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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N |
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管理番号 | 1260885 |
審判番号 | 不服2011-1659 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-01-24 |
確定日 | 2012-08-02 |
事件の表示 | 特願2009- 11064「照明装置、画像読取装置及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月 5日出願公開、特開2010-171611〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成21年1月21日に出願されたものであって、平成22年1月20日付け拒絶理由に対して平成22年3月25日付けで手続補正書が提出されたが、平成22年10月20日付けで拒絶査定がされたものであり、平成23年1月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されている。 これに対して、審判合議体は平成24年3月1日付けで拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、審判請求人からは何らの応答もない。 2.本願特許請求の範囲の記載 本願の発明は、平成23年1月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲には、次のように記載されている。 なお、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の記載は発明の詳細な説明に記載されたものである。 【請求項1】 原稿画像光を画像データとして電気信号に変換する撮像素子の主走査方向に延びる光照射領域に向けて実質同一光量の光をそれぞれ照射する複数の発光素子を前記主走査方向に列設した光源を有する照明装置において、 前記複数の発光素子は、発光の際に所定方向に指向特性を有し、かつ、前記指向特性が何れも実質同一のものであり、 前記複数の発光素子の前記主走査方向における発光素子ピッチ[mm]をP、前記複数の発光素子の原稿への光軸距離[mm]をHとし、 前記複数の発光素子による前記原稿の前記光照射領域での前記主走査方向の明暗の繰り返しを示す照度周期において照度の最大値L1から照度の最小値L2を差し引いた値を照度の平均値L3で割ったムラ指数[%](={(L1-L2)/L3}×100[%])をM、前記照度周期の半周期であるムラ間距離[mm]をN、比例定数[%/mm]をaとすると、 前記発光素子ピッチP及び前記光軸距離Hのうち何れか一方の値が予め設定された状態において、 M≦a×N-7.5(a=1/2)の判定基準の式によりP/Hに対して前記照度のムラである照度ムラが判定され、 前記発光素子ピッチP及び前記光軸距離Hのうち他方の値は、前記一方の値に対して、P/Hの所定の関係式を満たす値に設定されていることを特徴とする照明装置。 【請求項2】 請求項1に記載の照明装置において、 前記判定基準の式により前記照度ムラを判定して得られた前記P/Hの所定の関係式がP/H≦0.71であることを特徴とする照明装置。 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の照明装置において、 前記複数の発光素子は、前記主走査方向に一列に列設されていることを特徴とする照明装置。 【請求項4】 請求項1又は請求項2に記載の照明装置において、 前記複数の発光素子は、前記光照射領域を間にして、前記主走査方向に直交する副走査方向の両側に列設されていることを特徴とする照明装置。 【請求項5】 請求項4に記載の照明装置において、 前記複数の発光素子は、前記両側のうち、一方側において前記主走査方向に列設された複数の第1発光素子と、他方側において前記主走査方向に列設された複数の第2発光素子とからなり、 前記複数の第1発光素子及び前記複数の第2発光素子は、該第1発光素子のピッチ及び該第2発光素子のピッチが前記発光素子ピッチPと同一の距離とされ、かつ、ピッチ位置が前記副走査方向で揃うように列設されていることを特徴とする照明装置。 【請求項6】 請求項4に記載の照明装置において、 前記複数の発光素子は、前記両側のうち、一方側において前記主走査方向に列設された複数の第1発光素子と、他方側において前記主走査方向に列設された複数の第2発光素子とからなり、 前記複数の第1発光素子及び前記複数の第2発光素子は、該第1発光素子のピッチ及び該第2発光素子のピッチが前記発光素子ピッチPの2倍の距離とされ、かつ、前記両側のうち、一方側の隣り合う発光素子の中間位置に他方側の発光素子が列設されていることを特徴とする照明装置。 【請求項7】 請求項1から請求項6までの何れか一つに記載の照明装置において、 前記複数の発光素子は、光源基板に搭載されており、前記光源基板の基板面に対して光軸が平行になるように光を射出するサイド発光と、前記光源基板の基板面に対して光軸が垂直になるように光を射出する頂面発光とのうち何れかの発光を行う発光面を有していることを特徴とする照明装置。 【請求項8】 請求項1から請求項7までの何れか一つに記載の照明装置と、前記原稿を前記照明装置にて照明しつつ該照明装置により照明された該原稿からの反射光を読み取る原稿読取部とを備えたことを特徴とする画像読取装置。 【請求項9】 請求項8に記載の画像読取装置において、 透光性の原稿台を備え、前記光源は、前記原稿台を介して前記原稿を照射することを特徴とする画像読取装置。 【請求項10】 請求項8又は請求項9に記載の画像読取装置と、前記画像読取装置により読み取られた前記原稿の画像を記録シートに形成する画像形成部とを備えたことを特徴とする画像形成装置。 3.平成24年3月1日付け拒絶理由 審判合議体が平成24年3月1日付けで通知した拒絶理由は、3つの拒絶理由を通知するもので、その[理由1]?[理由3]は次のとおりである。 「 [理由1] 請求項1及び2に記載されたものは、複数の発光素子を列設した光源を有する照明装置(そのような照明装置自体は周知のものである)であるが、その特徴とする 「M≦a×N-7.5(a=1/2)」なる判定基準の式、 「P/H≦0.71」なるP/Hの所定の関係式は、 それらを満足すれば視覚上照度ムラが生じないとする単なる人為的(あるいは人間の精神活動に依存する)取り決めであって、自然法則に基づく判定基準の式、あるいは関係式であるということはできない。 これらの式における右辺の値は、それぞれ小さい値が望ましいものであるところ、どのような値とするかは、その上限値(ムラを感じない範囲の限界値)のどこに定めるかという単なる決め事にすぎないものである。 請求項1、請求項2においては、発明を特定する事項の主要な要素が自然法則を利用していないため、請求項1、請求項2に記載されたものは全体として技術的思想の創作とは認められない。 そして、これらが請求項3?10の内容で限定されたとしても、その判断が変わるものではない。 したがって、本願の特許請求項の範囲に記載されている全請求項の内容は、特許法第2条第1項で定める「発明」とは認められない。(次項[理由2]の(3)及び(4)を参照。) よって、本願の全請求項の内容は、特許法第29条第1項柱書きにおける「発明」に該当しないから、特許法第29条第1項柱書きの規定により特許を受けることができない。 [理由2] 本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。 (1)請求項1において、 「 前記発光素子ピッチP及び前記光軸距離Hのうち何れか一方の値が予め設定された状態において、 M≦a×N-7.5(a=1/2)の判定基準の式によりP/Hに対して前記照度のムラである照度ムラが判定され、 前記発光素子ピッチP及び前記光軸距離Hのうち他方の値は、前記一方の値に対して、P/Hの所定の関係式を満たす値に設定されている 」 とされているが、“照度ムラの判定”と“P/Hの所定の関係式を満たす値に設定”との関係が不明である。 すなわち、「判定基準の式」により判定結果は何に用いられるか不明であるとともに、「P/Hの所定の関係式」とは、どういう関係であるのか不明であって、発明内容が不明である。 なお、請求項1において「P/Hの所定の関係式」は定義されていない。 請求項1を引用する請求項2においては定義されているものの、その定義をもってしても、「判定基準の式」と「P/Hの所定の関係式」との関係は不明である。 (2)照度周期の半周期であるムラ間距離Nは、発光素子ピッチPと線形関係にあるものである。 Pの値が予め設定されている場合は照射装置の位置を変化させHの値を調整することによりMが定基準の式を満たすように設定することは可能であろうが、Hの値が予め設定されている場合に「P/Hの所定の関係式を満たす値に設定」するということの意味が不明である。 Hの値が予め設定されている場合にPの値が所定の関係式を満たす値に設定するためには、Pの異なるものを多々作成して実験することにより照度ムラを判定しなければならず、ただちに、「P/Hの所定の関係を満たす値に設定」することにはならないのではないか。 (3)「M≦a×N-7.5(a=1/2)の判定基準の式」の物理的意味が不明である。 Mは照度ムラを示す値であるから、小さければ小さいほどムラが感じられないことは当然である。また、ムラ間距離Nは発光素子ピッチPとは線形関係にあるものである(本願実施例ではP=2N)から、これが大きいほどムラを感じないことは自明である。 したがって、この判定基準の式は定性的には一般常識を示しているにすぎないい。 その上で、定量的に、この式で示している数値“1/2”“7.5”にはどのような技術的根拠があるのか不明である。 (4)請求項2には、「前記判定基準の式により前記照度ムラを判定して得られた前記P/Hの所定の関係式がP/H≦0.71である」とあるが、「前記照度ムラを判定して“得られた”前記P/Hの所定の関係式」とは、判定からどのようにして所定の関係式を得るのか、また、そのことにどのような技術思想があるのか不明である。 そして、「P/Hの所定の関係式P/H≦0.71」の物理的意味が不明である。 数値“0.71”は自然法則を根拠とするものではなく、単なる人為的取り決めにすぎないものと思慮する。 [理由3] 本件出願の全請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明に基づいて、あるいは周知の照明装置に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特開2008-197432号公報 (出願人が明細書中で引用した文献) 当該刊行物に記載の発明は、LEDピッチP(mm)と原稿面距離H(mm)が所定式を満たしている場合に、光量ムラのない原稿照射を行うことができるものである。 本願発明は、判定基準の式によりP/Hに対して前記照度のムラである照度ムラが判定され、「P/Hの所定の関係式を満たす値に設定されている」ものであるから、両者は等価である。 本願発明は、光量ムラをMとしたときの関係式(判定式)が 「M≦a×N-7.5(a=1/2)」 であるものであり、また、P/Hの所定の関係式として 「P/H≦0.71」 とするものであり、そのような関係式は刊行物1には記載されていないが、上記[理由1][理由2]に指摘したように、これらの式は単なる人為的取り決めであって、自然法則上の意味のある数値ではない。 当該判定基準の式はMの上限を示しているにすぎない。ゼロに近いほど光量ムラが存在しないことは自明のことにすぎない。 公然実施されている種々の周知の照明装置も何らかの基準で光量ムラがない(小さい)状態に設定されているものであって、基準値、すなわち、どのような値を境として、光量ムラを有るとするか、無しとするかの上限をどのような値と定めるかは、設計的事項にすぎないことである。 同様に、関係式も単にP/Hの上限を示しているにすぎない。 P/Hをどのような範囲で定めるかは、設計的事項にすぎないことである。 なお、請求項3?10に記載されている内容は刊行物を示すまでもなく周知の技術内容にすぎず、そのような構成の照明装置、画像形成装置とすることは単なる設計的事項にすぎない。 」 4.引用刊行物の記載 [理由3]において提示した刊行物1(特開2008-197432号公報)には、対応する図面と共に、以下の内容が記載されている。 (ア)「【請求項1】 ライン状に整列された複数の点光源により原稿の画像面をライン状に照射する光源と、前記ラインに対して前記原稿が直交する方向に移動するように前記光源と前記原稿とを相対移動させる移動装置と、を備えた照明装置において、 画像を読み取る際の前記点光源単体の光量をA、全体の光量をB、前記点光源の照射角をα(rad)、隣接する前記点光源の中心間のピッチをP、前記点光源の発光面から原稿面までの距離をH、としたときに、これらの値が、次式、 A/B≧0.5 P/H≦0.6α+0.25 を満足するように設定されている、 ことを特徴とする照明装置。 」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ところで、LED素子には、特定の方向に光を強く照射するという特性がある。このため、LED素子を、上述のように画像読取装置の照明装置として使用する場合、LED素子の照射角α、隣接するLED素子間のピッチP、LED素子から原稿面までの距離Hを好適に設定することが必要となる。例えば、ピッチPが大きすぎる場合、つまり隣接するLED素子間の距離が離れすぎている場合には、原稿面において光量ムラが発生する。この逆に、ピッチPが小さすぎる場合、つまり隣接するLED素子間の距離が近すぎる場合 には、上述の光量ムラは解消するものの、必要なLED素子の数が多くなるため、コストアップを招くことになる。さらに、ピッチPと距離Hとの関係は、LED素子の照射角によっても変わってくる。また、例えば、ピッチPを一定にした場合でも、LED素子から原稿面までの距離Hが近すぎると、光量ムラが発生し、逆に遠すぎると原稿面での光量が不足するため、その分、LED素子を増やす必要がある。 【0006】 近年のLED素子の高輝度化を考慮すると、原稿面の全体光量Bに対するLED素子単体の光量Aの割合、A/Bを大きくして、必要光量を得るためのLED素子の数量を少なくすることが好ましい。ただし、A/Bが大きいことは、LED素子が原稿面に近いことを意味し、上述のように光量ムラが発生するおそれがある。 【0007】 以上のように、コストアップを抑制しつつ、光量ムラのない原稿照射を行おうとすると、LED素子単体の光量A、原稿面の全体光量B、LED素子の照射角α、隣接するLED素子間のピッチP、LED素子と原稿面との距離Hの間には、密接な関係があることがわかる。 【0008】 そこで、本発明は、点光源単体の光量A、原稿面の全体光量B、点光源の照射角α、隣接する点光源間のピッチP、点光源と原稿面との距離Hの関係を適宜に設定することにより、コストアップを抑制しつつ、光量ムラのない原稿照射を行うことができる照明装置、及びこれを備えた画像読取装置を提供することを目的とするものである。」 (ウ)「【0020】 図1?図4に示すように、コンタクトガラス18の左端側の下方には、照明用光学移動枠ユニット23が配設されている。照明用光学移動枠ユニット23は、上述の最大読取幅よりも前後方向の長さが長い移動枠24を有している。この移動枠24には、光源12が取り付けられた光源用メイン基板(基板)25と、凹面鏡26と、第1ミラー27が搭載されている。このうち光源用メイン基板25は、図3,図4に示すように、前後方向の長さが、最大読取幅よりも長くなるように形成されていて、その上面には、光源12が取り付けられている。本実施形態では、光源12は、点光源であるLED素子L1?L22を複数(図3,図4では22個)、前後方向にライン状に整列させて構成している。ここで、ライン状とは、1本の直線上に整列された場合に限らず、例えば千鳥状に整列して、実質的に直線状である場合も含めるものとする。これらLED素子L1?L22は、ライン方向(前後方向)に沿って原稿の画像面を光量ムラなく照射できる所定のピッチP(本実施形態では例えば15mm)で整列されている。図3,図4において、最後端のLED素子L1の中心から、最前端のLED素子L22の中心までの距離が、315mm(=15mm×21)に設定されていて、これらLED素子L1とLED素子L22との間に、図3に示す例では、通紙幅が最大のA4サイズの原稿の長辺(=297mm)、又はA3サイズの原稿の短辺(=297mm)が入るように、また図4に示す例では、長辺又は短辺の長さが11インチ(≒279mm)の原稿の長辺又は短辺が入るように設定されている。複数のLED素子L1?L22によって構成された光源12は、図1に示すように、コンタクトガラス18の上面に設定されている読取ラインLを右斜め下方から照射するようになっている。 【0021】 図1に示すように、凹面鏡26は、読取ラインLから下ろした垂線hに対して、上述の光源12とほぼ線対称の位置に配置されている。上述のように、光源12は、コンタクトガラス18上の原稿を右斜め下方から照射しているため、原稿の左端に影が形成されて、この影が前後方向の直線上の画像として読み込まれがちである。凹面鏡26は、光源12からの光を反射して読取ラインLに導いて、この影を除去するためのものである。照明用光学移動枠ユニット23における、読取ラインLの直下に位置する部分には、第1ミラー27が配設されている。第1ミラー27は、左斜め上の45度を向けた状態で取り付けられている。以上のように、照明用光学移動枠ユニット23は、移動枠24に光源12、光源用メイン基板25、凹面鏡26、第1ミラー27を搭載した状態で、左右方向に敷設したガイド部材(不図示)に沿って左右方向に移動できる。つまり、ライン状(線状)の光源12に対して、直交する方向に移動することができるようになっている。この照明用光学移動枠ユニット23は、右方に移動しながら読取ラインLに向けて光源12から光を照射し、原稿の画像面からの反射光を次に説明する第2ミラー28に導くものである。 【0022】 図1,図2に示すように、コンタクトガラス18の左端側の下方には、上述の照明用光学移動枠ユニット23の左方に、反射用光学移動枠ユニット30が配設されている。反射用光学移動枠ユニット30は、上述の最大読取幅よりも前後方向の長さが長い移動枠31を有している。この移動枠31には、右斜め下45度を向けた状態で第2ミラー28が、また右斜め上45度を向けた状態で第3ミラー32が搭載されている。さらに、この移動枠31は、その前端と後端とにおいて、可動プーリ33を回動自在に支持している。以上のように、反射用光学移動枠ユニット30は、第2ミラー28、第3ミラー32、可動プーリ33を搭載した状態で、左右方向に敷設されたガイド部材(不図示)に沿って左右方向に移動できるようになっている。この反射用光学移動枠ユニット30は、右方に移動しながら、上述の照明用光学移動枠ユニット23の第1ミラー27からの光を第2ミラー28、第3ミラー32で反射して後述の結像レンズ13に導くものである。 【0023】 図2に示すように、筐体16の左端近傍には前端と後端とに固定左プーリ34,34が、また筐体16の右端近傍には前端と後端とに固定右プーリ35,35がそれぞれ回動自在に配設されている。また、図2中の固定右プーリ35,35の下方には、正逆回転可能なモータ36が配設されている。さらに、モータ36の左方には、駆動軸37と一体の駆動プーリ38が配設されていて、モータ36の出力軸40と駆動プーリ38との間には、駆動ベルト41が張設されている。駆動軸37の前端と後端とには、ワイヤドラム42,42が固定されており、これらワイヤドラム42,42には、それぞれ光学ワイヤ43,43が巻き掛けられている。これら光学ワイヤ43,43の一方の端部44,44は、筐体16の左側壁45の内面に固定されている。光学ワイヤ43,43は、ここから右方に延びて、反射用光学移動枠ユニット30の可動プーリ33,33の右半部に掛け渡されて左方に折り返し、固定左プーリ34,34の左半部に掛け渡された後、右方に折り返して固定右プーリ35,35に向かって延びる。さらに、固定右プーリ35,35の右半部に掛け渡されて左方に延び、途中で照明用光学移動枠ユニット23に固定された後、さらに左方に延びて、可動プーリ33,33の左半部に掛け渡されて右方に折り返し、レンズ取付台46上に突設されたフック47に係止される。このような光学ワイヤ43,43の引き回しに基づき、モータ36が図2中の反時計回りに回転すると、駆動ベルト41、駆動プーリ38、駆動軸37を介して、ワイヤドラム42,42が同じく反時計回りに回転する。これに伴い、光学ワイヤ43,43に引かれて、照明用光学移動枠ユニット23及び反射用光学移動枠ユニット30が右方に移動する。この際、反射用光学移動枠ユニット30は、その可動プーリ33,33がいわゆる動滑車として作用するため、移動距離が照明用光学移動枠ユニット23の移動距離の半分となる。これにより、照明用光学移動枠ユニット23及び反射用光学移動枠ユニット30の移動にかかわらず、コンタクトガラス18から結像レンズ13に至る光路長が一定に保持されて、次に説明する結像レンズ13を通過した光がCCD14上で像を結ぶようになっている。なお、本実施形態では、上述のように光源12を移動させるための構成全体が駆動装置(移動装置)に相当する。 【0024】 図2に示すように、結像レンズ13は、上述のレンズ取付台46に固定されたレンズ取付板48上に固定されている。光源12から照射された光は、原稿の画像面で反射されて、図1に示す光路Kをたどる。すなわち、画像面からの反射光は、第1ミラー27、第2ミラー28、第3ミラー32で反射されて結像レンズ13に入射される。入射された光は、次に説明するCCD14上で結像される。 【0025】 CCD14は、その左端面に固定されて上端部50が左方に折曲されたCCD取付板51を介して、上述のレンズ取付台46に固定する「コ」字形のCCD調整板52に取り付けられている。CCD調整板52の前端部と後端部には、内径に雌ねじが螺刻されたボス53,53が固定されていて、これらのボス53,53には、CCD取付板51の上端部50を貫通したピン54,54が螺合されている。さらに、CCD取付板51とCCD調整板52との間には、圧縮ばね55,55が介装されていて、CCD取付板51を上方に付勢している。この状態で、ピン54,54を時計回りあるいは反時計回りに回すことで、CCD取付板51を介してCCD14の高さ位置を微調整することができる。この微調整をCCD14の前端部及び後端部で行うことで、CCD14の上下方向の位置調整を行うことができるようになっている。 【0026】 以上のように、光学系の光源12によって原稿の画像面を読取ラインLに沿って照射(主走査)し、さらに駆動系によって読取ラインLを右方に移動させて走査(副走査)することにより、原稿の画像面をその全領域にわたってCCD14で順次に読み取ることができる。」 (エ)「【0033】 前述のように、点光源としてのLED素子を複数個、整列させて光源12を構成する場合、LED素子の使用個数を少なくすればコストアップを抑制することができる。一方、LED素子の使用個数が少なすぎると、原稿面に光量ムラが発生する。 【0034】 そこで、本発明では、以下のような実験1?6を行って、原稿面の光量ムラが許容範囲内で、極力、LED素子の使用個数を少なくする条件を求めるようにした。 【0035】 ここで、LED素子単体の光量(単体光量)をA、全体の光量(全体光量)をB、LED素子の照射角度(照射角)をα、隣接するLED素子の中心間のピッチ(LEDピッチ)をP、LED素子の発光面から原稿面までの距離(原稿面距離)をHとした。ここで、照射角αは、図7に示すように、LED素子の発光面から発光された光が原稿面を照射する際に、光量が半分になる部分の立体角に相当する角度をいう。また、原稿面距離Hは、図6に示すように、LED素子の発光面の中心に立てた法線における発光面の中心と読取ラインLとの距離をいう。 【0036】 ここで、前述のように、P/H(LEDピッチ/原稿面距離)と照射角αとの間には、正の相関関係があることが予想される。そこで、以下の実験1?6では、上述の条件のうち、単体光量Aを40000[lx]と一定にして、照射角αとP/Hとの関係を求めるようにした。ただし、原稿面距離Hについては、LED素子の光量を確保するためには、可及的小さく設定することが好ましいため、本実験においては、H=6[mm]と一定にした。なお、全体光量Bについては、LEDピッチPを変化させることに付随して変化することになる。 【0037】 本実施形態では、LED素子の使用個数を少なくする条件として、まず、A/Bの目標値を、A/B≧0.5とした。近年のLED素子の高輝度化を考慮すると、原稿面の全体光量Bに対する単体光量Aの割合、A/Bを大きくして、必要光量を得るためのLED素子の数量を少なくすることが好ましいからである。次に、光量ムラの許容範囲(目標値)を、最大リップルが2.5%以下であるとした。光量ムラについては、最大リップルが2.5%以下であれば、実用上、何の問題もない。 【0038】 実験1?6のうち、実験1(図8)と実験2(図9)とは、照射角αについてはいずれも120[度]とし、LEDピッチPについては、実験1では8.7[mm]、実験2では9.3[mm]とした。また、実験3(図10)と実験4(図11)とは、照射角αについてはいずれも90[度]とし、LEDピッチPについては、実験3では6.9[mm]、実験4では7.5[mm]とした。また、実験5(図12)と実験6(図13)とは、照射角αについてはいずれも60[度]とし、LEDピッチPについては、実験5では4.5[mm]、実験6では5.0[mm]とした。」 (オ)「【0040】 図8に、実験1の条件及び結果を示す。 【0041】 実験1の条件は、 照射角α :120[度] 原稿面距離H :6.0[mm] LEDピッチP:8.7[mm] (∴P/H=8.7/6.0=1.45) 単体光量A :40000[lx] とした。この結果、 最大リップルL:1.31[%]<2.5 全体光量B :57000[lx] となり、A/Bについては、 A/B(=40000/57000)≒0.70>0.5 となった。 【0042】 以上の実験1より、照射角α=120[度]、P/H=1.45では、A/B、最大リップルLのいずれも目標値を満足していることがわかった。 【0043】 図9に、実験2の条件及び結果を示す。 【0044】 実験1の条件は、 照射角α :120[度] 原稿面距離H :6.0[mm] LEDピッチP:9.3[mm] (∴P/H=9.3/6.0=1.55) 単体光量A :40000[lx] とした。この結果、 最大リップルL:3.44[%]>2.5 全体光量B :54000[lx] となり、A/Bについては、 A/B(=40000/54000)≒0.74>0.5 となった。 【0045】 以上の実験2より、照射角α=120[度]、P/H=1.55では、A/Bは、目標値を満足するが、最大リップルLは、目標値を満足しないことがわかった。 【0046】 以上の実験1及び実験2から、照射角α=120[度]の場合には、最大リップルLが目標値となるP/Hは、1.45と1.55との間にあることがわかり、さらに、H=6[mm]であることから、8.7<P<9.3であることがわかる。 【0047】 そこで、Pの値をこの範囲内で変化させて、さらに実験を行ったところ、P=9.0(P/H=1.50)のときに、最大リップルLが目標値となることが判明した。 【0048】 図10に、実験3の条件及び結果を示す。 【0049】 実験3の条件は、 照射角α :90[度] 原稿面距離H :6.0[mm] LEDピッチP:6.9[mm] (∴P/H=6.9/6.0=1.15) 単体光量A :40000[lx] とした。この結果、 最大リップルL:1.11[%]<2.5 全体光量B :68000[lx] となり、A/Bについては、 A/B(=40000/68000)≒0.59>0.5 となった。 【0050】 以上の実験3より、照射角α=90[度]、P/H=1.15では、A/B、最大リップルLのいずれも目標値を満足していることがわかった。 【0051】 図11に、実験4の条件及び結果を示す。 【0052】 実験4の条件は、 照射角α :90[度] 原稿面距離H :6.0[mm] LEDピッチP:7.5[mm] (∴P/H=7.5/6.0=1.25) 単体光量A :40000[lx] とした。この結果、 最大リップルL:3.46[%]>2.5 全体光量B :62000[lx] となり、A/Bについては、 A/B(=40000/62000)≒0.65>0.5 となった。 【0053】 以上の実験4より、照射角α=90[度]、P/H=1.25では、A/Bは、目標値を満足するが、最大リップルLは、目標値を満足しないことがわかった。 【0054】 以上の実験3及び実験4から、照射角α=90[度]の場合には、最大リップルLが目標値となるP/Hは、1.15と1.25との間にあることがわかり、さらに、H=6[mm]であることから、6.9<P<7.5であることがわかる。 【0055】 そこで、Pの値をこの範囲内で変化させて、さらに実験を行ったところ、P=7.2(P/H=1.20)のときに、最大リップルLが目標値となることが判明した。 【0056】 図12に、実験5の条件及び結果を示す。 【0057】 実験5の条件は、 照射角α :60[度] 原稿面距離H :6.0[mm] LEDピッチP:5.0[mm] (∴P/H=5.0/6.0=0.83) 単体光量A :40000[lx] とした。この結果、 最大リップルL:0.95[%]<2.5 全体光量B :78000[lx] となり、A/Bについては、 A/B(=40000/78000)≒0.51>0.5 となった。 【0058】 以上の実験5より、照射角α=60[度]、P/H=0.83では、A/B、最大リップルLのいずれも目標値を満足していることがわかった。 【0059】 図13に、実験6の条件及び結果を示す。 【0060】 実験6の条件は、 照射角α :60[度] 原稿面距離H :6.0[mm] LEDピッチP:5.5[mm] (∴P/H=5.5/6.0≒0.92) 単体光量A :40000[lx] とした。この結果、 最大リップルL:4.00[%]>2.5 全体光量B :70000[lx] となり、A/Bについては、 A/B(=40000/70000)≒0.57>0.5 となった。 【0061】 以上の実験6より、照射角α=60[度]、P/H=0.92では、A/Bは、目標値を満足するが、最大リップルLは、目標値を満足しないことがわかった。 【0062】 以上の実験3及び実験4から、照射角α=60[度]の場合には、最大リップルLが目標値となるP/Hは、0.83と0.92との間にあることがわかり、さらに、H=6[mm]であることから、5.0<P<5.5であることがわかる。 【0063】 そこで、Pの値をこの範囲内で変化させて、さらに実験を行ったところ、P=5.3(P/H=0.88)のときに、最大リップルLが目標値となることが判明した。 【0064】 図13に、以上の実験1?実験6の結果、及びこれらの実験結果に基づいてさらに行った実験の結果をまとめる。なお、A/Bについては、いずれの実験においても満足していた。 【0065】 図13から、最大リップルを目標値とする、照射角αとP/Hの関係は、照射角αが120[度](≒2.09[rad])のときは、P/H=1.50、照射角αが90[度 ](≒1.57[rad])のときは、P/H=1.20、照射角αが60[度](≒1.57[rad])のときは、P/H=0.88となることがわかる。 【0066】 図15に、これらの関係を示す。同図に示すように、照射角αをX軸上にとり、P/HをY軸上にとると、これらは、ほぼ直線上に並ぶことがわかる。 【0067】 そこで、これらの関係を直線近似して、 P/H=aα+b と表して、a及びbの値を求める。 【0068】 この結果、 a=0.6 b=0.25 を得ることができる。これらから、以下の式、 P/H=0.6α+0.25 を得ることができる。 【0069】 以上の結果から、 P/H≦0.6α+0.25 の関係を満足するように、照射角α、LEDピッチP、原稿面距離Hの組み合わせを選択することにより、原稿面での照度が高く、かつ照度ムラのない配光を、少ないLED素子の使用個数で得ることができる。」 5.判断 上記拒絶理由に対して、審判請求人からは何らの応答もない。 そして、あらためて当該拒絶理由を検討するに、通知した[理由1]?[理由3]に誤りなはく、その理由は何れも妥当なものと判断される。 6.むすび 以上のとおりであるから、本件特許出願は、平成24年3月1日付けで通知した拒絶理由により拒絶査定すべきものである。 したがって、原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求めるという審判請求の趣旨は、これを認めることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-06-01 |
結審通知日 | 2012-06-05 |
審決日 | 2012-06-19 |
出願番号 | 特願2009-11064(P2009-11064) |
審決分類 |
P
1
8・
1-
WZ
(H04N)
P 1 8・ 536- WZ (H04N) P 1 8・ 537- WZ (H04N) P 1 8・ 121- WZ (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮島 潤 |
特許庁審判長 |
板橋 通孝 |
特許庁審判官 |
吉村 博之 山田 洋一 |
発明の名称 | 照明装置、画像読取装置及び画像形成装置 |
代理人 | 特許業務法人あーく特許事務所 |