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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) A47J
管理番号 1262891
判定請求番号 判定2012-600016  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2012-10-26 
種別 判定 
判定請求日 2012-06-20 
確定日 2012-09-24 
事件の表示 上記当事者間の特許第4419149号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号物件説明書に示す「圧力調理器」は、特許第4419149号の特許請求の範囲の請求項1,請求項2及び請求項3に係る発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1.請求の趣旨

判定請求書の記載からみて,本件判定の請求の趣旨は,イ号物件説明書に示す「圧力調理器」(以下「イ号物件」という。)は,特許第4419149号の特許請求の範囲の請求項1,請求項2及び請求項3に係る発明の技術的範囲に属しない,との判定を求めるものと認める。


第2.本件特許発明

特許第4419149号の特許請求の範囲の請求項1,請求項2及び請求項3に係る発明は,特許明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1,請求項2及び請求項3に記載された以下のとおりのものである。
なお,特許請求の範囲の請求項1に係る発明の構成要件をA?Iに分説して記載している(以下「構成要件A)」などという。)。

【請求項1】
A 容器本体と,該容器本体の開口部を閉塞可能な蓋体と,該蓋体を容器本体に固定するための蓋体の半径方向に移動可能な一対の係止部材をもつ操作機構とを備えてなり,

B 上記操作機構として,上記蓋体にカバー部材を取付けると共に

C 該蓋体の中央部に回転盤を回動自在に配設し,該回転盤の盤面に該回転盤の回動中心を境にしてそれぞれ半径方向に内方から外方へと次第に径大に延びる対向一対の略三日月溝状のスライド溝部を設け,該回転盤にハンドルを設け,

D かつ,該蓋体の上面に底板及び左右の立上板からなる断面コ状のガイド部材を設け,

E 該ガイド部材に底板及び左右の立上板からなる断面コ状の一対の移動部材を該蓋体の半径方向に相互に異方向に移動可能に設け,該一対の移動部材のそれぞれに上記対向一対の略三日月溝状のそれぞれのスライド溝部にスライド嵌合可能なガイドピンを設け,

F 該一対の移動部材の外方端部に上記一対の係止部材を固定し,

G さらに,上記蓋体に設けられ,上記容器本体の内圧の変化により上下動可能な安全部材及び上記移動部材に設けられ,該安全部材の上昇位置で移動部材の外方移動を阻止可能な係止部からなる安全機構を設け,

H 該安全部材内に開閉弁を設けてなる

I ことを特徴とする圧力調理器。

【請求項2】
上記ハンドルを上記一対の係止部材が内側に位置して蓋体が容器本体に固定される固定位置及び該一対の係止部材が外側に位置して蓋体が容器本体から釈放される解除位置に停留可能な停留機構を設けてなることを特徴とする請求項1記載の圧力調理器。

【請求項3】
上記停留機構として,上記カバー部材にバネにより弾圧されたボールを設けると共に上記ハンドルに上記固定位置及び上記解除位置において該ボールが嵌入可能な二個の位置決め凹部を形成してなることを特徴とする請求項2記載の圧力調理器。
(以下,本件特許の請求項1に係る発明を「本件特許発明」という。)


第3.イ号物件

請求人が提出したイ号物件説明書(別添参照)の記載からみて,イ号物件は,次に分説するとおりのものと認める(用語に付された符号はイ号図面中に付された符号である)。

a 容器本体1と,該容器本体1の開口部を閉塞可能な蓋体2と,該蓋体2を容器本体1に固定するための蓋体2の半径方向に移動可能な一対の係止部41をもつ操作機構とを備えてなり,

b 上記操作機構として,上記蓋体2にカバー体5を取付けると共に

c 該蓋体2の中央部にベース部62を回動自在に配設し,該ベース部62の盤面に該ベース部62の回動中心を境にしてそれぞれ半径方向に内方から外方へと次第に径大に延びる対向一対の略三日月溝状のスライド溝部61を設け,該ベース部62に操作摘み63を設け,

d かつ,該蓋体2の上面に底板及び左右の立上板からなる断面コ状のガイド体3を設け,

e 該ガイド体3に底板及び左右の立上板からなる断面コ状の一対の移動部42を該蓋体2の半径方向に相互に異方向に移動可能に設け,該一対の移動部42のそれぞれに上記対向一対の略三日月溝状のそれぞれのスライド溝部61にスライド嵌合可能なガイドピン44を設け,

f 該一対の移動部42の外方端部に上記一対の係止部41を固定し,

g さらに,上記蓋体2に設けられ,上記容器本体の内圧の変化により上下動可能な安全部材7及び上記移動部42に設けられ,該安全部材7の上昇位置で移動部42の外方移動を阻止可能な係止孔43からなる安全機構を設け,

h1 容器本体1内の圧力が低下すると,安全部材7が下降すると同時に外気が中央孔74aと通気孔71cを通って容器本体1内に導入され,

h2 更に該安全部材7内に弁体72を設けてなり,容器本体1内の圧力が異常高圧に近づくと内圧によって弁体72が押し上げられ,容器本体1内の気体を放出する

i 圧力調理器。


第4.当事者の主張

1.請求人の主張

請求人は,判定請求書(7)欄において,イ号物件は本件特許発明の構成要件Hを充足せず,本件特許発明の技術的範囲に属しない旨を主張し,その理由として,同(6)欄において概略以下の旨を主張している。

(1)イ号物件の容器内低圧時の外気導入構造
イ号物件は,容器内圧力が低下すると,安全部材が下降すると同時に外気が中央孔74aと通気孔71cを通って容器本体1内に導入される。すなわち,イ号物件は,安全部材自体に「容器内低圧時の外気導入の弁機能」を備えたものであるのに対して,本件特許発明では,「安全部材内に開閉弁を設けた」ものであり,イ号物件の構成h1は本件特許発明の構成要件Hを充足しない。

(2)イ号物件の高圧放出弁
イ号物件は,容器本体1内の圧力が異常高圧に近づくと内圧によって弁体72が押し上げられ,容器本体1内の気体を放出して,容器本体1内が危険な異常高圧に達するのを防止するものである。
弁体72が安全部材内に設けられているが,本件特許発明の作用効果である容器内負圧時の外気導入とは相違する目的を達成するための構成であることは明らかであるから,イ号物件の構成h2は本件特許発明の構成要件Hを充足しない。

2.被請求人の主張

被請求人は,判定請求答弁書において,イ号物件は,本件特許発明の技術的範囲に属する旨を主張し,特に請求人が充足しないと主張する構成要件Hに関連して,概略以下の旨の主張をしている。

(1)「・・・プランジャ部としての安全部材12自体も開閉弁機構を構成する重要な構成要素であり,しかして,本件発明の実施の形態例として示した安全部材12に設けられた開閉弁機構は,安全部材12自体(構成要素),開閉弁(構成要素)12a,戻しバネ12b,パッキン12c・12d及びナット12eから構成されているとされる。
これに対して,イ号物件においても,調理終了後に容器内圧力が低下すると,安全部材7が下降すると同時に外気が中央孔74aと通気孔71cを通って容器本体1内に導入されるのであるから,イ号物件の開閉弁機構は,主に,筒状本体71,弁体72,発条73から構成されているとされる。
そうとすれば,本件発明1の開閉弁機構を構成する安全部材12も,イ号物件の開閉弁機構を構成する安全部材7も,開閉弁機構に構成要素となっており,したがって,イ号物件は安全部材内に開閉弁を設けたものではなく安全部材自体に容器内低圧時の外気導入の弁機能を備えさせたものであるという請求人の主張は,構成Hを限定的に解釈し過ぎたものであると云わざるを得ない・・・」(第8頁第20?第9頁第4行目)

(2)「・・・本件発明の実施の形態例とした安全部材12も,イ号物件の安全部材7も,安全部材内に開閉弁を設けた構造となっており,その作用効果はいずれも安全性を高めるという作用効果を奏することになり,開閉される通気路が安全部材の上下動に関わりが無い通気路であるか否かとは無関係であり,これをもって,イ号物件の高圧放出弁は構成Hの安全部材内に外気導入用の開閉弁を設けるの構成を充足するものではないとすることはできない。」(第9頁第16?22行目)


第5.対比・判断

本件特許発明の技術的範囲に対するイ号物件の属否について,以下に対比・判断をする。

1.構成要件A?G,Iの充足性について

(1)イ号物件の構成aの「係止部41」は,本件特許発明の構成要件Aの「係止部材」に相当し,
イ号物件の構成bの「カバー体5」は,本件特許発明の構成要件Bの「カバー部材」に相当し,
イ号物件の構成cの「ベース部62」,「操作摘み63」は,それぞれ本件特許発明の構成要件Cの「回転盤」,「ハンドル」に相当し,
イ号物件の構成dの「ガイド体3」は,本件特許発明の構成要件Dの「ガイド部材」に相当し,
イ号物件の構成eの「移動部42」は,本件特許発明の構成要件Eの「移動部材」に相当し,
イ号物件の構成gの「係止孔43」は,本件特許発明の構成要件Gの「係止部」に相当する。

(2)以上より,イ号物件の構成a?g,iは,本件特許発明の構成要件A?G,Iを充足する。

以上の点において当事者間に争いはない。

2.構成要件Hの充足性について
(1)構成要件Hの「安全部材内に開閉弁を設けてなる」について

(ア)イ号物件の構成h1ないしh2が,本件特許発明の構成要件Hの「安全部材内に開閉弁を設けてなる」を充足するか否かについて当事者間に争いがあるので,構成要件Hの「安全部材内に開閉弁を設けてなる」について検討する。
ここで「開閉弁」とは,一般に,流路を開閉して流体の流通を制御する弁を意味するものであるが,本件特許発明において「開閉弁」が適用される「流路」や「流体」に関して何ら特定されていない。
そして,「流路」や「流体」によって,「開閉弁」の作用・効果は異なるものとなり,構成要件Hの「安全部材内に開閉弁を設けてなる」の技術的意味は多義的なものとなるから,特許請求の範囲の記載文言自体から直ちにその技術的意味を確定することができない。

そこで,特許発明の技術的範囲は,願書に添附した特許請求の範囲の記載に基いて定めなければならず(特許法第70条第1項),その場合においては,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとされている(同第2項)ところ,特許明細書における【発明の詳細な説明】の記載を参酌して,構成要件Hの「開閉弁」の意義を検討する。

(イ)特許明細書の記載
構成要件Hの「安全部材内に開閉弁を設けてなる」に関して,特許明細書の【発明の詳細な説明】欄には以下の記載がある。

(a)「【0006】
・・・さらに,この安全部材内に開閉弁を設けているから,安全性を高めることができる。」

(b)「【0015】
尚,この場合,図9の如く,安全部材12内に開閉弁12a,戻しバネ12b,パッキン12c・12d及びナット12eが内装され,閉蓋状態における容器本体1内の冷却時等の負圧状態を考慮し,外部の空気を容器本体1内に取り込み可能に構成されている。」

(ウ)構成要件Hの解釈
構成要件Hの「開閉弁」について,上記摘記事項(b)には,「安全部材12内に開閉弁12a・・・が内装され」と記載され,「閉蓋状態における容器本体1内の冷却時等の負圧状態を考慮し,外部の空気を容器本体1内に取り込み可能に構成されている」ものとされる。
また,図9から,開閉弁12aが戻しバネ12bに抗して押し下げられると,パッキン12cと開閉弁12aとの間のシールが解除されて,外部と容器本体内を連通する流路が開き,これにより外部の空気が容器本体1内に取り込まれる構成となっていることが読み取れる。
そして,上記摘記事項及び図示内容以外に,構成要件Hの「開閉弁」に対応する部材についての記載はない。
してみると,構成要件Hの「開閉弁」が適用される「流路」は外部と容器本体内を連通する流路であり,「流体」は外部の空気であって,構成要件Hの「開閉弁」の意義は,閉蓋状態における容器本体内の冷却時等の負圧状態を考慮して,外部と容器本体内を連通する流路を開閉して,外部の空気を容器本体内に取り込み可能に構成される弁,であり,
構成要件Hの「安全部材内に開閉弁を設けてなる」とは,閉蓋状態における容器本体内の冷却時等の負圧状態を考慮し,外部の空気を容器本体内に取り込み可能に構成される弁が,安全部材内に内装されていることと認められる。

(エ)構成要件Hの「安全部材内に開閉弁を設けてなる」ことの効果
また,構成要件Hの「安全部材内に開閉弁を設けてなる」ことの効果について,上記摘記事項(a)には,「安全性を高めることができる」と記載される。
かかる記載は補正により追加されたものであるが,出願当初明細書に記載の「安全性」は,不測の蓋体の取り外しを防ぐことができて安全性を高めるという限りにおいて記載されるのみで,開閉弁によって容器本体内の圧力が危険な異常高圧に達することを防止するという意味での「安全性」については記載も示唆もない。
とすれば,上記摘記事項(a)の「安全部材内に開閉弁を設けているから,安全性を高めることができる」の「安全性」とは,閉蓋状態における容器本体内の冷却時等の負圧状態を考慮し,外部の空気を容器本体内に取り込み可能であるという意味においての「安全性」であると解すべきである。

(2)対比

(ア)構成h1と構成要件Hとの対比
イ号物件の構成h1と本件特許発明の構成要件Hとを対比すると,構成h1において「外気が中央孔74aと通気孔71cを通って容器本体1内に導入され」るものであるものの,「安全部材内に内装される弁」は存在せず,イ号物件の構成h1には,構成要件Hの「開閉弁」に相当するものがない。

この点,第4.2.に記載した被請求人による主張(1)は,イ号物件は安全部材内に開閉弁を設けたものではなく安全部材自体に容器内低圧時の外気導入の弁機能を備えさせたものであるという請求人の主張に対して,本件特許発明において,プランジャ部としての安全部材12自体も開閉弁機構を構成する重要な構成要素であるから,安全部材12に設けられた開閉弁機構は,安全部材12自体(構成要素),開閉弁(構成要素)12a,戻しバネ12b,パッキン12c・12d及びナット12eから構成されているものである旨を主張するものである。
しかし,構成要件Hの「開閉弁」は,上記のとおり,開閉弁12aとして示される部材であり,安全部材内に内装される弁であって,閉蓋状態における容器本体内の冷却時等の負圧状態を考慮し,外部の空気を容器本体内に取り込み可能に構成されるものである。イ号物件は安全部材が下降すると同時に外気が容器本体内に導入されるという機能を有するものの,構成要件Hの「開閉弁」に相当する部材を有しない。よって,かかる主張は採用できない。

(イ)構成h2と構成要件Hとの対比
イ号物件の構成h2と本件特許発明の構成要件Hとを対比すると,構成h2において「安全部材7内に弁体72を設け」るものであるものの,弁体72は容器本体内の圧力が危険な異常高圧に達することを防止するものであって,「閉蓋状態における容器本体内の冷却時等の負圧状態を考慮し,外部の空気を容器本体内に取り込み可能に構成されるもの」ではないから,構成h2の「弁体72」は,構成要件Hの「開閉弁」に相当しない。

この点,第4.2.に記載した被請求人による主張(2)は,イ号物件の構成h2の弁体72が本件特許発明の構成要件Hの開閉弁と同じ「安全性を高める」という機能・作用を有することを理由に,イ号物件の構成h2の「弁体72」が本件特許発明の構成要件Hの「開閉弁」に相当する旨を主張するものである。しかし,上記したとおりイ号物件の構成h2の「弁体72」による安全性は,容器本体内の圧力が危険な異常高圧に達することを防止するというものであり,他方,本件特許発明の構成要件Hの「開閉弁」による安全性は,閉蓋状態における容器本体内の冷却時等の負圧状態を考慮し,外部の空気を容器本体内に取り込み可能であるというものであるから,その意味するところが異なる。よって,かかる主張は採用できない。

また,被請求人は判定請求答弁書の(4)エにおいて,「本件発明1の技術的範囲は常に一義的に明白に確定することができ,かつ,出願人が出願経過において示した認識や意見など他の資料による解釈や当業者に自明な技術的事項を参酌すべき必要も全くなく,このような場合において,本件発明1の技術的範囲を限定的に解釈することはできない。」
と主張する。
しかし,構成要件Hの「安全部材内に開閉弁を設けてなる」の技術的意味は多義的なものとなり,特許請求の範囲の記載文言自体から直ちにその技術的意味を確定することができないことは,上記第5.2.(1)(ア)で示したとおりである。よって,かかる主張は採用できない。

(3)まとめ
よって,イ号物件の構成h1及びh2は,本件特許発明の構成要件Hを充足しない。


第6.むすび

以上のとおり,イ号物件は本件特許発明の構成要件Hを充足しないから,イ号物件は,本件特許発明の技術的範囲に属しない。
また,イ号物件は,本件特許発明の技術的範囲に属しないのであるから,イ号物件が本件特許発明に対して他の発明特定事項を付加したものである特許請求の範囲2,3に係る発明の技術的範囲に属しないことも明らかである。

よって,結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2012-09-11 
出願番号 特願2006-53377(P2006-53377)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (A47J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 亀田 貴志
森川 元嗣
登録日 2009-12-11 
登録番号 特許第4419149号(P4419149)
発明の名称 圧力調理器  
代理人 黒田 勇治  
代理人 近藤 彰  
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