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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  H04N
管理番号 1258470
審判番号 無効2011-800232  
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-11-14 
確定日 2012-05-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4464453号発明「再送信装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件の特許第4464453号についての手続の経緯の概要は以下のとおりである。

出願日 平成20年10月22日
(国内優先権主張 平成20年3月5日、平成20年7月25日)
手続補正 平成21年12月11日
設定登録 平成22年 2月26日
無効審判請求 平成23年 2月25日
手続補正 平成23年 3月24日
審判事件答弁書 平成23年 5月31日
口頭審理陳述要領書(請求人) 平成23年 8月23日
口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成23年 9月 6日
口頭審理 平成23年 9月13日
審決 平成23年10月11日
本件無効審判請求 平成23年11月14日
訂正請求 平成24年 2月 3日
審判事件答弁書 平成24年 2月 3日
口頭審理陳述要領書(請求人) 平成24年 3月 6日
口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成24年 3月19日
口頭審理 平成24年 3月27日


第2 訂正請求について

1 本件訂正請求の内容
(1)本件特許請求の範囲の請求項1についてする訂正

[訂正事項A]
特許請求の範囲の請求項1の「デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」を「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」とする訂正。

[訂正事項B]
特許請求の範囲の請求項1の「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」とする訂正。

[訂正事項C]
特許請求の範囲の請求項1の「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」を「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、前記アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」とする訂正。

[訂正事項D]
特許請求の範囲の請求項1において「前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応する」を追加する訂正。

(2)本件特許明細書についてする訂正
[訂正事項E]
明細書の段落0012の記載を「 第1の発明は、デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、
アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部と、前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部と、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、前記アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し、前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とし、前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応することを特徴とする。」とする訂正。

2 当審の本件訂正請求についての判断

(1)本件特許請求の範囲の請求項1についてする訂正について

[訂正事項Aについて]
「デジタル放送復調部」が受信する「デジタル放送」を「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
この訂正は、本件特許明細書段落【0036】等の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の実質的拡張・変更するものでもない。

[訂正事項Bについて]
「キャリア抽出部」が受信する「アナログ放送波」を「前記アナログ放送波」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
この訂正は、本件特許明細書段落【0036】および【0037】等の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の実質的拡張・変更するものでもない。

[訂正事項Cについて]
「アナログ変調部」における「アナログ放送波」を「前記アナログ放送波」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
この訂正は、本件特許明細書段落【0041】および【0063】等の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の実質的拡張・変更するものでもない。

[訂正事項Dについて]
本件特許明細書段落【0036】および【0037】等の記載に基づいて「デジタル放送復調部」を「前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ」るものに限定し、「キャリア抽出部」を「前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ」るものに限定し、さらに、「デジタル放送復調部」と「キャリア抽出部」の数について「前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応する」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
この訂正は、本件特許明細書段落【0036】および【0037】等の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の実質的拡張・変更するものでもない。

(2)本件特許明細書についてする訂正について
[訂正事項Eについて]
訂正事項Eは、上述の特許請求の範囲の請求項1にする訂正事項Aないし訂正事項Dの訂正に伴い、特許請求の範囲の請求項1に対応する記載との関係において不合理を生じる記載を正すものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上述訂正事項Aないし訂正事項Dについて検討したとおり、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の実質的拡張・変更するものでもない。

請求人は、訂正事項Aでは「アナログ放送波のチャンネルに、デジタル放送の何が対応するのか」不明であり、段落【0036】からも「アナログ放送波のチャンネルに、デジタル放送の何が対応するのか」理解できないと主張するが、段落【0036】には「上記デジタル放送復調部12a?は、各地域の地上デジタル放送のチャンネル数に十分対応できるだけの数、例えば10個のデジタル放送復調部12a?12jを備えている。上記デジタル放送復調部12a?12jは、関東地方であれば、例えば21?28、30、32チャンネル、すなわちアナログテレビジョン放送の1、3、4、6、8、10、12、16、38、42チャンネルに対応する地上デジタル放送を受信できるように予め設定される。上記各デジタル放送復調部12a?12jは、その映像信号及び音声信号を復調して夫々アナログ変調部13a?13jへ出力する。」と記載され、アナログ放送波のチャンネルに、デジタル放送のチャンネルが対応しているのは明らかである。
また、請求人は「訂正特許発明1の技術的範囲を理解することが出来ない。訂正事項A,B,C,Dの訂正を認めたのでは、訂正特許発明1の技術的範囲が不明りょうとなる。それら訂正は特許請求の範囲の減縮ではなく特許請求の範囲の記載を不明りょうにするものであり、特許法134条の2第1項ただし書き第1号の規定に違反するため、訂正は認められるべきでない。」とも主張するが、上述のように訂正事項AないしDは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められるものであり、請求人の主張を根拠に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではないということはできない。

(3)本件特許請求の範囲の請求項2ないし4について
全文訂正特許請求の範囲の請求項2ないし4は、請求項1の前記訂正事項AないしDの訂正に伴い、訂正されたものであり、該訂正が、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の実質的拡張・変更するものでもないことは、上述(1)と同様である。

(4)独立特許要件
全文訂正特許請求の範囲の請求項5は、前記訂正事項AないしDによる請求項1ないし4の訂正に伴い、訂正されたものであり、当該訂正は特許無効審判が請求されていない請求項についての訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、訂正明細書の請求項5に係る発明の独立特許要件について検討する。
全文訂正特許請求の範囲の請求項5に係る発明は、全文訂正特許請求の範囲の特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定されたとおりのものであって、第7で後述するように全文訂正特許請求の範囲の請求項1に係る発明が、請求人が提出した甲1ないし甲7に記載された発明・記載事項・技術から当業者が容易に想到し得たということはできないのであるから、請求項1に係る発明にさらに発明特定事項を追加する請求項5は、甲1ないし甲7に記載された発明・記載事項・技術から当業者が容易に想到し得たということはできない。
したがって、全文訂正特許請求の範囲の請求項5に係る発明は、出願の際に、独立して特許を受けることができるものである。

(5)まとめ
したがって、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、および特許法第134条の2第5項において準用する特許法第126条第3項から第5項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 本件特許発明

以上のように、本件訂正請求の訂正事項AないしEに係る請求は認められたから、本件特許発明は、本件訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれ、「本件特許発明1」、・・・「本件特許発明4」あるいは、これらを総称して「本件特許発明」などという。)。

「【請求項1】
デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、
アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部と、
前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部と、
前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、前記アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し、
前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とし、
前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応することを特徴とする再送信装置。

【請求項2】
前記キャリア抽出部は、
映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の再送信装置。

【請求項3】
受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の再送信装置。

【請求項4】
前記デジタル放送復調部は、復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え、前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の再送信装置。」

2 分説

本件特許発明1ないし本件特許発明4は、それぞれ、上記した請求項1ないし請求項4記載のとおりの構成要件をその構成としたものと認められるところ、以下での検討の便宜上、本件特許発明1ないし4の構成要件を、答弁書の7.2に記載された、次のとおりに分説する(以下、この分説に従って、「構成要件A」、・・・、「構成要件O」などという。)。

【請求項1】
A デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、
B アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部と、
C 前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部と、
D 前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、前記アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し、
E 前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とし、
P 前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応することを特徴とする再送信装置。

【請求項2】
F 前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、
G 前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、
H アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、
I 前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする
J 請求項1に記載の再送信装置。

【請求項3】
K 受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする
L 請求項1又は2に記載の再送信装置。

【請求項4】
M 前記デジタル放送復調部は、復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え、
N 前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段を備えたことを特徴とする
O 請求項1、2又は3に記載の再送信装置。

第4 請求人の主張

請求人は、本件特許発明1ないし4に係る特許を無効とする、との審決を求め、次のような無効理由を主張している。

1 無効理由の概要

特許第4464453号(以下、「本件特許」という)の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第7号証の開示技術および本件特許優先日前の公知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから進歩性がなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号により無効とされるべきである。

2 無効理由の要点

以上のような無効理由について、具体的には以下のような主張を要点としている。

(1)本件特許発明1について

ア 甲第1号証(特開2004-282484号公報)(以下、各甲号証を、「甲1」などともいう。)

甲1の段落【0001】、【0005】、【0016】、【0020】、【0021】、【0022】、【0023】、【0024】、【0033】および【0034】の開示があるから、本件特許発明1の構成要件A,B及び構成要件Dが開示されている。

イ 甲第2号証

(ア) 甲第2号証の1(総務省、情報通信審議会 情報通信政策部会 地上デジタル放送推進に関する検討委員会(第35回)開催案内)

甲2の1は、総務省開催の「情報通信審議会 情報通信政策部会 地上デジタル放送推進に関する検討委員会(第35回)」の開催案内であって、本件特許の優先日時点で、第三者が、この甲2の1の添付資料であって甲2の2の複写物を入手し得たことを立証するものである。

(イ) 甲第2号証の2(社団法人日本ケーブルテレビ連盟「第34回提出資料(石橋委員の提出資料) 参考資料2」)

甲2の2第3頁「5 アナログ放送終了のための体制と計画」によれば、アナログテレビの廃棄問題、受信機の完全デジタル対応化が不可能と予想されることから、アナログ終了の後、一定期間はケーブルテレビでデジ-アナ変換対応を検討すべきということがアナログ放送終了のための体制と計画を検討するにあたり、特に注意すべきであることが記載されている。

ウ 甲第3号証(特開平5-111003号公報)

甲3の段落【0002】、【0003】、【0007】、【0009】および【0010】の開示があるから、甲3には本件特許発明の構成要件Cが開示されている。

エ 甲第4号証(特開平8-65651号公報)

甲4の【発明の名称】、段落【0002】、【0003】から、CATVヘッドエンド装置において、公知のPLL回路によって再送信信号を受信放送波に同期させて双方を同一周波数・位相とすることが開示されている。

オ 甲第5号証(特開平9-271005号公報)

甲5の段落【0016】、【0017】の記載は、構成要件Cに相当し、段落【0020】の記載は、構成要件D、Eに相当し、さらに段落【0019】、【0024】、【0036】および【0037】の開示があるから、甲5には本件特許発明における構成要件C,D及び構成要件Eが開示されている。

カ 甲第7号証(実公昭57-1493号公報)

甲7の第2欄15行?23行、第2欄25行?第3欄10行、第3欄11行?17行、第3欄18行?第4欄9行、第4欄10行?16行および第4欄17行?20行の開示があるから、甲7には本件特許発明における構成要件C,DおよびEが開示されている。

キ 本件特許と甲3、甲5、甲7の構成の対比

請求人作成の本件特許図3の照合図1(甲10)と甲3図1の照合図2(甲11)とをそれぞれ対比すると、甲10における「ダウンコン部」、「ローカル発生部」、「キャリア抽出部」、「キャリア再生部」、「IF変調部」および「アップコン部」は、それぞれ甲11の「周波数変換回路A(12)」、「脚部発信回路(13)」、「搬送波再生回路(16)」、「搬送波再生回路(16)」、「AM変調器(21)」および「周波数変換回路B(22)」と対比され、本件特許の図3は、甲3の図1と同じ構成である。
請求人作成の本件特許図3の照合図1(甲10)と甲5図1の照合図3(甲12)とをそれぞれ対比すると、甲10における「ダウンコン部」、「ローカル発生部」、「キャリア抽出部」、「キャリア再生部」、「IF変調部」および「アップコン部」は、それぞれ甲12の「B.P.F(14)+MIX1(15)」、「局部発振器1(21)」、「同期キャリア再生(22)」、「同期キャリア再生(22)」、「変調器(18)」および「MIX2(19)+B.P.F(20)」と対比され、本件特許の図3は、甲5の図1と同じ構成である。
請求人作成の本件特許図3の照合図1(甲10)と甲7第1図の照合図4(甲13)とをそれぞれ対比すると、甲10における「ダウンコン部」、「ローカル発生部」、「キャリア抽出部」、「キャリア再生部」、「IF変調部」および「アップコン部」は、それぞれ甲13の「混合器(11)」、「局部発振器(12)」、「フィルター(13)+リミッター(14)」、「VCO(16)+位相比較器(15)」、「映像変調器(17)」および「混合器(19)」と対比され、本件特許の図3は、甲7の第1図と同じ構成である。

ク 組み合わせ容易性
甲3、甲5、甲7には相互に組み合わせの動機づけがある。また、甲3、甲5、甲7を組み合わせることはCATV業界の当業者にとっては当然のこと。
甲1、甲3、甲5、甲7には組み合わせの動機づけがある。しかも、甲1の「再送信装置」に「ビート障害対策」を取り込む場合に、「ビート障害対策」の公知技術である甲3、甲5、甲7を組み合わせることは極めて自然なことであり、阻害要因は一切ない。
甲15は、甲1の段落【0016】「デジタルチューナとして、地上波デジタル放送を受信する地上波デジタルチューナを設けるようにすれば、地上波デジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号として再送信することができる。」の記載に基づいて、甲7の第1図と本件特許の図5の分配部13、デジタル放送復調部4a、4b・・・および混合部6を組み合わせたものであり、本件特許公報の図1の構成と一致するから、本件特許発明1は公知技術を組み合わせるだけで当業者が容易に想到し得た。また、前記図5は、テレビジョン放送の「再送信装置」であって、甲1の「デジーアナ変換再送信装置」と同じものであるため、甲1と甲3、甲5、甲7を組み合わせることも容易である。また、甲1の「受信信号入力端子20aに入力された地上波デジタル受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調する地上波デジタルチューナ22」は、本件特許発明1における「デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」と一致し、甲3、甲5、甲7は本件特許発明1の構成要件C「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」と技術的に共通するために、本件特許発明1は、甲1と甲3、甲1と甲5、甲1と甲7のそれぞれの組み合わせによっても容易に完成できる。

ケ 効果について
本件特許発明1ないし4の効果は甲1ないし甲7を寄せ集めた以上の効果を奏するものではないため、効果の面からも進歩性がない。

(2)本件特許発明2について

甲5の段落【0017】の開示から「同期キャリア再生器」は本件特許発明2の構成要件Fに相当し、段落【0037】の開示から「映像キャリア発振器41」は本件特許発明2の構成要件Gに相当し、段落【0036】の開示から「信号検出器39」は構成要件Hに相当し、「キャリア切換器40」は構成要件Iに相当する。
甲4の段落【0002】および甲5の段落【0032】?【0036】の記載から、本件特許発明2の構成要件F?Jが全て開示されている。

(3)本件特許発明3について

甲6には本件特許発明3における構成要件Kの一形態が開示されている。

(4)本件特許発明4について

甲1の段落【0033】、【0034】の記載から、「コントローラ30」は本件特許発明4における構成要件Mに、「変調器24」は構成要件Nに相当する。

3 証拠方法

請求人は、証拠方法として、以下の甲第1号証ないし甲第15号証を提出している。

甲第1号証(特開2004-282484号公報)
甲第2号証の1(総務省、情報通信審議会 情報通信政策部会 地上デジタル放送推進に関する検討委員会(第35回)開催案内)
甲第2号証の2(社団法人日本ケーブルテレビ連盟「第34回提出資料(石橋委員の提出資料) 参考資料2」)
甲第3号証(特開平5-111003号公報)
甲第4号証(特開平8-65651号公報)
甲第5号証(特開平9-271005号公報)
甲第6号証(JEITA 地上デジタル放送ケーブル再送信パススルー方式に関する報告書、第9乃至12ページ)
甲第7号証(実公昭57-1493号公報)
甲第8号証(比較表)
甲第9号証(組合せ図)
甲第10号証(本件特許の図3を色分けした照合図1)
甲第11号証(甲第3号証の図1を色分けした照合図2)
甲第12号証(甲第5号証の図1を色分けした照合図3)
甲第13号証(甲第7号証の第1図を色分けした照合図4)
甲第14号証(審決謄本の写し)
甲第15号証(甲第9号証を訂正した組合せ図)

第5 被請求人の主張

これに対して、被請求人は、平成24年2月3日付け審判事件答弁書、および平成24年3月19日付け口頭陳述要領書において、概略以下のとおり主張している。

1 訂正特許発明1に対して

<甲第1号証について>
構成要件Dは開示されていない。

<甲第3号証について>
構成要件C、D、Eは開示されていない。

<甲第5号証について>
構成要件C,D,Eは開示されていない。

<甲第7号証について>
構成要件C,D,Eは開示されていない。

<甲1に対する甲3の適用について>
甲1は、デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号を「潜在電界が高いテレビチャンネルと同じチャンネルで再送信する」ことを開示もしくは示唆するものでないのは明らかであり、このような甲1に「潜在電界が高いテレビチャンネルと同じチャンネルで再送信する場合におけるビート妨害を軽減する」という効果を得るためのものである甲3を適用することが当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
また、アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送をアナログ放送に変換して再送信する際に、当該デジタル放送に対応するチャンネルのアナログ放送波を用いるという技術思想について甲1および甲3には記載も示唆もない。
甲1および甲3にはキャリア抽出部の数がデジタル放送復調部の数に対応することについては記載も示唆もない。

<甲1に対する甲5の適用について>
甲1に甲5を適用することが当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。仮に甲1に甲5を適用したとしても得られる再送信装置は、「デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号又はアナログ放送波のいずれかを出力する」というものである。
ビート障害については何ら記載も示唆もない甲1に甲5を適用することが当業者にとって容易想到であるということはできない。
また、アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送をアナログ放送に変換して再送信する際に、当該デジタル放送に対応するチャンネルのアナログ放送波を用いるという技術思想について甲1および甲5には記載も示唆もない。
甲1および甲5にはキャリア抽出部の数がデジタル放送復調部の数に対応することについては記載も示唆もない。

<甲1に対する甲7の適用について>
ビート障害が発生する要因について記載も示唆もない甲1に「ビート妨害の軽減」を目的とする甲7を適用することが当業者が容易に想到しえたことであるとはいえない。
また、アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送をアナログ放送に変換して再送信する際に、当該デジタル放送に対応するチャンネルのアナログ放送波を用いるという技術思想について甲1および甲7には記載も示唆もない。
甲1および甲7にはキャリア抽出部の数がデジタル放送復調部の数に対応することについては記載も示唆もない。
甲7において空間に存在するテレビジョン放送電波と同一の内容(番組)の信号をケーブル伝送するのであれば、当該テレビジョン放送電波をそのまま出力すればよいのであるから、甲7においてケーブル伝送されるテレビジョン信号の内容は、空間に存在するテレビジョン放送電波とは異なり、さらには、空間に存在するテレビジョン放送電波とは何ら関係ないテレビジョン信号を伝送することを前提としているのであるから、訂正特許発明1のように映像キャリアが抽出されるアナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を変換した再送信信号を伝送するという技術思想自体、甲1を考慮したとしても、このような甲7においてはそもそも想定しないことである。

<甲1ないし甲7の公知技術の組み合わせ>
甲1ないし甲7の公知技術の組み合わせにより容易に完成できたものであるため進歩性がないとする根拠が乏しい。甲1から訂正特許発明1の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等の存在については何ら明らかにされていないにもかかわらず、甲1ないし甲7に基づいて訂正特許発明1が容易に想到し得たことであるとする請求人の主張は失当である、
甲4には構成要件Eは開示されていない。

2 訂正特許発明2ないし訂正特許発明4に対して
訂正特許発明2ないし訂正特許発明4は、訂正特許発明1の構成要件をすべて具備していることから、訂正特許発明2ないし訂正特許発明4も当業者が容易になし得ないものである。

第6 各証拠およびその内容

各証拠には以下の記載(k1-1)ないし(k7-6)がある。後述の第7では、(k1-1)、・・・(k7-6)といった記号により記載を引用する。

1 甲第1号証の記載

甲第1号証(特開2004-282484号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

<発明の属する技術分野>
(k1-1)「本発明は、受信アンテナから入力された受信信号の中から所定放送チャンネルのデジタルテレビ放送を選局して映像及び音声信号を復調し、その復調した映像及び音声信号から伝送用のアナログテレビ放送信号を生成して、CATVシステムの伝送線上に送出するヘッドエンド装置、及び、このヘッドエンド装置を備えたCATVシステムに関する。」(段落【0001】)

<従来の技術>
(k1-2)「従来より、テレビ放送としては、地上局を利用した地上波放送、放送衛星(BS)を利用したBS放送、通信衛星(CS)を利用したCS放送等が知られている。そして、これらのテレビ放送を再送信するCATVシステムにおいては、ヘッドエンド装置側で、各放送電波を受信し、その受信信号をそのまま周波数変換したり、或いは、受信信号に含まれるテレビ放送信号を個々に周波数変換することにより、複数のテレビ放送信号を、CATVシステムで伝送可能な周波数帯域内に納め、伝送線上に送出するようにしている。
ところで、近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる。
そこで、近年では、こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。」(段落【0002】?【0004】)

(k1-3)「つまり、このようにすれば、CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる。」(段落【0005】)

<発明が解決しようとする課題>
(k1-4)「ところで、上記のように、ヘッドエンド装置にBSデジタルチューナと変調器を設けた場合、変調器が生成するアナログテレビ放送信号の音声モードを、BSデジタル放送の音声モードに対応させる必要がある。
つまり、テレビ放送の音声モードとしては、周知のように、モノラル、ステレオ、多音声、といった3種類の音声モードがあり、BSデジタル放送でも、音声モードがこの3種類の音声モードの一つに適宜切り換えられて放送されることから、CATVシステムの端末側でBSデジタル放送にて提供されている所望の音声を再生できるようにするには、変調器がアナログテレビ放送信号を生成する際の音声信号の変調方式を、BSデジタル放送の音声モードに対応させる必要があるのである。
そして、このためには、BSデジタルチューナ側にて音声信号を復調した際に識別した音声モードを表す情報を、BSデジタルチューナから変調器に出力するよう構成すればよいが、このためには、BSデジタルチューナの改良が必要となり、BSデジタルチューナに既存のものを使用することができなくなってしまう。
つまり、一般に市販されているBSデジタルチューナは、音声信号として、アナログ音声信号とデジタル音声信号との2種類の音声信号を出力するようになっているが、その音声信号の種別(モノラル・ステレオ・多音声)を表す情報は出力できないことから、BSデジタルチューナから変調器に音声信号の種別を表す情報を出力して、変調器側でBSデジタル放送の音声モードに対応したアナログテレビ放送信号を生成させるには、音声信号の種別を表す情報を出力可能な専用のデジタルチューナを使用しなければならず、ヘッドエンド装置のコストアップを招く、といった問題が生じるのである。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、デジタルテレビ放送を選局・復調するデジタルチューナと、その復調した映像及び音声信号からアナログテレビ放送信号を生成する変調器とを備えたヘッドエンド装置において、デジタルチューナからデジタルテレビ放送の音声モードを表す情報を出力することなく、変調器側にてその音声モードに対応するアナログテレビ放送信号を生成できるようにすることを目的とする。」(段落【0007】-【0011】)

<課題を解決するための手段>
(k1-5)「係る目的を達するためになされた請求項1記載のヘッドエンド装置は、受信アンテナから入力された受信信号の中から所定放送チャンネルのデジタルテレビ放送を選局し、映像信号及び音声信号を復調するデジタルチューナと、該デジタルチューナにて復調された映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成する変調器とを備え、該変調器にて生成されたアナログテレビ放送信号をCATVシステムの伝送線に送出するヘッドエンド装置であって、前記デジタルチューナは、前記音声信号として、前記デジタルテレビ放送の音声モードに対応したアナログ音声信号、及び、該音声モードを表すステータス情報を含むデジタル音声信号、を夫々復調して出力するよう構成され、前記変調器は、前記デジタルチューナから出力されるアナログ音声信号を、前記デジタルテレビ放送の音声モードに対応して変調することにより、前記デジタルテレビ放送の音声モードに対応したアナログテレビ放送信号を生成するよう構成され、更に、前記デジタルチューナから出力されるデジタル音声信号を取り込み、該デジタル音声信号に含まれるステータス情報から前記デジタルテレビ放送の音声モードを判定し、該判定結果を前記変調器に出力することで、前記変調器で生成されるアナログテレビ放送信号の音声モードを前記デジタルテレビ放送の音声モードに対応させる音声判定手段、を備えたことを特徴とする。
このように、本発明のヘッドエンド装置には、デジタルチューナから出力されるデジタル音声信号に含まれるステータス情報からデジタルテレビ放送の音声モードを判定する音声判定手段が備えられ、変調器は、この音声判定手段からの出力(判定結果)に基づきアナログ音声信号を変調することで、デジタルテレビ放送の音声モードに対応したアナログテレビ放送信号を生成する。
従って、本発明のヘッドエンド装置によれば、デジタルチューナとして、復調したアナログ音声信号の音声モードを表す情報を出力可能な専用(所謂業務用)のデジタルチューナを使用する必要がなく、一般に市販されている安価なデジタルチューナを使用できることになり、ヘッドエンド装置のコストアップを招くのを防止できる。
また、変調器は、デジタルテレビ放送と同じ音声モードのアナログテレビ放送信号を生成することから、本発明のヘッドエンド装置を用いてCATVシステムを構築すれば、その端末側で、デジタルテレビ放送にて提供されている所望の音声(モノラル音声、ステレオ音声、若しくは多音声の内の主音声又は副音声)を再生できるようになり、加入者に対するサービスを向上できる。」(段落【0012】-【0015】)

(k1-6)「尚、本発明のヘッドエンド装置は、従来技術の項にて説明したBSデジタル放送を再送信するCATVシステムは勿論のこと、CSデジタル放送或いは地上波デジタル放送を再送信するCATVシステムに適用することもできる。
つまり、本発明のヘッドエンド装置においては、デジタルチューナとして、BSデジタル放送を受信するBSデジタルチューナを設けるようにすれば、BSデジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号に変換して再送信することができ、デジタルチューナとして、CSデジタル放送を受信するCSデジタルチューナを設けるようにすれば、CSデジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号として再送信することができ、デジタルチューナとして、地上波デジタル放送を受信する地上波デジタルチューナを設けるようにすれば、地上波デジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号として再送信することができる。」(段落【0016】)

<発明の実施の形態>
(k1-7)「以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用された実施例のCATVシステム全体の構成を表す構成図である。
図1に示すように、本実施例のCATVシステムは、VHFテレビ放送(アナログ)を行う地上局からの放送電波を受信するVHFアンテナ2、UHFテレビ放送(アナログ放送)を行う地上局からの放送電波を受信するUHFアンテナ4、CS放送用の通信衛星(CS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のCS受信信号に周波数変換して出力するCSアンテナ6、及び、BSデジタル放送を行う放送衛星(BS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のBS受信信号に周波数変換して出力するBSアンテナ8を備えたヘッドエンド装置10と、ヘッドエンド装置10から送出される多数のテレビ放送信号を端末側に伝送する伝送線(同軸ケーブル)Lと、伝送線L上に設けられて伝送線Lを流れる伝送信号(ヘッドエンド装置10から送出されたテレビ放送信号等)を増幅する増幅器14,16と、分岐或いは分配用の各種伝送機器(図示せず)とから構成されている。
ここで、ヘッドエンド装置10においては、VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされている。
また、BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされている。」
即ち、ヘッドエンド装置10には、BSアンテナ8からのBS受信信号を分配する分配器11が設けられており、この分配器11にて分配されたBS受信信号を、夫々、各復変調部20の受信信号入力端子20aに入力するようにされている。」(段落【0019】?【0023】)

(k1-8)「また、各復変調部20には、受信信号入力端子20aに入力されたBS受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調するBSデジタルチューナ22と、BSデジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24とが設けられている。」(段落【0024】)

(k1-9)「そして、この変調器24にて生成されたテレビ放送信号は、放送信号出力端子20bから送出装置12に出力され、送出装置12にて他のテレビ放送信号と混合されて、伝送線L上に送出される。
また、各復変調部20に設けられたBSデジタルチューナ22には、ヘッドエンド装置10のコストを抑えるために、システム専用(所謂業務用)のデジタルチューナではなく、市販(所謂民生用)のデジタルチューナが用いられている。
そして、本実施例のBSデジタルチューナ22は、BSアンテナ8から分配器11を介して受信信号入力端子20aに入力されたBS受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのBSデジタル放送信号を選局し、その選局したBSデジタル放送信号からアナログ映像信号及びアナログ音声信号を復調して映像出力端子(S端子若しくはコンポジット端子)及び音声出力端子から出力すると共に、アナログ音声信号を復調する前のデジタル音声信号を光信号に変換して光出力端子から光音声信号として出力するようにされている。
尚、BSデジタル放送では、モノラル、ステレオ、多音声(二カ国語若しくは主・副)の何れかの音声モードで放送していることから、BSデジタルチューナ22は、この音声モードに対応して音声信号を復調し、その復調したアナログ音声信号を、ステレオ、多音声の音声信号を出力可能な2つの音声出力端子(R・L)から出力する。
一方、各復変調部20に設けられた変調器24は、映像入力端子Tvi、音声入力端子Tar、Talを介して、BSデジタルチューナ22から、アナログ映像信号及びアナログ音声信号を取り込み、これら各信号から所定周波数帯(例えば、45MHz帯)のアナログテレビ信号(NTSC)を生成する変調部24aと、この変調部24aにて生成されたアナログテレビ信号を、予め設定された伝送チャンネル(換言すればその伝送チャンネルに対応した周波数帯)のアナログテレビ放送信号に周波数変換する周波数変換部24bと、この周波数変換部24bにて周波数変換されたアナログテレビ放送信号を増幅する増幅部24cとから構成され、この増幅部24cにて増幅されたアナログテレビ放送信号を出力端子Tout から出力するようにされている。
また、変調部24aは、アナログテレビ信号(NTSC)を生成する際、アナログ音声信号を変調するが、この変調時には、アナログ音声信号の音声モードに対応して変調方式を切り換える。そして、このために、変調器24には、アナログ音声信号の音声モードを表す制御信号「MO」、「BI」を外部から入力するための制御信号入力端子Ti0、Ti1が設けられ、変調部24aは、この制御信号入力端子Ti0、Ti1に入力された制御信号「MO」、「BI」の信号レベルから、アナログ音声信号の音声モードを識別して、アナログ音声信号の変調方式を切り換える。
尚、図2(b)に示すように、制御信号「MO」は、アナログ音声信号がモノラルであるときにHighレベルとなり、制御信号「BI」は、アナログ音声信号が多音声であるときにHighレベルとなるように設定されており、変調部24aは、この制御信号「MO」、「BI」の信号レベルの組み合わせから、アナログ音声信号の音声モードが、モノラル(MO:High,BI:Low )、ステレオ(MO:Low ,BI:Low )、多音声(MO:Low ,BI:High)の何れであるかを識別する。
このように、本実施例では、変調器24の変調部24aが、制御信号入力端子Ti0、Ti1に入力された制御信号「MO」、「BI」の信号レベルから、アナログ音声信号の音声モードを識別して、アナログ音声信号の変調方式を切り換えることから、この制御信号入力端子Ti0、Ti1に、BSデジタルチューナ22が選局したBSデジタル放送の音声モード(換言すればアナログ音声信号の音声モード)を表す制御信号「MO」、「BI」を入力すれば、各復変調部20から出力されるアナログテレビ放送信号の音声モードを元のBSデジタル放送の音声モードに対応させることができるのであるが、各変調部20には、コスト低減のために民生用のBSデジタルチューナ22が使用され、このBSデジタルチューナ22から、BSデジタル放送の音声モードを表す制御信号「MO」、「BI」を出力させることができない。
そこで、本実施例では、図1に示すように、各復変調部20に、BSデジタルチューナ22から出力される光音声信号に基づきBSデジタルチューナ22が選局したBSデジタル放送の音声モードを識別するコントローラ30を設け、このコントローラ30から変調器24の制御信号入力端子Ti0、Ti1に制御信号「MO」、「BI」を入力するようにしている。
このコントローラ30は、本発明の音声判定手段に相当するものであり、図3(a)に示すように構成されている。即ち、コントローラ30は、BSデジタルチューナ22から光信号入力端子Topを介して光音声信号(換言すればデジタル音声信号)を取り込み、光音声信号に含まれる各種データを復号化するデコーダ(デジタルオーディオインターフェイス)30aと、このデコーダ30aにて復号されたデータの内、音声モードを表すチャネルステータス情報(具体的には、チャネルステータスビット、又はユーザビット)を選択するデータ選択部30bと、データ選択部30bで選択されたチャネルステータス情報に基づきBSデジタルチューナ22が選局しているBSデジタル放送の音声モードを識別し、その識別した音声モードに対応した制御信号「MO」、「BI」を制御信号出力端子Tc0、Tc1を介して変調器24に出力するマイクロコンピュータ(以下、単にマイコンという)30cと、から構成されている。
そして、マイコン30cは、図3(b)に示すように、S110(Sはステップを表す)にて、データ選択部30bで選択されたチャネルステータス情報から、BSデジタルチューナ22が選局しているBSデジタル放送の音声モードを判定し、その判定した音声モードがモノラルであれば(S120:YES)、制御信号出力端子Tc0から出力する制御信号「MO」をHighレベルに設定し、制御信号出力端子Tc1から出力する制御信号「BI」をLow レベルに設定することにより、音声モードがモノラルであることを表す制御信号を変調器24に出力し(S130)、S110にて判定した音声モードがモノラルでなく(S120:NO)、ステレオであれば(S140:YES)、制御信号出力端子Tc0及びTc1から出力する制御信号「MO」、「BI」を共にLow レベルに設定することにより、音声モードがステレオであることを表す制御信号を変調器24に出力し(S150)、S110にて判定した音声モードがモノラルでもステレオでもなく(S120:NO,S140:NO)、多音声であれば、制御信号出力端子Tc0から出力する制御信号「MO」をLow レベルに設定し、制御信号出力端子Tc1から出力する制御信号「BI」をHighレベルに設定することにより、音声モードが多音声であることを表す制御信号を変調器24に出力する(S160)、といった手順で、音声モードの切換処理を実行する。」(段落【0025】-【0034】)

(k1-10)「以上説明したように、本実施例のCATVシステムにおいては、ヘッドエンド装置10内に、BSデジタル放送の各放送チャンネル毎に、BSデジタル放送信号を選局・復調してアナログテレビ放送信号に変換する複数の復変調部20を設け、BSデジタル放送にて提供される映像及び音声信号を端末側で再生できるようにしている。また、各復変調部20には、BSデジタルチューナ22から出力される光音声信号(デジタル音声信号)に含まれるチャネルステータス情報から、BSデジタル放送の音声モードを判定して、その音声モードを表す制御信号「MO」、「BI」を出力するコントローラ30を設け、変調器24側では、コントローラ30から出力される制御信号に基づき、アナログ音声信号を変調するようにされている。
従って、本実施例のCATVシステムにおいては、ヘッドエンド装置10に、選局したBSデジタル放送の音声モードを表す制御信号を出力可能な業務用の高価なBSデジタルチューナを設ける必要がなく、BSデジタル放送をアナログテレビ放送として再送信可能なCATVシステムを安価に構築できることになる。
また、変調器24は、BSデジタル放送と同じ音声モードのアナログテレビ放送信号を生成することから、端末側では、BSデジタル放送にて提供されている所望の音声(モノラル音声、ステレオ音声、若しくは多音声の内の主音声又は副音声)を再生できるようになり、加入者に対するサービスを向上できる。
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施例では、ヘッドエンド装置10内にBSデジタルチューナ22を備えた複数の復変調部20を設け、この復変調部20で所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調して、アナログテレビ放送信号に変換することで、端末側でBSデジタル放送を視聴できるようにしたが、ヘッドエンド装置10に、復変調部20に、BSデジタルチューナ22に代えて、CSデジタル放送若しくは地上波デジタル放送を選局・復調するデジタルチューナを設けるようにするか、或いは、そのデジタルチューナと変調器24とコントローラ30とからなる復変調部を別途設けるようにすれば、CSデジタル放送や地上波デジタル放送にて提供される映像及び音声信号からなるアナログテレビ放送信号を端末側に再送信できることになる。」(段落【0035】-【0038】)

2 甲第2号証の2の記載

甲第2号証の2が公知であることを示す証拠として甲第2号証の1(総務省、情報通信審議会 情報通信政策部会 地上デジタル放送推進に関する検討委員会(第35回)開催案内)が示された。
そして、甲第2号証の2(社団法人日本ケーブルテレビ連盟「第34回提出資料(石橋委員の提出資料)参考資料2」)には、「5 アナログ放送終了のための体制と計画」として、「全国地上デジタル放送推進協議会で検討を行っているところではあるが、検討にあたり、特に留意すべき点は何か。」として、以下の記載がある。

(k2.1)「現在、一世帯に2台のテレビがあるとされているが、期間内に全てのテレビの完全デジタル対応を急ぐとアナログテレビの廃棄問題が生じ、一方で受信機の完全デジタル対応化も不可能と予想されるので、一定期間はケーブルテレビでのデジ-アナ変換対応を検討すべきと考える。」

3 甲第3号証の記載

甲第3号証(特開平5-111003号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

<産業上の利用分野>
(k3-1)「本発明はCATVなどの共同受信施設のヘッドエンド装置、テレビジョン放送中継局等に利用される受信したテレビ放送波信号の搬送波周波数と全く同一の周波数で再送信すると共に、その再送信に際してゴースト除去等の各種映像信号処理が行われる同期型テレビ再送信装置に関する。」(段落【0001】)

<従来の技術>
(k3-2)「テレビ共同受信施設では、受信点の装置においてゴースト障害により良好な受信点を選定することが困難な状況になってきている。そこで、ゴースト障害があってもテレビ放送波信号中のゴースト信号を除去してから、有線テレビ施設に信号を送り出すことにより、施設の受信者に良好なテレビ放送波信号を提供できる。このためには、安定でしかも安価な再送信装置が提供されることをCATV事業者および施工業者などの関係業界から望まれている。このような再送信装置においては、一般的には、受信チャンネルと同一チャンネルで送信する必要があるが、放送電波の受信周波数と有線テレビ施設の送信周波数が僅かに異なると、テレビ放送波が有線テレビ施設の信号を干渉してビート妨害を与える。そのため、このビート妨害を軽減するためには、有線テレビ施設の送信周波数を放送電波の周波数と位相同期させる必要がある。また、ゴースト除去以外でも受信した信号に他の映像信号を重畳したり、他の映像信号との信号処理をするなど各種の映像信号処理をして、再度同一チャンネルで送信する場合には、同様に位相同期を行う必要がある。」(段落【0002】)

(k3-3)「従来、ゴースト信号を除去してCATVにテレビ放送波信号を伝送する場合などは、CATV施設のヘッドエンドにおいて、受信したテレビ放送波信号を復調して映像信号と音声信号とし、ゴースト除去回路で映像信号中のゴースト信号を除去し、音声信号と共にテレビ変調器でAM変調してテレビ信号とする。この際、受信チャンネルと同じチャンネルで再送信したり、また受信したチャンネルを周波数変換し潜在電界が高いテレビチャンネルと同じチャンネルで再送信する場合、加入者での潜在電界による同一チャンネルビート妨害を軽減するために高周波位相を同期させる機能を有した変調器を用いている。」(段落【0003】)

(k3-4)「図5及び図6はこの種のゴースト除去等映像信号処理を行う同期型テレビ再送信装置の概要ブロックを示す。図5に示すように、受信したテレビ放送波信号を周波数変換回路C46で周波数変換して中間周波信号とする。この信号と搬送波発振回路48からの搬送波信号とを位相比較器47で位相比較してその出力信号で局部発振回路49を制御する。搬送波発振回路48からの搬送波信号を映像信号と音声信号とでAM変調器44でAM変調する。変調されたこの変調波信号を局部発振回路49からの局部発振信号を用いて周波数変換器B45で周波数変換することによって、再送信するチャンネルの高周波位相を入力信号と同期をとっている。
また、図6に示すように、受信したテレビ放送波信号を周波数変換回路C46で周波数変換して中間周波信号とし、この信号の中からリミッタ回路50によって搬送波を抽出し、この搬送波信号を映像信号と音声信号とでAM変調器44でAM変調する。変調されたこの変調波信号を局部発振回路49からの局部発振信号を用いて周波数変換器B45で周波数変換することによって、再送信するチャンネルの高周波位相を入力信号と同期をとっている。」(段落【0004】-【0005】)

<発明が解決しようとする課題>
(k3-5)「しかし、従来の同期型テレビ再送信装置では、位相同期をとるために、同期制御回路(位相比較器、リミッタ)及び局部発振回路が専用チャンネル用となり、自由に任意のチャンネルに設定できない。
中間周波信号を取出すための周波数変換回路、変調用中間周波信号発振器(搬送波発振回路)、局部発振器及び周期制御回路が必要であり、回路点数が多く、コスト高である。
位相同期回路にリミッタによる搬送波信号抽出を行っており、映像信号処理がゴースト除去の場合にはゴーストによる位相ひずみの影響によって、抽出した搬送波信号(中間周波)の位相誤差による位相同期の性能が劣化する。
等の課題がある。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、すべてのチャンネルに対応した同一チャンネルの再変調のチャンネルが設定でき、専用回路を不要とし、すべてのチャンネルが全く同一の回路で構成でき、映像信号処理用のチューナ内で同期検波のために使用されている位相ひずみの少ない搬送波を用いた同期型テレビ再送信装置を提供することを目的とする。」(段落【0006】-【0007】)

<作用>
(k3-6)「この発明は、テレビ放送波信号を受信し、これを復調して得られた映像信号を任意の映像信号処理回路により信号処理を行い、再度、受信波と同一の搬送波周波数で再変調して再送信すると共に、その再送信に際してゴースト除去等映像信号の処理が行われる同期型テレビ再送信装置に関するものである。テレビ放送波信号を受信し、選局・復調した後、ゴースト除去等の映像信号処理を行った後の映像信号を再変調する装置において、映像信号処理がゴースト除去の場合にはテレビ放送波信号を受信するゴースト除去チューナの局部発振信号により周波数変換して得られる中間周波信号から映像搬送波信号を抽出する。一方、この中間周波信号を復調して得られた映像信号をゴースト除去の信号処理を施す。この処理後の映像信号と音声信号によって映像搬送波信号をAM変調し、さらに局部発振信号によって周波数変換を行う。このようにして、受信したテレビ放送波信号のチャンネルと同一周波数同一位相の任意の送信チャンネルの周波数が容易に設定でき、かつ忠実な位相同期、安定な周波数変換を行った映像信号処理後のテレビ放送波信号を得ることができる。以上のように、本発明の同期型テレビ再送信装置は、従来の同期型テレビ再送信装置と同様の効果を得るためのものであるが、テレビ放送波信号を受信し、復調した映像信号について例えば、ゴーストを除去し、受信したテレビ放送波信号と同じ周波数を得るのに、簡便で、かつ忠実に位相同期した同期型テレビ再送信装置である。」(段落【0009】)

<実施例>
(k3-7)「以下、本発明の一実施例として映像信号処理がゴースト除去の場合であると仮定して図面に基づいて説明する。図1は本発明による同期型テレビ再送信装置の基本ブロック図である。図に示すように、ゴースト除去チューナ10と同期型テレビ変調器20とで構成されている。従来からゴースト除去チューナ10の選局回路11は、周波数変換回路A12と局部発振回路13で構成されている。そこで、周波数変換回路B22用の局部発振信号を局部発振回路13からの出力信号を用いる。また、一般の検波回路14は、同期検波回路15及び搬送波再生回路16で構成されているので、AM変調器21用の搬送波信号を搬送波再生回路16からの出力信号を用いる。そこで、周波数変換回路B22からの出力信号の周波数は、受信したテレビ放送波信号のなかで、選局回路11で選局した信号に位相同期し、かつゴースト除去回路17でゴーストを除去したテレビ放送波信号を得ることができる。このように、同期型テレビ変調器20として位相同期をとるために、ゴースト除去チューナ10の中間周波信号と局部発振信号を用いた構成とすることで、容易に再変調と周波数変換を行うことができ、特別に同期制御回路を用いる必要がなく、回路構成が簡素である。」(段落【0010】)

4 甲第4号証の記載

甲第4号証(特開平8-65651号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

<発明の名称>
(k4-1)「【発明の名称】CATVヘッドエンド装置」

<産業上の利用分野>
(k4-2)「本発明はCATVヘッドエンド装置に関し、特に地域外からのTV信号を受信しチャンネル変換して再送信するCATVヘッドエンド装置に関する。」(段落【0001】)

<従来の技術>
(k4-3)「地方のCATV局では、例えば、東京民放局の微弱なTV電波を受信しチャンネル変換した後、同軸ケーブルを介して加入者へ再送信している。ところで、CATV加入者の居住する地域の地元TV局が、再送信するTV信号の送信チャンネルと同じチャンネルによりTV電波を送信している場合には、加入者のテレビ画面上に視覚的な妨害が生じることになる。この場合、両TV信号の搬送波周波数のずれに応じて、妨害画像が上下左右に移動するので非常に見苦しい。このような視覚的な妨害を軽減するために、CATV局側では、再送信TV信号の搬送波周波数が地元TV局の送信搬送波周波数と一致するように、公知のPLLを設けて位相同期させて妨害画像が上下左右に移動するのを抑えている。」(段落【0002】)

<発明が解決しようとする課題>
(k4-4)「上述したように従来は、CATV局が再送信するTVチャンネルと地元TV局の送信チャンネルとが同じチャンネルである場合の視覚的妨害を軽減するために、再送信するTV信号の送信搬送波周波数を地元TV局の送信搬送波周波数に一致させ、妨害画像が上下左右に移動するのを抑えているいる。しかし、同じチャンネルの2つのTV信号の画像が同一であるならば視覚的妨害は軽減できるが、異なる画像のときには画像が互いに重なった状態となり、視覚的妨害を十分に軽減できないという問題点を有している。」(段落【0003】)

5 甲第5号証の記載

甲第5号証(特開平9-271005号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

<発明の属する技術分野・従来の技術>
(k5-1)「本発明は、受信電界強度の低い地域にテレビジョン放送信号をケーブルを用いて伝送するようにした多方向受信用CATV伝送装置に関するものである。
CATV(ケーブルテレビジョン)等のTV共同受信は、UHFチャンネルのテレビジョン放送電波を受信して、受信したUHFチャンネルをVHFのチャンネルに変換したり、VHFチャンネルのテレビジョン放送電波を、異なるVHFチャンネルに変換したりしてケーブルを利用して伝送するようにしている。特に、VHFのテレビジョン放送波がある地域で電界強度が弱く、外界からのノイズの影響や反射波の影響で放送波の画質が低下している場合には、同じ番組の放送サービスを行う必要がある。
」(段落【0001】?【0002】)

(k5-2)「本発明の多方向受信用CATV伝送装置の第1の実施の形態の構成を示すブロック図を図1に示す。図1において、1は再放送するテレビジョン番組を受信するマイクロ波アンテナ、2は受信されたマイクロ波を復調して再放送するテレビジョン番組の映像信号および音声信号を出力するマイクロ波復調器、3は復調された映像信号からゴースト成分を除去するゴーストキャンセラ回路、4はゴースト除去された映像信号と音声信号とにより搬送波を変調するようにしてコンポジット信号を生成する変調器、5は変調器4から出力されるコンポジット信号を再放送するテレビジョン放送の所定のチャンネルに周波数変換するためのミキサ(MIX3)、6は不要波成分を除去するバンドパスフィルタ(BPF)である。
また、13はVHFテレビジョン放送を受信するVHFアンテナ、14は所望の周波数帯域を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)、15は再放送するテレビジョン放送の所定のチャンネルを選局して中間周波数信号に変換するミキサ(MIX1)、16はミキサ15から出力される中間周波数信号を復調してベースバンドの映像信号と音声信号とを得る復調器、17は復調された映像信号からゴースト成分を除去するゴーストキャンセラ回路、18はゴースト除去された映像信号と音声信号とにより搬送波を変調するようにしてコンポジット信号を生成する変調器、19は変調器18から出力されるコンポジット信号を再放送するテレビジョン放送の所定のチャンネルに周波数変換するためのミキサ(MIX2)、20は不要波成分を除去するバンドパスフィルタ(BPF)である。
さらに、21はミキサ15およびミキサ19に局発信号を共通に供給する局部発振器、22はミキサ15から出力される中間周波数信号から搬送波を再生する同期キャリア再生器、23はマイクロ波アンテナ1系のテレビジョン信号と、VHFアンテナ13系のテレビジョン信号のいずれかを選択して出力するアンテナ切換器である。なお、本発明の多方向受信用CATV伝送装置の第1の実施の形態においては、マイクロ波復調器2からBPF6までの構成により、再送信装置1が構成されており、BPF14ないしBPF20までの構成により再送信装置2が構成されている。また、同期キャリア再生器22から出力される再生された搬送波は、再送信装置1の変調器4、および再送信装置2の変調器18に共通に供給されている。
次に、このように構成された多方向受信用CATV装置は、VHF放送波の電界が弱い地域に設置されており、多方向受信用CATV装置に向けてVHF放送番組がマイクロ回線により送信されている。そこで、VHFテレビジョン放送電波はアンテナ13において受信されてBPF14において所定周波数帯域のみが抽出されて、ミキサ15に入力される。ミキサ15には、局部発振器21からの局発信号が供給されて、ミキサ15に入力されたVHFテレビジョン放送の所定のチャンネルの信号が中間周波数信号に変換される。変換された中間周波数信号は、復調器16に入力されると共に、同期キャリア再生器22に入力される。
同期キャリア再生器22では、映像搬送波が再生されて、再生された搬送波を変調器18に供給する。また、復調器16では、再放送する番組の映像信号と音声信号とがベースバンドに復調される。この場合、復調器16において同期キャリア再生器22からの映像搬送波を用いて同期検波するようにしてもよい。そして、映像信号はゴーストキャンセラ回路17を介して変調器18に入力され、音声信号は直接変調器18に入力される。ゴーストキャンセラ回路18では、ゴースト成分を除去するための基準信号(GCR信号:Ghost Cancel Reference) を検出して、GCR信号により映像信号中に含まれるゴースト成分を除去するようにしている。
この変調器18では同期キャリア再生器22において再生された映像搬送波が、ゴースト除去された映像信号および音声信号により変調されることにより、コンポジット信号が生成される。生成されたコンポジット信号はミキサ19において、局部発振器21からの局発信号により所定のチャンネルに周波数変換されて、BPF20により不要波成分が除去されてアンテナ切換器23へ向けて出力される。この場合、変調器18においては再生された映像搬送波を変調していると共に、ミキサ15とミキサ19とに共通の局発信号が局部発振器21から供給されているので、再送信装置2に入力されるテレビジョン放送信号と、再送信装置2から出力されるテレビジョン放送信号とは同期するようになる。
」(段落【0015】?【0020】)

(k5-3)「この場合、前述したように、再送信装置1から出力されるテレビジョン放送信号は、再送信装置2で受信されるテレビジョン放送信号に同期しているので、ケーブル伝送された再放送番組を受信しても、同一チャンネルビート妨害が生じることはない。また、降雨や降雪のためマイクロ波回線が劣化したり、障害が発生した場合は、アンテナ切換器23は再送信装置2から出力されるテレビジョン放送信号を選択して出力するようになるため、ケーブルにテレビジョン放送が伝送されなくなることを防止することができる。」(段落【0024】)

(k5-4)「次に、本発明の多方向受信用CATV伝送装置の第2の実施の形態の構成を示すブロック図を図3に示す。図3に示す多方向受信用CATV伝送装置は、再放送番組がUHF放送のチャンネルで伝送される例であり、図2に示す多方向受信用CATV伝送装置と比較して、再送信装置1の構成だけが異なっているので、以下、再送信装置1について説明する。図3において、30はUHFテレビジョン放送を受信するUHFアンテナ、31は所望の周波数帯域を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)、32は再放送するテレビジョン放送の所定のチャンネルを選局して中間周波数信号に変換するミキサ(MIX3)、33はミキサ32に供給する局発信号を発振する局部発振器、34はミキサ32から出力される中間周波数信号を復調してベースバンドの映像信号と音声信号とを得る復調器、35は復調された映像信号からゴースト成分を除去するゴーストキャンセラ回路、36はゴースト除去された映像信号と音声信号とにより搬送波を変調することによりコンポジット信号を生成する変調器、37は変調器36から出力されるコンポジット信号を再放送するテレビジョン放送の所定のチャンネルに周波数変換するためのミキサ(MIX4)、38は不要波成分を除去するバンドパスフィルタ(BPF)である。
このように構成された多方向受信用CATV装置は、VHF放送波の電界が弱い地域に設置されており、多方向受信用CATV装置に向けてVHF放送番組がUHF放送のチャンネルにより送信されている。そこで、UHFテレビジョン放送電波はアンテナ30において受信されてBPF31において所定周波数帯域のみが抽出されて、ミキサ32に入力される。ミキサ32には、局部発振器33からの局発信号が供給されて、ミキサ32に入力されたUHFテレビジョン放送の所定のチャンネルの信号が中間周波数信号に変換される。変換された中間周波数信号は、復調器34に入力される。
この復調器34では、再放送する番組の映像信号と音声信号とがベースバンドに復調される。この場合、復調器34において図示しない同期キャリア再生器で再生した映像搬送波を用いて同期検波するようにしてもよい。そして、映像信号はゴーストキャンセラ回路35を介して変調器36に入力され、音声信号は直接変調器36に入力される。ゴーストキャンセラ回路35では、前記GCR信号により映像信号中に含まれるゴースト成分を除去するようにしている。
この変調器36では再送信装置2の同期キャリア再生器22において再生された映像搬送波が、ゴースト除去された映像信号および音声信号により変調されることにより、コンポジット信号が生成される。生成されたコンポジット信号はミキサ37において、再送信装置2の局部発振器21からの局発信号により所定のチャンネルに周波数変換されて、BPF38により不要波成分が除去されてアンテナ切換器23へ向けて出力される。この場合、変調器36においては再送信装置2で再生された映像搬送波を変調していると共に、ミキサ15とミキサ37とに共通の局発信号が局部発振器21から供給されているので、再送信装置2に入力されるテレビジョン放送信号と、再送信装置1から出力されるテレビジョン放送信号とは同期するようになる。したがって、ケーブル伝送された再放送番組を受信しても、同一チャンネルビート妨害が生じることはない。
また、VHFアンテナ13と再送信装置2との間が切断される等の再送信装置2の受信系に障害が発生した場合は、再送信装置2にはVHFテレビジョン放送信号が入力されないため、同期キャリア再生器22は映像搬送波を再生することができないことになる。すると、再送信装置1には映像搬送波が供給されないことになるので、変調器36らコンポジット信号が出力されず、再放送番組のテレビジョン放送ができないことになる。そこで、信号検出器39において、再送信装置2から映像搬送波が供給されているか否かを検出し、供給されていないと判断した場合には、キャリア切換器40を同期キャリア再生器22側から映像キャリア発振器41側へ切り換えるようにする。
これにより、変調器36には映像キャリア発振器41からの映像搬送波が供給されるため、コンポジット信号が生成されて出力されるようになる。この場合、映像キャリア発振器41が発振する映像搬送波の周波数は、テレビジョン放送の映像搬送波の周波数と理想的には同一の周波数が望ましいが、現実的にはほぼ等しい周波数であればよい。また、再送信装置2の局部発振器21の発振が停止される事故が生じる恐れもあり、局部発振器21の発振が停止されると、ミキサ15、ミキサ19、およびミキサ37において周波数変換が行えなくなる。この場合、再送信装置1および再送信装置2からはテレビジョン放送信号が出力されず、ケーブル放送することができない。」(段落【0032】-【0037】)

6 甲第6号証の記載

甲第6号証(JEITA 地上デジタル放送ケーブル再送信パススルー方式に関する報告書、第9乃至12頁)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(k6-1)「パススルーの1つの方式は、アンテナで受信した地上デジタルテレビジョン放送信号からそれぞれのチャンネルを選択し(帯域抽出という)レベル調整をして、放送波と同じ周波数でケーブルテレビ施設に流す方式で、同一周波数パススルーと呼ぶ。全てのチャンネルをこの方式で送出されたCATVパススルー伝送信号の周波数配列は、図2-6のように放送信号(電波)と同じ配列となる。また、この方式に使用する機器の基本部分を図2-7に示す。受信は地上デジタル放送受信機でよい。」(第10頁)

7 甲第7号証の記載

甲第7号証(実公昭57-1493号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(k7-1)「本考案は変調されたテレビジョン信号をケーブル伝送するケーブルテレビジョン伝送装置に関する。
ケーブルテレビジョン装置の受信点において空間に存在するテレビジョン放送電波のチャンネルでテレビジョン信号をケーブル伝送する場合、受像機の遮蔽性能が十分でないと、放送電波およびケーブル伝送信号の映像搬送波周波数差に起因するビート妨害が生じ、受像画面が見苦しくなる。
したがって本考案の目的は、上記のビード妨害を軽減したケーブルテレビジョン伝送装置を提供することである。
本考案によるケーブルテレビジョン伝送装置においては、ケーブル伝送に使用するチャンネルと同一チャンネルのテレビジョン放送電波を受信し、この放送電波の搬送波と同期した信号を得、この信号をケーブル伝送の搬送波として利用している。すなわち、ケーブル伝送信号の搬送波を空間に存在する放送電波の搬送波から得ており、両者は同期関係にあるので、ビート妨害が生じることがない。」(1頁2欄15行?23行)

(k7-2)「次に図面を参照して本考案を詳細に説明する。まず、第1図を参照すると、この図に示した本考案の一実施例は、ケーブル伝送されるテレビジョン信号が自主制作番組である場合の実施例である。空間に存在する放送電波は受信空中線10で受けられ、混合器11において局部発振器12からの信号と混合され中間周波数帯に変換される。フィルター13は中間周波帯にて放送電波の映像搬送波を選別し、この映像搬送波はリミッター14でAM成分が抑圧された後位相比較器15に加えられる。位相比較器15からの位相誤差信号で電圧制御発振器16を制御する。電圧制御発振器16の出力信号は位相比較器15の他の入力となり、リミッター13の出力である放送電波の映像搬送中間周波数と比較される。このようにして、電圧制御発振器16の出力には、中間周波帯に変換された放送電波映像搬送波と同期した信号を得ることが出来る。この信号は、映像変調器17に加えられ、映像入力端子18からの自主番組映像信号によって変調される。変調された信号は混合器19において局部発振器12からの信号と混合されて、受信空中線10で受信された放送電波の映像搬送波周波数に周波数変換され、出力端子20からケーブルに送られケーブル伝送される。」(1頁2欄25行?2頁3欄10行)

(k7-3)「電圧制御発振器16の出力信号は、中間周波帯に変換された放送電波映像搬送波と同期しているので、混合器19からのケーブル伝送信号の映像搬送波も、空間に存在する放送電波のチャンネルと同一チャンネルでケーブル伝送された信号を受信してもビード妨害は現われない。」(2頁3欄11行?17行)

(k7-4)「次に第2図を参照すると、この図に示した本考案の他の実施例は、ケーブル伝送されるテレビジョン信号がテレビジョン再放送番組である場合の実施例である。空中線21、混合器22、局部発振器23、フィルター24およびリミッター25は第1図に示した実施例の場合と全く同一である。この実施例はさらに、再放送しようとするテレビジョン信号を受ける第二の空中線26を有している。空中線26で受信した再放送しようとする信号の映像搬送波は混合器27、フィルター28およびリミッター29を通して中間周波帯に変換される。このようにして中間周波帯に変換された二つの映像搬送波(リミッター25および29の出力信号)は位相比較回路30に加えられて位相比較され、その位相差に応じた出力で電圧制御発振器31を制御する。電圧制御発振器31の出力は混合器27に加えられているので、すなわち位相同期ループがつくられているので、二つの映像搬送中間周波数は互いに一致するように制御される。」(2頁3欄18行?4欄9行)

(k7-5)「このようにして、空中線21から放送電波の映像搬送中間周波に同期された再放送しようとする信号の中間周波信号は混合器32に加えられ、局部発振器23からの信号と混合されて、空中線21で受信された放送電波の映像搬送周波数に変換され、出力端子33からケーブルに送られケーブル伝送される。」(2頁4欄10行?16行)

(k7-6)「このようにして、再放送される信号は空中線21で受けられた放送電波と同一のチャンネルに変換されるので、その映像搬送波は放送電波のそれに一致しているのでビート妨害は起こらない。」(2頁4欄17行?20行)

第7 当審の判断

1 無効理由(進歩性)について
(1)本件特許発明1について

ア 甲1ないし甲7に記載された発明・事項・技術

(ア)甲1に記載された発明

以下、甲1の上述第6 1に挙げた記載に基づき、甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)を認定する。

a 「ヘッドエンド装置10」

記載(k1-7)によれば、「ヘッドエンド装置10」は、「VHFテレビ放送(アナログ)を行う地上局からの放送電波を受信するVHFアンテナ2、UHFテレビ放送(アナログ放送)を行う地上局からの放送電波を受信するUHFアンテナ4、CS放送用の通信衛星(CS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のCS受信信号に周波数変換して出力するCSアンテナ6、及び、BSデジタル放送を行う放送衛星(BS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のBS受信信号に周波数変換して出力するBSアンテナ8を備えた」ものであり、「ヘッドエンド装置10においては、VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされている」。
よって、「VHFテレビ放送(アナログ)を行う地上局からの放送電波を受信するVHFアンテナ2、UHFテレビ放送(アナログ放送)を行う地上局からの放送電波を受信するUHFアンテナ4、CS放送用の通信衛星(CS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のCS受信信号に周波数変換して出力するCSアンテナ6、及び、BSデジタル放送を行う放送衛星(BS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のBS受信信号に周波数変換して出力するBSアンテナ8を備え、VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10」を認めることができる。

b 「BSアンテナ8からのBS受信信号」

記載(k1-7)によれば「BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされている」。
そして、「復変調部20」については、記載(k1-8)によれば、「各復変調部20には、受信信号入力端子20aに入力されたBS受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調するBSデジタルチューナ22と、BSデジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24とが設けられている。」
また、記載(k1-3)によれば、「端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できる」。
よって、「ヘッドエンド装置10」は、
「BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされており、各復変調部20には、受信信号入力端子20aに入力されたBS受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調するBSデジタルチューナ22と、BSデジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24とが設けられており、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できる」ものである。

c 「所定伝送チャンネル」

「所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)」とは、記載(k1-2)および記載(k1-3)によれば、「地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号」のことである。

d 「地上波デジタル放送」

記載(k1-6)、記載(k1-10)によれば、「本発明のヘッドエンド装置」は、「地上波デジタル放送を再送信するCATVシステムに適用することもできる」ものであり、「デジタルチューナとして、地上波デジタル放送を受信する地上波デジタルチューナを設けるようにすれば、地上波デジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号として再送信することができる」。

e まとめ

以上、まとめると、甲1発明として以下の発明を認めることができる。

VHFテレビ放送(アナログ)を行う地上局からの放送電波を受信するVHFアンテナ2、UHFテレビ放送(アナログ放送)を行う地上局からの放送電波を受信するUHFアンテナ4、CS放送用の通信衛星(CS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のCS受信信号に周波数変換して出力するCSアンテナ6、及び、BSデジタル放送を行う放送衛星(BS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のBS受信信号に周波数変換して出力するBSアンテナ8を備え、VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされており、各復変調部20には、受信信号入力端子20aに入力されたBS受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調するBSデジタルチューナ22と、BSデジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24とが設けられており、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴でき、
所定伝送チャンネルとは、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)であり、
地上波デジタル放送を再送信するCATVシステムに適用することもできるものであり、デジタルチューナとして、地上波デジタル放送を受信する地上波デジタルチューナを設けるようにすれば、地上波デジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号として再送信することができる
ヘッドエンド装置。

(イ)甲第2号証の2に記載された事項

「アナログ放送終了のための体制と計画」の検討にあたり、特に留意すべき点として、「現在、一世帯に2台のテレビがあるとされているが、期間内に全てのテレビの完全デジタル対応を急ぐとアナログテレビの廃棄問題が生じ、一方で受信機の完全デジタル対応化も不可能と予想されるので、一定期間はケーブルテレビでのデジ-アナ変換対応を検討すべきと考える。」と記載されている。

すなわち、甲第2号証の2には、アナログテレビの廃棄問題、受信機の完全デジタル対応化が不可能と予想されることから、アナログ放送終了の後、一定期間はケーブルテレビでデジ-アナ変換対応を検討すべきということがアナログ放送終了のための体制と計画を検討するにあたり、特に留意すべき事項であることが記載されている。

(ウ)甲第3号証記載技術

記載(k3-1)によれば、甲3に記載された技術は、「CATVなどの共同受信施設のヘッドエンド装置」「等に利用される受信したテレビ放送波信号の搬送波周波数と全く同一の周波数で再送信すると共に、その再送信に際して」「各種映像信号処理が行われる同期型テレビ再送信装置に関する」ものである。
記載(k3-2)によれば、「一般的には、受信チャンネルと同一チャンネルで送信する必要があるが、放送電波の受信周波数と有線テレビ施設の送信周波数が僅かに異なると、テレビ放送波が有線テレビ施設の信号を干渉してビート妨害を与える」「ため、このビート妨害を軽減するためには、有線テレビ施設の送信周波数を放送電波の周波数と位相同期させる必要があ」り、「また、ゴースト除去以外でも受信した信号に他の映像信号を重畳したり、他の映像信号との信号処理をするなど各種の映像信号処理をして、再度同一チャンネルで送信する場合には、同様に位相同期を行う必要がある」。
その際、記載(k3-3)によれば、「加入者での潜在電界による同一チャンネルビート妨害を軽減するために高周波位相を同期させる機能を有した変調器を用い」る。
そして、記載(k3-5)のように、「従来の同期型テレビ再送信装置」では、「位相同期をとるために、同期制御回路(位相比較器、リミッタ)及び局部発振回路が専用チャンネル用となり、自由に任意のチャンネルに設定できない。」、「中間周波信号を取出すための周波数変換回路、変調用中間周波信号発振器(搬送波発振回路)、局部発振器及び周期制御回路が必要であり、回路点数が多く、コスト高である。」、「位相同期回路にリミッタによる搬送波信号抽出を行っており、映像信号処理がゴースト除去の場合にはゴーストによる位相ひずみの影響によって、抽出した搬送波信号(中間周波)の位相誤差による位相同期の性能が劣化する。」等の課題を克服するために、
「すべてのチャンネルに対応した同一チャンネルの再変調のチャンネルが設定でき、専用回路を不要とし、すべてのチャンネルが全く同一の回路で構成でき、映像信号処理用のチューナ内で同期検波のために使用されている位相ひずみの少ない搬送波を用いた同期型テレビ再送信装置を提供する」ものであって、
記載(k3-7)のような、「従来からゴースト除去チューナ10の」「周波数変換回路A12と局部発振回路13で構成され」る「選局回路11」の「局部発振回路13からの出力信号を用い」、「周波数変換回路B22用の局部発振信号」とし、
「同期検波回路15及び搬送波再生回路16で構成されている」「一般の検波回路14」の「搬送波再生回路16からの出力信号を用い」、「AM変調器21用の搬送波信号」とすることにより、
「周波数変換回路B22からの出力信号の周波数は、受信したテレビ放送波信号のなかで、選局回路11で選局した信号に位相同期し、かつゴースト除去回路17でゴーストを除去したテレビ放送波信号を得ることができる」ようにする技術が記載されている。
また、記載(k3-6)によれば、「映像信号処理がゴースト除去の場合にはテレビ放送波信号を受信するゴースト除去チューナの局部発振信号により周波数変換して得られる中間周波信号から映像搬送波信号を抽出する」から、上述の「AM変調器21用の搬送波信号」とすることは「AM変調器21用の搬送波信号」を抽出することである。

つまり、甲3に記載された技術(以下、甲3記載技術ともいう。)として、「CATVなどの共同受信施設のヘッドエンド装置等に利用される受信したテレビ放送波信号の搬送波周波数と全く同一の周波数で再送信すると共に、その再送信に際して各種映像信号処理が行われる同期型テレビ再送信装置に関する技術であって、
従来の同期型テレビ再送信装置では、「位相同期をとるために、同期制御回路(位相比較器、リミッタ)及び局部発振回路が専用チャンネル用となり、自由に任意のチャンネルに設定できない。」、「中間周波信号を取出すための周波数変換回路、変調用中間周波信号発振器(搬送波発振回路)、局部発振器及び周期制御回路が必要であり、回路点数が多く、コスト高である。」、「位相同期回路にリミッタによる搬送波信号抽出を行っており、映像信号処理がゴースト除去の場合にはゴーストによる位相ひずみの影響によって、抽出した搬送波信号(中間周波)の位相誤差による位相同期の性能が劣化する。」等の課題を克服するために、
すべてのチャンネルに対応した同一チャンネルの再変調のチャンネルが設定でき、専用回路を不要とし、すべてのチャンネルが全く同一の回路で構成でき、映像信号処理用のチューナ内で同期検波のために使用されている位相ひずみの少ない搬送波を用いた同期型テレビ再送信装置を提供するものであって、
加入者での潜在電界による同一チャンネルビート妨害を軽減するために高周波位相を同期させる機能を有した変調器を用いる構成として、
周波数変換回路A12と局部発振回路13で構成される選局回路11の局部発振回路13からの出力信号を用い、周波数変換回路B22用の局部発振信号とするとともに、
同期検波回路15及び搬送波再生回路16で構成されている一般の検波回路14の搬送波再生回路16からの出力信号を用い、AM変調器21用の搬送波信号を抽出することにより、
周波数変換回路B22からの出力信号の周波数は、受信したテレビ放送波信号のなかで、選局回路11で選局した信号に位相同期し、かつゴースト除去回路17でゴーストを除去したテレビ放送波信号を得ることができるようにする」技術が認められる。

(エ)甲第4号証に記載された技術

記載(k4-3)によると、「CATV加入者の居住する地域の地元TV局が、再送信するTV信号の送信チャンネルと同じチャンネルによりTV電波を送信している場合には、」加入者のテレビ画面上に視覚的な妨害が生じることになり、
その妨害について、記載(k4-3)によれば、「両TV信号の搬送波周波数のずれに応じて、妨害画像が上下左右に移動するので非常に見苦しい」から、「このような視覚的な妨害を軽減するために、CATV局側では、再送信TV信号の搬送波周波数が地元TV局の送信搬送波周波数と一致するように、公知のPLLを設けて位相同期させて妨害画像が上下左右に移動するのを抑えて」おり、
記載(k4-4)によれば、「同じチャンネルの2つのTV信号の画像が同一であるならば視覚的妨害は軽減できる」。

つまり、甲4に記載された技術(以下、甲4記載技術ともいう。)として、
CATV加入者の居住する地域の地元TV局が、再送信するTV信号の送信チャンネルと同じチャンネルによりTV電波を送信している場合には、
両TV信号の搬送波周波数のずれに応じて、妨害画像が上下左右に移動するので非常に見苦しく、
同じチャンネルの2つのTV信号の画像が同一であるならば、
このような視覚的な妨害を軽減するために、CATV局側では、再送信TV信号の搬送波周波数が地元TV局の送信搬送波周波数と一致するように、公知のPLLを設けて位相同期させて妨害画像が上下左右に移動するのを抑えており、視覚的妨害は軽減できる
という技術が認められる。

(オ)甲5に記載された技術

記載(k5-1)によれば、甲5に記載された技術(以下、甲5記載技術ともいう。)は、「受信電界強度の低い地域にテレビジョン放送信号をケーブルを用いて伝送するようにした多方向受信用CATV伝送装置に関する」ものであり、
記載(k5-2)によると、
「VHFテレビジョン放送を受信するVHFアンテナ」13からの信号が、「所望の周波数帯域を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)」14、「再放送するテレビジョン放送の所定のチャンネルを選局して中間周波数信号に変換するミキサ(MIX1)」15、「ミキサ15から出力される中間周波数信号を復調してベースバンドの映像信号と音声信号とを得る復調器」16、「復調された映像信号からゴースト成分を除去するゴーストキャンセラ回路」17、「ゴースト除去された映像信号と音声信号とにより搬送波を変調するようにしてコンポジット信号を生成する変調器」18、「変調器18から出力されるコンポジット信号を再放送するテレビジョン放送の所定のチャンネルに周波数変換するためのミキサ(MIX2)」19および「不要波成分を除去するバンドパスフィルタ(BPF)」20により「再送信装置2」が構成され、
「ミキサ15およびミキサ19に局発信号を共通に供給する局部発振器」21、「ミキサ15から出力される中間周波数信号から搬送波を再生する同期キャリア再生器」22と有し、
「同期キャリア再生器22から出力される再生された搬送波は、再送信装置1の変調器4、および再送信装置2の変調器18に共通に供給されて」おり、
「変調器18では同期キャリア再生器22において再生された映像搬送波が、ゴースト除去された映像信号および音声信号により変調されることにより、コンポジット信号が生成され」、「生成されたコンポジット信号はミキサ19において、局部発振器21からの局発信号により所定のチャンネルに周波数変換されて、BPF20により不要波成分が除去されてアンテナ切換器23へ向けて出力され」、「この場合、変調器18においては再生された映像搬送波を変調していると共に、ミキサ15とミキサ19とに共通の局発信号が局部発振器21から供給されているので、再送信装置2に入力されるテレビジョン放送信号と、再送信装置2から出力されるテレビジョン放送信号とは同期するようになる。」

つまり、甲5記載技術として、「受信電界強度の低い地域にテレビジョン放送信号をケーブルを用いて伝送するようにした多方向受信用CATV伝送装置に関するものであり、
VHFテレビジョン放送を受信するVHFアンテナ13からの信号が、
所望の周波数帯域を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)14、再放送するテレビジョン放送の所定のチャンネルを選局して中間周波数信号に変換するミキサ(MIX1)15、ミキサ15から出力される中間周波数信号を復調してベースバンドの映像信号と音声信号とを得る復調器16、復調された映像信号からゴースト成分を除去するゴーストキャンセラ回路17、ゴースト除去された映像信号と音声信号とにより搬送波を変調するようにしてコンポジット信号を生成する変調器18、変調器18から出力されるコンポジット信号を再放送するテレビジョン放送の所定のチャンネルに周波数変換するためのミキサ(MIX2)19および不要波成分を除去するバンドパスフィルタ(BPF)20により再送信装置2が構成され、
ミキサ15およびミキサ19に局発信号を共通に供給する局部発振器21、ミキサ15から出力される中間周波数信号から搬送波を再生する同期キャリア再生器22と有し、
同期キャリア再生器22から出力される再生された搬送波は、再送信装置1の変調器4、および再送信装置2の変調器18に共通に供給されており、
変調器18では同期キャリア再生器22において再生された映像搬送波が、ゴースト除去された映像信号および音声信号により変調されることにより、コンポジット信号が生成され、生成されたコンポジット信号はミキサ19において、局部発振器21からの局発信号により所定のチャンネルに周波数変換されて、BPF20により不要波成分が除去されてアンテナ切換器23へ向けて出力され、この場合、変調器18においては再生された映像搬送波を変調していると共に、ミキサ15とミキサ19とに共通の局発信号が局部発振器21から供給されているので、再送信装置2に入力されるテレビジョン放送信号と、再送信装置2から出力されるテレビジョン放送信号とは同期するようになる」技術が認められる。

(カ)甲6に記載された技術

記載(k6-1)によると、甲6に記載された技術(以下、甲6記載技術という。)として、「アンテナで受信した地上デジタルテレビジョン放送信号からそれぞれのチャンネルを選択し(帯域抽出という)レベル調整をして、放送波と同じ周波数でケーブルテレビ施設に流す方式で、同一周波数パススルーと呼ぶ」パススルーの方式の技術が認められる。

(キ)甲7に記載された発明

記載(k7-1)によれば、甲7には「変調されたテレビジョン信号をケーブル伝送するケーブルテレビジョン伝送装置」に関するものであり、
「ケーブルテレビジョン装置の受信点において空間に存在するテレビジョン放送電波のチャンネルでテレビジョン信号をケーブル伝送する場合、受像機の遮蔽性能が十分でないと、放送電波およびケーブル伝送信号の映像搬送波周波数差に起因するビート妨害が生じ、受像画面が見苦しくなる」という課題を有し、
「ビード妨害を軽減したケーブルテレビジョン伝送装置を提供する」ことを目的とし、
「ケーブル伝送に使用するチャンネルと同一チャンネルのテレビジョン放送電波を受信し、この放送電波の搬送波と同期した信号を得、この信号をケーブル伝送の搬送波として利用している。すなわち、ケーブル伝送信号の搬送波を空間に存在する放送電波の搬送波から得ており、両者は同期関係にあるので、ビート妨害が生じることがない」ものであり、

具体的には、記載(k7-2)によれば「ケーブル伝送されるテレビジョン信号が自主制作番組である場合の実施例」が示され、「空間に存在する放送電波は受信空中線10で受けられ、混合器11において局部発振器12からの信号と混合され中間周波数帯に変換され」、「フィルター13は中間周波帯にて放送電波の映像搬送波を選別し、この映像搬送波はリミッター14でAM成分が抑圧された後位相比較器15に加えられ」、「位相比較器15からの位相誤差信号で電圧制御発振器16を制御」し、「電圧制御発振器16の出力信号は位相比較器15の他の入力となり、リミッター13の出力である放送電波の映像搬送中間周波数と比較され」、「このようにして、電圧制御発振器16の出力には、中間周波帯に変換された放送電波映像搬送波と同期した信号を得ることが出来」、「この信号は、映像変調器17に加えられ、映像入力端子18からの自主番組映像信号によって変調され」、「変調された信号は混合器19において局部発振器12からの信号と混合されて、受信空中線10で受信された放送電波の映像搬送波周波数に周波数変換され、出力端子20からケーブルに送られケーブル伝送され」、「電圧制御発振器16の出力信号は、中間周波帯に変換された放送電波映像搬送波と同期しているので、混合器19からのケーブル伝送信号の映像搬送波も、空間に存在する放送電波のチャンネルと同一チャンネルでケーブル伝送された信号を受信してもビード妨害は現われない」というものである。

すなわち、甲7に記載された発明(以下、甲7発明ともいう。)として、以下の発明を認めることができる。

空間に存在する放送電波は受信空中線10で受けられ、混合器11において局部発振器12からの信号と混合され中間周波数帯に変換され、フィルター13は中間周波帯にて放送電波の映像搬送波を選別し、この映像搬送波はリミッター14でAM成分が抑圧された後位相比較器15に加えられ、位相比較器15からの位相誤差信号で電圧制御発振器16を制御し、電圧制御発振器16の出力信号は位相比較器15の他の入力となり、リミッター13の出力である放送電波の映像搬送中間周波数と比較され、このようにして、電圧制御発振器16の出力には、中間周波帯に変換された放送電波映像搬送波と同期した信号を得ることが出来、この信号は、映像変調器17に加えられ、映像入力端子18からの自主番組映像信号によって変調され、変調された信号は混合器19において局部発振器12からの信号と混合されて、受信空中線10で受信された放送電波の映像搬送波周波数に周波数変換され、出力端子20からケーブルに送られケーブル伝送され、電圧制御発振器16の出力信号は、中間周波帯に変換された放送電波映像搬送波と同期しているので、混合器19からのケーブル伝送信号の映像搬送波も、空間に存在する放送電波のチャンネルと同一チャンネルでケーブル伝送された信号を受信してもビード妨害は現われないケーブルテレビジョン伝送装置。

イ 対比(本件特許発明1と甲1発明との対比)

(ア)構成要件A「デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、」について

甲1発明は「地上波デジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号として再送信することができる」ものであり、
「再送信装置」ということができ、
「地上波デジタル放送」を「再送信」する場合は、「BSアンテナ8からのBS受信信号について」の処理が、「地上波デジタル放送を受信するアンテナ(UHFアンテナ4)からの地上デジタル受信信号について」の処理となり、「BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出する」における「BSデジタル放送」は「地上波デジタル放送」となり、
「所定伝送チャンネル」は「地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)」であるから、
「地上波デジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎に地上波デジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出する」というものである。
そして、該処理内容は、最終的に「再送信」するものであり、
また、「選局・復調して」、「再度変調すること」は、「変換」といえるから、
該処理内容は、「地上波デジタル放送」を「地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号」に「変換」して「再送信」することといえる。
さらに、「地上波デジタル放送」は「デジタル放送」といえ、
「地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号」に「変換」することは、「アナログ放送の周波数帯に変換」することといえるから、
該処理内容は、「デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する」といえる。
よって、甲1発明は「デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置」といえる点で本件特許発明1と一致する。

(イ)構成要件B「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」について

甲1発明は、上述(ア)のとおり「地上波デジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎に地上波デジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生」するものであり、
その「復変調部20」には、「受信信号入力端子20aに入力されたBS受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調するBSデジタルチューナ22と、BSデジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24とが設けられ」ており、
「地上波デジタル放送」の場合は、「受信信号入力端子20aに入力された地上波デジタル受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調する地上波デジタルチューナ22と、地上波デジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24とが設けられ」ているものである。
そして、この設けられたうちの、「受信信号入力端子20aに入力された地上波デジタル受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調する地上波デジタルチューナ22」は、
「受信信号入力端子20aに入力された地上波デジタル受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し」ており、
「入力された」地上波デジタル受信信号から「予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局」することは、「デジタル放送を受信」といえ、
また、(テレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局した)「そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調する」ことは、「映像信号及び音声信号を復調する」といえることは明らかであり、
そのような「地上波デジタルチューナ」を「デジタル放送復調部」と称してよいことも明らかである。
よって、甲1発明における「受信信号入力端子20aに入力された地上波デジタル受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調する地上波デジタルチューナ22」は、本件特許発明1と「デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」といえる点で一致する。
もっとも、本件特許発明1は、受信するデジタル放送が「アナログ放送波のチャンネルに対応する」のに対し、甲1発明は、そのようにしない点(相違点a1:チャンネルに対応)で相違する。

(ウ)構成要件C「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」について

本件特許発明1は「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を具備するのに対し、
甲1発明は具備しない点で相違する。(→相違点a2:キャリア抽出部)

(エ)構成要件D「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、前記アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し」について

上述(イ)でも検討したように、甲1発明における「復変調部20」は、「地上波デジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24」を設けたものであり、
「地上波デジタルチューナ22」を「デジタル放送復調部」と称してよいことは、上述(イ)のとおりであり、
該「変調器24」は、甲1発明の「その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調する」ための構成であるから、「変調器24」における変調は、再変調ということができ、また、その変調により得られた信号は、上述(ア)のように「再送信」されるものであるから、「再送信信号」と称しても差し支えなく、
「変調器24」は「アナログテレビ放送」に変換するものであるから、「アナログ変調部」と称しても差し支えない。
また、上述(ア)からもわかるように「地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号」は、「アナログ放送の周波数帯」といえるから、
「地上波デジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24」は、「デジタル放送復調部で復調された映像信号および音声信号を、再変調し、アナログ放送波の周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」ということができ、甲1発明は、該「アナログ変調部」を具備しているといえる。

また、本件特許発明1における「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、前記アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」も「デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波の周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」ということができる。
よって、本件特許発明1と甲1発明は、「デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波の周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し」とする点で一致する。
もっとも、「アナログ変調部」において、「周波数帯」を、本件特許発明1は「前記アナログ放送波と同じ周波数帯」、つまり、構成要件Cにより受信される「前記アナログ放送波」と「同じ周波数帯」とするのに対し、
甲1発明は、そうとはしない点で相違する。(→相違点a3:アナログ放送波と同じ周波数帯)

(オ)構成要件E「前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とし、」について

甲1発明の「地上波デジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24」は、「デジタル放送復調部で復調された映像信号および音声信号を再変調し、アナログ放送波の周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」ということができることは、上述(エ)のとおりであるから、
「アナログ変調部は、デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、再変調し、再送信信号とする」ということができる。
また、本件特許発明1も「アナログ変調部は、デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、再変調し、再送信信号とする」から、
両者は、「アナログ変調部は、デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、再変調し、再送信信号とすることを特徴とする再送信装置」である点で一致する。
もっとも、「再変調」し、「再送信信号とする」ことを、本件特許発明1は、「前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して」再変調し、「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい」再送信信号とするのに対し、
甲1発明は、そうとはしない点で相違する。(→相違点a4:アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい)

(カ)構成要件P「前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応する」について

上述(イ)で検討したように、甲1発明において受信する「デジタル放送」は、「前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送」としておらず、また、上述(ウ)で検討したように、甲1発明は構成要件Cの「キャリア抽出部」を具備していないから、
本件特許発明1は、「前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応する」のに対し、
甲1発明は、そうとはしない点(相違点a5:数の対応)で相違する。

(キ)まとめ

以上の結果によれば、本件特許発明1と甲1発明は、
「デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、
デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部と、
デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、アナログ放送波の周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し、
アナログ変調部は、デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、再変調し、再送信信号とすることを特徴とする再送信装置。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点a1:チャンネルに対応
本件特許発明1は、受信するデジタル放送が「アナログ放送波のチャンネルに対応する」のに対し、甲1発明は、そのようにしない点

相違点a2:キャリア抽出部
本件特許発明1は「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を具備するのに対し、
甲1発明は具備しない点

相違点a3:アナログ放送波と同じ周波数帯
「アナログ変調部」において、「周波数帯」を、本件特許発明1は「前記アナログ放送波と同じ周波数帯」、つまり、構成要件Cにより受信される「アナログ放送波」と「同じ周波数帯」とするのに対し、
甲1発明は、そうとはしない点

相違点a4:アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい
「再変調」し、「再送信信号とする」ことを、
本件特許発明1は、「前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して」再変調し、「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい」再送信信号とするのに対し、
甲1発明は、そうとはしない点

相違点a5:数の対応
本件特許発明1は、「前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応する」のに対し、
甲1発明は、そうとはしない点

ウ 判断(本件特許発明1と甲1発明との相違点について)

本件特許発明1と甲1発明との上記相違点について、以下検討する。

(ア)相違点a1ないし相違点a4の関係について

本件特許発明1は、本件特許明細書の段落【0001】によれば、「地上デジタル放送の番組内容」を「アナログ放送のチャンネルと同じチャンネルにて」「アナログ放送方式で変調」して「再送信」を行うことを前提としており、
その前提の場合に生じる課題「ビート障害」(段落【0007】)を克服するために、「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、
「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、前記アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部」について、「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」という構成を採用したものであるから、
受信するデジタル放送が「アナログ放送波のチャンネルに対応する」(相違点a1)ことを前提とし、(デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯が)「前記アナログ放送波と同じ周波数帯」であることと(相違点a3)、
そのために設けられた「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」(相違点a2)と、
その「キャリア抽出部」から抽出された映像キャリア信号により達成される「キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して」再変調し、「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい」再送信信号とすること(相違点a4)は、
密接に関連しており、それぞれを区別して容易想到性は判断できない。
よって、以下では、相違点a1ないし相違点a4については、まとめて検討する。

(イ) 甲1発明について

甲1発明は、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」(記載(k1-1))という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」(記載(k1-2))ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」(記載(k1-1))を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するように」したものである。

(ウ) 甲2の2記載事項について

甲2の2記載事項は、「アナログ放送終了の後、一定期間はケーブルテレビでデジ-アナ変換対応を検討すべき」であることを開示しているに過ぎず、かかる甲第2号証の2の開示が、およそ、本件特許発明1の再送信装置における、上記相違点a1ないしa4に係る構成である「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信」し、「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「前記キャリア抽出部で抽出したアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ことを開示もしくは示唆するものではないことは明らかである。

また、上述(イ)のとおり、甲1発明は、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するように」したものであり、
デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号を他のアナログテレビ放送信号と一緒に送出することにより、従来の一般的なテレビ受信機を用いて視聴できるのであるから、アナログ放送終了の後に新たに「一定期間はケーブルテレビでのデジ-アナ変換対応」をすることなく、デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号を視聴できることは明らかであり、
そうすると、甲1発明においてアナログ放送終了後に新たに「一定期間はケーブルテレビでのデジ-アナ変換対応」をすることは全く想定しておらず、甲1発明に甲第2号証の2に記載の事項を適用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえず、
したがって、甲1発明に甲第2号証の2に記載の事項を適用することにより、上記相違点a1ないしa4に係る構成である「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信」し、「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯を前記アナログ放送波と同じ周波数帯」とし「前記キャリア抽出部で抽出したアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」構成に至らせることは当業者が容易に想到し得たということはできない。
また、甲1発明において、相違点a2に係る「キャリア抽出器」を設けることが当業者容易想到といえない以上、「キャリア抽出器」を規定する相違点a5の「前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応する」とする構成に至らせることも当業者が容易に想到し得たということはできない。

(エ)甲3記載技術について

甲3記載技術は、
従来の同期型テレビ再送信装置では、「位相同期をとるために、同期制御回路(位相比較器、リミッタ)及び局部発振回路が専用チャンネル用となり、自由に任意のチャンネルに設定できない。」、「中間周波信号を取出すための周波数変換回路、変調用中間周波信号発振器(搬送波発振回路)、局部発振器及び周期制御回路が必要であり、回路点数が多く、コスト高である。」、「位相同期回路にリミッタによる搬送波信号抽出を行っており、映像信号処理がゴースト除去の場合にはゴーストによる位相ひずみの影響によって、抽出した搬送波信号(中間周波)の位相誤差による位相同期の性能が劣化する。」等の課題を克服するために、
すべてのチャンネルに対応した同一チャンネルの再変調のチャンネルが設定でき、専用回路を不要とし、すべてのチャンネルが全く同一の回路で構成でき、映像信号処理用のチューナ内で同期検波のために使用されている位相ひずみの少ない搬送波を用いた同期型テレビ再送信装置を提供することを目的として、
「加入者での潜在電界による同一チャンネルビート妨害を軽減するために高周波位相を同期させる機能を有した変調器を用いる構成として、
周波数変換回路A12と局部発振回路13で構成される選局回路11の局部発振回路13からの出力信号を用い、周波数変換回路B22用の局部発振信号とするとともに、
同期検波回路15及び搬送波再生回路16で構成されている一般の検波回路14の搬送波再生回路16からの出力信号を用い、AM変調器21用の搬送波信号を抽出することにより、
周波数変換回路B22からの出力信号の周波数は、受信したテレビ放送波信号のなかで、選局回路11で選局した信号に位相同期し、かつゴースト除去回路17でゴーストを除去したテレビ放送波信号を得ることができるようにする」という構成をとるものである。
一方、上述(イ)のとおり、甲1発明は、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するように」したものであり、
デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号について、「同一チャンネルの再変調のチャンネルが設定でき」るようにするものではないし、
また、「デジタル放送」を受信したチャンネルを「デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号」の「再変調のチャンネル」に「設定」することは想定されておらず、甲1発明に甲3記載技術を適用することが、当業者が容易に想到し得たということはできない。
さらに、仮に甲1発明に甲3記載技術を適用したとしても、本件特許発明1と甲1発明との相違点a1ないしa4の「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信」し、「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯を前記アナログ放送波と同じ周波数帯」とし「前記キャリア抽出部で抽出したアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」構成に至らせることは当業者が容易に想到し得たということはできない。
また、甲1発明において、相違点a2に係る「キャリア抽出器」を設けることが当業者容易想到といえない以上、「キャリア抽出器」を規定する相違点a5の「前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応する」とする構成に至らせることも当業者が容易に想到し得たということはできない。

よって、甲3記載技術に接した当業者が、甲1発明に甲3記載技術を適用することにより、「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信」し、「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「前記キャリア抽出部で抽出したアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」構成とすることも、「前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応する」とする構成とすることも、当業者が容易に想到し得たということはできない。

(オ)甲4記載技術について

甲4記載技術は「CATV加入者の居住する地域の地元TV局が、再送信するTV信号の送信チャンネルと同じチャンネルによりTV電波を送信している場合には、両TV信号の搬送波周波数のずれに応じて、妨害画像が上下左右に移動するので非常に見苦し」いという課題を有し、
「同じチャンネルの2つのTV信号の画像が同一である」ことを前提として、
「再送信TV信号の搬送波周波数が地元TV局の送信搬送波周波数と一致するように、公知のPLLを設けて位相同期させて妨害画像が上下左右に移動するのを抑えており、視覚的妨害は軽減できる」とするものであり、
甲4記載技術が、本件特許発明1の再送信装置における、上記相違点a1ないしa4に係る構成である
「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信」し、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯を前記アナログ放送波と同じ周波数帯」とし「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ための「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設けること
を開示もしくは示唆するものではない。
一方、甲1発明は、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するよう」にされているものであり、
「CATV加入者の居住する地域の地元TV局が、再送信するTV信号の送信チャンネルと同じチャンネルによりTV電波を送信している場合」であり、かつ、「同じチャンネルの2つのTV信号の画像が同一である」ということを開示もしくは示唆するものではないから、
甲1発明において、「CATV加入者の居住する地域の地元TV局」と「「同じチャンネル」で「2つのTV信号の画像が同一である」ようにして、甲1発明に甲4記載技術を適用することが当業者が容易に想到し得たということはできないし、
上述のように、甲4記載技術が、相違点a1ないしa4の構成を開示するものとも認められない。

よって、甲第4号証に接した当業者が、甲1発明に甲4記載技術を適用することにより、「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信」し、「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯を前記アナログ放送波と同じ周波数帯」とし「前記キャリア抽出部で抽出したアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」構成に至らせることは当業者が容易に想到し得たということはできない。
また、甲1発明において、相違点a2に係る「キャリア抽出器」を設けることが当業者容易想到といえない以上、「キャリア抽出器」を規定する相違点a5の「前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応する」とする構成に至らせることも当業者が容易に想到し得たということはできない。

(カ)甲5記載技術について

甲5記載技術は「受信電界強度の低い地域にテレビジョン放送信号をケーブルを用いて伝送するようにした多方向受信用CATV伝送装置に関するものであり、
VHFテレビジョン放送を受信するVHFアンテナ13からの信号が、
所望の周波数帯域を抽出するバンドパスフィルタ(BPF)14、再放送するテレビジョン放送の所定のチャンネルを選局して中間周波数信号に変換するミキサ(MIX1)15、ミキサ15から出力される中間周波数信号を復調してベースバンドの映像信号と音声信号とを得る復調器16、復調された映像信号からゴースト成分を除去するゴーストキャンセラ回路17、ゴースト除去された映像信号と音声信号とにより搬送波を変調するようにしてコンポジット信号を生成する変調器18、変調器18から出力されるコンポジット信号を再放送するテレビジョン放送の所定のチャンネルに周波数変換するためのミキサ(MIX2)19および不要波成分を除去するバンドパスフィルタ(BPF)20により再送信装置2が構成され、
ミキサ15およびミキサ19に局発信号を共通に供給する局部発振器21、ミキサ15から出力される中間周波数信号から搬送波を再生する同期キャリア再生器22と有し、
同期キャリア再生器22から出力される再生された搬送波は、再送信装置1の変調器4、および再送信装置2の変調器18に共通に供給されており、
変調器18では同期キャリア再生器22において再生された映像搬送波が、ゴースト除去された映像信号および音声信号により変調されることにより、コンポジット信号が生成され、生成されたコンポジット信号はミキサ19において、局部発振器21からの局発信号により所定のチャンネルに周波数変換されて、BPF20により不要波成分が除去されてアンテナ切換器23へ向けて出力され、この場合、変調器18においては再生された映像搬送波を変調していると共に、ミキサ15とミキサ19とに共通の局発信号が局部発振器21から供給されているので、再送信装置2に入力されるテレビジョン放送信号と、再送信装置2から出力されるテレビジョン放送信号とは同期するようになる」というものである。
一方、上述(イ)のとおり、甲1発明は、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するように」したものであることから、
甲1発明において、再送信装置に入力されるテレビジョン放送信号と、再送信装置から出力されるテレビジョン放送信号と同期するようにする目的で変調器18においては再生された映像搬送波を変調していると共に、ミキサ15とミキサ19とに共通の局発信号が局部発振器21から供給されている構成とした甲5記載技術を適用することが当業者が容易に想到し得たということはできない。
よって、甲1発明に甲5記載技術を適用することにより、本件特許発明1と甲1発明との相違点a1ないしa4に係る「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信」し、「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯を前記アナログ放送波と同じ周波数帯」とし「前記キャリア抽出部で抽出したアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」構成に至らせることは当業者が容易に想到し得たということはできない。
また、甲1発明において、相違点a2に係る「キャリア抽出器」を設けることが当業者容易想到といえない以上、「キャリア抽出器」を規定する相違点a5の「前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応する」とする構成に至らせることも当業者が容易に想到し得たということはできない。

(キ)甲6記載技術について

甲6記載技術は、「パススルー」に関する技術であり、甲1発明と本件特許発明との上記相違点a1ないしa5と関係ないことは明らかである。

(ク)甲7発明について

甲7発明は「空間に存在する放送電波は受信空中線10で受けられ、混合器11において局部発振器12からの信号と混合され中間周波数帯に変換され、フィルター13は中間周波帯にて放送電波の映像搬送波を選別し、この映像搬送波はリミッター14でAM成分が抑圧された後位相比較器15に加えられ、位相比較器15からの位相誤差信号で電圧制御発振器16を制御し、電圧制御発振器16の出力信号は位相比較器15の他の入力となり、リミッター13の出力である放送電波の映像搬送中間周波数と比較され、このようにして、電圧制御発振器16の出力には、中間周波帯に変換された放送電波映像搬送波と同期した信号を得ることが出来、この信号は、映像変調器17に加えられ、映像入力端子18からの自主番組映像信号によって変調され、変調された信号は混合器19において局部発振器12からの信号と混合されて、受信空中線10で受信された放送電波の映像搬送波周波数に周波数変換され、出力端子20からケーブルに送られケーブル伝送され、電圧制御発振器16の出力信号は、中間周波帯に変換された放送電波映像搬送波と同期しているので、混合器19からのケーブル伝送信号の映像搬送波も、空間に存在する放送電波のチャンネルと同一チャンネルでケーブル伝送された信号を受信してもビード妨害は現われないケーブルテレビジョン伝送装置」である。
一方、上述(イ)のとおり、甲1発明は、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するように」したものであることから、

「生成したテレビ放送信号」を、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号」としての「テレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するようにした甲1発明において、
「空間に存在する放送電波のチャンネルと同一チャンネルでケーブル伝送された信号」のビード妨害が現れないようにすることを目的とする甲7記載技術を適用することが当業者が容易に想到し得たということはできない。

よって、甲1発明に甲7発明を適用することにより、本件特許発明1と甲1発明との相違点a1ないしa4に係る「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信」し、「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯を前記アナログ放送波と同じ周波数帯」とし「前記キャリア抽出部で抽出したアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」構成に至らせることは当業者が容易に想到し得たということはできない。
また、甲1発明において、相違点a2に係る「キャリア抽出器」を設けることが当業者容易想到といえない以上、「キャリア抽出器」を規定する相違点a5の「前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応する」とする構成に至らせることも当業者が容易に想到し得たということはできない。

(ケ)まとめ

上述のように、甲2の2、甲3、甲4、甲5、甲6,甲7についていずれの記載事項・技術を検討しても、甲1発明において、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ための「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設けることが当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

よって、本件特許発明1は、上記甲1ないし甲7に記載された発明および記載事項・技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできない。

エ 対比(本件特許発明1と甲7発明との対比)

(ア)構成要件A「デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、」について

甲7発明における「放送電波」、「自主番組映像信号」、「伝送」は、それぞれ「アナログ放送」、「信号」、「送信」といえ、
該「自主番組映像信号」と「放送電波映像搬送波と同期した信号」は「映像変調器17」によって変調され、「変調された信号は混合器19において局部発振器12からの信号と混合されて、受信空中線10で受信された放送電波の映像搬送波周波数に周波数変換され」るから、
番組をアナログ放送の周波数帯に変換しているといる。
また、本件特許発明1における(変換される)「デジタル放送」も「信号」といえ、「再送信」は「送信」といえるから、
本件特許発明1における「デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置」は、「信号をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置」といえる。
よって、甲7発明と本件特許発明1は「信号をアナログ放送の周波数帯に変換して送信する送信装置」といえる点で一致する。
もっとも、本件特許発明1は、「デジタル放送」を「再送信する再送信装置」であるのに対し、
甲7発明は、そうとはしない点で相違する(→相違点b1:デジタル放送再送信)。

(イ)構成要件B「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」について

甲7発明は、上述(ア)のとおり「デジタル放送」を「再送信する」とはしていないため、
本件特許1は、「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」を具備するのに対し、
甲7発明は、そのような構成を具備しない点(→相違点b1:デジタル放送再送信)で相違する。

(ウ)構成要件C「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」について

甲7発明は、「空間に存在する放送電波は受信空中線10で受けられ、混合器11において局部発振器12からの信号と混合され中間周波数帯に変換され、フィルター13は中間周波帯にて放送電波の映像搬送波を選別し」ており、
上述(ア)と同様、甲7発明における「放送電波」は「アナログ放送波」といえるから、
「空間に存在する放送電波は受信空中線10で受けられ、混合器11において局部発振器12からの信号と混合され中間周波数帯に変換され、」は、「アナログ放送波を受信して」といえ、
「放送電波の映像搬送波を選別」は「映像キャリア信号を抽出」といえ、
このような動作を行う手段は「キャリア抽出部」といえる。
よって、甲7発明は「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を具備する点で本件特許発明1と一致する。
もっとも、受信するアナログ放送波について、
本件特許発明1は「前記アナログ放送波」、すなわち、その「アナログ放送波」の「チャンネルに対応するデジタル放送」が受信されるところの「アナログ放送波」であるのに対し、
甲7発明は、そうとはしない点(→相違点b2:アナログ放送波)で相違する。

(エ)構成要件D「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、前記アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し」について

上述(ア)でも検討したように、甲7発明は「自主番組映像信号」を「変調」しているから、「信号を変調」しているといえる。
甲7発明は「映像信号及び音声信号を変調し」ているといえる。
また、甲7発明は「自主番組映像信号によって変調され、変調された信号は混合器19において局部発振器12からの信号と混合されて、受信空中線10で受信された放送電波の映像搬送波周波数に周波数変換され、」ていることから、「受信された放送電波」(前記アナログ放送波)と同じ「映像搬送波周波数に周波数変換され」ているといえ、同じ「映像搬送波周波数に周波数変換され」ることは「同じ周波数帯の送信信号に変換」といえる。
さらに、「出力端子20からケーブルに送られ」ることは「出力する」といえる。
そして、このような動作を行う手段は「アナログ変調部」といえる。
よって、甲7発明と本件特許発明1は「信号を変調し、前記アナログ放送波と同じ周波数帯の送信信号に変換して出力するアナログ変調部」を具備している点で一致する。
もっとも、上述(ア)のとおり、甲7発明は「デジタル放送」を「再送信する」とはしておらず、
「信号を変調」することについて、本件特許発明は、「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調」とするのに対し、
甲7発明は、そのようにしない点(→相違点b1:デジタル放送再送信)と、
「前記アナログ放送波」が、本件特許発明1は、上述(ウ)のとおりその「チャンネルに対応するデジタル放送」が受信の対象となる「アナログ放送波」であるから、
変調された後の周波数帯について、本件特許発明1は、「前記アナログ放送波と同じ周波数帯」、すなわち、その「アナログ放送波」の「チャンネルに対応するデジタル放送」が受信されるところの「アナログ放送波」と同じ周波数帯とするのに対し、
甲7発明は、受信された「(単なる)アナログ放送波と同じ周波数帯」とする点(→相違点b2:アナログ放送波)で相違する。

(オ)構成要件E「前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とし、」について

上述(エ)のとおり、甲7発明は「アナログ変調部」といえる手段を具備しており、前記「アナログ変調部」は、「信号を変調」する際は、上述(イ)で検討した「キャリア抽出部」で「放送電波の映像搬送波」を抽出し、上述(ア)のとおり「放送電波映像搬送波と同期した信号」で変調するから、「前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して変調」しているといえ、
そのように変調された信号は、「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号」となるものである。
よって、甲7発明は、「前記アナログ変調部は、信号を変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とし、」といえる点で、本件特許発明1と一致する。
もっとも、上述(エ)と同様に、
「信号を変調」することについて、本件特許発明は、「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調」とするのに対し、
甲7発明は、そのようにしない点(相違点b1:デジタル放送再送信)で相違する。

(カ)構成要件P「前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応する」について

すでに相違点b1として認めたように、甲7発明は「デジタル放送復調部」を具備していないため、
本件特許発明1が「前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応する」とするのに対し、
甲7発明は、そのようにしない点(相違点b3:デジタル放送部復調部の数)で相違する。

(キ)まとめ

以上の結果によれば、本件特許発明1と甲7発明は、
「番組をアナログ放送の周波数帯に変換して送信する送信装置であって、
アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部と、
信号を変調し、前記アナログ放送波と同じ周波数帯の送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し、
前記アナログ変調部は、信号を変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい送信信号とする送信装置。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点b1:デジタル放送再送信
本件特許発明1は、
「デジタル放送」を「再送信する再送信装置」であり、
「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」を具備し、
「映像信号(及び音声信号)を変調」することについて、「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号(及び音声信号)を再変調」とするのに対し、
甲7発明は、そのようにしない点

相違点b2:アナログ放送波
本件特許発明1は、
受信するアナログ放送波について、
「前記アナログ放送波」、すなわち、その「アナログ放送波」の「チャンネルに対応するデジタル放送」が受信されるところの「アナログ放送波」であり、
変調された後の周波数帯について、本件特許発明1は、「前記アナログ放送波と同じ周波数帯」、すなわち、その「アナログ放送波」の「チャンネルに対応するデジタル放送」が受信されるところの「アナログ放送波」と同じ周波数帯とするのに対し、
甲7発明は、受信された「(単なる)アナログ放送波と同じ周波数帯」とする点

相違点b3:デジタル放送部復調部の数
本件特許発明1が「前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応する」とするのに対し、
甲7発明は、そのようにしない点

オ 判断(本件特許発明1と甲7発明との相違点について)

本件特許発明1と甲7発明との上記相違点について、以下検討する。

(ア)甲7発明・甲1発明について

甲7発明は「変調されたテレビジョン信号をケーブル伝送するケーブルテレビジョン伝送装置」に関するものであり、
「ケーブルテレビジョン装置の受信点において空間に存在するテレビジョン放送電波のチャンネルでテレビジョン信号をケーブル伝送する場合、受像機の遮蔽性能が十分でないと、放送電波およびケーブル伝送信号の映像搬送波周波数差に起因するビート妨害が生じ、受像画面が見苦しくなる」という課題を有し、
「ビード妨害を軽減したケーブルテレビジョン伝送装置を提供する」ことを目的とし、
「ケーブル伝送に使用するチャンネルと同一チャンネルのテレビジョン放送電波を受信し、この放送電波の搬送波と同期した信号を得、この信号をケーブル伝送の搬送波として利用している。すなわち、ケーブル伝送信号の搬送波を空間に存在する放送電波の搬送波から得ており、両者は同期関係にあるので、ビート妨害が生じることがない」ものとしての、

空間に存在する放送電波は受信空中線10で受けられ、混合器11において局部発振器12からの信号と混合され中間周波数帯に変換され、フィルター13は中間周波帯にて放送電波の映像搬送波を選別し、この映像搬送波はリミッター14でAM成分が抑圧された後位相比較器15に加えられ、位相比較器15からの位相誤差信号で電圧制御発振器16を制御し、電圧制御発振器16の出力信号は位相比較器15の他の入力となり、リミッター13の出力である放送電波の映像搬送中間周波数と比較され、このようにして、電圧制御発振器16の出力には、中間周波帯に変換された放送電波映像搬送波と同期した信号を得ることが出来、この信号は、映像変調器17に加えられ、映像入力端子18からの自主番組映像信号によって変調され、変調された信号は混合器19において局部発振器12からの信号と混合されて、受信空中線10で受信された放送電波の映像搬送波周波数に周波数変換され、出力端子20からケーブルに送られケーブル伝送され、電圧制御発振器16の出力信号は、中間周波帯に変換された放送電波映像搬送波と同期しているので、混合器19からのケーブル伝送信号の映像搬送波も、空間に存在する放送電波のチャンネルと同一チャンネルでケーブル伝送された信号を受信してもビード妨害は現われないケーブルテレビジョン伝送装置
である。
一方、甲1発明は、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するように」したものであり、
「地上波デジタル放送を再送信するCATVシステムに適用することもできるものであり、デジタルチューナとして、地上波デジタル放送を受信する地上波デジタルチューナを設けるようにすれば、地上波デジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号として再送信することができる」というものである。

(イ)甲7発明に甲1発明を適用する動機づけについて

甲7発明は上述のように「ケーブルテレビジョン装置の受信点において空間に存在するテレビジョン放送電波のチャンネルでテレビジョン信号をケーブル伝送する」ことを前提としているものであるところ、

甲1発明は上述のように「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出する」ものであり、「地上波デジタル放送を再送信」するチャンネルは、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号」のチャンネル以外のチャンネルが想定されているものと認められるから、
「ケーブルテレビジョン装置の受信点において空間に存在するテレビジョン放送電波のチャンネルでテレビジョン信号をケーブル伝送する」ことを前提とする甲7発明に、甲1発明を適用することが当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
すなわち、甲7発明が想定する「ケーブルテレビジョン装置の受信点において空間に存在するテレビジョン放送電波のチャンネル」に、「地上波デジタル放送を再送信」するチャンネルとして、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号」のチャンネルでの送信を想定しない甲1発明を適用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
また、甲2ないし甲6には前述のとおりの技術事項が開示されているものの、いずれの技術事項も甲7発明に甲1発明をと適用することを動機づけるものとは認められない。
したがって、甲7発明に甲1発明を適用することにより、上記相違点b1ないしb3に係る構成に至らせることは当業者が容易に想到し得たということはできない。

以上のように、甲7発明に甲1発明を適用することにより、上記相違点b1ないしb3に係る構成に至らせることは当業者が容易に想到し得たということはできないものであるが、仮に、甲7発明の自主番組映像信号に代えて、甲1発明における「地上波デジタルチューナを設け」、「選局・復調して映像及び音声信号を再生し」た信号とした場合についても以下のとおりであるから、甲7発明および甲1発明から、上記相違点b1ないしb3に係る構成に至らせることが当業者が容易に想到し得たということはできない。

[相違点b1について]

甲7発明の「自主番組映像信号」に代えて、甲1発明における「地上波デジタルチューナを設け」、「選局・復調して映像及び音声信号を再生し」た信号とすれば、
甲7発明における「送信装置」は、「デジタル放送」を「再送信する再送信装置」となり、
「デジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部」を具備し、
「映像信号(及び音声信号)を変調」することについて、「前記デジタル放送復調部で復調された映像信号(及び音声信号)を再変調」とする構成となる。
しかしながら、受信する「デジタル放送」について、「アナログ放送波のチャンネルに対応する」とする開示・示唆が、甲7および甲1に存在するとは認められない。

[相違点b2について]

上述[相違点1について]と同様に、甲7発明の「自主番組映像信号」に代えて、甲1発明における「地上波デジタルチューナを設け」、「選局・復調して映像及び音声信号を再生し」た信号としたとしても、
受信するアナログ放送波について、その「チャンネルに対応するデジタル放送」が受信されることろのアナログ放送波とすることも、
変調された後の周波数帯について、その「チャンネルに対応するデジタル放送」が受信されるところの「アナログ放送波」と同じ周波数帯とすることについての開示・示唆が、甲1ないし甲7に存在するとは認められない。

[相違点b3について]

甲7発明の「自主番組映像信号」に代えて、甲1発明における「地上波デジタルチューナを設け」、「選局・復調して映像及び音声信号を再生し」た信号としたとしても、上述のように相違点b1および相違点b2を克服しないから、相違点b3に係る「前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ」ることとはならないし、そのような構成とする開示・示唆が、甲1ないし甲7に存在するとは認められない。

(ウ)請求人の主張について(本件特許公報の図5)

なお、請求人は、甲7と本件特許公報に記載された図5の組み合わせを主張するが、本件特許出願に係る公開特許公報、本件特許公報が本件特許の優先日前に頒布された刊行物であるという証拠は何ら示されておらず、また、本件特許公報に記載された図5に係る技術事項が本件特許の優先日前に公然と知られた技術事項であるとも、公然実施をされた技術事項であるであるとする証拠は何ら示されておらず、本件特許公報に記載された図5に係る技術事項が、本件特許の優先日前に頒布された刊行物に記載された技術事項であるとも、公然知られた技術事項であるとも、公然実施された技術事項であるともすることはできない。

(エ)まとめ

上述のように、甲1ないし甲6についていずれの発明・記載事項・技術を検討しても、甲7発明に甲1発明を適用して、相違点b1ないしb3を克服することが当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

よって、本件特許発明1は、上記甲1ないし甲7に記載された発明および記載事項・技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできない。

(2)本件特許発明2について

ア 甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明・事項・技術

(ア)甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明・事項・技術

甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明・事項・技術は、上述(1)アを援用する。

(イ)甲第5号証にさらに記載された技術

記載(k5-1)によれば、「VHFのテレビジョン放送波がある地域で電界強度が弱く、外界からのノイズの影響や反射波の影響で放送波の画質が低下している場合には、同じ番組の放送サービスを行う必要がある」ことを前提とすることが記載されている。
記載(k5-2)によれば、「ミキサ15およびミキサ19に局発信号を共通に供給する局部発振器」および「ミキサ15から出力される中間周波数信号から搬送波を再生する同期キャリア再生器」を有する。
記載(k5-4)によれば、「変調器36に映像搬送波」を「供給」し、「発振する映像搬送波の周波数は、テレビジョン放送の映像搬送波の周波数と理想的には同一の周波数が望ましいが、現実的にはほぼ等しい周波数であればよい」「映像キャリア発振器41」を有し、
「再送信装置2から映像搬送波が供給されているか否かを検出」する「信号検出器39」および
「供給されていないと判断した場合」には、「同期キャリア再生器22側から映像キャリア発振器41側へ切り換えるように」される「キャリア切換器40」を有している。
上記構成は、記載(k5-4)によれば、「多方向受信用CATV伝送装置」において、「再送信装置2の受信系に障害が発生した場合は、再送信装置2にはVHFテレビジョン放送信号が入力されないため、同期キャリア再生器22は映像搬送波を再生することができないことにな」り、「再送信装置1には映像搬送波が供給されないことになるので、変調器36からコンポジット信号が出力されず、再放送番組のテレビジョン放送ができないことになる」という課題を克服するために設けた構成と認められる。
よって、甲第5号証記載技術として、
VHFのテレビジョン放送波がある地域で電界強度が弱く、外界からのノイズの影響や反射波の影響で放送波の画質が低下している場合には、同じ番組の放送サービスを行う必要があることを前提とし、
再送信装置2の受信系に障害が発生した場合は、再送信装置2にはVHFテレビジョン放送信号が入力されないため、同期キャリア再生器22は映像搬送波を再生することができないことになり、再送信装置1には映像搬送波が供給されないことになるので、変調器36からコンポジット信号が出力されず、再放送番組のテレビジョン放送ができないことになるという課題を克服するために、
多方向受信用CATV伝送装置において、
再送信装置2のミキサ15および再送信装置1のミキサ19に局発信号を共通に供給する局部発振器21、
前記ミキサ15から出力される中間周波数信号から搬送波を再生する同期キャリア再生器22、
再送信装置1の変調器36に映像搬送波を供給し、発振する映像搬送波の周波数は、テレビジョン放送の映像搬送波の周波数と理想的には同一の周波数が望ましいが、現実的にはほぼ等しい周波数であればよい映像キャリア発振器41、
再送信装置2から映像搬送波が供給されているか否かを検出する信号検出器39および
供給されていないと判断した場合には、同期キャリア再生器22側から映像キャリア発振器41側へ切り換えるようにされるキャリア切換器40を設ける技術
が記載されていると認められ、これを甲5記載技術2とする。

イ 対比(本件特許発明2と甲1発明との対比)

(ア)構成要件Fないし構成要件I「前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする」について

本件特許発明2は、「前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする」のに対して、甲1発明はそのようにしない点で相違する。

(イ)構成要件J「請求項1に記載の再送信装置。」について

本件特許発明2が引用する「請求項1に記載の再送信装置」である本件特許発明1の構成の対比は、上述(1)イ(ア)ないし(カ)を援用する。

(ウ)一致点・相違点

本件特許発明2と甲1発明の一致点および相違点のうち、本件特許発明1の構成については、上述(1)イ(キ)を援用し、それ以外に以下の相違点がある。

相違点a6:本件特許発明2は、「前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする」のに対して、甲1発明はそのようにしない点

ウ 判断(本件特許発明2と甲1発明との相違点について)

(ア)相違点a1ないし相違点a4の関係について

相違点a1ないし相違点a4の関係についての検討は、上述(1)ウ(ア)を援用する。

(イ)甲1発明について

甲1発明についての検討は、上述(1)ウ(イ)を援用する。

(ウ)甲2記載事項、甲3ないし甲6記載技術および甲7発明について

甲2記載事項、甲3ないし甲6記載技術および甲7発明については、上述の(1)ウ(ウ)ないし(ク)を援用する。

(エ)甲5記載技術2について

本件特許発明1と甲1発明との相違点a1ないし相違点a5の構成は、甲2ないし甲7いずれの記載事項・技術に基づいても当業者が容易に想到し得たことでないことは上述のとおりであるから、
甲5記載技術2が、構成要件Fないし構成要件Iを開示するものであったとしても、
甲2ないし甲4ならびに甲6および甲7の記載事項・技術に接した当業者が、甲1発明に、甲2ないし甲4ならびに甲6および甲7いずれの記載事項・技術を適用することによって「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設ける構成とすることが、容易に想到し得たということができない以上、
「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」に係る構成要件である
構成要件Fないし構成要件Iの「前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする」構成
とすることが、当業者が容易に想到し得たということはできない。

また、甲1発明は、上述(1)ウ(イ)のように、
「近年、BS放送では、従来、行われていたBSアナログ放送に加えて、BSデジタル放送が開始された。そして、既存のCATVシステムにおいて、このBSデジタル放送の受信信号を、従来と同様にそのまま(もしくは周波数変換しただけで)伝送線に送出しようとすると、CATVシステムでの伝送可能帯域が狭いことから、BSアナログ放送等の他の受信信号を伝送できなくなることがあった。また、BSデジタル放送を受信アンテナにて受信した信号形態でそのまま伝送すると、端末側でBSデジタル放送を視聴する際に、BSデジタル放送専用の受信機が必要になる」という事項を解決しようとする課題とし、
「CATVシステムでは、BSデジタル放送で提供される放送チャンネルの映像及び音声信号を、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)のアナログテレビ放送信号として伝送できることになり、しかも、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴できることになる」ようにするため、
「こうしたBSデジタル放送を、既存のCATVシステムで他の受信信号と共に再送信する方法として、ヘッドエンド装置側で、BSデジタル放送を受信可能なBSデジタルチューナを用いて、所定放送チャンネルのBSデジタル放送を選局・復調し、更に、アナログテレビ放送信号生成用の変調器を用いて、その復調した映像信号及び音声信号から所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号(日本国内の場合、NTSC方式のテレビ放送信号)を生成し、その生成したアナログテレビ放送信号を端末側に伝送する方法」を採用したというものであり、
すなわち、「VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するように」したものであり、
甲1発明が、
アナログ放送も、デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号も一緒に送信する構成であるにもかかわらず、
再送信するアナログ放送のチャンネルが「VHFのテレビジョン放送波がある地域で電界強度が弱く、外界からのノイズの影響や反射波の影響で放送波の画質が低下している」ことを想定して、デジタル放送をアナログテレビ放送信号に変換した信号を、再送信するアナログ放送のチャンネルで送信する構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、甲1発明に甲5記載技術2を適用することにより、本件特許発明2と甲1発明との相違点a1ないし相違点a4に係る「アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信」し、「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「前記キャリア抽出部で抽出したアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」構成に至らせることも当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(オ)まとめ

以上のように、甲2ないし甲7についていずれの記載事項・技術を検討しても、甲1発明において、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ための「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設け、
「前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする」構成とすることが当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

エ 対比(本件特許発明2と甲7発明との対比)

(ア)構成要件Fないし構成要件I「前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする」について

本件特許発明2は、「前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする」のに対して、甲7発明はそのようにしない点で相違する。

(イ)構成要件J「請求項1に記載の再送信装置。」について

本件特許発明2が引用する「請求項1に記載の再送信装置」である本件特許発明1の構成の対比は、上述(1)エ(ア)ないし(カ)を援用する。

(ウ)一致点・相違点

本件特許発明2と甲7発明の一致点および相違点のうち、本件特許発明1の構成については、上述(1)エ(キ)を援用し、それ以外に以下の相違点がある。

相違点b4:本件特許発明2は、「前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする」のに対して、甲7発明はそのようにしない点

オ 判断(本件特許発明2と甲7発明との相違点について)

(ア)甲7発明・甲1発明について

甲7発明・甲1発明についての検討は、上述(1)オ(ア)を援用する。

(イ)甲7発明に甲1発明を適用する動機づけについて

甲7発明に甲1発明を適用する動機づけについて上述(1)オ(イ)を援用する。

(ウ)相違点b4について

本件特許発明1と甲7発明との相違点b1ないし相違点b3の構成は、甲1ないし甲7いずれの発明・記載事項・技術に基づいても当業者が容易に想到し得たことでないことは上述のとおりであるから、
甲5記載技術2が、構成要件Fないし構成要件Iを開示するものであったとしても、
甲1ないし甲6の発明・記載事項・技術に接した当業者が、甲7発明に、甲1ないし甲6いずれの記載事項・技術を適用することによっても「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設ける構成とすることが、容易に想到し得たということができない以上、
「前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」に係る構成要件である
構成要件Fないし構成要件Iの「前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする」構成
とすることが、当業者が容易に想到し得たということはできない。

(エ)まとめ

以上のように、甲1ないし甲6についていずれの発明・記載事項・技術を検討しても、甲7発明において、相違点b1ないしb4を克服することが当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

カ まとめ

よって、本件特許発明2は、上記甲1ないし甲7に記載された発明および記載事項・技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできない。

(3)本件特許発明3について

ア 甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明・事項・技術

甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明・事項・技術は、上述(2)アを援用する。

イ 対比(本件特許発明3と甲1発明との対比)

(ア)構成要件K「受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする」について

本件特許発明3は、「受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする」のに対し、
甲1発明はそうしない点で相違する。

(イ)構成要件L「請求項1又は2に記載の再送信装置。」について

本件特許発明3が引用する「請求項1又は2に記載の再送信装置。」である本件特許発明1または2の構成の対比は、上述(2)イ(ア)および(イ)を援用する。

(ウ)一致点・相違点

本件特許発明3と甲1発明の一致点および相違点のうち、本件特許発明2の構成については、上述(2)イ(ウ)を援用し、それ以外に以下の相違点がある。

相違点a7:本件特許発明3は「受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする」のに対し、甲1発明はそうしない点

ウ 判断(本件特許発明3と甲1発明との相違点について)

(ア)相違点a1ないし相違点a4の関係について

相違点a1ないし相違点4の関係についての検討は、上述(2)ウ(ア)を援用する。

(イ)甲1発明について

甲1発明についての検討は、上述(2)ウ(イ)を援用する。

(ウ)甲2記載事項、甲3ないし甲6記載技術および甲7発明について

甲2記載事項、甲3ないし甲6記載技術および甲7発明については、上述の(2)ウ(ウ)および(エ)を援用する。

(エ)甲6記載技術について(相違点a7について)

甲1発明および甲6記載技術とも、デジタル放送のサービスを端末側に提供するためのものであり、上述のような甲6記載技術により、デジタル放送専用の受信機にも該サービスを提供できるようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、甲1発明に甲6記載技術を適用して相違点a7の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(オ)まとめ

上述(エ)のように相違点a7の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことと認められるものの、
上述(ウ)のように、甲2ないし7についていずれの発明・記載事項・技術を検討しても、甲1発明において、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ための「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設けることが当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

エ 対比(本件特許発明3と甲7発明との対比)

(ア)構成要件K「受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする」について

本件特許発明3は、「受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする」のに対し、
甲1発明はそうしない点で相違する。

(イ)構成要件L「請求項1又は2に記載の再送信装置。」について

本件特許発明3が引用する「請求項1又は2に記載の再送信装置。」である本件特許発明1または2の構成の対比は、上述(2)エ(ア)および(イ)を援用する。

(ウ)一致点・相違点

本件特許発明3と甲7発明の一致点および相違点のうち、本件特許発明2の構成については、上述(2)エ(ウ)を援用し、それ以外に以下の相違点がある。

相違点b5:本件特許発明3は「受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする」のに対し、甲7発明はそうしない点

オ 判断(本件特許発明3と甲7発明との相違点について)

(ア)甲7発明・甲1発明について

甲7発明・甲1発明についての検討は、上述(2)オ(ア)を援用する。

(イ)甲7発明に甲1発明を適用する動機づけについて

甲7発明に甲1発明を適用する動機づけについて上述(2)オ(イ)を援用する。

(ウ)相違点b4について

相違点b4についての検討は、上述(2)オ(ウ)を援用する。
(エ)甲6記載技術について(相違点b5について)

上述(イ)のとおり、甲7発明に甲1発明を適用することが当業者が容易に想到し得たこととはいえないところ、
甲6記載技術は、デジタル放送のサービスを端末側に提供するためのものであり、甲7発明に甲6記載技術を適用することが当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(オ)まとめ
上述(ウ)および(エ)のように、甲1ないし甲6についていずれの発明・記載事項・技術を検討しても、甲7発明において、相違点b1ないしb5を克服することが当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

カ まとめ

よって、本件特許発明3は、上記甲1ないし甲7に記載された発明および記載事項・技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできない。

(4)本件特許発明4について

ア 甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明・事項・技術

(ア)甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明・事項・技術

甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明・事項・技術は、上述(3)アを援用する。

(イ)甲第1号証にさらに記載された事項

甲1の記載(k1-9)によれば、甲1の「コントローラ30」は発明特定事項J「復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段」に相当する。
記載(k1-9)によれば、甲1の「変調器24」は発明特定事項K「前記デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段」に相当する。

記載(k1-9)によれば、「変調器24」は、「復調」した「音声信号」を「音声入力端子Tar、Tal」を介して取り込み、「アナログ音声信号を変調する」際に、「アナログ音声信号の音声モードを表す制御信号」から「アナログ音声信号の音声モードを識別して、アナログ音声信号の変調方式を切り換える」ものである。
また、記載(k1-9)によれば、「BSデジタルチューナ22から光信号入力端子Topを介して光音声信号(換言すればデジタル音声信号)を取り込み、光音声信号に含まれる各種データを復号化するデコーダ(デジタルオーディオインターフェイス)30aと、このデコーダ30aにて復号されたデータの内、音声モードを表すチャネルステータス情報(具体的には、チャネルステータスビット、又はユーザビット)を選択するデータ選択部30bと、データ選択部30bで選択されたチャネルステータス情報に基づきBSデジタルチューナ22が選局しているBSデジタル放送の音声モードを識別し、その識別した音声モードに対応した制御信号「MO」、「BI」を制御信号出力端子Tc0、Tc1を介して変調器24に出力するマイクロコンピュータ30cと、から構成されている」「コントローラ30」を設け、
「マイコン30c」は、
「データ選択部30bで選択されたチャネルステータス情報から、BSデジタルチューナ22が選局しているBSデジタル放送の音声モードを判定し」、
「その判定した音声モードがモノラルであれば」、「音声モードがモノラルであることを表す制御信号を変調器24に出力し」、
「判定した音声モードがモノラルでなく(S120:NO)、ステレオであれば」、「音声モードがステレオであることを表す制御信号を変調器24に出力し」、
「判定した音声モードがモノラルでもステレオでもなく(S120:NO,S140:NO)、多音声であれば、」「音声モードが多音声であることを表す制御信号を変調器24に出力する」
「といった手順で、音声モードの切換処理を実行する」技術が記載されている。
つまり、甲1には、
「BSデジタルチューナ22」が、「音声モードを表すチャネルステータス情報」を含むデータを出力する手段を有し、
「復調」した「音声信号」を「音声入力端子Tar、Tal」を介して取り込み、「アナログ音声信号を変調する」際に、該データに含まれる「音声モードを表すチャネルステータス情報」に基づき、「アナログ音声信号の音声モードを識別して」、「モノラル」、「ステレオ」、「多音声」といった「音声モードの切換処理を実行する」「コントローラ30」を有することが記載されている。

(ウ)甲1発明2

よって、甲1発明にさらに上述の構成を有する以下の甲1発明2を認めることができる。

VHFテレビ放送(アナログ)を行う地上局からの放送電波を受信するVHFアンテナ2、UHFテレビ放送(アナログ放送)を行う地上局からの放送電波を受信するUHFアンテナ4、CS放送用の通信衛星(CS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のCS受信信号に周波数変換して出力するCSアンテナ6、及び、BSデジタル放送を行う放送衛星(BS)からの放送電波を受信し、その受信信号を所定の中間周波数帯のBS受信信号に周波数変換して出力するBSアンテナ8を備え、VHFアンテナ2、UHFアンテナ4、及びCSアンテナ6からの受信信号については、そのまま、若しくは、伝送用の周波数帯に周波数変換した後、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされているヘッドエンド装置10であって、
BSアンテナ8からのBS受信信号については、BSデジタル放送の放送チャンネルの数に対応した複数の復変調部20を用いて、各放送チャンネル毎にBSデジタル放送を選局・復調して映像及び音声信号を再生し、その再生した映像及び音声信号でNTSC方式に再度変調することにより、VHF・UHFの地上波放送と同じように所定伝送チャンネルのアナログテレビ放送信号を生成し、その生成したテレビ放送信号を、他のテレビ放送信号と一緒に、送出装置12から伝送線L上に送出するようにされており、各復変調部20には、受信信号入力端子20aに入力されたBS受信信号の中から、予め設定された放送チャンネルのテレビ放送信号(デジタルテレビ放送信号)を選局し、そのテレビ放送信号に含まれる映像及び音声信号を復調するBSデジタルチューナ22と、BSデジタルチューナ22にて復調された映像及び音声信号を、所定伝送チャンネルのテレビ放送信号(NTSC方式のアナログテレビ放送)に変換する変調器24とが設けられており、端末側では、従来の一般的なテレビ受信機を用いて、BSデジタル放送を視聴でき、
所定伝送チャンネルとは、地上波放送と同じ周波数帯(VHF若しくはUHF帯)であり、
BSデジタルチューナ22が、音声モードを表すチャネルステータス情報を含むデータを出力する手段を有し、
復調した音声信号を音声入力端子Tar、Talを介して取り込み、アナログ音声信号を変調する際に、該データに含まれる音声モードを表すチャネルステータス情報に基づき、アナログ音声信号の音声モードを識別して、モノラル、ステレオ、多音声といった音声モードの切換処理を実行するコントローラ30を有し、
地上波デジタル放送を再送信するCATVシステムに適用することもできるものであり、デジタルチューナとして、地上波デジタル放送を受信する地上波デジタルチューナを設けるようにすれば、地上波デジタル放送にて提供される映像及び音声信号をアナログテレビ放送信号として再送信することができる
ヘッドエンド装置。

イ 対比(本件特許発明4と甲1発明との対比)

(ア)構成要件M「前記デジタル放送復調部は、復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え、」について

甲1発明2において「地上波デジタル放送」を「再送信」する場合を検討するに、
「地上波デジタルチューナ」が「復調」された「音声信号」を出力することは明らかであり、また「音声モードを表すチャネルステータス情報を含むデータを出力する手段を有し」ているから、
「復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え」ているといえ、
「地上波デジタルチューナ」が「デジタル放送復調部」といえることも明らかであるから、
甲1発明2と本件特許4は、「デジタル放送復調部は、復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え」る点で一致する。

(イ)構成要件N「前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段を備えたことを特徴とする」について」

甲1発明2は、
「復調した音声信号を音声入力端子Tar、Talを介して取り込み、アナログ音声信号を変調する際に、該データに含まれる音声モードを表すチャネルステータス情報に基づき、アナログ音声信号の音声モードを識別して、モノラル、ステレオ、多音声といった音声モードの切換処理を実行するコントローラ30を有し」を有しており、
該「コントローラ30」は、「モノラル、ステレオ、多音声といった音声モード」の「切換処理を実行する」ものであるから「音声方式切替手段」と称しても差し支えなく、
「音声モードを表すチャネルステータス情報」は「デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号」と称しても差し支えなく、
「復調した音声信号を音声入力端子Tar、Talを介して取り込み」「アナログ音声信号の音声モードを識別して、モノラル、ステレオ、多音声といった音声モードの切換処理を実行する」から、「音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う」といえる。
また、「コントローラ30」は、「変調する際に」実行するコントローラであるから、「変調器24」と併せて「アナログ変調部」と称しても差し支えない。
よって、甲1発明2と本件特許発明4は、「アナログ変調部は、デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段を備えたことを特徴とする」点で一致する。

(ウ)構成要件O「請求項1、2又は3に記載の再送信装置。」について

本件特許発明4が引用する「請求項1、2又は3に記載の再送信装置。」である本件特許発明1、2または3の構成の対比は、上述(3)イ(ア)および(イ)を援用する。

(エ)一致点・相違点

本件特許発明4と甲1発明2の一致点および相違点のうち、本件特許発明1、2または3の構成については、上述(3)イ(ウ)を援用し、それ以外の構成要件Mおよび構成要件Nは、上述(ア)および(イ)のように甲1発明2と本件特許発明4は一致する。

ウ 判断(本件特許発明4と甲1発明との相違点について)

(ア)相違点a1ないし相違点a4の関係について

相違点a1ないし相違点a4の関係についての検討は、上述(3)ウ(ア)を援用する。

(イ)甲1発明2について

甲1発明2についての検討は、上述(3)ウ(イ)を援用する。

(ウ)甲2記載事項、甲3記載技術ないし甲6記載技術および甲7発明について

甲2記載事項、甲3記載技術、甲4記載技術、甲5記載技術2および甲6記載技術、甲7発明についての検討は、上述(3)ウ(ウ)および(エ)を援用する。

(エ)まとめ
以上のように、甲2ないし甲7についていずれの発明・記載事項・技術を検討しても、甲1発明2において、「デジタル放送をアナログ放送方式で変調して再送信する周波数帯をアナログ放送波と同じ周波数帯」とし「アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とする」ための「アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部」を設けることが当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

エ 対比(本件特許発明4と甲7発明との対比)

(ア)構成要件M「前記デジタル放送復調部は、復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え、」および構成要件N「前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段を備えたことを特徴とする」について

本件特許発明4は、「前記デジタル放送復調部は、復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え、」「前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段を備えたことを特徴とする」とするのに対し、
甲7発明はそうしない点(→相違点b6)で相違する。

(イ)構成要件O「請求項1、2又は3に記載の再送信装置。」について

本件特許発明4が引用する「請求項1、2又は3に記載の再送信装置。」である本件特許発明1、2または3の構成の対比は、上述(3)エ(ア)および(イ)を援用する。

(ウ)一致点・相違点

本件特許発明4と甲7発明の一致点および相違点のうち、本件特許発明3の構成については、上述(3)エ(ウ)を援用し、それ以外に以下の相違点がある。

相違点b6:本件特許発明4は、「前記デジタル放送復調部は、復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え、」「前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段を備えたことを特徴とする」とするのに対し、甲7発明はそうしない点

オ 判断(本件特許発明4と甲7発明との相違点について)

(ア)甲7発明・甲1発明について

甲7発明・甲1発明についての検討は、上述(3)オ(ア)を援用する。

(イ)甲7発明に甲1発明を適用する動機づけについて

甲7発明に甲1発明を適用する動機づけについて上述(3)オ(イ)を援用する。

(ウ)相違点b4およびb5について

相違点b4およびb5についての検討は、上述(3)オ(ウ)および(エ)を援用する。

(エ)甲第1号証にさらに記載された事項・甲1発明2(相違点b6について)

甲第1号証ににさらに記載された事項および甲1発明2について、上述ア(イ)および(ウ)を援用する。
甲7発明に甲1発明を適用する動機づけがあるとはいえないのと同様に甲7発明に甲1発明2を適用する動機づけはあるとはいえないず、相違点b6の構成とすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(オ)まとめ

上述(ウ)のように、甲1ないし甲6についていずれの発明・記載事項・技術を検討しても、甲7発明において、相違点b1ないしb6を克服することが当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

カ まとめ

よって、本件特許発明4は、上記甲1ないし甲7に記載された発明および記載事項・技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできない。

第8 むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張する理由および提出した証拠方法によっては、本件の請求項1ないし4に係る発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
再送信装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョン放送の共同受信システムにおいて、地上デジタル放送の番組内容をアナログ放送方式で変調する再送信装置、特にアナログ放送のチャンネルと同じチャンネルにて再送信を行う再送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的にテレビ放送のデジタル化が進行している。わが国では地上デジタル放送転換の為、2011年7月24日にアナログ放送が停波される予定であり、また、アナログ放送の停波後、VHF帯は新しくデジタルラジオなど別の用途で周波数を使用する予定になっている。上記アナログ放送停波のために、既存の多数のアナログ放送のテレビジョン受信機がデジタル放送対応のテレビジョン受信機に更新する必要に迫られている。
【0003】
しかしながら、病院、学校、ホテル等の施設に既に導入されているアナログ放送対応の構内テレビジョン受信機については、その多数設置されている受信機数を一度に交換・更新することが困難である。その環境に合わせた特殊な機器を使用、例えば、病院やホテルなどのテレビジョン受信機は小型、簡易な機能であったり、操作に制限をかけた端末を介して使用しているためである。
【0004】
そこで、地上デジタル放送をアナログ放送に変換して、施設の構内で再放送を行う再送信装置を導入することが考えられる。
【0005】
図5は、一般的なテレビジョン放送の再送信装置の概略構成を示すブロック図である。この再送信装置は、UHFの信号(地上デジタル放送)が入力される入力端子1と、入力信号の分配損失を補正するためのブースタ2と、ブースタ2により増幅された信号を分配する分配器3と、地上デジタル放送の各チャンネルに対応する地上デジタル放送に対応したデジタル放送復調器4a?4nと、アナログ放送の各チャンネルに対応するアナログ変調器5a?5nと、このアナログ変調器5a?5nで変調された信号を混合する混合器6と、この混合器6で混合された信号を出力する出力端子7とにより構成される。
【0006】
上記の構成において、入力端子1から入力された既存の地上デジタル放送の信号はブースタ2で増幅され、分配器3により各デジタル放送復調器4a?4nに分配される。このデジタル放送復調器4a?4nは、地上デジタル放送の各チャンネル(物理チャンネル)に対応しており、地上デジタル放送を復調する。デジタル放送復調器4a?4nで復調された信号は、物理チャンネル毎に構成されるアナログ変調器5a?5nにより、地上アナログ放送の周波数帯のチャンネルで再変調され、混合器5で混合されて出力端子7から出力される。
【0007】
上記のように再送信装置では、デジタル放送がアナログ放送に変換されて再送信が行われるが、強電界と言われる地域、即ち放送局から近く、テレビジョン放送の電界が非常に強い地域では、現用のアナログテレビジョン受信機にプリセットされているチャンネルに再送信装置の出力チャンネルを設定した場合、アナログ放送波の電波がテレビジョン受信機内の復調部に混入して垂直同期が乱れ、画面に横縞の障害(ビート障害)が現れる。これは再送信装置から再送信される信号の位相と上記のアナログ放送波の位相がずれている為に生じる。この現象のため、強電界地域ではアナログ放送波と同じチャンネルに再送信装置の出力チャンネルを設定することが出来ず、別の空きチャンネルへ変更する必要があった。
【0008】
また、本発明に関連する公知技術として、共同視聴施設のヘッドエンド装置に利用されるテレビジョン信号処理装置において、受信したテレビ放送波信号の搬送波周波数と全く同一の周波数で再送信すると共に、ゴースト除去、隣接チャンネル伝送の為の音声レベル調整等の各種のテレビ信号処理を行う技術(例えば、特許文献1参照。)や、受信レベルにあまり差のないチャンネル群と受信レベルが低い特定チャンネルが存在するデジタルテレビジョン放送の受信地域において、アンテナにより受信される複数チャンネルについては広帯域増幅装置で一括して増幅し、受信レベルの低い特定のチャンネルについては単チャンネル増幅装置で適正レベルに増幅すると共に他の放送信号等に影響のない周波数領域へ周波数変換して再送信する技術(例えば、特許文献2参照。)、出力信号のレベル制御を行うことができると共に、出力周波数の変更時に他チャンネルへの影響を防止するようにした技術(例えば、特許文献3参照。)が知られている。
【特許文献1】特開平7-162324号公報
【特許文献2】特開2006-229590号公報
【特許文献3】特開2005-79796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように従来の再送信装置では、現用のアナログテレビジョン受信機にプリセットされているチャンネルに再送信装置の出力チャンネルを設定した場合、テレビジョン放送の電界が非常に強い地域では、放送波がテレビジョン受信機内の復調部に混入して垂直同期が乱れ、画面に横縞のビート障害が現れるという問題があり、このため強電界地域ではアナログ放送波と同じチャンネルに再送信装置の出力チャンネルを設定することが出来ず、別の空きチャンネルへ変更したり、テレビジョン受信機の受信チャンネルの設定を変更する必要があった。
【0010】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、強電界地域においてもアナログテレビジョン受信機に障害を生じる恐れがなく、アナログ放送波と同じチャンネルにテレビジョン受信機の受信チャンネルを合わせることができる再送信装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、アナログ放送停波後に発生するVHF帯の周波数信号を装置本体と遮断して歪みのない再送信信号を出力でき、テレビジョン映像への障害を確実に防止することができる再送信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、
アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部と、前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部と、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、前記アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し、前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とし、前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応することを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、前記第1の発明に係る再送信装置において、前記キャリア抽出部は、映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、前記第1又は第2の発明に係る再送信装置において、受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、前記第1、第2又は第3の発明に係る再送信装置において、前記デジタル放送復調部は、復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え、前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
第5の発明は、前記第1、第2、第3又は第4の発明に係る再送信装置において、受信したデジタル放送波を増幅して前記デジタル放送復調部に出力する第1の増幅器と、受信したアナログ放送波を増幅して前記キャリア抽出部に出力する第2の増幅器と、標準電波を受信する標準電波受信部と、前記標準電波受信部により受信された標準電波に基づいて計時動作し、タイマ時刻がアナログ放送停波日に設定されたタイマ回路と、前記第1の増幅器及び第2の増幅器に動作電源を供給し、前記アナログ放送停波日に前記タイマ回路から出力される信号により前記第2の増幅器の動作電源を遮断する電源制御回路とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、再送信信号をアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい信号とすることにより、放送波がテレビジョン受信機内の復調部に混入した場合でも、垂直同期の乱れを防止して画面に横縞等の障害が発生することを確実に防止でき、かつ現用のアナログ放送対応テレビジョン受信機のチャンネルプリセットを変更せずにデジタル放送をアナログ放送の信号形式に変換して再送信する再送信装置の導入、運用を開始することができる。
【0018】
第2の発明によれば、アナログ放送が停波もしくは中止されてアナログ放送の映像キャリア信号を抽出できなくなった場合でも、切替手段により第1の局部発振器から第2の局部発振器に自動的に切替わり、第2の局部発振器から出力される信号が映像変調のための映像キャリア信号としてアナログ変調部へ送られるので、アナログ変調部は変調処理を正常に行うことができる。
【0019】
第3の発明によれば、再送信装置から出力される再送信信号には、現用のアナログ放送波と同じチャンネルのアナログ放送波及び地上デジタル放送波が含まれているので、既存のアナログテレビジョン受信機であっても、また地上デジタル放送の受信機能をもつテレビジョン受信機であっても、テレビジョン放送をそのまま受信することが可能である。
【0020】
第4の発明によれば、デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号によりアナログ変調部を制御してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行うことができる。すなわち、地上デジタル放送をアナログ放送波に変換して再送信する再送信装置において、デジタル放送対応のテレビジョン受信機と同様に、デジタル放送におけるモノラル、ステレオ、音声多重の音声方式を判別して自動的に切替えることができる。
【0021】
第5の発明によれば、アナログ放送停波後に新たに発生するVHF帯の周波数信号を装置本体と遮断して歪みのない再送信信号を出力でき、ナログ放送停波後に発生するVHF帯の周波数信号によるテレビジョン映像への障害を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る再送信装置10の全体の構成を示すブロック図である。本発明に係る再送信装置10は、入力分配部11、デジタル放送復調部12a?、アナログ変調部13a?、キャリア抽出部14a?、及び出力混合部15により構成される。
【0023】
上記入力分配部11は、例えばアンテナにより受信された地上デジタル放送電波をデジタル放送復調部12a?に入力すると共に、アンテナにより受信された現用のアナログ放送電波をアナログ変調部13a?に入力する。また、入力分配部11は、上記受信した地上デジタル放送電波をデジタル放送波パススルー回路16によりそのまま出力混合部15へ出力する。
【0024】
上記デジタル放送復調部12a?は、例えばチューナモジュールとOFDM復調部LSI及びMPEGデコーダ等により構成され、各地域の地上デジタル放送のチャンネル数に十分対応できるだけの数を備えている。デジタル放送復調部12a?は、それぞれ各チャンネルの地上デジタルの電波信号を復号し、TSデータから映像信号、音声信号、制御信号とを抜き出してデコードすることにより、アナログ信号に変換してアナログ変調部13a?へ出力する。上記音声信号としては、L/M(左/メイン)、R/S(右/サブ)の信号があり、デジタル放送復調部12a?からは現在受信中の音声方式であるモノラル、ステレオ、音声多重を識別するための音声方式識別信号が音声制御信号としてアナログ変調部13a?へ出力される。
【0025】
また、キャリア抽出部14a?は、受信したアナログ放送電波の映像キャリア信号をチャンネル別に抽出し、例えば45.75MHzのIF映像キャリア信号に変換し、IF映像キャリア信号としてアナログ変調部13a?へ供給する。このアナログ変調部13a?は、ビデオ変調部21、オーディオ変調部22及び周波数変換部23からなり、上記キャリア抽出部14a?から送られてくるIF映像キャリア信号がビデオ変調部21に入力される。
【0026】
上記ビデオ変調部21は、デジタル放送復調部12a?で復調された映像信号をNTSC仕様のVSB(Vestigial Side Band)-AMで再変調する。ビデオ変調部21は、映像信号を変調する際、上記キャリア抽出部14から送られてくるIF映像キャリア信号で変調処理を行い、アナログ放送波の映像キャリア信号に対して位相を同期させて変調する。
【0027】
また、オーディオ変調部22は、デジタル放送復調部12a?で復調された音声信号をFM変調し、例えば41.25MHzのIF音声信号に変換する。この場合、オーディオ変調部22は、デジタル放送復調部12a?から送られてくる音声制御信号(音声方式識別信号)に基づいて上記L/M(左/メイン)、R/S(右/サブ)の音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う。
【0028】
周波数変換部23は、上記ビデオ変調部21で変調された映像信号及びオーディオ変調部22で変調された音声信号を混合した後、現用のアナログ放送のチャンネルと同じ周波数に変換し、有線テレビジョン放送法に準拠したアナログ放送の映像信号と音声信号を出力混合部15へ出力する。
【0029】
出力混合部15は、アナログ変調部13a?で変調された各チャンネルのアナログ信号と入力分配部11からデジタル放送波パススルー回路16を介して送られてくるデジタル放送波とを混合し、再送信信号として外部に出力する。
【0030】
上記出力混合部15から出力される再送信信号は、図示しないが例えば病院、学校、ホテル等において、共聴システムにより、各部屋等に設置されている複数のテレビジョン受信機に分配される。
【0031】
次に、上記再送信装置10の各部の詳細について説明する。
【0032】
図2は、上記再送信装置10の詳細な構成を示すブロック図である。入力分配部11は、アンテナにより受信された地上デジタル放送波(UHF)が入力される入力端子31及びアンテナにより受信されたアナログ放送波が入力される入力端子41を備えている。
【0033】
上記入力端子31に入力された地上デジタル放送波は、分岐回路32を介してモニタ端子37に出力されると共に増幅器33に入力される。増幅器33は、各地上デジタル放送波を増幅し、例えば3分配の分配器34及び5分配の分配器35、36を介してデジタル放送復調部12a?へ出力する。
【0034】
また、上記入力端子41に入力されたアナログ放送波は、分岐回路42を介してモニタ端子47に出力されると共に増幅器43に入力される。増幅器43は、入力端子41に入力されたアナログ放送波を増幅し、例えば2分配の分配器44及び5分配の分配器45、46を介してキャリア抽出部14a?へ出力する。
【0035】
また、上記入力分配部11は、増幅器33で増幅したデジタル放送波を分配器34によりデジタル放送波パススルー回路16へ分配する。このデジタル放送波パススルー回路16は、例えば同軸ケーブルの両端に入力コネクタ及び出力コネクタを備えており、入力分配部11の端子17に分配された地上デジタル放送波をそのまま出力混合部15の端子18へ接続する。
【0036】
上記デジタル放送復調部12a?は、各地域の地上デジタル放送のチャンネル数に十分対応できるだけの数、例えば10個のデジタル放送復調部12a?12jを備えている。上記デジタル放送復調部12a?12jは、関東地方であれば、例えば21?28、30、32チャンネル、すなわちアナログテレビジョン放送の1、3、4、6、8、10、12、16、38、42チャンネルに対応する地上デジタル放送を受信できるように予め設定される。上記各デジタル放送復調部12a?12jは、その映像信号及び音声信号を復調して夫々アナログ変調部13a?13jへ出力する。
【0037】
また、キャリア抽出部14a?は、デジタル放送復調部12a?12jに対応する数のキャリア抽出部14a?14jを備え、各地域におけるアナログ放送の各チャンネルの映像キャリア信号を抽出する。すなわち、NTSC方式では、各チャンネルの下端から1.25MHzの位置に映像キャリア信号があるので、これを抽出する。キャリア抽出部14a?14jは、抽出した各チャンネルの映像キャリア信号を例えば45.75MHzのIF帯の信号に変換し、IF映像キャリア信号IFvc信号としてアナログ変調部13a?13jへ供給する。
【0038】
アナログ変調部13a?は、デジタル放送復調部12a?12jに対応する数のアナログ変調部13a?13jにより構成される。各アナログ変調部13a?13jは、それぞれ上記デジタル放送復調部12a?12jで復調された音声信号を変調するとともに、映像信号を上記キャリア抽出部14a?14jから供給される上記IF映像キャリア信号IFvcに同期して変調し、更に現用のアナログ放送波と同じ周波数に変換して出力混合部15へ出力する。
【0039】
出力混合部15は、上記各アナログ変調部13a?13jで変調された各チャンネルのアナログ放送波を混合器51、52で混合した後、混合器53に入力する。また、出力混合部15は、デジタル放送波パススルー回路16の端子18から出力されるデジタル放送波をU/V混合器54により取り出し、混合器53に入力する。この場合、U/V混合器54は、UHF帯のデジタル放送波を取り出すために用いているので、VHF側の端子は負荷抵抗Rを介して接地する。上記負荷抵抗Rの値は、線路のインピーダンスに合わせて例えば75Ωに設定される。
【0040】
上記混合器53は、混合器51、52で混合されたアナログ放送波とU/V混合器54を介して取り出されたデジタル放送波とを混合し、分岐回路55を介して出力端子56より再送信信号として出力する。また、混合器53から出力されるアナログ放送波とデジタル放送波の混合信号は、分岐回路55を介して出力モニタ端子57へ出力される。
【0041】
上記アナログ変調部13(13a?13j)及びキャリア抽出部14(14a?14j)について、更に図3を参照して詳細に説明する。
【0042】
キャリア抽出部14は、入力分配部11から分配されたアナログ放送波が入力端子61を介して帯域幅が6MHzのバンドパスフィルタ(BPF)62に入力される。このバンドパスフィルタ62は、アナログ放送波の各チャンネルを選択するためのものであり、選択するチャンネルに応じて周波数帯域が設定される。例えばアナログ放送波の1チャンネルを選択する場合には90?96MHzに設定される。
【0043】
上記バンドパスフィルタ62で選択された信号は、増幅器63で増幅された後、ミキサ64の一方の入力端子に入力される。ミキサ64は、上記バンドパスフィルタ62で選択されたアナログ放送波を45.75MHzのIF周波数に変換する周波数変換回路を構成しており、他方の入力端子にアナログ変調部13から局部発振信号(ローカル信号)LoFが供給される。この局部発振信号の周波数は、抽出する映像キャリア信号より45.75MHzだけ高い周波数に設定される。例えば1チャンネルの映像キャリア信号を抽出する場合、上記局部発振信号LoFの周波数は、「91.25+45.75MHz=137MHz」に設定される。
【0044】
上記ミキサ64によりアナログ放送波と局部発振信号LoFが混合されてIF信号に変換された後、45.75MHzの水晶フィルタ65により帯域制限され、映像キャリア信号が取り出される。上記水晶フィルタ65から取り出された映像キャリア信号は、増幅器66、67で増幅された後、2分配回路68で2分配され、一方の信号はPLL(Phase-Locked Loop)回路69により電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)70の発振周波数を制御するために用いられる。この電圧制御発振器70は、45.75MHzの周波数で発振する局部発振器で、その発振出力はPLL回路69に戻されてループ回路を構成する。上記PLL回路69は、電圧制御発振器70から出力される発振信号を増幅器66、67から出力されるアナログ放送波の映像キャリア信号と上記電圧制御発振器70の発振信号を同期させ、アナログ放送波に同期した45.75MHzの局部発振信号を生成する。このアナログ放送波に同期した局部発振信号が映像キャリア信号IFvcとして切替スイッチ71の一方の端子に入力される。
【0045】
また、上記切替スイッチ71の他方の端子には、水晶振動子74を備えた水晶発振器75から45.75MHzの基準信号が入力される。上記水晶発振器75は、水晶振動子74により45.75MHzの安定なIF帯の映像キャリア信号を出力する。
【0046】
また、上記2分配回路68で2分配された他方の信号は、検波器72で検波されてコンパレータ73の(+)入力端子に入力され、このコンパレータ73の(-)入力端子には、一定レベルの基準信号が入力される。このコンパレータ73からの出力される信号は、切替スイッチ71に切替制御信号として入力される。この切替制御信号は、アナログ放送波の映像キャリア信号が抽出されている状態ではハイレベルとなり、切替スイッチ71を電圧制御発振器70側に切替え、上記アナログ放送波が停波し、映像キャリア信号が抽出されない状態ではローレベルとなって切替スイッチ71を水晶発振器75側に切替える。
【0047】
上記切替スイッチ71により選択されたIF帯の映像キャリア信号は、アナログ変調部13へ送られ、ビデオ変調部21の映像入力端子81に入力される。
【0048】
また、アナログ変調部13のオーディオ変調部22は、音声入力端子82、83、及び制御端子84を備え、これらの各端子には対応するデジタル放送復調部12a?12jから送られてくる映像信号、音声信号、音声制御信号がそれぞれ入力される。この場合、音声入力端子82にはL/M(左/メイン)の音声信号、音声入力端子83にはR/S(右/サブ)の音声信号、制御端子84には上記音声信号L/M、R/Sを選択するための音声制御信号が入力される。
【0049】
上記映像入力端子81に入力された映像信号は、アナログ変調器85へ送られ、キャリア抽出部14から送られてくるIF帯の映像キャリア信号を映像変調のキャリアとしてアナログ変調される。このアナログ変調された映像信号は、増幅器86で増幅された後、SAW(Surface Acoustic Wave filter)フィルタ87で帯域制限され、混合器88を介してミキサ89の一方の入力端子に入力される。上記SAWフィルタ87は、4MHzの通過帯域を有し、43.75?47.75MHzのIF帯域の信号を出力する。
【0050】
また、上記音声入力端子82、83に入力されるL/M(左/メイン)及びR/S(右/サブ)音声信号は、マルチプレクサ(MPX)91へ送られる。このマルチプレクサ91は、制御端子84を介して入力される音声制御信号に基づいて音声信号L/M、R/Sを選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う。
【0051】
上記マルチプレクサ91から出力される音声信号は、増幅器92で増幅された後、電圧制御発振器93に入力される。この電圧制御発振器93は、41.25MHzの周波数で発振する局部発振器で、その発振周波数はPLL回路94により基準発振器95の例えば8MHzの基準信号によりロックされ、その中心の発振周波数を41.25MHzに安定に保持する。
【0052】
上記増幅器92から出力される音声信号は、変調信号として電圧制御発振器93に入力され発振器の発振信号がFM変調され、41.25MHzのSAWフィルタ96を介して混合器88に入力される。この混合器88は、SAWフィルタ87から出力される映像信号とSAWフィルタ96から出力される音声信号を混合してミキサ89の一方の入力端子に入力する。
【0053】
また、上記基準発振器95から出力される基準信号は、PLL回路97に入力される。このPLL回路97は、上記基準信号を元に電圧制御発振器98の発振周波数を所定値にロックする。上記電圧制御発振器98は、IF信号の周波数を各地域におけるアナログ放送の周波数に変換するための局部発振器で、例えば1?12チャンネルに対する137?263MHzの発振周波数をスイッチで選択できるようになっている。この場合、電圧制御発振器98の発振周波数は、現用の各アナログ放送波における映像キャリア信号の周波数より45.75MHz高い周波数に設定される。例えば次に示すように
1チャンネル:137MHz
2チャンネル:143MHz
3チャンネル:149MHz
4チャンネル:217MHz
6チャンネル:229MHz
12チャンネル:263MHz
に設定される。
【0054】
上記電圧制御発振器98から出力される局部発振信号LoFは、2分配回路99で2分配され、キャリア抽出部14におけるミキサ64及びアナログ変調部13におけるミキサ89に入力される。
【0055】
ミキサ89は、混合器88から出力される映像及び音声のIF信号と上記電圧制御発振器98から出力される局部発振信号LoFとを混合し、アナログ放送波における各チャンネルと同じ周波数に変換する。上記ミキサ89で変換された信号は、バンドパスフィルタ(BPF)101で帯域制限されて取り出される。このバンドパスフィルタ101は6MHzの帯域幅を有しているが、その周波数帯域は上記キャリア抽出部14におけるバンドパスフィルタ62と同様に各チャンネルに応じて設定される。
【0056】
上記バンドパスフィルタ101で帯域制限された信号は、レベル調整器102でレベル調整された後、増幅器103で増幅されると共に、更に増幅器104、105でプッシュプル増幅され、バンドパスフィルタ106を介して出力端子107より出力混合部15(図2参照)へ出力される。上記バンドパスフィルタ106の周波数帯域は、バンドパスフィルタ101と同様に各チャンネルに応じて設定される。
【0057】
上記の構成において、アナログ放送が行われている状態では、アナログ放送波がキャリア抽出部14の入力端子61に入力される。この入力端子61に入力されたアナログ放送波は、バンドパスフィルタ62により帯域制限され、所定チャンネルの信号が選択される。上記バンドパスフィルタ62により選択され、不要波が除去された所定チャンネルのアナログ放送波は、増幅器63で増幅されてミキサ64に入力される。ミキサ64は、バンドパスフィルタ62で選択されたアナログ放送波とアナログ変調部13の電圧制御発振器98から送られてくる局部発振信号LoFとを混合し、45.75MHzの映像IF信号に変換する。
【0058】
上記ミキサ64から出力される映像IF信号は、45.75MHzの水晶フィルタ65により帯域制限され、映像キャリア信号が取り出される。上記水晶フィルタ65から出力される映像キャリア信号は、増幅器66、67で増幅された後、2分配回路68を介してPLL回路69に入力される。このPLL回路69は、電圧制御発振器70から出力される発振信号を上記アナログ放送波の映像キャリア信号に同期させ、アナログ放送波に同期した45.75MHzの映像キャリア信号IFvcを生成する。
【0059】
上記電圧制御発振器70から出力される映像キャリア信号IFvcは、切替スイッチ71により選択され、映像キャリア信号としてアナログ変調部13のアナログ変調器85に供給される。
【0060】
アナログ変調器85は、対応するデジタル放送復調部12a?12jから映像入力端子81に送られてくるベースバンドの映像信号を上記映像キャリア信号に同期してアナログ変調する。上記アナログ変調器85からは、IF帯のIF映像信号IFvが出力される。このIF映像信号IFvは、増幅器86で増幅された後、SAWフィルタ87で帯域制限されて混合器88に入力される。
【0061】
一方、マルチプレクサ91は、対応するデジタル放送復調部12a?12jから音声入力端子82、83に送られてくる音声信号L/M、R/Sを制御端子84より入力される音声制御信号により選択し、モノラル、ステレオ、音声多重を自動的に切替える。上記マルチプレクサ91から出力される音声信号は、増幅器92で増幅された後、電圧制御発振器93の電圧制御端子に入力される。電圧制御発振器93の出力信号として41.25MHzのIF周波数でFM変調されたIF音声信号IFaが、SAWフィルタ96を介して混合器88へ送られる。
【0062】
混合器88は、SAWフィルタ87から出力されるIF映像信号IFvとSAWフィルタ96から出力されるIF音声信号IFaを混合してミキサ89に入力する。ミキサ89は、混合器88で混合された映像及び音声のIF信号と電圧制御発振器98から出力されるチャンネル別の局部発振信号LoFとを混合し、アナログ放送波における各チャンネルと同じ周波数に変換する。
【0063】
上記ミキサ89で変換された信号は、バンドパスフィルタ101を介して取り出され、レベル調整器102に入力されて信号レベルが調整される。上記レベル調整器102でレベル調整された信号は、増幅器103で増幅された後、更に増幅器104、105でプッシュプル増幅され、バンドパスフィルタ106を介して出力端子107より出力混合部15へ出力される。
【0064】
出力混合部15は、図2で説明したように各アナログ変調部13a?13jで変調された各チャンネルのアナログ信号と、入力分配部11からデジタル放送波パススルー回路16を介して送られてくるデジタル放送波とを混合し、出力端子56から再送信信号として出力する。
【0065】
また、夜間あるいは2011年にアナログ放送が停波した場合、キャリア抽出部14はアナログ放送波の映像キャリア信号を抽出できないので、コンパレータ73の出力信号がローレベルとなり、切替スイッチ71が水晶発振器75側に切替わり、水晶発振器75から出力される45.75MHzの発振信号が映像変調のためのキャリア信号としてアナログ変調部13のアナログ変調器85へ送られるようになる。これにより夜間あるいは2011年にアナログ放送が停波した場合でもアナログ変調器85は映像信号を支障なく変調することができる。
【0066】
上述のように再送信装置10の出力混合部15から出力される再送信信号をアナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい信号とすることにより、強電界の地域でアナログ放送波がテレビジョン受信機内の復調部に混入した場合でも、垂直同期の乱れを防止して画面に横縞の障害が発生することを確実に防止でき、かつテレビジョン受信機のチャンネルプリセットを変更せずに運用を開始することができる。
【0067】
例えば図5に示した従来の再送信装置では、D/U比(Desire to Undesire signal ratio:希望波に対する妨害波の比)が55dB以上無い場合はビート障害がテレビ画面に現れるが、上記実施形態に示した再送信装置10では、25dBのD/U比でビート障害が現れなくなり、D/U比を30dB軽減することができる。
【0068】
上記のように再送信装置10からアナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号を出力してもビート障害の発生を防止することができるので、例えば病院、学校、ホテル等に設置されているアナログ放送のテレビジョン受信機のチャンネルプリセットを変更することなく、現在の状態のままで再送信信号を正常に受信することができる。このため既存のテレビジョン受信機に高価なデジタル放送受信用のチューナ等を増設する必要が無く、非常に経済的にシステムを構築することができる。
【0069】
また、上記再送信装置10から出力される再送信信号には、現用のアナログ放送波と同じチャンネルのアナログ放送波及び地上デジタル放送波が含まれているので、既存のアナログテレビジョン受信機であっても、また地上デジタル放送の受信機能をもつテレビジョン受信機が混在する施設においても、テレビジョン放送をそのまま受信することが可能である。
【0070】
また、夜間あるいは2011年にアナログ放送が停波し、映像キャリア信号を抽出できなくなった場合でも、切替スイッチ71が水晶発振器75側に自動的に切替わり、水晶発振器75から出力される映像キャリア信号がアナログ変調部13へ送られるので、デジタル放送復調部12a?から出力される映像信号及び音声信号に対する変調処理を正常に行うことができる。
【0071】
なお、上記実施形態では、PLL回路69の前段に検波器72を設けて映像キャリア信号の有無を検出し、アナログ放送波の映像キャリア信号が無くなった際に切替スイッチ71を切替え、水晶発振器75からなる局部発振器の出力信号を自動的に選択するようにしたが、その他、例えば予め設定した時期に、カレンダ機能の付いたタイマーなどにより自動的に切替えるようにしても良い。
【0072】
また、上記実施形態では、入力分配部11からデジタル放送波パススルー回路16を介して出力混合部15に送られてきたデジタル放送波をU/V混合器54により取り出す場合について示したが、U/V混合器54の代わりフィルタを用いてデジタル放送波を取り出すようにしても良い。
【0073】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について図4を参照して説明する。
図4は本発明の第2実施形態に係る再送信装置の入力分配部11及び電源制御部110の構成を示す図である。この第2実施形態は、上記第1実施形態に示した再送信装置10において、入力分配部11に供給する動作電源を制御する電源制御部110を設け、アナログ放送の停波に際して入力分配部11への供給電源を制御するようにしたものである。なお、入力分配部11は、上記第1実施形態の図2に示したものと同じ構成であり、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、入力分配部11の後段に設けられる各回路の構成も第1実施形態と同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。
【0074】
上記電源制御部110は、日本標準時を放送する無線局(JJY(登録商標))からの標準電波(40kHz、60kHz)を受信する標準電波受信ユニット111、標準電波受信用アンテナ112、タイマ回路113、電源制御回路114からなり、電源制御回路114は入力分配部11に設けられたデジタル放送波増幅用の増幅器33及びアナログ放送波増幅用の増幅器43に電源ライン115、116により動作電源を供給する。上記アンテナ112は、再送信装置10に内蔵される。
【0075】
上記標準電波受信ユニット111は、無線局から送信される標準電波をアンテナ112により受信し、計時信号をタイマ回路113へ出力する。タイマ回路113のタイマ時刻は、アナログ放送の停波日、すなわちアナログ放送が停波する2011年7月24日の午前0時に設定する。タイマ回路113は、標準電波受信ユニット111から出力される計時信号に従って動作し、設定時刻に達した際に電源制御回路114へ信号を出力する。電源制御回路114は、タイマ回路113から動作信号が出力されるまでは、入力分配部11に設けられているデジタル放送波増幅用の増幅器33及びアナログ放送波増幅用の増幅器43に電源ライン115、116により動作電源を供給し、タイマ回路113から動作信号が出力されるとアナログ放送波増幅用の増幅器43に対する動作電源、すなわち電源ライン116側の供給電源を遮断する。この場合、デジタル放送波増幅用の増幅器33に対する動作電源は、そのまま継続して供給する。
【0076】
上記の構成において、タイマ回路113は、標準電波受信ユニット111が受信する標準電波に基づいて計時動作を行うが2011年7月24日午前0時までは動作信号を出力しない。電源制御回路114は、タイマ回路113から動作信号が出力されるまでは、入力分配部11に設けられているデジタル放送波増幅用の増幅器33及びアナログ放送波増幅用の増幅器43に動作電源を供給する。従って、増幅器33はデジタル放送波を増幅し、増幅器43はアナログ放送波を増幅して後段の回路へ出力する。
【0077】
そして、タイマ回路113の設定時刻である2011年7月24日の午前0時になると、タイマ回路113から動作信号が出力されて電源制御回路114へ送られる。電源制御回路114は、タイマ回路113から動作信号が出力されるとアナログ放送波増幅用の増幅器43に対する動作電源(電源ライン116)を遮断する。これにより増幅器43は、増幅動作を停止する。
【0078】
一方、デジタル放送波増幅用の増幅器33には、電源制御回路114から動作電源が継続して供給される。従って、デジタル放送波は増幅器33で増幅され、図2に示す後段のデジタル放送復調部12a?12jで復調されてアナログ変調部13a?13jへ送られる。このときアナログ変調部13a?13jには、図3に示すようにキャリア抽出部14(14a?14j)から水晶発振器75の出力である45.75MHzの映像キャリア信号が切替スイッチ71を介して与えられるので、支障なくアナログ変調動作が行われる。
【0079】
上記のようにアナログ放送の停波に際し、入力分配部11に設けられているアナログ放送波増幅用の増幅器43の動作電源を遮断することにより、アナログ放送停波後に新たに発生するVHF帯の周波数信号(搬送波)を装置本体と遮断することができる。このため再送信装置10からは歪みのない再送信信号を出力でき、ナログ放送停波後に発生するVHF帯の周波数信号によるテレビジョン映像への障害を確実に防止することができる。
【0080】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。例えば日付時間情報を上記実施形態の標準電波受信ユニット111からでなく水晶発振子を基準信号源としてリチウム電池などの長寿命のバッテリーで駆動されるリアルタイムクロック回路を用いたマイコン制御による長期間設定可能なタイマ回路により、電源制御回路114を制御しアナログ放送が停波する日時に上記説明したのと同様の電源の遮断することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1実施形態に係る再送信装置の全体の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態における再送信装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態におけるアナログ変調部及びキャリア抽出部の詳細を示す構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る再送信装置の入力分配部及び電源制御部の構成を示す図である。
【図5】従来の一般的な再送信装置の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0082】
10…再送信装置、11…入力分配部、12a?12j…デジタル放送復調部、13、13a?13j…アナログ変調部、14、14a?14j…キャリア抽出部、15…出力混合部、16…デジタル放送波パススルー回路、21…ビデオ変調部、22…オーディオ変調部、23…周波数変換部、31…入力端子、32…分岐回路、33…増幅器、34?36…分配器、37…モニタ端子、41…入力端子、42…分岐回路、43…増幅器、44?46…分配器、47…モニタ端子、51?53…混合器、54…U/V混合器、55…分岐回路、56…出力端子、57…出力モニタ端子、61…入力端子、62…バンドパスフィルタ、63…増幅器、64…ミキサ、65…水晶フィルタ、66、67…増幅器、68…分配回路、69…PLL回路、70…電圧制御発振器、71…切替スイッチ、72…検波器、73…コンパレータ、74…水晶振動子、75…水晶発振器、81…映像入力端子、82、83…音声入力端子、84…制御端子、85…アナログ変調器、86…増幅器、87…SAWフィルタ、88…混合器、89…ミキサ、91…マルチプレクサ、92…増幅器、93…電圧制御発振器、94…PLL回路、95…基準発振器、96…SAWフィルタ、97…PLL回路、98…電圧制御発振器、99…分配回路、101…バンドパスフィルタ、102…レベル調整器、103…増幅器、104、105…増幅器、106…バンドパスフィルタ、107…出力端子、110…電源制御部、111…標準電波受信ユニット、112…アンテナ、113…タイマ回路、114…電源制御回路、115、116…電源ライン。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送をアナログ放送の周波数帯に変換して再送信する再送信装置であって、
アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送を受信して映像信号及び音声信号を復調するデジタル放送復調部と、
前記アナログ放送波を受信して映像キャリア信号を抽出するキャリア抽出部と、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号及び音声信号を再変調し、前記アナログ放送波と同じ周波数帯の再送信信号に変換して出力するアナログ変調部とを具備し、
前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部で復調された映像信号を再変調する際、前記キャリア抽出部で抽出された映像キャリア信号に同期して再変調し、アナログ放送波の映像キャリア信号と周波数・位相が等しい再送信信号とし、
前記デジタル放送復調部は前記アナログ放送波のチャンネルに対応するデジタル放送のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部は前記アナログ放送波のチャンネル毎に設けられ、前記キャリア抽出部の数は前記デジタル放送復調部の数に対応することを特徴とする再送信装置。
【請求項2】
前記キャリア抽出部は、
映像キャリア信号に位相がロックされた局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記映像キャリア信号とは無関係に局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、アナログ放送波の映像キャリア信号の有無を検知する検知手段と、前記検知手段の検知出力により切替制御され、映像キャリア信号が検知されている状態では前記第1の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号が検知されていない状態では前記第2の局部発振器の出力信号を選択し、映像キャリア信号としてアナログ変調部へ出力する切替手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の再送信装置。
【請求項3】
受信したデジタル放送波を通過させて前記アナログ変調部から出力される再送信信号と混合するデジタル放送波パススルー手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の再送信装置。
【請求項4】
前記デジタル放送復調部は、復調した音声信号と共に該音声信号の音声方式を示す識別信号をアナログ変調部に出力する識別信号出力手段を備え、前記アナログ変調部は、前記デジタル放送復調部から出力される音声方式識別信号に基づいて音声信号を選択してモノラル、ステレオ、音声多重の自動切替えを行う音声方式切替手段を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の再送信装置。
【請求項5】
受信したデジタル放送波を増幅して前記デジタル放送復調部に出力する第1の増幅器と、受信したアナログ放送波を増幅して前記キャリア抽出部に出力する第2の増幅器と、標準電波を受信する標準電波受信部と、前記標準電波受信部により受信された標準電波に基づいて計時動作し、タイマ時刻がアナログ放送停波日に設定されたタイマ回路と、前記第1の増幅器及び第2の増幅器に動作電源を供給し、前記アナログ放送停波日に前記タイマ回路から出力される信号により前記第2の増幅器の動作電源を遮断する電源制御回路とを具備することを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の再送信装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2012-04-03 
出願番号 特願2008-272385(P2008-272385)
審決分類 P 1 123・ 121- YA (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古川 哲也  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 渡邊 聡
梅本 達雄
登録日 2010-02-26 
登録番号 特許第4464453号(P4464453)
発明の名称 再送信装置  
代理人 坂井 慎  
代理人 坂井 慎  
代理人 野河 信久  
代理人 河野 哲  
代理人 佐藤 立志  
代理人 佐藤 立志  
代理人 小林 正治  
代理人 河野 哲  
代理人 野河 信久  
代理人 小林 正英  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 蔵田 昌俊  
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