)


<参考文献1>
特開平8-147421号公報(平成8年6月7日出願公開)

<参考文献記載事項1-1>
「【0007】このように、一つの情報記憶媒体の情報記憶手段に所望の情報を書き込む発行処理においては、所定の通信プロトコルに従って、複数の命令と複数のデータとが使用される。そして、各カード毎に異なる個別データを使用する実際の発行処理装置では、処理を円滑に行うために、カード毎に順次使用する命令やデータをまとめて発行処理データとして、それを発行パターンファイルという形式で予め作成しておき、これを逐次使用することで発行処理が行われる。このため、発行処理装置では、例えば、そのホストコンピュータ側で前記発行パターンファイルを事前に作成保存し、これを逐次、カードに直接アクセスして書き込み/読み取り等の各種情報操作をするリーダライタ装置に伝送して、リーダライタ装置に所望の操作を行わせる。」


<参考文献2>
特開平7-334631号公報(平成7年12月22日出願公開)

<参考文献記載事項2-1>
「【請求項1】 複数のIC書込み手段と、該装置を制御する制御手段とを含んだ複数のICカード発行機を用いたICカード発行処理システムであって、ICカード発行パターンを生成するための情報と,個人情報とを用いてICカード発行パターンを生成する手段と、該発行パターンと,発行依頼先情報とを対応付けた顧客データとして格納する手段と、ICカードを発行する手段と、システム全体を制御するための制御手段とから構成され、該制御手段が、前記複数のICカード発行機の制御情報及び稼動状況を管理し、前記格納手段内の顧客データに基づいて、発行処理に使用するICカード発行機を選択し処理動作を制御することを特徴とするICカード発行処理システム。
【請求項2】 発行依頼先情報が、カードの情報記録形態や記録される情報の種類を設定するものであることを特徴とする請求項1に記載のICカード発行処理システム。
【請求項3】 ICカード発行パターンを生成する手段が、該ICカード発行パターンを生成するための情報を作成する手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のICカード発行処理システム。
【請求項4】 ICカード発行パターンを生成するための情報が、発行処理時に生成される情報をカードに付与するために必要なICカード発行機制御情報を含むことを特徴とする請求項1ないし3に記載のICカード発行処理システム。
【請求項5】 格納手段内のメモリ容量状況に応じて、ICカード発行パターンを生成し格納する数を制御することを特徴とする請求項1ないし4に記載のICカード発行処理システム。」



第2.平成22年3月17日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年3月17日付けの手続補正を却下する。


[理由]
1.本件補正の内容
(1)平成22年3月17日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、特許請求の範囲について、上記第1.2.(1)の原審拒絶査定時の特許請求の範囲に記載のものから、上記第1.2.(2)の審判請求時の特許請求の範囲に記載のものに補正しようとするものであるところ、要するに、本件補正は下記の補正事項よりなるものである。

<補正事項1>
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1?29を削除し、本件補正前の請求項30?58を、本件補正後の請求項1?29とする補正事項。

<補正事項2>
本件補正前の請求項36における「カードオブジェクト識別子と関連するカード情報を転送し」との記載における「カードオブジェクト識別子と関連する」を削除し、「カード情報を転送し」とする補正事項。

<補正事項3>
本件補正前の請求項40における「要求」に「前記」を付して「前記要求」とする補正事項。

<補正事項4>
本件補正前の請求項40における「前記サーバにより、前記個人専用化ステーションから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアを個人専用化するための前記固有のカードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求を受信する手段と」との記載中の「前記携帯可能なプログラムされるデータキャリア」に「個人専用化された」なる限定を付し、「個人専用化された前記携帯可能なプログラムされるデータキャリア」とする補正事項。

<補正事項5>
同記載中の「データキャリアを個人専用化するための前記固有のカードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求」との記載を、「データキャリアのための前記固有のカードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求」とする補正事項。

<補正事項6>
本件補正前の請求項40における「前記サーバにより、前記プログラミング要求中の前記固有のカードオブジェクト識別子を前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクトに関係づける手段と」との記載中の「前記携帯可能なプログラムされるデータキャリア」に「個人専用化された」との限定を付して「個人専用化された前記携帯可能なプログラムされるデータキャリア」とする補正事項。

<補正事項7>
同記載中の「データキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクトに関係づける」との記載を「データキャリアに関係づける」に変更する補正事項。

<補正事項8>
同記載と、これに続く「 前記サーバにより・・・」との記載の間を改行する補正事項。

<補正事項9>
本件補正前の請求項45における「前記サーバにより、前記個人専用化ステーションの一つから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求を受信するステップと」との記載中の「前記携帯可能なプログラムされるデータキャリア」に「個人専用化された」なる限定を付し、「個人専用化された前記携帯可能なプログラムされるデータキャリア」とする補正事項。

<補正事項10>
同記載中の「データキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求」との記載を、「データキャリアのための前記カードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求」とする補正事項。

<補正事項11>
本件補正前の請求項45における「前記サーバにより、前記プログラミング要求中の前記カードオブジェクト識別子を前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクトに関係づけるステップと」との記載中の「前記携帯可能なプログラムされるデータキャリア」に「個人専用化された」との限定を付して「個人専用化された前記携帯可能なプログラムされるデータキャリア」とする補正事項。

<補正事項12>
同記載中の「データキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクトに関係づける」との記載を「データキャリアに関係づける」とする補正事項。

<補正事項13>
本件補正前の請求項54における「前記サーバにより、前記個人専用化ステーションの一つから、前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求を受信するステップと、」との記載中の「前記携帯可能なプログラムされるデータキャリア」に「個人専用化された」なる限定を付し、「個人専用化された前記携帯可能なプログラムされるデータキャリア」とする補正事項。

<補正事項14>
同記載中の「データキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求」との記載を、「データキャリアのための前記カードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求」とする補正事項。

<補正事項15>
本件補正前の請求項54における「前記サーバにより、前記プログラミング要求中の前記カードオブジェクト識別子を前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクトに関係づけるステップと、」との記載中の「前記携帯可能なプログラムされるデータキャリア」に「個人専用化された」との限定を付して「個人専用化された前記携帯可能なプログラムされるデータキャリア」とする補正事項。

<補正事項16>
同記載中の「データキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクトに関係づける」との記載を「データキャリアに関係づける」に変更する補正事項。


2.本件補正が新規事項の追加であるか否かについての検討
本件補正について検討するに、上記補正事項4、補正事項6、補正事項9、補正事項11、補正事項13、補正事項15によって、
「プログラミング要求」の「受信」に係る「データキャリア」、および、「カードオブジェクト識別子」の「関係づけ」に係る「データキャリア」が、「個人専用化された」もの、すなわち、「プログラミング要求」の「受信」や「カードオブジェクト識別子」の「関係づけ」よりも以前に既に「個人専用化された」ものである旨の技術的事項が追加された。
しかしながら、かかる技術的事項は、特許法第184条の12第2項において、同法第17条の2第3項中の「願書に最初に添付した明細書又は図面」とあるのを、これに読み替える旨規定されるものであるところの、上記平成12年11月13日付けの翻訳文(以下「当初明細書等」と記す。)には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。
また、当初明細書等のどこを参酌しても、既に「個人専用化された」「データキャリア」に対して、さらに「プログラミング要求」の「受信」や「カードオブジェクト識別子」の「関係づけ」を行うことを示唆する記載は見あたらず、また、既に「個人専用化された」「データキャリア」に対して、更なる「プログラミング要求」の「受信」や「カードオブジェクト識別子」の「関係づけ」を行うことが技術常識であるとも認められないので、当業者の技術常識を加味しても上記技術的事項を導き出せるものでもない。
なお、請求人は審判請求書において当該補正の根拠の説明は全くしていない。
したがって、当初明細書等のすべての記載を総合しても、上記の技術的事項を導き出し得るものではなく、本件補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてするものではない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。


3.本件補正の目的について
本件補正は、本件審判の請求と同時にする補正であり、上記のとおり特許請求の範囲についてする補正であるから、以下に、本件補正の目的について検討する。

(1)補正事項2について
補正事項2によって、本件補正前の請求項36においては「転送」される「カード情報」が「カードオブジェクト識別子と関連する」ものに限定されていたのに対し、本件補正後の請求項7においては「転送」される「カード情報」が「カードオブジェクト識別子と関連する」ものに限定されないこととなるのであるから、補正事項2は特許請求の範囲を拡張するものであり、特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」(以下、単に「限定的減縮」と記す。)には該当しない。
また、本件補正前の請求項36における「カードオブジェクト識別子と関連するカード情報を転送し」なる記載が格別不明瞭なものとは認められず、しかも、原審拒絶理由通知においても原審拒絶査定においても、該記載に起因する拒絶理由が通知されたことは無いのであるから、補正事項2は特許法第17条の2第4項第4号の「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」(以下単に「不明瞭な記載の釈明」と記す。)にも該当しない。
さらに、補正事項2が同法同条第1号の「第36条第5項に規定する請求項の削除」(以下、単に「請求項の削除」と記す。)、同第3号の誤記の訂正のいずれにも該当しないことは明らかである。
したがって、補正事項2は特許法第17条の2第4項に掲げる何れの事項をも目的とするものではない。

(2)補正事項5、補正事項10、補正事項14について
補正事項5は、補正前の請求項40の発明特定事項である「前記固有のカードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求」について、本件補正前には「データキャリアを個人専用化するための」ものであったのに対し、本件補正後には、「データキャリアのための」ものになるのであるから、明らかに「前記固有のカードオブジェクト識別子を含むプログラミング要求」の意味する範囲を拡張・変更するものであり、その目的は限定的減縮に該当しない。
また、「データキャリアを個人専用化するための」なる限定が格別不明瞭な記載であるとも認められず、しかも、原審拒絶理由通知においても原審拒絶査定においても、該記載に起因する拒絶理由が通知されたことは無いのであるから、その目的は不明瞭な記載の釈明に該当しない。
さらに、補正事項5が請求項の削除、誤記の訂正のいずれにも該当しないことは明らかである。
したがって、補正事項5は特許法第17条の2第4項に掲げる何れの事項をも目的とするものではない。

補正事項10、補正事項14も同様に特許法第17条の2第4項に掲げる何れの事項をも目的とするものではない。


(3)補正事項7、補正事項12、補正事項16について
補正事項7は補正前の請求項40の発明特定事項である「関係づける」ことについて、その関連付け先が、本件補正前には「カードオブジェクト」であったのに対し、本件補正後には「データキャリア」になるのであるから、明らかに「関係づける」ことの意味する範囲を変更するものであり、その目的は限定的減縮に該当しない。
また、「データキャリアを個人専用化するための前記カードオブジェクトに関係づける」なる記載が格別不明瞭な記載であるとも認められず、しかも、原審拒絶理由通知においても原審拒絶査定においても、該記載に起因する拒絶理由が通知されたことは無いのであるから、その目的は不明瞭な記載の釈明に該当しない。
さらに、補正事項7が請求項の削除、誤記の訂正のいずれにも該当しないことは明らかである。
したがって、補正事項7は特許法第17条の2第4項に掲げる何れの事項をも目的とするものではない。

補正事項12、補正事項16も同様に特許法第17条の2第4項に掲げる何れの事項をも目的とするものではない。

(4)小結
以上の通りであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものに限られるものではなく、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。


4.むすび
上記2.のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定(平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定)に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

上記3.のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定(平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定)に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論の通り決定する。



第3.本件審判請求の成否について

1.手続きの経緯、本願発明の認定
本願の手続きの経緯は上記第1.1.の通りのものであり、さらに、平成22年3月17日付けの手続補正は上記第2.のとおり却下された。
従って、本願の特許請求の範囲は、上記第1.2.(1)の原審拒絶査定時の特許請求の範囲に記載した通りのものであり、その請求項30に係る発明は下記に再掲する通りのものである。

「【請求項30】 サーバと複数の個人専用化ステーションを有するシステムで携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御する方法において、
前記サーバによって、カード発行者管理システムからカードオブジェクトを受信するステップであって、該カードオブジェクトが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報から成るステップと、
前記サーバによって、前記個人専用化ステーションの一つからプログラミング要求を受信するステップと、
前記サーバによって、前記カードオブジェクトを使用して前記個人専用化ステーションが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするように該個人専用化ステーションを制御するステップとを含む方法。」


2.引用発明の認定

(1)引用文献1は「カードのバッチ式カスタム化方法」に関する文献であり、該方法は上記引用文献記載事項1-1の記載の如く
「カードのカスタム化の対象である各個人に関するものであって、それぞれ各個人に固有の情報要素を含むファイルを有するデータベースを使用し、カスタム化すべき各カードごとに、上記カード上及び/またはカード内への所定のファイルの情報要素の一部を書き込むカスタム化段階を複数回行う、カードのバッチ式カスタム化方法」である。

(2)そして、上記引用文献記載事項1-2には、上記「カード」として、「磁気トラックまたはプログラム可能なメモリを内蔵する集積回路のような記憶要素を備えたタイプ」「の身分証明カードまたは銀行カードのようなカード」が例示されている。

(3)また、上記引用文献記載事項1-3の「図1は、本発明による方法を実施するカスタム化システムの概略を示している。」「中央システムSG0は、通信ネットワークZを介して数個のカスタム化工場A1と通信を行う。」との記載等から、
「該方法を実施するカスタム化システムは数個のカスタム化工場と、通信ネットワークを介して該工場と通信を行う中央管理システム」とを有していると言える。

(4)上記引用文献記載事項1-3の「このシステムは、カードのカスタム化の対象となる個人に関する全てのファイルをまとめている中央データベースを含む中央管理システムSG0を有する。」との記載等から、
「該中央管理システムは、前記カードのカスタム化の対象となる個人に関する全てのファイルをまとめている中央データベースを含」んでいると言える。

(5)上記引用文献記載事項1-3の「それぞれの工場は、管理システムSGを有し、この管理システムSGは、第1にネットワークZに接続されて、第2に1つまたは複数のカスタム化ラインCPの様々なステーションに接続されている。工場の管理システムSGはそれぞれ、中央データベースから取り出されたデータベースBD、BD1を有し、それらデータベースBD、BD1は各々、カスタム化すべき1つのバッチに属するカードに対応する全ファイルを含んでいる。」との記載等から、
「それぞれの前記工場は、管理システムを有し、
この工場の管理システムは、第1に前記ネットワークに接続され、第2に1つまたは複数のカスタム化ラインの様々なステーションに接続されており、
前記工場の管理システムはそれぞれ、前記中央データベースから取り出されたデータベースを有し、
それらデータベースは各々、カスタム化すべき1つのバッチに属するカードに対応する全ファイルを含んで」いると言える。

(6)上記引用文献記載事項1-4の「図に示すように、各カスタム化ラインCPはそれぞれ、数個のステーションP0、P1、P2、P3を有し、これらのステーションはそれぞれ、本発明方法の対応する段階E0、E1、E2、E3を実行する。各ステーションは制御ユニットCUを有し、この制御ユニットCUは、例えばローカルネットワークのバスBを介して管理システムSGに接続されている。」との記載等から、
「各前記カスタム化ラインはそれぞれ、数個のステーションを有し、これらのステーションはそれぞれ、異なる段階を実行するものであり、
各前記ステーションは制御ユニットを有し、この制御ユニットは、ローカルネットワークのバスを介して前記工場の管理システムに接続されて」いると言える。

(7)上記引用文献記載事項1-5の「カスタム化ステーションP1が、カスタム化すべきカードが送られてきたことを検出すると(段階10)、識別要素E1の読み取りが行われ、その読み出した識別要素EIから、対応する1つのデジタル識別データDIを導き出す(段階11)。その後、カスタム化ステーションP1が、管理システムSGに、上記1つの識別データ(DI)に関するデータを要求することを知らせる要求RD(DI)を送る。この要求に応じて、管理システムSGが、上記1つの識別データDIに関するファイルFIを探す。このファイルが同定されたならば、そのデータDT(FI)の全てまたは一部がカスタム化ステーションP1に送信される(段階14および15)。ファイルFIのデータのこの一部は、少なくともカスタム化段階の実行に必要な全データを含んでいる。」との記載等から、上記「カスタム化方法」は
「前記カスタム化ステーションが、カスタム化すべきカードが送られてきたことを検出すると、識別要素の読み取りが行われ、その読み出した識別要素から、対応する1つのデジタル識別データを導き出し、その後、前記カスタム化ステーションが、前記工場の管理システムに、前記1つの識別データに関するデータを要求することを知らせる要求を送り、この要求に応じて、前記工場の管理システムが、前記1つの識別データに関するファイルを探し、このファイルが同定されたならば、そのデータの全てまたは一部が前記カスタム化ステーションに送信され、該ファイルのデータの一部は、少なくともカスタム化段階の実行に必要な全データを含んでいるものであ」ると言える。

(8)さらに、上記引用文献記載事項1-6の「その後カスタム化ステーションP1が、カスタム化データをカード上またはカード内に記録し」との記載から、上記「カスタム化方法」は
「その後、前記カスタム化ステーションが、前記カスタム化データを前記カード上またはカード内に記録するものである」といえる。

(9)以上をまとめると、引用文献1には下記の引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「カードのカスタム化の対象である各個人に関するものであって、それぞれ各個人に固有の情報要素を含むファイルを有するデータベースを使用し、カスタム化すべき各カードごとに、上記カード上及び/またはカード内への所定のファイルの情報要素の一部を書き込むカスタム化段階を複数回行う、カードのバッチ式カスタム化方法であって、(上記(1)より)
該カードは磁気トラックまたはプログラム可能なメモリを内蔵する集積回路のような記憶要素を備えたタイプの身分証明カードまたは銀行カードのようなカードであり、(上記(2)より)
該方法を実施するカスタム化システムは、
数個のカスタム化工場と、通信ネットワークを介して該工場と通信を行う中央管理システムとを有し、(上記(3)より)
該中央管理システムは、前記カードのカスタム化の対象となる個人に関する全てのファイルをまとめている中央データベースを含み、(上記(4)より)
それぞれの前記工場は、管理システムを有し、
この工場の管理システムは、第1に前記ネットワークに接続され、第2に1つまたは複数のカスタム化ラインの様々なステーションに接続されており、
前記工場の管理システムはそれぞれ、前記中央データベースから取り出されたデータベースを有し、
それらデータベースは各々、カスタム化すべき1つのバッチに属するカードに対応する全ファイルを含んでおり、(上記(5)より)
各前記カスタム化ラインはそれぞれ、数個のステーションを有し、これらのステーションはそれぞれ、異なる段階を実行するものであり、
各前記ステーションは制御ユニットを有し、この制御ユニットは、ローカルネットワークのバスを介して前記工場の管理システムに接続されており、(上記(6)より)
前記カスタム化ステーションが、カスタム化すべきカードが送られてきたことを検出すると、識別要素の読み取りが行われ、その読み出した識別要素から、対応する1つのデジタル識別データを導き出し、その後、前記カスタム化ステーションが、前記工場の管理システムに、前記1つの識別データに関するデータを要求することを知らせる要求を送り、この要求に応じて、前記工場の管理システムが、前記1つの識別データに関するファイルを探し、このファイルが同定されたならば、そのデータの全てまたは一部が前記カスタム化ステーションに送信され、該ファイルのデータの一部は、少なくともカスタム化段階の実行に必要な全データを含んでいるものであり、(上記(7)より)
その後、前記カスタム化ステーションが、前記カスタム化データを前記カード上またはカード内に記録するものである(上記(8)より)
カードのバッチ式カスタム化方法」


3.対比
以下に、本願発明と引用発明とを比較する。

(1)引用発明においては、「工場の管理システム」は「データベースを有し」、「カスタム化ステーション」からの「要求に応じて、前記管理システムが、前記1つの識別データに関するファイルを探し、このファイルが同定されたならば、そのデータの全てまたは一部が前記カスタム化ステーションに送信」するのであるから、引用発明における「工場の管理システム」は「サーバ」とも言えるものである。
また、引用発明における「カスタム化ステーション」は「各個人に固有の」「情報要素の一部を書き込むカスタム化段階」を行うのであるから、「個人専用化ステーション」とも言えるものである。
また、引用発明における「カード」は「磁気トラックまたはプログラム可能なメモリを内蔵する集積回路のような記憶要素を備えたタイプの身分証明カードまたは銀行カードのようなカード」であるから、「携帯可能なプログラムされるデータキャリア」とも言えるものである。
また、引用発明の「カスタム化段階」は「カード」に「情報要素の一部を書き込む」のであるから、引用発明は「データキャリアのプログラミングを制御する方法」とも言えるものである。
したがって、引用発明も本願発明と同様に「サーバと複数の個人専用化ステーションを有するシステムで携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御する方法」と言えるものである。

(2)引用発明における「中央管理システム」は、その名の通り「管理システム」とも言えるものである。
また、引用発明における「ファイル」は「カードに対応する」ものであり、しかも「カスタム化段階の実行に必要な全データを含んでいるもの」であるから、「前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報から成る」「カードオブジェクト」とも言えるものである。
また、引用発明における「工場の管理システム」が有する「データベース」は、該「ファイル」を含んでおり、さらに該「データベース」は「中央管理システム」内の「中央データベースから取り出された」ものであるから、引用発明と本願発明とは「前記サーバによって、」「管理システムからカードオブジェクトを受信するステップであって、該カードオブジェクトが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報から成るステップ」を含む点で共通すると言える。

なお、請求人は、審判請求書において、『本願発明の、カードオブジェクトは、データとコマンドの両方を含むものであり、「情報要素」とは全く異なるもの』である点を根拠に、本願発明の進歩性を主張しているが、「カードオブジェクト」が「データとコマンドの両方を含むもの」である旨の記載は特許請求の範囲には全く無く、また、本願発明の詳細な説明の段落【0011】の「本発明の範囲は添付の請求項によってのみ限定される。」などの記載から見ても、本願発明における「カードオブジェクト」を「携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報」以外のものに解釈すべきではない。
また、ICカード等の発行処理に用いる情報に制御情報や命令等も含めることは、参考文献1(特に参考文献記載事項1-1)や参考文献2(特に参考文献記載事項1-4)等に開示される如く周知慣用技術に過ぎないものであり、引用発明における「情報要素」を「データとコマンドの両方を含むもの」とすることも当業者が適宜に採用し得た事項であり、仮に本願発明における「カードオブジェクト」を「データとコマンドの両方を含むもの」と解釈したとしても、本審決の結論が覆るものではない。)

(3)引用発明においては、「前記カスタム化ステーションが、前記工場の管理システムに、前記1つの識別データに関するデータを要求することを知らせる要求を送」るものであるところ、該要求を「工場の管理システム」が受信することは明らかであるから、引用発明も本願発明と同様に「前記サーバによって、前記個人専用化ステーションの一つからプログラミング要求を受信するステップ」を含むと言える。

(4)引用発明は「前記工場の管理システムが、前記1つの識別データに関するファイルを探し、このファイルが同定されたならば、そのデータの全てまたは一部が前記カスタム化ステーションに送信され」、「その後、前記カスタム化ステーションが、前記カスタム化データを前記カード上またはカード内に記録するもの」であり、「該ファイルのデータの一部は、少なくともカスタム化段階の実行に必要な全データを含んでいるもの」であるところ、この一連の処理は、「工場の管理システム」が「ファイル」の「データ」を「カスタム化ステーションに送信」することによって、「カスタム化ステーション」を「前記カスタム化データを前記カード上またはカード内に記録する」ように制御しているととらえることもできる。
したがって、引用発明も本願発明と同様に「前記サーバによって、前記カードオブジェクトを使用して前記個人専用化ステーションが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするように該個人専用化ステーションを制御するステップとを含む」と言える。

(5)よって、本願発明は、下記一致点で引用発明と一致し、下記相違点を有する点で引用発明と相違する。

<一致点>
「サーバと複数の個人専用化ステーションを有するシステムで携帯可能なプログラムされるデータキャリアのプログラミングを制御する方法において、
前記サーバによって、」「管理システムからカードオブジェクトを受信するステップであって、該カードオブジェクトが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするための情報から成るステップと、
前記サーバによって、前記個人専用化ステーションの一つからプログラミング要求を受信するステップと、
前記サーバによって、前記カードオブジェクトを使用して前記個人専用化ステーションが前記携帯可能なプログラムされるデータキャリアをプログラムするように該個人専用化ステーションを制御するステップとを含む方法。」

<相違点>
本願発明における「管理システム」、は「カード発行者管理システム」である。(これに対し、引用発明における「中央管理システム」が「カード発行者」のシステムである旨の明示は、引用文献1には無い。)


4.判断
上記相違点について検討するに、カード保持者に対するパーソナル化データを「カード発行者管理システム」から獲得することは、引用文献2(特に引用文献記載事項2-1)等を挙げるまでもなく、当業者にとっては周知の構成に他ならないものである。
したがって、引用発明における「中央管理システム」を「カード発行者管理システム」とし、引用発明を上記相違点に係る事項を有するものとすることは、当業者であれば当然の如く採用する事項に過ぎない。

してみると、本願発明の構成は引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
また、本願発明の効果は、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


5.むすび
以上のとおり、本願請求項30に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-04 
結審通知日 2011-11-08 
審決日 2011-11-21 
出願番号 特願2000-548844(P2000-548844)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G06K)
P 1 8・ 574- Z (G06K)
P 1 8・ 572- Z (G06K)
P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 浩  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 清木 泰
酒井 伸芳
発明の名称 マルチステーション環境におけるスマートカードの個人専用化  
代理人 鶴田 準一  
代理人 下道 晶久  
代理人 森 啓  
代理人 青木 篤  

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