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審決分類 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する A61H
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A61H
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A61H
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A61H
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する A61H
管理番号 1256634
審判番号 訂正2012-390007  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2012-01-27 
確定日 2012-05-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3727648号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3727648号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3727648号の請求項1?8に係る発明についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成14年3月11日に出願した特願2002-64823号(以下、「原出願」という。)の一部を平成17年4月7日に新たな特許出願としたものであって、平成17年10月7日にその発明について特許権の設定登録がされたものである。

第2.請求の要旨
本件審判請求の要旨は、特許3727648号に係る明細書(特許請求の範囲)を、本件審判請求書に添付した訂正明細書(特許請求の範囲)のとおり、すなわち、下記(1)ないし(8)のとおり訂正する(下線部は訂正箇所を示す。)ことを認める、との審決を求めるものである。

(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1を、
「【請求項1】
座部に着座した被施療者の身体を施療する椅子型マッサージ機であって、前記座部に着座した被施療者の胴体及び腕部を後方から支持すると共に、被施療者の胴体を背部から側部に亘って覆う胴体クッション部を有する背凭れ部と、前記被施療者の上腕及び肩の外側部を覆うべく前記背凭れ部の左右の側部から前方へ延設された外側支持部と、前記座部の両側部上方には被施療者の前腕部を保持する肘掛け部とを備え、
前記背凭れ部は、前記被施療者の胴体に後方から機械的刺激を与える機械式マッサージ器と、前記胴体クッション部に設けられて給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の胴体を後方から押圧して胴体側部に圧迫刺激を与える第1空気式マッサージ器とを有し、
更に前記背凭れ部は 背凭れ面が凹状に窪んだ形状を成し、前記第1空気式マッサージ器は、凹状を成す前記背凭れ面の左右部分であって、被施療者の胴体の側部に対応する部分に設けられており、
左右の前記外側支持部は、互いに対向する部分に配置されて給気により空気袋が膨張して前記被施療者の上腕及び肩を左右の外方から押圧する第2空気式マッサージ器を有し、
該第2空気式マッサージ器は、被施療者の上腕の外側部に対応する位置から、前記背凭れ部に沿って前記第1空気式マッサージ器より上方へ、被施療者の肩の外側部に対応する位置付近まで延設され、且つ、前記被施療者の上腕及び肩の前方まで延設されており、
前記肘掛け部は、被施療者の前腕部を覆うように前後方向に直交する断面が凹状に形成され、且つ正面視で内側が開いた状態とされており、給気によって膨張して前記前腕部を上方及び下方から押圧する空気袋を有している
ことを特徴とする椅子型マッサージ機。」と訂正するものである。
即ち、訂正事項1は、訂正前の請求項1に対し、以下の記載を追加するものである。
訂正事項1-1:「前記座部の両側部上方には被施療者の前腕部を保持する肘掛け部」
訂正事項1-2:「更に前記背凭れ部は、背凭れ面が凹状に窪んだ形状を成し、前記第1空気式マッサージ器は、凹状を成す前記背凭れ面の左右部分であって、被施療者の胴体の側部に対応する部分に設けられており」
訂正事項1-3:「前記肘掛け部は、被施療者の前腕部を覆うように前後方向に直交する断面が凹状に形成され、且つ正面視で内側が開いた状態とされており、給気によって膨張して前記前腕部を上方及び下方から押圧する空気袋を有して」

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2を、
「【請求項2】
前記背凭れ部はその下部が前記座部の後部にて前後へ回動自在に枢着され、該背凭れ部の上部には前記被施療者の頭部を支持する頭部クッション部を有し、前記外側支持部は、前記背凭れ部に沿って前記肘掛け部から前記クッション部へ至るまで延設されていることを特徴とする請求項1に記載の椅子型マッサージ機。」と訂正するものである。
即ち、訂正事項2は、上記訂正事項1において訂正後の請求項1に含めることとなった訂正事項1-1に係る「前記座部の両側部上方には被施療者の前腕部を保持する肘掛け部が設けられており」との記載を、訂正前の請求項2から削除するものである。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除するものである。

(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項4を、
「【請求項3】
前記機械式マッサージ器は、前記背凭れ部における左右方向の中央に配置され、前記第1空気式マッサージ器は、前記機械式マッサージ器に対して左右の外方に配置され、
前記外側支持部は、凹状を成す前記背凭れ面の左右の外側端部近傍から、前方へ向かって延設され、
前記第2空気式マッサージ器は、前記第1空気式マッサージ器に対して左右の外方に配置され、
前記肘掛け部の空気袋は、前記第2空気式マッサージ器よりも下方且つ前方に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の椅子型マッサージ機。」と訂正するものである。
即ち、訂正事項4は、訂正前の請求項4に対し、
訂正事項4-1:「前記外側支持部は、凹状を成す前記背凭れ面の左右の外側端部近傍から、前方へ向かって延設され」
訂正事項4-2:「前記第2空気式マッサージ器は、前記第1空気式マッサージ器に対して左右の外方に配置され」
訂正事項4-3:「前記肘掛け部の空気袋は、前記第2空気式マッサージ器よりも下方且つ前方に位置し」
との記載を追加するとともに、
訂正事項4-4:訂正前の「請求項4」の項数を訂正して「請求項3」にするとともに、引用請求項を「請求項1乃至3」から「請求項1又は2」に訂正するものである。

(5)訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項5を削除するものである。

(6)訂正事項6
訂正事項6は、訂正前の請求項6を、
「【請求項4】
前記背凭れ部は、左右の前記第1空気式マッサージ器の間を通る前記機械式マッサージ器の昇降動作を案内すべく上下方向へ延びるガイドを有することを特徴とする請求項3に記載の椅子型マッサージ機。」と訂正するものである。
即ち、訂正事項6は、訂正前の「請求項6」の項数を訂正して「請求項4」にするとともに、引用請求項を「請求項4又は5」から「請求項3」に訂正するものである。

(7)訂正事項7
訂正事項7は、訂正前の請求項7を、
「【請求項5】
前記第1空気式マッサージ器は、前記座部に着座した被施療者の胴体の側部を施療すべく成してあることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の椅子型マッサージ機。」と訂正するものである。
即ち、訂正事項7は、訂正前の「請求項7」の項数を訂正して「請求項5」にするとともに、引用請求項を「請求項1乃至6の何れか」から「請求項1乃至4の何れか」に訂正するものである。

(8)訂正事項8
訂正事項8は、訂正前の請求項8を、
「【請求項6】
前記背凭れ部は、給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の肩の上部を押圧する第3空気式マッサージ器を有していることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の椅子型マッサージ機。」と訂正するものである。
即ち、訂正事項8は、訂正前の「請求項8」の項数を訂正して「請求項6」にするとともに、引用請求項を「請求項1乃至7の何れか」から「請求項1乃至5の何れか」に訂正するものである。

第3.当審の判断
I.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
1.訂正事項についての検討
(1)訂正事項1
訂正事項1-1、訂正事項1-2、訂正事項1-3は、訂正前の請求項1に発明特定事項を付加するものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1-1は、訂正前の請求項2の「前記座部の両側部上方には被施療者の前腕部を保持する肘掛け部が設けられており」との記載、特許図面1,2、特許明細書の段落【0032】の記載等に基づくものといえ、訂正事項1-2は、特許明細書の段落【0023】の「背凭れ部3の全体は、内側が凹状に窪んだ形状をなすカバー部3aによって一体的に構成されており」との記載、特許明細書の段落【0024】の「これらの空気袋3dは、被施療者の胴体の側部に対応する箇所、即ち凹状の内側部分に設けられている。」との記載、特許図面1,2等に基づくものといえ、訂正事項1-3は、訂正前の請求項3の全記載、特許図面2,4、特許明細書の段落【0033】、段落【0034】の記載等に基づくものといえるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正後の請求項1に含めることとなった訂正事項1-1に係る「前記座部の両側部上方には被施療者の前腕部を保持する肘掛け部が設けられており」との記載を、訂正前の請求項2から削除したものを訂正後の請求項2とするものであるが、訂正後の請求項2は、訂正後の請求項1を引用するから、訂正後の請求項2は削除された記載に係る発明特定事項を備えているといえる。
してみると、訂正事項2は、訂正事項1-1による特許請求の範囲の減縮を目的とした請求項1の訂正に、訂正前の請求項2の記載を整合させるものといえるから、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(4)訂正事項4
訂正事項4-1、訂正事項4-2、訂正事項4-3は、訂正前の請求項4に発明特定事項を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項4-1は、特許明細書の段落【0031】の記載及び特許図面2に基づくものといえ、訂正事項4-2は、訂正前の請求項5の記載に基づくものといえ、訂正事項4-3は、特許図面1,2等に基づくものといえるから、訂正事項4-1、訂正事項4-2、訂正事項4-3は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、訂正事項4-4は、訂正前の請求項4の項数と引用請求項を、訂正事項3(訂正前の請求項3の削除)による請求項数の減少に整合させるものといえるから、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(6)訂正事項6
訂正事項6は、訂正前の請求項6の項数と引用請求項を、訂正事項3(訂正前の請求項3の削除)及び訂正事項5(訂正前の請求項5の削除)による請求項数の減少に整合させるものといえるから、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(7)訂正事項7
訂正事項7は、訂正前の請求項7の項数と引用請求項を、訂正事項3(訂正前の請求項3の削除)及び訂正事項5(訂正前の請求項5の削除)による請求項数の減少に整合させるものといえるから、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(8)訂正事項8
訂正事項8は、訂正前の請求項8の項数と引用請求項を、訂正事項3(訂正前の請求項3の削除)及び訂正事項5(訂正前の請求項5の削除)による請求項数の減少に整合させるものといえるから、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2.まとめ
以上によれば、本件審判請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許法第126条第1項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項及び第4項の規定に適合する。

II.独立特許要件
1.訂正特許発明
本件訂正により訂正された本件特許発明は、本件審判請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、「訂正特許発明1?6」という。)である。
「【請求項1】
座部に着座した被施療者の身体を施療する椅子型マッサージ機であって、
前記座部に着座した被施療者の胴体及び腕部を後方から支持すると共に、被施療者の胴体を背部から側部に亘って覆う胴体クッション部を有する背凭れ部と、前記被施療者の上腕及び肩の外側部を覆うべく前記背凭れ部の左右の側部から前方へ延設された外側支持部と、前記座部の両側部上方には被施療者の前腕部を保持する肘掛け部とを備え、
前記背凭れ部は、前記被施療者の胴体に後方から機械的刺激を与える機械式マッサージ器と、前記胴体クッション部に設けられて給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の胴体を後方から押圧して胴体側部に圧迫刺激を与える第1空気式マッサージ器とを有し、
更に前記背凭れ部は、背凭れ面が凹状に窪んだ形状を成し、前記第1空気式マッサージ器は、凹状を成す前記背凭れ面の左右部分であって、被施療者の胴体の側部に対応する部分に設けられており、
左右の前記外側支持部は、互いに対向する部分に配置されて給気により空気袋が膨張して前記被施療者の上腕及び肩を左右の外方から押圧する第2空気式マッサージ器を有し、
該第2空気式マッサージ器は、被施療者の上腕の外側部に対応する位置から、前記背凭れ部に沿って前記第1空気式マッサージ器より上方へ、被施療者の肩の外側部に対応する位置付近まで延設され、且つ、前記被施療者の上腕及び肩の前方まで延設されており、
前記肘掛け部は、被施療者の前腕部を覆うように前後方向に直交する断面が凹状に形成され、且つ正面視で内側が開いた状態とされており、給気によって膨張して前記前腕部を上方及び下方から押圧する空気袋を有している
ことを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
前記背凭れ部はその下部が前記座部の後部にて前後へ回動自在に枢着され、該背凭れ部の上部には前記被施療者の頭部を支持する頭部クッション部を有し、前記外側支持部は、前記背凭れ部に沿って前記肘掛け部から前記クッション部へ至るまで延設されていることを特徴とする請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項3】
前記機械式マッサージ器は、前記背凭れ部における左右方向の中央に配置され、前記第1空気式マッサージ器は、前記機械式マッサージ器に対して左右の外方に配置され、
前記外側支持部は、凹状を成す前記背凭れ面の左右の外側端部近傍から、前方へ向かって延設され、
前記第2空気式マッサージ器は、前記第1空気式マッサージ器に対して左右の外方に配置され、
前記肘掛け部の空気袋は、前記第2空気式マッサージ器よりも下方且つ前方に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項4】
前記背凭れ部は、左右の前記第1空気式マッサージ器の間を通る前記機械式マッサージ器の昇降動作を案内すべく上下方向へ延びるガイドを有することを特徴とする請求項3に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項5】
前記第1空気式マッサージ器は、前記座部に着座した被施療者の胴体の側部を施療すべく成してあることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の椅子型マッサージ機。
【請求項6】
前記背凭れ部は、給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の肩の上部を押圧する第3空気式マッサージ器を有していることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の椅子型マッサージ機。」

2.刊行物提出
本件特許3727648号についての無効審判(無効第2009-800219号)(以下、「無効審判」という。)の請求人(株式会社フジ医療器)は、文献2(特開2000-288049号公報)を提出し、本件訂正により訂正された特許発明は進歩性を欠如しているものであるから、本件訂正は独立特許要件に違反し認められないとして以下のように主張する。
(主張1)
肘掛け部に設けられた空気袋が「給気によって膨張して前記前腕部を上方かつ下方から押圧する」構成要素については、無効審判において提出された甲第1号証(特開2000-325416号公報)に記載された発明及び同じく甲第7号証(特開2001-204776号公報)に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものであって、同構成要素を実現するには、肘掛け部を正面視で内側か外側を開いた状態とするよりないところ、外側ではなく内側を開くように選択することに特段の技術的意義ないし価値を見出すことはできず、かかる選択は当業者が適宜なし得る設計事項である。
したがって、本件訂正により訂正された特許発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものである。

(主張2)
文献2の【請求項1】には、「上部に袋状部材を備えた底板と、下部に袋状部材を備えた天板と、前記底板と前記天板とを連結する支柱とを有することを特徴とするマッサージ機」と記載されているところ、かかる構成において、「手を左右の開口部から挿入して使用する」(段落【0011】)場合には、「開口部」が「正面視で内側に開いた状態」に該当することは明らかであるから、肘掛け部を正面視で内側に開いた状態にする構成は、文献2にも開示されている。
したがって、本件訂正により訂正された特許発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明、文献2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものである。

3.検討
本件特許は分割要件に違反しておらず、本件特許の出願日は原出願の出願日とみなされるから、刊行物提出により提出された文献2及び無効審判で提出された本件出願日前(原出願日前)に頒布された刊行物(甲各号証)の記載事項や無効審判請求人の上記主張を参酌しつつ、訂正特許発明1?6が進歩性を有するか否か(特許法第29条第2項に違反するか否か)について検討する。

3-1.訂正特許発明1
3-1-1.刊行物の記載内容
(1)無効審判で提出され、本件出願日前(原出願日前)に頒布された刊行物である甲第1号証(特開2000-325416号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
甲1ア:「人体の背中の中央部を施療子(9)でマッサージするマッサージ器(8)が、人体の背中に沿って移動可能に設けられたマッサージ機において、
前記マッサージ器(8)の両側方に、空気の給排気によって膨張収縮する空気式のマッサージ具(41)が設けられていることを特徴とするマッサージ機。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)

甲1イ:「【実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、本発明に係る椅子型マッサージ機1の全体構成を示している。図1及び図2において、椅子型マッサージ機1は、脚体2により支持された座部3と、座部3の後部に設けられた背凭れ部4と、座部3の前部下方に設けられたフットレスト5と、座部3の左右両側に設けられたひじ掛け部6とを具備している。背凭れ部4は、リクライニング装置7により座部3後端部側を支点としてリクライニング可能に構成されている。
背凭れ部4の左右中央部に機械式のマッサージ器8が昇降自在に内蔵されている。マッサージ器8は、図4にも示す如く複数の施療子(揉み玉、マッサージ用のローラ)9と、マッサージ用モータ10と、マッサージ用モータ10の回転動力を施療子9に伝達して該各施療子9に揉み動作や叩き動作をさせる伝動機構11と、支持枠14とを有し、マッサージ器8は、昇降手段13により背凭れ部4内を上下移動(昇降)可能に構成されている。昇降手段13は、マッサージ器8の支持枠14に螺合した送りねじ15を昇降モータ16で回転させることによって、マッサージ器8を昇降させる機構を採用してある。」(段落【0008】?【0009】)

甲1ウ:「揉み動作軸19及び叩き動作軸20の一方を選択して回転させる機構は、例えば図6に示すように構成されている。図6において、叩き動作軸20にはねじ歯車33が取り付けられ、揉み動作軸19にはウォーム歯車34が取り付けられている。上記叩き動作軸20及び揉み動作軸19の後方又は前方には上下方向に延びる案内軸35が配設され、該案内軸35には、上記ねじ歯車33と噛合するねじ歯車36と、上記ウォーム歯車34と噛合するウォーム37とが、上記案内軸35に対して回転自在に設けられている。
案内軸35上のねじ歯車36とウォーム37には互いに向かい合う端面に、クラッチとして機能する係合歯部36A,37Aがそれぞれ形成されている。上記案内軸35には、上記ねじ歯車36とウォーム37との間の部分に台形ネジ部39が形成されており、ここに可動はすば歯車40がその内径で螺合している。該可動はすば歯車40の両端面には、上記係止歯部36A,37Aと解除可能に係合する係合歯部40A,40Aが形成されている。上記案内軸35と平行に回転駆動軸43が設けられていて、回転駆動軸43は、前記マッサージ用モータ10によってプーリ及びベルト等を介して矢印P,Qの方向に切り代えて回転駆動されるようになっている。」(段落【0014】?【0015】)

甲1エ:「図1及び図3に示すように、前記背凭れ部4の両側部に、人体の背中の両側部をマッサージするための空気式のマッサージ具41が左右一対設けられている。左右一対の各マッサージ具41は、袋体により構成した複数(図例では二個)のエアセル42を備え、エアセル42に空気を供排することによりエアセル42は空気圧によって膨張収縮し、空気を供給して膨張させたときに使用者の背中の両側部を押圧するように構成されている(図7及び図8参照)。このマッサージ具は、前記マッサージ器8の両側方に位置して、長く配置されており、人体の背中の両側部を広範囲にマッサージできるようになっている。」(段落【0018】)

甲1オ:「なお、図7に示すように、前記左右一対のマッサージ具41の離間幅を狭く設定しておくことにより、人体Mに背中の両側部を後側から前方に押すようにマッサージできると共に、図8に示すように、左右一対のマッサージ具41の離間幅を比較的広く設定しておくことにより、人体Mの背中の両側部を左右に挟むように押圧することができ、この場合、左右一対のマッサージ具41によって人体が左右に動かないように固定することができ、これによって、マッサージ器8によるマッサージ効果を高めることができる。」(段落【0022】)

甲1カ:「図11は他の実施の形態を示し、背凭れ部4の両側部に、前方突出した左右一対の突起体91を設け、この突起体91間に使用者の人体Mをはめ込めるようにしている。また、前記実施の形態の場合と同様に、マッサージ器8が、マッサージ機の背凭れ部4の左右中央部に昇降自在に設けられ、前記空気式のマッサージ具41が、マッサージ器8の両側方に位置するように、左右一対の突起体91の内側面側に対向するように設けられている。この空気式のマッサージ具41は、前記実施の形態の場合と同様に人体の背中の両側部を広範囲にマッサージできるように、上下に長く配置されている。
その他の点は前記図1?図6の実施の形態の場合と同様の構成であり、前記実施の形態の場合と同様に、マッサージ器8を昇降させながら、施療子9による叩き動作や揉み動作によって人体の背中の中央部を比較的強くマッサージできる。また、マッサージ具41を左右方向内方に膨張させて、マッサージ具41によって、人体Mの背中の両側部(両脇乃至両腕)を左右に挟むように押圧しながらソフトにマッサージすることができ、この場合、左右一対のマッサージ具41によって人体が左右に動かないように固定することができ、これによって、マッサージ器8によるマッサージ効果を高めることもできる。」(段落【0026】?【0027】)

甲1キ:「さらに、前記図1?図6に示す実施の形態では、背凭れ部4の左右中央部にマッサージ器8を設け、該マッサージ器8の両側方に位置するように、空気式のマッサージ具41を背凭れ部4の左右両側部に設けているが、空気式のマッサージ具41は、背凭れ部4の両側部以外の場所、例えばマッサージ器8の上方又は下方に位置するように、背凭れ部4の上部又は下部その他の位置に設けるようにしてもよい。そして、マッサージ具41を背凭れ部4の上部に設けることにより、マッサージ具41で使用者の頭部をソフトにマッサージすることができ、マッサージ具41を背凭れ部4の下部に設けることにより、マッサージ具41で使用者の腰の下方をソフトにマッサージすることができる。」(段落【0032】)

甲1ク:甲1イの「図1及び図2において、椅子型マッサージ機1は、・・・・座部3の左右両側に設けられたひじ掛け部6とを具備している。」との記載及び図1,2の図示内容からして、椅子型マッサージ機1は座部3の両側部上方にはひじ掛け部6を備えているといえる。

甲1ケ:図8には、椅子型マッサージ機において、マッサージ具41を、背もたれ部4の背凭れ面の左右部分であって、人体Mの胴体の斜め後方に設け、人体Mの後方から背中の左右両側を押圧する態様が示されているといえる。

甲1コ:甲1オの「図8に示すように、左右一対のマッサージ具41の離間幅を比較的広く設定しておくことにより、人体Mの背中の両側部を左右に挟むように押圧することができ」との記載及び甲1ケからして、図8に示された態様の椅子型マッサージ機において、マッサージ具41は、給気によって空気袋が膨張して人体Mの胴体を後方から押圧して胴体側部に圧迫刺激を与えるといえる。

上記記載事項からして、甲第1号証には、以下の図11に示された態様の椅子型マッサージ機に係る発明と図8に示された態様の椅子型マッサージ機に係る発明が記載されている。
(図11に示された態様の椅子型マッサージ機に係る発明(以下、「甲1発明(図11)」という。)
「椅子型マッサージ機1であって、座部3と、リクライニング可能に構成された背凭れ部4と、座部3の両側部上方にはひじ掛け部6とを具備し、背凭れ部4の両側部に、前方突出した左右一対の突起体91を設け、この突起体91間に使用者の人体Mをはめ込めるようにし、背凭れ部4の左右中央部に機械式のマッサージ器8が内蔵され、空気を供排することにより膨張収縮するエアセルを備えた空気式のマッサージ具41が、左右一対の突起体91の内側面側に対向するように設けられるとともに、人体の背中の両側部を広範囲にマッサージできるように上下に長く配置され、マッサージ具41によって、人体Mの背中の両側部(両脇乃至両腕)を左右に挟むように押圧しながらソフトにマッサージすることができ、この場合、左右一対のマッサージ具41によって人体が左右に動かないように固定することができる、椅子型マッサージ機1。」

(図8に示された態様の椅子型マッサージ機に係る発明(以下、「甲1発明(図8)」という。)
「椅子型マッサージ機1であって、座部3と、
背凭れ部4とを具備し、
背凭れ部4は、給気によってエアセルが膨張して人体Mの胴体を後方から押圧して胴体側部に圧迫刺激を与える空気式のマッサージ具41を有し、
更に空気式のマッサージ具41は、背もたれ部4の背凭れ面の左右部分であって、人体Mの胴体の斜め後方の部分に設けられること。」

(2)無効審判で提出され、本件出願日前(原出願日前)に頒布された刊行物である甲第2号証の1(意匠登録第1022881号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
甲2の1ア:2頁の「使用状態を示す参考図」に、背凭れ部を有する椅子型マッサージ機に被施療者が着座した状態、及び被施療者の上腕及び肩の外側部を覆うべく前記背凭れ部の左右の側部から前方へ延設された外側支持部が図示されている。

(3)無効審判で提出され、本件出願日前(原出願日前)に頒布された刊行物である甲第5号証(特開平7-148209号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
甲5ア:「図10及び図11は、この発明の第3実施例のエアマッサージ装置を椅子式エアマッサージ装置Cに適用した例を示したものである。この第3実施例では、前記背凭れ部13上部に移動阻止手段としてのスイングアーム35が回動自在に配設されている。
このスイングアーム35は、使用者の左右両肩の前方への移動を阻止する左右アーム部37,37を有している。このアーム部37は、先端を下方に折曲して肩部の前面側を支持する形状を呈すると共に、肩部が当接する下面側人体当接面には、左右肩部空気袋a7,a8が配設されている。この左右肩部空気袋a7,a8は、図示省略のホースb7?b8及びホースc7?c8を経由して前記給排気装置40に接続している。
そして、前記制御回路100が位置E7からの信号を光センサ80から受けると回転体61の孔61bが固定体63の貫通孔63hに連通し、制御回路100が位置E8からの信号を光センサ80から受けると回転体61の孔61bが固定体63の貫通孔63iに連通するように構成されている。
この様に構成されたこの第3実施例の椅子式エアマッサージ装置Cでは、使用者が座部11に着座して、前記スイングアーム35を下方に回動させ、前記空気袋a7,a8を両肩部に当接させる。そして、操作パネル14の操作により、左右空気袋a7,a8を膨張させると、使用者の身体は、着座状態で固定される。」(段落【0055】?【0058】)

(4)無効審判で提出され、本件出願日前(原出願日前)に頒布された刊行物である甲第7号証(特開2001-204776号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
甲7ア:「【発明の属する技術分野】本発明はマッサージ機に関し、更に詳細には使用者の全身を効果的にマッサージして筋肉の疲労を取り、且つ精神的なリラクゼーションを与えることが可能なマッサージ機に関する。」(【0001】)

甲7イ:「本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決するためになされたもので、従来の椅子式エアーマッサージ機を改良して、更に足部や腕部の筋肉疲労も取り除き、同時に身体全体の血行促進を促し、付加的に使用者の現在の身体の状態を本人に確認させ得るようなマッサージ機を提供することにある。」(【0007】)

甲7ウ:「【発明の実施の形態】以下、本発明のマッサージ機を図に示される実施形態について更に詳細に説明する。図1には本発明の一実施形態に係るマッサージ機10がで示されている。この実施形態のマッサージ機10は、大別して椅子20と、脚保持部30と、足乗せ台40とから構成されている。
この椅子20の基本的な構成としては、座部21と、この座部21の両側に設けられた肘掛け部22と、座部21の後端に設けられた傾斜可能な背凭れ部23とを備えている。座部21と背凭れ部23のそれぞれ内部適所には、複数の空気袋(図示せず)が配置されている。
この椅子20には、座部21と背凭れ部23の内部に設置された複数の空気袋に圧縮空気を供給し、及び空気袋に供給された圧縮空気を排気する圧縮空気給排気機構(図示せず)が設けられている。この圧縮空気給排気機構により、座部21と背凭れ部23の内部に設置された複数の空気袋に圧縮空気を供給排気する。
これにより、空気袋に膨張と収縮を起こさせ、その結果使用者の尻部、腰部、背部、及び首部の筋肉を椅子20の外装布を介して圧迫解放してマッサージを行うようにされている。このような空気袋とこれに圧縮空気の供給排気をする圧縮空気給排気機構とにより空気式マッサージ機構部が構成されている。
このような空気式マッサージ機構部の構造は、前述した特開平10-118141号公報に開示されていて公知であると共に基本的な点では実質的に同じであるので詳細な説明は省略する。本実施形態のマッサージ機10では、更に肘掛け部22の上部に設けられた腕保持部24を備えている。腕保持部24は、使用者の腕を両側から挟むようにU字状の凹部25を形成する保持壁部24a、24bを備え、各保持壁部内にも前述したと同様な空気袋(図示せず)が配置されている。
この腕保持部24でも、これを構成している各保持壁部24a、24b内の空気袋に圧縮空気を供給排気することにより膨張と収縮を起こさせて保持壁部間の凹部25に入れられた使用者の腕を保持壁部24a、24bの外装布を介して挟み込むようにして圧迫し、またこの圧迫を解放することによりマッサージを行うようにされている。
この腕保持部24を構成する各保持壁部24a、24b内に設置される空気袋への圧縮空気の給排気機構は、前述した座部21及び背凭れ部23の内部に設置された空気袋に圧縮空気を給排気する機構をそのまま使用することができる。」(段落【0013】?【0019】)

甲7エ:「【発明の効果】以上説明したように、本発明のマッサージ機によれば、椅子に座った使用者は背凭れ部、座部、及び腕保持部の内部に設けられた空気袋の膨張収縮による圧迫と解放によって首部、背部、腰部、尻部及び腕部のエアーマッサージがなされ、同時に脚保持部により脚も同様にマッサージされることと相まって、足首からふくらはぎに亘り温熱バーにより加温され、更には足乗せ台により足裏も指圧的なマッサージを受け得るようにしたことで、全身が同時にマッサージされ、その結果全身の血行が促されて使用者の疲労を極めて効果的に取り除くことができる。」(【0045】)

甲7オ:図1には、椅子型マッサージ機10が、座部21の両側部上方に被施療者の前腕部を保持する腕保持部24を備え、前記腕保持部24は、被施療者の前腕部を覆うようにU字状凹部25が形成され、且つ正面視で上方が開いた状態とされている態様が示されている。

甲7カ:甲7オの態様の椅子型マッサージ機10は、甲7ウの「この腕保持部24でも、これを構成している各保持壁部24a、24b内の空気袋に圧縮空気を供給排気することにより膨張と収縮を起こさせて保持壁部間の凹部25に入れられた使用者の腕を保持壁部24a、24bの外装布を介して挟み込むようにして圧迫し、またこの圧迫を解放することによりマッサージを行うようにされている。」との記載からして、給気によって膨張して前腕部を左右から押圧する空気袋をU字状凹部25の左右の保持壁部24a,24b内に有しているといる。

上記記載事項からして、甲第7号証には次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されている。
「椅子型マッサージ機10が、座部21と、座部21の両側部上方には被施療者の前腕部を保持する腕保持部24とを備え、前記腕保持部24は、被施療者の前腕部を覆うようにU字状凹部25が形成され、且つ正面視で上方が開いた状態とされており、給気によって膨張して前記前腕部を左右から押圧する空気袋をU字状凹部25の左右の保持壁部24a,24b内に有していること。」

(5)無効審判で提出され、本件出願日前(原出願日前)に頒布された刊行物である甲第17号証(特開2000-296160号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
甲17ア:「【発明の効果】請求項1に記載したエアマッサージ機によれば、使用者の体型にかかわらず身体を包み込むように十分フィットした状態でマッサージを行なうことができ、すこぶる心地良いマッサージ効果が得られる。そして請求項1による効果に加えて請求項2に記載した発明によれば、十分リラックスできる心地良いサポート手段が得られる。このものは、エアバッグを膨張させたときに綿状パッドが適度な剛性を発揮するため、マッサージ効果が低下することがない。しかもマッサージを行なわないときにも心地良い座り心地とリラックス感が得られる。この発明によれば、必ずしも身体面に沿った基体(椅子本体等)を用いなくても、すなわち製造が容易なおおまかな形状の基体を用いた場合でも、良好なフィット感が得られる。請求項3および請求項4に記載した発明によれば、綿状パッドの厚さに応じてさらにリラックス感が向上し、身体に十分フィットさせることができる。」(段落【0033】)

(6)無効審判で提出され、本件出願日前(原出願日前)に頒布された刊行物である甲第26号証(特開2000-279470号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
甲26ア:「【発明の実施の形態】実施の形態1.図1は本発明の実施の形態1に係わるマッサージ機を示す要部側面図、図2はこのマッサージ機の動作状態を示す要部側面図、図3はこのマッサージ機を示す要部上面図、図4はこのマッサージ機の動作状態を示す要部上面図、図5はこのマッサージ機の動作状態を示す要部側面図、図6はこのマッサージ機の構成を示すブロック図、図7はこのマッサージ機の動作タイミング図、図8は身体の肩部や背部付近の筋肉の構造を示す説明図である。
図において、1は椅子、2は椅子1の上部に設けられたベース、3はベース2の両端にそれぞれ垂下して配設されたガイドレール、4は肩部または腕部に当接する当接部の一例を示す肩保持部であり、肩部を前方から椅子1側に保持している。肩保持部4の後部にはガイドレール3と嵌合するガイド溝5が形成されており、肩保持部4はガイドレール3に沿って前後方向に摺動可能に設けられている。また、肩保持部4の前部には肩部に当接するゴムスポンジや空気袋などの柔らかい材料からなる肩当て部6が設けられている。7は両端部が肩保持部4に固着され肩保持部4から垂下して配設された垂直板、8は椅子1の背部と垂直板7の間に設けられた空気袋であり、空気を充填させることにより膨張して空気圧により垂直板7を後方へ移動させるものである。空気袋8は前後に2個重ねて配置されている。9は一端を椅子1に取りつけ、他端を垂直板7に取りつけた垂直板戻しバネであり、空気袋8が収縮する際に垂直板7を椅子1側に引き戻すものである。10は椅子1の背部に設けられた背当て部であり、空気袋8と対向する位置に配設されている。
11は椅子1の上部に配設され前部に押し玉12が設けられたアームであり、アーム軸13によって揺動可能に枢支されている。14はアーム軸13を支持する支持部材であり、ベース2に固定されている。15はベース2とアーム11の間に設けられた空気袋であり、空気を充填させることにより膨張して空気圧によりアーム11の後部を上方に押し上げるものである。16は一端をベース2に取りつけ、他端をアーム11に取りつけたアーム戻しバネであり、空気袋15が収縮する際にアーム11をベース2側に引き戻すものである。アーム11、押し玉12、アーム軸13、支持部材14、空気袋15、アーム戻しバネ16はそれぞれ椅子1上部の左右に1つずつ設けられている。」(段落【0012】?【0014】)

甲26イ:「肩保持部4が両肩部を後方に牽引した後、制御部23は図7に示すS点において、第2の排気部20を閉塞状態にして空気袋15に第2のポンプ18からの空気を充填させる。空気袋15が空気によって膨張すると空気圧により図5に示すようにアーム11の後部が上方に押し上げられる。そして、アーム11前部の押し玉12はアーム軸13を支点に下方に移動し肩部を押圧する。このとき図8に示す僧帽筋Cは肩保持部4によって弛緩されているため、マッサージ効果が高く、かつ強い痛みを感じさせてしまうことを防止できる。」(段落【0019】)

甲26ウ:「もみ輪28が肩甲骨B周辺の筋肉のもみほぐしを開始した後、制御部23は図13に示すS点において、第2の排気部20を閉塞状態にして空気袋15に第2のポンプ18からの空気を充填させる。空気袋15が空気によって膨張すると実施の形態1同様、アーム11の押し玉12が下方に移動し肩部を押す。このとき肩部にまで位置する僧帽筋Cは肩保持部4によって弛緩されているため、マッサージ効果が高く、かつ強い痛みを感じさせることがない。また、もみ輪28によって肩甲骨B周辺の筋肉がもみほぐされ、背中から肩にかけて巡っている血管や神経の圧迫が和らげられているため、押し玉12の押しによるマッサージ効果を相乗的に高めることができる。」(段落【0032】)

甲26エ:図1?5,9?11には、椅子1が背もたれ部を有するとともに、該背もたれ部の上部には押し玉12を有するアーム11が設けられる態様が示されているといえる。

椅子1は椅子型マッサージ機といえるから、上記記載事項からして、甲第26号証には次の発明(以下、「甲26発明」という。)が記載されている。
「椅子型マッサージ機1において、
背もたれ部は、被施療者の肩の上部を押圧する押し玉12を有するアーム11が設けられていること。」

(7)本件出願日前(原出願日前)に頒布された刊行物である文献2(特開2000-288049号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
文献2ア:「【請求項1】上部に袋状部材を備えた底板と、
下部に袋状部材を備えた天板と、
前記底板と前記天板とを連結する支柱とを有することを特徴とするマッサージ機。」(特許請求の範囲)

文献2イ:「【発明の属する技術分野】本発明はマッサージ機に関し、特に、空気圧を利用して簡単に足などのマッサージを行うことが可能なマッサージ機に関するものである。」(【0001】)

文献2ウ:「【発明が解決しようとする課題】前記したような、従来のマッサージ機において、施療部を施行部位に巻き付けたり、施療部に施行部位を通したりするものは装着が面倒であるという問題点があった。また、凹字状の固定具を使用するマッサージ機においては足などの施療部位に左右からの圧力しかかけることができないという問題点があった。
本発明の目的は、前記のような従来技術の問題点を解決し、容易に装着、取り外しができ、施療部位に上下方向からの圧力を加えることが可能なマッサージ機を提供することにある。」(【0003】?【0004】)

文献2エ:「【課題を解決するための手段】本発明は、空気圧を利用するマッサージ機において、上部に袋状部材を備えた底板と、下部に袋状部材を備えた天板と、前記底板と前記天板とを連結する支柱とを有することを特徴とする。本発明によれば、例えば支柱を中央部に配置することにより、断面が「エ」字状のマッサージ機となり、左右の解放部から例えば足を挿入するだけで簡単に装着できる。更に、天板および底板に装着された袋状部材に空気ポンプ等によって空気を送り込んだり、排気したりすることを繰り返すことにより、足に上下方向から圧力をかけることが可能となり、例えばすねの脇にある三里のつぼに刺激を与えることができる。」(【0005】)

文献2オ:「図5は、脚を付けたマッサージ機の複数の使用状態を示す側面図である。図1のマッサージ機は、このまま床に置いて足や手を左右の開口部から挿入して使用することも可能であるが、図5のように独立して折り畳み可能な脚40、41を付加することによって、より便利に使用可能となる。図5(a)は両側の脚40、41を伸ばしてマッサージ機を高い位置で水平に設置した状態を示している。例えば椅子型のマッサージ機あるいはソファーと同時に使用する場合に、底板11の上部の高さを椅子型のマッサージ機の座の高さと同じにすることにより、椅子型のマッサージ機に座って脚を水平に伸ばして本発明のマッサージ機を使用できる。」(【0011】)

文献2カ:「以上、本発明の実施例を開示したが、本発明には下記のような変形例も考えられる。実施例においては、支柱12が中央部分に設けられている例を開示したが、支柱の位置や形状、数は任意であり、例えばどちらかの短辺に1つ設けてもよいし、両側の短辺に2つ、あるいは中央と両側の短辺の3カ所に設けてもよい。形状も板状の例を示したが、円柱状、棒状、複数の棒の組み合わせ、ひも状など任意である。実施例においては天板の長辺、短辺が共に底板よりも短い例を開示したが、天板の短辺のみあるいは長辺のみが底板よりも短いか、あるいは同じ形状であってもよい。なお、天板と底板とが同じ形状であっても図2の角度αを鋭角にすることは可能である。実施例においては独立して折り畳み可能な脚を有する実施例を開示したが、折り畳み不可能な脚、あるいは折り畳みは不可能であるが独立して着脱可能な脚を備えてもよい。実施例においてはマッサージ機本体とポンプ装置とが別の装置である例を開示したが、本体内にポンプを内蔵させることも可能である。」(【0020】)

文献2キ:「【発明の効果】本発明は、空気圧を利用するマッサージ機において、上部に袋状部材を有する底板と、下部に袋状部材を有する天板と、前記底板と前記天板とを連結する支柱とを有するので、例えば支柱を中央部に配置することにより、断面が「エ」字状のマッサージ機となり、左右の解放部から例えば足を挿入するだけで簡単に装着できるという効果がある。また、天板および底板に装着された袋状部材に空気ポンプ等によって空気を送り込んだり、排気したりすることを繰り返すことにより、足に上下方向から圧力をかけることが可能となり、例えばすねの脇にある三里のつぼに刺激を与えることができるという効果もある。また、天板の前後方向の長さが底板の前後方向の長さよりも短いので、足先や足の裏をマッサージするのに都合がよく、更に、椅子と組み合わせて使用する場合に、高さが多少ずれていても違和感なく使用できるという効果もある。更に、前後を独立して折り畳み可能な脚を設けたので、座った姿勢の他、任意の高さの椅子やソファーと組み合わせて使用できるという効果もある。」(【0021】)

文献2ク:文献2アの「上部に袋状部材を備えた底板と、下部に袋状部材を備えた天板と、前記底板と前記天板とを連結する支柱とを有する・・・マッサージ機」との記載及び文献2エの「本発明によれば、例えば支柱を中央部に配置することにより、断面が「エ」字状のマッサージ機となり、左右の解放部から例えば足を挿入するだけで簡単に装着できる。」との記載からして、文献2には、底板と、天板と、前記底板と前記天板とを連結するとともに中央部に配置された支柱とが断面がエ字状の施療部を構成するマッサージ機が記載されているといえる。

文献2ケ:文献2オの「図1のマッサージ機は、このまま床に置いて足や手を左右の開口部から挿入して使用することも可能である」との記載及び該記載の「左右の開口部から挿入」される「手」は被施療者の前腕部を含むことが明らかなことからして、文献2クの態様のマッサージ機において、施療部は、被施療者の前腕部を覆うように断面がエ字状に形成されているといえる。

文献2コ:文献2ウの「本発明の目的は、・・・施療部位に上下方向からの圧力を加えることが可能なマッサージ機を提供することにある。」との記載及び文献2エの「天板および底板に装着された袋状部材に空気ポンプ等によって空気を送り込んだり、排気したりすることを繰り返すことにより、足に上下方向から圧力をかける」との記載からして、文献2ケの態様のマッサージ機において、施療部は、給気によって膨張して前腕部を上方及び下方から押圧する袋状部材を有しているといえる。

上記記載事項からして、文献2には次の発明(以下、「文献2発明」という。)が記載されている。
「底板と、
天板と、
前記底板と前記天板とを連結するとともに中央部に配置された支柱とを有し、
前記底板と前記天板と前記支柱とが断面がエ字状の施療部を構成し、
前記施療部は、被施療者の前腕部を覆うように断面がエ字状に形成されており、給気によって膨張して前腕部を上方及び下方から押圧する袋状部材を有しているマッサージ機。」

3-1-2.対比
訂正特許発明1と甲1発明(図11)とを対比すると、後者の「椅子型マッサージ機1」は「座部3」を具備しているので、「座部に着座した被施療者の身体を施療する椅子型マッサージ機」といえ、同様に、「突起体91」はその「マッサージ具41によって、人体Mの背中の両側部(両脇乃至両腕)を左右に挟むように押圧しながらソフトにマッサージすることができ」、「背凭れ部4の両側部に、前方突出した左右一対の」ものであるから、「被施療者の上腕及び肩の外側部を覆うべく前記背凭れ部の左右の側部から前方へ延設された」「外側支持部」といえ、「背凭れ部4」はその「左右中央部に機械式のマッサージ器8が内蔵され」ているから、「背凭れ部は、前記被施療者の胴体に後方から機械的刺激を与える機械式マッサージ器」を有しているといえ、また「突起体91」は「空気を供排することにより膨張収縮するエアセルを備えた空気式のマッサージ具41が、左右一対の突起体91の内側面側に対向するように設けられるとともに、」「マッサージ具41によって、人体Mの背中の両側部(両脇乃至両腕)を左右に挟むように押圧しながらソフトにマッサージすることができ」ることから、「左右の前記外側支持部は、互いに対向する部分に配置されて給気により空気袋が膨張して前記被施療者の上腕及び肩を左右の外方から押圧する第2空気式マッサージ器を有し」ているということができる。
甲1発明(図11)の「ひじ掛け部6」は、訂正特許発明1の「肘掛け部」に相当する。

そうすると、訂正特許発明1と甲1発明(図11)とは、訂正特許発明1の用語を用いて記載すると次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「座部に着座した被施療者の身体を施療する椅子型マッサージ機であって、
背凭れ部と、前記被施療者の上腕及び肩の外側部を覆うべく前記背凭れ部の左右の側部から前方へ延設された外側支持部と、前記座部の両側部上方には肘掛け部とを備え、
前記背凭れ部は、前記被施療者の胴体に後方から機械的刺激を与える機械式マッサージ器を有し、
左右の前記外側支持部は、互いに対向する部分に配置されて給気により空気袋が膨張して前記被施療者の上腕及び肩を左右の外方から押圧する第2空気式マッサージ器を有している椅子型マッサージ機。」

(訂正後相違点1)
背凭れ部が、訂正特許発明1では「前記座部に着座した被施療者の胴体及び腕部を後方から支持すると共に、被施療者の胴体を背部から側部に亘って覆う胴体クッション部を有する」ものであって、「更に前記背凭れ部は、背凭れ面が凹状に窪んだ形状を成し」ているが、甲1発明(図11)ではそのような特定がない点。

(訂正後相違点2)
訂正特許発明1は、「前記胴体クッション部に設けられて給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の胴体を後方から押圧して胴体側部に圧迫刺激を与える第1空気式マッサージ器」を有するとともに、「前記第1空気式マッサージ器は、凹状を成す前記背凭れ面の左右部分であって、被施療者の胴体の側部に対応する部分に設けられて」いるが、甲1発明(図11)はそのような構成を有していない点。

(訂正後相違点3)
第2空気式マッサージ器が、訂正特許発明1では「被施療者の上腕の外側部に対応する位置から、前記背凭れ部に沿って前記第1空気式マッサージ器より上方へ、被施療者の肩の外側部に対応する位置付近まで延設され、且つ、前記被施療者の上腕及び肩の前方まで延設されている」が、甲1発明(図11)ではそのような特定がない点。

(訂正後相違点4)
肘掛け部が、訂正特許発明1では、「被施療者の前腕部を保持する肘掛け部」であって、「前記肘掛け部は、被施療者の前腕部を覆うように前後方向に直交する断面が凹状に形成され、且つ正面視で内側が開いた状態とされており、給気によって膨張して前記前腕部を上方及び下方から押圧する空気袋を有している」が、甲1発明(図11)ではそのような特定がない点。

3-1-3.判断
(訂正後相違点1)
訂正後相違点1に係る「背凭れ部が、前記座部に着座した被施療者の胴体及び腕部を後方から支持すると共に、被施療者の胴体を背部から側部に亘って覆う胴体クッション部を有する」構成は、甲第2号証の1(意匠登録第1022881号公報)に記載された周知技術のように、背凭れ部の両脇のクッション部を背凭れ部のその余の部分よりも高くする等によって容易に実現ができることであるから、本件出願日(原出願日)当時、当業者において甲1発明(図11)及び周知技術に基いて容易に想到し得るものであることが明らかである。
そして、椅子において背凭れ部の背凭れ面を凹状に窪んだ形状とすることは、本件出願日前(原出願日前)に一般的に採用されている程度の事項であったといえるから、訂正後相違点1に係る「更に前記背凭れ部は、背凭れ面が凹状に窪んだ形状を成」す構成は、甲1発明(図11)に甲第2号証の1(意匠登録第1022881号公報)に記載された周知技術(背凭れ部の両脇のクッション部を背凭れ部のその余の部分よりも高くする等)を適用する際に当業者が適宜成し得る設計変更にすぎない。
してみると、訂正後相違点1に係る訂正特許発明1の構成は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものである。

(訂正後相違点2)
(1)訂正された特許請求の範囲の請求項1の記載において、「第1空気式マッサージ器」は、「前記胴体クッション部に設けられて給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の胴体を後方から押圧して胴体側部に圧迫刺激を与える」とともに、「凹状を成す前記背凭れ面の左右部分であって、被施療者の胴体の側部に対応する部分に設けられて」いると規定されている。
つまり、「第1空気式マッサージ器」が設けられる「被施療者の胴体の側部に対応する部分」は、「被施療者の胴体を後方から押圧して胴体側部に圧迫刺激を与える」ことができる部分といえる。
また、訂正明細書には、「第1空気式マッサージ器によって被施療者の胴体を後方から押圧する」(【0007】)と記載されているとともに、特許図面の図1(マッサージ機の使用例を示す斜視図)及び図2(マッサージ機の構成を示す斜視図)の図示内容からして、第1空気式マッサージ器に相当する空気袋3dは、被施療者の胴体の少なくとも斜め後方から押圧する位置にあるといえる。
以上の訂正された特許請求の範囲の請求項1の記載、訂正明細書及び特許図面の記載事項を総合すると、訂正特許発明1の「背凭れ面」における「被施療者の胴体の側部に対応する部分」は、「背凭れ面」における被施療者の胴体の斜め後方の部分を含むといえる。

(2)甲1発明(図8)の「人体M」は「被施療者」といえ、「空気式のマッサージ具41」は「第1空気式マッサージ器」といえる。
さらに、訂正特許発明1の「被施療者の胴体の側部に対応する部分」についての上記理解を考慮すると、甲1発明(図8)の「被施療者の胴体の斜め後方の部分」は「被施療者の胴体の側部に対応する部分」といえる。
してみると、甲1発明(図8)は、
「座部に着座した被施療者の身体を施療する椅子型マッサージ機において、
背凭れ部を備え、
前記背凭れ部は、給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の胴体を後方から押圧して胴体側部に圧迫刺激を与える第1空気式マッサージ器を有し、
前記第1空気式マッサージ器は、前記背もたれ部の背凭れ面の左右部分であって、被施療者の胴体の側部に対応する部分に設けられること。」
といえる。

(3)甲第1号証の図8のマッサージ具41,42の構成(甲1発明(図8)に係る構成)と図11の突起体91、マッサージ具41,42の構成(甲1発明(図11)に係る構成)とは同一の文献に記載された実施例にすぎないのであり、両構成をともに採用したときに支障が生じることを窺わせる記載は甲第1号証中にもないし、当業者の技術常識に照らしても、そのような支障があるものとは認められないから、両構成を兼ね備えた構成にする動機付けに欠けるところはない。
そして、上記の両構成を兼ね備えた構成を採用することによって生じる作用効果は、背中の側部と上腕の側方を同時にマッサージできるといった程度のものにすぎず、当業者が予測し得ない格別のものではないということができる。
加えて、訂正後相違点1に係る背凭れ部が胴体クッション部を有する構成を、甲第2号証の1(意匠登録第1022881号公報)に記載された周知技術のように、背凭れ部の両脇のクッション部を背凭れ部のその余の部分よりも高くする等によって容易に実現ができることは、前記(訂正後相違点1)において説示したとおりであることからすれば、訂正後相違点2に係る「前記胴体クッション部に設けられて給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の胴体を後方から押圧して胴体側部に圧迫刺激を与える第1空気式マッサージ器」の構成は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものである。
ところで、甲1発明(図8)は、「前記第1空気式マッサージ器は、前記背もたれ部の背凭れ面の左右部分であって、被施療者の胴体の側部に対応する部分に設けられる」構成を有しているから、甲1発明(図11)に係る構成と甲1発明(図8)に係る構成を兼ね備えた椅子型マッサージ機は、当然「前記第1空気式マッサージ器は、前記背もたれ部の背凭れ面の左右部分であって、被施療者の胴体の側部に対応する部分に設けられる」構成を有することになる。
してみると、甲1発明(図11)の背凭れ面を、前記(訂正後相違点1)において説示したように、一般的な椅子に倣って凹状に窪んだ形状と成した場合に、「第1空気式マッサージ器」を「凹状を成す前記背凭れ面の左右部分」に設けられるようにすることは、当業者であれば当然考慮する程度の事項である。
したがって、訂正後相違点2に係る「前記第1空気式マッサージ器は、凹状を成す前記背凭れ面の左右部分であって、被施療者の胴体の側部に対応する部分に設けられて」いる構成は、甲1発明(図11)に係る構成と甲1発明(図8)に係る構成を兼ね備えた椅子型マッサージ機が当然有する構成や前記(訂正後相違点1)の設計変更に附随して当然考慮される程度の事項にすぎない。

(4)以上によれば、訂正後相違点2に係る訂正特許発明1の構成は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものである。

(訂正後相違点3)
椅子型マッサージ器の背凭れの左右両脇に突起体91を設けて被施療者の身体を左右両脇から固定する構成とする場合、この突起体91をさらに前方に伸ばし、かつ中央に向けてやや曲げること(訂正特許発明1にいう「延設」)で、両肩ないし両腕を左右から包み込むような態様とすることは、当業者であれば容易に想到し得る事柄というべきである。すなわち、訂正特許各発明や甲第1号証に記載された発明のような椅子型のマッサージ機において、被施療者の身体を包み込むように各部材を構成することは、甲第17号証(特開2000-296160号公報)に記載されているように(段落【0033】)周知技術であるし、椅子型マッサージ機において、被施療者の肩や腕の前方に部材を配して両肩ないし両上腕を背凭れとの間で保持(固定)してマッサージ効果を向上させることも、甲第5号証(特開平7-148209号公報、図10、段落【0055】?【0058】)や甲第26号証(特開2000-279470号公報、図1?5)に記載されているように周知技術であるところ、これらの周知技術を採用する目的は甲1発明(図11)の突起体91が設けられた目的と同一であって、またこれらの周知技術を採用して突起体91をさらに前方に「延設」しても、被施療者の身体の固定の機能やマッサージ具によるマッサージ機能に支障が生じるものとは考えられないからである。
そして、椅子式マッサージ機のマッサージ具等の構成を改めたことによる効果は、被施療者の身体のより確実な固定やマッサージ効果の向上といった程度の事柄であって、当業者の予想を超える格別なものではないことも明らかである。
したがって、本件出願日(原出願日)当時、甲1発明(図11)の椅子型マッサージ機の突起体を前方に延設し、訂正特許発明1にいう「第2空気式マッサージ器が、・・・『被施療者の上腕の外側部に対応する位置から、前記背凭れ部に沿って前記第1空気式マッサージ器より上方へ、被施療者の肩の外側部に対応する位置付近まで延設され、且つ、前記被施療者の上腕及び肩の前方まで延設されている』」構成とすることは、当業者において、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて容易になし得る事柄である。

(訂正後相違点4)
(1)甲7発明の「腕保持部24」は「肘掛け部」といえ、甲7発明の「U字状凹部25が形成され」は「前後方向に直交する断面が凹状に形成され」といえ、甲7発明の「給気によって膨張して前記前腕部を左右から押圧する空気袋をU字状凹部25の左右の保持壁部24a,24b内に有している」は「給気によって膨張して前記前腕部を左右から押圧する空気袋を有している」といえるから、甲第7号証には、「椅子型マッサージ機が、座部と、前記座部の両側部上方には被施療者の前腕部を保持する肘掛け部とを備え、前記肘掛け部は、被施療者の前腕部を覆うように前後方向に直交する断面が凹状に形成され、且つ正面視で上方が開いた状態とされており、給気によって膨張して前記前腕部を左右から押圧する空気袋を有していること」が記載されているといえる。
しかしながら、甲第7号証には、「使用者の全身を効果的にマッサージして筋肉の疲労を取り、且つ精神的なリラクゼーションを与えることが可能なマッサージ機に関」し(甲7ア)、「従来の椅子式エアーマッサージ機を改良して、更に足部や腕部の筋肉疲労も取り除き、同時に身体全体の血行促進を促し、付加的に使用者の現在の身体の状態を本人に確認させ得るようなマッサージ機を提供する」(甲7イ)ために、甲7発明に係る「前記肘掛け部は、被施療者の前腕部を覆うように前後方向に直交する断面が凹状に形成され、且つ正面視で上方が開いた状態とされており、給気によって膨張して前記前腕部を左右から押圧する空気袋を有している」態様の椅子型マッサージ機により、「椅子に座った使用者は・・・腕保持部の内部に設けられた空気袋の膨張収縮による圧迫と解放によって・・・腕部のエアーマッサージがなされ」(甲7エ)ることが記載されてはいるものの、U字状凹部25(凹状部)を正面視で内側が開いた状態とするとともに、U字状凹部25(凹状部)の左右の保持壁24a,24b内に有する空気袋で前腕部を上下方向から押圧する構成とすることは記載されておらず、示唆もされていない。
また、甲第1号証には、そもそも訂正後相違点4に係る「前記肘掛け部は、被施療者の前腕部を覆うように前後方向に直交する断面が凹状に形成され」る構成が記載されていない。
してみると、甲第1号証及び甲第7号証には、訂正後相違点4に係る「前後方向に直交する断面が凹状に形成され」た「肘掛け部」を「正面視で内側が開いた状態」とするとともに、「給気によって膨張して前記前腕部を上方及び下方から押圧する空気袋を有」する構成が記載も示唆もされておらず、甲第1号証及び甲第7号証の記載を検討しても、訂正後相違点4に係る上記構成を当業者が容易に想到し得たと解すべき根拠は見出せない。
仮に無効審判請求人が主張するように、肘掛け部に設けられた空気袋が「給気によって膨張して前記前腕部を上方かつ下方から押圧する」構成要素を実現するには、肘掛け部を正面視で内側か外側を開いた状態とするよりないとしても、そのことは、該構成要素を実現するための技術的選択肢の可能性を示すものにとどまり、上記のような甲第1号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が訂正後相違点4に係る「前後方向に直交する断面が凹状に形成され」た「肘掛け部」を「正面視で内側が開いた状態」とするとともに、「給気によって膨張して前記前腕部を上方及び下方から押圧する空気袋を有」する構成を容易に想到し得たことの根拠となると直ちにはいえない。
しかも、本件訂正審判請求人が、「肘掛け部」の「前後方向に直交する断面が凹状に形成され、且つ正面視で内側が開いた状態」との構成により奏される旨主張する「第2空気式マッサージ器が左右外方から上腕及び肩の側部に対して押圧刺激を付与する場合に、前腕部がこの押圧力によって内側へ移動する際の妨げになることがありません。」(審判請求書「(4-9)訂正後の発明の特許性 e)」の項)という効果を、上記構成が記載も示唆もされていない甲第1号証及び甲第7号証に記載された発明から当業者が予測し得たと解すべき根拠も見出せない。
以上によれば、訂正後相違点4に係る訂正特許発明1の発明特定事項は、甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえず、無効審判請求人の主張1は採用することができない。

(2)文献2発明の「袋状部材」は「空気袋」といえ、文献2発明の「断面がエ字状に形成された状態」は「前後方向に直交する断面が凹状に形成され、且つ正面視で外側が開いた状態」といえるから、文献2には、「被施療者の前腕部を覆うように前後方向に直交する断面が凹状に形成され、且つ正面視で外側が開いた状態とされており、給気によって膨張して前記前腕部を上方及び下方から押圧する空気袋を有しているマッサージ機」が記載されているといえる。
さらに、文献2には、文献2発明に係るマッサージ機の「断面が「エ」字状」の施療部を構成する支柱について、「支柱12が中央部分に設けられている例を開示したが、支柱の位置や形状、数は任意であり、例えばどちらかの短辺に1つ設けてもよいし、両側の短辺に2つ、あるいは中央と両側の短辺の3カ所に設けてもよい」(文献2カ)と記載されている。
しかしながら、文献2に記載された支柱を「どちらかの短辺に1つ設け」た態様は「前後方向に直交する断面が凹状に形成され」ているとはいえても、「正面視で内側が開いた状態とされて」いるとはいえず、支柱を「両側の短辺に2つ、あるいは中央と両側の短辺の3カ所に設け」た態様は「前後方向に直交する断面が凹状に形成され」ているとも「正面視で内側が開いた状態とされて」いるともいえない。
してみると、肘掛け部を正面視で内側に開いた状態にする構成が文献2に開示されていることを前提とする無効審判請求人の主張2は採用することができない。
しかも、文献2発明のマッサージ機は椅子型マッサージ機の肘掛け部に設られたものではなく、文献2には、「空気圧を利用して簡単に足などのマッサージを行うことが可能なマッサージ機に関」し(文献2ア)、「容易に装着、取り外しができ、施療部位に上下方向からの圧力を加えることが可能なマッサージ機を提供する」(文献2イ)ために、「例えば椅子型のマッサージ機・・・と同時に使用する場合に、底板11の上部の高さを椅子型のマッサージ機の座の高さと同じにすることにより、椅子型のマッサージ機に座って脚を水平に伸ばして本発明のマッサージ機を使用できる。」(文献2オ)と記載されているように、文献2発明に係る「被施療者の前腕部を覆うように前後方向に直交する断面が凹状に形成され、且つ正面視で外側が開いた状態とされており、給気によって膨張して前記前腕部を上方及び下方から押圧する空気袋を有している」態様のマッサージ機を椅子型マッサージ機とはあくまでも別体として使用することが記載されているにすぎず、甲第1号証、甲第7号証及び文献2の記載を検討しても、文献2発明に係るマッサージ機を椅子型マッサージ機の肘掛け部に設けることを当業者が容易に想到し得たと解すべき根拠は見出せない。
以上によれば、訂正後相違点4に係る訂正特許発明1の発明特定事項は、甲第1号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明及び文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。
(3)以上によれば、訂正後相違点4に係る訂正特許発明1の発明特定事項は、甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではなく、甲第1号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明及び文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものでもない。

3-1-4.まとめ
以上のとおり、訂正後相違点4に係る訂正特許発明1の発明特定事項は、甲第1号証に記載された発明及び甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではなく、甲第1号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明及び文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものでもないから、訂正特許発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものではなく、甲第1号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明、文献2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものでもない。
したがって、訂正特許発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反しているとはいえない。

3-2.訂正特許発明2?6
訂正特許発明2?6は、いずれも訂正特許発明1を直接的に又は間接的に引用し、さらにその構成を限定したものである。
訂正特許発明1が甲第1号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものではなく、甲第1号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明、文献2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものでもない以上、訂正特許発明1の発明特定事項を全て具備した訂正特許発明2?6も、甲第1号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものではなく、甲第1号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明、文献2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得るものでもない。
したがって、訂正特許発明2?6は、特許法第29条第2項の規定に違反しているとはいえない。

4.まとめ
以上によれば、訂正特許発明1?6は特許法第29条第2項の規定に違反しておらず、また、訂正特許発明1?6が特許出願の際独立して特許を受けることができないとすべき他の理由も見当たらない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

第4.むすび
以上のとおり、本件審判の請求は、特許法第126条第1項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
椅子型マッサージ機
【技術分野】
【0001】
本発明は、座部に着座した被施療者の身体を施療する椅子型マッサージ機に関し、特に、被施療者の身体を外側方から押圧でき、胴体を後方から施療することができる椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子型又はマットレス型等のマッサージ機が広く知られている。例えば椅子型のマッサージ機は、座部と背凭れ部とを有し、人体の施療を行うための施療子を前記背凭れ部に設けた構造とされており、内蔵する複数のモータの駆動の組み合わせにより、施療子に複数の動作(例えば揉み動作、叩き動作、施療部位の変更等)を選択的に行わせることが可能とされたものが一般的である。このようなマッサージ機は、主として被施療者の胴体の背部に施療子を押圧させることにより、被施療者の胴体の背部に刺激を与えることができるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した如き従来のマッサージ機にあっては、被施療者の胴体の背部等しか施療することができず、施療することが可能な範囲が少ないという問題があった。
【0004】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、被施療者の胴体の側部並びに腰部及び大腿部の側部等、従来のマッサージ機では施療することができなかった身体部位を施療することができ、従来に比して施療することが可能な範囲を拡大させたマッサージ機を提供することを目的とする。
【0005】
特に、被施療者の身体を外側方から押圧でき、、胴体を後方から施療することができる椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る椅子型マッサージ機は、座部に着座した被施療者の身体を施療する椅子型マッサージ機であって、前記座部に着座した被施療者の胴体及び腕部を後方から支持する背凭れ部と、前記被施療者の上腕及び肩の外側部を覆うべく前記背凭れ部の左右の側部から前方へ延設された外側支持部とを備え、前記背凭れ部は、前記被施療者の胴体に後方から機械的刺激を与える機械式マッサージ器と、給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の胴体を後方から押圧する第1空気式マッサージ器とを有し、左右の前記外側支持部は、互いに対向する部分に配置されて給気により空気袋が膨張して前記被施療者の上腕及び肩を左右の外方から押圧する第2空気式マッサージ器を有している。
【0007】
人間の身体には、全身に亘って所謂経穴なる部位が散在しており、かかる経穴に刺激を与えることにより、疲労回復及び血行の改善等の効果を得ることができる。従って、胴体の背部以外に存在する経穴に対しても、刺激を与え得る構造とすることが望ましい。本発明に係る椅子型マッサージ機にあっては、機械式マッサージ器によって被施療者の胴体を後方から施療することが可能であるばかりでなく、第1空気式マッサージ器によって被施療者の胴体を後方から押圧することにより上記機械式マッサージ器とは異なる作用で施療することができ、且つ、第2空気式マッサージ器によって被施療者の上腕及び肩(肩ぐうを含む)を左右の外方から押圧して施療することも可能である。従って、従来に比して施療することが可能な範囲を拡大することができ、且つ、多様な施療作用を及ぼすことができるため、施療効果をより向上させることが可能となる。更に、上腕及び肩を左右の外方から押圧することによって被施療者の姿勢が左右へぶれるのを抑制することができるため、この保持状態で機械式マッサージ器及び第1空気式マッサージ器を駆動した場合には、被施療者の胴体の適切な位置に刺激を与えることができ、施療効果の向上を図ることができる。
【0008】
また、前記機械式マッサージ器は、前記背凭れ部における左右方向の中央に配置され、前記第1空気式マッサージ器は、前記機械式マッサージ器に対して左右の外方に配置されていてもよい。
【0009】
このような構成とすることにより、被施療者の胴体の背部全体を適切に施療することができる。即ち、被施療者の胴体のうち物理的刺激に対して比較的強い背骨近傍部分は、機械式マッサージ器によって効果的に施療することができる。また、人間の胴体のうち側部近傍は、背骨近傍部分に比して筋肉が少なく、刺激に対して敏感である。従って、空気袋を膨張及び収縮させて被施療者の胴体の側部近傍部分を施療する構成とすることにより、当該部分に対して適度な刺激を与えて適切に施療することが可能となる。
【0010】
また、前記第2空気式マッサージ器は、前記第1空気式マッサージ器に対して左右の外方に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の椅子型マッサージ機。
【0011】
また、前記背凭れ部は、左右の前記第1空気式マッサージ器の間を通る前記機械式マッサージ器の昇降動作を案内すべく上下方向へ延びるガイドを有していてもよい。
【0012】
このように、従来のマッサージ機に利用されている機械式マッサージ器の昇降を案内するガイドを本発明に係るマッサージ機に用いることによって、従来製品と本発明の実施品との間で部品の共用化を図ることができ、製品の開発コストを低減することが可能となる。
【0013】
また、前記第1空気式マッサージ器は、前記座部に着座した被施療者の胴体の側部を施療すべく成してあってもよい。
【0014】
また、前記背凭れ部は、給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の肩の上部を押圧する第3空気式マッサージ器を有していてもよい。
【0015】
このような構成とすることにより、被施療者の胴体の背部及び側部に加えて、被施療者の肩の上部を施療することができ、更に施療することが可能な範囲を拡大することが可能となる。また、第3空気式マッサージ器によって肩の上部を押圧することによって被施療者の姿勢が上下へぶれるのを抑制することができるため、この保持状態で機械式マッサージ器、及び第1空気式マッサージ器を駆動した場合には、被施療者の胴体の適切な位置に刺激を与えることができ、施療効果の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る椅子型マッサージ機によれば、被施療者の身体を外側方から押圧でき、胴体を後方から施療することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るマッサージ機の使用例を示す斜視図であり、図2は、本発明の実施の形態1に係るマッサージ機の構成を示す斜視図である。図1及び図2に示すように、本発明の実施の形態に係るマッサージ機1は、椅子型をなしており、被施療者が着座するための座部2と、被施療者の上半身を支持するための背凭れ部3と、被施療者の足置きとして用いられるフットレスト4とから主として構成されている。
【0019】
座部2は、基台2bの上部に、クッション部2aが配されて構成されている。基台2bは、比較的高い硬度を有する合成樹脂製であり、その内側が凹状に窪んだ形状とされている。クッション部2aは、ウレタンフォーム,スポンジ,又は発泡スチロール製の内装材(図示せず)が基台2bの内面に載置されており、更にこれをポリエステル製の起毛トリコット,合成皮革,又は天然皮革等からなる外装材にて覆って構成されている。従って、座部2は、被施療者が着座したときに、被施療者の腰部及び大腿部を背部から側部に亘って覆うような形状となっている。また、図2に示すように、この座部2のクッション部2aには、その内部に複数の空気袋2cが設けられている。これらの空気袋2cは、被施療者の腰部及び大腿部の背部に対応する箇所、即ち凹状の内底部分と、被施療者の腰部及び大腿部の側部に対応する箇所、即ち凹状の内側部分とに設けられている。
【0020】
また、座部2の上部前側には、フットレスト4の上端部が枢着されている。これにより、フットレスト4は、その上端部を中心にして前後に回動可能とされている。フットレスト4は、内側が凹状に窪んだ形状をなすカバー部4aと、このカバー部4aの内側に設けられたクッション部4bとから主として構成されている。カバー部4aは、基台2bと同じ材料によって形成されており、正面視において略チャネル状をなしている。このカバー部4aの内側に配置されているクッション部4bは、2つの縦長の凹状に窪んだ凹状部分4cを有している。この凹状部分4cは、一般的な体格の成人の下腿及び足(足首より末端の部分)よりも若干大きく形成されており、被施療者がマッサージ機1に着座したときに、足置きとして用いられる。
【0021】
このような凹状部分4cは、マッサージ機1に被施療者が着座したときに、この凹状部分4cが被施療者の下腿及び足を背部から側部及び足底に亘って覆うように、被施療者の下腿部の背部に対向する内底部分と、被施療者の下腿部の側部に対向する内側部分と、被施療者の足底に対向する内下底部分とから構成されている。そして、クッション部4bは、前述したクッション部2aと同じ内装材及び外装材によって構成されており、その内底部分、内側部分、及び内下底部分の内側には、複数の空気袋4dが夫々設けられている。
【0022】
背凭れ部3は、座部2の後部に設けられている。この背凭れ部3は、例えばその下端部が基台2bに前後に回動自在に枢着されており、これによってリクライニング可能とされている。なお、背凭れ部3を傾倒させるに伴って、背凭れ部3の下部を座部2の内側に潜り込ませるように背凭れ部3を移動させる構成としてもよい。このようにすることによって、被施療者の胴体の背部と、後述する施療子6との相対的な位置のずれが発生することを抑制することができる。
【0023】
また、背凭れ部3は、被施療者の胴体を支持するための部分と、被施療者の頭部を支持するための部分とから主として構成されている。背凭れ部3の全体は、内側が凹状に窪んだ形状をなすカバー部3aによって一体的に構成されており、このカバー部3aの内側に、被施療者の胴体を支持するためのクッション部3bと、被施療者の頭部を支持するためのクッション部3cとが上下に並べられた状態で設けられている。カバー部3aは、基台2bと同じ材料によって、丸みを帯びた略舟形状に形成されており、クッション部3b,3cは、前述したクッション部2aと同じ内装材及び外装材によって構成されている。
【0024】
クッション部3bは、被施療者が着座したときに、被施療者の胴体を背部から側部に亘って覆うような形状となっている。また、クッション部3bにも、複数の空気袋(第1空気式マッサージ器)3dが内蔵されている。これらの空気袋3dは、被施療者の胴体の側部に対応する箇所、即ち凹状の内側部分に設けられている。また、背凭れ部3の内部の被施療者の胴体の背部に対応する箇所、即ち凹状の内底部分には、図3に示す如きマッサージ機構(第1施療部)5が設けられている。
【0025】
図3は、本発明の実施の形態1に係るマッサージ機1が有するマッサージ機構5の構成を示す分解斜視図である。マッサージ機構5は被施療者の身体に機械的刺激を与える4つの施療子(機械式マッサージ器)6とこの施療子6を変位駆動するモータ7,8とを有している。施療子6は2つのV字状のアーム9の先端それぞれに取り付けられている。夫々のアーム9は、略V字状をなす2つのコンロッド10に所定の範囲内で回転可能であるように夫々取り付けられている。各コンロッド10には、嵌合孔11が設けられており、この嵌合孔11に回転軸12の両端に設けられた傾斜部13が遊嵌されている。この傾斜部13は、回転軸12に対して所定角度傾斜した状態で設けられたものである。回転軸12の中間部分には、ヘリカルギヤ14aが同軸的に設けられており、このヘリカルギヤ14aがウォーム14bと噛合している。このように、ヘリカルギヤ14aとウォーム14bとでウォームギヤ機構14が構成されている。
【0026】
ウォーム14bの一端には、プーリ15aが同軸的に設けられており、ベルト15bによってこのプーリ15aとモータ7の出力軸に設けられたプーリ15cとが連結されている。従って、モータ7の回転運動はベルト15bを介してウォーム14bへ伝達され、ウォーム14bの回転によって回転軸12が回転する。そして、回転軸12の回転に伴い、傾斜部13が円錐形の軌跡を描くように変位し、これによってコンロッド10が規則的に動作して、左右の施療子6が近接・離反するように左右及び上下方向へ略楕円を描くように移動する。これが施療子6の揉み動作となる。なお、施療子6の揉み動作には、左右の施療子6が近接するときに前方(施療者側)へ移動し、左右の施療子6が離反するときに後方へ移動する動作も含まれる。このように、揉み動作では、施療子6が3次元的に移動することとなる。
【0027】
また、図3に示すように、コンロッド10の下部には嵌合穴16が設けられており、この嵌合穴16に連結部材17に設けられた突出部18が挿入されている。連結部材17には、横方向の孔19が設けられており、この孔19に、回転軸20の両端部に設けられた偏心部21が遊嵌している。また、回転軸20の中間部分にはプーリ22aが同軸的に設けられており、ベルト22bによってこのプーリ22aとモータ8の出力軸に設けられたプーリ22cとが連結されている。従って、モータ8の回転運動はベルト22bを介して回転軸20に伝達され、回転軸20の両端の偏芯部21の公転によって連結部材17が略上下に移動する。この結果、コンロッド10が嵌合孔11を中心に往復回動するので施療子6が円弧を描くように略上下に往復移動する。これが施療子6のたたき動作となる。
【0028】
このように、モータ7の駆動によって施療子6の揉み動作が、モータ8の駆動によって施療子6のたたき動作が行われ、モータ7,8を同時に駆動することにより、両動作が合成されて行われることとなる。もちろん、各動作を独立に行うことも可能である。
【0029】
このようなマッサージ機構5は、図2に示すようにガイドローラ23に支持されている。ガイドローラ23は、マッサージ機構5の昇降を案内するように構成されており、これによって背凭れ部3の下部に設けられたモータ24(図6参照)を駆動した場合に、マッサージ機構5がガイドローラ23に沿って昇降することが可能とされている。
【0030】
このようなマッサージ機構5は、クッション部3cの近傍までを上限として、クッション部3b内を昇降することが可能である。そして、クッション部3bの上端部であって、マッサージ機構5の移動上限位置より上方の部分には、被施療者の頸部の側部及び肩の上部に刺激を与えるための空気袋(第3空気式マッサージ器)3gが設けられている。
【0031】
また、カバー部3aは、クッション部3cより前方に延設された部分を有しており、この部分の内側にも、クッション部(外側支持部)3eが設けられている。このクッション部3eは、被施療者が着座したときに、被施療者の上腕部及び肩の側部を覆うような位置に設けられており、その内部には複数の空気袋(第2空気式マッサージ器)3fが設けられている。
【0032】
このような背凭れ部3の前方であって、座部2の両側部の上方には、2つの肘掛け部25が設けられている。図4は、本発明の実施の形態1に係るマッサージ機1の肘掛け部25の構成を示す正面図であり、図5は、その使用例を示す斜視図である。肘掛け部25は、板状の部材を円弧状に湾曲させた如き形状をなすカバー部25aと、該カバー部25aの内側に設けられたクッション部25bとから構成されている。このような肘掛け部25は、一般的な成人の前腕より若干長く、図1に示す如く、被施療者がマッサージ機1に着座したときに、被施療者の肘、前腕、及び手等を覆うように保持することが可能である。
【0033】
また、かかる肘掛け部25は、その基端部が背凭れ部の両側部に、長手方向、即ち前後方向を中心に所定範囲内で回動自在に取り付けられている。図5(a)には、肘掛け部25を回動させる前の状態を示しており、図5(b)には、肘掛け部25を回動させた後の状態を示している。図5(a),(b)に示すように、肘掛け部25は、被施療者がマッサージ機1に着座するとき及びマッサージ機1から離れるときには、肘掛け部25に腕を置きやすいように、上方が開いた状態(以下、非使用状態という)とされる。そして、肘掛け部25は、被施療者がマッサージ機1に着座しているときには、内側が開いた状態(以下、使用状態という)となるまで略90°回動する。このような肘掛け部25は、手動で回動する構造であってもよいし、例えばスイッチのオン・オフ又はセンサで被施療者の腕の有無を検出することによって、モータ等の動力により回動する構造であってもよい。
【0034】
このような肘掛け部25は、クッション部25bに複数の空気袋25cが内蔵されている(図4参照)。更に具体的に説明すると、図4に示す如く、肘掛け部25は正面視において略U字型をなしており、使用状態のときに、被施療者の前腕の外側部分(手の甲に連なる部分)、内側部分(手のひらに連なる部分)、及び横側部分(手の小指側に連なる部分)に夫々刺激を与えるべく、そのU字の両内側部分及び内底部分の3箇所に、空気袋25cが設けられている。
【0035】
図6は、本発明の実施の形態1に係るマッサージ機1の構成を示すブロック図である。マッサージ機1の背凭れ部3の下部には、制御部26が内蔵されている(図示せず)。この制御部26は、図5に示すように、CPU27,ROM28,RAM29,入出力インタフェース30から主として構成されている。
【0036】
また、入出力インタフェース30には、モータ7,8,24を夫々駆動するための駆動回路31,32,33が接続されている。これらの駆動回路は、図示しない電源に接続されており、入出力インタフェース30から出力されたパルス信号に応じた電流をモータ7,8,24に夫々供給するようになっている。更に具体的に説明すると、CPU27がモータ7,8,24の回転方向及び回転速度を決定し、決定した回転方向及び回転速度に応じた回転指示信号を入出力インタフェース30に発生させる。駆動回路31,32,33は、夫々パルス発生器を備えており、該パルス発生器が、入出力インタフェース30から与えられた回転指示信号に応じたパルス幅の電圧(パルス信号)を夫々発生し、該電圧が夫々モータ7,8,24の端子間に印加される。このようなPWM制御により、モータ7,8,24に電流が供給され、モータ7,8,24が所要の回転方向、回転速度にて駆動される。
【0037】
なお、モータ7,8,24はDCサーボモータであっても、ACサーボモータであってもよい。また、このような駆動対象のモータの種類に応じて駆動回路31,32,33の構成が変更されることは言うまでもない。
【0038】
また、マッサージ機1には、複数の操作スイッチを有する操作部34が設けられており、この操作部34が入出力インタフェース30に接続されている。操作部34は、例えば右手用の肘掛け部25の先端部分に設けられており、被施療者の操作に応じた出力信号を発生するようになっている。操作部34からの出力信号は、入出力インタフェース30を介してCPU27に入力され、これによって被施療者からの動作指示が制御部26に与えられる。
【0039】
更に、マッサージ機1には、エアポンプ35及びロータリバルブ36が設けられている。このロータリバルブ36は、7個のポートを有しており、この内の6個のポートの夫々に、エアホースを介して空気袋2c,3d,3f,3g,4d,25cが接続されている。ロータリバルブ36の残りの1つのポートには、エアポンプ35がエアホースを介して接続されている。またロータリバルブ36には、ステッピングモータが内蔵されており(図示せず)、ステッピングモータの動作によってポート間の接続が切り替えられ、これによりエアポンプ35に連通される空気袋2c,3d,3f,3g,4d,25cが順次切り替えられるようになっている。また、エアポンプ35に連通されていない空気袋のうちの1又は複数は、ロータリバルブ36に設けられた排気口に接続され、外気に連通されるようになっている。更に、残りの空気袋に接続されたポートは閉塞されるようになっている。
【0040】
また、ロータリバルブ36を駆動する駆動回路37が、入出力インタフェース30に接続されている。駆動回路37は、入出力インタフェース30から出力された制御信号(回転指示信号)に応じて、ロータリバルブ36のステッピングモータを駆動し、エアポンプ35と空気袋2c,3d,3f,3g,4d,25cとの連通を切り替える。
【0041】
そして、エアポンプ35,ロータリバルブ36,及び駆動回路37によって、本発明に係る給排気部38が構成されており、該給排気部38及び空気袋3dによって、本発明に係る第2施療部が構成されている。
【0042】
次に、本発明の実施の形態1に係るマッサージ機の動作について説明する。被施療者は、マッサージ機1を使用するとき、マッサージ機1に着座する(図1参照)。そして、肘掛け部25を回動させ、使用状態とする。この状態で、被施療者が操作部34を操作したとき、操作部34から出力される信号が制御部26に与えられ、CPU27が、被施療者から与えられた動作指示に従い、入出力インタフェース30に回転指示信号(制御信号)を出力させる。
【0043】
このような制御信号は、駆動回路31?33,37に与えられる。駆動回路31?33,37は、与えられた制御信号に従い、モータ7,8,24,ロータリバルブ36を夫々駆動する。そして、モータ7及び/又はモータ8が動作することにより、施療子6が揉み動作及び/又はたたき動作を行い、被施療者の胴体の背部(背中)に機械的な刺激が与えられる。また、モータ24が動作することにより、マッサージ機構5が昇降されることとなる。更に、ロータリバルブ36が動作することにより、空気袋2c,3d,3f,3g,4d,25cが夫々膨張・収縮を行うこととなる。
【0044】
空気袋2cが膨張した場合、座部2のクッション部2aの内底部分及び内側部分が隆起し、これによって被施療者の腰部及び大腿部の背部及び側部が圧迫刺激を受ける。また、空気袋3dが膨張した場合、背凭れ部3のクッション部の内側部分が隆起し、これによって被施療者の胴体の側部が圧迫刺激を受ける。また、空気袋3f,3g,4d,及び25cが夫々膨張した場合、クッション部3e、クッション部3bの上端部、クッション部4dの内底部分、内側部分、及び内下底部分、並びにクッション部25bが夫々隆起し、被施療者の上腕部及び肩の側部、頸部の側部及び肩の上部、下腿部の背部、下腿部の側部、及び足底、並びに前腕部が夫々圧迫刺激を受ける。
【0045】
また、異なる体格の被施療者がマッサージ機1を使用した場合であっても、夫々の被施療者の身体に密着するまで各空気袋2c,3d,3f,3g,4d,25cを膨張させることとすれば、夫々の体格の被施療者の身体に刺激を与えることができる。
【0046】
なお、本実施の形態においては、施療子6を有するマッサージ機構5を背凭れ部3に内蔵し、施療子6を移動させることにより、被施療者の胴体の背部に機械的刺激を与える構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、クッション部3bの凹状の内底部分に空気袋を複数設け、該空気袋を膨張・収縮させることにより、被施療者の胴体の背部に圧迫刺激を与える構成としてもよい。
【0047】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係るマッサージ機の構成を示す斜視図である。図に示すように、本実施の形態に係るマッサージ機39は、座部2のクッション部2aの凹状の内底部分に設けられている空気袋2cは、該内底部分の幅方向の略中央部分、即ち被施療者が着座したときに、被施療者の股間に対応する箇所に設けられている。
【0048】
その他、本実施の形態2に係るマッサージ機の構成は、実施の形態1に係るマッサージ機の構成と同様であるので、同符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
このような構成とすることにより、空気袋2cを膨張させたとき、被施療者の股間でクッション部2aが隆起するので、クッション部2aの内側部分に設けられている空気袋2cと、クッション部2aの内底部分に設けられている空気袋2cとによって、被施療者の夫々の大腿部が挟まれた状態で圧迫されることとなる。従って、クッション部2aの両内側部分が隆起することによって、被施療者の大腿部の両外側が押圧された場合であっても、大腿部が内側に移動することを抑制でき、より効率的に被施療者の大腿部に圧迫刺激を与えることができる。
【0050】
なお、実施の形態1,2においては、マッサージ機1に空気袋2c,3d,3f,3g,4d,25cを設け、これらの空気袋を膨張・収縮させることによって被施療者の腰部及び大腿部の背部及び側部、胴体の側部、上腕及び肩の側部、頸部の側部及び肩の上部、並びに前腕の外側部分、内側部分、及び横側部分に圧迫刺激を与える構成としたが、これに限定されるものではなく、これらの空気袋の一又は複数を除いた構成としてもよいし、更に空気袋を設け、被施療者の身体のこれら以外の部位に刺激を与える構成としてもよい。
【0051】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3に係るマッサージ機のフットレストの構成の一例を示す斜視図であり、図9は、図8のA-A矢視における断面図であり、図10は、図8のB-B矢視における断面図である。
【0052】
図8?10に示すように、本実施の形態に係るフットレスト40は、カバー部40aと、クッション部40bとから主として構成されている。クッション部40bは、その幅方向の中央部分に、中間壁部40dが設けられており、これによって2つの凹状部分40cが形成されている。夫々の凹状部分40cのうち、被施療者が着座したときに被施療者の下腿の背部に対応する内底部分41と、被施療者の足底に対応する内下底部分42との間の角度は、90°より大きく、180°より小さい角度θとされている。
【0053】
また、図9に示すように、内底部分41及び内下底部分42は、夫々所定の曲率Rで窪んだ円弧面とされている。更に、図10に示すように、クッション部40bの内側部分43は、被施療者の下腿部の上部に対応する部分が前方へ張り出しており、下腿部の下部(足首の部分)に対応する部分が、この部分より幅が狭くされている。また、被施療者の足に対応する部分が、下腿部の下部に対応する部分より前方へ張り出した状態に形成されている。即ち、内側部分43の被施療者の下腿部の下部に対応する部分の幅hに比べ、内下底部分42の長さhaの方が長くされている。
【0054】
図11は、本発明の実施の形態3に係るマッサージ機のフットレストの他の構成例を示す斜視図であり、図12は、図11のC-C矢視における断面図である。図11,12に示すように、本例のフットレスト40は、図8に示したフットレスト40から、中間壁部40dを除去した如き形状をなしている。本例のフットレスト40は、クッション部40bの内底部分及び内下底部分の夫々中央から左右に分割した領域が、夫々曲率Rで窪んだ円弧面とされている。従って、クッション部40bの内底部分及び内下底部分の夫々幅方向中央部分は盛り上がっている。
【0055】
その他、本実施の形態3に係るマッサージ機の構成は、実施の形態1に係るマッサージ機の構成と同様であるので、同符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
以上の如き構成により、フットレストの形状が被施療者の下腿及び足により合った形状となっているので、着座したときの被施療者の姿勢をより自然なものとすることが可能となる。
【0057】
(実施の形態4)
図13は、本発明の実施の形態4に係るマッサージ機のフットレストの構成を示す斜視図であり、図14は、その側面図である。図13,14に示すように、本実施の形態に係るフットレスト44は、被施療者の下腿部を保持するための上部部材45と、被施療者の足底を保持するための下部部材46との2つの部材によって主として構成されている。上部部材45は、凹状に窪んだ形状をなすカバー部45aと、該カバー部45aの内側に設けられたクッション部45bとを有しており、クッション部45bは、被施療者の両下腿部を覆うように保持すべく、凹状に窪んだ形状とされている。
【0058】
更にクッション部45bの形状を詳しく説明すると、クッション部45bは、被施療者の下腿部の背部に対応する凹状の内底部分と、該内底部分の両側部に設けられ、被施療者の下腿部の側部に対応する内側部分とから構成されており、図12に示した実施の形態3に係るフットレストと同様に、内底部分の中央から左右に分割した領域が、夫々曲率Rで窪んだ円弧面とされていて、内底部分の中央部が他の部分より若干盛り上がっている。そして、このようなクッション部45bの内部には、複数の空気袋4dが設けられている。
【0059】
下部部材46もまた、凹状に窪んだ形状をなすカバー部46aと、該カバー部46aの内側に設けられたクッション部46bとを有している。クッション部46bは、カバー部46aの凹状の内面の略全体にわたって設けられており、これによって、被施療者の両足を覆うように保持することが可能となっている。
【0060】
更にクッション部46bの形状を詳しく説明すると、クッション部46bは、クッション部45bと同様に、凹状の内底部分と、該内底部分の両側部に設けられた内側部分との3つの部分から構成されている。このクッション部46bの内底部分は、被施療者の足底に対応し、内側部分は、被施療者の足の側部に対応している。また、クッション部45bと同様に、内底部分の中央から左右に分割した領域が、夫々所定の曲率で窪んだ円弧面とされており、内底部分の中央部が他の部分よりも若干盛り上がっている。そして、このようなクッション部46bの内部にも、複数の空気袋4dが設けられている。
【0061】
また、下部部材46は、上部部材45の下端部に枢着されており、前後方向に回動可能とされている。また、図14に示すように、上部部材45の背部、即ちカバー部45aの凹状の外側の部分には、シリンダ47が設けられている。このシリンダ47は、エアシリンダ、又は電動シリンダ等が用いられ、シリンダ47のシリンダチューブ47aの奥側端部が、上部部材46の背部の上端部分に横方向の枢軸によって枢着されている。
【0062】
シリンダ47のシリンダロッド47bの先端は、下部部材46のカバー部46aの後端から突設された突設部46cに、横方向の枢軸によって枢着されている。これにより、シリンダ47を伸縮させることにより、下部部材46が上部部材45に対して回動することとなる。従って、上部部材45と下部部材46とがなす角度を、被施療者が嗜好する角度に調節することができ、着座したときの被施療者の姿勢を、個々の被施療者により適したものとすることが可能となる。
【0063】
なお、図13,14に示すように、本実施の形態4に係るフットレスト44は、上部部材45の横幅と、下部部材46の横幅とを略等しくしており、上部部材45と下部部材46とがなす角度を小さく方向へのフットレスト44の可動範囲の限界が、上部部材45の側壁部分、即ち被施療者の下腿部の側部に対向する部分と、下部部材46の側壁部分、即ち被施療者の足の側部に対向する部分とが当接する状態となる構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、上部部材45の横幅を下部部材46の横幅より大きくし、上部部材45と下部部材46とを相対的に回動させたとき、上部部材45の内部に下部部材46が入り込むようにして、上部部材45と下部部材46との干渉を避け、更にフットレスト44の可動範囲を大きくした構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る椅子型マッサージ機は、座部と背凭れ部とを備えるマッサージ機に適用することができ、特に、被施療者の身体を外側方から押圧でき、胴体を後方から施療する椅子型マッサージ機に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態に係るマッサージ機の使用例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るマッサージ機の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るマッサージ機が有するマッサージ機構の構成を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るマッサージ機の肘掛け部の構成を示す正面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るマッサージ機の肘掛け部の使用例を示しており、(a)は、回動させる前の状態の肘掛け部を示す斜視図であり、(a)は、回動させた後の状態の肘掛け部を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るマッサージ機の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係るマッサージ機の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係るマッサージ機のフットレストの構成の一例を示す斜視図である。
【図9】図8のA-A矢視における断面図である。
【図10】図8のB-B矢視における断面図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係るマッサージ機のフットレストの他の構成例を示す斜視図である。
【図12】図11のC-C矢視における断面図である。
【図13】本発明の実施の形態4に係るマッサージ機のフットレストの構成を示す斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態4に係るマッサージ機のフットレストの構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0066】
1,39 マッサージ機
2 座部
2a クッション部
2b 基台
2c 空気袋
3 背凭れ部
3a カバー部
3b,3c,3e クッション部
3d,3f,3g 空気袋
4,40,44 フットレスト
4a,40a カバー部
4b,40b クッション部
4c,40 凹状部分
4d 空気袋
5 マッサージ機構
6 施療子
7,8,24 モータ
25 肘掛け部
25a カバー部
25b クッション部
25c 空気袋
26 制御部
27 CPU
28 ROM
29 RAM
30 入出力インタフェース
31?33 駆動回路
34 操作部
35 エアポンプ
36 ロータリバルブ
37 駆動回路
38 給排気部
40d 中間壁部
41 内底部分
42 内下底部分
43 内側部分
45 上部部材
45a カバー部
45b クッション部
46 下部部材
46a カバー部
46b クッション部
47 シリンダ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部に着座した被施療者の身体を施療する椅子型マッサージ機であって、
前記座部に着座した被施療者の胴体及び腕部を後方から支持すると共に、被施療者の胴体を背部から側部に亘って覆う胴体クッション部を有する背凭れ部と、前記被施療者の上腕及び肩の外側部を覆うべく前記背荒れ部の左右の側部から前方へ延設された外側支持部と、前記座部の両側部上方には被施療者の前腕部を保持する肘掛け部とを備え、
前記背凭れ部は、前記被施療者の胴体に後方から機械的刺激を与える機械式マッサージ器と、前記胴体クッション部に設けられて給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の胴体を後方から押圧して胴体側部に圧迫刺激を与える第1空気式マッサージ器とを有し、
更に前記背凭れ部は、背凭れ面が凹状に窪んだ形状を成し、前記第1空気式マッサージ器は、凹状を成す前記背凭れ面の左右部分であって、被施療者の胴体の側部に対応する部分に設けられており、
左右の前記外側支持部は、互いに対向する部分に配置されて給気により空気袋が膨張して前記被施療者の上腕及び肩を左右の外方から押圧する第2空気式マッサージ器を有し、
該第2空気式マッサージ器は、被施療者の上腕の外側部に対応する位置から、前記背凭れ部に沿って前記第1空気式マッサージ器より上方へ、被施療者の肩の外側部に対応する位置付近まで延設され、且つ、前記被施療者の上腕及び肩の前方まで延設されており、
前記肘掛け部は、被施療者の前腕部を覆うように前後方向に直交する断面が凹状に形成され、且つ正面視で内側が開いた状態とされており、給気によって膨張して前記前腕部を上方及び下方から押圧する空気袋を有している
ことを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
前記背凭れ部はその下部が前記座部の後部にて前後へ回動自在に枢着され、該背凭れ部の上部には前記被施療者の頭部を支持する頭部クッション部を有し、前記外側支持部は、前記背凭れ部に沿って前記肘掛け部から前記クッション部へ至るまで延設されていることを特徴とする請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項3】
前記機械式マッサージ器は、前記背凭れ部における左右方向の中央に配置され、前記第1空気式マッサージ器は、前記機械式マッサージ器に対して左右の外方に配置され、
前記外側支持部は、凹状を成す前記背凭れ面の左右の外側端部近傍から、前方へ向かって延設され、
前記第2空気式マッサージ器は、前記第1空気式マッサージ器に対して左右の外方に配置され、
前記肘掛け部の空気袋は、前記第2空気式マッサージ器よりも下方且つ前方に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項4】
前記背荒れ部は、左右の前記第1空気式マッサージ器の間を通る前記機械式マッサージ器の昇降動作を案内すべく上下方向へ延びるガイドを有することを特徴とする請求項3に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項5】
前記第1空気式マッサージ器は、前記座部に着座した被施療者の胴体の側部を施療すべく成してあることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の椅子型マッサージ機。
【請求項6】
前記背凭れ部は、給気によって空気袋が膨張して前記被施療者の肩の上部を押圧する第3空気式マッサージ器を有していることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の椅子型マッサージ機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2012-04-24 
出願番号 特願2005-110927(P2005-110927)
審決分類 P 1 41・ 855- Y (A61H)
P 1 41・ 853- Y (A61H)
P 1 41・ 851- Y (A61H)
P 1 41・ 856- Y (A61H)
P 1 41・ 854- Y (A61H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安井 寿儀一ノ瀬 薫芦原 康裕  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 蓮井 雅之
関谷 一夫
高木 彰
田合 弘幸
登録日 2005-10-07 
登録番号 特許第3727648号(P3727648)
発明の名称 椅子型マッサージ機  
代理人 井上 周一  
代理人 三山 峻司  
代理人 松田 誠司  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  
代理人 特許業務法人有古特許事務所  
代理人 木村 広行  
代理人 井上 周一  
代理人 木村 広行  
代理人 松田 誠司  
代理人 三山 峻司  

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