• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更  B32B
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B32B
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  B32B
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  B32B
審判 全部無効 2項進歩性  B32B
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B32B
審判 全部無効 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  B32B
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
管理番号 1260060
審判番号 無効2011-800142  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-08-12 
確定日 2012-07-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第4151821号発明「透明導電性フィルム用表面保護フィルム及び透明導電性フィルム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認めない。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第4151821号の請求項1?3に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、平成14年1月11日に特許出願され、平成20年7月11日にその特許権の設定登録がなされたものである。

以下に、本件審判の請求以後の経緯を整理して示す。

平成23年 8月12日付け 審判請求書及び甲第1号証?甲第7号証の提出
平成23年10月28日付け 審判事件答弁書の提出
平成23年10月28日付け 訂正請求書及び添付した明細書の提出
平成23年12月 8日付け 審判事件弁駁書及び甲第8号証?甲第20号証の提出
平成24年 1月31日付け 証拠提出書及び添付した甲第21号証の提出
平成24年 2月10日付け 口頭審理陳述要領書及び甲第22号証?甲第27号証の提出(請求人より)
平成24年 2月17日付け 口頭審理陳述要領書及び添付資料1,添付資料2の提出(被請求人より)
平成24年 3月 2日付け 口頭審理の実施
平成24年 3月 9日付け 訂正拒絶理由通知
平成24年 4月12日付け 手続補正書及び意見書の提出(被請求人より)
平成24年 4月12日付け 意見書の提出(請求人より)

II.訂正の可否に対する判断
(1)訂正の内容
被請求人は、平成23年10月28日に訂正請求書を提出して訂正を求めた。
当該訂正の内容は、本件特許発明の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。
すなわち、
(a)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、「前記表面保護フィルムは基材フィルムの片面側に粘着剤層が設けられており」とあるのを、「前記表面保護フィルムは基材フィルムの片面側に粘着剤層が設けられており、前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤から形成され」と訂正する。
(b)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1について、「前記表面保護フィルムを粘着剤層と被着面の間で剥離する際の、引張速度0.3m/分の条件で測定した粘着力、および引張速度10m/分の条件で測定した粘着力が、ともに2.8N/20mm以下であること」とあるのを、「前記表面保護フィルムを粘着剤層と被着面の間で剥離する際の、引張速度0.3m/分の条件で測定した粘着力、および引張速度10m/分の条件で測定した粘着力が、ともに2.8N/20mm以下であり、前記被着面が、ハードコート面であること」と訂正する。
(c)訂正事項3
上述した訂正事項1による特許請求の範囲の請求項1についての訂正に伴い、明細書段落番号【0008】の「前記表面保護フィルムは基材フィルムの片面側に粘着剤層が設けられており」とあるのを、「前記表面保護フィルムは基材フィルムの片面側に粘着剤層が設けられており、前記粘着剤層が、アクリル系粘着剤から形成され」と訂正し、上述した訂正事項2による特許請求の範囲の請求項1についての訂正に伴い、明細書段落番号【0008】の「前記表面保護フィルムを粘着剤層と被着面の間で剥離する際の、引張速度0.3m/分の条件で測定した粘着力、および引張速度10m/分の条件で測定した粘着力が、ともに2.8N/20mm以下であること」とあるのを、「前記表面保護フィルムを粘着剤層と被着面の間で剥離する際の、引張速度0.3m/分の条件で測定した粘着力、および引張速度10m/分の条件で測定した粘着力が、ともに2.8N/20mm以下であり、前記被着面が、ハードコート面であること」と訂正する。
(d)訂正事項4
上述した訂正事項1による特許請求の範囲の請求項1についての訂正に伴い、明細書段落番号【0018】の「粘着剤層1bを形成する粘着剤としては、前述の粘着力の粘着剤層を形成することのできる再剥離用粘着剤(アクリル系、ゴム系、合成ゴム系等)を特に制限なく使用できる。なかでも組成により粘着力をコントロールし易いアクリル系粘着剤が好ましい。前記粘着力の粘着剤層とするには粘着剤層は高密度に架橋されていることが好ましい。」とあるのを「粘着剤層1bを形成する粘着剤としては、前述の粘着力の粘着剤層を形成することのできる再剥離用粘着剤(アクリル系)を特に制限なく使用でき、組成により粘着力をコントロールし易いアクリル系粘着剤が用いられる。前記粘着力の粘着剤層とするには粘着剤層は高密度に架橋されていることが好ましい。」と訂正する。

(2)訂正拒絶理由通知の内容
当審では、平成24年3月9日付けで、
「訂正後の請求項1記載の特許発明においての「ハードコート面」という用語は、段落番号【0046】【0047】の評価試験においてのみ使用されているのであるから、「前記被着面が、ハードコート面であること」という特定を追加する訂正の前後において、「被着面」の技術的意味が、「実際の使用時の被着面」から「実際の使用時の被着面とは別の評価のための被着面」に変更されており、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえず、実質上特許請求の範囲を変更するものである。 」
「「ハードコート面」という用語のみを取り出して用いているため、表面保護フィルムの使用対象被着面は何ら限定されていないし、粘着力範囲自体も減縮されているとはいえず、使用対象の限定として明細書に記載された「ハードコート層」とも異なる用語を用いているため、発明の範囲が不明確になっている。
したがって、訂正前明確であった特定を不明確な特定にしたのであるから、明りようでない記載の釈明、誤記の訂正を目的とするものともいえない。」
「種々の透明導電性フィルムのハードコート面を評価に用いた場合を含む粘着力範囲を規定しているとすれば、新たな技術的事項を導入するものとなり、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内とはいえない。」
「本件訂正は、特許請求の範囲の減縮、明りようでない記載の釈明、誤記又は誤訳の訂正を目的とするとはいえず、実質上特許請求の範囲を拡張変更するもの又は願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内といえず、特許法第134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とせず、第5項において読み替えて準用される特許法第126条第3項又は第4項の規定にも適合しないので、拒絶すべきものである。 」
との訂正拒絶理由通知を通知した。

(3)被請求人の手続補正書及び意見書の内容
被請求人は、平成24年4月12日付け意見書で、訂正請求時に行った訂正事項の内、「前記被着面が、ハードコート面である」とする訂正事項を削除する補正をし、前記補正は、訂正事項の削除に該当し、微修正であるので容認されるべき旨主張し、平成24年4月12日付け手続補正書では、補正の内容として、明細書のみが記載されている。

(4)当審の判断
訂正請求書の補正について検討すると、訂正請求書において、請求項1に係る訂正事項は、一体的に訂正の可否を判断すべきであり、訂正前の請求項1に係る発明を訂正後の請求項1に係る発明のように訂正する趣旨であった訂正請求書の要旨は、各特定事項が技術的相互関係を有しているから、請求項1に係る訂正事項の一部を削除する補正によって、その要旨は実質的に変更されるものといえ、前記補正は、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第131条の2第1項に規定する要件を満たさず、許容されるものではない。
したがって、平成23年10月28日付けの訂正は、特許請求の範囲の減縮、明りようでない記載の釈明、誤記又は誤訳の訂正を目的とするとはいえず、実質上特許請求の範囲を拡張変更するものであり、又は願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内といえず、上記拒絶の理由を解消しておらず、特許法第134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とせず、第5項において読み替えて準用される特許法第126条第3項又は第4項の規定にも適合しないので、当該訂正は認めない。

III. 本件特許発明に対する判断
(1)本件特許発明
II.に記載のとおり、平成23年10月28日付けの訂正は認められないので、本件の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明3」という。)は、特許された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】?【請求項3】に記載された事項に特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
透明導電性フィルムの導電性薄膜とは反対側の表面を保護し、剥離することができるフィルムであって、前記表面保護フィルムは基材フィルムの片面側に粘着剤層が設けられており、当該粘着剤層を被着面に貼り合せた状態で150℃で1時間加熱した後に、前記表面保護フィルムを粘着剤層と被着面の間で剥離する際の、引張速度0.3m/分の条件で測定した粘着力、および引張速度10m/分の条件で測定した粘着力が、ともに2.8N/20mm以下であることを特徴とする透明導電性フィルム用表面保護フィルム。
【請求項2】
基材フィルムの片面側に導電性薄膜を他面側にハードコート層又はアンチグレア層を備えると共に、請求項1記載の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの粘着剤層を、前記ハードコート層又は前記アンチグレア層の表面に貼着してなる透明導電性フィルム。
【請求項3】
基材フィルムの片面側に導電性薄膜を備えると共に、請求項1記載の透明導電性フィルム用表面保護フィルムの粘着剤層を、基材フィルムの他面側の表面に貼着してなる透明導電性フィルム。」

IV.当事者の主張及び証拠方法
(1)請求人の主張及び証拠方法
請求人は、審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書において、証拠方法として、下記の甲第1号証?甲第27号証を提出し、「特許第4151821号発明の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、無効理由の概要は以下のA,B,Cであると主張している。

A.本件発明1?3は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証、甲第3号証ないし甲第20号証及び甲第22号証ないし甲第26号証に記載された事項に基いて、当業者がその出願前に容易に発明をすることができものであるから、本件発明1?3の本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである(以下、「無効理由A」という。)。
B.本件特許出願は、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載されておらず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないため、本件特許は、特許法第123条第1項第4項に該当し、無効とすべきである(以下、「無効理由B」という。)。
C.本件特許出願は、発明の詳細な説明に当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである(以下、「無効理由C」という。)。


甲第1号証:特開2001-332132号公報
甲第2号証:特開2001-262088号公報
甲第3号証:特開平7-68690号公報
甲第4号証:特開平11-268168号公報
甲第5号証:特開平10-208555号公報
甲第6号証:特開平11-320744号公報
甲第7号証:特開2001-55549号公報
甲第8号証:特開平7-13695号公報
甲第9号証:特開平8-244186号公報
甲第10号証:特開平8-244187号公報
甲第11号証:特開平10-275525号公報
甲第12号証:特開平11-320745号公報
甲第13号証:特開平11-95925号公報
甲第14号証:特開2000-214330号公報
甲第15号証:特開2001-216842号公報
甲第16号証:特開2001-229736号公報
甲第17号証:特開2001-247832号公報
甲第18号証:特開2001-115106号公報
甲第19号証:特開2001-19915号公報
甲第20号証:特開平10-330700号公報
甲第22号証:特開平5-163468号公報
甲第23号証:特開平11-256111号公報
甲第24号証:特開2001-33776号公報
甲第25号証:特開平2-276630号公報
甲第26号証:特公平3-15536号公報
甲第21号証:特許第4151821号公報(本件特許の内容を示す)
甲第27号証:日本粘着テープ工業会粘着ハンドブック編集委員会編「粘着ハンドブック(第2版)」(1995年10月12日)日本粘着テープ工業会発行 第26?29頁(無効理由Bの説明のための周知技術)

(2)被請求人の主張
被請求人は、請求人が弁駁書、口頭審理陳述要領書において、新たに多数の特許公報に記載された内容を組み合わせることによる無効理由Aを主張していることが審判請求書の請求の理由の要旨変更であることを指摘するとともに、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書において、「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする」との審決を求め、上記請求人の主張に対し、本件特許を無効とすべき理由はない旨の主張をしている。

なお、当事者間に甲第1号証ないし甲第27号証の成立については争いがない。

V.証拠の記載事項
1.請求人の提示した甲第1?7号証の記載事項
(1)甲第1号証(特開2001-332132号公報)
(1a)「【請求項1】プラスチックからなる透明フィルムの一方の面に透明導電膜を形成し、透明導電膜とは反対側の面に粘着剤を介して保護フィルムを積層した透明導電性フィルムにおいて、上記粘着剤は透明であって、透明フィルムに対する粘着力が8.0N/50mm以上、保護フィルムに対する粘着力が0.1N/50mm以上1.5N/50mm以下であることを特徴とする保護フィルム付き透明導電性フィルム。」
(【特許請求の範囲】【請求項1】)
(1b)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、液晶ディスプレイにしろタッチパネルにしろ、上記透明導電性フィルムが完成品中で独立して存在するわけではなく、通常透明導電膜と反対側の面に波長板や偏光板を積層して用いられる場合が圧倒的に多い。これら波長板や偏光板は、粘着剤によって上記透明基材に密着させられる。密着していなければ空気界面が生じ、それに伴って表面反射が起こって表示コントラストを低下させるからである。従って、上記透明基材に波長板や偏光板を積層する場合、完成品に向かう組み立て工程中に上記保護フィルムを剥がす工程と、透明基材の表面又は波長板もしくは偏光板の表面に粘着剤を塗布する工程とが必要となり、これが工数の増大及びコストの上昇につながっている。それ故、この発明の課題は、波長板や偏光板などの他の基材と重ね合わせられる予定の透明導電性フィルムを、高い品質を維持しながら工数を減らし低コストで提供することにある。」(【0004】)
(1c)「【0009】
【発明の実施の形態】透明フィルムとしては、パネル形成時の作業性や性能を考慮して厚さが通常3?300μm、好ましくは5?250μm、特に好ましくは10?200μm程度の薄い樹脂フィルムが適用可能である。フィルム材質としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、セルロースアセテート、ポリイミド、ポリノルボルネン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンなどがある。
・・・
【0012】透明フィルムと保護フィルムとを接着する粘着剤としては、透明性を有する適宜のものを適用可能である。タッチパネルに用いる場合は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などのクッション性に優れたものが好ましい。指又は入力ペンによる圧力を吸収するとともに、圧力解除時に入力操作面を元の状態に速やかに復帰させ得るからである。特に1×105?1×107dyn/cm^(2)の弾性係数を有して、厚さが1μm以上就中5?500μmのものが好ましい。粘着剤は、透明フィルムと保護フィルムのいずれか一方に塗布してもよいし、双方に塗布しても良い。
【0013】上記粘着剤のうちアクリル系粘着剤は透明性の点で優れている。その主成分である粘着性ポリマーとしては、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピルなどのアルキル基の炭素数が1?10の(メタ)アクリル酸エステルと、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどの官能基含有不飽和単量体とを主成分として含む単量体混合物の共重合物が好ましく用いられる。また、ゴム系粘着剤の主成分である粘着性ポリマーとしては、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレン系ブロック共重合体、天然ゴムなどが好ましく用いられる。」(【0009】?【0013】)
(1d)「【0017】このフィルムを300mm×500mmの大きさに切断し、150℃の炉内で30分間保持した後、100×50mmの大きさにし、その後に保護フィルムを剥がし、ガラス板に貼り付けた。その際、透明フィルムが折れ曲がったりすることはなく、保護フィルムも粘着剤を伴うことなく容易に剥がれた。また、保護フィルムは、ガラス板に貼り付ける作業時まで剥がれることはなかった。引っ張り試験機にて300mm/分の速度で180°方向に引っ張ることにより粘着力を測定したところ、保護フィルムと粘着剤の界面では0.2N/50mm、透明フィルムとガラス板との界面では14.7N/50mmであった。」(【0017】)

(2)甲第2号証(特開2001-262088号公報)
(2a)「【請求項1】基材上に、フォトレジストの現像剥離のために用いる処理液及び透明導電性薄膜のエッチングのために用いる処理液に対しての耐性を有する粘着剤層を設けたことを特徴とする反射防止膜保護用粘着フィルム。・・・
【請求項13】透明高分子フィルムの一方の面に反射防止膜を有し、他方の面に透明導電性薄膜を有する反射防止フィルムの当該反射防止膜上に、請求項1記載の反射防止膜保護用粘着フィルムを貼付した後、前記透明導電性薄膜の不要部分をフォトエッチング法によりエッチング除去して前記透明導電性薄膜に回路パターンを形成することを特徴とする透明導電性薄膜回路パターン付き反射防止フィルムの製造方法。」(【特許請求の範囲】)
(2b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透明導電性薄膜を有する反射防止フィルムの製造方法に関し、特に透明導電性薄膜の回路パターンを形成する工程で反射防止膜を保護する方法、及びその保護に適した粘着フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、画像表示装置として液晶表示素子が注目され、その用途の一つとして、携帯用の電子手帳、情報端末などへの応用が期待されている。これら携帯用の電子手帳、情報端末などの画面入力装置としては、液晶表示素子の上に透明なタッチパネルを載せたもの、特に価格などの点から抵抗膜方式のタッチパネルを組合せたものが一般に用いられている。
【0003】このような抵抗膜方式タッチパネルの入力表面に用いられるフィルムとしては、透明高分子フィルムの一方の面に耐擦傷性に優れるハードコート層を設け、他方の面に透明導電性薄膜の回路パターンを設けたフィルムが一般に用いられている。
【0004】一方、画面入力装置を伴わない液晶表示装置においては、表面反射による視認性の低下を改善する方法として、表示装置の最表面に反射防止処理を施すことが行われている。
【0005】しかし、これら反射防止処理をタッチパネルのフィルム表面に施すと、反射防止膜が設けられた表面の耐擦傷性が低下して実用上耐え得るものが得られないという理由から、タッチパネルのフィルム表面には施されていないのが実情である。
【0006】そこで近年、反射防止膜の耐擦傷性の改良が試みられ、一部高級機種においては反射防止膜を最終工程で表面処理する方法も行われているが、極めてコスト高になるという理由で現実には余り普及していない。
【0007】また、このような反射防止膜を生産工程の初期段階において連続的に表面処理することで大量生産を可能にし、反射防止処理の低価格化を実現しようとする試みも近年行われている。
【0008】しかし、このような反射防止膜も、やはり耐擦傷性や耐薬品性が十分ではなく、上記のような透明導電性薄膜の回路パターンを形成する工程で、その性能を維持することができないものであった。
【0009】【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、透明導電性薄膜回路パターン付き反射防止フィルムの大量生産による低コスト化を可能とする方法を提供すると共に、当該方法において反射防止膜を保護する際に要求される耐熱性及び耐薬品性、特にフォトエッチング法におけるフォトレジストの現像剥離のために用いる処理液及び透明導電性薄膜のエッチングのために用いる処理液に対する耐薬品性に優れる反射防止膜保護用粘着フィルムを提供することである。」(【0001】?【0009】)
(2c)「【0042】本発明の保護フィルム付き反射防止フィルム2は、本発明の反射防止膜保護用粘着フィルム1によって反射防止膜21が保護されているものである。これによって反射防止膜21は、反射防止膜21が設けられた面の裏面に設けられる透明導電性薄膜回路パターンの形成工程で、フォトレジストの現像剥離のために用いられるアルカリや透明導電性薄膜23のエッチングのために用いられる酸等の処理液から好適に保護されるようになる。」(【0042】)
(2d)
【図1】には、基材と粘着剤層が積層され反射防止膜保護用粘着フィルムが形成されていることが図示され、【図3】には、透明導電性薄膜、透明高分子フィルム、反射防止膜、粘着剤層、基材が積層され保護フィルム付き反射防止フィルムが形成されることが図示されている。

上記摘記事項(2a)には、透明高分子フィルムの一方の面に反射防止膜を有し、他方の面に透明導電性薄膜を有する反射防止フィルムの当該反射防止膜上に、基材上に、フォトレジストの現像剥離のために用いる処理液及び透明導電性薄膜のエッチングのために用いる処理液に対しての耐性を有する粘着剤層を設けた反射防止膜保護用粘着フィルムを貼付した後、前記透明導電性薄膜の不要部分をフォトエッチング法によりエッチング除去して前記透明導電性薄膜に回路パターンを形成する透明導電性薄膜回路パターン付き反射防止フィルムの製造方法が記載されており、上記摘記事項(2b)には、目的及び課題が、反射防止膜が耐擦傷性や耐薬品性が十分ではなく、透明導電性薄膜の回路パターンを形成する工程で、その性能を維持することができないものであったとの課題を解決し、透明導電性薄膜回路パターン付き反射防止フィルムの大量生産による低コスト化を可能とする方法を提供すると共に、当該方法において反射防止膜を保護する際に要求される耐熱性及び耐薬品性、特にフォトエッチング法におけるフォトレジストの現像剥離のために用いる処理液及び透明導電性薄膜のエッチングのために用いる処理液に対する耐薬品性に優れる反射防止膜保護用粘着フィルムを提供することであることが示されており、上記摘記事項(2c)には、本発明の反射防止膜保護用粘着フィルムによって反射防止膜が保護され、反射防止膜は、反射防止膜が設けられた面の裏面に設けられる透明導電性薄膜回路パターンの形成工程で、フォトレジストの現像剥離のために用いられるアルカリや透明導電性薄膜のエッチングのために用いられる酸等の処理液から好適に保護されるという作用効果を生じることが示されており、(2d)には、反射防止膜保護用粘着フィルムが貼付する側に粘着剤層を有していることが図示されているので、上記摘記事項(2a)?(2d)を総合すると、甲第2号証には、

「透明高分子フィルムの一方の面に反射防止膜を有し、他方の面に透明導電性薄膜を有する反射防止フィルムの当該反射防止膜上に、基材上に、フォトレジストの現像剥離のために用いる処理液及び透明導電性薄膜のエッチングのために用いる処理液に対しての耐性を有する粘着剤層を設けた反射防止膜保護用粘着フィルムを貼付した後、前記透明導電性薄膜の不要部分をフォトエッチング法によりエッチング除去して前記透明導電性薄膜に回路パターンを形成する透明導電性薄膜回路パターン付き反射防止フィルム」(以下、「甲第2号証発明」という。)が記載されているといえる。

(3)甲第3号証(特開平7-68690号公報)
(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガラス転移温度が120℃以上である第1のプラスチックフィルム基体に、透明導電性を有する薄膜を積層し、該薄膜が積層されている面の反対面上に、ガラス転移温度が120℃以上で、且つ第1のプラスチックフィルムとの線膨張係数の差が20ppm/℃以内である第2のプラスチックフィルム基体に、熱分解温度が120℃以上で、かつ粘着力が50g/cm以下である粘着材層を設けた保護フィルムを粘着材層を介して貼り合わせたことを特徴とする透明導電性フィルム。」(【請求項1】)
(3b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、加工プロセスで120℃以上の加熱工程を加えても熱による損傷もなく、透明導電性薄膜の形成された面の反対側の面の損傷もないロールプロセスで連続的に加工できる耐熱性透明導電性フィルムを提供することにある。」(【0003】)
(3c)「【0005】ガラス転移温度が120℃以上のプラスチックフィルム2、3としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂からなるフィルムがあげられる。」(【0005】1?5行)

(4)甲第4号証(特開平11-268168号公報)
(4a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 プラスティックフィルムの片面に透明導電膜を設け、該透明導電膜を設けた面とは反対のプラスティックフィルム面に保護フィルムを設けた透明導電膜及び保護フィルム付きプラスチックフィルムにおいて、前記保護フィルムが、150℃30分間加熱後の熱収縮率がMD及びTD方向ともに0.5%以下である第一のフィルムと前記透明導電膜及び保護フィルム付きプラスチックフィルムの線膨張係数との差が40ppm/℃以下である線膨張係数を有する第二のフィルムからなり、かつ上記第一フィルムと第二フィルムを前記プラスティックフィルムからこの順に設けることを特徴とする透明導電膜及び保護フィルム付きプラスティックフィルム。」(【請求項1】)
(4b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、PETフィルムはプラスティックフィルムの中で、線膨張係数の最も小さなフィルムの一つであるため、工程中の様々な熱処理において、透明導電フィルムと保護フィルムの線膨張係数の差に起因するフィルムの反りが発生する。また、通常PETフィルムは150℃程度の熱を加えると主にMD(巻き方向)に1%以上熱収縮をおこし、熱処理後室温に戻しても反りが残ったり、熱収縮によるパターンずれを起こすという問題があった。」(【0003】)
(4c)「【0005】
【課題を解決するための手段】上記の従来技術が持つ課題を克服するため、本発明の発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、透明導電フィルムと、透明導電フィルムと線膨張係数の近いフィルムの間に第一のフィルムを介在させることにより、線膨張係数の許容範囲が飛躍的に広がり、安価な市販の保護フィルムを用いても加熱工程での反りが非常に小さくできることを見いだした。さらに第一のフィルムに熱収縮率の小さなフィルムを用いることにより、さらに熱処理工程によるカールを減らし、熱処理後の寸法安定性も増すことができることを見いだした。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明に用いるプラスティックフィルムの材質は、特に限定されないがポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PSF)等が用いられる。」(【0005】?【0006】5行)
(4d)「【0010】前記フィルムを貼り合わせる粘着剤層は、工程中、最大100℃程度の各種熱処理を受けるので変質等を起こさないため、熱分解温度が100℃以上であることが望ましい。また、最終的には保護フィルムを剥がして透明導電膜フィルムとして用いるので、容易に引き剥がせるように粘着剤層の粘着力は50g/cm以下、望ましくは20g/cm以下であることが望ましい。このような粘着力を持った粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤及びEVA系粘着剤が一般に用いられる。」(【0010】)
(4e)「【0014】
【実施例】以下実施例に従って本発明を説明する。
(実施例1)ITOを成膜した厚さ75μmのポリアリレートフィルム(エルメックF-1100、線膨張係数70ppm/℃)のITO成膜面とは反対側に、アクリル系粘着剤層を介して50μm厚のPETフィルムを貼り、さらにPETフィルムの上に同じアクリル系粘着剤層を介して50μm厚のPP/PE共重合フィルム(線膨張係数110ppm/℃)を貼り合わせた。第一のフィルムであるPETフィルムは、あらかじめ160℃で10分間の加熱処理を施したものであり、150℃30分加熱後のMD及びTD方向の熱収縮率はいずれも0.4%であった。
(実施例2)ITOを成膜した厚さ50μmのポリスルフォン(住友ベークライト社 スミライトFS-1200、線膨張係数60ppm/℃)のITO成膜面とは反対側に、アクリル系粘着剤層を介して50μm厚のPETフィルムを貼り、さらにその上に同じアクリル系粘着剤層を介して50μm厚の無延伸PPフィルム(線膨張係数80ppm/℃)を貼り合わせた。」(【0014】)

(5)甲第5号証(特開平10-208555号公報)
(5a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 片面に透明導電膜を設け、該透明導電膜を設けた面の反対の面に保護フィルムを貼り付けた透明導電膜付きプラスティックフィルムにおいて、該保護フィルムが、線膨張係数の小さな第一のフィルムと、上記透明導電膜付きフィルムと線膨張係数が近い第二のフィルムを透明導電フィルムからこの順に貼り重ねてなることを特徴とする透明導電膜付きプラスティックフィルム。」(【請求項1】)
(5b)「【0004】
【課題を解決するための手段】上記の従来技術が持つ課題を克服するため、本発明の発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、透明導電フィルムと、透明導電フィルムと線膨張係数の近いフィルムの間に第三のフィルムを介在させることにより、線膨張係数の許容範囲が飛躍的に広がり、安価な市販の保護フィルムを用いても加熱工程での反りが非常に小さくできることを見いだした。また、この様な3層構成をとった場合、フィルムの剛性は中央のフィルムの剛性を大きくする(材質を変える、厚みを増す)ことにより任意に制御できるあるいは、中央のフィルムに線膨張係数の小さなフィルムを用いることにより、フィルム全体の実効的な線膨張係数を小さく抑えることが可能であり、パターニング工程等での位置ずれを抑えられる等の利点も合わせ持っていることも明らかとなった。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明に用いる透明プラスティックフィルムとしては、特に限定されないがポリエステルテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PSF)等が用いられる」(【0004】?【0005】5行)
(5c)「【0006】透明導電膜に貼り合わせる第1のフィルムとしては、先に述べたように、工程中での取り扱い易さ、パターニング時のパターンずれの防止という点から、機械的強度が高く、線膨張係数が小さなフィルムが望ましい。線膨張係数としては、一般的に用いる400mm角程度の基板で、パターンずれを50μm程度に抑える必要があるが、通常のクリーンルームの温度制御が±2℃程度であることを考慮に入れると、線膨張係数が30ppm/℃以下であることが望ましい。この様な性質を持ったフィルムとしては、特に限定されないがPET、PEN等が一般に良く用いられるが、価格等の点から、特に限定されないがPETが最も望ましい。該フィルムを貼り合わせる粘着剤層としては、工程中の最大100℃程度の各種熱処理で、変質等を起こさないため、熱分解温度が100℃以上であることが望ましく、また、最終的には透明導電膜フィルムを引き剥がして用いることから、用意に引き剥がせるように望ましくは50g/cm以下、さらに望ましくは20g/cm以下の粘着力であることが望ましい。この様な特性を持った粘着剤としては、特に限定されないが一般的にはアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤及びEVA系粘着剤が用いられる。」(【0006】)

(6)甲第6号証(特開平11-320744号公報)
(6a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 プラスティックフィルムの片面に透明導電膜を設け、該透明導電膜を設けた面の反対の面に保護フィルムを設けた透明導電膜及び保護フィルム付きプラスティックフィルムにおいて、前記保護フィルムが、熱分解温度が100℃以上である第一のフィルムと、上記透明導電膜付きフィルムとの線膨張係数の差が30ppm/℃以下である第二のフィルムからなり、かつ上記第一のフィルムと第二のフィルムを前記プラスティックフィルムからこの順に設けることを特徴とする透明導電膜付きプラスティックフィルム。」(【請求項1】)
(6b)「【0005】
【課題を解決するための手段】上記の従来技術が持つ課題を克服するため、本発明の発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、透明導電フィルムに第一の保護フィルムを介して、透明導電フィルムと膨張係数の近い第二の保護フィルムを貼り合わせた構成にすることにより、貼り合わせの際の広い張力範囲で反りのない積層フィルムが得られることを見いだした。さらに、この構成の積層フィルムに、タッチパネル等の工程で用いられる100℃以上の温度の熱処理を行ったところ、第一のフィルムとして、ガラス転移温度が低く、熱収縮の大きなフィルムを用いた場合でも加熱によるカール、変形はほとんど見られず、逆に、第二のフィルムを直接張り合わせた場合よりも加熱中のカールが少ないということを新たに見いだした。これは、透明導電フィルムと第二のフィルムの線膨張係数のわずかな違いに起因する応力を、中間に介在する第一のフィルムが軟化することにより緩和しているためであると推定される。またさらに、第一のフィルムとして引っ張り伸びが大きく裂けにくいフィルムを用いることにより、ロール加工中のフィルムの裂けも大幅に低減できることも見いだした。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明に用いる透明プラスティックフィルムとしては、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等が用いられる」(【0005】?【0006】4行)
(6c)「第一のフィルムを透明導電フィルムに貼り合わせる粘着剤層としては、工程中の各種熱処理で、発泡などの変質等を起こさないことが望ましく、熱分解温度が100℃以上、より好ましくは120℃以上であることが望ましい。」(3頁第3欄49行?第4欄3行)

(7)甲第7号証(特開2001-55549号公報)
(7a)「【請求項4】 常態保持力が0?1.0mm/15×20mm・kg・hrであり、加熱後保持力が0?0.4mm/15×20mm・kg・hrであり、高温粘着力が0.6?2.0N/15mmであり、加熱後粘着力が1.0?6.0N/15mmであるアクリル系粘着剤層が支持体上に設けられている、塗装用マスキングテープ。」(【特許請求の範囲】【請求項4】)
(7b)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点を解決し、被着体に汚染や粘着剤残留などを生じず、高温時に剥がれや浮きを生じにくい塗装用マスキングテープを提供することを目的とする。」(【0006】)
(7c)「【0012】本発明に係る組成物中のアクリル系共重合体は、好適には、(メタ)アクリル酸アルキルモノマーと架橋性基含有モノマーとの共重合体である。ここで、架橋性基含有モノマーは、イオン架橋性基と共有結合架橋性基の両方を有するモノマーの場合には単独でもよく、また、イオン架橋性基又は共有結合架橋性基のいずれかを有するモノマーを用いる場合には、イオン架橋性基含有モノマーと共有結合架橋性基含有モノマーとを組み合せて用いる。
【0013】好適な(メタ)アクリル酸アルキルモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシルなどのアルキル基の炭素数1?14のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのアルキル基の炭素数1?14のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらを一種以上組み合せて使用しうる。ただし、高い粘着性を付与するためには、アルキル基の炭素数が2?14であるアクリル酸アルキル、アルキル基の炭素数が4?14であるメタクリル酸アルキルを主モノマーとして用いるのが好ましい。また、凝集力を付加するためには、アルキル基の炭素数が1であるアクリル酸アルキル、アルキル基の炭素数が1?3であるメタクリル酸アルキルを従モノマーとして用いるのが好ましい。」(【0012】?【0013】)
(7d)「【0030】本発明の塗装用マスキングテープに用いられる支持基材としては、例えば、塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ナイロンなどのプラスチックフィルムやそれらの複合フィルム、金属箔、紙、布、不織布やそれらと前記プラスチックなどとの複合フィルムが挙げられる。なお、必要に応じ、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理、プライマーや剥離剤などのコーティング、印刷などを施してもよい。
【0031】本発明の塗装用マスキングテープは、例えば、剥離処理やプライマー処理などの必要な処理を行なった支持基材上のプライマー下塗り面に、本発明の塗装用マスキングテープ用アクリル系粘着剤組成物を塗布し、紙管に巻き取り所望の幅に裁断してテープ状にしたり、または、剥離紙を貼り合わせ所望の形状に切り取ってシート状にすることにより得られる。」(【0030】?【0031】7行)

2.甲第8?20号証について
甲第8?16号証:透明プラスチックフィルムの一方の面に透明導電性薄膜が形成され、他方の面にハードコート層が形成されてなる透明導電性フィルムが、本件特許の出願時広く知られていることを示すための周知文献
甲第17?20号証:高温雰囲気に暴露した後の再剥離性等に優れた粘着剤として、ブチルアクリレートとアクリル酸、及びエポキシ系架橋剤からなる粘着剤組成物は、本件特許の出願時広く知られていることを示すための周知文献

VI.当審の判断
(1)審判請求書の請求の理由の要旨変更の判断
被請求人の指摘する審判請求書の請求の理由の要旨変更について検討すると、請求人は審判請求書の請求の理由の補正の許可を求めているものではないが、口頭審理陳述要領書提出の段階で、「表面保護フィルムを剥離する際の引張速度を変化させた場合の粘着力を一定以下に調整した粘着剤層を得るために、表面保護フィルムを使用する粘着剤層を、組成により粘着力の調整し易い、アクリル系粘着剤で形成する」という点が周知技術であることの立証のために提出された甲第22?24号証や、「透明導電性フィルムが加熱乾燥工程において150℃1時間の加熱環境下におかれる」という点が周知技術であることを立証するために提出された甲第25、26号証は、訂正によって必要になったものでもなく、「粘着剤層を被着面に貼り合せた状態で150℃で1時間加熱した後に、前記表面保護フィルムを粘着剤層と被着面の間で剥離する際の、引張速度0.3m/分の条件で測定した粘着力、および引張速度10m/分の条件で測定した粘着力が、ともに2.8N/20mm以下であること」という特定事項は、本件発明の特定事項全体からみて、本件発明の特徴点そのものであるので、請求人の口頭審理陳述要領書における主張は、該特定事項を周知技術と称して追加的に証拠を提出するもので、直接証拠の差し替えであり、特許法第131条の2第1項本文に規定する要旨を実質的に変更する補正に該当する主張である。
また、特許法第131条の2第2項第1号に規定するような、訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたわけではなく、同法同条同項第2号に規定する審判請求時の請求書に記載しなかったことにつき合理的な理由が示されているわけでもなく、被請求人が当該補正に同意したわけでもない。
したがって、請求人の甲第22?26号証に基づく主張は、審判請求理由の要旨の変更に該当するので、採用しない。

(2)無効理由の検討
A.無効理由A(特許法第29条第2項違反)について

請求人が、口頭審理を通じて甲第2号証が主引用例であると主張しているので、本件発明と甲第2号証発明とを対比する。

A-1.本件発明1について

本件発明1と甲第2号証発明とを対比すると、甲第2号証発明の「基材」「粘着剤層」「透明導電性薄膜」「反射防止膜保護用粘着フィルム」「透明導電性薄膜回路パターン付き反射防止フィルム」は、それぞれ、本件発明1の「基材フィルム」「粘着剤層」「導電性薄膜」「透明導電性フィルム用表面保護フィルム」「透明導電性フィルム」に相当しており、
両者は、「透明導電性フィルムの導電性薄膜とは反対側の表面を保護し、剥離することができるフィルムであって、前記表面保護フィルムは基材フィルムの片面側に粘着剤層が設けられている透明導電性フィルム用表面保護フィルム。」である点で一致し、以下の点で相違する。

イ.本件発明1においては、粘着剤層を被着面に貼り合せた状態で150℃で1時間加熱した後に、前記表面保護フィルムを粘着剤層と被着面の間で剥離する際の、引張速度0.3m/分の条件で測定した粘着力、および引張速度10m/分の条件で測定した粘着力が、ともに2.8N/20mm以下であると特定されているのに対して、甲第2号証発明では、表面保護フィルムを粘着剤層と被着面の間で剥離する際の粘着力に関してそのような特定がない点

そこで、上記相違点イについて検討する。
甲第1?20号証のいずれの記載を検討しても、「粘着剤層を被着面に貼り合せた状態で150℃で1時間加熱した後に、前記表面保護フィルムを粘着剤層と被着面の間で剥離する際の、引張速度0.3m/分の条件で測定した粘着力、および引張速度10m/分の条件で測定した粘着力が、ともに2.8N/20mm以下であると特定すること」(以下、「本件発明の特徴的特定事項」という。)によって、本件特許明細書に記載された、「加熱環境下においても粘着剤層の粘着力の上昇が小さく、その後の剥離作業を良好に行うことができ、表面保護フィルムを被着体に貼り合せた状態で加熱工程に供することができ、加熱工程中において被着体を傷や汚れから保護することができ、従来は加熱工程の前後で表面保護フィルムを貼り換える手間がかかっていたが、本発明の表面保護フィルムは被着体へ貼り合わせた状態で加熱工程中に供することができるため、表面保護フィルムを貼り換える手間が省くことができ著しく作業性を向上させることができ、引張速度は、人間が実際に表面保護フィルムを被着体から剥離する速度が一定ではないところ、ゆっくりした剥離速度(0.3m/分)から比較的早い剥離速度(10m/分)の実際に則した剥離速度領域全体において粘着力が軽い」(以下、「本件発明の特徴的作用効果」という。)という作用効果を奏する点については、記載も示唆もされていない。

そこで、甲第2号証発明において、表面保護フィルムの基材フィルムの片面側に設けた粘着剤層に関して、相違点イに係る本件発明1の構成を採用することが、甲第1?20号証記載の事項から容易に想到しうるといえるかについて、各証拠の記載をさらに検討する。

甲第1号証には、上記摘記事項(1a)に、「【請求項1】プラスチックからなる透明フィルムの一方の面に透明導電膜を形成し、透明導電膜とは反対側の面に粘着剤を介して保護フィルムを積層した透明導電性フィルムにおいて、上記粘着剤は透明であって、透明フィルムに対する粘着力が8.0N/50mm以上、保護フィルムに対する粘着力が0.1N/50mm以上1.5N/50mm以下であることを特徴とする保護フィルム付き透明導電性フィルム。」が記載され、透明導電膜とは反対側の面に存在する粘着剤の粘着力が特定されているものの、透明フィルムに対する粘着力の方が、保護フィルムに対する粘着力より大きいことによって、上記摘記事項(1b)記載のとおり、透明基材に波長板や偏光板を積層する場合、完成品に向かう組み立て工程中に上記保護フィルムを剥がす工程と、透明基材の表面又は波長板もしくは偏光板の表面に粘着剤を塗布する工程とが必要となり、これが工数の増大及びコストの上昇につながっているという課題を波長板や偏光板などの他の基材と重ね合わせられる予定の透明導電性フィルムを、高い品質を維持しながら工数を減らし低コストで提供することで解決することが記載されており、上記摘記事項(1c)に粘着剤の材料、上記摘記事項(1d)に粘着力の記載があるとしても、前記本件発明の特徴的特定事項と共通する技術思想の開示は無いから、甲第1号証に基いて相違点イに係る本件発明1の構成を当業者が容易に想到するとはいえない。
甲第2号証には、上記摘記事項(2a)に、基材上に、フォトレジストの現像剥離のために用いる処理液及び透明導電性薄膜のエッチングのために用いる処理液に対しての耐性を有する粘着剤層を設けた反射防止膜保護用粘着フィルムが記載されており、上記摘記事項(2b)に、反射防止膜を保護する際に要求される耐熱性及び耐薬品性、特にフォトエッチング法におけるフォトレジストの現像剥離のために用いる処理液及び透明導電性薄膜のエッチングのために用いる処理液に対する耐薬品性に優れる反射防止膜保護用粘着フィルムを提供するという課題に基づき、上記摘記事項(2c)に、保護フィルム付き反射防止フィルム2は、本発明の反射防止膜保護用粘着フィルム1によって反射防止膜21が保護されているものであることによって反射防止膜21は、反射防止膜21が設けられた面の裏面に設けられる透明導電性薄膜回路パターンの形成工程で、フォトレジストの現像剥離のために用いられるアルカリや透明導電性薄膜23のエッチングのために用いられる酸等の処理液から好適に保護されるという解決手段と作用の記載があり、上記摘記事項(2d)には、反射防止膜保護用粘着フィルムが貼付する側に粘着剤層を有していることが図示されているのであるから、該粘着剤層の粘着力としては、フォトレジストの現像剥離のために用いられるアルカリや透明導電性薄膜23のエッチングのために用いられる酸等の処理液に対して耐性を有し反射防止膜が保護されるのに好適なものが示唆されるとしても、前記本件発明の特徴的特定事項と共通する技術思想の開示は無いから、甲第2号証に基いて相違点イに係る本件発明1の構成を当業者が容易に想到するとはいえない。
甲第3号証には、上記摘記事項(3b)に記載のとおり、加工プロセスで120℃以上の加熱工程を加えても熱による損傷もなく、透明導電性薄膜の形成された面の反対側の面の損傷もないロールプロセスで連続的に加工できる耐熱性透明導電性フィルムを提供することを課題として、上記摘記事項(3a)記載のとおり、 ガラス転移温度が120℃以上である第1のプラスチックフィルム基体に、透明導電性を有する薄膜を積層し、該薄膜が積層されている面の反対面上に、ガラス転移温度が120℃以上で、且つ第1のプラスチックフィルムとの線膨張係数の差が20ppm/℃以内である第2のプラスチックフィルム基体に、熱分解温度が120℃以上で、かつ粘着力が50g/cm以下である粘着材層を設けた保護フィルムを粘着材層を介して貼り合わせた透明導電性フィルムという解決手段が記載されており、ガラス転移温度が加熱温度以上で基体と保護フィルムとの線膨張係数の差が小さいように特定し、粘着力も一定以下にするという技術思想により、粘着力が特定されているのであるから、前記本件発明の特徴的特定事項と共通する技術思想の開示は無いから、甲第3号証に基いて相違点イに係る本件発明1の構成を当業者が容易に想到するとはいえない。
甲第4号証には、上記摘記事項(4b)記載のとおり、工程中の様々な熱処理において、透明導電フィルムと保護フィルムの線膨張係数の差に起因するフィルムの反りが発生し、熱処理後室温に戻しても反りが残ったり、熱収縮によるパターンずれを起こすという課題のもと、上記摘記事項(4c)記載の、透明導電フィルムと、透明導電フィルムと線膨張係数の近いフィルムの間に第一のフィルムを介在させることにより、線膨張係数の許容範囲が飛躍的に広がり、安価な市販の保護フィルムを用いても加熱工程での反りが非常に小さくでき、さらに第一のフィルムに熱収縮率の小さなフィルムを用いることにより、さらに熱処理工程によるカールを減らし、熱処理後の寸法安定性も増すことができることを見いだしたという知見の結果、上記摘記事項(4a)記載のとおり、保護フィルムが、150℃30分間加熱後の熱収縮率がMD及びTD方向ともに一定以下である第一のフィルムと前記透明導電膜及び保護フィルム付きプラスチックフィルムの線膨張係数との差が一定以下である線膨張係数を有する第二のフィルムからなり、上記第一フィルムと第二フィルムを前記プラスティックフィルムからこの順に設けるという解決手段を採用しており、前記本件発明の特徴的特定事項と共通する技術思想の開示は無いから、甲第4号証に基いて相違点イに係る本件発明1の構成を当業者が容易に想到するとはいえない。
甲第7号証には、上記摘記事項(7b)記載のとおり、被着体に汚染や粘着剤残留などを生じず、高温時に剥がれや浮きを生じにくい塗装用マスキングテープを提供することを課題として、上記摘記事項(7a)記載のとおり、常態保持力が0?1.0mm/15×20mm・kg・hrであり、加熱後保持力が0?0.4mm/15×20mm・kg・hrであり、高温粘着力が0.6?2.0N/15mmであり、加熱後粘着力が1.0?6.0N/15mmであるアクリル系粘着剤層が支持体上に設けられている、塗装用マスキングテープという解決手段が記載されており、前記本件発明の特徴的特定事項と共通する技術思想の開示は無いから、甲第7号証に基いて相違点イに係る本件発明1の構成を当業者が容易に想到するとはいえない。
甲第5,6号証公報、甲第8?20号証公報には、透明導電性フィルムの他方の面にハードコート層を形成することや、アクリル系粘着剤を用いることが周知技術であることを示すものであり、これらの証拠からも、前記本件発明の特徴的特定事項と共通する技術思想の開示は無いから、相違点イに係る本件発明1の構成を当業者が容易に想到するとはいえない。
請求人主張のとおり、 高温雰囲気に暴露した後の再剥離性等に優れた粘着剤として、ブチルアクリレートとアクリル酸、及びエポキシ系架橋剤からなる粘着剤組成物は、本件特許の出願時広く知られているとしても、前記本件発明の特徴的特定事項と共通する技術思想の開示が無い以上、具体的加熱条件が異なる再剥離性等に優れた公知技術に基いて、相違点イに係る本件発明1の構成を採用することが、当業者にとって容易に想到できるとはいえない。

そして、本件発明1は、本件発明の特徴的特定事項によって、本件特許明細書に記載された、本件発明の特徴的作用効果という甲第1?20号証の記載からは予測することのできない顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲第1?20号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

A-2.本件発明2及び3について
本件発明2又は本件発明3と甲第2号証発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記「A-1.本件発明1について」で挙げた相違点イにおいて相違し、該相違点は、上記したように容易になし得たとすることはできないことにより、本件発明2及び本件発明3は、甲第1?20号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

A-3.まとめ
以上のとおり、請求人の主張する無効理由Aによっては、本件発明1ないし3についての特許を無効とすることはできない。

B.無効理由B(特許法第36条第6項第1号違反)について
B-1.請求人は、以下のとおり主張する。
本件発明1?3は、「当該粘着剤層を被着面に貼り合せた状態で150℃で1時間加熱した後に、前記表面保護フィルムを粘着剤層と被着面の間で剥離する際の、引張速度0.3m/分の条件で測定した粘着力、および引張速度10m/分の条件で測定した粘着力が、ともに2.8N/20mm以下である」という構成を有するが、剥離時の粘着力は、粘着剤層の材質と被着面の材質や表面状態とに影響されることは当業者に周知である一方(甲第27号証提出)、本件特許明細書には、ポリエステルフィルム上にアクリル系粘着剤を塗布して粘着剤層を形成した表面保護フィルムのみが記載されている。したがって、本件発明1?3を構成する剥離時の粘着力の特定は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された種類や材質以外のものを包含することになり、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
また、アクリル系粘着剤であれば、被着面に対して特定の粘着力とすることができるのかについての因果関係やメカニズムの記載やアクリル系粘着剤の組成と粘着力の関係が記載されていないので、出願時の技術常識に照らしても、特許請求の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。

B-2.上記主張を検討すると、本件発明1?3は、「透明導電性フィルムの導電性薄膜とは反対側の表面を保護し、剥離することができるフィルムであって、前記表面保護フィルムは基材フィルムの片面側に粘着剤層が設けられており」という公知の構成において、「表面保護フィルムの被着体となる透明導電性フィルムを用いた製造工程における加熱乾燥工程の温度範囲やトータル時間を通じた著しい粘着力上昇」と「引張速度は、人間が実際に表面保護フィルムを被着体から剥離する速度が一定ではないことから、ゆっくりした剥離速度(0.3m/分)から比較的早い剥離速度(10m/分)の実際に則した剥離速度領域において粘着力が軽いことを示し、いずれか一方の引張速度における粘着力が2.8N/20mmを超えると剥離作業に不都合が生じるおそれがある」という課題に対して、「粘着剤層を被着面に貼り合せた状態で150℃で1時間加熱した後に、前記表面保護フィルムを粘着剤層と被着面の間で剥離する際の、引張速度0.3m/分の条件で測定した粘着力、および引張速度10m/分の条件で測定した粘着力が、ともに2.8N/20mm以下である」という特定事項を有するものであり、本件明細書において、適用できる粘着剤層の材質の記載があり、実施例において、特許請求の範囲の特定事項に該当する特性が得られている。
そして、本件明細書【0016】には、保護フィルムの基材フィルムの材質の例示があり、【0017】には、基材フィルムの厚みに関しての記載、【0018】?【0030】には、粘着剤層を形成する粘着剤の種類、架橋剤の種類、粘着剤層の厚み等の記載もあるのであるから、当業者であれば実施例以外でも課題が達成できることは認識でき、請求人主張のように、本件明細書には、ポリエステルフィルム上にアクリル系粘着剤を塗布した限定された例のみの記載があるとする理由はなく、本件発明1?3が、発明の詳細な説明の記載により、当業者が、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでないとすることはできない。

よって、本件発明1?3は、発明の詳細な説明に記載したものでないとすることはできないことより、各本件発明に係る特許が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしてない特許出願に対してされたとすることはできず、請求人の主張する無効理由Bによっては、各本件発明に係る特許を無効とすることはできない。

C.無効理由C(特許法第36条第4項違反)について
C-1.請求人は以下のとおり主張する。
本件発明1?3においては、被着体、粘着剤等の各条件を具体的にどのように制御するのかを特定していないので、本件発明のフィルムを得るには、実施例に記載以外の条件のフィルムでは、出願時の技術常識に基づいても、当業者であっても過度な試行錯誤を要する。

C-2.上記主張を検討すると、本件発明1?3は、「透明導電性フィルムの導電性薄膜とは反対側の表面を保護し、剥離することができるフィルムであって、前記表面保護フィルムは基材フィルムの片面側に粘着剤層が設けられており」という公知の構成において、「表面保護フィルムの被着体となる透明導電性フィルムを用いた製造工程における加熱乾燥工程の温度範囲やトータル時間を通じた著しい粘着力上昇」と「引張速度は、人間が実際に表面保護フィルムを被着体から剥離する速度が一定ではないことから、ゆっくりした剥離速度(0.3m/分)から比較的早い剥離速度(10m/分)の実際に則した剥離速度領域において粘着力が軽いことを示し、いずれか一方の引張速度における粘着力が2.8N/20mmを超えると剥離作業に不都合が生じるおそれがある」という課題に対して、「粘着剤層を被着面に貼り合せた状態で150℃で1時間加熱した後に、前記表面保護フィルムを粘着剤層と被着面の間で剥離する際の、引張速度0.3m/分の条件で測定した粘着力、および引張速度10m/分の条件で測定した粘着力が、ともに2.8N/20mm以下である」という特定事項を有するものである。
そして、本件明細書【0018】?【0030】には、調整の方法の一定の開示があり、各粘着剤層において、本件発明の粘着力は、粘着力の上限のみを特定している点を考慮すると、各材質にわたって、粘着力調整の具体的記載がなければ、実施例に記載以外の条件のフィルムを実施するに際し、当業者にとって過度な試行錯誤が生じるとはいえず、本件明細書に記載された実施例、材質の例示、調整方法及び、粘着力の調整に関する技術常識をもとに、引張速度0.3m/分の条件で測定した粘着力、および引張速度10m/分の条件で測定した粘着力に留意しながら透明導電性フィルム用表面保護フィルム及び透明導電性フィルムを作成し、使用することはできるといえる。

よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとすることはできないことより、本件特許が、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしてない特許出願に対してされたとすることはできず、請求人の主張する無効理由Cによっては、本件特許を無効とすることはできない。

VII.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1?3に係る特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2012-05-15 
結審通知日 2012-05-18 
審決日 2012-05-30 
出願番号 特願2002-4090(P2002-4090)
審決分類 P 1 113・ 853- YB (B32B)
P 1 113・ 537- YB (B32B)
P 1 113・ 851- YB (B32B)
P 1 113・ 536- YB (B32B)
P 1 113・ 121- YB (B32B)
P 1 113・ 852- YB (B32B)
P 1 113・ 841- YB (B32B)
P 1 113・ 855- YB (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 正紀  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 紀本 孝
瀬良 聡機
登録日 2008-07-11 
登録番号 特許第4151821号(P4151821)
発明の名称 透明導電性フィルム用表面保護フィルム及び透明導電性フィルム  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
代理人 鷺 健志  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ