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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1258012
審判番号 不服2011-18168  
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-23 
確定日 2012-06-07 
事件の表示 特願2000- 71273「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月25日出願公開、特開2001-259171〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯等
本願の手続の経緯概要は以下のとおりである。
平成12年 3月14日 出願
平成14年 4月30日 手続補正(自発)
平成21年12月 7日 拒絶理由通知
平成22年 2月12日 手続補正
平成22年 8月20日 拒絶理由通知(最後)
平成22年10月21日 手続補正A
平成23年 5月19日 補正却下(手続補正A)、拒絶査定
平成23年 8月23日 本件審判請求、手続補正
平成23年11月15日 審尋
平成24年 1月19日 回答書

第2.平成23年8月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年8月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成22年10月21日付けの手続補正は平成23年5月19日付けで却下されているので、本件補正は平成22年2月12日付け手続補正により補正された明細書及び図面を補正するものであって、その補正の前後の特許請求の範囲は以下のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】 複数の図柄を表示可能な図柄表示装置を設け、所定条件の成立によりその図柄表示装置の図柄が変動を開始し、所定時間経過後に停止表示され、当該停止表示された図柄が所定の大当たり図柄である場合には、遊技者にとって有利となる特別遊技状態が生起する遊技機であって、
前記図柄表示装置に変動表示されている図柄が遊技者に視認不可能に消滅表示された後、再び遊技者に視認可能に表示された時には大当たり図柄が停止表示されることを特徴とする遊技機。
【請求項2】 前記消滅表示が変動開始時から変動停止時までの任意のタイミングで発生することを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】 前記消滅表示を音により告知することを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。
【請求項4】 前記消滅表示を遊技盤上に設けた電飾の点灯及び/又は点滅により告知することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の遊技機。」

(補正後)
「【請求項1】 複数の図柄を表示可能な図柄表示装置を設け、所定条件の成立によりその図柄表示装置の図柄が変動を開始し、所定時間経過後に停止表示され、当該停止表示された図柄が所定の大当たり図柄である場合には、遊技者にとって有利となる特別遊技状態が生起する遊技機であって、
前記図柄表示装置に変動表示されている全図柄が、はずれ図柄で一旦停止され、その後、遊技者に視認不可能に消滅表示された後、再び遊技者に視認可能に表示された時には大当たり図柄が停止表示され、 前記消滅表示を音により告知し、 前記消滅表示を遊技盤上に設けた電飾の点灯及び/又は点滅により告知することを特徴とする遊技機。」

上記補正は、補正前請求項1?3を削除し、補正前請求項1を引用する補正前請求項3を更に引用する補正前請求項4を独立記載形式として新たな請求項1とした上で、「図柄が遊技者に視認不可能に消滅表示」を「全図柄が、はずれ図柄で一旦停止され、その後、遊技者に視認不可能に消滅表示」と限定するものであり、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項1号の請求項の削除及び2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献
当審で発見した特開平11-244479号公報(公開日:平成11年9月14日)(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

【0018】図1は、遊技機の一例のパチンコ遊技機の遊技盤面を示す正面図である。・・・発射されたパチンコ玉(打玉)は区画レール2の間を通って、遊技盤1の前面に形成された遊技領域3内に打込まれる。
【0019】遊技領域3内には、図柄等からなる複数種類の識別情報を可変表示して表示状態が変化可能な可変表示装置として、特別図柄用可変表示装置24および飾り図柄用可変表示装置4の2種類の装置が設けられている。
【0031】始動条件が成立すれば、特別図柄用可変表示装置24において、左,中,右特別図柄可変表示部で一斉に可変表示が開始される。特別図柄用可変表示装置24で可変表示が開始されるのと同時に、飾り図柄用可変表示装置4においても飾り図柄表示部5a?5iの各々において飾り図柄が一斉にスクロール表示されることにより可変表示が開始される。その後、飾り図柄表示部5a?5iを含む画像表示部5で演出効果を高めるための可変表示やキャラクタの表示が行なわれた後、飾り図柄表示部5a?5iの最終的な表示結果が表示される。・・・
【0039】・・・そして、横方向3行の3本と、縦方向3列の3本と、斜め対角線上の2本との合計8本の入賞ライン(1)?(8)のうちの、少なくともいずれか1つの入賞ライン上において、「777」の飾り図柄のゾロ目が揃うか、あるいは、飾り図柄表示部5a?5iのすべてに所定の関連性を有するフルーツ図柄が表示された場合(オールフルーツという)に大当たり状態が発生する。・・・
【0054】 ・・・基本回路31は、ランプ回路40を介して、サイドランプ22および風車ランプ21等のこのパチンコ遊技機に設けられた各種ランプ43を点灯または点滅表示させる制御を行なう。
【0058】基本回路31は、遊技状態に応じて、音声合成回路47を介して音量増幅回路48に音制御用信号を出力する。音量増幅回路48からは、増幅された音制御用信号が出力され、パチンコ遊技機に設けられたスピーカ等から音が発せられる。この音制御用信号としては、左のスピーカ制御用の音出力(L)と、右スピーカ制御用の音出力(R)とが出力され、それらの出力に基づいて、スピーカからステレオ音が発せられる。
【0091】図8を参照して、第1グループの飾り図柄表示部(5a,5f,5h)に可変表示される飾り図柄(1,6,8)について説明する。たとえば、飾り図柄表示部5aには、飾り図柄1が図示最下段から上段に向かう順序で可変表示される。図柄は、図示最下段から上段に向かう順序でそれぞれ、小さな菱形の図形からなるブランク図柄、星型図柄、数字図柄7、フルーツ図柄の一例のリンゴ図柄、…である。同様に、飾り図柄表示部5fでは飾り図柄6が図示最下段から上段に向かう順序で飾り図柄表示部5aの可変表示と連動して可変表示され、同じく飾り図柄表示部5hでは飾り図柄8が図示最下段から上段に向かう順序で飾り図柄表示部5aの可変表示と連動して可変表示される。
【0095】図8?図10に示した各図柄のうち、数字図柄7が大当たり図柄である。また、ブランク図柄と星型図柄とが外れ図柄であるが、このうち星型図柄は前述した再変動図柄である。その他の各種フルーツ図柄は、前述したオールフルーツによる大当たりを発生させることのできる図柄である。・・・
【0111】・・・なお、マスクのトーンは、完全にマスク背部の飾り図柄表示部の表示状態が隠れるようなものであってもよく、また、視認可能なトーンであってもよい。
【0126】(8) 再変動後、キャラクタが出現してオール7が発生する場合(すべての入賞ラインに再変動図柄が出揃う場合)
まず、飾り図柄表示部5a?5iで飾り図柄の一斉変動が開始した後(図20(a)、第1グループの飾り図柄表示部(5a,5f,5h)、第2グループの飾り図柄表示部(5b,5d,5i)、第3グループの飾り図柄表示部(5c,5e,5g)の順に可変表示が終了する(図20(b)?図16(d))。そして、すべての入賞ライン(1)?(8)に再変動図柄が出揃った状態で外れの結果が一旦表示される。なお、この際には再変動図柄は準停止の状態にある。
【0127】すべての入賞ライン(1)?(8)に再変動図柄が出揃った場合には常に再変動制御が実行される。まず、すべての飾り図柄表示部にマスクが施される(図20(e))。施されるマスクの種類は、先の(5)、(6)の場合と同様である。
【0128】次に、すべての飾り図柄表示部5a?5iで飾り図柄の一斉変動が開始される(図20(f))。やがて、所定時間経過後、所定のキャラクタ71aが画像表示部5に出現し(図20(g))、続いて出現したキャラクタ71aによる所定の変身動作が表示される(図20(h))。
【0130】やがて所定時間の経過後、飾り図柄表示部5a?5iの可変表示がすべて同時に終了し、すべての飾り図柄表示部5a?5iに大当たり図柄が出揃って「オール7」の表示状態となるとともにマスクの表示が解除されてすべての飾り図柄表示部5a?5iの表示結果が容易に視認可能になる(図21(b),図21(c))。なお、キャラクタ71aが変身に成功した場合であっても、所定の確率で表示結果が外れとなる場合もあるが、ここではその表示内容の説明を省略する。

以上を含む全記載及び図示によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。なお、段落【0111】には「なお、マスクのトーンは、完全にマスク背部の飾り図柄表示部の表示状態が隠れるようなものであってもよく、また、視認可能なトーンであってもよい。」と選択的に記載されているが、以下においては「マスクのトーンは、完全にマスク背部の飾り図柄表示部の表示状態が隠れる」場合を採用する。また、段落【0130】の「なお、キャラクタ71aが変身に成功した場合であっても、所定の確率で表示結果が外れとなる場合もある」との記載によれば、表示結果として「大当たり」に加えて「外れ」があることは自明である。

「ブランク図柄、星型図柄、数字図柄7、フルーツ図柄からなる飾り図柄を可変表示する飾り図柄用可変表示装置4を設け、始動条件が成立すれば、飾り図柄用可変表示装置4において飾り図柄の可変表示が開始され、その後、最終的な表示結果が表示され、少なくともいずれか1つの入賞ライン上において、「777」の飾り図柄のゾロ目が揃うか、あるいは、飾り図柄表示部5a?5iのすべてに所定の関連性を有するフルーツ図柄が表示された場合に大当たり状態が発生する遊技機であって、
飾り図柄用可変表示装置4において、すべての入賞ライン(1)?(8)に再変動図柄が出揃った状態で外れの結果が一旦表示され、その後、すべての飾り図柄表示部に完全に表示状態が隠れるマスクが施された後、大当たり図柄が出揃って「オール7」の表示状態となるか又は外れの表示状態となるとともにマスクの表示が解除されてすべての表示結果が容易に視認可能とされ、
基本回路31は、遊技状態に応じて、音声合成回路47を介して音量増幅回路48に音制御用信号を出力して、遊技機に設けられたスピーカ等から音が発せられ、
基本回路31は、ランプ回路40を介して、遊技機に設けられた各種ランプ43を点灯または点滅表示させる制御を行なう、
遊技機。」(以下、「引用発明1」という。)

3.対比
本願補正発明と引用発明1を対比する。
引用発明1の「ブランク図柄、星型図柄、数字図柄7、フルーツ図柄からなる飾り図柄」は本願補正発明の「複数の図柄」に相当し、以下同様に、
「飾り図柄用可変表示装置4」は「図柄表示装置」に、
「始動条件が成立すれば」は「所定条件の成立により」に、
「可変表示が開始され」は「図柄が変動を開始し」に、
「その後、最終的な表示結果が表示され」は「所定時間経過後に停止表示され」に、
「少なくともいずれか1つの入賞ライン上において、「777」の飾り図柄のゾロ目が揃うか、あるいは、飾り図柄表示部5a?5iのすべてに所定の関連性を有するフルーツ図柄が表示された場合」は「停止表示された図柄が所定の大当たり図柄である場合」に、
「大当たり状態が発生する」は「遊技者にとって有利となる特別遊技状態が生起する」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明1の「飾り図柄用可変表示装置4において、すべての入賞ライン(1)?(8)に再変動図柄が出揃った状態で外れの結果が一旦表示され、その後、すべての飾り図柄表示部に完全に表示状態が隠れるマスクが施された後、大当たり図柄が出揃って「オール7」の表示状態となるか又は外れの表示状態となるとともにマスクの表示が解除されてすべての表示結果が容易に視認可能とされ、」について検討する。
「すべての入賞ライン(1)?(8)に再変動図柄が出揃った状態」は、変動表示されている全図柄が「再変動図柄」で停止された状態であって、その後に再変動が行われるものであるから、その「停止」は「一旦停止」ということができる。また、「再変動図柄」は「星型図柄」であって、「外れ図柄」である(段落【0095】参照)。更に、「完全に表示状態が隠れるマスクが施され」ることにより図柄は「遊技者に視認不可能に消滅」になり、「大当たり図柄が出揃って「オール7」の表示状態となるか又は外れの表示状態となるとともにマスクの表示が解除されてすべての表示結果が容易に視認可能」となることにより「再び遊技者に視認可能に表示された時には大当たり図柄が揃って停止表示されるか又は外れの表示状態が表示される」ものである。
そうすると、再び遊技者に視認可能に表示された時の停止図柄が「大当たり図柄」のみであるか「大当たり図柄」に加えて「はずれ図柄」を含むかは別として、引用発明1と本願補正発明は、「前記図柄表示装置に変動表示されている全図柄が、はずれ図柄で一旦停止され、その後、遊技者に視認不可能に消滅表示された後、再び遊技者に視認可能に表示された時には停止図柄が停止表示され」る点で共通している。
更に、引用発明1は「基本回路31は、遊技状態に応じて、音声合成回路47を介して音量増幅回路48に音制御用信号を出力して、遊技機に設けられたスピーカ等から音が発せられ、基本回路31は、ランプ回路40を介して、遊技機に設けられた各種ランプ43を点灯または点滅表示させる制御を行なう」ものであるから、消滅表示を告知するか否かは別として、引用発明1と本願補正発明は「音発生手段及び電飾点灯/点滅手段を具備する」点で共通している。

以上により、本願補正発明と引用発明1は、
「複数の図柄を表示可能な図柄表示装置を設け、所定条件の成立によりその図柄表示装置の図柄が変動を開始し、所定時間経過後に停止表示され、当該停止表示された図柄が所定の大当たり図柄である場合には、遊技者にとって有利となる特別遊技状態が生起する遊技機であって、
前記図柄表示装置に変動表示されている全図柄が、はずれ図柄で一旦停止され、その後、遊技者に視認不可能に消滅表示された後、再び遊技者に視認可能に表示された時には停止図柄が停止表示され、
音発生手段及び電飾点灯/点滅手段を具備する、遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
再び遊技者に視認可能に表示された時に停止表示される停止図柄が、本願補正発明では、大当たり図柄であるのに対し、引用発明2では大当たり図柄又ははずれ図柄である点。
<相違点2>
音発生手段が、本願補正発明では、消滅表示を音により告知するものであるのに対し、引用発明1ではそのようなものでない点。
<相違点3>
電飾点灯/点滅手段が、本願補正発明では、消滅表示を遊技盤上に設けた電飾の点灯及び/又は点滅により告知するものであるのに対し、引用発明1ではそのようなものでない点。

4.判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
従来よりパチンコ遊技機において、特定の演出を行うと必ず大当たりとする(大当たり図柄を停止表示させる)ことは、従来周知技術Aである。一例を挙げれば、1996年に販売された「CRモンスターハウス」では、ノーマルリーチ中にいきなり地中から手が出る演出があり、この演出が行われると100%大当たりとなるものであり、この演出は有名なものである。
そうすると、引用発明1において上記周知技術Aを採用し、再び遊技者に視認可能に表示された時の可変表示結果として大当たり図柄のみを表示させるようにし、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者であれば容易になし得たことである。
(2)相違点2について
遊技機においては、リーチ発生、大当たり発生など遊技状態に応じて音を変化させることは慣用技術であって、これは音によってその遊技状態の変化を遊技者に告知するものといえる。そうすると、引用発明1において上記慣用技術を採用して、遊技状態の変化である図柄の消滅時に音を変化させてそれを告知するようにし、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
また、仮に、そうでないとしても、下記周知例1、2、3に示されるように、再変動を音により告知することは従来周知技術Bと認められるから、引用発明1において周知技術Bを採用して、再変動時の消滅表示を音によって告知するようにし、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者であれば容易になし得たことである。
(3)相違点3について
遊技機においては、リーチ発生、大当たり発生など遊技状態に応じて電飾の点灯及び/又は点滅の状態を変化させることは慣用技術であって、これは電飾の点灯及び/又は点滅の状態によってその遊技状態の変化を遊技者に告知するものといえる。そうすると、引用発明1において上記慣用技術を採用して、遊技状態の変化である図柄の消滅時に電飾の点灯及び/又は点滅の状態を変化させてそれを告知するようにし、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
また、仮に、そうでないとしても、下記周知例3、4に示されるように、再変動表示を遊技盤上に設けた電飾の点灯及び/又は点滅により告知することは従来周知技術Cと認められるから、引用発明1において周知技術Cを採用して、再変動時の消滅表示を遊技盤上に設けた電飾の点灯及び/又は点滅により告知するようにし、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは当業者であれば容易になし得たことである。
<周知例1>特開2000-61044号公報
段落【0030】には「・・・第10リーチ音は変動パターン9での 変動中に全第1図柄が再変動前の一時停止から再変動の開始に合わせて 出力するようにプログラムされている。」と記載されている。
<周知例2>特開平11-262565号公報
段落【0103】には「・・・再可変表示制御がなされる前の予告表 示として・・・また、この際に所定の効果音がスピーカ34から発せら れるように構成してもよい。」と記載されている。
<周知例3>特開平11-156015号公報
段落【0044】には「・・・また、盤面や枠に設けた装飾ランプ類 の点灯表示乃至効果音を再変動パターンによって変えてもよい。・・・ 」と記載されている。
<周知例4>特開平11-276679号公報
段落【0057】には「再変動表示を開始する可変表示器を報知する ようにしたが、これに限らず、各シンボル表示窓18a,18b,18 cの窓枠や上下位置に発光ダイオードなどの表示器を配備して、この種 の報知を行っても良い。」と記載されている。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明1、上記周知技術A及び上記慣用技術又は上記周知技術B、Cに記載された技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明1、上記周知技術A及び上記慣用技術又は上記周知技術B、Cに記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明
1.本願発明の認定
平成23年8月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年2月12日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 複数の図柄を表示可能な図柄表示装置を設け、所定条件の成立によりその図柄表示装置の図柄が変動を開始し、所定時間経過後に停止表示され、当該停止表示された図柄が所定の大当たり図柄である場合には、遊技者にとって有利となる特別遊技状態が生起する遊技機であって、
前記図柄表示装置に変動表示されている図柄が遊技者に視認不可能に消滅表示された後、再び遊技者に視認可能に表示された時には大当たり図柄が停止表示されることを特徴とする遊技機。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由(平成22年8月20日付け拒絶理由通知書参照)に引用された特開2000-61078号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

【0017】図1は、本発明に係る遊技機の一例のパチンコ遊技機1の正面図である。パチンコ遊技機1の遊技盤には、遊技領域3が形成されている。・・・
【0018】遊技領域3の中央には、複数種類の識別情報としての特別図柄を可変表示させることが可能な可変表示装置4が設けられている。・・・
【0021】・・・この始動口9に入賞した始動入賞球は後述する始動球検出器34により検出され、その検出出力に基づいて可変表示装置4が可変開始される。
【0022】この可変表示装置4は、たとえばCRT表示器53で構成されており、画像表示部5が設けられている。この画像表示部5においては、表示画面の左から右へ並ぶ左可変表示部と中可変表示部と右可変表示部との3つの可変表示部が表示される。各可変表示部においては、特別図柄が個別に可変表示される。左,中,右のすべての可変表示部が一斉に可変開始することにより複数種類の特別図柄からなる識別情報が上から下に向かってスクロール表示される。そして、まず左可変表示部が停止制御され、次に右可変表示部が停止制御され、最後に中可変表示部が停止制御される。・・・
【0023】この可変表示装置4の可変表示結果が、予め定められた大当り図柄の組合せ(たとえば777)となることにより特定遊技状態(大当り状態)が発生して可変入賞球装置12が第1の状態に制御されて遊技者にとって有利な状態となる。
【0132】次に、図20(b)に示すように、画像表示部5の上部に垂幕状の遮蔽用キャラクタ201が表示され、変動中の各図柄を垂幕によって徐々に覆うような表示がなされる。各図柄の背景も含めて覆うため、図柄は完全に視認不能となる。やがて画像表示部の全体が垂幕によって覆われる。連続して変動する図柄の変動状況を視認不可能な意外性のある表示がなされることにより、遊技者の可変表示に対する緊張感が高められる。なお、可変表示結果が大当りあるいは確変大当りの場合にこの種の遮蔽表示が行なわれる可能性を高くするようにしてもよい。・・・
【0133】画像表示部5の背景画像も含めて全体が垂幕によって覆われた後、たとえば、左図柄、右図柄、中図柄の順序で可変表示が終了し、可変表示結果が確定する。ただし、画像表示部5の全体が垂幕によって覆われているために、遊技者は図柄が導出される過程および表示結果を視認できない。このため、遊技者の表示結果に対する期待感を向上させることができる。・・・
【0134】その後、所定のタイミングで遮蔽キャラクタ201が画像表示部5の下方へ徐々に移動し、これに伴って停止図柄が徐々に視認可能となる。そして、遮蔽用キャラクタ201が画像表示部5の画像に行き着いた時点で図20(d)に示すように可変表示結果が明らかにされる。

以上を含む全記載及び図示によれば、引用文献2には次の発明が記載されていると認められる。なお、段落【0132】の「可変表示結果が大当りあるいは確変大当りの場合にこの種の遮蔽表示が行なわれる可能性を高くするようにしてもよい。」との記載によれば、可変表示結果として「大当たり」に加えて「ハズレ」があることは自明である。

「複数種類の識別情報としての特別図柄を可変表示させることが可能な可変表示装置4を設け、始動球検出器34の検出出力に基づいて可変表示装置4が可変開始され、特別図柄からなる識別情報が上から下に向かってスクロール表示された後停止制御され、この可変表示装置4の可変表示結果が、予め定められた大当たり図柄の組合せ(たとえば777)となることにより特定遊技状態(大当たり状態)が発生して遊技者にとって有利な状態となる遊技機であって、
変動中の各図柄を遮蔽用キャラクタ201によって徐々に覆うような表示がなされた後、遮蔽キャラクタ201が画像表示部5の下方へ徐々に移動し、これに伴って停止図柄が徐々に視認可能となって、大当たり又はハズレの可変表示結果が明らかにされる、遊技機。」(以下、「引用発明2」という。)

3.対比
本願発明と引用発明2を対比する。
引用発明2の「複数種類の識別情報としての特別図柄」は本願補正発明の「複数の図柄」に相当し、以下同様に、
「可変表示装置4」は「図柄表示装置」に、
「始動球検出器34の検出出力に基づいて」は「所定条件の成立により」に、
「可変表示装置4が可変開始され」は「図柄が変動を開始し」に、
「特別図柄からなる識別情報が上から下に向かってスクロール表示された後停止制御され」は「所定時間経過後に停止表示され」に、
「この可変表示装置4の可変表示結果が、予め定められた大当たり図柄の組合せ(たとえば777)となることにより」は「停止表示された図柄が所定の大当たり図柄である場合」に、
「特定遊技状態(大当たり状態)が発生して遊技者にとって有利な状態となる」は「遊技者にとって有利となる特別遊技状態が生起する」に、
「変動中の各図柄」は「前記図柄表示装置に変動表示されている図柄」に、それぞれ相当する。
そして、「変動中の各図柄を遮蔽用キャラクタ201によって徐々に覆うような表示がなされた後、遮蔽キャラクタ201が画像表示部5の下方へ徐々に移動し、これに伴って停止図柄が徐々に視認可能となって、大当たり又はハズレの可変表示結果が明らかにされる、」について検討する。
「変動中の各図柄をの遮蔽用キャラクタ201によって徐々に覆うような表示がなされ」ることにより各図柄は「遊技者に視認不可能に消滅」した状態になり、「遮蔽キャラクタ201が画像表示部5の下方へ徐々に移動し、これに伴って停止図柄が徐々に視認可能とな」ることにより「再び遊技者に視認可能に表示された時には」可変表示結果が停止表示されるものである。
そうすると、可変表示結果が、「大当たり」のみであるか「大当たり」に加えて「ハズレ」を含むかは別として、引用発明2と本願発明は「前記図柄表示装置に変動表示されている図柄が遊技者に視認不可能に消滅表示された後、再び遊技者に視認可能に表示された時には可変表示結果が停止表示される」点で共通している。

以上により、本願発明と引用発明2は、
「複数の図柄を表示可能な図柄表示装置を設け、所定条件の成立によりその図柄表示装置の図柄が変動を開始し、所定時間経過後に停止表示され、当該停止表示された図柄が所定の大当たり図柄である場合には、遊技者にとって有利となる特別遊技状態が生起する遊技機であって、
前記図柄表示装置に変動表示されている図柄が遊技者に視認不可能に消滅表示された後、再び遊技者に視認可能に表示された時には可変表示結果が停止表示される、遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点4>
再び遊技者に視認可能に表示された時の可変表示結果が、本願発明では、大当たり図柄であるのに対し、引用発明2では大当たり図柄又はハズレ図柄である点。

4.判断
上記相違点4について検討すると、従来よりパチンコ遊技機において、特定の演出を行うと必ず大当たりとする(大当たり図柄を停止表示させる)ことは、「第2」で検討したように従来周知技術Aである。
そうすると、引用発明2において上記周知技術Aを採用し、再び遊技者に視認可能に表示された時の可変表示結果として大当たり図柄のみを表示させるようにし、相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願発明の効果は、引用発明2及び上記周知技術Aに記載された技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明2及び上記周知技術Aに記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明2及び上記周知技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-30 
結審通知日 2012-04-03 
審決日 2012-04-17 
出願番号 特願2000-71273(P2000-71273)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗安久 司郎中槙 利明  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 吉村 尚
秋山 斉昭
発明の名称 遊技機  
代理人 山本 尚  

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