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審決分類 |
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 E02B 審判 一部無効 特174条1項 E02B 審判 一部無効 2項進歩性 E02B |
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管理番号 | 1260940 |
審判番号 | 無効2011-800036 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2011-03-02 |
確定日 | 2012-08-08 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4105076号発明「護岸の連続構築方法および河川の拡幅工法」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成15年10月28日:出願(特願2003-368034号) 平成20年 4月 4日:設定登録(特許第4105076号) 平成23年 3月 2日:本件審判請求 平成23年 5月27日:被請求人より答弁書提出 平成23年 8月24日:請求人,被請求人より口頭審理陳述要領書提出 平成23年 9月 7日:被請求人より上申書提出, 口頭審理 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下,「本件発明」という。)は,特許明細書の特許請求の範囲の請求項1記載された事項により特定される次のとおりのものと認められ,これを構成要件に分説すると,次のとおりである(下線は当審付与。)。 A 鋼管杭を回転圧入できる鋼管杭圧入装置を用いて、 B 先端にビットを備えた切削用鋼管杭を C コンクリート護岸を打ち抜いて圧入して鋼管杭列を構築し、 D この鋼管杭列から反力を得ながら、 E 上記鋼管杭列に連続して上記切削用鋼管杭を回転圧入してコンクリート 護岸を打ち抜いて連続壁を構築し、 F その後、上記鋼管杭列の河川側のコンクリート護岸と土砂を除去する護 岸の連続構築方法。 第3 当事者の主張 1 請求人の主張 請求人は,特許第4105076号の請求項1に係る特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由として,以下の無効理由を主張し,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。 [無効理由] (1)無効理由1(特許法第17条の2第3項違反) 平成19年12月25日付けの手続補正書によって,請求項1について「先端にビットを備えた切削用鋼管杭をコンクリート護岸を打ち抜いて圧入して鋼管杭列を構築し,」及び「上記鋼管杭列に連続して上記切削用鋼管杭を回転圧入してコンクリート護岸を打ち抜いて連続壁を構築し、」なる補正が行われたが,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)には,「掘削用鋼管杭」との記載はあるが,「切削用鋼管杭」は記載されていない。そして,「切削」と「掘削」は概念的に区別されるべきものであるから,当該補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲においてしたものではなく,上記手続補正は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 したがって,本件発明に係る特許は,特許法第123条第1項第1号に該当し,無効とすべきである。 (2)無効理由2(特許法第36条第6項第1号違反) 本件特許の請求項1に記載された「切削用鋼管杭」と対応する事項が発明の詳細な説明にまったく記載されていないから,本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 したがって,本件発明に係る特許は,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。 (3)無効理由3(特許法第29条第2項違反) 本件発明は,甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明,及び甲第4号証ないし甲第7号証に示される周知慣用技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって,本件発明に係る特許は,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。 (具体的な理由) ア 甲第1号証には,既存の護岸の背面に鋼管矢板壁を構築し,その後鋼管杭列の河川側のコンクリート護岸と土砂を除去する護岸の連続構築方法が記載されている(実施例3,図13)。 イ 本件発明と甲第1号証記載の発明を対比すると,両者は次の点で相違する。 鋼管杭列の構築について,本件発明では,「鋼管杭を回転圧入できる鋼管杭圧入装置を用いて、先端にビットを備えた切削用鋼管杭をコンクリート護岸を打ち抜いて圧入して鋼管杭列を構築し、この鋼管杭列から反力を得ながら、上記鋼管杭列に連続して上記切削用鋼管杭を回転圧入してコンクリート護岸を打ち抜いて連続壁を構築し」ているのに対し,甲第1号証記載の発明では,コンクリート護岸の背面に鋼管杭列を構築している点。 ウ 甲第2号証には,「鋼管杭を回転圧入できる鋼管杭圧入装置を用いて、先端にビットを備えた切削用鋼管杭を障害物を打ち抜いて圧入して鋼管杭列を構築し、反力取り装置によって反力を得ながら、上記鋼管杭列に連続して上記切削用鋼管杭を回転圧入して障害物を打ち抜いて連続壁を構築する連続壁の構築方法。」の発明が開示されている。 また,甲第3号証には,先端にビットを備えた切削用鋼管杭を回転圧入してコンクリート護岸やコンクリート構造物を打ち抜き,護岸に基礎杭あるいは土留め杭を築造するという技術思想が開示されており,先端にビットを備えた切削用鋼管杭を回転圧入してコンクリート護岸やコンクリート構造物を打ち抜くことは,甲第4号証にも示されるように周知慣用技術である。 なお,甲第3号証において,ハンマーグラブは鋼管内の掘削捨石を排出するためものであって,コンクリート護岸の掘削に必須の装置ではない。 エ そうすると,甲第1号証記載の発明の護岸の連続構築方法において,甲第2号証記載の発明である切削用鋼管杭を回転圧入して鋼管杭列を構築する連続壁の構築方法を適用することは,当業者にとって容易になし得ることであり,甲第1号証記載の発明の「コンクリート護岸」を「障害物」として打ち抜くことは,当業者にとって単なる設計的事項にすぎない。 オ また,甲第2号証記載の発明では,鋼管杭列に連続して切削用鋼管杭を回転圧入する際に,反力取り装置から反力を得ているが,「鋼管杭列から反力を得ながら鋼管杭列に連続して鋼管杭を圧入すること」は,甲第5号証ないし甲第7号証に示すように周知慣用技術であり,甲第5号証ないし甲第7号証に記載の技術はビット付き鋼管の圧入に適用できるものであるから,甲第1号証記載の発明に甲第2号証記載の発明を適用するにあたって,鋼管杭列から反力を得ることは,当業者にとって単なる設計的事項に過ぎない。 [証拠方法] 甲第1号証:特開平9-31935号公報 甲第2号証:特開2001-214434号公報 甲第3号証:特開平9-195273号公報 甲第4号証:特開平11-107664号公報 甲第5号証:特開2003-138563号公報 甲第6号証:特開2002-348870号公報 甲第7号証:実公平6-21962号公報 甲第8号証:松村明・三省堂編修所編「大辞林 第二版 新装版」,株式会社三省堂,1999年10月1日発行,p722,1408 甲第9号証:特開2005-133348号公報(本件の公開公報) 甲第10号証:本件出願(特願2003-368034)について平成19年12月25日に提出された手続補正書 甲第11号証:本件出願(特願2003-368034)について平成19年12月25日に提出された意見書 2 被請求人の反論 被請求人は,答弁書を提出し,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め,請求人の無効理由に対して以下のように反論した。 (1)無効理由1に対して 「切削用鋼管杭」とは,「ビットを備えた鋼管杭」がコンクリートを切り削る機能を有していることから,意味が明瞭になるように「切削用」と表現したものであって,「掘削用」に含まれるものであり,平成19年12月25日付けの手続補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (2)無効理由2に対して 「無効理由1に対して」で述べたとおり,「切削」と「掘削」のいずれを用いても,用途及び概念が変わる異なるものではなく,請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。 (3)無効理由3に対して 本件発明は,甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明,及び甲第4号証甲ないし第7号証に示される周知慣用技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (具体的理由) ア 本件発明は,既設の鋼管杭で反力を取ることで大きな反力を得ることができ,ビットを備えた切削用鋼管杭を用いることで,コンクリート護岸を切削可能なものであるが,いずれの証拠方法にも,既設のコンクリート護岸に鋼管を回転圧入する技術思想は記載されておらず,本件発明の課題や解決手段の示唆は一切ない。 既設のコンクリート護岸に鋼管杭を打ち込んで、鋼管杭壁を構築する工法は従来存在しておらず、当業者が容易に想到しうるものではない。 イ すなわち,甲第1号証記載の発明は,既存の護岸の背面に鋼管矢板壁を構築するものであって既設のコンクリート護岸に鋼管を回転圧入する技術思想はなく,既設のコンクリート護岸に鋼管杭を打ち抜く手段の開示もない。 ウ 甲第2号証ないし甲第4号証の鋼管の圧入装置は,反力取り装置が取り付けられるものであって,既設の鋼管杭で反力を取るものではなく,硬質地盤への回転圧入には,ハンマーグラブ,アースオーガなどの機械の併用が必要である。 エ 甲第5号証ないし甲第7号証には,既設の鋼管杭で反力を取ることが記載されているが,本件発明のコンクリート護岸のような硬質地盤における杭の設置に適用することは想到しえない。 [証拠方法] 乙第1号証:平成23年5月24日付け「陳述書」被請求人従業員木村育正作成 乙第2号証:「美しい山河を守る災害復旧基本方針」平成18年6月,1頁,19頁,26?33頁 乙第3号証の1:日立住友重機械建機クレーン株式会社のパンフレット「回転式ケーシングドライバ CD1500/CD2000/CD3000 オールケーシング工法用」 乙第3号証の2:日立建機株式会社のホームページ「ケーシングドライバ:環境適合製品リスト・データシート」(http://www.hitachi.co.jp/environment/ecoproducts/business/energy/construction/construction_machinery/C7N6-03-71.html) 乙第4号証:株式会社技研製作所,新日本製鐵株式會社パンフレット「先端ビット付き鋼管杭の自走式回転圧入工法 ジャイロプレス工法」,Ver.3.2,2010年7月20日発行 乙第5号証:平成19年10月26日付け「施工計画書」(工事件名 妙正寺川整備工事(激特ー2))抜粋,株式会社森本組作成 乙第6号証:平成20年6月12日付け「既製杭工作業計画書」(工事件名 妙正寺川整備工事(激特ー2))抜粋,株式会社森本組作成 乙第7号証の1:妙正寺川整備工事(激特ー2)の工事記録写真(1),森本・北野・河本建設共同企業体作成 乙第7号証の2:妙正寺川整備工事(激特ー2)の工事記録写真(2)の抜粋,森本・北野・河本建設共同企業体作成 乙第7号証の3:妙正寺川整備工事(激特ー2)の工事記録写真(3)の抜粋,森本・北野・河本建設共同企業体作成 乙第8号証:「鋼管矢板圧入工法 ・鋼管矢板圧入標準積算資料〈陸上施工〉【平成16年度版】(全国圧入協会),1?21頁 乙第9号証:「地盤調査法」地盤工学会,平成8年5月15日発行,192?207頁 乙第10号証の1:「鋼管矢板硬質地盤クリア工法」(工事名 新桜ケ丘外廻り拡張工事 その2)株式会社技研製作所作成 乙第10号証の2:「硬質地盤クリア工法」(工事名 緊急街路整備工事SB90-10)株式会社技研製作所作成 第4 当審の判断 1 無効理由1に対して 本件の願書に最初に添付した明細書(甲第9号証参照)の発明の詳細な説明には,次の記載がある(下線は当審付与)。 ・【課題を解決するための手段】 「 本発明の要旨とするところは、鋼管杭を回転圧入できる鋼管杭圧入装置を用いてコンクリート護岸に鋼管杭列を構築し、この鋼管杭列から反力を得ながら、上記鋼管杭列に連続して鋼管杭を回転圧入して連続壁を構築する護岸の連続構築方法である。」(段落【0006】) ・【発明の効果】 「請求項1の発明より、コンクリート護岸の改修工事や護岸の補強工事あるいは河川等の浚渫工事等が安全かつ効率よく行える。 特に従来では拡幅不可能な河川等における改修工事が可能となり、この拡幅工事を行うための仮設工事を一切必要としないので工期の短縮、工費の削減を図ることができる。また、鋼管杭を回転しながら圧入するため、アースオーガ等の装置も必要としない。」(段落【0010】) ・実施例 「本実施例の護岸の連続構築方法は、河川に設けられたコンクリート護岸102に複数の鋼管杭P,Pを連続して圧入した鋼管杭列PL上に配置した鋼管杭圧入装置11、クレーン12、鋼管杭の搬送装置13等を用いて行う。 上記鋼管杭圧入装置11は、鋼管杭Pを圧入する際に、鋼管杭Pを回転させながら圧入することができ、同時に通常の圧入機のように鋼管杭Pを回転させないで上部からの圧力のみによって圧入できるものである。このように鋼管杭の圧入を回転によって行うため、アースオーガ等の大掛かりな装置を必要としない上に、作業も迅速となる。 ・・・ また、本実施例では、コンクリート護岸102を打ち抜くために、鋼管杭として先端にビットを備えた掘削用鋼管杭を用いている。この掘削用鋼管杭Pを回転させながら支持層109まで圧入して鋼管杭列PL、すなわち連続壁を構築するのである。」(段落【0014】?【0016】) これらの記載によれば,願書に最初に添付された明細書には,コンクリート護岸の改修工事や護岸の補強工事において,鋼管杭を回転しながら圧入することで,アースオーガ等の装置も必要とすることなく護岸を構築する方法について記載され,コンクリート護岸102を打ち抜くために,鋼管杭として,先端にビットを備えた掘削用鋼管杭を用いることが記載されていると認められる。 そして,先端にビットを備えた掘削用鋼管杭は,回転させながら圧入されることによって,先端のビットでコンクリート護岸を切り削りながら圧入されていくことは明らかであるから,このような鋼管杭は「切削用鋼管杭」ということができる。 そうすると,平成19年12月25日付けの手続補正によって,請求項1に記載された「切削用鋼管杭」は,当初明細書に記載の「先端にビットを備えた掘削用鋼管杭」を,コンクリート護岸に適用された時の作用に基いて「切削用鋼管杭」と表現したものであることは明らかであり,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものである。 したがって,平成19年12月25日付けの手続補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものといえる。 よって,無効理由1は理由がない。 2 無効理由2について 上記「1」で検討したとおり,請求項1に記載の「切削用鋼管杭」は,明細書の発明の詳細な説明に記載の「先端にビットを備えた掘削用鋼管杭」を表現したものであり,特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものである。 よって,無効理由2は理由がない。 3 無効理由3について (1)甲第1号証ないし甲第7号証の記載事項 なお,以下の記載において,下線は当審において付与した。 ・甲第1号証(特開平9-31935号公報) 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には,次の記載がある。 (1a)「【請求項1】 都市河川の両岸に設けられた鋼矢板壁(1)の頂部に、この鋼矢板壁(1)に沿って腹起こし(2)を取り付け、さらに両岸の鋼矢板壁(1)の頂部間に河川と直角方向の切梁(5)を設置するとともに両岸の鋼矢板壁(1)の外側に間隔一定に走行レール(6)を設置し、この走行レール(6)により走行自在な移動構台(7)を両岸の走行レール(6)にまたがって載置し、鋼矢板壁(1)内側の工事を前記移動構台(7)上から行うことを特徴とする都市河川の改修工法。」 (1b)「【請求項5】 既存の護岸の背面に鋼矢板壁(1)を構築し、この鋼矢板壁(1)の頂部に走行レール(6)を設置し、この走行レール(6)により走行自在な移動構台(7)を両岸の走行レール(6)にまたがって載置し、鋼矢板壁(1)内側の工事を前記移動構台(7)上から行うことを特徴とする都市河川の改修工法。」 (1c)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、周囲に空地のない都市河川における河川改修工法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、市街地を流れるいわゆる都市河川の台風や集中豪雨の際の氾濫が社会問題となっている。ところが、これら都市河川は周囲を住宅や道路に囲まれ、拡幅や堤防のかさ上げ等がほとんど不可能であるばかりでなく、工事に伴う資材、機材のためのスペースの確保も困難であり、騒音等の環境面の制約もきびしい。したがって、何らかの対策を迫られているものの、これらの条件にかなった採用可能な工法を模索しているのが実情である。」 (1d)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の諸問題を解消し、後背地が狭小な都市部においても施工が可能で、環境破壊のおそれもなく、比較的短い工期で効率的に河川改修を行うことのできる都市河川改修工法を実現することを目的とする。」 (1e)「【0008】請求項5に記載の本発明は、既存の護岸の背面に鋼矢板壁を構築し、この鋼矢板壁の頂部に走行レールを設置し、この走行レールにより走行自在な移動構台を両岸の走行レールにまたがって載置し、鋼矢板壁内側の工事を前記移動構台上から行うことを特徴とする都市河川の改修工法である。」 (1f)「【0010】 【実施例】 実施例1 本発明の都市河川改修工法により河床を掘り下げる場合の実施例を図面により説明する。図1は改修前の河川を示す断面図で、Pはのり止めである護岸、1は鋼矢板壁、B_(0) は河床である。 【0011】まず、図2に示すように、この都市河川の両岸に設けられた鋼矢板壁1の頂部水面側に腹起こし2、切梁受け材3を取り付け、両岸の切梁受け材3間に河川と直角方向の仮設の切梁5を設置する。切梁5の一端にはオイルジャッキ等のジャッキ4を挿入する。・・・ 【0012】つづいて、図3に示すように両岸の鋼矢板壁1の外側に、これに平行して走行レール6を設置する。両岸の走行レール6の間隔は一定でなければならない。両岸の走行レール6にまたがって、移動構台7を載置する。・・・ 【0013】移動構台7が載置されたら、この上にクレーンCを搭載し、以後これを利用して川上または川下方向に腹起こし2、切梁5、走行レール6等の設置作業を進めることができる。その一方で、移動構台7の作業台上に掘削用のバケットを取り付けたクレーンCを搭載し、河床部の掘削を開始する。・・・ 【0014】掘削が完了した部分については、図4に示すように、クレーンCによりストラット(strut, 切梁枠体) 8を吊り下ろして河床B1 に載置する。・・・ 【0015】架構枠81の両側に壁体82を取り付けた状態における横幅Wは、河川の両岸の鋼矢板壁1、1の内法よりも若干短い寸法とする。架構枠81は、H形鋼や鋼管、コンクリート等の梁状体である。」 (1g)「【0021】・・・ 実施例3 本発明の都市河川改修工法の第3の実施例として、河川の拡幅を行う場合を図12、13により説明する。 【0022】このケースでは、拡幅する護岸の位置に合わせて、既存の河川の背面に鋼管矢板壁を構築することが必要である。この鋼管矢板壁を、十分な支持力のあるものとすれば、実施例1、2におけるごとき腹起こしや切梁の取り付けを省略し、鋼管矢板壁1の頂部に直接走行レール6を取り付けることができる。図12は、既存の護岸の外側に鋼管矢板壁1を構築し、その頂部に取り付けた両岸の走行レール6にまたがって移動構台7を載置し、この上から作業を行っている状況を示す。たとえば、河川の上流側または下流側へ向かって鋼管矢板壁を延長する作業は、この移動構台7上に載置したクレーンCを使用して行うことができる。なお、前記鋼管矢板壁を鋼管杭やH形矢板またはH形杭に変更してもよい。 【0023】図13は、移動構台7上のコンクリート破砕機により既存の護岸Pを解体し、パワーショベルによってこれを搬出している状況を示している。既存の護岸Pを撤去し、内部地盤の掘削を行い、鋼管矢板壁1を新たな護岸として拡幅を完了する。この実施例でも、このように河川上空を作業基地として有効利用して改修工事を行うことができる。」 (1h)【図13】には,次の図が記載されている。 これらの記載,特に記載事項(1b),(1e),(1g)及び(1h)によれば,甲第1号証には,次の発明が記載されていると認められる。 「既存の護岸の背面に,護岸に沿って鋼管矢板,鋼管杭,H形矢板またはH形杭により壁を構築し、その後、前記鋼管矢板等による壁の河川側の護岸と土砂を除去する護岸の連続構築方法。」(以下,「甲第1号証記載の発明」という。) ・甲第2号証(特開2001-214434号公報) 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には,次の記載がある。 (2a)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、建築現場での土留めや仕切りとして、鋼管を柱列状に連結して形成する鋼管杭壁およびその施工方法に関するものである。」 (2b)「【0006】また、硬い地質や転石・玉石の多い地質、あるいは地中に障害物がある場合には、予め別のケーシング回転掘削機で施工すべき鋼管矢板より大径のケーシングで掘削し、内部の土をハンマグラブなどで取り除いて新たな土を埋め、ケーシングを回収する置換施工を行なうなどして、鋼管矢板を打ち込み易くしなければならないといった問題がある。 【0007】このため、施工手順が増えたり、施工のための機材もその土質によって種々のものを必要とし、したがって、施工費用が嵩み工期がかかっている。そこで、本発明は、効率的に施工できる鋼管杭壁とその施工方法を提供することを目的としている。」 (2c)「【0010】本発明の鋼管杭壁に使用される鋼管杭は、従来の鋼管矢板のように鋼管外周に突起した継手金具を備えていないことを特徴としており、回転圧入によって施工できる。・・・」 (2d)「【0013】本発明の鋼管杭壁の施工においては、ケーシング回転掘削機を使用するが、このケーシング掘削機はケーシングを把持して回転させつつ地中へ押し込むもので、場所打ち杭に使用される公知の施工機である。・・・」 (2e)「【0016】鋼管杭は、この例では図1に示すように、断面が円筒で、長手方向へ円周上2カ所に、内側へ円弧状に凹む継手係合部1a,1bが設けられている。そして、鋼管杭の下端部1c(図3参照)は回転掘削できるようにノコギリ状に形成されている。なお、軟弱地盤ではフラット(ノコギリ状の形成がないもの)のものを用い、硬質地盤では図3の右図に示すようにケーシング掘削で用いられるビット1dが取り付けられたものを使用する。 【0017】・・・鋼管杭壁の施工においては、図3に示すように、ケーシング回転掘削機10が安定するように、予め設置場所に敷鉄板6を敷設し、この上に、ケーシング回転掘削機10が図2(a)に示すように、先ず、鋼管杭1の中心がA点に位置するように置かれる。 【0018】ケーシング回転掘削機10は、ベースフレーム12上に複数のスラストシリンダ15によって連結された昇降フレーム11に鋼管杭1を把持して回転させる把持装置と回転装置が設けられたもので、ベースフレーム12にはケーシング回転掘削機10の水平を出すための水平ジャッキ14が設けられている。 【0019】また、ベースフレーム12には図示しないスパイクウエイトなどの反力取り装置が取り付けられ、回転と押込みの反力が取れるようになっている。鋼管杭壁の施工は、まず、水平ジャッキ14でケーシング回転掘削機10の水平を出し、鋼管が鉛直に施工されるようにする。 【0020】次に、鋼管杭1をクレーンで上方からケーシング回転掘削機10に挿通して、把持装置で把持し、回転装置を作動させて回転させスラストシリンダ15を作動させて地中へ押し込む。そして、スラストシリンダ15が縮小してストロークエンドまでくると、鋼管杭1の把持を解除し、スラストシリンダ15を伸長させて鋼管杭1を再度把持し、掘進させる。この動作を繰り返して行うことにより鋼管杭1は所定の深さに建て込まれる。 【0021】軟弱地盤では押込みのみで建て込むことができるが、一般および硬質地盤では鋼管の下端に取り付けられたビット1d(図3参照)で地盤を掘削し、ハンマグラブ30などで鋼管内の土を掘削しながら掘進させる。鋼管杭1が所定深さまで建込まれたら、継手係合部1a,1bが施工の基準線上に向くように位置させる(図2(a))。なお、鋼管内の土を掘削した場合は、掘削土を鋼管内へ埋め戻してもよい。 【0022】次に、ケーシング回転掘削機10を移動させ、鋼管杭1の中心がB点になるように位置させて、次の鋼管杭1を建て込む。そして、B点の鋼管杭1もその継手係合部1a,1bを施工の基準線上を向くように位置させる(図2(b))。即ち、A点の鋼管杭1の継手係合部1bとB点の鋼管杭1の継手係合部1aとが対向するように建て込む。 【0023】次に、ケーシング回転掘削機10を移動させ、油圧ハンマまたはバイブロハンマあるいはケーシング回転掘削機10に押込み用のアタッチメントを付設したものによって継手2を継手係合部1a,1bに圧入打設する(図2(c))。次に、ケーシング回転掘削機10をB点より右の図示しないC点に位置合わせをして、上記と同じ動作によって鋼管杭1を建て込む。このようにして、順次鋼管杭1の建込みと継手の打設を行って鋼管杭壁を構築する。」 (2f)「【0026】また、本発明の鋼管杭壁の施工方法は、ケーシング回転掘削機で回転圧入して施工され、軟弱地盤では圧入のみで作業できるので騒音振動が少なく、さらに硬い地質や転石・玉石の多い地質あるいは地中に障害物がある場合でも、鋼管下端のビットで地盤を掘削し鋼管内を掘削することにより、十分鋼管杭を建て込むことができるので、予め土の置換施工を行う必要がなく、施工工期を短縮できる。」 (2g)【図3】には,次の図面が記載されている。 ・甲第3号証(特開平9-195273号公報) 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には,次の記載がある。 (3a)「【請求項1】所要の掘削機により掘削形成せしめた掘削孔内にケ-シングチュ-ブを挿入せしめ、該ケ-シングチュ-ブ内に掘削孔深とほぼ同高の袋体を着脱自在に吊設すると共に、該袋体内に砂などの置換材を投入して充填せしめ、のち、ケ-シングチュ-ブのみを引抜いて掘削孔を置換材により埋め戻すことを特徴とする、護岸などにおける杭打込み用孔の形成方法。」 (3b)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、護岸や玉石などを多く含む地盤に基礎杭、あるいは土留め杭などの地中構造物を築造するさいにおける杭打込み用孔の形成方法に関する。 【0002】 【従来の技術】一般に、例えば河川や海岸においては、地盤の表面に捨石などを敷設して所要の護岸が構築せしめられている。ところで、かかる護岸個所に基礎杭や土留め杭などの地中構造物を築造する場合には、従来より、予め地中にベノトマシンや全周回転式オ-ルケ-シング掘削機などにより所要深の掘削孔を掘削形成すると共に、該掘削孔内にケ-シングチュ-ブを挿入せしめ、該ケ-シングチュ-ブ内に砂などの置換材を投入して掘削孔深とほぼ同高に充填せしめたのち、ケ-シングチュ-ブを引抜くことにより掘削孔を置換材でもって埋め戻し、杭打込み用孔を形成するものとされている。」 (3c)「【0007】 【実施例】以下に、この発明の一実施例を図面に示す掘削機に基づいて説明する。1は全周回転式オ-ルケ-シング掘削機、2は該全周回転式オ-ルケ-シング掘削機1を構成する垂直状のケ-シングチュ-ブで、該ケ-シングチュ-ブ2は昇降自在とされると共に所定方向に回転自在とされ、かつ、その下端縁には掘削ビット3が周設されている。・・・ 【0008】8は堤防の法面に沿って築造された護岸で、該護岸8は地盤9の表面に堆積された盛砂層10と、該盛砂層10の表面を覆うべく多数の基礎捨石11でもって所要の厚さに敷設された捨石層12とより形成されている。13は捨石層12個所に構築された既設岸壁である。その他、14は掘削孔、15は砂などよりなる置換材、16は該置換材15を充填せしめる合成繊維製袋体、17は杭打込み用孔で、上記の袋体16は所定の掘削孔深とほぼ同高になるように構成されている。 【0009】次に、既設の岸壁13を補強すべく、全周回転式オ-ルケ-シング掘削機1とクロ-ラ-クレ-ン4の協働による杭打ち用孔17の形成状態について説明する。まず、岸壁13上の所定個所に全周回転式オ-ルケ-シング掘削機1とクロ-ラ-クレ-ン4を各々設置せしめると共に、ケ-シングチュ-ブ2を所定の杭芯上に位置せしめるべく調整する(図2A参照)。しかるのち、ケ-シングチュ-ブ2を回転せしめつつ下降作動せしめ、掘削ビット3により捨石層12を順次掘削すると共に、ケ-シングチュ-ブ2内に牽引ロ-プ7を介して挿入せしめたハンマ-グラブ5を掘削面に落下せしめて打込み、掘削捨石11を掴み取って外方に排出せしめつつ掘削孔14を掘削形成せしめる(図2B・C参照)。このさい、ケ-シングチュ-ブ2を回転せしめつつ下降作動せしめて掘削するため、掘削孔壁からの捨石11の崩落は確実に防止される。そして、捨石層12の掘削が終了した時点でケ-シングチュ-ブ2の回転を停止せしめると共に下降を停止せしめて掘削孔14内に残留せしめ、かつ、ケ-シングチュ-ブ2内よりハンマ-グラブ5を外方に抜き去る。・・・」 (3d)【図1】には,次の図面が記載されている。 ・甲第4号証(特開平11-107664号公報) 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には,次の記載がある。 (4a)「【請求項1】 先端に掘削刃を設け、外周をチャックされながら回転推進されて地盤に挿入される掘削ケーシングにおいて、掘削ケーシングの先端近傍の外周部分にこのケーシング周面を旋回する突条を形成したことを特徴とする掘削ケーシング。」 (4b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、大深度掘削、柱列連続壁、地中障害物切削、転石切削、岩盤切削等を施工するのに使用する掘削ケーシングに関するものである。」 (4c)「【0023】本発明の掘削ケーシングも前記図8、図9に示すように、ケーシング4の外周をたが状に締め付けるチャック装置7とこのチャック装置7を回転駆動するモーターや減速機等の駆動装置8と、これらチャック装置7および駆動装置8を上下動する油圧シリンダーによる昇降シリンダー9とからなる建込み装置10により、外周をチャックされながら回転推進されて地盤に挿入される掘削ケーシングで、先端には掘削刃5を設けたものである。」 (4d)「【0028】このようにして突条15を先端近傍の外周部分に設けた本発明のケーシング4は、岩盤切削の他に特に図3に示すように転石16を切削するような場合や図4に示すように旧建物の鉄筋コンクリート構造物、PC杭その他の地中構造物17を切削するような場合において、この切削される側は突条15がまず接し、突条15間には空隙αができるので摩擦抵抗が減り、浮き上がり力を受けることも少なくなる。」 (4e)図2,図4には,次の図面が記載され,ケーシング4の先端に掘削刃5(ビット)が設けられることが記載されている。 【図2】 【図4】 ・甲第5号証(特開2003-138563号公報) 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には,図面と共に次の記載がある。 (5a)「【請求項1】 既設の杭から反力を取って地中に杭を圧入する杭圧入装置に設けられるチャック装置であって、 前記杭をつかむチャック手段と、 このチャック手段を少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させることによって、このチャック手段によりつかまれた杭を少なくとも一つの回転方向に連続的に回転可能な回転手段と、を備えることを特徴とするチャック装置。 ・・・ 【請求項4】 既設の杭から反力を取って地中に杭を圧入する杭圧入装置であって、 請求項1?3のいずれかに記載のチャック装置と、 このチャック装置を昇降させる昇降手段と、を備え、 前記既設の杭から反力を取った状態で、杭をつかんだ状態のチャック手段を回転手段により少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させながら、前記昇降手段により前記チャック装置を昇降させることによって、前記杭を少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させながら地中に圧入することを特徴とする杭圧入装置。 【請求項5】 請求項4記載の杭圧入装置を用いて、既設の杭から反力を取って地中に杭を圧入する杭圧入工法であって、 既設の杭から反力を取った状態で、杭をつかんだ状態のチャック手段を回転手段により少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させながら、前記昇降手段により前記チャック装置を昇降させることによって、前記杭を少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させながら地中に圧入することを特徴とする杭圧入工法。」 (5b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、既設の杭から反力を取って地中に杭を圧入する杭圧入装置に設けられるチャック装置、このチャック装置を備える杭圧入装置、および、この杭圧入装置を用いた杭圧入工法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、鋼管杭壁の構築に用いられる装置として、既設の鋼管杭から反力を取って地中に鋼管杭を圧入する杭圧入装置が知られている。このような杭圧入装置には、既に打ち込まれた鋼管杭をつかむクランプと、地中に圧入する鋼管杭をつかんで支持するチャックが設けられている。前記クランプにより既設の鋼管杭をつかんで反力をとった状態で、圧入する鋼管杭をつかんだ状態のチャックを降下させることによって、鋼管杭を地中に圧入できるようになっている。」 (5c)「【0004】 【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、例えば、図1および図2に示すように、既設の杭から反力を取って地中に杭(鋼管杭P)を圧入する杭圧入装置(1)に設けられるチャック装置(2)であって、前記杭をつかむチャック手段(チャック部4)と、このチャック手段を少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させることによって、このチャック手段によりつかまれた杭を少なくとも一つの回転方向に連続的に回転可能な回転手段(油圧モータ34、ギヤ35)と、を備えることを特徴とする。 【0005】請求項1記載の発明によれば、チャック装置は前記チャック手段と前記回転手段とを備えるので、杭がつかまれた状態のチャック手段を回転手段が少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させると、前記杭が少なくとも一つの回転方向に連続的に回転する。したがって、杭圧入装置により既設の杭から反力を取って地中に杭を圧入する際に、請求項1記載のチャック装置によって、杭を少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させながら地中に圧入できる。これにより、杭圧入時の抵抗力を軽減して杭の圧入を補助できるので、より効率よく杭を圧入することができる。また、杭圧入時の抵抗力を軽減できるので、外周に羽根や突条などが設けられた回転鋼管杭などであっても、容易に地中に圧入することができる。」 (5d)「【0011】請求項4記載の発明は、既設の杭から反力を取って地中に杭を圧入する杭圧入装置であって、請求項1?3のいずれかに記載のチャック装置と、このチャック装置を昇降させる昇降手段(油圧シリンダ12)と、を備え、前記既設の杭から反力を取った状態で、杭をつかんだ状態のチャック手段を回転手段により少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させながら、前記昇降手段により前記チャック装置を昇降させることによって、前記杭を少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させながら地中に圧入することを特徴とする。 【0012】請求項4記載の発明によれば、既設の杭から反力を取った状態で、杭をつかんだ状態のチャック手段が、回転手段により少なくとも一つの回転方向に連続的に回転しながら、昇降手段により昇降する。これにより、チャック手段によってつかまれた杭が、少なくとも一つの回転方向に連続的に回転しながら、地中に圧入される。したがって、杭圧入時の抵抗力を軽減して杭の圧入を補助できるので、より効率よく杭を圧入することができる。また、杭圧入時の抵抗力を軽減できるので、外周に羽根や突条などが設けられた回転鋼管杭などであっても、容易に地中に圧入することができる。 【0013】請求項5記載の発明は、請求項4記載の杭圧入装置を用いて、既設の杭から反力を取って地中に杭を圧入する杭圧入工法であって、既設の杭から反力を取った状態で、杭をつかんだ状態のチャック手段を回転手段により少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させながら、前記昇降手段により前記チャック装置を昇降させることによって、前記杭を少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させながら地中に圧入することを特徴とする。請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明と同様の効果が得られる。」 (5e)「【0014】 【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本発明の一実施の形態例のチャック装置2は、地中に打ち込まれた既設の鋼管杭から反力を取って鋼管杭Pを地中に圧入する杭圧入装置1に設けられている。 【0015】杭圧入装置1は、従来の杭圧入装置と同様に、図示していない既設の鋼管杭をつかむクランプを下部に備えたサドル(図示略)と、サドルに対して前後にスライド移動するスライドベース(図示略)と、スライドベース上で旋回する旋回部10(図1においては、先端部のみ図示)と、旋回部10の前方に設けられるチャック装置2と、を備えて構成されている。旋回部10の先端側には、上下方向に延在する二つのガイド溝11が、その開口側を互いに向き合わせて、間隔をあけて設けられている。」 (5f)「【0018】図2に示すように、支持部3の環状部30の周縁には、環状部30の内側へ向けて開口したコ字状ガイド部33が設けられている。また、支持部3の旋回部10側(図2中の左側)には、その内部に油圧モータ34が固定されている。油圧モータ34の下方には、この油圧モータ34によって回転駆動されるギヤ35が設けられている。ギヤ35の周面の位置が、コ字状ガイド部33の旋回部10側の外周面とほぼ一致するように、油圧モータ34およびギヤ35の配置位置が設定されている。また、コ字状ガイド部33の下端部の内周縁には、内接ギヤ36が形成されている。 【0019】チャック部4は略管形状であり、図1に示すように、穴Hが上下方向に貫通するよう、支持部3の環状部30の内側に配置されている。図2に示すように、チャック部4の上縁部には、外側へ向けて突出した形状の旋回ギヤ40が設けられている。 【0020】旋回ギヤ40は、コ字状ガイド部33の内部に配置されている。これにより、チャック部4の上下・水平方向への移動が規制されている。また、旋回ギヤ40は、旋回部10側において、油圧モータ34下方のギヤ35とかみ合っている。これにより、油圧モータ34によってギヤ35が回転駆動すると、チャック部4の軸心を略中心として、チャック部4が連続的に回転するようになっている。すなわち、上述の油圧モータ34、ギヤ35は、チャック部4を少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させる回転手段である。」 (5g)「【0024】次に、以上の構成の杭圧入装置1により鋼管杭Pを地中に圧入する杭圧入工法について説明する。杭圧入装置1は、図示しないクランプにより既設の鋼管杭をつかんで既設の鋼管杭から反力を取った状態で、新たな鋼管杭Pを圧入する。 【0025】まず、図1に示すように、チャック部4に設けられたバッテリー46に予め充電された電力により油圧ポンプ48を作動させて、油圧シリンダ41により鋼管杭Pをつかんだ状態としておく。この状態で、油圧シリンダ12によりチャック装置2を下降させるとともに、油圧モータ34を作動させてチャック部4を少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させる。すなわち、例えば、チャック部4を図1中における右回り方向に連続的に回転させたり、左回り方向に連続的に回転させたり、右回り方向への連続回転と左回り方向への連続回転を連続して行ったりする。これにより、チャック部4によりつかまれた鋼管杭Pは、少なくとも一つの回転方向に連続的に回転しながら、地中に圧入される。」 (5h)「【0040】 【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、杭圧入装置により杭を地中に圧入する際に、杭を少なくとも一つの回転方向に連続的に回転させながら地中に圧入できる。よって、杭圧入時の抵抗力を軽減して杭の圧入を補助できるので、より効率よく杭を圧入でき、また、外周に羽根や突条などが設けられた回転鋼管杭などであっても、容易に地中に圧入することができる。 ・・・ 【0043】請求項4、5記載の発明によれば、チャック手段によりつかまれた杭が、少なくとも一つの回転方向に連続的に回転しながら、地中に圧入される。したがって、杭圧入時の抵抗力を軽減して杭の圧入を補助できるので、より効率よく杭を圧入でき、また、外周に羽根や突条などが設けられた回転鋼管杭などであっても、容易に地中に圧入することができる。」 ・甲第6号証(特開2002-348870号公報) 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には,図面と共に次の記載がある。 (6a)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は既設の鋼管杭上に定置して該鋼管杭の反力に基づいて新たな鋼管杭を地盤内に圧入,引抜するとともに、連続して圧入引抜される鋼管杭の圧入引抜ピッチの変更と進路変更にも素早く対応可能にした鋼管杭圧入引抜機に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、各種の土木基礎工事において、鋼管杭,例えば鋼管単杭とか鋼管矢板は大きな支持力が得られるとともに経済性に優れているため、永久構造物の外にも護岸工事及び山留め工事、締切り工事等の仮設工事の支持杭として広く採用されている。従来からこれらの鋼管杭の地盤への圧入,引抜工事は、例えば上空制限のない場所ではバイブロハンマとかディーゼルハンマもしくは中堀式などの工法や、静荷重型鋼管杭圧入引抜機が用いられており、また、上空制限のある場所では主として静荷重型鋼管杭圧入引抜機が採用されている。 【0003】この静荷重型鋼管杭圧入引抜機としては、実公平6-21962号に示すように、既設の鋼管杭上に定置された台座の下方に複数の反力掴み装置(クランプ)を設けて、この反力掴み装置により既設杭をクランプすることによって反力を取っており、この反力掴み装置は台座の下面にあって進行方向先頭の反力掴み装置は左右方向に摺動自在に設けられ、残りの反力掴み装置は前後及び左右方向に摺動自在に取り付けられている。これはカーブ施工において建込み杭の進行方向法線に対するクランプ装置の左右方向への「ずれ」に対する位置合わせと、反力掴み装置が既設杭に圧接する際に発生するクリアランス分の移動をスムーズに行わせるための機構を構成している。」 (6b)「【0011】 【発明の実施の形態】以下図面に基づいて本発明にかかる鋼管杭圧入引抜機の具体的な実施形態を説明する。図1は本発明を適用した鋼管杭の圧入引抜機本体1を全体的に示す側面図、図2は同平面図であり、2は台座、3は台座2の下部に配設されて既設の鋼管杭をクランプする反力掴み装置である。この反力掴み装置3は前部反力掴み装置3aと後部反力掴み装置3bとに分割構成されている。詳細は後述するように、前部反力掴み装置3aは台座2の下面にあって進行方向に対して左右方向に摺動自在に配設され、後部反力掴み装置3bは進行方向に対して前後方向に摺動自在に配設されている。Fは圧入引抜機本体1の進行方向を示す。 【0012】台座2上には圧入引抜機本体1の進行方向に沿って摺動自在にスライドベース4が配備されており、このスライドベース4上には支持アーム5が縦軸を中心として回動自在に軸支され、この支持アーム5の前部に設けた軸受部6aを中心として回動可能なガイドフレーム6が立設されている。このガイドフレーム6は、一端が支持アーム5に軸支された傾動シリンダ7の伸縮によって軸受部6aを中心として傾動可能となっている。 【0013】上記ガイドフレーム6には昇降体8が昇降自在に装着されている。該昇降体8の両側には左右一対の杭圧入引抜シリンダ9,9が取り付けられていて、この杭圧入引抜シリンダ9,9の一端が前記軸受部6aに軸支されており、昇降体8を上下駆動するように構成されている。 【0014】昇降体8の下方には、杭掴み装置10が該昇降体8に対して旋回自在に配備されている。この杭掴み装置10の内壁面には2個の固定側チャック爪10a,10aと、該固定側チャック爪10a,10aと対向する位置に2個の可動側チャック爪10b,10bとが配置されていて、杭掴み装置10に内蔵されたチャックシリンダ11,11の押圧力により可動側チャック爪10b,10bを用いて建込用鋼管杭の外周を円筒方向から固定側チャック爪10a,10a方向に押動して該鋼管杭を4方向からチャックし、地盤への圧入と引抜を行う。」 (6c)「【0016】図5は反力掴み装置3a(3b)の縦断面図、図6は図5のC-C線に沿う断面図であり、反力掴み装置3a(3b)内にはクランプシリンダ14が内蔵されている。該クランプシリンダ14の一端が杭掴み装置3a(3b)の一方側に固定されているとともに他方側が半円形部分に固定されていて、このクランプシリンダ14の伸長に伴って既設の鋼管杭の内面に反力掴み装置3a(3b)が圧接して、摩擦抵抗により建込用鋼管杭の圧入引抜時の反力を得るように構成されている。【0017】かかる構成によれば、建込用の鋼管杭16を地盤に圧入する際の基本操作として、先ず前部反力掴み装置3aと後部反力掴み装置3bの各クランプシリンダ14を用いて既設の鋼管杭15,15をクランプしてから、図7に示すように杭掴み装置10に内蔵されたチャックシリンダ11,11により可動側チャック爪10bを固定側チャック爪10a方向に押動して建込用の鋼管杭16の外周を4方向からチャックし、杭圧入引抜シリンダ9,9を駆動して鋼管杭16の地盤への圧入を行う。そして杭圧入引抜シリンダ9,9のストローク分だけ圧入すると、チャックシリンダ11,11を開放してから該チャックシリンダ11,11を杭圧入引抜シリンダ9,9のストローク分だけ上昇させ、再び前記同様の操作を繰り返して所定の深度まで圧入を行う。鋼管杭16を地盤から引き抜く際の基本操作もほぼ同一であり、杭圧入引抜シリンダ9,9を駆動して該杭圧入引抜シリンダ9,9のストローク分だけ鋼管杭16の引抜作業を行えばよい。」 ・甲第7号証(実公平6-21962号公報) 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には,図面と共に次の記載がある。 (7a)「(従来の技術) 従来より鋼矢板等の鋼杭を圧入するために杭圧入引抜機が使用されていた。この杭圧入引抜機は、基台上のスライドベース上に立設されたマストの前方に杭挟持用のチャックを構成し、前記基台の下部には既設杭を挟持するための複数のクランプを構成している。 このクランプは、上記基台下端に固定されていて、既設杭を挟持して杭圧入引抜機本体を杭列上に固定し、杭の圧入あるいは引抜時には既設杭より反力を得るものであり、杭圧入引抜機の杭列上の自走に際しては、基台の移動に伴って前進あるいは後退していた。」(1頁2欄9行?2頁3欄4行) (7b)「次にこのように構成した本実施例の作用を説明する。 第4図に示すように既設鋼管杭P、Pの上端にクランプ1、1を把持せしめることで、杭圧入引抜機10を既設杭上に固定して鋼管杭圧入作業を行う。本実施例で使用する鋼管杭用のクランプ1を第6図に基づいて簡単に説明する。 クランプ1は、円筒形状の押圧部を2分割して断面略三日月形の可動把持部41と固定把持部51を構成している。 前記押圧部には上下に2基の流体圧シリンダ61、61が内蔵されている。可動把持部41に形成した凹部41a、41aにシリンダ61、61のピストン61b、61bの端部を嵌合固定し、一方、固定把持部51に形成した凹部51a、51aには上記ピストン61b、61bを摺動自在に嵌合すると共に、シリンダ61、61のロッド61a、61aの一端を凹部51a、51aの奥部に固定する。 使用に際しては、シリンダ61、61を作動し、ロッド61a、61aを伸長せしめることによって可動把持部41を杭Pの内壁面に押圧せしめる。さらにロッド61a、61aを伸長し、該可動把持部41が杭Pの内壁面より得る反力で固定把持部51が外側(第6図右側)にわずかに移動し、クランプ1は鋼管杭Pに固定する(第6図(b)参照)。この状態で鋼管杭Pはクランプ1に確実に把持される。・・・ この杭圧入作業は、新たな圧入鋼管杭Pをチャック12で挾持して、該チャック12を下降することで行うが、この圧入作業にともなって、杭圧入引抜機10も既設杭列上を移動していく。」(2頁4欄32行?3頁5欄13行) (2)対比 本件発明と甲第1号証記載の発明を対比する。 甲第1号証記載の発明において,鋼管杭により構築される壁は,本件発明の「鋼管杭列」又は「連続壁」に相当する。 甲第1号証記載の発明の「護岸」は,コンクリート破砕機で解体されるものであるから,コンクリートで形成されていることは明らかであり,本件発明の「コンクリート護岸」に相当する。 本件発明において「コンクリート護岸を打ち抜いて鋼管杭列を構築」することと,甲第1号証記載の発明において「既存の護岸の背面に、護岸に沿って鋼管杭により壁を構築」することとは,「拡幅する護岸の位置に鋼管杭列を構築する」ことである点で共通する。 また,甲第1号証記載の発明において,鋼管杭により構築される壁は,鋼管杭圧入装置を用いて「鋼管杭」を圧入して構築されることは明らかである。 したがって,両者は次の点で一致する。 「A’鋼管杭を圧入できる鋼管杭圧入装置を用いて, B’鋼管杭を, C’拡幅する護岸の位置に圧入して鋼管杭列を構築し, F その後,鋼管杭列の河川側のコンクリート護岸と土砂を除去する護岸 の連続構築方法。」 また,両者は次の点で相違する。 [相違点](構成要件AないしEに関して) 本件発明は,鋼管杭が「先端にビットを備えた切削用鋼管杭」であり,鋼管杭を圧入する「拡幅する護岸」の位置が「コンクリート護岸」であり,鋼管杭列の構築手段が「鋼管杭を回転圧入できる鋼管杭圧入装置を用いて,先端にビットを備えた切削用鋼管杭をコンクリート護岸を打ち抜いて圧入して鋼管杭列を構築し,この鋼管杭列から反力を得ながら,上記鋼管杭列に連続して上記切削用鋼管杭を回転圧入」するものであるのに対し、 甲第1号証記載の発明では,「鋼管杭」の種類は限定されておらず,鋼管杭圧入装置は鋼管杭を回転圧入できるものに限定されておらず,鋼管杭を圧入する「拡幅する護岸」の位置は「コンクリート護岸の背面」であり,鋼管杭列の構築手段は限定されていない点。 (3)判断 ア 上記相違点に係る,鋼管杭を圧入する「拡幅する護岸」の位置について検討すると,コンクリート護岸を打ち抜いて鋼管杭を圧入して鋼管杭列を構築し,その後河川側の護岸を除去することは,以下に示すとおり,甲第1号証ないし甲第7号証のいずれにも記載されていないし示唆もない。 イ すなわち,甲第1号証は,工事に伴う資材、機材のためのスペースの確保が困難な河川の改修の際に,河川の両岸に鋼矢板壁や鋼管矢板壁等を設け,鋼矢板壁や鋼管矢板壁等の上方を作業スペースとすることで,後背地が狭い都市部においても施工を行うことができるものであり,甲第1号証記載の発明に示すようにコンクリート護岸の背面に鋼管矢板壁等を構築するものの他,実施例1に示されるようにコンクリート護岸の内側に鋼矢板壁を構築することが記載されているが,コンクリート護岸を打ち抜いて鋼管矢板列,鋼管杭列等を構築することは記載されていないし示唆もない。 ウ 請求人は,既設コンクリート護岸の位置に鋼管杭を圧入して鋼管杭列を構築することは当業者が容易に想到しうることであると主張するが,上記のとおり,甲第1号証には,鋼矢板壁や鋼管矢板壁等をコンクリート護岸の背面または内側に構築することしか記載されておらず,既設コンクリート護岸に鋼管杭を圧入することが当業者が容易に想到しうるということはできない。むしろ,甲第1号証に接した当業者であれば,既設コンクリート護岸の位置に鋼管杭を圧入して鋼管杭列を構築しようとする場合,コンクリート護岸の内側に鋼矢板壁を構築して水流を制限し,鋼矢板壁の上方の作業スペースに作業機を設置して,既設コンクリート護岸を除去し,新設の護岸となる鋼管杭列等を構築しようとするのが自然である。 エ 甲第2号証記載の,「ケーシング回転掘削機」,「下端にビットが取り付けられた鋼管杭」は,それぞれ本件発明の「鋼管杭圧入装置」,「先端にビットが取り付けられた切削用鋼管杭」に相当するから,甲第2号証には,「鋼管杭圧入装置を用い,先端にビットが取り付けられた切削用鋼管杭を圧入して鋼管杭列を構築し,次いで継手を鋼管杭の継手係合部に圧入して鋼管杭壁を構築する鋼管杭壁の構築方法。」の発明が記載されていると認められ,このような切削用鋼管杭を用いることにより,硬い地質や転石・玉石の多い地質,あるいは障害物のある場合にも,別の掘削機を使用することなく,鋼管杭を硬質地盤に圧入できることが示されている。 しかしながら,甲第2号証に記載された発明の鋼管杭圧入装置は,反力取り装置から反力を取るものであり,コンクリート護岸のような厚みのある硬い地盤を打ち抜いて鋼管杭列壁の構築ができることまでは示されていない。 オ 甲第3号証には,下端に掘削ビットが取り付けられたケーシングチューブを用いて,本件発明のコンクリート護岸に相当する,「護岸の砕石層」を打ち抜き,掘削孔内に置換材を充填して杭打ち込み用孔を形成し,この杭打ち込み用孔に杭を打ち込んで護岸に基礎杭あるいは土留め杭を築造することが記載されている。 しかし,ビットが取り付けられたケーシングチューブは,既設の護岸を補強するための杭打ち用の孔を掘削するものであって,連続杭壁を設けるためのものではなく,また,除去することを前提としたコンクリート護岸を打ち抜いて鋼管杭を圧入することを示唆するものでもない。 カ 甲第4号証には,下端に掘削刃(本件発明の「ビット」に相当する。)が取り付けられたケーシングチューブを用いて,岩盤や転石の多い硬質地盤やコンクリート構造物等を切削することが記載されているが,除去することを前提としたコンクリート護岸を打ち抜いて鋼管杭を圧入することは示唆されていない。 キ 甲第5号証ないし甲第7号証には,鋼管杭圧入装置を用いて,鋼管杭を圧入して鋼管杭列を構築し,この鋼管杭列から反力を得ながら,上記鋼管杭列に連続して鋼管杭を圧入することが記載され,特に甲第5号証には,鋼管杭を回転圧入することが記載されているが,ビットを備えた切削用鋼管杭を圧入するものではなく,コンクリート護岸のような硬質地盤に鋼管杭を圧入できることは示されていない。 ク ところで,甲第2号証ないし甲第4号証には,下端にビットが取り付けられた鋼管杭は,硬質地盤に圧入することができること示され,特に甲第3号証には,下端にビットが取り付けられた管をコンクリート護岸(護岸の砕石層)に圧入することが示されている。 また,甲第5号証には,鋼管杭列から反力を得ながら鋼管杭を回転圧入することが記載されており,「鋼管杭を回転圧入できる鋼管杭圧入装置を用いて,先端にビットを備えた切削用鋼管杭を圧入して鋼管杭列を構築し,この鋼管杭列から反力を得ながら,上記鋼管杭列に連続して上記切削用鋼管杭を回転圧入」することは,甲第2号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しうるといえる。 しかしながら,上記アないしキで述べたとおり,除去することを前提としたコンクリート護岸を打ち抜いて鋼管杭を圧入し,鋼管杭列を構築することは甲第1号証ないし甲第7号証のいずれにも記載も示唆もないから,「切削用鋼管杭をコンクリート護岸を打ち抜いて圧入して鋼管杭列を構築し,この鋼管杭列から反力を得ながら,上記鋼管杭列に連続して上記切削用鋼管杭を回転圧入」することが,当業者が容易になしうるとすることはできない。 ケ そして,本件発明は,既設のコンクリート護岸を除去することなく鋼管杭列を構築するため,鋼管杭列の構築に先立って川の流れをせき止める等の仮設工事を必要としないので,工期が短縮される,コンクリート護岸に圧入された鋼管杭列から反力を得ることにより,アースオーガ等の装置を必要とせずに切削用鋼管杭をコンクリート護岸を打ち抜いて回転圧入することができ,装置がコンパクトになり,スペースの限られた護岸でも鋼管杭列壁を構築できる等の,特有の作用効果を奏するものと認められる。 したがって,本件発明は,甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明,及び甲第4号証ないし甲第7号証に示される周知慣用技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 よって,無効理由3は理由がない。 第5 むすび 以上のとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件発明に係る特許を、無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2011-10-06 |
出願番号 | 特願2003-368034(P2003-368034) |
審決分類 |
P
1
123・
55-
Y
(E02B)
P 1 123・ 537- Y (E02B) P 1 123・ 121- Y (E02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西田 秀彦 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
土屋 真理子 鈴野 幹夫 |
登録日 | 2008-04-04 |
登録番号 | 特許第4105076号(P4105076) |
発明の名称 | 護岸の連続構築方法および河川の拡幅工法 |
代理人 | 増井 和夫 |
代理人 | 内田 雅一 |
代理人 | 増井 和夫 |
代理人 | 磯野 道造 |
代理人 | 齋藤 誠二郎 |
代理人 | 橋口 尚幸 |
代理人 | 橋口 尚幸 |
代理人 | 齋藤 誠二郎 |
代理人 | 富田 哲雄 |