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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41N
管理番号 1260835
審判番号 不服2011-17996  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-19 
確定日 2012-07-30 
事件の表示 特願2008-515514「グラビア製版ロール及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月22日国際公開、WO2007/132734〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、2007年5月10日(優先権主張2006年5月11日、日本国)を国際出願日とする国際出願であって、平成23年4月26日付けで手続補正がなされ、同年5月20日付けで拒絶の査定がなされ、同年8月19日に拒絶査定に対する審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲、及び明細書を補正する手続補正がなされ、これらに対し、同年12月7日付けで審尋がなされた。なお、審判請求人から、回答書の提出はなかった。

2.平成23年8月19日付手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項3は、
「CFRPチューブ本体と、該CFRPチューブ本体の表面に設けられた銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面に形成されたグラビアセルと、該銅メッキ層の表面を被覆するように形成された表面強化被覆層と、を含み、アルミニウム製又は鉄製又はCFRP製のベースロールに着脱可能に被嵌せしめられるグラビア製版ロール用CFRPチューブであって、新しい図柄のCFRPグラビア製版ロールが必要な場合には新しい図柄のCFRPチューブのみを購入し、古いグラビア製版ロールのベースロールから古いCFRPチューブを取り外し新しいCFRPチューブを古いベースロールに被嵌すれば新しい図柄のグラビア製版ロールとすることができるようにしたことを特徴とするグラビア製版ロール用CFRPチューブ。」
と補正された。(下線は審決にて付した。以下、同じ。)
上記補正は、請求項3に係る発明を特定するために必要な事項である「ベースロール」に関し、「アルミニウム製又は鉄製又はCFRP製」と限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項3に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、前記に記載された事項により特定されるところ、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(2-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前である平成2年10月4日に頒布された「特開平2-248291号公報 」(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
・「本願発明は、印刷一般用、特にグラビア及びフレキソ印刷用プラスチックシリンダを製造する方法に関する。また、本願発明は、この方法によって得られるシリンダに関する。」(第2頁右上欄第3行?第6行)
・「本願発明による方法は、(a)自己支持可能な硬質材料、好ましくはガラスまたは炭素のフィラメントまたは繊維で補強したエポキシ樹脂からなる内側円筒形チューブを作り、(b)この円筒形チューブを、発泡プラスチック材料、好ましくは、硬質ポリウレタンで被覆し、(c)この被覆した発泡プラスチック材料の外面を完全に平滑化し、(d)何らかの方法で金属製材料を取り付けることによりこの発泡プラスチック材料の平滑化された外面を電気伝導化し、(e)電気伝導化した外面を、好ましくは、電気メッキした銅を取り付けることにより、または食刻可能な感光性ポリマー材料を取り付けることにより、食刻可能にする」(第2頁左下欄第19行?右下欄第12行)

これらの記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「炭素のフィラメントで補強したエポキシ樹脂からなる内側円筒形チューブと、この円筒形チューブを被覆した発泡プラスチック材料と、この発泡プラスチック材料の外面を電気伝導化してその外面を電気メッキした食刻可能な銅と、によって得られるグラビア印刷用プラスチックシリンダ。」

(2-2)引用例2
同じく引用された、本願の優先日前である平成8年1月9日に頒布された特開平8-2134号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
・「印刷パターンの凹部の内表面を含む基板の表面に硬質の保護膜を形成したことを特徴とする印刷用凹版。」(【請求項1】)
・「【産業上の利用分野】本発明は、特にグラビアオフセット印刷による精密印刷に適した印刷用凹版に関するものである。」(段落【0001】)
・「本発明における基板1には、例えばソーダライムガラス、ステンレス、銅などが用いられる。また、エッジ部がシャープで凹部の底面がフラットな凹部を得るためには、前記の基板材料のうち、特にソーダライムガラスなどの軟質ガラスを用いることが好ましい。硬質の保護膜3としては、例えばクロム、アルミニウム、チタン、モリブデン、銅、金などの金属膜、TiC、TiN、Al_(2)O_(3)、SiC、MoSi、SiO_(2)、Si_(3)N_(4)、WCなどのセラミックス、ダイアモンドなどが用いられる。」(段落【0008】)

これらの記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「銅の基板の表面に硬質の保護膜を形成したグラビアオフセット印刷の印刷用凹版。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
後者における「炭素のフイラメントで補強したエポキシ樹脂からなる内側円筒形チューブ」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「CFRPチューブ本体」に相当し、以下同様に、「電気メッキした食刻可能な銅」は、「銅メッキ層」に、それぞれ相当する。また、後者の「グラビア印刷用プラスチックシリンダ」は、「グラビア印刷用」のものであり、「CFRPチューブ本体」を有するものであるから、後者における「グラビア印刷用プラスチックシリンダ」と前者における「グラビア製版ロール用CFRPチューブ」とは、「グラビア製版用CFRPチューブ」との概念で共通する。
したがって、両者は、
「CFRPチューブ本体と、該CFRPチューブ本体に設けられた銅メッキ層と、を含む、グラビア製版用CFRPチューブ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
CFRPチューブ本体と銅メッキ層との積層関係に関して、本願補正発明は、「CFRPチューブ本体の表面に設けられた銅メッキ層」であるのに対して、引用発明1は、「円筒形チューブを被覆した発泡プラスチック材料と、この発泡プラスチック材料の外面を電気伝導化してその外面を電気メッキした食刻可能な銅」である点。
[相違点2]
グラビアセルに関して、本願補正発明は、「銅メッキ層の表面に形成されたグラビアセル」であるのに対して、引用発明1は、「電気メッキした食刻可能な銅」であって、グラビアセルが形成されていない点。
[相違点3]
本願補正発明は、「該銅メッキ層の表面を被覆するように形成された表面強化被覆層」と特定されているのに対して、引用発明1は、表面強化被覆層が形成されていない点。
[相違点4]
グラビア製版用CFRPチューブに関して、本願補正発明は、「アルミニウム製又は鉄製又はCFRP製のベースロールに着脱可能に被嵌せしめられるグラビア製版ロール用CFRPチューブであって、新しい図柄のCFRPグラビア製版ロールが必要な場合には新しい図柄のCFRPチューブのみを購入し、古いグラビア製版ロールのベースロールから古いCFRPチューブを取り外し新しいCFRPチューブを古いベースロールに被嵌すれば新しい図柄のグラビア製版ロールとすることができるようにした」のに対して、引用発明1は、「グラビア印刷用プラスチックシリンダ」であるが、どのように使用されるのか不明である点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。
(4-1)相違点1について
本願補正発明は、「CFRPチューブ本体の表面に設けられた銅メッキ層」とのみ特定しているから、引用発明1のようなCFRPチューブ本体の表面と銅メッキ層との間に他の層を介したものをも包含するものと解される。
したがって、本願補正発明と引用発明1とは、上記相違点1において、実質的な差異はない。
また、仮に、本願補正発明の「CFRPチューブ本体の表面に設けられた銅メッキ層」との構成を、CFRPチューブ本体の表面に他の層を介さずに直接銅メッキ層を設けたと解釈したとしても、印刷版において、基板の表面に他の層を介さずに直接銅メッキ層を設けられたものは、本願の優先日前に、周知の技術事項(例えば、特開昭62-282934号公報の第5頁右上欄第1行?第4行、第9行?第10行、第17?第18行、及び図面参照。以下、「周知の技術事項1」という。)である。
また、引用発明1と上記周知の技術事項1とは、共に印刷版という技術分野に属し、相違点1に係る本願補正発明の構成に格別の技術的意義はない。
したがって、引用発明1において、上記周知の技術事項1を適用することにより、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(4-2)相違点2について
引用発明1は、グラビア印刷のためのシリンダであって、「電気メッキした食刻可能な銅」、つまり、銅メッキ層の表面が食刻可能であるから、グラビア印刷のために、銅メッキ層の表面を食刻してグラビアセルを形成することは、当業者にとって明らかである。
したがって、引用発明1において、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(4-3)相違点3について
引用発明2は、上記2.(2-2)のとおりであって、引用発明2における「硬質の保護膜」は、その構造、機能、作用等からみて、本願補正発明における「表面強化被覆層」に相当する。また、引用発明2の「銅の基板」は、グラビア製版を構成する一つの層といえるから、引用発明2における「銅の基板」と本願補正発明における「銅メッキ層」とは、銅がグラビア製版を構成する一つの層「銅層」との概念で共通する。
してみると、引用発明2は、「銅層の表面を被覆するように形成された表面強化被覆層」を備えている。
また、引用発明1と引用発明2とは、共にグラビア印刷用の印刷版という技術分野に属し、印刷版において、耐久性を向上させることは、一般的な課題であって、引用発明1においても自明の課題であるから、引用発明1において上記課題を解決するために引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(4-4)相違点4について
グラビア印刷版において、鉄製のベースロールに着脱可能に被嵌せしめられるグラビア製版ロール用チューブは、本願の優先日前に、周知の技術事項(例えば、特開昭62-282934号公報の第1頁左下欄第5行?右下欄第3行、第5頁左上欄第7行?第15行、及び図面、特開昭57-95464号公報の第2頁左上欄第3行?右上欄第12行、第3頁右上欄第8行?左下欄第19行、及び第1、3、5図参照。以下、「周知の技術事項2」という。)である。
また、引用発明1と上記周知の技術事項2とは、共にグラビア印刷用の印刷版という技術分野に属し、両者は、チューブという共通の構造を備えるものであって、引用発明1の内側円筒形チューブをベースロールに被嵌させることに格別の技術的な困難性はないから、引用発明1において上記周知の技術事項2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、上記周知の技術事項2を適用することにより、相違点4に係る本願補正発明の「アルミニウム製又は鉄製又はCFRP製のベースロールに着脱可能に被嵌せしめられるグラビア製版ロール用CFRPチューブ」との構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
そして、本願明細書には、本願補正発明の効果として、「本発明のグラビア製版ロールにおいては、CFRPチューブがベースロールに着脱自在に被嵌されるように構成されているので、本発明のグラビア製版ロールを一旦購入すれば、新しい図柄のグラビア製版ロールが必要な場合には、新しい図柄のCFRPチューブのみを購入し、古いグラビア製版ロールのベースロールから古いCFRPチューブを取り外し、新しいCFRPチューブを古いベースロールに被嵌すれば新しい図柄のグラビア製版ロールとすることができる。」(段落【0029】)と記載されているように、相違点4に係る本願補正発明の「新しい図柄のCFRPグラビア製版ロールが必要な場合には新しい図柄のCFRPチューブのみを購入し、古いグラビア製版ロールのベースロールから古いCFRPチューブを取り外し新しいCFRPチューブを古いベースロールに被嵌すれば新しい図柄のグラビア製版ロールとすることができるようにした」との構成は、本願補正発明における「ベースロールに着脱可能に被嵌せしめられるグラビア製版ロール用CFRPチューブ」との構成によって奏する効果が示されているに過ぎない。してみると、上記のとおり、引用発明1において、上記周知の技術事項2を適用すれば、相違点4に係る本願補正発明の「アルミニウム製又は鉄製又はCFRP製のベースロールに着脱可能に被嵌せしめられるグラビア製版ロール用CFRPチューブ」との構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものであり、本願補正発明の奏する上記の効果、つまり、相違点4に係る本願補正発明の「新しい図柄のCFRPグラビア製版ロールが必要な場合には新しい図柄のCFRPチューブのみを購入し、古いグラビア製版ロールのベースロールから古いCFRPチューブを取り外し新しいCFRPチューブを古いベースロールに被嵌すれば新しい図柄のグラビア製版ロールとすることができるようにした」との構成は、引用発明1、及び上記周知の技術事項2から当業者が予測できた範囲内のものであって,当業者が容易に想到し得るものである。
よって、引用発明1において、上記周知の技術事項2を適用することにより、相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明の全体構成によって奏される効果も、引用発明1、引用発明2、上記周知の技術事項1、及び上記周知の技術事項2から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2、上記周知の技術事項1、及び上記周知の技術事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願の発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年4月26日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「CFRPチューブ本体と、該CFRPチューブ本体の表面に設けられた銅メッキ層と、該銅メッキ層の表面に形成されたグラビアセルと、該銅メッキ層の表面を被覆するように形成された表面強化被覆層と、を含み、ベースロールに着脱可能に被嵌せしめられるグラビア製版ロール用CFRPチューブであって、新しい図柄のCFRPグラビア製版ロールが必要な場合には新しい図柄のCFRPチューブのみを購入し、古いグラビア製版ロールのベースロールから古いCFRPチューブを取り外し新しいCFRPチューブを古いベースロールに被嵌すれば新しい図柄のグラビア製版ロールとすることができるようにしたことを特徴とするグラビア製版ロール用CFRPチューブ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は、上記「2.(2)引用例」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、実質的に上記「2.(1)補正後の本願の発明」で検討した本願補正発明の「ベースロール」について、「アルミニウム製又は鉄製又はCFRP製」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明を特定する事項の全てを含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(3)対比」及び「2.(4)判断」に記載したとおり、引用発明1、引用発明2、上記周知の技術事項1、及び上記周知の技術事項2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1、引用発明2、上記周知の技術事項1、及び上記周知の技術事項2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、引用発明2、上記周知の技術事項1、及び上記周知の技術事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-07 
結審通知日 2012-06-08 
審決日 2012-06-19 
出願番号 特願2008-515514(P2008-515514)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41N)
P 1 8・ 575- Z (B41N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 裕美子  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 鈴木 秀幹
長島 和子
発明の名称 グラビア製版ロール及びその製造方法  
代理人 石原 進介  

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