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審決分類 審判 一部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A63H
審判 一部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  A63H
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63H
審判 一部無効 2項進歩性  A63H
審判 一部無効 1項2号公然実施  A63H
審判 一部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  A63H
管理番号 1264536
審判番号 無効2010-800028  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-02-19 
確定日 2012-09-18 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3761523号「ソフトビニル製大型可動人形の骨格構造および該骨格構造を有するソフトビニル製大型可動人形」の特許無効審判事件についてされた平成22年10月27日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成22年(行ケ)第10384号平成23年2月23日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 平成23年3月22日付け訂正請求書による訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件無効審判事件(以下「本件」という。)は、平成15年(2003年)1月22日に出願され、平成18年(2006年)1月20日に、その請求項1ないし10に係る特許(以下それぞれを「本件特許1」ないし「本件特許10」という。)について登録された特許第3761523号に係り、平成22年(2010年)2月19日に、請求人株式会社ボークス(以下単に「請求人」という。)が、本件特許1を無効とする、審判費用は被請求人株式会社オビツ製作所(以下「被請求人」という。)の負担とする、との審決を求めて請求したものであって、請求人、被請求人の提出した書類ならびに本件審理に係る手続は以下の通りである。
(1)平成22年 2月19日(提出日)
無効審判請求書(以下「審判請求書」という。)の提出。
(2) 同年 5月10日(提出日)
審判事件答弁書(以下「答弁書1」という。)の提出
(3) 同年 5月10日(提出日)
訂正請求書(以下「訂正請求書1」という。)の提出
(4) 同年 6月11日(提出日)
審判事件弁駁書(以下「弁駁書1」という。)の提出
(なお、上記弁駁書(1)は平成22年7月9日付け手続補正書により、補正がなされている。)
(5) 同年 7月30日(提出日)
審判事件答弁書(以下「答弁書2」という。)の提出
(6) 同年 8月24日(提出日)
口頭審理陳述要領書(被請求人側)(以下「陳述要領書1」と
いう。)の提出
(7) 同年 8月24日(提出日)
口頭審理陳述要領書(請求人側)(以下「陳述要領書2」と
いう。)の提出
(8) 同年 8月27日(提出日)
上申書(請求人側)(以下「上申書1」という。)の提出
(なお、上記上申書1は平成22年9月24日付け手続補正書により、補正がなされている。)
(9) 同年 9月 3日(提出日)
上申書(被請求人側)(以下「上申書2」という。)の提出
(10) 同年 9月 7日
第1回口頭審理
(11) 同年 9月24日(提出日)
上申書(請求人側)(以下「上申書3」という。)の提出
(12) 同年 9月27日(提出日)
上申書(被請求人側)(以下「上申書4」という。)の提出
(13) 同年10月13日(起案日)
審理終結通知
(14) 同年10月27日(起案日)(送達日は同年11月8日)
審決(以下「第1次審決」という。)
(15) 同年12月 8日
審決取消請求の訴えの提起
(平成22年(行ケ)第10384号)
(16)平成23年 1月12日
訂正審判の請求(訂正2011-390002号)
(17) 同年 2月23日
審決取消の判決
(18) 同年 3月 7日(起案日)
通知
(19) 同年 3月22日(提出日)
訂正請求書(以下「訂正請求書2」という。)の提出
(20) 同年 5月13日(提出日)
審判事件弁駁書(以下「弁駁書2」という。)の提出
(21) 同年 6月23日(提出日)
審判事件答弁書(以下「答弁書3」という。)の提出
(22) 同年 7月15日(提出日)
上申書(被請求人側)(以下「上申書5」という。)の提出
(23) 同年 8月15日(起案日)
審理終結通知

2.訂正請求書2による訂正について
(1)本件特許1ないし3及び段落【0005】に係る訂正請求書1による訂正の部分確定について
本件特許2、3は、無効審判が請求されていない請求項に係る特許であって、審決取消訴訟の対象とすることができないものであるから、本件特許1を引用して記載され、平成22年10月27日付け審決によって、本件特許1に係る訂正を含む訂正請求書1による訂正(以下「訂正請求1」という。)が容認された結果、本件特許2,3については、前記容認された訂正請求1の後の請求項1に係る発明を引用して記載された発明として、その訂正は確定した。
一方、本件特許1に係る訂正は、平成22年10月27日付け審決が平成23年2月23日付け判決によって取り消された結果、その訂正請求1に係る訂正は未確定であり、特許法第134条の3第4項の規定により、訂正請求2によって訂正請求1は上記の確定部分を除き、取り下げられたものと見なされる。
したがって、訂正請求書2による訂正(以下「訂正請求2」という。)に際して基準とすべき、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)のうち、特許請求の範囲の請求項1ないし3(以下「訂正前請求項1」などという。)は以下の通りである。
「【請求項1】
ソフトビニル製の外皮と、該外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造であって、
左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、
前記胴部骨格は、腰部骨格と連結される腹骨格部と、該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成されており、
腹骨格部は、その一端側に腰部骨格連結部を備えるとともに、他端側に胸部骨格連結部を備え、
前記腰部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において揺動可能に連結されるとともに、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え、
前記胸部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において揺動可能に連結されるとともに、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備えたことを特徴とするソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。
【請求項2】
分割して形成され、それぞれが着脱可能なソフトビニル製の外皮と、該それぞれの外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造であって、
前記骨格構造は、左右の脚部骨格と、
該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、
該腰部骨格に連結される胴部骨格と、
該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、
前記胴部骨格は、
腰部骨格と連結される腹骨格部と、
該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成されており、
前記腹骨格部は、
その一端側に腰部骨格連結部を備えるとともに、
他端側に胸部骨格連結部を備え、
前記腰部骨格連結部は、
腹骨格部との連結部において前後・左右方向に揺動可能に連結されるとともに、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え、
前記胸部骨格連結部は、
腹骨格部との連結部において前後・左右方向に揺動可能に連結されるとともに、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え、
前記一連の人形骨格群を構成する前記各骨格が着脱可能であることを特徴とするソフトビニル製大型可動人形の骨格構造において、
胸骨格部には、首部骨格が連結され、
該首部骨格は、人形用の頭部を嵌着する頭部外皮嵌着部を備え、
該頭部外皮嵌着部は、上下方向に揺動自在に備えられていることを特徴とする、
ソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。
【請求項3】
分割して形成され、それぞれが着脱可能なソフトビニル製の外皮と、該それぞれの外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造であって、
前記骨格構造は、左右の脚部骨格と、
該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、
該腰部骨格に連結される胴部骨格と、
該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、
前記胴部骨格は、
腰部骨格と連結される腹骨格部と、
該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成されており、
前記腹骨格部は、
その一端側に腰部骨格連結部を備えるとともに、
他端側に胸部骨格連結部を備え、
前記腰部骨格連結部は、
腹骨格部との連結部において前後・左右方向に揺動可能に連結されるとともに、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え、
前記胸部骨格連結部は、
腹骨格部との連結部において前後・左右方向に揺動可能に連結されるとともに、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え、
前記一連の人形骨格群を構成する前記各骨格が着脱可能であることを特徴とするソフトビニル製大型可動人形の骨格構造において、
首部骨格は、人形用胴体の首部外皮挿着部と、人形用の頭部を嵌着する頭部外皮嵌着部とを備え、
前記首部外皮挿着部が胸骨格部に連結され、
前記頭部外皮嵌着部は、前記首部外皮挿着部とスプリングを介して上下方向に揺動自在に連結されていることを特徴とする、
ソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。」
また、訂正請求2に際して基準とすべき明細書の段落【0005】については、以下の通りである。
「【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために本発明がなした技術的手段は、ソフトビニル製の外皮と、該外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造であって、左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、前記胴部骨格は、腰部骨格と連結される腹骨格部と、該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成されており、腹骨格部は、その一端側に腰部骨格連結部を備えるとともに、他端側に胸部骨格連結部を備え、前記腰部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において揺動可能に連結されるとともに、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え、前記胸部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において揺動可能に連結されるとともに、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備えたことを特徴とするソフトビニル製大型可動人形の骨格構造としたことである。
また、前記胸骨格部には、首部骨格が連結され、該首部骨格は、人形用の頭部を嵌着する頭部外皮嵌着部を備え、該頭部外皮嵌着部は、上下方向に揺動自在に備えられているものとすることができる。
また、前記首部骨格は、人形用胴体の首部外皮挿着部と、人形用の頭部を嵌着する頭部外皮嵌着部とを備え、前記首部外皮挿着部が胸骨格部に連結され、前記頭部外皮嵌着部は、前記首部外皮挿着部とスプリングを介して上下方向に揺動自在に連結されているものとすることができる。
さらに、ソフトビニル製の外皮と、該外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造であって、左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、左右の脚部骨格は、ソフトビニル製の足部外皮の開口縁が嵌着される足部外皮嵌着部と、ソフトビニル製の下脚外皮の下端開口縁が嵌着される下脚外皮下端嵌着部とを有し、該両者の連結部にて回動可能な構造を有する足首部と、前記下脚外皮の上端開口縁が嵌着される下脚外皮上端嵌着部と、ソフトビニル製の上脚外皮の下端開口縁が嵌着される上脚外皮下端嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する膝部と、上記足首部の下脚外皮下端嵌着部と膝部の下脚外皮上端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される脛用補強連結杆と、前記上脚外皮の上端開口縁が嵌着される上脚外皮上端嵌着部と、腰部骨格の脚付け根部側連結部を連結する腰部骨格連結部とを有する脚付け根部と、該脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部と膝部の上脚外皮下端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される太腿用補強連結杆とで構成され、腰部骨格は、左右の脚付け根部の腰部骨格連結部と回動可能に連結する脚付け根部側連結部と、胴部骨格の下端側と連結する胴部下端骨格連結部とを備えて構成され、胴部骨格は、腰部骨格の上端側と連結する腰部骨格連結部と、左右の腕部骨格と夫々連結する腕部骨格連結部とを備えて構成され、左右の腕部骨格は、前記胴部骨格の腕部骨格連結部と連結される胴部上端骨格連結部と、ソフトビニル製の上腕外皮の上端開口縁が嵌着される上腕外皮上端嵌着部とを備えてなる肩部と、前記上腕外皮の下端開口縁が嵌着される上腕外皮下端嵌着部と、ソフトビニル製の下腕外皮の上端開口縁が嵌着される下腕外皮上端嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する肘部と、前記下腕外皮の下端開口縁が嵌着される下腕外皮下端嵌着部と、ソフトビニル製の手部外皮の開口縁が嵌着される手部外皮嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する手首部とを備えて構成されていることを特徴とするソフトビニル製大型可動人形の骨格構造としたことである。」

(2)訂正請求2の訂正事項
前記のとおり、本件特許無効審判においては、訂正請求2(平成23年3月22日付け)がされているところ、訂正請求2は下記の訂正事項1及び訂正事項2をその訂正の内容としている。
ア 訂正事項1
特許明細書等の特許請求の範囲の請求項1の記載を下記のとおり訂正する(当審注:下線は訂正箇所を示す。(以下、訂正請求2による訂正後の特許請求の範囲の各請求項を「訂正請求項1」などといい、各訂正請求項に記載された事項により特定される発明を「訂正発明1」などという。)
<訂正請求項1>
分割して形成され、それぞれが着脱可能なソフトビニル製の外皮と、該それぞれの外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造であって、
前記骨格構造は、
左右それぞれの足底部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有する左右の脚部骨格と、
外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、
外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、
左右それぞれの手首部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、
前記胴部骨格は、
腰部骨格と連結される腹骨格部と、
該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成され、前記腹骨格部と前記胸骨格部は、双方の間で分割されたそれぞれの外皮で覆われており、
前記腹骨格部は、
前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される腰部骨格連結部を一端側に備え、かつ前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される胸部骨格連結部を他端側に備えており、
前記腰部骨格連結部は、
分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え、
前記胸部骨格連結部は、
分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え、
前記腰部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第一嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第二嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記腕部骨格は肩部の骨格を有し、少なくとも前記肩部の骨格に、腕部骨格を覆う外皮の一端が嵌着されており、
前記一連の人形骨格群を構成する前記各骨格が着脱可能であることを特徴とするソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。

以下、訂正事項1を区分し、下記のとおり「訂正事項1-ア」ないし「訂正事項1-サ」という。
<訂正事項1-ア>
「ソフトビニル製の外皮と、該外皮とは別体で」を「分割して形成され、それぞれが着脱可能なソフトビニル製の外皮と、該それぞれの外皮とは別体で」とすること

<訂正事項1-イ>
「骨格構造であって、」の直後に「前記骨格構造は、」を挿入すること

<訂正事項1-ウ>
「左右の脚部骨格と、」を「左右それぞれの足底部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有する左右の脚部骨格と、」とすること

<訂正事項1-エ>
「該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、」を「外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、」とすること

<訂正事項1-オ>
「該腰部骨格に連結される胴部骨格と、」を「外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、」とすること

<訂正事項1-カ>
「該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で」を「左右それぞれの手首部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で」とすること

<訂正事項1-キ>
「腰部骨格と連結される腹骨格部と、該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成されており、」を「腰部骨格と連結される腹骨格部と、該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成され、前記腹骨格部と前記胸骨格部は、双方の間で分割されたそれぞれの外皮で覆われており、」とすること

<訂正事項1-ク>
「腹骨格部は、その一端側に腰部骨格連結部を備えるとともに、他端側に胸部骨格連結部を備え、」を「前記腹骨格部は、前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される腰部骨格連結部を一端側に備え、かつ前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される胸部骨格連結部を他端側に備えており、」とすること

<訂正事項1-ケ>
「前記腰部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において揺動可能に連結されるとともに、」を、「前記腰部骨格連結部は、分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、」とすること

<訂正事項1-コ>
「前記胸部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において揺動可能に連結されるとともに、」を、「前記胸部骨格連結部は、分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、」とすること

<訂正事項1-サ>
「第二嵌入杆を備えたことを特徴とする」を
「第二嵌入杆を備え、
前記腰部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第一嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第二嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記腕部骨格は肩部の骨格を有し、少なくとも前記肩部の骨格に、腕部骨格を覆う外皮の一端が嵌着されており、前記一連の人形骨格群を構成する前記各骨格が着脱可能であることを特徴とする」とすること

イ 訂正事項2
特許明細書等の明細書の段落【0005】の記載を、下記のとおり訂正する(当審注:下線は訂正箇所を示す。)。
「【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために本発明がなした技術的手段は、分割して形成され、それぞれが着脱可能なソフトビニル製の外皮と、該それぞれの外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造であって、
前記骨格構造は、
左右それぞれの足底部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有する左右の脚部骨格と、
外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、
外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、
左右それぞれの手首部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、
前記胴部骨格は、
腰部骨格と連結される腹骨格部と、
該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成され、前記腹骨格部と前記胸骨格部は、双方の間で分割されたそれぞれの外皮で覆われており、
前記腹骨格部は、
前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される腰部骨格連結部を一端側に備え、かつ前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される胸部骨格連結部を他端側に備えており、
前記腰部骨格連結部は、
分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え、
前記胸部骨格連結部は、
分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え、
前記腰部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第一嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第二嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記腕部骨格は肩部の骨格を有し、少なくとも前記肩部の骨格に、腕部骨格を覆う外皮の一端が嵌着されており、
前記一連の人形骨格群を構成する前記各骨格が着脱可能であることを特徴とするソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。としたことである。
また、前記胸骨格部には、首部骨格が連結され、該首部骨格は、人形用の頭部を嵌着する頭部外皮嵌着部を備え、該頭部外皮嵌着部は、上下方向に揺動自在に備えられているものとすることができる。
また、前記首部骨格は、人形用胴体の首部外皮挿着部と、人形用の頭部を嵌着する頭部外皮嵌着部とを備え、前記首部外皮挿着部が胸骨格部に連結され、前記頭部外皮嵌着部は、前記首部外皮挿着部とスプリングを介して上下方向に揺動自在に連結されているものとすることができる。さらに、ソフトビニル製の外皮と、該外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造であって、左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、左右の脚部骨格は、ソフトビニル製の足部外皮の開口縁が嵌着される足部外皮嵌着部と、ソフトビニル製の下脚外皮の下端開口縁が嵌着される下脚外皮下端嵌着部とを有し、該両者の連結部にて回動可能な構造を有する足首部と、前記下脚外皮の上端開口縁が嵌着される下脚外皮上端嵌着部と、ソフトビニル製の上脚外皮の下端開口縁が嵌着される上脚外皮下端嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する膝部と、上記足首部の下脚外皮下端嵌着部と膝部の下脚外皮上端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される脛用補強連結杆と、前記上脚外皮の上端開口縁が嵌着される上脚外皮上端嵌着部と、腰部骨格の脚付け根部側連結部を連結する腰部骨格連結部とを有する脚付け根部と、該脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部と膝部の上脚外皮下端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される太腿用補強連結杆とで構成され、腰部骨格は、左右の脚付け根部の腰部骨格連結部と回動可能に連結する脚付け根部側連結部と、胴部骨格の下端側と連結する胴部下端骨格連結部とを備えて構成され、胴部骨格は、腰部骨格の上端側と連結する腰部骨格連結部と、左右の腕部骨格と夫々連結する腕部骨格連結部とを備えて構成され、左右の腕部骨格は、前記胴部骨格の腕部骨格連結部と連結される胴部上端骨格連結部と、ソフトビニル製の上腕外皮の上端開口縁が嵌着される上腕外皮上端嵌着部とを備えてなる肩部と、前記上腕外皮の下端開口縁が嵌着される上腕外皮下端嵌着部と、ソフトビニル製の下腕外皮の上端開口縁が嵌着される下腕外皮上端嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する肘部と、前記下腕外皮の下端開口縁が嵌着される下腕外皮下端嵌着部と、ソフトビニル製の手部外皮の開口縁が嵌着される手部外皮嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する手首部とを備えて構成されていることを特徴とするソフトビニル製大型可動人形の骨格構造としたことである。」

3.請求人の主張
(1)請求の趣旨
請求人の請求の趣旨は、審判請求書に記載されたとおりの、
特許第3761523号の請求項1に係る特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求める。」
というものである。

(2)請求の理由
請求人は、証拠方法として後記の書証をもって以下に要約した、第1ないし第3の理由により、訂正前請求項1に係る特許、つまり本件特許1は無効にされるべきであると主張している。(以下、「本件特許1に係る発明」を「特許発明1」という。)
ア 無効理由1(特許法第29条第1項第2号違反)
特許発明1は、本件特許の出願前に発売された、株式会社バンダイの製造・販売に係る商品である「LIMITED MODEL HG SERIES 11 第3使徒サキエル」(以下「第1商品」という。)に係る発明(以下「第1商品発明」という。)と同一であり、特許法第29条第1項第2号に該当する。したがって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当するから、無効とすべきである。

イ 無効理由2(特許法第29条第2項違反)
(ア)無効理由2-1(第1商品発明を主引用発明)
特許発明1は第1商品発明及び本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証に記載された発明(以下「甲3発明」という。)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされた特許であり、同法第123条第1項第2号に該当するから、無効とすべきである。

(イ)無効理由2-2(甲3発明を主引用発明)
特許発明1は、甲3発明及び周知技術(第1商品、甲第5号証及び甲第6号証に例示される。)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされた特許であり、同法第123条第1項第2号に該当するから、無効とすべきである。

(ウ)無効理由2-3(第2商品発明を主引用発明)
特許発明1は、株式会社バンダイの製造・販売に係る商品である「マジンガーZ EXTRA HEAVY VERSION」(以下「第2商品」という。)に係る発明(以下「第2商品発明」という。)、甲3発明及び周知技術(第1商品、甲第5号証及び甲第6号証に例示される。)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされた特許であり、同法第123条第1項第2号に該当するから、無効とすべきである。

ウ 無効理由3(特許法第36条第6項第2号違反)
請求項1における「揺動可能」なる言葉がどのような動作を示しているのか不明確であるから、請求項1の記載は特許を受けようとする発明が明確でない。したがって、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号に該当するから、無効とすべきである。

(3)訂正請求1による訂正後の請求項1記載の発明に対する無効理由の概要等
ア 無効理由1(特許法第29条第1項第2号違反)
訂正請求1が適法であると認められる場合には、訂正請求1による訂正後の請求項1記載の発明が特許法第29条第1項第2号に該当し、同法第29条の規定に違反することから、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る特許が同法第123条第1項第2号に該当するから無効とすべきである、という無効事由については争わない(「第1回口頭審理調書」参照)。

イ 無効理由2(特許法第29条第2項違反)
訂正請求1による訂正後の請求項1記載の発明は、第1商品発明、甲3発明又は第2商品発明のいずれかの発明を基礎として、これに各甲号証により公知技術又は周知技術と認められる技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、訂正請求1が認められるとしても、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定に違反してされた特許であり、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る特許は同法第123条第1項第2号に該当するから、無効とすべきである。

ウ 無効理由3(特許法第36条第6項第2号違反)
訂正請求1による訂正後の請求項1記載の発明においても依然として「揺動」概念自体の意味が不明であるから、訂正請求1による訂正後の請求項1記載の発明が明確でない。したがって、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当するから、無効とすべきである。

エ 無効理由4(特許法第36条第6項第1号違反)
訂正請求1による訂正後の請求項1記載の発明が発明特定事項として有する「前後・左右に揺動」という概念の説明が、発明の詳細な説明には存在しないから、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に実質的に記載された発明ではない。したがって、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当するから、無効とすべきである。

オ 平成22年9月24日付け上申書で提起した新たな無効理由5(特許法第29条第2項違反)
訂正請求1による訂正後の請求項1記載の発明は、大丸商事株式会社の製造・販売に係る商品「ブルース・リーアクションドール」(以下「第4商品」という。)に係る発明(以下「第4商品発明」という。)及び甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされた特許であり、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る特許は同法第123条第1項第2号に該当するから、無効とすべきである。

(4)訂正請求2による訂正後の請求項1記載の発明(訂正発明1)に対する無効理由の概要(平成23年5月13日付け弁駁書)(特許法第29条第2項違反)
訂正発明1は、第1商品発明に対して周知技術を単に組み合わせただけのものであり第1商品発明及び前記各甲号証に基づいて、当業者が容易に想到できる発明に該当する。したがって、訂正請求2が認められるとしても、訂正発明1は特許法第29条第2項の規定に違反しており、訂正請求項1に係る特許は同法第123条第1項第2号に基づいて、無効とすべきである。

(5)訂正請求2の不適法性についての概要
訂正請求2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない(脚部骨格全体を外皮で覆ったもの、腕部骨格全体を外皮で覆ったもの、腰部骨格連結部が分割して構成され、ネジを介して一体に連結されていること、胸部骨格連結部が分割して構成され、ネジを介して一体に連結されていること、が、特許明細書等に開示されていない)から、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に違反している。したがって、訂正請求2は認められるべきでない。

(6)請求人が提出した証拠方法(書証)
請求人がこれまでに提出した甲号証は、次のとおりである(以下、甲第1号証の1ないし甲第1号証の20のように枝番の存在する甲号証について、枝番を総称して「甲第1号証」などという。)。
甲第1号証の1?20:株式会社バンダイの製造・販売に係る商品である「LIMITED MODEL HG SERIES 11 第3使徒サキエル」(第1商品)を撮影した写真及び該商品に同封された使用説明書の写し
甲第2号証:月刊 Hobby JAPAN 1998年1月号(1998年1月1日発行)の表紙、第51頁、第52頁及び奥付の写し
甲第3号証:特開平6-23154号公報の写し
甲第4号証の1?10:株式会社バンダイの製造・販売に係る商品である「マジンガーZ EXTRA HEAVY VERSION」(第2商品)を撮影した写真及び該商品に同封された使用説明書の写し
甲第5号証:ホビージャパンエクストラ 1997年夏の号(1997年8月1日発行)、表紙、第78頁及び奥付の写し
甲第6号証:月刊 Hobby JAPAN 1998年12月号(1998年12月1日発行)の表紙、第281頁及び奥付の写し
甲第7号証:石井重三、「特許明細書の作成用語集-身近な発明はこれで出願できる」(日刊工業新聞社、昭和55年10月30日初版発行)の第179頁、第180頁及び奥付の写し
甲第8号証:平成20年(ワ)第27920号特許権侵害行為差止等請求事件における平成21年8月31日付け準備書面(8)の第1頁及び第2頁の写し
甲第9号証:実公昭51-34380号公報(昭和51年8月25日発行)の写し
甲第10号証:特許第2680776号公報(平成9年11月19日発行)の写し
甲第11号証:フィギュア王 No.18(平成11年2月28日発行)の表紙、広告頁及び裏表紙の写し
甲第12号証:月刊 Hobby JAPAN 2002年1月号(2002年1月1日発行)の表紙、第265頁及び奥付の写し
甲第13号証の1?5:株式会社メディコム・トイの製造・販売に係る商品である「REAL ACTION HEROES PREDATOR」(以下「第3商品」という。)を撮影した写真及び該商品に同封された使用説明書の写し
甲第14号証の1?7:大丸商事株式会社の製造・販売に係る商品「ブルース・リーアクションドール」(第4商品)を撮影した写真及び該商品に同封された使用説明書の写し
甲第15号証:COMIC GON!-コミック・ゴン-第2号(平成10年5月1日発行)の表紙、第91頁ないし第103頁及び奥付の写し
甲第16号証:「フリー百科事典ウィキペディアWikipedia」のポリ塩化ビニルの項目、アドレス・http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AA%E5%A1%A9%E5%8C%96%E3%83%93%E3%83%8B%E3%83%AB」
甲第17号証の1?5:株式会社メディコム・トイの製造・販売に係る商品である「REAL ACTION HEROES マジンガーZ」(以下「第5商品」という。)を撮影した写真及び該商品に同封された使用説明書の写し
甲第18号証:MEDICOM TOY CHRONICLE 1996-1998 MEDICOM TOY PERFECT CATALOG(株式会社ワニブックス、1999年2月20日発行)の表紙、第19頁及び奥付の写し
甲第19号証:「株式会社オビツ製作所ホームページ(http://www.obitsu.co.jp/)を印刷したもの」
甲第20号証:月刊 Hobby JAPAN 1997年1月号(1997年1月1日発行)の表紙、第164頁及び奥付の写し
甲第21号証:特開2000-185180号公報(2000年7月4日発行)の写し
甲第22号証:「広辞苑 第六版」(株式会社岩波書店、2008年1月11日発行)の表紙、第690頁及び奥付の写し
甲第23号証:GARAGE KIT CATALOG ’99(株式会社ホビージャパン、1999年7月13日発行)の表紙、第5頁、第112頁及び奥付の写し
甲第24号証:フィギュア王 No.38(2000年11月30日発行)の表紙、第10頁及び裏表紙の写し
甲第25号証の1?9:大丸商事株式会社の製造・販売に係る商品「ブルース・リーアクションドール」(第4商品)と同種の商品「ブルース・リーアクションドール」(以下「第4’商品」という。)を撮影した写真及び該商品に同封された使用説明書の写し
甲第26号証:特開2000-61152号公報(2000年2月29日発行)の写し
甲第27号証:特開2002-166375号公報(2002年6月11日発行)の写し
甲第28号証:特開平4-8383号公報(1992年1月13日発行)の写し
甲第29号証:特開平6-154425号公報(1994年6月3日発行)の写し
甲第30号証:特開2001-190377号公報(2001年7月17日発行)の写し
甲第31号証:特開平11-318655号公報(1999年11月24日発行)の写し
甲第32号証の1?2:「株式会社ボークスの製造・販売に係る商品:幻の素体-A」を撮影した写真(1?30)及び使用説明書
甲第33号証:「GARAGE KIT CATALOG ‘99:表紙、第5頁、第102頁及び奥付:株式会社ホビージャパン:1999年7月13日発行」(写し)
甲第34号証:「VOLKS PERFECT FILE THAT’S ALL ABOUT VOLKS 1999:表紙、第87頁及び奥付:株式会社ワニブックス:1999年2月20日」(写し)
甲第35号証:「レプリカント3:表紙、第116頁、奥付及び裏表紙:株式会社竹書房:平成10年11月30日発行」(写し)

(7)請求人の主張の詳細
ア 特許発明1に対する無効理由の詳細
(ア)無効理由1の詳細(特許法第29条第1項第2号違反)
a.第1商品の本件特許の出願前の発売について
第1商品の包装箱の表面左下隅部に「BANDAI 1997 MADE IN JAPAN」と表示されている(甲第1号証の1の写真1参照)。当該包装箱の同封された使用説明書の表紙左下隅部にも「BANDAI 1997 MADE IN JAPAN」と表示されている(甲第1号証の20の1枚目参照)とともに該説明書の4頁右下欄の部品注文カードには「’97.9/58669-3000」と記載されている(甲第1号証の20の3枚目参照)。甲第2号証(「月刊 Hobby JAPAN 1998年1月号」)には「この11月に発売となったバンダイLM・HGシリーズの最新作『第3使徒サキエル』。」と記載されているとともに(第51頁、甲第2号証の2枚目参照)、第1商品(甲第1号証)の写真が掲載されている(第52頁、甲第2号証の3枚目参照)。これらの事実に照らせば、第1商品(甲第1号証)が、本件特許の出願日(平成15(2003)年1月22日)より前に市販されていたことは明らかである。

b.特許発明1と第1商品発明の対比
第1商品は、キャラクター(第三使徒サキエル)を模した人形であり、外皮と、外皮とは別体で外皮によって覆われる骨格構造を備えている(甲第1号証の5及び6参照)。そして、外皮はソフトビニル製である(甲第2号証の第52頁参照)。したがって、第1商品は、「ソフトビニル製の外皮と、該外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造」である。
骨格構造は、左右の脚部骨格と、左右の脚部骨格が連結される胴体部骨格と、胴体部骨格と連結される左右の腕部骨格とによって構成されている(甲第1号証の7参照)。
胴体部骨格を構成する両腕部骨格連結部材、逆T字状部材、U字状部材、逆U字状部材、上側ブロック部材及び棒状部材を連結させた部材を胴部骨格とみなし、下側ブロック部材及び脚部骨格連結部材を連結させた部材を腰部骨格とみなすと、胴体部骨格は、左右の腕部骨格と連結される胴部骨格と、左右の脚部骨格と連結される腰部骨格とが連結して構成されているということができる(甲第1号証の8及び9参照)。したがって、骨格構造は、「左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群」を構成している。
胴部骨格を構成する逆T字状部材、U字状部材、逆U字状部材、上側ブロック部材及び棒状部材を連結させた部材を腹骨格部とみなし、両腕部骨格連結部材を連結させた部材を胸骨格部とみなすと、胴部骨格は、腰部骨格と連結される腹骨格部と、腹骨格部と連結される胸骨格部とから構成されているということができる(甲第1号証の8及び9参照)。また、腹骨格部を構成する逆T字状部材は、胸骨格部を構成する両側腕部骨格連結部材の連通孔に連通軸を差し込むことによって回動可能に連結されている(甲第1号証の11参照)。したがって、胴部骨格は、「腰部骨格と連結される腹骨格部と、該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能」に構成されている。
腹骨格部を構成する上側ブロック部材及び棒状部材を連結させた部材を腰部骨格連結部とみなし、逆T字状部材を胸部骨格連結部とみなすと(甲第1号証の8及び9参照)、腹部骨格は、その一端側に腰部骨格連結部を備えるとともに、他端側に胸部骨格連結部を備えているということができる。次に、腰部骨格連結部を構成する上側ブロック部材は、腹骨格部を構成する逆U字状部材の逆U字状溝部に対軸を挟み込むことによって揺動可能に連結されている(甲第1号証の14参照)。また、腰部骨格連結部を構成する棒状部材は、腰部骨格を構成する下側ブロック部材の貫通孔に下端を差し込むことによって回動可能に連結されている(甲第1号証の13参照)。したがって、腰部骨格連結部は、「腹骨格部との連結部において揺動可能に連結されるとともに、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え」ているということができる。
胸部骨格連結部を構成する逆T字状部材は、腹骨格部を構成するU字状部材のU字状溝部に対軸を挟み込むことによって揺動可能に連結されている(甲第1号証の12参照)。また、胸部骨格連結部を構成する逆T字状部材は、胸部骨格を構成する両側腕部骨格連結部材の連通孔に連結軸を差し込むことによって回動可能に連結されている(甲第1号証の11参照)。したがって、胸部骨格連結部は、「腹骨格部との連結部において揺動可能に連結されるとともに、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え」ているということができる。

(イ)無効理由2-1の詳細(第1商品発明を主引用発明)
a.特許発明1と第1商品発明1の対比
第1商品は、キャラクター(第三使徒サキエル)を模した人形であり、外皮と、外皮とは別体で外皮によって覆われる骨格構造を備えている(甲第1号証の5及び6参照)。そして、外皮はソフトビニル製である(甲第2号証の第52頁参照)。したがって、第1商品は、「ソフトビニル製の外皮と、該外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造」である。
骨格構造は、左右の脚部骨格と、左右の脚部骨格が連結される胴体部骨格と、胴体部骨格と連結される左右の腕部骨格とによって構成されている(甲第1号証の7参照)。
胴体部骨格を構成する両腕部骨格連結部材、逆T字状部材、U字状部材、逆U字状部材、上側ブロック部材、棒状部材、下側ブロック部材及び脚部骨格連結部材の上部を連結させた部材を胴部骨格とみなし、脚部骨格連結部材の下部を腰部骨格とみなすと、胴体部骨格は、左右の腕部骨格と連結される胴部骨格と、左右の脚部骨格と連結される腰部骨格とが連結して構成されているということができる(甲第1号証の8及び15参照)。したがって、骨格構造は、「左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群」を構成している。
胴部骨格を構成する逆U字状部材、上側ブロック部材、棒状部材、下側ブロック部材及び脚部骨格連結部材の上部を連結させた部材を腹骨格部とみなし、両腕部骨格連結部材、逆T字状部材及びU字状部を連結させた部材を胸骨格部とみなすと、胴部骨格は、腰部骨格と連結される腹骨格部と、腹骨格部と連結される胸骨格部から構成されているということができる(甲第1号証の8及び15参照)。
腹骨格部を構成する逆U字状部材は、胸骨格部を構成するU字状部材の軸受孔に突起軸を差し込むことによって回動可能に連結されている(甲第1号証の17参照)。したがって、胴部骨格は、「腰部骨格と連結される腹骨格部と、該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能」に構成されているということができる。
腹骨格部を構成する脚部骨格連結部材の上部を腰部骨格連結部とみなし、逆U字状部材を胸部骨格連結部とみなすと(甲第1号証の8及び15参照)、腹部骨格は、「その一端側に腰部骨格連結部を備えるとともに、他端側に胸部骨格連結部を備え」ているということができる。
腰部骨格連結部を構成する脚部骨格連結部材の上部は、腹骨格部を構成する下側ブロック部材の対軸を挟み込むことによって揺動可能に連結されている(甲第1号証の19参照)。一方、腰部骨格連結部を構成する脚部骨格連結部材の上部は、腰部骨格を構成する脚部骨格連結部材の下部と一体的に連結されている。したがって、腰部骨格連結部は、「腹骨格部との連結部において揺動可能に連結され」ているといえるが、「腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え」ているといえない点で相違している。
胸部骨格連結部を構成する逆U字状部材は、腹骨格部を構成する上側ブロック部材を挟み込むことによって揺動可能に連結されている(甲第1号証の18参照)。また、胸部骨格連結部を構成する逆U字状部材は、胸部骨格を構成するU字状部材の軸受孔に突起軸を差し込むことによって回動可能に連結されている(甲第1号証の17参照)。したがって、胸部骨格連結部は、「腹骨格部との連結部において揺動可能に連結されるとともに、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え」ているといえる。
以上を総合すると、第1商品発明は「腰部骨格連結部が、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え」ていない点で特許発明1と相違する。

b.特許発明1と第1商品発明の相違点の想到容易性について
甲3発明の人体像制作用芯材においては、腰部骨格連結部に対応するS18が、腰部骨格に対応するS20?S24の中のS20に備えた嵌入杆に回動可能に嵌合される嵌合穴を備えている。そして、甲3発明の人体像制作用芯材と第1商品発明は、外皮によって覆われた人形を構成する骨格構造である点で共通しており、人体像制作用芯材の腰部骨格連結部と腰部骨格の連結構造を第1商品発明に適用することについて阻却事由も見つからないことから、第1商品発明に人体像制作用芯材の腰部骨格連結部と腰部骨格の連結構造を適用することは、当業者であれば容易に想到できるものと認められる。なお、特許発明1においては、腰部骨格連結部の第一嵌入杆と腰部骨格の嵌合穴を嵌合させているのに対し、甲3発明の人体像制作用芯材においては、腰部骨格連結部の嵌合穴と腰部骨格の嵌入杆を嵌合させており、嵌合穴と嵌入杆の位置関係が逆転しているが、嵌合穴と嵌合杆の位置関係を入れ替えることは、当業者にとって容易に考えられる設計変更にすぎない。また、人形のサイズを変更することも、当業者にとって容易に考えられる設計変更にすぎない。

(ウ)無効理由2-2の詳細(甲3発明を主引用発明)
a.特許発明1と甲3発明の対比
甲3発明は、人体像制作用芯材であり、人形を構成する骨格構造である点で一致しているが、人体像制作用芯材が外皮によって覆われていない点において特許発明1と相違する。
人体像制作用芯材は、RF1?9の各部材を連結してなる右の脚部骨格と、LF1?9の各部材を連結してなる左の脚部骨格と、S20?S24の各部材を連結してなる腰部骨格と、S6?S19の各部材を連結してなる胴部骨格と、RH1?9の各部材を連結してなる右の腕部骨格と、LH1?9の各部材を連結してなる左の腕部骨格とから構成されている。そして、左右の脚部骨格は腰部骨格と連結されており、腰部骨格は胴部骨格と連結されており、胴部骨格は左右の腕部骨格と連結されている。したがって、人体像制作用芯材は、「左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群」を構成している。
人体像制作用芯材の胴部骨格は、S7?S19の各部材を連結してなる腹骨格部と、S6の部材からなる胸骨格部とから構成されている。そして、腹骨格部は腰部骨格と連結されており、胸骨格部は腹骨格部と連結されている。なお、各部材は、「多少力を加えないと動かない半固定状態で屈曲、回動する」ように連結されている(段落0004参照)。したがって、人体像制作用芯材の胴部骨格は、「腰部骨格と連結される腹骨格部と、該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能」に構成されている。
人体像制作用芯材の腹骨格部は、一端側にS18からなる腰部骨格連結部を備えるとともに、他端側にS7からなる胸部骨格連結部を備えている。
人体像制作用芯材の腰部骨格連結部は、腹骨格部との連結部においてS19を回転軸として揺動可能に連結されるとともに、腰部骨格に備えた嵌入杆に回動可能に嵌合される嵌合穴を備えている。したがって、人体像制作用芯材の腰部骨格連結部は、腰部骨格連結部に嵌入杆ではなく嵌合穴が形成されており、腰部骨格に嵌合穴ではなく嵌入杆が形成されており、嵌入杆と嵌合穴の位置関係が逆転しているから、この点において特許発明1と相違する。
人体像制作用芯材の胸部骨格連結部は、腹骨格部との連結部においてS9を回転軸として揺動可能に連結されるとともに、胸骨格部に備えた嵌合杆に回動可能に嵌合される嵌合穴を備えている。
したがって、人体像制作用芯材の胸部骨格連結部は、胸部骨格連結部に嵌入杆ではなく嵌合穴が形成されており、胸部骨格に嵌合穴ではなく嵌入杆が形成されており、嵌入杆と嵌合穴の位置関係が逆転しているから、この点において特許発明1と相違する。
以上を総合すると、甲3発明は、1)ソフトビニル製の外皮によって覆われていない点、及び、2)腰部骨格連結部と腰部骨格の間及び胸部骨格連結部と胸部骨格の間で嵌入杆と嵌合穴の位置関係が逆転している点で特許発明1と相違する。

b.特許発明1と甲3発明の相違点の想到容易性について
人形の骨格構造をソフトビニル製の外皮によって覆うことは、第1商品、甲第5号証及び甲第6号証で示されるとおり、本件特許の出願時には既に周知技術であり、また、甲第3号証には、段落0005において「制作するモデルに従って、もしくは想像して、各々屈曲、回動部分を適当な位置に動かし、全体の形を形成し固定する。尚、形成後基台A1に接している部分は基台A1に固定する。そして人体の肉部分、被服部分に相当する被覆部分、頭、手部分の制作にはいる。」と記載されており、この記載は人体像制作用芯材を外皮によって覆うことを示唆している。したがって、甲3発明の人体像制作用芯材を外皮によって覆うことは、周知技術に基いて当業者であれば容易に想到できるものと認められる。
なお、甲3発明の人体像制作用芯材において、腰部骨格連結部と腰部骨格の間及び胸部骨格連結部と胸部骨格の間で嵌合穴と嵌入杆を入れ替えて設けることは、当業者とって容易に考えられる設計変更にすぎない。
また、人形のサイズを変更することも、当業者にとって容易に考えられる設計変更にすぎない。

(エ)無効理由2-3の詳細(第2商品発明を主引用発明)
a.第2商品の本件特許の出願前の発売について
第2商品の包装箱の表面左下隅部に「BANDAI 2001 MADE IN JAPAN」と表示されており(甲第4号証の1の写真2参照)、当該包装箱に同封された使用説明書の表面左下隅部にも「BANDAI 2001 MADE IN JAPAN」と表示されているとともに該説明書の表面右下欄の部品注文カードには「’01.10」と記載されている(甲第4号証の10の1枚目参照)。社会常識からすれば、当該包装箱の上記表示及び当該使用説明書の上記表示と上記記載によって第2商品が遅くとも本件特許の出願日より前に市販されていたことは充分推認できる。
甲第12号証の「月刊 Hobby JAPAN No.391」(2002年1月1日発行)の第265頁中央欄には「●バンダイホビー事業部 〒111-8081 東京都台東区駒形2-5-5小官ビル1F……03-3847-5116」なる記載の下方に「エクストラへビーバージョン マジンガーZ NON プラ 発売中 3500円」と記載されており、当該記載と第2商品の包装箱の表示(甲第4号証の1参照)とを照合すれば、第2商品が本件特許の出願日より前に市販されていたことを確認できる。

b.特許発明1と第2商品発明の対比
第2商品は、キャラクター(マジンガーZ)を模した人形であり、外皮と、外皮とは別体で外皮によって覆われる骨格構造を備えている(甲第4号証の4及び5参照)。なお、外皮は、合成ゴム製又はスチロール樹脂製である(甲第4号証の10参照)。したがって、第2商品は、外皮がソフトビニル製ではない点において特許発明1と相違する。
骨格構造は、左右の脚部骨格と、左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、腰部骨格に連結される胴部骨格と、胴部骨格に連結される左右の腕部骨格とによって構成されている(甲第4号証の5及び6参照)。
胴部骨格は、腰部骨格と連結される腹骨格部と、腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成されている(甲第4号証の7及び8参照)。
腹骨格部は、一端側に連結される腰部骨格連結部を備えているとともに、他端側に連結される胸部骨格連結部を備えている(甲第4号証の7参照)。
腰部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において揺動可能に連結されているが(甲第4号証の9参照)、腰部骨格と一体的に連結されている。したがって、腰部骨格連結部は、「腹骨格部との連結部において揺動可能に連結される」が、「腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え」ていない点において特許発明1と相違する。
胸部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において揺動可能に連結されているが(甲第4号証の8参照)、胸部骨格と一体的に連結されている。したがって、胸部骨格連結部は、「腹骨格部との連結部において揺動可能に連結される」が、「胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え」ていない点において特許発明1と相違する。
以上を総合すると、第2商品発明は、1)外皮がソフトビニル製でない点、及び、2)腰部骨格連結部と腰部骨格が嵌合穴と嵌合杆の嵌合によって回動可能に連結されておらず、胸部骨格連結部と胸部骨格が嵌合穴と嵌合杆の嵌合によって回動可能に連結されていない点において、特許発明1と相違している。

c.特許発明1と第2商品発明の相違点の想到容易性について
人形の骨格構造をソフトビニル製の外皮によって覆うことは、第1商品、甲第5号証及び甲第6号証に示されるとおり、本件特許の出願時には既に周知技術であり、第2商品発明に対して合成ゴム製及びスチロール樹脂製の外皮に代えてソフトビニル製の外皮を適用することについて阻却事由も見つからないことから、第2商品発明の外皮としてソフトビニル製の外皮を適用することは、当業者であれば容易に想到できるものと認められる。
また、人形の骨格構造において、腰部骨格連結部と腰部骨格を嵌合穴と嵌入杆の嵌合によって回動可能に連結させることや、胸部骨格連結部と胸部骨格を嵌合穴と嵌入の嵌合杆によって回動可能に連結させることは、甲第3号証の存在によって本件特許の出願時には既に公知の技術である。なお、甲3発明の人体像制作用芯材において、腰部骨格連結部と腰部骨格の間及び胸部骨格連結部と胸部骨格の間で嵌合穴と嵌入杆を入れ替えて設けることは、当業者とって容易に考えられる設計変更にすぎない。
また、人形のサイズを変更することも、当業者にとって容易に考えられる設計変更にすぎない。

(オ)無効理由3(特許法第36条第6項第2号違反)
請求項1において、腰部骨格連結部と腹骨格部の連結部の動作及び胸部骨格連結部と腹骨格部の連結部の動作を表現する言葉として「揺動可能」なる言葉が使用されているところ、明細書の発明の詳細な説明の欄においては、前記各動作を表現する言葉として「揺動可能」なる言葉が一切使用されておらず、どのような動作を示しているのか不明である。

イ 訂正請求1による訂正後の請求項1に係る特許に対する無効理由の詳細
(ア)無効理由2(特許法第29条第2項違反)
a.訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明の発明特定事項と第1商品発明の部材の対応関係
訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明における発明特定事項と第1商品の部材の対応関係について、審判請求書における新規性の議論で用いた対応関係の主張(参考図2参照)はせず、参考図1に記載のとおりの対応関係のみ主張し、平成22年6月11日付け弁駁書における、参考図2の対応関係に基づく主張(特に弁駁書第14頁第19行から第15頁第3行参照)を撤回する(「第1回口頭審理調書」参照)。

b.訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明の発明特定事項の公知性について
以下、簡明に記載するために、訂正請求1による訂正後の請求項1に記載された発明特定事項について、便宜上次のように符号を付して分説する。
(A) 分割して形成され、それぞれが着脱可能なソフトビニル製の外皮と、
(B)該それぞれの外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造であって、
(C) 前記骨格構造は、左右の脚部骨格と、
該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、
該腰部骨格に連結される胴部骨格と、
該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、
(D) 前記胴部骨格は、
腰部骨格と連結される腹骨格部と、
該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成されており、
(E) 前記腹骨格部は、
その一端側に腰部骨格連結部を備えるとともに、
他端側に胸部骨格連結部を備え、
(F) 前記腰部骨格連結部は、
腹骨格部との連結部において前後・左右方向に揺動可能に連結されるとともに、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え、
(G) 前記胸部骨格連結部は、
腹骨格部との連結部において前後・左右方向に揺動可能に連結されるとともに、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え、
(H) 前記一連の人形骨格群を構成する前記各骨格が着脱可能であることを特徴とするソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。

(b-1)発明特定事項(A)及び(B)について
第2商品における、合成ゴム製の外皮、スチロール樹脂製の外皮、ABS高比重樹脂製の外皮及びABS樹脂製の外皮は、分割して形成されており、腰部骨格は着脱可能な合成ゴム製のFパーツ(1)(当審注:「(1)」等は甲第4号証の10においては「丸の中に1」を意味する。以下同様。)からなる外皮によって覆われ、腹骨格部は着脱可能なスチロール樹脂製のDパーツ(1)、(2)からなる外皮によって覆われ、胸骨格部は着脱可能な合成ゴム製のFパーツ(3)からなる外皮によって覆われ、左右の腕部骨格は、それぞれ着脱可能な合成ゴム製のFパーツ(2)、(2)からなる外皮とスチロール樹脂製のDパーツ(7)、(8)からなる外皮とABS高比重樹脂製のCパーツ(8)、(9)からなる外皮によって覆われ、左右の脚部骨格は、それぞれ着脱可能なスチロール樹脂製のDパーツ(5)、(6)からなる外皮とABS樹脂製のBパーツ(27)、(27)からなる外皮とABS高比重樹脂製のCパーツ(1)、(2)からなる外皮によって覆われている(甲第4号証の4及び5参照)から、可動人形の骨格構造において「分割して形成され、それぞれが着脱可能な外皮と該それぞれの外皮とは別体で、該外皮によって覆われて人形を構成する骨格構造」は、本件特許の出願時における公知技術である。
第1商品の外皮がソフトビニル製であり、また、甲第5号証には「……全身が可動する完成人形体である。……本体は布製衣装とゴム・ソフビパーツによって構成されている。」と記載され(甲第5号証の第78頁参照)、甲第6号証にも「……軟質ソフトビニル製の外皮に新開発のアーマチュアを内蔵…可動人形……」と記載されている(甲第6号証の第281頁参照)から、「可動人形の骨格構造をソフトビニル製の外皮によって覆うこと」は、本件特許の出願時における公知又は周知技術である。

(b-2)発明特定事項(C)について
第1商品における骨格構造は、左右の脚部骨格と該左右の脚部骨格が連結される胴体部骨格と該胴体部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群が構成されており(甲第1号証の7及び10参照)、また、第2商品における骨格構造は、左右の脚部骨格と該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と該腰部骨格に連結される胴部骨格と該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群が構成されている(甲第4号証の6参照)から、可動人形の骨格構造において「左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成すること」は、本件特許の出願時における公知技術である。
なお、甲第3号証に開示されている人体像制作用芯材においても「左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の骨格群」が構成されている。
したがって、当業者が訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明における発明特定事項(C)を容易に採用できることは明白である。

(b-3)発明特定事項(D)について
第1商品における胴部骨格は、腰部骨格と連結される腹骨格部と該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成されていて(甲第1号証の8及び15参照)、また、第2商品における胴部骨格は、腰部骨格と連結される腹骨格部と該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成されている(甲第4号証の7参照)から、可動人形の骨格構造において「胴部骨格を、腰部骨格と連結される腹骨格部と、該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成する」ことは、本件特許の出願時における公知技術である。
なお、甲第3号証に開示されている人体像制作用芯材においても「胴部骨格を、腰部骨格と連結される腹骨格部と、該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成」されている。
したがって、当業者が訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明における発明特定事項(D)を容易に採用できることは明白である。

(b-4)発明特定事項(E)について
第1商品における腹骨格部はその一端側に腰部骨格連結部を備えるとともに他端側に胸部骨格連結部を備えており(甲第1号証の8及び15参照)、また、第2商品における腹骨格部はその一端(下面)側に腰部骨格連結(受)部を備えるとともに他端(上面)側に胸部骨格連結(受)部を備えている(甲第4号証の7参照)から、可動人形の骨格構造において「腹骨格部の一端側に腰部骨格連結部を備えるとともに他端側に胸部骨格連結部を備える」ことは、本件特許の出願時における公知技術である。
したがって、当業者が訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明における発明特定事項(E)を容易に採用できることは明白である。

(b-5)発明特定事項(F)及び(G)について
甲第9号証には、「着脱自在な関節部を具えた人形」について「……図示のごとく一方は椀状体1、他方は該椀状体1に嵌着される球状体よりなる球形関節を構成し、……各関節部において着脱自在としている。またこれら関節部は例えば骨組に相当するように本体内で同関節を連結する連結体3、即ち胸枠31、腕枠31、足枠33等によって連係する…各関節部は球形関節で、椀状体と球状体のいずれか一方が弾性体で構成されるので、関節部で自在に折曲げを姿体を自在に変化させることができる……」(第1欄第24行?第2欄第4行及び第2欄第17?20行参照)と記載されているとともにその具体的態様が第1図及び第2図に図示されており、甲第10号証には、「人形またはあやつり人形の体のための関節構造体」について「……この骨組み構造体は、人の胴体、尻および首に対応する、1,2および3で示した要素と、上肢および下肢を形成する部品4,5及び6,7と、この部品を前述の要素を相互に連結するリング継手8から組み立てられている。……」(段落0006参照)と記載されているとともにその具体的態様が図1、図10及び図11に図示されており、さらに、第2商品における腹骨格部は、その一端(下面)側に腰部骨格連結(受)部を備えるとともに他端(上面)側に胸部骨格連結(受)部を備えており、当該腰部骨格連結(受)部には腰部骨格連結部が、当該胸部骨格連結(受)部には胸部骨格連結部がそれぞれボールジョイント状に連結されており、各連結部は前後方向に動くだけではなく左右方向にも動くように連結されている(甲第4号証の7)から、「可動人形の骨格構造における連結部を前後方向に動くだけではなく左右方向にも動くように連結する構造」は、本件特許の出願時における公知技術又は周知技術である。
したがって、当業者が訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明における発明特定事項(F)及び(G)を容易に採用できることは明白である。

(b-6)発明特定事項(H)について
第1商品における骨格構造は、左右の脚部骨格と該左右の脚部骨格が連結される胴体部骨格と該胴体部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群が構成されており、当該一連の人形骨格群を構成する当該各骨格が着脱可能であり(甲第1号証の7及び10参照)、また、第2商品における骨格構造は、左右の脚部骨格と該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と該腰部骨格に連結される胴部骨格と該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群が構成されており、当該一連の人形骨格群を構成する当該各骨格が着脱可能である(甲第4号証の6参照)から、可動人形の骨格構造において「左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、当該一連の人形群を構成する当該各骨格を着脱可能にすること」は、本件特許の出願時における公知技術である。甲第3号証に開示されている人体像制作用芯材においても「左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の骨格群を構成し、当該一連の骨格群を構成する各骨格を着脱可能に」されている。
したがって、当業者が訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明における発明特定事項(H)を容易に採用できることは明白である。

c.訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明の想到容易性
第1商品における「ソフトビニル製の外皮と、該外皮とは別体でかつ該外皮によって覆われてソフトビニル製人形を構成する骨格構造」を、本件特許の出願時における公知技術である「分割して形成され、それぞれが着脱可能な外皮と、該それぞれの外皮とは別体で、該外皮によって覆われて人形を形成する骨格構造」(甲第4号証の4及び5参照)に変更して「分割して形成され、それぞれが着脱可能なソフトビニル製の外皮と、該それぞれの外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製人形を構成する骨格構造」とするとともに、第1商品における「腰部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において前後方向に動くが、左右方向には動かない構造」及び「胸部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において前後方向に動くが、左右方向には動かない構造」を、本件特許の出願時における公知技術又は周知技術である「可動人形の骨格構造における連結部を前後方向に動くだけではなく左右方向にも動くように連結する構造」(甲第9号証及び甲第10号証参照)に変更して「腰部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において前後・左右方向に動く構造」及び「胸部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において前後・左右方向に動く構造」とすることは、当業者にとって想到容易である。

d.外皮の課題
(d-1)第3商品と第4商品の本件特許の出願前の発売について
第3商品は、包装箱に付属品及び使用説明書とともに同封された態様(甲第13号証の1及び2参照)にて遅くとも1997年8月頃に市販されていた。この事実は、第3商品が平成10年5月1日に発行された甲第15号証の第102頁に「(1)商品(2)原型製作者名(3)発売年月」(当審注:「(1)」等は甲第15号証においては「丸の中に1」等を指す。以下同様。)と記載されているとともに、「No.37(1)プレデター グロウモデル(2)紫(3)97年8月」と記載されていることからも立証できる。
第4商品は、包装箱に付属品及び使用説明書とともに同封された態様(甲第14号証の1?3参照)にて遅くとも平成11年2月頃に市販されていた。この事実は、第4商品が平成11年2月28日に発行された甲第11号証の広告頁において「李小龍 可動人形(好評発売中)」と記載されていることからも立証できる。なお、甲第14号証の1、2、4、5の写真に撮影された人形の顔は「怒り顔」に見えないが、これは人形を撮影する方向の問題であり、人形を斜め上方から撮影すると、甲第14号証の6の写真に撮影された人形の顔のように「怒り顔」になる。さらに、前記事実は、第4商品が甲第23号証において「’98年7月から’99年7月に発売されたGKアイテム」として紹介されていることや甲第24号証において「購入できる」商品として紹介されていることからも立証できる。

(d-2)第1商品発明において、外皮を分割して形成されているようにすることの動機付け
骨格構造を外皮で覆った人形において、第1商品発明のように腕部、脚部及び胴体部が一体成形された外皮に対して骨格構造を収める場合には、外皮内に骨格構造を分割した状態で収めた後に該外皮内で分割した状態の骨格構造を手探りで組み立てなければならないので、外皮内に骨格構造を簡易に収めることができない。組立て時に無理に外皮の背中の開口部から骨格を押し込めば、外皮開口部が裂けることもあり得る。このような問題点を解決するに当たり、当業者であれば、当然に外皮を分割して形成する方法を考える(玩具としての組立・完成の容易性の視点)。
また、骨格構造を外皮で覆った人形においては、関節箇所を屈曲させた際に、関節箇所の内側に位置する外皮が撓んで屈曲を阻害したり、外皮に不自然な皺が生じる。この問題点を解決するに当たり、当業者であれば、当然に関節箇所に位置する外皮を該関節箇所を境界として分割する方法を考える(骨格可動人形のリアル性追求の視点)。
そして、前記各方法は、第3商品において、外皮が首関節箇所・肩関節箇所・肘関節箇所・手首関節箇所・腹部と腰部の境界箇所・股関節箇所・膝関節箇所・足首関節箇所を境界として分割されていることからも分かるように、本件特許の出願日前に周知である。
したがって、当業者が、第1商品に内在している前記各問題点を解決するために(当業者であれば当然に行う前記両視点からの検討の結果として)、第3商品に見られるように、第1商品発明において外皮を分割して形成されているようにすることは当然に導けるものであり、組み立てに困難性が認められる第1商品自体が示唆するものといえる。

(d-3)第2商品発明において、すべての外皮をソフトビニル製とすることの動機付け
ポリ塩化ビニルの一種であるソフトビニルが、硬質にも軟質にもなり、優れた耐水性・耐酸性・耐アルカリ性・耐溶剤性を持ち、かつ、難燃性であり、電気絶縁性であることから、玩具業界においては、従来、ソフトビニルが広く用いられていた。しかし、近年、ポリ塩化ビニルがダイオキシン類の主要発生源と考えられ社会問題として浮上したことに伴って、代替材料としてエラストマー樹脂が用いられるようになったという時代背景がある(甲第16号証参照)。
このような時代背景を考慮すると、当業者であれば、第2商品発明においてエラストマー樹脂の一種である合成ゴムで形成されている部品がソフトビニルでも形成できることを当然に知得できる。
また、第3商品及び第4商品において、すべての外皮がソフトビニル製であることからも分かるように、本件特許の出願日前に骨格構造を外皮で覆った人形におけるすべての外皮をソフトビニル製とする技術は周知である。さらに、本件特許の出願日前において、第5商品にみられるように、第2商品と同じキャラクターであるマジンガーZをモチーフとした可動人形において、骨格構造を分割されたソフトビニル製の外皮で覆った構造は周知ないし公知である。さらにまた、甲第21号証(段落0004参照)にも記載されていることからも分かるように、本件特許の出願日前において、骨格構造を外皮で覆った可動人形においてすべての外皮をソフトビニル製とすることは周知ないし公知である。
したがって、当業者であれば、第2商品発明の外皮を形成する材料としてソフトビニルを選択し、かつ、第3商品及び第4商品と同様に第2商品発明においてすべての外皮をソフトビニル製とすることは当然に導けるものといえる。

(d-4)甲3発明において、分割形成されそれぞれが着脱可能なソフトビニル製の外皮を設けることの動機付け
甲第3号証において「……そして人体の肉部分、被服部分に相当する被覆部分、頭、手部分の制作にはいる。……」と記載され(第2頁右欄第11行?第12行)、また、「……素材については、被覆部分の材質……を考慮すれば、特別の素材を求めない。……」と記載されていること(第2頁右欄第26行?28行)からも分かるように、甲第3号証には、人体像制作用芯材(骨格構造)を外皮で覆う発明が開示されている。
また、甲3発明の人体像制作用芯材を外皮で覆う場合、当該芯材を完全に被覆する一体的に形成された外皮を用いれば、1)外皮に対して骨格構造を収める場合に、外皮内に骨格構造を分割した状態で収めた後に該外皮内で分割した状態の骨格構造を手探りで組み立てなければならないので、外皮内に骨格構造を簡易に収めることができないという問題点、2)関節箇所を屈曲させた際に、関節箇所の内側に位置する外皮が撓んで屈曲を阻害したり、外皮に不自然な皺が生じるという問題点が生じるから、この各問題点を解決するために、当業者であれば、当然に外皮を分割形成する方法を考える。
そして、第4商品において、股関節箇所を境界として分割形成され、それぞれが骨格構造に対して着脱可能なソフトビニル製の外皮が設けられていることや、第3商品において、首関節箇所・肩関節箇所・肘関節箇所・手首関節箇所・腹部と腰部の境界箇所・股関節箇所・膝関節箇所・足首関節箇所を境界として分割形成され、それぞれが骨格構造に対して着脱可能なソフトビニル製の外皮が設けられていることからも分かるように、本件特許の出願日前に骨格構造を外皮で覆った人形において分割形成されそれぞれが着脱可能なソフトビニル製の外皮を設ける技術は周知である。
したがって、当業者であれば、よりリアルに人間の姿態を再現維持するという甲3発明を考慮し、甲第3号証に開示されたとおりに周知の技術手段を用いて外皮を含む被覆部材を選択して被覆することとして第3商品及び第4商品と同様に甲3発明において分割形成されそれぞれが着脱可能なソフトビニル製の外皮を設けることは当然に導けるものといえる。
骨格構造に、これとは別体であるソフトビニル製の外皮を被覆するにあたって、その被覆(脱着)作業の容易性と、関節可動人形体が本来的に志向する人体の姿態のリアルな再現・維持という目的とに鑑みた場合、関節部分において不自然な皺や撓みによる反発力が生じる(姿勢の維持が困難になる)ことは極力回避することとして、関節箇所において外皮を分離することは、当業者ならずとも、誰でも考えることにすぎない。

e.訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明の効果について
発明の詳細な説明の段落【0037】には、諸効果が記述されているが、いずれも訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明の進歩性を裏付けるものではないことは明白である。
「自立が可能で技術的構成を有する」及び「大型の人形において外皮部分をソフトビニル製で構成しても自立が可能で」と記述されている効果について検討すると、自立が可能であることが訂正請求1による訂正後の請求項1の記載中に特定されていないから、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明に基づく効果とは認められない(訂正請求1による訂正後の請求項1の記載によって特定される訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明の技術的範囲には、自立が不可能な可動人形の骨格構造も含まれている)。
「軽量・コスト安価な大型人形を提供することができ」、「軽量でかつ軟質なため、落下・転倒などしても安全で、破損も防げる。」と記述されている効果について検討すると、骨格の材料が訂正請求1による訂正後の請求項1の記載中に特定されていないから、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明に基づく効果とは認められない(訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明の技術的範囲には、軽量でなく硬質の材料を使用した骨格も含まれている)。
「例えば足首部の下脚外皮下端嵌着部と膝部の下脚外皮上端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される脛用補強連結杆や、脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部と膝部の上脚外皮下端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される太腿用補強連結杆などの骨格部分を交換してその長さを変更することにより、簡単に脚部長さなどの変更に対応できる。例えば、脛用補強連結杆や太腿用補強連結杆などの骨格にあっては、その径が同一で長さのみ異なるタイプのものを複数種用意しておけば、足首部の下脚外皮下端嵌着部および膝部の下脚外皮上端嵌着部、または脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部と膝部の上脚外皮下端嵌着部などの骨格はそのまま使用できるため、脚部等の長さの異なる人形が容易かつ安価に提供できる。」と記述されている効果について検討すると、第1商品における骨格構造は、左右の脚部骨格と該左右の脚部骨格が連結される胴体部骨格と該胴体部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群が構成されており、当該一連の人形骨格群を構成する当該各骨格が着脱可能であり(甲第1号証の7及び10参照)、また、第2商品における骨格構造は、左右の脚部骨格と該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と該腰部骨格に連結される胴部骨格と該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群が構成されており、当該一連の人形骨格群を構成する当該骨格が着脱可能であり、しかも、第2商品に同封された使用説明書における「パーツリスト」欄及び「10〈本体完成〉」欄に「合成ゴム製のEパーツ(1)、(2)」(平手パーツ)と「合成ゴム製のEパーツ(3)、(4)」(拳パーツ)の「どちらかを選んで取り付けます。」と図示・説明されている(甲第4号証の6及び10参照)から、当該効果は、当業者であれば第1商品及び第2商品の各人形から容易に知得できるものであり、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明の奏する格別の効果ではない。
「外皮がソフトビニル製であるため製作容易(スラッシュ成形など)で、かつコスト安価」と記述されている効果について検討すると、第1商品においても、ソフトビニル製の外皮が用いられているから、当該効果は、当業者であれば第1商品から容易に知得できるものであり、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明の奏する格別の効果ではない。
「夫々の骨格が着脱可能であり、かつ夫々の外皮も着脱可能であるため、搬送費用低廉となり」、「パーツ・キット販売などにも対応でき」、「誰でも簡単かつスピーディーに組み立て・分解が成し得る」と記述されている効果について検討すると、第1商品及び第2商品の各人形における骨格は、いずれも、前記のとおり、夫々の骨格が着脱可能であり、第2商品における夫々の外皮が着脱可能であるから、当該効果は、当業者であれば、第1商品及び第2商品から容易に知得できるものであり、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明の奏する格別の効果ではない。
被請求人は、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明の奏する効果として「需要者は、自分の好みに応じて他のパーツ(例えば、大きなサイズのバストを有する女性上半身パーツから普通のサイズのバストや小さいサイズのバストを有する女性上半身パーツ)に交換して楽しむことが多い。このような場合に、骨格とともに外皮も併せて着脱し得るため、それぞれのパーツ、例えば外皮パーツとその外皮パーツで覆われる骨格パーツを組み合わせて用意しておけば、簡単かつスピーディーに他の外観形態に交換して楽しむことができる。」という効果を主張しているが、当該効果は本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許の明細書」という。)に記載されておらず、上述のとおり、第2商品は合成ゴム製のEパーツ(1)、(2)(平手パーツ)と合成ゴム製のFパーツ(3)、(4)(拳パーツ)のどちらかを選んで取付けることができる人形であり、需要者が好みに応じて選択できる交換用パーツを用意することは本件特許の出願時における公知技術であるから、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明の奏する格別の効果ではない。

f.被請求人の意見に対する反論
(f-1)可動人形
被請求人は、第1商品及び第2商品は「プラスチックモデルキット」である点に鑑みれば、購入者によっては各部品の連結箇所に接着剤を使用して組み立てることも考えられるから、可動人形とはいえない旨主張し、第1商品及び第2商品をそれぞれ組み立てた各人形が可動人形ではない旨を主張している。確かに、第1商品及び第2商品はいずれも市場においてプラスチックモデルキットとして販売されているが、当該各モデルキットは、飛行機や戦車などのプラスチックモデルキットではなく、いずれも人形のプラスチックモデルキットであり、当該各プラスチックモデルキットを組み立てた各人形が、可動人形であることは、甲第1号証及び甲第4号証を検討すれば何人にも理解できる。そして、本件特許の明細書には「本発明では、……パーツ・キット販売などにも対応でき……」(段落0037参照)とされているから、第1商品及び第2商品を組み立てた各人形が訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明における人形と同じく「可動人形」と称される範疇のものであることは明らかである。また、第1商品及び第2商品を含む株式会社バンダイが販売している人形のプラスチックモデルキットシリーズが接着剤を使用せずに組み立てできるものであることは、当業者のみならず一般需要者によく知られている。したがって、被請求人の主張は妥当性に欠けるものであり失当と言わざるを得ない。

(f-2)甲3発明について
被請求人は、甲第3号証について、「S18が、S20の嵌入杆に回動可能に嵌合される」との記載は見受けられないこと、「S19を回転軸として揺動可能に連結される」との記載や「腰部骨格に備えた嵌入杆に嵌合される嵌合穴を備えている」との記載は見受けられないこと、及び、「胸部骨格連結部は、腹骨格部との連結部においてS9を回転軸として揺動可能に連結される」との記載は見受けられないことを主張している。しかし、甲第3号証には、「S17とS18をS19で連結する。さらにS18とS20を連結する。」(甲第3号証第1欄第26行乃至第27行)と記載されているとともにその連結構造が図1と図3に示されており、「S8とS7をS9で連結する。」(甲第3号証第1欄第39行)と記載されているとともにその連結構造が図1と図2に示されており、「連結した部分は多少力を加えないと動かない半固定状態で屈曲、回動する。」(甲第3号証第2欄第1行乃至第2行)と記載されているから、被請求人が指摘する前記各文言の記載はなくても、当業者であれば「S18が、S20の嵌入杆に回動可能に嵌合される」こと、「S19を回転軸として回動可能に連結される」こと、「腰部骨格に備えた嵌入杆に嵌合される嵌合穴を備えている」こと及び「胸部骨格連結部は、腹骨格部との連結部においてS9を回転軸として回動可能に連結される」ことを容易に理解できる。
また、被請求人は、甲第3号証の人体像制作用芯材は骨格構造のみで自立するのではなく、あくまでも骨格構造の足を台座上に固定しなければならないものである旨主張している。しかし、甲第3号証の段落0005には「例えばぬいぐるみ人形のような持ち運び自由な人体像を製作する場合は、屈曲、回動部分を外れないようにし、一部、もしくは全部を半固定状態で製作してもよい。尚、固定の仕方は別に定めない。」と記載されており、ぬいぐるみ人形のような持ち運び自由な人体像の製作に当たって骨格構造の足を台座上に固定してしまうとは、到底考えられないから、甲第3号証の人体像制作用芯材の骨格構造は、その足を台座上に固定しなければならないものではなく、当該足を台座上から分離することも可能なものといえる。なお、自立が可能であることは訂正請求1による訂正後の請求項1の記載中に特定されていない。したがって、被請求人の主張は、いずれも妥当性に欠けるものであって失当である。

(イ)無効理由3及び無効理由4(特許法第36条第6項第1号及び第2号違反)
訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明は、「前記腰部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において前後・左右方向に揺動可能に連結されるとともに、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え、」という事項及び「前記胸部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において前後・左右方向に揺動可能に連結されるとともに、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え、」という事項を発明特定事項として有している。しかし、本件特許の発明の詳細な説明に記載されている訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明の実施形態は「腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56は、それぞれが前後左右に回動可能(図8中、矢印Y1乃至Y4で示す前後方向、矢印Y5乃至Y8で示す左右方向)で、」とされており(段落【0019】参照)、「揺動」なる語は見当たらず、また、図8中にも「揺動」なる語は見当たらない。一方、「揺動」なる語の語意(観念)は「ゆれ動く」であり、「回動」なる語の語意(観念)は「正逆両方向に円運動する」である(甲第7号証の第179頁及び第180頁参照)から、「揺動」なる語の語意(観念)と「回動」なる語の語意(観念)は異なるものである。
したがって、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明が発明の詳細な説明に記載されている発明の実施形態に使用されている「回動」なる語の語意(観念)とは語意(観念)が異なる「揺動」なる語を使用して特定されている点において、本件特許の明細書でサポートされておらず(「前後・左右に揺動」という概念説明が本件特許の明細書に存在しない)、また依然として「揺動」概念自体の意味が不明であり、クレーム文言として不明確である。したがって、訂正請求1による訂正後の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないから、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

ウ 訂正請求2による訂正後の請求項1記載の発明(訂正発明1)に係る特許に対する無効理由の詳細
(ア)訂正発明1と第1商品発明の一致点
「腹骨格部」が「前後方向に回動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される腰部骨格と結合している部材を一端側に備え」る構成及び「腹骨格部」が「前後方向に回動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される胸部骨格連結部を他端側に備え」る構成を第1商品発明が有していることは、甲第1号証の18における写真41?写真43や甲第1号証の19における写真44?写真46から明らかである。
また、「腰部骨格と結合している部材」が「分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともに一体に連結され」る構成及び「胸部骨格連結部」が分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともに一体に連結され」る構成を第1商品が有していることは、甲第1号証の20における『3《ボディフレームの組み立て》』から明らかである。
よって、訂正発明1と第1商品発明とは次の点で一致していると認められる。(当審注:下線部は、当審が付した訂正請求2による訂正部分を示す。)
「着脱可能なソフトビニル製の外皮と、該外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製人形を構成する骨格構造であって、
前記骨格構造は、
左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有する左右の脚部骨格と、
外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、
外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、
左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、
前記胴部骨格は、
腰部骨格と連結される腹骨格部と、
該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成されており、
前記腹骨格部は、
前後方向に回動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される腰部骨格と結合している部材を一端側に備え、
かつ前後方向に回動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される胸部骨格連結部を他端側に備え、
前記腰部骨格と結合している部材は、
分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともに一体に連結され、 前記胸部骨格連結部は、
分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともに一体に連結され、かつ、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え、
前記腰部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位は、腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第二嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記腕部骨格は肩部の骨格を有し、
前記一連の人形骨格群を構成する前記各骨格が着脱可能である
ソフトビニル製可動人形の骨格構造。」

(イ)訂正発明1と第1商品発明の相違点
訂正発明1と第1商品発明は、以下の各点で相違する。
・相違点1
訂正発明1においては、着脱可能なソフトビニル製の外皮が、左右の脚部骨格を覆う外皮と、腰部骨格を覆う外皮と、胴部骨格を覆う外皮と、左右の腕部骨格を覆う外皮とに分割し、さらに、胴部骨格を覆う外皮が腹骨格部を覆う外皮及び胸骨格部を覆う外皮に分割して形成されているのに対して、第1商品発明においては、ラバーパーツが分割して形成されていない点。
・相違点2
訂正発明1においては、ソフトビニル製可動人形が、大型であるのに対して、第1商品発明は大型であるとはいえない点。
・相違点3
訂正発明1においては、骨格構造が足底部及び手首部を有しているのに対して、第1商品発明においては、骨格構造が足底部及び手首部を有していない点。
・相違点4
訂正発明1においては、腹骨格部が腰部骨格連結部と左右方向に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結されているのに対して、第1商品発明においては、腰部骨格と連結している部材(脚部骨格連結部材の上部)が下側ブロック部材と左右方向に回動可能でない点。
・相違点5
訂正発明1においては、腹骨格部が胸部骨格連結部と左右方向に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結されているのに対して、第1商品発明においては、胸部骨格連結部(逆U字状部材)が上側ブロック部材と左右方向に回動可能でない点。
・相違点6
訂正発明1においては、腰部骨格連結部が腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備えているのに対して、第1商品発明においては、腰部骨格と連結している部材(脚部骨格連結部材の上部)が脚部骨格連結部材の下部と一体になっている点。
・相違点7
訂正発明1においては、腰部骨格連結部及び胸部骨格連結部が分割して形成され、ネジを介して一体に連結されているのに対して、第1商品発明においては、腰部骨格と連結している部材及び胸部骨格連結部が分割して形成され、スナップフィット結合を介して一体に連結されている点。
・相違点8
訂正発明1においては、腕部骨格を覆う外皮の一端が肩部の骨格に嵌着されているのに対して、第1商品発明においては、腕部骨格を覆う外皮によって肩部の骨格が覆われている点。

(ウ)訂正発明1と第1商品発明の相違点についての検討
・相違点1について
甲第4号証に示された商品、甲第13号証に示された商品、甲第14号証及び甲第25号証に示された商品、甲第17号証に示された商品、甲第21号証に開示された発明に例示されるような周知技術を考慮すれば、ソフトビニル製の外皮を有する人形において外皮を、左右の脚部骨格を覆う外皮と、腰部骨格を覆う外皮と、胴部骨格を覆う外皮と、左右の腕部骨格を覆う外皮とに分割し、さらに、胴部骨格を覆う外皮を、腹骨格部を覆う外皮及び胸骨格部を覆う外皮に分割することは、当業者が容易に想到しうることである。従って、相違点1は格別なものとは認められない。
・相違点2について
第1商品発明において、組立てによってできあがる人形の大きさをどの程度とするかは、当業者が適宜定めることができる設計上の事項にすぎない。従って、相違点2は格別なものとは認められない。
・相違点3について
甲第14号証又は甲第25号証に示された商品、甲第17号証に示された商品、甲第26?31号証に開示された発明に例示されるように本件特許の出願前において、骨格構造を構成する脚部骨格に足底部を設けることや、腕部骨格に手首部を設けることは、周知技術であったと言える。従って、相違点3は格別なものとは認められない。
・相違点4及び相違点5について
甲第4号証に示された商品、甲第9号証に開示された発明、甲第10号証に開示された発明、甲第32号証に示された商品に例示されるように本件特許の出願前において、可動人形の関節として、前後方向だけでなく左右方向にも揺動するものは、周知技術であったと言える。また、可動人形の関節を左右方向に揺動させて所望位置で所望状態を維持し得るようにすることは、甲第10号証における段落【0013】の『この球体の表面は滑らかに形成可能であり、そうでない場合には小平面を有してもよいし、8cのように凹形に湾曲していてもよいし、細長い裂け目8dであってもよいし、また半球形の穴9-この穴内で球体が回転する-の表面に対して摩擦抵抗を生じるために、他の種類の突出部又は窪みを有していてもよい。この摩擦抵抗は、骨格状骨組みの位置を固定し、不動にするための抵抗である。』なる記載や、甲第4号証の8における写真17?写真19及び甲第4号証の9における写真20?写真22、甲第32号証の1における写真9?写真12及び写真25?写真30から明らかなとおり、本件特許の出願前において周知技術であったと言える。従って、相違点4及び相違点5は格別なものとは認められない。
・相違点6について
第1商品発明において、フレームの変形の自由度を増加するために、脚部骨格連結部材の上部と下部が鉛直方向の軸を中心として相対的に回動可能とすることは、当業者が容易に行うことができる設計変更であり、そのような相対的に回動可能な連結構造として、穴と当該穴に回動可能に嵌合する部材とからなる構造は本件特許の出願前において周知技術であったと言える。なお、甲第3号証には、前記構造を採用した『人体像制作用芯材』が開示されている。従って、相違点6は格別なものとは認められない。
・相違点7について
二つの部材を連結させる際に、スナップフィット結合を採用するか、或いは、ネジ止めを採用するかは、当業者が適宜定めることができる設計上の事項にすぎない。従って、相違点7は格別なものとは認められない。
・相違点8について
甲第9号証に開示された発明、甲第13号証に示された商品、甲第17号証に示された商品に例示されるように本件特許の出願前において、腕部骨格を覆う外皮の一端を肩部の骨格に嵌着させることは周知技術であったと言える。従って、相違点8は格別なものとは認められない。

(エ)訂正発明1の作用効果の検討
被請求人は訂正請求書2の第21頁?第29頁において、訂正発明1の特有の作用効果として(ア)?(オ)項に分けて5つの作用効果を主張している。以下において、これらの作用効果について検討する。
・(ア)項の作用効果について(訂正請求書2第22頁?第25頁参照)
被請求人は(ア)項において、揺動可能な第一の連結部位と回動(左右方向への回転)可能な第二の連結部位とを明確に区分けしたことによる作用効果として、各連結部位に掛かる負担を軽減し、揺動可能な第一の連結部位において所望な傾斜状態を所望時間維持させることの実効が図れると主張している。しかし、甲第32号証に係る商品においては、胸部と腹部とを連結する構造として、揺動可能な第一の連結部位(ボールジョイント構造)と回動可能な第二の連結部位(ソケットジョイント構造)とを区分けして設ける構造が採用されており、当該構造は訂正発明1に係る特許出願の出願日前に公知の技術であったと言える。従って、(ア)項の作用効果は訂正発明1の特有の作用効果とは言えない。
・(イ)項の作用効果について(訂正請求書2第25頁?第27頁)
被請求人は(イ)項において、腰部骨格連結部と胸部骨格連結部をそれぞれ分割された二部材で構成し、腹部骨格の一端側及び他端側を分割された二部材に嵌め込んで、その分割された二部材同士をネジ止めして連結したことによる作用効果として、ネジの締め付け程度によって、腹骨格部の一端側及び他端側と腰部骨格連結部及び胸部骨格連結部の接触部分の摩擦抵抗を調整することができると主張している。しかし、甲第4号証に示された商品においては、腹骨格部を分割された二部材で構成し、腰部骨格連結部及び胸部骨格連結部を分割された二部材に嵌め込んで、その分割された二部材同士をネジ止めした構成を採用しており、ネジの締め付け程度によって、腹骨格部と腰部骨格連結部及び胸部骨格連結部の接触部分の摩擦抵抗を調整することができる。即ち、訂正発明1と甲第4号証に示された商品とは、胸部骨格連結部と腹骨格部との関係及び腰部骨格連結部と腹骨格部との関係を逆転させただけであり、同一の作用効果を有する点で一致しているのである。よって、当業者であれば、甲第4号証に示された商品に採用されている前記構成に基づいて訂正発明1の構成を容易に想到できることは明白である。従って、(イ)項の作用効果は訂正発明1の特有の作用効果とは言えない。
なお、明細書等には、腰部骨格連結部と胸部骨格連結部をそれぞれ分割された二部材で構成したことや、その分割された二部材同士をネジ止めして連結したことが記載されていない。このような明細書等に記載されていない構成に基づく作用効果が訂正発明1の特有の作用効果であるとする被請求人の主張に関して疑問を感じる。
・(ウ)項の作用効果について(訂正請求書2第27頁)
被請求人は(ウ)項において、揺動する連結部分と回動する連結部分の双方を外皮によって覆って外部から直視できない構造としたことによる作用効果として、外観デザインを向上させることができると主張している。しかし、このような作用効果は、骨格構造を外皮で覆った人形(例えば、第1商品発明など)において当然に生じる作用効果であり、訂正発明1の特有の作用効果とは言えない。
・(エ)項の作用効果について(訂正請求書2第27頁?第28頁)
被請求人は(エ)項において、腹骨格部と胸骨格部とを双方の間で分割された外皮で覆うと共に、各骨格を着脱可能としたことによる作用効果として、骨格を外皮にセットした状態で分離連結できて運搬の利便性向上及び部品交換の簡易性を主張している。しかし、甲第9号証には、骨格を外皮にセットした状態で分離連結できる人形が開示されている。従って、(エ)項の作用効果は訂正発明1の特有の作用効果とは言えない。
・(オ)項の作用効果について(訂正請求書2第28頁?第29頁)
被請求人は(オ)項において、腕部骨格の肩部の骨格に腕部骨格を覆う外皮の一端を嵌着させたことによる作用効果として、外皮の損傷防止を主張している。しかし、甲第9号証には、腕部骨格の肩部の骨格に腕部骨格を覆う外皮の一端を嵌着させた人形が開示されている。従って、(オ)項の作用効果は訂正発明1の特有の作用効果とは言えない。

(オ)まとめ
前記の通り、訂正発明1が有する作用効果は、周知技術が有する作用効果と同一であり、周知技術よりも優れた作用効果でないことは明白である。従って、訂正発明1は、第1商品発明に対して周知技術を単に組み合わせただけのものであり、第1商品発明及び前記各甲号証に基づいて、当業者が容易に想到できる発明に該当するから、特許法第29条第2項に違反しており、同法第123条第1項第2号に基づいて無効にすべきである。

エ 訂正請求2の不適法性の詳細
(ア)訂正発明1における訂正事項1-ウについて
訂正事項1-ウにおける「左右の外皮によって覆われて、…左右の脚部骨格」なる構成には、「脚部骨格」全体を「外皮」で覆ったものが含まれると解することができるが、特許された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下それぞれ「特許請求の範囲」、「明細書」、「図面」という。又全てをまとめて「明細書等」という。)には、「脚部骨格」全体を「外皮」で覆ったものは一切記載されていない。
即ち、明細書等においては、「脚部骨格」の一部(具体的には、膝部分及び足首部分)が「外皮」で覆われていない構成が記載されている(図1及び図2参照)。
したがって、訂正事項1-ウは、特許法第134条の2第5項で準用する同法126条第3項に違反した訂正である。

(イ)訂正発明1における訂正事項1-カについて
訂正事項1-カにおける「左右の外皮によって覆われて、…左右の腕部骨格」なる構成には、「腕部骨格」全体を「外皮」で覆ったものが含まれると解することができるが、明細書等には、「腕部骨格」全体を「外皮」で覆ったものは一切記載されていない。
即ち、明細書等においては、「腕部骨格」の一部(具体的には、肘部分、手首部分及び肩部分)が「外皮」で覆われていない構成が記載されている(図1及び図2参照)。
したがって、訂正事項1-カは、特許法第134条の2第5項で準用する同法126条第3項に違反した訂正である。

(ウ)訂正発明1における訂正事項1-ケについて
先ず、被請求人が訂正請求書2第16頁において訂正事項1-ケの根拠として挙げている明細書の段落【0019】には、「腰部骨格連結部」を分割した複数の部材から構成することが記載されておらず、また、図1、図2及び図8にも、「腰部骨格連結部」を分割した状態が示されていない。
なお、被請求人が訂正請求書2第17頁において指摘しているように、図1や図8の(a)において、「腰部骨格連結部」の中央には鉛直方向に伸びる『縦線』が現れているが、特許請求の範囲及び明細書に「腰部骨格連結部」を分割する構成が記載されていないことからすれば、この『縦線』は「腰部骨格連結部」の表面に現れる模様を示していると解するのが妥当である。
次に、被請求人が訂正請求書2第16頁において訂正事項1-ケの根拠として挙げている明細書の段落【0019】には、「腰部骨格連結部」にネジを使用することが記載されていない。
また、被請求人が訂正請求書2第17頁において指摘しているように、図2及び図8の(b)において、「腰部骨格連結部」には二つの『(X)模様(当審注:前記「(X)」は「丸の中にX」を意味する。以下同様。)』が現れているが、特許請求の範囲及び明細書において「腰部骨格連結部」にネジを使用する構成が記載されていないことからすれば、この『(X)模様』は「腰部骨格連結部」の表面に現れる模様を示していると解するのが妥当である。
なお、仮に、図12の(a)などを参酌して『(X)模様』がネジの頭部分を示していると解することができたとしても、図8の(a)においてネジに該当する部材が示されておらず、また、明細書において図8の(a)の説明として「ネジを省略する」旨の断り書きがないことから、「腰部骨格連結部」が「ネジを介して一体に連結され」ていると解することは到底できない。
したがって、訂正事項1-ケは、特許法第134条の2第5項で準用する同法126条第3項に違反した訂正である。

(エ)訂正発明1における訂正事項1-コについて
先ず、被請求人が訂正請求書2第16頁において前記訂正事項の根拠として挙げている明細書の段落【0019】には、「胸部骨格連結部」を分割した複数の部材から構成することが記載されておらず、また、図1、図2及び図8にも、「胸部骨格連結部」を分割した状態が示されていない。
なお、被請求人が訂正請求書2第17頁において指摘しているように、図1や図8の(a)において、「胸部骨格連結部」の中央には鉛直方向に伸びる『縦線』が現れているが、特許請求の範囲及び明細書に「胸部骨格連結部」を分割する構成が記載されていないことからすれば、この『縦線』は「胸部骨格連結部」の表面に現れる模様を示していると解するのが妥当である。
次に、被請求人が訂正請求書2第16頁において前記訂正事項の根拠として挙げている明細書の段落【0019】には、「胸部骨格連結部」にネジを使用することが記載されていない。
また、被請求人が訂正請求書2第17頁において指摘しているように、図2及び図8の(b)において、「胸部骨格連結部」には二つの『(X)模様』が現れているが、特許請求の範囲及び明細書において「胸部骨格連結部」にネジを使用する構成が記載されていないことからすれば、この『(X)模様』は「胸部骨格連結部」の表面に現れる模様を示していると解するのが妥当である。
なお、仮に、図12の(a)などを参酌して『(X)模様』がネジの頭部分を示していると解することができたとしても、図8の(a)においてネジに該当する部材が示されておらず、また、明細書において図8の(a)の説明として「ネジを省略する」旨の断り書きがないことから、「胸部骨格連結部」が「ネジを介して一体に連結され」ていると解することは到底できない。
したがって、訂正事項1-コは、特許法第134条の2第5項で準用する同法126条第3項に違反した訂正である。

(オ)訂正請求2の不適法性の詳細のまとめ
上記(ア)ないし(エ)で述べたとおり、訂正発明1は訂正要件違反に該当し、訂正請求2は認められない。

4.被請求人の主張
(1)訂正請求2について
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、特許法第134条の2第1項第1号の「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号の「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものに該当する。また、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面の範囲内での訂正であって、何ら新規事項を追加するものではないから、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項に違反せず、同法第134条の2第5項で準用する同法第126条第4項及び5項にも違反しない。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正した特許請求の範囲に明細書中の対応箇所を整合させることを目的とするものであり、特許法第134条の2第1項第3号に規定の明りょうでない記載の釈明に該当する。訂正した請求項1の記載をそのまま記載したにすぎないものであるから、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項に違反せず、同条同項で準用する第126条第4項にも違反しない。

(2)訂正発明1の進歩性
請求人の提示した証拠には、公知性の疑義が有るものも含まれており、先行技術として認められないものもあるが、その点を無視して、仮に第1商品発明に各甲号証を単に組み合わせても、「前記骨格構造は、左右それぞれの足底部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有する左右の脚部骨格と、外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、左右それぞれの手首部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成」すること、「前記腹骨格部は、前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される腰部骨格連結部を一端側に備え、かつ前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される胸部骨格連結部を他端側に備えており、前記腰部骨格連結部は、分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え、前記胸部骨格連結部は、分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え」ること、「前記腰部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第一嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、前記胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第二嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われて」いること、及び「前記腕部骨格は肩部の骨格を有し、少なくとも前記肩部の骨格に、腕部骨格を覆う外皮の一端が嵌着されて」いることの4つの発明特定事項をそれぞれ備える点は請求人の提示した先行技術には見いだせないから、訂正発明1は新規性進歩性を有する。

(3)被請求人が提出した証拠方法(書証)
乙第4号証:「広辞苑 第六版」(株式会社岩波書店、2008年1月11日発行)の表紙、2880頁及び奥付の写し
乙第5号証:「広辞林 第六版」(三省堂、1985年3月1日発行)のの表紙、1999頁及び奥付の写し
乙第6号証:「新小辞林 第三版 特装版」(三省堂、1984年発行)の表紙、728頁及び奥付の写し
乙第7号証:「新潮国語辞典」(新装改訂版、新潮出版、1989年3月15日発行)の表紙、2035頁、2045頁及び奥付の写し
乙第10号証:株式会社バンダイの製造・販売に係る商品である「マジンガーZ EXTRA HEAVY VERSION」(第2商品)の外箱の裏面を撮影した写真
乙第11号証:「フリー百科事典ウィキペディアWikipedia」の「使途(新世紀エヴァンゲリオン)」の頁。[平成22年8月23日検索]http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%BF%E5%BE%92_(%E6%96%B0%E4%B8%96%E7%B4%80%E3%82%A8%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3)
乙第12号証:「Yahoo!JAPAN 新世紀エヴァンゲリオン 電脳補完計画 第二章」の「第三使徒サキエル」の頁。[平成22年8月23日検索]http://eva.yahoo.co.jp/kagi/machine/machine_05.html
乙第13号証:「フリー百科事典ウィキペディアWikipedia」「マジンガーZ」の頁。[平成22年8月23日検索]http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%BCZ
乙第14号証の1?6:株式会社メディコム・トイの製造・販売に係る商品である、「REAL ACTION HEROES」のシリーズものの「力石徹」の「フィギュア(人形)」を撮影した写真及び該商品に同封された使用説明書の写し
乙第15号証の1?4:株式会社メディコム・トイの製造・販売に係る商品である、「REAL ACTION HEROES」のシリーズものの「ジャッジ・ドレッド」の「フィギュア(人形)」を撮影した写真
乙第16号証の1?5:第5商品と同一の商品であると考えられる商品を撮影した写真
乙第17号証の1?5:株式会社バンダイの製造・販売に係る「プラスチックモデルキット」である「第3使徒サキエル LIMITED MODEL HG SERIES 011」に内装されているパーツの写真・パーツリストの写し・使用説明書(組み立て図)の写し
(当審注:乙第1号証の1ないし乙第1号証の5、乙第2号証の1ないし乙第2号証の9、乙第3号証、乙第8号証及び乙第9号証は、参考資料扱いとなった(「第1回口頭審理調書」参照)。)

5.口頭審理
本件審判事件につき、平成22年9月7日に特許庁第1審判廷で口頭審理が行われた。
当日の審理内容は、平成22年9月9日付け第1回口頭審理調書に記載したとおりの以下のものである。(当審注:訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明を「本件訂正請求1後発明」という。)
(1)請求人の陳述の要領
ア 請求の趣旨及び理由は、審判請求書、平成22年6月11日付け審判事件弁駁書、平成22年8月24日付け口頭審理陳述要領書及び平成22年8月27日付け上申書に記載のとおり陳述。
イ 訂正請求1が適法であると認められる場合には、本件訂正請求1後発明は、特許法第29条第1項第2号に該当し、同法第29条の規定に違反するという無効事由を有さない点については争わない。
ウ 本件訂正請求1後発明における発明特定事項と第1商品(甲第1号証の商品)の部材との対応関係について、審判請求書における新規性の議論で用いた対応関係の主張(参考図2参照)はせず、参考図1に記載のとおりの対応関係のみ主張する。平成22年6月11日付け弁駁書における、参考図2の対応関係に基づく主張(特に弁駁書第14頁第19行から第15頁第3行参照)を撤回する。
エ 甲第13号証の2の写真3を削除する(別途手続補正書により、正しい写真と差し替える)。
オ 平成22年8月27日付け上申書の第5頁第3行の「第3商品」及び同頁第5行の「第4商品」は、それぞれ、「第4商品」及び「第3商品」の誤記であるから訂正する。
(2)被請求人の陳述の要領
ア 答弁の趣旨及び理由は、平成22年5月10日付け審判事件答弁書、平成22年7月30日付け審判事件答弁書(2)、平成22年8月24日付け口頭審理陳述要領書及び平成22年9月3日付け上申書のとおり陳述。
イ 乙第1号証の1ないし乙第1号証の5、乙第2号証の1ないし乙第2号証の9、乙第3号証、乙第8号証及び乙第9号証は、参考資料扱いとする。
ウ 第1商品、第2商品(甲第4号証の商品)及び第3商品(甲第13号証の商品)が本件特許出願前に発売されたという事実(実際に着脱可能に組み立てられたという事実ではない。)について争わない。
エ 甲第13号証の4の写真5の右側に示された物品がソフビ製であることについては争わない。

6.当審の判断
(1)訂正請求2について
ア 訂正事項1について
(ア)訂正事項1-アについて
訂正事項1-アは、「ソフトビニル製の外皮と、該外皮とは別体で」との記載を「分割して形成され、それぞれが着脱可能なソフトビニル製の外皮と、該それぞれの外皮とは別体で」と訂正することにより、「ソフトビニル製の外皮」について減縮するものである。そして、当該訂正事項は、願書に添付した明細書の段落【0008】の「……これら各骨格外周に備えられる人形外皮群……」との記載、段落【0007】の「次に、上述した人形骨格群に取り付けられるソフトビニル製の人形外皮群……」との記載、段落【0027】の「ソフトビニル製の人形外皮群は、上記夫々の骨格外周に備えられる左右の脚部外皮Fと、腰部外皮Gと、胴部外皮Hと、腕部外皮Jと、頭部外皮Kとで構成されており、夫々の外皮は例えばスラッシュ成形により形成されている。」との記載及び段落【0037】の「……着脱可能で、かつ夫々の外皮も着脱可能であるため……できる。……組み立て・分解が成し得る。」との記載並びに各図面から、各外皮部分が分割されていることが見て取れることに基づくものである。したがって、訂正事項1-アは、特許請求の範囲を減縮することを目的として願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において訂正したものである。

(イ)訂正事項1-イについて
訂正事項1-イは、「骨格構造であって」の直後に「前記骨格構造は、」を挿入することにより、一連の人形骨格群を構成しているのが骨格構造であることを文言上明りょうにしたものである。したがって、訂正事項1-イは、意味の変更を伴うことがなく、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において訂正したものであることは明らかであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。

(ウ)訂正事項1-ウについて
訂正事項1-ウは、「左右の脚部骨格と、」との記載を、「左右それぞれの足底部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有する左右の脚部骨格と、」と訂正することにより、「左右の脚部骨格」について減縮するものである。
請求人は、訂正事項1-ウについて、願書に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「明細書等」という。)には、脚部骨格全体を外皮で覆ったものは一切記載されておらず、脚部骨格の一部が外皮で覆われていない構成が記載されているのみであるから、上記訂正は、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に違反している旨主張している(「弁駁書2」の「5(I)○1(当審注:「○1」は「丸の中に1」を意味する。以下同様。)」参照。)から、この点について以下検討する。
当該訂正事項は、願書に添付した明細書の段落【0010】の「左右の脚部骨格Aは、足首部1と、膝部15と、これら足首部1と膝部15との間に備えられる脛用補強連結杆29と、脚付け根部31と、この脚付け根部31と上記膝部15との間に備えられる太腿用補強連結杆42とで構成されている。」との記載、段落【0011】の「足首部1は、図3(a)(b)に示すように、足部外皮F1の開口縁98が嵌着される足部外皮嵌着部2と、下脚外皮F2の下端開口縁100が嵌着される下脚外皮下端嵌着部7とを有すると共に、該両者2,7の連結部にて回動可能な構造を有し、さらに足部外皮嵌着部2の底面には、足部外皮F1内に内装されると共に、その足部外皮F1内の指先方向へと延びる足底部129を一体的に備えて構成されている。」との記載、段落【0028】の「左右の脚部外皮Fは、足部外皮F1と下脚外皮F2と上脚外皮F3からなり、足部外皮F1は、……全体中空の足形状に形成されている。」との記載、段落【0029】の「下脚外皮F2は、図1乃至図4に示すように、……全体中空筒状に形成され、……」との記載及び段落【0030】の「上脚外皮F3は、図1,図2,図4,図5に示すように、……全体中空筒状に形成され、……」との記載並びに各図面から、左右の脚部骨格が、左右それぞれの足底部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有することが見て取れることに基づくものである。したがって、訂正事項1-ウは、特許請求の範囲を減縮することを目的として明細書等に記載した事項の範囲内において訂正したものである。
そして、上記訂正事項1-ウの記載は、「左右の脚部骨格」が「外皮」によって「覆われている」ことを発明特定事項としており、その1実施形態として明細書等に外皮が左右の脚部骨格を覆うものが開示されているのであるから、「左右の脚部骨格」が「外皮」によって全体が「覆われている」という実施形態が明細書等に一切記載されていないことを理由に上記訂正事項1-ウの訂正が不適法である旨の請求人の主張は理由がない。

(エ)訂正事項1-エについて
訂正事項1-エは、「該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、」との記載を、「外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、」と訂正することにより、「該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格」について減縮するものである。そして、当該訂正事項は、願書に添付した明細書の段落【0018】の「腰部骨格Bは、図6(a)(b)に示すように、少なくとも、左右の脚付け根部31,31の腰部骨格連結部37と回動可能に連結する脚付け根部側連結部44と、胴部骨格Cの下端側と連結する胴部下端骨格連結部46とを備えて構成されている。図6(a)(b)に示す本実施形態に基づいて具体的に説明すると、腰部外皮Gの腰部骨格内装空間107に固定される本体45と、該本体45から水平方向両側に延びる脚付け根部側連結部44と、該本体45から上方に延びる胴部下端骨格連結部46とで構成されている。この胴部下端骨格連結部46は、一端を開口した中空筒状に形成され、該開口47を介して胴部下端の骨格を嵌合する嵌合穴48を設けている。そして、脚付け根部側連結部44の中空筒部に上記脚付け根部31の腰部骨格連結部37の腰部骨格連結杆38を嵌入して回動可能に連結すると共に、胴部下端骨格連結部46の嵌合穴48に胴部下端の骨格を嵌合して連結する。……」との記載、段落【0031】の「腰部外皮Gは、図1,図2に示すように、腰部骨格Bを内装する空間107を有すると共に、上端に胴部外皮Hの下端H1を挿入する開口108を有し、かつ股間位置左右には、左右の脚付け根部31を連結する連結空間109を有する全体中空の腰部形状に形成されている。……」との記載並びに各図面から、腰部骨格が外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有することが見て取れることに基づくものである。したがって、訂正事項1-エは、特許請求の範囲を減縮することを目的として明細書等に記載した事項の範囲内において訂正したものである。

(オ)訂正事項1-オについて
訂正事項1-オは、「該腰部骨格に連結される胴部骨格と、」との記載を、「外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、」と訂正することにより、「該腰部骨格に連結される胴部骨格」について減縮するものである。そして、当該訂正事項は、願書に添付した明細書の段落【0019】の「胴部骨格Cは、図7および図8に示すように、後述する腹部外皮H2内に内装される腹骨格部C1(図8)と胸部外皮H3内に内装される胸骨格部C2(図7)の二部構成からなり、少なくとも、腰部骨格Bの上端側と連結する腰部骨格連結部51と、左右の腕部骨格Dと夫々連結する腕部骨格連結部58とを備えて構成されている。……」との記載、段落【0032】の「胴部外皮Hは、図1,図2に示すように、胴部骨格Cを内装する空間110を有すると共に、上端に首部骨格Eの首部外皮挿着部89を挿着する開口111を有し、かつ両肩位置には左右の腕部骨格Dを連結する連結空間112を有する全体中空の胴部形状に形成されている。また、本実施形態では、この胴部外皮Hを、腹部外皮H2と胸部外皮H3の二部構成としている。腹部外皮H2は、上下端を開口した内部中空状で、かつ所望な外観形状とし、腹骨格部C1の第一嵌入杆54を下端開口113から突出させると共に、第二嵌入杆56を上端開口114から突出させた状態でその中空部115に腹骨格部C1を内装する。また、この腹部外皮H2は、下端H1を腰部外皮G内に挿入すると共に、上端H4を胸部外皮H3内に挿入している。一方、胸部外皮H3は、図1,図2に示すように、首部骨格Eの首部外皮挿着部89を嵌入する首部外皮H5が、上端に一体的に形成されると共に、下端H6を開口した内部中空状で、かつ所望な外観形状とし、その中空部116に胸骨格部C2を内装し、腹部外皮H2の上端H4を下端開口117から挿入する。左右の腕部骨格連結部58は、夫々連結空間112に位置する。……」との記載並びに各図面から、胴部骨格が外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有することが見て取れることに基づくものである。したがって、訂正事項1-オは、特許請求の範囲を減縮することを目的として明細書等に記載した事項の範囲内において訂正したものである。

(カ)訂正事項1-カについて
訂正事項1-カは、「該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で」との記載を、「左右それぞれの手首部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で」と訂正することにより、「該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格」について減縮するものである。
請求人は、訂正事項1-カについて、明細書等には、腕部骨格全体を外皮で覆ったものは一切記載されておらず、腕部骨格の一部が外皮で覆われていない構成が記載されているのみであるから、上記訂正は、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に違反している旨主張している(「弁駁書2」の「5(I)○2」参照。)から、この点について以下検討する。
当該訂正事項は、願書に添付した明細書の段落【0022】の「左右の腕部骨格Dは、図10乃至図12に示すように、胴部外皮Hと上腕外皮J1の上端を連結する肩部59と、該上腕外皮J1の下端と下腕外皮J2の上端を連結する肘部68と、該下腕外皮J2の下端と手部外皮J3を連結する手首部78とで構成されている。」との記載、段落【0026】の「また、本実施形態では採用していないが、上記肩部59の上腕外皮上端嵌着部62と肘部68の上腕外皮下端嵌着部69との間にわたって、所望長さの上腕用補強連結杆(図示せず)が嵌脱自在に掛け渡され、肘部68の下腕外皮上端嵌着部70と手首部78の下腕外皮下端嵌着部79との間にわたって、所望長さの下腕用補強連結杆(図示せず)が嵌脱自在に掛け渡されている骨格構造としてもよい。これら補強連結杆は、上述した脛用または太腿用の補強連結杆29,42と同等の構成である。その嵌合連結構成も上述した脛用または太腿用の補強連結杆29,42の嵌合連結構成を採用できる。」との記載、段落【0033】の「左右の腕部外皮Jは、図1,図2,図10乃至図12に示すように、左右の腕部骨格Dを被覆して備えられる上腕外皮J1,下腕外皮J2及び手部外皮J3とからなる。上腕外皮J1は、図1,図2,図10,図11に示すように、上端に設けた開口118の径方向内方に、上記肩部59の上腕外皮上端嵌着部62の嵌合凹部(段部)64に嵌着される開口縁119を突設すると共に、下端に設けた開口120の径方向に、上記肘部68の上腕外皮下端嵌着部69の嵌合凹部(段部)72に嵌着される開口縁121を突設してなる全体中空筒状に形成されている。……」との記載、段落【0034】の「下腕外皮J2は、図1,図2,図11,図12に示すように、上端に設けた開口122の径方向内方に、上記肘部68の下腕外皮上端嵌着部70の嵌合凹部(段部)72に嵌着される開口縁123を突設すると共に、下端に設けた開口124の径方向に、上記手首部78の下腕外皮下端嵌着部79の嵌合凹部(段部)88に嵌着される開口縁125を突設してなる全体中空筒状に形成されている。……」との記載及び段落【0035】の「手部外皮J3は、図1,図2,図12に示すように、開口126の径方向内方に、上記手首部78の手部外皮嵌着部82の嵌合凹部(段部)84に嵌着される開口縁127を突設した全体中空の手形状に形成されている。……」との記載並びに各図面から、左右の腕部骨格が左右それぞれの手首部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有することが見て取れることに基づくものである。したがって、訂正事項1-カは、特許請求の範囲を減縮することを目的として明細書等に記載した事項の範囲内において訂正したものである。
そして、上記訂正事項1-カの記載は、「左右の腕部骨格」が「外皮」によって「覆われている」ことを発明特定事項とすることを示しており、その1実施形態として明細書等に外皮が左右の腕部骨格を覆うものが開示されているのであるから、「左右の腕部骨格」が「外皮」によって全体が「覆われている」という実施形態が明細書等に一切記載されていないことを理由に上記訂正事項1-カの訂正が不適法である旨の請求人の主張は理由がない。

(キ)訂正事項1-キについて
訂正事項1-キは、「腰部骨格と連結される腹骨格部と、該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成されており、」との記載を、「腰部骨格と連結される腹骨格部と、該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成され、前記腹骨格部と前記胸骨格部は、双方の間で分割されたそれぞれの外皮で覆われており、」と訂正することにより、「腰部骨格と連結される腹骨格部と、該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成されて」いる「腹骨格部」と「胸骨格部」について減縮するものである。そして、当該訂正事項は、願書に添付した明細書の段落【0032】の「胴部外皮Hは、図1,図2に示すように、胴部骨格Cを内装する空間110を有すると共に、上端に首部骨格Eの首部外皮挿着部89を挿着する開口111を有し、かつ両肩位置には左右の腕部骨格Dを連結する連結空間112を有する全体中空の胴部形状に形成されている。また、本実施形態では、この胴部外皮Hを、腹部外皮H2と胸部外皮H3の二部構成としている。腹部外皮H2は、上下端を開口した内部中空状で、かつ所望な外観形状とし、腹骨格部C1の第一嵌入杆54を下端開口113から突出させると共に、第二嵌入杆56を上端開口114から突出させた状態でその中空部115に腹骨格部C1を内装する。また、この腹部外皮H2は、下端H1を腰部外皮G内に挿入すると共に、上端H4を胸部外皮H3内に挿入している。一方、胸部外皮H3は、図1,図2に示すように、首部骨格Eの首部外皮挿着部89を嵌入する首部外皮H5が、上端に一体的に形成されると共に、下端H6を開口した内部中空状で、かつ所望な外観形状とし、その中空部116に胸骨格部C2を内装し、腹部外皮H2の上端H4を下端開口117から挿入する。左右の腕部骨格連結部58は、夫々連結空間112に位置する。……」との記載並びに各図面から、腹骨格部と胸骨格部は、双方の間で分割されたそれぞれの外皮で覆われていることが見て取れることに基づくものである。したがって、訂正事項1-キは、特許請求の範囲を減縮することを目的として明細書等に記載した事項の範囲内において訂正したものである。

(ク)訂正事項1-クについて
訂正事項1-クは、「腹骨格部は、その一端側に腰部骨格連結部を備えるとともに、他端側に胸部骨格連結部を備え、」との記載を、「前記腹骨格部は、前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される腰部骨格連結部を一端側に備え、かつ前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される胸部骨格連結部を他端側に備えており、」と訂正することにより、「腹骨格部」の「腰部骨格連結部」と「胸部骨格連結部」について減縮するものである。
請求人は、訂正事項1-クについて、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に違反している旨主張している(「弁駁書1」の「6(1)-1.ii.」参照。)から、この点について以下検討する。
訂正事項1-クによって訂正された発明特定事項のうち、「腰部骨格連結部」と「胸部骨格連結部」がそれぞれ「前後・左右に揺動可能で」あるという事項は、願書に添付した明細書の段落【0019】の「……腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56は、夫々が前後左右に回動可能(図8中、矢印Y1乃至Y4で示す前後方向、矢印Y5乃至Y8で示す左右方向)……」との記載を根拠としている。訂正前における「揺動可能」という文言については、文字どおり「揺れ動くことが可能」の意味であることは当業者ならずも一般人でも理解できることであるが、その外延については、明細書の発明の詳細な説明の記載も参酌して合理的に解釈されるべきである。そこで、明細書の発明の詳細な説明の記載も参酌すると、少なくとも、腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56の夫々が前後左右に回動可能(図8中、矢印Y1乃至Y4で示す前後方向、矢印Y5乃至Y8で示す左右方向)であるという明細書に記載された実施態様を含むように解釈することが妥当である。この場合、「揺動可能」という文言には、「回動」という文言との関係で、次の二つの解釈が可能であると考えられる。すなわち、1)一つの平面内でのみ回動可能な状態(前後方向のみ又は左右方向のみに回動可能な状態)も含むと解釈する、すなわち回動状態を包含する意味での揺れ動くことが可能である状態という広義の意味、2)通常の回動、すなわち、一つの平面内でのみ回動可能な状態と区別する意味(したがって、一つの平面内でのみ回動可能な状態を含まない意味)での揺れ動くことが可能である状態という狭義の意味の二つの解釈が可能であると考えられる。「揺動」の意味が前者の広義の意味であった場合、訂正後においては、「前後・左右方向に揺動可能」と規定されているから特許請求の範囲の減縮に該当すると認められる。「揺動」の意味が後者の狭義の意味であった場合、訂正後においては、「前後・左右方向に揺動可能」と規定されているから、一つの平面内でのみ回動可能な状態とは異なるばかりでなく、前後・左右方向に揺れ動くことが可能であることに限定されるから、やはり、特許請求の範囲の減縮に該当すると認められる。そして、前後・左右方向に揺れ動くことが可能であるとする訂正事項は、訂正前の特許請求の範囲の記載及び明細書の段落【0019】の記載並びに【図2】及び【図8】に基づいて訂正したものであるから、明細書等に記載した事項から自明の範囲内において訂正したものであることは明らかである。したがって、訂正事項1-クのうち、「腰部骨格連結部」と「胸部骨格連結部」がそれぞれ「前後・左右に揺動可能で」あるとした訂正が不適法である旨の請求人の主張は理由がない。
また、訂正事項1-クによって訂正された発明特定事項のうち、「腰部骨格連結部」と「胸部骨格連結部」がそれぞれ「所望位置で所望状態を維持し得るように連結される」という事項は、願書に添付した明細書の段落【0019】の「……図7又は図8の本実施形態に基づいて具体的に説明すると、図8(a)(b)に示す腹骨格部C1は、両端に設けた夫々の第一玉部(図面上で下側)52と第二玉部(図面上で上側)53を、夫々回動可能に嵌め込んだ断面視略U字状の腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56からなり、該腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56の夫々の端部には、第一嵌入杆54と第二嵌入杆55が夫々一体的に立設されている。また、特に限定されはしないが、本実施形態において、第一玉部52と第二玉部53を嵌め込む夫々の嵌め込み部51a・51aと56a・56aは、各第一玉部52と第二玉部53を嵌め込んだ時に、腰部骨格連結部51および胸部骨格連結部56が所望位置でその状態(例えば、左右いずれかの方向に所望角度をもって傾斜している状態)を維持できるように、各第一玉部52と第二玉部53が夫々緊密に摺接するよう構成するのが好ましい。……なお、本実施形態では、胴部骨格Cを、腹骨格部C1と胸骨格部C2の二部構成とし、かつ腰部骨格Bと腹骨格部C1との連結部およびこの腹骨格部C1と胸骨格部C2との連結部を夫々玉52,53を介して回動可能な構造としたため、腰位置から胸位置までの動きが微調整でき、上半身の様々かつ細かい動きが表現できる。すなわち、本実施形態の腹骨格部C1構成を採用したことで、腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56は、夫々が前後左右に回動可能(図8中、矢印Y1乃至Y4で示す前後方向、矢印Y5乃至Y8で示す左右方向)で、かつ夫々が水平方向にも所望範囲で移動(図8中、矢印Z1乃至Z4に示す水平方向)することができるため、人形の胴体部分の様々な動きが表現でき、色々な姿勢のバリエーションが楽しめる。……」との記載、段落【0037】の「……すなわち、本発明特有の骨格構造を採用したことで、大型の人形において外皮部分をソフトビニル製で構成しても、自立が可能で、かつ様々な姿態を一定時間維持できると共に、軽量でかつ軟質なため、落下・転倒などしても安全で、破損も防げる。……」との記載並びに各図面から、「腰部骨格連結部」と「胸部骨格連結部」がそれぞれ「所望位置で所望状態を維持し得るように連結される」ことが見て取れることに基づくものである。したがって、訂正事項1-クは、特許請求の範囲を減縮することを目的として明細書等に記載した事項の範囲内において訂正したものである。

(ケ)訂正事項1-ケについて
訂正事項1-ケは、「前記腰部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において揺動可能に連結されるとともに、」を、「前記腰部骨格連結部は、分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、」とすることにより、「腰部骨格連結部」について減縮するものである。
請求人は、訂正事項1-ケについて、明細書等には、「腰部骨格連結部」が「分割して形成され」ていること、及び「ネジを介して一体に連結され」ていることは記載されておらず、上記訂正は、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に違反している旨主張している(「弁駁書2」の「5(I)○3」参照。)から、この点について以下検討する。
願書に添付した明細書の段落【0019】の「……図7又は図8の本実施形態に基づいて具体的に説明すると、図8(a)(b)に示す腹骨格部C1は、両端に設けた夫々の第一玉部(図面上で下側)52と第二玉部(図面上で上側)53を、夫々回動可能に嵌め込んだ断面視略U字状の腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56からなり、該腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56の夫々の端部には、第一嵌入杆54と第二嵌入杆55が夫々一体的に立設されている。……」との記載がある。また、【図1】【図2】【図8】(a)(b)から、腰部骨格連結部51の正面図(【図1】【図8】(a))には、上下方向に縦線があることと、腰部骨格連結部51の側面図(【図1】【図8】(b))には、上下方向の縦線はなく第一玉部52に重ならない位置に「○」内に「X」が書かれた記号が、腰部骨格連結部51に2つ記載されていることが見て取れる。さらに、【図12】(a)(側面図)には、「○」内に「X」が書かれた記号に87という枝番が記載されていることと、【図12】(b)(正面図)に手首部78の上下方向に縦線があることが見て取れ、明細書の段落【0025】に「……そして、上記連結片81を、被連結部86の嵌入溝85に嵌入すると共に、ネジ87を介して回動可能に一体的に連結される。なお、本実施形態において、上記連結片81は略玉状の被連結部86の径と同径とし、連結時に両者81,86によって全体玉状を構成している。……」と記載されていることから、「○」内に「X」が書かれた記号はネジを示しており、ネジを介して一体的に連結される部材はネジの側面方向(【図12】(b))から見ると、上下方向に縦線があることが見て取れる。これらの記載および図面から、正面図及び側面図を記載した図面の読み方の技術常識を参酌することにより、腰部骨格連結部51は、正面図から見て左右方向に分割された部材を2つのネジで第一玉部52を挟み込むように一体的に連結されたものであることが開示されていることは明らかである。したがって、「腰部骨格連結部」が「分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され」たものと減縮する上記訂正事項は、特許請求の範囲を減縮することを目的として明細書等に記載した事項の範囲内において訂正したものである。
以上のことから、訂正事項1-ケに係る訂正が不適法である旨の請求人の主張は理由がない。

(コ)訂正事項1-コについて
訂正事項1-コは、「前記胸部骨格連結部は、腹骨格部との連結部において揺動可能に連結されるとともに、」を、「前記胸部骨格連結部は、分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、」とすることにより、「胸部骨格連結部」について減縮するものである。
請求人は、訂正事項1-コについて、明細書等には、「胸部骨格連結部」が「分割して形成され」ていること、及び「ネジを介して一体に連結され」ていることは記載されておらず、上記訂正は、特許法第134条の2第1項各号に列挙されたいずれの目的にも該当しないこと、及び、新たな技術的事項を導入するものであるから特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に違反している旨主張している(「弁駁書2」の「5(I)○4」参照。)から、この点について以下検討する。
願書に添付した明細書の段落【0019】の「……図7又は図8の本実施形態に基づいて具体的に説明すると、図8(a)(b)に示す腹骨格部C1は、両端に設けた夫々の第一玉部(図面上で下側)52と第二玉部(図面上で上側)53を、夫々回動可能に嵌め込んだ断面視略U字状の腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56からなり、該腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56の夫々の端部には、第一嵌入杆54と第二嵌入杆55が夫々一体的に立設されている。……」との記載がある。また、【図1】【図2】【図8】(a)(b)から、胸部骨格連結部56の正面図(【図1】【図8】(a))には、上下方向に縦線があることと、胸部骨格連結部56の側面図(【図1】【図8】(b))には、上下方向の縦線はなく第二玉部53に重ならない位置に「○」内に「X」が書かれた記号が、腰部骨格連結部51に2つ記載されていることが見て取れる。さらに、【図12】(a)(側面図)には、「○」内に「X」が書かれた記号に87という枝番が記載されていることと、【図12】(b)(正面図)に手首部78の上下方向に縦線があることが見て取れ、明細書の段落【0025】に「……そして、上記連結片81を、被連結部86の嵌入溝85に嵌入すると共に、ネジ87を介して回動可能に一体的に連結される。なお、本実施形態において、上記連結片81は略玉状の被連結部86の径と同径とし、連結時に両者81,86によって全体玉状を構成している。……」と記載されていることから、「○」内に「X」が書かれた記号はネジを示しており、ネジを介して一体的に連結される部材はネジの側面方向(【図12】(b))から見ると、上下方向に縦線があることが見て取れる。これらの記載および図面から、正面図及び側面図を記載した図面の読み方の技術常識を参酌することにより、胸部骨格連結部56は、正面図から見て左右方向に分割された部材を2つのネジで第二玉部53を挟み込むように一体的に連結されたものであることが開示されていることは明らかである。したがって、「胸部骨格連結部」が「分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され」たものと減縮する上記訂正事項は、特許請求の範囲を減縮することを目的として明細書等に記載した事項の範囲内において訂正したものである。
以上のことから、訂正事項1-コに係る訂正が不適法である旨の請求人の主張は理由がない。

(サ)訂正事項1-サについて
訂正事項1-サは、「第二嵌入杆を備えたことを特徴とする」との記載を、「第二嵌入杆を備え、前記腰部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第一嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第二嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、前記腕部骨格は肩部の骨格を有し、少なくとも前記肩部の骨格に、腕部骨格を覆う外皮の一端が嵌着されており、前記一連の人形骨格群を構成する前記各骨格が着脱可能であることを特徴とする」と訂正することにより、「腰部骨格連結部」の「外皮」による覆われ方、「胸部骨格連結部」の「外皮」による覆われ方、「肩部の骨格」と「腕部骨格を覆う外皮」の関係及び、「一連の人形骨格群を構成する前記各骨格」をそれぞれ減縮するものである。
まず、「前記腰部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第一嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており」という事項について検討する。願書に添付した明細書の段落【0032】の「……また、本実施形態では、この胴部外皮Hを、腹部外皮H2と胸部外皮H3の二部構成としている。腹部外皮H2は、上下端を開口した内部中空状で、かつ所望な外観形状とし、腹骨格部C1の第一嵌入杆54を下端開口113から突出させると共に、第二嵌入杆56を上端開口114から突出させた状態でその中空部115に腹骨格部C1を内装する。また、この腹部外皮H2は、下端H1を腰部外皮G内に挿入すると共に、上端H4を胸部外皮H3内に挿入している。」という記載から、腹部外皮H2から腹骨格部C1の第一嵌入杆54を下端開口113から突出させることと、腹部外皮H2は下端H1を腰部外皮G内に挿入することが読み取れる。また、明細書の段落【0019】の「胴部骨格Cは、図7および図8に示すように、後述する腹部外皮H2内に内装される腹骨格部C1(図8)と胸部外皮H3内に内装される胸骨格部C2(図7)の二部構成からなり、少なくとも、腰部骨格Bの上端側と連結する腰部骨格連結部51と、左右の腕部骨格Dと夫々連結する腕部骨格連結部58とを備えて構成されている。……図7又は図8の本実施形態に基づいて具体的に説明すると、図8(a)(b)に示す腹骨格部C1は、両端に設けた夫々の第一玉部(図面上で下側)52と第二玉部(図面上で上側)53を、夫々回動可能に嵌め込んだ断面視略U字状の腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56からなり、該腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56の夫々の端部には、第一嵌入杆54と第二嵌入杆55が夫々一体的に立設されている。また、特に限定されはしないが、本実施形態において、第一玉部52と第二玉部53を嵌め込む夫々の嵌め込み部51a・51aと56a・56aは、各第一玉部52と第二玉部53を嵌め込んだ時に、腰部骨格連結部51および胸部骨格連結部56が所望位置でその状態(例えば、左右いずれかの方向に所望角度をもって傾斜している状態)を維持できるように、各第一玉部52と第二玉部53が夫々緊密に摺接するよう構成するのが好ましい。このとき、嵌め込み部51a・51aと56a・56aは、夫々の曲面の曲率が各第一玉部52と第二玉部53の曲率と同一若しくは近似するものとする。なお、嵌め込み部51a・51aと56a・56aは本実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。そして、この第一嵌入杆54が、腰部骨格Bの胴部下端骨格連結部46の嵌合穴48に嵌合連結され、第二嵌入杆55が、胸骨格部C2に連結される。……」という記載及び【図1】【図2】【図8】(a)(b)から、腹骨格部と揺動可能に連結される部位である第一玉部52を保持する部位は腹部外皮H2で覆われ、第一嵌入杆54と腰部骨格の嵌合穴48とが回動可能に連結される部位は、腰部外皮Gで覆われることが見て取れる。したがって、上記記載及び図面から、「前記腰部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第一嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており」という事項は、明細書等に記載した事項であることは明らかであり、上記事項を付加する訂正は、特許請求の範囲を減縮することを目的として明細書等に記載した事項の範囲内において訂正したものであると認められる。
次に、「前記胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第二嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており」という事項について検討する。願書に添付した明細書の段落【0032】の「……また、本実施形態では、この胴部外皮Hを、腹部外皮H2と胸部外皮H3の二部構成としている。腹部外皮H2は、上下端を開口した内部中空状で、かつ所望な外観形状とし、腹骨格部C1の第一嵌入杆54を下端開口113から突出させると共に、第二嵌入杆56を上端開口114から突出させた状態でその中空部115に腹骨格部C1を内装する。また、この腹部外皮H2は、下端H1を腰部外皮G内に挿入すると共に、上端H4を胸部外皮H3内に挿入している。」という記載から、腹部外皮H2から腹骨格部C1の第二嵌入杆56を上端開口114から突出させることと、腹部外皮H2は上端H4を胸部外皮H3内に挿入することが見て取れる。また、明細書の段落【0019】の「胴部骨格Cは、図7および図8に示すように、後述する腹部外皮H2内に内装される腹骨格部C1(図8)と胸部外皮H3内に内装される胸骨格部C2(図7)の二部構成からなり、少なくとも、腰部骨格Bの上端側と連結する腰部骨格連結部51と、左右の腕部骨格Dと夫々連結する腕部骨格連結部58とを備えて構成されている。……図7又は図8の本実施形態に基づいて具体的に説明すると、図8(a)(b)に示す腹骨格部C1は、両端に設けた夫々の第一玉部(図面上で下側)52と第二玉部(図面上で上側)53を、夫々回動可能に嵌め込んだ断面視略U字状の腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56からなり、該腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56の夫々の端部には、第一嵌入杆54と第二嵌入杆55が夫々一体的に立設されている。また、特に限定されはしないが、本実施形態において、第一玉部52と第二玉部53を嵌め込む夫々の嵌め込み部51a・51aと56a・56aは、各第一玉部52と第二玉部53を嵌め込んだ時に、腰部骨格連結部51および胸部骨格連結部56が所望位置でその状態(例えば、左右いずれかの方向に所望角度をもって傾斜している状態)を維持できるように、各第一玉部52と第二玉部53が夫々緊密に摺接するよう構成するのが好ましい。このとき、嵌め込み部51a・51aと56a・56aは、夫々の曲面の曲率が各第一玉部52と第二玉部53の曲率と同一若しくは近似するものとする。なお、嵌め込み部51a・51aと56a・56aは本実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。そして、この第一嵌入杆54が、腰部骨格Bの胴部下端骨格連結部46の嵌合穴48に嵌合連結され、第二嵌入杆55が、胸骨格部C2に連結される。図7(a)(b)に示す胸骨格部C2は、下方向に開口する中空筒状の嵌合穴57を備えると共に、水平方向両側に左右の腕部骨格Dと夫々連結する腕部骨格連結部58を備えている。……」という記載及び【図1】【図2】【図8】(a)(b)から、腹骨格部と揺動可能に連結される部位である第二玉部53を保持する部位は腹部外皮H2で覆われ、第二嵌入杆55と胸骨格部の嵌合穴57とが回動可能に連結される部位は、胸部外皮H4で覆われることが見て取れる。したがって、上記記載及び図面から、「前記胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第二嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており」という事項は、明細書等に記載した事項であることは明らかであり、上記事項を付加する訂正は、特許請求の範囲を減縮することを目的として明細書等に記載した事項の範囲内において訂正したものであると認められる。
第3に「前記腕部骨格は肩部の骨格を有し、少なくとも前記肩部の骨格に、腕部骨格を覆う外皮の一端が嵌着されており」という事項について検討する。願書に添付した明細書の段落【0022】の「左右の腕部骨格Dは、図10乃至図12に示すように、胴部外皮Hと上腕外皮J1の上端を連結する肩部59と、該上腕外皮J1の下端と下腕外皮J2の上端を連結する肘部68と、該下腕外皮J2の下端と手部外皮J3を連結する手首部78とで構成されている。」との記載及び段落【0023】の「肩部59は、図10に示すように、前記胴部骨格Cの腕部骨格連結穴58aと連結される胴部上端骨格連結部60と、上腕外皮J1の上端開口縁119が嵌着される上腕外皮上端嵌着部62とを備えてなる。……一方、上腕外皮上端嵌着部62は、円錐台状の嵌入部63が形成されると共に、この嵌入部63から段部64を介して中央に上記連結片61を嵌入可能な嵌入溝65を備えた略玉状の被連結部66が一体的に形成されている。……また、上記段部64は、上腕外皮J1の上端開口縁119が嵌着される嵌合凹部として作用する。上記嵌入部63は、上腕外皮J1の上端開口縁119から押し込んで上腕外皮 J1内に嵌入可能な径を有する形状であれば特に限定されるものではない。また、嵌合凹部(段部)64は、本実施形態の構造に限られるものではなく、例えば嵌入部63の外周に所望溝形状をもって周設するものとしてもよい。嵌合凹部(段部)64は、一本でも複数本でもよく、さらに、その凹部形状・幅・深さなどの諸条件も任意で、上腕外皮J1の上端開口縁119の構成に応じて設計変更可能である。なお、嵌入部63は、本実施形態のように円錐台状に限らず任意形状が適宜本発明の範囲内で採用される。」との記載並びに各図面から、腕部骨格が肩部の骨格を有し、少なくとも肩部の骨格に腕部骨格を覆う外皮の一端が嵌着されていることが見て取れることに基づくものである。したがって、上記記載及び図面から、「前記腕部骨格は肩部の骨格を有し、少なくとも前記肩部の骨格に、腕部骨格を覆う外皮の一端が嵌着されており」という事項は、明細書等に記載した事項であることは明らかであり、上記事項を付加する訂正は、特許請求の範囲を減縮することを目的として明細書等に記載した事項の範囲内において訂正したものであると認められる。
第4に「前記一連の人形骨格群を構成する前記各骨格が着脱可能であることを特徴とする」という事項について検討する。願書に添付した明細書の段落【0009】の「人形骨格群は、左右の脚部骨格Aと、該左右の脚部骨格Aに連結される腰部骨格Bと、該腰部骨格Bに連結される胴部骨格Cと、該胴部骨格Cと連結される左右の腕部骨格Dおよび首部骨格Eとで構成され、左右の脚部骨格Aから左右の腕部骨格Dおよび首部骨格Eまでが一体に連結されている一連の骨格群である。……」という記載及び段落【0037】の「本発明は上述の通りの構成としたため、自立が可能で技術的構造を有すると共に、軽量・コスト安価な大型の人形を提供することができ、需要者ニーズに十分応えることができる。すなわち、本発明特有の骨格構造を採用したことで、……また、この種の従来の大型人形が高価なのに対し、本発明では、夫々の骨格が着脱可能で、かつ夫々の外皮も着脱可能であるため、搬送費用低廉となり、結果的に製品価格も低く抑えることができるため需要者ニーズに応えることができる。……」という記載から、一連の人形骨格群を構成する前記各骨格が着脱可能であることが見て取れることに基づくものである。したがって、上記記載から、「一連の人形骨格群を構成する前記各骨格が着脱可能であることを特徴とする」という事項は、明細書等に記載した事項であることは明らかであり、上記事項を付加する訂正は、特許請求の範囲を減縮することを目的として明細書等に記載した事項の範囲内において訂正したものであると認められる。
以上のことから、訂正事項1-サは、特許請求の範囲を減縮することを目的として願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において訂正したものである。

(シ)訂正事項1の小括
以上検討のとおり、訂正事項1-アないし訂正事項1-サは、いずれも特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的として、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項第1号及び第3号に該当し、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項の規定に適合することは明らかである。
そして、訂正事項1-イによる訂正は、意味の変更を伴うものではないから、訂正請求項1全体としては特許請求の範囲の減縮となっており、かつ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであり、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合することは明らかである。
したがって、訂正事項1による請求項1の訂正は、適法である。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1により訂正された特許請求の範囲の請求項1の記載に明細書の発明の詳細な説明中の対応箇所を整合させるために、訂正請求項1の記載をそのまま記載したにすぎないものであるから、特許法第134条の2第1項第3号に規定の明りょうでない記載の釈明に該当する。また、訂正事項1についてすでに検討したのと同様に、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項に適合することは明らかである。
したがって、訂正事項2による訂正は、適法である。

ウ 訂正請求2についての小括
以上のとおりであるから、平成23年3月22日付け訂正請求のうち、請求項1にかかる訂正及び明細書の発明の詳細な説明の段落【0005】に係る訂正を認める。
したがって、本件特許の請求項1に係る発明は訂正発明1であるから、以下では、訂正発明1を「本件発明」といい、特許無効審判の請求の各理由について検討する。
なお、請求項1を訂正することにより、これを引用する請求項2及び請求項3もさらに訂正されることとなるところ、当該さらなる訂正について特許無効審判が請求されていない請求項に課せられる、いわゆる独立特許要件の充足性については、本件発明に関する特許無効審判請求の各理由についての検討の後に検討する。

(2)無効理由について
ア 無効理由1について(特許法第29条第1項第2号違反)
平成22年9月9日付けの第1回口頭審理の調書に記載(上記「5.(1)イ」参照。)されているように、訂正請求1が適法であると認められる場合には、訂正請求1による訂正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第2号に該当し、同法第29条の規定に違反するという無効事由を有さない点については争わないと、請求人は述べている。上記訂正請求2は、訂正請求1で請求項1に付加された事項を含み、さらに別の事項を付加するものであり、その訂正請求2は適法であると認められた(上記「6.(1)ウ」参照。)のであるから、訂正請求2により訂正された本件特許の請求項1に係る発明である本件発明についても、特許法第29条第1項第2号に該当し、同法第29条の規定に違反するという無効事由を有さない点については争わないものと認められるから、上記の請求人の陳述を採用し、無効理由1については争いがないものとし、検討は行わない。

イ 無効理由3及び無効理由4について(特許法第36条第6項第1号及び第2号)
「前後・左右方向に揺動可能」とは、文字どおり「前後・左右方向に揺れ動くことが可能」の意味であることは当業者ならずも一般人でも理解できることである。そして、その外延については、明細書の記載も参酌して合理的に解釈されるべきであるから、腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56の夫々が前後左右に回動可能(図8中、矢印Y1乃至Y4で示す前後方向、矢印Y5乃至Y8で示す左右方向)であるという明細書に記載された実施態様を含むように解釈することが妥当である。そうすると、「前後・左右方向に揺動可能」とは「前後・左右方向に回動可能」も含むものとして把握することが妥当であり、そうであるならば、訂正請求2により訂正された本件特許の請求項1に係る発明である本件発明は、特段不明確であるということはできず、明細書等に実質的に記載されていないということもできない。したがって、訂正請求2により訂正された本件特許の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第1号又は第2号に違反するとは認められないから、請求人の主張する無効理由3及び無効理由4は理由がない。

ウ 平成22年9月27日付け上申書で提起した新たな無効理由5について
請求人は、平成22年9月27日付け上申書において、本件発明は第4商品発明及び甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるという新たな無効理由を提起した。
当該無効理由は、無効審判の請求時には提示していない新たな発明である第4商品発明を、本件発明の比較の対象とする発明とするものであり、また、訂正請求2は、特許請求の範囲の減縮もしくは明りょうでない記載の釈明に該当するものであるから、当該無効理由は訂正請求2に伴って新たに提示する必要が生じたものであるとも認められず、特許無効審判請求書の要旨を変更する主張と認められる。したがって、請求人の提起した新たな無効理由5は採用しない。

エ 無効理由2について(特許法第29条第2項)
(ア)第1商品ないし第3商品の本件特許の出願前の発売について
a.第1商品の本件特許の出願前の発売について
第1商品が、本件特許の出願前に発売された事実については、当事者間に争いがない(上記「5.(2)ウ」参照。)。念のため検討すると次の事実が認められる。
a)第1商品の包装箱の表面左下隅部に「BANDAI 1997 MADE IN JAPAN」と表示されており(甲第1号証の1の写真1参照)、当該包装箱の同封された使用説明書の表紙左下隅部にも「BANDAI 1997 MADE IN JAPAN」と表示されているとともに(甲第1号証の20の1枚目参照)、説明書の4頁右下欄の部品注文カードには「’97.9/58669-3000」と記載されている(甲第1号証の20の3枚目参照)。
b)1998年1月1日に発行された雑誌である甲第2号証には「この11月に発売となったバンダイLM・HGシリーズの最新作『第3使徒サキエル』。」と記載されており(第51頁参照)、これに対応する「LM」及び「HG」との大きな文字が第1商品の説明書に印字されている(甲第1号証の20の1枚目参照)。
c)第1商品のフレームの構造(甲第1号証の16参照)及び完成写真(甲第1号証の20の4枚目参照)と甲第2号証のフレーム構造の写真(52頁参照)及び完成品の写真(51頁参照)は酷似している。
これらの事実に照らせば、甲第2号証に記載された商品は第1商品であり、第1商品は本件特許の出願日である平成15年1月22日より前に発売されたことが認められる。

b.第2商品の本件特許の出願前の発売について
第2商品が、本件特許の出願前に発売された事実については、当事者間に争いがない(上記「5.(2)ウ」参照。)。念のため検討すると次の事実が認められる。
a)第2商品の包装箱の表面左下隅部に「BANDAI 2001 MADE IN JAPAN」と表示されており(甲第4号証の1の写真2参照)、当該包装箱に同封された使用説明書の表面左下隅部にも「BANDAI 2001 MADE IN JAPAN」と表示されているとともに該説明書の表面右下欄の部品注文カードには「’01.10」と記載されている(甲第4号証の10の1枚目参照)。
b)2002年1月1日に発行された雑誌である、甲第12号証には「バンダイホビー事業部 〒111-8081 東京都台東区駒形2-5-5小官ビル1F……03-3847-5116」なる記載の下方に「エクストラへビーバージョン マジンガーZ NON プラ 発売中 3500円」と記載されており(第265頁参照)、第2商品の包装箱の表面左下隅部に「マジンガーZ エクストラへビーバージョン」及び「BANDAI 2001 MADE IN JAPAN」と表示されている(甲第4号証の1の写真1及び写真2参照)。
これらの事実に照らせば、第2商品は本件特許の出願日である平成15年1月22日より前に発売されたことが認められる。

c.第3商品の本件特許の出願前の発売について
第3商品が、本件特許の出願前に発売された事実については、当事者間に争いがない(上記「5.(2)ウ」参照。)。念のため検討すると次の事実が認められる。
平成10年5月1日に発行された雑誌である甲第第15号証には、「メディコムフィギュアカタログ’98」と記載され、さらに「(1)商品(2)原型製作者名(3)発売年月」の記載とともに「No.37(1)プレデター グロウモデル(2)紫(3)97年8月……初回生産分のみの限定生産コレクターズナンバー入/絶版」と記載されている。第3商品の包装箱に同封された使用説明書に「リアルアクションヒーローズ?プレデターTM(グローモデル)」及び「NO.37」と記載されているとともに(甲第13号証の5参照)、包装箱の正面には「COLLECTOR'S LIMITED EDITION NUMBER 2905」の表示が見られる(甲第13号証の1参照)。
これらの事実に照らせば、甲第13号証に記載された商品は第3商品であり、第3商品は本件特許の出願日である平成15年1月22日より前に発売されたことが認められる。

(イ)無効理由2-1について
a.第1商品発明の認定
甲第1号証を参酌すると、第1商品は、プラスチックモデルキットに関する商品であり、当該プラスチックモデルキットを組み立てるとキャラクター(第三使徒サキエル)を模した人形ができあがると認められる。次に、甲第1号証の20を参酌すると、人形はラバーパーツ、右腕フレーム、左腕フレーム、右脚フレーム、左脚フレーム及びボディフレームを有すると認められる。また、これらのフレームはラバーパーツの中で組み立てられて、各フレームを組み立てたものがラバーパーツで被覆された状態になって人形となることが見て取れる。そして、甲第2号証の第52頁の「キットは可動フレームにラバー(ソフビ)パーツを着せる構成で」との記載を参酌すると、ラバーパーツはソフトビニル製であり、各フレームを組み立てたものが可動フレームになることが理解される。以上より、第1商品の「フレーム」は、組み立てられた状態において、ソフトビニル製のラバーパーツに被覆された状態になって人形となる可動フレームであって、可動フレームは、右腕フレーム、左腕フレーム、右脚フレーム、左脚フレーム及びボディフレームを有することが理解される。
甲第1号証の20を参酌すると、ボディフレームは、右腕フレームと左腕フレームを取り付けるフレームA、フレームAのP.C(A)(当審注:「(A)」等は甲第1号証の20においては「丸の中にA」等を指す。以下同様。)パーツに接続する円筒状部材を備えA(34)パーツとA(35)パーツとP.C(E)パーツの3つのパーツから成るフレームB、右脚フレームと左脚フレームを取り付けるフレームC、フレームBのP.C(E)パーツに接続する円筒状部材とフレームCのP.C(E)パーツに接続する円筒状部材を備えたA(3)パーツ、からなることが認められる。また、右腕フレームと左腕フレームには手首部はなく、ラバーパーツの外部から右腕フレームに右前腕を、左腕フレームに左前腕をそれぞれ接続することが認められる。そして、右脚フレーム、左脚フレームには足首部はなく、ラバーパーツの外部から右脚フレームに右足首を、左脚フレームに左足首をそれぞれ接続し、右足首と左足首には足底があることが認められる。また、右腕フレーム、左腕フレーム、右脚フレーム、左脚フレーム及びボディフレームは、ラバーパーツの内部に挿入して組み立てることから、右腕フレーム、左腕フレーム、右脚フレーム、左脚フレーム及びボディフレームと、ラバーパーツの間には上記挿入に必要な程度の隙間があると認められる。
甲第1号証の19を参酌すると、A(3)パーツとフレームCは、フレームCのP.C(E)パーツの部分が前後方向に回動することにより、相対的に前後方向に回動することが見て取れる。
甲第1号証の18を参酌すると、A(3)パーツとフレームBは、フレームBのP.C(E)パーツの部分が前後方向に回動することにより、相対的に前後方向に回動することが見て取れる。
甲第1号証の20に記載された「<組み立てる時の注意>」の欄の「実線の矢印(→)は接着するところ、点線の矢印(→)は接着しないところです。接着するところは×印がついています。」との記載及び「3 《ボディフレームの組み立て》」の組立工程図と、甲第1号証の2-4のパーツの写真と、甲第1号証の17を参酌すると、フレームAとフレームBは、フレームAのP.C(A)パーツの円筒穴にフレームBの上部円筒状部を差し込むことによって回動可能に連結されていることが見て取れる。
甲第1号証の20に記載された「<組み立てる時の注意>」の欄の「実線の矢印(→)は接着するところ、点線の矢印(→)は接着しないところです。接着するところは×印がついています。」との記載及び「3 《ボディフレームの組み立て》」の組立工程図と、甲第1号証の2-4のパーツの写真を参酌し、かつ、上記「フレームAとフレームBは、フレームAのP.C(A)パーツの円筒穴の部分にフレームBの上部円筒状部を差し込むことによって回動可能に連結されていること」からすると、A(3)パーツとフレームCは、フレームCのP.C(E)パーツの円筒穴とA(3)パーツの円筒状部を接着せずに接続していることから、両者は回動可能に連結されていることが見て取れ、A(3)パーツとフレームBは、フレームBのP.C(E)パーツの円筒穴とA(3)パーツの円筒状部を接着せずに接続していることから、両者は回動可能に連結されていることが見て取れる。
甲第1号証の20の「<組み立てる時の注意>」の欄の「実線の矢印(→)は接着するところ、点線の矢印(→)は接着しないところです。接着するところは×印がついています。」との記載を踏まえつつ甲第1号証の20のその他の記載を参酌すると、接着の指示があるのはC13とC14のみであることが理解される。そして、ボディフレームに対する、右腕フレーム、左腕フレーム、右脚フレーム、左脚フレームそれぞれの結合構造としては、一度結合したら分離できないような特殊な結合構造であるとは認められない。以上より、ボディフレームに対する右腕フレーム、左腕フレーム、右脚フレーム、左脚フレームは着脱可能であると認められる。
甲第1号証の20を参酌すると、右腕フレームにはA(22)パーツとA(24)パーツとA(26)パーツとA(28)パーツからなる肩パーツを備え、左腕フレームにはA(23)パーツとA(25)パーツとA(27)パーツとA(29)パーツからなる肩パーツを備える、と認められる。
以上を総合すると、甲第1号証から次のとおりの第1商品発明を認めることができる。
<第1商品発明>
ラバーパーツの中で組み立てられて、組み立てられた状態において、ソフトビニル製のラバーパーツに被覆された状態になって人形となる可動フレームであって、
可動フレームは、右腕フレーム、左腕フレーム、右脚フレーム、左脚フレーム及びボディフレームを有し、さらにボディフレームは、右腕フレームと左腕フレームを取り付けるフレームA、フレームAのP.C(A)パーツに接続する円筒状部を備えA(34)パーツとA(35)パーツとP.C(E)パーツの3つのパーツから成るフレームB、右脚フレームと左脚フレームを取り付けるフレームC、フレームBのP.C(E)パーツに接続する円筒状部とフレームCのP.C(E)パーツに接続する円筒状部を備えたA(3)パーツ、からなり、
A(3)パーツとフレームCは、フレームCのP.C(E)パーツの円筒穴とA(3)パーツの円筒状部とで回動可能に連結され、かつ、フレームCのP.C(E)パーツの部分が前後方向に回動することにより、相対的に前後方向に回動し、
A(3)パーツとフレームBは、フレームBのP.C(E)パーツの円筒穴とA(3)パーツの円筒状部とで回動可能に連結され、かつ、フレームBのP.C(E)パーツの部分が前後方向に回動することにより、相対的に前後方向に回動し、
フレームAとフレームBは、フレームAのP.C(A)パーツの円筒穴にフレームBの上部円筒状部を差し込むことによって回動可能に連結され、
右腕フレームと左腕フレームには手首部はなく、ラバーパーツの外部から右腕フレームに右前腕を、左腕フレームに左前腕をそれぞれ接続し、かつ、右腕フレームにはA(22)パーツとA(24)パーツとA(26)パーツとA(28)パーツからなる肩パーツを備え、左腕フレームにはA(23)パーツとA(25)パーツとA(27)パーツとA(29)パーツからなる肩パーツを備え、
右脚フレーム、左脚フレームには足首部はなく、ラバーパーツの外部から右脚フレームに右足首を、左腕フレームに左足首をそれぞれ接続し、
右足首と左足首には足底があり、
右腕フレーム、左腕フレーム、右脚フレーム、左脚フレーム及びボディフレームと、ラバーパーツとの間には隙間があり、
ボディフレームに対する右腕フレーム、左腕フレーム、右脚フレーム、左脚フレームとボディフレームとは着脱可能である、
可動フレーム。

b.本件発明と第1商品発明の対比
第1商品発明の各フレームとパーツの詳細と、以下に述べる本件発明の骨格構造との対応関係を、参考図3及び参考図4に示す。
第1に、第1商品発明における「ラバーパーツ」及び「可動フレーム」が、それぞれ本件発明における「外皮」及び「骨格構造」に相当することは当業者に明らかである。
第2に、第1商品発明における「右脚フレーム」及び「左脚フレーム」は、「ラバーパーツに被覆され」、「ラバーパーツとの間には隙間があ」るものであるから、本件発明における「左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有する左右の脚部骨格」に相当することは当業者に明らかである。
第3に、第1商品発明における「ボディフレーム」の「フレームC」は、「ラバーパーツに被覆され」、「ラバーパーツとの間には隙間があり」、「右脚フレームと左脚フレームを取り付ける」ものであるから、本件発明における「外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、」「左右の脚部骨格に連結される腰部骨格」に相当することは当業者に明らかである。
第4に、第1商品発明における「ボディフレーム」の「フレームA」と「フレームB」と「A(3)パーツ」からなる部分は、「ラバーパーツに被覆され」、「ラバーパーツとの間には隙間があり」、「A(3)パーツとフレームCは、フレームCのP.C(E)パーツの円筒穴とA(3)パーツの円筒状部とで回動可能に連結され」るものであるから、本件発明における「外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、」「腰部骨格に連結される胴部骨格」に相当することは当業者に明らかである。
第5に、第1商品発明における「右腕フレーム」及び「左腕フレーム」は、「ラバーパーツに被覆され」、「ラバーパーツとの間には隙間があ」り、「ボディフレーム」の「フレームA」に「取り付ける」ものであるから、本件発明における「左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有」し、「胴部骨格と連結される左右の脚部骨格」に相当することは当業者に明らかである。
第6に、第1商品発明における「可動フレーム」が、「右腕フレーム、左腕フレーム、右脚フレーム、左脚フレーム及びボディフレームを有」することは、本件発明における「骨格構造は、」「左右の脚部骨格と、」「腰部骨格と、」「胴部骨格と、」「左右の腕部骨格で一連の骨格群を構成」することに相当することは当業者に明らかである。
第7に、第1商品発明における「ボディフレーム」の「A(3)パーツ」と「フレームB」は、「フレームBのP.C(E)パーツの円筒穴とA(3)パーツの円筒状部とで回動可能に連結され」ており、かつ「フレームC」とは「フレームCのP.C(E)パーツの円筒穴とA(3)パーツの円筒状部とで回動可能に連結され」るものであることから、本件発明における「腰部骨格と連結される腹骨格部」に相当することは当業者に明らかであり、第1商品発明における「ボディフレーム」の「フレームA」は、「フレームAのP.C(A)パーツの円筒穴にフレームBの上部円筒状部を差し込むことによって回動可能に連結され」るものであることから、本件発明における「腹骨格部と連結される胸骨格部」に相当することは当業者に明らかである。
第8に、第1商品発明における「ボディフレーム」の「フレームCのP.C(E)パーツの円筒穴」は、「フレームCのP.C(E)パーツ」が「ボディフレーム」の「A(3)パーツ」と「フレームB」と連結する部分であることから、本件発明における「腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴」に相当することは当業者に明らかである。
第9に、第1商品発明における「ボディフレーム」の「A(3)パーツの円筒状部」は、「フレームCのP.C(E)パーツの円筒穴」に「回動可能に連結され」るものであるから、本件発明における「腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合(連結)される第一嵌入杆」に相当することは当業者に明らかであり、該相当関係から第1商品発明における「ボディフレーム」の「A(3)パーツ」は、本件発明における「腰部骨格連結部」に相当する。
第10に、第1商品発明における「ボディフレーム」の「フレームAのP.C(A)パーツの円筒穴」は、本件発明における「胸骨格部に備えた嵌合穴」に相当することは当業者に明らかである。
第11に、第1商品発明における「ボディフレーム」の「フレームBの上部円筒状部」は、「フレームAのP.C(A)パーツの円筒穴」に「回動可能に連結され」るものであるから、本件発明における「胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合(連結)される第二嵌入杆」に相当することは当業者に明らかであり、また、第1商品発明における「ボディフレーム」の「A(34)パーツとA(35)パーツとP.C(E)パーツの3つのパーツから成るフレームB」は、「フレームBのP.C(E)パーツの円筒穴とA(3)パーツの円筒状部とで回動可能に連結され、かつ、フレームBのP.C(E)パーツの部分が前後方向に回動することにより、相対的に前後方向に回動」することから、本件発明における「分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともに」「一体に連結され」、かつ「前後」「に揺動可能で」あるものに相当することは当業者に明らかであり、該相当関係から第1商品発明における「ボディフレーム」の「フレームB」は、本件発明における「胸部骨格連結部」に相当する。
第12に、第1商品発明における「右腕フレーム」の「A(22)パーツとA(24)パーツとA(26)パーツとA(28)パーツからなる肩パーツ」と、「左腕フレーム」の「A(23)パーツとA(25)パーツとA(27)パーツとA(29)パーツからなる肩パーツ」は、本件発明における「肩部の骨格」に相当することは当業者に明らかである。
第13に、第1商品発明における「ボディフレームに対する右腕フレーム、左腕フレーム、右脚フレーム、左脚フレームとボディフレームとは着脱可能である」ことは、本件発明における「一連の人形骨格群を構成する」「各骨格が着脱可能であること」に相当することは当業者に明らかである。
第14に、第1商品発明における「ラバーパーツの中で組み立てられて、組み立てられた状態において、ソフトビニル製のラバーパーツに被覆された状態になって人形となる可動フレーム」は、本件発明における「ソフトビニル製の」「外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製」「人形を構成する骨格構造」及び「ソフトビニル製」「可動人形の骨格構造」に相当することは当業者に明らかである。

c.一致点及び相違点の認定
以上を総合すると、本件発明と第1商品発明とは、
「ソフトビニル製の外皮と、該外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製人形を構成する骨格構造であって、
前記骨格構造は、
左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有する左右の脚部骨格と、
外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、
外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、
左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、
前記胴部骨格は、
腰部骨格と連結される腹骨格部と、
該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成され、
前記腹骨格部は、
腰部骨格連結部を一端側に備え、
かつ胸部骨格連結部を他端側に備えており、
前記腰部骨格連結部は、
腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え、
前記胸部骨格連結部は、
胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え、
前記腰部骨格連結部における第一嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記胸部骨格連結部における第二嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記腕部骨格は肩部の骨格を有し、
前記一連の人形骨格群を構成する前記各骨格が着脱可能である、
ソフトビニル製可動人形の骨格構造。」
の点で一致し、
次の各点で相違すると認められる。

<相違点1>
本件発明においては、「ソフトビニル製の外皮」が、「分割して形成されて、それぞれが着脱可能」であって、その「それぞれの外皮」が骨格構造を覆うのに対して、第1商品発明においては、ラバーパーツは分割して形成されていない点。

<相違点2>
本件発明においては、「ソフトビニル製」「可動人形」が、「大型」であるのに対して、第1商品発明は大型であるとはいえない点。

<相違点3>
本件発明においては、「左右の脚部骨格」が、「左右それぞれの足底部を有」するのに対し、第1商品発明は、ラバーパーツの外部から右脚フレームに右足首を、左脚フレームに左足首をそれぞれ接続し、右足首及び左足首が足底を持つ点。

<相違点4>
本件発明においては、「左右の腕部骨格」が、「左右それぞれの手首部を有」するのに対し、第1商品発明は、右腕フレームと左腕フレームに手首部はなく、ラバーパーツの外部から右腕フレームに右前腕を、左腕フレームに左前腕をそれぞれ接続する点。

<相違点5>
本件発明においては、「腹骨格部と」「胸骨格部は、双方の間で分割されたそれぞれの外皮で覆われて」いるのに対し、第1商品発明は、ラバーパーツが分割されていない点。

<相違点6>
本件発明においては、「腰部骨格連結部」が、「分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され」る「腹骨格部と揺動可能に連結される部位」を備え、「前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される」のに対し、第1商品発明は、ボディフレームのA(3)パーツ(本件発明の「腰部骨格連結部」に相当する部材)が上記発明特定事項を備えていない点。

<相違点7>
本件発明においては、「胸部骨格連結部」が、「分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され」る「腹骨格部と揺動可能に連結される部位」を備え、「前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される」のに対し、第1商品発明は、ボディフレームのフレームB(本件発明の「胸部骨格連結部」に相当する部材)がネジではない別の手法で一体に連結されかつ、前後に揺動可能ではあるが、左右に揺動せず、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結されているか不明な点。

<相違点8>
本件発明においては、「腰部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第1嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われている」のに対し、第1商品発明は、全体としてはラバーパーツで覆われているものの各部位のそれぞれが腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によってそれぞれ覆われていないので、上記発明特定事項を備えていない点。

<相違点9>
本件発明においては、「胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第2嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われて」いるのに対し、第1商品発明は、全体としてはラバーパーツで覆われているものの各部位のそれぞれが腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によってそれぞれ覆われていないので、上記発明特定事項を備えていない点。

<相違点10>
本件発明においては、「少なくとも前記肩部の骨格に、腕部骨格を覆う外皮の一端が嵌着されて」いるのに対し、第1商品発明のラバーパーツ(本件発明の「外皮」に相当する部材)は、右腕フレームのA(22)パーツとA(24)パーツとA(26)パーツとA(28)パーツからなる肩パーツと、左腕フレームのA(23)パーツとA(25)パーツとA(27)パーツとA(29)パーツからなる肩パーツを覆っているものの、当該ラバーパーツの一端は嵌着されていない点。

d.相違点についての検討・判断
(a)相違点1,5,8,9,10について
上記相違点1,5,8,9,10は、「外皮と骨格構造の関係」に関する相違点であり、本件発明は、「外皮」が
・分割して形成されて、それぞれが着脱可能であり(相違点1)、
・その分割して形成された外皮は、少なくとも、腰部骨格を覆う外皮、腹骨格部を覆う外皮及び胸骨格部を覆う外皮に分割するものであり(相違点5,8,9)、
・腰部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第1嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位を、それぞれ腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆い(相違点8)、
・胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第2嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位を、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆い(相違点9)、
・少なくとも肩部の骨格に、腕部骨格を覆う外皮の一端が嵌着されている(相違点10)
という構成を備えているのに対し、第1商品発明は上記構成を備えていないというものである。

(a-1)第1の検討
第1に「分割して形成されて、それぞれが着脱可能であり」、「その分割が、腰部骨格を覆う外皮と、腹骨格部を覆う外皮と、胸骨格部を覆う外皮と、に少なくとも分割するものであ」るという点について検討する。
請求人は弁駁書2において、「甲第4号証に示された商品、甲第13号証に示された商品、甲第14号証及び甲第25号証に示された商品、甲第17号証に示された商品、甲第21号証に開示された発明に例示されるような周知技術を考慮すれば、ソフトビニル製の外皮を有する人形において外皮を、左右の脚部骨格を覆う外皮、腰部骨格を覆う外皮、胴部骨格を覆う外皮、左右の腕部骨格を覆う外皮に分割し、さらに、胴部骨格を覆う外皮を、腹骨格部を覆う外皮及び胸骨格部を覆う外皮に分割することは、当業者が容易に想到しうることである。」旨主張している(第11頁下から第11?4行参照。)。
上記請求人の主張について検討する。
甲第4号証に示された商品は、胸部と腹部が分割して形成された外観パーツを開示しているものの、胸部のF(3)パーツは合成ゴム:TPE製であり、腹部のD(1)パーツとD(2)パーツはスチロール樹脂:PS製であって、ソフトビニル製でない(甲第4号証の10参照。)。
甲第13号証に示された商品は、人形における最も外側のソフトビニル製の部材(以下「外観部材」という。)を着脱可能な分割構造としたこと(第3商品発明の外観部材がソフトビニル製であることについて当事者間に争いはない(「第1回口頭審理調書」参照))を開示しているものの、その外観部材の、胸部と腹部は分割して形成されていない。
甲第14号証及び甲第25号証に示された商品は、腰部と腹部と胸部と腕部が一体に形成された外観部材を使用することを開示しており、胸部と腹部は分割されていない。
甲第17号証に示された商品の外観部材は、腹部と胸部が一体に形成されている。
甲第21号証に記載された発明は、甲第21号証の段落【0004】に「【発明の実施の形態】図1は、本発明によるフィギュア人形の一例を示すものである。図示する人形10は、肩、肘の関節をニュートラルポジションに置いたポーズに従って成形された軟質塩化ビニル樹脂製の上半身外皮と、脚の付け根、膝の関節をニュートラルポジションに置いたポーズに従って成形された軟質塩化ビニル樹脂製の下半身外皮と、これらの外皮に覆われた骨格骨組みとの三つの主たる部品から構成されている。人形10の形状を形成するための部品として、細い骨組みを採用したことによって柔らかい外皮をかぶせることが可能になった。」と記載されていることから、腕部と胸部と腹部が一体形成され、腰部と脚部が一体形成された外観部材を使用していると認められる。
また、請求人が提示した各甲号証を見るに、甲第32号証に示された商品は、胸部と腹部に分割されたパーツはウレタン樹脂製であり(甲第32号証の2第1葉右欄のパーツリスト参照。)胸部と腹部が分割して形成されたソフトビニル製の外皮を開示するものではない。そして、他の甲号証にも胸部と腹部が分割して形成されたソフトビニル製の外皮を開示するものは見あたらない。

(a-2)第2の検討
第2に「少なくとも肩部の骨格に、腕部骨格を覆う外皮の一端が嵌着されている」という点について検討する。
請求人は弁駁書2において、「甲第9号証に示された発明、甲第13号証に示された商品、甲第17号証に示された商品に例示されるように本件特許の出願前において、腕部骨格を覆う外皮の一端を肩部の骨格に嵌着させることは周知技術であった。」旨主張している(第13頁第9?13行参照。)。
上記請求人の主張について検討する。
まず、「嵌着」なる用語は、「新村出 編、広辞苑第5版第1刷、株式会社岩波書店、1998年11月11日発行」の第2181頁に記載された「嵌める」の「(2)くぼみに入れて固定する。」という意味と、本願明細書の段落【0033】の「上記肩部59の上腕外皮上端嵌着部62の嵌合凹部(段部)64に嵌着される開口縁119を突設すると共に、下端に設けた開口120の径方向に、上記肘部68の上腕外皮下端嵌着部69の嵌合凹部(段部)72に嵌着される開口縁121を突設してなる」という記載及び【図10】からして、「くぼみに入れて固定し着ける」ことを意味すると解される。
一方、甲第9号証に開示された発明は、腕枠32に対して、両側から挟持するごとくビス或いはCリング等によって結合して、これを包持する硬質の外かく体を備える(甲第9号証第1頁右欄第1-14行参照。)ものである。
また、甲第13号証に示された商品は、腕の外観部材を内部の透明人形の肩部と上腕部にかぶせる構成を備え(甲第13号証の3?4参照。)、甲第17号証に示された商品は、腕の外観部材を内部の人形の肩部と上腕部にかぶせる構成を備えている(甲第17号証の3?4参照。)ものの、肩部の骨格に腕部骨格を覆う外皮の一端をくぼみに入れて固定し着けることを開示するものではない。
また、請求人が提示した各甲号証を見るに、甲第32号証に示された商品は、ウレタン樹脂製の腕部パーツを備える(甲第32号証の2第1葉右欄のパーツリスト参照。)ものであって、ソフトビニル製の外皮の一端を肩部の骨格に凹みに入れて固定し着けることにより腕部骨格を覆う構造を有するものではない。そして、他の甲号証にもソフトビニル製の外皮の一端を肩部の骨格に凹みに入れて固定し着けることにより腕部骨格を覆う構造を有するものは見あたらない。

(a-3)第3の検討
第3に、第1商品発明における「ラバーパーツ」を分割して着脱可能にするという技術を導入する動機付けについて検討する。
第1商品発明はプラモデルであり、プラモデルは「本物の縮小版と同じモデルを組み立てる」のが主目的であり、つなぎ目のない独特な外観を生じさせるためのラバーパーツ(外皮)を分割してしまっては、「本物の縮小版と同じモデルを組み立てる」というプラモデル本来の目的から逸脱してしまうことになるから、当業者において第1商品発明のラバーパーツを分割して着脱可能にするという技術を適用する動機付けは存在しない。
また、上記目的を無視して、甲第13号証に示された商品が開示する、外観部材を着脱可能な分割構造とする技術を第1商品発明に適用して、第1商品発明のラバーパーツを分割したとしても、第1商品発明のラバーパーツ内に納められた可動フレームは、甲第13号証に示された商品のように分割した外観部材を個別に保持できるようなフレーム構造ではないので、可動フレームの構造を変更することなく分割したラバーパーツを着脱可能に装着して保持することはできない。この点からも、当業者において第1商品発明のラバーパーツに、当該ラバーパーツを分割して着脱可能にするという技術を適用することが当業者にとって想到容易であるとは言えない。

(a-4)第4の検討
第4に、「腰部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第1嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位とを、それぞれ腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆い」、「胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第2嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆」う点について検討する。
上記検討点は、骨格部、連結部位との関係において、外皮をどのように分割し、各部材をどのように覆うかに係る事項であるが、上記検討点については、上記「(a-1)第1の検討」で述べた通り、甲第1号証ないし甲第35号証には、外皮を「分割する」ことの開示はあるものの、骨格構造との関係において外皮をどのように分割し該分割した外皮でどのように骨格連結部の連結部位を覆うかについて何ら開示が無いのであるから、「胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第2嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆」うことを、甲第1号証ないし甲第35号証の開示内容から当業者が容易に想到しうるとは言えない。

(a-5)相違点1,5,8,9,10についての小括
上記第1ないし第4の検討から、請求人の主張を採用することはできず、甲第1号証ないし甲第35号証の開示内容から上記相違点1,5,8,9,10に係る発明特定事項を得ることは、当業者といえども容易に想到しうるものではない。

(b)相違点3,4,6,7について
上記相違点3,4,6,7は、「骨格構造」に関する相違点であり、本件発明は
・左右の脚部骨格が、左右それぞれの足底部を有し(相違点3)、
・左右の腕部骨格が、左右それぞれの手首部を有し(相違点4)、
・腰部骨格連結部が、分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される腹骨格部と揺動可能に連結される部位を備え、前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結され(相違点6)、
・胸部骨格連結部が、分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される腹骨格部と揺動可能に連結される部位を備え、前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される(相違点7)、
という特徴を備えているのに対し、第1商品発明は上記特徴を備えていないというものである。
(b-1)第1の検討
第1に「腰部骨格連結部が、分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される腹骨格部と揺動可能に連結される部位を備え、前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結され」るという点と、「胸部骨格連結部が、分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される腹骨格部と揺動可能に連結される部位を備え、前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される」という点について検討する。
請求人は弁駁書2において、「甲第4号証に示された商品、甲第9号証に開示された発明、甲第10号証に開示された発明、甲第32号証に示された商品に例示されるように本件特許の出願前において、可動人形の関節として、前後方向だけでなく左右方向にも揺動するものは、周知技術であり、また、可動人形の関節を左右方向に揺動させて所望位置で所望状態を維持し得るようにすることは、甲第10号証における段落【0013】の『この球体の表面は滑らかに形成可能であり、そうでない場合には小平面を有してもよいし、8cのように凹形に湾曲していてもよいし、細長い裂け目8dであってもよいし、また半球形の穴9-この穴内で球体が回転する-の表面に対して摩擦抵抗を生じるために、他の種類の突出部または窪みを有していてもよい。この摩擦抵抗は、骨格状骨組みの位置を固定し、不動にするための抵抗である。』なる記載や、甲第4号証の8における写真17?写真19及び甲第4号証の9における写真20?写真22、甲第32号証の1における写真9?写真12及び写真25?写真30から明らかなとおり、本件特許の出願前において周知技術であった。」旨主張している(第12頁第12?26行参照。)。また同弁駁書2において、「二つの部材を連結させる際に、スナップフィット結合と採用するか、或いは、ネジ止めを採用するかは、当業者が適宜定めることができる設計上の事項にすぎない。」旨主張している(第13頁第4?6行参照。)。
上記請求人の主張について検討する。
甲第4号証に示された商品(第2商品)の、B(17)パーツとB(18)パーツを組み合わせて成る部分(以下「第2商品腰部分」という。)は、右脚と左脚が接続されるので、本件発明における「腰部骨格」に相当するものであり、その部分から上部に一体的に伸びた棒体の先端にある球体は、B(25)パーツとB(26)パーツを2つのビスとナットで一体に連結した部分(以下「第2商品腹部分」という。)に、B(25)パーツとB(26)パーツに設けられた凹部内に挟み込まれるように連結されている。また、第2商品のB(1)パーツとB(2)パーツとB(14)とパーツB(15)とパーツB(16)パーツを組み合わせて成る部分(以下「第2商品胸部分」という。)は、右腕と左腕と頭部が接続されるので、本件発明における「胸骨格部」に相当するものであり、その部分から下部に一体的に伸びた棒体の先端にある球体は、第2商品腹部分にB(25)パーツとB(26)パーツに設けられた凹部内に挟み込まれるように連結されている。上記第2商品腹部分は、「分割して形成され」「ネジを介して一体に連結され」ており、第2商品腰部分および第2商品胸部分と「前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結されて」いると認められる(参考図5,6参照)。しかしながら、上記第2商品腹部分が挟み込んでいる部分は、第2商品腰部分から一体的に伸びた棒体の先端にある球体と、第2商品胸部分からに一体的に伸びた棒体の先端にある球体であり、「腹骨格部の一端側」と「腹骨格部の他端側」ではない。ゆえに、甲第4号証に示された商品は、第2商品腰部分の一端と、第2商品胸部分の一端を2つのパーツをネジ止めして嵌め込んで固定する第2商品腹部分を開示するものの、本件発明における「分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される」腰部骨格連結部と、「分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される」胸部骨格連結部を、それぞれ備える腹骨格部は開示していない。
甲第9号証に開示された発明は、腰部分を球状関節で接続することは開示している(甲第9号証第1図参照。)が、「腰部骨格連結部が、分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される腹骨格部と揺動可能に連結される部位を備え」ることは開示していない。また、上記発明は胸部骨格連結部に相当するものを開示していない。
甲第10号証に開示された発明は、腰部分を球状関節で接続することは開示している(甲第10号証【図1】参照。)が、「腰部骨格連結部が、分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される腹骨格部と揺動可能に連結される部位を備え」ることは開示していない。また、甲第10号証に開示された発明は、胸部骨格連結部に相当するものを開示するものでもない。
甲第32号証に示された商品は、胸部と腹部の間のABS-DNo.1パーツの球状部を腹部側で受けるのはPC-C8mmパーツという円筒中空部品であり、腰部と腹部の間のABS-DNo.2パーツの球状部を腹部側で受けるのはPC-C8mmパーツという円筒中空部品であり、2つのPC-C8mmパーツは、ウレタン樹脂製の外観を備える胸パーツ2.(美乳)と腹パーツ6.にそれぞれ保持されるものである(甲第32号証の2及び甲第23号証の1の写真7,15-17,24参照。)から、「腰部骨格連結部が、分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される腹骨格部と揺動可能に連結される部位」及び「胸部骨格連結部が、分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される腹骨格部と揺動可能に連結される部位」を開示するものではない。
また、他の各甲号証にも「腰部骨格連結部が、分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される腹骨格部と揺動可能に連結される部位」及び「胸部骨格連結部が、分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される腹骨格部と揺動可能に連結される部位」を開示するものは見あたらない。

さらに、第1商品発明に第2商品の上記腹部分の接続構造を採用することを検討しても、上記接続構造は、第2商品腰部分から一体的に伸びた棒体の先端にある球体と、第2商品胸部分からに一体的に伸びた棒体の先端にある球体とを必須とするものであるから、上記接続構造を第1商品発明に採用した場合は、腹骨格部だけでなく胸骨格部及び腰部骨格の構造にも変更を要することになり、その結果、第一商品発明において、腰部骨格連結部の第一嵌入杆、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴、胸部骨格連結部の第二嵌入杆、胸骨格部に備えた嵌合穴にそれぞれ相当していたA(3)パーツ、フレームCのP.C(E)パーツ、フレームBの上部にある上部円筒状部材、フレームAのP.C(A)パーツを削除し、第2商品腰部分と第2商品胸部分の接続構造と置換することとなり、そのようにすると、上記削除された「腰部骨格連結部の第一嵌入杆、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴、胸部骨格連結部の第二嵌入杆、胸骨格部に備えた嵌合穴」という発明特定事項を持たないという、本件発明との新たな相違点を生み出すこととなる。
そして、上記新たな相違点に係る構成を得るためには、甲第32号証に示された商品の胸部と腹部の間のABS-DNo.1パーツと腰部と腹部の間のABS-DNo.2パーツを採用する必要がある。
ゆえに、「腰部骨格連結部が、分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される腹骨格部と揺動可能に連結される部位を備え、前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結され」るという事項と、「胸部骨格連結部が、分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される腹骨格部と揺動可能に連結される部位を備え、前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される」という事項のみならず、上記した本件発明との新たな相違点である「腰部骨格連結部の第一嵌入杆、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴、胸部骨格連結部の第二嵌入杆、胸骨格部に備えた嵌合穴」という事項を得ることは、甲第32号証に示された商品の前後・左右に揺動可能にする構造の一部分と、第2商品の前後・左右に揺動可能にする構造の一部分を採用して組み合わせた新たな前後・左右に揺動可能にする構造を創造し、その新たな構造を第1商品発明のフレームB及びA(3)パーツからなる構造と置換するという作業を伴うものであり、当業者が容易に想到できるとはいえない。

(b-2)第2の検討
第2に「左右の脚部骨格が、左右それぞれの足底部を有」するという点と、「左右の腕部骨格が、左右それぞれの手首部を有」するという点について検討する。
請求人の提示した甲第26号証及び甲第27号証にも開示されているように、外皮の内部に骨格構造を持つ人形において、左右それぞれの足底部や左右それぞれの手首部を骨格構造に備えることは、本件発明の出願前に周知であるといえるから、第1商品発明の骨格構造に上記周知の構造を採用することは、当業者が格別の困難なく行い得たことである。

(b-3)相違点3,4,6,7についての小括
上記第1の検討、第2の検討から、「左右の脚部骨格が、左右それぞれの足底部を有」するという点と、「左右の腕部骨格が、左右それぞれの手首部を有」するという点については、当業者が容易に想到し得たことであるといえるものの、「腰部骨格連結部が、分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される腹骨格部と揺動可能に連結される部位を備え、前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結され」るという点と、「胸部骨格連結部が、分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結される腹骨格部と揺動可能に連結される部位を備え、前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される」という点については、当業者といえども容易に想到しうるものではないから、上記請求人の主張を採用することはできず、甲第1号証ないし甲第35号証の開示内容から上記相違点6,7に係る発明特定事項を得ることが容易想到であるとはいえない。

(c)相違点2について
本件特許の明細書の段落【0001】において、「本明細書において『大型』とは、例えば全高60cm程度以上の人形をいうが、特に限定はされず、一般的な30cm程度の人形よりも大きい人形の全てをいう。」と記載されている。
第1商品発明において、組立てによってできあがる人形の大きさをどの程度とするかは、当業者が適宜定めることのできる設計上の事項である。したがって、第1商品発明において、できあがった人形の大きさを30cm以上として、本件発明でいうところの大型の範疇に入るようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。したがって、相違点2は格別なものではない。

(d)本件発明の効果について
本件発明は、大型の人形において外皮部分をソフトビニル製で構成しても、自立が可能で、かつ様々な姿態を一定時間維持できると共に、軽量でかつ軟質なため、落下・転倒などしても安全で、破損も防げるという効果、外皮がソフトビニル製であるため製作容易(スラッシュ成形など)で、かつコスト安価なため、この種の大型可動人形の製作上大幅なコスト減となる効果、夫々の骨格が着脱可能で、かつ夫々の外皮も着脱可能であるため、搬送費用低廉となり、結果的に製品価格も低く抑えることができるため需要者ニーズに応えることができる効果、を備えており、甲第1号証ないし甲第35号証の開示内容から当業者が予測しうることはできない、格別の効果を奏しているものである。

e.無効理由2-1についてのまとめ
以上のことから、本件発明は、第1商品発明と甲第1号証ないし甲第35号証に開示された事項から、当業者が容易に導き出しうる発明であるとはいえない。

(ウ)無効理由2-2について
a.甲3発明の認定
甲3発明は、甲第3号証の記載内容(段落【0001】、【0004】、【0005】参照。)から、以下の発明であると認定した。
「一つの芯材で多用な形の人体像の製作に対応できる人体像制作用芯材において、
基台A1に固定した直立の支柱A2に支持部材A3を多少力を加えないと動かない半固定状態で差し込み、支持部材A3と支持部材A4を支持部材A5で連結し、さらに支持部材A4とS14を連結し、さらにS14とS13とS15をS16で連結し、さらにS15とS17を連結し、さらにS17とS18をS19で連結し、さらにS18とS20を連結し、さらにS20とS21とS22をS23とS24で連結し、さらにS21とRF1を連結し、さらにRF1とRF2をRF3で連結し、さらにRF2とRF4を連結し、さらにRF4とRF5をRF6で連結し、さらにRF5とRF7を連結し、さらにRF7とRF8をRF9で連結し、さらにS22とLF1を連結し、さらにLF1とLF2をLF3で連結し、さらにLF2とLF4を連結し、さらにLF4とLF5をLF6で連結し、さらにLF5とLF7を連結し、さらにLF7とLF8をLF9で連結し、さらにS13とS11を連結し、さらにS11とS10をS12で連結し、さらにS10とS8を連結し、さらにS8とS7をS9で連結し、さらにS7とS6を連結し、さらにS6とS4を連結し、さらにS4とS2をS5で連結し、さらにS2とS1をS3で連結し、さらにS6とRH1を連結し、さらにRH1とRH2をRH3で連結し、さらにRH2とRH4を連結し、さらにRH4とRH5をRH6で連結し、さらにRH5とRH7を連結し、さらにRH7とRH8をRH9で連結し、さらにS6とLH1を連結し、さらにLH1とLH2をLH3で連結し、さらにLH2とLH4を連結し、さらにLH4とLH5をLH6で連結し、さらにLH5とLH7を連結し、さらにLH7とLH8をLH9で連結し、
連結した部分は多少力を加えないと動かない半固定状態で屈曲、回動し、
連結部分は着脱可能である、
人体像制作用芯材。」

b.甲3発明と本件発明との一致点、相違点の認定相違点の判断
上記甲3発明と、本件発明とを対比すると、甲3発明は、明らかに本件発明の「外皮」に相当するものを備えていないと認められる。また、本件発明における外皮の特徴のうち、上記「d.(a)」で検討した発明特定事項は、既に検討したとおり、第1商品発明及び甲第1号証ないし甲第35号証の開示内容から、当業者といえども容易に想到しうるものではない。また、本件発明は、大型の人形において外皮部分をソフトビニル製で構成しても、自立が可能で、かつ様々な姿態を一定時間維持できると共に、軽量でかつ軟質なため、落下・転倒などしても安全で、破損も防げるという効果、外皮がソフトビニル製であるため製作容易(スラッシュ成形など)で、かつコスト安価なため、この種の大型可動人形の製作上大幅なコスト減となる効果、夫々の骨格が着脱可能で、かつ夫々の外皮も着脱可能であるため、搬送費用低廉となり、結果的に製品価格も低く抑えることができるため需要者ニーズに応えることができる効果、を備えており、甲第1号証ないし甲第35号証の開示内容から当業者が予測しうることはできない、格別の効果を奏するものである。

c.無効理由2-2についてのまとめ
以上のことから、上記「d.(a)」で検討したのと同様に、本件発明は、甲3発明と甲第1号証ないし甲第35号証に開示された事項から、当業者が容易に導き出しうる発明であるとはいえない。

(エ)無効理由2-3について
a.第2商品発明の認定
甲第4号証を参酌すると、第2商品は、プラスチックモデルキットに関する商品であり、当該プラスチックモデルキットを組み立てるとキャラクター(マジンガーZ)を模した人形ができあがると認められる。次に、甲第1号証の10を参酌すると、人形は胴体に頭、右腕、左腕、右脚、左脚を取り付けて組み立てられると認められる。
また、右腕は、甲第1号証の10を参酌すると、D(7)パーツの内部のミゾにB(11)パーツとB(12)パーツからなる肩部可動構造の一方をミゾに合わせてはめ込み、その先端にB(4)パーツとB(6)パーツとB(7)パーツとB(9)パーツからなる肘部可動構造の一方をB(19)パーツを介して接続し、肘部可動構造の他方をC(8)パーツの内部のミゾに合わせてはめ込み、さらにF(2)パーツの内部から外側に肩部可動構造の他方を通したものと認められる。
また、左腕は、甲第1号証の10を参酌すると、D(8)パーツの内部のミゾにB(11)パーツとB(13)パーツからなる肩部可動構造の一方をミゾに合わせてはめ込み、その先端にB(3)パーツとB(5)パーツとB(8)パーツとB(10)パーツからなる肘部可動構造の一方をB(19)パーツを介して接続し、肘部可動構造の他方をC(9)パーツの内部のミゾに合わせてはめ込み、さらにF(2)パーツの内部から外側に肩部可動構造の他方を通したものと認められる。
そして、右脚は、甲第1号証の10を参酌すると、D(5)パーツの内部のミゾにB(20)パーツとB(28)パーツからなる足の付け根の可動構造の一方をミゾに合わせてはめ込み、その先端にB(21)パーツとB(23)パーツとB(29)パーツとB(32)パーツからなるひざ部可動構造の一方をB(27)パーツを介して接続し、ひざ部可動構造の他方をC(1)パーツの内部のミゾに合わせてはめ込み、ひざ部可動構造の他方の先端をC(7)パーツとE(6)パーツからなる足底部に接続したものと認められる。
そして、左脚は、甲第1号証の10を参酌すると、D(6)パーツの内部のミゾにB(20)パーツとB(28)パーツからなる足の付け根の可動構造の一方をミゾに合わせてはめ込み、その先端にB(22)パーツとB(24)パーツとB(30)パーツとB(31)パーツからなるひざ部可動構造の一方をB(27)パーツを介して接続し、ひざ部可動構造の他方をC(2)パーツの内部のミゾに合わせてはめ込み、ひざ部可動構造の他方の先端をC(7)パーツとE(6)パーツからなる足底部に接続したものと認められる。
胴体は、甲第1号証の10を参酌すると、B(17)パーツとB(18)パーツを組み合わせて成る、右脚と左脚を接続する部分(腰部分)と、B(1)パーツとB(2)パーツとB(14)とパーツB(15)とパーツB(16)パーツを組み合わせて成る、右腕と左腕を接続する部分(胸部分)と、腰部分から上部に一体的に伸びた棒体の先端にある球体と胸部分から下部に一体的に伸びた棒体の先端にある球体を、B(25)パーツとB(26)パーツを2つのビスとナットでネジを介して一体に連結する部分(腹部分)からなり、腹部分の外部はD(1)パーツとD(2)パーツで覆われており、胸部分の外部はF(3)パーツで覆われており、腰部分の外部はF(1)パーツで覆われている、と認められる。
各パーツは、甲第1号証の10を参酌すると、EパーツとFパーツは合成ゴム製であり、BパーツはABS樹脂製、CパーツはABS高比重樹脂製、AパーツとDパーツはスチロール樹脂製である、と認められる。
甲第4号証の8を参酌すると、胸部分と腹部分は、相対的に左右方向に回動することが見て取れる。
甲第4号証の9を参酌すると、腰部分と腹部分は、相対的に左右方向に回動することが見て取れる。
以上を総合すると、甲第4号証から次のとおりの第2商品発明を認めることができる。
<第2商品発明>
「組み立てられた状態において、人形となる可動フレームであって、
可動フレームは、胴体、頭、右腕、左腕、右脚、左脚を有し、
右腕は、D(7)パーツの内部のミゾにB(11)パーツとB(12)パーツからなる肩部可動構造の一方をミゾに合わせてはめ込み、その先端にB(4)パーツとB(6)パーツとB(7)パーツとB(9)パーツからなる肘部可動構造の一方をB(19)パーツを介して接続し、肘部可動構造の他方をC(8)パーツの内部のミゾに合わせてはめ込み、さらにF(2)パーツの内部から外側に肩部可動構造の他方を通したものであり、
左腕は、D(8)パーツの内部のミゾにB(11)パーツとB(13)パーツからなる肩部可動構造の一方をミゾに合わせてはめ込み、その先端にB(3)パーツとB(5)パーツとB(8)パーツとB(10)パーツからなる肘部可動構造の一方をB(19)パーツを介して接続し、肘部可動構造の他方をC(9)パーツの内部のミゾに合わせてはめ込み、さらにF(2)パーツの内部から外側に肩部可動構造の他方を通したものであり、
右脚は、D(5)パーツの内部のミゾにB(20)パーツとB(28)パーツからなる足の付け根の可動構造の一方をミゾに合わせてはめ込み、その先端にB(21)パーツとB(23)パーツとB(29)パーツとB(32)パーツからなるひざ部可動構造の一方をB(27)パーツを介して接続し、ひざ部可動構造の他方をC(1)パーツの内部のミゾに合わせてはめ込み、ひざ部可動構造の他方の先端をC(7)パーツとE(6)パーツからなる足底部に接続したものであり、
左脚は、D(6)パーツの内部のミゾにB(20)パーツとB(28)パーツからなる足の付け根の可動構造の一方をミゾに合わせてはめ込み、その先端にB(22)パーツとB(24)パーツとB(30)パーツとB(31)パーツからなるひざ部可動構造の一方をB(27)パーツを介して接続し、ひざ部可動構造の他方をC(2)パーツの内部のミゾに合わせてはめ込み、ひざ部可動構造の他方の先端をC(7)パーツとE(6)パーツからなる足底部に接続したものであり、
胴体は、B(17)パーツとB(18)パーツを組み合わせて成る、右脚と左脚を接続する部分(腰部分)と、B(1)パーツとB(2)パーツとB(14)とパーツB(15)とパーツB(16)パーツを組み合わせて成る、右腕と左腕を接続する部分(胸部分)と、腰部分から上部に一体的に伸びた棒体の先端にある球体と胸部分から下部に一体的に伸びた棒体の先端にある球体を、B(25)パーツとB(26)パーツを2つのビスとナットでネジを介して一体に連結する部分(腹部分)からなり、腹部分の外部はD(1)パーツとD(2)パーツで覆われており、胸部分の外部はF(3)パーツで覆われており、腰部分の外部はF(1)パーツで覆われており、
各パーツは、EパーツとFパーツは合成ゴム製であり、BパーツはABS樹脂製、CパーツはABS高比重樹脂製、AパーツとDパーツはスチロール樹脂製であり、
胸部分と腹部分は、相対的に左右方向に回動し、腰部分と腹部分は、相対的に左右方向に回動する、
可動フレーム。」

b.第2商品発明と本件発明との一致点、相違点の認定相違点の判断
上記第2商品発明と、本件発明とを対比すると、第2商品発明には、EパーツとFパーツは合成ゴム製であることから、胸部分の覆いのF(3)パーツと腰部分の覆いのF(1)パーツと肩のF(2)パーツと足底のE(5)パーツ及びE(6)パーツをソフトビニル製の外皮と見なしたとしても、胸部分と腰部分と肩以外にはソフトビニル製の外皮はない。また、第2商品発明の胸部分と腹部分の連結部には第二嵌入杆とそれを受け入れる嵌合穴もなく、第2商品発明の腹部分と腰部分の連結部には第一嵌入杆とそれを受け入れる嵌合穴もない。
よって、第2商品発明と本件発明とは、少なくとも本件発明が
「前記腹骨格部は、
前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される腰部骨格連結部を一端側に備え、かつ前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される胸部骨格連結部を他端側に備えており、
前記腰部骨格連結部は、
分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え、
前記胸部骨格連結部は、
分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え、
前記腰部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第一嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第二嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、」
という発明特定事項を備えるのに対し、第2商品発明は胸部と腹部及び腰部と腹部が前後・左右に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結されているが、上記発明特定事項を備えていない点という相違点がある。
さらに、第2商品発明と本件発明とは、少なくとも本件発明が「少なくとも前記肩部の骨格に、腕部骨格を覆う外皮の一端が嵌着されて」いるという発明特定事項を備えるのに対し、第2商品発明は上記発明特定事項を備えていない点という相違点がある。
上記相違点については、外皮については上記「d.(a)」で、また腹骨格部の構造については上記「d.(b)」でそれぞれ検討したとおり、甲第1号証ないし甲第35号証の開示内容からから当業者が容易に想到しうるとはいえない。
また、本件発明は、大型の人形において外皮部分をソフトビニル製で構成しても、自立が可能で、かつ様々な姿態を一定時間維持できると共に、軽量でかつ軟質なため、落下・転倒などしても安全で、破損も防げるという効果、外皮がソフトビニル製であるため製作容易(スラッシュ成形など)で、かつコスト安価なため、この種の大型可動人形の製作上大幅なコスト減となる効果、夫々の骨格が着脱可能で、かつ夫々の外皮も着脱可能であるため、搬送費用低廉となり、結果的に製品価格も低く抑えることができるため需要者ニーズに応えることができる効果、を備えており、甲第1号証ないし甲第35号証の開示内容から当業者が予測することができない、格別の効果を奏するものである。

c.無効理由2-3についてのまとめ
以上のことから、上記「d.(a)」「d.(b)」で検討したのと同様に、本件発明は、第2商品発明と甲第1号証ないし甲第35号証に開示された事項から、当業者が容易に導き出しうる発明であるとはいえない。

(オ)訂正請求2による訂正後の請求項1に係る特許に対する無効理由2についてのまとめ
以上のことから、訂正請求2による訂正後の請求項1に係る発明は、第1商品発明、甲3発明、又は第2商品発明のいずれかに基いて、甲第1号証ないし甲第35号証に開示された事項から当業者が容易に導き出し得た発明であるとはいえない。

(カ)無効審判請求がされていない請求項の訂正請求について
前述のとおり、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲には、請求項1を引用する請求項として請求項2及び請求項3があり、訂正請求2によって請求項1を訂正したことにより、請求項2及び請求項3の記載は形式的には訂正されていないものの、請求項1を引用する結果として請求項2及び請求項3も実質的に訂正がされていることとなる。そこで、本件特許無効審判の請求がされていない、請求項2及び請求項3に係る訂正請求の適法性について検討する。
請求項2及び請求項3は訂正後の請求項1と、明細書の発明の詳細な説明に記載された実施態様を共通するものであり、請求項2及び請求項3の記載は形式的には訂正されておらず、請求項1を引用する結果として請求項2及び請求項3も実質的に訂正の請求がされているのであるから、請求項1の場合と同様に、請求項2及び請求項3についての訂正の請求も特許法第134条の2第1項の規定に適合するものであり、かつ、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合することは明らかである。
さらに、請求項2及び請求項3は訂正後の請求項1を引用するものであり、訂正後の請求項1に係る発明である本件発明が上述の通り当業者が容易に想到し得たものであるとはいうことができないのであるから、訂正後の請求項2及び請求項3に係る発明も同様に当業者が容易に想到し得たものであるとはいうことができない。したがって、訂正発明2及び訂正発明3は当業者が容易に想到し得たものであるとはいうことができない。そして、ほかに独立して特許を受けることができない理由も発見しない。したがって、訂正発明2及び訂正発明3は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであると認められ、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
以上検討のとおり、本件特許無効審判の請求がされていない、請求項2及び請求項3に係る訂正の請求は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し同項の規定に適合するものであり、かつ、同法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項ないし第5項の規定に適合するものである。したがって、請求項2及び請求項3に係る訂正の請求は適法であるから、請求項2及び請求項3に係る訂正を認める。

7.むすび
以上検討のとおり、訂正事項1、訂正事項2並びに請求項2及び請求項3についての実質的な訂正よりなる訂正請求2は適法であるから、訂正請求2による訂正を認める。
また、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1に係る発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ソフトビニル製大型可動人形の骨格構造および該骨格構造を有するソフトビニル製大型可動人形
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、腕や脚などの身体の各関節箇所にて屈曲作動できる大型の可動人形用の骨格構造と、その骨格構造を有する大型の可動人形に関する。
本明細書において、「脚部」とは、足部の爪先から上脚の太腿付け根位置あたりまでをいい、「足部」とは、爪先から踝あたりまでをいい、「下脚」とは、その踝あたりから膝下あたりまでをいい、「上脚」とは、膝上あたりから太腿の付け根位置あたりまでをいい、「腰部」とは、その太腿付け根位置あたりから腰のラインあたりまでをいい、「胴部」とは、その腰のラインあたりから首部あたりまで、かつ左右の腕部付け根位置あたりまでをいい、「上腕」とは、その腕部付け根位置から肘上あたりまでをいい、「下腕」とは、肘下あたりから手首あたりまでをいい、「手部」とは、その手首あたりから指先までをいうものとする。また、本明細書において「大型」とは、例えば全高60cm程度以上の人形をいうが、特に限定はされず、一般的な30cm程度の人形よりも大きい人形の全てをいう。
【0002】
【従来技術】
腕・脚・腰・頭など身体の多数の関節箇所にて夫々可動可能に連結されている人形(フィギュアともいう)が知られている。
特に、全高30cm前後の小型の人形が需要者に好まれ、多数市場へ提供されているが、昨今、全高が大体50?60cm以上の大型の人形に対する需要者要求が高まっている。
このような大型の人形として、現在、例えば次の構成からなるものが知られている。
▲1▼「第一の従来技術」
図13に示すように、手100や脚200などの関節部分101,201が球体になっていて、夫々の関節同士をゴム紐300で引っ張って連結している、いわゆるビスクドールと呼ばれる白磁器製・粘土製(焼成・非焼成)の人形が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
▲2▼「第二の従来技術」
いわゆるマネキン人形といわれる等身大の人形にも、昨今は関節部分で可動可能に構成されているものが提供されている。例えばその一例を挙げると、手・足・頭部などの各部品の材質はFRP製で、夫々は内部に通した針金などで連結されている人形が知られている。
【0003】
【非特許文献1】
“Dollhouse Noah’s gallery、How to Make Noah’s Doll(ノア・ドールのつくりかた)、はじめに球体関節人形とはFig01”、[online]、[平成15年1月8日検索]、インターネット、<URL:http://www2d.biglobe.ne.jp/^(?)dhnoah/index_j.htm>
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
▲1▼「第一の従来技術の問題点」
図13に示す人形(ビスクドール)の場合、上述のような人形構造であるため、人形自身でその全体を支える構造はなく人形自身で立つことはできなかった。そのため、面白みに欠け、様々な動きのある姿態を人形そのものの構造により求める傾向のある需要者ニーズに十分対応しえていなかった。
また、上述した手足などの連結構造により、夫々がぶらついているものであるため、小型の人形(フィギュア)のように各屈曲させた状態を一定状態のまま保持させておくことはできなかった。そのため面白みに欠け、人間的な動きを人形に求める傾向のある需要者ニーズに十分対応しえていなかった。
また、全体重量がかなりあり、重いばかりか、落とした際に欠け易いという問題もあった。また、この種の人形は、量産性も無い。
▲2▼「第二の従来技術の問題点」
この人形の場合、所望関節箇所の内部針金を屈曲させることで、一定状態のまま保持させる機能は有している。
しかし、この人形にあっても内部の骨格構造で人形全体を支える構造ではなく、その人形本体そのもので支えるものであるため、材質的にも全体重量がかなりあり、重いばかりか、落とした際に欠け易いという第一従来技術と同様の問題点を有している。
また、量産ができないためコスト高となり、価格的にも安価なものを求める需要者の要求と反する結果となる。
さらに、この種の人形は、元々が衣服などの展示のために使用されるものであり、需要者が様々なポーズをその都度取らせて楽しむという主旨の下で製作されているものではないため、頻繁に各箇所で屈曲作動を繰り返すと、その部分の針金が折損してしまうこともある。
本発明は、従来技術の有するこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、上半身から下半身まで連続した一連の骨格群を有し、所望箇所で屈曲動作ができると共に、自立が可能で、かつ様々な姿態を一定時間維持できる技術的構造を有すると共に、軽量・コスト安価な大型の人形を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために本発明がなした技術的手段は、分割して形成され、それぞれが着脱可能なソフトビニル製の外皮と、該それぞれの外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造であって、
前記骨格構造は、
左右それぞれの足底部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有する左右の脚部骨格と、
外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、
外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、
左右それぞれの手首部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、
前記胴部骨格は、
腰部骨格と連結される腹骨格部と、
該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成され、前記腹骨格部と前記胸骨格部は、双方の間で分割されたそれぞれの外皮で覆われており、
前記腹骨格部は、
前後・左右方向に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される腰部骨格連結部を一端側に備え、
かつ前後・左右方向に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される胸部骨格連結部を他端側に備えており、
前記腰部骨格連結部は、
分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え、
前記胸部骨格連結部は、
分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え、
前記腰部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第一嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第二嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記腕部骨格は肩部の骨格を有し、少なくとも前記肩部の骨格に、腕部骨格を覆う外皮の一端が嵌着されており、
前記一連の人形骨格群を構成する前記各骨格が着脱可能であることを特徴とするソフトビニル製大型可動人形の骨格構造としたことである。
また、前記胸骨格部には、首部骨格が連結され、該首部骨格は、人形用の頭部を嵌着する頭部外皮嵌着部を備え、該頭部外皮嵌着部は、上下方向に揺動自在に備えられているものとすることができる。
また、前記首部骨格は、人形用胴体の首部外皮挿着部と、人形用の頭部を嵌着する頭部外皮嵌着部とを備え、前記首部外皮挿着部が胸骨格部に連結され、前記頭部外皮嵌着部は、前記首部外皮挿着部とスプリングを介して上下方向に揺動自在に連結されているものとすることができる。
さらに、ソフトビニル製の外皮と、該外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造であって、左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、左右の脚部骨格は、ソフトビニル製の足部外皮の開口縁が嵌着される足部外皮嵌着部と、ソフトビニル製の下脚外皮の下端開口縁が嵌着される下脚外皮下端嵌着部とを有し、該両者の連結部にて回動可能な構造を有する足首部と、前記下脚外皮の上端開口縁が嵌着される下脚外皮上端嵌着部と、ソフトビニル製の上脚外皮の下端開口縁が嵌着される上脚外皮下端嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する膝部と、上記足首部の下脚外皮下端嵌着部と膝部の下脚外皮上端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される脛用補強連結杆と、前記上脚外皮の上端開口縁が嵌着される上脚外皮上端嵌着部と、腰部骨格の脚付け根部側連結部を連結する腰部骨格連結部とを有する脚付け根部と、該脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部と膝部の上脚外皮下端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される太腿用補強連結杆とで構成され、腰部骨格は、左右の脚付け根部の腰部骨格連結部と回動可能に連結する脚付け根部側連結部と、胴部骨格の下端側と連結する胴部下端骨格連結部とを備えて構成され、胴部骨格は、腰部骨格の上端側と連結する腰部骨格連結部と、左右の腕部骨格と夫々連結する腕部骨格連結部とを備えて構成され、左右の腕部骨格は、前記胴部骨格の腕部骨格連結部と連結される胴部上端骨格連結部と、ソフトビニル製の上腕外皮の上端開口縁が嵌着される上腕外皮上端嵌着部とを備えてなる肩部と、前記上腕外皮の下端開口縁が嵌着される上腕外皮下端嵌着部と、ソフトビニル製の下腕外皮の上端開口縁が嵌着される下腕外皮上端嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する肘部と、前記下腕外皮の下端開口縁が嵌着される下腕外皮下端嵌着部と、ソフトビニル製の手部外皮の開口縁が嵌着される手部外皮嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する手首部とを備えて構成されていることを特徴とするソフトビニル製大型可動人形の骨格構造としたことである。
【0006】
上記足首部の足部外皮嵌着部には、ソフトビニル製の足部外皮の開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、下脚外皮下端嵌着部には、ソフトビニル製の下脚外皮の下端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、膝部の下脚外皮上端嵌着部には、前記下脚外皮の上端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、上脚外皮下端嵌着部には、ソフトビニル製の上脚外皮の下端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部には、前記上脚外皮の上端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、肩部の上腕外皮上端嵌着部には、ソフトビニル製の上腕外皮の上端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、肘部の上腕外皮下端嵌着部には、前記上腕外皮の下端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、下腕外皮上端嵌着部には、ソフトビニル製の下腕外皮の上端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、手首部の下腕外皮下端嵌着部には、前記下腕外皮の下端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、手部外皮嵌着部には、ソフトビニル製の手部外皮の開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられている骨格構造とすることもできる。
また、上記足首部は、足部外皮嵌着部の底面に、ソフトビニル製の足部外皮の指先方向へと延びる足底部を一体的に備えるものとしてもよい。
上記脛用補強連結杆は、所望長さの棒状で、その下端側を足首部の下脚外皮下端嵌着部の嵌合穴に差込嵌着させると共に、その上端側を膝部の下脚外皮上端嵌着部の嵌合穴に差込嵌着させて嵌脱自在に掛け渡され、太腿用補強連結杆は、所望長さの棒状で、その上端側を脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部の嵌合穴に差込嵌着させると共に、その下側を膝部の上脚外皮下端嵌着部の嵌合穴に差込嵌着させて嵌脱自在に掛け渡される骨格構造とすることもできる。
上記肩部の上腕外皮上端嵌着部と肘部の上腕外皮下端嵌着部との間にわたって、所望長さの上腕用補強連結杆が嵌脱自在に掛け渡され、肘部と手首部との間にわたって、所望長さの下腕用補強連結杆が嵌脱自在に掛け渡されている骨格構造としてもよい。
上記骨格構造には、胴部骨格の腰部骨格連結部と対峙する側に首部骨格を着脱可能に備え、該首部骨格は、ソフトビニル製の首部外皮の開口が挿着される首部外皮挿着部と、ソフトビニル製の頭部外皮の開口縁が嵌着される頭部外皮嵌着部とで構成され、この頭部外皮嵌着部は、首部外皮挿着部上端に位置すると共に、上下方向に揺動自在に備えられ、かつ常時首部外皮挿着部上端方向に引っ張り力が作用する構成としてもよい。
【0007】
そして、左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格と、該胴部骨格の腰部骨格連結部と対峙する側に着脱可能に備えられる首部骨格とで構成される一連の人形骨格群と、上記夫々の骨格外周に備えられる脚部外皮と、腰部外皮と、胴部外皮と、腕部外皮と、頭部外皮とで構成されるソフトビニル製の人形外皮群とで構成され、左右の脚部骨格は、足部外皮の開口縁が嵌着される足部外皮嵌着部と、下脚外皮の下端開口縁が嵌着される下脚外皮下端嵌着部とを有し、該両者の連結部にて回動可能な構造を有する足首部と、下脚外皮の上端開口縁が嵌着される下脚外皮上端嵌着部と、上脚外皮の下端開口縁が嵌着される上脚外皮下端嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する膝部と、該足首部の下脚外皮下端嵌着部と膝部の下脚外皮上端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される脛用補強連結杆と、上脚外皮の上端開口縁が嵌着される上脚外皮上端嵌着部と、腰部骨格の脚付け根部側連結部を連結する腰部骨格連結部とを有する脚付け根部と、該脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部と膝部の上脚外皮下端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される太腿用補強連結杆とで構成され、腰部骨格は、左右の脚付け根部の腰部骨格連結部と回動可能に連結する脚付け根部側連結部と、胴部骨格の下端側と連結する胴部下端骨格連結部とを備えて構成され、胴部骨格は、腰部骨格の上端側と連結する腰部骨格連結部と、左右の腕部骨格と夫々連結する腕部骨格連結部とを備えて構成され、左右の腕部骨格は、前記胴部骨格の腕部骨格連結部と連結される胴部上端骨格連結部と、上腕外皮の上端開口縁が嵌着される上腕外皮上端嵌着部とを備えてなる肩部と、上腕外皮の下端開口縁が嵌着される上腕外皮下端嵌着部と、下腕外皮の上端開口縁が嵌着される下腕外皮上端嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する肘部と、下腕外皮の下端開口縁が嵌着される下腕外皮下端嵌着部と、手部外皮の開口縁が嵌着される手部外皮嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する手首部とを備えて構成され、首部骨格は、首部外皮の開口が挿着される首部外皮挿着部と、頭部外皮の開口縁が嵌着される頭部外皮嵌着部とで構成されて、胴部骨格の腰部骨格連結部と対峙する側に着脱可能に備えられ、この頭部外皮嵌着部は、首部外皮挿着部上端に位置すると共に、上下方向に揺動自在に備えられ、かつ常時首部外皮挿着部上端方向に引っ張り力が作用する構成とされ、左右の脚部外皮は、足部外皮と下脚外皮と上脚外皮からなり、足部外皮は、上記足首部の足部外皮嵌着部に嵌着される開口縁を、上端に設けた開口の径方向内方に突設した全体中空の足形状に形成され、下脚外皮は、上記足首部の下脚外皮下端嵌着部に嵌着される開口縁を、下端に設けた開口の径方向内方に突設すると共に、上記膝部の下脚外皮上端嵌着部に嵌着される開口縁を、上端に設けた開口の径方向内方に突設してなる全体中空筒状に形成され、足首部の下脚外皮下端嵌着部と膝部の下脚外皮上端嵌着部とにわたって掛け渡される脛用補強連結杆を内装し、上脚外皮は、上記膝部の上脚外皮下端嵌着部に嵌着される開口縁を、下端に設けた開口の径方向内方に突設すると共に、上記脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部に嵌着される開口縁を、上端に設けた開口の径方向内方に突設してなる全体中空筒状に形成され、膝部の上脚外皮下端嵌着部と脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部とにわたって掛け渡される太腿用補強連結杆を内装し、腰部外皮は、腰部骨格を内装する空間を有すると共に、上端に胴部外皮下端を挿入する開口を有し、かつ股間位置には、左右の脚付け根部を連結する連結空間を有する全体中空の腰部形状に形成され、胴部外皮は、胴部骨格を内装する空間を有すると共に、上端に首部骨格の首部外皮挿着部を挿入する開口を有し、かつ両肩位置には左右の腕部骨格を連結する連結空間を有する全体中空の胴部形状に形成され、左右の腕部外皮は、該左右の腕部骨格を被覆して備えられる上腕外皮,下腕外皮及び手部外皮とからなり、上腕外皮は、上記肩部の上腕外皮上端嵌着部に嵌着される開口縁を、上端に設けた開口の径方向内方に突設すると共に、上記肘部の上腕外皮下端嵌着部に嵌着される開口縁を、下端に設けた開口の径方向内方に突設してなる全体中空筒状に形成され、下腕外皮は、上記肘部の下腕外皮上端嵌着部に嵌着される開口縁を、上端に設けた開口の径方向内方に突設すると共に、上記手首部の下腕外皮下端嵌着部に嵌着される開口縁を、下端に設けた開口の径方向内方に突設してなる全体中空状に形成され、手部外皮は、上記手首部の手部外皮嵌着部に嵌着される開口縁を備えた全体中空の手形状に形成され、頭部外皮は、首部骨格の頭部外皮嵌着部に嵌着する開口縁を備えた全体頭部形状に形成されていることを特徴とするソフトビニル製大型可動人形とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図に基づいて説明する。
図は、本発明の一実施形態を示すものであって、特に限定されるものではなく本発明の範囲内において適宜構成が追加・変更されることがある。また、本実施形態では、人間を模写した人形を代表例として説明するが、ロボットタイプ、怪獣タイプなどの種々の外観形状を有する人形に適用される。
図面は、本発明ソフトビニル製大型可動人形の骨格構造と該骨格構造を有するソフトビニル製大型可動人形の一実施形態を示す。
本実施形態のソフトビニル製大型可動人形は、複数の骨格の集合からなる人形骨格群と、これら各骨格外周に備えられる人形外皮群にて構成されている。
【0009】
人形骨格群は、左右の脚部骨格Aと、該左右の脚部骨格Aに連結される腰部骨格Bと、該腰部骨格Bに連結される胴部骨格Cと、該胴部骨格Cと連結される左右の腕部骨格Dおよび首部骨格Eとで構成され、左右の脚部骨格Aから左右の腕部骨格Dおよび首部骨格Eまでが一体に連結されている一連の骨格群である。なお、各骨格A乃至Eの材質は、ABS樹脂、その他の樹脂、若しくは金属製など任意に選択される。
【0010】
左右の脚部骨格Aは、足首部1と、膝部15と、これら足首部1と膝部15との間に備えられる脛用補強連結杆29と、脚付け根部31と、この脚付け根部31と上記膝部15との間に備えられる太腿用補強連結杆42とで構成されている。
足首部1は、図3(a)(b)に示すように、足部外皮F1の開口縁98が嵌着される足部外皮嵌着部2と、下脚外皮F2の下端開口縁100が嵌着される下脚外皮下端嵌着部7とを有すると共に、該両者2,7の連結部にて回動可能な構造を有し、さらに足部外皮嵌着部2の底面には、足部外皮F1内に内装されると共に、その足部外皮F1内の指先方向へと延びる足底部129を一体的に備えて構成されている。
図3(a)(b)に示す本実施形態に基づいて具体的に説明すると、足部外皮嵌着部2は、足部外皮F1内に嵌入される円筒状の嵌入部3と、該嵌入部3上に周方向に連続して設けられる凹溝4を介して一体的に設けられるドーム状の連結部5で構成されており、該連結部5上端から内方に向けて連結用切欠き溝6が形成されている。
なお、この足部外皮嵌着部2の凹溝4は、足部外皮F1の開口縁98が嵌着される嵌合凹部として作用する。
一方、下脚外皮下端嵌着部7は、下脚外皮F2内に挿入される一端を開口した中空円筒状の連結筒部8と、該筒部8の他端に備えられている連結片9で構成されている。この筒部8には、一端開口10を介して後述する脛用補強連結杆29を嵌合する嵌合穴11が備えられている。
そして、下脚外皮下端嵌着部7の連結片9を、上記足部外皮嵌着部2の連結用切欠き溝6内に嵌入すると共に、ネジ12を介して両嵌着部2,7が回動可能に連結されて一体化されている。
下脚外皮下端嵌着部7の連結筒部8の連結片側端部には、径方向に突出する周方向鍔部13が形成されており、この鍔部13と足部外皮嵌着部2の連結部5との間に形成される周方向凹部14が、下脚外皮F2の下端開口縁100が嵌着される嵌合凹部として作用する。
足底部129は、例えば金属若しくは樹脂などの所望な材料をもって平板状に形成され、足部外皮嵌着部2の底面にネジ130などを介して一体的に備えられる。このように足底部129を備えることで足部外皮F1の強度が強くなる。すなわち、例えば足首部1の連結部分で下脚外皮下端嵌着部7側を前方(図3(a)で矢印x方向)へ回動作動させた場合でも、足底部129が人形全体の重量を支えると共に足部形状を保持するため、足部外皮が折れて人形全体が倒れてしまうという虞れもない。
なお、足底部129は、足部外皮嵌着部2の底面に一体的に備えられ、かつ足部外皮F1内に内装される形状(幅・長さ・厚さなど)で、その足部外皮F1内の指先方向へと延びる構成であればよく、特に限定されず本発明の範囲内で設計変更可能である。また、本実施形態ではネジ130が外部から見えないように、足底部129の裏面から足部外皮嵌着部2の底面に向けてネジ130を取り付けているが、ネジ130は、足部外皮の外底面から足部外皮嵌着部2の底面に向けて取り付けるものとしても良い。
【0011】
足部外皮嵌着部2の嵌入部3は、本実施形態のように円筒状に限らず、足部外皮F1の開口縁98よりも大径であれば角筒状など任意である。また、嵌合凹部(凹溝)4は、一本でも複数本でもよく、さらに、その凹部形状・幅・深さなどの諸条件も任意で、足部外皮F1の開口縁98の構成に応じて設計変更可能である。また嵌合凹部(凹溝)4は、嵌入部3の外周に周設するものとしてもよい。上記した下脚外皮F2の下端開口縁100が嵌着される嵌合凹部(周方向凹部)14は、本実施形態の構造に限られるものではなく、連結筒部8の外周に周設するものとしてもよい。また、一本でも複数本でもよく、さらに、その凹部形状・幅・深さなどの諸条件も任意で、下脚外皮F2の下端開口縁100の構成に応じて設計変更可能である。
また、下脚外皮下端嵌着部7の連結筒部8は、角筒状の嵌入部とすることもでき、嵌合穴11も本実施形態では嵌合穴11内で脛用補強連結杆29が周方向に回動可能なように円筒状としているが、非回動としたい場合には角筒状などの所望な周知形状を適宜採用することができる。また、嵌合穴11の穴径・深さなども任意で、脛用補強連結杆29を嵌合し得る程度の構成を有していればよい。
【0012】
また、本実施形態では、図3(c)に示すように、足底部129と足部外皮F1との間に磁石133を備える構成も採用している。
本実施形態では、足底部129のネジ止め位置よりも前方を凹設して磁石配設空間129aを形成し、この空間129aに磁石133を嵌め込み固着している。磁石133は、接着剤などを介して固着されている。なお、磁石配設空間129aと磁石133とが嵌合構造を有しており、その構造により嵌着されるものや、磁石133が磁石配設空間129aに螺合し得る構造を有しているもの等であれば接着剤を使用しなくとも良い。磁石133の形状は特に限定されず任意で、また磁石配設空間129aの形状も磁石133を配設し得る空間を有していれば良く、本発明の範囲内で設計変更可能である。この磁石配設空間129aは、足底部129の裏面に穴状または溝状に設けることができる。
本実施形態では、磁石133の露呈している面と足底部129の底面とが面一となるように構成しているが限定はされず、磁石133の磁力を損なわない程度であれば埋没状に構成してもよく、また、足部外皮の底面が極端に凸状とならなければ足底部129の底面よりも突出して構成されているものであっても良い。磁石133は片足に一つとは限らず、複数個備えることも可能で本発明の範囲内である。
このように、足底部129と足部外皮F1との間に磁石133を配設しているため、外部から磁石133が見えず、人形全体の美観を損ねることもない。
本実施形態によれば、人形の膝部を曲げたり、腰部を曲げたりして需要者が思い思いの姿勢を人形に取らせた場合でも、設置場所(人形を飾る場所)などに鉄板などが配置されていれば、足底に備えた磁石133の磁力により固着されるため、自由なポーズを取らせることができる。
【0013】
膝部15は、図4(a)乃至(c)に示すように、下脚外皮F2の上端開口縁102が嵌着される下脚外皮上端嵌着部16と、上脚外皮F3の下端開口縁104が嵌着される上脚外皮下端嵌着部17とを有し、両者16,17の連結部にて回動可能な構造を有する。
図4(a)乃至(c)に示す本実施形態に基づいて具体的に説明すると、下脚外皮上端嵌着部16および上脚外皮下端嵌着部17は、夫々下脚外皮F2内または上脚外皮F3内に挿入される一端を開口した中空円筒状の連結筒部18と、該筒部18上から断面視反台形状に延設された嵌入部19と、該嵌入部19端縁から段部20を介して立上げ形成される二片の連結片21,21で構成された連結部22とからなる同一形状のものである。
この夫々の嵌入部19端縁と連結部22との間に存する段部20は、周方向に連続して設けられる凹溝23となり、この凹溝23,23は夫々が下脚外皮F2の上端開口縁102または上脚外皮F3の下端開口縁104が嵌着される嵌合凹部として作用する。
上記夫々の嵌入部18,18には、一端開口24,24を介して後述する脛用補強連結杆29または太腿用補強連結杆42を嵌合する嵌合穴25,25が備えられている。
そして、これら下脚外皮上端嵌着部16と上脚外皮下端嵌着部17の夫々の連結部22を構成している二片の連結片21,21間には、膝頭部26の裏面両端に備えられている被連結部27,27が夫々嵌入されると共に、ネジ28を介して両嵌着部16,17が回動可能に連結されて一体化されている。したがって、本実施形態によれば、このように下脚外皮上端嵌着部16と上脚外皮下端嵌着部17の夫々の連結部22が、膝頭部26の裏面に設けられている夫々の被連結部27に夫々連結される構成としたため、下脚外皮上端嵌着部16と上脚外皮下端嵌着部17が夫々自由に回動作動がなし得る。
【0014】
下脚外皮上端嵌着部16および上脚外皮下端嵌着部17の連結筒部18は、本実施形態のように円筒状に限らず角筒状など任意である。また、嵌合凹部(凹溝)23は、一本でも複数本でもよく、さらに、その凹部形状・幅・深さなどの諸条件も任意で、下脚外皮F2の上端開口縁102または上脚外皮F3の下端開口縁104の構成に応じて設計変更可能である。
上記した嵌合凹部(凹溝)23は、本実施形態の構造に限られるものではなく、嵌入部19の外周に周設するものとしてもよい。
また、嵌合穴25は本実施形態では嵌合穴25内で脛用補強連結杆29および太腿補強連結杆42が周方向に夫々回動可能なように円筒状としているが、非回動としたい場合には角筒状などの所望な周知形状を適宜採用することができる。また、嵌合穴25の穴径・深さなども任意で、脛用補強連結杆29および太腿補強連結杆42を嵌合し得る程度の構成を有していればよい。膝頭部26の構造も本実施形態に限られるものではなく、本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0015】
脛用補強連結杆29は、図1,図2に示すように、足首部1の下脚外皮下端嵌着部7の嵌合穴11と、膝部15の下脚外皮上端嵌着部16の嵌合穴25に、夫々の端部30が嵌脱自在に嵌合される長尺棒状(本実施形態では断面円形の丸棒状)に形成されており、両端30,30嵌合状態で、足首部1の下脚外皮下端嵌着部7と、膝部15の下脚外皮上端嵌着部16との間で連結状に掛け渡される。この脛用補強連結杆29は、足首部1の下脚外皮下端嵌着部7の嵌合穴11と、膝部15の下脚外皮上端嵌着部16の嵌合穴25に、両端30,30が夫々嵌合されて両嵌着部7,16間にわたって掛け渡される構造であれば特に限定されるものではなく任意である。本実施形態では、所望長さ・所望径の断面円形の丸棒状に形成されているが、その外形・長さ・端部の形状などは任意で適宜設計変更される。また、この脛用補強連結杆29は、中実でも中空(両端開口又は非開口のいずれも含む)であってもよい。
【0016】
脚付け根部31は、図5(a)(b)に示すように、上脚外皮F3の上端開口縁106が嵌着される上脚外皮上端嵌着部32と、腰部骨格Bの脚付け根部側連結部44を連結する腰部骨格連結部37を有する。
図5(a)(b)に示す本実施形態に基づいて具体的に説明すると、上脚外皮上端嵌着部32は、上脚外皮F3内に挿入される一端を開口した中空円筒状の連結筒部33と、該筒部33上から断面視反台形状に延設された嵌入部34で構成されている。
腰部骨格連結部37は、上記嵌入部34端縁から段部35を介して立上げ形成される玉状部36と、該玉状部36の一部に設けた切り欠き36aを介して一端が挿入されると共に、回動可能に連結される腰部骨格連結杆38とで構成されている。
この嵌入部34端縁と腰部骨格連結部37との間に存する段部35は、周方向に連続して設けられる凹溝39となり、この凹溝39は上脚外皮F3の上端開口縁106が嵌着される嵌合凹部として作用する。
上記連結筒部33には、一端開口40を介して後述する太腿用補強連結杆42を嵌合する嵌合穴41が備えられている。
連結筒部33は、本実施形態のように円筒状に限らず、角筒状など任意である。また、嵌合凹部(凹溝)39は、一本でも複数本でもよく、さらに、その凹部形状・幅・深さなどの諸条件も任意で、上脚外皮F3の上端開口縁106の構成に応じて設計変更可能である。
上記した嵌合凹部(凹溝)39は、本実施形態の構造に限られるものではなく、嵌入部34の外周に周設するものとしてもよい。
また、嵌合穴41は本実施形態では嵌合穴41内で太腿用補強連結杆42が周方向に回動可能なように円筒状としているが、非回動としたい場合には角筒状などの所望な周知形状を適宜採用することができる。また、嵌合穴41の穴径・深さなども任意で、太腿用補強連結杆42を嵌合し得る程度の構成を有していればよい。
【0017】
太腿用補強連結杆42は、図1,図2に示すように、脚付け根部31の上脚外皮上端嵌着部32の嵌合穴41と、膝部15の上脚外皮下端嵌着部17の嵌合穴25に、夫々の端部43,43が嵌脱自在に嵌合される長尺棒状(本実施形態では断面円形状の丸棒状)に形成されており、両端43,43嵌合状態で、脚付け根部31の上脚外皮上端嵌着部32と膝部15の上脚外皮下端嵌着部17との間で連結状に掛け渡される。
この太腿用補強連結杆42は、脚付け根部31の上脚外皮上端嵌着部32の嵌合穴41と、膝部15の上脚外皮下端嵌着部17の嵌合穴25に、両端43,43が夫々嵌合されて両嵌着部17,32間にわたって掛け渡される構造であれば特に限定されるものではなく任意である。本実施形態では、所望長さ・所望径の断面円形の丸棒状に形成されているが、その外形・長さ・端部の形状などは任意で適宜設計変更される。また、この太腿用補強連結杆42は、中実でも中空(両端開口又は非開口のいずれも含む)であってもよい。
【0018】
腰部骨格Bは、図6(a)(b)に示すように、少なくとも、左右の脚付け根部31,31の腰部骨格連結部37と回動可能に連結する脚付け根部側連結部44と、胴部骨格Cの下端側と連結する胴部下端骨格連結部46とを備えて構成されている。
図6(a)(b)に示す本実施形態に基づいて具体的に説明すると、腰部外皮Gの腰部骨格内装空間107に固定される本体45と、該本体45から水平方向両側に延びる脚付け根部側連結部44と、該本体45から上方に延びる胴部下端骨格連結部46とで構成されている。この胴部下端骨格連結部46は、一端を開口した中空筒状に形成され、該開口47を介して胴部下端の骨格を嵌合する嵌合穴48を設けている。
そして、脚付け根部側連結部44の中空筒部に上記脚付け根部31の腰部骨格連結部37の腰部骨格連結杆38を嵌入して回動可能に連結すると共に、胴部下端骨格連結部46の嵌合穴48に胴部下端の骨格を嵌合して連結する。
なお、本実施形態の腰部骨格Bは本発明の一実施形態にすぎず限定解釈されるものではない。
【0019】
胴部骨格Cは、図7および図8に示すように、後述する腹部外皮H2内に内装される腹骨格部C1(図8)と胸部外皮H3内に内装される胸骨格部C2(図7)の二部構成からなり、少なくとも、腰部骨格Bの上端側と連結する腰部骨格連結部51と、左右の腕部骨格Dと夫々連結する腕部骨格連結部58とを備えて構成されている。
また、本実施形態では、胴部骨格Cの腰部骨格連結部51と対峙する側、すなわち胸骨格部C2の上端側に首部骨格Eを一体的に連結する首部骨格連結部131を備えている。
図7又は図8の本実施形態に基づいて具体的に説明すると、図8(a)(b)に示す腹骨格部C1は、両端に設けた夫々の第一玉部(図面上で下側)52と第二玉部(図面上で上側)53を、夫々回動可能に嵌め込んだ断面視略U字状の腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56からなり、該腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56の夫々の端部には、第一嵌入杆54と第二嵌入杆55が夫々一体的に立設されている。
また、特に限定されはしないが、本実施形態において、第一玉部52と第二玉部53を嵌め込む夫々の嵌め込み部51a・51aと56a・56aは、各第一玉部52と第二玉部53を嵌め込んだ時に、腰部骨格連結部51および胸部骨格連結部56が所望位置でその状態(例えば、左右いずれかの方向に所望角度をもって傾斜している状態)を維持できるように、各第一玉部52と第二玉部53が夫々緊密に摺接するよう構成するのが好ましい。このとき、嵌め込み部51a・51aと56a・56aは、夫々の曲面の曲率が各第一玉部52と第二玉部53の曲率と同一若しくは近似するものとする。なお、嵌め込み部51a・51aと56a・56aは本実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
そして、この第一嵌入杆54が、腰部骨格Bの胴部下端骨格連結部46の嵌合穴48に嵌合連結され、第二嵌入杆55が、胸骨格部C2に連結される。
図7(a)(b)に示す胸骨格部C2は、下方向に開口する中空筒状の嵌合穴57を備えると共に、水平方向両側に左右の腕部骨格Dと夫々連結する腕部骨格連結部58を備えている。
腕部骨格連結部58は、夫々一端開口した中空筒状に形成されると共に、腕部骨格連結穴58aを備え、該連結穴58a後述する左右の腕部骨格Dの胴部上端骨格連結部60を嵌合連結する。
なお、本実施形態では、胴部骨格Cを、腹骨格部C1と胸骨格部C2の二部構成とし、かつ腰部骨格Bと腹骨格部C1との連結部およびこの腹骨格部C1と胸骨格部C2との連結部を夫々玉52,53を介して回動可能な構造としたため、腰位置から胸位置までの動きが微調整でき、上半身の様々かつ細かい動きが表現できる。すなわち、本実施形態の腹骨格部C1構成を採用したことで、腰部骨格連結部51と胸部骨格連結部56は、夫々が前後左右に回動可能(図8中、矢印Y1乃至Y4で示す前後方向、矢印Y5乃至Y8で示す左右方向)で、かつ夫々が水平方向にも所望範囲で移動(図8中、矢印Z1乃至Z4に示す水平方向)することができるため、人形の胴体部分の様々な動きが表現でき、色々な姿勢のバリエーションが楽しめる。
なお、本実施形態の胴部骨格Cは本発明の一実施形態にすぎず限定解釈されるものではない。
【0020】
首部骨格連結部131は、図7に示すように、胸骨格部C2の上端側にて回動可能(図7中、矢印Y9,Y10で示す方向)に一体的に備えられており、首部骨格Eの首部外皮挿着部89から垂設されている嵌合杆89cの内部空間に嵌り合う外径を有している。図中132は、嵌合杆89cの端面を受ける受け部である。なお、本実施形態では、首部骨格連結部131を、首部骨格Eの嵌合杆89cに嵌めて一体化する一形態を採用したが、首部骨格連結部131に頂面を開口した嵌合穴(図示せず)を形成し、該嵌合穴に嵌合杆を嵌め合うことで一体化する形態を採用してもよく、既知の方法で首部骨格連結部131と首部骨格Eを連結して一体化する形態であれば本発明の範囲内において設計変更可能である。
【0021】
首部骨格Eは、例えば、図9に示すように、胴部外皮Hに一体に設けられている首部外皮H5の開口111から挿入される円筒状の首部外皮挿着部89と、頭部外皮Kの開口縁128が嵌着される頭部外皮嵌着部91とで構成され、この頭部外皮嵌着部91は、首部外皮挿着部89上端に位置すると共に、上下方向(図9中で、矢印W方向)に揺動自在に備えられ、かつ常時首部外皮挿着部89上端方向に引っ張り力が作用する構成とする。また、首部外皮挿着部89にはその下面に垂設した円筒状の嵌合杆89cが設けられている。
図9の本実施形態に基づいて具体的に説明すると、首部外皮挿着部89は、首部外皮H5の開口111よりも小径に形成された円筒状で、その軸方向中心には頭部外皮嵌着部91の連結杆92を遊嵌する挿入穴90を備え、一方頭部外皮嵌着部91は、頭部外皮Kの開口縁128よりも大径に形成された円錐台状に形成されると共に、その下面91a中心から垂設された連結杆92を備えている。
そして、頭部外皮嵌着部91の連結杆92を、首部外皮挿着部89の挿入穴90に遊嵌し、コイルスプリング93の一端を首部外皮挿着部89の内面段部89bに係止すると共に、止め具94を介してネジ95で連結杆92の下端にネジ止めする。これにより、頭部外皮嵌着部91は、首部外皮挿着部89上端にて一体的に位置すると共に、スプリング93を介して上下方向Wに揺動自在に備えられ、かつ常時首部外皮挿着部89上端方向に引っ張り力が作用する。また、との間に形成される段部96は、頭部外皮Kの下端に形成されている開口縁128が嵌着される嵌合凹部として作用する。
なお、本実施形態では、例えば押し込み嵌入時の挿入性を良くするために頭部外皮嵌着部91を円錐台状に形成するが、これに限定解釈されるものではなく、頭部外皮Kの開口縁128に押し込み嵌入可能な形状であればよい。また、その他の本実施形態の構造も本発明の一実施形態に過ぎず何ら限定解釈されない。また、本実施形態では、首部外皮挿着部89の上端方向へと頭部外皮嵌着部91を引っ張り作用する構成としてスプリング93を用いているが、首部外皮挿着部89の上端方向へと頭部外皮嵌着部91を引っ張り作用する構成であれば適宜設計変更可能で、例えばゴム紐などを掛け渡し、首部外皮挿着部89の上端方向へと頭部外皮嵌着部91を引っ張り作用する構成などを採用することも可能である。
【0022】
左右の腕部骨格Dは、図10乃至図12に示すように、胴部外皮Hと上腕外皮J1の上端を連結する肩部59と、該上腕外皮J1の下端と下腕外皮J2の上端を連結する肘部68と、該下腕外皮J2の下端と手部外皮J3を連結する手首部78とで構成されている。
【0023】
肩部59は、図10に示すように、前記胴部骨格Cの腕部骨格連結穴58aと連結される胴部上端骨格連結部60と、上腕外皮J1の上端開口縁119が嵌着される上腕外皮上端嵌着部62とを備えてなる。
胴部上端骨格連結部60は、前記胴部骨格Cの腕部骨格連結穴58a内に嵌入可能な径を有する所望長さの丸棒状に形成されると共に、その反嵌入側には円板状の連結片61が延設されている。一方、上腕外皮上端嵌着部62は、円錐台状の嵌入部63が形成されると共に、この嵌入部63から段部64を介して中央に上記連結片61を嵌入可能な嵌入溝65を備えた略玉状の被連結部66が一体的に形成されている。
そして、上記連結片61を嵌入溝65に嵌入すると共に、ネジ67を介して回動可能に一体的に連結される。なお、本実施形態において、上記連結片61は、略玉状の被連結部66の径と同径とし、連結時に両者61,66によって全体玉状を構成している。
また、上記段部64は、上腕外皮J1の上端開口縁119が嵌着される嵌合凹部として作用する。
上記嵌入部63は、上腕外皮J1の上端開口縁119から押し込んで上腕外皮J1内に嵌入可能な径を有する形状であれば特に限定されるものではない。
また、嵌合凹部(段部)64は、本実施形態の構造に限られるものではなく、例えば嵌入部63の外周に所望溝形状をもって周設するものとしてもよい。
嵌合凹部(段部)64は、一本でも複数本でもよく、さらに、その凹部形状・幅・深さなどの諸条件も任意で、上腕外皮J1の上端開口縁119の構成に応じて設計変更可能である。
なお、嵌入部63は、本実施形態のように円錐台状に限らず任意形状が適宜本発明の範囲内で採用される。
【0024】
肘部68は、図11に示すように、上腕外皮J1の下端開口縁121が嵌着される上腕外皮下端嵌着部69と、下腕外皮J2の上端開口縁123が嵌着される下腕外皮上端嵌着部70とを有し、両者69,70の連結部にて回動可能な構造を有する。
本実施形態に基づいて具体的に説明すると、上腕外皮下端嵌着部69および下腕外皮上端嵌着部70は、夫々上腕外皮J1内または下腕外皮J2内に嵌入される円錐台状の嵌入部71と、該嵌入部71端縁から段部72を介して立上げ形成される二片の連結片73,73で構成された連結部74とからなる同一形状のものである。
この夫々の嵌入部71端縁と連結部74との間にて周方向に連続して存する段部72は、夫々が上腕外皮J1の下端開口縁121または下腕外皮J2の上端開口縁123が嵌着される嵌合凹部として作用する。
そして、これら上腕外皮下端嵌着部69と下腕外皮上端嵌着部70の夫々の連結部74を構成している二片の連結片73,73間には、肘頭部75の裏面両端に備えられている被連結部76,76が夫々嵌入されると共に、ネジ77を介して両嵌着部69,70が回動可能に連結されて一体化されている。したがって、本実施形態によれば、このように上腕外皮下端嵌着部69と下腕外皮上端嵌着部70の夫々の連結部74が、肘頭部75の裏面に設けられている夫々の被連結部76に夫々連結される構成としたため、上腕外皮下端嵌着部69と下腕外皮上端嵌着部70が夫々自由に回動作動がなし得る。
上腕外皮下端嵌着部69および下腕外皮上端嵌着部70の嵌入部71は、本実施形態のように円錐台状に限らず任意である。
上記した嵌合凹部(段部)72は、本実施形態の構造に限られるものではなく、嵌入部71の外周に周設するものとしてもよい。この場合において、嵌合凹部(段部)72は、一本でも複数本でもよく、さらに、その凹部形状・幅・深さなどの諸条件も任意で、上腕外皮J1の下端開口縁121または下腕外皮J2の上端開口縁123の構成に応じて設計変更可能である。
また、肘頭部75の構造も本実施形態に限られるものではなく、本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0025】
手首部78は、図12に示すように、下腕外皮J2の下端開口縁125が嵌着される下腕外皮下端嵌着部79と、手部外皮J3の開口縁127が嵌着される手部外皮嵌着部82とを有し、両者79,82の連結部にて回動可能な構造を有する。
下腕外皮下端嵌着部79は、下腕外皮J2内に嵌入可能な径を有する円錐台状に嵌入部80が形成されると共に、この嵌入部80から段部88を介して略玉状の被連結部86が一体的に形成されている。この被連結部86には、後述する連結片81を嵌入可能とした嵌入溝85を中央に備えている。
一方、手部外皮嵌着部82は、手部外皮J3内に嵌入可能な径を有する円錐台状の嵌入部83が形成されると共に、その反嵌入側には上記嵌入溝85に嵌入可能な円板状の連結片81が延設されている。なお、本実施形態では連結片81の一端が、嵌入部83の反嵌入側に嵌合されているが、連結片81と嵌入部83が一体成形されているものであってもよく限定されない。
そして、上記連結片81を、被連結部86の嵌入溝85に嵌入すると共に、ネジ87を介して回動可能に一体的に連結される。なお、本実施形態において、上記連結片81は略玉状の被連結部86の径と同径とし、連結時に両者81,86によって全体玉状を構成している。
また、上記段部88は、下腕外皮J2の下端開口縁125が嵌着される嵌合凹部とし、そして上記段部84は、手部外皮J3の開口縁127が嵌着される嵌合凹部として作用する。
上記嵌入部80,83は、下腕外皮J2の下端開口縁125または手部外皮J3の開口縁127から押し込んで、下腕外皮J2内または手部外皮J3内に嵌入可能な径を有する形状であれば特に限定されるものではない。
また、嵌合凹部(段部)84,88は、本実施形態の構造に限られるものではなく、例えば夫々の嵌入部80,83の外周に所望溝形状をもって周設するものとしてもよい。この場合、嵌合凹部(段部)84,88は、一本でも複数本でもよく、さらに、その凹部形状・幅・深さなどの諸条件も任意で、下腕外皮J2の下端開口縁125・手部外皮J3の開口縁127の構成に応じて設計変更可能である。
なお、嵌入部80,83は、本実施形態のように円錐台状に限らず任意形状が適宜本発明の範囲内で採用される。
【0026】
また、本実施形態では採用していないが、上記肩部59の上腕外皮上端嵌着部62と肘部68の上腕外皮下端嵌着部69との間にわたって、所望長さの上腕用補強連結杆(図示せず)が嵌脱自在に掛け渡され、肘部68の下腕外皮上端嵌着部70と手首部78の下腕外皮下端嵌着部79との間にわたって、所望長さの下腕用補強連結杆(図示せず)が嵌脱自在に掛け渡されている骨格構造としてもよい。これら補強連結杆は、上述した脛用または太腿用の補強連結杆29,42と同等の構成である。その嵌合連結構成も上述した脛用または太腿用の補強連結杆29,42の嵌合連結構成を採用できる。
【0027】
次に、上述した人形骨格群に取り付けられるソフトビニル製の人形外皮群の一実施形態を図に基づいて説明する。
ソフトビニル製の人形外皮群は、上記夫々の骨格外周に備えられる左右の脚部外皮Fと、腰部外皮Gと、胴部外皮Hと、腕部外皮Jと、頭部外皮Kとで構成されており、夫々の外皮は例えばスラッシュ成形により形成されている。
本実施形態では、夫々の外皮表面が無模様・無色彩で、顔表情なども省略した形態としているが、所望な模様・色彩や、目・鼻・口などを備えた形態とすることも可能なことはいうまでもない。
【0028】
左右の脚部外皮Fは、足部外皮F1と下脚外皮F2と上脚外皮F3からなり、足部外皮F1は、上端に設けた開口97の径方向内方に、上記足首部1の足部外皮嵌着部2の嵌合凹部(凹溝)4に嵌着される開口縁98を突設した全体中空の足形状に形成されている。足形状は図示形状に限定されず任意に変更可能である。
【0029】
下脚外皮F2は、図1乃至図4に示すように、下端に設けた開口99の径方向内方に、上記足首部1の下脚外皮下端嵌着部7の嵌合凹部(周方向凹部)14に嵌着される開口縁100を突設すると共に、上端に設けた開口101の径方向内方に、上記膝部15の下脚外皮上端嵌着部16の嵌合凹部(凹溝)23に嵌着される開口縁102を突設してなる全体中空筒状に形成され、足首部1の下脚外皮下端嵌着部7と膝部15の下脚外皮上端嵌着部16とにわたって掛け渡される脛用補強連結杆29を内装する。この下脚外皮F2は、特に限定されないが、好ましくは人間の踝位置から膝下位置までの外観形状を忠実に模写した外観形状とするのがよい。
【0030】
上脚外皮F3は、図1,図2,図4,図5に示すように、下端に設けた開口103の径方向内方に、上記膝部15の上脚外皮下端嵌着部17の嵌合凹部(凹溝)23に嵌着される開口縁104を突設すると共に、上端に設けた開口105の径方向内方に、上記脚付け根部31の上脚外皮上端嵌着部32嵌合凹部(凹溝)39に嵌着される開口縁106を突設してなる全体中空筒状に形成され、膝部15の上脚外皮下端嵌着部17と脚付け根部31の上脚外皮上端嵌着部32とにわたって掛け渡される太腿用補強連結杆42を内装する。
この上脚外皮F3は、特に限定されないが、好ましくは人間の膝上位置から脚付け根位置までの外観形状(いわゆる太腿外観形状)を忠実に模写した外観形状とするのがよい。
【0031】
腰部外皮Gは、図1,図2に示すように、腰部骨格Bを内装する空間107を有すると共に、上端に胴部外皮Hの下端H1を挿入する開口108を有し、かつ股間位置左右には、左右の脚付け根部31を連結する連結空間109を有する全体中空の腰部形状に形成されている。この腰部外皮は、特に限定されないが、好ましくは人間の腰部分の外観形状を忠実に模写した外観形状とするのがよい。
【0032】
胴部外皮Hは、図1,図2に示すように、胴部骨格Cを内装する空間110を有すると共に、上端に首部骨格Eの首部外皮挿着部89を挿着する開口111を有し、かつ両肩位置には左右の腕部骨格Dを連結する連結空間112を有する全体中空の胴部形状に形成されている。また、本実施形態では、この胴部外皮Hを、腹部外皮H2と胸部外皮H3の二部構成としている。
腹部外皮H2は、上下端を開口した内部中空状で、かつ所望な外観形状とし、腹骨格部C1の第一嵌入杆54を下端開口113から突出させると共に、第二嵌入杆56を上端開口114から突出させた状態でその中空部115に腹骨格部C1を内装する。
また、この腹部外皮H2は、下端H1を腰部外皮G内に挿入すると共に、上端H4を胸部外皮H3内に挿入している。
一方、胸部外皮H3は、図1,図2に示すように、首部骨格Eの首部外皮挿着部89を嵌入する首部外皮H5が、上端に一体的に形成されると共に、下端H6を開口した内部中空状で、かつ所望な外観形状とし、その中空部116に胸骨格部C2を内装し、腹部外皮H2の上端H4を下端開口117から挿入する。左右の腕部骨格連結部58は、夫々連結空間112に位置する。
この腹部外皮H2と胸部外皮H3の外観形状は特に限定されないが、好ましくは人間の腹部分と胸より上の部分に対応する形状を忠実に模写した外観形状とするのがよい。
【0033】
左右の腕部外皮Jは、図1,図2,図10乃至図12に示すように、左右の腕部骨格Dを被覆して備えられる上腕外皮J1,下腕外皮J2及び手部外皮J3とからなる。
上腕外皮J1は、図1,図2,図10,図11に示すように、上端に設けた開口118の径方向内方に、上記肩部59の上腕外皮上端嵌着部62の嵌合凹部(段部)64に嵌着される開口縁119を突設すると共に、下端に設けた開口120の径方向に、上記肘部68の上腕外皮下端嵌着部69の嵌合凹部(段部)72に嵌着される開口縁121を突設してなる全体中空筒状に形成されている。この上腕外皮J1は、特に限定されないが、好ましくは人間の肩下位置から肘上位置までの外観形状を忠実に模写した外観形状とするのがよい。
【0034】
下腕外皮J2は、図1,図2,図11,図12に示すように、上端に設けた開口122の径方向内方に、上記肘部68の下腕外皮上端嵌着部70の嵌合凹部(段部)72に嵌着される開口縁123を突設すると共に、下端に設けた開口124の径方向に、上記手首部78の下腕外皮下端嵌着部79の嵌合凹部(段部)88に嵌着される開口縁125を突設してなる全体中空筒状に形成されている。この下腕外皮J2は、特に限定されないが、好ましくは人間の肘下位置から手首位置までの外観形状を忠実に模写した外観形状とするのがよい。
【0035】
手部外皮J3は、図1,図2,図12に示すように、開口126の径方向内方に、上記手首部78の手部外皮嵌着部82の嵌合凹部(段部)84に嵌着される開口縁127を突設した全体中空の手形状に形成されている。この手部外皮J3は、特に限定されないが、好ましくは人間の手の外観形状を忠実に模写した外観形状とするのがよい。
【0036】
頭部外皮Kは、図1,図2に示すように、上記胴部外皮Hの首部外皮H5に挿着されて備えられる首部骨格Eの頭部外皮嵌着部91と首部外皮挿着部89との間の嵌合凹部96に嵌着する開口縁128を設けて、所望な頭部形状に形成されている。
なお、頭部とは、顔部分も含む概念とする。開口縁128の内径は、頭部外皮嵌着部91の下面91aの径と首部外皮挿着部89の上面89aの径よりも小径で、この頭部外皮嵌着部91を押し込み挿入可能な径とする。
【0037】
【発明の効果】
本発明は上述の通りの構成としたため、自立が可能で技術的構造を有すると共に、軽量・コスト安価な大型の人形を提供することができ、需要者ニーズに十分応えることができる。
すなわち、本発明特有の骨格構造を採用したことで、大型の人形において外皮部分をソフトビニル製で構成しても、自立が可能で、かつ様々な姿態を一定時間維持できると共に、軽量でかつ軟質なため、落下・転倒などしても安全で、破損も防げる。
また、例えば足首部の下脚外皮下端嵌着部と膝部の下脚外皮上端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される脛用補強連結杆や、脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部と膝部の上脚外皮下端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される太腿用補強連結杆などの骨格部分を交換してその長さを変更することにより、簡単に脚部長さなどの変更に対応できる。例えば、脛用補強連結杆や太腿用補強連結杆などの骨格にあっては、その径が同一で長さのみ異なるタイプのものを複数種用意しておけば、足首部の下脚外皮下端嵌着部および膝部の下脚外皮上端嵌着部、または脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部と膝部の上脚外皮下端嵌着部などの骨格はそのまま使用できるため、脚部等の長さの異なる人形が容易かつ安価に提供できる。
さらに、外皮がソフトビニル製であるため製作容易(スラッシュ成形など)で、かつコスト安価なため、このような脚部長さなどの変更においても大変安価で、この種の大型可動人形の製作上大幅なコスト減となる。
また、この種の従来の大型人形が高価なのに対し、本発明では、夫々の骨格が着脱可能で、かつ夫々の外皮も着脱可能であるため、搬送費用低廉となり、結果的に製品価格も低く抑えることができるため需要者ニーズに応えることができる。さらに、パーツ・キット販売などにも対応でき大変新規有用である。また、組み立ても、ネジ止めなどに使用するドライバーなどの治具と、外皮嵌着時に、外皮を暖めて柔らかくする道具、例えばヘアドライヤーなどがあれば誰でも簡単かつスピーディーに組み立て・分解が成し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を一部切欠いて示す全体概略正面図。
【図2】本発明の一実施形態を一部省略して示す全体概略側面図。
【図3】脚部骨格の足首部の一実施形態を示す概略図で、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は脚部骨格の足首部の他の実施形態を示す概略側面図。
【図4】脚部骨格の膝部の一実施形態を示す概略図で、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は側面図。
【図5】脚部骨格の脚付け根部の一実施形態を示す概略図で、(a)は側面図、(b)は縦断正面図。
【図6】腰部骨格の一実施形態を示す概略図で、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図7】胴部骨格のうちの胸骨格部の一実施形態を示す概略図で、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図8】胴部骨格のうちの腹骨格部の一実施形態を示す概略図で、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図9】首部骨格の一実施形態を示す概略分解図。
【図10】腕部骨格のうちの肩部の一実施形態を示す概略図で、(a)は側面図、(b)は正面図。
【図11】腕部骨格のうちの肘部の一実施形態を示す概略図で、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図。
【図12】腕部骨格のうちの手首部の一実施形態を示す概略図で、(a)は側面図、(b)は正面図。
【図13】従来技術の大型可動人形における正面図。
【符号の説明】
A:脚部骨格
1:足首部
15:膝部
29:脛用補強連結杆
31:脚付け根部
42:太腿用補強連結杆
B:腰部骨格
C:胴部骨格
D:腕部骨格
59:肩部
68:肘部
78:手首部
E:首部骨格
F:脚部外皮
G:腰部外皮
H:胴部外皮
J:腕部外皮
K:頭部外皮
【図面】


(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割して形成され、それぞれが着脱可能なソフトビニル製の外皮と、該それぞれの外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造であって、
前記骨格構造は、
左右それぞれの足底部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有する左右の脚部骨格と、
外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、
外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、
左右それぞれの手首部を有し、左右の外皮によって覆われて、外皮との間に隙間を有し、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、
前記胴部骨格は、
腰部骨格と連結される腹骨格部と、
該腹骨格部と連結される胸骨格部からなる複数骨格によって駆動可能に構成され、前記腹骨格部と前記胸骨格部は、双方の間で分割されたそれぞれの外皮で覆われており、
前記腹骨格部は、
前後・左右方向に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される腰部骨格連結部を一端側に備え、
かつ前後・左右方向に揺動可能で、かつ所望位置で所望状態を維持し得るように連結される胸部骨格連結部を他端側に備えており、
前記腰部骨格連結部は、
分割して形成され、腹骨格部の一端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、腰部骨格に備えた胴部下端骨格連結部の嵌合穴に回動可能に嵌合される第一嵌入杆を備え、
前記胸部骨格連結部は、
分割して形成され、腹骨格部の他端側を嵌め込むとともにネジを介して一体に連結され、かつ、胸骨格部に備えた嵌合穴に回動可能に嵌合される第二嵌入杆を備え、
前記腰部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第一嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と腰部骨格を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記胸部骨格連結部における腹骨格部と揺動可能に連結される部位と、第二嵌入杆と嵌合穴とが回動可能に連結される部位は、それぞれ腹骨格部と胸骨格部を覆う外皮によって外部から直視されないように覆われており、
前記腕部骨格は肩部の骨格を有し、少なくとも前記肩部の骨格に、腕部骨格を覆う外皮の一端が嵌着されており、
前記一連の人形骨格群を構成する前記各骨格が着脱可能であることを特徴とするソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。
【請求項2】
胸骨格部には、首部骨格が連結され、
該首部骨格は、人形用の頭部を嵌着する頭部外皮嵌着部を備え、
該頭部外皮嵌着部は、上下方向に揺動自在に備えられていることを特徴とする請求項1に記載のソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。
【請求項3】
首部骨格は、人形用胴体の首部外皮挿着部と、人形用の頭部を嵌着する頭部外皮嵌着部とを備え、
前記首部外皮挿着部が胸骨格部に連結され、
前記頭部外皮嵌着部は、前記首部外皮挿着部とスプリングを介して上下方向に揺動自在に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。
【請求項4】
ソフトビニル製の外皮と、該外皮とは別体で、かつ該外皮によって覆われてソフトビニル製大型人形を構成する骨格構造であって、
左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格で一連の人形骨格群を構成し、
左右の脚部骨格は、ソフトビニル製の足部外皮の開口縁が嵌着される足部外皮嵌着部と、ソフトビニル製の下脚外皮の下端開口縁が嵌着される下脚外皮下端嵌着部とを有し、該両者の連結部にて回動可能な構造を有する足首部と、
前記下脚外皮の上端開口縁が嵌着される下脚外皮上端嵌着部と、ソフトビニル製の上脚外皮の下端開口縁が嵌着される上脚外皮下端嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する膝部と、
上記足首部の下脚外皮下端嵌着部と膝部の下脚外皮上端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される脛用補強連結杆と、
前記上脚外皮の上端開口縁が嵌着される上脚外皮上端嵌着部と、腰部骨格の脚付け根部側連結部を連結する腰部骨格連結部とを有する脚付け根部と、
該脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部と膝部の上脚外皮下端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される太腿用補強連結杆とで構成され、腰部骨格は、左右の脚付け根部の腰部骨格連結部と回動可能に連結する脚付け根部側連結部と、胴部骨格の下端側と連結する胴部下端骨格連結部とを備えて構成され、
胴部骨格は、腰部骨格の上端側と連結する腰部骨格連結部と、左右の腕部骨格と夫々連結する腕部骨格連結部とを備えて構成され、
左右の腕部骨格は、前記胴部骨格の腕部骨格連結部と連結される胴部上端骨格連結部と、ソフトビニル製の上腕外皮の上端開口縁が嵌着される上腕外皮上端嵌着部とを備えてなる肩部と、
前記上腕外皮の下端開口縁が嵌着される上腕外皮下端嵌着部と、ソフトビニル製の下腕外皮の上端開口縁が嵌着される下腕外皮上端嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する肘部と、
前記下腕外皮の下端開口縁が嵌着される下腕外皮下端嵌着部と、ソフトビニル製の手部外皮の開口縁が嵌着される手部外皮嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する手首部とを備えて構成されていることを特徴とするソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。
【請求項5】
足首部の足部外皮嵌着部には、ソフトビニル製の足部外皮の開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、下脚外皮下端嵌着部には、ソフトビニル製の下脚外皮の下端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、
膝部の下脚外皮上端嵌着部には、前記下脚外皮の上端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、上脚外皮下端嵌着部には、ソフトビニル製の上脚外皮の下端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、
脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部には、前記上脚外皮の上端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、
肩部の上腕外皮上端嵌着部には、ソフトビニル製の上腕外皮の上端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、
肘部の上腕外皮下端嵌着部には、前記上腕外皮の下端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、下腕外皮上端嵌着部には、ソフトビニル製の下腕外皮の上端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、
手首部の下腕外皮下端嵌着部には、前記下腕外皮の下端開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられ、手部外皮嵌着部には、ソフトビニル製の手部外皮の開口縁が嵌着される嵌合凹部が備えられていることを特徴とする請求項4に記載のソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。
【請求項6】
足首部は、足部外皮嵌着部の底面に、ソフトビニル製の足部外皮の指先方向へと延びる足底部が一体的に備えられていることを特徴とする請求項4又は5のいずれかに記載のソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。
【請求項7】
脛用補強連結杆は、所望長さの棒状で、その下端側を足首部の下脚外皮下端嵌着部の嵌合穴に差込嵌着させると共に、その上端側を膝部の下脚外皮上端嵌着部の嵌合穴に差込嵌着させて嵌脱自在に掛け渡され、
太腿用補強連結杆は、所望長さの棒状で、その上端側を脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部の嵌合穴に差込嵌着させると共に、その下側を膝部の上脚外皮下端嵌着部の嵌合穴に差込嵌着させて嵌脱自在に掛け渡されることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載のソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。
【請求項8】
肩部の上腕外皮上端嵌着部と肘部の上腕外皮下端嵌着部との間にわたって、所望長さの上腕用補強連結杆が嵌脱自在に掛け渡され、
肘部と手首部との間にわたって、所望長さの下腕用補強連結杆が嵌脱自在に掛け渡されていることを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載のソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。
【請求項9】
胴部骨格の腰部骨格連結部と対峙する側に首部骨格を着脱可能に備え、該首部骨格は、ソフトビニル製の首部外皮の開口が挿着される首部外皮挿着部と、ソフトビニル製の頭部外皮の開口縁が嵌着される頭部外皮嵌着部とで構成され、
この頭部外皮嵌着部は、首部外皮挿着部上端に位置すると共に、上下方向に揺動自在に備えられ、かつ常時首部外皮挿着部上端方向に引っ張り力が作用する構成としたことを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載のソフトビニル製大型可動人形の骨格構造。
【請求項10】
左右の脚部骨格と、該左右の脚部骨格に連結される腰部骨格と、該腰部骨格に連結される胴部骨格と、該胴部骨格と連結される左右の腕部骨格と、該胴部骨格の腰部骨格連結部と対峙する側に着脱可能に備えられる首部骨格とで構成される一連の人形骨格群と、
上記夫々の骨格外周に備えられる脚部外皮と、腰部外皮と、胴部外皮と、腕部外皮と、頭部外皮とで構成されるソフトビニル製の人形外皮群とで構成され、
左右の脚部骨格は、足部外皮の開口縁が嵌着される足部外皮嵌着部と、下脚外皮の下端開口縁が嵌着される下脚外皮下端嵌着部とを有し、該両者の連結部にて回動可能な構造を有する足首部と、下脚外皮の上端開口縁が嵌着される下脚外皮上端嵌着部と、上脚外皮の下端開口縁が嵌着される上脚外皮下端嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する膝部と、該足首部の下脚外皮下端嵌着部と膝部の下脚外皮上端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される脛用補強連結杆と、上脚外皮の上端開口縁が嵌着される上脚外皮上端嵌着部と、腰部骨格の脚付け根部側連結部を連結する腰部骨格連結部とを有する脚付け根部と、該脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部と膝部の上脚外皮下端嵌着部との間にわたって嵌脱自在に掛け渡される太腿用補強連結杆とで構成され、
腰部骨格は、左右の脚付け根部の腰部骨格連結部と回動可能に連結する脚付け根部側連結部と、胴部骨格の下端側と連結する胴部下端骨格連結部とを備えて構成され、
胴部骨格は、腰部骨格の上端側と連結する腰部骨格連結部と、左右の腕部骨格と夫々連結する腕部骨格連結部とを備えて構成され、
左右の腕部骨格は、前記胴部骨格の腕部骨格連結部と連結される胴部上端骨格連結部と、上腕外皮の上端開口縁が嵌着される上腕外皮上端嵌着部とを備えてなる肩部と、上腕外皮の下端開口縁が嵌着される上腕外皮下端嵌着部と、下腕外皮の上端開口縁が嵌着される下腕外皮上端嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する肘部と、下腕外皮の下端開口縁が嵌着される下腕外皮下端嵌着部と、手部外皮の開口縁が嵌着される手部外皮嵌着部とを有し、両者の連結部にて回動可能な構造を有する手首部とを備えて構成され、
首部骨格は、首部外皮の開口が挿着される首部外皮挿着部と、頭部外皮の開口縁が嵌着される頭部外皮嵌着部とで構成されて、胴部骨格の腰部骨格連結部と対峙する側に着脱可能に備えられ、この頭部外皮嵌着部は、首部外皮挿着部上端に位置すると共に、上下方向に揺動自在に備えられ、かつ常時首部外皮挿着部上端方向に引っ張り力が作用する構成とされ、左右の脚部外皮は、足部外皮と下脚外皮と上脚外皮からなり、
足部外皮は、上記足首部の足部外皮嵌着部に嵌着される開口縁を、上端に設けた開口の径方向内方に突設した全体中空の足形状に形成され、
下脚外皮は、上記足首部の下脚外皮下端嵌着部に嵌着される開口縁を、下端に設けた開口の径方向内方に突設すると共に、上記膝部の下脚外皮上端嵌着部に嵌着される開口縁を、上端に設けた開口の径方向内方に突設してなる全体中空筒状に形成され、足首部の下脚外皮下端嵌着部と膝部の下脚外皮上端嵌着部とにわたって掛け渡される脛用補強連結杆を内装し、
上脚外皮は、上記膝部の上脚外皮下端嵌着部に嵌着される開口縁を、下端に設けた開口の径方向内方に突設すると共に、上記脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部に嵌着される開口縁を、上端に設けた開口の径方向内方に突設してなる全体中空筒状に形成され、膝部の上脚外皮下端嵌着部と脚付け根部の上脚外皮上端嵌着部とにわたって掛け渡される太腿用補強連結杆を内装し、
腰部外皮は、腰部骨格を内装する空間を有すると共に、上端に胴部外皮下端を挿入する開口を有し、かつ股間位置には、左右の脚付け根部を連結する連結空間を有する全体中空の腰部形状に形成され、
胴部外皮は、胴部骨格を内装する空間を有すると共に、上端に首部骨格の首部外皮挿着部を挿入する開口を有し、かつ両肩位置には左右の腕部骨格を連結する連結空間を有する全体中空の胴部形状に形成され、
左右の腕部外皮は、該左右の腕部骨格を被覆して備えられる上腕外皮,下腕外皮及び手部外皮とからなり、
上腕外皮は、上記肩部の上腕外皮上端嵌着部に嵌着される開口縁を、上端に設けた開口の径方向内方に突設すると共に、上記肘部の上腕外皮下端嵌着部に嵌着される開口縁を、下端に設けた開口の径方向内方に突設してなる全体中空筒状に形成され、
下腕外皮は、上記肘部の下腕外皮上端嵌着部に嵌着される開口縁を、上端に設けた開口の径方向内方に突設すると共に、上記手首部の下腕外皮下端嵌着部に嵌着される開口縁を、下端に設けた開口の径方向内方に突設してなる全体中空状に形成され、
手部外皮は、上記手首部の手部外皮嵌着部に嵌着される開口縁を備えた全体中空の手形状に形成され、
頭部外皮は、首部骨格の頭部外皮嵌着部に嵌着する開口縁を備えた全体頭部形状に形成されていることを特徴とするソフトビニル製大型可動人形。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2011-08-15 
結審通知日 2011-08-24 
審決日 2011-09-07 
出願番号 特願2003-13775(P2003-13775)
審決分類 P 1 123・ 841- YA (A63H)
P 1 123・ 537- YA (A63H)
P 1 123・ 851- YA (A63H)
P 1 123・ 112- YA (A63H)
P 1 123・ 121- YA (A63H)
P 1 123・ 853- YA (A63H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 森林 克郎
伊藤 幸仙
登録日 2006-01-20 
登録番号 特許第3761523号(P3761523)
発明の名称 ソフトビニル製大型可動人形の骨格構造および該骨格構造を有するソフトビニル製大型可動人形  
代理人 安藤 順一  
代理人 久保田 達也  
代理人 久保田 達也  
代理人 岩木 謙二  
代理人 上村 喜永  
代理人 伊原 友己  
代理人 岩木 謙二  

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