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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効2012800042 | 審決 | 特許 |
無効2010800088 | 審決 | 特許 |
無効2012800032 | 審決 | 特許 |
無効2013800042 | 審決 | 特許 |
無効2013800106 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 A61K 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K 審判 全部無効 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1261738 |
審判番号 | 無効2011-800221 |
総通号数 | 154 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-10-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2011-10-31 |
確定日 | 2012-07-18 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4565715号発明「粉体含有皮膚外用剤」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第4565715号の請求項1?6に係る発明(以下,それぞれ,「本件特許発明1」?「本件特許発明6」といい,これらをまとめて「本件特許発明」という。)についての出願は,平成12年8月23日に被請求人であるポーラ化成工業株式会社によって出願され,平成22年8月13日にその発明について特許の設定登録がされたものである。 これに対して,請求人南条雅裕及び松崎隆は,平成23年11月1日に本件特許発明1?6に対して特許無効審判を請求し,被請求人は,平成24年1月24日に答弁書とともに訂正請求書を提出して訂正を求めたのに対して,請求人は同年3月12日に弁駁書を提出した。 そして,平成24年5月22日に第1回口頭審理が行われ,これに先立ち請求人は同年5月9日に口頭審理陳述要領書を,同年24年5月18日に上申書を,それぞれ提出し,また被請求人は,同年5月8日に口頭審理陳述要領書を提出した。 なお,請求人の主張については,補正許否の決定が2回行われ,平成24年4月12日付け補正許否の決定では,「上記弁駁書において新たに追加された甲第11?19及び21?23号証により立証しようとする事実に基づく請求の理由の補正,すなわち,上記弁駁書の第10頁下から2行目?第31頁最下行に記載された事項,及び,同第44頁第3?18行に記載された事項による請求の理由の補正については,許可しない。」とされ,上記口頭審理における補正許否の決定では,「請求人の平成24年5月18日差し出しの上申書第35頁及び第36頁に記載された「(5)求釈明」と題する主張は、請求の理由を変更するものであると認められ、当該箇所に記載された事項による請求の理由の補正は、特許法第131条の2第2項の規定に基づき、これを許可しない。」とされた。 2.訂正請求について 平成24年1月24日付けの訂正請求は,本件特許発明の明細書を,上記訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって,その訂正の内容は次のとおりである。ただし,下線は,被請求人が訂正箇所の明示のために付したものである。 ・訂正事項1 請求項1及び2において,「(1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸、メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上とで被覆された二酸化チタン」を「(1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸、メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上(無水珪酸のみによる場合を除く)とで被覆された二酸化チタン」と訂正する。 ・訂正事項2 請求項1?4及び6において,「皮膚外用剤。」を「化粧料。」と訂正する。 請求項6において,「請求項5に記載の」を「請求項1?5のいずれかに記載の」と訂正する。 ・訂正事項3 請求項5において,「化粧料であることを特徴とする、請求項1?4何れか1項に記載の皮膚外用剤。」を「前記二酸化チタンは、(1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸及びメチルシロキサン網状重合体、又は無水珪酸及び架橋型メチルポリシロキサンとで被覆されている、請求項1?4のいずれか1項に記載の化粧料。」と訂正する。 ・訂正事項4 明細書段落0015に記載した「実施例1?5」を「参考例1、実施例2?5」に訂正する。 明細書段落0016の表1に記載した「実施例1」を「参考例1」に訂正する。 明細書段落0017に記載した「実施例1?5」を「参考例1、実施例2?5」に訂正し,同段落に記載した「実施例1」を「参考例1」に訂正する。 明細書段落0018の表2に記載した「実施例1」を「参考例1」に訂正する。 明細書段落0019に記載した「実施例7」を「参考例7」に訂正し,同段落に記載した「実施例1」を「参考例1」に訂正する。 3.訂正の可否に対する判断 訂正事項1は,二酸化チタンを被覆する成分中(2)の成分について,「無水珪酸、メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサン」の合計3種の材料の中から選ばれる「1種乃至は2種以上」であった選択肢(全部で7通りである。)のうち,「無水珪酸のみによる場合」の選択肢を除くものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とし,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 訂正事項2は,「皮膚外用剤」をより下位概念である「化粧料」に限定しつつ,それに伴って請求項6が引用する請求項の番号に必要な訂正をするものと認められ,かつ,本件出願の願書に最初に添付した明細書(以下、本件当初明細書という。)の「化粧料であることを特徴とする、請求項1?4何れか1項に記載の皮膚外用剤。」(請求項5を参照。)との記載等に基づくものであるから,本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 訂正事項3は,請求項5において,二酸化チタンを被覆する成分中(2)の成分について,当該請求項5が直接又は間接に引用する請求項1では,「無水珪酸、メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサン」の合計3種の材料の中から選ばれる「1種乃至は2種以上」であるとされていた選択肢(全部で7通りである。)を,「無水珪酸及びメチルシロキサン網状重合体、又は無水珪酸及び架橋型メチルポリシロキサン」の2つの選択肢に限定するものであり,また,請求項末尾を「化粧料」とするものであるが,前者は,本件当初明細書の「微粒子二酸化チタン(平均粒径5μm)55重量部、酸化アルミニウム2重量部,無水珪酸34重量部,架橋型メチルポリシロキサン(トーレ株式会社製トレフィル)8重量部を遊星ボールミルに仕込み、48時間被覆処理を行い、平均粒径4.3μmの本発明の被覆二酸化チタン2を得た。」(段落0008を参照。)及び「微粒子二酸化チタン(平均粒径5μm)60重量部、酸化アルミニウム2重量部、無水珪酸34重量部及びメチルシロキサン網状重合体4重量部を遊星ボールミルに仕込み、48時間被覆処理を行い、平均粒径5.2μmの本発明の被覆二酸化チタン3を得た。」(段落0009を参照。)との記載に基づくものであって,後者は訂正事項2と同様であるから,両者とも特許請求の範囲の減縮を目的とし,本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 訂正事項4は,訂正事項1?3の訂正に伴って必要となった,発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるためのものと認められるから,訂正事項1?3と同様,特許請求の範囲の減縮を目的とし,本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 なお,請求人は,平成24年5月9日差し出しの口頭審理陳述要領書において,「皮膚外用剤」を「化粧料」に訂正することについて,「化粧料」には,例えばまつげに適用するマスカラのような,皮膚以外の部分に適用するものが含まれるが,当該マスカラは「皮膚外用剤」ではない旨を指摘しつつ,「訂正前ではクレームの権利範囲には入らなかった(又は、その蓋然性が高い)ものを、クレームの権利範囲に明らかに含めてしまうものであり、それゆえに、本件訂正は、特許請求の範囲を減縮するものとはいえず、訂正要件違反である」と主張する。 しかしながら,本件特許明細書に記載される「化粧料」の意味について検討すれば,明細書段落0002には,「メークアップ化粧料等の粉体含有化粧料に於いて、含有されている粉体が、皮膚上に塗布した場合、皮脂を吸収して、経時的に暗い色に変化していく現象は既に知られている現象である。これは所謂化粧崩れとして捉えられており、これは粉体類が皮脂に濡れてその色が変化するものであると考えられている。」と記載した上で,明細書段落0004において,「従来のシリコーン処理粉体やパーフルオロ処理粉体のみでは解決の出来なかった化粧崩れを、抑制する手段を提供することを課題とする。」と記載していることから,本件特許発明は,皮膚上に塗布した場合に,化粧料に含有される粉体が,皮脂を吸収し又は皮脂に濡れて,色が変化するという化粧崩れを抑制することを課題としていることが明らかであり,したがって,本件特許明細書に記載される「化粧料」とは,皮膚に適用されるものを意味し,皮膚外用剤ではないものは包含しないことが明らかであるというべきである。また,明細書0012段落を含め全明細書を見ても,本件特許明細書でいう「化粧料」に,マスカラのような皮膚以外の部分に適用するものが含まれると解される余地のある記載は見当たらない。 よって,請求人の上記主張は採用できないものである。 以上のとおりであるから,平成24年1月24日付けの訂正は,特許法第134条の2第1項並びに同法同条第5項の規定によって準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので,当該訂正を認める。 4.本件訂正発明 上記訂正の結果,本件特許の特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明(以下,それぞれ,「本件訂正発明1」?「本件訂正発明6」といい,これらをまとめて「本件訂正発明」という。)は,本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。 「【請求項1】 1)(1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸、メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上(ただし、無水珪酸のみによる場合を除く)とで被覆された二酸化チタンと2)撥水処理粉体とを含有することを特徴とする、化粧料。 【請求項2】 (1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸、メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上(ただし、無水珪酸のみによる場合を除く)とで被覆された二酸化チタンにおいて、該二酸化チタンの平均粒径が0.01?10μmであることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料。 【請求項3】 撥水処理粉体における撥水処理が、パーフルオロアルキル化処理であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧料。 【請求項4】 パーフルオロアルキル化処理が、パーフルオロアルキルエチル燐酸ジエタノールアミン塩および/またはパーフルオロアルキルシランによるコーティング処理であることを特徴とする、請求項3に記載の化粧料。 【請求項5】 前記二酸化チタンは、(1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸及びメチルシロキサン網状重合体、又は無水珪酸及び架橋型メチルポリシロキサンとで被覆されている、請求項1?4のいずれか1項に記載の化粧料。 【請求項6】 メークアップ用であることを特徴とする、請求項1?5のいずれかに記載の化粧料。」 5.当事者の主張 (1)請求人の主張 請求人は,「特許第4565715号の請求項1?6に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め,その理由として,以下の無効理由1?6を主張し,証拠方法として,以下の甲第1?10,20及び24?32号証を提出している。 ・無効理由1 本件特許発明1?6は,甲第1号証に記載された発明であって,特許法第29条第1項第3号に該当するから,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 又は,本件特許発明1?6は,甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 本件訂正発明1?6についても,この無効理由が存在する。 ・無効理由2 本件特許発明1,2,5及び6は,甲第2号証に記載された発明であって,特許法第29条第1項第3号に該当するから,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 又は,本件特許発明1,2,5及び6は,甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 本件訂正発明1,2,5及び6についても,この無効理由が存在する。 ・無効理由3 本件特許発明1,2,5及び6は,甲第3号証に記載された発明であって,特許法第29条第1項第3号に該当するから,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 又は,本件特許発明1,2,5及び6は,甲第3証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 本件訂正発明1,2,5及び6についても,この無効理由が存在する。 ・無効理由4 本件特許発明1?6は,甲第4号証に記載された発明であって,特許法第29条第1項第3号に該当するから,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 又は,本件特許発明1?6は,甲第4号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 本件訂正発明1?6についても,この無効理由が存在する。 ・無効理由5 本件特許発明1,2及び5は,甲第5号証に記載された発明であって,特許法第29条第1項第3号に該当するから,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 又は,本件特許発明1,2及び5は,甲第5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから,本件特許は,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきである。 本件訂正発明1,2及び5についても,この無効理由が存在する。 ・無効理由6 本件特許発明2?6は,明確でなく,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから,本件特許は,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とされるべきである。 本件訂正発明2?6についても,この無効理由が存在する。 (証拠方法) 甲第1号証:発明協会公開技報98-682 甲第2号証:特開平11-222420号公報 甲第3号証:特開平11-322564号公報 甲第4号証:特許第2880084号公報 甲第5号証:特開平2-247109号公報 甲第6号証:大東化成株式会社作成の「Surface Treatments」との標題のパンフレット(2009年) 甲第7号証:医薬部外品原料規格2006(2006年)(審決注:証拠として示された箇所は第1189及び1190頁並びに奥付である。) 甲第8号証:フレグランスジャーナル 1999-5号(1999年)(審決注:証拠として示された箇所は第113頁及び奥付頁である。) 甲第9号証:大阪地方裁判所平成19年12月11日判決(審決注:平成18年(ワ)第11880号) 甲第10号証:知的財産高等裁判所平成21年3月18日判決(審決注:平成20年(ネ)第10013号) 甲第20号証:「酸化チタン-物性と応用技術」(1991)(審決注:証拠として示された箇所は第80?87及び346頁並びに奥付である。) 甲第24号証:特開2001-151509号公報 甲第25号証:特開平10-287820号公報 甲第26号証:特開2001-58935号公報 甲第27号証:特開平6-157264号公報 甲第28号証:特開平8-217654号公報 甲第29号証:特開昭63-141912号公報 甲第30号証:「フレグランスジャーナル2000-5号」(2000年)(審決注:証拠として示された箇所は第80?85頁である。) 甲第31号証:「フレグランスジャーナル1997-8号」(1997年)(審決注:証拠として示された箇所は第64?73頁である。) 甲第32号証:「フレグランスジャーナル1996-3号」(1996年)(審決注:証拠として示された箇所は第68?75頁である。) なお,欠番の部分(甲第11?19及び21?23号証)は,平成24年4月12日付け補正許否の決定において,請求の理由を変更するものであると認められ,許可されなかった請求の理由の補正に関する証拠であり,第1回口頭審理において「提出されなかったものとして扱う」とされたものである。 (2)被請求人の主張 被請求人は,「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め,上記請求人が主張する無効理由1?6は,いずれもあてはまらないと主張し,証拠方法として,以下の乙第1?18号証を提出している。 乙第1号証:特開平7-165534号公報 乙第2号証:特開平8-277208号公報 乙第3号証:特開平9-77637号公報 乙第4号証:特開平9-202722号公報 乙第5号証:特開平10-182397号公報 乙第6号証:特開平10-251123号公報 乙第7号証:特開平10-251125号公報 乙第8号証:特開平10-291922号公報 乙第9号証:特開平11-1321号公報 乙第10号証:特開2001-98186号公報 乙第11号証:特開2001-220141号公報 乙第12号証:特開2002-60220号公報 乙第13号証:特開2000-191325号公報 乙第14号証:特開2000-7311号公報 乙第15号証:特開平11-157839号公報 乙第16号証:知財高裁平成19年2月21日判決(平成17年(行ケ)第10661号) 乙第17号証:平成12年4月10日付 原料紹介シート(作成者:冨士色素株式会社、立証趣旨:TiO2-SMSの被覆成分) 乙第18号証:製品安全データシート(作成者:冨士色素株式会社、立証趣旨:TiO2-SMSの被覆成分) 6.当審の判断 当審は,本件訂正発明1?6の特許は,上記無効理由1?6によっては無効にすべきものであるとはいえない,と判断する。その理由は,以下のとおりである。 (1)無効理由1について ア.無効理由1の要点 請求人が主張する無効理由1の要点は,以下のとおりである。 i)甲第1号証における「アルミナ・シリカで処理された・・・酸化チタン」は,本件特許発明に即していえば,酸化アルミニウムと無水珪酸とで被覆された二酸化チタンに相当する。 ii)甲第1号証における「ファンデーション」は,本件特許発明の皮膚外用剤に相当し,また,同時に,本件特許発明5の化粧料,本件特許発明6のメークアップ用化粧料に相当する。 iii)甲第1号証における「フッ素処理セリサイト,フッ素処理板状硫酸バリウム,フッ素処理酸化チタン,フッ素処理微粒子酸化チタン,フッ素処理微粒子酸化亜鉛,フッ素処理タルク」は,いずれも本件特許発明の「撥水処理粉体」に相当する。 iv)甲第1号証において,二酸化チタンについて「平均粒子径6μm」とされており,これは,本件特許発明2における二酸化チタンの平均粒径である0.01?10μmに相当する。 v)甲第1号証において,本件特許発明の撥水処理に相当するフッ素処理に関して「パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩処理」とされており,これは,本件特許発明3のパーフルオロアルキル化処理であり,なおかつ,本件特許発明4のパーフルオロアルキルエチル燐酸ジエタノールアミン塩によるコーティング処理に相当する。 vi)以上により,本件特許発明1?6は,いずれも,甲第1号証に基づいて,新規性を欠如する。なお,仮に差異があるとしても微差にすぎず進歩性を欠如する。 vii)本件訂正発明1?6についても,甲第1号証を主引例として,新規性及び/又は進歩性の欠如を理由とする無効理由が存在する。 イ.甲第1号証の記載 (1-1)第3頁左欄第27行?最下行 「厚さ20nm、平均粒子径6μmのアルミナ・シリカで処理された超薄片状酸化チタンを用い、フッ素処理としては、5重量%パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩処理を用いて下記の処方にてファンデーションを作製した。尚、単位は重量%である。 処 方 超薄片状酸化チタン 4 酸化鉄 4.5 フッ素処理セリサイト 20 フッ素処理板状硫酸バリウム 34 フッ素処理酸化チタン 8 フッ素処理微粒子酸化チタン 2 フッ素処理微粒子酸化亜鉛 3 フッ素処理タルク 10 シリコーン球状樹脂ビーズ(東芝シリコーン 社製 トスパール145A) 4 パーフルオロポリエーテル 4 フッ素変性シリコーン 3 紫外線吸収剤(パラソルMCX) 2 スクワラン 0.5 メチルフェニルポリシロキサン 0.5 防腐剤、香料 0.5」 ウ.判断 甲第1号証には,アルミナ・シリカで処理された超薄片状酸化チタン,及び,フッ素処理としてパーフルオロアルキル燐酸ジエタノールアミン塩処理がされた他の粉体を含有するファンデーションが記載されている。 本件訂正発明1と甲第1号証に記載されたものとを比較すると,二酸化チタンを被覆する成分として,酸化アルミニウムの他には,前者では,「無水珪酸,メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上(ただし、無水珪酸のみによる場合を除く)」が特定されている(すなわち,メチルシロキサン網状重合体又は架橋型メチルポリシロキサンの何れか一方が必ず含まれる)のに対し,後者では,「無水珪酸」である点で相違する。 したがって,本件訂正発明1は,甲第1号証に記載されたものということはできない。また,本件訂正発明2?6についても同様である。 また,上記相違点につき検討しても,甲第1号証には,その全体を見ても,二酸化チタンの被覆成分として「メチルシロキサン網状重合体」又は「架橋型メチルポリシロキサン」については記載も示唆もされていないから,当業者といえども,格別の創意を要することなく甲第1号証に記載されたものから本件訂正発明1に到達し得たとすることはできない。そうすると,本件訂正発明1の効果については検討するまでもなく,本件訂正発明1は,甲第1号証に記載されたものに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。同様に,本件訂正発明2?6も,甲第1号証に記載されたものに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって,本件訂正発明1?6に関して,請求人のいう無効理由1により,本件特許が,特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対してなされたものであるとも,また,同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとも,することはできない。 (2)無効理由2について ア.無効理由2の要点 請求人が主張する無効理由2の要点は,以下のとおりである。 i)甲第2号証の実施例3における微粒子酸化チタンは,「シリカアルミナ処理球状酸化チタン」であるとされており,本件特許発明に則していえば,酸化アルミニウムと無水珪酸とで被覆された二酸化チタンに相当する。 ii)甲第2号証の実施例3における微粒子酸化チタンは,「直径が17nm」であるとされており,これは,本件特許発明2の二酸化チタンの平均粒径である0.01?10μmに相当する。 iii)甲第2号証の実施例3における「化粧下地料」は,本件特許発明の皮膚外用剤に相当し,また,同時に,本件特許発明5の化粧料,本件特許発明6のメークアップ用化粧料に相当する。 iv)甲第2号証の実施例3における微粒子酸化亜鉛は,「メチルハイドロジェンポリシロキサンで処理」されており,かかる処理が施された微粒子酸化亜鉛は,本件特許発明の撥水処理粉体に相当する。 v)以上により,本件特許発明1,2,5及び6は,いずれも,甲第2号証に基づいて,新規性を欠如する。なお,仮に差異があるとしても微差にすぎず進歩性を欠如する。 vi)本件訂正発明1,2,5及び6についても,甲第2号証を主引例として,新規性及び/又は進歩性の欠如を理由とする無効理由が存在する。 イ.甲第2号証の記載 (2-1)段落0032 「【0032】 以下、実施例の配合例を示すが、……(略)……。……(略)……。また、紫外線防御成分として、微粒子酸化チタンは、直径が17nmのシリカアルミナ処理球状酸化チタンをオクチルシランで処理したものを用い、微粒子酸化亜鉛は直径が30nmのシリカ処理微粒子酸化亜鉛をメチルハイドロジェンポリシロキサンで処理したものを用いた。……(略)……。」 (2-2)段落0039,0040 「【0039】実施例3 下記の処方にて、有機系の紫外線防御成分を配合しない化粧下地料を作製した。尚、微粒子酸化チタン分散液は、微粒子酸化チタン50重量部と環状シリコーン(5量体)50重量部をビーズミルを用いて粉砕し、スラリー化したものを使用した。 【0040】 【表4】 」 ウ.判断 甲第2号証には,直径17nmのシリカアルミナ処理球状酸化チタンをオクチルシランで処理した微粒子酸化チタン,及び,シリカ処理微粒子酸化亜鉛をメチルハイドロジェンポリシロキサンで処理した微粒子酸化亜鉛を含有する化粧下地料が記載されている。 本件訂正発明1と甲第2号証に記載されたものとを比較すると,二酸化チタンを被覆する成分として,酸化アルミニウムの他には,前者では,「無水珪酸,メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上(ただし、無水珪酸のみによる場合を除く)」が特定されている(すなわち,メチルシロキサン網状重合体又は架橋型メチルポリシロキサンの何れか一方が必ず含まれる)のに対し,後者では,「シリカ」すなわち「無水珪酸」である点で相違する。 したがって,本件訂正発明1は,甲第2号証に記載されたものということはできない。また,本件訂正発明2,5及び6についても同様である。 また,上記相違点につき検討しても,甲第2号証には,その全体を見ても,二酸化チタンの被覆成分として「メチルシロキサン網状重合体」又は「架橋型メチルポリシロキサン」は記載も示唆もされていないから,当業者といえども,格別の創意を要することなく甲第2号証に記載されたものから本件訂正発明1に到達し得たとすることはできない。そうすると,本件訂正発明1の効果については検討するまでもなく,本件訂正発明1は,甲第2号証に記載されたものに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。同様に,本件訂正発明2,5及び6も,甲第2号証に記載されたものに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって,本件訂正発明1,2,5及び6に関して,請求人のいう無効理由2により,本件特許が,特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対してなされたものであるとも,また,同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとも,することはできない。 (3)無効理由3について ア.無効理由3の要点 請求人が主張する無効理由3の要点は,以下のとおりである。 i)甲第3号証の実施例1における表面処理微粒子酸化チタンは,「シリカとアルミナにて被覆処理」されており,本件特許発明に則していえば,酸化アルミニウムと無水珪酸とで被覆された二酸化チタンに相当する。 ii)甲第3号証の実施例1おける表面処理微粒子酸化亜鉛は,「メチルハイドロジェンポリシロキサンにて被覆・加熱処理」されており,かかる処理が施された表面処理微粒子酸化亜鉛は,本件特許発明の「撥水処理粉体」に相当する。 iii)甲第3号証の実施例1における「サンスクリーン剤」は,本件特許発明の皮膚外用剤に相当し,また,甲第3号証においては,「化粧下地料」として用いることもできる「サンスクリーン剤」の提供が一貫して意図されているから,甲第3号証の実施例1は,「化粧下地料」として用いることもできる「サンスクリーン剤」であると甲第3号証に接する当業者は理解すると合理的にいえ,「化粧下地料」は,本件特許発明5の化粧料,本件特許発明6のメークアップ用化粧料に相当する。 iv)以上により,本件特許発明1,2,5及び6は,いずれも,甲第3号証に基づいて,新規性を欠如する。なお,仮に差異があるとしても微差にすぎず進歩性を欠如する。 v)本件訂正発明1,2,5及び6についても,甲第3号証を主引例として,新規性及び/又は進歩性の欠如を理由とする無効理由が存在する。 イ.甲第3号証の記載 (3-1)段落0031?0033 「【0031】本発明では、顔料として表面処理無機顔料2種(微粒子酸化チタンおよび微粒子酸化亜鉛)とシリコーン系有機顔料1種を用いて検討を行った。まず、本実施例で用いた表面処理無機顔料の概要を示す。 【0032】表面処理微粒子酸化チタン 微粒子酸化チタンとしては平均一次粒子径17nmのルチル型微粒子酸化チタンを湿式法処理により、シリカとアルミナにて被覆処理し、これにオクチルトリエトキシシランを処理した。得られた表面処理微粒子酸化チタンは、撥水性、紫外線防御効果に優れ、かつ光触媒活性が低いこと(ESRにより確認)が確認された。この表面処理微粒子酸化チタンの吸油量を測定したところ、表3に示す値が得られた。 【0033】表面処理微粒子酸化亜鉛 母材となる微粒子酸化亜鉛としては住友大阪セメント社製のZnO-350グレードを使用した。微粒子酸化亜鉛とメチルハイドロジェンポリシロキサンを混合した後、800℃にて2時間焼成し、酸化亜鉛表面にシリカ層を形成させた後、さらにメチルハイドロジェンポリシロキサンにて被覆・加熱処理した。得られた表面処理微粒子酸化亜鉛は、撥水性、紫外線防御効果に優れ、かつ光触媒活性が低いこと(ESRにより確認)が確認された。この表面処理微粒子酸化亜鉛の吸油量を測定したところ、表3に示す値が得られた。」 (3-2)段落0036?0039 「【0036】以下に上記顔料を用いて、サンスクリーン剤を作製した実施例を示す。 【0037】実施例1 下記表4に示す処方に従ってサンスクリーン剤を得た。尚、シリコーン系有機顔料である東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のトレフィルE-507グレードは事前にメチルフェニルポリシロキサンにて50重量%に希釈し、2軸の押し出し混練り装置を用いて混練りしたペーストを使用した。尚、単位は重量%である(以下同様)。 【0038】 【表4】 【0039】各原料を粗混合した後、ディスパーにて混合し、ステンレスボールと共に容器に充填して製品とした。」 ウ.判断 甲第3号証には,平均一次粒子径17nmのルチル型微粒子酸化チタンをシリカとアルミナにて被覆処理し,これにオクチルトリエトキシシランを処理した表面処理微粒子酸化チタン,及び,微粒子酸化亜鉛表面にシリカ層を形成させた後,さらにメチルハイドロジェンポリシロキサンにて被覆・加熱処理した表面処理微粒子酸化亜鉛を含有するサンスクリーン剤が記載されている。 本件訂正発明1と甲第3号証に記載されたものとを比較すると,二酸化チタンを被覆する成分として,酸化アルミニウムの他には,前者では,「無水珪酸,メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上(ただし、無水珪酸のみによる場合を除く)」が特定されている(すなわち,メチルシロキサン網状重合体又は架橋型メチルポリシロキサンの何れか一方が必ず含まれる)のに対し,後者では,「シリカ」すなわち「無水珪酸」である点で相違する。 したがって,本件訂正発明1は,甲第3号証に記載されたものということはできない。また,本件訂正発明2,5及び6についても同様である。 また,上記相違点につき検討しても,甲第3号証には,その全体を見ても,二酸化チタンの被覆成分として「メチルシロキサン網状重合体」又は「架橋型メチルポリシロキサン」については記載も示唆もされていないから,当業者といえども,格別の創意を要することなく甲第3号証に記載されたものから本件訂正発明1に到達し得たとすることはできない。そうすると,本件訂正発明1の効果については検討するまでもなく,本件訂正発明1は,甲第3号証に記載されたものに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。同様に,本件訂正発明2,5及び6も,甲第3号証に記載されたものに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって,本件訂正発明1,2,5及び6に関して,請求人のいう無効理由3により,本件特許が,特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対してなされたものであるとも,また,同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとも,することはできない。 (4)無効理由4について ア.無効理由4の要点 請求人が主張する無効理由4の要点は,以下のとおりである。 i)甲第4号証の実施例4における棒状粉体としては,「酸化鉄複合処理酸化チタン(短径0.02μm,長径20μm)をアルミナ1%,シリカ1%で表面処理した試料」が用いられており,本件特許発明に則していえば,酸化アルミニウムと無水珪酸とで被覆された二酸化チタンに相当する。 ii)甲第4号証の実施例4における棒状粉体は,「短径0.02μm,長径20μm」であるとされており,平均粒径の算出法の例えばの例として,2軸幾何平均径(つまり平方根)を計算すれば,0.632μmであり,これは,本件特許発明2の二酸化チタンの平均粒径である0.01?10μmに相当する。 iii)甲第4号証は粉体化粧料に関するものであり,その用途として具体的に記載されているのは,「ファンデーション、プレストパウダー、頬紅、白粉、アイシャドウ」であり,いずれも,メークアップ用化粧料である。また,甲第4号証の実施例4がファンデーションである旨が0046段落に明記されている。したがって,甲第4号証の実施例4の「粉体化粧料」は,本件特許発明の皮膚外用剤に相当し,また,同時に,本件特許発明5の化粧料,本件特許発明6のメークアップ用化粧料に相当する。 iv)甲第4号証の実施例4におけるフッ素処理超微粒子酸化チタン,フッ素処理ベンガラ,フッ素処理黄酸化鉄,フッ素処理黒酸化鉄に施されるフッ素処理は,「パーフルオロアルキルリン酸トリエタノールアミン塩処理」とされており,かかる処理が施された各表面処理粉体は,本件特許発明の撥水処理粉体に相当し,本件特許発明3のパーフルオロアルキル化処理によって撥水処理された撥水処理粉体にも相当する。また,甲第4号証は,段落0025において,粉体のフッ素処理としては,パーフルオロアルキルシラン処理をも具体名を挙げて開示するが,これは,本件特許発明4のパーフルオロアルキルシラン処理によるコーティング処理に他ならない。 v)以上により,本件特許発明1?6は,いずれも,甲第4号証に基づいて,新規性を欠如する。なお,仮に差異があるとしても微差にすぎず進歩性を欠如する。 vi)本件訂正発明1?6についても,甲第4号証を主引例として,新規性及び/又は進歩性の欠如を理由とする無効理由が存在する。 イ.甲第4号証の記載 (4-1)段落0025 「【0025】さらに、本発明の粉体化粧料では、粉体化粧料に配合してある粉体100重量部に対して、フッ素化合物で表面処理された粉体が20重量部以上配合されている場合に、本発明の効果が顕著になる特性があり、特に板状粉体がフッ素化合物で表面処理されている場合には顕著である。ここで言うフッ素化合物の例としては、パーフルオロアルキルリン酸トリエタノールアミン塩やテフロン、パーフルオロアルキルオルガノシリコーン、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルアルコール、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロポリエーテル、フッ化ピッチ等が挙げられる。」 (4-2)段落0029 「【0029】本発明の化粧料の種類としては、たとえばファンデーション、プレストパウダー、頬紅、白粉、アイシャドウ等が挙げられる。」 (4-3)段落0046 「【0046】 実施例2?4、比較例5?6(ファンデーション)」 (4-4)段落0050 「【0050】 (実施例3) 表6の処方にて作製した。棒状粉体としては、パーフルオロアルキルリン酸トリエタノールアミン塩5%処理炭酸カルシウム(短径0.05μm、長径1μm)を使用した。なお、パーフルオロアルキルリン酸トリエタノールアミン塩5%処理を以下ではフッ素処理と略する。」 (4-5)段落0053?0055 「【0053】 (実施例4) 表7の処方にて作製した。棒状粉体としては、酸化鉄複合処理酸化チタン(短径0.02μm、長径20μm)をアルミナ1%、シリカ1%で表面処理した試料を使用した。 【0054】 【表7】 【0055】 (製造法) 粉体成分をヘンシェルミキサーにて混合した後、予め混合しておいた液体成分を加え、さらに撹拌、混合した。ついで、アトマイザーを用いて粉砕を行った後、金型を用いて打型し、製品とした。」 ウ.判断 甲第4号証には,酸化鉄複合処理酸化チタン(短径0.02μm,長径20μm)をアルミナ1%,シリカ1%で表面処理した棒状粉体,並びに,フッ素処理酸化チタン,フッ素処理ベンガラ,フッ素処理黄酸化鉄及びフッ素処理黒酸化鉄(ただし,「フッ素処理」は,「パーフルオロアルキルリン酸トリエタノールアミン塩5%処理」の略である。)を含有するファンデーションが記載されている。 本件訂正発明1と甲第4号証に記載されたものとを比較すると,二酸化チタンを被覆する成分として,酸化アルミニウムの他には,前者では,「無水珪酸,メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上(ただし、無水珪酸のみによる場合を除く)」が特定されている(すなわち,メチルシロキサン網状重合体又は架橋型メチルポリシロキサンの何れか一方が必ず含まれる)のに対し,後者では,「シリカ」すなわち「無水珪酸」である点で相違する。 したがって,本件訂正発明1は,甲第4号証に記載されたものということはできない。また,本件訂正発明2?6についても同様である。 また,上記相違点につき検討しても,甲第4号証には,その全体を見ても,二酸化チタンの被覆成分として「メチルシロキサン網状重合体」又は「架橋型メチルポリシロキサン」については記載も示唆もされていないから,当業者といえども,格別の創意を要することなく甲第4号証に記載されたものから本件訂正発明1に到達し得たとすることはできない。そうすると,本件訂正発明1の効果については検討するまでもなく,本件訂正発明1は,甲第4号証に記載されたものに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。同様に,本件訂正発明2?6も,甲第4号証に記載されたものに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって,本件訂正発明1?6に関して,請求人のいう無効理由4により,本件特許が,特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対してなされたものであるとも,また,同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとも,することはできない。 (5)無効理由5について ア.無効理由5の要点 請求人が主張する無効理由5の要点は,以下のとおりである。 i)甲第5号証の「合成例1の処理粉体」は,本件特許発明に則していえば,酸化アルミニウムと無水珪酸とで被覆された二酸化チタンに相当する。 ii)甲第5号証における「W/O型乳液」は,本件特許発明の皮膚外用剤に相当し,また,同時に,本件特許発明5の化粧料に相当する。 iii)甲第5号証における「シリコン処理タルク」は,本件特許発明における撥水処理粉体に相当する。 iv)甲第5号証において,二酸化チタンについて,表面処理前の粒子サイズは,平均粒径0.05μmとされており,表面処理によって,平均粒径が200倍になることはないであろうから,シリカ・アルミナ処理が施された後の二酸化チタンの平均粒径は,本件特許発明2の二酸化チタンの平均粒径である0.01?10μmに相当する。 v)以上により,本件特許発明1,2及び5は,いずれも,甲第5号証に基づいて,新規性を欠如する。なお,仮に差異があるとしても微差にすぎず進歩性を欠如する。 vi)本件訂正発明1,2及び5についても,甲第5号証を主引例として,新規性及び/又は進歩性の欠如を理由とする無効理由が存在する。 イ.甲第5号証の記載 (5-1)第3頁右下欄第19行?第4頁左上欄第12行 「合成例1 平均粒径0.05μmの微粒子酸化チタンを10重量%になるように水によく分散させ、SiO_(2)換算で酸化チタンに対して2重量%に相当する10%ケイ酸ソーダ溶液(SiO_(2)/Na_(2)Oモル比=0.5)を加えて充分攪拌した後、Al_(2)O_(3)換算で酸化チタンに対して7.5重量%に相当する10%硫酸アルミニウム溶液を徐々に添加し、酸化チタンの表面にケイ酸の水和物及びアルミナの水和物を沈着させた。反応終了後、濾過・洗浄・乾燥した後、ジェットミルで粉砕した。これをヘンシェルミキサーに移し、十分に攪拌しつつメチルハイドロジェンポリシロキサンを2重量%添加し、混合攪拌した後、120℃で焼成処理を行い、処理粉体を得た。」 (5-2)第6頁左上欄第10行?同頁右上欄第12行(なお,角括弧([ ])内に記した数字は,丸付き数字を意味する。) 「実施例6(W/O型乳液) 下記組成を有するW/O型乳液を下記に示す方法により製造した。 <組 成> [1]スクワラン 5 重量% [2]メチルポリシクロシロキサン 20 [3]メチルフェニル ポリシロキサン(KF-56)10 [4]メチルポリシロキサン(5CS) 5 [5]ジメチルポリシロキサン ポリオキシアルキレン共重合体 0.4 [6]シリコン処理タルク 12 [7]合成例1の処理粉体 3 [8]香 料 微 量 [9]エチルアルコール 10 重量% [10]グリセリン 10 [11]精製水 適 量 <製 法> 成分[1]?[7]を攪拌混合し、油相部を得た。成分[9]?[11]を攪拌混合し、水相部を得た。上述の油相部に他の成分を加えてホモミキサーで均一に粉体を分散した後、水相部を加えて乳化を行い、成分[8]を加えて製品を得た。」 ウ.判断 甲第5号証には,合成例1の処理粉体と,シリコン処理タルクとを含有するW/O型乳液が記載されており,また,合成例1として,平均粒径0.05μmの微粒子酸化チタンの表面にケイ酸の水和物及びアルミナの水和物を沈着させ,反応終了後,濾過・洗浄・乾燥した後,粉砕し,メチルハイドロジェンポリシロキサンを添加して,混合撹拌後,焼成処理を行い,処理粉体を得たことが記載されている。 本件訂正発明1と甲第5号証に記載されたものとを比較すると,二酸化チタンを被覆する成分として,酸化アルミニウムの他には,前者では,「無水珪酸,メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上(ただし、無水珪酸のみによる場合を除く)」が特定されている(すなわち,メチルシロキサン網状重合体又は架橋型メチルポリシロキサンの何れか一方が必ず含まれる)のに対し,後者では,ケイ酸の水和物を沈着させた上で乾燥させたものである点で相違する。 したがって,本件訂正発明1は,甲第5号証に記載されたものということはできない。また,本件訂正発明2及び5についても同様である。 また,上記相違点につき検討しても,甲第5号証には,その全体を見ても,二酸化チタンの被覆成分として「メチルシロキサン網状重合体」又は「架橋型メチルポリシロキサン」については記載も示唆もされていないから,当業者といえども,格別の創意を要することなく甲第5号証に記載されたものから本件訂正発明1に到達し得たとすることはできない。そうすると,本件訂正発明1の効果については検討するまでもなく,本件訂正発明1は,甲第5号証に記載されたものに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。同様に,本件訂正発明2及び5も,甲第5号証に記載されたものに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって,本件訂正発明1,2及び5に関して,請求人のいう無効理由5により,本件特許が,特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対してなされたものであるとも,また,同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとも,することはできない。 (6)無効理由6について ア.無効理由6の要点 請求人が主張する無効理由6の要点は,以下のとおりである。 i)本件訂正発明2における「平均粒径」について,本件特許明細書中には,「平均粒径」の定義及び説明が記載されておらず,また,一般的技術常識を考慮しても,平均粒径の算出方法及び測定方法には数多くの種類があり,市販されている測定器を使用して平均粒径を測定するとしても,数多くの種類がある算出方法ないし測定方法からいずれを選択するかによって,平均粒径の値は全く異なるものになるから,「平均粒径」の意味するところが明確でない。 ii)本件訂正発明2における「平均粒径」は,「一次粒子」と「二次粒子」のどちらについて規定しているのか,明確でない。 iii)以上により,本件訂正発明2及びそれに従属する本件訂正発明3?6は,明確でない。 イ.本件訂正明細書の特許請求の範囲の記載 本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項2?6の記載は,上記「4.本件訂正発明」で引用したとおりのものである。 ウ.判断 本件訂正発明は,最も限定条件の少ない本件訂正発明1と,それに種々の限定を付した本件訂正発明2?6からなるものである。そして,本件訂正発明1で用いられる二酸化チタンの平均粒径については何らの限定条件も付されていない一方,本件訂正発明2においては,二酸化チタンの平均粒径が0.01?10μmであるとの限定条件が付されている。そうすると,本件訂正発明においては,二酸化チタンの平均粒径は,本来,特に限定する必要があるものではなく,好ましい態様の一つとして,0.01?10μmのものが用いられている,と解される。 また,本件訂正明細書の以下の記載: 「基礎粉体となる二酸化チタンについて、その晶系はルチル型、アナタース型の何れでもかまわないが、最終物の平均粒径がサブミクロンオーダー、即ち0.01?10μm、更に好ましくは0.05?3μmになる程度の粒径であることが特に好ましい。」(訂正明細書第3頁第11?14行(段落0006)) によれば,本件訂正発明で用いられる二酸化チタンの平均粒径は,サブミクロンオーダー,すなわち,0.01?10μmになる程度の粒径であることが好ましいとされているから,二酸化チタンの平均粒径は,本件訂正発明においては,サブミクロンオーダーであればよいとされるものであり,0.01?10μmなる平均粒径は,そのことを数値範囲をもって表現したに過ぎないものと解するのが相当である。 更にいえば,本件訂正発明の二酸化チタンは,化粧料に配合して皮膚に塗布するものであるから,例えば平均粒径が1mmもあるような大きいものでは,皮膚に塗布したときの使用感や外観が好ましくないことは明らかであるし,一方,平均粒径がナノメートルオーダー以下のような小さいものは,製造したり購入したりすることができるのか否か明らかでなく,また,できるとしてもコストがかさむことは想像に難くない。このような事情を考慮すれば,本件訂正発明の二酸化チタンは,サブミクロンオーダー程度以外の平均粒径のものでは実用上ふさわしくないことは自明のことであり,本件訂正発明2にいう,0.01?10μmなる二酸化チタンの平均粒径は,単に化粧料に配合する粒子として実用上ふさわしい範囲のものを表現したに過ぎないものともいえるものである。 してみれば,測定方法や算出方法により平均粒径が変動するとか,一次粒子であるのか二次粒子であるのかの特定がないといった事情があるとしても,本件訂正発明2にいう,0.01?10μmなる数値限定の技術的意義に照らせば,本件訂正発明2にいう,0.01?10μmなる二酸化チタンの平均粒径が明確でない,とするのは,妥当な判断であるとはいえない。 したがって,本件訂正発明2?6に関して,請求人のいう無効理由6により,本件特許が,特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものであるとすることはできない。 7.むすび 以上のとおり,本件訂正発明1?6の特許は,無効理由1?6によっては無効にすべきものであるとはいえない。 審判に関する費用については,特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人の負担とすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 粉体含有皮膚外用剤 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 1)(1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸、メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上(ただし、無水珪酸のみによる場合を除く)とで被覆された二酸化チタンと2)撥水処理粉体とを含有することを特徴とする、化粧料。 【請求項2】 (1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸、メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上(ただし、無水珪酸のみによる場合を除く)とで被覆された二酸化チタンにおいて、該二酸化チタンの平均粒径が0.01?10μmであることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料。 【請求項3】 撥水処理粉体における撥水処理が、パーフルオロアルキル化処理であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧料。 【請求項4】 パーフルオロアルキル化処理が、パーフルオロアルキルエチル燐酸ジエタノールアミン塩および/またはパーフルオロアルキルシランによるコーティング処理であることを特徴とする、請求項3に記載の化粧料。 【請求項5】 前記二酸化チタンは、(1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸及びメチルシロキサン網状重合体、又は無水珪酸及び架橋型メチルポリシロキサンとで被覆されている、請求項1?4のいずれか1項に記載の化粧料。 【請求項6】 メークアップ用であることを特徴とする、請求項1?5のいずれかに記載の化粧料。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、化粧料、取り分けメークアップ化粧料に好適な皮膚外用剤に関する。 【0002】 【従来の技術】 メークアップ化粧料等の粉体含有化粧料に於いて、含有されている粉体が、皮膚上に塗布した場合、皮脂を吸収して、経時的に暗い色に変化していく現象は既に知られている現象である。これは所謂化粧崩れとして捉えられており、これは粉体類が皮脂に濡れてその色が変化するものであると考えられている。この為、皮脂濡れしないように粉体を処理する技術が開発され、化粧崩れの改善が為された。この様な技術には、粉体表面のジメチルポリシロキサンやハイドロジェンメチルポリシロキサンなどの焼き付け処理、シランカップリング剤を用いたアルキル化処理、パーフルオロアルキルエチル燐酸ジエタノールアミン塩によるコーティングなどによるパーフルオロ化処理などが挙げられる。この内、最も効果の高かったものは、パーフルオロ化処理であるが、パーフルオロ化処理をした粉体を用いても、充分感知しうる程の化粧崩れが未だ存在し、化粧崩れの更なる改善手段の開発が望まれていた。 【0003】 一方、(1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸、メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上とで被覆された二酸化チタンは、自然な仕上がりを提供するメークアップ化粧料の成分として開発されたが、このものと上記の表面処理粉体とを組み合わせることにより、化粧崩れが著しく抑制された化粧料が得られることは全く知られていなかった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、この様な状況下為されたものであり、従来のシリコーン処理粉体やパーフルオロ処理粉体のみでは解決の出来なかった化粧崩れを、抑制する手段を提供することを課題とする。 【0005】 【課題の解決手段】 この様な状況に鑑みて、本発明者らは、従来のシリコーン処理粉体やパーフルオロ処理粉体のみでは解決の出来なかった化粧崩れを、抑制する手段を求め、鋭意研究努力を重ねた結果、(1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸、メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上とで被覆された二酸化チタンと撥水処理粉体とを組み合わせることにより、この様な技術の具現化が可能であることを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示す技術に関するものである。 {1}1)(1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸、メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上とで被覆された二酸化チタンと2)撥水処理粉体とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。 {2}(1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸、メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上とで被覆された二酸化チタンにおいて、該二酸化チタンの平均粒径が0.01?10μmであることを特徴とする、{1}に記載の皮膚外用剤。 {3}撥水処理粉体における撥水処理が、パーフルオロアルキル化処理であることを特徴とする、{1}又は{2}に記載の皮膚外用剤。 {4}パーフルオロアルキル化処理が、パーフルオロアルキルエチル燐酸ジエタノールアミン塩および/またはパーフルオロアルキルシランによるコーティング処理であることを特徴とする、{3}に記載の皮膚外用剤。 {5}化粧料であることを特徴とする、{1}?{4}何れか1項に記載の皮膚外用剤。 {6}メークアップ用であることを特徴とする、{5}に記載の皮膚外用剤。 以下、本発明について、実施の形態を中心に更に詳細に説明を加える。 【0006】 【発明の実施の形態】 (1)本発明の皮膚外用剤の必須成分である、(1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸、メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上とで被覆された二酸化チタン 本発明の皮膚外用剤は、(1)酸化アルミニウムと(2)無水珪酸、メチルシロキサン網状重合体及び架橋型メチルポリシロキサンから選ばれる1種乃至は2種以上とで被覆された二酸化チタンを必須成分として含有することを特徴とする。以下、前記本発明の必須成分の二酸化チタンのことを単に「本発明の被覆二酸化チタン」と言うことがある。ここで本発明の被覆二酸化チタンを構成する前記(1)と(2)の被覆の順番であるが、これは(1)が先でも、(2)が先でも、(1)、(2)同時でも何れでもかまわない。又、被覆の方法についても、粉体を遊星ボールミルなどで処理するメカノケミカルな処理でも、二酸化チタンが分散した水溶液中で水酸化アルミニウムやシリカゲルを形成させて、これを焼成する方法でもかまわない。粒径などをコントロールするためには、メカノケミカルな処理によることが好ましい。又、メチルシロキサン網状重合体や架橋型メチルポリシロキサンは高温で焼成するとシリカになるので、これらをコーティングする場合には、メカノケミカルな方法が好ましい。これら(1)、(2)及び二酸化チタンの構成比は、(1)が1?5重量%、(2)が総量で30?40重量%、二酸化チタンが55?69重量%であることが好ましい。更に、(2)の構成として好ましいものは、(2)の構成部分において、無水珪酸の重量:メチルシロキサン網状重合体及び/又は架橋型メチルポリシロキサンの総量=3:1?1:1の比率で構成されていることである。又、この場合に於いて有機度の観点からは、メチルシロキサン網状重合体のみを構成とすることが好ましい。又、基礎粉体となる二酸化チタンについて、その晶系はルチル型、アナタース型の何れでもかまわないが、最終物の平均粒径がサブミクロンオーダー、即ち0.01?10μm、更に好ましくは0.05?3μmになる程度の粒径であることが特に好ましい。この様な被覆二酸化チタンは下記の如くに製造し使用することも出来るし、既に市販されているものを利用することも出来る。市販品としては、例えば、富士色素株式会社製の「TiO2-SMS」が好適に例示できる。本発明の皮膚外用剤において、かかる本発明の被覆二酸化チタンは唯一種を含有することも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。本発明の皮膚外用剤に於ける、本発明の被覆二酸化チタンの好ましい含有量は、1?30重量%であり、更に好ましくは3?20重量%である。これは少なすぎると効果を発揮しない場合があり、多すぎると白味が勝り調色に自由度が無くなる場合があるからである。 【0007】 (製造例1) 微粒子二酸化チタン(平均粒径5μm)65重量部、酸化アルミニウム1重量部、無水珪酸34重量部を遊星ボールミルに仕込み、48時間被覆処理を行い、平均粒径6.1μmの本発明の被覆二酸化チタン1を得た。 【0008】 (製造例2) 微粒子二酸化チタン(平均粒径5μm)55重量部、酸化アルミニウム2重量部、無水珪酸34重量部、架橋型メチルポリシロキサン(トーレ株式会社製トレフィル)8重量部を遊星ボールミルに仕込み、48時間被覆処理を行い、平均粒径4.3μmの本発明の被覆二酸化チタン2を得た。 【0009】 (製造例3) 微粒子二酸化チタン(平均粒径5μm)60重量部、酸化アルミニウム2重量部、無水珪酸34重量部及びメチルシロキサン網状重合体4重量部を遊星ボールミルに仕込み、48時間被覆処理を行い、平均粒径5.2μmの本発明の被覆二酸化チタン3を得た。 【0010】 (製造例4) 微粒子二酸化チタン(平均粒径5μm)65重量部、酸化アルミニウム1重量部、メチルシロキサン網状重合体34重量部を遊星ボールミルに仕込み、48時間被覆処理を行い、平均粒径3.9μmの本発明の被覆二酸化チタン4を得た。 【0011】 (2)本発明の皮膚外用剤の必須成分である撥水処理粉体 本発明の皮膚外用剤は撥水処理粉体を含有することを特徴とする。かかる撥水処理としては、通常化粧料用の粉体などで使用されている処理であれば特段の限定無く使用することが出来、例えば、ジメチルポリシロキサンやハイドロジェンメチルポリシロキサンなどのシリコーンを焼き付けた処理、メチルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤でアルキル化する処理、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシランやパーフルオロアルキルエチル燐酸ジエタノールアミン塩によるパーフルオロアルキル処理、アシル化グルタミン酸塩を使用したアシル化アミノ酸処理、ステアリン酸亜鉛を使用した脂肪酸石鹸処理などが好ましく例示でき、中でも、その効果への寄与からパーフルオロアルキル処理、中でもパーフルオロアルキルエチル燐酸ジエタノールアミン塩によるコーティング処理が特に好ましい。表面処理に用いる表面処理剤の量は粉体に対して1?10重量%が好ましい。又、この様な処理は有色粉体に行われていることが好ましく、かかる有色粉体としては、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、紺青、群青等が好ましく例示できる。この様な表面処理粉体は常法に従って処理したものを使用することも出来るし、既に市販されているものを使用することも出来る。市販されているもので好ましいものは、パーフルオロアルキルエチル燐酸ジエタノールアミン塩コーティング粉体である、PFベンガラ、PFグンジョウ(大東化成株式会社製)とパーフルオロアルキルシランコーティング粉体である、PFIマイカM102、PFIチタンマイカSPM70(有限会社三好化成製)が好ましく例示できる。特に群青を用いた調色系では、従来化粧崩れが著しいことが指摘されていることから、群青を用いる場合にはパーフルオロアルキル処理しておくことが特に好ましい。又、マイカ或いはチタンマイカも油脂分のリザーバーになりやすいことから、これらもパーフルオロアルキル処理しておくことが好ましい。 【0012】 (3)本発明の皮膚外用剤 本発明の皮膚外用剤は上記必須の成分を含有することを特徴とする。上記の構成をとることにより、本発明の皮膚外用剤は、塗布した後の認識される色の変化が少なく、化粧崩れが著しく抑制されている効果を発揮する。この様な性質は、皮膚外用剤の内、メークアップ化粧料に特に好適であるが、例えば、インドメタシンなどの抗炎症剤の光毒性を予防する目的で二酸化チタンを含有する皮膚外用剤において、塗布後の白さを目立たなくさせるために肌色に調色したものなどにおいても同様の効果を発揮するため、この様な適用も本発明の技術的範囲に属する。特に好ましい適用はメークアップ化粧料であり、中でも粉体の含有量が60重量%以上である、オイルゲルメークアップ化粧料、パウダーメークアップ化粧料及びその中間タイプのメークアップ化粧料である。 【0013】 本発明の皮膚外用剤においては、上記必須成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。かかる任意成分としては、例えば、カルナバワックス,オレイン酸オクチルドデシル等のエステル類、ジメチコン、フェメチコン、アモメジコン等のシリコーン類、オリーブ油、牛脂、椰子油等のトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、リチノレイン酸等の脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール等の多価アルコール類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体、有効成分等を例示することができる。本発明の皮膚外用剤において、特に好適な任意成分としては、シリコーン類が挙げられ、中でも粘度が10000センチストークス以上の高粘度のメチフェニルポリシロキサンが特に好ましい。この様な高粘度のメチルフェニルポリシロキサンの好ましい含有量は0.1?5重量%であり、この範囲に於いて、粉体類をベタツキ感無く皮膚に密着させる作用を発揮するとともに、系全体の対皮脂性を向上させることが出来るからである。本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分と任意成分とを常法に従って処理することにより製造することが出来る。 【0014】 【実施例】 以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明が、かかる実施例にのみ限定を受けないことは言うまでもない。 【0015】 <参考例1、実施例2?5> 下記に示す処方に従って、ファンデーションを作成した。即ち、イの成分をヘンシェルミキサーで混合した後、0.9mm丸穴スクリーンを装着したパルベライザーで粉砕し、ヘンシェルミキサーで混合しながら、ロを噴霧してコーティングし、1mmヘリングボーンスクリーンを装着したパルベライザーで粉砕し、金皿につめ、加圧成形し、本発明の皮膚外用剤であるファンデーションを得た。 イ PFベンガラ 0.4重量部 PFグンジョウ 0.3重量部 PFIマイカM102 20 重量部 PFIチタンマイカSPM70 15 重量部 二酸化チタン 10 重量部 被覆二酸化チタン* 15 重量部 シリカ-チタンセリサイト-シリカ層状粉体 26 重量部 ロ ジメチコン(20センチストークス)11.3重量部 メチルフェニルポリシロキサン 2 重量部 (50000センチストークス) *表1に詳細を記す。 【0016】 【表1】 【0017】 <実施例6> 上記参考例1、実施例2?5のファンデーションについて、参考例1の被覆二酸化チタン1を通常の二酸化チタンに置換した比較例1、参考例1のPFベンガラ、PFグンジョウ、PFIマイカM102、PFIチタンマイカSPM70を全て通常のベンガラ、群青、マイカ、チタンマイカに置換した比較例2、参考例1の被覆二酸化チタン1とPFベンガラ、PFグンジョウ、PFIマイカM102、PFIチタンマイカSPM70とを通常の二酸化チタン、ベンガラ、群青、マイカ、チタンマイカに置換した対照例1とともに、化粧崩れ実験を行った。即ち、1群10名のパネラーを用いて、右半顔には対照例1のサンプルを塗布し、左半顔にはサンプルを塗布し、4時間静かに25℃の部屋で過ごしてもらい、その後、化粧の状態を専門家に次の基準で判定してもらった。即ち、対照例1に比して、++:著しく崩れていない、+:明らかに崩れていない、±:やや崩れていない、-:同程度以上に崩れているの基準である。又、同時に上頬部と下頬部の2点で測色し、4時間に於ける色調の変化(ΔE)も測定し、この群平均を求めた。これらを表2に示す。これより、本発明の皮膚外用剤である、ファンデーションは化粧持ちに優れることが判る。更に、比較例1、2との比較により、この様な効果は被覆二酸化チタンと撥水処理粉体との組合せによる相乗効果であることも判る。 【0018】 【表2】 【0019】 <参考例7> 下記に示す処方に従って、ファンデーションを作成した。即ち、イの成分をヘンシェルミキサーで混合した後、0.9mm丸穴スクリーンを装着したパルベライザーで粉砕し、ヘンシェルミキサーで混合しながら、ロを噴霧してコーティングし、1mmヘリングボーンスクリーンを装着したパルベライザーで粉砕し、金皿につめ、加圧成形し、本発明の皮膚外用剤であるファンデーションを得た。このものは、参考例1のファンデーションに比して、化粧持ちが少し劣るが、充分に良好な化粧持ち特性を有していた。これより、本発明の皮膚外用剤においては、撥水粉体としてパーフルオロアルキル処理を行うことが好ましいことが判る。 イ シリコーン焼き付けベンガラ 0.4重量部 シリコーン焼き付けグンジョウ 0.3重量部 シリコーン焼き付けマイカM102 20 重量部 シリコーン焼き付けチタンマイカSPM70 15 重量部 二酸化チタン 10 重量部 被覆二酸化チタン1 15 重量部 シリカ-チタンセリサイト-シリカ層状粉体 26 重量部 ロ ジメチコン(20センチストークス)11.3重量部 メチルフェニルポリシロキサン 2 重量部 (50000センチストークス) 【0020】 <実施例8> 下記に示す処方に従って、皮膚外用医薬を作成した。即ち、処方成分を良く混練りし、チューブに充填し、皮膚外用抗炎症剤を得た。このものは、塗布しても目立たなく、しかも光毒性は殆ど観測されなかった。 「TiO2-SMS」1 重量部 ステアリン酸亜鉛被覆ベンガラ 0.1重量部 インドメタシン 1 重量部 ワセリン 97.9重量部 【0021】 【発明の効果】 本発明によれば、従来のシリコーン処理粉体やパーフルオロ処理粉体のみでは解決の出来なかった化粧崩れを、抑制する手段を提供することが出来る。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2012-06-08 |
出願番号 | 特願2000-251749(P2000-251749) |
審決分類 |
P
1
113・
113-
YA
(A61K)
P 1 113・ 121- YA (A61K) P 1 113・ 537- YA (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 八次 大二朗 |
特許庁審判長 |
内藤 伸一 |
特許庁審判官 |
中村 浩 内田 淳子 |
登録日 | 2010-08-13 |
登録番号 | 特許第4565715号(P4565715) |
発明の名称 | 粉体含有皮膚外用剤 |
代理人 | 丹羽 武司 |
代理人 | 下田 俊明 |
代理人 | 丹羽 武司 |
代理人 | 川口 嘉之 |
代理人 | 松倉 秀実 |
代理人 | 川口 嘉之 |
代理人 | 佐貫 伸一 |
代理人 | 下田 俊明 |
代理人 | 松倉 秀実 |
代理人 | 佐貫 伸一 |