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審決分類 |
審判 訂正 2項進歩性 訂正する A01K 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A01K 審判 訂正 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 訂正する A01K 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A01K 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A01K 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する A01K |
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管理番号 | 1259960 |
審判番号 | 訂正2011-390124 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2011-11-14 |
確定日 | 2012-06-28 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3273368号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3273368号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成 7年 9月26日 出願 平成14年 2月 1日 特許権の設定登録 (請求項1) 平成23年11月14日 本件訂正審判請求 平成24年 2月13日 上申書 平成24年 3月 1日 訂正拒絶理由通知 平成24年 4月 3日 意見書、及び手続補正書提出 平成24年 5月18日 上申書 第2 補正の適否 平成24年4月3日付けで提出された手続補正書における補正は、請求の理由について、「訂正の事項」[1]及び[2](なお、[]は丸数字を表す。)中の「浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内部の中央に設けたネジで螺合連結し」を「浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内側の中央位置に設けたネジで螺合連結し」に変更するものである。 そして、(a)浮子本体の上部、及び浮子本体の下部における、前者の「半球状内部」と後者の「半球状内側」とは、実質的に同じ場所を表すものであり、また、(b)前者の「中央に設けたネジ」の「中央」が、実質的に位置を表す意図のものであることは自明の事項であるので、「中央」を「中央位置」と変更することも、その技術内容を実質的に変更するものではない。 よって、補正は、請求の要旨を変更するものではなく、特許法第131条の2第1項の規定に違反するものではないから、同補正を認める。 第3 請求の要旨及び訂正の内容 上記「第2」で述べたとおり、本件補正は適法と認められるので、本件訂正審判の請求の趣旨は、特許3273368号発明の明細書(以下,「本件特許明細書」という。)を平成24年4月3日付け手続補正書で補正された、審判請求書添付の訂正明細書(以下「訂正明細書」という)のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである。 訂正事項a:請求項1の「浮子本体内部に空洞を設け、浮子本体を上部と下部に分割して、相互を嵌合し」とあるのを、「玉浮子を上部と下部の半球状に分割して、相互を嵌合し、1個の玉浮子の構造とするように、浮子本体内部に空洞を設け」に訂正する。 訂正事項b:請求項1の「浮子上部と下部を螺合連結し」とあるのを、「浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内側の中央位置に設けたネジで螺合連結し」に訂正する。 訂正事項c:請求項1の「密閉嵌合してする構造」とあるのを、「上記相互の嵌合を浮子本体の外周で上部を内側に下部を外側にオーバーラップさせて密封嵌合する構造」に訂正する。 訂正事項d:明細書段落【0005】の「【問題を解決するための手段】本発明はこの問題を解決するために、浮子として例えば玉浮子を上部と下部に分割し両部分を嵌合させ1個の玉浮子とする構造を具備し、嵌合する度合を変化させれば玉浮子全体の体積が変化する。このときの玉浮子の浮力は玉浮子の体積と自重および海水の比重によって決まるため、体積が変われば自ずから浮力が変わる。嵌合の度合を変えるため上部と下部にそれぞれ設けたネジで結合して上部と下部を回転し連続的に微細に浮力を調節可能としたものである。」とあるのを、「【問題を解決するための手段】本発明はこの問題を解決するために、浮子として例えば玉浮子を上部と下部に分割し、両部分を嵌合させ1個の玉浮子とする構造を具備し、嵌合する度合を変化させれば玉浮子全体の体積が変化する。このときの玉浮子の浮力は、玉浮子の体積と自重および海水の比重によって決まるため、体積が変われば自ずから浮力が変わる。嵌合の度合を変えるために上部と下部にそれぞれ設けたネジで結合して上部と下部を回転し連続的に微細に浮力を調節可能としたものである。即ち、本発明は、玉浮子を上部と下部の半球状に分割して、相互を嵌合し、1個の玉浮子の構造とするように、浮子本体内部に空洞を設け、浮子本体の外形の体積を可変することにより、浮子の浮力を調整可能にする浮力調整浮子において、浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内側の中央位置に設けたネジで螺合連結し、上記相互の嵌合を浮子本体の外周で上部を内側に下部を外側にオーバーラップさせて密封嵌合する構造とし、上部または下部を回転することで嵌合の度合いを連続的に加減し、浮子の浮力を連続的に増減することを特徴とする釣魚用浮子である。」に訂正する。 第4 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の実質的な拡張・変更の有無の判断 訂正事項aは、請求項1において、浮子本体について「玉浮子」と限定し、その上部と下部の形態について「半球状」と限定し、上部と下部とを相互嵌合することについて「嵌合し、1個の玉浮子の構造とするように」と限定する訂正であるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。 訂正事項bは、請求項1において、浮子上部と下部を螺合連結する構造について、「浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内側の中央位置に設けたネジで螺合連結し」と限定する訂正であるから特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。 訂正事項cは、請求項1において、浮子上部と下部を密閉嵌合する構造について「相互の嵌合を浮子本体の外周で上部を内側に下部を外側にオーバーラップさせて密封嵌合する」と限定する訂正であるから特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。 訂正事項dは、訂正事項a?cで特許請求の範囲を訂正したことによって不明りょうとなった発明の詳細な説明の記載を、特許請求の範囲の記載との整合性を得られるように訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項aないしdは、何れも実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 第5 独立特許要件の判断 以上のとおり、訂正事項aないしcは、特許請求の範囲(請求項1)の減縮を目的とするものであるであるから、訂正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 1.訂正後の請求項1に係る発明 訂正明細書の請求項1に係る発明は、次の事項により特定されるとおりのものである。 「玉浮子を上部と下部の半球状に分割して、相互を嵌合し、1個の玉浮子の構造とするように、浮子本体内部に空洞を設け、浮子本体の外形の体積を可変することにより、浮子の浮力を調整可能にする浮力調整浮子において、浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内側の中央位置に設けたネジで螺合連結し、上記相互の嵌合を浮子本体の外周で上部を内側に下部を外側にオーバーラップさせて密封嵌合する構造とし、上部または下部を回転することで嵌合の度合いを連続的に加減し、浮子の浮力を連続的に増減することを特徴とする釣魚用浮子。」(以下、「訂正発明」という。) 2.特許法第36条第6項第1号および第2号要件について (1)訂正拒絶理由の概要 平成24年3月1日付けで通知した訂正拒絶理由の理由1[独立特許要件について]の概要は、訂正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるというものであり、その理由は、次のようなものである。 理由1:(a)訂正明細書の請求項1には、「浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内部の中央に設けたネジで螺合連結し・・・密封嵌合する構造」と記載されており、該記載においてネジは、その文言どおり、それぞれ「浮子本体の上部と下部」の「半球状内部」であって、その「中央」に設けたものである。 ところで、「ネジ」なる用語は、(イ)ボルトの様なねじ部品の全体を表す意図で用いられる場合と、(ロ)「ねじを切る」の様にねじ山の部分のみを表す意図で用いられる場合とがあるので、まず、上記記載のネジがいずれの意図で用いられたものであるかについて、以下に検討する。 (b)訂正前の本件特許明細書中には、「半球状内部の中央に設けたネジ」なる記載は存在せず、「ネジ」なる記載は、【0005】に「上部と下部にそれぞれ設けたネジで結合して・・・」と、【0010】に「浮子6のトツプ6aのオネジ6a2は浮子6のトップ6aの頭部6a1に埋め込まれ固定される。」「メネジ6b2はボトム6bの下方に埋め込まれ固定される。このメネジ6b2には釣糸5を通す穴6b3を有する。」と、【0011】に「ボトム6bに設けたメネジ6b2とトップ6aに設けたオネジ6a2を螺合させる・・・」と記載され、図【図1】?【図2】、【図5】?【図8】の「6a2」「6b2」に対して【符号の説明】に「6a2 オネジ」「6b2 メネジ」と記載されているのみである。 そして、【0010】の「オネジ6a2は・・頭部6a1に埋め込まれ固定される。」「メネジ6b2には釣糸5を通す穴6b3を有する。」等の記載ぶりを参酌すると、本件特許明細書における「ネジ」は、上記(イ)のねじ部品の全体を表す意図で用いられるものと解される。 ところが、そのように解すると、【図1】【図2】【図6】【図7】のメネジ6b2が、半球状のボトム6bから、その外方に突出した態様は、「半球状内部」に「設けた」といえる様なものではないので、請求項1記載の「半球状内部」に「設けたネジ」とは整合しないものとなってしまう。 (c)他方、本件特許明細書における「ネジ」が、上記(ロ)のねじ山の部分のみを表す意図で用いられると解釈すると、同じく【図1】【図5】【図7】【図8】のオネジ6a2のねじ山部が、半球状のトップ6aから、その外方に突出して、下部の半球状のボトム6bの内部に位置した態様は、「半球状内部」に「設けた」といえる様なものではないので、同じく、請求項1記載の「半球状内部」に「設けたネジ」とは整合しないものとなってしまう。 (d)そうすると、訂正明細書請求項1記載の「浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内部の中央に設けたネジで螺合連結し・・・密封嵌合する構造」は、明細書全体を参酌しても、当該記載により特定される発明が不明確であり、かつ、仮に「ネジ」が上記(イ)または(ロ)のいずれか一方を表すものとしても、そのようなものは、同じく上記(b)(c)に記載したように、発明の詳細な説明に記載されたものではないので、訂正明細書請求項1記載の発明は、発明の詳細な説明に記載したものともいえない。 したがって、訂正明細書の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号および第2号に規定する要件を満たしていない。 (2)特許法第36条第6項第1号および第2号要件についての判断 (a)平成24年4月3日付けで補正された訂正明細書の請求項1には、「浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内側の中央位置に設けたネジで螺合連結し・・・密封嵌合する構造」と記載されている。 (b)請求人は、平成24年5月18日付けで上申書を提出し、「ネジは、『半球状内部の中央』に『設けた』ものであることが明らかであり、これを『「半球状内部」であって、その「中央」に設けた』と認定することは、訂正事項(b)の記載に基づいてなされたものではない。 即ち、『半球状内部の中央』は、浮子本体の上部と下部におけるネジを設けた位置を半球状内部の中央(位置)と特定したものであり、ネジが『半球状内部』に設けたとする浮子本体の上部と下部におけるネジ設置の形態を特定したものではない。・・・ 即ち、訂正事項(b)の『半球状内部』は、ネジを設けた『中央』(半球状内部の周方向中央位置の意味である)を特定するために『中央』に掛る修飾語として『半球状内部の中央』と記載したにすぎず、ネジを浮子本体の上部と下部における『半球状内部』に設けたかどうかを記載したものではない。」と主張した。 (c)そこで、該記載におけるネジを設ける位置である「それぞれその半球状内側の中央位置」の意味合いについて検討する。 訂正前の本件特許明細書中には、「半球状内側の中央位置に設けたネジ」なる記載は存在しない。 訂正前の本件特許明細書中の「ネジ」なる記載は、【0005】に「上部と下部にそれぞれ設けたネジで結合して・・・」と、【0010】に「浮子6のトツプ6aのオネジ6a2は浮子6のトップ6aの頭部6a1に埋め込まれ固定される。」「メネジ6b2はボトム6bの下方に埋め込まれ固定される。このメネジ6b2には釣糸5を通す穴6b3を有する。」と、【0011】に「ボトム6bに設けたメネジ6b2とトップ6aに設けたオネジ6a2を螺合させる・・・」と記載され、【図1】?【図2】、【図5】?【図8】の「6a2」「6b2」に対して【符号の説明】に「6a2 オネジ」「6b2 メネジ」と記載されているのみである。 また、本件特許明細書に添付された図面の【図1】、【図5】?【図8】には、本発明による浮子の断面図、及び、本発明による他の浮子の断面図が記載されており、メネジ6b2とオネジ6a2とが螺合することを考慮すれば、それらの断面図において、「6a2 オネジ」「6b2 メネジ」は、トップ6aとボトム6bで形成される浮子の水平断面の中心部、換言すると、浮子を上方から見たトップ6aとボトム6bの外周に対して内側の中央位置に設けた態様で図示されている。 そして、上記本件特許明細書【0005】の記載、及び【図1】、【図5】?【図8】を参酌すると、訂正発明の「ネジ」は、上記「6a2 オネジ」「6b2 メネジ」を実施例とする、【0005】の「上部と下部にそれぞれ設けたネジ」であって、ねじ部品の全体を表すものであり、さらに、ネジが設けられる「その半球状内側の中央位置」は、【図1】、【図5】?【図8】に例示されたようなトップ6aとボトム6bの外周に対して内側の中央位置を意味するものと理解できる。 (d)そうすると、訂正発明の「その半球状内部の中央に設けたネジ」は、明細書及び図面を参酌して意味を理解できるものであるので、「浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内部の中央に設けたネジで螺合連結し・・・密封嵌合する構造」は、明細書全体を参酌すると、当該記載により特定される発明は明確である。 また、そのようなものは、上記(c)に記載したように、実質的に発明の詳細な説明に記載されたものである。 3.特許法第29条第1項および第2項要件について (1)請求人は、平成24年2月13日付けで上申書を提出し、本件特許に係る東京地裁平成23年(ワ)第18619号特許権侵害差止等請求事件において、特開昭53-134681号公報、実開昭60-62268号公報及び全文明細書、特開平4-99433号公報(以下、それぞれ、刊行物1,2,3と言う。)に基づく特許無効の抗弁(特許法第29条第1項および第2項の規定違反)がなされた旨上申している。 そこで、訂正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下、検討する。 (2)刊行物1?3とその記載事項 ア.本件特許出願前に頒布された特開昭53-134681号公報には、釣り糸または漁網と共に、またはその他の目的に使用される調整可能なフロート・シンカに関して、次の事項が記載されている。 (ア)「本発明の主目的は、釣り糸に取り付けることができ、水面に浮くか、水底に急速またはゆつくり沈むかを速かに調整することができる適当な重りを提供することである。」(第1頁右下欄9?12行) (イ)「本発明による調整可能フロート・シンカの主な構成は、水と同程度の比重を有する本体および、その質量を変えずに本体の体積を変える手段より成る。」(第1頁右下欄13?16行) (ウ)「第1図の実施例において、フロート・シンカは・・・テーパー状端部(12)および丸い先端(13)を有する円筒部(11)より成る。フロート・シンカを釣り糸に取りつけるための小穴(14)が先端(13)の近くに設けられる。 円筒部(11)は他端で開放し空洞(15)を形成する。 空洞(15)の外端の内側にネジ山が設けられて、外側ネジを有するプラグ(16)を受け入れる。 このネジは、プラグが所定位置にある時に水が空洞(15)に入らないように設計される。 プラグの外端に溝(17)が設けられ、ネジまわし、ナイフの刃、コイン等でプラグをまわして位置を調整する。本体の外側の直径方向に相反する位置に一対の平坦部(18)を形成し、プラグの位置を調整する間プラグを指で保持することができる。」(第1頁右下欄19行?第2頁左上欄14行) (エ)「プラグをネジ込みまたはネジ出すことにより、質量を変えないでフロート・シンカの体積を変え、したがつて比重を変えることができる。」(第2頁左上欄18行?第2頁右上欄1行) (オ)「第2-5図に示す変形例では、O-リングを使用して水に対する封止をする。第2図に示す実施例では、プラグ外端の段部(21)を受け入れるように空洞の外端(20)の直径を大きくし、段部(21)にO-リング封止(22)を設ける。」(第2頁右上欄14?18行) (カ)「第4図および第5図の実施例では、プラグの代わりに、本体(11)の外側ネジに係合する内側ネジ付キャップ(24)を有する。」(第2頁左下欄5?7行) (キ)Fig.1には、第1実施例の断面図が記載されている。 (ク)Fig.2には、他の実施例の断面図が記載されている。そして、そこには、フロート・シンカを、テーパー状端部(12)およびフロート・シンカを釣り糸に取りつけるための小穴(14)が近くに設けられる丸い先端(13)を有する円筒部(11)と、外側ネジを有するプラグ(16)とを相互に嵌合し、内部に空洞を設けたフロート・シンカであって、円筒部(11)とプラグ(16)とを、円筒部(11)の内側に設けたネジ山と、プラグ(16)の外径の細い部分の外側に設けたネジとで螺合連結し、上記相互の嵌合を、プラグ(16)の段部(21)の部分で、プラグ(16)を内側に、円筒部(11)を外側にオーバーラップさせ、O-リングを使用して水に対する封止をする構造としたフロート・シンカが、図示されている。 上記記載事項及び図面の記載から、刊行物1にはFig.2に記載されたフロート・シンカに着目して、次の発明が記載されているものと認められる。 「フロート・シンカをテーパー状端部(12)およびフロート・シンカを釣り糸に取りつけるための小穴(14)が近くに設けられる丸い先端(13)を有する円筒部(11)と、外側ネジを有するプラグ(16)とを相互に嵌合し、内部に空洞を設けたフロート・シンカであって、円筒部(11)とプラグ(16)とを、円筒部(11)の内側に設けたネジ山と、プラグ(16)の外径の細い部分の外側に設けたネジとで螺合連結し、上記相互の嵌合を、プラグ(16)の段部(21)の部分で、プラグ(16)を内側に、円筒部(11)を外側にオーバーラップさせ、O-リングを使用して水に対する封止をする構造とし、プラグをネジ込みまたはネジ出しすることにより質量を変えないでフロート・シンカの体積を変え、水面に浮くか、水底に急速またはゆつくり沈むかを速かに調整することができるフロート・シンカ。」(以下、これを「刊行物1記載の発明」という。) イ.本件特許出願前に頒布された実開昭60-62268号公報及びその全文明細書には、釣用の電気浮子に関して、次の事項が記載されている。 (ア)「夜釣りに使用するものとしては発光ダイオード等の発光素子を組込んだ電気浮子も各種の構成のものが使用されている。」(明細書第1頁第16?18行) (イ)「この考案は・・・電気浮子にあって道糸を浮子中心に貫通させ、釣針を遠方に投げるにしても、釣人の思い通りにできて最良の条件での釣りを実現できる便利な電気浮子を提供しようとするものである。」(明細書第2頁第19行?第3頁第4行) (ウ)「1は浮子本体で、この浮子本体は透明アクリル樹脂等よりなる上ケース2と、下ケース3とを着脱自在に螺合することにより構成し、且つこの螺合部にOリング4を介装して防水構造とし、下ケース3下部に適宜手段によって重り付与体5を結合してなる。6はこの浮子本体1の中心を貫通して設けた道糸挿通孔で、これは上ケース2中心部に下ケース3を貫通する管体7を以て構成し、該管体7の下端を重り付与体5の中心孔8に対してOリング9等を介装して水密に結合している。尚、上記実施例では下ケース3と重り付与体5とをOリング4を介装して螺合手段によって結合し、重り付与体5に内装する重り10の加減で重さの変更が可能なように構成したものであるが、両者は一体的に結合したものでもよい。」(明細書第3頁第7行?第4頁第2行) (エ)「第3図は他の実施例を示すもので、浮子本体1を球形状に形成したものであり、重り付与体5は下ケース3の底部に内装し、道糸挿通孔6は両ケース2、3中心にそれぞれ設けた管体7a、7bの端部をはめあい結合しており、このはめあい部にOリング9を介装して水密構造としている。このように、浮子本体1の形状は特定されたものではなく、卵形、球形、その他適宜の形状とすることができる。」(明細書第4頁18行?第5頁7行) (オ)図3には、他の実施例を示す断面図が記載されている。 そして、そこには、球形の浮子本体を半球状の上ケース2と、半球状の下ケース3とを着脱自在に螺合することにより構成し、且つ浮子本体の外周の螺合部にOリング4を介装して防水構造として結合してなるものが図示されている。 ウ.刊行物3の記載事項 本件特許出願前に頒布された特開平4-99433号公報には、潜水浮子に関して次の事項が記載されている。 (ア)「魚が餌を咥えた時に、抵抗感や警戒感を出来るだけ与えない為に、仕掛けに錘を付けないか、付けても極く軽い錘で目的の深度まで、的確に仕掛けを沈めることができればと、望まれた。」(第5頁左上欄4?7行) (イ)「この発明に係る潜水浮子は、第一図で見るように上部外殻(1)、下部外殻(2)、錘管(3)、螺管子(4)、螺管(5)、支持リング(6)の組合せより成っている。 上部外殻(1)の天頂部中心を貫通して、軸管(7)が下部外殻(2)上部の連結子(8)中心の軸管孔(9)を通り、連結子(8)底面近くまで達している。 連結子(8)上面の外周に近い位置から、外周と曲率を同じくした弧状の、螺管回動肢(10)(10)が垂直に立ち上がり、螺管基板(11)の回動肢孔(12)を挿通して螺管子(4)底面の溝A(13)に遊嵌されている。 上部外殻(1)下部外側には、支持リング(6)が環装され、支持リング(6)、上部外殻(1)を貫通して螺子(14)(14)(14)が、連結子(8)側面を一周して設けられた溝B(15)内に達している。螺子(14)(14)(14)は、溝B(15)に遊挿されていて、上部外殻(1)と下部外殻(2)とを連結し、上部外殻(1)に対して下部外殻(2)が回動可能にしている。」(第5頁左上欄11行?同右上欄11行) (ウ)「上部外殻(1)に対して下部外殻(2)を回動させることで、螺管回動肢(10)(10)が螺管基板(11)を回動させ、螺管(5)が上下動する。潜水浮子を水中に投じた場合、錘管(3)の重さで、潜水浮子は錘管(3)部分を下にして水中に沈み下部外殻(2)下端部分の開放された穴から水が侵入し、下部外殻(2)内部の空気は軸管(7)に設けられたスリット(21)(21)から軸管(7)を通り排出される。螺管基板(11)が上方へ移動するほど、水中に占める潜水浮子の体積は減少し、水中に沈む深度は深くなる。ライン・ホルダーA(16)、ライン・ホルダーB(17)を通して仕掛けを作れば、仕掛けは潜水浮子と共に、設定された深さまで沈み、潜水浮子が浮遊状態になれば、ラインは、ほとんど潜水浮子とは関係なく独立した状態となる。」(第5頁同左下欄7行?同右下欄3行) (エ)図1には、発明の実施例を示す断面図が記載されている。 そして、そこには、螺管子(4)と、潜水浮子内側の中央位置に設けたネジ螺管(5)とが螺合されたものが図示されている。 (3)訂正発明と刊行物1記載の発明との対比 ア.両発明の対応関係 (a)刊行物1記載の発明の「フロート・シンカ」は、それが「フロート・シンカの体積を変え、水面に浮くか、水底に急速またはゆつくり沈むかを速かに調整することができる」ことからみて、訂正発明の「浮子本体」及び「浮力調整浮子」に相当するとともに、訂正発明の「玉浮子」とは、浮子である点で共通するものである。 (b)刊行物1記載の発明の「円筒部(11)」は、フロート・シンカが通常、釣り糸に取りつけるための小穴(14)が設けられる側を下として使用されるものであるので、訂正発明の「下部」に相当し、以下同様に、 「プラグ(16)」は、円筒部(11)の逆側の部分であるので、訂正発明の「上部」に、 「プラグをネジ込みまたはネジ出しすることにより質量を変えないでフロート・シンカの体積を変え、水面に浮くか、水底に急速またはゆつくり沈むかを速かに調整することができる」ことは、「上部または下部を回転することで嵌合の度合いを連続的に加減し、浮子の浮力を連続的に増減すること」に、それぞれ相当する。 (c)刊行物1記載の発明の「テーパー状端部(12)およびフロート・シンカを釣り糸に取りつけるための小穴(14)が近くに設けられる丸い先端(13)を有する円筒部(11)と、外側ネジを有するプラグ(16)とを相互に嵌合し、内部に空洞を設けたフロート・シンカ」と、訂正発明の「玉浮子を上部と下部の半球状に分割して、相互を嵌合し、1個の玉浮子の構造とするように、浮子本体内部に空洞を設け、浮子本体の外形の体積を可変することにより、浮子の浮力を調整可能にする浮力調整浮子」とは、前者が「プラグをネジ込みまたはネジ出しすることにより質量を変えないでフロート・シンカの体積を変え、水面に浮くか、水底に急速またはゆつくり沈むかを速かに調整する」ものであって、「プラグをネジ込みまたはネジ出しすること」が、実質的にフロート・シンカ内部に空洞を設け、フロート・シンカの外形の体積を可変することであるので、「浮子を上部と下部に分割して、相互を嵌合し、1個の浮子の構造とするように、浮子本体内部に空洞を設け、浮子本体の外形の体積を可変することにより、浮子の浮力を調整可能にする浮力調整浮子」である点で共通する。 (d)刊行物1記載の発明の「円筒部(11)とプラグ(16)とを、円筒部(11)の内側に設けたネジ山と、プラグ(16)の外径の細い部分の外側に設けたネジとで螺合連結」することと、訂正発明の「浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内側の中央位置に設けたネジで螺合連結」することとは、「浮子本体の上部と下部をそれぞれネジで螺合連結」する点で共通する。 (e)刊行物1記載の発明の円筒部(11)とプラグ(16)との「相互の嵌合を、プラグ(16)の段部(21)の部分で、プラグ(16)を内側に、円筒部(11)を外側にオーバーラップさせ、O-リングを使用して水に対する封止をする構造」と、訂正発明の「上記相互の嵌合を浮子本体の外周で上部を内側に下部を外側にオーバーラップさせて密封嵌合する構造」とは、「上記相互の嵌合を上部を内側に下部を外側にオーバーラップさせて密封嵌合する構造」で共通する。 そうすると、両者は、 「浮子を上部と下部に分割して、相互を嵌合し、1個の浮子の構造とするように、浮子本体内部に空洞を設け、浮子本体の外形の体積を可変することにより、浮子の浮力を調整可能にする浮力調整浮子において、浮子本体の上部と下部をそれぞれネジで螺合連結し、上記相互の嵌合を上部を内側に下部を外側にオーバーラップさせて密封嵌合する構造とし、 上部または下部を回転することで嵌合の度合いを連続的に加減し、浮子の浮力を連続的に増減する釣魚用浮子。」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:訂正発明は、浮子が「玉浮子」あって、「上部と下部の半球状に分割して、相互を嵌合し、1個の玉浮子の構造とする」ものであるのに対して、刊行物1記載の発明は、玉浮子ではない点。 相違点2:訂正発明は、「嵌合の度合いを連続的に加減し、浮子の浮力を連続的に増減する」螺合連結が、「浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内側の中央位置に設けたネジ」で行われるのに対して、刊行物1記載の発明は、螺合連結が「円筒部(11)の内側に設けたネジ山と、プラグ(16)の外径の細い部分の外側に設けたネジとで」行われる点。 相違点3:訂正発明は、オーバーラップが「浮子本体の外周」で行われるのに対して、刊行物1記載の発明は、オーバーラップが「プラグ(16)の段部(21)の部分」で行われた点。 (4)訂正発明の容易推考性の検討 ア.相違点1について、 刊行物2の記載事項(オ)に他の実施例として「球形の浮子本体を半球状の上ケース2と、半球状の下ケース3とを着脱自在に螺合することにより構成」したものが図示されており、さらに、刊行物2の記載事項(エ)に「浮子本体1の形状は特定されたものではなく、卵形、球形、その他適宜の形状とすることができる。」と記載されている様に、浮子本体の形状は、当業者が適宜の選択し得る事項であるので、刊行物1記載の発明のフロート・シンカを刊行物2の球形として、相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ.相違点2について、 刊行物3には、螺管子(4)と、潜水浮子内側の中央位置に設けたネジ螺管(5)とが螺合されたものが図示されているものの、螺管子(4)も、ネジ螺管(5)も、上部外殻(1)や下部外殻(2)とは、別の部品であって、浮子本体の上部と下部を螺合連結するものではない。 そして、浮子の浮力を連続的に増減する螺合連結を「浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内側の中央位置に設けたネジ」で行うことは、刊行物1?3に記載も示唆もされておらず、刊行物1記載の発明の「円筒部(11)の内側に設けたネジ山と、プラグ(16)の外径の細い部分の外側に設けたネジとで」行われる螺合連結を、半球状内側の中央位置に設けたネジで行うものとすることは、当業者が、容易に想到し得たとはいえない。 ウ.相違点3について、 刊行物2の記載事項(オ)に他の実施例として「浮子本体の外周の螺合部にOリング4を介装して防水構造と」したものも図示されており、上記ア.の刊行物1記載の発明のフロート・シンカを刊行物2の球形とするのにともない、刊行物1記載の発明のオーバーラップを浮子本体の外周で行うものとして、相違点3に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 エ.まとめ そうすると、訂正発明1は、本件出願前に頒布された刊行物である刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 第6 訂正が、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものかの判断 (1)訂正拒絶理由の概要 平成24年3月1日付けで通知した訂正拒絶理由の理由2[特許法第126条第3項要件について]は、次のようなものである。 理由2:本件特許の願書に添付した明細書又は図面における「ネジ」に係る記載は、上記「第3 1.」の(b)?(c)に摘記したものと同様である。 そして、訂正事項bの「浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内部の中央に設けたネジで螺合連結」する構造は、上記「第3 1.」の(d)に記載したのと同様に、願書に添付した明細書又は図面のいずれにも記載も示唆もされたものでない。 そうすると、訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第126条第3項に規定する要件を満たしていない。 (2)特許法第126条第3項要件についての判断 訂正事項bの「浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内部の中央に設けたネジで螺合連結」する構造は、前記第5 2.と同様に、特許明細書の【0005】【0010】【0011】及び【図1】、【図5】?【図8】に実質的に記載されたものである。 また、訂正事項a,c?dも、特許明細書の【0005】【0012】及び【図1】、【図2】、【図4】?【図8】に記載されたものである。 そうすると、上記各訂正は、特許明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものである。 第7 むすび したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第1項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 釣魚用浮子 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 玉浮子を上部と下部の半球状に分割して、相互を嵌合し、1個の玉浮子の構造とするように、浮子本体内部に空洞を設け、浮子本体の外形の体積を可変することにより、浮子の浮力を調整可能にする浮力調整浮子において、浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内側の中央位置に設けたネジで螺合連結し、上記相互の嵌合を浮子本体の外周で上部を内側に下部を外側にオーバーラップさせて密封嵌合する構造とし、上部または下部を回転することで嵌合の度合いを連続的に加減し、浮子の浮力を連続的に増減することを特徴とする釣魚用浮子。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は釣魚用の浮子に係わり、特に浮力が可変の浮子に関する。 【0002】 【従来の技術】従来から釣魚に於いて、主に水深の中層にいる種類の魚は、釣るときの季節、時間、日照、水温、潮流、波の強弱等によって、泳ぐ層、いわゆる”棚”が変わり、釣るためには餌をその棚に持って行かないと、釣果は多くは期待できない。一般的にこの中層にいる魚を釣るための仕掛けは、釣糸の途中に付けた水面に浮かぶ浮子とその下に錘を付け、更にその下に釣針を結んで餌を付ける。しかし、この方法では、餌は浮子の下の一定の水深になる。従って、見えない魚の棚に餌を届けるために試行錯誤して釣糸に対する浮子の位置を調整していた。 【0003】そこで最近の釣魚の技術では、球状の浮子、いわゆる”玉浮子”を用いて魚の泳ぐ層いわゆる”棚”に餌を到達させるため、いわゆる”沈め探り釣り”がある。これは魚のいる棚を広く探れるため有効である。また釣餌を自然に近い沈降速度で沈めることにもなり魚に警戒感を与えず、釣果アップに効果が大きい。しかし、徐々に仕掛けを沈めるには仕掛けの重さと玉浮子のバランスを取るため、最適な浮力の玉浮子の選定と、仕掛けの錘の大きさの調整に時間を要した。しかも海水の塩分濃度、温度、潮流、水中の釣糸の量等によってこのバランスはその都度わずかながら微妙に変化するため、釣行の度に調整するが、必ずしも最適の状態には調整できないことも多かった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】従来の構成では、仕掛けの重さと玉浮子および海水の状況の微妙なバランスをに時間を要した。このバランスが取れず、仕掛けが重すぎれば餌は棚を早く通り過ぎてしまい、また逆に玉浮子の浮力が大きすぎると思うように沈まず棚に到達しない。常にこのバランスが取れて餌と玉浮子の間の釣糸が一直線になって徐々に沈むのが理想的である。このため従来は浮力の異なる複数の玉浮子を揃え持ち状況に応じて取り替えるか、又は錘の大きさを取り替えて調整していた。海水の塩分濃度、温度、潮流、水中の釣糸の量等によってこのバランスは釣行の都度変化し、調整に時間と手間がかかり、また種々の複数の玉浮子や錘を準備する必要があり問題があった。 【0005】 【問題を解決するための手段】本発明はこの問題を解決するために、浮子として例えば玉浮子を上部と下部に分割し、両部分を嵌合させ1個の玉浮子とする構造を具備し、嵌合する度合を変化させれば玉浮子全体の体積が変化する。このときの玉浮子の浮力は、玉浮子の体積と自重および海水の比重によって決まるため、体積が変われば自ずから浮力が変わる。嵌合の度合を変えるために上部と下部にそれぞれ設けたネジで結合して上部と下部を回転し連続的に微細に浮力を調節可能としたものである。即ち、本発明は、玉浮子を上部と下部の半球状に分割して、相互を嵌合し、1個の玉浮子の構造とするように、浮子本体内部に空洞を設け、浮子本体の外形の体積を可変することにより、浮子の浮力を調整可能にする浮力調整浮子において、浮子本体の上部と下部をそれぞれその半球状内側の中央位置に設けたネジで螺合連結し、上記相互の嵌合を浮子本体の外周で上部を内側に下部を外側にオーバーラップさせて密封嵌合する構造とし、上部または下部を回転することで嵌合の度合いを連続的に加減し、浮子の浮力を連続的に増減することを特徴とする釣魚用浮子である。 【0006】本発明の釣魚用浮子では、同一の浮子の浮力を連続的に変化させる構造を備えたために、種々の状況にも容易にバランス調整が可能となり、棚を十分に探ることができる。また、餌を自然に近い沈降速度するのも容易である。浮子の浮力は浮子の体積と自重および海水の比重によって決まるので、同一の浮子の体積を可変して浮力を増減し、仕掛けと浮子のバランスが最適になるように調節し、一個の浮子で連続的に浮力を調整して魚の棚を探ることが可能なために状況に応じて容易に微妙な調整が可能になる釣果アップが期待できる。 【0007】 【発明の実施の形態】以下、本発明の釣魚用浮子を図面について詳記する。図3、4は玉浮子を用いた本発明の説明に用いる従来からある仕掛けの図である。図1、2、5,6、7、8は本発明による釣魚用玉浮子の図である。 【0008】先ず図3により宙釣りまたは上物釣りと言われる一般的な仕掛けの全体を説明する。釣竿1につけたリール2からガイド3を通し釣糸5に浮子6を通し、その先に錘7と釣針8がある。前述した”沈め探り釣り”では、この浮子以下の仕掛けが一直線になって徐々に沈んで行くことが必要である。この浮子6は図4のように下部の細い穴6b3を釣糸4が貫通してスライドすることができ、錘と針が沈むと、この浮子は水に浮いたまま浮子止め4までスライドする。更に仕掛けが沈むと浮子と仕掛けが一直線になった状態で沈み始める。このとき沈む速度は、浮子の浮力と浮子以外の水中の仕掛の重さと水の密度、潮流等によって決まる。従ってこの速度を最適に調整するには浮子を取り替えるか、錘を変えるのが一般的である。本発明は図4の浮子6に係わるものである。 【0009】図2は本発明による浮子6を側面から見た外観図である。浮子6のトップ(上部)6aとボトム(下部)6bが嵌合されたまま離接し、空隙6cが伸縮できれば、浮子全体6の体積が増減するが重量は一定なので結局浮力が増減する。 【0010】図5は本発明の浮子のトップ6a、図6は本発明のボトム6bのそれぞれの断面図である。図5の頭部6a1は桐やバルサ材等の密度(比重)が1以下の軽い部材で構成し主に浮力を発生する。トップ円筒部6a3は比較的軽くて強度のある金属のアルミニューム等で構成し円筒上に細い溝を作りゴム等のOリング6a4を嵌め込む。浮子6のトップ6aのオネジ6a2は浮子6のトップ6aの頭部6a1に埋め込まれ固定される。一方、図6のボトム6bのカップ6b1は浮子全体の重心を下方に持たせるためトップ6aより比較的比重の大きい密度が1以上のアルミニューム等の金属等の物質で構成する。カップ6b1は上部の内周に円筒空洞部6b4を設けると共に、Oリング6a4と対抗する切溝6b5を設ける。メネジ6b2はボトム6bの下方に埋め込まれ固定される。このメネジ6b2には釣糸5を通す穴6b3を有する。 【0011】図6に示すボトム上部の円筒空洞部6b4の切溝6b5が図5のトップのOリング6a4と嵌合する。この嵌合部分は浮子6のトップ6aのトップ円筒部6a3の円周に巻つけられたOリング6a4と密接に嵌合し、海水中でも浮子内部に水の侵入を防ぐ様に成される。嵌合の度合を調整するため、ボトム6bに設けたメネジ6b2とトップ6aに設けたオネジ6a2を螺合させることによって浮子6のトップ6aとボトム6bを両手で回転することによって浮子6のトップ6aとボトム6bが離接する。その結果浮子全体の体積が増減し浮力が加減できる。 【0012】浮子の浮力の可変範囲を大きくすることは、前述した種々の釣り状況に応ずるため重要である。空隙6cの移動距離を1とし、Oリング6a4と切溝6b5の接点を浮子の中心からの半径rし、浮子全体の体積vとすれば、浮子の浮力の可変範囲(率)はπr21/vで表わされる。従って可変範囲を大きく上記接点をできるだけ外周に設ける必要がある。また、浮力の可変範囲を大きくするため浮子6のトップ6aとボトム6bが嵌合する箇所を可能な限り浮子円周の外側にするため図7のようにボトム6bのカップ6b1の上部の切溝6b5を延長して浮子トップ6aの頭部6a1にオーバーラップさせるように成し、更に図3の嵌合部分の空隙6cによって、水中で浮子が動く時の抵抗や仕掛け投入時の空気抵抗を減らすために図7に示す如く浮子6のトップ6aをボトム6bにオーバーラップさせる様に成すものとする。 【0013】浮子6のトップ6aとボトム6bを回転嵌合させて浮力を加減するときに浮子内部の空気はOリング6a4で密閉されているため、圧縮又は膨張させられる。回転し浮子内部の空気を圧縮又は膨張するときには回転に要するトルクが大きくなり余計な力を必要とする。これを避けるために図5の浮子トップ内部にも図8の如く空洞部6a5を設けて圧縮比を下げることも操作を容易にする上で有効である。 【発明の効果】本発明の釣魚用浮子によれば、浮子6のトップ6aとボトム6bをそれぞれ左手と右手で把握し時計方向又は反時計方向に回転することにより浮子6の浮子トップ6aとが離接し、その結果浮子全体の体積が増減し浮力が加減できる。本発明の釣魚用浮子では、1個の浮子で連続的に浮力を調整して魚の棚を探ることが可能なため状況に応じて容易に微妙な調整が可能になり釣果アップが期待できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明による浮子全体の断面図である。 【図2】本発明による浮子の外観図である。 【図3】本発明に用いる釣魚用仕掛けの全体図である。 【図4】図3の仕掛けの浮子と釣糸の部分図である。 【図5】本発明による浮子のトップの断面図である。 【図6】本発明による浮子のボトムの断面図である。 【図7】本発明による他の浮子全体の断面図である。 【図8】本発明による他の浮子のトップの断面図である。 【符号の説明】 6 浮子 6a トップ 6b ボトム 6c 空隙 6a1 頭部 6a2 オネジ 6a3 トップ円筒部 6a4 Oリング6 6b1 カップ 6b2 メネジ 6b3 穴 6b4 円筒空洞部 6b5 切溝 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2012-06-20 |
出願番号 | 特願平7-285449 |
審決分類 |
P
1
41・
121-
Y
(A01K)
P 1 41・ 851- Y (A01K) P 1 41・ 537- Y (A01K) P 1 41・ 853- Y (A01K) P 1 41・ 841- Y (A01K) P 1 41・ 856- Y (A01K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山田 昭次 |
特許庁審判長 |
鈴野 幹夫 |
特許庁審判官 |
中川 真一 横井 巨人 |
登録日 | 2002-02-01 |
登録番号 | 特許第3273368号(P3273368) |
発明の名称 | 釣魚用浮子 |
代理人 | 田村 公總 |
代理人 | 田村 公總 |