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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B26F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B26F |
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管理番号 | 1262475 |
審判番号 | 不服2011-23112 |
総通号数 | 154 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-27 |
確定日 | 2012-08-31 |
事件の表示 | 特願2008-146495「抜き型の製造方法および抜き型」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月17日出願公開、特開2009-291865〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成20年6月4日の特許出願であって、同23年1月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月30日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年7月29日付けで拒絶をすべき旨の査定がされた。 これに対し、平成23年10月27日に本件審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、その後、同24年4月2日付け審尋に対して同年5月28日に回答書が提出された。 第2 平成23年10月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容の概要 本件補正は、平成23年3月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含んでいる。なお、下線部は補正箇所を示す。 (1)補正前の請求項1 「切削加工により所定のパターンを有する帯刃部を形成すること、および 該帯刃部において帯刃がなす頂点部分近傍の内側の切削加工の切削残部に、超短パルスレーザーを照射して該切削残部を除去することを含み、 該超短パルスレーザーの1パルスあたりのエネルギーが1μJ?1mJであり、照射焦点径が5μm?15μmである、 抜き型の製造方法。」 (2)補正後の請求項1 「切削加工により所定のパターンを有する帯刃部を形成すること、および 該帯刃部において帯刃がなす頂点部分近傍の内側の切削加工の切削残部に、超短パルスレーザーを照射して該切削残部を除去することを含み、 該切削加工が機械的加工であり、該切削残部が該機械的加工により不可避的に形成されるものであり、 該超短パルスレーザーの1パルスあたりのエネルギーが1μJ?1mJであり、照射焦点径が5μm?15μmであり、1パルスごとの間隔が0.2μm?0.7μmであり、パルスの重なりの数が25?75である、 抜き型の製造方法。」 2.補正の適否 本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「切削加工」、「切削残部」及び「超短パルスレーザー」について、それぞれ「機械的加工」であり、「該機械的加工により不可避的に形成されるもの」であり、及び「1パルスごとの間隔が0.2μm?0.7μmであり、パルスの重なりの数が25?75」であるとの限定を付加するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成23年法律第63号附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)補正発明 補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、上記1.(2)の補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 (2)刊行物の記載事項及び刊行物発明 原審で通知した拒絶理由で引用した、本件出願日前に頒布された刊行物である国際公開第02/53332号(以下「刊行物1」という。)及び特開2005-161322号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 刊行物1 (ア)明細書第1ページ第5?8行 「技術分野 本発明は、薄い紙、プラスチックシート等を所定の輪郭線に沿ってカッティング(押切)するのに使用されるフレキシブルダイ(シート状刃板)及びその製造方法に関する。」 (イ)明細書第3ページ第14?22行 「本発明の製造方法は、フレキシブルベースの片面に所定パターンの押切刃が形成されたフレキシブルダイを製造する方法であって、金属板の表面にフォトレジストを一様に積層し、そのフォトレジスト膜を露光した後、現像を行うことにより、上記金属板の表面上に押切刃形成部に相当する部分にレジストパターンを形成し、その後、そのレジストパターンをマスクとして上記金属板のエッチングを所定深さに達するまで行なうことにより、フレキシブルベースとこのベースから突出する突部を形成した後、その突部の側面を切削して垂直突部を形成し、次いで垂直突部の先端に両刃または片刃の刃先加工を施すことによって特徴づけられる。」 (ウ)明細書第6ページ第25行?第7ページ第16行 「次に、第1図のフレキシブルダイの製造方法を、第3図、第4図、第14図及び第15図を参照しながら説明する。 (1)第14図に示すような形状(第16図の輪郭線103に対応)の露光パターン11aを有するフォトマスク(フィルム)11を製版しておく。 (2)…(中略)…次いで、フォトレジスト膜12の現像を行って、金属板10の表面上に、第15図に示すようなレジストパターン13を形成する(第3図(C))。 (3)…(中略)…このエッチングにより、フレキシブルベース1が形成されるとともに、そのフレキシブルベース1上に断面台形状の突部(突条)21がカッティングライン(押切刃形成ライン)に沿って形成される(第3図(D))。 (4)レジストパターン13を剥離した後(第3図(E))、第4図(A)及び(B)に示すように、NC(Numerical Control)加工機を使用して、断面台形状の突部21の側面をエンドミル3にて切削して垂直突部2bを形成し、さらに円錐形状の工具4を用いて、垂直突部2bの先端に刃先(両刃)2aを加工することによって、第1図、第2図に示す形状の押切刃2が、フレキシブルベース1の片面に形成されたフレキシブルダイを得る。」 摘記事項(ウ)に記載された工具4による加工が、切削加工によるものであって、該切削加工が機械的加工であることは技術常識である。 以上の摘記事項の記載を考慮し、補正発明の記載に沿って整理すると、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認める。 「切削加工により押切刃形成ラインを有する押切刃2を形成することを含み、該切削加工が機械的加工である、フレキシブルベース1の製造方法。」 イ 刊行物2 (ア)段落0001 「【0001】 本発明は、硬質材料を所定の加工形状に加工する方法に関する。」 (イ)段落0015?0016 「【0015】 また、本発明に係る方法は、加工形状が隅角部を有する場合、第1の加工工程の前に、隅角部にコーナー半径を有する形状を形成する粗加工工程を含むことも好ましい。かかる方法によれば、粗加工工程によって前記形状を高速に形成することができる。そしてこの粗加工工程で形成されたコーナー半径の2つの接線に沿って両線の交点まで第1の溝を形成し、第1の溝に対応させて第2の溝を形成することによって、高精度な加工端面を有し、コーナー半径が除去された隅角部、または極めてコーナー半径の小さい隅角部を形成することができる。 【0016】 また、本発明に係る方法は、粗加工工程を、レーザの照射よりも加工速度が速い機械的手段によって行うことが好ましい。機械的手段とレーザの両方を組合せて用いることによって、高速かつ低コストで大量生産に適するという機械的手段の長所を維持しながら、マイクロクラックが生じやすい、比較的大きなコーナー半径が残ってしまうといった短所を第1および第2の加工工程によって補い、両面において高品質な加工を行うことが可能となる。」 (ウ)段落0022?0026 「【0022】 以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。 <第1の実施形態> 図1は、本発明の第1の実施形態における、硬質材料を所定の加工形状に加工する方法を示す概略図である。本実施形態では、特に板状の硬質材料に開口を形成する方法を例に挙げて説明する。 【0023】 (粗加工工程) まず、図1(a)に示すように、硬質材料10にコーナー半径Rを有する開口11を形成する。開口11を形成する手段は特に限定されず、回転砥石等の工具を用いる方法、砥粒を噴射するマイクロブラスト法等が挙げられるが、加工速度が速く、加工コストも安いドリルが好ましい。 【0024】 これらの手段によると、通常、開口11の隅角部にはコーナー半径R12が生じる。「コーナー半径が生じる」とは、隅角部13に、形成したい開口の形状から扇形を除いた部分14が残ってしまうことを意味し、この扇形の半径12をコーナー半径と呼ぶ。コーナー半径が小さいほど鋭い隅角部となるが、コーナー半径は粗加工工程に用いる工具の半径によって決まり、例えば、直径1mmのドリルを用いて開口を形成すると、コーナー半径は0.5mm程度となる。 【0025】 (微細加工工程) 次に、図1(b)に示すように、粗加工工程に用いた手段よりも加工精度の高い手段によって、粗加工工程で形成されたコーナー半径の2つの接線に沿って両線の交点まで前記開口を拡張する。 【0026】 本工程に用いる手段は特に限定されず、超音波加工法、電子ビーム、イオンビーム、レーザ光等のエネルギービームを用いる加工方法などが挙げられるが、比較的安価で操作性が良いレーザ光が好ましい。レーザとして、微細加工に適するKrFエキシマレーザ、TEA-CO_(2)レーザ、YAGレーザ第2高調波(例えばλ=532nm)等を使用することが挙げられるが、これらに限定されない。」 摘記事項(ウ)の粗加工工程に関する記載から、ドリルを用いた加工で残ってしまうコーナー半径が機械的加工により不可避的に形成されるものであることが理解される。 以上の摘記事項の記載を考慮し、補正発明の記載に沿って整理すると、刊行物2には次の発明(以下「刊行物2記載事項」という。)が開示されていると認める。 「開口11の隅角部のドリルを用いた加工で残ってしまうコーナー半径に、レーザ光を照射してコーナー半径を除去することを含み、該ドリルを用いた加工で残ってしまうコーナー半径が機械的加工により不可避的に形成されるものである加工方法。」 (3)対比 補正発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「押切刃形成ライン」は補正発明の「所定のパターン」に相当し、以下同様に、「押切刃2」は「帯刃部」に、「フレキシブルベース1」は「抜き型」に相当する。 以上から、補正発明と刊行物1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 [一致点]切削加工により所定のパターンを有する帯刃部を形成することを含み、該切削加工が機械的加工である、抜き型の製造方法。 [相違点]補正発明においては、帯刃部において帯刃がなす頂点部分近傍の内側の切削加工の切削残部に、超短パルスレーザーを照射して該切削残部を除去することを含み、該切削残部が該機械的加工により不可避的に形成されるものであり、該超短パルスレーザーの1パルスあたりのエネルギーが1μJ?1mJであり、照射焦点径が5μm?15μmであり、1パルスごとの間隔が0.2μm?0.7μmであり、パルスの重なりの数が25?75であるのに対し、刊行物1発明はそのようなものではない点。 (4)相違点についての検討及び判断 (ア)相違点について (2)イにて指摘した刊行物2には、「開口11の隅角部のドリルを用いた加工で残ってしまうコーナー半径に、レーザ光を照射してコーナー半径を除去することを含み、該ドリルを用いた加工で残ってしまうコーナー半径が機械的加工により不可避的に形成されるものである」という事項が記載されているところ、刊行物2記載事項における「ドリルを用いた加工で残ってしまうコーナー半径」は補正発明の用語で表せば「切削加工の切削残部」といえるものであり、また、刊行物2記載事項の「開口11の隅角部」と補正発明の「帯刃部において帯刃がなす頂点部分近傍の内側」とは「加工部の頂点部分近傍の内側」である限りにおいて共通し、同様に、「レーザ光」と「超短パルスレーザー」とは「レーザー」である限りにおいて共通する。 したがって、刊行物2記載事項は補正発明の用語で表現すれば、加工部の頂点部分近傍の内側の切削加工の切削残部に、レーザーを照射して該切削残部を除去することを含み、該切削残部が機械的加工により不可避的に形成されるものであることといえる。 ここで、刊行物1発明における押切刃形成ラインが加工部の頂点部分を有するものがあることは技術常識であり、そのような場合には切削加工において当該頂点部分近傍の内側に切削残部が形成されることは当然であるから、刊行物1発明において生じ得る切削残部を除去するために、刊行物2記載事項を用いることは当業者が容易になし得ることである。 また、補正発明では、レーザーとして超短パルスレーザーを用いるものであると特定しているが、材料への熱的損傷を低減するために、超短パルスレーザーを照射して材料を除去することは、例えば、原審の拒絶理由で引用した特開2007-216327号公報(以下「周知技術文献1」という。)及び国際公開第2007/22948号(以下「周知技術文献2」という。特表2009-504415号公報を参照)、並びに特開平9-85475号公報(以下「周知技術文献3」という。)に示されているように周知の事項であり、刊行物1発明に刊行物2記載事項を用いる際に、レーザーを超短パルスレーザーとすることに格別の困難性はない。 さらに、補正発明において、超短パルスレーザーの1パルスあたりのエネルギーを1μJ?1mJ、照射焦点径を5μm?15μm、1パルスごとの間隔を0.2μm?0.7μm、パルスの重なりの数を25?75と特定していることに関して、本願明細書の発明の詳細な説明にはこれら数値限定について有利な効果の顕著性が示されていないこと、並びに周知技術文献3の段落0017には、1パルスあたりのエネルギーを500μmとすることが、周知技術文献1の請求項2には、照射焦点径を1?10μmとすることが、周知技術文献2の明細書第13ページ第1?7行(公表公報の段落0024を参照。)には、オーバーラップを約92?99%、すなわち重なりの数を約12.5?100とすることが記載されていることを踏まえると、補正発明の上記数値限定は、当業者の通常の創作能力の発揮により当業者が容易に想到することができたものである。 (イ)補正発明の作用ないし効果について 補正発明によってもたらされる作用ないし効果は、刊行物1発明、刊行物2記載事項及び周知の事項から予測できる作用ないし効果以上の顕著なものではない。 (ウ)まとめ したがって、補正発明は、刊行物1発明、刊行物2記載事項及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本件出願の発明について 1.本件出願の発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし5に係る発明は、平成23年3月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1.(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの「抜き型の製造方法」である。 2.刊行物の記載事項及び刊行物発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及び刊行物2並びにその記載内容は第2の2.(2)に示したとおりである。 3.対比及び検討 本願発明は、第2の2.で検討した補正発明から、「切削加工」、「切削残部」及び「超短パルスレーザー」について、それぞれ「機械的加工」であり、「該機械的加工により不可避的に形成されるもの」であり、及び「1パルスごとの間隔が0.2μm?0.7μmであり、パルスの重なりの数が25?75」であると特定した事項を削除したものである。 そうすると、本願発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の事項を付加する補正発明が第2の2.(4)で示したとおり刊行物1発明、刊行物2記載事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび したがって、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件出願の請求項2ないし5に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-07-02 |
結審通知日 | 2012-07-04 |
審決日 | 2012-07-18 |
出願番号 | 特願2008-146495(P2008-146495) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B26F)
P 1 8・ 121- Z (B26F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 馬場 進吾 |
特許庁審判長 |
野村 亨 |
特許庁審判官 |
藤井 眞吾 菅澤 洋二 |
発明の名称 | 抜き型の製造方法および抜き型 |
代理人 | 籾井 孝文 |