• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1255998
審判番号 不服2012-5238  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-21 
確定日 2012-05-15 
事件の表示 特願2010-175703「記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月 6日出願公開、特開2011- 4413、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成13年3月28日付の出願(優先日、平成12年4月21日、平成12年9月7日)の一部を平成22年8月4日に新たな特許出願としたものであって、平成23年11月8日付で手続補正書が提出され、平成23年11月17日付で拒絶理由が通知され、平成23年12月7日付で意見書及び手続補正書が提出されたものの、平成23年12月20日付で拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成24年3月21日付で請求された拒絶査定不服審判であって、同日付で手続補正書が提出されている。

2.拒絶査定
平成23年12月20日付拒絶査定の理由は、以下の通りである。

『特許庁「特許・実用新案 審査基準」の第VII部第1章コンピュータ・ソフトウエア関連発明の『2.2.4「構造を有するデータ」及び「データ構造」の取扱い』には、以下の事項が記載されている。
「構造を有するデータ」(「構造を有するデータを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」を含む)及び「データ構造」が「発明」に該当するか否かについては、「2.2.1 基本的な考ええ方」により判断する。

また、『2.2.1 基本的な考え方』には、以下の事項が記載されている。
ソフトウエア関連発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」となる基本的考え方は以下のとおり。
「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。
(説明)
「ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とは、ソフトウエアがコンピュータに読み込まれることにより、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法が構築されることをいう。そして、上記使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法は「自然法則を利用した技術的思想の創作」ということができるから、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合には、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。

以上のことから、「構造を有するデータ」又は「データ構造」については、「2.特許要件 2.2.1 基本的な考え方」における「ソフトウエア」を、「構造を有するデータ」又は「データ構造」と読み替え、構造を有するデータによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されているか否か、或いは、データ構造により特定される情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されているか否かを判断することになり、「プログラム」と実質的に等価な「構造を有するデータ」又は「データ構造」の創作が特許法上の「発明」として認められることになるといえる。

ここで、請求項1、2に記載された内容について検討する。
請求項1、2に記載されたデータが記録された記録媒体は、その請求項1、2の記載から、構造を有するデータを記録した記録媒体であることは明らかである。
しかし、請求項1、2に記載された構造を有するデータは、再生装置等の情報処理装置を制御する「プログラム」とは異なり、該構造を有するデータは、情報処理装置側にその解釈、及び、どのような処理を行うかが委ねられており、当該データが読み込まれる前から、つまり、該構造を有するデータが読み込まれることによらず特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されているのであるから、構造を有するデータがコンピュータに読み込まれることにより、構造を有するデータとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されるとは認められない

したがって、「構造を有するデータによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とはいえず、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しないから、特許法第2条第1項でいう「発明」に該当しない。』

3.本願明細書、特許請求の範囲及び図面
3.1.平成24年3月21日付手続補正書で補正された特許請求の範囲には以下の通り記載されている。請求項1に記載したもの、及び、請求項2に記載したものを総称して以下「本願発明」という。

「【請求項1】
プレゼンテーションタイムスタンプと、それに対応するアクセスユニットを構成するトランスポートパケットのアドレスとのペアを有する第1のアドレステーブルと、前記第1のアドレステーブルの種別を示す第1の種別情報を含むデータ構造のデータが記録され、情報処理装置に装着され再生される記録媒体であって、
前記データ構造のデータを取得した情報処理装置に、前記第1の種別情報により示される前記第1のアドレステーブルに基づいて前記プレゼンテーションタイムスタンプから前記トランスポートパケットを特定させることにより、トランスポートストリームデータの再生を制御させる
記録媒体。
【請求項2】
前記データ構造は、さらに、1つの時間量と、トランスポートパケットの到着時間軸を前記時間量に基づき区切られてなるタイムユニットに含まれるトランスポートパケットのアドレスとを有する第2のアドレステーブル、および、前記第2のアドレステーブルの種別を示す第2の種別情報を含み、
前記情報処理装置に、前記第1の種別情報により示される前記第1のアドレステーブルと、前記第2の種別情報により示される前記第2のアドレステーブルに基づいて、前記プレゼンテーションタイムスタンプから前記トランスポートパケットを特定させる
請求項1に記載の記録媒体。」

3.2.平成23年11月8日付、平成23年12月7日付、平成24年3月21日付手続補正書で補正された明細書には以下の記載がある。

「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したような記録装置により記録媒体にAVストリームデータを記録する場合、例えば、高速再生ができるようにするために、AVストリームデータを分析し、Iピクチャの位置を検出して、Iピクチャにアクセスできるようにして記録する場合と、AVストリームデータを分析せず、そのまま記録する場合とがある。
【0008】
このような場合、従来、それぞれ専用のアプリケーションプログラムを用意し、それぞれにより、AVストリームを、異なるフォーマットのAVストリーム(高速再生が可能なAVストリーム、または不可能なAVストリーム)として記録媒体に記録するようにしていた。その結果、アプリケーションプログラムの開発に、費用と時間がかかる課題があった。また、それぞれのアプリケーションプログラムにより記録されたAVストリームは、異なるフォーマットのものなので、相互の互換性がなくなり、共通の装置で再生することができなくなる課題があった。
【0009】
さらに、従来の記録装置では、例えば、オーディオデータを、所謂アフターレコーディングすることが困難である課題があった。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、高速再生が可能なAVストリームと不可能なAVストリームを、共通に管理することができるようにすることにある。
【0011】
さらに、第2の目的は、アフターレコーディングを可能にすることにある。」
「【0076】
次に、CPI(Characteristic Point Information)について説明する。CPIは、Clipインフォメーションファイルに含まれるデータであり、主に、それはClipへのアクセスポイントのタイムスタンプが与えられた時、Clip AV stream fileの中でデータの読み出しを開始すべきデータアドレスを見つけるために用いられる。本実施の形態では、2種類のCPIを用いる。1つは、EP_mapであり、もう1つは、TU_mapである。
【0077】
EP_mapは、エントリーポイント(EP)データのリストであり、それはエレメンタリーストリームおよびトランスポートストリームから抽出されたものである。これは、AVストリームの中でデコードを開始すべきエントリーポイントの場所を見つけるためのアドレス情報を持つ。1つのEPデータは、プレゼンテーションタイムスタンプ(PTS)と、そのPTSに対応するアクセスユニットのAVストリームの中のデータアドレスの対で構成される。
【0078】
EP_mapは、主に2つの目的のために使用される。第1に、PlayListの中でプレゼンテーションタイムスタンプによって参照されるアクセスユニットのAVストリームの中のデータアドレスを見つけるために使用される。第2に、ファーストフォワード再生やファーストリバース再生のために使用される。記録再生装置1が、入力AVストリームを記録する場合、そのストリームのシンタクスを解析することができるとき、EP_mapが作成され、ディスクに記録される。
【0079】
TU_mapは、デジタルインタフェースを通して入力されるトランスポートパケットの到着時刻に基づいたタイムユニット(TU)データのリストを持つ。これは、到着時刻ベースの時間とAVストリームの中のデータアドレスとの関係を与える。記録再生装置1が、入力AVストリームを記録する場合、そのストリームのシンタクスを解析することができないとき、TU_mapが作成され、ディスクに記録される。
【0080】
STCInfoは、MPEG2トランスポートストリームをストアしているAVストリームファイルの中にあるSTCの不連続点情報をストアする。AVストリームがSTCの不連続点を持つ場合、そのAVストリームファイルの中で同じ値のPTSが現れるかもしれない。そのため、AVストリーム上のある時刻をPTSベースで指す場合、アクセスポイントのPTSだけではそのポイントを特定するためには不十分である。更に、そのPTSを含むところの連続なSTC区間のインデックスが必要である。連続なSTC区間を、このフォーマットでは STC-sequenceと呼び、そのインデックスをSTC-sequence-idと呼ぶ。STC-sequenceの情報は、Clip Information fileのSTCInfoで定義される。STC-sequence-idは、EP_mapを持つAVストリームファイルで使用するものであり、TU_mapを持つAVストリームファイルではオプションである。
【0081】
プログラムは、エレメンタリーストリームの集まりであり、これらのストリームの同期再生のために、ただ1つのシステムタイムベースを共有するものである。再生装置(図1の記録再生装置1)にとって、AVストリームのデコードに先だち、そのAVストリームの内容がわかることは有用である。例えば、ビデオやオーディオのエレメンタリーストリームを伝送するトランスポートパケットのPIDの値や、ビデオやオーディオのコンポーネント種類(例えば、HDTVのビデオとMPEG-2 AACのオーディオストリームなど)などの情報である。この情報はAVストリームを参照するところのPlayListの内容をユーザに説明するところのメニュー画面を作成するのに有用であるし、また、AVストリームのデコードに先だって、再生装置のAVデコーダおよびデマルチプレクサの初期状態をセットするために役立つ。この理由のために、Clip Information fileは、プログラムの内容を説明するためのProgramInfoを持つ。
【0082】
MPEG2トランスポートストリームをストアしているAVストリームファイルは、ファイルの中でプログラム内容が変化するかもしれない。例えば、ビデオエレメンタリーストリームを伝送するところのトランスポートパケットのPIDが変化したり、ビデオストリームのコンポーネント種類がSDTVからHDTVに変化するなどである。
【0083】
ProgramInfoは、AVストリームファイルの中でのプログラム内容の変化点の情報をストアする。AVストリームファイルの中で、このフォーマットで定めるところのプログラム内容が一定である区間をProgram-sequenceと呼ぶ。Program-sequenceは、EP_mapを持つAVストリームファイルで使用するものであり、TU_mapを持つAVストリームファイルではオプションである。
【0084】
本実施の形態では、セルフエンコードのストリームフォーマット(SESF)を定義する。SESFは、アナログ入力信号を符号化する目的、およびデジタル入力信号(例えばDV)をデコードしてからMPEG2トランスポートストリームに符号化する場合に用いられる。
【0085】
SESFは、MPEG-2トランスポートストリームおよびAVストリームについてのエレメンタリーストリームの符号化制限を定義する。記録再生装置1が、SESFストリームをエンコードし、記録する場合、EP_mapが作成され、ディスクに記録される。
【0086】
デジタル放送のストリームは、次に示す方式のうちのいずれかが用いられて記録媒体100に記録される。まず、デジタル放送のストリームをSESFストリームにトランスコーディングする。この場合、記録されたストリームは、SESFに準拠しなければならない。この場合、EP_mapが作成されて、ディスクに記録されなければならない。
【0087】
あるいは、デジタル放送のストリームを構成するエレメンタリーストリームを新しいエレメンタリーストリームにトランスコーディングし、そのデジタル放送ストリームの規格化組織が定めるストリームフォーマットに準拠した新しいトランスポートストリームに再多重化する。この場合、EP_mapが作成されて、ディスクに記録されなければならない。
【0088】
例えば、入力ストリームがISDB(日本のデジタルBS放送の規格名称)準拠のMPEG-2トランスポートストリームであり、それがHDTVビデオストリームとMPEG AACオーディオストリームを含むとする。HDTVビデオストリームをSDTVビデオストリームにトランスコーディングし、そのSDTVビデオストリームとオリジナルのAACオーディオストリームをTSに再多重化する。SDTVストリームと記録されるトランスポートストリームは、共にISDBフォーマットに準拠しなければならない。
【0089】
デジタル放送のストリームが、記録媒体100に記録される際の他の方式として、入力トランスポートストリームをトランスペアレントに記録する(入力トランスポートストリームを何も変更しないで記録する)場合であり、ストリームのシンタクスを解析することができるときに、EP_mapが作成されてディスクに記録される。
【0090】
または、入力トランスポートストリームをトランスペアレントに記録する(入力トランスポートストリームを何も変更しないで記録する)場合であり、ストリームのシンタクスを解析することができないときに、TU_mapが作成されてディスクに記録される。」
「【0213】
次に、図45に示したzzzzz.clipのシンタクス内のCPI (Characteristic Point Information)について説明する。CPIは、AVストリームの中の時間情報とそのファイルの中のアドレスとを関連づけるためにある。CPIには2つのタイプがあり、それらはEP_mapとTU_mapである。図63に示すように、CPI()の中のCPI_typeがEP_map typeの場合、そのCPI()はEP_mapを含む。図64に示すように、CPI()の中のCPI_typeがTU_map typeの場合、そのCPI()はTU_mapを含む。1つのAVストリームは、1つのEP_mapまたは1つのTU_mapを持つ。AVストリームがSESFトランスポートストリームの場合、それに対応するClipはEP_mapを持たなければならない。
【0214】
図65は、CPIのシンタクスを示す図である。図65に示したCPIのシンタクスを説明するに、version_numberは、このCPI()のバージョンナンバを示す4個のキャラクター文字である。version_numberは、ISO 646に従って、"0045"と符号化されなければならない。lengthは、このlengthフィールドの直後からCPI()の最後までのCPI()のバイト数を示す32ビットの符号なし整数である。CPI_typeは、図66に示すように、1ビットのフラグであり、ClipのCPIのタイプを表す。
【0215】
次に、図65に示したCPIのシンタクス内のEP_mapについて説明する。EP_mapには、2つのタイプがあり、それはビデオストリーム用のEP_mapとオーディオストリーム用のEP_mapである。EP_mapの中のEP_map_typeが、EP_mapのタイプを区別する。Clipが1つ以上のビデオストリームを含む場合、ビデオストリーム用のEP_mapが使用されなければならない。Clipがビデオストリームを含まず、1つ以上のオーディオストリームを含む場合、オーディオストリーム用のEP_mapが使用されなければならない。
【0216】
ビデオストリーム用のEP_mapについて図67を参照して説明する。ビデオストリーム用のEP_mapは、stream_PID、PTS_EP_start、および、RSPN_EP_startというデータを持つ。stream_PIDは、ビデオストリームを伝送するトランスポートパケットのPIDを示す。PTS_EP_startは、ビデオストリームのシーケンスヘッダから始めるアクセスユニットのPTSを示す。RSPN_EP_startは、AVストリームの中でPTS_EP_startにより参照されるアクセスユニットの第1バイト目を含むソースポケットのアドレスを示す。
【0217】
EP_map_for_one_stream_PID()と呼ばれるサブテーブルは、同じPIDを持つトランスポートパケットによって伝送されるビデオストリーム毎に作られる。Clipの中に複数のビデオストリームが存在する場合、EP_mapは複数のEP_map_for_one_stream_PID()を含んでも良い。
【0218】
オーディオストリーム用のEP_mapは、stream_PID、PTS_EP_start、およびRSPN_EP_startというデータを持つ。stream_PIDは、オーディオストリームを伝送するトランスポートパケットのPIDを示す。PTS_EP_startは、オーディオストリームのアクセスユニットのPTSを示す。RSPN_EP_startは、AVストリームの中でPTS_EP_startで参照されるアクセスユニットの第1バイト目を含むソースポケットのアドレスを示す。
【0219】
EP_map_for_one_stream_PID()と呼ばれるサブテーブルは、同じPIDを持つトランスポートパケットによって伝送されるオーディオストリーム毎に作られる。Clipの中に複数のオーディオストリームが存在する場合、EP_mapは複数のEP_map_for_one_stream_PID()を含んでも良い。
【0220】
EP_mapとSTC_Infoの関係を説明するに、1つのEP_map_for_one_stream_PID()は、STCの不連続点に関係なく1つのテーブルに作られる。RSPN_EP_startの値とSTC_Info()において定義されるRSPN_STC_startの値を比較する事により、それぞれのSTC_sequenceに属するEP_mapのデータの境界が分かる(図68を参照)。EP_mapは、同じPIDで伝送される連続したストリームの範囲に対して、1つのEP_map_for_one_stream_PIDを持たねばならない。図69に示したような場合、program#1とprogram#3は、同じビデオPIDを持つが、データ範囲が連続していないので、それぞれのプログラム毎にEP_map_for_one_stream_PIDを持たねばならない。
【0221】
図70は、EP_mapのシンタクスを示す図である。図70に示したEP_mapのシンタクスを説明するに、EP_typeは、4ビットのフィールドであり、図71に示すように、EP_mapのエントリーポイントタイプを示す。EP_typeは、このフィールドに続くデータフィールドのセマンティクスを示す。Clipが1つ以上のビデオストリームを含む場合、EP_typeは0('video')にセットされなければならない。または、Clipがビデオストリームを含まず、1つ以上のオーディオストリームを含む場合、EP_typeは1('audio')にセットされなければならない。
【0222】
number_of_stream_PIDsの16ビットのフィールドは、EP_map()の中のnumber_of_stream_PIDsを変数にもつfor-loopのループ回数を示す。stream_PID(k)の16ビットのフィールドは、EP_map_for_on
e_stream_PID(num_EP_entries(k))によって参照されるk番目のエレメンタリーストリーム(ビデオまたはオーディオストリーム)を伝送するトランスポートパケットのPIDを示す。EP_typeが0 ('video
')に等しい場合、そのエレメンタリーストリームはビデオストリームでなけれならない。また、EP_typeが1('audio')に等しい場合、そのエレメンタリーストリームはオーディオストリームでなければならない。
【0223】
num_EP_entries(k)の16ビットのフィールドは、EP_map_for_one_stream_PID(num_EP_entries(k))によって参照されるnum_EP_entries(k)を示す。EP_map_for_one_stream_PID_Start_address(k): この32ビットのフィールドは、EP_map()の中でEP_map_for_one_stream_PID(num_EP_entries(k))が始まる相対バイト位置を示す。この値は、EP_map()の第1バイト目からの大きさで示される。
【0224】
padding_wordは、EP_map()のシンタクスにしたがって挿入されなければならない。XとYは、ゼロまたは任意の正の整数でなければならない。それぞれのパディングワードは、任意の値を取っても良い。
【0225】
図72は、EP_map_for_one_stream_PIDのシンタクスを示す図である。図72に示したEP_map_for_one_stream_PIDのシンタクスを説明するに、PTS_EP_startの32ビットのフィールドのセマンティクスは、EP_map()において定義されるEP_typeにより異なる。EP_typeが0 ('video')に等しい場合、このフィールドは、ビデオストリームのシーケンスヘッダで始まるアクセスユニットの33ビット精度のPTSの上位32ビットを持つ。EP_typeが1 ('audio')に等しい場合、このフィールドは、オーディオストリームのアクセスユニットの33ビット精度のPTSの上位32ビットを持つ。
【0226】
RSPN_EP_startの32ビットのフィールドのセマンティクスは、EP_map()において定義されるEP_typeにより異なる。EP_typeが0 ('video')に等しい場合、このフィールドは、AVストリームの中でPTS_EP_startにより参照されるアクセスユニットのシーケンスヘッダの第1バイト目を含むソースポケットの相対アドレスを示す。または、EP_typeが1 ('audio')に等しい場合、このフィールドは、AVストリームの中でPTS_EP_startにより参照されるアクセスユニットのオーディオフレームの第一バイト目を含むソースポケットの相対アドレスを示す。
【0227】
RSPN_EP_startは、ソースパケット番号を単位とする大きさであり、AVストリームファイルの最初のソースパケットからClipInfo()において定義されるoffset_SPNの値を初期値としてカウントされる。そのAVストリームファイルの中での絶対アドレスは、
SPN_xxx = RSPN_xxx - offset_SPN
により算出される。シンタクスのfor-loopの中でRSPN_EP_startの値は、昇順に現れなければならない。
【0228】
次に、TU_mapについて、図73を参照して説明する。TU_mapは、ソースパケットのアライバルタイムクロック(到着時刻ベースの時計)に基づいて、1つの時間軸を作る。その時間軸は、TU_map_time_axisと呼ばれる。TU_map_time_axisの原点は、TU_map()の中のoffset_timeによって示される。TU_map_time_axisは、offset_timeから一定の単位に分割される。その単位を、time_unitと称する。
【0229】
AVストリームの中の各々のtime_unitの中で、最初の完全な形のソースパケットのAVストリームファイル上のアドレスが、TU_mapにストアされる。これらのアドレスを、RSPN_time_unit_startと称する。TU_map_time_axis上において、k (k>=0)番目のtime_unitが始まる時刻は、TU_start_time(k)と呼ばれる。この値は次式に基づいて算出される。
TU_start_time(k) = offset_time + k*time_unit_size
TU_start_time(k)は、45kHzの精度を持つ。
【0230】
図74は、TU_mapのシンタクスを示す図である。図74に示したTU_mapのシンタクスを説明するに、offset_timeの32bit長のフィールドは、TU_map_time_axisに対するオフセットタイムを与える。この値は、Clipの中の最初のtime_unitに対するオフセット時刻を示す。offset_timeは、27MHz精度のアライバルタイムクロックから導き出される45kHzクロックを単位とする大きさである。AVストリームが新しいClipとして記録される場合、offset_timeはゼロにセットされなければならない。
【0231】
time_unit_sizeの32ビットフィールドは、time_unitの大きさを与えるものであり、それは27MHz精度のアライバルタイムクロックから導き出される45kHzクロックを単位とする大きさである。time_unit_sizeは、1秒以下(time_unit_size<=45000)にすることが良い。number_of_time_unit_entriesの32ビットフィールドは、TU_map()の中にストアされているtime_unitのエントリー数を示す。
【0232】
RSPN_time_unit_startの32ビットフィールドは、AVストリームの中でそれぞれのtime_unitが開始する場所の相対アドレスを示す。RSPN_time_unit_startは、ソースパケット番号を単位とする大きさであり、AV streamファイルの最初のソースパケットからClipInfo()において定義されるoffset_SPNの値を初期値としてカウントされる。そのAV streamファイルの中での絶対アドレスは、SPN_xxx = RSPN_xxx - offset_SPNにより算出される。シンタクスのfor-loopの中でRSPN_time_unit_startの値は、昇順に現れなければならない。(k+1)番目のtime_unitの中にソースパケットが何もない場合、(k+1)番目のRSPN_time_unit_startは、k番目のRSPN_time_unit_startと等しくなければならない。」
「【0402】
このようなシンタクス、データ構造、規則に基づく事により、記録媒体に記録されているデータの内容、再生情報などを適切に管理することができ、もって、ユーザが再生時に適切に記録媒体に記録されているデータの内容を確認したり、所望のデータを簡便に再生できるようにすることができる。
【0403】
Iピクチャの位置を分析できる場合、EP_mapを用い、Iピクチャの位置を分析できない場合、TU_mapを用いるようにすることで、共通のアプリケーションプログラム(ソフトウエア)で、異なるフォーマットのAVストリームを、同一の記録媒体に対して記録し、再生し、管理することが可能となる。
【0404】
AVストリームを、その中身(Iピクチャの位置)を分析して記録媒体に記録する場合(コグニザント記録する場合)、EP_mapを使用し、その中身(Iピクチャの位置)を分析せずに、そのまま記録媒体に記録する場合(ノンコグニザント記録する場合)、TU_mapを使用するなどして、共通のアプリケーションプログラムで、AVデータを、同一の記録媒体に記録し、再生し、管理することができる。
【0405】
従って、例えば、スクランブルされたAVデータを、デスクランブルして(分析して)記録媒体に記録する場合、EP_mapを使用し、デスクランブルせずに(分析せずに)、そのまま記録媒体に記録する場合、TU_mapを使用するなどして、共通のアプリケーションプログラムで、AVデータを、同一の記録媒体に記録し、再生し、管理することができる。
【0406】
さらに、EP_map typeとTU_map typeを、CPI_typeとして、PlayLyst()中に、記述できるようにしたので、Iピクチャの位置が分析できる場合、EP_mapを用い、Iピクチャの位置が分析できない場合、TU_mapを用いるようにすることができる。これにより、Iピクチャの位置を分析して記録するAVストリームデータと、分析しないで記録するAVストリームデータを、フラグを設定するだけで、共通のプログラムにより、統一して管理することが可能となる。」

4.当審の判断
4.1.審査基準
審査基準には以下の記載がある。

4.1.1. 「第VII部 特定技術分野の審査基準 第1章 コンピュータ・ソフトウエア関連発明」
『第1 章 コンピュータ・ソフトウエア関連発明
本章では、コンピュータ・ソフトウエア関連発明、すなわち、その発明の実施にソフトウエアを必要とする発明(以下「ソフトウエア関連発明」という。)に関する出願の審査に際し、特有な判断、取扱いが必要な事項を中心に説明する。
なお、明細書及び特許請求の範囲の記載要件、特許要件のうち特許法上の「発明」であることの判断及び進歩性の判断に関して、本章で説明されていない事項については、第I部乃至第II部を参照。
この審査基準で用いられる用語の説明
情報処理…………使用目的に応じた情報の演算又は加工をいう。
ソフトウエア…………コンピュータの動作に関するプログラムをいう。
プログラム…………コンピュータによる処理に適した命令の順番付けられた列からなるものをいう。
ただし、プログラムリスト(以下に説明のもの)を除く。
プログラムリスト…………プログラムの、紙への印刷、画面への表示などによる提示そのものをいう。
プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体…………プログラムのインストール、実行、プログラムの流通などのために用いられる、プログラムが記録されたコンピュータで読み取り可能な記録媒体をいう。
手順…………所定の目的を達成するための、時系列的につながった一連の処理又は操作をいう。
データ構造…………データ要素間の相互関係で表される、データの有する論理的構造をいう。
ハードウエア資源…………処理、操作、又は機能実現に用いられる物理的装置又は物理的要素をいう。
例えば、物理的装置(金物)としてのコンピュータ、その構成要素であるCPU、メモリ、入力装置、出力装置、又はコンピュータに接続された物理的装置。』
『2. 特許要件
ソフトウエア関連発明においては、特許要件の中でも、特に、特許法上の「発明」であることの要件と進歩性の要件が重要であることから、これらの要件について説明する。
ただし、第II部第1 章1.により特許法上の「発明」に該当するか否かが容易に判断できるものについては、この基準を参照することを要しない。

2.1 対象となる発明
(1) 特許要件に関する審査の対象となる発明は、「請求項に係る発明」である。
(2) 請求項に係る発明の認定は、請求項の記載に基づいて行う。この場合においては、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮して請求項に記載された発明を特定するための事項(用語)の意義を解釈する。
2.2 「発明」であること
請求項に係る発明が特許法上の「発明」であるためには、その発明は自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものであることが必要である。(第II部第1 章1.参照)
2.2.1 基本的な考え方
ソフトウエア関連発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」となる基本的考え方は以下のとおり。

(1) 「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。(「3. 事例」の事例2-1?2-5 参照)
(説明)
「ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とは、ソフトウエアがコンピュータに読み込まれることにより、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法が構築されることをいう。
そして、上記..用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法は「自然法則を利用した技術的思想の創作」ということができるから、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合には、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。
参考:「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるためには、請求項に係る発明が一定の目的を達成できる具体的なものでなければならない。(「技術は一定の目的を達成するための具体的手段であって、実際に利用できるもので、…客観性を持つものである。」[平成9年(行ケ)第206号(東京高判平成11年5月26日判決言渡)])
(2) 更に、当該ソフトウエアが上記(1)を満たす場合、当該ソフトウエアと協働して動作する情報処理装置(機械)及びその動作方法、当該ソフトウエアを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体もまた、「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。

2.2.2 判断の具体的な手順
ソフトウエア関連発明において、請求項に係る発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるか否か(「発明」に該当するか否か)を判断する具体的な手法は以下のとおり。
. 請求項に記載された事項に基づいて、請求項に係る発明を把握する。なお、把握された発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるか否かの判断に際し、ソフトウエア関連発明に特有の判断、取扱いが必要でない場合には、「第II部第1章産業上利用することができる発明」により判断を行う。(注参照)。

・・・

(注)ソフトウエア関連発明に特有の判断、取扱いが必要でなく、「第II部第1章産業上利用することができる発明」により判断を行う例を次に示す。

(1)「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではない例
請求項に係る発明が、「第II部第1章1.1「発明」に該当しないものの類型」のうちいずれか一に当たる場合、例えば、
(a)経済法則、人為的な取決め、数学上の..式、人間の精神活動、又は
(b)デジタルカメラで撮影された画像データ、文書作成装置によって作成した運動会のプログラム、コンピュータ・プログラムリストなど、情報の単なる提示
に当たる場合は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではない。
(2)「自然法則を利用した技術的思想の創作」である例
請求項に係る発明が、
(a)機器等(例:炊飯器、洗濯機、エンジン、ハードディスク装置)に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うもの、又は
(b)対象の物理的性質又は技術的性質(例:エンジン回転数、圧延温度)に基づく情報処理を具体的に行うものに当たる場合は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。』
『2.2.4「構造を有するデータ」及び「データ構造」の取扱い
「構造を有するデータ」(「構造を有するデータを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」を含む)及び「データ構造」が「発明」に該当するか否かについては、「2.2.1 基本的な考え方」により判断する。』

4.1.2. 『第II部 特許要件 第1章 産業上利用することができる発明 1. 「発明」であること 1.1 「発明」に該当しないものの類型』
『(5) 技術的思想でないもの
(a) 技能(個人の熟練によって到達しうるものであって、知識として第三者に伝達できる客観性が欠如しているもの)
例:ボールを指に挟む持ち方とボールの投げ方に特徴を有するフォークボールの投球方法。
(b) 情報の単なる提示(提示される情報の内容にのみ特徴を有するものであって、情報の提示を主たる目的とするもの)
例:機械の操作方法又は化学物質の使用方法についてのマニュアル、録音された音楽にのみ特徴を有するCD、デジタルカメラで撮影された画像データ、文書作成装置によって作成した運動会のプログラム、コンピュータプログラムリスト(コンピュータプログラムの、紙への印刷、画面への表示などによる提示(リスト)そのもの)
なお、情報の提示(提示それ自体、提示手段、提示方法など)に技術的特徴があるものは、情報の単なる提示にあたらない。
例1:テレビ受像機用のテストチャート
(テストチャートそれ自体に技術的特徴がある。)
例2:文字、数字、記号からなる情報を凸状に記録したプラスチックカード
(プラスチックカードをエンボス加工して印字し、カードの印字情報を押印することにより写ることができ、情報の提示手段に技術的特徴がある。)
(c) 単なる美的創造物
例:絵画、彫刻など』

4.2.審査基準の適用
上記3.1.で示したように、本願発明は「・・・データ構造のデータが記録され・・・記録媒体」であり、審査基準第VII部第1章『2.2.4「構造を有するデータ」及び「データ構造」の取扱い』には『「2.2.1 基本的な考え方」により判断する。』との記載があるものの、「2. 特許要件」に『ただし、第II部第1 章1.により特許法上の「発明」に該当するか否かが容易に判断できるものについては、この基準を参照することを要しない。』、「2.2.2 判断の具体的な手順」に『なお、把握された発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるか否かの判断に際し、ソフトウエア関連発明に特有の判断、取扱いが必要でない場合には、「第II部第1章産業上利用することができる発明」により判断を行う。(注参照)。』と規定されているところから、本願発明が「第VII部 特定技術分野の審査基準 第1章 コンピュータ・ソフトウエア関連発明」を適用すべき「コンピュータ・ソフトウエア関連発明」であるか否かを検討する前に、審査基準第II部第1章「産業上利用することができる発明」の基準を適用して検討する。

4.2.1. 「(5) 技術的思想でないもの (b) 情報の単なる提示」の適用
本願発明は上記3.1.で示されたものであって、この出願の明細書及び図面には、本願発明に対応する記載として、上記本願明細書段落【0076】?【0078】【0084】?【0089】【0213】?【0227】及び【図65】?【図72】がある。
そして、本願発明は、本願発明である「情報処理装置に装着され再生される記録媒体」が情報処理装置に装着されトランスポートストリームデータを再生する時において、本願発明が有する「プレゼンテーションタイムスタンプと、それに対応するアクセスユニットを構成するトランスポートパケットのアドレスとのペアを有する第1のアドレステーブル」を用い、再生すべきトランスポートパケットのアドレスを特定することにより、トランスポートストリームデータの再生を制御することを可能とするものである。これにより、上記本願明細書段落【0078】に記載されるように、「PlayListの中でプレゼンテーションタイムスタンプによって参照されるアクセスユニットのAVストリームの中のデータアドレスを見つけ」ること、及び、「ファーストフォワード再生やファーストリバース再生」のような特殊再生を実現可能とするものである。
すなわち、本願発明の「プレゼンテーションタイムスタンプと、それに対応するアクセスユニットを構成するトランスポートパケットのアドレスとのペアを有する第1のアドレステーブル」は、本願発明である「情報処理装置に装着され再生される記録媒体」が情報処理装置に装着されトランスポートストリームデータを再生する時において、第1のアドレステーブルに基づいてプレゼンテーションタイムスタンプからトランスポートパケットを特定させるために用いる構成について規定したものであり、本願発明は、この点で技術的特徴を有するものである。
したがって、本願発明は情報の単なる提示であるということはできず、少なくもこの理由で、特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当しないということはできない。

4.2.2.『1.1 「発明」に該当しないものの類型』の他の類型の適用
審査基準第II部第1 章『1. 「発明」であること 1.1 「発明」に該当しないものの類型』には、上記「(5) 技術的思想でないもの (b) 情報の単なる提示」以外に、まず「(1) 自然法則自体」「(2) 単なる発見であって創作でないもの」「(3) 自然法則に反するもの」「(4) 自然法則を利用していないもの」「(5) 技術的思想でないもの (a) 技能」「(5) 技術的思想でないもの (c) 単なる美的創造物」の各類型が挙げられているが、本願発明がこれらいずれの類型にも該当しないことは明らかである。
また、本願発明は「プレゼンテーションタイムスタンプと、それに対応するアクセスユニットを構成するトランスポートパケットのアドレスとのペアを有する第1のアドレステーブル」を有することによって「PlayListの中でプレゼンテーションタイムスタンプによって参照されるアクセスユニットのAVストリームの中のデータアドレスを見つける」ことを目的とするものであって、明細書及び図面の記載からみて、これが実現出来ることも明らかであるから、審査基準第II部第1 章『1. 「発明」であること 1.1 「発明」に該当しないものの類型』に挙げられるもう一つの類型である「(6) 発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なもの。」にも該当しない。

4.2.3.まとめ
すなわち、本願発明は、審査基準『第II部 特許要件 第1章 産業上利用することができる発明 1. 「発明」であること 1.1 「発明」に該当しないものの類型』に挙げられるいずれの類型にも該当しない。
そして、上記したように、審査基準第VII部第1章「2. 特許要件」に『ただし、第II部第1 章1.により特許法上の「発明」に該当するか否かが容易に判断できるものについては、この基準を参照することを要しない。』、「2.2.2 判断の具体的な手順」に『なお、把握された発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるか否かの判断に際し、ソフトウエア関連発明に特有の判断、取扱いが必要でない場合には、「第II部第1章産業上利用することができる発明」により判断を行う。(注参照)。』と規定されているから、「第VII部 特定技術分野の審査基準 第1章 コンピュータ・ソフトウエア関連発明」の適用を検討するまでもなく、本願発明は特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当するものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明はいずれも特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない、とする原査定の理由によって、本願を拒絶することは出来ない。
また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2012-05-02 
出願番号 特願2010-175703(P2010-175703)
審決分類 P 1 8・ 1- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅岡 信幸  
特許庁審判長 松尾 淳一
特許庁審判官 藤内 光武
小池 正彦
発明の名称 記録媒体  
代理人 稲本 義雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ