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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て不成立) H01L
管理番号 1256307
判定請求番号 判定2012-600002  
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2012-06-29 
種別 判定 
判定請求日 2012-01-13 
確定日 2012-05-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第4482655号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面に示す「ウェハーキャリアのガスケット構造」は、特許第4482655号発明の技術的範囲に属する。  
理由 第1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面に示す「ウェハーキャリアのガスケット構造」(以下これを「イ号物件」という。)は、特許第4482655号発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。

第2.本件特許発明
1.手続の経緯
本件出願 平成17年 4月22日
拒絶理由通知 平成19年12月28日
意見書、補正書 平成20年 3月10日
拒絶理由通知 平成21年 3月 6日
意見書、補正書 平成21年 3月23日
特許査定 平成22年 1月 6日
設定登録 平成22年 4月 2日
判定請求 平成24年 1月13日
判定請求答弁書 平成24年 3月26日

2.本件特許発明
本件特許第4482655号の特許請求の範囲をみると、請求項2は請求項1を引用する従属請求項であることから、イ号物件が特許第4482655号発明の技術的範囲に属するか否かは、イ号物件が特許第4482655号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)に属するか否かによって判断することとする。

そして、本件特許第4482655号の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、特許請求の範囲、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の構成要件を分説すると以下のとおりである(以下「構成要件A」などという。)。なお、この分説は請求人の判定請求書(以下単に「請求書」ということがある。)によるものであるが、妥当なものと認められるので、これに準じた。
「【請求項1】
A.ウエハ等の精密基板複数枚をそれぞれ等間隔で直接に、またはカセットを介して収容する容器本体と、この容器の開口周縁部に装着されるガスケットと、蓋体とからなる薄板支持容器において、
B.
(B-0)蓋体の開口部周縁に設けられたガスケット装着部に装着される合成樹脂製ガスケットが、
(B-1)その断面形状を上記のガスケット装着部に挿入嵌合される基体嵌合部と
(B-2)その基体嵌合部から容器外方向に「ヘ」の字形に屈折して延出された延伸部と
(B-3)その延伸部の先端に下向きに突設させた当接薄片と、
(B-4)前記延伸部の基部より内方に下向きに形成されたストッパーからなり、
C.一方、前記容器本体の開口部周縁には蓋閉じ時に前記ガスケットの当接薄片を受容する断面円弧状のシール溝を周設形成し、
D.蓋閉じ完了時にガスケット装着部に装着した前記ガスケットの「ヘ」の字形屈折部を蓋体の当接面が押圧することにより該延伸部に曲げ応力が加わりその応力に抗する弾性力によって当接薄片部が前記円弧状溝に密着させられることを特徴とする
E.精密基板収納容器のガスケット構造。」

第3.イ号物件
1.イ号物件に関する請求書の記載
請求人 3S KOREA株式会社は、平成24年1月13日付け判定請求書に、「イ号説明図面」を添付しているものの、イ号説明書は添付していない。しかしながら、判定請求書において、イ号物件に関し以下の記載があるので、イ号説明書に相当するものとして扱う。
(なお、以下において、行数は空行を含まない。)
「第2.イ号製品の説明
イ号製品は、次のとおりのものである。
(1)ウェハーキャリア(Wafer Carrier)であって、半導体素子製造過程で使用されるシリコン材質の各ウェハーを移送及び搬送する移送容器である。
(2)前記ウェハーキャリアは、通常、前面開方式の運搬容器としてFOSB(Front Opening Shipping Box)と呼ばれるもので、添付図1に示すように、ウェハーを収納するための内部収納空間を有する収納ボックス10と該収納ボックス10の開口部を開閉するための蓋20と、前記収納ボックス10と蓋20との当接部の気密状態を維持するための蓋20の周縁に設けられたガスケット30とを備えており、該蓋20の収納ボックス10に対するロック構造は、合成樹脂性の先端クサビ型ロックレバー41の先端部においてローラー手段42を備えるクサビ型ロックレバー挿入機構により密閉力を向上できるようにした構造を備えている(添付図8参照)。
(3)前記収納ボックス10の開口部の構造は、添付図1に示すように、前記蓋20が嵌装される内部収納空間の開口部壁面11と、ガスケット当接面12とを含んで構成される。ガスケット当接面12は、前記ガスケット30の後記する密着板部32を当接する当接面であって、後記する蓋20の枠面22と対面して形成されている。このガスケット当接面12には、該開口部壁面11との隣接部に沿って円弧状の溝14が周設されている(添付図7参照)。この円弧状の溝14は、前記ガスケット30の密着板部32の先端が侵入するようになっている。
(4)一方、前記蓋20の構造は、添付図2及び3に示すように、その外周縁に沿って形成された当接部21を備えており、装着される前記ガスケット30を介して前記収納ボックス10のガスケット当接面12に対面する枠面22と、固定壁24と、前記枠面22に断続的に形成されたガスケットの挿入溝23及び固定突起25とを含んで構成される。この固定突起25は、前記ガスケット30の基体部31を遊嵌的に固定するための遊嵌溝を形成する突起である(添付図4参照)。
(5)前記ガスケット30は、合成樹脂製であって、添付図4?6に示すとおり、基体部31、断続的に形成された締結突起部33、密着板部32、及び蓋20の枠面22と面接触するように断続的に形成された前記締結突起部33を有しない圧着面33aを含んで構成される。密着板部32の先端部は下向きに形成されており、また、断続的に形成された前記締結突起部33は、前記蓋20に断続的に形成されたガスケットの挿入溝23に装着され固定される部分である。ガスケット30の前記基体部31と密着板部32との間には凹溝が形成されている。
(6)前記締結突起部33は、添付図4に示すようにガスケット30の基体から部分的に突出形成されており、前記圧着面33aは、前記締結突起部33が形成されていない部分である。
(7)前記圧着面33aは、蓋結合時(蓋装着時)に、予め真空状の負圧状態の環境の下で蓋20と収納ボックス10を密閉する際、添付図7に示すように、内部空気の遮断部とならないように空気を排出させ易くして内部圧力上昇を防止する目的と、その後、半導体素子製造工程に移送し、蓋開け時に蓋20の負圧状態からの開放を通して収納ボックス10内に積載されたウェハーを取り出すとき、圧力差による蓋20分離の困難を除去する目的で形成された部分である。
(8)この蓋20の構造は、添付図7に示すように、蓋20の結合作業時には、収納ボックス10内部の空気を蓋20の前記枠面22とガスケット背面側の圧着面33aと間を経由して通過させることで外部に排出し、その反対に、蓋20の解体作業時には、外部の空気が内部に流れ込むようにしたので、蓋20の結合、解体過程中の圧力差による問題を容易に解消し、蓋20の開放作業を容易にした。
(9)前記収納ボックス10のガスケット当接面12に形成された溝14は、添付図7に示すように、開口部の周縁に沿って円弧状に形成されている。
(10)前記蓋20の当接部21におけるロック構造は、添付図8(a)に示すように、収納ボックス10の前記開口部壁面11の互いに対向する位置に形成されたレバー挿入溝15に対して、対向配置された前記蓋20側の合成樹脂性の先端クサビ型ロックレバー41を前記レバー挿入溝15内に押圧挿入して固定する構造となっている。前記先端クサビ型ロックレバー41は、その先端上面側に楔状の傾斜面41aが形成されており、この傾斜面41aには口-ラー42aを有するローラー手段42を備え、ロック機構40により外方へ拡開されるように構成されている。
前記蓋20をロックする操作は、まずその先端クサビ型ロックレバー41の先端を前記レバー挿入溝15の上側挿入縁のエッジに当接し、この挿入縁のエッジに沿って先端クサビ型ロックレバー41の傾斜面41aに設けたローラー42aの転がりを利用しつつ先端クサビ型ロックレバー41を押圧挿入し、さらにレバー挿入溝15の奥へとコジリ入れるようにして強く差し込んで固定する。
そのロック操作による固定の際、合成樹脂の先端クサビ型ロックレバー41は、その差し込み時に傾斜面41aの当接によって相対的に収納ボックス10に対して下方へ向かう反力をレバー挿入溝15の上側挿入縁のエッジから受ける。その差し込み時の当接反力を利用して蓋20を収納ボックス10の当接面12側に押圧力を付与するように構成されている。そのため、この押圧力によって先端クサビ型ロックレバー41を備える蓋20をガスケット30を介して収納ボックス10の当接面に対して押圧して挟着する構造とされている。
このロック構造により、収納ボックス10の開口部における蓋20との対向面間にガスケット30を挟着し、ガスケット30を前記対向面間に強く圧迫する密封部を構成するようにしたものである。
(11)イ号製品は、前記蓋20のロック機構40として、上記したようにローラー手段42を配置した先端部がクサビ型に傾斜させた先端クサビ型ロックレバー41を収納ボックス10のレバー挿人溝15に挿入して蓋20をロックするようにしたロック機構40を備えるものであって、このロック機構40による収納ボックス10に対する当該蓋20の結合は、当接面12、枠面22の間においてガスケット30の基体部31及び密着板部32をその全面に亘って接触させるための押圧力を付与して緊密に密着して当接させた状態の下に結合される。すなわち、ガスケット30は、当接面12、枠面22間において全体的に挟着して固定されるので、摺動移動する部分は存在しない。
(12)イ号製品のガスケット30を収容した蓋20と収納ボックス10との間の当接部は、ガスケット30を介して緊密に蓋20が結合された状態の密封部が維持されるので、ガスケット30による内外気圧差に対する問題を解決する最適の密封性が発揮されるシール機能を確保することができる。
これにより、イ号製品は、収納ボックス10と蓋20との密閉力を強力なものにできる構造としたものである。
(13)前記収納ボックス10の内部壁面には、各ウェーハーを実装して安全に運搬及び保管するための仕切り溝が、添付図1に示すように、等間隔に形成されている。」(請求書第4頁第11行?第6頁第24行)

2.イ号図面
イ号図面として、判定請求書に添付された「イ号説明図面」の図1ないし図8が提出されている。

3.イ号物件の認定
(1)イ号物件の認定に関する請求人の主張
イ号物件のうち、特に、収納ボックス10に対する蓋20の結合及び蓋閉じ完了時のガスケットの状態に関し、請求人はイ号物件が、
「蓋閉じ完了時において、収納ボックス10に対する当該蓋20の結合は、前記蓋20に設けた先端クサビ型ロックレバー41先端部に裏面側から表面側に向かう楔状の傾斜面41aに設けたローラー手段42を採用したロック機構40による楔作用を利用した収納ボックス10のレバー挿入溝15への挿入する際に発生させる押圧力により、収納ボックス10と蓋20との両当接面の間に介在されるガスケット30は全体的に圧迫状態の下に挟着されて固定されるものであり、その際、ガスケット30表面の基体部31及び密着板部32はガスケット当接面に対しその全面に亘って密着させられると共に、ガスケット30裏面及び圧着面33aは枠面22に当接して密着させられた状態の下に蓋20が結合されて、ガスケット30を摺動移動する部分が存在しない状態で緊密に固定される構造を備える」との認定を主張する(請求書第7ページ第7行?第16行)。

(2)当審によるイ号物件の認定
まず、イ号説明図面の図1から、イ号物件において、「ガスケット30」は収納ボックス10の開口周縁部に装着されることが理解される。
また、イ号説明図面の図5ないし図7を参酌すると、ガスケット30の密着板部32は、先端に近づくほど薄く形成されていることが看取できる。また、図7及び図8を参酌すると、ガスケット30の密着板部32の先端は、収納ボックス10の円弧状の溝14に当接して受け入れられることが理解される。

次に、イ号物件の認定に関する上記(1)の請求人の主張につき検討する。
請求人の主張する「クサビ型ロックレバー41」を用いた蓋20の結合方法に関しては、イ号物件はあくまで「ウェハーキャリア1のガスケット当接面の構造」であるから、結合方法としては蓋閉じ完了時にイ号物件の「構造」のようになるものであれば足り、必ずしも請求人の主張するような「クサビ型ロックレバー41」による結合に特定する必然性はなく、使用形態の一態様に過ぎないものである。
また、請求人は、イ号物件は、「ガスケット30表面」「の密着板部32はガスケット当接面に対しその全面に亘って密着させられると共に」、「ガスケット30を摺動移動する部分が存在しない状態で緊密に固定される」ものと主張する。しかしながら、上記したように、先端に近づくほど薄く形成されているガスケット30の密着板部32の先端は、収納ボックス10の円弧状の溝14に当接して受け入れられるものであるところ、ガスケット30表面の密着板部32が全面に亘って密着させ、摺動移動する部分が存在しない状態で緊密に固定されるのであれば、そもそも、密着板部32の先端を薄くし円弧状の溝14に当接して受け入れられるように形成する必要はないから、請求人の主張はイ号物件を特定の使用形態のみに限定した場合を前提とするものといわざるを得ず、採用し得ない。

以上を踏まえ、イ号説明図面の図1ないし図8及び審判請求書の上記1.にて摘記した記載内容から、イ号物件は、請求人の分説に準じて、前記第2に記載の本件特許発明の分説A.?E.に対応させて、以下のa.?e.の構成を具備するものと認められる(以下「構成a」などという。)。

「a.ウェハーの複数枚をそれぞれ等間隔で内部収納空間13に収納する収納ボックス10と、収納ボックス10の開口部を閉じる蓋20と、収納ボックス10の開口周縁部に装着されるガスケット30とからなるウェハーキャリア1であって、
b.
(b-0)蓋20の外周縁に沿って設けられた当接面の枠面22に装着される合成樹脂製のガスケット30が、
(b-1)前記枠面22の周縁に沿って断続的(不連続)に形成された挿入溝23に挿入される部分的に不連続状に突出形成された締結突起部33を備え、この締結突起部33が形成されない部分を前記枠面22に当接する圧着面33aとして形成された全体としてループ形状のガスケット本体と、
(b-2)前記ガスケット本体から収納ボックス10外方向に「へ」の字形に屈折して延出された密着板部32と、
(b-3)その密着板部32の先端に収納ボックス10の開口部側を向くように、先端に近づくほど薄く形成され、収納ボックス10に当接する先端部と、
(b-4)前記密着板部32の内方側に延出して形成された基体部31からなり、
c.前記収納ボックス10の開口部周縁には、蓋閉じ時に前記ガスケット30の密着板部32の先端部を受け入れる断面円弧状の溝14を周設し、
d.前記収納ボックス10に対する蓋閉じ完了時において、ガスケット30の圧着面33aは枠面22に当接して密着させられた状態の下に蓋20が結合され、ガスケット30の密着板部32の先端は、収納ボックス10の円弧状の溝14に当接して受け入れられる構造を備える、
e.ウェハーキャリア1のガスケット当接面の構造。」

第4.当審の対比・判断
イ号物件が本件特許発明の構成要件AないしEを充足するか否かについて、構成要件Aをイ号物件の構成aに、構成要件Bを構成bに、の如く順次対応させて、対比検討する。

(1)構成要件Aについて
イ号物件の「ウェハー」が本件特許発明の「ウェハ等の精密基板」に相当することは技術常識に照らして明らかであり、以下同様に、「内部収納空間13に」は「直接」に、「収納する」は「収容する」に、「収納ボックス10」は「容器本体」または「容器」に、(収納ボックス10の開口部を閉じる)「蓋20」は「蓋体」に、「ガスケット30」は「ガスケット」に、「ウェハーキャリア1」は「薄板支持容器」に相当することも明らかである。
そうすると、イ号物件の構成aは、本件特許発明の構成と一致するから、構成要件Aを充足する。なお、この点に関し両当事者間に争いはない。

(2)構成要件Bについて
上記(1)にて指摘したように、イ号物件の「蓋20」は本件特許発明の「蓋体」に相当し、同様に「ガスケット30」は「ガスケット」に、「収納ボックス10」は「容器」に相当する。
そして、イ号物件の構成(b-2)の「ガスケット本体から」「延出された」は本件特許発明の構成要件(B-2)の「基体嵌合部から」「延出された」に相当するものであることも明らかである。また、イ号物件の構成(b-2)等の「密着板部32」は、容器(収納ボックス10)外方向に「へ」の字形に屈折して延出されたものであるから、本件特許発明の構成要件(B-2)等の「延伸部」に相当するということができる。
さらに、イ号物件の構成(b-4)の密着板部32(延伸部)の内方側に延出した「基体部31」については、「ガスケット30の基体部31を遊嵌的に固定するための遊嵌溝を形成する」とあるところ(請求書第4ページ下から2行)、本件特許図面の図5とイ号説明図面の図8に示された蓋を閉じていく状態を併せ参酌すると、イ号物件の「密着板部32の内方側に延出して形成された基体部31」は、本件特許発明の構成要件(B-4)の「延伸部の基部より内方に下向きに形成されたストッパー」に相当するといえる。

そうすると、まず、構成bのうち、構成(b-2)及び(b-4)は、それぞれ本件特許発明の構成要件(B-2)及び(B-4)と一致し、構成要件を充足する。なお、この点に関し両当事者間に争いはない。

次に、構成bのその余の構成について検討する。
ア.まず、その余の構成うち、構成(b-0)の「蓋20の外周縁に沿って設けられた当接面の枠面22に装着される合成樹脂製のガスケット30」が、対応する構成要件(B-0)を充足するか否かについて検討する。
本件特許発明の構成要件(B-0)は「蓋体の開口部周縁に設けられたガスケット装着部に装着される合成樹脂製ガスケット」というものであるところ、請求人は、「イ号製品は、構成bのとおり、蓋20は「開口部」を備えていないから、構成要件Bを充足しない。」と主張し(請求書第7ページ下から10?9行)、さらに構成要件(B-0)の「蓋体の開口部周縁」なる事項は、審査時において審査官が特許法36条6項2号の要件違反で発した拒絶理由通知に対し、手続補正書によって、請求項1に記載した「蓋体(または容器)の開口部周縁」を「蓋体の開口部周縁」に限定的に補正したものであるから、この補正により「蓋体の開口部周縁」と意識的に限定した記載は、厳格に解釈されねばならない旨主張する(請求書第7ページ下から8?2行)。
これについて検討するに、まず、本件特許発明の構成要件(B-0)における「蓋体の開口部周縁」については、特許法第70条第2項の規定に基づき、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮してその用語の意味を解釈するに、本件特許発明の蓋体自体が開口部を有するとの記載は明細書及び図面にはなく、そもそも蓋体は容器を密封させるためのものである(明細書段落【0002】等参照)から開口部が存在しないはずであり、したがって、本件特許発明における「蓋体の開ロ部周縁」なる用語が意味する部位は、「蓋体における容器の開口部の近傍の部位」と合理的に解釈すべきである。
この点、請求人は出願経過に鑑み、「蓋体の開口部周縁」と意識的に限定しての記載は、厳格に解釈されねばならない旨主張するが、そのように厳格に解釈するとしても、厳格な解釈は、(容器を密封させるという)蓋体の本来の役割を損なわせるような不合理な解釈を強いるものではないから、請求人のかかる主張は採用し得ない。
そして、構成(b-0)の「蓋20の外周縁に沿って設けられた」ことは、「蓋体における容器の開口部の近傍の部位」に設けられたことに他ならないから、これは構成要件(B-0)の「蓋体の開口部周縁に設けられた」に対応するといえる。また、構成(b-0)の「当接面の枠面22」は、イ号説明図面の図5等を参酌すれば、構成要件(B-0)の「ガスケット装着部」に対応するものと認められる。
したがって、イ号物件の構成(b-0)は、本件特許発明の構成要件(B-0)を充足する。

イ.次に、構成bのうち、構成(b-1)の構成要件(B-1)の充足性について検討する。
イ号物件の構成(b-1)は、「枠面22の周縁に沿って断続的(不連続)に形成された挿入溝23に挿入される部分的に不連続状に突出形成された締結突起部33を備え、この締結突起部33が形成されない部分を前記枠面22に当接する圧着面33aとして形成された全体としてループ形状のガスケット本体」というものであるところ、ガスケット本体に不連続に突出形成された締結突起部は、枠面22の挿入溝23に挿入嵌合されるものであるから、イ号物件の構成(b-1)は、 本件特許発明の構成要件(B-1)たる(ガスケットが)「その断面形状を上記のガスケット装着部に挿入嵌合される基体嵌合部」なる要件を充足する。
この点請求人は、「イ号製品のガスケット30の締結突起部33は、本件特許発明のように連続的に形成されたものでなく、しかも、不連続部において圧着面33aが形成されたものであるから、本件特許発明の基体嵌合部とは相違する。」と主張する(請求書第8ページ第8行?第10行)。しかしながら、本件特許発明の構成要件(B-1)は、基体嵌合部が連続的に形成されることを要件とするものではなく、連続的であれ不連続であれ、挿入嵌合する部分を有することが要件であるから、請求人の主張は採用し得ない。

ウ.次に、構成bのうち、構成(b-3)の構成要件(B-3)の充足性について検討する。
イ号物件の構成(b-3)に係る、密着板部32(延伸部)における、先端に近づくほど薄く形成され、収納ボックス10に当接する先端部は、薄く形成された先端で当接するものであるから、「当接薄片」ということができる。また、構成(b-3)における「収納ボックス10の開口部側を向く」方向は、本件特許発明の構成要件(B-3)における「下向き」と同じ方向であることは明らかである。
したがって、イ号物件の構成(b-3)は、本件特許発明の構成要件(B-3)を充足する。

エ.小括
よって、イ号物件の構成(b)は、本件特許発明の構成要件(B)を充足する。

(3)構成要件Cついて
上記(1)にて指摘したように、イ号物件の「収納ボックス10」は本件特許発明の「容器本体」に相当する。そして、イ号物件の「断面円弧状の溝14」は本件特許発明の「円弧状のシール溝」に相当することも明らかである。
また、イ号物件における「ガスケット30の密着板部32の先端部を受け入れる」は、本件特許発明の「ガスケットの当接薄片を受容する」に相当するものと言い得る。
そうすると、イ号物件の構成cは、本件特許発明の構成と一致するから、構成要件Cを充足する。なお、この点に関し両当事者間に争いはない。

(4)構成要件Dについて
ア.本件特許発明の構成要件Dの解釈
まず、本件特許発明の構成要件Dについては、請求人は、特許法第70条第2項等を踏まえ、「構成要件Dの「蓋閉じ完了時にガスケット装着部に装着した前記ガスケットの「へ」の字形屈折部を蓋体の当接面が押圧することにより該延伸部に曲げ応力が加わりその応力に抗する弾性力によって当接薄片部が前記円弧状溝に密着させられる」との記載の用語の意義は、ガスケット6を装着した後の蓋閉じ完了時においても、なお、ガスケット(6)と容器本体(2)側のガスケット当接面(2c)との間に所定の隙間Cを形成できるように、蓋体3の嵌合当接面3tと容器本体2の嵌合部当接面2tとが当接する構造を備えるものであると限定して解釈するのが相当である。」と主張する(請求書第14ページ下から6行?第15ページ第1行)ので、これにつき検討する。

本件特許発明は、「環境の気圧変動に伴う容器との圧力差を利用して容器口部に装着したガスケットのシール面を摺動移動させ、その摺動面に生じる微細な隙間から排気、吸気を行うことによりパーティクルの混入のない通気を図り、気圧差を解消する」(本件特許明細書段落【0007】)という課題解決のためのものである。
そして、本件特許明細書の「ガスケットの「へ」の字形屈折部上面は蓋体のガスケット装着部の隣接面に押圧され、その先端の当接薄片が容器本体側(または蓋体側)のガスケット対向面外側に摺動し前記の円弧状溝部に受容されると共に該延伸部の弾力性をもって当接する。したがって、容器内の気圧と環境の気圧との間に差異を生じると、延伸部の弾性力に逆らって当接先端が円弧状溝部表面を低圧側に摺動移動する。この摺動の間にシール片先端と円弧状溝部表面との間に微小な間隙を生じ、そこから気体が流通して容器内と外気との圧力差を解消することになる。」(本件特許明細書段落【0011】)等の記載に鑑みると、本件特許発明は、延伸部の当接先端が円弧状溝部表面を低圧側に摺動移動して圧力差を解消するという技術的意義を有するものと認められる。

そしてかかる技術的意義に鑑みれば、本件特許明細書(【0021】)及び図面(図7)に記載されているような、蓋閉じ完了時においてガスケット(6)の下面と対向する容器本体(2)側のガスケット当接面(2c)との間に若干の隙間Cが存在することが必要であるから、本件特許発明は、特許法第70条第2項等を踏まえ、上記「蓋閉じ完了時においてガスケット(6)の下面と対向する容器本体(2)側のガスケット当接面(2c)との間に若干の隙間Cが存在する」と限定して、構成要件Dの用語の意義を解釈するのが相当である。

イ.イ号物件の構成(d)の充足性
次に、イ号物件の構成(d)は、「収納ボックス10に対する蓋閉じ完了時において、ガスケット30の圧着面33aは枠面22に当接して密着させられた状態の下に蓋20が結合され、ガスケット30の密着板部32の先端は、収納ボックス10の円弧状の溝14に当接して受け入れられる構造を備える」というものであるところ、
(i)イ号物件のガスケット30は、構成(b-2)として「基体嵌合部から容器外方向に「へ」の字形に屈折して延出された延伸部」を備えるものである。
(ii)本件特許発明の構成要件Dを「蓋閉じ完了時においてガスケット(6)の下面と対向する容器本体(2)側のガスケット当接面(2c)との間に若干の隙間Cが存在する」ものと限定解釈しても、イ号物件の構成dも、上記したように密着板部32の先端が先端に近づくほど薄く下向きに形成されていること、密着板部32の先端は、収納ボックス10の円弧状の溝14に当接して受け入れられるものであることに鑑みれば、イ号物件の構成dも同様に限定解釈すべき態様を含んでいるものと認められる。
そして、上記(i)及び(ii)を技術常識を踏まえて解釈すると、イ号物件の構成(d)は、蓋閉じ完了時において、ガスケット当接面(枠面22)に装着したガスケット30の「へ」の字形に屈折した延伸部(密着板部32)を蓋20の当接面が押圧することにより、前記延伸部(密着板部32)に曲げ応力が加わり、その応力に抗する弾性力によって、前記密着板部32の先端部分(本件特許発明における「当接薄片」に相当)が円弧状の溝14に密着させられることと同等であるといえる。
そうしてみると、イ号物件の構成(d)は本件特許発明の構成要件(D)を充足する、といえる。

これに関し請求人は、さらに、蓋閉じ完了時においてガスケット(6)の下面と対向する容器本体(2)側のガスケット当接面(2c)との間に若干の隙間Cが存在するために、「蓋体3の嵌合当接面3tと容器本体2の嵌合部当接面2tとが当接する構造を備えるものであると限定して解釈するのが相当である。」と主張する(請求書第14ページ下から6行?第15ページ第1行)。
たしかに、本件特許発明が隙間Cを形成できるようにするためには、請求人の主張するように、蓋体3の嵌合当接面3tと容器本体2の嵌合部当接面2tとが当接する構造が、本件特許発明の一つの好ましい実施形態であることは、否定し得ない。
しかしながら、まず、特許法第70条第1項は、特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならないとされ、同条第2項には、前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載および図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するとされているところ、上記第2項は、特許発明を明細書に記載された実施形態に限定して解釈することを要求しているものではない。
そして、本件特許発明は、実施例のような、蓋体3の嵌合当接面3tと容器本体2の嵌合部当接面2tとが当接する構造を実施例等の発明の具体的な実施の態様における特定の要件を備えていなければ、本件特許発明の効果を奏し得ないとまでは認められないから、請求人の主張するように本件特許発明の構成要件Dを限定して解釈する特段の事情はない。
よって、請求人のかかる主張は採用し得ない。

(5)構成要件Eについて
イ号物件の「ウェハーキャリア1」は本件特許発明の「精密基板収納容器」に相当し、同様に「ガスケット当接面の構造」は「ガスケット構造」に相当することも明らかである。したがって、イ号物件の構成eは、本件特許発明の構成と一致するから、構成要件Eを充足する。なお、この点に関し両当事者間に争いはない。

(6)請求人の本件特許が無効であるとの主張について
請求人は、本件特許は、いわゆるサポート要件を満たしておらず特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないから、無効理由を有するものである旨主張する(請求書第17ページ第7行?第18ページ第18行)。しかしながら、特許が無効とされるべきものであるか否かは、判定における特許発明の技術的範囲の判断に属するか否かの判断と無関係のものである。したがって、請求人の無効理由に関する当該主張を考慮する必要を認めない。

(7)まとめ
よって、イ号物件の構成aないしeは、いずれも本件特許発明の構成要件AないしEを充足する。

第6.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件である「ウェハーキャリアのガスケット構造」は、本件特許発明の構成要件AないしEの全てを充足するから、本件特許発明の技術的範囲に属する。

よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2012-04-23 
出願番号 特願2005-124448(P2005-124448)
審決分類 P 1 2・ 1- YB (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 謙一岡澤 洋松岡 美和  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 刈間 宏信
長屋 陽二郎
登録日 2010-04-02 
登録番号 特許第4482655号(P4482655)
発明の名称 精密基板収納容器のガスケット  
代理人 澤 喜代治  
代理人 厳 大貴  
代理人 磯野 道造  
代理人 富田 哲雄  
代理人 澤 喜代治  
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