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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1263980
審判番号 不服2010-24375  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-29 
確定日 2012-10-01 
事件の表示 特願2008-277349「骨髄誘導間葉細胞に特異的なモノクローナル抗体」拒絶査定不服審判事件〔平成21年2月12日出願公開、特開2009-28056〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・原査定の拒絶の理由の概要
本願は,平成3年6月18日に出願した米国特許出願07/716917号に基づくパリ条約による優先権の主張をして,平成4年6月16日を国際出願日とした,特願平5-501124号(以下「原出願」という。)の一部を,平成20年10月1日に新たな出願として分割したものであって,平成21年3月3日付けで,本願は,適法な分割出願でなく出願日が遡及しな旨,さらに,分割が適法なものとなっても,パリ条約第4条C(2)に規定される「最初の出願」を優先権の主張の基礎出願としていないため,優先権の利益が享受できず,新規性の判断の基準日が上記国際出願日となるため,請求項1ないし4に係る発明は,引用例2に記載された発明と同一であり,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができな旨の拒絶理由が通知され,平成21年6月8日に,本願は優先権の利益を享受できる旨を主張する意見書及び手続補正書が提出され,平成22年6月30日付けで,本願は適法な分割出願となったが,優先権の利益が享受できず,拒絶理由が解消しないとして拒絶査定がなされ,平成22年10月29日に拒絶査定不服審判の請求及び特許請求の範囲の請求項4ないし34を削除する手続補正書の提出がなされ,平成23年4月26日付けで前置審査についての審尋が通知され,同年8月22日に回答書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は,平成22年10月29日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。
「【請求項1】
1個以上の結合組織型の細胞に分化できる単離されたヒト間葉幹細胞の集団であって,前記ヒト間葉幹細胞が,ATCCアクセッション番号HB10743であるハイブリドーマ細胞系SH2から産生される抗体に結合するという特性を有し,且つ 前記ヒト間葉幹細胞が,ATCCアクセッション番号HB10744であるハイブリドーマ細胞系SH3から産生される抗体およびATCCアクセッション番号HB10745であるハイブリドーマ細胞系SH4から産生される抗体から本質的になる群から選択される抗体に結合するという特性を有する,前記ヒト間葉幹細胞の集団。」(以下,「本願発明」という。)

3 本願発明に包含される発明
(1)本願明細書の記載事項(下線は当審で付した。)
ア 骨髄誘導間葉細胞について
(ア-1)
「 実施例1
骨髄誘導間葉細胞の分離,精製および培養拡張
大腿頭網状骨片が腰および膝置換手術の期間に変性関節炎の患者から入手された。加えて骨髄もまた,正常なドナーおよび将来の骨髄移植のためにとり入れられた骨髄を持つ腫瘍の患者から腸骨吸引液で入手された。腫瘍患者のすべては,基質細胞に無関係の悪性腫瘍を持っており,基質細胞は正常な核型を発現した。
細胞培養のための骨髄の調製
A.網状骨骨髄の栓塞
網状骨骨髄の栓塞(0.2-1.2ml)は無菌チューブに移され,それに10%の胎仔ウシ血清(JRサイエンティフィック社,カリフォルニア州ウッドランド)の選択されたバッチを持つ,25mlBGJb培地(ジブコ社,ニューヨーク州グランドアイランド)が加えられた。チューブは骨髄が分散したように渦状に撹拌され,次いで細胞と骨片をペレット化するために5分間1,000回転/分で回転された。懸濁された細胞は16ゲージ針に適した10ml注射器で集められ,別のチューブに移された。骨片は5mlに再構築された。完全培地および骨髄細胞は前に採集された。骨髄細胞の採集はもとのチューブに残っているものが,黄白色の網状骨片のペレットだけである時に完全に行われたと見做された。骨髄細胞は18ゲージおよび20ゲージの針に適した注射器を利用し,それを通して単細胞懸濁液に分離された。細胞は5分間1,000回転/分で回転され,脂肪層および上澄みが除去された。細胞は完全培地で再構築され,血球計で計数され(赤血球は計数の前に4%の酢酸で溶解され),また100mm皿に50-100×10^(6)の有核細胞/皿の割合でプレートされた。
B.吸引液骨髄
吸引液骨髄(5-10ml)は無菌チューブに移され,それに完全培地が加えられた。細胞をペレット化するために,チューブは5分間1,000回転/分で回転された。上澄み液と脂肪層は除去され,細胞ペレット(2.5-5.0ml)は70%のパーコル(シグマ社,ミズーリ州セントルイス)勾配にのせ,15分間460回転/分で回転された。この勾配はピペットを使って3個の分画に分離された。勾配の上部25%(低密度細胞・血小板分画),プール密度=1.03g/ml;勾配の中央部50%(高密度細胞の単核細胞),プール密度1.10g/ml;および勾配の底部25%(赤血球),プール密度1.14g/mlであった。予備実験においてこれら3個のプールそれぞれは別個に完全培地,100mm皿にプレートされた。付着細胞は低密度細胞に局地化するよう観察された,続くすべての実験のための付着細胞培養を生産するために,低密度細胞のみがプレートされた。
骨髄基質細胞の培養および継代
大腿頭網状骨あるいは腸骨吸引液のいずれかより得た骨髄細胞は,完全培地(すなわちBGIb培地に10%の胎仔ウシ血清を加えたもの)で37℃で95%空気および5%炭酸ガスを含む濕分含有大気中で培養された。予備実験において,細胞はもとの培地の変更の前1日,3日あるいは7日間で付着が許された。1日後には細胞付着の増加は見られなかった。従って,1日間が時間の標準の長さとして選ばれ,この時,非付着細胞は培養から除去され,もとの培地は7mlの新鮮な完全培地に取替えられた。4日毎に順次培地の変更が行われた。培養皿が合流になると,細胞は0.25%トリプシンおよび0.1mMEDTA(ジブコ社)で10-15分間37℃で離型された。トリプシンの作用は胎仔ウシ血清量が1/2になると停止された。細胞は計数され,1:3に分割され,7mlの完全培地に再プレートされた。細胞のアリクウォットは90%胎仔ウシ血清および10%DMSO(凍結培地)で低温保存された。
セラミックスおよび拡散チャンバーで生体保温するための培養の調製
培養細胞は継代培養に記述されたようにプレートから離された。トリプシンの不活性化の後,細胞は2回10mlの無血清BGJb培地で洗浄され,計数され,次いで無血清BGJbで適当な濃度にまで調節された。全骨髄およびパーコル分画は2回10ml無血清BGJbですすぎ洗いされ,また無血清BGJbで適当な濃度にまで調節された。60%の水酸化リン灰石+40%のβ脱フックン鉱石(ツィンマー社,インディアナ州ワルソー)よりなる多孔セラミックキューブ(3mm^(3))が幾分真空化した条件下で細胞懸濁液に加えられ,外科移植に先立ち90分間浸漬された。
拡散チャンバーは別に記載(アシュトン他,1980)されているように,ルーサイトリングおよびミリポァフィルターで構成されている。細胞は前記の通り調製され,100-140ulの無血清BGJb培地のあるチャンバーに加えられた。チャンバーはセメント滴でシールされ,無血清BGJbに外科移植に先立ち90分間浸漬された。
セラミックスおよび拡散チャンバーの外科移植
セラミックス-ヌードマウス(アメリカ合衆国国立衛生研究所,nu/nu菌株)はエーテルで麻酔され胃が下になるように置かれた。4個の小さな縦方向切開(5mm)が背中に沿って行われた。セラミック-骨髄移植片はポケット内に挿入され出来る限りポケット内の横向きになるように置かれた。切開部はオートクリップス(ベクトンディッキンソン社,ニュージャージー州パーシッパニイ)で閉じられた。各対のポケットは異なった対のセラミック骨髄移植片を受け入れ,4個の異なったサンプル(サンプル当り2個のセラミックキューバ)がマウス内で保温された。
拡散チャンバー-ヌードマウスは麻酔され,背中が下になるように置かれた。切開は皮膚および腹膜により行われ,拡散チャンバーは腹腔に挿入された。腹膜は縫合により,また皮膚はオートクリップスで閉じられた。マウス当り1個だけのチャンバーが挿入され,それは同じマウスに移植されたセラミック-骨髄移植片の4個の対の1個に負荷された細胞と同一の培養細胞を含んでいた。
組織学的評価
ヌードマウスは犠牲とされ,セラミック-骨髄移植片は移植後1-8週間で収穫された(第1表および第3表)。セラミックは10%の緩衝ホルマリン液に固定され,7日間,RDOラピット.ボーン.デカルシファイアー(ダペイジ・キネティクス研究所,イリノイ州プレインフィールド),パラフィンに埋没され,連続切片され(5um厚)マロリイハイデンハインあるいはトルイジンブルーで染色された。
拡散チャンバーは移植後3-10週間で収穫された。チャンバーは10%緩衝ホルマリン液に固定され,パラフィン埋没され,連続切片され,マロリイハイデンハインあるいはトルイジンブルーで染色された。」(本願公開公報第14頁下から9行?第16頁20行)

(ア-2)


」(同第17頁)

イ モノクローナル抗体と骨髄誘導間葉細胞との結合性について
(イ-1)
「VI.クローン化ハイブリドーマのスクリーニング
クローン化ハイブリドーマ(15個のウェル)は骨髄誘導間葉細胞に対するモノクローナル抗体の特異性の度合を同定するため,一連の間葉細胞および非間葉細胞誘導組織に対してスクリーンされた。
3個の最適ハイブリドーマ,すなわちSH2,SH3およびSH4のテスト結果が暗騒音に対する対照に対して評価された。この考えにもとづいて,第4表で(-)は対照に関して可視的な反応を一切示さないことを示し,(±)は対照に関して1%以下の反応性を示し,評価の目的のためには(-)と見做された。また(+)は対照に関しかなりの反応性を示している。」(同第29頁29?37行)

(イ-2)
「 骨髄の調製
全骨髄および低密度パーコル分画は実施例1で前記既述されたように用意され,培養拡張骨髄誘導間葉細胞のために前述の通り凍結切片を持っていた。」(同第29頁下から4?2行)

(イ-3)
「 第4表
最適ハイヒブリドーマおよび関連モノクローナル抗体と各種組織細胞との反応性
モノクローナル抗体
A.予備スクリーン SH2 SH3 SH4
1.IgGエリザ + + +
2.ペレット培養細胞 + + +
3.培養細胞のミクロマス + + + 」
(同第31頁1?8行)

ウ 上記予備スクリーニングの「IgGエリザ」,「ペレット培養細胞」及び「培養細胞のミクロマス」について
(ウ-1)
「A.IgGエリザ-コロニーが最初に見え出した時,培養上澄みはヒツジ抗マウスIgGに対しエリザでスクリーンされた。このスクリーンはIgGアイソタイプを持つ抗体を分泌するハイブリドーマよりなるすべてのコロニーを同定するために組み込まれた。このアイソタイプは主要分泌抗体であり,また精製および使用するのがもっとも易しいので,望ましい,エピトープに対する特異性を含むIgMおよびIgAに対しても望まれてスクリーンされた。」(同第25頁21?26行)

(ウ-2)
「培養拡張ヒト骨髄誘導間葉細胞の凍結部の調整
1.1mMEDTA(ジブコ社)を持つ4mMの0.25%のトリプシンがヒト骨髄誘導間葉細胞の合流培養の100mm培養皿に加えられ,37℃で5分間保温された。
2.トリプリンの酵素活性は2mlのウシ血清の追加で停止された。細胞は1000×gで遠心分離され,上澄み液は廃棄された。ペレット細胞は2回PBSですすぎ洗いされた。
3.2回目のすすぎ洗いの後,上澄み液が除去され,細胞ペレットはOCT組織テック化合物(マイルズ社)を含む小カップに分散され,液体窒素で凍結された。細胞の凍結ブロックは0℃でプラスチック袋に切片にされるまで貯蔵された。
4.組織のブロックは6ミクロン/切片に切断され,ゼラチン被覆スライドの上に置かれた。スライドは必要になるまで0℃でスライド箱に貯蔵された。」(第26頁13?23行)

(ウ-3)「C.ミクロマス培養における生細胞の間接免疫蛍光-培養ヒト骨髄誘導間葉細胞は,組織培養皿の真中に小塊として再プレートされた。この種の培養はミクロマスとして参照される。細胞は通常見える形で残り,拡がりこれら塊の中で複製する。前記AおよびB部分のスクリーンに正の反応性を示したヒブリドーマ上澄み液は,これらミクロマス培養にある細胞と共に保温され,反応経過は下記に示された実験記録に従って間接免疫蛍光で測定された。この検定法で解析された細胞は生細胞であるので,この検定法は,細胞表面にのみ結合され,細胞内エピトープに結合された抗体には負の結果を与える抗体を同定した。」(第26頁下から6行?第27頁1行)

(2)本願発明と上記実施例1に記載された方法で得られた「骨髄誘導間葉細胞」の関係について
本願発明の「1個以上の結合組織型の細胞に分化できる単離されたヒト間葉幹細胞の集団」について,本願発明の「ヒト間葉幹細胞」は,本願明細書段落【0001】に「骨髄誘導間葉細胞(すなわち間葉幹細胞)」と記載されており,明細書全体の記載をみても,両者は同義の用語として使用されるから,実施例1で「骨髄誘導間葉細胞」としているヒト由来細胞は,本願発明の「ヒト間葉幹細胞」と同義とするのが相当である。
そして,実施例1には,骨髄吸引液について,パーコール勾配にのせて遠心分離した低密度細胞のみを,付着細胞を産生するために用いられることが記載されており,実施例1に記載された付着細胞は,パーコール勾配の低密度細胞の分取と付着性に基づいて単離されているといえ,複数個の細胞であることは明らかであるから,本願発明の「単離された細胞集団」に包含される。
さらに,実施例1には,腸骨吸引液より得た骨髄細胞を付着培養細胞として培養したものを,多孔質のセラミックスに浸漬して,マウス体内で保温することで,多孔質の孔内に骨を含むものとなることが,第1表に示されており,付着培養細胞は,骨の細胞に分化できる細胞といえ,本願発明の「1個以上の結合組織型の細胞に分化できる単離されたヒト間葉幹細胞」に包含される。
そうすると,本願発明の「1個以上の結合組織型の細胞に分化できる単離されたヒト間葉幹細胞の集団」に,実施例1で得られた「骨髄誘導間葉細胞」は包含される。

(3)本願発明の「ヒト間葉幹細胞の集団」が,ハイブリドーマ細胞系SH2,SH3及びSH4から得られるモノクローナル抗体に結合する特性について
本願明細書には,実施例1に記載の方法で得られた,低密度パーコール分画の培養拡張骨髄誘導間葉細胞は,第4表に示されるとおり,「ペレット培養細胞」及び「培養細胞のミクロマス」に対して,SH2,SH3及びSH4がいずれも陽性であることが示されており,実施例1で得られた「骨髄誘導間葉細胞」は,本願発明の細胞と同じ,モノクローナル抗体に結合する特性を有しているといえる。

(4)以上のことから,本願明細書の実施例1に記載の方法で得られた「骨髄誘導間葉細胞」(以下,「本願実施例発明」という。)は,本願発明に,その実施の形態として包含されるものである。

4 本願の優先権主張についての検討
(1)パリ条約第4条C(2)及び(4)の規定は,以下のとおりである。
「(2) 優先期間は,最初の出願の日から開始する。」
「(4) (2)にいう最初の出願と同一の対象について同一の同盟国においてされた後の出願は,先の出願が,公衆の閲覧に付されないで,かつ,いかなる権利をも存続させないで,後の出願の日までに取り下げられ,放棄され又は拒絶の処分を受けたこと,及びその先の出願がまだ優先権の主張の基礎とされていないことを条件として,最初の出願とみなされ,その出願の日は,優先期間の初日とされる。この場合において,先の出願は,優先権の主張の基礎とすることができない。」

上記規定によると,パリ条約に基づく優先権の主張を伴う本願が,優先権主張の利益を享受できるためには,本願の優先権主張の基礎出願である米国特許出願は,パリ条約第4条C(2)の「最初の出願」であって,同条C(4)に規定される要件を満たすものでなければならないので,以下で検討する。

(2)本願の優先権主張の基礎出願と,この基礎出願より前に米国において出願され,その後特許を受けた出願
本願は,1991年6月18日に,米国特許商標庁に「ARNOLD I. CAPLAN, CLEVELAND HEIGH, OH;STEPHEN E. HAYNESWORTH, CLEVELAND HEIGH, OH.」が出願した「米国特許出願第07/716,917号」(以下,「優先基礎米国特許出願」という。)に基づく優先権の主張を伴うものである。
一方,前記優先基礎米国特許出願の米国特許商標庁への出願より前の1990年11月16日に,米国特許商標庁に「ARNOLD I. CAPLAN, CLEVELAND HEIGH, OH;STEPHEN E. HAYNESWORTH, CLEVELAND HEIGH, OH.」が出願した「米国特許出願第614,912号」(以下,「先の米国特許出願」という。)は,1993年7月13日に米国特許第5,226,914号として特許を受けた。

以上のことから,「優先基礎米国特許出願」と「先の米国特許出願」は,同一の者が,同一の同盟国にした出願であり,「先の米国特許出願」は,特許を受ける前に取り下げられていないことは明らかである。

(3)「優先基礎米国特許出願」と「先の米国特許出願」の対象の同一性
ア 「優先基礎米国特許出願」(優先権証明書第25頁1行?第28頁18行,第29頁TABLE1,第30頁TABLE2),及び「先の米国特許出願」(出願明細書第16頁下から9行?第21頁3行,第22頁TABLE1,第23頁TABLE2)に記載された「EXAMPLE 1」には,いずれにも同じ,以下の事項が記載されている。
そして,本願明細書の上記「実施例1」の記載事項は,以下の「優先基礎米国特許出願」の「EXAMPLE 1」を日本語に翻訳したものであることは,両者を比較すれば明らかである。

「 EXAMPLE 1
The Isolation. Purification and Cultural Expansion of Marrow- Derived Mesenchymal CellsMarrow Harvest
Marrow in femoral head cancellous bone pieces was obtained from patients with degenerative joint disease during hip or knee joint replacement surgery. In addition, marrow was also obtained by iliac aspirate from normal donors and oncology patients who were having marrow harvested for future bone marrow transplantation. All of the oncology patients had malignancies unrelated to the stromal cells and the stromal cells expressed normal karyotype.
Preparation of Marrow for Cell Culture
A. From Plugs of Cancellous Bone Marrow
Plugs of cancellous bone marrow (0.5-1.5 ml) were transferred to sterile tubes to which 25 ml BGJb medium (GIBCO, Grand Island, NY) with selected batches of 10% fetal bovine serum (JR Scientific, Woodland, CA) (complete medium) was added. The tubes were vortexed to disperse the marrow then spun at 1000×RPM for 5 minutes to pellet cells and bone pieces. The supernatant and fat layer were removed and the marrow and bone were reconstituted in 5 ml complete medium and vortexed to suspend the marrow cells. The suspended cells were collected with a 10 ml syringe fitted with an 16 gauge needle and transferred to separate tubes. Bone pieces were reconstituted in 5 ml. Complete medium and the marrow cells were collected as before. Collection of marrow cells was considered complete when a pellet of yellowish-white cancellous bone pieces was all that remained in the original tube. Marrow cells were separated into a single cell suspension by passing them through syringes filled with 18 and 20 gauge needles. Cells were spun at 1000×RPM for 5 minutes after which the fat layer and supernatant were removed. Cells were reconstituted in complete medium, counted with a hemocytometer (red blood cells were lyzed prior to counting with 4% acetic acid) , and plated in 100 mm dishes at 50-100×10^(6) nucleated cells/dish.
B. From Aspirate Bone Marrow
Aspirate marrow (5-10 ml) was transferred to sterile tubes to which 20 ml complete medium was added. The tubes were spun at 1000×RPM for 5 minutes to pellet the cells. The supernatant and fat layer were removed and the cell pellets (2.5-5.0 ml) were loaded onto 70% Percoll (Sigma, St. Louis, MO) gradients and spun at 460×g for 15 minutes. The gradients were separated into three fractions with a pipet: top 25% of the gradient (low density cells- platelet fraction), pooled density = 1.03 g/ml; middle 50% of the gradient (high density cells-mononucleated cells) , pooled density = 1.10 g/ml; and, bottom 25% of the gradient (red blood cells), pooled density = 1.14 g/ml. In preliminary experiments each of these three pools were plated separately in complete medium in 100 mm dishes. Adherent cells were observed to be localized to the low density cells. To produce adherent cell cultures for all subsequent experiments only the low density cells were plated.
Culturing and Passaging of Marrow Stromal Cells
Marrow cells from either the femoral head cancellous bone or the iliac aspirate were cultured in complete medium (i.e. BGIb medium with 10% fetal bovine serum) at 37°C in humidified atmosphere containing 95% air and 5% C0_(2). In preliminary experiments the cells were allowed to attach for 1, 3, or 7 days prior to the initial medium change. No increase in cell attachment was observed after day 1, therefore one day was chosen as the standard length of time at which nonadherent cells were removed from the cultures by replacing the original medium with 7 ml of fresh complete medium. Subsequent medium changes were performed every 4 days. When culture dishes became confluent, the cells were detached with 0.25% trypsin with 0.1 mM EDTA (GIBCO) for 10-15 minutes at 37 °C. The action of trypsin was stopped with 1/2 volume fetal bovine serum. The cells were counted, split 1:3, and replated in 7 ml complete medium. Aliquots of cells were cryopreserved in 90% fetal bovine serum with 10% DMSO (freezing medium) .
Preparation of Cultures for In Vivo Incubations in Ceramics and Diffusion Chambers
Cultured cells were detached from plates as described for subculturing. After inactivating the trypsin, the cells were washed twice with 10 ml serumless BGJb medium, counted, and then adjusted to the appropriate concentration with serumless BGJb. Whole marrow and Percoll fractions were rinsed twice with 10 ml serumless BGJ_(b) and adjusted to the appropriate concentration with serumless BGJb. Porous ceramic cubes (3 mm^(3)) composed of 60% hydroxyapatite + 40% β-tricalcium phosphate (Zimmer Corporation, Warsaw, Indiana) were added to the cell suspensions under slight vacuum and soaked for up to 90 minutes prior to surgical implantation.
Diffusion chambers were constructed of lucite rings and Millipore filters as described elsewhere (Ashton, et al., 1980). Cells were prepared as described above and added to the chambers in 100-140 ul of serumless BGJb medium. Chambers were sealed with a drop of cement and immersed in serumless BGJ_(b) for up to 90 minutes prior to surgical implantation.
Surgical Implantation of Ceramics and Diffusion Chambers
Ceramics - Nude mice (National Institute of Health, nu/nu strain) were anesthetized with ether and placed on their stomachs.Four small longitudinal incisions (5 mm) were made along the backs.Ceramic-marrow grafts were inserted into the pockets and positioned as lateral in the pockets as possible. Incisions were closed withAutoclips (Becton Dickenson and Company, Parsippany, NJ) . Each pair of pockets received a different pair of ceramic-marrow graft so that four different samples (2 ceramic cubes per sample) were incubated per mouse.
Diffusion Chambers - Nude mice were anesthetized with ether and placed on their backs. Incisions were made through the skin and peritoneum, and diffusion chambers were inserted into the peritoneal cavity. The peritonea were closed with sutures and the skin, with Autoclips. Only one chamber was inserted per mouse and it contained cultured cells identical to cells loaded in one of the four pairs of the ceramic-marrow grafts implanted into the same mouse.
Histological Evaluation
Nude mice were sacrificed and the ceramic-marrow grafts harvested 1-8 weeks after implantation (Table 1 and Table 3).Ceramic were fixed in 10% buffered formalin, demineralized for 7 hours in RDO Rapid Bone Decalcifier (Dupage Kinetics Laboratories,Inc. , Plainfield, Illinois) , embedded in paraffin, serial sectioned(5 urn thick) , and stained with Mallory Heidenhain or Toluidine blue. 」
「TABLE 1 (添付イメージ参照)」
「TABLE 2 (添付イメージ参照)」

イ 上記「EXAMPLE 1」に記載された方法で得られた,「Marrow-Derived Mesenchymal Cells」,つまり,「本願実施例発明」である「骨髄誘導間葉細胞」については,「優先基礎米国出願」及び「先の米国特許出願」は,同じ当該細胞を記載している。
そして,「先の米国特許出願」には,当該細胞のモノクローナル抗体との結合性に関する記載はないが,本願発明及び「優先基礎米国出願」に記載された当該細胞のモノクローナル抗体との結合性は,当該細胞がもともと有している性質を記載したものであり,同じ方法で得られた細胞は,同じ物とするのが相当であり,抗体との結合性の記載をもって,物として区別できるとすることができない。

ウ 以上のことから,「優先基礎米国出願」及び「先の米国特許出願」は,「本願実施例発明」を実施の形態とする本願発明について,対象を同一にするといえる。

(4)本願の新規性の判断の基準日
以上のとおり,「優先基礎米国出願」は,「先の米国特許出願」と同一の対象について,同一の者が同一の同盟国にしたものであり,「先の米国特許出願」は取り下げられることなく特許を付与されているから,「優先基礎米国出願」は,パリ条約第4条C(4)の最初の出願とみなされるための要件を満たさず,同第4条C(2)の「最初の出願」ではないため,本願は,「優先基礎米国出願」を優先権主張の基礎とするパリ条約に基づく優先権の利益を享受することはできない。
そして,本願は,適法な分割出願であるから,新規性の判断の基準日は,原出願の国際出願日である平成4年6月16日である。

6 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の新規性の判断の基準である,原出願の国際出願日1992年6月16日前である,1992年1月-2月に頒布された刊行物1(原査定の引用文献2)には,以下の事項が記載されている。

刊行物1:Bone,Vol.13,No.1,1992Jan-Feb,
P.81-88
(1a)「Marrow harvest
Marrow from femoral head cancellous bone pieces was obtained from patients with degenerative joint disease during hip or knee joint replacement surgery. Marrow was also obtained by iliac aspiration from normal donors and oncology patients, from tissue harvested for future bone marrow transplantation. The marrow donors included both males and females ranging in age from 34 to 67 years (Table I). All of the oncology patients had malignancies unrelated to the stromal cells, and the stromal cells exhibited normal karyotypes (data not shown).」(第82頁左欄8?17行)
<当審訳>
「骨髄の収集
大腿頭網状骨片由来の骨髄が,腰および膝の関節置換手術の間に,関節変性疾患の患者から得られた。骨髄はまた正常なドナーおよび腫瘍患者から,将来の骨髄移植のために集められている組織から,腸骨吸引で得られた。骨髄の供与者は,34?67歳の男女を含んでいた(表1)。腫瘍患者の全ては,間質細胞に無関係の悪性腫瘍を持っており,間質細胞は正常な核型を発現した(データは示されていない)。」

(1b)「Preparation of marrow for cell culture
Plugs of femoral head cancellous bone marrow (0.5-1.5 ml) were transferred to sterile tubes to which were added 25 ml BGJ_(b) medium (GLBCO, Grand Island, New York) with 10% fetal bovine serum from selected lots (JR Scientific, Woodland, California) (complete medium).
・・・
Aspirated iliac crest marrow (5-10 ml) was transferred to sterile tubes, to which 20 ml complete medium was added. The tubes were spun at 1000 rpm for 5 min to pellet the cells, the supernatants and fat layers were removed, and the cell pellets (2.5-5.0 ml) were resuspended and loaded onto 70% Percoll (Sigma, St. Louis, Missouri) gradients. These gradients were centrifuged at 460×g for 15min and harvested into three fraction with a pipet :the top 25% of the gradients(low density cell), pooled density=1.03g per ml ;the middle 50% of the gradients(high density cells), pooled density=1.10g per ml ;and the bottom 25% of the gradients(red blood cell), pooled density=1.14g per ml. In preliminary experiments, each of three pools was plated separatry in complete medium in 100 mm dishes. Adherent marrow-derived mesenchymal cells were observed to be localized to the low-density fraction. To produce adherent cell cultures for all subsequent experiments, only the cells in the low density fraction were ptated. 」(第82頁左欄18行?右欄22行)
<当審訳>
「細胞培養のための骨髄の調製
大腿頭網状骨髄の栓塞(0.5-1.5ml)は,25mlの,選択されたロットの10%胎仔ウシ血清(略)を有するBGJ_(b)培地(GLBCO, Grand Island, New York)が加えられた滅菌チューブに移送された。・・・
吸引された腸骨稜骨髄(5-10ml)は滅菌チューブに移され,そこに20mlの完全培地が添加された。細胞をペレット化するために,チューブは5分間1,000回転/分で回転され,上澄み液と脂肪層は除去され,細胞ペレット(2.5-5.0ml)は70%のパーコル(シグマ社,ミズリー州セントルイス)勾配にのせられた。15分間460×gで回転され,これらの勾配はピペットを使って3個の分画に採取された:勾配の上部25%(低密度細胞・血小板分画),プール密度=1.03g/ml;勾配の中央部50%(高密度細胞の単核細胞),プール密度1.10g/ml;および勾配の底部25%(赤血球),プール密度1.14g/mlであった。予備実験においてこれら3個のプールそれぞれは別個に100mmの培養皿中の完全培地にプレートされた。付着した骨髄誘導間葉細胞(Marrow- Derived Mesenchymal Cells)は,低密度細胞に局在することが観察された。続くすべての実験のための付着細胞培養を生産するために,低密度細胞のみがプレートされた。」

(1c)「Culturing and passaging of marrow-derived mesenchymal cells
Marrow-derived mesenchymal cells from femoral head cancellous bone or iliac aspirates were cultured in complete medium at 37°C in humidified atmosphere containing 95% air and 5% CO_(2). In prelimimary experiments,the cells were allowed to attach for one, or seven days prior to the initial medium change. No significant increase in cell attachment was observed after day 3;therefore, three days was chosen as the standard length of time when nonadherent cell were removed from the cultures by replacing the original medium with 7 ml of fresh complete medium. Subsequent medium changes were performed every four days. When culture dishes became near confluent, the cells were detached with 0.25% trypsin with 0.1 mM EDTA (GIBCO) for 5 min at 37°C. The action of trypsin was stopped by adding 1/2 volume of fetal bovin serum. The cells were counted, split 1:3, and replated in 7 ml complete medium. Aliquots of cells were cryopreserved in 90% fetal bovine serum with 10% dimethyl sulfoxide (freezing medium).」(第82頁右欄23?40行)
<当審訳>
「骨髄誘導間葉細胞(Marrow- Derived Mesenchymal Cells)の培養と継代
大腿頭網状骨または腸骨由来の骨髄由来間葉細胞は,95%の大気と5%の二酸化炭素を含む湿分含有大気中,完全培地で37℃培養された。予備実験において,細胞は最初の培地交換の前1日,3日あるいは7日間付着させた。3日以後には細胞付着の増加は見られなかった。従って,3日間が時間の標準の長さとして選ばれ,この時,非付着細胞は培養物から除去され,最初の培地は7mlの新鮮な完全培地に取替えられた。4日毎に順次培地交換が行われた。培養皿がほぼ密集状態になると,細胞は0.25%トリプシンおよび0.1mMEDTA(ジブコ社)で10-15分間37℃で分離された。トリプシンの作用は胎仔ウシ血清1/2量を加えることで停止された。細胞は計数され,1:3に分割され,7mlの完全培地に再プレートされた。細胞のアリクウォットは90%胎仔ウシ血清および10%DMSO(凍結培地)で低温保存された。」

(1d)「Preparation of cultured, marrow-derived mesenchymal cells for in vivo incubations in ceramics or diffusion chambers
Cultured, marrow-derived mesenchymal cells were detached from plates as described for subculturing. After inactivating the trypsin with fetal bovine serum, the cells were washed twice with 10 ml of serumless BGJ_(b) medium, counted, and then adjusted to the appropriate concentration with serumless BGJ_(b). 」(第83頁左欄1?7行)
<当審訳>
「セラミックスまたは拡散チャンバーでのインビボインキュベーションのための,培養された骨髄誘導間葉細胞の調製
培養骨髄誘導間葉細胞は継代培養のために記述されたようにプレートから分離された。トリプシンを胎仔ウシ血清で不活性化した後,細胞は10mlの血清のないBGJ_(b)培地で二回洗浄され,計測され,それから無血清BGJ_(b)で適切な濃度に調製された。」

(1e)「

」(第82頁TableI.)
<当審訳>
「表I.ヌードマウスでインキュベーションした後の,培養ヒト骨髄誘導間葉細胞とセラミックの複合移植」

(1f)「In vivo incubations of cultured, marrow-derived, mesenchymal cells in ceramics and diffusion chambers
Bone was observed in the pores of most of the grafts of ceramics filled with cultured, marrow-derived, mesenchymal cells from femoral head bone marrow. 」(第85頁右欄3?7行)
<当審訳>
「セラミックスおよび拡散チャンバーにおける培養骨髄誘導間葉細胞のインビボインキュベーション
大腿頭骨髄由来の培養骨髄誘導間葉細胞で満たされたセラミックスの移植物の殆どの孔において,骨が観測された。」

7 対比・判断
刊行物1の上記摘記部分には,本願明細書の実施例1とほぼ同じ記述があり,内容的には同じ事項が記載されているから,モノクローナル抗体との結合特性の確認の有無以外は,本願実施例発明と同じ「骨髄誘導間葉細胞」が記載されていると認められる。
そこで,「本願実施例発明」と,上記刊行物1に記載された発明を対比すると,本願発明の「ヒト間葉幹細胞」が本願実施例発明の「骨髄誘導間葉細胞」と同義であることは上記「3(2)」で記載したとおりであり,本願実施例発明が「前記ヒト間葉幹細胞が,ATCCアクセッション番号HB10743であるハイブリドーマ細胞系SH2から産生される抗体に結合するという特性を有し,且つ 前記ヒト間葉幹細胞が,ATCCアクセッション番号HB10744であるハイブリドーマ細胞系SH3から産生される抗体およびATCCアクセッション番号HB10745であるハイブリドーマ細胞系SH4から産生される抗体から本質的になる群から選択される抗体に結合するという特性を有する」のに対して,刊行物1に記載された発明は,上記のような結合特性を確認していない点で,一応相違する。
しかしながら,上記「4(3)イ」でも記載したように,細胞のモノクローナル抗体との結合性は,当該細胞がもともと有している性質を記載したものであり,同じ方法で得られた細胞は,同じ物とするのが相当であり,抗体との結合性の記載をもって,物として区別できるとすることができないから,本願の実施例1に記載の手法と同様の手法により得られた刊行物1に記載のヒト骨髄由来間葉細胞も当然に当該性質を有するものであり,細胞が異なるものであるとすることはできない。

したがって,本願実施例発明は,刊行物1に記載された発明であるから,本願実施例発明を包含する本願発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものである。

8 むすび
以上のとおり,本願請求項1に係る発明は,刊行物1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって,その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2012-05-10 
結審通知日 2012-05-11 
審決日 2012-05-22 
出願番号 特願2008-277349(P2008-277349)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 匡子  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 郡山 順
菅野 智子
発明の名称 骨髄誘導間葉細胞に特異的なモノクローナル抗体  
代理人 中濱 明子  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小林 泰  
代理人 社本 一夫  

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