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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  G01D
審判 一部無効 1項3号刊行物記載  G01D
管理番号 1255989
審判番号 無効2011-800163  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-09-08 
確定日 2012-04-25 
事件の表示 上記当事者間の特許第3477995号発明「車両用指針装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3477995号(以下、「本件特許」という。)は、特願平8-128704号として、平成8年5月23日に出願したものであって、平成15年10月3日に特許権の設定の登録(発明の名称は車両用指針装置、請求項の数は4である。)がなされたものである。
本件特許について、請求人から、平成23年9月8日付け審判請求書により、その請求項1ないし3に係る特許を無効とすることを請求の趣旨として本件特許無効審判(無効2011-800163号)が請求されたところ、被請求人から、同年12月1日付け答弁書の提出があった。
その後、平成24年2月14日付けで被請求人より第1回口頭審理陳述要領書が、また、同年同月16日付けで請求人より第1回口頭審理陳述要領書が提出され、同年3月2日に第1回口頭審理がなされた。

以下、本件特許に関し、その請求項1、請求項2、及び請求項3に係る特許を、それぞれ、本件特許1、本件特許2、及び本件特許3という。また、本件特許に関し、その請求項1、請求項2、及び請求項3に係る特許発明を、それぞれ、本件特許発明1、本件特許発明2、及び本件特許発明3といい、全体を総称して本件特許発明という場合もある。さらに、以下、本件特許に係る願書に添付した明細書及び図面を本件特許明細書等という。

第2 請求人の主張
請求人は、本件特許1ないし本件特許3を無効とする旨を請求の趣旨とし、その請求には理由があることについて、下記甲第1号証ないし甲第3号証の証拠方法を提出するとともに、本件特許1は、特許法第29条第1項3号の又は同条第2項の規定に違反して特許されたものであり、本件特許2、本件特許3は、いずれも、同法同条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により、いずれも無効とすべきものであると主張している。
そして、本件特許を無効とすべき無効理由は、審判請求書、第1回口頭審理陳述要領書(請求人)及び第1回口頭審理調書の記載内容を総合すれば、概略以下のとおりである。

1 無効理由
(1)本件特許発明1について
甲第1号証に記載の発明は、自動車の計器板照明用ランプ等の明るさを調節するための光量調節装置に関するものであり、その図1の回路図に示されたコンデンサC1を中心とする回路は、ランプ5の消灯時に所定の時間をかけて輝度を徐々に低下させるものであり、本件特許発明1の制御手段に対応する。したがって、甲第1号証に記載の発明は、本件特許発明1と実質的な差異はないし、また容易想到ともいえる。
(2)本件特許発明2について
自動車用計器板の照明を消灯するにあたり、目盛り板と指針とを共に消灯させることは、甲第2号証からも明らかなように常套手段であるから、本件特許発明2は、甲第1号証記載の発明から容易想到である。
(3)本件特許発明3について
キーオフ時に指針の照明を消灯するタイミングを目盛り板の照明を消灯するタイミングからずらすことは、甲第3号証より公知であるから、本件特許発明3は、甲第1号証記載の発明及び甲第3号証に記載の上記技術から容易想到である。

2 証拠方法
上記無効理由について請求人が提出した証拠方法は、いずれも、本件特許の出願前に頒布された刊行物であり、以下のとおりである。
・甲第1号証:特開平4-160794号公報;ランプの光量調節装置(発明の名称)に関し、本件特許1ないし3についての無効理由で引用された主引用例である。詳細は後述する。
・甲第2号証:実公平5-15058号公報;計器の照明装置(考案の名称)に関し、本件特許2についての無効理由で引用された副引用例である。詳細は後述する。
・甲第3号証:特開平4-266536号公報;車両用計器類照明装置(発明の名称)に関し、本件特許3についての無効理由で引用された副引用例である。詳細は後述する。

第3 被請求人の反論
被請求人は、本件特許無効審判の請求は成り立たない旨の審決を求め、その請求には理由がないことについて、答弁書、第1回口頭審理陳述要領書(被請求人)及び第1回口頭審理調書によれば、概略以下のとおり反論している。
本件特許発明1は、キースイッチオフ後の視認性の斬新さを乗員に与えるという課題を解決しようとしたものであり、甲第1号証には、このような課題について一切記載されていない。
また、甲第1号証の第1図に示された回路におけるコンデンサC1は、ランプ5に流れる突入電流を抑制するものであり、甲第1号証には、点灯操作スイッチ4のOFF後にコンデンサC1の放電時に伴ってランプ5の輝度を徐々に低下させるとの記載も示唆もない。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載の発明と同一ではなく、また、当業者といえども、甲第1号証に記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
本件特許発明1を実質的に限定したものに相当する本件特許発明2及び本件特許発明3についても、同様である。

第4 当審の判断
1 本件特許発明
本件特許発明1ないし本件特許発明3は、本件特許明細書等の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された以下のとおりのものである。
(1)本件特許発明1
「【請求項1】 目盛り板(20)と、この目盛り板上にて指示表示する指針(30)と、前記目盛り板を光により照射する照射手段(50)とを備えた車両用指針装置において、
車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する制御手段(112、112A、113、113A、121乃至124、130、130A)を備えることを特徴とする車両用指針装置。」
(2)本件特許発明2
「【請求項2】目盛り板(20)と、この目盛り板上に指示表示する発光指針(30)と、前記目盛り板を光により照射する目盛り板照射手段(50)と、前記発光指針を光により照射して発光させる指針照射手段(31)とを備えた車両用指針装置において、
車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する制御手段(112、112A、113、113A、121乃至124、130、130A)を備えることを特徴とする車両用指針装置。」
(3)本件特許発明3
「【請求項3】 前記制御手段が、その制御を、前記目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度低下度合を相互に異ならしめるように行うことを特徴とする請求項2に記載の車両用指針装置。」

2 本件特許発明の特徴
本件特許発明の技術的特徴をより明確に理解するために、本件特許明細書等の記載を参酌する。
(1)本件特許明細書等の記載
発明の詳細な説明には、次の記載がある。

ア 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、車両用指針装置に関する。
【0002】【従来の技術】従来、車両用指針装置においては、例えば、特開平6-201410号公報にて示されているように、当該車両のキースイッチのオンに伴い、指針を発光させた後所定時間の経過に伴い文字板を発光させて、乗員に対し視認性の斬新さを与えるようにしたものがある。
【0003】【発明が解決しようとする課題】しかし、上記指針装置では、キースイッチのオン後における視認性の斬新さをを与えることができるのみで、キースイッチのオフに伴う視認性の斬新さを与えることはできない。そこで、本発明は、このようなことに対処するため、車両用指針装置において、そのキースイッチのオフに伴う指針や目盛り板の明るさの変化に工夫を凝らし、キースイッチのオフ後の視認性の斬新さを乗員に与えるようにすることを目的とする。」

イ「【0004】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1、4に記載の発明によれば、制御手段が、キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段の照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する。これにより、目盛り板の明るさがキースイッチのオフ後徐々に低下するので、乗員に対し、この種指針装置におけるキースイッチのオフ後の斬新な視認性を提供できる。
【0005】この場合、目盛り板照射手段として発光ダイオードを用いれば、照射光がその輝度の低下過程において色変化を生ずることがなく、その結果、乗員に対し違和感を与えることがない。また、目盛り板及び指針をスモーク材料からなるカバーで覆蓋すれば、目盛り板の明るさの上記低下に伴う斬新な視認性を乗員に対し昼夜を問わず提供できる。
【0006】また、請求項2乃至4に記載の発明によれば、制御手段が、キースイッチのオフに伴い目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する。これにより、目盛り板及び発光指針の各明るさがキースイッチのオフ後徐々に低下するので、乗員に対し、この種指針装置におけるキースイッチのオフ後の斬新な視認性を提供できる。
【0007】この場合、目盛り板照射手段及び指針照射手段として発光ダイオードを用いれば、各照射光がその輝度の低下過程において色変化を生ずることがなく、その結果、乗員に対し違和感を与えることがない。また、目盛り板及び発光指針をスモーク材料からなるカバーで覆蓋すれば、目盛り板及び発光指針の各明るさの上記低下に伴う斬新な視認性を乗員に対し昼夜を問わず提供できる。
【0008】ここで、請求項3に記載の発明のように、制御手段が、その制御を、目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度低下度合を相互に異ならしめるように行えば、請求項2に記載の発明による斬新な視認性とは異なる斬新な視認性を提供できる。また、請求項4に記載の発明のように、制御手段が、その制御を、着座検出手段の検出に伴い停止すれば、乗員が当該車両から離れた後にも上記輝度低下制御を行うというような無駄を防止できる。」

ウ 「【0009】【発明の実施の形態】以下、本発明の各実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施の形態)図1乃至図5は、本発明に係る車両用指針装置の第1実施の形態を示しており、この指針装置は、当該車両のインストルパネルに配設されている。
・・・・・・・
【0014】駆動回路90aは、マイクロコンピュータ80による制御のもと、各発光ダイオード31aを発光駆動させる。また、駆動回路90bは、マイクロコンピュータ80による制御のもと、各発光ダイオード50aを発光駆動させる。このように構成した本第1実施の形態において、イグニッションスイッチIGのオン状態では、マイクロコンピュータ80は、図4のフローチャートに従うコンピュータプログラムの実行のもと、ステップ100にて、発光輝度Yを初期輝度Aとセットし、ステップ110にてNOとの判定をし、ステップ120にて各発光ダイオード31a、50aの発光駆動処理をしている。なお、発光輝度Yは、発光素子31及び光源50の発光輝度を表す。
【0015】しかして、上記発光駆動処理に伴い、駆動回路90aが、発光素子31の発光輝度をY=Aとするように各発光ダイオード31aを発光駆動し、また、駆動回路90bが、発光素子50の発光輝度をY=Aとするように各発光ダイオード50aを発光駆動する。これにより、目盛り板20が、光源50の各発光ダイオード50aにより初期輝度Aにて照射される。また、自発光指針30が発光素子31の各発光ダイオード31aにより初期輝度Aにて照射されて発光する。
【0016】このような状態において、イグニッションスイッチIGをオフ(図5参照)すると、ステップ110にてYESと判定され、ステップ111にて時間データtがt=0とクリアされる。以後、ステップ112、113、120、130を循環する処理において、ステップ113にて繰り返し加算更新される時間データt=t+1に応じ、ステップ112にて次の数1の式に基づき発光輝度Yが算出され、この発光輝度Yに基づきステップ130にて各発光ダイオード31a、50aの発光駆動処理がなされる。
【0017】
【数1】Y=A{1-(t/T)}
但し、この数1の式において、符号Tは、発光素子31及び光源50の各発光輝度の低下割合を特定する値に対応する。しかして、このような発光駆動処理に伴い、発光素子31がステップ112における各算出輝度Yにて発光するように、各発光ダイオード31aが駆動回路90aにより発光駆動される。また、光源50がステップ112における各算出輝度Yにて発光するように、各発光ダイオード50aが駆動回路90bにより発光駆動される。
【0018】このため、図5にて示すように、イグニッションスイッチIGのオフに伴い、発光素子31及び光源50の各発光輝度は、各直線L1、L2に沿い順次低下していく。従って、自発光指針30の明るさ及び目盛り板20の明るさも共に同様に低下していく。このように、イグニッションスイッチIGオフ後には、自発光指針30及び目盛り板20が瞬時に暗くなることなく時間データtの増大に比例して暗くなっていくので、イグニッションスイッチIGオフ後の自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を乗員に提供できる。
【0019】この場合、自発光指針30及び目盛り板20には発光ダイオードが採用してあるので、自発光指針30及び目盛り板20の各発光輝度の低下過程において発光色が変化することない。このため、乗員の違和感を与えることもない。また、上述のようにフロントカバー70がスモーク材料からなれば、上述のようなイグニッションスイッチIGオフ後の自発光指針30及び目盛り板20の各明るさの低下過程が昼夜を問わず視認され得るので、上記斬新な視認性の提供が昼夜を問わず可能となる。
【0020】なお、t=Tとなりステップ120における判定がYESになると、ステップ121において、Y=0に基づき上記発光駆動処理が停止される。これにより、発光素子31及び光源50の各発光輝度が零となる。このとき、上述のようにフロントカバー70がスモーク材料からなれば、その内部は全く見えない状態になる。」

エ 「(第2実施の形態)図7は、本発明の第2実施の形態の要部を示している。
【0022】この第2実施の形態では、上記第1実施の形態におけるフローチャートにおいてステップ111以後のフローチャート部分が図7にて示すように変形されている。その他の構成は上記第1実施の形態と同様である。このように構成した本第2実施の形態において、上記第1実施の形態にて述べたと同様にステップ111にて時間データtがt=0とクリアされると、次のステップ111aにおいて、光源50の発光輝度(以下、発光輝度Y1という)が、上記第1実施の形態にて述べた初期輝度Aよりも低い所定輝度B(図8参照)にセットされる。
【0023】以後、ステップ112A、113、113A、130Aを循環する処理がなされる。この処理においては、ステップ113にて繰り返し加算更新される時間データt=t+1に応じ、ステップ112Aにて発光輝度Yが上記数1の式に基づき算出されるとともに、発光輝度Y1が次の数2の式に基づき算出される。なお、本第2実施の形態では、ステップ112A以後における発光輝度Yは、発光素子31のみの発光輝度として処理される。従って、数1の式における値Tは、発光素子31のみに対応する。
【0024】
【数2】Y1=B{1-(t/T1)}
但し、この数2の式において、符号T1は、上記値Tよりも短い値(図8参照)で、光源50の発光輝度の低下割合を特定する値に対応する。しかして、ステップ130Aでは、発光輝度Yに基づき発光素子31の各発光ダイオードの発光駆動処理がなされるとともに、発光輝度Y1に基づき光源50の各発光ダイオードの発光駆動処理がなされる。
【0025】このような発光駆動処理に伴い、発光素子31がステップ112Aにおける各算出輝度Yにて発光するように、各発光ダイオード31aが駆動回路90aにより発光駆動される。また、光源50がステップ112Aにおける各算出輝度Y1にて発光するように、各発光ダイオード50aが駆動回路90bにより発光駆動される。
【0026】このため、t=T1に達する前は、図8にて示すように、イグニッションスイッチIGのオフに伴い、発光素子31及び光源50の各発光輝度は、各直線L3、L2に沿い順次低下していく。従って、自発光指針30は、目盛り板20より明るい状態を維持しつつ、自発光指針30及び目盛り板20の各明るさが共に同様に低下していく。
【0027】然る後、t=T1となりステップ113Aにおける判定がYESになると、ステップ113Bにおいて、Y1=0に基づき光源50の発光駆動処理が停止される。これにより、光源50の発光輝度が零となる。その後、ステップ120、122、123、124を循環する処理において、ステップ123にて加算更新される時間データtに応じ、ステップ122にて発光素子31の発光輝度Yが数1の式に基づき算出され、この各算出発光輝度Yに基づきステップ124において発光素子31の各発光ダイオードの発光駆動処理がなされる。
【0028】このような発光駆動処理に伴い、光源50の発光停止のもと、発光素子31がステップ122における各算出輝度Yにて発光するように、各発光ダイオード31aが駆動回路90aにより発光駆動される。このため、t=T1後t=Tに達するまで、図8にて示すように、発光素子31の発光輝度のみが、直線L3に沿い順次低下していく。従って、自発光指針30の明るさも同様に低下していく。
【0029】以上述べたように、本第2実施の形態では、イグニッションスイッチIGオフ後には、自発光指針30が目盛り板20よりも明るい状態を維持しつつ、自発光指針30及び目盛り板20の各明るさが時間データtの増大に応じ暗くなっていくので、イグニッションスイッチIGオフ後の自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を上記第1実施の形態とは異なる斬新な視認性を乗員に提供できる。」

(2)本件特許発明1について
上記記載事項アないしエによれば、車両用指針装置において、従来、キースイッチのオン後における視認性の斬新さをを与えることはできるものの、キースイッチのオフに伴う視認性の斬新さを与えることはできなかったところ、本件特許発明1は、「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する制御手段(112、112A、113、113A、121乃至124、130、130A)を備え」(請求項1)たことにより、「目盛り板の明るさがキースイッチのオフ後徐々に低下するので、乗員に対し、この種指針装置におけるキースイッチのオフ後の斬新な視認性を提供できる。」(イ【0004】)との作用効果を奏する点に、その技術的特徴があるものと認められる。
そして、目盛り板照射手段の照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する具体的制御手段は、目盛り板照射手段の照射光の発光輝度Yが、Y=A{1-(t/T)}に従って低下していくように、本件特許明細書等の図4に示されたフローチャートに従って、マイクロコンピュータ80が光源50を駆動制御するというものである。ここで、Aは初期輝度であり、Tは低下割合を特定する値である。
この制御手段によれば、発光輝度Yは、本件特許明細書等の図5に示すように、イグニッションスイッチIGをオフにした時点の輝度Aから、直線的に低下していき、時間Tが経過後に零になることが理解できる。

(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する制御手段(112、112A、113、113A、121乃至124、130、130A)を備え」(請求項2)たことにより、「イグニッションスイッチIGオフ後には、自発光指針30及び目盛り板20が瞬時に暗くなることなく時間データtの増大に比例して暗くなっていくので、イグニッションスイッチIGオフ後の自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を乗員に提供できる。」(ウ【0018】)との作用効果を奏する点に、その技術的特徴があるものと認められる。
そして、目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する具体的制御手段は、上記(2)と同様である。

(4)本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明2において、「前記制御手段が、その制御を、前記目盛り板照射手段及び指針照射手段の各照射光の輝度低下度合を相互に異ならしめるように行う」(請求項3)ことにより、「イグニッションスイッチIGオフ後には、自発光指針30が目盛り板20よりも明るい状態を維持しつつ、自発光指針30及び目盛り板20の各明るさが時間データtの増大に応じ暗くなっていくので、イグニッションスイッチIGオフ後の自発光指針30及び目盛り板20の斬新な視認性を上記第1実施の形態とは異なる斬新な視認性を乗員に提供できる。」(エ【0029】)との作用効果を奏する点に、その技術的特徴があるものと認められる。

3 甲号各証の記載事項及び引用発明等
甲号各証の記載事項、及び甲号各証から把握される引用発明や周知技術、公知技術は、それぞれ以下のとおりである。

(1)甲第1号証について
無効理由に係る主引用例であって、甲第1号証である特開平4-160794号公報には、ランプの光量調節装置(発明の名称)に関し、次の事項アないしカが図面とともに記載されている。

ア 「(産業上の利用分野)
本発明は、例えば自動車の計器板照明用ランプ等の明るさを調節するための光量調節装置に関するものである。
(従来の技術)
自動車の計器板照明用ランプ等の光量を調節するために使用する光量調節装置としては、近来、電力用可変抵抗を利用するものに替えて、ランプ駆動回路と、該ランプ駆動回路の入力信号を発生するデユーティ比可変のパルス発振器とから構成するものが用いられており、この装置はパルスのデユーティ比を変えることにより光量を調節するものである。
ところで、ランプとして白熱電球を使用する場合、この白熱電球には例えば第3図中の二点鎖線で示すように点灯直後に大きな突入電流が流れるので、従来は、この突入電流によるランプ駆動回路の駆動素子の破壊を防止するために、駆動素子としてのトランジスタ等の容量を、点灯中に必要な容量よりも十分に大きくすることが多い。」(1頁右上欄5行?2頁左上欄11行)
イ 「(課題を解決するための手段)
上述した課題を解決するための手段を、実施例に対応する図面を参照して説明すると、本発明のランプの光量調節装置は、ランプ駆動回路1と、該ランプ駆動回路lの入力信号を発生するデユーティ比可変のパルス発振器2とから構成する光量調節装置に於いて、前記パルス発振器2は、電圧調整用抵抗R_(0)を介して直流電源3から給電する構成とすると共に、コンデンサC_(1)の充放電により制御する電源短絡回路6を並列に接続した構成とし、該電源短絡回路6は前記コンデンサC_(1)の放電状態に於いてONとして電源を短絡し、充電状態に於いてOFFとすると共に、ON-OFF間は連続的に電流を制御する構成としたものである。
上記の構成に於いて、電源短絡回路6は、エミッタ接地型トランジスタスイッチ回路のトランジスタQ_(4)のコレクタ、ベース間に上記制御用のコンデンサC_(1)を接続して構成することができる。そして、このトランジスタQ_(4)のエミッタ、ベース間のバイアス抵抗R_(6)に代えて、電源に対して逆極性のダイオードDを設けた構成とすることができる。」(2頁左上欄12行?右上欄12行)

ウ 「(作用)
以上の構成に於いて点灯操作スイッチ4をONとすると、ランプ駆動回路1には瞬時に所定の電源電圧が加わり、またパルス発振器2並びに電源短絡回路6にも電圧調整用抵抗R_(0)を介して所定の電源電圧が加わる。
電源短絡回路6に電源電圧が加わった時点に於いてはコンデンサC_(1)は放電状態であり、従ってこの電源短絡回路6は即座に動作してONとなり電源を短絡する。このため電圧調整用抵抗R_(0)に短絡電流が流れ、その負荷側の電圧、即ちパルス発振器2並びに電源短絡回路6に供給される電源電圧は即座に降下する。この動作と共にコンデンサC_(1)には次第に電荷が蓄積されて充電が進行するので、電源短絡回路6に流れる短絡電流は次第に減少していく。従って電圧調整用抵抗R_(6)の負荷側の電圧も次第に上昇していく。このためパルス発振器2のパルス出力電圧、そしてランプ駆動回路lの入力信号電流も徐々に上昇することになる。
そのためランプ駆動回路1の駆動素子としてのトランジスタQ_(1)等は、入力信号電流に応じて当初は能動領域に於いて動作して出力電流を制限し、続いて入力信号電流が上昇するにつれて出力電流も上昇していく。このため、点灯直後にランプ5に流れる突入電流を例えば第3図中の実線で示すように抑制することができる。
このようにして所定の時間が経過してコンデンサC_(1)が所定の充電状態となると、電源短絡回路6がOFFとなってパルス発振器2に所定の電源電圧が加わるようになり、従ってパルス発振器2は所定のパルス出力電圧を発生してランプ駆動回路lを通常の動作状態としてランプ5を通常の点灯状態とする。
次に点灯操作スイッチ4をOFFとして電源電圧の供給を停止すると、電源短絡回路6のコンデンサC_(1)に蓄積されている電荷が次第に放電され、所定の時間経過後には所定の放電状態となって、次の点灯操作に備えることとなる。
上記の電源短絡回路6は、エミッタ接地型トランジスタスイッチ回路のトランジスタQ_(4)のコレクタ、ベース間に制御用のコンデンサC_(1)を接続して構成することができ、かかる構成に於いてはトランジスタスイッチ回路がONとなると、コンデンサC_(1)に加わる電圧はトランジスタQ_(4)のコレクタ、エミッタ間の飽和電圧程度となるので、所定の長さの時定数を小さな容量で得ることができる。また、このようなトランジスタスイッチ回路に於いて、エミッタ、ベース間のバイアス抵抗R_(6)に代えて、電源に対して逆極性としたダイオードDを設ければ、ランプ5の消灯時に於ける上述のコンデンサC_(1)の放電をより短時間に行うことができ、消灯、点灯操作間の時間間隔が比較的短い場合にも上述した突入電流の抑制を確実に行うことができる。」(2頁右上欄13行?3頁左上欄6行)

エ 「(実施例)
次に本発明の実施例を図について説明する。
第1図は本発明の全体構成の一例を表した回路図であり、lはランプ駆動回路、2は該ランプ駆動回路の入力信号を発生するデユーティ比可変のパルス発振器、3は直流電源、4は点灯操作スイッチ、5は白熱電球のランプである。また符号R_(0)は電圧調整用抵抗であり、前記パルス発振器2は、この電圧調整用抵抗R_(0)を介して直流電源3から給電する構成としている。そして、このパルス発振器2には、コンデンサC_(1)の充放電により制御する電源短絡回路6を並列に接続している。」(3頁左上欄7行?18行)

オ 「次に上記の電源短絡回路6は、エミッタ接地型トランジスタスイッチ回路を構成するトランジスタQ_(4)のコレクタ、ベース間に上述の制御用のコンデンサC_(1)を接続して構成している。尚、符号R_(5)は電流制限用抵抗、R_(6)はバイアス抵抗である。
以上の構成に於いて点灯操作スイッチ4をONとすることによりパルス発振器2と共に電源短絡回路6に電圧調整用抵抗R_(0)を介して所定の電源電圧が加わると、後述するように、それまで放電状態にあったコンデンサC_(1)に充電電流が流れ、この充電電流は電流制限用抵抗R5を経てトランジスタQ_(4)のベースに流入してエミッタに流れる。従ってトランジスタQ_(4)は飽和状態でONとなり、電源を短絡状態としてコレクタからエミッタ方向に短絡電流が流れる。この短絡電流により、電圧調整用抵抗R0の負荷側の電圧、即ちパルス発振器2並びに電源短絡回路6に供給される電源電圧は、トランジスタQ_(4)の飽和電圧程度、例えば0.4?0.7V程度まで即座に降下する。そのためパルス発振器2は即座には動作しない。一方、コンデンサC_(1)に加わる電圧も低下して、このような低電圧により充電が進行する。コンデンサC_(1)はこのような低電圧で充電されるので、小さな容量でも大きな時定数を得ることができる。
このようにしてコンデンサC_(1)に次第に電荷が蓄積されて充電が進行すると、該コンデンサC_(1)の電流制限抵抗R5側の電圧が次第に低下し、トランジスタQ_(4)のベース電流が減少するので、前記短絡電流も次第に減少していき、従って電圧調整用抵抗R_(0)の負荷側の電圧も次第に上昇していく。このためパルス発振器2のパルス出力電圧、そしてランプ駆動回路lの入力信号電流、即ち電流制限抵抗R_(1)を介してのトランジスタQ_(l)のベース電流も徐々に上昇することになる。
そのためランプ駆動回路1のトランジスタQ_(1)は、上記入力信号電流に応じて当初は能動領域に於いて動作して出力電流、即ちランプ5に流れる電流を制限し、続いて入力信号電流が上昇するにつれて出力電流も上昇していく。このため、点灯直後にランプ5に流れる突入電流を例えば第3図中の実線で示すように抑制することができる。
このようにして所定の時間が経過してコンデンサC_(1)が所定の充電状態となると、トランジスタQ_(4)がOFFとなって短絡電流がなくなり、こうしてパルス発振器2に所定の電源電圧が加わるようになる。従ってパルス発振器2は所定のパルス出力電圧を発生してランプ駆動回路1のトランジスタQ_(1)は飽和状態でON、そしてOFFを繰り返す。
次に点灯操作スイッチ4をOFFとして電源電圧の供給を停止すると、電源短絡回路6のコンデンサC_(1)に蓄積されている電荷は、この電源短絡回路6や、パルス発振器2、ランプ駆動回路lの構成要素を通して放電され、所定の時間経過後には所定の放電状態となって、次の点灯操作に備えることとなる。この場合、前記トランジスタスイッチ回路に於いて、エミッタ、ベース間のバイアス抵抗R_(6)に代えて、第2図に示すように電源に対して逆極性としたダイオードDを設ければ、このダイオードDを介して放電電流が流れやすくなり、従ってより短時間で所定の放電が完了し、従って消灯、点灯操作間の時間間隔が比較的短い場合にも上述した突入電流の抑制を確実に行うことができる。」(3頁右下欄1行?4頁左下欄3行)

カ 「(発明の効果)
本発明は以上の通り、ランプ駆動回路と、該ランプ駆動回路の入力信号を発生するデユーティ比可変のパルス発振器とを構成する光量調節装置に於いて、該パルス発振器に並列に、コンデンサの充放電により制御する電源短絡回路を接続することにより、点灯操作直後でランプの抵抗が小さい状態に於いては、駆動素子としてのトランジスタ等を、入力信号電流に応じて当初は能動領域に於いて動作させて出力電流を制限し、続いて入力信号電流が上昇するにつれて出力電流を通常状態まで上昇させるようにしているので、点灯直後にランプに流れる突入電流を抑制することができ、従って駆動素子の容量を十分に大きなものとして突入電流による破壊を防止する従来の方法と比較して、所要スペースを小さくできると共に、コストを低減することができるという効果がある。」(4頁左下欄7行?右下欄3行)

キ 全体構成の一実施例を表した回路図である第1図は、以下のとおりである。


ク 引用発明
甲第1号証は、自動車の計器板照明用ランプ等の明るさを調節するための光量調節装置に関するものであり、自動車の計器板は、当然に、目盛り板と該目盛り板上で指示表示する指針を備えるものである。
そこで、第1図として示された回路構成を計器板照明装置と呼び、これに目盛り板と指針とを加えたものを自動車の計器板装置と呼ぶこととする。
すなわち、光量調節装置=ランプ駆動回路1+パルス発振器2+電源短絡回路6、計器板照明装置=光量調節装置+直流電源3+点灯操作スイッチ4+白熱電球ランプ5+電圧調整用抵抗R_(0)、自動車の計器板装置=計器板照明装置+目盛り板+指針、と整理する。
してみると、上記の記載事項アないしカ及びキの第1図の記載内容を総合すると、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認める。

「目盛り板と、この目盛り板上にて指示表示する指針と、前記目盛り板を光により照射する白熱電球ランプ5を有する計器板照明装置とを備えた自動車の計器板装置において、
該計器板照明装置は、直流電源3と、点灯操作スイッチ4を介して該直流電源3に接続される白熱電球ランプ5と、電圧調整用抵抗R_(0)と、光量調節装置とからなり、
該光量調節装置は、前記白熱電球ランプ5に流れる駆動電流を制御するランプ駆動回路1と、前記電圧調整用抵抗R_(0)を介して直流電源3から給電され、そのデユーティ比を可変とし得るパルス信号を、出力部7を通して前記ランプ駆動回路1へ出力するパルス発振器2と、該パルス発振器2に並列に接続され、スイッチング回路を構成するトランジスタQ_(4)、該トランジスタQ_(4)のコレクタ、ベース間に接続された制御用のコンデンサC_(1)、並びに該コンデンサC_(1)に接続された電流制限用抵抗R_(5)及びバイアス抵抗R_(6)からなる電源短絡回路6とから構成される、
自動車の計器板装置。」(以下、「引用発明」という。)

(2)甲第2号証について
無効理由に係る副引用例であって、甲第2号証である実公平5-15058号公報には、計器の照明装置(考案の名称)に関し、次の事項が図面とともに記載されている。
「〔産業上の利用分野〕
本考案は自動車などの計器の照明装置に係り、特に文字板上の指針を、文字板の孔を介して導かれる光により光輝させるようにした照明装置に関するものである。
〔従来の技術及び考案が解決しようとする問題点〕
第2図?第5図に基づいて従来のこの種の計器照明装置を説明する。
第2図は計器の概観図であつて、文字板1の中心部には指針2の一端が保持されており、この指針基部は指針キヤツプ3により被覆されている。
第3図は計器照明装置の断面図である。図において、透明なアクリルなどからなる導光板4上には文字板1が貼着されており、この文字板1及び導光板4の中心部には孔5が穿設されている。この孔5を貫通して図示しない内機に連結された指針軸6が配され、この指針軸6の先端に指針2及び指針キヤツプ3が装着されている。前記導光板4は一端4aが曲折して光源7に対面しており、光源7からの光はこの端面から文字板1の背後に導かれる。また導光板4の孔5は約45度の傾斜の反射面4bを備えており、導光板4内の光は反射面4bで反射して指針基部2aから指針2内に導かれ、指針2全体を光輝させる。」
以上の従来技術に関する記載及び計器の照明構造を説明する断面図である第3図から、消灯時に、文字板の照明と指針の照明をともに消灯することは周知技術であるといえる。

(3)甲第3号証について
同じく、無効理由に係る副引用例であって、甲第3号証である特開平4-266536号公報には、車両用計器類照明装置(発明の名称)に関し、次の事項が図面とともに記載されている。
「【0009】車両のキースイッチ4をOFF位置からACC位置にすると、バッテリ5からアクセサリ電源端子4bを介して電源回路6aに電源が供給され、電源回路6aが起動して計器用点灯回路9へ直流電圧を供給する。計器用点灯回路9は、交流電圧を出力して計器用放電灯3aに印加し、計器用放電灯3aが点灯して目盛や文字などの計器全体部分3が照明される。
【0010】さらにキースイッチ4をACC位置からON位置にすると、バッテリ5からイグニッション電源端子4aを介して電源回路6bに電源が供給され、電源回路6bが起動して指針用点灯回路7へ直流電圧を供給する。指針用点灯回路7は、交流電圧を出力して指針用放電灯2aに印加し、指針用放電灯2aが点灯して指針2が照明される。
【0011】このように、計器全体部分3を照明する計器用放電灯3aをキースイッチ4のアクセサリ電源端子4bに接続し、指針2を照明する指針用放電灯2aをキースイッチ4のイグニッション電源端子4aに接続するようにしたので、キースイッチ4をOFF位置からACC位置、さらにON位置へ操作する時間差だけで、計器用放電灯3aおよび指針用放電灯2aが順に点灯され、従来のように点灯に時間差をもたせるためのタイマが不要となる。また、車両の乗員は、計器全体部分3だけが照明されていれば車両用キースイッチ4がACC位置にあり、指針2および計器全体部分3がともに照明されていればキースイッチ4がON位置にあることを認識できる。」

以上の記載から、車両のキースイッチをOFF位置からACC位置にすると、計器用放電灯が点灯し、その後、更にキースイッチをACC位置からON位置にすると指針用放電灯が点灯することが読み取れる。
ところで、車両のキースイッチは、エンジンを始動するとき、すなわち、OFF位置からON位置にするときには、その間に必ずACC位置を経由するようになっており、逆に、エンジンを停止するとき、すなわち、ON位置からOFF位置にするときも同様である。
よって、甲第3号証によれば、キーオフ時に、まず、指針の照明を消灯し、次いで、計器板の照明を消灯すること、すなわち、指針の照明の消灯と、計器板の照明の消灯とのタイミングをずらすことは公知技術であるといえる。

4 本件特許発明1についての判断
まず、本件特許発明1について検討する。
(1)対比
本件特許発明1と引用発明とを比較する。
まず、引用発明の「白熱電球ランプ5」は、本件特許発明1の「照射手段(50)」や「目盛り板照射手段」に相当する。
また、引用発明の「点灯操作スイッチ4」及び「自動車の計器板装置」は、本件特許発明1の「キースイッチ(IG)」及び「車両用指針装置」に、それぞれ相当する。
また、引用発明に係る計器板照明装置は点灯操作スイッチ4を備えているから、引用発明における「該計器板照明装置は、直流電源3と、点灯操作スイッチ4を介して該直流電源3に接続される白熱電球ランプ5と、電圧調整用抵抗R_(0)と、光量調節装置とからなり、
該光量調節装置は、前記白熱電球ランプ5に流れる駆動電流を制御するランプ駆動回路1と、前記電圧調整用抵抗R_(0)を介して直流電源3から給電され、そのデユーティ比を可変とし得るパルス信号を、出力部7を通して前記ランプ駆動回路1へ出力するパルス発振器2と、該パルス発振器2に並列に接続され、スイッチング回路を構成するトランジスQ_(4)、該トランジスタQ_(4)のコレクタ、ベース間に接続された制御用のコンデンサC_(1)、並びに該コンデンサC_(1)に接続された電流制限用抵抗R_(5)及びバイアス抵抗R_(6)からなる電源短絡回路6とから構成される、自動車の計器板装置」も、本件特許発明1における「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する制御手段(112、112A、113、113A、121乃至124、130、130A)を備えることを特徴とする車両用指針装置」も、共に、「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段を消灯する車両用指針装置」である点で共通する。
してみると両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「目盛り板と、この目盛り板上にて指示表示する指針と、前記目盛り板を光により照射する照射手段とを備えた車両用指針装置において、車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段を消灯する車両用指針装置。」
(相違点)
本件特許発明1は、「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する制御手段(112、112A、113、113A、121乃至124、130、130A)」を備えているのに対し、引用発明は、この点が明らかでない点。

(2)判断
新規性違反について
請求人は、引用発明における制御用のコンデンサC_(1)を中心とする回路は、本件特許発明1における照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する制御手段に相当するから、上記相違点は、実質的な相違点ではない旨主張しているので、主たる証拠である甲第1号証を中心に、以下検討する。
甲第1号証において、点灯操作スイッチ4をONにした時点をt_(1)、その所定時間後にOFFにした時点をt_(2)、再度ONにした時点をt_(3)とし、また、直流電源3の電圧をV_(0) 、白熱電球ランプ5(以下、単に「ランプ5」と表すこともある。)と電圧調整用抵抗R_(0)との結節点の電位をV_(a)、トランジスタQ_(2)と電圧調整用抵抗R_(0)との結節点の電位(パルス発振器2に印加される電圧)をV_(b)、コンデンサC_(1)と電流制限用抵抗R_(5)とバイアス抵抗R_(6)との結節点の電位をV_(c)、パルス発振器2の出力部7の電位をV_(d)と、それぞれ表すこととする。
このとき、時点t_(1)からt_(3)にかけて、各電位V_(a)、V_(b)、V_(c)及びV_(d)が、それぞれどのように変化するか、また、上記変化に応じて、ランプ駆動回路1、パルス発振器2及び電源短絡回路6は、それぞれどのような動作を行うかについて、本件特許発明1と比較しつつ、以下に検討する。

(ア)甲第1号証
A 点灯操作スイッチをONにしたとき
甲第1号証において、ランプ5と電圧調整用抵抗R_(0)との結節点の電位V_(a)、すなわち、ランプ5に印加される電圧は、点灯操作スイッチ4をONにした時点t_(1)においてゼロから電圧V_(0)に瞬時に立ち上がり、ONの間はV_(0)を維持し、OFFにした時点t_(2) で瞬時にゼロに戻り、再度ONにしたt_(3)で再び電圧V_(0)に瞬時に立ち上がり、以下、この動作を繰り返す。
このとき、トランジスタQ_(2)と電圧調整用抵抗R_(0)との結節点の電位V_(b)、すなわち、電源短絡回路6に供給される電源電圧は、時点t_(1)においてゼロから、所定の電圧(すなわち、V_(0)×R_(6)/(R_(6)+R_(0)))に瞬時に立ち上がり、その後、放電状態にあったコンデンサC_(1)に充電電流が流れ、トランジスタQ_(4)のベースに流入し、トランジスタQ_(4)が飽和状態になってONになるや、即座に、トランジスタQ_(4)の飽和電圧程度(0.4?0.7V)まで、降下する。その後、C_(1)、R_(0)、R_(6)で定まる時定数に従って、徐々に、上昇し、コンデンサC_(1)が所定の充電状態になるとトランジスタQ_(4)がOFFとなり、即座に所定の発振電圧となり、その後、電源電圧V_(0)にまで上昇し、その状態が維持される。
他方、コンデンサC_(1)と電流制限用抵抗R_(5)とバイアス抵抗R_(6)との結節点の電位V_(c)は、時点t_(1)においてゼロから、V_(b)と同様に、前記所定の電圧(すなわち、V_(0)×R_(6)/(R_(6)+R_(0)))に瞬時に立ち上がり、その後、C_(1)、R_(0)、R_(6)で定まる時定数に従って、徐々に下降し、ゼロに至り、維持される。
また、パルス発振器2の出力部7の電位V_(d)について見ると、前記V_(b)が所定の発振電圧になった時点で、V_(b)振幅とする矩形波状のパルス出力の発振を開始し、この発振は、出力部7の電位V_(d)が前記所定の発振電圧を超えている限り継続される。
そして、この発振する出力パルスがハイのとき、ランプ駆動回路1のトランジスタQ_(1)はONとなり、ローのときOFFとなり、以下これを繰り返すこととなる。
また、この間、ランプ5には、直流電源3による電圧V_(0)が印加されているから、前記出力パルスがハイのときのみ、ランプ5に直流電流が流れることとなり、結局、光量は、出力パルスのハイとローの比、すなわち、デユーティー比で定まることとなる。そして、このデユーティー比は、パルス発振器2の可変抵抗VRで変更することができるようになっている。

B 点灯操作スイッチをOFFにしたとき
・時点t_(2)
まず、甲第1号証において、点灯スイッチ4をOFFにした時点t_(2)について検討する。 時点t_(2)におけるランプ5の両端にかかる電圧についてみると、直流電源の電圧V_(0)はなくなるから、コンデンサC_(1)に蓄積されていた電荷に基づく電圧のみが、ランプ5の両端にかかる電圧に寄与することとなる。そして、このV_(C)の大きさは、点灯スイッチ4をOFFにする直前は、略V_(C)となっているが、この電圧値がそのままランプ5に印加されるのではなく、ランプ5には、電圧調整用抵抗R_(0)とランプ5の定常状態における抵抗(以下、「R_(L)」という。)とで分圧された電圧、すなわち、V_(0)×R_(L)/(R_(0)+R_(L))が印加されることになる。
したがって、時点t_(2)においては、ランプ5に印加される電圧は、これまでV_(0)であったものが瞬時に、V_(0)×R_(L)/(R_(0)+R_(L))に降下することとなる。
また、この電圧降下に伴い、ランプ5に流れる電流もR_(L)/(R_(0)+R_(L))だけ低下することとなる。
ところで、ランプの輝度は、一般に、ランプの消費電力におよそ比例するとみて良く、ランプの消費電力は、ランプに印加される電圧とランプに流れる電流との積であるから、結局、ランプの輝度は、時点t_(2)において、直流電源の電圧V_(0)が印加されていたときの所定の輝度(以下、「Y_(0)」という。)から瞬時にY_(0)×(R_(L)/(R_(0)+R_(L)))^(2)の輝度にまで低下することとなる。このことは、請求人の提出した第1回口頭審理陳述要領書に記載の電流Iを示したシミュレーション結果の波形図において、時点t_(2)において、電流Iが瞬時に降下していることとも符合する。
以上のとおり、引用発明は、点灯スイッチ4をOFFにした時点t_(2)における輝度の変化に着目すると、直流電源の電圧V_(0)が印加されていたときの輝度から、分圧に起因する所定の輝度にまで瞬時に低下するものであるから、まず、この点において、本件特許発明1にいう「キーズスイッチ(IG)のオフに伴い・・・照射光の輝度を徐々に低下させる」(下線は、当審が付した。)ものとは、異なるものである。

・時点t_(2)以降
甲第1号証の第1図に示された回路によれば、時点t_(2)以降において、コンデンサC_(1)に蓄積されていた電荷は、電源短絡回路6や、パルス発振器2、ランプ駆動回路1の構成要素を通して放電されることとなる。
このことは、甲第1号証に「次に点灯操作スイッチ4をOFFとして電源電圧の供給を停止すると、電源短絡回路6のコンデンサC_(1)に蓄積されている電荷は、この電源短絡回路6や、パルス発振器2、ランプ駆動回路lの構成要素を通して放電され、所定の時間経過後には所定の放電状態となって、次の点灯操作に備えることとなる。」(前記3(1)オ)と記載されていることからも裏付けられる。

C コンデンサの役割・機能
一般に、コンデンサは、蓄電器ともいい、静電容量(キャパシタンス)により電荷(電気エネルギー)を蓄えたり、放出したりする受動素子のことであり、用途に応じて、数pFの小容量のものから、1F以上の大容量のものまで様々である。小容量のコンデンサは、例えばアナログ回路において抵抗やコイルとともに平滑回路やフィルターとして用いられることが多く、他方、大容量のコンデンサは、例えばノートパソコンや電気自動車の電源に、蓄電装置として用いられたりしている。
さて、甲第1号証の第1図に示された回路において、電源短絡回路6を構成するコンデンサC_(1)は、点灯スイッチ4をONにした以降は、電圧調整用抵抗R_(0)、バイアス抵抗R_(6)と共に、点灯スイッチ4を介して直流電源3から電源短絡回路6にわたり形成される回路部分に流れる電流の過渡的変化に係る時定数を定めるものとして機能し、点灯スイッチ4をOFFにした以降は、電圧調整用抵抗R_(0)、バイアス抵抗R_(6)と共に、電源短絡回路6、パルス発振器2、白熱電球ランプ5、及びランプ駆動回路1にわたり形成される回路部分に流れる電流の過渡的変化に係る時定数を定めるものとして機能するものと認められる。
ところで、引用発明は、パルス発振器のデユーティー比により光量調節を行うようにしたランプの光量調節装置に係り、点灯時に発生する大きな突入電流を抑制することを技術的課題とし、そのために、コンデンサC_(1)を有する電源短絡回路6を設けた点にその技術的特徴がある。(3(1)ア、イ)
一般に、自動車の計器板照明装置においては、点灯用スイッチをON後に速やかに照明用ランプが点灯し、また、OFF後には速やかに消灯し次の点灯に備える必要があるところ、このことは、突入電流抑制のための電源短絡回路6を備えた引用発明にあっても、同様である。
してみると、引用発明における電源短絡回路6を構成するコンデンサC_(1)は、電源として機能することは予定されておらず、もっぱら時定数を定めるものとして機能していると認められ、その容量は、小容量とみるのが自然である。このことは、甲第1号証の「コンデンサC_(1)はこのような低電圧で充電されるので、小さな容量でも大きな時定数を得ることができる。」(3(1)オ)との記載からもいえる。

ここで、甲第1号証に記載の回路は、自動車の計器板照明装置であり、自動車のバッテリー電圧は略12ボルトであることを考慮して、コンデンサC_(1)の容量を200μF、電圧調整用抵抗R_(0)の抵抗値をランプ5の定常状態における抵抗値と同じに100Ωとしてみる。なお、これらの値は請求人が第1回口頭審理陳述要領書で説明している具体的数値よりも略大きいものである。ここで、容量や抵抗の値を大きくするほど、容量値×抵抗値で定まる時定数は大きくなるものである。
そして、時点t_(2)以降、コンデンサC_(1)から放電される放電電流は、コンデンサC1、電圧調整用抵抗R_(0)及びランプ5の定常状態における抵抗値R_(L)で定まる時定数τ、すなわち、時定数τ=C_(1)×(R_(0)+R_(L))で定まる指数関数に従い減少していくこととなるところ、上記の場合、この時定数τは、40msec(τ=200μF×(100Ω+100Ω))である。
すなわち、点灯スイッチ4をOFFにしてから、40msec後には、時定数の定義からして、当初の電流の36.8%にまで減少するのである。

D ランプの輝度変化
以上のとおり、点灯スイッチ4をOFFにした時点t_(2)以降のランプ5の輝度の変化について整理すると、以下のとおりである。
時点t_(2)において、輝度Yは当初輝度Y_(0)から瞬時に、Y_(0)×(R_(L)/(R_(0)+R_(L)))^(2)にまで低下する。
その後、時定数τ=C_(1)×(R_(0)+R_(L))で定まる指数関数に従って、輝度Yが低下していくこととなる。
先に設定した具体的数値を適用した場合、輝度Yは、当初輝度Y_(0)から、時点t_(2)において瞬時に1/4×Y_(0)にまで低下し、その40msec後に、0.092×Y_(0)(1/4×36.8%)にまで低下する。
このことは、点灯スイッチ4をOFFにして40msec後には、当初輝度Y_(0)の略1割の輝度にまで低下することを意味する。
しかも、ランプ5、電源短絡回路6、及びパルス発振器2は並列接続であるから、ランプ5に流れる放電電流があったとしても、それは電源短絡回路6やパルス発振器2を通して流れた電流以外の、残余の電流である。このことは、甲第1号証に「次に点灯操作スイッチ4をOFFとして電源電圧の供給を停止すると、電源短絡回路6のコンデンサC_(1)に蓄積されている電荷は、この電源短絡回路6や、パルス発振器2、ランプ駆動回路lの構成要素を通して放電され、所定の時間経過後には所定の放電状態となって、次の点灯操作に備えることとなる。」(3(1)オ)との記載からも裏付けられる。
よって、点灯スイッチ4をOFFにしてから40msec後には、ランプ5の輝度は、当初輝度Y_(0)の1割未満になるとみてよい。

(イ)本件特許発明1
これに対し、本件特許発明1は、「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する制御手段(112、112A、113、113A、121乃至124、130、130A)を備える」ものであり、この構成により、目盛り板の明るさがキースイッチのオフ後徐々に低下するので、乗員に対し、この種指針装置におけるキースイッチのオフ後の斬新な視認性を提供できる、との作用効果を奏する点に、その技術的特徴があるものである。また、目盛り板照射手段の照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する具体的制御手段は、目盛り板照射手段の照射光の発光輝度Yが、Y=A{1-(t/T)}に従って低下していくように、本件特許明細書等の図4に示されたフローチャートに従って、マイクロコンピュータ80が光源50を駆動制御するというものである。(前記「2(2)」)
してみると、発光輝度の低下割合を特定するTの大きさについて、本件特許明細書等には記載がないけれども、人が視認可能な程度の時間であると解するのが自然であり、本件特許発明1にいう「照射光の輝度を徐々に低下させる」とは、照射光の輝度を、人に視認可能な程度で徐々に低下させることであると解すべきである。

(ウ)検討
一般に、人の目の時間分解能は、約50?100msec程度であり、この時間よりも短い光の点滅は連続点灯しているように知覚される。
この特性を利用して、一般的なビデオ(すなわち、動画)の規格では、そのフレームレートは30fpsとされており、これは、1秒間に30フレームの画像を書き換えていることを意味する。すなわち、約33msec間隔でフレームを書き換えた場合、人の目には、個々のフレームは認識不可能である。
してみると、点灯スイッチ4をOFFにしてから、例えばわずか40msec後に、ランプ5の輝度Yが初期輝度Y_(0)の1割未満に低下するような引用発明にあっては、ランプ5の輝度の変化は、人が見ると、ほとんど瞬時に零になると認識されるようなものである。

(エ)まとめ
以上のとおり、引用発明は、点灯スイッチ4をOFFにした時点t_(2)において、初期輝度から瞬時に所定の輝度にまで低下する点で、まず、本件特許発明1と異なる。
また、時点t_(2)以降についてみても、引用発明は、人の目にはほとんど瞬時に零になると認識されるようなものであるから、本件特許発明1にいう「キースイッチ(IG)のオフに伴い・・・照射光の輝度を徐々に低下させる」ものとは、およそ異なるものである。
さらに、「制御」とは、「機械や設備が目的通り作動するように操作すること」を意味するところ(広辞苑(第5版):1998年11月11日、株式会社岩波書店発行)、引用発明や引用発明の認定の根拠となった引用例には、ランプ5の輝度をこのように制御することの記載も示唆もない。
したがって、引用発明における制御用のコンデンサC_(1)を中心とする回路は、本件特許発明1における「照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する制御手段」に相当するとはいえない。

進歩性違反について
上記ア で説示したように、引用発明は、パルス発振器のデユーティー比により光量調節を行うようにしたランプの光量調節装置に係り、点灯時に発生する大きな突入電流を抑制することを技術的課題とし、そのために、コンデンサC_(1)を有する電源短絡回路6を設けた点にその技術的特徴がある発明であり、点灯操作スイッチOFF後のランプ5の輝度を徐々に低下させるように制御するものではない。
しかも、甲第1号証には、本件特許発明1の技術課題である点灯操作スイッチオフ後の自動車の計器板の視認性に工夫を凝らすことについても一切記載はなく、示唆もない。
たしかに、コンデンサC_(1)の容量が大きいほどコンデンサC_(1)、電圧調整用抵抗R_(0)及びランプ5の定常状態における抵抗値R_(L)で定まる時定数τは大きくなり、よって、照射光の輝度の低下割合は緩やかになるけれども、甲第1号証には、コンデンサC_(1)の容量を大容量のものに変更するとの記載も示唆もない。
かえって、コンデンサC_(1)の容量は小さくても良いことが記載されている(3(1)オ)。
さらに、「制御」とは、「機械や設備が目的通り作動するように操作すること」を意味するところ、引用発明や引用発明の認定の根拠となった引用例には、ランプ5の輝度を制御することの記載も示唆もないことは、上記したとおりである。

また、甲第2号証は、消灯時に、文字板の照明と指針の照明をともに消灯することが周知技術であることを立証するにとどまり、甲第3号証は、キーオフ時に、まず、指針の照明を消灯し、次いで、計器板の照明を消灯すること、すなわち、指針の照明の消灯と、計器板の照明の消灯とのタイミングをずらすことが公知技術であることを立証するにとどまる。
よって、引用発明に甲第2号証に示された周知技術や甲第3号証に示された公知技術を組み合わせたところで、本件特許発明1が容易想到ということはできない。

ウ 作用効果
そして、本件特許発明1は、「車両のキースイッチ(IG)のオフに伴い前記目盛り板照射手段の照射光の輝度を徐々に低下させるように制御する制御手段(112、112A、113、113A、121乃至124、130、130A)」を備えたことにより、目盛り板の明るさがキースイッチのオフ後徐々に低下するので、乗員に対し、この種指針装置におけるキースイッチのオフ後の斬新な視認性を提供できる。(2 本件特許発明の特徴(2))、との本件特許明細書等に記載の作用効果を奏するものである。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、引用発明と同一発明ではなく、また、当業者といえども、引用発明及び甲第2号証で示された周知技術や甲第3号証で示された公知技術に基づいて容易に発明をすることができたともいえない。

5 本件特許発明2,3についての判断
(1)本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1において、「指針照射手段」を新たに備えるとともに、制御手段は、目盛り板照射手段と指針照射手段の各照射光の輝度を徐々に低下させるように制御するようにしたものであり、実質的に、本件特許発明1を限定したものに相当する。
よって、本件特許発明2も、本件特許発明1と同様に、当業者といえども、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえず、また、引用発明及び甲第2号証で示された周知技術や甲第3号証で示された公知技術に基づいて容易に発明をすることができたともいえない。

(2)本件特許発明3
本件特許発明3は、本件特許発明2において、各照射光の輝度低下度合いを相互に異ならしめた点を限定した発明である。
よって、本件特許発明3も、本件特許発明1や本件特許発明2と同様に、当業者といえども、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえず、また、引用発明及び甲第2号証で示された周知技術や甲第3号証で示された公知技術に基づいて容易に発明をすることができたともいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する審判請求の理由及び証拠方法によっては、本件特許1は、特許法第29条第1項3号の規定に違反して特許されたものとすることも、同条第2項の規定に違反して特許されたものとすることもできない。
本件特許2,3も、同様に、同法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとすることはできない。
したがって、本件特許1ないし本件特許3のいずれも、同法第123条第1項2号の規定により無効とすべきものとすることはできない。
また、本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2012-03-15 
出願番号 特願平8-128704
審決分類 P 1 123・ 121- Y (G01D)
P 1 123・ 113- Y (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 仁  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 ▲高▼木 真顕
森 雅之
登録日 2003-10-03 
登録番号 特許第3477995号(P3477995)
発明の名称 車両用指針装置  
代理人 藤井 正弘  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 飯田 雅昭  
代理人 橋本 直江  
代理人 田中 良太  
代理人 伊藤 高順  
代理人 後藤 政喜  

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