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審決分類 審判 全部無効 1項1号公知  A41H
審判 全部無効 1項2号公然実施  A41H
審判 全部無効 2項進歩性  A41H
管理番号 1260270
審判番号 無効2011-800112  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-06-30 
確定日 2012-07-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第3190321号発明「被服の裾上げ方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3190321号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3190321号は、平成12年3月24日に出願され、平成13年5月18日に設定登録がなされたものである。
そして、本件無効審判請求に係る手続の経緯は、以下のとおりである。

平成23年6月30日 無効審判請求
平成23年9月12日 答弁書提出
平成23年11月1日 証人尋問申出書、尋問事項書提出(被請求人)
平成23年12月19日 証人尋問申出書、尋問事項書、上申書提出
(請求人)
平成23年12月26日 検証申出書、検証物指示説明書提出(請求人)
平成24年1月5日 上申書提出(請求人)
平成24年1月6日 営業秘密に関する申出書提出(請求人)
平成24年1月17日 答弁書(第2回)提出
(差出日;平成24年1月23日)
平成24年1月18日 証人尋問申出書、尋問事項書提出(被請求人)
(差出日;平成24年1月14日)
平成24年1月20日 証拠提出書提出(請求人)
平成24年1月31日 証拠提出書提出(請求人)
平成24年2月10日 尋問事項書の手続補正書提出(被請求人)
平成24年3月1日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成24年3月16日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成24年3月22日 上申書提出(被請求人)
平成24年3月29日及び30日 口頭審理及び証拠調べ
平成24年4月10日 上申書提出(被請求人)
平成24年4月11日 上申書提出(請求人)

2.本件特許発明
本件特許第3190321号の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである。なお、構成要件ごとにA?Fの記号を付与している(以下、各工程などを「構成A」等ともいう。)。
「【請求項1】
A 被着者の寸法に応じて被服の裾上げ寸法を測ってその裾上げ位置を決定する工程と、
B この裾上げ位置が決定したら、その裾上げ位置に寸法位置決めガンで柔軟性のピンを打ち込み被服の裾上げ位置を確定する工程と、
C この裾上げ位置が確定してから、所望裾上げ寸法に応じて被服の裾を切断する工程と、
D この被服の裾を切断してから、前記ピンを被服に付着したまま縫合して被服の裾上げを行う工程と、
から成ることを特徴とする、被服の裾上げ方法。
【請求項2】
E 前記被服は、男性用スーツ、男性用ズボン、女性用スーツ、女性用ズボンのいずれかであることを特徴とする前記請求項1に記載の被服の裾上げ方法。
【請求項3】
F 前記柔軟性のピンは、合成樹脂製であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の被服の裾上げ方法。」

3.請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第3190321号発明の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、」との審決を求め、無効理由の概要は以下の(1)及び(2)であり、本件特許は無効とすべきであると主張している。
(1)本件特許発明1ないし3は、その出願前において、請求人が販売した検甲第1号証及び検甲第2号証の婦人服ジーンズの裾上げのために、日本国内で公然と実施されていた方法であるとともに、公然と知られていた方法でもあるから、特許法第29条第1項第2号の規定する「特許出願前に日本国内で公然実施をされた発明」又は同項第1号の規定する「特許出願前に日本国内において公然知られた発明」として特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(2)検甲第1号証及び検甲第2号証の婦人服ジーンズについて行われた裾上げ方法に鑑みるならば、本件特許発明1ないし3は、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

また、上記無効理由を立証するための証拠方法は、以下のとおりである。
[証拠方法]
<書証>
甲第1号証:鎌倉衣里の陳述書
甲第2号証:加工業務委託契約書
甲第3号証の1?6:特許権実施許諾契約書
甲第4号証:田原くみの陳述書
甲第5号証:宮原秀樹の陳述書
甲第6号証:松浦諭の陳述書
甲第7号証:宮原秀樹の陳述書
甲第8号証:本件特許公報
甲第9号証:本件特許に係る出願書類
甲第10号証:平成13年1月4日付け拒絶理由通知書
甲第11号証:平成13年3月12日付け手続補正書
甲第12号証:平成13年3月12日付け意見書
甲第13号証:平成13年3月29日付け特許査定
甲第14号証:平成12年12月11日付け早期審査に関する事情説明書
甲第15号証:事業・店舗紹介(ISETANのウェブサイト;http;//www.isetan.co.jp/)
なお、被請求人は、甲第1ないし13号証の成立を認めている。

<検証>
検甲第1号証:婦人服ジーンズ
検甲第2号証:婦人服ジーンズ
検甲第3号証:寸法位置決めガン(ピストル)
検甲第4号証:婦人服ジーンズ
検甲第5号証:婦人服ジーンズ
検甲第6号証:婦人服ジーンズ
検甲第7号証:婦人服ジーンズ
検甲第8号証:婦人服ジーンズ

<人証>
証人 鎌倉衣里
証人 田原くみ
証人 宮原秀樹

以下、各書証、検証物及び証人を、単に「甲1」、「検甲1」及び「証人鎌倉」等ともいう。

4.被請求人の主張の概要
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、上記請求人の主張に対し、本件特許を無効とすべき理由はない旨の主張をしている。

また、上記無効理由に反論するための証拠方法は、以下のとおりである。
[証拠方法]
<書証>
乙第1号証:株式会社伊勢丹からの回答書
乙第2号証:株式会社伊勢丹 執行役員 藤原春樹の名刺
乙第3号証:鈴木淳也の陳述書
なお、請求人は、乙第1ないし3号証の成立を認めている。

<人証>
証人 鎌倉衣里
証人 小沢幸子

5.無効理由に係る当事者の主張の概要
5-1.請求人の主張
(1)検甲1及び検甲2の裾上げのために用いられた方法
検甲1及び検甲2は、裾上げが完了した状態となっていることから、検甲1及び検甲2のそれぞれについて、被着者(購入者)の寸法に応じた裾上げ位置の決定(構成A)、決定した裾上げ位置の何らかの方法による確定(構成Bの一部)、裾上げ寸法に応じた裾の切断(構成C)、及び縫合による被服の裾上げ(構成Dの一部)が行われたことは明らかである。
また、検甲1及び検甲2には、その裾上げ位置に、柔軟性のピンが打ち込まれたまま残っていることから、裾上げ位置の確定のために、寸法位置決めガンにより、柔軟性のピンが打ち込まれたことは明らかである(構成B)。
さらに、検甲1及び検甲2の裾上げ位置に柔軟性のピンが残っているということは、柔軟性のピンを被服に付着させたまま縫合して被服の裾上げを行っていたことも明らかである(構成D)。
検甲1及び検甲2は、いずれも女性用ズボンであり(構成E)、これらに残されていた柔軟性のピンは、合成樹脂製である(構成F)。
以上のとおり、検甲1及び検甲2の裾上げのために用いられた方法は、本件特許発明の内容と完全に同一である。
(2)検甲1及び検甲2の裾上げの本件特許出願前の実施
検甲1の婦人服ジーンズに止められてある「お直し承り伝票」の記載内容から、検甲1の裾上げが、本件特許出願前である平成11年4月23日から翌24日にかけて行われたものであることが明らかである。
また、検甲2の婦人服ジーンズに止められてある「クイック伝票」の記載内容から、検甲2の裾上げが、本件特許出願前である平成11年8月28日に行われたものであることが明らかである。
(3)検甲1及び検甲2の裾上げの公然実施
a)裾上げ位置の決定(構成A)は、当然ながら、被着者(購入者)が婦人服ジーンズを試着している際に、販売員が購入者の意向を確認しながら行われるものである。
b)裾上げ位置の確定のための柔軟性のピンの打込み(構成B)についても、構成Aと同様、当然ながら、販売員が、購入者の面前で、希望の裾上げ位置を示しながら行うものである。また、裾上げ位置の確定のための柔軟性のピンの打込みが店頭において購入者の面前で行われることは、甲1の陳述書においても明確に説明されている。
c)裾上げ完了後の被服は、柔軟性のピンが付着したままの状態を購入者が視認し、裾上げ位置を確認した後、引き渡されるものであることからすると、柔軟性のピンを被服に付着したまま被服の裾上げを行うこと(構成C及び構成D)は、一般の購入者にとっても明らかな事項となっている。
d)検甲1及び検甲2がいずれも女性用ズボンであること(構成E)、及び、これらに残されていた柔軟性のピンが合成樹脂製であること(構成F)は、一般の購入者にも明らかな事項である。
以上のとおり、検甲1及び検甲2に適用された裾上げ工程として、本件特許発明1ないし3に係る構成A?Fは、伊勢丹新宿店本館2階の店頭において、購入者の面前で、公然実施されたものである。
(4)本件特許出願前に公然知られたことについて
検甲1及び検甲2に適用された裾上げ工程のうち、裾上げ位置の決定及び確定(構成A及び構成B)は、上記(3)で述べたとおり、伊勢丹新宿店本館2階において、購入者の面前で、公然実施されたものである。また、検甲1及び検甲2に適用された裾上げ工程のうち、柔軟性のピンを被服に付着したまま被服の裾上げを行うこと(構成C及び構成D)は、一般の購入者にとっても明らかな事項であるから、公然知られたものである。さらに、検甲1及び検甲2がいずれも女性用ズボンであること(構成E)、及び、これらに残されていた柔軟性のピンが合成樹脂製であること(構成F)は、一般の購入者にも明らかな事項であるから、公然知られたものでもある。
以上のとおり、検甲1及び検甲2に適用された裾上げ工程として、本件特許発明1ないし3に係る構成A?Fは、本件特許出願前に公然知られたものである。

なお、請求人の主張における主な事項を時系列とすると、以下のとおりである。
1)平成6年12月25日 検甲5(ピン無し、お直し承り伝票)の販売
2)平成8年4月3日 伊勢丹府中店の開店
3)平成9年1月6日 検甲6(ピン無し、お直し承り伝票)の販売
4)平成9年4月1日 証人鎌倉が伊勢丹入社
5)平成9年6月1日 証人鎌倉がヤングスポーツ2に配属
6)平成11年4月1日 証人田原が伊勢丹入社
7)平成11年4月23日 検甲1(ピン有り、お直し承り伝票)の販売
8)平成11年6月1日 証人田原がヤングスポーツ2に配属
9)平成11年8月28日 検甲2(ピン有り、クイック伝票)の販売
10)平成12年3月24日 本件特許出願
11)平成12年4月16日 検甲8(ピン無し、クイック伝票)の販売
12)平成12年10月8日 検甲7(ピン有り、クイック伝票)の販売
13)平成12年12月13日 証人鎌倉が検甲1、2、7、8の電話連絡
14)平成13年5月18日 本件特許の設定登録
15)平成13年7月23日 本件特許掲載公報発行
16)平成14年8月31日 本件特許に係る特許権実施許諾契約
ここで、「ピン有り」または「ピン無し」は、婦人服ジーンズの裾上げ位置に柔軟性のピンが有ることまたは柔軟性のピンが無いことを意味し、
「お直し承り伝票」または「クイック伝票」は、婦人服ジーンズに取り付けられている伝票が「お直し承り伝票」または「クイック伝票」であることを意味する。

5-2.被請求人の主張
(1)検甲1検証物について
(A)検甲1検証物(婦人服用ジーンズ)そのものについて
a)前記婦人服用ジーンズの補整に使用された縫糸は平成13年以降使用したものである。したがって検甲1は平成13年以降に補整されたものである。検甲1検証物は平成11年4月に補整されたものであると請求人は述べている。しかしながら、平成11年当時に被請求人が使用していた縫糸は太目ものを使用していたが、顧客側の要請により漸次細目に代え、検甲1及び検甲2に使用されている縫糸は細目であり、一見して平成13年以降に使用されたものであることがわかるものである。
b)「婦人用服用ジーンズ」は検証した結果、頗るあたらしく到底13年を経過したものとはおもわれない。
c)本件特許発明を出願前公然実施したことは絶対ないという証人小沢幸子氏証言から、本件特許発明を公然実施した事実はないものである。
(B)「お直し承り伝票」について
a)請求人は4月24日(年は不明)に出願前公然実施されたことを証明するために株式会社伊勢丹の従業員である鎌倉衣里氏を証人に立てた。その証言を聞くと、証人はその当日は株式会社伊勢丹ジーンズの販売店頭に実際直接に本件特許発明を実施して顧客にジーンズを販売したわけではない。実際販売したのは別人である。したがって証人の証言では本件特許発明が出願前公然実施された事実が存在しないことは明らかである。
b)「お直し伝票」は、株式会社伊勢丹の従業員であれば誰でも何時でも記入可能であることは証人の証言で判明した。
(C)証人田原くみの証言について
証人田原くみについては、書証はないので全く本人の証言のみである。したがって証人の記憶力の妥当性が問題になる。証人尋問した結果、証人はある事件(有名な事件)が起こったことは知っているが、その起こった年月日は全く記憶していない。してみると本件特許発明を実施したことは憶えているかもしれないが、その年月日を特定する能力は著しく劣っている。そのような劣化した記憶では本件特許発明を出願前実施したという主張は、全く信用できない。
(D)長期保存品について
a)長期保存品については、平成13年特許権実施契約を締結したときに、各種の問題があり特許権の実施料を支払う意思のない請求人は、公然実施された事実を証明できる証拠を当時の優秀な人材が結集していた法務を中心として全力を投じて探索したが結局発見できなかった。株式会社伊勢丹という日本を代表する大企業があれほど組織を駆使して精査して発見できなかったことはやはり公然実施された証拠はなかったものと断定せざるをえない。それが約13年を経過した現在に至って2件も証拠を発見できることは余りにも不自然で合理性に欠けるものである。
b)証人宮原秀雄氏は、検甲4、検甲5、検甲6、検甲7、検甲8が存在するから、検甲1及び検甲2が長期間保存されたものだと主張している。しかしながらこれらのものが長期間保存されたからといって検甲1が保存されたという立証は成立しない。
(2)検甲2検証物について
上記「(1)」と同様な主張に加え、以下を主張している。
(B)「お直し承り伝票」について
c)「お直し承り伝票」の表紙の「クイック伝票」なる用紙は、本件特許発明が登録された以後に使用されたもので、平成11年当時は使用されていない。

6.検甲1号証及び検甲2号証について
検甲1号証及び検甲2号証について、検証により明らかになった事項は、以下のとおりである。
6-1.検甲第1号証の「婦人服ジーンズ」について
(A)婦人服ジーンズの状態は、以下のとおりである。
a)婦人服ジーンズの裾上げ位置に、合成樹脂製の柔軟性のピンが打ち込まれている。
b)婦人服ジーンズには、「お直し承り伝票」という名称の伝票が取り付けられている。
c)婦人服ジーンズには、「BOBSON LADY’S」の文字が印字された白色の商品タグが取り付けられている。
d)婦人服ジーンズには、「ISETAN」の文字が印字された白色の商品タグが取り付けられている。
e)婦人服ジーンズの色は、黄土色(キャメル)である。
f)婦人服ジーンズのハンガーに「YS1-29」と記入された白色のタグが取り付けられている。
g)残布は、婦人服ジーンズのポケットを含めて存在しない。
(B)婦人服ジーンズに取り付けられた「お直し承り伝票」という名称の伝票の表面の内容は、以下のとおりである。
a)下部に、「店・フロア・お買場・お渡し場名(内線/直通)」と印刷された箇所がある。
b)上記「a)」の箇所に「本2F ヤングスポーツ2」という赤色の文字がゴム印で押されている。
c)「承り日」、「出来上り日」、「お名前」、「ご住所」、「お電話」、「来店」、「配送」、「扱者」、「品名」、「サイズ」、「商品記号」、「色柄」、「丈」、「袖丈」、「#」、「採寸者」、「商品代金」、「メーカー・ブランド」、「代済」、「基本工料・丈」及び「備考」の記入欄が印刷されてあり、そのうち、「お名前」、「ご住所」及び「お電話」の記入欄は、太枠で囲まれている。
d)「承り日」の欄に、「4月23日(金)」と青の複写式(以下、単に「複写式」という。)で記入されている。この欄の上部に「99」という数字が黒色で記入されている。
e)「出来上り日」の欄に、「4月24日(土)10時30分」と複写式で記入されている。
f)太枠で囲まれた部分にある「お名前」と「お電話」の欄に、○印が複写式で記入されており、また、「お名前」の欄に氏名が、「お電話」の欄に電話番号が、それぞれ複写式で記入されている。電話番号の右に「(会)」と黒色で記入されている。
g)「来店・配送」の欄のうち、来店の欄に、○印が複写式で記入されている。
h)「扱者」の欄に、「カサハラ」と複写式で記入されている。
i)「品名」の欄に、「ジーンズ」と複写式で記入されている。
j)「サイズ」の欄に、「32」と複写式で記入されている。
k)[商品記号]の欄に、「780」と複写式で記入されている。
l)「色柄」の欄に、「キャメル」と複写式で記入されている。
m)「丈」の欄に、「ピ」と複写式で記入されている。
n)「#」の欄に、「1330-012-100」と複写式で記入されている。
o)[採寸者]の欄に、「マツモト」と複写式で記入されている。
p)「商品代金」の欄に、「7900」と複写式で記入されている。
q)[メーカー・ブランド]の欄に、「BOBSON」と複写式で記入されている。
r)「代済」の欄に、○印が複写式で記入されている。
s)「基本工料・丈」の欄に、「300」と複写式で記入されている。
t)「備考」の欄に、「6/23 Tel伝言ずみ」と黒色で記入され、その欄の左側に近接して「’99」と黒色で記入されている。
u)「お直し承り伝票」の右上及び右下に、それぞれ「209266」と複写式で記入されている。
(C)婦人服ジーンズに取り付けられた「お直し承り伝票」という名称の伝票の裏面の内容は、以下のとおりである。
a)最上部に、「’99 10/8 Tel(会社)→不在」と黒色で記入されている。
b)上記「a)」の下に、「2000年1/28 pm2:40 伝言済 2/1,2連休 2月(水)休み 伝え済」と黒色で記入されている。
c)上記「b)」の下に、「2000年12/13(水) ご本人いらっしゃらなかったです。(会社に電話がかかります)」と黒色で記入されている。
(D)婦人服ジーンズに取り付けられた「BOBSON LADY’S」の文字が印字された白色の商品タグの内容は、以下のとおりである。
a)「NO.」の文字が印刷された右には、「BO780」の文字が印刷されている。
b)「COL.」の文字が印刷された右には、「122(キャメル)」の文字が印刷されている。
c)「PRICE」の文字が印刷された右には、「¥7,900」の文字が印刷されている。
d)「SIZE」の文字が印刷された右下には、「32」の文字が大きく印刷されている。
e)「綿95%」及び「ポリウレタン5%」の文字が印刷されている。
(E)婦人服ジーンズに取り付けられた「ISETAN」の文字が印字された白色の商品タグの内容は、以下のとおりである。
a)「1330-012-100」の文字が印刷されている。
b)上記「a)」の下には、「¥7,900」の文字が印刷されている。
(F)合成樹脂製の柔軟性のピンについて
a)長さ約4cmの細い線材であって、一端に太い横部材、他端には細い横部材が一体に備えられているピンである。
(G)「ISETAN」の文字が印字された白色の商品タグの取り付けピンについて
a)長さ約2cmの細い線材であって、一端に太い横部材、他端には細い横部材が一体に備えられているピンである。
(H)ハンガーについて
a)ハンガーの挟む部分にスポンジが取り付けられている。また、そのスポンジは、破損していない。更に、そのスポンジは、挟んだ婦人服ジーンズに付着していない。

6-2.検甲第2号証の「婦人服ジーンズ」について
(A)検甲第2号証の婦人服ジーンズの状態は、以下のとおりである。
a)婦人服ジーンズの左足の裾上げ位置に、合成樹脂製の柔軟性のピンが打ち込まれている。
b)婦人服ジーンズには、「クイック伝票」という名称の伝票が取り付けられている。
c)婦人服ジーンズには、「SOMETHING」の文字が印字された白色の商品タグが取り付けられている。
d)婦人服ジーンズには、「ISETAN」の文字が印字された白色の商品タグが取り付けられている。
e)婦人服ジーンズの色は、濃い青色である。
f)婦人服ジーンズには「SOMETHING」の文字が印字されたオレンジ色の商品タグが取り付けられている。
g)婦人服ジーンズのハンガーに「YS1-32」と記入された白色のタグが取り付けられている。
h)残布は、婦人服ジーンズのポケットを含めて存在しない。
(B)婦人服ジーンズに取り付けられた「クイック伝票」という名称の伝票の表面の内容は、以下のとおりである。
a)下部に、「本館2F ヤングスポーツ2 ジーンズコーナー」及び「ISETAN 新宿店」の文字が印刷されている。
b)「受日」、「出来上り日」、「お名前」、「ご住所」、「お電話」、「来」、「配」、「扱者」、「品名」、「サイズ」、「商品記号」、「色柄」、「ピン」、「左」、「右」、「つめ寸」、「採寸者」、「商品代金」、「メーカー」、「ブランド」、「基本工料」、「丈」及び「備考」の記入欄が印刷されてあり、そのうち、「お名前」、「ご住所」及び「お電話」の記入欄は、太枠で囲まれている。
c)「受日」の欄に、「8月28日(・)」と複写式で記入されている。括弧内には、「十」の下に「-」の記入が認められる。この欄の上部に「99」という数字が赤色で記入されている。
d)「出来上り日」の欄に、「8月28日(土)17時4・分」と複写式で記入されている。「4」の右側に何らかの記入は認められるが、判読は不能である。
e)太枠で囲まれた部分にある「お名前」の欄に氏名が、「お電話」の欄に電話番号が、それぞれ複写式で記入されている。また、複写式で記入された内容と同じ電話番号が、黒色で記入され、黒色で個人名が記入されている。
f)「来」、「配」の欄のうち、「来」の欄に、○印が複写式で記入されている。
g)「扱者」の欄に、「・・キ」と複写式で記入されている。「キ」の左は判読不能である。
h)「品名」の欄に、「・・ス」と複写式で記入されている。「ス」の左は判読不能である。
i)「サイズ」の欄に、「26」と複写式で記入されている。
j)「商品記号」の欄に、「7888」と複写式で記入されている。
k)「色柄」の欄に、「WA」と複写式で記入されている。
l)「ピン」の欄に、○印が複写式で記入されている。
m)「左」の欄に、○印が複写式で記入されている。
n)「採寸者」の欄に、「・・カワ」と複写式で記入されている。「カワ」の左は判読不能である。
o)「商品代金」の欄に、「6・00」と複写式で記入されている。「6」の右は判読不能である。
p)「メーカー」の欄に、「EDWIN」と複写式で記入されている。
q)「ブランド」の欄に、「Some」と複写式で記入されている。
r)「基本工料」、「丈」の欄に、「300」と複写式で記入されている。
s)クイック伝票の右上及び右下に、それぞれ「021863」と複写式で記入されている。
(C)婦人服ジーンズに取り付けられた「クイック伝票」という名称の伝票の裏面の内容は、以下のとおりである。
a)最上部に、「99」の文字が黒色で記入され、その下に「10/8 斉藤Tel 留守電」と黒色で記入されている。
b)上記「a)」の下に、「2000年1/28 「お客様の都合で電話をとりはずしています」とのアナウンス」と黒色で記入され、「山形」の赤色の押印がされている。
c)上記「b)」の下に、「2000年8/31 13:36 ルスTel入力済」と黒色で記入され、「伊藤」の赤色の押印がされている。
d)上記「c)」の下に、「2000年12/13(水)12:40ルス電入力済」と黒色で記入され、「鎌倉」の赤色の押印がされている。
(D)婦人服ジーンズに取り付けられた「SOMETHING」の文字が印字された白色の商品タグの内容は、以下のとおりである。
a)「26」の文字が一番大きく印刷されている。
b)下部には、「7888-00」及び「¥6,900」の文字が印刷されている。
c)「綿95%」及び「ポリウレタン5%」の文字が印刷されている。
(E)婦人服ジーンズに取り付けられた「ISETAN」の文字が印字された白色の商品タグの内容は、以下のとおりである。
a)「¥6,900」の文字が印刷されている。
(F)「SOMETHING」の文字が印字されたオレンジ色の商品タグの内容は、以下のとおりである。
a)「femme」の文字が印刷されている。
(G)合成樹脂製の柔軟性のピンについて
a)長さ約4cmの細い線材であって、一端に太い横部材、他端には細い横部材が一体に備えられているピンである。
(H)「ISETAN」の文字が印字された白色の商品タグの取り付けピンについて
a)長さ約4cmの細い線材であって、一端に太い横部材、他端には細い横部材が一体に備えられているピンである。但し、太い横部材は、上記(G)の合成樹脂製の柔軟性のピンのものとは形状が異なる。
(I)ハンガーについて
a)婦人服ジーンズは、ハンガーにスポンジを介して挟まれている。また、そのスポンジは、破損していない。更に、そのスポンジは、挟んだ婦人服ジーンズに付着していない。

7.当審の判断
7-1.検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズの裾上げについて
(1)長期預かり品について
検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズは、証人宮原の証言によると、所沢の倉庫に長期預かり品として保管されていたものである。また、甲5の別紙7の写真1?10に、所沢の倉庫における長期預かり品の保管状況が示されている。
検甲5及び検甲6の各婦人服ジーンズについても、証人宮原の証言によると、所沢の倉庫に長期預かり品として保管されていたものである。そして、それらに取り付けられた「お直し承り伝票」における青の複写式(以下、単に「複写式」という。)による「金額」、「スタイル名」、「丈」等の記入内容は、当該各婦人服ジーンズ及び他の商品タグの内容と整合し、信憑性があることより、上記各「お直し承り伝票」は、それぞれ上記各婦人服ジーンズの裾上げに係る伝票と認められる。
また、上記各「お直し承り伝票」の「受日」及び「出来上り日」の欄には、検甲5では「12月25日」と複写式で記入され、検甲6では「1月6日」と黒色で記入されている(黒色の記入は、複写式での記入が薄かったことより、後に上書きされたものとも考えられる。)こと、
検甲5においては「’95 6/19 現在使われていない」と黒色で「96 3/25 違う会社になっている」と赤色でそれぞれ記入され、検甲6においては「97 11/18ルス」と赤色で「’98 1/20 ルス電入力」と黒色でそれぞれ記入されていること、
そして、検甲5の「お直し承り伝票」には「府中店」の文字が印刷されていなく、検甲6の「お直し承り伝票」には「府中店」の文字が印刷され、平成8(1996)年4月3日に伊勢丹府中店が開店している事実(甲15)などから総合的に判断すると、検甲5及び検甲6の各婦人服ジーンズは、それぞれ1994年12月25日及び1997年1月6日に販売及び裾上げに係る作業がされ、長期預かり品として保管されていたものと認められる。
さらに、証人鎌倉の証言によると、ジーンズで裾上げが終わったものの引き取りに来ないケースが何件か有り、それらはしばらくの間は売場で管理しているが、あまりに長くなってしまったものはまとめて倉庫へ送っていたものと認められる。
よって、本件特許出願前に検甲5及び検甲6の各婦人服ジーンズが販売及び裾上げに係る作業がされ、長期預かり品として保管されていたこと並びに、証人宮原及び証人鎌倉の各証言からすると、検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズが長期預かり品として保管されていたとすることが、被請求人が主張する(上記「5-2.(1)(D)」)ように、不自然で合理性に欠けるとすることはできない。
(2)検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズの販売及び裾上げされた日について
検甲1の婦人服ジーンズに取り付けられた「お直し承り伝票」における複写式による「サイズ」、「色柄」、「メーカー・ブランド」等の記載内容は、当該婦人服ジーンズ及び他の商品タグの内容と整合し、信憑性があることより、上記「お直し承り伝票」は、上記婦人服ジーンズの裾上げに係る伝票と認められる。
また、「承り日」の欄の上部における「99」の黒色での記入は、該婦人服ジーンズが販売された後になされたものと認められるが、「承り日」の「4月23日(金)」の複写式の記入と、1999年の日付けと曜日が合致していること、また、その裏面の「2000年12/13(水) ご本人いらっしゃらなかったです。(会社に電話がかかります)」との記入が、証人鎌倉の自分が書いた筆跡との証言等も考慮すれば、上記「99」の記入は、伊勢丹の従業員が、裾上げに係る伝票としては必要のない年を預かり品として管理するために省略して記入したものとみることが自然である。
さらに、上記「お直し承り伝票」に、「本2F ヤングスポーツ2」という赤色の文字がゴム印で押されていることからすると、検甲1の婦人服ジーンズは、「承り日」である1999年4月23日に伊勢丹新宿店本館2階のヤングスポーツ2売場で販売され、「出来上り日」である1999年4月24日までには、裾上げに係る作業がされたものと認める。
検甲2の婦人服ジーンズに取り付けられた「クイック伝票」における複写式による「サイズ」、「色柄」、「メーカー」、「ブランド」等の記載内容は、当該婦人服ジーンズ及び他の商品タグの内容と整合し、信憑性があることより、上記「クイック伝票」は、上記婦人服ジーンズの裾上げに係る伝票と認められる。
また、「受日」の欄に、「8月28日(・)」の括弧内の「十」の下に「-」の記入は、該括弧が曜日を記入する欄と認められることより、上記「受日」の欄の記入は「8月28日(土)」と認められる。この欄の上部における「99」の赤色での記入は、上記「受日」と、1999年の日付けと曜日が合致していること、また、その裏面の「2000年12/13(水)12:40ルス電入力済」との記入について、証人鎌倉の自分が電話をかけたとの証言等も考慮すれば、検甲1号証と同様に、上記「99」の記入は、伊勢丹の従業員が、裾上げ作業の伝票としては必要のない年を預かり品として管理するために省略して記入したものとみることが自然である。
さらに、上記「クイック伝票」に、「本館2F ヤングスポーツ2 ジーンズコーナー」の文字の印刷があることからすると、検甲2の婦人服ジーンズは、「受日」及び「出来上り日」である1999年8月28日に、伊勢丹新宿店本館2階のヤングスポーツ2売場で販売され、裾上げに係る作業がされたものと認める。
そして、証人鎌倉による、ジーンズの裾上げに係る切断及び縫合の作業は、伊勢丹新宿店内の作業場スペースにおいて外注している補正加工業者(「小沢縫製所」)によりなされていたとの証言からすると、検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズの裾上げに係る切断及び縫合の作業も、同様に、伊勢丹新宿店内の作業場スペースにおいて外注している補正加工業者によりなされたものと認める。
(3)寸法位置決めガン(ピストル)を用いた裾上げ方法について
証人鎌倉による、伊勢丹新宿店本館2階のヤングスポーツ2売場に本配属(平成9年6月)となった当時は、ジーンズの裾に金属製の針を打ち込み、メジャーで股下長さを測り、お直し伝票にその長さを記入する方法により裾上げ位置の確定をしていたが、その後、「ピストル」と呼ばれる道具を用いてピンを打ち込む裾上げ方法により裾上げ位置を確定するようになったとの証言及び、証人田原による、伊勢丹新宿店本館2階のヤングスポーツ2売場に仮配属(平成11年5月)された当時から「ピストル」と呼ばれる道具を用いてピンを打ち込む裾上げ方法により裾上げ位置の確定を行っていたとの証言からすると、
伊勢丹新宿店本館2階のヤングスポーツ2売場での上記「ピストル」と呼ばれる道具を用いてピンを打ち込む裾上げ方法は、ジーンズの裾上げ位置を確定するために、遅くとも平成11年5月にはすでに開始されていたことが推認できる。
(4)検甲1及び検甲2の合成樹脂製の柔軟性のピンの打ち込みについて
証人鎌倉によれば、ジーンズのメジャーを用いた方法による裾上げ位置の確定においては、当該メジャーで測った股下長さをお直し伝票に記入するのに対して、「ピストル」と呼ばれる道具を用いてピンを打ち込む裾上げ方法により裾上げ位置の確定においては、股下長さをお直し伝票に記入しないものと認められる。
実際に、裾上げ位置に合成樹脂製の柔軟性のピンの打ち込まれていない検甲4、検甲5、検甲6及び検甲8の各婦人服ジーンズの各伝票には、股下長さが記入されているのに対して、裾上げ位置に合成樹脂製の柔軟性のピンの打ち込まれている検甲1、検甲2及び検甲7の各婦人服ジーンズの各伝票には、股下長さが記入されていない。そして、検甲1の婦人服ジーンズに取り付けられた「お直し承り伝票」の「丈」の欄に寸法ではなく「ピ」と複写式で記入されていることは、裾上げ位置の確定が「ピストル」または「合成樹脂製の柔軟性のピン」を用いて行ったことを意味するものと考えられ、検甲2の婦人服ジーンズに取り付けられた「クイック伝票」には寸法の記入はなく「ピン」の欄に○印が複写式で記入されていことは、裾上げ位置の確定が「合成樹脂製の柔軟性のピン」を用いて行ったことを意味するものと考えられる。
ここで、検甲1の婦人服ジーンズについては、その販売された日(1999年4月23日)は、上記「(3)」において、伊勢丹新宿店本館2階のヤングスポーツ2売場での「ピストル」と呼ばれる道具を用いてピンを打ち込む裾上げ方法が遅くともすでに開始されていたと推認できるとした平成11年5月より若干前であるものの、上記のように「お直し承り伝票」の「丈」の欄に寸法ではなく「ピ」と複写式で記入されていることを考慮すれば、検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズの合成樹脂製の柔軟性のピンは、各婦人服ジーンズの裾上げ位置を確定するためのものであって、その打ち込みは、各婦人服ジーンズが販売された時になされたものと認められる。
さらに、証人鎌倉の証言によると、合成樹脂製の柔軟性のピンのジーンズの裾上げ位置への打ち込みは、伊勢丹新宿店本館2階のヤングスポーツ2売場の店頭において販売員によりお客様(購入者)の目の前で行われたものと認められる。
以上のことより、検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズにおける裾上げ位置への合成樹脂製の柔軟性のピンの打ち込みは、裾上げ位置を確定するために、それぞれ上記「(2)」において販売されたと認めた1999年4月23日及び1999年8月28日に伊勢丹新宿店本館2階のヤングスポーツ2売場の店頭において販売員により各購入者の目前で行われたものと認める。
(5)被請求人の主張等について
検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズには、裾上げ作業における切断に伴って生じる残布は存在せず、また、証人小沢の残布といえどもお客様が購入したもので、全部お返しするようになっていた旨の証言もある。そして、上記残布が存在しない理由は、請求人により明らかにされていない。しかしながら、請求人の提出した検甲4、検甲7及び検甲8の各婦人服ジーンズには、残布が存在していることもあり、残布が存在しないことのみをもって、検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズの裾上げに係る作業及び裾上げ位置への合成樹脂製の柔軟性のピンの打ち込みが、本件特許出願前になされていたことを否定することはできない。
また、被請求人は、検甲1及び検甲2の各婦人服用ジーンズの補整に使用された縫糸は平成13年以降使用したものであり、平成11年当時に被請求人が使用していた縫糸は太目ものを使用していたが、顧客側の要請により漸次細目に代え、検甲1及び検甲2に使用されている縫糸は細目であり、一見して平成13年以降に使用されたものであることがわかる旨の主張をし(上記「5-2.(1)(A)a)」)、また、それに沿った証人小沢の証言もあるが、婦人服用ジーンズの補整に使用された縫糸の太さは、時代とともに細いのものに変わってきたことが事実であるとしても、検甲1及び検甲2に使用されている縫糸が平成11年当時に使用されていなかったことが、客観的に判断できる証拠はなく、上記被請求人の主張は採用できない。
さらに、被請求人は、「クイック伝票」なる用紙は、本件特許発明が登録された以後に使用されたもので、平成11年当時は使用されていない旨の主張をしているが(上記「5-2.(2)(B)c)」)、「クイック伝票」が平成11年当時に使用されていなかったことが、客観的に判断できる証拠はなく、上記被請求人の主張は採用できない。

7-2.各本件特許発明が公然実施をされたことについて
7-2-1.本件特許発明1について
上記「7-1.(2)」で述べたように、検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズは、それぞれ本件特許出願前の1999年4月23日及び1999年8月28日に販売され、その後裾上げされたものであり、また、ジーンズに係る裾上げ位置の決定は、当該ジーンズの購入者が、被着者となって当該ジーンズを試着している際に、販売員が購入者の意向を確認しながら行われることは本件特許出願前に周知の事項であることより、本件特許発明1に係る「被着者の寸法に応じて被服の裾上げ寸法を測ってその裾上げ位置を決定する工程」(構成A)は、本件特許出願前に伊勢丹新宿店本館2階のヤングスポーツ2売場の店頭において販売員により、公然実施されたものと認められる。
上記「7-1.(4)」で述べたように、検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズにおける裾上げ位置への合成樹脂製の柔軟性のピンの打ち込みは、裾上げ位置を確定するために、それぞれ本件特許出願前の1999年4月23日及び1999年8月28日に伊勢丹新宿店本館2階のヤングスポーツ2売場の店頭において販売員により各購入者の目前で行われたものであるから、本件特許発明1に係る「この裾上げ位置が決定したら、その裾上げ位置に寸法位置決めガンで柔軟性のピンを打ち込み被服の裾上げ位置を確定する工程」(構成B)は、本件特許出願前に伊勢丹新宿店本館2階のヤングスポーツ2売場の店頭において販売員により公然実施をされたものと認められる。
そして、本件特許発明1に係る「この裾上げ位置が確定してから、所望裾上げ寸法に応じて被服の裾を切断する工程」(構成C)及び構成Dのうち「この被服の裾を切断してから、縫合して被服の裾上げを行う工程」は、上記「7-1.(2)」において述べたように、それぞれ本件特許出願前の1999年4月24日及び1999年8月28日までには、伊勢丹新宿店内において補正加工業者により実施されたものと認められる。ここで、補正加工業者による上記実施について検討すると、ジーンズを裾上する際に切断及び縫合の作業は、当然に行われる工程であり、本件特許出願前に周知の工程でもあることより、上記実施に係る作業内容は広く一般に知られていたものといえる。よって、補正加工業者による上記実施は、その実施に係る作業内容が公然知られた状況でなされたものと認められる。
また、上記構成Dにおける「ピンを被服に付着したまま縫合」することは、証人鎌倉の「ピン」はジーンズをお客様(購入者)に渡す際の裾上げ位置の確認に用いられるものであるとの証言及び、検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズにも裾上げ位置に当該「ピン」が残っていることからすると、当然の事項と認められる。
以上のとおり、本件特許発明1に係る構成A及びBは、検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズの裾上げに適用される工程として、本件特許出願前に伊勢丹新宿店本館2階の店頭において販売員により公然実施をされたものであり、また、本件特許発明1に係る構成C及びDは、本件特許出願前に伊勢丹新宿店内において補正加工業者により公然実施されたものと認められる。
よって、本件特許発明1は、検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズの裾上げのために、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明であるから、特許法第29条第1項第2号の規定する発明として特許を受けることができないものである。
または、本件特許発明1に係る上記構成C及びDの実施が、公然でなかったとしても、上記構成C及びDの裾上げに係る工程は、ジーンズを裾上げする際に当然に行われる工程であり、本件特許出願前に周知の工程でもあることより、公然実施をされた構成A及びBから、その後行われる工程として当業者が容易に想到し得るものであるので、本件特許発明1は、日本国内において公然実施をされた発明に基づいて本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7-2-2.本件特許発明2について
検甲1及び検甲2の各「婦人服ジーンズ」は、それぞれ本件特許発明2の「女性用ズボン」に相当することより、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様に、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明であるから、特許法第29条第1項第2号の規定する発明として特許を受けることができないもの、または、日本国内において公然実施をされた発明に基づいて本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7-2-3.本件特許発明3について
検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズの裾上げ位置に打ち込まれている柔軟性のピンは、合成樹脂製であることより、本件特許発明3は、本件特許発明1と同様に、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明であるから、特許法第29条第1項第2号の規定する発明として特許を受けることができないもの、または、日本国内において公然実施をされた発明に基づいて本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7-3.各本件特許発明が公然知られたことについて
上記「7-2.」で述べたように、本件特許発明1ないし3に係る構成A及びBは、検甲1及び検甲2の各婦人服ジーンズの裾上げに適用された工程として、本件特許出願前に伊勢丹新宿店本館2階の店頭において購入者の面前で販売員により公然実施をされたものであることから、少なくとも上記各購入者に、公然知られた工程である。また、本件特許発明1ないし3に係る構成C及びDは、ジーンズを裾上げする際に当然に行われる工程であり、本件特許出願前に周知の工程でもあることより、上記各購入者が知っていた工程か、または、公然知られた構成A及びBから、その後行われる工程として当業者が容易に想到し得る工程と認められる。
よって、本件特許発明1ないし3は、本件特許出願前に日本国内において公然知られた発明であるから、特許法第29条第1項第1号の規定する発明として特許を受けることができないもの、または、日本国内において公然知られた発明に基づいて本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

8.むすび
以上のとおり、本件特許発明1ないし3は、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明であり、また、本件特許出願前に公然知られた発明でもあるから、特許法第29条第1項に規定する発明として特許を受けることができないもの、または、日本国内において公然実施をされた発明若しくは公然知られた発明に基づいて本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許発明1ないし3の特許は、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担するものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-09 
結審通知日 2012-05-23 
審決日 2012-06-05 
出願番号 特願2000-83485(P2000-83485)
審決分類 P 1 113・ 112- Z (A41H)
P 1 113・ 121- Z (A41H)
P 1 113・ 111- Z (A41H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 千葉 成就  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 紀本 孝
熊倉 強
登録日 2001-05-18 
登録番号 特許第3190321号(P3190321)
発明の名称 被服の裾上げ方法  
代理人 鈴木 郁夫  
代理人 町田 伸一  
代理人 横山 雅  
代理人 大平 興毅  
代理人 間宮 順  
代理人 鈴木 淳也  
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