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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G09F
管理番号 1255075
判定請求番号 判定2011-600047  
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2012-05-25 
種別 判定 
判定請求日 2011-10-17 
確定日 2012-04-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第2937287号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号装置図面及びその説明書に示す「揺動装置」は、特許第2937287号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求人である国際ディスプレイ工業株式会社は、判定請求書に添付されたイ号装置図面及びその説明書に示す「揺動装置」(以下「イ号装置」という。)が特許第2937287号の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
本件特許第2937287号は平成4年9月22日に特許出願され、平成11年6月11日に設定登録がなされ、平成22年7月21日に訂正審判が請求され(訂正2010-390078号)、同年9月17日に「訂正することを認める。」との審決がなされ、同年9月28日にこの審決が確定したものである。

そして、平成23年10月17日に本件判定の請求がなされ、同年12月7日に判定被請求人から判定請求答弁書(以下単に「判定請求答弁書」という。)が提出され、さらに、平成24年2月29日に判定請求人から判定請求弁駁書(以下単に「判定請求弁駁書」という。)が提出された。

なお、平成24年3月5日に判定被請求人から上申書及び判定請求答弁書を補正する補正書が提出されている。

本件特許第2937287号の明細書及び図面は、本件特許公報に記載されているものを、訂正2010-390078号で訂正が認められたとおりに訂正したもの(以下「本件特許明細書」という。)であり、その請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、本件特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、これを構成要件に分節して符号を付して記載すると次のとおりのものである。(以下分節された構成要件について「構成要件(A)」などという。)

(A)非安定マルチバイブレータ回路の発振電流で駆動コイルを励磁し、この駆動コイルと相対して移動可能に設けられた永久磁石に電磁力をおよぼし、この永久磁石と前記駆動コイルとに相対的に働く電磁力により、任意の復元力系を有し、かつ揺動意匠体を配置した自由振動体を励振させる揺動装置において、
(B)前記非安定マルチバイブレータ回路を、PNP型とNPN型との2石のトランジスタ(TrP,TrN)の互いのベースを相手のトランジスタのコレクタに接続し、
(C)その接続が一方のトランジスタには直通的に、および他方のトランジスタには時定数設定用コンデンサー(C11)を介しておのおの接続して自走発振回路として構成し、
(D)前記時定数設定用コンデンサーがコレクタに接続された前記他方のトランジスタの負荷として、そのコレクタに駆動コイル(4)を接続し、この駆動コイルに前記自走発振回路から通電した場合に、前記駆動コイルに発生する磁界により、前記駆動コイルに対して相対的に移動可能でかつ任意の復元力で相対的に揺動可能に設けられた永久磁石(7)に電磁力を及ぼし、
(E)この永久磁石と前記駆動コイルとのいずれか一方を揺動側に配設し、他方を固定側の、相手の揺動運動中立点付近に配設して揺動側の自由振動体を揺動させ、
(F)前記自走発振回路の電源として、短時間放電により駆動コイルヘの電磁駆動に必要な電力量を流し得る容量の電解コンデンサー(C12)を結線し、
(G)この電解コンデンサー(C12)に対し、充電電流を流す太陽電池(25)を接続して、
(H)前記駆動コイルの無通電期間中に、前記太陽電池の発電電流により前記電解コンデンサー(C12)を充電するとともに、抵抗(R1)を経て時定数設定用コンデンサー(C11)にも充電し、この時定数設定用コンデンサー(C11)の電圧上昇が、前記トランジスタのベース電圧の上昇による増幅、正帰還作用を生じさせることで、前記電解コンデンサー(C12)に貯まった電荷を、前記駆動コイルを経て放電することを特徴とする
(I)揺動意匠体の自己起動する揺動装置。

第3 当事者の主張
本件特許発明及びイ号装置の構成についての判定請求人の主張及び判定被請求人の主張は、概略以下のとおりである。
1 判定請求人の主張
(1)イ号装置は、商品名を「ミニフリモ」と称し、図50?図55(甲第4号証)及び図57(甲第5号証)に示す構造を備えたものである。(判定請求書第4頁1行?2行)
(2)また、イ号装置は、その電気、機械的作動原理、及び電気的回路構成について、被請求人の特許出願に係る特開2007-199308号公報(甲第1号証)に記載の揺動装置(実施例1に示される表示体揺動装置)とその構成が一致している(判定請求書第4頁3行?5行)
(3)すなわち、イ号装置は、甲第1号証の図1-図8に示す構成を備えるものである。(判定請求書第4頁8行?9行)
(4)甲第1号証の段落0001、及び甲第2号証(イ号装置の使用説明書)によれば、イ号装置はPOP広告などに使用可能で、任意の意匠パネル102等を振子体12に取付け揺動させ、これを店頭で目立たせて、広告商品の告知により販売促進の目的に供するとしている。これは、本件特許明細書の段落0001に記載の本件特許発明の利用分野と同一である。(判定請求書第4頁12行?16行)
(5)永久磁石16に相対向するようにして振子体12に設けられた駆動コイル17と、駆動コイル17に所定の周期でパルス状の電流を供給して該駆動コイル17をこれに正対する永久磁石16の極性と反発し合う同極性に励磁することにより、慣性揺動運動で揺動する振子体12の揺動運動を、駆動コイル17と永久磁石16との磁気的反発作用で助長する弛張発振回路18を備える(甲第4号証の図50?図55、甲第1号証の段落0006及び段落0009及び図8)。また、第1及び第2支持部111、112により揺動自由に支持された振子体12の永久磁石16と正対する駆動コイル17は、前記永久磁石16と正対する第1支持部111の内側箇所に前記永久磁石16と所定の間隙を置いて配設されている。(甲第1号証の段落0023)。(判定請求書第4頁18行?27行)
(6)甲第2号証(イ号装置の取扱説明書)に示すように、イ号装置の振子体12には、アーム101を介して意匠パネル等の任意の揺動意匠体102が配置されている。
一方、甲第4号証の図50?図52に示す電子部品実装プリント基板29は、図53(写真)に拡大して示されるものである。図54はその回路図であり、さらに図55は、本件特許発明の回路と比較し易くするために、図54を整理した回路図である。そして、甲第1号証の図8に示す回路図は、甲第4号証の図55の回路図を左右上下を逆にしたものであり、基本的に本件特許発明の回路図と同一のものである。
上記のように、イ号装置の弛張発振回路18は、甲第4号証の図54及び図55に示される構成のものであり、NPNトランジスタQ1とPNPトランジスタQ2を備え、NPNトランジスタQ1のベースは、抵抗R06を介してPNPトランジスタQ2のコレクタに接続され、PNPトランジスタQ2のベースは、周期設定用コンデンサC3及び抵抗R02を介してNPNトランジスタQ1のコレクタに接続されている(甲第1号証の段落0028及び図8も同様)。(判定請求書第4頁30行?第5頁12行)
(7)また、甲第5号証は、イ号装置の回路(図57)と本件特許発明の回路(図56)との電流方向の違いを矢印で示した「比較用基本回路図」である。甲第5号証の図56は、本件特許発明の回路の結線状態を、特許請求の範囲の記載の構成要件に対応させて、基本回路図として示したものであり、これと同様にして、図57にイ号装置の基本回路図を示した。(判定請求書第5頁19行?23行)
(8)図57に示されるイ号装置の弛張発振回路は、本件特許発明の変則的非安定マルチバイブレータ回路と同一構成の回路であって、イ号装置の回路の構成は、本件特許請求の範囲の請求項1に記載された構成要件を全て充足するものである。(判定請求書第5頁25行?28行)
(9)甲第5号証の図56と図57の両図を見ると、両回路内の各電子部品の配置は同じであるが、トランジスタのNPN,PNPタイプが逆になっている、と同時に、矢印で示した電流の方向も逆になっている。(判定請求書第5頁30行?32行)
(10)さらに、イ号装置の回路の作用は、甲第5号証の図56に示す本件特許発明の回路の作用と同一であって、本件特許の明細書等に記載の正帰還作用が生じることが、下記の(測定実験)により裏付けられた。

(測定実験)
イ号装置について、甲第3号証1頁の「測定状況全体図」に示すような下記の条件で、オッシロスコープによる測定実験を行った。
・揺動意匠体・・・・・4.6gの意匠体を振子に装着した。
・環境・・・・・350Luxの照度のランプを光源とした。
・測定内容
…(中略)…
(b)実験2
次に、イ号装置について、自己起動後から定常振幅揺動に至るまでの回路動作を(写真3)、(写真4)の測定実験をした。
イ号装置における振子の揺動が最大振幅で安定するまでの期間において、写真3のように、電解コンデンサーC1の電圧(Vc1)は、のこぎり波形の電圧推移をたどる。この電圧(Vc1)波形は、本件特許の明細書の段落0036で説明された図12(C)の波形と同じである。
一方、写真4によれば、赤線はトランジスタQ2のベース電圧のうち、弛張発振によるのこぎり歯形のベース電圧推移を示し、トランジスタQ2のベース電圧(Vbe)が、ベース逆電圧から、ベース順電圧のしきい電圧である0.6v近くまで推移していることを示している。
また、電解コンデンサーC1の電圧(Vc1)を写真3に、また、トランジスタQ2のベース電圧(Vbe)がどのうように推移するかを写真4に、それぞれ示した。
振子の揺動が最大振幅で安定するまでに、駆動コイル17にパルス電流が5回流れたことは、実験2の写真4で実証され、これは甲第3号証1頁の下側に示す表に記載したとおりである。
上記のように、写真3及び写真4に示される測定結果よれば、イ号装置の作用は、本件特許発明の作用と同一であることが確認できた。
すなわち、
・太陽電池30に光が当たりだして、コンデンサーC1に充電が開始され(写真1及び写真3)、
・その充電による電源電圧(Vc1)の上昇に伴い、コンデンサーC3に対して電源からの充電も開始され(写真2及び写真4)、
これらのコンデンサーC1、C3への初めての充電後、コンデンサーC3の充電電圧上昇とほぼ同等の電圧上昇をしているトランジスタQ2のベース電圧(Vbe)が、しきい電圧に到達して正帰還作用が起き、写真3のようにパルス通電の1回目が生じ、駆動コイル17に通電し、振子が自己起動している。
自己起動後は、自走発振回路作用でベース電圧の上昇が、振子の5往復目になってしきい電圧に近くなり、永久磁石16のコイル上面通過に伴う駆動コイル17の発電する電圧(誘導起電力)が加算されて、トランジスタQ2、Q1をONすることができた。振子は、自己起動後、2回目、3回目、4回目と、パルス通電により次第に強く励振され、5回目のパルス通電後には振れ幅が平均70度になり、振幅角度に比例する前記駆動コイル発電の誘導起電力も大きくなり、そのため、トランジスタQ2をONにする信号電圧が大きくなり、弛張発振回路の周期が振子周期の3往復分と短くなって、最大振幅で定常揺動を保持する状態になった。

上記の実験1、2によれば、上記のイ号装置の回路の動作は、本件特許明細書中の段落0013?段落0015、段落0033、図4、及び段落0036、図12等に記載された内容と一致することが確認できた。(判定請求書第6頁19行?第8頁30行)
(11)なお、イ号装置の回路(甲第5号証の図57)では、PNP型とNPN型の配置が本件特許発明の実施例の回路(甲第5号証の図56、本件特許発明の基本回路)と逆である。
しかしながら、本件特許明細書の段落0010には、「本発明はこの第1の実施例に限定されず、この図中の電源12のプラスとマイナスを逆にすると共に、2石のトランジスタ(TrPとTrN)のPNP型トランジスタTrPをNPN型に、NPN型トランジスタTrNをPNP型に変更しても実施することができる」との記載があり、特許請求の範囲の文言からも、電源12のプラスとマイナスを逆にすると共に、2石のトランジスタ(TrPとTrN)のPNP型トランジスタTrPをNPN型に、NPN型トランジスタTrNをPNP型にしたものが排除されることはない。イ号装置と本件特許発明は、NPN型とPNP型のトランジスタが対になって配置されていることに変わりはなく、電源コンデンサーC1に貯められた電荷を駆動コイル17に流すことができる。(判定請求書第8頁31行?第9頁10行)
(12)回路の動作上、イ号装置の太陽電池は、2.2Vの動作電圧を1.3V以下の低いものとしなくても(即ち、ダイオードD1がなくても)、初段トランジスタQ2のベース電圧は0.4Vとなるので、ダイオードD1は無意味な存在である。実際に、イ号装置の回路からダイオードD1を取去って作動テストをしたところ、その作動に変化は見られなかった。上記のように、このダイオードD1の挿入は、本件特許発明の作用効果に影響を与えるものではなく、本件特許発明を構成する基本回路からは省かれ得るものである。…(中略)…また、電源用電解コンデンサC12の容量や時定数設定用コンデンサC11の容量を変えたり、抵抗R1などの値を変えることで、トランジスタTrNのベース電圧を適正に浅く設計することは本件特許発明の範囲内のものであり、上記のような、ダイオードD1の挿入も単なる設計事項にすぎない。(判定請求弁駁書第10頁11行?21行)
(13)CR直列回路は、本件特許基本回路に必須なものではなく、駆動コイルの自己誘導係数の値によっては、省略してもトランジスタを破壊せずに作動する。また、CR直列回路は、自己誘導係数の大きな駆動コイルでは、トランジスタを保護するために駆動電流OFF時に発生する自己誘導逆電圧を吸収する。しかし、このCR直列回路は、前記自己誘導逆電圧を吸収するダイオードなどに代替可能なものである。(判定請求弁駁書第10頁29行?第11頁1行)
(14)また、R2の抵抗については、これが不可欠なものでないことを証明するため、図5のプリント基板の「抵抗はずし孔」で判るように、図6の点線で示されたR2を取去っても作動することを確認済みである。
さらに、近年トランジスタがシリコンで作られるために、トランジスタの漏れ電流に関係するICBOの値データが小さくなり、トランジスタTrNのベース・エミッタ間抵抗R2が無くても作動するため、甲第5号証では、R2を基本回路に不要なものにした。(判定請求弁駁書第11頁17行?22行)

2 判定被請求人の主張
(1)請求人の主張する「イ号装置」なるものが弊社製品「ミニフリモ」を指すとの前提に立てば、「イ号装置が、請求人の提出した

図50(イ号装置の分解写真)、
図51(梱包外観及び分解第1段階の写真)、
図52(分解の第2段階の写真)、
図53(部品レイアウトを示す基板写真)、
図54(個々の部品を回路シンボルに置き換えた部品レイアウト対応の回路図)、及び 図55(部品レイアウトを無視した電気製図後の回路図)

に示す構造を備えたものである」とする請求人の主張は、これを認める。(判定請求答弁書第5頁14行?22行)
(2)しかし、図55(部品レイアウトを無視した電気製図後の回路図)から本件特許の構成要件(イ?ケ)以外のものを機械的に削除したものをイ号装置の基本回路図であると勝手に決めつけた上で、「イ号装置が、図57(イ号装置の基本回路図)に示す構造を備えたものである」とする請求人の主張は、これを認めることができない。(判定請求答弁書第6頁1行?6行)
(3)請求人は、「イ号装置は、その電気、機械的作動原理、及び電気的回路構成について、被請求人の特許出願に係る特開2007-199308号公報(甲第1号証)に記載の揺動装置(実施例1に示される表示体揺動装置)とその構成が一致している。」と主張するが、この主張は全く根拠がない。(判定請求答弁書第6頁7行?10行)
(4)「イ号装置と本件特許発明とは利用分野において同一である」とする請求人の主張は、必ずしも正確ではない。
すなわち、そもそも、イ号装置(本件特許発明中の語句にしたがえば、「自由振動体」と「自励発振回路」とが組み合わされてなる「揺動装置」)なるものは、請求人の提出する甲第2号証からも明らかなように、販売される時点では「揺動意匠体」(意匠パネル102)は取り付けられておらず、販売後に顧客の側で任意の「揺動意匠体」が取り付けられて使用される、いわば任意の揺動意匠体に対応可能な「汎用揺動装置」のことである。勿論、販売側で顧客の要望に応じて最適な揺動意匠体を推奨乃至提供することはあるにしろ、イ号装置それ自体はあくまでも「汎用揺動装置」として単独に販売される。(判定請求答弁書第6頁20行?第7頁6行)
(5)請求人の主張は、イ号装置の構成を実際に検証することなく、甲第1号証の該当箇所の記載を単に転記するだけに過ぎない安易かつ極めて不誠実なもので、「駆動コイル17が振子体12に設けられている」等の明らかな誤記も含むほか、弛張発振回路18の動作に至っては、「所定の周期でパルス状の電流を供給している」として、恰も従前の自走発振回路の動作と何ら変わりのないものである。したがって、被請求人としては、このような事実認定については、これを到底認めることはできない。(判定請求答弁書第8頁21行?第9頁3行)
(6)また、永久磁石16と駆動コイル17との位置関係は振子体12が静止状態にあるとき、永久磁石26の垂直な長辺側縁線が駆動コイル17の中心の上に位置するように設定されている。これより、振子体12の起動時に揺動方向へと最大の電磁反発力が得られる。
なお、上記の駆動コイル17と永久磁石26との位置関係が、本件特許発明おける文言(すなわち、「…相手の揺動運動中立点付近に配置して…」)に含まれるかについては、異論がある。なぜなら、本件特許発明の文言中の「揺動運動中立点付近」なる語句については、特許明細書の段落0013に、「…駆動コイル4が固定側の、ほぼ振子真下に固着していると時、いいかえれば、振子によって、その移動方向が制限された永久磁石の揺動運動中立点付近に駆動コイルがある時」として、語句の定義がされているのに対して、上述の通り、イ号装置において、駆動コイルは、ほぼ振子真下には存在しないから、上記語句の定義からは外れるからである。(判定請求答弁書第9頁12行?第10頁2行)
(7)「イ号装置の構成が、図50、図51、図52、図53、図54、及び図55に示された通りである」とする請求人の主張は、これを認める。
また、「甲第1号証の図8に示す回路図が、甲第4号証の図55の回路図を左右上下を逆にしたものである」とする請求人の主張も、これを認める。
さらに、イ号装置の弛張発振回路18における、NPNトランジスタQ1とPNPトランジスタQ2 との接続関係についての請求人の主張についても、これを認める。
しかし、「甲第1号証の図8に示す回路図が、基本的には、本件特許発明の回路図と同一である」とする請求人の主張は、これを認めない。…(中略)…。
したがって、イ号装置の回路(図57)と本件特許発明の回路(図56)との電流方向の違いを矢印で示した「比較用基本回路図」である甲第5号証に関する請求人の主張も、これを認めない。(判定請求答弁書第10頁5行?第10頁17行)

第4 イ号装置
1 イ号装置図面並びにその説明書について
(1)甲第4号証1頁には、図50として、フレーム本体に駆動コイル、振り子用紙時軸、マグネット保持部、電子部品実装プリント基板、太陽電池を示すイ号装置の分解写真が示されている。
(2)甲第4号証2頁には、図51及び図52として、判定被請求人であるワヨー株式会社の商品ミニフリモの、透明化粧箱に収納されている写真、箱から出した写真、分解途中の写真が示されている。
(3)甲第4号証3頁には、図53として、図52に示された電子部品実装プリント基板の拡大写真が、図54として、図53に示された写真を回路図としたものが、図55として、図54を整理した回路図が示されている。
(4)甲第2号証には、ミニフリモ取扱い説明書と記載され、ソーラーパネルとリード線で接続された本体により本体フルセットが構成され、セット内容がウエイト付き本体及びセットパーツから構成されることが示されている。

2 イ号装置
判定請求人の主張は、イ号装置の回路図を示す図面である図55に記載された電子部品の一部の部品について、上記「第3 1(12)?(14)」に記載のとおり、不要あるいは代替可能であると主張するとともに、本件特許発明の作用効果に影響を与えるものではないから、本件特許発明からは省かれ得るものであるとして、イ号装置図面は図57として示された図面に置き換え可能であると主張している。
ダイオードD1やコンデンサC2や抵抗R01が付加的な機能を奏するためのものであって、これらをイ号装置図面として示された図55から機械的に削除したとしても、動作原理が本件特許発明と変わらないといえるのであれば、本件特許発明の対応する構成要件を充足するといえる。しかしながら、その点については、対比・判断において検討すれば足りるから、図55に示された構成を基にイ号物件を認定することとする。
なお、「甲第1号証の図8に示す回路図が、甲第4号証の図55の回路図を左右上下を逆にしたものである」とする判定請求人の主張については、上記「第3 2(7)」において判定被請求人も認めるとおりであるから、上記「1(1)?(4)」の記載事項及び甲第1号証の明細書の段落【0022】、【0023】、【0027】?【0032】の記載及び図8の記載を参酌して、イ号装置は、次のとおりの構成を具備するものと認められる。(以下分節された構成要件について「構成要件(ア)」などという。)

(ア)フレーム本体、振子体、振子体の支持軸、この振子用支持軸の両端をフレーム本体に支承する振子用軸受部、1つの永久磁石、1つの駆動コイル、弛張発振回路、重量バランス調整用重り等を備えている揺動装置において、
(イ)前記弛張発振回路は、駆動コイルに所定の周期でパルス状の電流を供給して駆動コイルをこれに正対する永久磁石の極性と反発し合う同極性に励磁することにより、減衰的な慣性揺動運動で揺動する振子体の揺動運動を駆動コイルと永久磁石との磁気的反発作用で助長するものであって、NPNトランジスタQ1とPNPトランジスタQ2を備え、NPNトランジスタQ1のベースは抵抗R06を介してPNPトランジスタQ2のコレクタに接続され、PNPトランジスタQ2のベースは周期設定用コンデンサC3及び抵抗R02を介してNPNトランジスタQ1のコレクタに接続されており、
(ウ)NPNトランジスタQ1のコレクタには駆動コイルの一端が接続され、この駆動コイルの他端は電源用の電解コンデンサC1の+極及び太陽電池の正極に接続されていて、
(エ)NPNトランジスタQ1のコレクタと電解コンデンサC1の+極及び太陽電池の正極との間には、駆動コイルに流されるパルス電流の時定数を設定するためのコンデンサC2と抵抗R01との直列回路が接続されており、
(オ)PNPトランジスタQ2のエミッタは、電解コンデンサC1の+極及び太陽電池の正極に接続され、PNPトランジスタQ2のエミッタとベースとの間にはバイアス抵抗R03が接続され、さらに、PNPトランジスタQ2のベースとグランドとの間にはバイアス抵抗R04が接続されていて、コンデンサC3と抵抗R02との接続点と電解コンデンサC1の+極及び太陽電池の正極へのラインとの間には、駆動コイルに流されるパルス電流を波形整形するダイオードD1が接続されており、
(カ)前記太陽電池は太陽光または照明光などの光を電流に変換するものであり、この太陽電池から出力される電流は電源用電解コンデンサC1に充電されるように構成されていて、
(キ)上記電解コンデンサC1と太陽電池は、弛張発振回路及び駆動コイルに電力を供給する電源を構成していて、
(ク)前記振子体のマグネット保持部材の第1支持部と対向する面には、矩形板状の永久磁石が設けられていて、前記駆動コイルは、矩形状永久磁石の長尺方向の寸法より大きい径の円盤状を呈しており、この駆動コイルは振子体の永久磁石と正対する第1支持部の内側箇所に所定の間隙を置いて配設されており、永久磁石と駆動コイルとの位置関係は振子体が静止状態にあるとき、永久磁石の垂直な長辺側縁線が駆動コイルの中心の上に位置するように設定されて、
(ケ)太陽電池に太陽光または照明灯光などの光が当てられると、太陽電池から電圧が発生し、この電圧は弛張発振回路に供給されるとともに電解コンデンサC1に充電されて、この電解コンデンサC1に充電された電圧は弛張発振回路及び駆動コイルの駆動に供され、
(コ)かかる状態において、弛張発振回路に太陽電池または電解コンデンサC1から電力が供給されると、この弛張発振回路のトランジスタQ1及びQ2は、コンデンサC3と抵抗R02で設定される時定数に従って、振子体が所定数揺動往復する間の期間OFF状態に保持され、この期間中は駆動コイルに電流は流れず、駆動コイルは励磁されることがなく、
(サ)一方、その時定数に従いコンデンサC3の端子電圧がトランジスタQ2のベースに対し逆バイアスとなるマイナス側から順バイアスとなるプラス側へ移行し、そして、その端子電圧がトランジスタQ2をONさせるのに必要な電位近くに達するとトランジスタQ2にベース電流が流れ、このトランジスタQ2がONされると同時にトランジスタQ1もONされ、駆動コイルに電流が流れると同時に駆動コイルが励磁され、この時のトランジスタQ1及びQ2のオン時間はコンデンサC2と抵抗R01の時定数により設定され、
(シ)トランジスタQ1及びQ2がオンされることにより駆動コイルにトランジスタQ1を通して電流が流れると、永久磁石と対向する側の駆動コイルのコイル端面は永久磁石の極性と同一の極性となるように励磁されるため、この駆動コイルと永久磁石との磁気的反発作用により、永久磁石及び重りを含む振子体は振子用支持軸を支点にして振られるとともに加速され、永久磁石及び重りを含む振子体はこれらの自重による慣性力で往復揺動される、
(ス)揺動装置。

第5 対比・判断
本件特許発明とイ号装置とを対比する。
1 イ号装置の構成(ア)及び(ス)と、本件特許発明の構成要件(A)及び(I)について。
本件特許発明の揺動装置は、「揺動意匠体を配置した」ものとされているから、揺動意匠体を配置するための揺動装置ではなく、現に揺動意匠体が配置された状態の揺動装置であると解するのが相当である。
一方、上記「第3 2(4)」において判定被請求人は、イ号装置が任意の揺動意匠体に対応可能な「汎用揺動装置」である旨主張し、本件特許発明の「揺動意匠体の自己起動する揺動装置」には当たらない旨主張している。
ここで、上記「第3 2(4)」において判定被請求人も認めるとおり、イ号装置には揺動意匠体たる意匠パネル102を取り付けて使用することができるものであり、甲第2号証にも、意匠パネル102を取り付けてみた態様が示されているが、現に揺動意匠体が配置された状態の揺動装置であるとはいえないから、イ号装置が「揺動意匠体を配置した」ものと認めることはできず、文言上、「揺動意匠体を配置した」点を充足しない。
よって、イ号装置の構成(ア)及び(ス)は、本件特許発明の構成要件(A)及び(I)を一応充足していない。

2 イ号装置の構成(ク)と、本件特許発明の構成要件(E)について。
本件特許発明の(E)の、「この永久磁石と前記駆動コイルとのいずれか一方を揺動側に配設し、他方を固定側の、相手の揺動運動中立点付近に配設して揺動側の自由振動体を揺動させ、」との構成にどのような意義があり、「相手の揺動運動中立点付近」が具体的にどの位置であることを要するのか、以下、本件特許明細書の記載を参酌して検討する。
本件特許明細書には、「永久磁石」と「駆動コイル」に関し次のような記載がある。
「(作用)このように構成された本発明の作用を説明するにあたって、本発明を第1の実施例の図3の図面中の符号によって説明すると、駆動コイル4と永久磁石7とが少しの隙間で対向して、永久磁石7が揺動側下端(振子下端)にあり、駆動コイル4が固定側の、ほゞ振子真下に固着している時、いいかえれば、振子によって、その移動方向が制限された永久磁石の揺動運動の中立点付近に駆動コイルがある時、直流電源12による電源電圧がスイッチ9の投入により2石のトランジスタによる自走発振回路にかけられると、NPN型トランジスタTrNは、抵抗R1を通る微少ベース電流により増幅されたコレクタ電流を流し、そのトランジスタTrNのコレクタにベースが接続されたPNP型トランジスタTrPもON状態になり、コレクタ電流を流す、その時、そのトランジスタTrPのコレクタ電流の一部はタイマー時定数設定用コンデンサーC11への充電電流として抵抗R8を通って流れ、その充電電流は、前記トランジスタTrNのベース電流として流れるので、正帰還作用により瞬間的に両トランジスタがON状態になる。」(段落【0013】)
「この自走発振回路の前記起動時の電気的作用は公知であり、若し駆動コイル4だけがあり永久磁石7が無ければ、その作用により、この回路は一定の周期、周波数で前記作用を繰り返すものであり、なんら新規性のあるものといえない。しかし本発明の場合、駆動コイル4に対して相対的に移動可能な永久磁石7があり、振子が停止時に前記作用で駆動コイル4に短期間通電したとき、前記永久磁石7の磁極極性と同極性磁界がその駆動コイル4面上にでき、前記永久磁石7と少しの隙間で対向している駆動コイル4との間に反発力となる電磁力が発生し、その電磁力で振子8は、その下端の永久磁石位置が、揺動運動の中立点付近から、始めの僅かな偏芯をより大きくするような方向に移動し、重力による復元力で戻りながら慣性による揺動運動を起動する。(本発明は揺動の復元力として重力以外の力も利用できる)」(段落【0017】)
「その後の本発明の回路の作用は、前記公知の自走発振回路の作用と根本的に違ったものとなる。前記のように重力などの復元力で僅かな振幅で振子が揺動し始めると、永久磁石が揺動運動の中立点に戻ってきた時に、駆動コイルと永久磁石との相対移動速度が最大になり、永久磁石から出る磁力線が駆動コイルの中心から即動コイル周外に移動する間、フレミングの右手の法則により、その駆動コイルに誘導起電力が発生する。その誘導起電力の方向が時定数設定用コンデンサC11や抵抗R8を経てNPN型トランジスタTrNのベース順電圧になることが本発明の特徴であり、しかも、例え、誘導起電力が発生したとしても、回路の作用で、その誘導電流を流したり流さなかったりすることが出来るのも本発明の特徴である。以下、図4、図5、図6によってこれを説明する。」(段落【0018】)
「説明のための1例として振子起動後の揺動4往復毎に1回の割で通電するトランジスタTrNベース電圧を図4のグラフ(A)で示している。図中、通電終了時点Oから通電開始P時点までの無通電A期間として実線曲線として示したベース電圧曲線は、振子8が揺動して永久磁石7が駆動コイル4の上を7回通過し、その間のベース電圧の変化を示している。図中点線で示した曲線は、振子がなく、永久磁石7が無いときのベース電圧の変化を表し、図中Q時点までの無通電B期間として示している。」(段落【0019】)
「この場合振子8の1往復中に、永久磁石7は駆動コイル4の上を2回通過するので、振子8の4往復揺動の期間中、8回永久磁石7と駆動コイル4が対向し、始めの1回の対向通電を除く7回の対向時には通電せず、無通電A期間として振子8の減衰的な慣性揺動運動を行っている。」(段落【0020】)
「次に、図18,図19に示す第7の実施例と、図20に示す第8の実施例について説明する。
第7の実施例は前記第6の実施例と振子静止時点での永久磁石の駆動コイルに対する左右配置と、その永久磁石のNS極性配置以外は同じ構造であり、図19は振子が静止しているとき、永久磁石170’の左右N,S両磁極の中央線が空芯駆動コイル140の左右中心線に対してdで示す片よりだけ離れていることを示している、この駆動コイル140に通電するとコイル左右両面のコイル磁軸線上にs,nで示した磁極の磁界が生じる、するとその磁界のs,nの向きと、永久磁石170’のN,Sの向きとが逆になり、永久磁石170’は図中矢印で示す方向に電磁反発力を受けて加速、移動する。」(段落【0063】)
「この時の起動方向は図中dで示した片よりのある方向であり、振子の重心位置によって決る永久磁石170’の振子静止時の駆動コイル140との相対位置がdの僅かな片よりの方向が起動方向になる、若し厳密に片よりなく振子の左右バランスをとって永久磁石170’の左右中心が駆動コイル140左右中心に完全静止時に一致していたならば、永久磁石170’は左右どちらへも移動することが出来ず、振子は自己起動出来ない、しかし、振子の軸受けがナイフエッジの場合、完全に静止させたり、完全にバランスをとることが出来ないので自己起動に問題はない。もし軸受構成の仕方により摩擦力も加わり、起動しにくいときは振子のバランスをくずして片よりdをより大きくとって構成する。」(段落【0064】)
「次に第8の実施例について説明すると、これは前記第5の実施例と振子静止時点での永久磁石の駆動コイルに対する左右配置と、その永久磁石のNS極性配置以外は同じ構造であり、図20は振子が静止しているとき、永久磁石170’の上下N,S両磁極の磁軸中心線が空芯駆動コイル140の磁軸中心線に対してdで示す片よりだけ離れていることを示している、この駆動コイル140に通電するとコイル上下両面のコイル磁軸線上に図中s,nでしめした磁極の磁界が生じる、するとその磁界のs,nの向きと、永久磁石170’上下のN,Sの向きとが逆になり、永久磁石は図中矢印で示す方向に電磁反発力を受けて加速、移動する。」(段落【0065】)
「この時の起動方向は図中dで示した片よりのある方向であり、振子の重心位置によって決る永久磁石170’の振子静止時の駆動コイル140との相対位置がdの僅かな片よりの方向が起動方向になる、若し厳密に片よりなく振子の左右バランスをとって永久磁石170’の左右中心が駆動コイル140左右中心に完全静止時に一致していたならば、永久磁石170’は左右どちらへも移動することが出来ず、振子は自己起動出来ない、しかし、振子の軸受けがナイフエッジの場合、完全に静止させたり、完全にバランスをとることが出来ないので自己起動に問題はない。もし軸受構成の仕方により摩擦力も加わり、起動しにくいときは振子のバランスをくずして片よりdをとって構成する。
フレミングの左手の法則によれば、永久磁石170’の下端が駆動コイル140の片側の導体群の真上にあるとき、初期駆動力が最大になるので、片よりdの最大値をこの範囲以内にすることが自己起動性をよくするために必要である。」(段落【0066】)

これらの記載によれば、本件特許発明の「永久磁石」と「駆動コイル」は、「駆動コイル4に対して相対的に移動可能な永久磁石7があり、振子が停止時に前記作用で駆動コイル4に短期間通電したとき、前記永久磁石7の磁極極性と同極性磁界がその駆動コイル4面上にでき、前記永久磁石7と少しの隙間で対向している駆動コイル4との間に反発力となる電磁力が発生し、その電磁力で振子8は、その下端の永久磁石位置が、揺動運動の中立点付近から、始めの僅かな偏芯をより大きくするような方向に移動し、重力による復元力で戻りながら慣性による揺動運動を起動する」ものであって、「重力などの復元力で僅かな振幅で振子が揺動し始めると、永久磁石が揺動運動の中立点に戻ってきた時に、駆動コイルと永久磁石との相対移動速度が最大になり、永久磁石から出る磁力線が駆動コイルの中心から即動コイル周外に移動する間、フレミングの右手の法則により、その駆動コイルに誘導起電力が発生する」ものである。そうすると、「相手の揺動運動中立点付近」との構成は、駆動コイルと永久磁石との最大相対移動速度による誘導起電力を利用することに意義を有するものということができる。ただし、「厳密に片よりなく振子の左右バランスをとって永久磁石170’の左右中心が駆動コイル140左右中心に完全静止時に一致していたならば、永久磁石170’は左右どちらへも移動することが出来ず、振子は自己起動出来ない」ことから、「永久磁石170’の左右N,S両磁極の中央線が空芯駆動コイル140の左右中心線に対してdで示す片よりだけ離れている」か、あるいは、「永久磁石170’の上下N,S両磁極の磁軸中心線が空芯駆動コイル140の磁軸中心線に対してdで示す片よりだけ離れている」ものと認められ、ここでいう「dで示す片より」は、駆動コイルと永久磁石との最大相対移動速度による誘導起電力が利用でき、かつ、自己起動が可能な程度の僅かなものというべきである。

一方、イ号装置の永久磁石と駆動コイルの位置関係については構成(ク)に、「永久磁石と駆動コイルとの位置関係は振子体が静止状態にあるとき、永久磁石の垂直な長辺側縁線が駆動コイルの中心の上に位置するように設定」されたものであって、このような配置におけるイ号装置の永久磁石と駆動コイルの間隔が、「駆動コイルと永久磁石との最大相対移動速度による誘導起電力が利用」できるものということはできず、また、「自己起動が可能な程度の僅かなもの」ということもできないのは明らかであるから、「相手の揺動運動中立点付近」との本件特許発明の構成要件を満たすとはいえない。

なお、本件特許明細書の段落【0019】には、本件特許のトランジスタTrNのベース電圧の変化を時間との関係で表したグラフである図4の説明として、
「説明のための1例として振子起動後の揺動4往復毎に1回の割で通電するトランジスタTrNベース電圧を図4のグラフ(A)で示している。図中、通電終了時点Oから通電開始P時点までの無通電A期間として実線曲線として示したベース電圧曲線は、振子8が揺動して永久磁石7が駆動コイル4の上を7回通過し、その間のベース電圧の変化を示している。図中点線で示した曲線は、振子がなく、永久磁石7が無いときのベース電圧の変化を表し、図中Q時点までの無通電B期間として示している。」
と記載されており、この本件特許明細書の図4によれば、振子の揺動1周期内にほぼ同じ2つの波形が繰り返されており、その波形相互の間隔は、振子が揺動して永久磁石が駆動コイルの上を通過する間隔によって決定されるもので、ほぼ一定の間隔であって、「永久磁石」と「駆動コイル」は、「いずれか一方を揺動側に配設し、他方を固定側の、相手の揺動運動中立点付近に配設」されたものであることに由来する波形であると認められる。
これに対して、判定請求人が、イ号装置のトランジスタQ2のベース電圧の変化を時間との関係で表した写真であるとした、甲第3号証の写真4においては、振子の揺動1周期内の波形は、本件特許明細書の図4に示されたものとは明らかに異なっており、この波形は、「永久磁石」と「駆動コイル」は、「いずれか一方を揺動側に配設し、他方を固定側の、相手の揺動運動中立点付近に配設」されたものではないことに由来する波形であると認められる。

したがって、イ号装置の「永久磁石」と「駆動コイル」は、「いずれか一方を揺動側に配設し、他方を固定側の、相手の揺動運動中立点付近に配設」したものということができないから、イ号装置の構成(ク)は、本件特許発明の構成要件(E)を充足していない。

3 よって、イ号装置は、少なくとも本件特許発明の構成要件(A)、(E)、(I)を充足していないから、その余の構成要件(B)?(D)、(F)?(H)について検討するまでもなく、本件特許発明の技術的範囲に属するとすることはできない。

第6 むすび
以上のとおり、イ号装置は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。


 
判定日 2012-03-26 
出願番号 特願平4-294695
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (G09F)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 鈴木 秀幹
小林 英司
登録日 1999-06-11 
登録番号 特許第2937287号(P2937287)
発明の名称 揺動意匠体の自己起動する揺動装置  
代理人 押野 宏  
代理人 大島 孝文  
代理人 永田 豊  
代理人 加藤 公延  
代理人 飯塚 信市  
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