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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1260073
審判番号 不服2010-14229  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-29 
確定日 2012-07-12 
事件の表示 特願2003-392238「ゲートアンテナ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月14日出願公開、特開2005-102101〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成15年11月21日(国内優先権主張 平成15年9月1日)の出願であって、平成22年4月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで審判請求時の手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年6月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成21年11月12日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「磁界によりIC搭載媒体との通信を行うゲートアンテナ装置であって、
給電回路に接続され信号電流を供給される給電ループアンテナと、
前記信号電流を供給されない無給電ループアンテナと、を備え、
前記給電ループアンテナと、前記無給電ループアンテナとの間隔は、前記無給電ループアンテナにおいて前記給電ループアンテナからの誘導電流が発生する距離であり、前記給電ループアンテナのループにより囲まれて作られる主面と、前記給電ループアンテナのループにより囲まれて作られる主面とは相互に略平行であり、かつ前記給電ループアンテナの巻軸と前記無給電ループアンテナの巻軸とが一致することを特徴とするゲートアンテナ装置。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「磁界によりIC搭載媒体との通信を行うゲートアンテナ装置であって、
給電回路に接続され信号電流を供給される給電ループアンテナと、
前記信号電流を供給されない無給電ループアンテナと、を備え、
前記給電ループアンテナと、前記無給電ループアンテナとの間隔は、前記無給電ループアンテナにおいて前記給電ループアンテナからの誘導電流が発生する距離であり、前記給電ループアンテナのループにより囲まれて作られる主面と、前記無給電ループアンテナのループにより囲まれて作られる主面とは相互に略平行であるとともに同一平面上には位置せず、かつ前記給電ループアンテナの巻軸と前記無給電ループアンテナの巻軸とが一致することを特徴とするゲートアンテナ装置。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。
なお、補正後の発明の認定に際し、補正書の原文には「同一平面状」という文言が記載されているが、当該記載は「同一平面上」の明白な誤記と認められるので、補正後の発明は上記のように認定した。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の「相互に略平行であり」という構成を「相互に略平行であるとともに同一平面上には位置せず」という構成に限定することにより特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

(2)引用発明及び周知技術
A.原審の拒絶理由に引用された特開2003-46319号(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【請求項1】 ICカードのカードアンテナの全部を包含する主ループアンテナと、該主ループアンテナ内に配置し、カードアンテナの少なくとも一部を包含する副ループアンテナとをICカードの読取面に設置してなるICカードのリーダライタ用のアンテナ。
【請求項2】 前記副ループアンテナは、抵抗を介して終端することを特徴とする請求項1記載のICカードのリーダライタ用のアンテナ。
【請求項3】 前記副ループアンテナは、前記主ループアンテナと同心に配置することを特徴とする請求項1または請求項2記載のICカードのリーダライタ用のアンテナ。」(2頁1欄、請求項1?3)

ロ.「【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0016】ICカードのリーダライタ用のアンテナは、主ループアンテナL1 と、主ループアンテナL1 内に配置する副ループアンテナL2 とをICカード21の読取面11に設置してなる(図1、図2)。なお、読取面11は、たとえばリーダライタ10のケーシングの上面に形成されている。
【0017】ICカード21は、カード本体21aに対し、カードアンテナLa 、カードチップTを搭載して構成されている。なお、カードアンテナLa は、長辺a、短辺b<aの長方形の枠状に形成されており、対角線c>aを有している。また、カードアンテナLa は、例えば2ターンのループを形成し、カードチップTに接続されている。
【0018】主ループアンテナL1 は、径d1 >cの円形に形成され、整合用のコンデンサ回路12、端子13、13を介してリーダライタ本体14に接続されている。すなわち、主ループアンテナL1 は、カードアンテナLa の全部を包含するように、十分大面積に形成されている。なお、コンデンサ回路12は、一方の端子13に直列接続するコンデンサC1 と、主ループアンテナL1 に並列接続するコンデンサC2 とを組み合わせて構成されている。
【0019】副ループアンテナL2 は、径d2 (c≒d2 <d1 )の円形に形成され、主ループアンテナL1 と同心に配置されている。すなわち、副ループアンテナL2 は、カードアンテナLa のほぼ全部を包含するように、しかも主ループアンテナL1 より小さく形成されている。また、副ループアンテナL2 は、抵抗Rを介して終端され、主ループアンテナL1 と電磁結合している(図3)。主ループアンテナL1 は、副ループアンテナL2 とともに、コンデンサ回路12を介して共振周波数が設定されている。なお、図1、図2において、主ループアンテナL1 、副ループアンテナL2 は、それぞれたとえば2ターンのループを形成して構成されている。」(3頁3?4欄、段落15?19)

上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 上記「ICカード21」は、「カードチップT」、即ち「ICチップ」を搭載したカードであって「IC搭載媒体」といえるものであり、上記「リーダライタ11」は、ループアンテナを介して、即ち、「磁界」により前記IC搭載媒体と通信を行うものである。
また、上記「主ループアンテナL1」は、整合用のコンデンサ回路12、端子13、13を介してリーダライタ本体14、即ち信号電流を供給する「給電回路」に接続される「給電ループアンテナ」である。
また、上記「副ループアンテナL2」は、抵抗Rを介して終端される、即ち信号電流を供給する給電回路に接続されていない「無給電ループアンテナ」であって、前記給電ループアンテナと電磁結合していることから、「前記給電ループアンテナと、前記無給電ループアンテナとの間隔は、前記無給電ループアンテナにおいて前記給電ループアンテナからの誘導電流が発生する距離」であるといえ、そして、前記給電ループアンテナと同心に配置されていることから、「前記給電ループアンテナのループにより囲まれて作られる主面と、前記無給電ループアンテナのループにより囲まれて作られる主面とは相互に略平行であり、前記給電ループアンテナの巻軸と前記無給電ループアンテナの巻軸とが一致」している。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「磁界によりIC搭載媒体との通信を行うリーダライタ用のアンテナであって、
給電回路に接続され信号電流を供給される給電ループアンテナと、
前記信号電流を供給されない無給電ループアンテナと、を備え、
前記給電ループアンテナと、前記無給電ループアンテナとの間隔は、前記無給電ループアンテナにおいて前記給電ループアンテナからの誘導電流が発生する距離であり、前記給電ループアンテナのループにより囲まれて作られる主面と、前記無給電ループアンテナのループにより囲まれて作られる主面とは相互に略平行であり、かつ前記給電ループアンテナの巻軸と前記無給電ループアンテナの巻軸とが一致するリーダライタ用のアンテナ。」

B.例えば特開2001-24548号(以下、「周知例1」という。)又は特開2002-353725号公報(以下、「周知例2」という。)又は特開2001-168628号公報(以下、「周知例3」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(周知例1)
イ.「【請求項1】 出力信号を出力するとともに受信信号の処理を行う制御回路、前記出力信号の送信及び応答器からの信号を受信するコイルアンテナを少なくとも有した質問器と、少なくとも前記質問器から送出される信号を受信するとともに、前記質問器のアンテナに応答信号を送出するコイルアンテナ、受信した信号の処理及び送信信号を出力する制御回路を有した応答器と、前記質問器のコイルアンテナと前記応答器のコイルアンテナの間に配置された補助コイルより構成される移動体識別システム。」(2頁1欄、請求項1)

ロ.「【0002】
【従来の技術】従来、移動体識別システム用質問器及び応答器の構成としては特開平10-215210号公報に記載されたものが知られている。
【0003】図11に従来の移動体識別システム用質問器と応答器(タグ)の構造を示す。質問器1101には送受信用のコイルアンテナとしての質問器側コイル1102と第二同調コイル1107、コンデンサ1108が備えられていて、質問器1101上方には同調回路として第一同調コイル1105とコンデンサ1106が配置されている。タグ1104には送受信コイル1103が備えられていて、質問器1101の質問器側コイル1102と第一同調コイル1105の間にタグ1104を置くことによって、質問器1101と通信を行う。
【0004】なお、このような移動体識別システムは、例えば鉄道の改札口に設置された質問器と、乗車券や定期券としての情報を持つICカード状のタグとの間で非接触に通信を行う自動改札システムなどに応用されている。」(3頁3?4欄、段落2?4)

ハ.「【0018】これにより応答器コイルアンテナ上方に補助コイルを配置することで応答器周辺の磁界分布を変化させ、応答器コイルアンテナに磁束を集中させることによって、応答器に伝送される電力が大きくなり通信距離を長くすることができるという作用を有する。」(4頁6欄、段落18)

(周知例2)
イ.「【請求項1】 通信を行う空中線を放射又は受信するメインコイルと、
前記メインコイルの開口面と平行に近接配置され、かつ両端を開放状態にした補助コイルと、を有する電磁誘導アンテナ装置。
【請求項2】 前記補助コイルが、前記メインコイルと中心を一致させて該メインコイルの内側又は外側に近接配置されている請求項1に記載の電磁誘導アンテナ装置。
【請求項3】 前記補助コイルが、前記メインコイルの巻線間で該巻線に沿って配置されている請求項1に記載の電磁誘導アンテナ装置。
【請求項4】 前記補助コイルが、前記メインコイルと中心を一致させて相対向して近接配置されている請求項1に記載の電磁誘導アンテナ装置。」(2頁1欄、請求項1?4)

ロ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ICカード等と無線通信するリーダ・ライタに設置された電磁誘導アンテナ装置に関し、特に、電磁誘導アンテナ装置に補助コイルを配置して、広範囲な通信距離を確保し、安定通信を行う電磁誘導アンテナ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、スマートカードに代表されるように、カードにICチップを埋め込んだICカードを作成し、電子財布を実現させようとしている。また、このICカードを交通手段の定期券とすることも行われている。これらのように、ICカードによって種々の機能を実現させることが試行されている。
【0003】これらの機能をICカードで実現するには、このICカードと非接触で無線通信を行うリーダ・ライタを必要とする。(・・・以下省略・・・)」(2頁1?2欄、段落1?3)

ハ.「【0026】このような要件を満たすものであれば、補助コイル4をメインコイル3に対して適当に配置することができる。図3の例では、基板の表裏の関係で配置した場合を示したが、他の具体例として、図4に、メインコイル3と補助コイル4とを基板の片面に配置した場合を示した。図4の(a)では、メインコイル3が配設されているプリント配線基板の面上に、補助コイル4が、メインコイル3と同心で、かつその内側に配置した例を示した。また、同(b)では、(a)の場合とは反対に、基板面上であるが、メインコイル3の外側に配置した例を示した。
【0027】なお、図4では、補助コイル4をメインコイル3の内側又は外側に配置したが、補助コイル4をメインコイル3の巻き線間に組み込んでもよい。また、メインコイル3及び補助コイル4を円形とした場合で説明してきたが、円形に限られず、多角形状のものでもよい。ただ、補助コイル4の形状は、メインコイル3の形状に合わせる方が、効率的である。
【0028】さらに、メインコイル3及び補助コイル4を同一基板上に配設せずとも、それぞれ個別に形成して近接配置してもよい。(・・・以下省略・・・)」(4頁5?6欄、段落26?28)

ニ.「【0038】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、リーダ・ライタのRWアンテナコイルに、両端を開放状態にした補助コイルを近接配置することにより、アンテナ装置の入力インピーダンスを容易に調整することができ、しかも、アンテナ装置の抵抗損失分には影響を与えることなく、インダクタンス成分を増やすことができるので、非接触型ICカードに対するリーダ・ライタの通信距離を広範囲に拡大することができ、さらに、安定通信を実行することができる。」(5頁8欄、段落38)

(周知例3)
イ.「【0017】
【発明の実施の形態】以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0018】ICカード用の補助アンテナは、ICカード本体11上に主コイルLを備えてなる(図1)。なお、ICカード本体11上には、主コイルLに電磁結合する副コイルDが配置されている。」(3頁3欄、段落17)

ロ.「【0025】また、副コイルDは、その形状や配置を任意に変更することができる。たとえば、副コイルDは、主コイルLの全体に積層してもよく(図5(A))、主コイルLの開口面L_(1)内に設けてもよい(同図(B))。また、副コイルDは、ICカード本体11の裏面側に付設し、ICカード本体11を介して主コイルLに電磁結合させてもよい(同図(C))。なお、副コイルDは、これを全部省略してもよく、このときのICモジュールMは、主コイルLの開口面L_(1)内において、主コイルLに十分近接させて設置するか、主コイルL上に設置するのがよい。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、使用周波数に共振する主コイルをICカード本体上に設けることによって、主コイルは、通信用のICモジュールのアンテナに大きな起電力を発生させ、ICモジュールからの電波を外部に効率よく発信させることができるから、ICモジュールのアンテナの送受信感度を高め、ICカードによる情報伝達距離の拡大を図ることができるという優れた効果がある。」(3頁4欄、段落25?26)

例えば上記周知例1、2に開示されているように「例えば交通手段の定期券としてのICカード及び該ICカードと通信を行うリーダライタからなる自動改札システム(即ち、ゲート装置)」は周知であり、また例えば上記周知例1?3に開示されているように「給電アンテナと無給電アンテナを同心にかつ異なる平面上に配置するリーダライタ用のアンテナ」は周知であり、また例えば上記周知例2、3に開示されているように「無給電アンテナを給電アンテナと同一平面上に配置する」こともその配置形態の選択が自在であることを含めて周知である。

(3)対比
補正後の発明と引用発明を対比すると、補正後の発明の「ゲートアンテナ装置」と引用発明の「リーダライタ用のアンテナ」はいずれも「非接触近接磁界通信用アンテナ」である点で一致している。
また補正後の発明の「相互に略平行であるとともに同一平面上には位置せず」という構成と引用発明の「相互に略平行であり」という構成はいずれも「相互に略平行であり」という構成である点で一致している。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「磁界によりIC搭載媒体との通信を行う非接触近接磁界通信用アンテナであって、
給電回路に接続され信号電流を供給される給電ループアンテナと、
前記信号電流を供給されない無給電ループアンテナと、を備え、
前記給電ループアンテナと、前記無給電ループアンテナとの間隔は、前記無給電ループアンテナにおいて前記給電ループアンテナからの誘導電流が発生する距離であり、前記給電ループアンテナのループにより囲まれて作られる主面と、前記無給電ループアンテナのループにより囲まれて作られる主面とは相互に略平行であり、かつ前記給電ループアンテナの巻軸と前記無給電ループアンテナの巻軸とが一致する非接触近接磁界通信用アンテナ。」

(相違点1)「非接触近接磁界通信用アンテナ」に関し、補正後の発明は「ゲートアンテナ装置」であるのに対し、引用発明は「リーダライタ用のアンテナ」である点。

(相違点2)「相互に略平行であり」という構成に関し、補正後の発明は「相互に略平行であるとともに同一平面上には位置せず」という構成であるのに対し、引用発明は単に「相互に略平行であり」という構成である点。

(4)判断
そこで、まず上記相違点1の「非接触近接磁界通信用アンテナ」について検討するに、上記周知例1、2に開示されているように「例えば交通手段の定期券としてのICカード及び該ICカードと通信を行うリーダライタからなる自動改札システム(即ち、ゲート装置)」は周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、当該周知技術に基づいて、引用発明の「リーダライタ用のアンテナ」を補正後の発明のような「ゲートアンテナ装置」とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。

ついで、上記相違点2の「相互に略平行であり」という構成について検討するに、例えば上記周知例1?3に開示されているように「給電アンテナと無給電アンテナを同心にかつ異なる平面上に配置するリーダライタ用のアンテナ」はその作用効果を含めて周知であり、また例えば上記周知例2、3に開示されているように「無給電アンテナを給電アンテナと同一平面上に配置する」こともその配置形態の選択が自在であることを含めて周知である。そしてこれらの周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因もまた何ら見あたらないから、これらの周知技術に基づいて、引用発明の「相互に略平行であり」という構成を、補正後の発明のような「相互に略平行であるとともに同一平面上には位置せず」という構成に限定する程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。

以上のとおりであるから、補正後の発明は、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明及び周知技術」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いた本願発明も、同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-11 
結審通知日 2012-05-15 
審決日 2012-05-28 
出願番号 特願2003-392238(P2003-392238)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
P 1 8・ 575- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 美香  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 山本 章裕
遠山 敬彦
発明の名称 ゲートアンテナ装置  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  
代理人 藤井 兼太郎  

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