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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F28F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28F |
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管理番号 | 1257078 |
審判番号 | 不服2011-23382 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-31 |
確定日 | 2012-05-14 |
事件の表示 | 特願2006-77238号「熱交換器用伝熱管」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月4日出願公開、特開2007-255733号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年3月20日の出願であって、平成23年7月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年10月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成23年10月31日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年10月31日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により請求項1は、次のように補正された。 「内周面にコルゲートフィンを内挿してなる熱交換器用伝熱管であって、前記コルゲートフィンが金属製薄板からなり、その断面形状が波形形状を含む略矩形のチャンネル形状であって、その長手方向には直線状若しくは所定のピッチ間隔でうねりを有する波形に形成され、該伝熱管の内周面または該内周面に接する前記コルゲートフィンにおける上下の頂部においてろう付によって接合され、かつ該伝熱管の断面形状が、略長円形のレーストラック形状の偏平管である熱交換器用伝熱管において、前記コルゲートフィンにおける上下の頂部のいずれかに、若しくはその双方にそれぞれ粗面加工が施され、該粗面部を以って相互にろう付によって接合された熱交換器用伝熱管。」(下線は補正箇所。) 2.補正の目的 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「伝熱管の断面形状」について、「略長円形のレーストラック形状の偏平管または略長方形を含む矩形の偏平管」とあったものを「略長円形のレーストラック形状の偏平管」として、択一的記載の要素を削除するとともに、記載を明確にしたものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3-1.引用例の記載事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、特開2004-263616号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア 「【発明の属する技術分野】 本発明は、自動車等の排ガス再循環装置(EGR)に用いる排ガス冷却用クーラであって、それを構成する多数の偏平チューブの夫々に関する。」(段落【0001】、下線は当審で付与。以下、同様。) イ 「【課題を解決するための手段】 請求項1に記載の本発明は、開口側が互いに整合する浅い溝形に形成され、その溝底が互いに対向するように嵌着されて、その嵌着部がろう付けされ、内部に偏平な流路を形成する一対の第1プレート(1)と第2プレート(2)と、 前記偏平な流路に挿入され、横断面波形に曲折形成され、その厚み方向の両端面が両プレート(1)(2)内面にろう付けされたインナーフィン(3)と、を具備し、 夫々のプレート(1)(2)には、その幅方向に沿って内面側に凹陥または突出する乱流形成部(4)が設けられ、多数のその乱流形成部(4)が長手方向に互いに離間して並列されたEGRクーラ用の偏平チューブである。」(段落【0006】) ウ 「【発明の実施の形態】 次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。 図1は本発明の偏平チューブ5の分解斜視図であり、図2はその組立て状態を示す平面図、図3は図2のIII-III矢視断面における要部拡大図である。また、図4は本偏平チューブ5におけるインナーフィン3の平面波形状と、第1プレート1,第2プレート2における乱流形成部4との相対位置を示す説明図である。 この偏平チューブ5は、開口側が互いに整合する浅い溝形に形成された一対の第1プレート1と第2プレート2とを有し、その内部にインナーフィン3が挿入される。 インナーフィン3はこの例では、金属板を横断面波形に曲折形成すると共に、その夫々の波の稜線3a(谷線を含む)が平面波形に曲折したものである。そしてその全幅および全長は、第1プレート1,第2プレート2のそれに略整合する。・・・」(段落【0010】、【0011】) そして、上記記載イによれば、偏平チューブは第1プレート(1)と第2プレート(2)により形成され、インナーフィン(3)の厚み方向の両端面が両プレート(1)(2)内面にろう付けされるものであるから、偏平チューブの内面にインナーフィン(3)の厚み方向の両端面がろう付けされるということができる。また、図3の偏平チューブの断面図によれば、偏平チューブの断面形状は略長円形のレーストラック形状ということができる。 上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「内部にインナーフィン3が挿入されるEGRクーラ用の偏平チューブ5であって、前記インナーフィン3が金属板からなり、その横断面波形は曲折形成され、その波の稜線3a(谷線を含む)が平面波形に曲折され、該偏平チューブ5の内面にインナーフィン3の厚み方向の両端面がろう付され、かつ該偏平チューブの断面形状は略長円形のレーストラック形状であるEGRクーラ用の偏平チューブ5。」 (2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された、特開平2-290668号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア 「[産業上の利用分野] 本発明はチューブエレメントと、このチューブエレメントを用いた積層型熱交換器の製造方法に関する。」(1ページ右下欄3?6行) イ 「第2図は第1図のチューブエレメント11の構成を示す正面図である。チューブエレメント11は一対のアルミ板21をプレス成型した後、相互にろう付けして構成する。」(2ページ左下欄3?6行) ウ 「次に、このようにプレス成形した2枚のアルミ板21を互いにろう付けするに際しては、相互にろう付けすべき膨出面すなわちリブ26、および周縁部25を研磨紙を用いて粗面加工した後、非腐食性フラックスを塗布してろう付けする。このように相互にろう付けすべき膨出面を粗面加工することにより、非腐食性フラックスが均一に塗布できろう付け不良を無くすことかできる。」(2ページ右下欄14行?3ページ左上欄1行) 上記記載事項を総合すると、引用例2には、次の事項が記載されている。 「熱交換器の製造において、ろう付不良を無くすために、2枚のアルミ板21を互いにろう付してチューブエレメント11を構成するに際して、相互にろう付すべき膨出面を粗面加工した後、非腐食性フラックスを塗布してろう付すること。」 3-2.対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「内部にインナーフィン3が挿入されるEGRクーラ用の偏平チューブ5」は、本願補正発明の「内周面にコルゲートフィンを内挿してなる熱交換器用伝熱管」に相当し、以下同様に、 「インナーフィン3が金属板からなり」は「コルゲートフィンが金属製薄板からなり」に、 「その横断面波形は曲折形成され」は「その断面形状が波形形状を含む略矩形のチャンネル形状であって」に、 「その波の稜線3a(谷線を含む)が平面波形に曲折され」は「その長手方向には直線状若しくは所定のピッチ間隔でうねりを有する波形に形成され」に、 「偏平チューブ5の内面にインナーフィン3の厚み方向の両端面がろう付けされ」は「伝熱管の内周面または該内周面に接する前記コルゲートフィンにおける上下の頂部においてろう付によって接合され」に、 「偏平チューブの断面形状は略長円形のレーストラック形状」は「伝熱管の断面形状が、略長円形のレーストラック形状」に、それぞれ相当する。 そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「内周面にコルゲートフィンを内挿してなる熱交換器用伝熱管であって、前記コルゲートフィンが金属製薄板からなり、その断面形状が波形形状を含む略矩形のチャンネル形状であって、その長手方向には直線状若しくは所定のピッチ間隔でうねりを有する波形に形成され、該伝熱管の内周面または該内周面に接する前記コルゲートフィンにおける上下の頂部においてろう付によって接合され、かつ該伝熱管の断面形状が、略長円形のレーストラック形状の偏平管である熱交換器用伝熱管。」 そして、両者は次の点で相違する。 (相違点) 本願補正発明では「コルゲートフィンにおける上下の頂部のいずれかに、若しくはその双方にそれぞれ粗面加工が施され、該粗面部を以って相互にろう付によって接合され」るのに対して、引用発明では、「インナーフィン3の厚み方向の両端面がろう付され」るものの、ろう付面についてはどのような面であるのか不明な点。 3-3.相違点の判断 引用例2には、上記「3-1(2)」のとおり、「熱交換器の製造において、ろう付不良を無くすために、2枚のアルミ板21を互いにろう付してチューブエレメント11を構成するに際して、相互にろう付すべき膨出面を粗面加工した後、非腐食性フラックスを塗布してろう付すること。」が記載されており、ろう付不良を無くすために、ろう付面を粗面加工することが開示されている。 そして、引用例2に記載の事項は熱交換器の製造の際のろう付に関するものであり、しかも、ろう付不良を無くすことは一般的な課題であるから、コルゲートフィンを伝熱管の内面にろう付する際にその適用を阻害する事由もなく、引用例2に記載の事項を適用して相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことといわざるをえない。 そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び引用例2に記載の事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 なお、請求人は、回答書において、伝熱管を特定した補正案を提示しているが、伝熱管は本願補正発明の特徴(ろう付)と密接な関係はなく、伝熱管を特定しても進歩性を肯定することはできない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-4.むすび 以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年4月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「内周面にコルゲートフィンを内挿してなる熱交換器用伝熱管において、前記コルゲートフィンが金属製薄板からなり、その断面形状が波形形状を含む略矩形のチャンネル形状であって、その長手方向には直線状若しくは所定のピッチ間隔でうねりを有する波形に形成され、該伝熱管の内周面または該内周面に接する前記コルゲートフィンにおける上下の頂部のいずれかに、若しくはその双方にそれぞれ粗面加工が施され、該粗面部を以って相互にろう付によって接合され、かつ該伝熱管の断面形状が、略長円形のレーストラック形状の偏平管または略長方形を含む矩形の偏平管であることを特徴とする熱交換器用伝熱管。」 2.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2」「3-1.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2」「1.」の本願補正発明において、「伝熱管の断面形状」についての択一的記載の要素(略長方形を含む矩形の偏平管)を付加したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本願補正発明が、前記「第2」「3-3.」に記載したとおり、引用発明及び引用例2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び引用例2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-22 |
結審通知日 | 2012-03-23 |
審決日 | 2012-04-03 |
出願番号 | 特願2006-77238(P2006-77238) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F28F)
P 1 8・ 121- Z (F28F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤原 直欣 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
長崎 洋一 青木 良憲 |
発明の名称 | 熱交換器用伝熱管 |
代理人 | 押田 良隆 |