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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1260029
審判番号 不服2010-28875  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-21 
確定日 2012-07-11 
事件の表示 特願2004-549758「微粒子除去装置の浄化方法およびその方法を利用する車両」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月21日国際公開、WO2004/042206、平成18年 2月16日国内公表、特表2006-505738〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、2003年10月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年11月5日、スウェーデン)を国際出願日とする出願であって、平成17年4月26日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出され、同日付けで特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出され、平成17年5月12日付けで手続補正書が提出され、平成21年2月6日付けで拒絶理由が通知され、平成21年7月10日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成21年8月25日付けで再度拒絶理由が通知され、平成21年11月30日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成22年1月22日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成22年7月15日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年8月12日付けで上記平成22年7月15日付け手続補正が却下され、同日付けで拒絶査定がなされ、平成22年12月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に同日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、さらに、当審において平成23年7月11日付けで書面による審尋がなされ、平成24年1月12日付けで回答書が提出されたものである。

そして、平成22年12月21日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、本件補正により補正される前の(すなわち、平成21年11月30日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1及び5において、明りょうでない記載の釈明をする補正であり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的として適法になされたものであって、その請求項1ないし9に係る発明は、平成17年4月26日付け国際出願翻訳文提出書に記載された明細書及び図面並びに平成22年12月21日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「 【請求項1】
排気ダクトを通過する排気流量を制御するために調節可能な排気圧制御装置(20)の下流に位置する微粒子除去装置であって、内燃機関(2)に接続した排気ダクト(10)中の触媒ユニット(16)に熱的に接近して配置される微粒子除去装置(15)の再生方法において、
制御ユニット(24)により内燃機関が低エンジン負荷で運転されていることを確かめ、
微粒子除去装置(15)の排気ガス温度が低くとも250℃に下がったときに、
排気圧を所定の圧力に制御する排気圧制御装置(20)を始動し、
噴射ユニットにより排気ダクト(10)に燃料を供給して、前記触媒ユニット(16)が前記燃料に曝され、燃料が酸化され、すす微粒子が前記排気流に含まれる酸素と反応して二酸化炭素に変換されるような温度に微粒子除去装置(15)が加熱されることを特徴とする再生方法。」

2.引用文献1及び2に記載された発明
2-1.引用文献1に記載された発明
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された特開2002-242732号公報(平成14年8月28日公開。以下、「引用文献1」という。)には、次のような記載がある。

(ア)「【0002】
【従来の技術】内燃機関、特にディーゼル機関から排出される排気微粒子(パティキュレート)の大気中への放出を防止するため、排気通路にセラッミク製等のフィルタを設けて、フィルタを通過する排気中のパティキュレートを捕集する排気浄化装置が知られている。
【0003】この種の排気浄化装置では、フィルタにパティキュレートが堆積することにより排気圧力損失が上昇して機関性能が低下するため、フィルタに捕集されたパティキュレートを定期的に燃焼させてフィルタを再生する必要がある。しかし、ディーゼル機関では、全負荷に近い高回転高負荷領域を除き、排気温度がパティキュレートの燃焼可能温度よりも低く、パティキュレートが自然着火しないため、何らかの補助手段を用いたフィルタ再生操作が必要となる。
【0004】このようなフィルタ再生操作を行うものとして、例えば特開2000-179326号公報に記載されたものがある。このものは、主燃料噴射と、排気温度を上昇させるため主燃料噴射以降の膨張行程中に燃料を噴射する膨張行程噴射と、を行う燃料噴射手段とを備えた上で、膨張行程噴射による機関出力(トルク)の増加を排気絞り操作による排気圧力損失の増加により抑制することで、トルク変動を抑制しつつ、排気温度を短時間で目標温度に制御し、フィルタ再生処理を完了させようとするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来のものでは、排気流量が少なく、排気絞り操作による損失増加(すなわち、排気圧力損失増加によるトルク変動抑制効果)が期待できない低回転低負荷領域においては、膨張行程噴射量を大きく設定することができず、排気温度の目標温度へと上昇させること(フィルタ再生処理)ができないといった問題があった。
【0006】本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、運転状態に制限されることなく、短時間で排気温度を目標温度に制御して、フィルタの再生処理を行うことを目的とする。」(段落【0002】ないし【0006】)

(イ)「【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について説明する。本発明を適用したディーゼルエンジンを図1に示す。図1において、ディーゼルエンジン1は、燃料をサプライポンプ(図示省略)で加圧してコモンレール2に供給することによりコモンレール2内を高圧にし、それに接続される電磁式の燃料噴射弁(インジェクタ)3から燃料を噴射するコモンレール式燃料噴射システムを採用している。
【0023】インジェクタ3は、エンジンコントロールユニット(ECU)20からの信号によって、その内部の電磁弁(図示省略)を開閉することによる燃料の圧力バランスにより針弁(図示省略)が上下して、運転状態に応じた量の燃料を噴射供給する。また、エンジン1にはターボチャージャ4が設けられており、吸気通路5が該ターボチャージャ4の吸気吐出口に接続され、排気通路6が該ターボチャージャ4の排気出口に接続されている。
【0024】吸気通路5にはターボチャージャ4で過給された吸気を冷却するインタークーラ7、コレクタ8及び吸気流量を調整する吸気絞り弁9が設けられている。そして、冷却され、流量が絞られた吸気は、コレクタ9を介してシリンダ内に吸入される。排気通路6には排気流量を調整する排気絞り弁10、酸化触媒11、排気微粒子(パティキュレート)を捕集するフィルタ12及びフィルタ12に流入する排気温度を検出する排温センサ13が設けられている。
【0025】ECU20は、入力されるエンジン回転速度、アクセル開度信号、排温信号等の運転状態を示す各種信号21に基づいて、燃料噴射圧力、燃料噴射時期、燃料噴射量及び吸気絞り弁8開度等の制御量を演算して制御信号22を出力し、前記インジェクタ3、吸気絞り弁9、排気絞り弁10等を制御する。また、ECU20は、フィルタ11の上流側、下流側に配設された圧力センサ(図示省略)からの出力を検出し、その差圧によりフィルタ11に堆積したパティキュレート量を推定してフィルタ11の再生時期を判断すると共に、パティキュレートの燃焼状態(パティキュレート量の減少状態)を推定してフィルタ11の再生完了を判断するが、運転状態と運転時間に基づいてフィルタ11の再生時期を判断すると共に、パティキュレートの燃焼時間に基づいてフィルタ11の再生完了を判断するようにしてもよい。
【0026】次に、ECU20によるフィルタ再生制御(第1実施形態)を図2に示すフローチャートに基づいて説明する。ステップ1(図中S1と記す。以下同様)では、各センサにより検出されたエンジン回転速度Ne、アクセル開度Acc、排気温度Texhを読込む。ステップ2では、エンジン回転速度Ne、アクセル開度Accに基づいて燃料の要求噴射量Qを設定する。ここで、該要求噴射量Qは、運転者の要求するトルクを実現する燃料噴射量である。
【0027】ステップ3では、フィルタの再生時期であるか否かを判断する。再生時期でない場合は、ステップ13に進み、要求噴射量Qを主噴射(メイン噴射)による燃料噴射量(メイン噴射量)Qmとする。一方、再生時期である場合には、ステップ4に進む。ステップ4では、吸気絞り弁8の開度(吸気絞り弁開度)Athを設定する。
【0028】この吸気絞り弁開度Athの設定は、図3に示すようなマップを参照することにより、前記要求噴射量Qとエンジン回転速度Neとに基づいて行う。ここで、図3に示すように、吸気量が少ない低回転低負荷領域においては、吸気絞りを行うことによる効果が小さい上に、絞り操作により排気中の酸素量が減少してパティキュレートの燃焼速度が低下してしまうため、吸気絞り弁開度Athを0%に設定してある。
【0029】ステップ5では、排気温度Texhと第1目標温度T1とを比較する。ここで、第1目標温度T1はフィルタに堆積したパティキュレートの着火が開始する温度あり、本実施形態では650℃としてある。排気温度Texhが第1目標温度以上であれば、ステップ6に進み、FLAGを0(初期値)から1に切り換えた後、ステップ7に進む。一方、排気温度Texhが第1目標温度T1未満であれば、FLAG=0のままステップ7に進む。
【0030】ステップ7では、FLAGが0であるか否かを判断する。FLAG=0の場合、すなわち、排気温度Texhが第1目標温度T1に達していない場合は、ステップ8に進む。ステップ8では、排気温度Texhを第1目標温度T1に上昇させるように膨張行程噴射量(ポスト噴射量)Qp1及び主噴射量(メイン噴射量)Qmを設定する。
【0031】ここで、ポスト噴射量Qp1は、図4に示すようなマップを参照することにより設定され、低回転側、低負荷(すなわち、要求噴射量Qが小さい)側ほど大きくなるように設定される。一方、メイン噴射量Qmは、図5に示すマップを参照することにより、エンジン回転速度Ne、要求噴射量Qに基づいて設定される。なお、該メイン噴射量Qmは前記要求噴射量Qをポスト噴射量Qp1に応じて減少して設定されるものであり、図5に示すように、低回転低負荷側(すなわち、ポスト噴射量Qp1が大きくなる)ほど小さくなるように設定される。
【0032】また、本実施形態では、図6に示すように、低回転低負荷領域においてメイン噴射量Qmがポスト噴射量Qp1よりも小さくなるよう設定している。ステップ7に戻って、FLAG=1であれば、排気温度T1がすでに第1目標温度T1に達しているので、ステップ9に進む。ステップ9では、ポスト噴射量を制御して、排気温度Texhが第2目標温度T2を維持するポスト噴射量Qp2を算出し、メイン噴射量Qmを設定する。
【0033】具体的には、式(1)に示すように、第2目標温度T2に対する排気温度Texhの偏差に応じて前回のポスト噴射量Qp(OLD)を修正して今回のポスト噴射量Qp2を算出する。
Qp2=Qp(OLD)+(T2-Texh)/T2×△Q … (1)
但し、△Qは所定の噴射量刻み幅である。
【0034】ここで、前記第2目標温度T2は着火したパティキュレートの燃焼を維持できる温度であり、本実施形態では450℃としてある。また、メイン噴射量Qmは前記マップ(図5)を参照して設定される。但し、算出されたポスト噴射量Qp2の減少に応じてメイン噴射量Qmを増大して設定するようにしてもよい。
【0035】ステップ10では、図7に示すテーブルを参照し、ポスト噴射量Qp(Qp1又はQp2)に基づいてポスト噴射時期ITpostを設定する。ここで、図7に示すように、該ポスト噴射時期ITpostはポスト噴射量Qpが大きいほど遅角させ、機関出力(トルク)の変動を抑制している。なお、通常はメイン噴射時期ITmainを上死点後約0?10°に、ポスト噴射時期ITpostを上死点後30°以降に設定する。
【0036】そして、以上のようにして設定された主噴射量Qm、ポスト噴射量Qp及びポスト噴射時期ITpostにより燃料を噴射することにより、排気温度を目標の温度へと制御して短時間でフィルタの再生処理を行う。ステップ11では、フィルタ再生が完了、すなわち、フィルタに堆積したパティキュレートの燃焼が完了したか否かを判断する。フィルタ再生が完了していれば、ステップ12に進み、前記ポスト噴射及び吸気絞りの設定を解除し、初期化(FLAG=0)する。
【0037】フィルタ再生が完了していなければ、ステップ4に戻り、再度フィルタ再生処理を行う。以上のように、排気温度を上昇させるためにポスト噴射を行う場合に、ポスト量に応じてメイン噴射量を減少して設定することにより、トルク変動を抑制できる。このため、運転状態に制限されることなく、短時間で目標の排気温度へと制御してフィルタを再生できる。
【0038】特に低回転低負荷領域においては、ポスト噴射量Qpをメイン噴射量Qmよりも大きく設定するので、フィルタ再生に必要な温度へと短時間で上昇させることができ、また、吸気絞りを禁止することで、排気中の酸素量の減少を防止してパティキュレートの燃焼速度を維持し、短時間でフィルタ再生処理を完了することができる。
【0039】更に、パティキュレートの着火開始温度まで排気温度を上昇させた後は、パティキュレートの燃焼が維持できる排気温度へと制御するので、余分な燃料噴射による燃費悪化及びHC、CO等の排出を抑制できる。なお、上記実施形態では、中回転中負荷領域において吸気絞りを行うこととしているが、吸気絞りに代えて排気絞りを行うようにしてもよく、また、吸気絞りと排気絞りとを併用するようにしてもよい。これらによっても、トルク変動を抑制しつつ、中回転中負荷領域におけるフィルタ再生を効率的に行うことができると共に、低回転低負荷領域では、絞り動作を禁止することで、排気中の酸素量の減少によるパティキュレートの燃焼速度の低下を防止できる。
【0040】次に、フィルタ再生中に機関の負荷が減少したときの制御を図8に示すフローチャートに基づいて説明する。ステップ21からステップ23までは、前記第1実施形態のステップ1から3までと同様であり、エンジン回転速度Ne、アクセル開度Acc、排気温度Texhを読込んで、燃料の要求噴射量Qを設定し、フィルタ再生時期であるか否かを判断する。
【0041】フィルタ再生時期でなければ、ステップ30に進み、要求噴射量Qを主噴射によるメイン噴射量Qmとする。一方、再生時期であれば、ステップ24に進み、メイン噴射量Qmを図5、ポスト噴射量Qpを図4、ポスト噴射時期ITpostを図7から参照して設定する。
【0042】ステップ25では、ポスト噴射量Qpとメイン噴射量Qmとを比較する。ポスト噴射量Qpがメイン噴射量Qmよりも大きい場合は、ステップ26に進み、ポスト噴射量Qpがメイン噴射量Qm以下であれば、本制御を終了する。ステップ26では、エンジンの負荷状態を判断する。エンジン負荷が減少した場合(例えばDレンジからNレンジへ変更した場合やエアコンをOFFした場合)は、ステップ27に進み、エンジン負荷が減少していない場合は、本制御を終了する。
【0043】ステップ27では、排気温度Texhが酸化触媒活性化温度TCAを超えているか否かを判断する。排気温度Texhが酸化触媒活性化温度TCAを超えている場合、すなわち、触媒が活性化している場合は、ステップ28に進み、ポスト噴射時期ITpostを遅角させる。排気温度Texhが酸化触媒温度TCA以下の場合は、ステップ29に進み、ポスト噴射量Qpを減量する。
【0044】以上のように、フィルタ再生中に機関の負荷が減少してトルクを減じる場合、酸化触媒の活性化状態によりその制御方法を選択することにより、HC、CO等の不完全燃焼成分の排出を抑制しつつ、可能な限りフィルタの再生処理を行うことができる。」(段落【0022】ないし【0044】)

(2)引用文献1記載の事項
上記(1)(ア)及び(イ)並びに図面の記載から、以下の事項がわかる。

(ウ)排気通路6において、酸化触媒11は、フィルタ12の上流に近接して配置されているから、
フィルタ12は、酸化触媒11に熱的に接近して配置されていることがわかる。

(エ)インジェクタ3により排気通路6に燃料を供給して、酸化触媒11に熱的に接近して配置されたフィルタ12が加熱され再生されることから、
酸化触媒11が燃料に曝され、燃料が酸化され、排気微粒子(パティキュレート)が排気流に含まれる酸素と反応して二酸化炭素に変換されるような温度にフィルタ12が加熱され再生されることがわかる。

(3)引用発明1
以上、上記(1)(ア)及び(イ)、(2)(ウ)及び(エ)並びに図面を参酌すると、引用文献1には以下の発明が記載されているといえる。

「ディーゼルエンジン1に接続した排気通路6中の酸化触媒11に熱的に接近して配置されるフィルタ12の再生方法において、
ECU20によりディーゼルエンジン1が低負荷で運転されていることを確かめ、
フィルタ12の排気温度が低くとも650℃に下がったときに、
インジェクタ3により排気通路6に燃料を供給して、前記酸化触媒11が前記燃料に曝され、燃料が酸化され、排気微粒子(パティキュレート)が前記排気流に含まれる酸素と反応して二酸化炭素に変換されるような温度にフィルタ12が加熱される再生方法。」(以下、「引用発明1」という。)

2-2.引用文献2に記載された発明
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された特開昭63-57811号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次のような記載がある。

(ア)「(実施例)
第1図および第2図を参照するに、エンジンからの排気ガスに含まれる異物粒子を捕捉する粒子トラツプ再生システムが示されており、本粒子トラツプ再生システムには複数の燃焼シリンダを有しクランクシヤフトを回動するデイーゼル駆動による内燃機関等のエンジン(12)が包有される。また本発明による粒子トラツプ再生システムにはターボチヤージヤ(20)が採用されているが、ターボチヤージヤ(20)を用いない、いわゆる非過給方式のエンジンにも適用可能である。エンジン(12)には吸気マニホルド(16)が具備され、本実施例では過給気がターボチヤージヤ(20)のコンプレツサ(18)により当該吸気マニホルド(16)を介してエンジンに供給される。即ちコンプレツサ側により外気がエアフイルタ(22)を介し導入され、コンプレツサ(18)の羽根車を経て空気が圧縮され、この圧縮空気が吸気マニホルド(16)を介しエンジン(12)へ供給されて燃焼が行なわれることになる。
一方、燃焼により生じた排気ガスはエンジン(12)から排気マニホルド(28)を介しターボチヤージヤ(20)のタービン(24)へ供給される。この高温の排気ガスによりタービン(24)のハウジング内のタービンホイール(図示せず)が比較的高速で(最高190,000RPM)回動され、タービンホイールおよびコンプレツサの羽根車はターボチヤージヤの中央ハウジング内に支承された共通のシヤフトに同時に回転可能に装着されていて、これによりコンプレツサ(18)のハウジング内の羽根車が連動される。排気ガスはタービンホイールに作用した後、ターボチヤージヤ(20)から排気ガス用の出口部(30)、出口部(30)と連通される、排気ガス内の粒子捕捉用の粒子トラツプ(32)および騒音抑制装置を経て放出される。また出口部(30)内には背圧弁(34)が配設されている。
この場合粒子トラツプ再生システムには、一部上記の如く排気ガス内の粒子を捕捉する粒子トラツプ(32)と、好ましくは粒子トラツプ(32)の上流に配設される背圧弁(34)と、背圧弁(34)を電子制御する作動器(36)と、エンジン作動パラメータを入力し作動器(36)を介し背圧弁(34)を制御するマイクロプロセツサ(38)とが包有される。前記の背圧弁(34)はターボチヤージヤ(20)の上流あるいは粒子トラツプ(32)の下流に配設することもできる。
粒子トラツプ(32)の材料および構成は排気ガス流を過度に制限することなく排気ガス内から多量の粒子を好適に捕捉しうるように設定される。且つ粒子トラツプ(32)は捕捉した粒子の焼却中に必要な高温に耐え得るように作成する必要がある。またターボチヤージヤ(20)を併設したエンジン(12)に対し本粒子トラツプ再生システムを採用する場合、粒子トラツプ(32)は排気ガスの高温を保持するため出来る限りターポチヤージヤ(20)の下流に接近して配設する必要がある。且つまたエンジン性能への影響を最小限に押えるため粒子トラツプ(32)による圧力降下は出来る限り低減せしめる必要がある。」(第4ページ左下欄第14行ないし第5ページ右上欄第8行)

(イ)「 粒子トラツプを再生モードにする時点を決定する基本的な方法は、粒子トラツプ間の圧力降下を検出することである。このとき検出された圧力降下が第4図に示される部分負荷下の粒子トラツプ圧力降下に相当する値を越えると、制御装置により再生モードが開始されることになる。再生モードは、粒子トラツプ(32)内の粒子が実質的に全て酸化されるまで続行される。再生モードを所定時間、続行することにより粒子の酸化が簡単且つ充分に達成され得る。
部分負荷下の粒子トラツプにおける圧力降下はエンジンの負荷および速度に応じて変化する。このとき部分負荷下の粒子トラツプの圧力降下とラツク位置、燃料および速度(rpm)との関係を示すマツプは各エンジンシステムおよび排気システムに対し作成する必要がある。第4図に代表的エンジンのマツプを例示してある。
各マツプはテストを実際に行なつて作成することが最適であるが、分析装置により近似的に得ることもできよう。次にマツプはマイクロプロセツサ(38)のメモリ内に記憶される。圧力降下が所定の負荷および速度に対応する記憶したマツプ上の値を越えると、再生モードが開始される。また制動力をかけたい場合は自動車のハンドルの近傍に装着されるドライバ用レバーから信号(84)が送出されることにより、背圧弁(34)が閉じられ得る。
再生モード中、制御装置を介し背圧弁(34)を調整して粒子トラツプの導入ガス温度を実質的に一定に維持する必要がある。この一定導入ガス温度は触媒を用いない粒子トラツプの場合、約1100°F?1200°F(約650°C)に、また触媒を用いる粒子トラツプの場合約750°F?850°F(約400ないし450°C)にする。排気ガス温度を制御する最直接的な方法は、温度センサ(70)において排気ガス温度を検出し、排気ガス温度が所望の温度より低いとき、背圧弁(34)を増分的に閉鎖し、また所望の温度を越えるときには、背圧弁(34)を開放することである。制御パラメータとして温度を用いるとき、背圧弁(34)が過度に変位し、排気ガス温度が上昇し過ぎて粒子トラツプが損傷され、エンジンの排気放出あるいは性能に悪影響が生じることを防止するため、システムの全構成部品を力学的に高精度に合致するように作成することが好ましい。」(第6ページ右上欄第4行ないし右下欄第6行)

(2)引用文献2記載の事項
上記(1)(ア)及び(イ)並びに図面の記載から、以下の事項がわかる。

(ウ)排気圧を所定の圧力に制御する背圧弁34を調整し、粒子トラツプ32が加熱状態で再生されることから、
粒子が排気流に含まれる酸素と反応して二酸化炭素に変換されるような温度に粒子トラツプ32が加熱され再生されることがわかる。

(3)引用発明2
以上、上記(1)(ア)及び(イ)、(2)(ウ)並びに図面を参酌すると、引用文献2には以下の発明が記載されているといえる。

「排気ガス用の出口部30を通過する排気流量を制御するために調節可能な背圧弁34の下流に位置する粒子トラツプ32の再生方法において、
マイクロプロセツサ38によりエンジン12が部分負荷で運転されていることを確かめ、
粒子トラツプ32の排気ガス温度が下がったときに、
排気圧を所定の圧力に制御する背圧弁34を調整し、
粒子が排気流に含まれる酸素と反応して二酸化炭素に変換されるような温度に粒子トラツプ32が加熱される再生方法。」(以下、「引用発明2」という。)

3.対比
本願発明と引用発明1を対比すると、引用発明1における「ディーゼルエンジン1」は、その機能及び構成からみて、本願発明における「内燃機関(2)」に相当し、以下同様に、「排気通路6」は「排気ダクト(10)」に、「酸化触媒11」は「触媒ユニット(16)」に、「フィルタ12」は「微粒子除去装置(15)」に、「ECU20」は「制御ユニット(24)」に、「低負荷」は「低エンジン負荷」に、「排気温度」は「排気ガス温度」に、「インジェクタ3」は「噴射ユニット」に、「燃料」は「燃料」に、「排気微粒子(パティキュレート)」は「すす微粒子」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「内燃機関に接続した排気ダクト中の触媒ユニットに熱的に接近して配置される微粒子除去装置の再生方法において、
制御ユニットにより内燃機関が低エンジン負荷で運転されていることを確かめ、
微粒子除去装置の排気ガス温度が下がったときに、
噴射ユニットにより排気ダクトに燃料を供給して、前記触媒ユニットが前記燃料に曝され、燃料が酸化され、すす微粒子が前記排気流に含まれる酸素と反応して二酸化炭素に変換されるような温度に微粒子除去装置が加熱される再生方法。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
(1)本願発明においては、微粒子除去装置の上流に、排気ダクトを通過する排気流量を制御するために調節可能な排気圧制御装置を有し、内燃機関が低エンジン負荷で運転され、排気ガス温度が下がったときに、排気圧を所定の圧力に制御する排気圧制御装置を始動するのに対し、引用発明1においては、内燃機関が低エンジン負荷で運転されている場合に始動する排気圧制御装置を有しない点(以下、「相違点1」という。)。

(2)本願発明においては、微粒子除去装置の排気ガス温度が低くとも250℃に下がったときに、噴射ユニットにより排気ダクトに燃料を供給するのに対し、引用発明1においては、微粒子除去装置の排気ガス温度が低くとも650℃に下がったときに、噴射ユニットにより排気ダクトに燃料を供給する点(以下、「相違点2」という。)。

4.判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
本願発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2における「排気ガス用の出口部30」は、その機能及び構成からみて、本願発明における「排気ダクト」に相当し、以下同様に、「背圧弁34」は「排気圧制御装置(20)」に、「粒子トラツプ32」は「微粒子除去装置(15)」に、「マイクロプロセツサ38」は「制御ユニット(24)」に、「エンジン12」は「内燃機関」に、「部分負荷」は「低エンジン負荷」に、「調整」は「始動」に、「粒子」は「すす微粒子」に、それぞれ相当する。

したがって、引用発明2を本願発明の用語を用いて表現すると、
「排気ダクトを通過する排気流量を制御するために調節可能な排気圧制御装置の下流に位置する微粒子除去装置の再生方法において、
制御ユニットにより内燃機関が低エンジン負荷で運転されていることを確かめ、
微粒子除去装置の排気ガス温度が下がったときに、
排気圧を所定の圧力に制御する排気圧制御装置を始動し、
すす微粒子が排気流に含まれる酸素と反応して二酸化炭素に変換されるような温度に微粒子除去装置が加熱される再生方法。」といえる。

引用発明1と引用発明2は、いずれも微粒子除去装置の再生方法という同一の技術分野に属しており、且つ微粒子除去装置の再生を効果的に行うという同一の課題を有しているので、引用発明1において、引用発明2を適用して、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。

(2)相違点2について
触媒ユニットに熱的に接近して配置された微粒子除去装置の再生において、排気ガス温度が250℃近傍の温度以上において触媒反応を利用した微粒子除去装置の再生が行われることは周知の技術(例えば、特開平5-44434号公報(特に、段落【0017】ないし【0019】等を参照のこと。)や、特開平4-47115号公報(特に、第5ページ左下欄第14行ないし右上欄第8行及び第6(b)図等を参照のこと。)等を参照のこと。以下、「周知技術」という。)であることを参酌すれば、引用発明1において、上記周知技術を適用し、前記250℃近傍の温度のうち250℃を設定して、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。

また、本願発明を全体としてみても、引用発明1及び2並びに周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するとも認められない。
以上から、本願発明は、引用発明1及び2並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-07 
結審通知日 2012-02-14 
審決日 2012-02-29 
出願番号 特願2004-549758(P2004-549758)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二之湯 正俊  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 川口 真一
中川 隆司
発明の名称 微粒子除去装置の浄化方法およびその方法を利用する車両  
代理人 清水 英雄  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 溝渕 良一  
代理人 秋庭 英樹  
代理人 中野 佳直  
代理人 高木 祐一  
代理人 重信 和男  

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