• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F01B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01B
管理番号 1256894
審判番号 不服2010-25495  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-12 
確定日 2012-05-09 
事件の表示 特願2006-541072「往復機関」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 9日国際公開、WO2005/052338、平成19年 5月17日国内公表、特表2007-512470〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2004年11月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年11月26日、2004年1月22日、2004年9月16日、ニュージーランド)を国際出願日とする出願であって、平成18年5月25日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出され、平成18年7月24日付けで特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出され、平成21年12月21日付けで拒絶理由が通知され、平成22年4月30日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年7月6日付けで拒絶査定がなされ、平成22年11月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に同日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、さらに、当審において平成23年4月18日付けで書面による審尋がなされたものである。

第2.平成22年11月12日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年11月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成22年11月12日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成22年4月30日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記(a)を、下記(b)と補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
2ストロークサイクルで動作する往復機関において:
一対の、静止した、ほぼ同軸に整列した相互に対向するピストンであって、当該ピストンの周りを往復運動するように構成されたスリーブによって分割されたピストンと、チャンバを規定するためにそれぞれが前記ピストンの一方に動作可能に連結されている二つのキャビティを規定する往復スリーブと、プレチャージチャンバであり、少なくとも一の入口ポートを有する第1のチャンバと、燃焼チャンバであり、少なくとも一の出口ポートを有する第2のチャンバを具え、前記二つのチャンバが動力分配バルブで分割されており、 前記スリーブの周囲に位置する回転可能な出力部材の上のトラック上で動作するように構成された駆動部材が前記スリーブに設けられており、前記トラックが、前記機関の使用時に、前記スリーブの往復運動を前記回転可能な出力部材の回転運動に変換できるように構成されていることを特徴とする往復機関。
【請求項2】
請求項1に記載の往復機関において、
前記トラックが、エンドカムの形式であることを特徴とする往復機関。
【請求項3】
請求項1または2に記載の往復機関において、
前記出力部材が、前記往復スリーブの周りを回転するように構成された回転可能なスリーブを具えることを特徴とする往復機関。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の往復機関において、
前記出力部材が、前記往復スリーブの一以上の完全なサイクルで、前記出力スリーブの一の回転を生み出すようなマルチピーク曲線トラックを有していることを特徴とする往復機関。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の往復機関において、
前記動力分配バルブが圧力で動作することを特徴とする往復機関。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の往復機関において、
前記プレチャージチャンバ用の入口ポートに圧力作動バルブが設けられていることを特徴とする往復機関。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の往復機関において、
前記燃焼チャンバ用の出力ポートが、前記往復スリーブ内にポートを具え、このポートが前記往復スリーブの少なくとも移動部分の間にピストンによって閉じることができるようなサイズであり、そのように配置されていることを特徴とする往復機関。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の往復機関において、
前記機関が、二対のプレチャージチャンバと燃焼チャンバの周りで往復運動するように構成された往復スリーブを具えることを特徴とする往復機関。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の往復機関において、
前記機関が二つの往復スリーブを具えることを特徴とする往復機関。
【請求項10】
請求項9に記載の往復機関において、
当該機関の使用時に各往復スリーブが互いに反対方向に動作するように構成されていることを特徴とする往復機関。
【請求項11】
往復機関において:
一対の、静止した、ほぼ同軸に整列した相互に対向するピストンであって、当該ピストンの周りを往復運動するように構成されたスリーブによって分割されたピストンと、チャンバを規定するためにそれぞれが前記ピストンの一方に動作可能に連結されている二つのキャビティを規定する往復スリーブと、プレチャージチャンバであり、少なくとも一の入口ポートを有する第1のチャンバと、燃焼チャンバであり、少なくとも一の出口ポートを有する第2のチャンバを具え、前記二つのチャンバが動力分配バルブで分割されており、
前記スリーブの周囲に位置する回転可能な出力部材の上のトラック上で動作するように構成された駆動部材が前記スリーブに設けられており、前記トラックが、前記機関の使用時に、前記スリーブの往復運動を前記回転可能な出力部材の回転運動に変換できるように構成されていることを特徴とする往復機関。
【請求項12】
請求項11に記載の往復機関において、
前記トラックが、エンドカムの形式であることを特徴とする往復機関。
【請求項13】
請求項11または12に記載の往復機関において、
前記出力部材が、前記往復スリーブの周りを回転するように構成された回転可能なスリーブを具えることを特徴とする往復機関。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
2ストロークサイクルで動作する往復機関において:
二組の、静止した、ほぼ同軸に整列した相互に対向するピストンであって、各組の対向するピストンが、当該ピストンの周りを往復運動するように構成された1または複数のスリーブによって分割されたピストンと、
チャンバを規定するためにそれぞれが前記ピストンの一方に動作可能に連結されている二つのキャビティを規定する前記往復スリーブまたは各往復スリーブと、
プレチャージチャンバであり、少なくとも一の入口ポートを有する、各組の対向するピストンの第1のチャンバと、
燃焼チャンバであり、少なくとも一の出口ポートを有する、各組の対向するピストンの第2のチャンバとを具え、
各組の対向するピストンの前記二つのチャンバが動力分配バルブで分割されており、 前記機関がさらに、前記往復スリーブまたは各往復スリーブの周囲で回転可能な一つの回転出力部材を有し、当該回転出力部材が、一対のトラックを含み、各トラックがマルチピークのカムプロファイルの形式をとり、 前記往復スリーブまたは各往復スリーブには、前記回転出力部材上の前記トラックの一方の上で動作するように構成された2またはそれ以上の駆動部材が、前記往復スリーブまたは各往復スリーブの両側部に設けられており、
前記回転出力部材の前記トラックが、前記機関の使用時に、前記往復スリーブまたは各往復スリーブの往復運動を前記回転出力部材の回転運動に変換できるように構成されていることを特徴とする往復機関。
【請求項2】
請求項1に記載の往復機関において、
各トラックが、エンドカムの形式であることを特徴とする往復機関。
【請求項3】
請求項1または2に記載の往復機関において、
前記回転出力部材が、前記往復スリーブの周りを回転するように構成された回転可能なスリーブを具えることを特徴とする往復機関。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の往復機関において、 前記動力分配バルブが圧力で動作することを特徴とする往復機関。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の往復機関において、 前記プレチャージチャンバ用の入口ポートに圧力作動バルブが設けられていることを特徴とする往復機関。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の往復機関において、 前記燃焼チャンバ用の出力ポートが、前記往復スリーブまたは各往復スリーブ内にポートを具え、このポートが前記往復スリーブまたは各往復スリーブの少なくとも移動部分の間にピストンによって閉じることができるようなサイズであり、そのように配置されていることを特徴とする往復機関。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の往復機関において、 前記機関が一つの往復スリーブを具えることを特徴とする往復機関。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の往復機関において、 当該機関が2つの往復スリーブを具え、当該機関の使用時に、各往復スリーブが互いに反対方向に動作するように構成されていることを特徴とする往復機関。」(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付した。)

2.本件補正の適否についての検討
本件補正は、請求項1に関し、ピストンが二組であること、各組の対向するピストンが1または複数のスリーブによって分割されること、及び往復スリーブの周囲で回転可能な一つの回転出力部材を有し、当該回転出力部材が一対のトラックを含み、各トラックがマルチピークのカムプロファイルの形式をとり、往復スリーブには回転出力部材上のトラックの一方の上で動作するように構成された2またはそれ以上の駆動部材が往復スリーブの両側部に設けられており、回転出力部材のトラックが往復スリーブの往復運動を回転出力部材の回転運動に変換することを限定したものである。

これに対し、特許法第184条の6第2項の規定により願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲とみなされる平成18年7月24日付けで提出された明細書及び特許請求の範囲の翻訳文、及び国際出願日における図面(以下、「当初明細書等」という。)においては、審判請求書において補正の根拠とする段落【0044】及び【0068】並びに第9図及び第19図を参酌しても、「各組の対向するピストンが1のスリーブによって分割されること」のみしか記載されておらず、「各組の対向するピストンが複数のスリーブによって分割されること」は記載されていない。また、当初明細書等の記載全体からみても、「各組の対向するピストンが複数のスリーブによって分割されること」は記載されておらず、それを示唆する記載もない。また当初明細書等からみて当業者に自明な事項であったともいえない。
よって、請求項1に係る本件補正は、当初明細書等に記載した範囲を超える内容を含むものである。

3.むすび

以上のとおり、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲においてしたものといえず、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明
前記のとおり、平成22年11月12日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1に係る発明は、平成22年4月30日付けの手続補正により補正された明細書及び特許請求の範囲、平成18年7月24日付け国際出願翻訳文提出書に記載された明細書及び特許請求の範囲、並びに国際出願日における図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された上記(第2.の[理由]の1.(a)【請求項1】)のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

2.引用文献1及び2に記載された発明

2-1.引用文献1に記載された発明

(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2003-502552号公報(平成15年1月21日公表。以下、「引用文献1」という。)には、例えば、次のような記載がある。

(ア)「 【0016】
本発明は弁の運動を制御するカムシャフトを必要としない。本発明は、エンジンとして使用された場合、本質的に2ストローク周期で動作する。
【0017】
好ましくは、入口弁手段はスプリングバイアス一方向弁を備える。
【0018】
(発明を実施するための最良の形態)
ある実施形態において、上記の機械は内燃エンジンとして機能し、例えば一回の燃焼分に当たる一塊(a charge)の空気が流体流入口を通って第一の可変容量チャンバ内に導入され、第一の可変容量チャンバに導入された一塊の空気は圧縮され、圧縮された一塊の空気は移送弁手段を通じて第二の可変容量チャンバに送られ、機械は、燃料を、圧縮された一塊の空気と混合させるために第二の可変容量チャンバ内に燃料を送る燃料運搬手段を備え、圧縮された一塊の燃料空気混合物は燃焼し、第二の可変容量チャンバ内に膨張し、膨張した燃焼混合物は次に、移送弁手段を通じて第二の可変容量チャンバに運ばれる次の一塊の空気によって、第二の可変容量チャンバから排除される。」(段落【0016】ないし【0018】)

(イ)「 【0049】
図1において、周期動作流体排出機が内燃エンジン10の形態で見られる。内燃エンジン10は、その中を往復部材12が往復するハウジング11を備える。往復部材12は、ハウジング11の往復軸13に沿って直線的に往復運動する。往復部材12はハウジング11とともに第一の可変容量チャンバ14と第二の可変容量チャンバ15を定める。
【0050】
一方向スプリングバイアス弁の形態をとる入口弁16は、空気を空気流入口17から第一の可変容量チャンバ14内に導入し、空気が第一の可変容量チャンバ14から空気流入口17を通って出ないようにする。
【0051】
往復部材12は、往復軸13に垂直に延びる中央部分18を備える。往復部材12はまた、中央部分18の両端に2つの終端部分19,20を備える。終端部分19,20は各々、往復軸13にほぼ平行に伸びる壁を備える。終端部分19,20は各々、中央部分18とともに、一端が開いている開放型シリンダを定める。ハウジング11は、往復部材12の第一の開放型シリンダの中に延び、終端部分19によって形成される開放型シリンダ内でピストンとして機能する第一のピストン部21を備える。第一のピストン部21と終端部分19によって形成される第一の開放型シリンダとが、第一の可変容量チャンバ14を定める。
【0052】
ハウジング11は、終端部分20が定める開放型シリンダの中に延び、終端部分20によって定められる開放型シリンダ内でピストンとして機能する第二のピストン部22を備える。第二のピストン部22と終端部分20によって形成される開放型シリンダとが、第二の可変容量チャンバ15を定める。第一の可変容量チャンバ14から第二の可変容量チャンバ15へのガスの移動は、3つのコンジット23,24,25によって行われる(図2参照)。コンジット23,24,25はそれぞれ、第一の可変容量チャンバ14に向かって開くことのできる移送ポートから、第二の可変容量チャンバ15に向かって開くことのできる移送ポート(transfer port)まで延びる。たとえば、図1に見られるように、コンジット23は可変容量チャンバ14に向かって開くことのできる移送ポート26から可変容量チャンバ15に向かって開くことのできる移送ポート27まで延びる。移送ポート26,27は、ハウジング11のピストン部21,22と位置が合い、これらによってそれぞれふさがれた時に閉じる。移送ポート26,27は、ピストン部21,22と位置がずれ、これらによってそれぞれふさがれない時に開いている。
【0053】
コンジット30は往復部材12の中を延び、可変容量チャンバ15内で開くことのできる排出ポート31をエンジン10のエキゾースト32に接続する。図2に見られるように、排出ポート31は移送ポート27,33,34とは直径方向に逆に配置される。
【0054】
図2には、往復部材12の断面が円形であることも示されている。往復部材12の終端部分19,20はそれぞれ、往復軸13と一致する往復部材12の重心軸(中心軸the central axis)から離れた環状壁を備える。終端部分の環状壁19,20の各々は、ハウジング11内に設けられた環状スロット内をスライドすることができる。2つの環状スロット35,36は、ハウジング11の両端にひとつずつ設けられる。環状リングシール37は終端部分19とスロット35との間で機能し、環状リングシール38はスロット36と終端部分20との間で機能する。
【0055】
電気巻線39は、ハウジング11内で往復部材12の周りに巻かれている。電気巻線39は実際に環状であり、往復部材12の円柱形の最も外側の表面に平行に、これに近接して延びる。環状電気巻線39は往復軸13に平行に延び、少なくとも往復部材12の軸方向長さと往復部材12が1往復する移動距離との和に等しい長さを有する。
【0056】
エンジン10は、燃料として圧縮天然ガスを使用する。圧縮天然ガスは、パイプ41によってガス注入部42に接続される加圧コンテナ40に収納される。ガス注入部42は、第二の可変容量チャンバ15への圧縮天然ガスの流れを調整するが、エンジン10は燃料用のポンプ手段を備えず、その代わりに、加圧ガスそのものの圧力に依存している。
【0057】
ハウジング11の第二のピストン部22には切り欠き部43が設けられ、切り欠き部43は、移送ポート27,33,34が開いている時、つまり往復部材12が図1に示す位置にある時、つまり左に移動し、第二の可変容量チャンバ15がその最大容量にある、またはそれに近く、第一の可変容量チャンバ14がその最小容量にある、またはそれに近い時、移送ポート27,33,34付近に位置する。切り欠き部43は、第二の可変容量チャンバ15において燃焼が開始する領域を定める。点火プラグ44は領域43内で動作するよう設置される。
【0058】
ハウジング11は、45,46のような冷却気流入口に設置される。図中の冷却気流入口45,46は弁式の流入口で、冷却用空気をハウジング11に導入するものの、ハウジング11から出さない。これに対し、冷却気排出口77,78がハウジングの反対側に設置される。冷却気ダクト47,48は往復部材12の長さに沿って直線的に延びる。往復部材12が往復すると、冷却気が冷却気流入口45,46から導入され、冷却気ダクト47,48内を通過し、冷却気排出口77,78から押し出される。実際には、排出口78から排気される冷却気はエキゾースト32を通過する排気ガスと混ぜ合わされる。
【0059】
図1及び図2に示すエンジンの動作中、一回の燃焼分の空気は、流体流入口17と一方向入口弁16を通じて第一の可変容量チャンバ14内に導入、すなわち引き込まれる。空気は、第一の可変容量チャンバ14の容量が増す際、つまり往復部材12が図1に示す図の右に移動する際、第一の可変容量チャンバ14の中に引き込まれる。往復部材12が移動して第一可変容量チャンバ14の容量が増えると、一方向入口弁16の前後に圧力差が生じ、これによって空気が第一の可変容量チャンバ14内に入る。空気は、チャンバ14がその最大容量に達するまでチャンバ14内に入り続ける。最大容量になると一方向弁16は閉じ、往復部材12は、チャンバ14の容量が減るよう機能する。
【0060】
移送ポート26は、往復部材12が移動する間ずっと、あるいはその大部分、開いた状態にある。往復部材12がチャンバ14の容量を減らすよう機能すると、チャンバ14内の空気は圧縮され、移送ポート26からコンジット23,24,25の中に移動する。当初、往復部材12がチャンバ14の容量を減らすよう機能すると、移送ポート27,33,34はチャンバ15に向かって開かない。なぜなら、これらはハウジング11のピストン部22によって密閉されるからである。チャンバ14がその最小容量に達し、チャンバ15がその最大容量に達すると、移送ポート23,24,25の覆いがとれ、圧縮空気がチャンバ15に流れ込み、チャンバ15から燃焼ガスが排出ポート31を通じてエキゾースト32に排出される。移送ポート27,33,34から入った空気はまた、エンジン10のための新鮮な投入空気(一回の燃焼分の空気)となる。
【0061】
チャンバ15がその最大容量に達すると、往復部材12の運動方向が変わり、往復部材12はチャンバ15の容量を減らし、チャンバ14の容量を増やすよう機能する。次に、移送ポート27,33,34はピストン部22の周辺表面によって覆われ、閉じられる。続いてエキゾーストポート31がピストン部22によって閉じられる。すると、チャンバ15が閉じ、往復部材12が移動してチャンバ15の容量が減ると、チャンバ15内の空気が圧縮される。
【0062】
排出ポート31が閉じられた時、あるいは排出ポート31が閉じられる少し前のいずれかに、加圧されたガスはチャンバ15に入る。注入部42は加圧されたガスの流入を制御する。
【0063】
チャンバ15内のガスと空気の混合物は、チャンバ15の容量減少によってエキゾーストポート31が閉じられた後、圧縮される。チャンバ15の容量がその最小レベルにある時点、またはその近辺に、点火プラグ44が火花を出し、ガスと空気の混合物に着火する。次に、燃焼したガスと空気の混合物は膨張し、チャンバ15の容量が増えるにつれ、往復部材12を移動させる。その結果、エキゾーストポート31は覆いが外され、膨張する燃焼ガスはエキゾースト32から逃げることができる。燃焼ガスは、移送ポート27,33,34に入る次の燃焼分の空気によって排除され、これまでのサイクル全体が再び始まる。」(段落【0049】ないし【0063】)

(ウ)「 【0066】
往復部材12の往復運動は、電気巻線39によって電気を発生する。電気巻線39は、ライン51上で交流電流正弦波形を発生する電子コントローラ50に接続される。ライン51は電気負荷に接続されている。ライン51は、点火プラグ44の着火を制御し、注入部42による加圧ガスの注入を制御する電子コントローラ52に接続されている。コントローラ52は、ライン51上の信号から、ハウジング11に関する往復部材12の位置を決定する。」(段落【0066】)

(2)引用文献1記載の事項
上記(1)(ア)ないし(ウ)及び図面の記載から、以下の事項がわかる。
内燃エンジン10は、往復部材12が往復して、その往復運動が電気巻線39によって電気を発生させるから、
(エ)内燃エンジン10は往復機関であることがわかる。

往復軸13に沿って直線的に往復運動する往復部材12を挟んで両側に、第一のピストン部21と第二のピストン部22が備えられた構成であるから、
(オ)一対の、静止した、ほぼ同軸に整列した相互に対向するピストンであって、ピストンの周りを往復運動するように構成された往復部材12によって分割されたピストンを備えていることがわかる。

往復運動する往復部材12を挟んで両側に、第一のピストン部21と第二のピストン部22が備えられ、往復部材12とそれぞれのピストン部との間に第一の可変容量チャンバ14と、第二の可変容量チャンバ15が形成された構成であるから、
(カ)往復部材12は、チャンバを規定するためにそれぞれがピストンの一方に動作可能に連結されている二つのキャビティを規定するものであることがわかる。

第一の可変容量チャンバ14内に導入した空気は圧縮されて、その後、第二の可変容量チャンバ15に流れ込み圧縮され、点火プラグにより燃焼する構成であるから、
(キ)第一の可変容量チャンバ14はプレチャージチャンバであり、第二の可変容量チャンバ15は燃焼チャンバであることがわかる。

可変容量チャンバ15に向かって開くことのできる移送ポート27が、可変容量チャンバ14に伸びるコンジット23を介して接続される構成であるから、
(ク)二つのチャンバが移送ポート27で分割されていることがわかる。

(3)引用文献1記載の発明

以上、上記(1)(ア)ないし(ウ)及び(2)(エ)ないし(ク)並びに図面を参酌すると、引用文献1には以下の発明が記載されているといえる。
「2ストローク周期で動作する往復機関において:
一対の、静止した、ほぼ同軸に整列した相互に対向するピストンであって、ピストンの周りを往復運動するように構成された往復部材12によって分割されたピストンと、チャンバを規定するためにそれぞれがピストンの一方に動作可能に連結されている二つのキャビティを規定する往復部材12と、プレチャージチャンバであり、入口弁16を有する第一の可変容量チャンバ14と、燃焼チャンバであり、排出ポート31を有する第二の可変容量チャンバ15を具え、二つのチャンバが移送ポート27で分割されている往復機関。」(以下、「引用発明1」という。)

2-2.引用文献2に記載された発明

(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された特表2003-514185号公報(平成15年4月15日公表。以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

(ア)「 【0031】
図10?図13に、空気源として、上述したように圧縮空気を供給するのではなく別個の吸入シリンダを用いる2シリンダ型3機能(3作用)型内燃機関別の実施形態を概略的に示す。同様の部品には同様の参照符合を付している。
図10?図13に示した実施形態には、好ましくは鉛直に配向された一対の平行なシリンダ、すなわち、吸入シリンダ(全体を100として図示)とパワーシリンダ(全体を200として図示)を具備するエンジンブロック10が含まれている。図10?図13には、鉛直に配向された平行なシリンダとして吸入シリンダ100とパワーシリンダ200とを図示しているが、他の方法として、内燃機関には典型的であるV字型などのように、これらのシリンダを互いに角度をつけて配置することもできる。吸入シリンダ100には、この中を往復移動するように形成された吸入ピストン20が収容されている。これまで通り、この吸入ピストン20を標準のピストンロッド21によりクランクシャフト40に接続している。同様に、パワーシリンダ200には、この中を往復移動するように形成されたパワーピストン30が収容されている。パワーシリンダ200の下方部分付近に、1つ以上の排気孔12が設けられている。このパワーピストン30を標準のピストンロッド31によりクランクシャフト40に接続している。本発明によるこの好適実施形態では、吸入ピストン20を位相合わせしてパワーピストン30より先に140度移動するように、クランクシャフト40を構成する。しかしながら、こうした位相分離を、本発明による相関関係を維持しつつ90?180度の範囲で変更することができる。図10?図13に図示した実施形態では140度の位相差を開示しているが、正確な位相差は、パワーシリンダ200内の排気孔12の位置と、サイクル中の、さらに具体的に言えば下降方向の爆発工程時においてパワーピストン30がまず排気孔12を開いた時点でのパワーピストン30の角度位置との関係によるものであると留意することが重要である。吸入ピストン20とパワーピストン30との間の正確な位相差が、パワーピストン30の下死点(すなわち180度)と360度のサイクル中にパワーピストン30が最初に排気孔12を開く角度位置との間の度数の2倍であると好ましい。このように正確に配置すると、パワーピストン30が排気孔12を閉塞すると同時に、吸入ピストン20が確実に上死点位置に到達して吸入シリンダ100内の空気を最大限に圧縮してその空気全体をパワーシリンダ200に確実に移動させられることがわかっている。こうした構成により、パワーシリンダ200内にある新気の最大量を燃焼に利用可能であることが保証されるため、パワーシリンダ内の残留した燃焼後ガスを再燃焼しなければならない、あるいはエンジンのクランクケースからの汚染排気ガスを燃焼後ガスの一部として用いる従来技術よりも、本発明によるエンジンの効率を上げることができる。
【0032】
吸気孔(全体を11として図示)をエンジンブロック10の一端部に設け、吸入シリンダ100と連通させる。新気プレナムチャンバ(図示せず)により、エンジンサイクルの燃焼後ガスにより汚染されていない新鮮な大気を吸気孔11へ方向付ける。吸気孔11内に収容しているのは、吸入シリンダ内の圧力が弁50の入口側の圧力を下回ると新気をプレナムチャンバから吸入シリンダ内へ移動させる一方向型圧力応答式弁50(以下に詳細を説明)である。
【0033】
最終的にパワーシリンダに向かう空気量を調節するため、吸入シリンダ100の上部付近に、機械的に作動する、あるいは電気機械的に作動する解放弁を任意に設けることができる。この解放弁により、燃焼作用の実施に不当かつ不要である空気を、その空気がパワーシリンダ200内に移動する前に吸入シリンダ100から逃すことができる。したがって、この空気は、燃料や排気により汚染されることなく吸入シリンダ100から放出されるため、環境への影響も何ら問題ない。経済面から別の手法として、こうして押し出された空気を圧力下にて圧縮空気容器内に貯蔵した後、さまざまな種類の車両、船舶および飛行機で利用されている数多くの空気圧付属系統の操作に利用することができる。
【0034】
高温シリンダおよび低温シリンダの「ヘッド」(全体を13として図示)付近でこれらを接続する吸気孔を、吸入シリンダ100とパワーシリンダ200との間に位置付けてこれらの間を連通させる。吸気孔13内には、パワーシリンダ200内の圧力が吸入シリンダ100の圧力を下回ると吸入シリンダ100からパワーシリンダ200内に一定投入量の圧縮新気を移動させる一方向型圧力応答式吸気弁(上記に詳細を説明)60を収容する。
【0035】
1つ以上の排気孔12を、パワーピストン移動の最下部付近である、パワーシリンダ200の側壁に位置付ける。下降ストローク中にパワーピストン30が排気孔12を通過すると、排気孔12を介して排気ガスがパワーシリンダ200から流出し、パワーシリンダ200内の圧力が低下するため、吸気弁60が開き、吸入シリンダ100からパワーシリンダ200内へ新気が流入する。排気孔12が開いた状態で、吸気弁60から新気が流入することにより、残留していた燃焼後ガスがすべてパワーシリンダ200から掃き出される。パワーピストン30が上昇すると排気孔12が閉塞されるため、残留している新気は封入されて、次の燃焼作用に使用される。
【0036】
燃料注入孔70をパワーシリンダ200の頂部に設ける。上述したように、本発明の構造は、空気/燃料の混合気が圧縮時に加熱された結果、パワーシリンダ200内に燃焼動作が起こる高圧縮エンジンとして使用することを目的としている。別の方法として、グロープラグあるいはスパークプラグ(図示せず)を、燃料注入孔70に隣接するパワーシリンダ200頂部に設けて、燃焼作用をさらに促進してもよい。
【0037】
2シリンダ式実施形態では、本発明による3機能型掃気、圧縮、および爆発方法を以下のように2ストロークのみで行なう。まず、吸入ピストン20が上死点(TDC)位置にある図13を参照すると、吸入ピストン20の次の動作は吸入シリンダ100内を通る下降である。この時点でのパワーピストン30の位置は、その上昇移動時にあって、図13のグラフに図示するようにTDC位置からおよそ220°あるいは140°である。この時点でパワーピストン30は排気孔12を丁度閉じたところであるため、パワーシリンダ200内に残留している新気はすべて、パワーピストン30が上昇ストロークを先に行くにしたがって圧縮されることに留意することも重要である。」(段落【0031】ないし【0037】)

(イ)「 【0041】
図11に示したピストン配置の直後、パワーピストン30の上縁部は排気孔12の頂部を通過するため、排気ガスがパワーシリンダ200から放出され始める。それまで排気孔12にかかっていたパワーシリンダ200内の圧力が突然解放されるため、図12にさらに具体的に示すように圧力応答式吸気弁60が開く。パワーピストン30がそのBDC位置手前およそ40°(図11に図示)からそのBDC位置まで移動する間、吸入ピストン20はその上昇ストロークを続け、吸気弁50は開口したままの状態となる。パワーピストン30が排気孔12を露出している間、パワーピストン30は、移動距離全体のおよそ11.8%であるその下降ストロークの残り部分を移動した後、上昇ストロークに転じ、移動距離全体のおよそ11.8%を戻って再度排気孔12を閉塞する。この上昇速度は、吸入ピストン20の上昇速度に比べると比較的遅く、吸入ピストン20はその間にそのTDC位置に到達するまでの移動距離全体のおよそ40.5%を上昇するため、吸入シリンダ100内に残留している空気をさらに圧縮すると同時にこれをパワーシリンダ200内へと方向付ける。排気孔12が開口した状態のまま、吸入シリンダ100からパワーシリンダ200へと新気が連続して流入するため、排気孔12が再度シールされるまで、パワーシリンダ200内に残留している燃焼後ガスをすべてパワーシリンダ200から確実に一掃することができる。
【0042】
再度図13を参照すると、吸入ピストン20がそのTDC位置に到達した時点で、パワーシリンダ30がそのBDC位置を40°通過した位置に到達して排気孔12が再度閉塞される。排気孔12が再度閉塞されると、吸気弁60を介して吸入シリンダ100からパワーシリンダ200内に通過してきたばかりの低温空気がパワーシリンダ200の表面全体およびパワーピストン30の上端部から熱を吸収するため、その圧力が上昇して吸気弁60を閉塞する。パワーピストン30は上昇ストロークを続けてパワーシリンダ200内に残留してこれを飽和している新気を圧縮し、吸入ピストン20は吸入行程を開始する。こうした構成により、パワーシリンダ200内に高圧状態が形成されて、圧力応答式吸気弁60が自動的に閉じる。
【0043】
上記に簡単に説明したように、弁50および60の双方を、およそ1psiの差圧に反応して自動的に開く圧力応答式弁として形成する。このように容易に反応する弁を提供するには、図5?図8にさらに具体的に図示するように、弁50および60に、弁座筐体10と、弁座筐体10の中空内部を往復移動して、1psiというわずかな弁両側の差圧に反応して自動的に開閉するように形成された摺動子弁部材20とを具備する。」(段落【0041】ないし【0043】)

(2)引用文献2記載の事項
上記(1)(ア)及び(イ)並びに図10の記載から、以下の事項がわかる。
内燃機関が、吸入シリンダ100とパワーシリンダ200を有し、吸入シリンダ100には、この中を往復移動するように形成された吸入ピストン20が収容されており、パワーシリンダ200には、この中を往復移動するように形成されたパワーピストン30が収容されており、吸入シリンダ100内の空気を吸入ピストン20が圧縮してその空気全体をパワーシリンダ200に移動させているから、
(ウ)内燃機関は、プレチャージチャンバであり、吸気孔11を有する第1のチャンバと、燃焼チャンバであり、排気孔12を有する第2のチャンバを具えていることがわかる。

(3)引用文献2記載の発明

以上、上記(1)(ア)及び(イ)並びに(2)(ウ)及び図面を参酌すると、引用文献2には以下の発明が記載されているといえる。

「掃気、圧縮、および爆発方法を2ストロークのみで行なう内燃機関において:
ピストンと、プレチャージチャンバであり、吸気孔11を有する第1のチャンバと、燃焼チャンバであり、排気孔12を有する第2のチャンバを具え、二つのチャンバが一方向型圧力応答式吸気弁60で分割されている内燃機関。」(以下、「引用発明2」という。)

3.対比
本願発明と引用発明1を対比すると、引用発明1における「周期」は、その機能及び構成からみて、本願発明における「サイクル」に相当し、以下、同様に、「往復部材12」は「スリーブ」及び「往復スリーブ」のそれぞれに、「入口弁16」は「入口ポート」に、「第一の可変容量チャンバ14」は「第1のチャンバ」に、「排出ポート31」は「出口ポート」に、「第二の可変容量チャンバ15」は「第2のチャンバ」に、それぞれ相当する。

また、引用発明1における「入口弁16を有する第一の可変容量チャンバ14」という構成は、第一の可変容量チャンバ14は少なくとも一の入口弁16を有した構成であるので、本願発明における「少なくとも一の入口ポートを有する第1のチャンバ」に相当する。さらに、引用発明1における「排出ポート31を有する第二の可変容量チャンバ15」という構成は、第二の可変容量チャンバ15は少なくとも一の排出ポート31を有した構成であるので、本願発明における「少なくとも一の出口ポートを有する第2のチャンバ」に相当する。

したがって、両者は、
「2ストロークサイクルで動作する往復機関において:
一対の、静止した、ほぼ同軸に整列した相互に対向するピストンであって、ピストンの周りを往復運動するように構成されたスリーブによって分割されたピストンと、チャンバを規定するためにそれぞれがピストンの一方に動作可能に連結されている二つのキャビティを規定する往復スリーブと、プレチャージチャンバであり、少なくとも一の入口ポートを有する第1のチャンバと、燃焼チャンバであり、少なくとも一の出口ポートを有する第2のチャンバを具えた往復機関。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
(1)本願発明においては、二つのチャンバが動力分配バルブで分割されているのに対し、引用発明1においては、二つのチャンバが移送ポート27で分割されている点(以下、「相違点1」という。)。

(2)本願発明においては、スリーブの周囲に位置する回転可能な出力部材の上のトラック上で動作するように構成された駆動部材がスリーブに設けられており、トラックが、機関の使用時に、スリーブの往復運動を回転可能な出力部材の回転運動に変換できるように構成されているのに対し、引用発明1においては、そのような構成を有さない点(以下、「相違点2」という。)。

4.判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
本願発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2における「掃気、圧縮、および爆発方法を2ストロークのみで行なう内燃機関」は、その機能及び構成からみて、本願発明における「2ストロークサイクルで動作する往復機関」に相当し、以下、同様に、「吸気孔11」は「入口ポート」に、「排気孔12」は「出口ポート」に、「一方向型圧力応答式吸気弁60」は「動力分配バルブ」に、それぞれ相当する。

したがって、引用発明2を本願発明の用語を用いて表現すると、
「2ストロークサイクルで動作する往復機関において:
ピストンと、プレチャージチャンバであり、入口ポートを有する第1のチャンバと、燃焼チャンバであり、出口ポートを有する第2のチャンバを具え、二つのチャンバが動力分配バルブで分割されている内燃機関。」といえる。

引用発明1と引用発明2は、いずれも2ストロークサイクルで動作する往復機関という同一の技術分野に属しており、且つ、いずれもプレチャージチャンバと燃焼チャンバの二つのチャンバが分割されたものであるので、引用発明1において、引用発明2を適用して、二つのチャンバが動力分配バルブで分割されているようにすることにより、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。

(2)相違点2について
往復動部材に設けられた駆動部材が、周囲に位置する回転部材のトラック上で動作することにより往復運動を回転運動へ変換するように構成された運動変換機構は周知の技術(例えば、特公昭49-29964号公報の第3図、特開昭55-142901号公報の第1図、特開昭58-65937号公報の第4図等を参照のこと。以下、「周知技術」という。)であることを参酌すれば、引用発明1において、上記周知技術を適用して、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。

また、本願発明を全体としてみても、引用発明1及び2並びに周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するとも認められない。
以上から、本願発明は、引用発明1及び2並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-11-18 
結審通知日 2011-11-22 
審決日 2011-12-27 
出願番号 特願2006-541072(P2006-541072)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (F01B)
P 1 8・ 121- Z (F01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石黒 雄一  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 金澤 俊郎
川口 真一
発明の名称 往復機関  
代理人 柏原 三枝子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ