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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 B24B |
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管理番号 | 1259968 |
審判番号 | 無効2011-800154 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2011-09-01 |
確定日 | 2012-06-22 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4634491号発明「研磨装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 平成16年10月27日 先の出願(特願2004-312193号) 平成17年 9月27日 原出願(特願2005-280311号、優先 権主張) 平成20年 7月18日 本件出願(分割、特願2008-187613 号) 平成22年11月26日 設定登録(特許第4634491号) 平成23年 9月 1日 無効審判請求 平成23年11月28日 答弁書、訂正請求書 平成23年12月 8日 通知書(審理事項通知) 平成24年 1月18日 両者・口頭審理陳述要領書 平成24年 2月 8日 請求人・口頭審理陳述要領書(2)、口頭審理 本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まない。原文の丸囲み数字は、丸1のように置き換えた。 第2.訂正請求について 1.訂正請求の内容 訂正事項1:請求項1の「この移動装置部は、前記回転研磨体を、公転軸を軸に回転し該公転軸を中心とした長方体形状の回転基体に複数設け、この各回転研磨体は、前記回転基体の前後両端部夫々における左右両側面に互いに同一直線上に配設され、且つ、前後に位置するもの同士が平行状態に配設される自転回動軸夫々に前記研磨体を設けた構成であり、各回転研磨体は、前記回転基体の回転に伴って前記公転軸を中心に公転回転した際に各自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずるように、各自転回転軸の軸方向と前記公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係となるように設定し」を、「この移動装置部は、前記回転研磨体を、公転軸を軸に回転し該公転軸を中心とした長方体形状の回転基体に複数設け、この各回転研磨体は、前記自転回転軸に前記研磨体を設けた構成であって、前記自転回転軸は、前記回転基体の前後両端部夫々に、この前後両端部の左右両側面から互いに同一直線上に配設されるように突出状態に設けられ、且つ、この左右に同一直線上に配設される前後両端部の前記自転回転軸同士が平行状態に配設されるように設けられた構成とするとともに、この前後両端部の平行状態に配設された前記自転回転軸は夫々同一方向に回転するように構成し、この回転基体の前後両端部夫々に左右両側面から突出状態に設けられる前記各自転回転軸夫々に前記研磨体を設けて、前記回転基体の中心に設けた公転軸の前後左右に前記各回転研磨体を設け、この各回転研磨体が、前記回転基体の回転に伴って前記公転軸を中心に公転回転した際に各自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずるように、各自転回転軸の軸方向と前記公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係となるように設定して」に訂正。 訂正事項2:請求項2の「この移動装置部は、前記回転研磨体を、公転軸を軸に回転し該公転軸を中心とした回転基体に複数設け、この各回転研磨体は、前記回転基体の前後両端部夫々における左右両側面に互いに同一直線上に配設され、且つ、前後に位置するもの同士が平行状態に配設される自転回動軸夫々に前記研磨体を設けた構成であり、各回転研磨体は、前記回転基体の回転に伴って前記公転軸を中心に公転回転した際に各自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずるように、各自転回転軸の軸方向と前記公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係となるように設定し」を、「この移動装置部は、前記回転研磨体を、公転軸を軸に回転し該公転軸を中心とした回転基体に複数設け、この各回転研磨体は、前記自転回転軸に前記研磨体を設けた構成であって、前記自転回転軸は、前記回転基体の前後両端部夫々に、この前後両端部の左右両側面から互いに同一直線上に配設されるように突出状態に設けられ、且つ、この左右に同一直線上に配設される前後両端部の前記自転回転軸同士が平行状態に配設されるように設けられた構成とするとともに、この前後両端部の平行状態に配設された前記自転回転軸は夫々同一方向に回転するように構成し、この回転基体の前後両端部夫々に左右両側面から突出状態に設けられる前記各自転回転軸夫々に前記研磨体を設けて、前記回転基体の中心に設けた公転軸の前後左右に前記各回転研磨体を設け、この各回転研磨体が、前記回転基体の回転に伴って前記公転軸を中心に公転回転した際に各自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずるように、各自転回転軸の軸方向と前記公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係となるように設定して」に訂正。 訂正事項3及び4:段落0016、0017を、訂正事項1、2に整合させるため訂正。 被請求人が求めた訂正の内容は、(ア)請求項1及び2において、「移動装置部」について、より特定するとともに、(イ)請求項1及び2の訂正に整合させるため、発明の詳細な説明を訂正する、というものである。 2.訂正請求についての当審の判断 訂正請求について検討する。 訂正事項(ア)は、請求項1及び2において、「移動装置部」について、その構成を、より特定する訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。 訂正事項(イ)は、明りょうでない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。 したがって、上記訂正は、特許法第134条の2第1項の規定に適合し、同条第5項で準用する特許法第126条第3項ないし第4項の規定にも適合するので、上記訂正を認める。 訂正請求が適法であることは、両当事者間に争いはない(口頭審理調書「請求人 2」)。 第3.本件発明 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、訂正された明細書によれば、以下のとおりである。 A、B等の請求項の分説は、訂正前の請求項に対し、請求人が付したものであるが、妥当と認められ、争いもないので、そのまま採用した。 「【請求項1】 A.一方側を砥粒面,他方側を非砥粒面に形成した細長の研磨布紙同士を重合配設して成る研磨体を、自転回転軸に対して放射状態に、且つ自転回転軸の軸方向に多数並設状態に設け、この自転回転軸を軸に回転してこの自転回転軸に設けた多数の研磨体を回転させ金属材や木材などの加工材を研磨するように構成した回転研磨体と、 B.この回転研磨体を前記自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつこの回転研磨体を前記加工材に当接させる移動装置部とを設けた構成とし、 C.この移動装置部は、前記回転研磨体を、公転軸を軸に回転し該公転軸を中心とした長方体形状の回転基体に複数設け、この各回転研磨体は、前記自転回転軸に前記研磨体を設けた構成であって、前記自転回転軸は、前記回転基体の前後両端部夫々に、この前後両端部の左右両側面から互いに同一直線上に配設されるように突出状態に設けられ、且つ、この左右に同一直線上に配設される前後両端部の前記自転回転軸同士が平行状態に配設されるように設けられた構成とするとともに、この前後両端部の平行状態に配設された前記自転回転軸は夫々同一方向に回転するように構成し、この回転基体の前後両端部夫々に左右両側面から突出状態に設けられる前記各自転回転軸夫々に前記研磨体を設けて、前記回転基体の中心に設けた公転軸の前後左右に前記各回転研磨体を設け、この各回転研磨体が、前記回転基体の回転に伴って前記公転軸を中心に公転回転した際に各自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずるように、各自転回転軸の軸方向と前記公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係となるように設定して、前記公転回転する複数の前記回転研磨体で前記加工材を多方向から研磨し得るように各回転研磨体を前記回転基体に配設した構成としたことを特徴とする研磨装置。 【請求項2】 D.一方側を砥粒面,他方側を非砥粒面に形成した研磨布紙を一対重合配設して成る研磨体を、自転回転軸に対して放射状態に、且つ自転回転軸の軸方向に所定間隔を介して多数並設状態に設けると共に、各研磨体の表面を自転回転軸の軸方向と対向状態に設け、この自転回転軸を軸に回転してこの自転回転軸に設けた多数の研磨体を回転させ金属材や木材などの加工材を研磨するように構成した回転研磨体と、 E.この回転研磨体を前記自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつこの回転研磨体を前記加工材に当接させる移動装置部とを設けた構成とし、 F.この移動装置部は、前記回転研磨体を、公転軸を軸に回転し該公転軸を中心とした回転基体に複数設け、この各回転研磨体は、前記自転回転軸に前記研磨体を設けた構成であって、前記自転回転軸は、前記回転基体の前後両端部夫々に、この前後両端部の左右両側面から互いに同一直線上に配設されるように突出状態に設けられ、且つ、この左右に同一直線上に配設される前後両端部の前記自転回転軸同士が平行状態に配設されるように設けられた構成とするとともに、この前後両端部の平行状態に配設された前記自転回転軸は夫々同一方向に回転するように構成し、この回転基体の前後両端部夫々に左右両側面から突出状態に設けられる前記各自転回転軸夫々に前記研磨体を設けて、前記回転基体の中心に設けた公転軸の前後左右に前記各回転研磨体を設け、この各回転研磨体が、前記回転基体の回転に伴って前記公転軸を中心に公転回転した際に各自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずるように、各自転回転軸の軸方向と前記公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係となるように設定して、前記公転回転する複数の前記回転研磨体で前記加工材を多方向から研磨し得るように各回転研磨体を前記回転基体に配設した構成としたことを特徴とする研磨装置。」 第4.請求人の主張 1.条文 特許法第29条第2項(第123条第1項第2号) 2.証拠 請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。 甲第1号証:国際公開第00/62975号 甲第2号証:特公平3-55273号公報 甲第3号証:実願昭62-38005号(実開昭63-147265号) のマイクロフイルム 甲第4号証:特開平8-118228号公報 甲第5号証:特開昭61-257757号公報 3.概要 (1)審判請求書第8ページ下から2行?第22ページ第12行 「(4-1)甲第1号証(国際公開WO00/62975) ・・・ すなわち、甲第1号証では、本件発明1および2の構成要件AおよびDに関連して、「a、d:ブラシ4から成る研磨体4を、自転回転軸10に対して放射状態に、且つ自転回転軸10の軸方向に多数並設状態に設け、この自転回転軸10を軸に回転してこの自転回転軸10に設けた多数の研磨体4を回転させ金属材や木材などの加工材5を研磨するように構成した回転研磨体4」が開示されている。 ・・・ すなわち、甲第1号証では、金属ブラシ4は、制御シャフト10に取付けられて自転し、かつ回転駆動ヘッド2の回転に伴って制御シャフト10の軸方向の速度成分が生じるように公転する。この構成は本件発明の具体的構成と同じである。ため、甲第1号証では、本件発明の構成BおよびEと同じ、 「b.回転研磨体4を自転回転軸である制御シャフト10の軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつ回転研磨体4を加工材5に当接させる移動装置部としてのフレーム1および回転ヘッド2を設けた構成とし、」と、「e.回転研磨体4を自転回転軸である制御シャフト10の軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつ回転研磨体4を加工材5に当接させる移動装置部としてのフレーム1および回転ヘッド2が設けられている。」構成が開示されている。 ・・・ すなわち、甲第1号証では、フレーム1に回転ヘッドが設けられ、回転ヘッド2に金属ブラシが取付けられ、回転ヘッド2が回転することで金属ブラシ4が公転するため、甲第1号証では、 「c.フレーム1は、金属ブラシ4を、公転軸を軸に回転し公転軸を中心とした回転ヘッド2に複数設け、」および「f.フレーム1は、金属ブラシ4を、公転軸を軸に回転し公転軸を中心とした回転ヘッド2に複数設け、」が開示されている。 ・・・ すなわち、甲第1号証では、金属ブラシ4は、回転ヘッド上で同一直線状に配置される。そして、前後に位置する制御シャフト10は、各々平行に設けられる。その結果、甲第1号証では、 「c.回転研磨体4は、回転ヘッド2に同一直線上に配置され、かつ、前後に位置するもの同士が平行状態に配設される自転回動軸10夫々に回転研磨体4を設けた構成」および「f.回転研磨体4は、同一直線上に配置され、かつ、前後に位置するもの同士が平行状態に配設される自転回動軸10夫々に回転研磨体4を設けた構成」が開示されている。 ・・・ すなわち、甲第1号証では、回転ヘッド2が回転すると、金属ブラシ4は公転する。公転軸(吸入管9の中心軸)と、制御シャフト10の回転軸とは交差しておらず、垂直な状態にある。その結果、甲第1号証では、 「c.回転研磨体4は回転ヘッド2の回転に伴って公転軸を中心に公転回転した際に自転回転軸10の軸方向速度成分が生ずるように公転軸の軸方向とが交差せずに直交状態となる位置関係となるように設定し、」および「f.回転研磨体4は回転ヘッド2の回転に伴って公転軸を中心に公転回転した際に自転回転軸10の軸方向速度成分が生ずるように公転軸の軸方向とが交差せずに直交状態となる位置関係となるように設定し、」が開示されている。 ・・・ 甲第1号証では、金属ブラシ4が自転しながら公転することで、被加工部品5を多方向から研磨することが開示されている。その結果、甲第1号証では、 「c.公転回転する複数の回転研磨体4で加工材5を多方向から研磨し得るように回転研磨体4を回転ヘッド2に配設した」および「f.公転回転する複数の回転研磨体4で加工材5を多方向から研磨し得るように回転研磨体4を回転ヘッド2に配設した」ことが開示されている。 (4-2) 甲第2号証(特公平3-55273号公報) (ア)甲第2号証は、本件明細書の「背景技術」の項に記載の「スピンドル方式」を採用した従来機における研磨体として、ロータリーペーパーサンダーは周知なものであることを立証するための証拠である。 ・・・ (4-3) 甲第3号証(実開昭63-147265号公報) (ア)甲第3号証は、甲第2号証と同様、本件明細書の「背景技術」の項に記載の「スピンドル方式」を採用した従来機における研磨体として、ロータリーペーパーサンダーは周知なものであることを立証するための証拠である。 ・・・ (4-4) 甲第4号証(特開平8-118228号公報) (ア)甲第4号証は、甲第2号証と同様に、本件明細書の「背景技術」の項に記載の「スピンドル方式」を採用した従来機における研磨体として、ロータリーペーパーサンダーは周知なものであることを立証するための証拠である。 さらに、甲第4号証は、研磨体として「ブラシ」も周知であることを立証するためのものである。さらに、甲第4号証は、本件発明が従来技術として掲げる図6に示すものである。甲第4号証および本件明細書の図6で示すように、回転基体として、ボックス型の基体を採用することは周知であることを立証する。 ・・・ (4-5) 甲第5号証(特開昭61-257757号公報) (ア)甲第5号証は、研磨体として「ブラシ」も周知であることを立証するためのものである。さらに、甲第5号証は、本件発明が従来技術として掲げる図6に示すボックス型の回転基体は周知であることを立証するものである。 ・・・ (6)一致点、相違点 本件発明と主引例を対比すれば、両者は、構成Bとb、構成Eとeにおいて一致している。 すなわち、本件発明の特徴である構成BおよびDにおいて主引例と一致している。 一方、本件発明と主引例を対比すれば、構成Aとa、構成Cとc、構成Dとdおよび構成Fとfの一部において相違しているが、これらの相違点はいずれも本件発明の特徴部分ではない。 その相違点は、本件発明では、「一方側を砥粒面,他方側を非砥粒面に形成した細長の研磨布紙同士を重合配設して成る研磨体」であるのに対し、主引例は「ブラシ4から成る研磨体4」である(以下、この相違点を「相違点1」という)。 また、本件発明では、「長方体形状の回転基体」であるのに対し、主引例では「円盤状の回転ヘッド2」である(以下、この相違点を「相違点2」という)。 また、本件発明では「前記回転基体の前後両端部夫々における左右両側面」に回転研磨体が配置されるのに対して、主引例ではそのように配置されない点である(以下、この相違点を「相違点3」という)。 (7)相違点についての検討 丸1 相違点1について 相違点1については、本件明細書の「背景技術」の項にも記載の通り、本件出願時、実用的な研磨装置が種々市販されていたこと、スピンドル方式や、ロータリーペーパーサンダーも公知であることが窺い知れる上、甲第2号証から甲第5号証からは、可撓性のフィラメントを備えたローラやブラシサンダー、ペーパーサンド(研磨布紙)も周知であった。 具体的には、甲第2号証から甲第4号証では、ロータリーペーパーサンダーが開示されている。甲第5号証では可撓性のフィラメントを備えたローラが開示されている。 また、主引例の「ブラシ4」に代えて周知の構成である「一方側を砥粒面,他方側を非砥粒面に形成した細長の研磨布紙同士を重合配設して成る研磨体」を採用することにつき、阻害する要因は全く見当たらない。 したがって、「ブラシ4」に代えて周知の構成である「ペーパーサンド(研磨布紙)」を採用して本件発明の構成に至ることは、当業者にとって容易に想到できたことである。 丸2 相違点2について 移動装置部をボックス型の基体にすることは、本件の従来技術として示す【図6】にも記載され、この【図6】の従来技術として甲第4号証が例示される。また、甲第5号証にも、ボックス型の基体が開示されている。 よって、「円盤状の回転ヘッド2」を甲第4および5号証に記載の「ボックス型の基体」とし、その基体を「長方体形状」に変更することは、単なる設計変更に過ぎず、当業者であれば、容易に想到できたことである。 丸3 相違点3について 上記の相違点2で示したように、当業者であれば、長方体形状の基体を採用することは容易であり、長方体の基体を採用すれば、当然に互いの研磨体が干渉しないように、長方体の前後両端部で、かつ、左右の両側面の各々に研磨体を配置する。したがって、相違点3は単なる設計事項に過ぎず、当業者であれば、容易に想到できたことである。」 (2)口頭審理陳述要領書第2ページ第10行?第7ページ第1行 「丸2 請求項1発明の作用効果 被請求人は、請求項1発明の作用効果について、答弁書第4頁第12行以降において、砥粒面が対向する場合と砥粒面がいずれも進行方向となる場合の作用効果を縷々主張する。 しかしながら、請求項1発明では、「一方側を砥粒面、他方側を非砥粒面に形成した細長の研磨布紙同士を重合配設」することは特定されているものの、その方向については何ら特定されていない。即ち、請求項1発明では i) 砥粒面が対向する場合 ii) 砥粒面を互いに外側に向ける場合 iii)砥粒面のいずれもが進行方向を向く場合 iv) 砥粒面のいずれもが後方を向く場合 の4種類が含まれている。従って、かかる被請求人の作用効果の主張は、請求項の記載の基づかない主張である。 ・・・ つまり、 被請求人が答弁書第4頁第12行以降において主張する作用効果を奏するためには、「一方側を砥粒面,他方側を非砥粒面に形成した研磨布紙を一対互いの砥粒面が対向する方向に重合配設して成る研磨体」を採用したことを特定する必要がある。このような構成に関しては、現在の請求項1および2において何ら限定されていない。従って、請求項1発明は、「先行する研磨布と遅行する研磨布とが完全には重合せず、位置ずれ部分により研磨するもの」ではない。 丸3 位置ずれ部分により研磨することができない発明 ・・・ つまり、砥粒面が両外側に存在する場合には、上記の「位置ずれ部分により研磨する」という特有の作用効果を奏することができない。請求項1発明では、外側に砥粒面が存在する構成を含むように記載されており、請求項1発明は、「位置ずれ部分により研磨する」という作用効果を奏することができないものである。」 (3)口頭審理陳述要領書(2)第2ページ第18行?第5ページ第22行 「(2-1)つまり、相違点1については、本件明細書の「背景技術」の項にも記載の通り、本件出願時、実用的な研磨装置が種々市販されていたこと、スピンドル方式や、ロータリーペーパーサンダーも公知であることが窺い知れる上、甲第2号証から甲第5号証からは、可撓性のフィラメントを備えたローラやブラシサンダー、ペーパーサンド(研磨布紙)も周知であった。 ・・・ 甲2から甲4では、ロータリーペーパーサンダーが周知の構成として開示されている。甲5では可撓性のフィラメントを備えたローラが周知の構成として開示されている。 したがって、主引例の周知の「ブラシ4」に代えて周知の構成である「一方側を砥粒面,他方側を非砥粒面に形成した細長の研磨布紙同士を重合配設して成る研磨体」を採用することにつき、当業者が容易に想到できるものであり、さらには、阻害する要因は全く見当たらない。 したがって、「ブラシ4」に代えて「ペーパーサンド(研磨布紙)」を採用して本件発明の構成に至ることは、当業者にとって容易に想到できたことである。 ・・・ (2-3)相違点3に関しては、被請求人は、平成24年1月18日付け提出の口頭審理陳述要領書第8から9頁において以下の通り主張している。 「この前後両端部の平行状態に配設された自転回転軸を夫々同一方向に回転することの有効性を確認すべく、各自転回転軸の軸方向と公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係とし、且つ、前後両端部の平行状態に配設された自転回転軸を逆方向に回転する構成とし、この構成で研磨を行ったところ、研磨跡が真円形状とならず、よって、前後両端部の平行状態に配設された自転回転軸を夫々同一方向に回転することは極めて有効であることが確認された」 しかしながら、このような主張は出願当初の明細書には何ら記載されておらず、出願当初の明細書の開示を超える作用効果の主張である。従って、進歩性の判断に当たってかかる効果は参酌されるものではない。 そうすると、相違点3に関しては、自転回転軸の回転方向が請求項1発明のように「同一方向」である場合が、甲1発明の「逆方向」の場合と比較して、顕著な効果を奏するものではない。 その結果、相違点1から3が存在するものの、請求項1発明は甲1発明から容易に想到できるものであるため、進歩性を有さない。」 (4)口頭審理調書 「2 訂正請求の適法性については、争わない。 3 相違点1については、「ブラシ」、「重ねた研磨布紙」、いずれも周知であり、周知技術同士の置き換えは、動機がなくとも容易である。 4 相違点3については、研磨布紙の重ね合わせ4パターン、全てに効果が生じるわけではなく設計事項に過ぎない。 5 被請求人の主張は、請求の範囲、明細書に基づかない主張である。」 第5.被請求人の主張 これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。 その主張の概要は、以下のとおりである。 (1)答弁書第4ページ第3行?第9ページ第9行 「具体的には、本発明に係る研磨体を構成する各研磨布紙は、自転回転軸の回転により放射方向に真っ直ぐ延びた板のように張った状態となるとともに、移動装置部に係る回転基体の公転による自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずることで研磨布紙同士は互いの重合状態を解消して先端側ほど離間した略V字状となるが(本件特許公報中の図2(a)の状態となる。)、この略V字状となって回転する研磨布紙の長手方向一側縁が金属材や木材などの加工材に当接すると、加工材との接触抵抗によって、研磨布紙の片側だけが極端に軸方向の速度成分を損ね、回転力が生じ、この回転力によって研磨布紙は先端側を所定の捻れ方向に捻れ曲がる。 そこで、例えば、研磨体を構成する研磨布紙同士を互いの砥粒面が対向する方向に重合配設した場合について詳述すると、加工材に長手方向一側縁を当接した研磨布紙は、ランダムな捻れ方向に捻れ曲がるのではなく、重合する研磨布紙のうちの軸方向の速度成分の進行方向へ先行する方の研磨布紙(軸方向に先行移動する研磨布紙)は軸方向の進行方向側、即ち、非砥粒面を加工材に向ける捻れ方向に捻れ曲がり、該非砥粒面を加工材に接触させることになり、また、重合する研磨布紙のうちの軸方向の速度成分の進行方向へ後続する方の研磨布紙(軸方向に遅行移動する研磨布紙)は軸方向の進行方向側、即ち、砥粒面を加工材に向ける捻れ方向に捻れ曲がり、軸方向に先行移動する研磨布紙に重合することになる。 この際、これらの各研磨布紙は先端側ほど離間したV字状態で回転していたが故に、軸方向に先行移動する研磨布紙に重合したもう一方の(軸方向に遅行移動する)研磨布紙は、位置合致して重合せず、先端側程位置ズレして重合する。 即ち、研磨体が加工材の側方から該加工材の端部に当接すると、軸方向に遅行移動する研磨布紙の先端側の砥粒面の一部が、軸方向に先行移動する研磨布紙に重合せずに外側にはみ出し、この位置ズレによって外側に露出した砥粒面によって加工材の端部を研磨することになる(本件特許公報中の図2(b)の状態となる。)。これは、単に研磨布紙同士が重合状態で回転していただけでは、加工材の端部に当接した場合に前述したような位置ズレ状態は得られず、先端側ほど離間したV字状態で回転しているからこそ生じる現象である。 そして、前述した本件特許公報中の図2(b)の状態の後、研磨体が可撓性によってL字状に撓み、加工材の上部表面に載上することになるが、この際、軸方向に先行移動する研磨布紙に、軸方向に遅行移動する研磨布紙が載上し、接触する互いの砥粒面の接触抵抗によって、重合配設される研磨布紙は一体となって加工材の上部表面を滑動し、即ち、加工材の上部表面には先行移動する研磨布紙の非砥粒面のみが当接して活動することになり、後続の研磨布紙の砥粒面の加工材の上部表面への接触(研磨)が阻止されることになり(本件特許公報中の図2(c)の状態となる。)、例えば、切削加工や切欠加工などによって端部にバリが形成された加工材のバリ取り作業を行えば、バリ以外の部位には殆ど傷を付けずに、バリだけを選択的に研磨除去することができ、バリ取り作業を極めて簡易に、効率良く行うことができる。 一方、例えば、研磨体を構成する各研磨布紙のいずれも、回転研磨体の自転回転軸の軸方向の進行方向に砥粒面を向けて配設した場合について詳述すると、加工材に各研磨布紙の長手方向一側縁を当接した際に、この各研磨布紙がいずれも軸方向の進行方向側、即ち、砥粒面を加工材に向ける捻れ方向に捻れ曲がることになり、よって、該砥粒面を加工材の端部に接触させこの加工材の端部に形成されたバリを良好に研磨でき、更に、各研磨布紙がL字状に撓み加工材の上部表面に載上した際、この各研磨布紙はいずれも砥粒面を加工材の上部表面に向けた状態でこの加工材に載上する為、各研磨布紙夫々の各砥粒面により確実に、効率的にこの加工材の表面研磨を行うことになる。つまり、それだけ加工材に接触する砥粒面の表面積が広くなるから、効率的に加工材の表面研磨が行えることになり、例えば加工材の端部のバリだけを選択的に研磨するのではなく、加工材の他の表面も研磨したい場合において、良好に加工機能を発揮できる。 ・・・ 即ち、甲第1号証は、あくまで制御シャフト10に設けたブラシ4によりバリを除去する構造であり、研磨体として研磨布紙同士を重合して成る研磨体を採用し、更に、重合する研磨布紙同士を公転と自転により速度成分を生じさせてずらして研磨するという発想は一切なく、当然のことながら、自転回動軸に設ける研磨体を構成する各研磨布紙同士の重合する方向を変えるだけで、加工材の狙った箇所を部分的に研磨することも、加工材の表面を広範囲に研磨することも簡易且つ確実に行えるという作用効果、更には、研磨布紙同士が重合することで加工材を研磨するに必要な接触圧(研磨力)が得られて加工材の表面を満遍無く均一的に研磨するという作用効果は一切奏することはできない。 しかも、甲第1号証には、ブラシ4を回転させる構造として、前述した本発明に係る移動装置部と同様の構造は開示されておらず、具体的には、甲第1号証は、円盤状の処理ヘッド2への各制御シャフト10の取り付けは、処理ヘッド2に設けられた複数(片側4つで計8つ)の軸受7に各制御シャフト10を自転回転自在に架設する構造であり、更に、この各制御シャフト10に設けたブラシ4の一部を処理ヘッド2を貫通させて下方へ突出状態に設ける構造であり、前述した本発明に係る移動装置部に比し、仮に制御シャフト10に対してブラシ4を脱着自在とした場合に、その都度軸受7から制御シャフト10を分解しなければならず、よって、制御シャフト10に対するブラシ4の脱着が困難であったり、精度良く装着することが困難であるなど、非常に複雑な構造である為、コスト高で量産性が悪く、しかも、装置自体が大型化してしまう構造であり、本発明と同様の作用効果を奏するものではない。 また、甲第1号証は、一対の制御シャフト10同士を互いに反対方向に回転させる構造であり、よって、前後両端部の平行状態に配設された自転回転軸は夫々同一方向に回転するという構成を具備することで、秀れた研磨機能を確保しつつ簡易な設定とできるという本発明と同様の作用効果を奏するものではない。 従って、この甲第1号証は、本発明の請求項1及び請求項2に記載の発明の構成要件を大幅に欠如するものであり、決して本発明と同等の作用・効果を奏するものではない。 また、甲第2,3,4号証には、サンドペーパーを自転回転軸に対して放射方向に多数突設し、これらの多数のサンドペーパーを自転回転軸を軸に回転させて金属材や木材などの加工材の研磨を行うロータリーペーパーサンダーが開示されているが、前述した甲第1号証と同様、本発明の重要なポイントは全く開示されていないし、この点を示唆する記載も全くない。あくまで本発明の従来技術に過ぎない。 また、甲第5号証は、あくまでブラシを用いた研磨であり、前述した甲第1号証と同様、本発明の重要なポイントは全く開示されていないし、この点を示唆する記載も全くない。 よって、甲第1号証,甲第2号証,甲第3号証,甲第4号証及び甲第5号証は、いずれも本発明の構成要件の一部が開示されているにすぎず、本発明の重要な作用・効果は全く達成できないものである。」 (2)口頭審理陳述要領書第3ページ第3行?第12ページ第16行 「(b) 次に、請求項1及び請求項2に係る発明(以下、本発明)の作用効果は次の通りである。 即ち、本発明は、研磨布紙同士を重合配設してなる研磨体を自転回動軸に設けた回転研磨体と、この回転研磨体を自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつこの回転研磨体を加工材に当接させる移動装置部とを設けた構成であり、この構成から、自転回動軸に設ける研磨体を構成する各研磨布紙同士の重合する方向を変えるだけで、加工材の狙った箇所を部分的に研磨することも、加工材の表面を広範囲に研磨することも簡易且つ良好に行え、しかも、移動装置部は、これらの加工を良好に行うために必須となる、研磨体に対する速度成分を良好に生じさせる構成である。 具体的には、本発明は、回転研磨体を自転回転軸を軸に自転回転させると共に、公転軸を軸に公転回転させると、研磨体が自転回転による遠心力で自転回転軸を中心に放射方向に広がり、更に、研磨体、即ち、重合する研磨布紙同士はこの研磨布紙同士間に空気が入り込むことなどにより互いの重合状態を解消して先端側ほど離間した略V字状となる(本件特許公報中の図2(a)の状態となる。)。尚、この研磨布紙同士が略V字状となる点について、平成23年11月28日付け提出の無効審判答弁書において、「移動装置部に係る回転基体の公転による自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずることで研磨布紙同士は互いの重合状態を解消して先端側ほど離間した略V字状となる」と記載したが、正しくは、前述したとおり、重合する研磨布紙同士はこの研磨布紙同士間に空気が入り込むことなどにより互いの重合状態を解消して先端側ほど離間した略V字状となる。 ・・・ そこで、例えば、研磨体を構成する研磨布紙同士を互いの砥粒面が対向する方向に重合配設した場合、加工材に長手方向一側縁を当接した研磨布紙は、ランダムな捻れ方向に捻れ曲がるのではなく、軸方向移動の先行側の研磨布紙は軸方向の進行方向側、即ち、非砥粒面を加工材に向ける捻れ方向に捻れ曲がり、該非砥粒面を加工材に接触させることになり、また、軸方向移動の後方側の研磨布紙は軸方向の進行方向側、即ち、砥粒面を加工材に向ける捻れ方向に捻れ曲がり、軸方向移動の先行側の研磨布紙に重合することになる。 この際、これらの各研磨布紙は先端側ほど離間したV字状態で回転していたが故に、軸方向移動の先行側の研磨布紙に重合した軸方向移動の後方側の研磨布紙は、位置合致して重合せず、先端側程位置ズレして重合する。 即ち、研磨体が加工材の側方から該加工材の端部に当接すると、軸方向移動の後方側の研磨布紙の先端側の砥粒面の一部が、軸方向移動の先行側の研磨布紙に重合せずに外側にはみ出し、この位置ズレによって外側に露出した砥粒面によって加工材の端部を研磨することになる(本件特許公報中の図2(b)の状態となる。)。 そして、前述した本件特許公報中の図2(b)の状態の後、研磨体が可撓性によってL字状に撓み、加工材の上部表面に載上することになるが、この際、軸方向移動の先行側の研磨布紙に、軸方向移動の後方側の研磨布紙が載上し、接触する互いの砥粒面の接触抵抗によって、重合配設される研磨布紙は一体となって加工材の上部表面を滑動し、即ち、加工材の上部表面には軸方向移動の先行側の研磨布紙の非砥粒面が当接して滑動することになり、軸方向移動の後方側の研磨布紙の砥粒面の加工材の上部表面への接触(研磨)が可及的に阻止されることになり(本件特許公報中の図2(c)の状態となる。)、例えば、切削加工や切欠加工などによって端部にバリが形成された加工材のバリ取り作業を行えば、バリ以外の部位には殆ど傷を付けずに、バリだけを選択的に研磨除去することができ、バリ取り作業を極めて簡易に、効率良く行うことができる。 一方、例えば、研磨体を構成する各研磨布紙のいずれも、回転研磨体の自転回転軸の軸方向の進行方向に砥粒面を向けて配設した場合、加工材に各研磨布紙の長手方向一側縁を当接した際に、この各研磨布紙がいずれも軸方向の進行方向側、即ち、砥粒面を加工材に向ける捻れ方向に捻れ曲がることになり、よって、該砥粒面を加工材の端部に接触させこの加工材の端部に形成されたバリを良好に研磨でき、更に、各研磨布紙がL字状に撓み加工材の上部表面に載上した際、この各研磨布紙はいずれも砥粒面を加工材の上部表面に向けた状態でこの加工材に載上する為、各研磨布紙夫々の各砥粒面により確実に、効率的にこの加工材の表面研磨を行うことになる。つまり、それだけ加工材に接触する砥粒面の表面積が広くなるから、効率的に加工材の表面研磨が行えることになり、例えば加工材の端部のバリだけを選択的に研磨するのではなく、加工材の他の表面も研磨したい場合において、良好に加工機能を発揮できる。 ・・・ つまり、この構成から、各自転回転軸の軸方向と公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係となり、よって、各回転研磨体には各自転回転軸の軸方向の大きな速度成分を簡易且つ良好に生じさせることができる。 これは、後述する甲第4号証のように、研磨布紙(サンドペーパー)が放射状に突設された自転回転軸(スピンドル)を公転軸(アウタースピンドル)に対して放射状に突設された構造と異なり、公転軸の回転軸芯から放射方向への線に対して本発明の自転回転軸の軸芯は一致せず、角度がついた状態となるから、自転回転軸の軸方向の大きな速度成分が得られるのである。甲第4号証は、自転回転軸を水平旋回(加工材の表面に対して平行に旋回)させ、この自転回転軸に突設される研磨布紙の下端を加工材表面に接触させる構造であるから、自転回転軸の軸方向の速度成分は得られない。 ・・・ そして更に、本発明は、前後両端部の平行状態に配設された自転回転軸は夫々同一方向に回転する構成であり(添付の乙第3号証参照)、よって、例えば同一軌跡となる自転回転軸の研磨体は180度旋回した位置では逆方向から加工材に接触することになり、加工材に対して多方向から良好に研磨することができる。 この前後両端部の平行状態に配設された自転回転軸を夫々同一方向に回転することの有効性を確認すべく、各自転回転軸の軸方向と公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係とし、且つ、前後両端部の平行状態に配設された自転回転軸を逆方向に回転する構成とし、この構成で研磨を行ったところ、研磨跡が真円形状とならず(添付の乙第4号証参照)、よって、前後両端部の平行状態に配設された自転回転軸を夫々同一方向に回転することは極めて有効であることが確認された。 ・・・ 即ち、甲第1号証は、あくまで制御シャフト10に設けたブラシ4によりバリを除去する構造であり、研磨体として研磨布紙同士を重合して成る研磨体を採用し、更に、重合する研磨布紙同士を速度成分を生じさせてずらして研磨するという発想は一切なく、当然のことながら、自転回動軸に設ける研磨体を構成する各研磨布紙同士の重合する方向を変えるだけで、加工材の狙った箇所を部分的に研磨することも、加工材の表面を広範囲に研磨することも簡易且つ確実に行えるという作用効果、更には、研磨布紙同士が重合することで加工材を研磨するに必要な接触圧(研磨力)が得られて加工材の表面を満遍無く均一的に研磨するという作用効果は一切奏することはできない。 ・・・。」 (3)口頭審理調書 「2 「軸が交差せず直交状態」による作用効果は、構造上、当然に生じる軸方向の速度成分によって、重ねた「研磨布紙」の位置ずれが生じ、ずれ量によって接触面積、接触圧を変化させ、これを一定に保持できる。 3 口頭審理陳述要領書7頁の「大きな速度成分」の「大きな」は、程度問題である。 4 相違点1については、甲第1号証はワイヤであり、軸方向の速度成分、位置ずれに注目していないから動機がない。 5 相違点2の容易性は争わない。 6 相違点3については、回転方向を特定することで、図3、乙第3号証のように同一箇所を様々な向きで、まんべんなく研磨できる。」 第6.当審の判断 1.本件発明 本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)は、上記第3.のとおりと認められる。 2.証拠記載事項 (1)甲第1号証 甲第1号証には、以下の記載がある。請求人による訳文(甲第1-1号証)で示した。 ア.第1ページ第5?6行(甲第1-1号証左側の行数表示による) 「本発明は、特に、酸素アーク切断される部品のバリ取りおよびかえりを除去する等の、大型寸法の平面部品の鋳バリ除去方法の改良に関する。」 イ.第1ページ第15?17行 「より詳しくは、この装置は、2個ずつ直径方向に向かい合った複数のブラシを含み、前記ブラシが、回転ヘッドに取り付けられており、また、基準となる仮想固定点に対して、右側と左側の反対方向に連続してそれ自体が回転駆動され、・・・」 ウ.第1ページ第37行?第2ページ第4行 「一般に、これらの図の全体によれば、装置は、直径方向に2個ずつ向かい合った複数のブラシ4、4Aを含み、これらのブラシは、回転駆動ヘッド2、2Aに取り付けられており、基準となる仮想固定点Pに対して、右側Dと左側Gの反対方向に連続してそれ自体が回転駆動され、それによって、複雑な部品が載せられているコンベヤベルト6、6Aで行われる部品の線形移動に際して、あらゆる角度であらゆる方向に、この複雑な部品5、5Aの鋳バリを除去できるようにされている。 図1と図2では、第1の実施形態に従って、機械のフレーム1、処理ヘッド2、コンベヤベルト3、処理用の4個の円筒形の金属ブラシ4、被加工部品5、保持用の磁気プレート6、ブラシの軸受7、駆動モータ8、および吸入管9を示した。 コンベヤベルト3に載せられた被加工部品5は、その前進中、磁気プレート6により保持され、処理用の回転ヘッド2の下に導かれる。回転ヘッド2に取り付けられたブラシ4が2個ずつ反対の回転方向に駆動され、回転ヘッド2の全体がそれ自体で回転駆動されるので、被加工部品5の各々のエッジが必然的に多数の方向にブラッシング作用を受ける。 実際、4個の円筒形の金属ブラシ4は、2個の軸受7の間に個々に取り付けられており、これらのブラシは、ブラシが取り付けられている8個の軸受7と、直径方向に向かい合っていて互いに反対方向に回転する2個のモータ8とを介して逆の回転方向に2個ずつ駆動され、各モータが、直列に配置された(en ligne)2個のブラシ4に共通の制御シャフト10によりそれぞれ機械的に接続されている。」 エ.Fig.1及び2 回転ブラシ4を移動させつつ、被加工部品に当接させる手段、すなわち「移動装置部」を有し、移動装置部は、回転ブラシ4を、公転軸9を軸に回転し公転軸9を中心とした円盤状の回転ヘッド2に複数設けること、 シャフト10は、回転ヘッド2に、公転軸9を挟む両側に互いに平行に、その両端が軸受7に支持されて設けられていること、 各シャフト10の軸方向と公転軸9の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係であること、が看取できる。 ここで、円筒形の「回転ブラシ4」が個々の「ブラシ」を、シャフト10に対して放射状態に、且つシャフト10の軸方向に所定間隔を介して多数並設状態に設けたものであることは、技術常識である。 また、「各シャフト10の軸方向と公転軸9の軸方向とが交差せず直交状態」とされることで、公転の際、シャフト10の軸方向の速度成分が生じることは明らかである。 したがって、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「ブラシを、シャフト10に対して放射状態に、且つシャフト10の軸方向に所定間隔を介して多数並設状態に設け、このシャフト10を軸に回転してこのシャフト10に設けた多数のブラシを回転させ被加工部品の鋳バリを除去するように構成した回転ブラシ4と、この回転ブラシ4を前記シャフト10の軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつこの回転ブラシ4を前記被加工部品に当接させる移動装置部とを設けた構成とし、この移動装置部は、前記回転ブラシ4を、公転軸9を軸に回転し該公転軸9を中心とした円盤状の回転ヘッド2に複数設け、 この各回転ブラシ4は、前記シャフト10に前記ブラシを設けた構成であって、前記シャフト10は、前記回転ヘッド2に、公転軸9を挟む両側に互いに平行に、その両端が軸受7に支持されて設けられ、前記両側のシャフト10は互いに逆方向に回転するように構成し、このシャフト10夫々に前記ブラシを設けて、前記回転ヘッド2の中心に設けた公転軸9の前後左右に前記各回転ブラシ4を両軸受7間に設け、 この各回転ブラシ4が、前記回転ヘッド2の回転に伴って前記公転軸9を中心に公転回転した際に各シャフト10の軸方向の速度成分が生ずるように、各シャフト10の軸方向と前記公転軸9の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係となるように設定して、前記公転回転する複数の前記回転ブラシ4で前記被加工部品を多方向から鋳バリ除去し得るように各回転ブラシ4を前記回転ヘッド2に配設した構成とした鋳バリ除去装置。」 (2)甲第2号証 甲第2号証には、特に特許請求の範囲、第2図、第3図を参照すると、以下の事項が記載されている。 「スピンドルに取り付けられた円環状の研磨盤を有し、かつ研磨要素が、矩形シート1の全長にわたつてシート1のセンターラインから一定距離隔たつたエツジ部4からシート1の両端部へ多数の平行なスリツトを入れて多数の研磨セグメント2を形成した矩形のシート1からなり、シート1をセンターラインに沿つて2つ折りにし、シート1を円環状に曲げて隣接する端部同士を直接接合し、平行な2つの層の端部同士を接合させて形成させたリングがスピンドル6を囲む中央孔を有し、セグメント2が平行な2つの層をなして放射状に延びている研磨器具。」 (3)甲第3号証 甲第3号証には、特に実用新案登録請求の範囲、第3ページ第3?5行、第1図、第4図を参照すると、以下の事項が記載されている。 「一方の表面に砥粒面を有しスリット11Cを細かく入れた帯状の研磨布紙を、砥粒面を外側にして二つ折りにし、その折り重ね部にロープ状部材11Aを通してなり、研磨輪として使用する研磨布紙フラップ11。」 (4)甲第4号証 甲第4号証には、特に請求項1?2、段落0011?0013、図2、図3を参照すると、以下の事項が記載されている。 「送材装置20上で、昇降自在かつ回転自在に設けられた箱形基台に、円周方向に放射する6本の作動スピンドル7に保持されたロータリーブラシ状ペーパーサンダー8であり、ロータリーブラシ状ペーパーサンダー8は、軸穴8aを開設し、その軸穴8aを中心として短冊片を放射状に突設形成したサンドペーパーSを、それぞれ非砥粒面を併せて2枚1組とし、これを複数枚若干の間隔を設けて積層したもの。」 (5)甲第5号証 甲第5号証には、特に第2ページ右下欄第9行?第3ページ右上欄第10行、第1図、第2図を参照すると、以下の事項が記載されている。 「昇降自在かつ回転自在に設けられた平板状のロータ17に、半径方向に延びる4本のアーム18が設けられ、アーム18にピン22を介して研磨ローラ14を設けた仕上げ装置。」 3.本件発明1 (1)対比 甲1発明の「シャフト10」は本件発明1の「自転回転軸」に相当し、同様に「被加工部品」は「加工材」に、「回転ヘッド2」は「回転基体」に、それぞれ相当する。 甲1発明の「ブラシ」、「回転ブラシ4」、「鋳バリ除去」と本件発明1の「研磨体」、「回転研磨体」、「研磨」とは「加工体」、「回転加工体」、「加工」である限りにおいて一致する。 本件発明1と甲1発明は、以下の点で一致する。 「加工体を、自転回転軸に対して放射状態に、且つ自転回転軸の軸方向に多数並設状態に設け、この自転回転軸を軸に回転してこの自転回転軸に設けた多数の加工体を回転させ加工材を加工するように構成した回転加工体と、この回転加工体を前記自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつこの回転加工体を前記加工材に当接させる移動装置部とを設けた構成とし、この移動装置部は、前記回転加工体を、公転軸を軸に回転し該公転軸を中心とした回転基体に複数設け、 この各回転加工体は、前記自転回転軸に前記加工体を設けた構成であって、前記自転回転軸は、前記回転基体に、公転軸を挟む両側に互いに平行に設けられ、この平行状態に配設された前記自転回転軸は夫々回転するように構成し、この各自転回転軸夫々に前記加工体を設けて、前記回転基体の中心に設けた公転軸の前後左右に前記各回転加工体を設け、 この各回転加工体が、前記回転基体の回転に伴って前記公転軸を中心に公転回転した際に各自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずるように、各自転回転軸の軸方向と前記公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係となるように設定して、前記公転回転する複数の前記回転加工体で前記加工材を多方向から加工し得るように各回転加工体を前記回転基体に配設した構成とした加工装置。」 そして、以下の点で相違する。 相違点1:本件発明1では、加工体が「一方側を砥粒面、他方側を非砥粒面に形成した細長の研磨布紙同士を重合配設して成る」ものであり、「金属材や木材など」を「研磨」する「研磨装置」であるが、甲1発明では、加工体が「ブラシ」であり、「鋳バリ除去」する「鋳バリ除去装置」である点。 相違点2:本件発明1では、回転基体が「長方体形状」であり、自転回転軸が回転基体の「前後両端部の左右両側面から互いに同一直線上に配設されるように突出状態に設けられ」、「この回転基体の前後両端部夫々に左右両側面から突出状態に設けられる前記各自転回転軸夫々に前記研磨体を設け」たものであるが、甲1発明では、回転基体が「円盤状」であり、自転回転軸が回転基体に「その両端が軸受7に支持されて設けられ」、「自転回転軸夫々にブラシ4を両軸受7間に設け」たものである点。 相違点3:平行状態に配設された自転回転軸の回転方向について、本件発明1では「同一方向」であるが、甲1発明では「逆方向」である点。 (2)判断 相違点1について、検討する。 「一方側を砥粒面、他方側を非砥粒面に形成した細長の研磨布紙同士を重合配設して成る研磨体」それ自体は、甲第3号証の「砥粒面を外側にして二つ折りにした研磨布紙フラツプ11」、又は甲第4号証の「非砥粒面を併せて2枚1組としたサンドペーパーS」として、証拠に記載されている。 しかしながら、本件発明1の研磨体は、「自転回転軸の軸方向と公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係」であることにより、構造上当然に生じる「自転回転軸の軸方向の速度成分」によって、重合配設された研磨布紙の「位置ずれ」が生じるという技術的意義を有する。 甲第3号証記載のもの、甲第4号証記載のものは、いずれも「自転回転軸の軸方向と公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係」ではなく、重合配設された研磨布紙の「位置ずれ」が生じるものではない。 すなわち、「位置ずれ」が生じる「一方側を砥粒面、他方側を非砥粒面に形成した細長の研磨布紙同士を重合配設して成る研磨体」までも、甲第3号証、甲第4号証に記載されていると認めることはできず、他の証拠にも記載はない。 さらに、甲1発明は、「自転回転軸の軸方向と公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係」であり、加工体に「自転回転軸の軸方向の速度成分」が生じているが、加工体は「ブラシ」であって、方向性に依存するものではないから、「自転回転軸の軸方向の速度成分」を利用して加工を行うという動機は生じないと言うべきである。 その結果、本件発明1は「金属材や木材など」を「研磨」するものであるが、甲1発明は「鋳バリ除去」するものであり、加工対象・用途も相違している。 請求人は、「ブラシ」、「重ねた研磨布紙」、いずれも周知であり、周知技術同士の置き換えは、動機がなくとも容易である旨、主張する(第4.3.(4))。 しかし、上記のとおり、「ブラシ」と「重ねた研磨布紙」とは、その機能、技術的意義に差違があるから、請求人の主張は採用できない。 よって、相違点1を容易とすることはできない。 相違点2について、検討する。 回転基体が「長方体形状」であり、基体側面から研磨体を突出させる点は、甲第4号証の「箱形基台に、円周方向に放射する6本の作動スピンドル7に保持されたロータリーブラシ式ペーパーサンダー8」、又は甲第5号証の「平板状のロータ17に、半径方向に延びる4本のアーム18が設けられ、アーム18にピン22を介して研磨ローラ14を設けた仕上げ装置」として、証拠に記載されている。 そして、甲第5号証記載のもののように、自転回転軸を4本とすると、回転基体は「長方体形状」であるから、その配置を「前後両端部の左右両側面から互いに同一直線上に配設」することは、設計的事項にすぎない。 なお、相違点2の容易性について、争いはない(第5.(3))。 相違点3について、検討する。 自転回転軸の回転方向を「同一方向」とする点は、いずれの証拠にも記載されていない。 本件発明1は、これにより同一箇所に研磨体が様々な向きで接するという技術的意義を有する。すなわち、本件発明1に係る図面の図3において、左上位置における研磨体の回転方向(矢印)は、0°では右から左であるが、180°では左から右と、逆方向となっている。 請求人は、研磨布紙の重ね合わせ4パターン、全てに効果が生じるわけではなく設計事項にすぎない旨、主張する(第4.3.(4))。 しかし、特許法第29条第2項の検討に際しては、「論理づけ」ができるか否かであって、「効果」がないから直ちに容易とすることはできない。 また、特許法には、請求項に含まれるすべての態様について、「効果」の存在を義務づける規定は存在しない。 よって、相違点3を容易とすることはできない。 以上、提出された証拠により、本件発明1が容易に発明をすることができたとすることはできない。 4.本件発明2 (1)対比 本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記3.(1)と同様の対応関係がある。 よって、本件発明2と甲1発明は、上記3.(1)と同様の点で一致し、さらに、加工体を自転回転軸の軸方向に「所定間隔を介して」多数並設状態に設けた点で一致する。 そして、以下の点で相違する。 相違点4:本件発明2では、加工体が「一方側を砥粒面、他方側を非砥粒面に形成した研磨布紙を一対重合配設して成る」もので「各研磨体の表面を自転回転軸の軸方向と対向状態に設け」たものであり、「金属材や木材など」を「研磨」する「研磨装置」であるが、甲1発明では、加工体が「ブラシ」であり、「鋳バリ除去」する「鋳バリ除去装置」である点。 相違点5:本件発明2では、自転回転軸が回転基体の「前後両端部の左右両側面から互いに同一直線上に配設されるように突出状態に設けられ」、「この回転基体の前後両端部夫々に左右両側面から突出状態に設けられる前記各自転回転軸夫々に前記研磨体を設け」たものであるが、甲1発明では、自転回転軸が回転基体に「その両端が軸受7に支持されて設けられ」、「自転回転軸夫々にブラシ4を両軸受7間に設け」たものである点。 相違点6:平行状態に配設された自転回転軸の回転方向について、本件発明2では「同一方向」であるが、甲1発明では「逆方向」である点。 (2)判断 相違点4について検討する。 相違点4は、実質的に相違点1に加え、「各研磨体の表面を自転回転軸の軸方向と対向状態に設け」た点で、さらに相違するものである。 上記3.(2)のとおり、相違点1を容易とすることはできないから、さらに相違する相違点4を容易とすることはできない。 相違点5について検討する。 相違点5は、実質的に、相違点2から、回転基体が「長方体形状」である点を除いたものである。 上記3.(2)のとおり、相違点2が容易であるから、同様に相違点5も容易である。 相違点6について検討する。 相違点6は、相違点3と同じであるから、同様に相違点6を容易とすることはできない。 以上、提出された証拠により、本件発明2が容易に発明をすることができたとすることはできない。 第7.むすび 以上、本件発明1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定を満たすものであり、特許法第123条第1項第2号の規定に該当しないので、無効とすることはできない。 また、他に本件発明1、2に係る特許を無効とすべき理由を発見しない。 審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 研磨装置 【技術分野】 【0001】 本発明は、例えば金属材や木材などの加工材を研磨する研磨装置に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来、実用的な研磨装置が種々市販されており、これらの研磨装置を使用して良好に研磨作業が行われている。しかし、特に、切断、剪断、穴あけなどによって加工材に生じたバリを研磨除去するバリ取り作業は、非常に機械化の遅れた部門である。 【0003】 特に、前記加工材のバリが生じた箇所(以下、バリ形成箇所という。)だけを的確に研磨する作業、即ち、前記加工材の前記バリ形成箇所だけを研磨し、他の部位は傷付けずにバリだけを的確に除去する作業は、自動化が非常に厄介であり、これが前記バリ取り作業の機械化の遅れの原因となっている。 【0004】 その為、従来から提案され、市販されている種々のバリ取り装置(以下、従来機という。)においても、以下のような問題点が生ずるものである。 【0005】 例えば、定テンションのベルトサンダーや平行スピンドル方式を採用した従来機は、前記加工材の加工形成面の形状に関わらず、該加工材に対して平面的に研磨若しくは切削を行う為、バリ形成箇所における前記加工材の加工形成面が平面であった場合には良好にバリを除去することができるが、しかし、前記加工材の前記バリ形成箇所が曲面であった場合には該曲面の面角度毎に前記バリ取り作業を行わなければならず、これが不均一な仕上がりになってしまうなどの欠点を有し、従って、単純形状な加工材にしか良好に採用できないという問題点を有する。 【0006】 また、例えば、ティーチングなどによる倣い方式を採用した従来機は、前記加工材の前記バリ形成箇所の形状に沿うように該加工材を研磨若しくは切削を行い、即ち、前記加工材のバリ形成箇所だけを的確に検出してバリだけを選択的に研磨若しくは切削などを行うことができ、上述の問題点を解決し得るように思われるが、しかし、このタイプの従来機は、前記ティーチングを行うために時間や手間を要し、それだけ作業性や量産性を損ねるという欠点を有する為、例えば、ペーパーサンドやヤスリなど使用して手動により前記バリ取り作業を行った場合と比して、従来機を用いて作業を機械化したことによる作業の効率化や量産性の向上などの効果が十分に得られない場合がある(特に、前記加工材が多品種少量生産である場合、前記ティーチングに要する作業工程の割合が相対的に大きくなるため、一層作業性や量産性を損ねる原因となる。)などの問題点を有する。 【0007】 ところで、従来、金属材や木材などの加工材を研磨するロータリーペーパーサンダーが知られている。これは、例えば、砥粒面及び非砥粒面とからなるペーパーサンド(研磨布紙)を自転回転軸に対して放射方向に多数突設し、これらの多数の研磨布紙を前記自転回転軸を軸に回転させて金属材や木材などの加工材の研磨を行うもので、これらの多数の研磨布紙は可撓性を有するが故に前記加工材の表面形状に沿うようして接触しこれを研磨するので、平面形状は勿論、曲面形状や起伏形状など様々な表面形状の加工材に対して均一な表面研磨を施すことを目的とするものである。 【0008】 従って、例えば、この従来のロータリーペーパーサンダーを用いて前記バリ取り作業を行った場合には、上述のようなティーチングを行わなくとも前記バリ形成箇所の形状に関わりなく簡単且つ良好にバリを研磨除去することができる。 【0009】 しかし、この従来のロータリーペーパーサンダーを使用してのバリ取り作業は、バリ形成箇所を研磨するだけでなく、他の部位も満遍なく研磨してしまうので、前記バリ形成箇所のみを選択的に研磨するといったことはできず、加工材の端部のバリだけを選択的に研磨除去するというバリ取り作業を機械的に良好に達成できるものではない。 【0010】 また、例えば、板金塗装などにおいては、加工材の表面を荒らしてから塗装を行うと塗料の密着度が良くなるため、加工材の端部のバリ取り作業を行う際に、加工材の表面も満遍なく均等に研磨して表面を均等に荒らしたい場合もある。即ち、加工材の端部のバリだけを選択的に研磨する必要がなく、加工材の端部も他の部位も満遍なく均一的に研磨したい場合もある。 【0011】 このように、加工材の端部だけで無く他の部位も研磨する作業において、従来のロータリーペーパーサンダーを使用した場合には、加工材の端部のバリ取り作業と、他の部位の研磨を同時に行うことができる。しかし、加工材を満遍なく多方向から研磨しようとした場合には、ロータリーペーパーサンダー自体を作業者が手で持って様々な方向から加工材に押し当てて研磨作業を行わなければならず、作業者の手加減によってロータリーペーパーサンダーの加工材への接触圧がバラつき、よって、研磨度合いもバラつき表面粗さが不均一となってしまうという問題を有した。 【0012】 よって、加工材の端部のバリを研磨除去するのではなく、他の部位も研磨して良い、若しくは他の部位も研磨したい場合においても、従来のロータリーペーパーサンダーでは良好に研磨作業を行えなかった。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0013】 本発明は、従来から提案されている研磨装置について更なる研究開発を進め完成した従来にない画期的な研磨装置を提供するものであって、従来のロータリーペーパーサンダーと同様、ティーチングなどを行わなくとも前記バリ形成箇所の形状に関わりなく簡単且つ良好にバリを研磨除去することができるのは勿論、更に、前記バリが形成された部位以外の他の部位も研磨されてしまうことを可及的に阻止し、バリ形成箇所以外の部位には殆ど傷を付けずに前記バリ形成箇所のみを選択的に研磨でき、機械的に簡単にバリ取り作業を行うことができる極めて画期的で実用性に秀れた研磨装置を提供することを課題とする。 【0014】 また、例えば、加工材の端部のバリの研磨除去だけでなく、他の部位にも隈なく均等に研磨をかけるという研磨作業も機械的に簡単に行える極めて画期的で実用性に秀れた研磨装置を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0015】 添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。 【0016】 一方側を砥粒面5,他方側を非砥粒面5aに形成した細長の研磨布紙4同士を重合配設して成る研磨体7を、自転回転軸aに対して放射状態に、且つ自転回転軸aの軸方向に多数並設状態に設け、この自転回転軸aを軸に回転してこの自転回転軸aに設けた多数の研磨体7を回転させ金属材や木材などの加工材6を研磨するように構成した回転研磨体1と、この回転研磨体1を前記自転回転軸aの軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつこの回転研磨体1を前記加工材6に当接させる移動装置部Mとを設けた構成とし、この移動装置部Mは、前記回転研磨体1を、公転軸bを軸に回転し該公転軸bを中心とした長方体形状の回転基体3に複数設け、この各回転研磨体1は、前記自転回転軸aに前記研磨体7を設けた構成であって、前記自転回転軸aは、前記回転基体3の前後両端部夫々に、この前後両端部の左右両側面から互いに同一直線上に配設されるように突出状態に設けられ、且つ、この左右に同一直線上に配設される前後両端部の前記自転回転軸a同士が平行状態に配設されるように設けられた構成とするとともに、この前後両端部の平行状態に配設された前記自転回転軸aは夫々同一方向に回転するように構成し、この回転基体3の前後両端部夫々に左右両側面から突出状態に設けられる前記各自転回転軸a夫々に前記研磨体7を設けて、前記回転基体3の中心に設けた公転軸bの前後左右に前記各回転研磨体1を設け、この各回転研磨体1が、前記回転基体3の回転に伴って前記公転軸bを中心に公転回転した際に各自転回転軸aの軸方向の速度成分が生ずるように、各自転回転軸aの軸方向と前記公転軸bの軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係となるように設定して、前記公転回転する複数の前記回転研磨体1で前記加工材6を多方向から研磨し得るように各回転研磨体1を前記回転基体3に配設した構成としたことを特徴とする研磨装置に係るものである。 【0017】 また、一方側を砥粒面5,他方側を非砥粒面5aに形成した研磨布紙4を一対重合配設して成る研磨体7を、自転回転軸aに対して放射状態に、且つ自転回転軸aの軸方向に所定間隔を介して多数並設状態に設けると共に、各研磨体7の表面を自転回転軸aの軸方向と対向状態に設け、この自転回転軸aを軸に回転してこの自転回転軸aに設けた多数の研磨体7を回転させ金属材や木材などの加工材6を研磨するように構成した回転研磨体1と、この回転研磨体1を前記自転回転軸aの軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつこの回転研磨体1を前記加工材6に当接させる移動装置部Mとを設けた構成とし、この移動装置部Mは、前記回転研磨体1を、公転軸bを軸に回転し該公転軸bを中心とした回転基体3に複数設け、この各回転研磨体1は、前記自転回転軸aに前記研磨体7を設けた構成であって、前記自転回転軸aは、前記回転基体3の前後両端部夫々に、この前後両端部の左右両側面から互いに同一直線上に配設されるように突出状態に設けられ、且つ、この左右に同一直線上に配設される前後両端部の前記自転回転軸a同士が平行状態に配設されるように設けられた構成とするとともに、この前後両端部の平行状態に配設された前記自転回転軸aは夫々同一方向に回転するように構成し、この回転基体3の前後両端部夫々に左右両側面から突出状態に設けられる前記各自転回転軸a夫々に前記研磨体7を設けて、前記回転基体3の中心に設けた公転軸bの前後左右に前記各回転研磨体1を設け、この各回転研磨体1が、前記回転基体3の回転に伴って前記公転軸bを中心に公転回転した際に各自転回転軸aの軸方向の速度成分が生ずるように、各自転回転軸aの軸方向と前記公転軸bの軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係となるように設定して、前記公転回転する複数の前記回転研磨体1で前記加工材6を多方向から研磨し得るように各回転研磨体1を前記回転基体3に配設した構成としたことを特徴とする研磨装置に係るものである。 【発明の効果】 【0018】 本発明は上述のように構成したから、例えば、切削加工や切欠加工などによって端部にバリが形成された加工材を研磨すれば、該加工材に形成されたバリを選択的に研磨除去することが可能であり、従来例のように、加工材のバリ形成箇所をティーチングによって研磨装置に認識させたり、加工材のバリ形成箇所の曲面形状に合わせて所定角度毎に何度も研磨作業を行うなどの必要がなく、作業性に秀れ効率良いバリ取り作業を実現可能な極めて実用性に秀れた画期的な研磨装置となる。 【0019】 また、本発明においては、加工材の端部を多方向から研磨してこの加工材の端部に形成されたバリを満遍なく研磨除去できることは勿論、この加工材の端部以外の部位も均一的に満遍なく研磨できる。 【0020】 よって、例えば、加工材の端部のバリを研磨除去すると共に他の部位も研磨したい場合、即ち、例えば表面を荒らして塗料の密着度を良くする作業を行う板金塗装作業時などのように加工材6の端部のバリ取り作業だけでなく表面も満遍なく均一的に研磨したい場合、この本発明に係る研磨装置を用いて加工材の端部のバリの研磨除去と加工材の他の表面の研磨とを効率的に且つ満遍なく均一的に行える実用性に秀れた研磨装置となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0021】 好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。 【0022】 例えば、一方側を砥粒面5,他方側を非砥粒面5aに形成した研磨布紙4を一対重合配設して成る研磨体7を、自転回転軸aに対して放射状態に、且つ自転回転軸aの軸方向に所定間隔を介して多数並設状態に設けると共にこの研磨体7の表面を自転回転軸aの軸方向と対向状態に設け、この自転回転軸aを軸に回転してこの自転回転軸aに設けた多数の研磨体7を回転させ金属材や木材などの加工材6を研磨するように構成した回転研磨体1を前記自転回転軸aの軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつこの回転研磨体1を前記加工材6に当接させる移動装置部Mとを設けた構成とした為、例えば、研磨体7の一対の研磨布紙4を互いの砥粒面5が対向する方向に重合配設した場合には、この各研磨体7の回転研磨体1を、移動装置部Mによって該回転研磨体1の自転回転軸aの軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつ、該回転研磨体1を前記自転回転軸aを軸に自転回転させると、前記研磨体7が自転回転による遠心力で前記自転回転軸aを中心に放射方向に広がり、更に、前記研磨体7、即ち一対の研磨布紙4は重合状態を解消して先端側ほど離間した略V字状になって回転する。 【0023】 また、移動装置部Mによって前記回転研磨体1は自転回転軸aの軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させられているので、前記の略V字状になって回転する多数の一対の研磨布紙4(研磨体7)も、前記自転回転軸aの軸方向の速度成分を有しながら自転回転することとなる。 【0024】 この略V字状となって回転する一対の研磨布紙4の長手方向一側縁が金属材や木材などの加工材6に当接すると、加工材6との接触抵抗によって、前記研磨布紙4の片側だけが極端に前記軸方向の速度成分を損ね、回転力が生じ、この回転力によって前記研磨布紙4は先端側を所定の捻れ方向に捻れ曲がることとなる。 【0025】 即ち、前記加工材6に長手方向一側縁を当接した研磨布紙4は、ランダムな捻れ方向に捻れ曲がるのではなく、一対の研磨布紙4のうちの前記軸方向の速度成分の進行方向へ先行する方の研磨布紙4(軸方向に先行移動する研磨布紙4)は軸方向の進行方向側、即ち、非砥粒面5aを加工材6に向ける捻れ方向に捻れ曲がることとなり、該非砥粒面5aを前記加工材6に接触させることとなり、また、一対の研磨布紙4のうちの前記軸方向の速度成分の進行方向へ後続する方の研磨布紙4(軸方向に遅行移動する研磨布紙4)は軸方向の進行方向側、即ち、砥粒面5を加工材6に向ける捻れ方向に捻れ曲がることとなり、軸方向に先行移動する研磨布紙4に重合することとなる。 【0026】 この際、これらの一対の研磨布紙4は先端側ほど離間したV字状態で回転していたが故に、軸方向に先行移動する研磨布紙4に重合したもう一方の(軸方向に遅行移動する)研磨布紙4は、位置合致して重合せず、先端側程位置ズレして重合することとなる。 【0027】 即ち、例えば、一対の研磨布紙4が加工材6の側方から該加工材6の端部に当接した場合には、軸方向に遅行移動する研磨布紙4の先端側の砥粒面5の一部が、軸方向に先行移動する研磨布紙4に重合せずに外側にはみ出し、この位置ズレによって外側に露出した砥粒面5によって前記加工材6の端部を研磨することとなる。 【0028】 次いで、両研磨布紙4が可撓性によってL字状に撓み、前記加工材6の上部表面に載上した場合には、軸方向に先行移動する前記研磨布紙4に、軸方向に遅行移動する前記研磨布紙4が載上し、接触する互いの砥粒面5の接触抵抗によって、両研磨布紙4は一体となって前記加工材6の上部表面を滑動し、後続の研磨布紙4の砥粒面5の前記加工材6の上部表面への接触(研磨)が阻止されることとなる。(一対の研磨布紙4が加工材6の上方から該加工材6の上部表面に当接した場合も同様である。)。 【0029】 従って、前記研磨体7、即ち、互いの砥粒面5を対向させて重合した一対の研磨布紙4によって、前記加工材6の端部に側方から当接した場合のみ該加工材6の端部を研磨し、その他の部位は前記砥粒面5の接触による研磨が阻止されることとなり、例えば、切削加工や切欠加工などによって端部にバリが形成された加工材6のバリ取り作業を本発明品を用いて行えば、バリ以外の部位には殆ど傷を付けずに、バリだけを選択的に研磨除去することができ、従来例のように煩雑なバリ取り作業を極めて簡易に、効率良く行うことができる極めて作業性に秀れた画期的で実用性に秀れた研磨装置となる。 【0030】 また、例えば、研磨体7の一対の研磨布紙4のいずれも、回転研磨体1の自転回転軸aの軸方向の進行方向に砥粒面5を向けて配設した場合には、前記加工材6に研磨体7の各研磨布紙4の長手方向一側縁を当接した際に、この研磨体7の一対の研磨布紙4がいずれも軸方向の進行方向側、即ち、砥粒面5を加工材6に向ける捻れ方向に捻れ曲がることとなり、よって、該砥粒面5を前記加工材6の端部に接触させこの加工材6の端部に形成されたバリを良好に研磨できることとなる。 【0031】 即ち、加工材6の端部に研磨体7が当接した際に、この研磨体7の一対の研磨布紙4はランダムな方向に捻れまがるのでなく、確実に前記加工材6の端部に砥粒面5を向ける方向に捻れ曲がることとなるから、効率的に研磨を行い前記加工材6の端部に形成されていたバリを機械的に効率良く研磨できることとなる。 【0032】 更にこの際、研磨体7の一対の研磨布紙4がL字状に撓み前記加工材6の上部表面に載上した場合に、この研磨体7の一対の研磨布紙4はいずれも砥粒面5を加工材6の上部表面に向けた状態でこの加工材6に載上する為、一対の研磨布紙4の各砥粒面5により確実に、効率的にこの加工材6の表面研磨を行うこととなる。 【0033】 その為、例えば加工材6の端部のバリだけを選択的に研磨するのではなく、加工材6の他の表面も研磨したい場合において、良好に加工機能を発揮できる。 【0034】 しかも、移動装置部Mは、前記回転研磨体1を、公転軸bを軸に回転する回転基体3に複数設け、各回転研磨体1は、前記回転基体3の回転に伴って前記公転軸bを中心に公転回転した際に各自転回転軸aの軸方向の速度成分が生ずるように、各自転回転軸aの軸方向と前記公転軸bの軸方向とが交差しない位置関係となるように設定し、前記公転回転する複数の前記回転研磨体1で前記加工材6を多方向から研磨し得るように各回転研磨体1を前記回転基体3に配設した構成としているので、この加工材6の端部やこの加工材6の状部表面に、満遍なく多方向から研磨布紙4の砥粒面5を接触させることができ、よって、加工材6の端部のバリ取り作業と、この加工材6の上部表面の研磨を機械的に効率良く、且つ、満遍なく行えることとなる。 【0035】 また、この加工材6の上部表面に前記研磨体7の一対の研磨布紙4が重合した状態で、この一対の研磨布紙4のいずれかの研磨布紙4の砥粒面5が加工材6の上部表面に沿って平行に接触しながら適度な接触圧で研磨が行われ、従来例のように、加工材6に対しての研磨布紙4の接触圧がバラついて研磨度合いがバラついてしまったりすることもなく、加工材6の表面を万遍無く均一的に研磨することが可能である。 【0036】 従って、加工材6の端部のバリを満遍なく効率的に除去できるだけでなく、この加工材6の端部以外の部位も均一的に満遍なく研磨することとなり、例えば、表面を荒らして塗料の密着度を良くする作業を行う板金塗装作業時などのように加工材6の端部のバリ取り作業だけでなく他の部位も満遍なく均一に研磨したい場合に用いる研磨装置としての高い実用価値を有することとなる。 【実施例】 【0037】 本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。 【0038】 本実施例は、一方側を砥粒面5,他方側を非砥粒面5aに形成した研磨布紙4を一対互いの砥粒面5が対向する方向に重合配設して成る研磨体7を、自転回転軸aに対して放射状態に、且つ自転回転軸aの軸方向に所定間隔を介して多数並設状態に設けると共に、各研磨体7の表面を自転回転軸aの軸方向と対向状態に設け、この自転回転軸aを軸に回転してこの自転回転軸aに設けた多数の研磨体7を回転させ金属材や木材などの加工材6を研磨するように構成した回転研磨体1と、この回転研磨体1を前記自転回転軸aの軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつこの回転研磨体1を前記加工材6に当接させる移動装置部Mとを設けた研磨装置である。 【0039】 本実施例では、前記移動装置部Mとして、前記回転研磨体1を、公転軸bを軸に回転する回転基体3に複数設け、各回転研磨体1は、前記回転基体3の回転に伴って前記公転軸bを中心に公転回転した際に各自転回転軸aの軸方向の速度成分vが生ずるように、各自転回転軸aの軸方向と前記公転軸bの軸方向とが交差しない位置関係となるように設定し、前記公転回転する複数の前記回転研磨体1で前記加工材6を多方向から研磨し得るように各回転研磨体1を前記回転基体3に配設した構成の移動装置部Mを採用している。 【0040】 回転研磨体1は、前記自転回転軸aと多数の研磨体7とから成る構成である。 【0041】 本実施例の多数の研磨体7、即ち多数の研磨布紙4は、図1に図示したように、全て細長な長方形状に形成された略同一形状の研磨布紙4である。 【0042】 また、これらの多数の細長な長方形状の研磨布紙4を、互いの砥粒面5を合わせた方向で重合すると共に前記自転回転軸aの周面に該周面から放射方向に突出するように配設した構成である。 【0043】 また、これらの多数の研磨体7は、具体的には、図1に図示したように、前記自転回転軸aの軸方向に所定間隔を介した複数の箇所を基点とし、各基点の周囲に、自転回転軸a軸方向視において該自転回転軸aを中心に約15°乃至18°の間隔を介して放射方向に設けた構成である。 【0044】 尚、これらの多数の研磨体7は、前記自転回転軸aを中心に約15°乃至18°の間隔を介して放射方向に設けた構成としたが、これに限らず、例えば前記自転回転軸aを中心に18°以上の角度間隔を介して放射方向に設けた構成としても良く、また、これら多数の研磨体7は、前記自転回転軸aの軸方向に所定間隔を介した複数の箇所を基点とし、各基点の放射方向に多数の研磨体7設けた構成としたが、これに限らず、前記自転回転軸aの周面を囲繞するように螺旋状に多数の研磨体7を配設した構成としても良く、本実施例の機能を発揮し得るように多数の研磨体7を配設した構成とすれば良い。 【0045】 また、この回転研磨体1の自転回転軸aに多数配設する研磨体7は、一体づつ前記自転回転軸aの周面に配設した構成としても良いが、本実施例においては、図5に図示したように、一枚の大きな矩形状のサンドペーパーの両端側から中央に向けてスリットを形成し、次いで、このサンドペーパーを砥粒面5が内方に対向状態となるように二つ折りにして(サンドペーパーを二つ折にした後にスリットを形成しても良い。)、互いの砥粒面5を対向状態に一対の研磨布紙4を重合して成る研磨体7を一体に多数成形すると共に、この多数の研磨体7が形成したサンドペーパーを、図5に図示したように、面方向に湾曲することで前記多数の研磨体7が放射方向に配設されるように湾曲して前記自転回転軸aの周面に被嵌配設することで、この一枚の矩形状のサンドペーパーから形成した多数の研磨体7を自転回転軸aに放射状に配設した構成であり、この一枚の矩形状のサンドペーパーから形成した多数の研磨体7を前記自転回転軸aの軸方向に所定の間隔を介して配設して前記回転研磨体1を構成している。尚、この一枚の矩形状のサンドペーパーにスリットを形成して二つ折りとしたうえで前記自転回転軸aの周面に螺旋状に配設することで、前記多数の研磨体7を前記自転回転軸aに螺旋状に配設することで前記多数の研磨体7を自転回転軸aに配設して前記回転研磨体1を構成しても良い。 【0046】 従って、図5に図示したように、多数の研磨体7を単に一枚の大きな矩形状のサンドペーパーにスリットを入れて二つ折りにして形成する為、回転研磨体1を簡易に生産でき量産性に秀れる。 【0047】 この回転研磨体1は、前記自転回転軸aを軸に正逆回転自在に構成し、また、前記自転回転軸aを軸として自転回転した際に、該回転研磨体1に多数設けた研磨体7が前記自転回転による遠心力で前記自転回転軸aの周面から放射方向に広がるように、該回転研磨体1の自転回転速度を設定している。 【0048】 回転基体3は、図1に図示したように、水平面に対して垂直な公転軸bを中心とした長方体形状に形成し、前記公転軸bを軸に水平方向に正逆方向に回転可能な構成である。 【0049】 また、この回転基体3の周囲に、前記公転軸bの軸方向と交差しないように自転回転軸aの軸方向を設定した前記回転研磨体1を複数配設している。 【0050】 具体的には、回転基体3に配設した複数の前記回転研磨体1によって加工材6を可及的に多方向から研磨し得るように、平面視において前記公転軸bを中心として想定されるX-Y平面上の第一象限乃至第四象限の各象限内に前記回転研磨体1が配されるように、図1に図示したように、前記回転基体3の長手方向両側面の両端側、即ち、四箇所に前記回転研磨体1を配設している。尚、本実施例では、回転基体3に前記回転研磨体1を四体設けた構成であるが、これに限らず、回転基体3に前記回転研磨体1を三対設けた構成、若しくは六体設けた構成など、適宜に複数体設けた構成とすれば良い。 【0051】 また、これら複数の回転研磨体1は、各自転回転軸aの軸方向を前記公転軸bと直交する平面上(水平面上)に設定し、また、これらの回転研磨体1の各自転回転軸aの軸方向を同一平面上に設定しており、更に、これらの回転研磨体1のうちの、前記回転基体3を介して左右に配設された回転研磨体1同士は各自転回転軸aを同一直線上に設定し、また前記回転基体3の長手方向に前後に配設された回転研磨体1同士は各自転回転軸aを互いに平行となるように設定している。 【0052】 また、前記回転基体3の公転軸bを軸とした回転に伴って複数の前記回転研磨体1が公転軸bを中心に公転回転した際、各回転研磨体1に前記自転回転軸aの軸方向の速度成分vが生ずるように、前記公転軸b軸方向視において前記自転回転軸aと公転軸bとは、十分に離間した位置関係に設定している。 【0053】 また、前記自転回転軸aを軸に自転回転すると共に公転軸bを中心に公転回転する前記回転研磨体1の研磨体7(略V字状になって回転する一対の研磨布紙4a,4b)が加工材6に当接した際に、各研磨体7に、一定の捻れ方向へと捻れ曲がらせる捻れ作用(回転作用)が生じるように、前記回転基体3の前記公転軸bを軸とした回転速度、即ち、前記回転研磨体aの前記公転軸bを中心とした公転回転速度を設定している。 【0054】 本実施例は、上述のように構成したから、複数の前記回転研磨体1を自転回転軸aを軸に自転回転させると共に、前記公転軸bを軸に公転回転させると、回転研磨体1の前記自転回転軸aに対して放射方向に突出するように多数設けた研磨体7、即ち、一対の研磨布紙4a,4bが、自転回転による遠心力によって前記自転回転軸aから放射状に広がり、更に、先端側程離間した略V字状になって回転する。 【0055】 この回転研磨体1の下方に加工材6を配し、この加工材6の端部に前記一対の研磨布紙4a,4bの各長手方向一側縁が当接すると、図2(a)?(c)に図示したように、前記一対の研磨布紙4a,4bによって、該加工材6の端部が研磨されることとなる。 【0056】 具体的には、前記一対の研磨布紙4a,4bのうちの前記軸方向の速度成分vの進行方向へ先行する研磨布紙4a(以下、軸方向に先行移動する研磨布紙4a)は、先ず、図2(a)に図示したように、一方(図2中、手前右側)の長手方向一側縁が前記加工材6の端部と当接し、この加工材6と当接した片側縁だけが極端に前記軸方向の速度成分vを損ね、その結果、回転作用が生じ、図2(b)に図示したように、前記の回転作用によって非砥粒面5aが前記加工材6の端部と接触するような捻れ方向に捻れ曲がることとなる。 【0057】 また、前記一対の研磨布紙4a,4bのうちの前記軸方向の速度成分vの進行方向へ後続する研磨布紙4b(以下、軸方向に遅行移動する研磨布紙4b)は、先ず、図2(a)に図示したように、一方(図2中、手前右側)の長手方向一側縁が前記加工材6の端部と当接し、この加工材6と当接した片側縁だけが極端に前記軸方向の速度成分vを損ね、その結果、回転作用が生じ、図2(b)に図示したように、前記の回転作用によって砥粒面5が前記加工材6の端部と接触するような捻れ方向に先端側が捻れ曲がると共に、軸方向に先行移動する研磨布紙4aに重合することとなる。 【0058】 この際、この軸方向に遅行移動する研磨布紙4bは、軸方向に先行移動する研磨布紙4aと丁度位置合致して重合せずに、先端側程位置ズレして重合することとなるので、この位置ズレによって横方向にはみ出した研磨布紙4bの砥粒面5が、図2(b)に図示したように前記加工材6の端部に接触することとなり、この加工材6の端部の研磨が行われることとなる。即ち、加工材6に当接するまでこれらの一対の研磨布紙4a,4bは先端側ほど離間したV字状になって回転していたため、前記の位置ズレが生ずるものである。 【0059】 次いで、一対の研磨布紙4a,4bは前記加工材6の上部表面に載上し、この際、軸方向に先行移動する研磨布紙4aは図2(c)に図示したように、略L字状に歪曲して該加工材6の上部表面に載上し、軸方向に遅行移動する研磨布紙4bも同様に略L字状に歪曲すると共に、軸方向に先行移動する研磨布紙4aの上に載った状態となり、向かい合う互いの砥粒面5同士の接触抵抗によって係止され、この軸方向に先行移動する研磨布紙4a上に軸方向に遅行移動する研磨布紙4bが保持されることとなり、図2(c)に図示したように、前記加工材6の上部表面を一体滑動することとなる。即ち、軸方向に先行移動する研磨布紙4aの非砥粒面5aのみが前記加工材6の上部表面に接触し、軸方向に後続移動する研磨布紙4bの砥粒面5が前記加工材6の上部表面に接触することが阻止される。 【0060】 また、一対の研磨布紙4a,4bが前記加工材6の上方から該加工材6の上部表面に当接した場合も、軸方向の速度成分vによって、軸方向に先行移動する研磨布紙4aは加工材6の上部表面に非砥粒面5aを接触させる方向に捻れ曲がりL字状に歪曲し、この上にL字状に歪曲した軸方向に先行移動する研磨布紙4bが保持され、砥粒面5が前記加工材6の上部表面に接触することが阻止される。 【0061】 即ち、本実施例は、前記回転研磨体1を単に自転回転軸aを軸に自転回転させるだけでなく、移動装置部Mによって、この回転研磨体1に自転回転軸aの軸方向の速度成分vが生ずる方向に該回転研磨体1を移動させつつ研磨を行う構成としたことによって、研磨体7が加工材6の端部に側方から当接した場合にのみ該加工材6の端部を研磨し、加工材6の上部表面に接触した場合には非砥粒面5aしか接触し得ない構成としたものである。 【0062】 また、本実施例は、前記回転研磨体1に自転回転軸aの軸方向の速度成分vが生ずる方向に該回転研磨体1を移動させるために、公転軸bを軸に回転する回転基体3に前記回転研磨体1を複数設け、各回転研磨体1の自転回転軸aの軸方向と前記公転軸bの軸方向とが交差しない位置関係となるように設定した構成の移動装置部Mを採用しているが、この移動装置部Mの構成により、回転研磨体1に軸方向の速度成分vが良好に生ずることとなるのは勿論、更に、多数の回転研磨体1によって加工材6を多方向から満遍なく研磨し得る構成も同時に実現し得ることとなる。 【0063】 即ち、仮に前記移動装置部Mを、従来のロータリーペーパーサンダーの移動装置部Mに置き換えた構成(複数の回転研磨体1の各自転回転軸aの軸方向と、公転軸bの軸方向とが交差する位置関係となるように設定した構成)とした場合、図6に図示したように、各回転研磨体1に自転回転軸aの軸方向の速度成分vが生じないのは勿論、仮に該速度成分vが生じていたと仮定しても、下方に配した加工材6に対する各回転研磨体1の研磨体7の当接方向dの変化(バリエーション)が少なく、その為、加工材6の端部の一部しか研磨し得ない構成となってしまう(研磨体7が加工材6の端部に側方から当接した場合にしか研磨を行わない本実施例の構成においては、加工材6に対して多方向から前記研磨体7を当接させ得る構成は必須である。)。 【0064】 これに対して、本実施例においては、複数の回転研磨体1の各自転回転字軸aの軸方向と、公転軸bの軸方向が互いに交差しない位置関係となるように設定した構成としたことによって、図3に図示したように、各回転研磨体1に自転回転軸aの軸方向の速度成分vが良好に生ずることとなるのは勿論、下方に配した加工材6に対する各回転研磨体1の研磨体7の当接方向dのバリエーションが多く、四体の回転研磨体1によって加工材6の端部を隈なく均一に研磨することが可能である。 【0065】 従って、本実施例においては、他の部位は殆ど傷を付けずに、加工材6の端部だけを選択的に研磨することができ、しかも、多方向から満遍なく該加工材6を研磨し得るから、例えば、切削加工や切欠加工などにより端部にバリが形成された加工材6を本実施例に係る研磨装置で研磨した場合には、本実施例に係る研磨装置は、端部に形成されたバリだけを選択的に研磨し除去できる秀れたバリ取り装置となる。 【0066】 よって、本実施例は、ただ加工材6を回転研磨体1の下方に配するだけで、この加工材6の端部のみを選択的に研磨することができるので、従来例のように、加工材6のバリ形成箇所をティーチングによって研磨装置に認識させたり加工材6のバリ形成箇所の曲面形状に合わせて所定角度毎に何度も研磨作業を行うなどの必要がなく、極めて簡単に、バリが形成された端部のみを満遍なく均一に研磨でき、作業効率が悪く厄介なバリ取り作業を簡単且つ効率良く行うことができ、作業性に秀れた画期的で商品価値の高い研磨装置である。 【0067】 しかも、加工材6の端部のみを選択的に研磨し得る構成と、加工材6に対して多方向から研磨し得る構成とを、同時に実現できる移動装置部Mを採用したことにより、それだけ機能効率が良く機構の大幅な簡素化が実現できるが故に、秀れた生産性と低コスト化を実現し得、作業性だけでなく実用性も極めて秀れた商品価値の高い研磨装置である。 【0068】 また、本実施例では、前記回転基体3の周囲に、平面視において前記公転軸bを中心として想定されるX-Y平面上の第一象限乃至第四象限の各象限内に回転研磨体1を配しており、図3に図示したとおり、前記回転基体3を前記公転軸bを軸に一回転させた際に、下方に配した加工材6に対して平面視において略全方向から研磨し得る構成となるから、前記加工材6の端部に形成されたバリを研磨除去した際に、確実に前記加工材6を満遍なく均一にバリ取りすることができる。また、本実施例では、前記回転基体3及び回転研磨体1を正逆回転自在に構成したが、仮に一方向にしか回転できない構成とした場合にも、図3に図示した通り、前記加工材6に対して多方向から研磨できるので、秀れた研磨機能を保持したまま前記回転基体3及び回転研磨体1を一方向にしか回転できない構成とすることも可能で、この場合には一層機構を簡素化し得、それだけコスト安となり、一層生産性に秀れる。 【0069】 また、本実施例では、複数設けた前記回転研磨体1の各自転回転軸aの軸方向を、前記公転軸bと直交する同一平面上に、本実施例では同一水平面上に設定したので、複数の回転研磨体1同士に高低差がなく、下方に配した加工材6に対して各研磨体1が均一に研磨を行うので、加工材6に対して一層均一な研磨を行うことができ作業性に秀れ、また、各回転研磨体1同士に高低差が生じないので、当然、各回転研磨体1を同一形状に形成できるなど、実用性に秀れる。 【0070】 また、本実施例では、多数の研磨体7は、一対の研磨布紙4a,4bが前記自転回転の遠心力によって先端側ほど離間して略V字状となって回転するように、これら一対の研磨布紙4a,4bは各表面が前記自転回転軸aの軸方向と直交する方向となるように配設しており、仮に前記自転回転軸aの軸方向に沿って平行な表面となるように一対の研磨布紙4a,4bを配設した場合に比して腰が強く、上述の通り前記回転研磨体4bの砥粒面5が加工材6の端部に接触する際にそれだけ強く接触し、良好に研磨し得ることとなるなど、作業性に秀れる。 【0071】 また、本実施例では、前記多数の研磨体7は、前記自転回転軸aの周面に放射状に突出状態に設けた構成としたので、前記自転回転軸aを回転させることで、必然的に前記研磨体7も回転させることができ、前記研磨体7を前記自転回転軸aを軸に回転させるための特別な構成は必要なく、簡易構成にして生産性に秀れる。 【0072】 また、本実施例においては、前記回転研磨体1及び前記回転基体3を正逆回転自在な構成としたので、加工材6に対して一層適宜な当接方向dから研磨体7を当接させ得るなど、一層作業性に秀れる。 【0073】 尚、本実施例においては、加工材6の端部のバリだけを選択的に研磨除去して他の部位は傷つけない(研磨しない)ように構成しているが、例えば、加工材6の端部のバリを研磨する際に他の部位も研磨して良い場合には、若しくは加工材6の端部のバリを研磨する際に他の部位も研磨したい場合には、前記回転研磨体1の研磨体7の一対の研磨布紙4の重合向きはいずれの向きでも構わない。 【0074】 例えば、図4に図示したように、この研磨体7の一対の研磨布紙4を互いに砥粒面5を前記回転研磨体1の自転回転軸aの軸方向の進行方向に向けて配設した場合には、図4(a)に図示したように、研磨体7が加工材6の端部から当接した際に一対の研磨布紙4の長手方向一側縁が加工材6の端部に強く当接してこの研磨布紙4の側縁により加工材6の端部を良好に研磨すると共に、この一対の研磨布紙4がいずれも各砥粒面5を加工材6の端部に向けて捻れ曲がることとなる(図4(b)参照)為、更に良好にこの加工材6を砥粒面5で確実に、且つ効率的に研磨することとなる。また、加工材6の端部のバリの研磨除去を良好に行うことができることは勿論、図4(c)に図示したように、この研磨体7の一対の研磨布紙4が加工材6上に載上した際には、この研磨体7の一対の研磨布紙4が重合した状態で、この一対の研磨布紙4のいずれの研磨布紙4の砥粒面5も加工材6の上部表面に沿って平行に接触しながら適度な接触圧で当接して良好に研磨を行うこととなる為、従来例のように、加工材6に対しての研磨布紙4の接触圧がバラついて研磨度合いがバラついてしまったりせず、加工材6の表面を万遍無く均一的に研磨できる。 【0075】 また、研磨体7はたった一枚の研磨布紙4から成る構成ではなく、一対の研磨布紙4を重合配設して成る構成としているので、それだけ研磨体7を加工材6に強く接触させて研磨でき、よって、それだけ効率的に研磨できる構成としたり、各研磨布紙4の厚みを薄く構成して加工材6の細かい箇所にも良好に研磨布紙4を入り込ませて研磨でき細部まで隈なく研磨できる構成としたりできる。また、仮に研磨体7を三枚以上の複数の研磨布紙4を重合配設して成る構成とした場合には、加工材6に対して研磨体7を接触した際の研磨量がその時々によって非常にバラついてしまう(複数の研磨布紙4のうちの何枚の研磨布紙4の各砥粒面5が加工材6に接触するかがその時々によってランダムに決まってしまうので研磨量がバラつき均一的な研磨が困難となってしまう。)。即ち、研磨体7を一枚の研磨布紙4から成る構成とするのでなく、また、研磨体7を三枚以上の研磨布紙4を重合配設して成る構成とするのでもなく、上記の通り研磨体7を二枚の研磨布紙4を互いの非砥粒面5aを対向状態に重合配設して成る構成とすることにより上記の秀れた研磨機能を有することとなり、従って、研磨体7の一対の研磨布紙4を互いの砥粒面5を対向状態に重合するのではなく、各研磨布紙4の砥粒面5を回転研磨体1の自転回転軸aの軸方向の進行方向に向けて配設して研磨体7を構成した場合においては、加工材6の端部のバリを満遍なく効率的に除去し得ると共にこの加工材6の端部以外の部位も均一的に満遍なく研磨し得ることとなり、よって、例えば、表面を荒らして塗料の密着度を良くする作業を行う板金塗装作業時などのように加工材6の端部のバリ取り作業だけでなく他の部位も満遍なく均一に研磨したい場合に用いる研磨装置としての高い実用価値を有するものとなる。 【0076】 尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。 【図面の簡単な説明】 【0077】 【図1】本実施例に係る研磨装置の説明斜視図である。 【図2】本実施例に係る研磨装置の使用状態の要部の斜視図である。 【図3】本実施例に係る研磨装置の回転研磨体の回転方向を説明する平面図である。 【図4】本実施例に係る研磨装置の別例を示す図である。 【図5】本実施例に係る研磨装置の多数の研磨体7の作成手順を示す図である。 【図6】従来例の説明平面図である。 【符号の説明】 【0078】 1 回転研磨体 3 回転基体 4 研磨布紙 5 砥粒面 5a 非砥粒面 6 加工材 7 研磨体 a 自転回転軸 b 公転軸 M 移動装置部 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 一方側を砥粒面,他方側を非砥粒面に形成した細長の研磨布紙同士を重合配設して成る研磨体を、自転回転軸に対して放射状態に、且つ自転回転軸の軸方向に多数並設状態に設け、この自転回転軸を軸に回転してこの自転回転軸に設けた多数の研磨体を回転させ金属材や木材などの加工材を研磨するように構成した回転研磨体と、この回転研磨体を前記自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつこの回転研磨体を前記加工材に当接させる移動装置部とを設けた構成とし、この移動装置部は、前記回転研磨体を、公転軸を軸に回転し該公転軸を中心とした長方体形状の回転基体に複数設け、この各回転研磨体は、前記自転回転軸に前記研磨体を設けた構成であって、前記自転回転軸は、前記回転基体の前後両端部夫々に、この前後両端部の左右両側面から互いに同一直線上に配設されるように突出状態に設けられ、且つ、この左右に同一直線上に配設される前後両端部の前記自転回転軸同士が平行状態に配設されるように設けられた構成とするとともに、この前後両端部の平行状態に配設された前記自転回転軸は夫々同一方向に回転するように構成し、この回転基体の前後両端部夫々に左右両側面から突出状態に設けられる前記各自転回転軸夫々に前記研磨体を設けて、前記回転基体の中心に設けた公転軸の前後左右に前記各回転研磨体を設け、この各回転研磨体が、前記回転基体の回転に伴って前記公転軸を中心に公転回転した際に各自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずるように、各自転回転軸の軸方向と前記公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係となるように設定して、前記公転回転する複数の前記回転研磨体で前記加工材を多方向から研磨し得るように各回転研磨体を前記回転基体に配設した構成としたことを特徴とする研磨装置。 【請求項2】 一方側を砥粒面,他方側を非砥粒面に形成した研磨布紙を一対重合配設して成る研磨体を、自転回転軸に対して放射状態に、且つ自転回転軸の軸方向に所定間隔を介して多数並設状態に設けると共に、各研磨体の表面を自転回転軸の軸方向と対向状態に設け、この自転回転軸を軸に回転してこの自転回転軸に設けた多数の研磨体を回転させ金属材や木材などの加工材を研磨するように構成した回転研磨体と、この回転研磨体を前記自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずる方向に移動させつつこの回転研磨体を前記加工材に当接させる移動装置部とを設けた構成とし、この移動装置部は、前記回転研磨体を、公転軸を軸に回転し該公転軸を中心とした回転基体に複数設け、この各回転研磨体は、前記自転回転軸に前記研磨体を設けた構成であって、前記自転回転軸は、前記回転基体の前後両端部夫々に、この前後両端部の左右両側面から互いに同一直線上に配設されるように突出状態に設けられ、且つ、この左右に同一直線上に配設される前後両端部の前記自転回転軸同士が平行状態に配設されるように設けられた構成とするとともに、この前後両端部の平行状態に配設された前記自転回転軸は夫々同一方向に回転するように構成し、この回転基体の前後両端部夫々に左右両側面から突出状態に設けられる前記各自転回転軸夫々に前記研磨体を設けて、前記回転基体の中心に設けた公転軸の前後左右に前記各回転研磨体を設け、この各回転研磨体が、前記回転基体の回転に伴って前記公転軸を中心に公転回転した際に各自転回転軸の軸方向の速度成分が生ずるように、各自転回転軸の軸方向と前記公転軸の軸方向とが交差せず直交状態となる位置関係となるように設定して、前記公転回転する複数の前記回転研磨体で前記加工材を多方向から研磨し得るように各回転研磨体を前記回転基体に配設した構成としたことを特徴とする研磨装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2012-02-15 |
出願番号 | 特願2008-187613(P2008-187613) |
審決分類 |
P
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113・
121-
YA
(B24B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橋本 卓行 |
特許庁審判長 |
千葉 成就 |
特許庁審判官 |
菅澤 洋二 藤井 眞吾 |
登録日 | 2010-11-26 |
登録番号 | 特許第4634491号(P4634491) |
発明の名称 | 研磨装置 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |
代理人 | 吉井 雅栄 |
代理人 | 吉井 剛 |
代理人 | 吉井 雅栄 |
代理人 | 吉井 剛 |