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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1261878
審判番号 不服2010-7249  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-06 
確定日 2012-08-16 
事件の表示 特願2005-226771「ゴム組成物およびこれを用いた空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月15日出願公開、特開2007- 39585〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成17年8月4日に特許出願したものであって、平成21年10月5日付けで拒絶理由が通知され、同年12月3日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年2月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月6日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2.本願発明の認定
本願の請求項1?5に係る発明は、平成21年12月3日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「本願明細書等」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」ともいう。)は、以下のとおりのものである。

「天然ゴムおよび/またはジエン系ゴムを含むゴム成分100質量部と、
ガラス転移温度が-70℃?30℃の範囲内であるポリカプロラクトンおよび/またはポリアルキレンサクシネート0.5?80質量部と、
シリカ5?150質量部と、
前記シリカの含有量に対して1?20質量%のシランカップリング剤と、
を含有するゴム組成物。」

第3.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の理由とされた、平成21年10月5日付け拒絶理由通知書に記載した理由2の概要は、以下のとおりである。

「2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
(理由1,2について)
(1)
(略)
(2)
・請求項 1?5,7,8
・引用文献等 2
・備考
引用文献2には、カルボニル基等の水素結合を形成しうる部位を有する熱可塑性エラストマー(天然ゴムやジエン系ゴム等)と、水素結合を形成しうる部位を有する生分解性ポリマー(ポリ乳酸やポリ化プロラクトン等)を含む組成物が記載されており、シリカを配合すること、その際にシランカップリング剤を併用すること、タイヤ用途に用いることも記載されている(特許請求の範囲,【0027】,【0035】,【0079】,【0096】)。
(略)
引 用 文 献 等 一 覧
1.省略
2.特開2005-002259号公報
3.省略」

第4.当審の判断
1.引用文献の記載事項
(1)平成21年10月5日付け拒絶理由通知で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2005-2259号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線については、当審において強調のために付与している。

2a)「【請求項1】
水素結合を形成しうる部位を有する熱可塑性エラストマーと、
水素結合を形成しうる部位を有する生分解性ポリマーとを含有する熱可塑性エラストマー組成物。
・・・
【請求項8】
前記水素結合を形成しうる部位を有する熱可塑性エラストマー100質量部に対して、さらにカーボンブラックおよび/またはシリカを1?200質量部含有する、請求項1?7のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。」(特許請求の範囲の請求項1、8)

2b)「【発明の属する技術分野】
本発明は、温度変化により架橋形成および架橋解離を繰り返し再現しうる特性(以下、単に「リサイクル性」という場合がある)を有する熱可塑性エラストマー組成物に関する。特に、優れたリサイクル性を保持したまま、圧縮永久歪に優れ、さらに生分解性をも有する熱可塑性エラストマー組成物に関する。」(段落 【0001】)

2c)「【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、優れたリサイクル性を保持し、圧縮永久歪にも優れ生分解性をも有する熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。
また、上記特性に加え、機械的強度(機械的特性)にも優れる熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。」(段落 【0008】)

2d)「以下、本発明に用いる水素結合を形成しうる部位を有する生分解性ポリマーについて説明する。
・・・
上記生分解性ポリマーは、一般に、天然高分子と合成高分子に分類できる。
天然高分子としては、・・・
合成高分子としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル;ポリカーボネート;ポリエーテル;ポリビニルアルコール等が挙げられる。
より具体的には、ポリエステルとしては、例えば、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネート・テレフタレート、ポリブチレンサクシーネート・カーボネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ乳酸(ポリL-乳酸、ポリD-乳酸等)、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸・ヒドロキシ吉草酸共重合体等が挙げられる。また、本発明においては、ポリエステルとして、例えば、コポリエステルエーテル、コポリエステルアミド等の共重合体;ポリオルソエステル;ポリ無水物等も含まれる。」(段落 【0023】?【0027】)

2e)「これらの中でも、入手が容易で安価であり、組成物の物性と生分解性のバランスがよい点で、ポリエステル(天然高分子および合成高分子)、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリアミノ酸およびリグニンからなる群より選択される1種以上であるのが好ましい。
上記組成物の物性と生分解性のバランスがよりよい点で、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、セルロール、デンプンからなる群より選択される1種以上であるのがより好ましい。
上記生分解性ポリマーの平均分子量、分子量分布、粘度等の特性は特に限定されない。
・・・
本発明の組成物における該生分解性ポリマーの含量は、後述する本発明に用いる熱可塑性エラストマー100質量部に対して、1?200質量部であるのが好ましい。この範囲であれば、本発明に用いる熱可塑性エラストマーとの架橋密度が高くなりリサイクル性を保持したまま、圧縮永久歪に優れる。また、生分解性にも優れる。さらには機械的特性等に優れる場合がある。該含量は、生分解性により優れる点で、10?100質量部であるのがより好ましく、10?50質量部であるのが特に好ましい。」(段落 【0028】?【0033】)

2f)「本発明の組成物は、水素結合を形成しうる部位を有する熱可塑性エラストマーを含有する。
該熱可塑性エラストマーの主鎖となるエラストマー性ポリマーは、特に限定されず、一般的に公知の天然高分子または合成高分子であればよいが、そのガラス転移点が室温(25℃)以下のポリマー、つまりエラストマーであるのが好ましい。このようなエラストマー性ポリマーとして、具体的には、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等のジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物;エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-ブテンゴム(EBM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンゴム、ポリプロピレンゴム等のオレフィン系ゴム;エピクロロヒドリンゴム;多硫化ゴム;シリコーンゴム;およびウレタンゴム等が挙げられる。」(段落 【0035】)

2g)「エラストマー性ポリマーは、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムおよびこれらのジエン系ゴムの水素添加物;エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-ブテンゴム(EBM)等のオレフィン系ゴムであるのが特に好ましい。
また、高い生分解性を得るには、エラストマー性ポリマーとしても、生分解されうるポリマー、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム等であるのが好ましい。
これらのポリマーはガラス転移温度が25℃以下であるため成形物が室温でゴム状弾性を示す。またジエン系ゴムを用いると後述する無水マレイン酸等での変性が容易であり、オレフィン系ゴムを用いると組成物が架橋した時の引張強度により優れ、二重結合が存在しないため組成物の劣化が抑制される。」(段落 【0039】)

2h)「本発明の組成物は、上記水素結合可能な部位を有する生分解性ポリマーと上記水素結合可能な部位を有する熱可塑性エラストマーとを含有する組成物である。本発明の組成物は、上記成分の他に、さらに、補強剤としてカーボンブラックおよび/またはシリカを含有するのが好ましい。
カーボンブラックの含量(カーボンブラック単独で用いる場合)は、上記水素結合可能な部位を有する熱可塑性エラストマー100質量部に対して、1?200質量部であり、好ましくは10?100質量部であり、より好ましくは20?80質量部である。
該カーボンブラックの種類は、用途に応じて適宜選択される。一般に、カーボンブラックは粒子径に基づいて、ハードカーボンとソフトカーボンとに分類される。ソフトカーボンはゴムに対する補強性が低く、ハードカーボンはゴムに対する補強性が強い。本発明では、特に、補強性の強いハードカーボンを用いるのが好ましい。
シリカは、特に限定されず、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、けいそう土等が挙げられ、その含量(シリカ単独で用いる場合)は上記水素結合可能な部位を有する熱可塑性エラストマー100質量部に対して、1?200質量部であり、好ましくは10?100質量部であり、より好ましくは20?80質量部である。このなかでも、沈降シリカが好ましい。
補強剤としてシリカを用いる場合には、シランカップリング剤を併用できる。シランカップリング剤としては、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si69)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(Si75)、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
カーボンブラックおよびシリカを併用する場合の含量(カーボンブラックおよびシリカの合計量)は、上記水素結合可能な部位を有する熱可塑性エラストマー100質量部に対して、1?200質量部であり、好ましくは10?100質量部であり、より好ましくは20?80質量部である。」(段落 【0078】?【0080】)

2i)「本発明の組成物は、例えばゴム弾性を活用して種々のゴム用途に使用することができる。またホットメルト接着剤として、またはこれに含ませる添加剤として使用すると、耐熱性およびリサイクル性を向上させることができるので好ましい。特に自動車周り等に好適に用いることができる。
上記自動車周りとしては、具体的には、例えば、タイヤのトレッド、カーカス、サイドウォール、インナーライナー、アンダートレッド、ベルト部等のタイヤ各部;外装のラジエータグリル、サイドモール、ガーニッシュ(ピラー、 リア、カウルトップ)、エアロパーツ(エアダム、スポイラー)、ホイールカバー、ウェザーストリップ、カウベルトグリル、エアアウトレット・ルーバー、エアスクープ、フードバルジ、換気口部品、防触対策部品(オーバーフェンダー、サイドシールパネル、モール(ウインドー、フード、ドアベルト))、マーク類;ドア、ライト、ワイパーのウェザーストリップ、グラスラン、グラスランチャンネル等の内装窓枠用部品;エアダクトホース、ラジエターホース、ブレーキホース;クランクシャフトシール、バルブステムシール、ヘッドカバーガスケット、A/Tオイルクーラーホース、ミッションオイルシール、P/Sホース、P/Sオイルシール等の潤滑油系部品;燃料ホース、エミッションコントロールホース、インレットフィラーホース、タイヤフラム類等の燃料系部品;エンジンマウント、インタンクポンプマウント等の防振用部品;CVJブーツ、ラック&ピニオンブーツ等のブーツ類;A/Cホース、A/Cシール等のエアコンデショニング用部品;タイミングベルト、補機用ベルト等のベルト部品;ウィンドシールドシーラー、ビニルプラスチゾルシーラー、嫌気性シーラー、ボディシーラー、スポットウェルドシーラー等のシーラー類;等が挙げられる。」(段落 【0095】?【0096】)

2j)「【実施例】
・・・
熱可塑性エラストマーを以下の方法により合成した。
・・・
熱可塑性エラストマー2)
90℃に加熱した加圧ニーダーに、イソプレンゴム(Nipol IR-2200、日本ゼオン(株)製)350g(イソプレンユニット5.14mol)を入れ、数分間素練りした後、無水マレイン酸50.3g(0.514mol)、キシレン54.5g(0.514mol)、オイル35.0g(上記イソプレンゴム100質量部に対して10質量部)、および老化防止剤(ノクラック6C)3.5g(同1質量部)を加え20分間混合した。この混合物を一度加圧ニーダーから取り出し、加圧ニーダーの温度を210℃に設定した後、取り出した混合物を再度加圧ニーダーに投入して同温度を維持しながら60分間混練した。得られたゴムを溶解したトルエン溶液をアセトニトリル中に加えてゴムを再沈殿させた後、アセトニトリルで洗浄した。該精製ゴムのIR分析を行ったところ、イソプレンユニットに対する導入された無水マレイン酸の割合(無水マレイン酸変性率)は6.8mol%であった。
加圧ニーダーを130℃に設定し、上記で得られた無水マレイン酸変性イソプレンゴム400g(ゴム分318g、無水マレイン酸変性率6.8mol%(無水マレイン酸骨格0.394mol))を投入してゴムがなじむ程度に数分間素練りした後、ATA33.1g(0.3942mmol)を添加して40分間、同温度を維持しながら混合した。得られた混合物(熱可塑性エラストマー2)のIR分析を行ったところ、イソプレンユニットに対するATAの導入率は、6.3mol%であった。
・・・
【表1】

第1表中の生分解性ポリマーおよび老化防止剤は、以下のものを用いた。
ポリカプロラクトン:セルグリーン、ダイセル化学(株)製
ポリL-乳酸およびポリD-乳酸:ラクテイ、島津製作所製
ポリブチレンサクシネート:ビオノーレ、昭和高分子(株)製
ポリブチレンアジペート・テレフタレート:Ecoflex、BASF社製
老化防止剤:S-13、大内新興化学(株)製」(段落 【0099】?【0106】)

2k)「【発明の効果】
本発明により、優れたリサイクル性を保持し、圧縮永久歪にも優れ生分解性をも有する熱可塑性エラストマー組成物を提供できる。また、本発明により、上記特性に加え、機械的強度にも優れる熱可塑性エラストマー組成物を提供できる。該組成物は、優れた物性を有し生分解性をも有することから、該組成物が廃棄処分されても環境に大きな影響を与えることはなく、近年注目されている環境保護等の要請に十分に適合するものであり、産業上に利用価値は極めて大きい。」(段落 【0118】)

2.引用文献2に記載された発明の認定
上記摘示事項2a)、2d)、2e)、2f)、2g)、2h)の記載からみて、高い生分解性が得られ、組成物の物性と生分解性のバランスがよりよい、引用文献2の特許請求の範囲の請求項8に包含されるゴム組成物として、
「水素結合を形成しうる部位を有する熱可塑性エラストマーとして天然ゴム、イソプレンゴムに、水素結合を形成しうる部位を有する生分解性ポリマーとしてポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、セルロール、デンプンからなる群より選択される1種以上を配合し、組成物における該生分解性ポリマーの含量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、10?100質量部であり、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、1?200質量部の補強材としてシリカ、および、シランカップリング剤を併用したゴム組成物。」に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

3.対比・判断
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「水素結合を形成しうる部位を有する熱可塑性エラストマーとして天然ゴム、イソプレンゴム」は、本願明細書等の「本発明のゴム成分は、天然ゴムおよび/またはジエン系ゴムを含む。ジエン系ゴムとしては、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム等が挙げられる。これらのゴムは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いても良い。」(段落 【0023】)の記載からみて、本願発明1の「天然ゴムおよび/又はジエン系ゴムを含むゴム成分」に相当する。
引用発明の「水素結合を形成しうる部位を有する生分解性ポリマーとしてポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、セルロール、デンプンからなる群より選択される1種以上」は、上記摘示事項2f)において、引用文献2の実施例として、「ポリカプロラクトン」と「ポリブチレンサクシネート」および「ポリ乳酸」がそれぞれ単独で利用されていることからみて、本願発明1の「ポリカプロラクトンおよび/又はポリアルキレンサクシネート」に相当する。
引用発明における「補強材としてのシリカ」は、本願発明1の「シリカ」に相当する。
そして、引用発明の熱可塑性エラストマー(本願発明1のゴム成分に相当)と生分解性ポリマー(本願発明1の「ポリカプロラクトンおよび/またはポリアルキレンサクシネート」に相当)の配合量は、本願発明1の配合量の規定を満足し、引用発明の「補強材としてのシリカ」の配合量は、本願発明1の範囲と重複一致している。
そうすると、本願発明1と引用発明とを対比すると、両者は、
「天然ゴムおよび/またはジエン系ゴムを含むゴム成分100質量部と、
ポリカプロラクトンおよび/またはポリアルキレンサクシネート0.5?80質量部と、
シリカ5?150質量部と、
シランカップリング剤を含有するゴム組成物。」の点で一致し、次の相違点で相違する。

<相違点1>
配合されるポリカプロラクタムおよび/またはポリアルキレンサクシネートに関し、本願発明1においては、「ガラス転移温度が-70℃?30℃の範囲内である」と特定しているのに対して、引用発明においては、この点の規定がない点。

<相違点2>
ゴム組成物に配合されるシランカップリング剤の配合量に関して、本願発明1においては「前記シリカの含有量に対して1?20質量%」と特定しているのに対して、引用発明においては、この点について規定がない点。

以下、相違点について検討する。
相違点1について
ポリカプロラクトンのガラス転移点は、-60℃(生分解性プラスチック研究会編「生分解性プラスチック ハンドブック」601頁参照)であること、ポリブチレンサクシネートとして一般に販売されているビオノーレのガラス転移温度は、-32℃(♯1000シリーズ)、-42℃(♯3000シリーズ)であることから(生分解性プラスチック研究会編「生分解性プラスチック ハンドブック」589頁参照)、引用発明のポリカプロラクトンやポリブチレンサクシネートのガラス転移温度も、本願発明1の-70℃?30℃の範囲にあるものを含むと解することが自然であり、相違点1は、実質的な相違点ではない。
相違点2について
シリカに併用するシランカップリング剤の配合量に関して、本願出願時のこの発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)において、シランカップリング剤の配合量をシリカ重量の1?20重量%程度を配合することは周知であることから、シランカップリング剤の配合量を、「シリカの含有量に対して1?20質量%」とすることは、当業者が適宜なし得たことであり、その効果についても格別なものがあるとはいえない。

4.審判請求人の主張について
(1)審判請求人の主張
審判請求人は、平成22年4月6日提出の審判請求書において、下記の主張を行っている。

「2-2) 本願請求項1に係る発明の進歩性
・・・
(ii) しかしながら、引用文献1に記載の「片側末端カルボキシル化ポリカプロラクトン」および引用文献2に記載の「ポリカプロラクトン」、「ポリブチレンサクシネート」が、仮に、本願請求項1の構成要件[B1]の「ガラス転移温度が-70℃?30℃の範囲内であるポリカプロラクトンおよび/またはポリアルキレンサクシネート」の要件を満たすとしても、本願請求項1に係るゴム組成物(構成要件[A1]?[D1]のすべてを満たすゴム組成物)により、生分解性脂肪族ポリエステルとしてポリ乳酸を使用する場合と比較して、特に、ムーニー粘度指数、磨耗指数および質量減少率が向上することは、引用文献1および2、さらには引用文献3から当業者が予測することはできませんので、かかる効果は、引用文献から予測することができない、本願請求項1に係る発明の進歩性を肯定するに足る格別顕著な効果であると考えます。
特に、引用文献2では、生分解性ポリマーの具体例として、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸などを並列的に列挙しており、ポリカプロラクトンおよびポリブチレンサクシネートと、ポリ乳酸とを同等のものとして扱っています。したがって、生分解性脂肪族ポリエステルの中でも、ガラス転移温度が-70℃?30℃の範囲内であるポリカプロラクトンおよび/またはポリアルキレンサクシネートを使用し、かつ上記構成[A1]?[D1]を具備する本願請求項1に係るゴム組成物により、ポリ乳酸を使用した場合と比較して、特にムーニー粘度指数、磨耗指数および質量減少率が向上するという効果は、引用文献2からは全く予期することはできません。
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献1?3からは当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものであり、引用文献1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではありません。・・・」

(2)審判請求人の主張についての検討
引用文献2に記載の発明として、上記第4.2.に記載の引用発明が記載されていると認められ、当該引用発明は、本願発明1の配合成分である「天然ゴムおよび/またはジエン系ゴムを含むゴム成分」、「ポリカプロラクトンおよび/またはポリアルキレンサクシネート」、「シリカ」、「シランカップリング剤」の全て包含し同一の組成を有するゴム組成物であり、上記3.の検討から配合量についても本願発明1と同程度のものが想定されているといえることから、請求人が主張する「ムーニー粘度指数、磨耗指数および質量減少率が向上する」という効果は、引用発明においても予期しうる範囲のものであり、当該効果を格別なものということはできない。
請求人は、「生分解性脂肪族ポリエステルの中でも、ガラス転移温度が-70℃?30℃の範囲内であるポリカプロラクトンおよび/またはポリアルキレンサクシネートを使用し、かつ上記構成[A1]?[D1]を具備する本願請求項1に係るゴム組成物により、ポリ乳酸を使用した場合と比較して、特にムーニー粘度指数、磨耗指数および質量減少率が向上するという効果は、引用文献2からは全く予期することはできません」と主張し、引用文献1に記載の発明に対して選択発明である旨主張しているようであるが、引用発明との相違点2に基づく効果については、上記のとおり格別なものとはいえないことから、選択発明であるとの主張であったとしても、当該主張は採用できない。

5.まとめ
よって、本願発明1は、引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明についての原査定の拒絶の理由は妥当なものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-13 
結審通知日 2012-06-19 
審決日 2012-07-03 
出願番号 特願2005-226771(P2005-226771)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小出 直也  
特許庁審判長 渡辺 仁
特許庁審判官 加賀 直人
大島 祥吾
発明の名称 ゴム組成物およびこれを用いた空気入りタイヤ  
代理人 佐々木 眞人  
代理人 森田 俊雄  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 深見 久郎  
代理人 酒井 將行  
代理人 仲村 義平  
代理人 堀井 豊  
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