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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1256698
審判番号 不服2011-8636  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-22 
確定日 2012-05-10 
事件の表示 特願2006- 18901「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日出願公開、特開2006-146271〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成10年12月21日(優先権主張 平成10年1月30日、及び、平成10年4月28日)に出願した特願平10-362329号(以下「原出願」という。)の一部を、平成18年1月27日に特許法第44条第1項の規定に基づき新たな特許出願としたものであって、平成21年4月15日に手続補正がなされたが、平成23年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年4月22日に拒絶査定不服審判が請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである(以下、平成23年4月22日になされた手続補正を「本件補正」という。)。

第2 本件補正についての却下の決定

1 結論

本件補正を却下する。

2 理由

(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1につき、補正前(平成21年4月15日の手続補正後のもの。)の
「少なくとも2枚の基板間に液晶層が挾持され、該液晶層に電圧を印加する一対の電極によって規定される複数の画素を備える液晶表示装置において、
前記複数の画素内には、反射型表示を行うことなく透過型表示を行う光の透過効率の高い領域と、反射型表示を行う反射効率の高い領域とが設けられており、それぞれの前記領域において光の透過効率の高い層または反射効率の高い層が画素電極として機能し、前記透過効率の高い層がITOであり、前記反射効率の高い層がAlまたはAl系合金であることを特徴とする液晶表示装置。」

「少なくとも2枚の基板間に液晶層が挾持され、該液晶層に電圧を印加する一対の電極によって規定される複数の画素を備える液晶表示装置において、
前記複数の画素内には、反射型表示を行うことなく透過型表示を行う光の透過効率の高い領域と、反射型表示を行う反射効率の高い領域とが設けられており、それぞれの前記領域において光の透過効率の高い層または反射効率の高い層が画素電極として機能し、前記透過効率の高い層がITOであり、前記反射効率の高い層がAlまたはAl系合金であり、前記反射効率の高い領域では前記ITOの上に前記AlまたはAl系合金が配置されることを特徴とする液晶表示装置。」
に補正する内容を含むものである。

(2)補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1の「反射効率の高い領域」に関して、「前記反射効率の高い領域では前記ITOの上に前記AlまたはAl系合金が配置される」との限定を付加するものであるから、上記(1)の本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法第1条による改正前の特許法(以下「平成14年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

ア 本願補正発明
本願補正発明は、上記(1)において、補正後のものとして記載したとおりのものと認める。

イ 刊行物の記載及び引用発明
(ア)刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された特開平7-134300号公報(以下「引用例」という。)には、以下の記載がある。
a 「【0004】他方、このようなランプを内蔵することなく、装置の観察者側に位置する電極板(観察者側電極板と称する)から室内光や自然光等の外光を入射させ、かつ、この入射光を上記背面電極板に設けられた光反射材で反射させると共に、この反射光で画面表示する反射型液晶表示装置も知られている。・・・
【0005】このような反射型液晶表示装置として、例えば、図4に示すように背面電極板aの裏面に金属反射板a3を設けたもの、あるいは、図5に示すように背面電極板aの電極a2を光反射性の金属薄膜で構成しこの電極a2により入射光を反射させて画面表示するもの等が知られているが、図4に示された反射型液晶表示装置においては液晶物質cによって構成された表示画面が上記金属反射板a3に映って虚像を生じ二重に観察されるという欠点があるため、このような欠点を有さない図5に示された反射型液晶表示装置が主流を占めている。尚、図4?5中、bは観察者側電極板、cは液晶物質、dは偏光フィルム、eは背面電極板aと観察者側電極板bとを周辺部で一体化させるシール材を示している。」

b 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図5の反射型液晶表示装置に組込まれる光反射性の金属電極a2としては、従来、安価で光反射率に優れたアルミニウム薄膜が広く利用されているが、アルミニウム薄膜は水分や塩基により酸化され易くこの酸化に伴い光反射性能が低下して経時的に表示欠陥を引起こし易いため、近年、水分や塩基に対し高い耐性を有する銀薄膜が上記金属電極a2として利用されている。
【0007】しかし、アルミニウム薄膜に代えて銀薄膜を適用した場合にも以下に示すような問題点を有しており未だ改善の余地を有していた。
【0008】まず、背面電極板を構成する基板に対して上記銀薄膜は密着性が良好でなく、液晶表示装置の組み立て工程や装置駆動中において銀薄膜が基板から剥離し易い問題があり、かつ、銀薄膜は硬度が余り高くないため液晶表示装置の組み立て工程の際にその表面に物理的な力が作用すると損傷され易い問題があった。
【0009】更に、液晶表示装置の組立て時における熱処理工程(例えば、背面電極板aと観察者側電極板bとをシール材eを介して重ね合わせ、200?300℃に加熱加圧して一体化する工程、あるいは、液晶を安定して配向させるためその配向膜を200?300℃で熱処理する工程)の際、その加熱作用により銀薄膜が球状に凝集し易くこの凝集により銀薄膜表面に凹凸が形成されてその反射性能を損ない易い問題点を有していた。
【0010】本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、液晶表示装置の組み立て工程や装置駆動中において金属電極の剥離や損傷が起こり難く、長期に亘って明るい画面表示が可能でかつ表示欠陥が起こり難い反射型液晶表示装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち、請求項1に係る発明は、光反射性の金属電極を有する背面電極板と、この背面電極板に対向して配置されかつ透明電極を有する観察者側電極板と、これ等両電極板間に封入された液晶物質とを備え、上記金属電極と透明電極との間に電圧を印加して液晶物質を駆動させ画面表示する反射型液晶表示装置を前提とし、上記光反射性の金属電極が、銀より酸化され易い金属を含有する銀合金の薄膜にて構成されていることを特徴とするものである。
【0012】そして、銀より酸化され易い金属が含まれた銀合金の薄膜は、銀単体の薄膜に較べて基板との密着性が良好で、かつ、加熱作用により凝集が起こり難く、しかも硬度も高いため、光反射性の金属電極を上記銀合金で構成した場合、液晶表示装置の組み立て工程や装置駆動中において上記金属電極の剥離や損傷が起こり難くなる。
【0013】従って、明るい画面表示が可能でかつ表示欠陥が生じ難くしかも信頼性に優れた反射型液晶表示装置を提供することが可能となる。
【0014】このような技術的手段において銀より酸化され易い金属とは、銀に比較して酸素原子と結合し易くその結合エネルギーが高い金属をいい、従ってこのような金属は、一般に、金属の電子親和力(電子親和力がより小さい方がカチオンになり易く、酸素アニオンと結合し易い)、電気陰性度、仕事関数、イオン化ポテンシャル等によって判断できる。また、金属原子と酸素原子との結合エネルギーが高いためその金属酸化物の融点が高くなる。そして、このような金属が含まれた銀合金は、この合金中に微量に含まれる金属酸化物や金属イオンによって基板に対し強い結合力を発揮する。例えば、基板がガラスから成る場合には、このガラス基板表面の酸素アニオンと上記金属酸化物又は金属イオンが強い結合力で結合する。このような金属としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、及び、ハフニウムが使用でき、かつ、これ等金属の二種類以上を上記薄膜中に含有させてもよい。請求項2に係る発明は上記金属を特定した発明に関する。
【0015】すなわち、請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明に係る反射型液晶表示装置を前提とし、銀より酸化され易い金属が、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びハフニウムの内から選択された一又は二種類以上の金属から成ることを特徴とするものである。」

c 「【0022】他方、観察者側電極板を構成する基板としては、ガラス基板、プラスチックフィルム、プラスチックボード等の透明基板が適用でき、また、透明電極としてはITOやネサ膜等の透明導電膜が適用できる。」

d 「【0037】[実施例3]この実施例に係る反射型液晶表示装置は、図2に示すように背面電極板1と、この背面電極板1に対向して配置された観察者側電極板2と、これ等両電極板1、2を周辺部で一体化させるシール材3と、これ等両電極板1、2の間に封入された液晶物質4と、上記観察者側電極板2の外面に積層された偏光フィルム5と、背面側電極板1の背後に配置されかつ照明の暗い室内で点灯して使用されるランプ(図示せず)とでその主要部が構成されている。また、上記背面電極板1は、厚さ0.7μmのガラス基板11と、このガラス基板11上に幅195μm、ピッチ210μmのストライプパターンに設けられかつ酸化錫を7.5重量%含有する酸化インジウムから成るITO薄膜(厚さ0.1μm)13と、このITO薄膜13上の画素部位にパターン(図3に示すように中央部に径70μmの円形の穴開きパターン14aを有する一辺が195μmの矩形パターン)状に設けられかつアルミニウムを8atm %含有する銀合金の薄膜から成る金属電極14とで構成され、他方、観察者側電極板2は、厚さ0.7μmのガラス基板21と、このガラス基板21上に幅195μm、ピッチ210μmのストライプパターン(上記金属電極14と直交する方向のストライプパターン)に設けられかつ厚さ0.2μmの透明導電膜から成る透明電極22とで構成されている。
【0038】尚、上記金属電極14の中央部に設けられた穴開きパターン14aは、照明の暗い室内で液晶表示装置を駆動する際に点灯される上記ランプの光線を画素部位に誘導するものである。」

e 上記aないしdを踏まえて図2及び図3をみると、反射型液晶表示装置は、複数の画素部位を有し、かつ、各々の画素部位の金属電極が中央部に径70μmの円形の穴開きパターンを有する一辺が195μmの矩形パターンであることがみてとれる。

(イ)引用発明
上記(ア)dおよびeによれば、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。
「背面電極板と、この背面電極板に対向して配置された観察者側電極板と、これ等両電極板を周辺部で一体化させるシール材と、これ等両電極板の間に封入された液晶物質と、上記観察者側電極板の外面に積層された偏光フィルムと、背面側電極板の背後に配置されかつ照明の暗い室内で点灯して使用されるランプとでその主要部が構成され、
上記背面電極板は、厚さ0.7μmのガラス基板と、このガラス基板上に幅195μm、ピッチ210μmのストライプパターンに設けられかつ酸化錫を7.5重量%含有する酸化インジウムから成るITO薄膜と、このITO薄膜上の画素部位に中央部に径70μmの円形の照明の暗い室内で液晶表示装置を駆動する際に点灯される上記ランプの光線を画素部位に誘導する穴開きパターンを有する一辺が195μmの矩形パターン状に設けられかつアルミニウムを8atm%含有する銀合金の薄膜から成る金属電極とで構成され、
観察者側電極板は、厚さ0.7μmのガラス基板と、このガラス基板上に幅195μm、ピッチ210μmのストライプパターンに設けられかつ厚さ0.2μmの透明導電膜から成る透明電極とで構成されている、
複数の画素部位を有し、かつ、各々の画素部位の金属電極が中央部に径70μmの円形の穴開きパターンを有する一辺が195μmの矩形パターンである液晶表示装置。」(以下「引用発明」という。)

ウ 対比
(ア)引用発明は「背面電極板」と、この背面電極板に対向して配置された「観察者側電極板」と、これ等両電極板の間に封入された液晶物質とで構成され、「上記背面電極板は、・・・ITO薄膜と、ITO薄膜上の画素部位に・・・穴開きパターンを有する・・・金属電極とで構成され、観察者側電極板は・・・透明電極とで構成され」、複数の画素部位を有しているから、液層物質は層であり、液晶表示装置を駆動する際は電極に電圧を印加するから、引用発明は、背面電極板と観察者側電極板の2枚の基板の間に液晶物質が挟持されて層をなし、液晶物質に電圧を印加するITO薄膜及び金属電極と、透明電極の複数の画素部位からなるといえる。
したがって、引用発明は、本願補正発明の「少なくとも2枚の基板間に液晶層が挾持され、該液晶層に電圧を印加する一対の電極によって規定される複数の画素を備える液晶表示装置」の構成を備える。

(イ)引用発明は、複数の画素各々が、「ITO薄膜」及び「穴開きパターンを有する金属電極」から構成され、「ITO薄膜」及び「の金属電極」の穴開きパターン部分からなる領域と、「ITO薄膜」及び「金属電極」の穴開きパターン部分以外の部分からなる領域を有するものであるところ、上記ア(ア)dに「上記金属電極14の中央部に設けられた穴開きパターン14aは、照明の暗い室内で液晶表示装置を駆動する際に点灯される上記ランプの光線を画素部位に誘導するものである」と記載されていることから、前記「ITO薄膜」及び「金属電極」の穴開きパターン部分からなる領域は、ランプの光線を誘導できる透過効率を有するものであり、また、上記ア(ア)cに「透明電極としてはITOやネサ膜等の透明導電膜が適用できる」とあるようにITO薄膜は透明導電膜として適用するものであるから、前記「ITO薄膜」及び「金属電極」の穴開きパターン部分からなる領域は反射せずランプの光線を透過する透過効率の高い領域であるといえる。また、前記「ITO薄膜」及び「金属電極」の穴開きパターン部分以外の部分からなる領域は、上記ア(ア)bに「光反射性の金属電極」とあるように反射効率の高い領域であるといえる。そして、前記ITO薄膜と、このITO薄膜上の画素部位に設けられた金属電極は接して導通するものであって、画素部位にあるから、画素電極として機能するものであるといえる。
したがって、引用発明は本願補正発明の「前記複数の画素内には、反射型表示を行うことなく透過型表示を行う光の透過効率の高い領域と、反射型表示を行う反射効率の高い領域とが設けられており、それぞれの前記領域において光の透過効率の高い層または反射効率の高い層が画素電極として機能し、前記透過効率の高い層がITOであり、前記反射効率の高い層が金属電極であり、前記反射効率の高い領域では前記ITOの上に前記金属電極が配置される」構成を備える。

以上によれば両者は、
「少なくとも2枚の基板間に液晶層が挾持され、該液晶層に電圧を印加する一対の電極によって規定される複数の画素を備える液晶表示装置において、
前記複数の画素内には、反射型表示を行うことなく透過型表示を行う光の透過効率の高い領域と、反射型表示を行う反射効率の高い領域とが設けられており、それぞれの前記領域において光の透過効率の高い層または反射効率の高い層が画素電極として機能し、前記透過効率の高い層がITOであり、前記反射効率の高い層が金属電極であり、前記反射効率の高い領域では前記ITOの上に前記金属電極が配置される液晶表示装置。」である点で一致し、

本願補正発明は「前記反射効率の高い層がAlまたはAl系合金であり、前記反射効率の高い領域では前記ITOの上に前記AlまたはAl系合金が配置される」のに対して、引用発明の「反射効率の高い層」は金属電極であるが、「AlまたはAl系合金」ではない点(以下「相違点」という。)で相違するものと認められる。

エ 判断
上記相違点について検討する。
上記ア(ア)a及びbによれば、光反射性の金属電極a2として、従来、安価で光反射率に優れたアルミニウム薄膜が広く利用されていたが、アルミニウム薄膜は水分や塩基により酸化され易くこの酸化に伴い光反射性能が低下して経時的に表示欠陥を引起こし易いため、近年、水分や塩基に対し高い耐性を有する銀薄膜が上記金属電極a2として利用され、さらに明るい画面表示が可能でかつ表示欠陥が生じ難くしかも信頼性に優れた反射型液晶表示装置を提供するために銀合金を適用したことが理解できる。
しかして、引用発明の「反射効率の高い層」として、銀合金を適用する以前は、上記の問題点を有するものの銀薄膜やアルミニウム薄膜が用いられていて、上記ア(ア)aにあるように、アルミニウム薄膜は「安価で光反射率に優れた」ものであることも知られていたところ、コスト(安価か否か)、耐久性(経時的に表示欠陥を引起こし易い)、効率(光反射率)を考慮してどの素材(アルミニウム、銀、銀合金)を選ぶかは、発明を実施するに際して当業者が適宜になし得る設計的事項であるから、引用発明において、上記の問題点よりも「安価で光反射率に優れた」点を優先してアルミニウム薄膜を用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、引用発明において「反射効率の高い層」の金属電極として、アルミニウム薄膜を用いることにより、相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

なお、請求人は平成23年4月22日付け審判請求書において「引用文献1は・・・銀薄膜に特有の課題を解決するために、ITOの上に銀薄膜を積層しています。ここで、銀薄膜に代えてAlまたはAl系合金を用いる場合には、ITOの上に積層する理由はなく、ITOと銀薄膜の積層膜に代えてAlまたはAl系合金を用いることとなり、本願発明の構成とは相違します。」と主張する。
しかしながら、引用発明にアルミニウム薄膜を適用する場合は、「金属電極」としてアルミニウム薄膜を適用するか、「ITO」と「金属電極」に代えてアルミニウム薄膜を適用するかのいずれかとなるところ、反射型表示のみの液晶装置であれば「ITO」と「金属電極」に代えてアルミニウム薄膜を適用することとなるが、引用発明のように、反射型表示と透過型表示を行う液晶装置においてアルミニウム薄膜を適用する場合に、「ITO」と「金属電極」に代えてアルミニウム薄膜を適用すると透過型表示を行えなくなるため、引用発明では透過型表示のために「ITO」を残し、その上の「金属電極」としてアルミニウム薄膜を適用することになるというべきであって、ITOの上に積層することには理由があり、上記請求人の主張は採用できない。

オ 小括
以上の検討によれば、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年4月15日に補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2、2(1)において、補正前のものとして示したとおりのものである。

2 刊行物の記載及び引用発明
前記第2、ア(ア)のとおりである。

3 対比・判断
上記「第2 2(2)補正の目的」のとおり、本願補正発明は本願発明に限定を付加したものである。
そして、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加した本願補正発明が、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、前記第2、2(3)での検討と同様の理由により、本願発明は引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-01 
結審通知日 2012-03-06 
審決日 2012-03-26 
出願番号 特願2006-18901(P2006-18901)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
P 1 8・ 575- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 知喜  
特許庁審判長 稲積 義登
特許庁審判官 岡▲崎▼ 輝雄
松川 直樹
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 平井 良憲  

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