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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1256755
審判番号 不服2009-19789  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-15 
確定日 2012-05-07 
事件の表示 特願2004-565786「適応電力制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月22日国際公開、WO2004/061635、平成18年 5月25日国内公表、特表2006-515448〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件審判の請求に係る特許願(以下、「本願」という。)は、平成15年12月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年12月31日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年6月29日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、同年8月25日付けで特許法第184条の4第1項に規定する国際出願日における明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る)及び要約の日本語による翻訳文が提出され、平成18年12月25日付けで手続補正がなされ、平成20年2月22日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月1日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年12月16日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成21年3月16日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年6月19日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年10月15日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正がなされ、平成23年2月9日付けで審査官から前置報告がなされ、同年4月22日付けで当審より審尋がなされ、同年10月25日付けで回答書が提出されたものである。
そして、特許請求の範囲の請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年12月25日付け手続補正書、平成20年7月1日付け手続補正書、平成21年3月16日付け手続補正書、及び平成21年10月15日付け手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載から見て、平成21年10月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項8に記載された以下のとおりのものと認める。
「 【請求項8】
マイクロプロセッサを動作させる方法であって、
前記マイクロプロセッサのための所望の動作周波数を決定するステップと、
前記所望の動作周波数で前記マイクロプロセッサを動作させるための最適電圧を選択するステップであって、前記最適電圧が前記マイクロプロセッサに特化された特性に基づいて選択され、前記特性の情報が、マイクロプロセッサの基板の外部に記憶されるところのステップと、
前記最適電圧でマイクロプロセッサを動作させるステップと
を含む方法。」

2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-172383号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。

ア.「【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の半導体集積装置及びマイクロプロセッサ制御方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】図1は、本発明の半導体集積装置の構成の一形態を示す図である。この半導体集積装置は、所定のアプリケーションやプログラムを実行し、また、当該装置内の各構成を制御するマイクロプロセッサ1と、チップ温度を検出する温度検出装置2と、マイクロプロセッサ1からの温度-電圧特性情報に基づいて温度検出装置2からの温度情報を監視する比較装置3と、温度、電圧及び周波数の関係を示す温度-電圧-周波数特性テーブルを記憶する記憶装置4と、マイクロプロセッサ1に電源を供給する電源装置6と、マイクロプロセッサ1からの制御信号に応じて電源装置6に電圧制御信号を出力する電源制御装置5と、電源装置6から供給される電源の電圧を検出する電圧検出装置7とを備えている。
【0016】ここで、記憶装置4としては、不揮発性の記憶装置であればよく、例えば、マスクROMやフラッシュメモリを用いるとよい。特に、マスクROMは、デバイスに対するスペックがあらかじめ決まっている場合に使用するとよく、また、フラッシュメモリは、半導体集積装置の量産時のロット毎に特性が変化しても、量産試験で測定された特性をマイクロプロセッサ1で書き込むことができるという利点がある。
【0017】図2は、記憶装置4に記憶されている温度-電圧-周波数特性テーブルの一例を示す図である。この温度-電圧-周波数特性テーブルにおいては、温度の上限(130℃)と下限(40℃)を設定しており、それを超える場合は電圧を変化させないものとする。また、周波数は動作モードの設定などにより、既知の情報とする。但し、図2に示した温度の範囲は、一例を示したものに過ぎず、半導体集積装置に搭載されたマイクロプロセッサの性能や動作環境に応じて任意に変化することができる。」
イ.「【0024】マイクロプロセッサ1は、比較装置3から温度変化の通知を受けると、温度-電圧-周波数特性テーブルを参照し、現在のチップ温度と現在の動作クロックの周波数に基づいて、動作条件に見合った電圧になるように電源制御装置5へ制御信号を出力する(ステップ306)。
【0025】電源制御装置5は、マイクロプロセッサ1からの制御信号に応じて、電源装置6へ電圧制御信号を送出する(ステップ307)。
【0026】電源装置6は、電源制御装置5からの電圧制御信号に基づいて出力電圧を変更し、マイクロプロセッサ1へ電源を供給する(ステップ308)。」

ア.の「本発明の半導体集積装置及びマイクロプロセッサ制御方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。」及び「所定のアプリケーションやプログラムを実行し、また、当該装置内の各構成を制御するマイクロプロセッサ1」なる記載によれば、引用例には、半導体集積装置内の各構成を制御するとともに、所定のアプリケーションやプログラムを実行する、マイクロプロセッサ1を用いたマイクロプロセッサ制御方法が記載されている。
イ.の「マイクロプロセッサ1は、比較装置3から温度変化の通知を受けると、温度-電圧-周波数特性テーブルを参照し、現在のチップ温度と現在の動作クロックの周波数に基づいて、動作条件に見合った電圧になるように電源制御装置5へ制御信号を出力する(ステップ306)。」なる記載によれば、引用例には、前記マイクロプロセッサ1は、前記マイクロプロセッサ1の温度-電圧-周波数に関する特性に基づいて、現在の動作クロックの周波数と現在のチップ温度の動作条件に見合った電圧になるように電源制御装置5へ制御信号を出力する点が記載されている。
ア.の「ここで、記憶装置4としては、不揮発性の記憶装置であればよく、例えば、マスクROMやフラッシュメモリを用いるとよい。・・・(中略)・・・フラッシュメモリは、半導体集積装置の量産時のロット毎に特性が変化しても、量産試験で測定された特性をマイクロプロセッサ1で書き込むことができ」及び「図2は、記憶装置4に記憶されている温度-電圧-周波数特性テーブルの一例を示す図である。」なる記載によれば、引用例には、前記マイクロプロセッサ1の温度-電圧-周波数に関する特性の書き込まれた温度-電圧-周波数特性テーブルが、フラッシュメモリ4が用いられた記憶装置4に記憶される点が記載されている。
イ.の「電源制御装置5は、マイクロプロセッサ1からの制御信号に応じて、電源装置6へ電圧制御信号を送出する(ステップ307)。」及び「電源装置6は、電源制御装置5からの電圧制御信号に基づいて出力電圧を変更し、マイクロプロセッサ1へ電源を供給する(ステップ308)。」なる記載によれば、引用例には、前記電源制御装置5は、前記マイクロプロセッサ1からの前記制御信号に応じて、前記電源装置6へ電圧制御信号を送出し、前記電源装置6は、前記電源制御装置5からの前記電圧制御信号に基づいて出力電圧を変更する点が記載されている。
したがって、上記ア.?イ.における記載及びその関連する図面からすると、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。

半導体集積装置内の各構成を制御するとともに、所定のアプリケーションやプログラムを実行する、マイクロプロセッサ1を用いたマイクロプロセッサ制御方法であって、
前記マイクロプロセッサ1は、前記マイクロプロセッサ1の温度-電圧-周波数に関する特性に基づいて、現在の動作クロックの周波数と現在のチップ温度の動作条件に見合った電圧になるように電源制御装置5へ制御信号を出力し、
前記マイクロプロセッサ1の温度-電圧-周波数に関する特性の書き込まれた温度-電圧-周波数特性テーブルが、フラッシュメモリ4が用いられた記憶装置4に記憶され、
前記電源制御装置5は、前記マイクロプロセッサ1からの前記制御信号に応じて、前記電源装置6へ電圧制御信号を送出し、前記電源装置6は、前記電源制御装置5からの前記電圧制御信号に基づいて出力電圧を変更する、
方法。

3.対比
本願発明と引用発明を比較する。
引用発明の「半導体集積装置内の各構成を制御するとともに、所定のアプリケーションやプログラムを実行する、マイクロプロセッサ1を用いたマイクロプロセッサ制御方法」は、マイクロプロセッサ1に、半導体集積装置内の各構成を制御させるとともに、所定のアプリケーションやプログラムを実行させるので、本願発明の「マイクロプロセッサを動作させる方法」に相当する。
引用発明の「温度-電圧-周波数に関する特性」は、本願発明の「前記マイクロプロセッサに特化された特性」に相当する。また、引用発明の「現在の動作クロック」は、引用発明では好ましい動作クロックをマイクロプロセッサ1に供給していることは明らかであり、引用発明の「現在の動作クロックの周波数」をマイクロプロセッサ1に供給することに先立って現在の動作クロックを決定していることは当業者にとって自明であるから、本願発明の「所望の動作クロックを決定する」ことに相当する。さらに、引用発明の「現在の動作クロックの周波数と現在のチップ温度の動作条件に見合った電圧になる」ようにすることは、マイクロプロセッサ1の温度-電圧-周波数に関する特性に基づいて動作条件における最適電圧になるようにすることとみなせるので、本願発明の「前記所望の動作周波数で前記マイクロプロセッサを動作させるための最適電圧を選択するステップであって、前記最適電圧が前記マイクロプロセッサに特化された特性に基づいて選択され」ることに相当する。よって、引用発明の「前記マイクロプロセッサ1は、前記マイクロプロセッサ1の温度-電圧-周波数に関する特性に基づいて、現在の動作クロックの周波数と現在のチップ温度の動作条件に見合った電圧になるように電源制御装置5へ制御信号を出力」することは、本願発明の「前記マイクロプロセッサのための所望の動作周波数を決定するステップと、前記所望の動作周波数で前記マイクロプロセッサを動作させるための最適電圧を選択するステップであって、前記最適電圧が前記マイクロプロセッサに特化された特性に基づいて選択され」ることに相当する。
引用発明の「前記マイクロプロセッサ1の温度-電圧-周波数に関する特性」が本願発明の「前記マイクロプロセッサに特化された特性」に相当することを考慮すれば、引用発明の「前記マイクロプロセッサ1の温度-電圧-周波数に関する特性の書き込まれた温度-電圧-周波数特性テーブルが、フラッシュメモリ4が用いられた記憶装置4に記憶」することと本願発明の「前記特性の情報が、マイクロプロセッサの基板の外部に記憶されるところのステップ」とは、「前記特性の情報が記憶されるところのステップ」である点で共通する。
引用発明の「前記電源制御装置5は、前記マイクロプロセッサ1からの前記制御信号に応じて、前記電源装置6へ電圧制御信号を送出し、前記電源装置6は、前記電源制御装置5からの前記電圧制御信号に基づいて出力電圧を変更する」ことは、要するにマイクロプロセッサ1を動作させるための出力電圧を先のステップで決定された最適電圧に変更した電源をマイクロプロセッサ1に供給することであるので、本願発明の「前記最適電圧でマイクロプロセッサを動作させるステップ」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
[一致点]
マイクロプロセッサを動作させる方法であって、
前記マイクロプロセッサのための所望の動作周波数を決定するステップと、
前記所望の動作周波数で前記マイクロプロセッサを動作させるための最適電圧を選択するステップであって、前記最適電圧が前記マイクロプロセッサに特化された特性に基づいて選択され、前記特性の情報が記憶されるところのステップと、
前記最適電圧でマイクロプロセッサを動作させるステップと
を含む方法。

[相違点]
本願発明は「前記特性の情報が、マイクロプロセッサの基板の外部に記憶される」ものであるのに対し、引用例には、マイクロプロセッサ1の温度-電圧-周波数に関する特性が記憶されている記憶装置4がマイクロプロセッサ1の基板の外部にある点について特段の記載がない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
マイクロプロセッサに記憶装置を接続する際に、マイクロプロセッサの基板の外部に記憶装置を設ける点は、当業者に周知技術にすぎない(例えば、特開平11-218561号公報の段落【0003】,【0004】,【0006】,【0007】には、システムボード107上に、集積回路(本願発明の「マイクロプロセッサ」に対応。)と別体としてEEPROM等の不揮発性メモリ105を実装する点が記載されており、マイクロプロセッサの基板の外部にフラッシュメモリのような不揮発性メモリを接続することは、当業者に周知の技術であると認められる。)。
したがって、引用発明のマイクロプロセッサ1の温度-電圧-周波数に関する特性を、マイクロプロセッサの基板の外部にある記憶手段に記憶させることは、当業者が上記周知技術に基づいて当業者が適宜なし得る程度の事項にすぎない。
したがって、上記相違点は格別のものではなく、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものにすぎず格別なものとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-17 
結審通知日 2011-11-22 
審決日 2011-12-05 
出願番号 特願2004-565786(P2004-565786)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須田 勝巳三坂 敏夫  
特許庁審判長 赤川 誠一
特許庁審判官 田中 秀人
殿川 雅也
発明の名称 適応電力制御方法  
代理人 伊東 忠彦  

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