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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1263746
審判番号 不服2009-5134  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-09 
確定日 2012-09-26 
事件の表示 特願2003-341709「少なくとも一のシリコーンホスファート化合物と少なくとも一のアミン化合物を含有する組成物及び該組成物の使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月22日出願公開、特開2004-123747〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年9月30日の出願(パリ条約による優先権主張 2002年9月30日,米国)であって、平成18年9月11日受付けの手続補正書が提出され、拒絶理由通知に応答し平成20年10月20日受付けの手続補正書と意見書が提出されたが、平成20年11月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年3月9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成21年4月8日受付けの手続補正書が提出され、平成21年4月8日受付けの審判請求理由の手続補正書(方式)が提出されたものである。

2.平成21年4月8日受付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年4月8日受付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
補正前(平成20年10月20日受付けの手続補正書参照)の
「【請求項1】
(a)少なくとも一のホスファート基を有する少なくとも一のシリコーン化合物と;
(b)3個より多いアミノ基を有する少なくとも一のアミン化合物;
を含有する、少なくとも一のケラチン繊維をコンディショニングし又は持続性のあるコンディショニング効果を付与するための組成物であって、
前記3個より多いアミノ基が同一又は異なっており、
前記アミン化合物は、ポリエチレンイミン化合物と、前記少なくとも一のホスファート基を有する少なくとも一のシリコーン化合物とは異なるアミノシリコーン化合物から選択され、
前記少なくとも一のシリコーン化合物と前記少なくとも一のアミン化合物が少なくとも一のケラチン繊維をコンディショニングするのに有効な合計量で存在している組成物。
【請求項2】?【請求項13】 ・・・省略・・・
【請求項14】
前記3個より多いアミノ基が同一である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記3個より多いアミノ基が異なっている、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記3個より多いアミノ基が、第1級アミノ基、第2級アミノ基、及び第3級アミノ基から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、シャンプー、コンディショナー、毛髪用染料、パーマネントウエーブ用製品、リラクシング製品、又はスタイリング用製品の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも一の溶媒をさらに含有している、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記少なくとも一の溶媒が水及び有機溶媒から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記有機溶媒が、C_(1)-C_(4)アルカノール類、グリセロール、グリコール類、グリコールエーテル類、芳香族アルコール類、並びにそれらの混合物から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記少なくとも一のシリコーン化合物及び前記少なくとも一のアミン化合物とは異なるアニオン性界面活性剤、前記少なくとも一のシリコーン化合物及び前記少なくとも一のアミン化合物とは異なるカチオン性界面活性剤、前記少なくとも一のシリコーン化合物及び前記少なくとも一のアミン化合物とは異なる非イオン性界面活性剤、前記少なくとも一のシリコーン化合物及び前記少なくとも一のアミン化合物とは異なる両性界面活性剤、前記少なくとも一のシリコーン化合物及び前記少なくとも一のアミン化合物とは異なる双性イオン性界面活性剤、チオール化合物、香料、浸透剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、乳白剤、可溶化剤、エモリエント、着色料、遮蔽剤、防腐剤、ビタミン類、シリコーン類、前記少なくとも一のシリコーン化合物及び前記少なくとも一のアミン化合物とは異なるポリマー、植物性油、鉱物性油及び合成油から選択される少なくとも一の添加剤をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】?【請求項25】 ・・・省略・・・」(注:【請求項2】?【請求項13】については文言上の補正がされないため摘示を省略し、【請求項22】?【請求項25】については方法またはキットの発明であるので摘示を省略した。)から、
補正後の
「【請求項1】
(a)少なくとも一のホスファート基を有する少なくとも一のシリコーン化合物と;
(b)3個より多いアミノ基を有する少なくとも一のアミン化合物;
を含有する、少なくとも一のケラチン繊維をコンディショニングし又は持続性のあるコンディショニング効果を付与するための組成物であって、
前記3個より多いアミノ基が同一又は異なっており、
前記アミン化合物は、ポリエチレンイミン化合物から選択され、
前記少なくとも一のシリコーン化合物と前記少なくとも一のアミン化合物が少なくとも一のケラチン繊維をコンディショニングするのに有効な合計量で存在している組成物。
【請求項2】?【請求項13】 ・・・省略・・・
【請求項14】
前記組成物が、シャンプー、コンディショナー、毛髪用染料、パーマネントウエーブ用製品、リラクシング製品、又はスタイリング用製品の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも一の溶媒をさらに含有している、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも一の溶媒が水及び有機溶媒から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記有機溶媒が、C_(1)-C_(4)アルカノール類、グリセロール、グリコール類、グリコールエーテル類、芳香族アルコール類、並びにそれらの混合物から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも一のシリコーン化合物及び前記少なくとも一のアミン化合物とは異なるアニオン性界面活性剤、前記少なくとも一のシリコーン化合物及び前記少なくとも一のアミン化合物とは異なるカチオン性界面活性剤、前記少なくとも一のシリコーン化合物及び前記少なくとも一のアミン化合物とは異なる非イオン性界面活性剤、前記少なくとも一のシリコーン化合物及び前記少なくとも一のアミン化合物とは異なる両性界面活性剤、前記少なくとも一のシリコーン化合物及び前記少なくとも一のアミン化合物とは異なる双性イオン性界面活性剤、チオール化合物、香料、浸透剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、乳白剤、可溶化剤、エモリエント、着色料、遮蔽剤、防腐剤、ビタミン類、シリコーン類、前記少なくとも一のシリコーン化合物及び前記少なくとも一のアミン化合物とは異なるポリマー、植物性油、鉱物性油及び合成油から選択される少なくとも一の添加剤をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】?【請求項22】 ・・・省略・・・」(注:【請求項2】?【請求項13】については文言上の補正がされていないため摘示を省略し、【請求項19】?【請求項22】については方法またはキットの発明であるので摘示を省略した。)と補正された。

そこで、上記補正前後の発明特定事項を対比すると、補正後の請求項1は補正前の請求項1に対応することが明らかである。
そして、上記補正は、該請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である(b)成分の「前記アミン化合物」(即ち、「3個より多いアミノ基を有する少なくとも一のアミン化合物」)について、補正前に、「ポリエチレンイミン化合物と、前記少なくとも一のホスファート基を有する少なくとも一のシリコーン化合物とは異なるアミノシリコーン化合物から選択され」と特定されていた選択肢から、「前記少なくとも一のホスファート基を有する少なくとも一のシリコーン化合物とは異なるアミノシリコーン化合物」の選択肢を削除し、「ポリエチレンイミン化合物」の選択肢を残して、「ポリエチレンイミン化合物から選択され」と限定する補正を含むものと言える。
してみると、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「平成18年改正前特許法」ともいう。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶理由に引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である、特開平10-279445号公報(以下、「引用例1」という。)、及び特開平7-69845号公報(以下、「引用例2」という。)には、次のことが記載されている。なお、下線は当審で付与した。

[引用例1]
(1-i)「【請求項1】リン酸エステル変性シリコーン及び陽イオン性高分子を含んでなる化粧料。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】参照)
(1-ii)「【0006】
【発明が解決すべき課題】上記した従来技術の現状を鑑み、本発明が解決すべき課題は、洗髪後の毛髪の櫛通りが良好で、かつ乾燥後の毛髪のサラサラ感やツルツル感が十分に実感できるリンス効果を付与されたシャンプー系毛髪用化粧料を提供することであり;使用中のべたつき抑制効果に優れ、毛髪に十分な滑らかさ及び光沢を付与することが可能であり、更にブラッシング等の物理的刺激からも毛髪を保護する効果に優れたリンス系毛髪用化粧料を提供することであり;さらにはこれらの毛髪用化粧料に付与することのできる機能から導き出せる機能を有する化粧料を提供することである。」(段落【0006】参照)
(1-iii)「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、基本的配合成分として、リン酸エステル変性シリコーン及び陽イオン性高分子を含んでなる化粧料を提供することにより、その課題を解決し得ることを見出して本発明を完成した。すなわち、本発明者は、以下の発明を提供する。」(段落【0007】参照)
(1-iv)「【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明する。
A.本発明化粧料の実施の形態:本発明化粧料は、リン酸エステル変性シリコーン及び陽イオン性高分子を含んでなる化粧料である。
【0012】1.リン酸エステル変性シリコーンについて
本発明化粧料中に配合されるリン酸エステル変性シリコーンは、下記式(I)で表されるリン酸変性シリコーンである。
【化1】

【0013】このリン酸エステル変性シリコーン(I)のシロキサン部分が大きい場合、すなわちlやmが大きい場合であっても、ポリオキシアルキレン基の鎖長、すなわちaやbを変化させることによりHLBを大きくすることが可能であり、親水性を高めることが可能である。
【0014】リン酸エステル変性シリコーン(I)において、Rは同種又は異種の炭素数が1?10の1価の炭化水素基又は同シロキサニル基である。この1価の炭化水素基としては、アルキル基,シクロアルキル基,アリール基等を例示することができる。
【0015】炭素数が1?10のアルキル基としては、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,ヘプチル基,オクチル基,ノニル基,デシル基,イソプロピル基,イソブチル基,sec-ブチル基,tert-ブチル基,イソペンチル基,ネオペンチル基,tert-ペンチル基,イソヘキシル基,2-エチルヘキシル基等を挙げることができる。また、同シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基等を挙げることができる。さらに、同アリール基としては、フェニル基,ベンジル基,フェニルエチル基等を挙げることができる。また、これらの例示された基にRとして採り得る基が限定されるものではないが、特にメチル基が好ましく選択される。
【0016】R^(1 )はRと同種の基又は式(II)で表される基であるが、R^(1) の少なくとも一つは式(II)で表される基である。ただし、R^(1) のうち、特にリン酸エステル変性シリコーン(I)の末端に位置するものはメチル基であることが好ましい。また、l及びmはそれぞれ0又は正の整数であり、lが0?100の範囲であり、mが0?500の範囲であることが好ましく;さらにlが0?10の範囲であり、mが0?20の範囲であることが特に好ましい。
【0017】
【化2】

【0018】式(II)において、Mはアルカリ金属イオン,アンモニウムイオン,アミノアルキル基,アミノアルカノール基であり、これらの中でもアルカリ金属イオンであるナトリウムイオンが好ましい。また、xは1?15の整数を表し、好ましくは12以下であることが好ましい。さらに、a及びbはそれぞれ0又は正の整数を表す。そして、a及びbが同時に0になることはなく、a及びbは0?50の範囲であることが好ましく、さらにaは2?20の範囲であることが特に好ましく、bは0?10の範囲であることが特に好ましい。
【0019】なお、式(II)で表される基中の、エチレンオキサイド鎖とプロピレンオキサイド鎖の並び方は特に限定されず、例えばエチレンオキサイド鎖とプロピレンオキサイド鎖が1個ずつ交互に並んでいる場合も許容され、一定個ずつ並んでいる場合も許容される。」(段落【0011】?【0019】参照)
(1-v)「【0024】上記のように、所望するリン酸エステル変性シリコーン(I)を逐次合成したものを、本発明化粧料中に配合することも可能であるが、特定のリン酸エステル変性シリコーン(I)の市販品を用いることも可能である。かかる市販品としては、例えばPECOSIL WDS-100,PECOSIL PS-100(両者共フェニックス ケミカル社製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。」(段落【0024】参照)
(1-vi)「【0025】2.陽イオン性高分子について
本発明化粧料の構成要素となる陽イオン性高分子は、概ね<1>陽イオン性多糖類,<2>糖類と合成イオンモノマーを主体としてなる陽イオン性コポリマー及び<3>合成陽イオン性高分子の3種類に大別される。」(段落【0025】参照;当審注:丸囲み数字を<>括弧付き数字で表示、以下同様。)
(1-vii)「【0032】<3>陽イオン性合成高分子としては、例えば陽イオン性ポリアルキレンイミン類、陽イオン性エトキシポリアルキレンイミン類、陽イオン性ポリ[N-{3-(ジメチルアンモニオ)プロピル}-N´-{3-(エチレンオキシエチレンジメチルアンモニオ)プロピル}尿素ジクロリド]、N,N-ジアリル-N,N-ジアルキルアンモニウムクロリドからなるコポリマー等を挙げることができる。これらの陽イオン性高分子のうち、例えば陽イオン性ポリ[N-{3-(ジメチルアンモニオ)プロピル}-N´-{3-(エチレンオキシエチレンジメチルアンモニオ)プロピル}尿素ジクロリド]は、ミラノールケミカル社(MiranolChemical Company) から市販されている。また、N,N-ジアリル-N,N-ジアルキルアンモニウムクロリドからなるコポリマーは、商品名マーコート(Merquart) としてMerck 社から市販されている。」(段落【0032】参照)
(1-viii)「【0042】本発明化粧料における、リン酸エステル変性シリコーンと陽イオン性高分子の混合比(モル比)は、0.1/1以上、1/0.01以下の範囲であり、好ましくは0.1/1以上、5/1以下の範囲である。
【0043】この混合比が0.1/1未満の場合は、例えばこれらを配合した毛髪化粧料に付与されるリンス効果が十分でなく,乾燥後のサラサラした感触やツルツルした感触が不十分であり好ましくない。また、混合比が1/0.01を超える場合は、すすぎ時の指とおりのなめらかさが十分満足のゆくものでなくなり好ましくない。
【0044】なお、陽イオン性高分子は、化粧料全体の0.1重量%以上、同5.0重量%以下の範囲で配合することが好ましい。」(段落【0042】?【0044】参照)
(1-ix)「【0049】なお、上記した本発明化粧料の性質を鑑みると、上記化粧料として採り得る形態の代表的な態様が、毛髪用化粧料である。以下に、特に本発明化粧料の優れた性質を最大限活用した、上記両成分と特定成分を組み合わせて配合した毛髪用化粧料についての実施の形態を説明する。なお、本発明において「毛髪化粧料」とは、文字通り毛髪に使用する任意の化粧料を意味するが、特に毛髪にコンディショニング効果を付与することが意義ある化粧料、例えばシャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアコンディショナー、ヘアパック等の水によるすすぎ工程の入る化粧料を主に意味する。」(段落【0049】参照)
(1-x)「【0087】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって、その技術的範囲が限定的に解釈されるべきものではない。また、本実施例中、配合量は全て重量%である。
【0088】以下の各実施例には、上述した製造法に従って製造した下記<1>?<3>のリン酸エステル変性シリコーンを用いた。
【化8】

【0089】〔実施例A〕本発明毛髪用化粧料(1)
本発明毛髪用化粧料(1)についての効果の評価は、以下の試験法及び評価法に従って行った。 <1>使用性の評価
ハーフヘッド法に従い、専門パネラー15名による、本発明毛髪用化粧料(1)についての官能評価(すすぎ後のぬめり感並びに乾燥後のサラサラ感及びツルツル感)を行なった。ここで、乾燥後の感覚は25℃、50RH%中に30分以上安静にした後に行なった。なお、対照品としては、陽イオン性高分子のみを、並びにリン酸エステル変性シリコーンのみをそれぞれ配合したシャンプー組成物を用いた。
【0090】判定基準(ぬめり感は少ない方が好ましく、乾燥後のサラサラ感及びツルツル感は感じられた方が好ましいという前提で判定した。)
○:対照品と同等以上の評価が10名以上
△:対照品と同等以上の評価が6?9名
×:対照品と同等以上の評価が5名以下
【0091】<2>外観安定性の評価
本発明毛髪用化粧料(1)についての外観安定性は、試料を50℃で1ヵ月放置した後の外観で評価した。
○:変化なし
×:変化有り
【0092】<3>起泡性の評価
本発明毛髪用化粧料(1)についての起泡性の評価は、人工硬水(CaCO_(3)70ppm )で、試料濃度1%の溶液を400ml調製し、温度40℃で、撹拌機付き円筒形シリンダーを用いて、起泡力を測定した。
○:泡立ち良好 泡量 2000ml以上
△:泡立ち普通 泡量 1500ml以上 2000ml未満
×:泡立ち不良 泡量 1500ml未満
【0093】<4>洗浄性の評価
本発明毛髪用化粧料(1)についての洗浄性の評価は、人工硬水(CaCO_(3)70ppm )で、試料濃度1%の溶液を調製し、シーロンフィルムを用いた人工皮脂汚垢板を洗浄した。温度40℃で、ターゴトメーター(JIS K-3371)を用いて洗浄し、洗浄前後の反射率より洗浄効果を求めた。
【0094】なお、洗浄性の評価の指標となる「洗浄効率」は、以下の式により算出される。
洗浄効率(%)=(R_(V) -R_(S) /R_(0) -R_(S) )×100
R_(0) :原板(白色板にシーロンフィルムのみ貼付けたものの反射率)
R_(S) :汚垢板の反射率
R_(V) :洗浄後の汚垢板の反射率
【0095】
○:洗浄性良好 洗浄効率 80%以上
△:洗浄性普通 洗浄効率 60%以上 80%未満
×:洗浄性不良 洗浄効率 60%未満
【0096】総合評価
上記の各試験の結果を、以下の基準により、総合的に評価した。
○:全ての評価が○の場合
△:1つでも△の評価がある場合
×:2つ以上△の評価があるか、1つでも×の評価がある場合
【0097】〔実施例A1?A14,比較例A1,A2〕第1表,第2表及び第3表内に記載した配合組成よりなる毛髪用化粧料(すべて、シャンプー)を調製し、上記した各評価項目についての評価を同表中に示した。
【0098】【表1】

【0099】【表2】

【0100】【表3】

【0101】これらの結果から明らかなように、本発明のシャンプー組成物はすすぎ時のぬめり感がなく、起泡性及び洗浄性に優れ、しかも乾燥後のサラサラ,ツルツル感にも優れていることが明らかになった。」(段落【0087】?【0101】参照;なお、○囲い数字は、表示できないため、<>囲い数字で表記した。)

[引用例2]
(2-i)「【特許請求の範囲】
【請求項1】毛髪を徹底的に清浄にし且つコンディショニングを行うことができるマイルドなコンディショニングシャンプーであって、水、浄化用界面活性剤を約5重量%?約65重量%の量、カチオン性ポリエチレンイミンを約0.01重量%?約4重量%の量、およびカチオン性で油溶性、水分散性の架橋したアクリレート/アクリルアミドコポリマーコンディショニング剤を約0.1重量%?約20重量%の量を含んで成る、コンディショニングシャンプー。
・・・・・・・(中略)・・・・・・・
【請求項9】更に、シリコーンコンディショニング剤を組成物の約0.1重量%?約10重量%の量で含む、請求項1に記載の組成物。
・・・・・・・(後略)・・・・・・・」(【特許請求の範囲】の【請求項1】、【請求項9】参照)
(2-ii)「【0020】好ましい態様の詳細な説明
本発明の水性コンディショニングシャンプー組成物は、通常は、水を約60重量%?約80?90重量%、アニオン性界面活性剤を好ましくは組成物の約5重量%?約25重量%の量、ポリエチレンイミンを約0.01重量%?約4重量%、好ましくは約0.01重量%?約1重量%の量、場合によってはシリコーンコンディショニング剤を組成物の約0.1重量%?約10重量%の量、およびPolyquaternium 32であるカチオン性コンディショニング剤を組成物の約0.1重量%?約20重量%の量で含む。」(段落【0020】参照)
(2-iii)「【0031】意外なことには、プロトン化したポリエチレンイミンは、カチオン性のPolyquaternium 32と共に、優れた安定性が得られ、プロトン化したポリエチレンイミンからのコンディショニング効果が一層高くなる。
・・・・・・・(中略)・・・・・・・
【0032】好ましいプロトン化したポリエチレンイミンは、第一:第二:第三級窒素原子の比率がそれぞれ約1:2:1である。」(段落【0031】、【0032】参照)

(3)対比、判断
引用例1には、上記「(2)[引用例1](1-i)」に摘示の記載からみて、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されている。
「リン酸エステル変性シリコーン及び陽イオン性高分子を含んでなる化粧料。」

そこで、本願補正発明と引用例1発明とを対比する。
(a)引用例1発明の化粧料に含有される「リン酸エステル変性シリコーン」は、該シリコーンの具体例として、「【0012】1.リン酸エステル変性シリコーンについて 本発明化粧料中に配合されるリン酸エステル変性シリコーンは、下記式(I)で表されるリン酸変性シリコーンである。
【化1】

」、「【0016】R^(1 )はRと同種の基又は式(II)で表される基であるが、R^(1) の少なくとも一つは式(II)で表される基である。・・・

」、「【0018】式(II)において、Mはアルカリ金属イオン,アンモニウムイオン,アミノアルキル基,アミノアルカノール基であり、これらの中でもアルカリ金属イオンであるナトリウムイオンが好ましい。」が挙げられている(摘示(1-iv)参照)こと、そして、該式中の「-O-PO_(3)・M_(2)」に着目すると、本願明細書に実施態様として示された(I)式の「PO(OR^(1))_(3)」のホスアァート基(当審注:化学構造式からみて、ホスフェートphosphate、即ちリン酸エステルと認められる。)を有する少なくとも一のシリコーン化合物(本願明細書段落【0039】参照)に対応するものであることが明らかであり、更に、本願補正発明の実施例に用いられている「ペコシル(登録商標)PS-100」(フェニックス・ケミカル社)が、引用例1発明の化粧料に含有される「リン酸エステル変性シリコーン」の例として挙げられている市販品「PECOSIL PS-100」(フェニックス・ケミカル社)と同じものであると認められること(摘示(1-v)参照)からみて、本願補正発明の組成物に含有される「(a)少なくとも一のホスファート基を有する少なくとも一のシリコーン化合物」に相当する。
(b)引用例1発明の化粧料に含有される「陽イオン性高分子」は、該陽イオン性高分子の具体例として、「本発明化粧料の構成要素となる陽イオン性高分子は、概ね<1>陽イオン性多糖類,<2>糖類と合成イオンモノマーを主体としてなる陽イオン性コポリマー及び<3>合成陽イオン性高分子の3種類に大別される。」(摘示(1-vi)参照)と説明され、及び、「<3>陽イオン性合成高分子としては、例えば陽イオン性ポリアルキレンイミン類、陽イオン性エトキシポリアルキレンイミン類、・・・・・等を挙げることができる。」(摘示(1-vii)参照;当審注:該<3>「陽イオン性合成高分子」は、前記<3>「合成陽イオン性高分子」と同義と認められる。)と説明されていることからみて、そして、「陽イオン性ポリアルキレンイミン類」が、一般に、「H_(2)N[-(CH_(2))_(l)NH(CH_(2))_(m)NH]_(n)-H」で表されるポリアルキレンポリアミン(大木道則ほか3名編、「化学辞典」、第1版第2刷、株式会社東京化学同人、1995年5月10日発行、第1368頁の「ポリアミン」の項を参照)と呼ばれる一連の化合物を意味するものと解されるところ、その化学構造に鑑みアミノ基が3個以上のものであることが明らかと言えることから、本願補正発明の「(b)3個より多いアミノ基を有する少なくとも一のアミン化合物」であって、「前記3個より多いアミノ基が同一又は異なって」いるものに相当する。
(c)引用例1発明の「化粧料」は、引用例1における、「本発明が解決すべき課題は、洗髪後の毛髪の櫛通りが良好で、かつ乾燥後の毛髪のサラサラ感やツルツル感が十分に実感できるリンス効果を付与されたシャンプー系毛髪用化粧料を提供することであり;使用中のべたつき抑制効果に優れ、毛髪に十分な滑らかさ及び光沢を付与することが可能であり、更にブラッシング等の物理的刺激からも毛髪を保護する効果に優れたリンス系毛髪用化粧料を提供することであり」(摘示(1-ii)参照)、「本発明において「毛髪化粧料」とは、文字通り毛髪に使用する任意の化粧料を意味するが、特に毛髪にコンディショニング効果を付与することが意義ある化粧料、例えばシャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメント、ヘアコンディショナー、ヘアパック等の水によるすすぎ工程の入る化粧料を主に意味する。」(摘示(1-ix)参照)との記載からみて、本願補正発明の「少なくとも一のケラチン繊維をコンディショニングするための組成物」に相当する。そして、引用例1における、「本発明化粧料における、リン酸エステル変性シリコーンと陽イオン性高分子の混合比(モル比)は、0.1/1以上、1/0.01以下の範囲であり、好ましくは0.1/1以上、5/1以下の範囲である。【0043】この混合比が0.1/1未満の場合は、例えばこれらを配合した毛髪化粧料に付与されるリンス効果が十分でなく,乾燥後のサラサラした感触やツルツルした感触が不十分であり好ましくない。また、混合比が1/0.01を超える場合は、すすぎ時の指とおりのなめらかさが十分満足のゆくものでなくなり好ましくない。」(摘示(1-viii)参照)との記載からみて、本願補正発明の「前記少なくとも一のシリコーン化合物と前記少なくとも一のアミン化合物が少なくとも一のケラチン繊維をコンディショニングするのに有効な合計量で存在している組成物」に相当する。

してみると、両発明は、本願補正発明の表現を借りて表すと、
「(a)少なくとも一のホスファート基を有する少なくとも一のシリコーン化合物と;
(b)3個より多いアミノ基を有する少なくとも一のアミン化合物;
を含有する、少なくとも一のケラチン繊維をコンディショニングするための組成物であって、
前記3個より多いアミノ基が同一又は異なっており、
前記少なくとも一のシリコーン化合物と前記少なくとも一のアミン化合物が少なくとも一のケラチン繊維をコンディショニングするのに有効な合計量で存在している組成物。」
で一致し、次の相違点A,Bで一応相違している。
<相違点>
A.アミン化合物について、本願補正発明では、「前記アミン化合物は、ポリエチレンイミン化合物から選択され」ることが特定されているのに対し、引用例1発明ではそのように特定されていない点
B.組成物について、本願補正発明では、「コンディショニングするため」の代わりの選択肢として「持続性のあるコンディショニング効果を付与するため」との特定もされているのに対し、引用例1発明ではそのように特定されていない点
(注:相違点Bに係る本願補正発明の発明特定事項は、「コンディショニングするため」との代わりの選択肢であるところ、上記(c)に検討のとおり、両発明が「コンディショニングするため」との点では一致しているから、本来は判断することを要しない点ではあるが、仮の相違点として検討するものとする。)

そこで、これらの相違点について検討する。
(i)相違点Aについて
「陽イオン性高分子」として「合成陽イオン性高分子」が挙げられ(摘示(1-vi)参照)、その具体例の一つとして「陽イオン性ポリアルキレンイミン類」が最初に例示されている(摘示(1-vii)参照)ところ、その具体的な化合物は説明されていないものの、陽イオン性ポリアルキレンイミン類を用いようとする場合に、具体的な化合物としてその典型例ともいえるポリエチレンイミン化合物を想起することは容易になし得ることである。
なお、ポリエチレンイミンがポリアルキレンイミン類(即ちポリアルキレンポリアミン;上記対比の「(b)」参照)に包含される態様であることは知られている[例えば、特開2002-194665号公報段落【0026】(脂肪族1級アミノ基を3個以上もつものとして、・・・ポリエチレンイミンなどを含むポリアルキレンポリアミンなど・・)、特開2002-114625号公報段落【0011】(ポリアミン、例えばポリアルキレンポリアミン及びそれらの誘導体、特にポリエチレンイミン、・・)、特開2002-46350号公報段落【0064】(カチオン性ポリマーの具体例としては、ポリエチレンイミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類)、特開2001-246830号公報段落【0033】(カチオン性ポリマーの具体例としては、ポリエチレンイミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類)など参照]。そして、本願明細書においても、ポリエチレンイミン類は「ポリアミン類」の一実施態様として説明されている(段落【0045】参照)。
しかも、引用例1発明の解決すべき課題は、「洗髪後の毛髪の櫛通りが良好で、かつ乾燥後の毛髪のサラサラ感やツルツル感が十分に実感できるリンス効果を付与されたシャンプー系毛髪用化粧料を提供する」ことであり、また、「使用中のべたつき抑制効果に優れ、毛髪に十分な滑らかさ及び光沢を付与することが可能であり、更にブラッシング等の物理的刺激からも毛髪を保護する効果に優れたリンス系毛髪用化粧料を提供する」ことである(摘示(1-ii)参照)。そして、そのために「基本的配合成分として、リン酸エステル変性シリコーン及び陽イオン性高分子を含んでなる化粧料を提供」し(摘示(1-iii)参照)、これらの配合比を特定の範囲とすることで、乾燥後のサラサラした感触やツルツルした感触、すすぎ時の指とおりのなめらかさを毛髪に与えるものであり(摘示(1-viii)参照)、いいかえれば毛髪にコンディショニング効果を付与するものであるから(摘示(1-ix)参照)、基本的配合成分である「リン酸エステル変性シリコーン」及び「陽イオン性高分子」は、いずれもコンディショニング性を有する成分として用いられていることは明らかである。ところで、引用例1では、陽イオン性合成高分子として、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(商品名:マーコート100)が実施例で用いられていて(摘示(1-x)参照)、陽イオン性ポリアルキレンイミン類を用いた実施例は示されていないけれども、陽イオン性ポリアルキレンイミン類は、陽イオン性合成高分子として最初に例示されている(摘示(1-vi)参照)ものであり、実施例はなくとも実施例のものと同程度の作用効果を奏し得るものと理解できるものといえる。
一方、引用例2には、「毛髪を徹底的に清浄にし且つコンディショニングを行うことができるマイルドなコンディショニングシャンプー」であって、水、界面活性剤、カチオン性で油溶性、水分散性の架橋したアクリレート/アクリルアミドコポリマーコンディショニング剤、シリコーンコンディショニング剤に加えて「カチオン性ポリエチレンイミン」を含むコンディショニングシャンプーが記載されており(摘示(2-i),(2-ii)参照)、プロトン化したポリエチレンイミンについて、「意外なことには、プロトン化したポリエチレンイミンは、カチオン性のPolyquaternium 32と共に、優れた安定性が得られ、プロトン化したポリエチレンイミンからのコンディショニング効果が一層高くなる。」との記載がある(摘示(2-iii)参照)。上記の「プロトン化したポリエチレンイミンからのコンディショニング効果が一層高くなる」という記載は、プロトン化したポリエチレンイミンが元々有していたコンディショニング効果が一層高くなるという意味に解されるから、プロトン化したポリエチレンイミンがコンディショニング効果を有していることは当業者に明らかである。
そうすると、「陽イオン性ポリアルキレンイミン類」がコンディショニング性を有する成分であることは、当業者であれば十分に理解できるものであって、引用例1発明において、「陽イオン性ポリアルキレンイミン類」として、コンディショニング性を有する成分である陽イオン性ポリアルキレンイミン類に該当する「ポリエチレンイミン」を用いることは、きわめて自然なことといえ、当業者であれば容易になし得たことという他ない。

(ii)相違点Bについて
本願補正発明でいう「持続性のあるコンディショニング効果を付与するため」とは、具体的にどのようなものであるのか明確ではない。本願明細書を検討すると、「持続性のあるコンディショニング効果を付与する」ことについて、「トリートメントした後の少なくとも6回のシャンプー後でも、トリートメントされた毛髪が、トリートメントされていない毛髪と比較して、よりコンディショニングされた状態を保持していることを意味する」旨の記載(段落【0023】参照)を見いだせるとしても、効果確認の手法にすぎないものと解されるところ、引用例1発明においても、毛髪などのコンディショニングは、洗髪後の櫛通りのみならず、乾燥後のサラサラ感やツルツル感などを改善しているように、ある程度の持続性を意図しているものであることは当業者における技術常識であると認められるから、「ケラチン繊維をコンディショニングするための」組成物は、当然「持続性のあるコンディショニング効果を付与するための」組成物であると認められる。
したがって、仮に、「コンディショニングするため」との代わりに、「持続性のあるコンディショニング効果を付与するための」との選択肢を採用したところで、格別の技術的意義を奏するものではないから、相違点Bは実質的な相違点ではない。

(iii)作用効果について
本願補正発明では、「コンディショニングするため」と「持続性のあるコンディショニング効果を付与するための」とは、あえて選択肢とされているし、発明の詳細な説明においても、段落【0013】で前者を、段落【0014】で後者を、別の実施態様として明確に区別して説明しているのであるから、前者の「コンディショニングするため」とは、必ずしも持続性があるものは意図されないと解されるところ、前記(i)で検討したように、引用例1発明がコンデイショニング効果を奏することは明らかである。
さらに、持続性について検討する。
本願補正発明の作用効果についてみると、実施例1においてポリエチレンイミンのみを含有する溶液、又はシリコーン化合物溶液のみを含有する溶液は、それぞれがより高濃度であるにもかかわらず、ポリエチレンイミンとシリコーン化合物双方を含有する溶液よりも湿った毛髪の髪梳き性の改善%(トリートメント後の改善%と6回のシャンプー後の改善%)が低いという結果が得られたことをもって、ポリエチレンイミンとシリコーン化合物双方を含有する溶液に相乗効果のあることを示している(本願明細書段落【0055】?【0058】参照)。
しかし、引用例1発明においても、実施例A(摘示(1-x)参照)を検討すると、実施例A13と比較例A1,比較例A2[なお、第3表中の実施例A1,実施例A2は、段落【0097】に、実施例A1?A14に続き比較例A1,A2と説明され、表1?3において少なくとも実施例A1?A14がその順に示されていること、及び、陽イオン性高分子とリン酸エステル変性シリコーンの片方のみ配合されていることからみて、比較例A1,比較例A2の誤記であることが明らかである。]を対比すると、比較例A1の陽イオン性合成高分子(ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(即ち、商品名マーコート))のみを含有する溶液、又は比較例A2のリン酸エステル変性シリコーン化合物溶液のみを含有する溶液は、実施例A13の陽イオン性合成高分子とリン酸エステル変性シリコーン化合物の双方を含有する溶液よりも使用性(すすぎ時のぬめり感、乾燥後のサラサラ・ツルツル感)において劣るという同様の結果が得られているし、リン酸エステル変性シリコーンの化学構造が少し異なるものの、第2表の実施例A10のように、陽イオン性合成高分子とリン酸エステル変性シリコーン化合物の量を半減しても、比較例A1,比較例A2よりも優れていることに鑑みると、陽イオン性合成高分子として、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(即ち、商品名マーコート)と同列に記載された陽イオン性ポリアルキレンイミン類(ポリエチレンイミンが包含されることは明らかである。)を採用しても同様な結果が得られると、当業者であれば理解するものと解すべきであるから、本願補正発明におけるポリエチレンイミンとシリコーン化合物双方を含有する溶液の相乗効果は、予測を越えるものとは認められない。
そして、持続性のあるコンディショニング効果として主張する、6回のシャンプー後の改善は、単に持続性の程度を表したに過ぎないものという他ないし、また、本願明細書にアミノ基として4級アミノ基は含まれない旨の説明がされている(段落【0019】など)が、陽イオン性合成高分子としてポリエチレンイミンを採用したことによって、例えば引用例1の実施例で用いられたポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウムに比べ、格別優れていると解すべきデータは、本願明細書に記載されていないし、意見書、審判請求理由、回答書にも提示されていない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例2の記載を勘案し引用例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成21年4月8日受付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?25に係る発明は、平成20年10月20日受付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?25に記載された事項により特定されるのもと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
(a)少なくとも一のホスファート基を有する少なくとも一のシリコーン化合物と;
(b)3個より多いアミノ基を有する少なくとも一のアミン化合物;
を含有する、少なくとも一のケラチン繊維をコンディショニングし又は持続性のあるコンディショニング効果を付与するための組成物であって、
前記3個より多いアミノ基が同一又は異なっており、
前記アミン化合物は、ポリエチレンイミン化合物と、前記少なくとも一のホスファート基を有する少なくとも一のシリコーン化合物とは異なるアミノシリコーン化合物から選択され、
前記少なくとも一のシリコーン化合物と前記少なくとも一のアミン化合物が少なくとも一のケラチン繊維をコンディショニングするのに有効な合計量で存在している組成物。」

(1)引用例
原査定の拒絶理由に引用される引用例およびその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比、判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明のアミン化合物についての発明特定事項である「ポリエチレンイミン化合物から選択され」に加えて、「前記少なくとも一のホスファート基を有する少なくとも一のシリコーン化合物とは異なるアミノシリコーン化合物から選択され」との選択肢を追加したものである。
そうすると、本願発明のアミン化合物についての発明特定事項である「ポリエチレンイミン化合物と、前記少なくとも一のホスファート基を有する少なくとも一のシリコーン化合物とは異なるアミノシリコーン化合物から選択され」から「ポリエチレンイミン化合物」を選択した本願補正発明が、前記「2.」に記載したとおり、引用例2の記載を勘案し引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例2の記載を勘案し引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用例2の記載を勘案し引用例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-24 
結審通知日 2012-05-01 
審決日 2012-05-14 
出願番号 特願2003-341709(P2003-341709)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福井 美穂  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 関 美祝
菅野 智子
発明の名称 少なくとも一のシリコーンホスファート化合物と少なくとも一のアミン化合物を含有する組成物及び該組成物の使用方法  
代理人 園田 吉隆  
代理人 小林 義教  

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