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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680125 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  F16L
審判 全部無効 2項進歩性  F16L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F16L
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  F16L
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  F16L
審判 全部無効 特17条の2、3項新規事項追加の補正  F16L
審判 全部無効 特29条特許要件(新規)  F16L
審判 全部無効 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  F16L
管理番号 1264537
審判番号 無効2010-800139  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-08-05 
確定日 2012-10-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3955913号樹脂管ジョイント並びにその製造方法の特許無効審判事件について、審理の併合のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 事件の概要
本件無効2010-800139及び無効2010-800153の特許無効審判の請求の要旨は、請求人(株式会社利川プラスチック)が、被請求人(大鳳株式会社)が特許権者である特許第3955913号の請求項1に係る発明についての特許(以下、「本件特許」という。)を無効とすることを求めるものである。


第2 手続の経緯

1 本件特許第3955913号の請求項1に係る発明についての出願(特願2001-309207号:以下、「本件出願」という。)は、平成13年8月31日に特許出願され、平成19年5月18日にその発明について特許権の設定登録がなされた。

2 無効2010-800139について、平成22年8月5日に、請求人より特許無効審判の請求がなされ、平成22年9月2日に審判請求書についての手続補正がなされた。

3 無効2010-800153について、平成22年9月2日に、請求人より特許無効審判の請求がなされた。

4 平成22年9月17日付けで併合審理通知がなされた。

5 無効2010-800139について、被請求人より、平成22年11月9日に審判事件答弁書とともに訂正請求書が提出された。

6 無効2010-800153について、被請求人より、平成22年11月9日に訂正請求書が提出されるとともに、平成22年11月24日に審判事件答弁書が提出された。

7 平成23年3月11日に請求人及び被請求人より口頭審理陳述要領書が提出され(請求人は平成23年3月14日差し出し)、平成23年3月25日に口頭審理がなされると共に審理終結通知がなされた。

8 手続の経緯をまとめると、以下のとおりである。
平成13年 8月31日 本件出願
平成19年 3月29日 名義変更
平成19年 5月18日 本件特許の設定登録
平成19年 8月 8日 特許公報の発行
平成22年 8月 5日 無効2010-800139について、
審判請求書と共に甲第1ないし16号証を提
出(請求人)
平成22年 9月 2日 無効2010-800139について、
審判請求書についての手続補正書を提出(請
求人)
平成22年 9月 2日 無効2010-800153について、
審判請求書と共に甲第1ないし11号証を提
出(請求人)
平成22年 9月 8日 無効2010-800139について、
請求書副本の送達通知(平成22年9月10
日発送)
平成22年 9月17日 併合審理通知
平成22年 9月21日 無効2010-800153について、
請求書副本の送達通知(平成22年9月24
日発送)
平成22年10月13日 無効2010-800139について、
上申書の提出(請求人)
平成22年11月 9日 無効2010-800139について、
審判事件答弁書と共に乙第1ないし7号証を
提出(被請求人)
平成22年11月 9日 無効2010-800139について、
物件提出書と共に検乙第1号証を提出(被請
求人)
平成22年11月 9日 訂正請求(被請求人)
平成22年11月24日 無効2010-800153について、
審判事件答弁書と共に乙第1ないし3号証を
提出(被請求人)
平成23年 1月 7日 訂正請求書副本の送付通知(平成23年1月
12日発送)
平成23年 1月18日 審理事項通知
(審判事件ごとに通知、平成23年1月20
日発送)
平成23年 3月11日 無効2010-800139について、
口頭審理陳述要領書と共に甲第17ないし2
0号証の提出(請求人、平成23年3月14
日差し出し)
平成23年 3月11日 無効2010-800139について、
口頭審理陳述要領書と共に乙第8ないし13
号証を提出(被請求人)
平成23年 3月11日 無効2010-800153について、
口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
平成23年 3月11日 無効2010-800153について、
口頭審理陳述要領書と共に乙第4ないし10
号証を提出(被請求人)
平成23年 3月25日 口頭審理
平成23年 3月25日 審理終結通知


9 そして、無効2010-800139について、「審判請求書についての平成22年9月2日付け手続補正書」、「平成22年11月9日付け審判事件答弁書」、「請求人による平成23年3月11日付け口頭審理陳述要領書(平成23年3月14日差し出し)」及び「被請求人による平成23年3月11日付け口頭審理陳述要領書」を、それぞれ、以下、「審判請求書についての手続補正書」、「答弁書」、「請求人による陳述要領書」及び「被請求人による陳述要領書」という。
また、無効2010-800153についても、「平成22年9月2日付け審判請求書」、「平成22年11月24日付け審判事件答弁書」、「請求人による平成23年3月11日付け口頭審理陳述要領書(平成23年3月14日差し出し)」及び「被請求人による平成23年3月11日付け口頭審理陳述要領書」を、それぞれ、以下、「審判請求書」、「答弁書」、「請求人による陳述要領書」及び「被請求人による陳述要領書」という。


第3 訂正請求について

1 訂正請求の要旨
本件訂正請求の要旨は、特許第3955913号に係る特許権の設定登録時の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)を平成22年11月9日付け訂正請求書に添付された全文訂正明細書のとおり、すなわち、次の訂正事項1ないし3のとおり訂正すること(以下、「本件訂正」という。)を求めるものである。
(1)訂正事項1
特許明細書の段落【0015】における
「本発明の管内面に止水材を一体成形してなる樹脂スパイラル管ジョイントとは樹脂スパイラル管ジョイントの製造時に止水材を一体化するものでありブロー成形法あるいはインジェクション成形法共に可能であるが、ブロー成形法で製造した樹脂スパイラル管ジョイントが好ましい。
これらの樹脂スパイラル管は多くの口径があり、多品種の樹脂スパイラル管ジョイントを用意する必要があるがインジェクション方法では金型が高価につくことから、結局樹脂スパイラル管ジョイントが高価となる。」を、
「本発明の管内面に止水材を一体成形してなる樹脂スパイラル管ジョイントとは樹脂スパイラル管ジョイントの製造時に止水材を一体化するものであり、ブロー成形法で製造した樹脂スパイラル管ジョイントが好ましい。
これらの樹脂スパイラル管は多くの口径があり、多品種の樹脂スパイラル管ジョイントを用意する必要があるがインジェクション方法では金型が高価につくことから、結局樹脂スパイラル管ジョイントが高価となる。」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許明細書の段落【0017】における
「外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意。されている。」を
「外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意されている。」と訂正する。

(3)訂正事項3
特許明細書の段落【0019】における
「図3は止水材6がセットされたコアー金型を挟んで外金型1を閉じた状態を示す。パリソン4は樹脂スパイラル管ジョイント6となるが、この時当然止水材5付き内金型2の直径よりパリソン4の直径の方が大きいため、パリソン4の一部は外金型1より外部に押し出されることになるが、この押し出された樹脂は再度使用することができる。」を
「図3は止水材5がセットされたコアー金型を挟んで外金型1を閉じた状態を示す。パリソン4は樹脂スパイラル管ジョイント6となるが、この時当然止水材5付き内金型2の直径よりパリソン4の直径の方が大きいため、パリソン4の一部は外金型1より外部に押し出されることになるが、この押し出された樹脂は再度使用することができる。」と訂正する。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の段落【0015】の記載から「ブロー成形法あるいはインジェクション成形法共に可能であるが」との記載を削除するものであるところ、特許明細書の請求項1に記載された発明が「インジェクション成形法」を採用していないため特許明細書の請求項1の記載と整合していなかった段落【0015】の記載について、整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項1は、記載の整合を図るものであり、特許権の設定登録時の願書に添付した明細書又は図面(以下、「特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものである。
また、訂正事項1は、記載の整合を図るものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
特許明細書の段落【0017】に記載された「外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意。されている。」は、文の途中に句点である「。」が挿入されており、文の構成からみて明らかな誤記であり、訂正事項2は、当該句点を削除するものであるから誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項2は、明らかな誤記を訂正するものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものである。
また、訂正事項2は、明らかな誤記を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
特許明細書の段落【0019】に記載された「止水材6」との記載は、特許明細書等における図1及び図2の記載、【符号の簡単な説明】の記載、並びに、その他の【発明の実施の形態】の記載(特に、同じ段落【0019】における2度目の「止水材5」との記載)によれば、符号について明らかな誤記であり、訂正事項3は、正しい符号が付された「止水材5」とするものであるから、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項3は、明らかな誤記を訂正するものであり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものである。
また、訂正事項3は、明らかな誤記を訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)請求人の主張について
なお、請求人は、無効2010-800139についての請求人による陳述要領書の21頁4?10行及び無効2010-800153についての請求人による陳述要領書の7頁9?15行において、「もし、請求項の記載との整合性に欠けることを根拠とする明細書の訂正が、明りょうでない記載の釈明に該当するとして当該訂正を認容するならば、同様の訂正を繰り返し行うことによって、例えば、特許法第36条第6項第1号の無効理由を解消する訂正を許容してしまう虞がある。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条第2項第3号に規定する明りょうでない記載の釈明に該当する訂正ではなく、訂正要件を満たさないため、却下されるべきものである。」との主張をする。
しかしながら、請求人は、請求項の記載との整合性に欠けることを根拠とする明細書の訂正が、明りょうでない記載の釈明に該当するものではないとする理由を述べていない。
また、そもそも訂正請求は、特許について無効理由がある場合に、それを理由とする無効審判の請求に対して特許が無効にされることを防ぐために、特許権者が自発的に願書に添付した明細書又は図面を訂正する権利を保証するものであるから、上記請求人の主張は採用することができない。

3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項第2号又は第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項で準用する第3項及び第4項の規定に適合するので適法な訂正である。
よって、本件訂正を認める。


第4 本件特許発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、平成22年11月9日付け訂正請求書に添付された全文訂正明細書における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「止水材が、連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体、水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体、連続気泡ポリオレフィン発泡体、連続気泡ゴム発泡体、水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体、吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布の何れかであり、外金型と、前記止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、前記内金型と前記外金型とで前記パリソンを挟んで閉じることにより前記止水材を管内面に一体成形することを特徴とする樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法。」

そして、請求人は、無効2010-800139の審判請求書についての手続補正書の11頁10?19行及び無効2010-800153の審判請求書の5頁16?25行において、本件特許発明を、以下のとおり分説している。
A 止水材が、水材連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体、水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体、連続気泡ポリオレフィン発泡体、連続気泡ゴム発泡体、水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体、吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布の何れかであり、
B 外金型と、前記止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、
C 前記内金型と前記外金型とで前記パリソンを挟んで閉じることにより前記止水材を管内面に一体成形する
D ことを特徴とする樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法。

そこで、本件特許発明における、請求人の主張による構成要件AないしDのそれぞれを、以下、単に「構成要件A」、「構成要件B」、「構成要件C」、「構成要件D」という。


第5 無効2010-800139について

1 請求人の主張の概要及び証拠方法
請求人は、「第3955913号特許を無効とする、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、以下の無効理由を主張し、証拠として、甲第1ないし20号証を提出した。
(1)無効理由1(特許法第36条第6項第1号)
本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないため、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきものである。

(2)無効理由2(特許法第36条第6項第2号)
本件特許発明は、出願当初の特許請求の範囲、明細書、図面および出願経過を参酌すると、「ブロー成形法」であるか否かが明確ではなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないため、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきものである。

(3)無効理由3(特許法第36条第4項)
本件特許発明の製造方法では、発明の詳細な説明に記載された効果を発揮する製品を製造することができない。よって、発明の詳細な説明の記載は当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、特許法第36条第4項(審決注;「第1号」は平成14年9月1日以降の出願から適用される特許法に設けられたものであるため、削除した。)の要件を満たさないため、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきものである。

(4)無効理由4(特許法第29条第1項柱書)
本件特許発明の製造方法では、発明の詳細な説明に記載された効果を発揮する製品を製造することができない。よって、その発明は、発明として完成していないものであり、特許法第29条第1項柱書(審決注;「第1項」の脱字が認められたため、加えた。)の要件を満たさないため、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

(5)無効理由5(特許法第29条第1項第3号)
本件特許発明は、甲第13号証に記載された発明と同一または実質的に同一であり、特許法第29条第1項第3号の要件を満たさないため、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

(6)無効理由6(特許法第29条第2項)
本件特許発明は、甲第13号証および甲第15号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたものであり、特許法第29条第2項の要件を満たさないため、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

請求人が提出した甲号証は、以下のとおりである。
甲第1号証:特許第3955913号公報
甲第2号証:特開2003-74770号公報
甲第3号証:平成17年7月12日付け早期審査に関する事情説明書
甲第4号証:平成17年10月11日付け手続補正書
甲第5号証:平成17年12月8日付け手続補正書
甲第6号証:平成17年12月8日付け審判請求書
甲第7号証:平成18年9月7日付け補正の却下の決定
甲第8号証:平成18年11月13日付け手続補正書
甲第9号証:平成18年11月13日付け意見書
甲第10号証:平成19年2月9日付け手続補正書
甲第11号証:本件特許発明に係る製造方法を示す説明図
甲第12号証:本件特許発明に係る製造方法によって製造された製品の特性
を示す説明図
甲第13号証:特開平1-159230号公報
甲第14号証:本件特許発明と甲第13号証に記載の発明とを比較する図
甲第15号証:実願平2-88087号(実開平4-44589号)のマイ
クロフィルム
甲第16号証:「図解プラスチック用語辞典 第2版」、2000年4月2
8日、日刊工業新聞社、714?715頁
甲第17号証:平成21年(ワ)第27223号損害賠償等請求事件及び平
成22年(ワ)第18596号損害賠償等請求事件における
平成22年11月29日付け求釈明の申立て
甲第18号証:平成21年(ワ)第27223号損害賠償等請求事件及び平
成22年(ワ)第18596号損害賠償等請求事件における
平成22年12月10日付け原告準備書面(3)
甲第19号証:「巻き付けた」の意味についての説明図
甲第20号証:甲第13号証に記載の発明の説明図

2 被請求人の主張の概要及び証拠方法
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、請求人の主張は何れも失当であると主張し、証拠として、以下の乙第1ないし13号証、検乙第1号証、並びに、参考図1及び参考図2を提出した。

乙第1号証:特許第3723538号公報
乙第2号証:特開2003-251686号公報
乙第3号証:特開2006-26899号公報
乙第4号証:被請求人による平成22年11月1日付け実験成績証明書
乙第5号証:検乙第1号証を正面から撮影した写真
乙第6号証:検乙第1号証を斜め上から撮影した写真
乙第7号証:検乙第1号証を上面から撮影した写真
乙第8号証:平成13年8月31日付けで提出した願書に添付された明細
書、図面及び要約書
乙第9号証:平成17年10月31日付け拒絶査定
乙第10号証:平成18年6月2日付け前置報告書
乙第11号証:平成18年12月11日付け拒絶理由通知書
乙第12号証:平成19年2月21日付け審決
乙第13号証:乙第3号証に係る特許出願の出願人が、平成21年(ワ)第
27223号損害賠償等請求事件において平成22年3月2
5日付けで東京地方裁判所に提出した被告準備書面(3)
検乙第1号証:本件特許発明の方法で製造された樹脂スパイラル管ジョイン

参考図1:甲第13号証の第2図を拡大した説明図
参考図2:甲第13号証の第4図を拡大した説明図


3 無効理由1(特許法第36条第6項第1号)について
3-1 甲号証
(1)甲第1号証(特許第3955913号公報)に記載された事項
ア 「止水材が、連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体、水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体、連続気泡ポリオレフィン発泡体、連続気泡ゴム発泡体、水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体、吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布の何れかであり、外金型と、前記止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、前記内金型と前記外金型とで前記パリソンを挟んで閉じることにより前記止水材を管内面に一体成形することを特徴とする樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法。」(【請求項1】)

イ 「本発明は土木分野や建築分野あるいは電設分野等で使用する樹脂管ジョイントに関するものであり、更に詳しくはブロー成形時に止水材を一体成形してなる樹脂管ジョイント並びにリング状波管(俗称独立山管)ジョイントに関するものである。」(段落【0001】)

ウ 「次に本発明の止水材付き樹脂管ジョイント並びにその製造方法について更に詳細に説明する。・・・本発明の樹脂管ジョイントはスパイラルパイプを接続する樹脂スパイラル管ジョイントに加え独立山パイプを接続する樹脂リング状波管ジョイントも含むが、以下特に指定はしない限り樹脂スパイラル管ジョイントに絞り説明する。」(段落【0009】)

エ 「次に本発明の樹脂スパイラル管ジョイントに一体化される止水材はゴム発泡体、ポリウレタン発泡体、ポリオレフィン発泡体あるいは水膨潤性ウレタン発泡体/非発泡体、水膨潤性オレフィン、水膨潤性ゴム発泡体/非発泡体あるいは吸水性繊維不織布あるいは疎水性繊維不織布等がある。
ポリウレタン発泡体、ポリオレフィンあるいはゴム発泡体は独立気泡体であっても連続気泡体であっても使用可能であるが、好ましくは連続気泡体が良い。・・・
本発明に使用されるゴム発泡体も単に汎用の独立気泡体のみならずポリオレフィン発泡体同様に吸水性樹脂を充填した水膨潤性ゴム発泡体並びに非発泡性の水膨潤性ゴムも使用可能である。
・・・
本発明に使用されるポリウレタン発泡体としては・・・あるいはポリイソプレンポリオールとポリイソシアネートから製造された疎水性独立気泡ポリウレタンや疎水性連続気泡ポリウレタンが使用可能である。ポリアクリル酸ソーダーを代表とする重合並びに部分架橋させたいわゆる電解質系吸水性樹脂並びに親水性ポリウレタン、超高分子量ポリエチレンオキサイド等の非電解質系吸水性樹脂を充填した独立気泡あるいは連続気泡の水膨潤性ポリウレタン並びに非発泡性の水膨潤性ウレタンも使用できる。
・・・
又本発泡に使用する疎水性繊維とはポリエチレン繊維あるいはポリプロピレン繊維あるいはポリエチレンプロピレン繊維等を指すがこれに限定されず、疎水性繊維であれば何であっても良い。」(段落【0010】?【0014】)

オ 「本発明の管内面に止水材を一体成形してなる樹脂スパイラル管ジョイントとは樹脂スパイラル管ジョイントの製造時に止水材を一体化するものでありブロー成形法あるいはインジェクション成形法共に可能であるが、ブロー成形法で製造した樹脂スパイラル管ジョイントが好ましい。」(段落【0015】)

カ 「特にブロー成形法あるいはインジェクション法にて製造された管内面止水材付き一体成形樹脂スパイラル管ジョイントは後工程で接着したものに比較して止水材が破損することが無いと共に後工程で止水材を貼ることができない小口径の樹脂スパイラル管ジョイントにも止水材を一体成形することができる。」(段落【0016】)

キ 「以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1はブロー成形法による成形実施例である。
図1は成形前のブロー成形機の樹脂押し出しダイ3、外金型1、止水材5を固定した内金型2の関係を示す。
外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意。されている。」(段落【0017】)

ク 「図2は外金型を閉じる直前の状態を示すものである。
即ちブロー成形機のダイ3の隙間よりパリソン4を押し出す。パリソン4の押し出しと止水材5を付けた内金型2の関係はパリソン4が先に押し出されてから内金型2を下部より上昇させても、あるいは内金型2を上昇させた後パリソン4を押し出してもどちらでも良い。」(段落【0018】)

ケ 「図3は止水材6がセットされたコアー金型を挟んで外金型1を閉じた状態を示す。パリソン4は樹脂スパイラル管ジョイント6となるが、この時当然止水材5付き内金型2の直径よりパリソン4の直径の方が大きいため、パリソン4の一部は外金型1より外部に押し出されることになるが、この押し出された樹脂は再度使用することができる。」(段落【0019】)

コ 「図3のブロー成形に於いて止水材5が連続気泡樹脂発泡体あるいは連続気泡ゴム発泡体あるいは不織布の場合には、これら連続気泡体の一部あるいは不織布にパリソン4が含浸するので止水材5は本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6と十分に接合される。
しかしながらパリソンの含浸量が多いと止水材の厚さが薄くなって止水力が低下することがあるが、この場合にはエアーノズル9より空気を送ってパリソンの含浸量を適当に調整することができる。
また成形された本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6を内金型より取り外す時にエアーノズル9よりエアーを出すととによって取り外しが容易になる。」(段落【0020】)

サ 「図3で成形された止水材を一体化した樹脂スパイラル管ジョイントは外金型を開放した後取り外されるが、成形サイクルを上げるため内金型は製品が付いた状態で取り外し、別の止水材付き内金型をセットして次の成形にすすむのが良い。製品の内金型からの取り出しは別工程で行うのが好ましい。」(段落【0021】)

シ 「更に本発明の方法で製造された管内面に止水材を一体成形した樹脂スパイラル管ジョイントは小口径の樹脂スパイラル管ジョイントでも可能であり、特に小口径パイプの接続による抵抗を大幅に低減することができる。」(段落【0022】)

ス 「本発明のリング状波管ジョイントはインジェクション成形法でもブロー成形法でも可能であり、ブロー成形の内金型のツメの部分は溝を削っておくことにより製造される。」(段落【0023】)

セ 「また止水材をブロー成形法で一体成形することにより、手作業で管内面に止水材を後接着できなかった小口径の樹脂管ジョイントでも止水材を一体化することが可能となった。」(段落【0025】)

ソ 「【図1】 本発明の管内面に止水材をブロー成形法で一体成形する工程に於いて樹脂スパイラル管ジョイントの成形前の止水材付き内金型並びに外金型の関係を示す概略断面図である。
【図2】 本発明の管内面に止水材をブロー成形法で一体成形する工程に於いて樹脂スパイラル管ジョイントの成形前のパリソン、止水材付き内金型並びに外金型の関係を示す概略断面図である。
【図3】 本発明の管内面に止水材をブロー法で一体成形する工程に於いて外金型を閉じた成形後を示す概略断面図である。」(【図面の簡単な説明】の欄)

タ 図1には、外金型1が開放された状態が示されている。

チ 図2には、外金型1と内金型2との間に、ダイ3から押し出されたパリソン4が位置していることが示されている。

ツ 図3には、内金型2と外金型1とでパリソンを挟んで閉じることが示されている。

(2)甲第6号証(平成17年12月8日付け審判請求書)に記載された事項
「他方、本願発明では
a)ブロー成形に用いるパリソンを押出すダイ並びに外金型を使用し、ブロー成形には使用しない内金型を加え、
b)内金型と外金型で成形した後、脱型が可能なスパイダル管を選定特定し、
c)内金型に止水材を固定し、この止水材を固定した内金型の外側にパリソンを押出し、
d)外金型を内金型側に移動して締め付ける
のであって、このよう要件を具備することによって初めてパリソンと止水材とが一体成形された樹脂管ジョイントを製造することが出来るのである。」(5頁20?28行:「(3)指摘事項に対する対処」の第2段落)

(3)甲第9号証(平成18年11月13日付け意見書)に記載された事項
「本願発明の特徴点は、内金型の表面に止水材を固定し、これをブロー成形機のダイより押し出されたパリソンの内部に配置し、パリソンを外金型で押圧して管内面に止水材を一体成形した樹脂管ジョイントの成型方法であって、管内面に止水材が一体化されているため止水材が剥離したり、異物が付着したり汚れたり或いは破損したりすることはない。」(5頁16?19行:「(4)本願発明が特許されるべき理由」の「(a)本願発明の説明」の第2段落)

(4)甲第16号証(「図解プラスチック用語辞典第2版」、2000年4月28日、日刊工業新聞社)に記載された事項
「ブロー成形 blow mo(u)lding 合せ金型内において,加熱により軟化している熱可塑性プラスチックのパリソンまたはシートを空気圧などを用いてふくらませ,金型に密着させると同時に冷却して中空体を得る成形方法をいう。」(714?715頁)

3-2 請求人の主張
(1)本件特許に係る明細書等に記載されている「ブロー成形」なる用語は、それ自体学術用語であって、かつ、本件特許に係る明細書においては別段その定義もされていない。
したがって、本件特許発明における「ブロー成形」は、特許法施行規則第24条に規定する様式第29の備考8、同備考8但書及び同備考7、並びに、審査基準の「第2(審決注:ローマ数字)部 第2章 1.5.1 請求項に係る発明の認定」の(1)ないし(4)に記載された原則に基づき、その有する普通の意味、すなわち甲第16号証(「図解プラスチック用語辞典 第2版」、2000年4月28日 日刊工業新聞社)の第714?715頁に、「合せ金型内において、加熱により軟化している熱可塑性プラスチックのパリソンまたはシートを空気圧などを用いてふくらませ、金型に密着させると同時に冷却して中空体を得る成形方法をいう。」と説明されているとおりのものを意味すると解するほかない。
「ブロー成形法」および「ブロー法」という用語は、結局、「ブロー成形」と同義であり、また「ブロー成形機」という用語は(とくに「ブロー成形」と異なる成形を行なう成形方法ないし製造方法である旨の断りもなく使用する以上)、「ブロー成形」を行なう製造装置と解するほかない。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の12頁20?29行、請求人による陳述要領書の3頁27行?4頁10行及び第1回口頭審理調書の2-2を参照。)

(2)被請求人は、本件特許発明に係る審査経過及び拒絶査定不服審判において如何なる解釈も主張していない「ブロー成形法」なる用語を、本審判においてはじめて前面に押し出して、それは「ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法」を意味するとの独自の解釈を主張しているのであるが、その解釈の根拠も意味内容も不明である。
「ブロー成形法」の定義は、明細書に記載されていない。
被請求人は、明細書の部分的な記載を引用して都合よく解釈している。
(これについて、請求人による陳述要領書の4頁11?29行及び第1回口頭審理調書の2-2を参照。)

(3)図1ないし図3は一般的なブロー成形の図である。
また、段落【0017】ないし【0021】はブロー成形の説明である。
したがって、構成要件B及び構成要件Cは、実質的に全文訂正明細書の発明の詳細な説明には記載されていない。
(これについて、第1回口頭審理調書の3-1及び3-2を参照。)

(4)甲第6号証を参酌すると、本件特許発明に係る製造方法は、「ブロー成形法」ではなく、内金型と外金型とでパリソンを挟んで「締め付ける」ことによって一体成形する成形方法であると、特許権者は主張している。
さらに、甲第9号証を参酌すると、本件特許発明に係る製造方法は、「ブロー成形法」ではなく、パリソンを外金型で「押圧」することによって管内面に止水材を一体成形する成形方法であると、特許権者は主張している。
甲第1号証(特許第3955913号公報)に記載の本件特許発明の構成要件B及び構成要件Cで規定される製造方法は、甲第6号証、甲第9号証を参酌すると、明らかに、「ブロー成形法」以外の製造方法で一体成形するものである。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の16頁25行?17頁9行及び請求人による陳述要領書の2頁17?20行を参照。)

(5)一方、甲第1号証の発明の詳細な説明には、本件特許発明として「ブロー成形法」によって一体成形することが一貫して記載されており、「ブロー成形法」以外の製造方法に係る発明は全く記載されていない。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の17頁10?13行及び請求人による陳述要領書の2頁21?23行を参照。)

(6)したがって、本件特許発明は、特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の17頁14?21行及び請求人による陳述要領書の2頁24?25行を参照。)

3-3 被請求人の主張
(1)本件特許発明では、「ブロー成形法」は「ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法」を意味し、具体的には、パリソンを形成するためにブロー成形機のダイを利用し、形成されたパリソンを内外金型間に位置させることを意味する。
(これについて、答弁書の15頁28行?16頁2行を参照。)

(2)そして、訂正明細書の発明の詳細な説明には、本件請求項1に係る発明が記載されていることから、本件特許発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているものである。
(これについて、答弁書の16頁2?4行を参照。)

3-4 当審の判断
(1)明細書について
請求人は、甲第1号証(特許第3955913号公報)の記載(すなわち、特許明細書の記載)に基づき、特許法第36条第6項第1号の規定に基づく無効理由を主張しているが、上述したとおり、本件訂正は認められ、本件特許に係る願書に添付した明細書は全文訂正明細書となったのであるから、甲第1号証の明細書についての記載に替え、全文訂正明細書の記載に基づき検討を行う。

(2)判断
ア まず、本件特許発明の構成要件Aが発明の詳細な説明に記載されているかについて検討する。
全文訂正明細書の発明の詳細な説明における段落【0010】ないし【0014】には止水材の説明がなされているところ、本件特許発明における止水材の各材料が次のとおり示されている。
・全文訂正明細書の段落【0013】の「本発明に使用されるポリウレタン発泡体としては・・・疎水性連続気泡ポリウレタンが使用可能である。」との記載によれば、本件特許発明の「連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体」が使用可能であることが示されている。
・全文訂正明細書の段落【0010】の「次に本発明の樹脂スパイラル管ジョイントに一体化される止水材はゴム発泡体、ポリウレタン発泡体、ポリオレフィン発泡体あるいは水膨潤性ウレタン発泡体/非発泡体、水膨潤性オレフィン、水膨潤性ゴム発泡体/非発泡体あるいは吸水性繊維不織布あるいは疎水性繊維不織布等がある。」との記載によれば、本件特許発明の「水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体」、「水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体」及び「吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布」の何れかが使用可能であることが示されている。
ここで、全文訂正明細書の段落【0012】の「本発明に使用されるゴム発泡体も・・・吸水性樹脂を充填した水膨潤性ゴム発泡体並びに非発泡性の水膨潤性ゴムも使用可能である。」との記載によっても、本件特許発明の「水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体」が使用可能であることが示されている。
・全文訂正明細書の段落【0010】の「ポリウレタン発泡体、ポリオレフィンあるいはゴム発泡体は独立気泡体であっても連続気泡体であっても使用可能であるが、好ましくは連続気泡体が良い。」との記載によれば、本件特許発明の「連続気泡ポリオレフィン発泡体」及び「連続気泡ゴム発泡体」の何れかが使用可能であることが示されている。
そうすると、本件特許発明の構成要件Aである「止水材が、連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体、水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体、連続気泡ポリオレフィン発泡体、連続気泡ゴム発泡体、水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体、吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布の何れかであり」との事項は、全文訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているものと認められる。

イ 次に、本件特許発明の構成要件Bが発明の詳細な説明に記載されているかについて検討する。
全文訂正明細書の発明の詳細な説明における段落【0017】には、「図1は成形前のブロー成形機の樹脂押し出しダイ3、外金型1、止水材5を固定した内金型2の関係を示す。外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意されている。」と記載され、段落【0018】には、「図2は外金型を閉じる直前の状態を示すものである。即ちブロー成形機のダイ3の隙間よりパリソン4を押し出す。」と記載され、段落【0017】の記載において説明された図1には、外金型1が開放された状態が示され、また、段落【0018】の記載において説明された図2には、外金型1と内金型2との間に、ダイ3から押し出されたパリソン4が位置していることが示されている。
これらによると、図1の成形前の状態において、外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意され、図2の外金型1を閉じる直前の状態において、外金型1と内金型2との間に、ブロー成形機のダイ3より押し出されたパリソン4が位置することが記載されていることから、全文訂正明細書の発明の詳細な説明には、「外金型と、止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ」ること、すなわち、構成要件Bが実質的に記載されているものと認められる。

ウ 次に、本件特許発明の構成要件Cが発明の詳細な説明に記載されているかについて検討する。
全文訂正明細書の発明の詳細な説明における段落【0017】には、「外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意されている。」と記載され、段落【0019】には、「図3は止水材5がセットされたコアー金型を挟んで外金型1を閉じた状態を示す。」と記載され、また、段落【0019】の記載において説明された図3には、内金型2と外金型1とでパリソンを挟んで閉じることが示されている。
さらに、段落【0020】には、「しかしながらパリソンの含浸量が多いと止水材の厚さが薄くなって止水力が低下することがあるが、この場合にはエアーノズル9より空気を送ってパリソンの含浸量を適当に調整することができる。また成形された本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6を内金型より取り外す時にエアーノズル9よりエアーを出すととによって取り外しが容易になる。」と記載されている。
これらによると、樹脂スパイラル管ジョイントの管内面に止水材5を一体成形するにあたり、エアーノズル9から送られる空気は必須ではなく、図3の外金型1を閉じた成形後において、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2を挟んで外金型1が閉じた状態とされ、その際、パリソン4を内金型2と外金型1とで挟んで閉じることにより、止水材5が管内面に一体成形されることになるから、全文訂正明細書の発明の詳細な説明には、「内金型と外金型とでパリソンを挟んで閉じることにより止水材を管内面に一体成形する」こと、すなわち、構成要件Cが実質的に記載されているものと認められる。

エ 次に、本件特許発明の構成要件Dが発明の詳細な説明に記載されているかについて検討する。
全文訂正明細書の発明の詳細な説明には、その段落【0009】の「次に本発明の止水材付き樹脂管ジョイント並びにその製造方法について更に詳細に説明する。」との記載及び「本発明の樹脂管ジョイントはスパイラルパイプを接続する樹脂スパイラル管ジョイントに加え独立山パイプを接続する樹脂リング状波管ジョイントも含むが、以下特に指定はしない限り樹脂スパイラル管ジョイントに絞り説明する。」との記載、段落【0016】の「特にブロー成形法あるいはインジェクション法にて製造された管内面止水材付き一体成形樹脂スパイラル管ジョイントは後工程で接着したものに比較して止水材が破損することが無いと共に後工程で止水材を貼ることができない小口径の樹脂スパイラル管ジョイントにも止水材を一体成形することができる。」との記載、段落【0020】の「図3のブロー成形に於いて・・・これら連続気泡体の一部あるいは不織布にパリソン4が含浸するので止水材5は本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6と十分に接合される。」との記載、並びに、段落【0022】の「更に本発明の方法で製造された管内面に止水材を一体成形した樹脂スパイラル管ジョイントは小口径の樹脂スパイラル管ジョイントでも可能であり、特に小口径パイプの接続による抵抗を大幅に低減することができる。」との記載によれば、樹脂スパイラル管ジョイントが製造されることが示されており、「樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法」が記載されているものと認められる。
よって、本件特許発明の構成要件Dは、全文訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているものと認められる。

オ 次に「ブロー成形」、「ブロー法」、「ブロー成形法」及び「ブロー成形機」の各用語の意味について検討する。
全文訂正明細書において、上記各用語の定義が記載されていないところ、上記各用語を直ちに一般的な意味と解するのではなく、全文訂正明細書の記載内容から上記各用語の意味を検討することとなる。
そこで、樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法についての説明は、段落【0017】ないし【0021】に記載があるのみであるから、段落【0017】ないし【0021】の記載及びこの記載において参照する図1ないし3の記載に基づいて、上記各用語の意味を解釈することとする。
そして、段落【0017】ないし【0021】及び図1ないし3には、本件特許発明の構成要件B及び構成要件Cが実質的に記載されているものと認められることは上述したとおりであるところ、構成要件B及び構成要件Cからなる工程が甲第16号証に説明されているような一般的な意味の「ブロー成形」でないことは、当該工程において空気を用いることが必須ではなく、パリソン4を内金型2と外金型1とで挟んで閉じるという一般的な意味の「ブロー成形」には採用されない技術事項を備えていることより明らかであるから、上記各用語の定義が全文訂正明細書に記載されていないとしても、段落【0003】に記載された従来例についての「ブロー成形」を除き、全文訂正明細書中に記載された「ブロー成形」、「ブロー法」及び「ブロー成形法」の各用語を甲第16号証に説明されているような一般的な意味の「ブロー成形」と解することはできず、また、「ブロー成形機」という用語を一般的な意味の「ブロー成形」を行なう製造装置と解することはできない。
そこで、構成要件B及び構成要件Cからなる工程についてみると、一般的な意味の「ブロー成形」と同様に、成形機のダイ3からパリソンを押し出すことで、パリソンを形成していることから、全文訂正明細書中の「ブロー成形」、「ブロー法」及び「ブロー成形法」の各用語は、段落【0003】に記載された従来例についての「ブロー成形」を除き、被請求人の主張するとおり「ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法」を意味し、また、「ブロー成形機」は「ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法」に用いられる成形機を意味するものと解するのが自然である。

カ そうすると、全文訂正明細書において、「ブロー成形」、「ブロー法」、「ブロー成形法」及び「ブロー成形機」の各用語が記載され、各用語の定義が記載されていないとしても、全文訂正明細書の発明の詳細な説明には、甲第16号証に説明されているような一般的な意味の「ブロー成形法」が一貫して記載されているとはいえない。

キ 一方、本件特許発明については、構成要件B及び構成要件Cからなる工程において、空気を用いることが必須ではなく、パリソン4を内金型2と外金型1とで挟んで閉じるという一般的な意味の「ブロー成形」には採用されない技術事項を備えるものであるから、甲第16号証に説明されているような一般的な意味の「ブロー成形法」ではなく、当該「ブロー成形法」以外の製造方法で一体成形するものであることは明らかである。
これについては、甲第6号証及び甲第9号証の摘記した記載を参酌することによっても、理解できることである。

ク よって、本件特許発明の構成要件A、構成要件B、構成要件C及び構成要件Dはいずれも全文訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されており、また、全文訂正明細書において、「ブロー成形」、「ブロー法」、「ブロー成形法」及び「ブロー成形機」の各用語が記載され、各用語の定義が記載されていないとしても、全文訂正明細書の発明の詳細な説明には本件特許発明が記載されていないとすることはできないのであるから、本件特許発明は全文訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されているものと認められる。

ケ なお、請求人は、請求人による陳述要領書の4頁20?27行において、「被請求人は、「本件特許発明の出願当初の特許請求の範囲、明細書及び図面において、『ブロー成形法』とは、『ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法』の意味」で使用されていると主張しているが(平成22年11月24日付けの無効2010-800153審判事件答弁書の7-3.「ブロー成形法」の技術的意義 (2)甲第2号証におけるブロー成形法の技術的意義)、被請求人の主張は、被請求人独自の解釈を導き出すのに都合のよい記載を寄せ集めて、牽強付会の関連付けないし意味付けをしているに過ぎず、かかる主張において引用されている記載をもって、「ブロー成形法」なる用語の定義の記載とはとうてい認められない。」との主張をし、さらに、口頭審理においても、「被請求人は、明細書の部分的な記載を引用して都合よく解釈している。」と主張(第1回口頭審理調書の2-2を参照。)をするが、上述したとおり、全文訂正明細書の段落【0017】ないし【0021】の記載及び図1ないし3の記載から、「ブロー成形法」は被請求人の主張するとおり「ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法」を意味するものと解するのが自然であるから、請求人のこれら主張は採用することができない。

3-5 まとめ
以上のとおり、本件特許発明は全文訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されており、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
したがって、無効理由1は理由がない。


4 無効理由2(特許法第36条第6項第2号)について
4-1 甲号証
(1)甲第1号証(特許第3955913号公報)に記載された事項
ア 「止水材が、連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体、水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体、連続気泡ポリオレフィン発泡体、連続気泡ゴム発泡体、水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体、吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布の何れかであり、外金型と、前記止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、前記内金型と前記外金型とで前記パリソンを挟んで閉じることにより前記止水材を管内面に一体成形することを特徴とする樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法。」(【請求項1】)

イ 「ここで一体成形とは樹脂管ジョイントを成形時に止水材を接合するものを指し、具体的にはブロー成形時にその溶融あるいは軟化樹脂が接着性を有している硬化前に止水材を一体化することを云う。」(段落【0009】)

ウ 「以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1はブロー成形法による成形実施例である。
図1は成形前のブロー成形機の樹脂押し出しダイ3、外金型1、止水材5を固定した内金型2の関係を示す。
外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意。されている。」(段落【0017】)

エ 「図2は外金型を閉じる直前の状態を示すものである。
即ちブロー成形機のダイ3の隙間よりパリソン4を押し出す。パリソン4の押し出しと止水材5を付けた内金型2の関係はパリソン4が先に押し出されてから内金型2を下部より上昇させても、あるいは内金型2を上昇させた後パリソン4を押し出してもどちらでも良い。」(段落【0018】)

オ 「図3は止水材6がセットされたコアー金型を挟んで外金型1を閉じた状態を示す。パリソン4は樹脂スパイラル管ジョイント6となるが、この時当然止水材5付き内金型2の直径よりパリソン4の直径の方が大きいため、パリソン4の一部は外金型1より外部に押し出されることになるが、この押し出された樹脂は再度使用することができる。」(段落【0019】)

カ 「図3のブロー成形に於いて止水材5が連続気泡樹脂発泡体あるいは連続気泡ゴム発泡体あるいは不織布の場合には、これら連続気泡体の一部あるいは不織布にパリソン4が含浸するので止水材5は本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6と十分に接合される。
しかしながらパリソンの含浸量が多いと止水材の厚さが薄くなって止水力が低下することがあるが、この場合にはエアーノズル9より空気を送ってパリソンの含浸量を適当に調整することができる。
また成形された本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6を内金型より取り外す時にエアーノズル9よりエアーを出すととによって取り外しが容易になる。」(段落【0020】)

キ 「図3で成形された止水材を一体化した樹脂スパイラル管ジョイントは外金型を開放した後取り外されるが、成形サイクルを上げるため内金型は製品が付いた状態で取り外し、別の止水材付き内金型をセットして次の成形にすすむのが良い。製品の内金型からの取り出しは別工程で行うのが好ましい。」(段落【0021】)

ク 図1には、外金型1が開放された状態が示されている。

ケ 図2には、外金型1と内金型2との間に、ダイ3から押し出されたパリソン4が位置していることが示されている。

コ 図3には、内金型2と外金型1とでパリソンを挟んで閉じることが示されている。

(2)甲第2号証(特開2003-74770号公報:本件特許の公開公報)に記載された事項
ア 「ブロー成形にて止水材を管内面に一体成形してなる請求項1記載の樹脂管ジョイント。」(【請求項2】)

イ 「ブロー成形機よりパリソンを押し出した後、パリソン及びパリソン内部に位置する止水材を円形に固定してなる内金型を挟んで外金型を閉じることによりブロー成形する止水材を管内面に一体成形してなる樹脂管ジョイントの製造方法。」(【請求項4】)

ウ 「本発明は土木分野や建築分野あるいは電設分野等で使用する樹脂管ジョイントに関するものであり、更に詳しくはブロー成形時に止水材を一体成形してなる樹脂管ジョイント並びにリング状波管(俗称独立山管)ジョイントに関するものである。」(段落【0001】)

エ 「請求項1に記載の本発明は止水材を管内面に一体成形した樹脂管ジョイントであり、請求項2に記載の本発明は一体成形される方法がブロー成形であることである。」(段落【0005】)

オ 「請求項3に記載の本発明はブロー成形にて管内面に一体成形された止水材が連続気泡の疎水性ウレタン発泡体あるいは水膨潤性ウレタン発泡体/非発泡体あるいは連続気泡ポリオレフィン発泡体あるいは連続気泡ゴム発泡体あるいは水膨潤性ゴム発泡体/非発泡体あるいは吸水性繊維不織布あるいは疎水性繊維不織布のいずれかであることである。」(段落【0006】)

カ 「本発明の管内面に止水材を一体成形してなる樹脂スパイラル管ジョイントとは樹脂スパイラル管ジョイントの製造時に止水材を一体化するものでありブロー成形法あるいはインジェクション成形法共に可能であるが、ブロー成形法で製造した樹脂スパイラル管ジョイントが好ましい。」(段落【0015】)

キ 「特にブロー成形法あるいはインジェクション法にて製造された管内面止水材付き一体成形樹脂スパイラル管ジョイントは後工程で接着したものに比較して止水材が破損することが無いと共に後工程で止水材を貼ることができない小口径の樹脂スパイラル管ジョイントにも止水材を一体成形することができる。」(段落【0016】)

ク 「以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1はブロー成形法による成形実施例である。図1は成形前のブロー成形機の樹脂押し出しダイ3、外金型1、止水材5を固定した内金型2の関係を示す。外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意。されている。」(段落【0017】)

ケ 「図3のブロー成形に於いて止水材5が連続気泡樹脂発泡体あるいは連続気泡ゴム発泡体あるいは不織布の場合には、これら連続気泡体の一部あるいは不織布にパリソン4が含浸するので止水材5は本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6と十分に接合される。」(段落【0020】)

コ 「本発明のリング状波管ジョイント10も本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6と同様に管内面に止水材5が一体化されている。本発明のリング状波管ジョイントはインジェクション成形法でもブロー成形法でも可能であり、ブロー成形の内金型のツメの部分は溝を削っておくことにより製造される。」(段落【0023】)

サ 「また止水材をブロー成形法で一体成形することにより、手作業で管内面に止水材を後接着できなかった小口径の樹脂管ジョイントでも止水材を一体化することが可能となった。」(段落【0025】)

シ 「【図1】 本発明の管内面に止水材をブロー成形法で一体成形する工程に於いて樹脂スパイラル管ジョイントの成形前の止水材付き内金型並びに外金型の関係を示す概略断面図である。
【図2】 本発明の管内面に止水材をブロー成形法で一体成形する工程に於いて樹脂スパイラル管ジョイントの成形前のパリソン、止水材付き内金型並びに外金型の関係を示す概略断面図である。
【図3】 本発明の管内面に止水材をブロー法で一体成形する工程に於いて外金型を閉じた成形後を示す概略断面図である。」(【図面の簡単な説明】の欄)

(3)甲第3号証(平成17年7月12日付け早期審査に関する事情説明書)に記載された事項
ア 「これに対し、本願発明ではブロー成形によって管内面に止水材を一体化するのであって、これにより、止水材が剥離したり、異物が付着したり汚れたり或いは破損することはない。」(2頁26?28行:「(3)対比説明」の第1段落)

イ 「本願発明はブロー成形でも射出成形のような管継手内面に膨張体を一体化できるのを見出したものであり、特定の内金型を併用することにより、目的を達成できる。」(2頁44?46行:「(3)対比説明」の第3段落)

ウ 「そして、本願発明では継手管の内表面に止水材をブロー成形のよって一体化することにより先に述べたように安価に成形しうると共に、止水材が剥離したり、異物が付着したり汚れたり或いは破損することはない等の効果を奏するのである。」(2頁47?49行:「(3)対比説明」の第4段落)

(4)甲第6号証(平成17年12月8日付け審判請求書)に記載された事項
3-1(2)に記載したとおり。

(5)甲第9号証(平成18年11月13日付け意見書)に記載された事項
3-1(3)に記載したとおり。

4-2 請求人の主張
(1)本件特許発明は、甲第16号証に記載されているような一般的な意味の「ブロー成形」ではない。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の22頁11?14行、請求人による陳述要領書6頁19?20行及び第1回口頭審理調書の4を参照。)

(2)しかしながら、もし仮に、本件特許発明の構成要件Cの「前記内金型と前記外金型とで前記パリソンを挟んで閉じることにより前記止水材を管内面に一体成形する」との記載に含まれる「一体成形」との文言を、明細書の段落0009の記載に基づいて、「ブロー成形時にその溶融あるいは軟化樹脂が接着性を有している硬化前に止水材を一体化する」との趣旨と解釈する余地があるとするならば、本件特許発明は「ブロー成形法」であると解釈される可能性も完全に否定しきれない。
そうすると、本件特許発明が、「ブロー成形法」であるのか、そうでないのか、明確でないと言わざるを得ない。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の22頁23行?23頁1行及び請求人による陳述要領書6頁22?28行を参照。)

(3)更に、出願経過を参酌すると、甲第3号証(「早期審査に関する事情説明書」)では、本願発明が、「ブロー成形法で一体成形する」ことであると一貫して説明されている。一方、甲第6号証(審判請求書)では、本願発明が「ブロー成形法」ではない旨の説明がされており、甲第9号証(意見書)でも、本願発明が「ブロー成形法」ではない旨の説明がされている。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の23頁3?11行及び請求人による陳述要領書6頁29行?7頁3行を参照。)

(4)本件特許発明は、出願当初の特許請求の範囲、明細書、図面および出願経過を参酌しても、「ブロー成形法」であるか否かが不明確であって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。(これについて、審判請求書についての手続補正書の23頁14?16行及び請求人による陳述要領書7頁4?5行を参照。)

4-3 被請求人の主張
(1)本件特許発明は、甲第16号証に記載されているような一般的な意味の「ブロー成形」ではない。
(これについて、第1回口頭審理調書の4を参照。)

(2)本件の出願当初の特許請求の範囲、明細書及び図面を参酌しても、さらに出願経過を参酌しても、本件特許発明における「ブロー成形法」は「ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法」を意味し、具体的には、パリソンを形成するためにブロー成形機のダイを利用し、形成されたパリソンを内外金型間に位置させることを意味することが明白である。
よって、本件特許発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
(これについて、答弁書の23頁14?17行及び被請求人による陳述要領書の17頁6?13行を参照。)

4-4 当審の判断
(1)明細書について
請求人は、甲第1号証(特許第3955913号公報)の記載(すなわち、特許明細書の記載)に基づき、特許法第36条第6項第2号の規定に基づく無効理由を主張しているが、上述したとおり、本件訂正は認められ、本件特許に係る願書に添付した明細書は全文訂正明細書となったのであるから、甲第1号証の明細書についての記載に替え、全文訂正明細書の記載に基づき検討を行う。

(2)判断
ア 全文訂正明細書の請求項1に記載された本件特許発明は、「外金型と、止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ」との構成要件B及び「内金型と外金型とでパリソンを挟んで閉じることにより止水材を管内面に一体成形する」との構成要件Cからなる工程を備えるものであるところ、全文訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0017】ないし【0021】の記載及び図1ないし図3の記載を合わせて考慮すると、止水材を管内面に一体成形するのは、内金型と外金型とでパリソンを挟んで閉じることによるものであり、止水材を管内面に一体成形するにあたり空気を用いることは必須ではないことから、本件特許発明は一般的な意味の「ブロー成形法」ということはできない。

イ また、「ブロー成形」、「ブロー法」及び「ブロー成形法」の各用語の意味については、「3 無効理由1(特許法第36条第6項第1号)について」において検討したとおり、甲第16号証に説明されているような一般的な意味の「ブロー成形」と解することはできず、被請求人の主張するとおりの「ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法」を意味するものと解するのが自然であり、「ブロー成形機」についても「ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法」に用いられる成形機を意味するものと解するのが自然である」ことから、構成要件Cについての記載に含まれる「一体成形」との文言を、全文訂正明細書の段落【0009】の記載に基づいて、一般的な意味の「ブロー成形」時にその溶融あるいは軟化樹脂が接着性を有している硬化前に止水材を一体化するとの趣旨と解釈する余地があるものとはいえない。
さらに、出願経過を参酌したとしても、甲第2号証、甲第3号証、甲第6号証及び甲第9号証に記載された、「ブロー成形」、「ブロー法」、「ブロー成形法」及び「ブロー成形機」の各用語を上述した被請求人の主張に基づく意味と解すると、本件特許発明が一般的な意味の「ブロー成形法」でないことは明らかである。

ウ そして、請求人及び被請求人は、口頭審理において、本件特許発明が、甲第16号証に記載されているような一般的な意味の「ブロー成形」ではないことを認めており(第1回口頭審理調書の4を参照。)、さらに、請求人は、審判請求書についての手続補正書の13頁1ないし7行において、「このように「ブロー成形」とは、パリソンを空気圧などを用いてふくらませて金型に密着させる成形方法であるところ、本件特許発明に係る製造方法は、「内金型と外金型とでパリソンを挟んで閉じることにより止水材を管内面に一体成形する」成形方法であって、これは明らかに「ブロー成形」ではない。したがって、本件特許発明に係る製造方法の成形種別は、当該技術分野において一般に理解されている「ブロー成形」などではなく、「内金型と外金型とでパリソンを挟んで閉じることにより止水材を管内面に一体成形する」成形方法であると解される。」と主張するように、本件特許発明が一般的な「ブロー成形法」によるものではないことを認めている。

エ よって、請求人及び被請求人も認めるように、本件特許発明は一般的な意味の「ブロー成形法」ではないものと認められるので、本件特許発明が、「ブロー成形法」であるのか、そうでないのか、明確でないとすることはできない。

4-5 まとめ
以上のとおり、本件出願は、全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された本件特許発明が明確であることから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
したがって、無効理由2は理由がない。


5 無効理由3(特許法第36条第4項)について
5-1 甲号証
(1)甲第1号証(特許第3955913号公報)に記載された事項
ア 「止水材が、連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体、水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体、連続気泡ポリオレフィン発泡体、連続気泡ゴム発泡体、水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体、吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布の何れかであり、外金型と、前記止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、前記内金型と前記外金型とで前記パリソンを挟んで閉じることにより前記止水材を管内面に一体成形することを特徴とする樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法。」(【請求項1】)

イ 「【産業上の利用分野】
本発明は土木分野や建築分野あるいは電設分野等で使用する樹脂管ジョイントに関するものであり、更に詳しくはブロー成形時に止水材を一体成形してなる樹脂管ジョイント並びにリング状波管(俗称独立山管)ジョイントに関するものである。」(段落【0001】)

ウ 「次に本発明の止水材付き樹脂管ジョイント並びにその製造方法について更に詳細に説明する。・・・本発明の樹脂管ジョイントはスパイラルパイプを接続する樹脂スパイラル管ジョイントに加え独立山パイプを接続する樹脂リング状波管ジョイントも含むが、以下特に指定はしない限り樹脂スパイラル管ジョイントに絞り説明する。」(段落【0009】)

エ 「次に本発明の樹脂スパイラル管ジョイントに一体化される止水材はゴム発泡体、ポリウレタン発泡体、ポリオレフィン発泡体あるいは水膨潤性ウレタン発泡体/非発泡体、水膨潤性オレフィン、水膨潤性ゴム発泡体/非発泡体あるいは吸水性繊維不織布あるいは疎水性繊維不織布等がある。
ポリウレタン発泡体、ポリオレフィンあるいはゴム発泡体は独立気泡体であっても連続気泡体であっても使用可能であるが、好ましくは連続気泡体が良い。・・・
本発明に使用されるゴム発泡体も単に汎用の独立気泡体のみならずポリオレフィン発泡体同様に吸水性樹脂を充填した水膨潤性ゴム発泡体並びに非発泡性の水膨潤性ゴムも使用可能である。
・・・
本発明に使用されるポリウレタン発泡体としては・・・あるいはポリイソプレンポリオールとポリイソシアネートから製造された疎水性独立気泡ポリウレタンや疎水性連続気泡ポリウレタンが使用可能である。ポリアクリル酸ソーダーを代表とする重合並びに部分架橋させたいわゆる電解質系吸水性樹脂並びに親水性ポリウレタン、超高分子量ポリエチレンオキサイド等の非電解質系吸水性樹脂を充填した独立気泡あるいは連続気泡の水膨潤性ポリウレタン並びに非発泡性の水膨潤性ウレタンも使用できる。
・・・
又本発泡に使用する疎水性繊維とはポリエチレン繊維あるいはポリプロピレン繊維あるいはポリエチレンプロピレン繊維等を指すがこれに限定されず、疎水性繊維であれば何であっても良い。」(段落【0010】?【0014】)

オ 「特にブロー成形法あるいはインジェクション法にて製造された管内面止水材付き一体成形樹脂スパイラル管ジョイントは後工程で接着したものに比較して止水材が破損することが無いと共に後工程で止水材を貼ることができない小口径の樹脂スパイラル管ジョイントにも止水材を一体成形することができる。」(段落【0016】)

カ 「以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1はブロー成形法による成形実施例である。
図1は成形前のブロー成形機の樹脂押し出しダイ3、外金型1、止水材5を固定した内金型2の関係を示す。
外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意。されている。」(段落【0017】)

キ 「図2は外金型を閉じる直前の状態を示すものである。
即ちブロー成形機のダイ3の隙間よりパリソン4を押し出す。パリソン4の押し出しと止水材5を付けた内金型2の関係はパリソン4が先に押し出されてから内金型2を下部より上昇させても、あるいは内金型2を上昇させた後パリソン4を押し出してもどちらでも良い。」(段落【0018】)

ク 「図3は止水材6がセットされたコアー金型を挟んで外金型1を閉じた状態を示す。パリソン4は樹脂スパイラル管ジョイント6となるが、この時当然止水材5付き内金型2の直径よりパリソン4の直径の方が大きいため、パリソン4の一部は外金型1より外部に押し出されることになるが、この押し出された樹脂は再度使用することができる。」(段落【0019】)

ケ 「図3のブロー成形に於いて止水材5が連続気泡樹脂発泡体あるいは連続気泡ゴム発泡体あるいは不織布の場合には、これら連続気泡体の一部あるいは不織布にパリソン4が含浸するので止水材5は本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6と十分に接合される。
しかしながらパリソンの含浸量が多いと止水材の厚さが薄くなって止水力が低下することがあるが、この場合にはエアーノズル9より空気を送ってパリソンの含浸量を適当に調整することができる。
また成形された本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6を内金型より取り外す時にエアーノズル9よりエアーを出すととによって取り外しが容易になる。」(段落【0020】)

コ 「図3で成形された止水材を一体化した樹脂スパイラル管ジョイントは外金型を開放した後取り外されるが、成形サイクルを上げるため内金型は製品が付いた状態で取り外し、別の止水材付き内金型をセットして次の成形にすすむのが良い。製品の内金型からの取り出しは別工程で行うのが好ましい。」(段落【0021】)

サ 「本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6は止水材が破損したり、砂等が付着することが無く樹脂スパイラル管ジョイントの端部61が管内に突出していないため水などの流れの抵抗になることもなく又電線などの挿入の邪魔とならない。
更に本発明の方法で製造された管内面に止水材を一体成形した樹脂スパイラル管ジョイントは小口径の樹脂スパイラル管ジョイントでも可能であり、特に小口径パイプの接続による抵抗を大幅に低減することができる。」(段落【0022】)

シ 「【発明の効果】
本発明の管内面に止水材を一体成形させた樹脂管ジョイントは従来の管外面に止水材が一体化されているものと異なり管内面に止水材が一体化されているため止水材が剥離したり、異物が付着したり、汚れたりあるいは破損することがない。また接続パイプを樹脂管ジョイントに接続した後、水あるいは電線あるいは配管等を入れた場合に従来と異なり本発明の樹脂管ジョイントがメスジョイントとなっているためジョイントが水の流れや配管のあるいは電線等の挿入を妨害することがない。
また止水材をブロー成形法で一体成形することにより、手作業で管内面に止水材を後接着できなかった小口径の樹脂管ジョイントでも止水材を一体化することが可能となった。」(段落【0025】)

ス 図1には、外金型1が開放された状態が示されている。

セ 図2には、外金型1と内金型2との間に、ダイ3から押し出されたパリソン4が位置していることが示されている。

ソ 図3には、内金型2と外金型1とでパリソンを挟んで閉じることが示されている。

(2)甲第6号証(平成17年12月8日付け審判請求書)に記載された事項
3-1(2)に記載したとおり。

(3)甲第9号証(平成18年11月13日付け意見書)に記載された事項
3-1(3)に記載したとおり。

(4)甲第11号証(本件特許発明に係る製造方法を示す説明図)に記載された事項
図1?6には、本件特許発明に係る製造方法により、止水材5同士が折れて折り畳まれた箇所である折畳部Abが形成される説明をするため、折畳部Abが形成される過程における各状態が記載されている。

(5)甲第12号証(本件特許発明に係る製造方法によって製造された製品の特性を示す説明図)に記載された事項
図7?11には、本件特許発明に係る製造方法によって製造された樹脂スパイラル管ジョイントにおいて、その外側に一体化されている樹脂が割れて破損してしまうことを説明するため、樹脂スパイラル管ジョイントの外側に一体化されている樹脂が割れて破損してしまう過程における各状態が記載されている。

(6)甲第17号証(平成21年(ワ)第27223号損害賠償等請求事件及び平成22年(ワ)第18596号損害賠償等請求事件における平成22年11月29日付け求釈明の申立て)に記載された事項
「(2)求釈明事項(その2)
そこで、原告は、「巻き付けた」という用語を、いかなる意味で用いているのか、換言すれば、原告の言う「巻き付けた」とは、[1](審決注:丸付き数字の丸を[]に置き換える。)内金型の凸部の外側面の外周との関係で、止水材を隙間が生じないように巻くこと(この場合、止水材と凹部の外側面の間には隙間が存在する。)を意味しているのか、あるいは、[2]内金型の凹部の外側面との間にも隙間が生じないように、止水材を内金型の凹凸両部の外側面に沿わせて巻くことを意味しているのか、いずれであるのか明らかにされたい。」(3頁28行?4頁4行)

(7)甲第18号証(平成21年(ワ)第27223号損害賠償等請求事件及び平成22年(ワ)第18596号損害賠償等請求事件における平成22年12月10日付け原告準備書面(3))に記載された事項
「「巻き付けた」は、「まわりをぐるりと取り囲むように付けた」という一般的な意味で用いられており、被告がいう1と2のいずれかにその意味が限定され、特定されるものではない。」(4頁14?16行)

(8)甲第19号証(「巻き付けた」の意味についての説明図)に記載された事項
ア (a)の図には、内金型の凸部の外側面の外周との関係で、止水材を隙間が生じないように巻き、止水材と凹部の外側面の間には隙間が存在する状態が示されている。

イ (b)の図には、内金型の凹部の外側面との間にも隙間が生じないように、止水材を内金型の凹凸両部の外側面に沿わせて巻いた状態が示されている。

5-2 乙号証
(1)乙第4号証(被請求人による平成22年11月1日付け実験成績証明書)に記載された事項
「4.実験の目的
本件特許発明によって製造された樹脂スパイラル管ジョイントが、止水効果を奏し、止水材が膨潤した際の破損を回避できることを確認する。
5.実験内容
止水材5として、吸水性繊維不織布(東洋紡績株式会社製の商品名ランシール)を用意した。明細書の図1に示すブロー成形機の内金型2に、止水材5を全周に渡り巻き付けた。
次いで、内金型2を上昇させた後、ブロー成形機のダイ3の隙間よりパリソン4を押し出し、図2に示すように、外金型1と、止水材5を全周にわたり巻き付けた内金型2との間にパリソン4を位置させた。なお、パリソン4は、ポリエチレン樹脂から形成されたものである。
次いで、図3に示すように、外金型1を閉じ、内金型2と外金型1とでパリソン4を挟むことにより、パリソン4を樹脂スパイラル管ジョイント6に成形すると共に、止水材5を管内面に一体成形し、樹脂スパイラル管ジョイントを得た。得られた樹脂スパイラル管ジョイントの外径は41mm、内径は34mm、管の部分の厚さは2.5?3mmであった。
6.実験結果
得られた樹脂スパイラル管ジョイントの両端に、接続パイプとして外径が30?33mmの波付ポリエチレン管を接続した。樹脂スパイラル管ジョイントと波付ポリエチレン管との接続部分を水槽に沈め、5分間放置した。次いで、水槽から引き上げ、樹脂スパイラル管ジョイントと波付ポリエチレン管との接続部分の状態を確認したところ、接続部分からの水の侵入はなかった。また、樹脂スパイラル管ジョイントのポリエチレン樹脂部分に破損はなかった。」

(2)乙第5号証(検乙第1号証を正面から撮影した写真)から確認できる事項
「折畳部Ab」と評価できる部分が存在していない。

(3)乙第6号証(検乙第1号証を斜め上から撮影した写真)から確認できる事項
「折畳部Ab」と評価できる部分が存在していない。

(4)乙第7号証(検乙第1号証を上面から撮影した写真)から確認できる事項
「折畳部Ab」と評価できる部分が存在していない。

(5)検乙第1号証から確認できる事項
「折畳部Ab」と評価できる部分が存在していない。

5-3 請求人の主張
(1)甲1号証に記載の本件特許発明を、甲第6号証、甲第9号証において特許権者が主張している製造方法であると仮定すると、内金型と外金型とでパリソンを挟んで「締め付ける」際に、甲第11号証の図6に示すように、止水材5が外側に膨らんで、折り畳まれた状態でパリソン4に挟持された箇所(以下、「折畳部Ab」という)が形成される。
また、甲第12号証に示すように、止水材5が水によって膨潤すると、折り畳まれた止水材5が開かれるため、止水効果を発揮せず、かつ、樹脂スパイラル管ジョイントが破損する。
よって、本件特許発明では、甲第1号証の発明の詳細な説明に記載された効果を発揮する製品を製造することはできない。
従って、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないため、特許法第36条第4項の要件を満たさない。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の26頁17?28行、27頁14?26行及び27頁29行?28頁6行、並びに、請求人による陳述要領書の8頁9?21行を参照。)

(2)本件特許発明により、管内面に止水材が一体成形された樹脂スパイラル管ジョイントは製造される。
通常は止水材に折畳部Abを生じるが、条件によっては止水材に形成された部分が折畳部Abとは評価できない場合がある。
(これについて、第1回口頭審理調書の5-1を参照。)

(3)止水材と内金型の凹部の外周面との間には隙間があるから、止水材には原則的に折畳部Abが発生する。
(これについて、第1回口頭審理調書の7を参照。)

(4)管の径が大きいほど、折畳部Abが発生しやすくなる。
(これについて、第1回口頭審理調書の5-2-2を参照。)

(5)被請求人は、「巻き付けた」という用語に、少なくとも上述の甲第17号証の2(2)求釈明事項(その2)における[1]の態様(甲第19号証に示す図の(a)の態様)、及び、上述の甲第17号証の2(2)求釈明事項(その2)における[2]の態様(甲第19号証に示す図の(b)の態様)の両者が含まれることを認めている。
したがって、被請求人は、本件特許発明に係る製造方法において、止水材5の周長を内金型2の外周よりも余分に長くして止水材5を内金型2に巻き付ける場合、すなわち上記[1]の態様(甲19号証の(a)の態様)では、「折畳部Ab」が形成されることを認めているのである。
(これについて、請求人による陳述要領書の10頁4?7行及び10頁24?27行を参照。)

(6)本件特許発明は、製造方法に係る発明であるから、単に、製造条件の一部を示す書面(乙第4号証)と、製造物の一例(検乙第1号証及び乙第5号証ないし乙第7号証)を提示することによって特許法第36条第4項の無効理由の存在が否定されるものではない。
すなわち、本件特許発明は、製造方法に係る発明であるから、特許法第36条第4項の無効理由の存在を否定するためには、本件特許発明の技術的範囲に含まれる製造条件であって、且つ、本件特許発明に記載されている製造条件を限定する(又は、他の製造条件を付加する)ことのない製造条件の下で、その製造条件を明確にして、安定的に「折畳部Ab」が生じることなく、全ての径の樹脂スパイラル管ジョイントを製造することが可能であることを立証することを要する。
(これについて、請求人による陳述要領書の11頁10?19行を参照。)

(7)本件特許発明に係る明細書には、本件特許発明に係る製造条件に関する記載は皆無であるから、本件特許発明が実施可能要件を満たすことを示すには、本来的には、本件特許発明の技術的範囲に含まれる全ての条件で、当業者が反復実施してその目的とする技術効果を挙げることができることを立証する必要がある。
(これについて、請求人による陳述要領書の12頁17?20行を参照。)

(8)特許出願が実施可能要件を満たすものであることは、特許出願に際して出願人が立証すべきものであることは明らかであって、無効審判、無効審判の審決に対する取消訴訟等においても、特許権者がその主張立証責任を負担するものと解するのが相当である。
(これについて、請求人による陳述要領書の12頁7?10行を参照。)

(9)製造方法に関する発明であるため、製造物を出したからといって立証したことにはならない。
(これについて、第1回口頭審理調書の5-2-3を参照。)

5-4 被請求人の主張
(1)検乙第1号証及び乙第5号証ないし乙第7号証から明らかなように、本件特許発明に係る方法により製造された樹脂スパイラル管ジョイントには、請求人が主張する「折畳部Ab」が存在していないことは明白である。
(これについて、答弁書の26頁7?9行を参照。)

(2)本件特許発明に係る製造方法によって製造された樹脂スパイラル管ジョイントは、甲第1号証に記載の効果を奏し得るものである。また、甲第1号証における発明の詳細な説明には、本件の請求項1に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている。よって、本件特許発明は特許法第36条第4項に規定する要件を満たすものである。
(これについて、答弁書の26頁13?18行を参照。)

5-5 当審の判断
(1)明細書について
請求人は、甲第1号証(特許第3955913号公報)の記載(すなわち、特許明細書の記載)に基づき、特許法第36条第4項の規定に基づく無効理由を主張しているが、上述したとおり、本件訂正は認められ、本件特許に係る願書に添付した明細書は全文訂正明細書となったのであるから、甲第1号証の明細書についての記載に替え、全文訂正明細書の記載に基づき検討を行う。

(2)判断
本件特許発明は、「樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法」であって、「物を生産する方法の発明」であるから、本件特許発明が発明の詳細な説明に明確に説明されているか、また、本件特許発明により樹脂スパイラル管ジョイントを製造することができるかについて検討する。
ア まず、本件特許発明が発明の詳細な説明に明確に説明されているかについて検討を行う。
本件特許発明は、全文訂正明細書の請求項1に記載されているところ、「4 無効理由2(特許法第36条第6項第2号)について」において検討したとおり、不明確であるとする理由はなく、全文訂正明細書の請求項1の記載から明確に把握できるものである。
また、本件特許発明は、「3 無効理由1(特許法第36条第6項第1号)について」において検討したとおり、全文訂正明細書の発明の詳細な説明において、構成要件A、構成要件B、構成要件C及び構成要件Dの全てが記載されており、全文訂正明細書の発明の詳細な説明から読み取ることができる。
そして、全文訂正明細書の発明の詳細な説明における段落【0017】ないし【0021】及び図1ないし3において、本件特許発明の構成要件B及び構成要件Cについて具体的な製造方法の説明がなされ、段落【0010】ないし【0014】において、本件特許発明の構成要件Aに記載された材料が使用可能であることが示され、さらに、段落【0009】、段落【0016】、段落【0020】及び段落【0022】において、構成要件Dについて樹脂スパイラル管ジョイントが製造されることが示されている。
そうすると、本件特許発明は、発明の詳細な説明において明確に説明されているものと認められる。

イ 次に、本件特許発明により樹脂スパイラル管ジョイントを製造できるかについて検討を行う。
(ア)本件特許発明は、構成要件Aの止水材を用いて、構成要件B及び構成要件Cからなる工程により構成要件Dのように樹脂スパイラル管ジョイントを製造するものであるところ、構成要件B及び構成要件Cからなる工程により、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを内金型と外金型で挟むことから、管状体である樹脂スパイラル管ジョイントの本体が製造できることは明らかであり、また、その際、内金型に止水材が全周にわたり巻き付けられているのであるから、甲第6号証及び甲第9号証に記載された主張にもあるように、外金型を締め付ける際、パリソンは外金型で押圧されて止水材と一体化され、樹脂スパイラル管ジョイントの管内面に止水材が一体成形されることも明らかである。
よって、請求人及び被請求人が口頭審理において認めたように、本件特許発明により、管内面に止水材が一体成形された樹脂スパイラル管ジョイントは製造されるものと認められる。(第1回口頭審理調書の5-1を参照。)
そして、本件特許発明は、その構成上、内金型、外金型、及びブロー成形機のダイを備えた製造装置を構築し、止水材及びパリソンの材料を用意することにより、管内面に止水材が一体成形された樹脂スパイラル管ジョイントを反復して製造できることは明らかである。

(イ)次に、請求人は、甲第11号証、甲第12号証、甲第17ないし19号証を提出して、本件特許発明の実施にあたり、止水材に折畳部Abが形成され、止水効果を発揮せず、かつ、樹脂スパイラル管ジョイントが破損することから、本件特許発明では、全文訂正明細書の発明の詳細な説明に記載された効果を発揮する製品を製造することはできないとしているので、折畳部Abについて検討を行う。
なお、「折畳部Ab」については、審判請求書についての手続補正書の26頁27ないし28行において「図6に示すように、止水材5が外側に膨らんで、折り畳まれた状態でパリソン4に挟持された箇所(以下、「折畳部Ab」という)」と説明されているので、そのように解釈する。(ここで、「折り畳む」という用語が「折って重ね合わせ、小さくする。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」ことを意味することから、「折畳部Ab」は止水材5が折って重ね合わせられた状態にあるものといえる。)
そこで検討すると、本件特許発明の実施にあたり、甲第17号証の請求人による求釈明の申し立てに対する甲第18号証に記載された被請求人の釈明に基づき、甲第19号証の(a)の図に示すように、止水材と内金型の凹部の外周面との間には隙間があるものとされた場合に、仮に、請求人が主張するように、甲第11号証に示されるように止水材に折畳部Abが形成され、甲第12号証に示されるように樹脂スパイラル管ジョイントが破損することがあるとしても、それをもって、原則的に止水材に折畳部Abが形成されるとすることはできない。
また、管の径が大きいほど、折畳部Abが発生しやすくなる傾向があるとしても、それをもって管の径が大きいものにおいて止水材に折畳部Abが必ず形成されるものとは認めることができない。
さらに、請求人は、口頭審理において「条件によっては止水材に形成された部分が折畳部Abとは評価できない場合がある。」(第1回口頭審理調書の5-1を参照。)と主張しており、条件(例えば、パリソンの粘度、止水材の材質、内金型の凹部の幅や深さ、外金型の型締めの速度等についての条件)によっては、被請求人が提出した検乙第1号証及び乙第5ないし7に示されるように、止水材に折畳部Abと評価できる部分が存在せず、乙第4号証に示されるように、樹脂スパイラル管ジョイントに破損がないものを製造し得ると認められる。
そして、止水材に折畳部Abが形成された樹脂スパイラル管ジョイントは、止水材について止水効果が十分に得られず、また、破損のおそれがあるばかりか、止水材に形成された折畳部Abを覆うパリソンも外側に膨らむことで、接続パイプが接合される部分の一部が当該接続パイプの外周に対して隙間を生じたものとなり、水漏れを許容する構造となるため、樹脂スパイラル管ジョイントとして不良品といえるのであるから、むしろ通常は止水材に折畳部Abが形成されないようにするのが自然である。
そうすると、本件特許発明により、止水材に折畳部Abが形成されない樹脂スパイラル管ジョイントを製造できるものと認めざるをえない。

(ウ)ところで、全文訂正明細書には、製造条件については記載されていないところ、請求人は、「本件特許発明は、製造方法に係る発明であるから、特許法第36条第4項の無効理由の存在を否定するためには、本件特許発明の技術的範囲に含まれる製造条件であって、且つ、本件特許発明に記載されている製造条件を限定する(又は、他の製造条件を付加する)ことのない製造条件の下で、その製造条件を明確にして、安定的に「折畳部Ab」が生じることなく、全ての径の樹脂スパイラル管ジョイントを製造することが可能であることを立証することを要する。」(請求人による陳述要領書11頁14?19行)と主張し、さらに、「本件特許発明が実施可能要件を満たすことを示すには、本来的には、本件特許発明の技術的範囲に含まれる全ての条件で、当業者が反復実施してその目的とする技術効果を挙げることができることを立証する必要がある。」(請求人による陳述要領書の12頁18?20行)と主張する。
しかしながら、物の製造において、製造条件によって不良品が製造されることは当業者であれば当然に認識していることであり、不良品が製造されないように試行錯誤して製造条件を定めるのは通常の設計手法であるところ、そのような通常の設計手法がとられる場合には、あえて不良品が製造されない製造条件を示さなくとも、物の製造は可能であるから、製造条件を示す必要はない。
これを本件特許発明についてみると、止水材に折畳部Abが形成された樹脂スパイラル管ジョイントは、上述のとおり樹脂スパイラル管ジョイントとして不良品といえるのであるから、止水材に折畳部Abが形成されないように樹脂スパイラル管ジョイントの製造条件を定めることは通常の設計手法といえる。
よって、全文訂正明細書において止水材に折畳部Abが形成されない製造条件を記載する必要はないものと認められる。

(エ)そうすると、本件特許発明は、止水材に折畳部Abが形成されないように、管内面に止水材が一体成形された樹脂スパイラル管ジョイントを反復して製造することができ、それにより全文訂正明細書の段落【0016】、段落【0022】及び段落【0025】に記載された効果(特に、段落【0025】の「止水材をブロー成形法で一体成形することにより、手作業で管内面に止水材を後接着できなかった小口径の樹脂管ジョイントでも止水材を一体化することが可能となった。」との効果)を奏することができるものと認められるから、本件特許発明により樹脂スパイラル管ジョイントを製造できるものと認められる。

ウ よって、本件特許発明は、発明の詳細な説明において明確に説明されているものと認められ、また、本件特許発明により樹脂スパイラル管ジョイントを製造できるものと認められることから、本件出願は、全文訂正明細書の発明の詳細な説明の記載が、本件特許発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているというべきである。

5-6 まとめ
以上のとおり、本件出願は、全文訂正明細書の発明の詳細な説明の記載が、本件特許発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されており、特許法第36条第4項に規定する要件を満たすものである。
したがって、無効理由3は理由がない。


6 無効理由4(特許法第29条第1項柱書)について
6-1 甲号証
5-1に記載したとおり。

6-2 乙号証
5-2に記載したとおり。

6-3 請求人の主張
(1)甲1号証に記載の本件特許発明を、甲第6号証、甲第9号証において特許権者が主張している製造方法であると仮定すると、内金型と外金型とでパリソンを挟んで「締め付ける」際に、甲第11号証に示すように、止水材5が外側に膨らんで、折り畳まれた状態でパリソン4に挟持された箇所(以下、「折畳部Ab」という)が形成される。
また、甲第12号証に示すように、止水材5が水によって膨潤すると、折り畳まれた止水材5が開かれるため、止水効果を発揮せず、かつ、樹脂スパイラル管ジョイントが破損する。
よって、本件特許発明では、甲第1号証に記載の発明の詳細な説明に記載された効果を発揮する製品を製造することはできない。
従って、特許請求の範囲に記載の発明は発明として未完成であるため、特許法第29条第1項柱書の要件を満たさない。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の31頁10?22行、32頁8?20行及び32頁23行?33頁2行、並びに、請求人による陳述要領書の13頁2?13行を参照。)

(2)本件特許発明により、管内面に止水材が一体成形された樹脂スパイラル管ジョイントは製造される。
通常は止水材に折畳部Abを生じるが、条件によっては止水材に形成された部分が折畳部Abとは評価できない場合がある。
(これについて、第1回口頭審理調書の5-1を参照。)

(3)止水材と内金型の凹部の外周面との間には隙間があるから、止水材には原則的に折畳部Abが発生する。
(これについて、第1回口頭審理調書の7を参照。)

(4)管の径が大きいほど、折畳部Abが発生しやすくなる。
(これについて、第1回口頭審理調書の5-2-2を参照。)

(5)被請求人は、「巻き付けた」という用語に、少なくとも上述の甲第17号証の2(2)求釈明事項(その2)における[1]の態様(甲第19号証に示す図の(a)の態様)、及び、上述の甲第17号証の2(2)求釈明事項(その2)における[2]の態様(甲第19号証に示す図の(b)の態様)の両者が含まれることを認めている。
したがって、被請求人は、本件特許発明に係る製造方法において、止水材5の周長を内金型2の外周よりも余分に長くして止水材5を内金型2に巻き付ける場合、すなわち上記[1]の態様(甲19号証の(a)の態様)では、「折畳部Ab」が形成されることを認めているのである。
(これについて、請求人による陳述要領書の10頁4?7行、10頁24?27行及び13頁15?16行を参照。)

(6)本件特許発明は、製造方法に係る発明であるから、単に、製造条件の一部を示す書面(乙第4号証)と、製造物の一例(検乙第1号証及び乙第5号証ないし乙第7号証)を提示することによって特許法第29条第1項柱書の無効理由の存在が否定されるものではない。
すなわち、本件特許発明は、製造方法に係る発明であるから、特許法第29条第1項柱書の無効理由の存在を否定するためには、本件特許発明の技術的範囲に含まれる製造条件であって、且つ、本件特許発明に記載されている製造条件を限定する(又は、他の製造条件を付加する)ことのない製造条件の下で、その製造条件を明確にして、安定的に「折畳部Ab」が生じることなく、全ての径の樹脂スパイラル管ジョイントを製造することが可能であることを立証することを要する。
(これについて、請求人による陳述要領書の11頁10?19行及び13頁15?16行を参照。)

(7)本件特許発明に係る明細書には、本件特許発明に係る製造条件に関する記載は皆無であるから、本件特許発明が実施可能要件を満たすことを示すには、本来的には、本件特許発明の技術的範囲に含まれる全ての条件で、当業者が反復実施してその目的とする技術効果を挙げることができることを立証する必要がある。
(これについて、請求人による陳述要領書の12頁17?20行及び13頁15?16行を参照。)

(8)特許出願が実施可能要件を満たすものであることは、特許出願に際して出願人が立証すべきものであることは明らかであって、無効審判、無効審判の審決に対する取消訴訟等においても、特許権者がその主張立証責任を負担するものと解するのが相当である。
(これについて、請求人による陳述要領書の12頁7?10行及び13頁15?16行を参照。)

(9)製造方法に関する発明であるため、製造物を出したからといって立証したことにはならない。
(これについて、第1回口頭審理調書の5-2-3を参照。)

6-4 被請求人の主張
本件特許発明に係る製造方法によって製造された樹脂スパイラル管ジョイントは、甲第1号証に記載の効果を奏し得るものである。
よって、本件の請求項1に係る発明は、産業上利用することのできる発明に該当し、本件特許発明は特許法第29条第1項柱書の要件を満たすものである。
(これについて、答弁書の26頁21?24行を参照。)

6-5 当審の判断
(1)明細書について
請求人は、甲第1号証(特許第3955913号公報)の記載(すなわち、特許明細書の記載)に基づき、特許法第29条第1項柱書の規定に基づく無効理由を主張しているが、上述したとおり、本件訂正は認められ、本件特許に係る願書に添付した明細書は全文訂正明細書となったのであるから、甲第1号証の明細書についての記載に替え、全文訂正明細書の記載に基づき検討を行う。

(2)判断
請求人は、「5 無効理由3(特許法第36条第4項)について」における主張と適用条文が異なるのみで同内容の主張をしている。
そして、「5 無効理由3(特許法第36条第4項)について」において検討したとおり、本件特許発明は、止水材に折畳部Abが形成されないように、管内面に止水材が一体成形された樹脂スパイラル管ジョイントを反復して製造することができ、それにより全文訂正明細書の段落【0016】、段落【0022】及び段落【0025】に記載された効果(特に、段落【0025】の「止水材をブロー成形法で一体成形することにより、手作業で管内面に止水材を後接着できなかった小口径の樹脂管ジョイントでも止水材を一体化することが可能となった。」との効果)を奏することができるものと認められるのであるから、発明として未完成であるとは認められない。
また、本件特許発明は、全文訂正明細書の段落【0001】の「本発明は土木分野や建築分野あるいは電設分野等で使用する樹脂管ジョイントに関するものであり、更に詳しくはブロー成形時に止水材を一体成形してなる樹脂管ジョイント並びにリング状波管(俗称独立山管)ジョイントに関するものである。」との記載によれば、土木分野や建築分野あるいは電設分野等で使用される樹脂スパイラル管ジョイントを製造するものであるから、産業上利用することができるものと認められる。
そうすると、本件出願の全文訂正明細書の請求項1に記載された本件特許発明は、全文訂正明細書の発明の詳細な説明に記載された効果を奏する製品を反復して製造することが可能であり、特許法第2条第1項にいう「発明」といえ、また、産業上利用することができるものであるから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たすものである。

6-6 まとめ
以上のとおり、本件特許発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たすものであり、特許を受けることができるものである。
したがって、無効理由4は理由がない。


7 無効理由5(特許法第29条第1項第3号)について
7-1 甲号証
(1)甲第13号証(特開平1-159230号公報)に記載された事項
本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第13号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「合成樹脂製の中空なインサートを単層成形機の型開きした金型間に保持させ、前記単層成形機のダイより押出された、前記インサートとは異なる種類の合成樹脂から成るパリソンをインサートの外側又は内側に配置し、前記金型を型締めした後ブロー成形を行なうことにより、インサートと少なくとも1層のパリソンが一体化した中空成形物を型成形する単層成形機を用いた2層中空成形法。」(【特許請求の範囲】(1))

イ 「(従来の技術)
例えば自動車の通気部分に用いられるダクト部品などは端部に継手を有するので、その部分に或る程度のフレキシビリテイーを持たせた方が都合が良く、他の部分には所要の剛性を持たせなければならないという事情があるため、性質の異なる合成樹脂を多層成形することがある。またガソリンタンクのガスバリヤ性を得るためその性質を備えた合成樹脂を2層成形することが行なわれている。
そのような事情、或いは断熱、気密、耐圧等の条件を満足する目的で行なわれる従来の2層成形は複数のダイアンドノズルを有する2層中空成形機によって型成形されて来た。しかし、2層成形機は構造、取扱い共複雑で、しかも高価であるのみならず、成形品についても問題を残すものである。
その第1点は、2層成形の開始と終了の位置を正確にコントロールできない、前記ダクトについていえば剛性部分と柔軟部分の境い目にばらつきを生ずるということである。その第2点は各層のパリソンが溶融点まで加熱されているときにブロー成形が行なわれるため、所謂バリ取りその他不要部分の除去が不可能なほど両層が密着してしまうことである。これは技術的問題ではないが、経済的な損失を招くことになる。つまり、材料費が相対的に高価となる2層中空成形品の場合、成形工程で発生するロス部分の再利用性が減少し、それが2種以上に及びため製造原価が高くなるのである。
(技術的課題)
本発明の目的は前記の問題点等を解決し、2層成形機を用いることなく2層中空成形品の型成形が行なえ、また各層の開始、終了等の関係を正確に決定することができ、しかもパリ等の除去も比較的容易に行なうことができる単層成形機を用いた2層中空成形法及びその装置を提供することにある。」(2頁左上欄7行?同頁左下欄14行)

ウ 「前記目的を達する本発明は、合成樹脂製の中空なインサートを単層成形機の型開きした金型間に保持させ、前記単層成形機のダイより押出された、前記インサートとは異なる種類の合成樹脂から成るパリソンをインサートの外側又は内側に配置し、前記金型を型締めした後ブロー成形を行なうことにより、インサートと少なくとも1層のパリソンが一体化した中空成形物を型成形する単層成形機を用いた2層中空成形法、及び合成樹脂製の中空なインサートが固定されたホルダー、インサートの中空部とパリソンの方向を略一致させてホルダーを配置する金型と、金型間に前記インサートと異なる種類の合成樹脂より成るパリソンを押出すダイとを備えた単層成形機及び金型の型締状態で内芯部よりブロー成形を行なう吹込ノズルを具備した単層成形機を用いた2層中空成形装置である。」(2頁右下欄1行?3頁左上欄1行)

エ 「装置:第2図、第5図により成形装置について述べると、1は合成樹脂製の筒状インサートで、該インサート1は予め他のブロー成形機又は射出成形機等により所定形状に型成形されたもので通気ダクトの剛性向上のために設けられ、2はそのインサート1を上端嵌合保持部3に取付ける上下動可能なインサートホルダー、4は吹込ノズルで、インサートホルダー2の上端に開口し、下部の取付台に固定されたエアシリンダー5からパリソンに吹込まれる空気を吐出する(第5図参照)。1aはインサートト1に設けられた凹溝で、パリソンとの係合手段である。
単層成形機は、金型6、7と押出ダイ8とを備え、オリフィス9からインサートより大径のパリソン10を押出す。金型6、7の型面6a、7aはインサート1の外面との間にパリソン10を介在させるために必要な間隙を有するように、インサート1より僅か大形に設定される。」(3頁左上欄8行?同頁右上欄10行)

オ 「前記パリソン10はインサート1と異なる合成樹脂、具体的には後者が硬質である場合に前者は軟質であり、しかも相溶性がなく、成形後互いの独立性を保持するような合成樹脂を組合せるのが良い。」(3頁右上欄11行?同頁右上欄15行)

カ 「方法:2層中空成形法について説明すると、まずインサート1がインサートホルダー2にセットされる。次いでインサートホルダー2はエアシリンダー5の作動により金型間の所定位置に上昇し、ダイ8からパリソン10が押出されインサート1の外側を包むと(第2図)、金型6、7の型締めが行なわれ、ノズル4より吹込まれる空気によりブロー成形が実施される(第3図)。その後冷却工程ののち金型6、7が開き(第4図)、インサートホルダー2が下降し、製品Aの取出しと次のインサートのセットがなされ、以上の工程が繰返されるものである。」(3頁左下欄5行?同頁右下欄1行)

キ 「(発明の作用及び効果)
従って本発明の2層中空成形法によれば、インサート1、11はパリソン10、20の特定の位置に正確に固定されるから、従来の多層成形機による場合のように性質、材質の異なる部分の境い目の位置が製品毎にばらついたりすることがない。
インサートとパリソンとは相溶性がない等異なる合成樹脂を用いるため、また、予め成形されたインサートに対しパリソンを外から或いは内から一体に成形する構成であるため、内外2部分が分離不可能な程には密着せず、ばりの除去や不要な部分の分離等に適しておりロス部分の再利用が無理なく行なえる。」(4頁左上欄8行?同頁右上欄5行)

ク 第2図には、金型6、7と、筒状インサート1を上端嵌合保持部3に取付けたインサートホルダー2との間に、押出ダイ8から押出されたパリソンを位置させる態様が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、甲第13号証には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「筒状インサート1が、予め他のブロー成形機又は射出成形機等により所定形状に型成形されたものでダクトなどの中空成形物の剛性向上のために設けられる、合成樹脂製のものであり、金型6、7と、前記筒状インサート1を上端嵌合保持部3に取付けた上下動可能なインサートホルダー2との間に、単層成形機の押出ダイ8から押出したパリソン10を位置させ、前記金型6、7を型締めした後、前記インサートホルダー2の上端に開口した吹込ノズル4により吹込まれる空気によりブロー成形を行うことにより、前記筒状インサート1と前記パリソン10が一体化する、ダクトなどの中空成形物を型成形する単層成形機を用いた2層中空成形法。」

(2)甲第20号証(甲第13号証に記載の発明の説明図)に記載された事項
A1の部分で、金型6、7と、インサートホルダー2の保持部3との間に、インサート1とダイ8から押出されたパリソン10とを位置させる態様が示されている。

(3)甲第1号証(特許第3955913号公報)に記載された事項
ア 「【発明が解決しようとする課題】
本発明は前述の様な欠点にかんがみてなされたものであり前述の欠点を無くした樹脂管ジョイントの製造方法を提供するものである。即ち第1の目的は樹脂管ジョイントの輸送や取付時に止水材の破損を起こさず、しかも野外でのパイプ接続工事でも砂や砂利が付着しにくい止水材付き樹脂管ジョイントの製造方法を提供するものである。また第2の目的は接続パイプ内に樹脂管ジョイントが突出して水の流れや電線等の挿入を邪魔することのない樹脂管ジョイントの製造方法を提供するものである。」(段落【0004】)

イ 「特にブロー成形法あるいはインジェクション法にて製造された管内面止水材付き一体成形樹脂スパイラル管ジョイントは後工程で接着したものに比較して止水材が破損することが無いと共に後工程で止水材を貼ることができない小口径の樹脂スパイラル管ジョイントにも止水材を一体成形することができる。」(段落【0016】)

ウ 「本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6は止水材が破損したり、砂等が付着することが無く樹脂スパイラル管ジョイントの端部61が管内に突出していないため水などの流れの抵抗になることもなく又電線などの挿入の邪魔とならない。
更に本発明の方法で製造された管内面に止水材を一体成形した樹脂スパイラル管ジョイントは小口径の樹脂スパイラル管ジョイントでも可能であり、特に小口径パイプの接続による抵抗を大幅に低減することができる。」(段落【0022】)

エ 「【発明の効果】
本発明の管内面に止水材を一体成形させた樹脂管ジョイントは従来の管外面に止水材が一体化されているものと異なり管内面に止水材が一体化されているため止水材が剥離したり、異物が付着したり、汚れたりあるいは破損することがない。また接続パイプを樹脂管ジョイントに接続した後、水あるいは電線あるいは配管等を入れた場合に従来と異なり本発明の樹脂管ジョイントがメスジョイントとなっているためジョイントが水の流れや配管のあるいは電線等の挿入を妨害することがない。
また止水材をブロー成形法で一体成形することにより、手作業で管内面に止水材を後接着できなかった小口径の樹脂管ジョイントでも止水材を一体化することが可能となった。」(段落【0025】)

7-2 請求人の主張
(1)甲第13号証に記載されたインサート1は、本件特許発明の止水材に相当しないことを認める。
(これについて、第1回口頭審理調書6-1-1を参照。)

(2)本件特許発明に係る外金型1は、甲第13号証(特開平1-159230号公報)に係る金型6、7に該当する。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の36頁24?26行及び請求人による陳述要領書の16頁15?16行を参照。)

(3)甲第13号証に係る発明は、第1の部分A1(甲第20号証参照)に関しては、インサート1がインサートホルダー2によって支持された状態で、金型6、7を型締めすることによって、インサート1とパリソン10とが、インサートホルダー2と金型6、7との間で押圧されることによって一体成形されるため、明らかに、インサートホルダー2が、内金型として機能している。
インサートホルダー2の甲第20号証に示されたA1の部分は内金型といえる。
(これについて、請求人による陳述要領書の17頁8?12行及び第1回口頭審理調書6-1-2を参照。)

(4)金型6、7の内面の凹凸に対応して、インサートホルダー2の外周面にも凹凸があるはずである。
(これについて、第1回口頭審理調書6-1-2を参照。)

(5)本件特許発明に係る内金型2は、甲第13号証に係るインサートホルダー2に相当する。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の37頁2?4行及び請求人による陳述要領書の17頁19?20行を参照。)

(6)甲第13号証の第3ページ左下欄5行目-左下欄10行目には、「まず、インサート1がインサートホルダー2にセットされる。次いでインサートホルダー2はエアシリンダー5の作動により金型間の所定位置に上昇し、ダイ8からパリソン10が押出されインサート1の外側を包むと(第2図)、」
との記載があり、甲第13号証の第2図(甲第14号証に示す左下図)を参照すると、甲第13号証には、構成要件(B)の構成が全て開示されている。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の37頁23?28行及び請求人による陳述要領書13頁30行?14頁1行を参照。)

(7)インサートホルダー2について、金型6、7と共に、インサート1とパリソン10とを押圧することは、甲第13号証の第3頁左下欄10行(下から6行目)?同欄11行に「金型6、7の型締めが行なわれ」と記載されていることに基づく。
(これについて、第1回口頭審理調書6-1-2を参照。)

(8)甲第13号証の第3ページ左下欄10行目-左下欄11行目には、
「金型6、7の型締めが行なわれ、・・・」
との記載があり、甲第13号証の第3図(甲第14号証に示す右下図)を参照すると、甲第13号証には、特許権者主張の本件製造方法に係る構成要件(C)の構成が全て開示されている。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の38頁1?5行及び請求人による陳述要領書13頁30行?14頁1行を参照。)

(9)本件特許発明の構成要件(A)の止水材5が不織布などであるのに対して、甲第13号証に記載のインサート1が合成樹脂製である点で相違する。すなわち、樹脂成形品の素材において両者は相違する。また、本件特許発明の構成要件(D)の製品が樹脂スパイラル管ジョイント6であるのに対して、甲第13号証に記載の製品Aが2層中空成形品である点で相違する。すなわち、樹脂成形品の製品形状において両者は相違する。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の38頁7?12行を参照。)

(10)甲第13号証に対する本件特許発明のように、上記樹脂成形品の素材の相違及び製品形状の相違が、「製造方法」の相違として全く顕在化していない場合、換言すれば「製造方法」が全く同一である場合には、上記樹脂成形品の素材の相違及び製品形状の相違は、「製造方法」に係る発明の技術的範囲を規定するものではあるが、「製造方法」に係る発明の新規性の判断に影響するものではない。
したがって、上記樹脂成形品の素材の相違及び製品形状の相違は、「製造方法」に係る本件特許発明の新規性の判断に影響するものではない。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の38頁19?26行を参照。)

(11)本件特許発明は、出願前に頒布された刊行物である甲第13号証に記載された発明と実質的に同一であるため、甲第13号証に対して新規性を有さない。
したがって、本件特許発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する要件を満たしていない。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の38頁19?26行及び請求人による陳述要領書14頁2?3行を参照。)

7-3 被請求人の主張
甲第13号証には、本件特許発明における「止水材」、「内金型」及び「外金型と、止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、前記内金型と前記外金型とで前記パリソンを挟んで閉じることにより前記止水材を管内面に一体成形する」ことが記載されておらず、また、甲第13号証に記載の方法、すなわち、単層成形機の型開きした金型を型締めした後、パリソン10に空気を吹込むブロー成形では、止水材を管内面に一体化させることはできない。
よって、本件特許発明は、甲第13号証に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号の規定に該当しない。請求人の主張は失当である。
(これについて、答弁書の7頁23行?8頁2行及び被請求人による陳述要領書の18頁7?12行を参照。)

7-4 当審の判断
(1)明細書について
請求人は、甲第1号証(特許第3955913号公報)の記載(すなわち、特許明細書の記載)に基づき、特許法第29条第1項第3号の規定に基づく無効理由を主張しているが、上述したとおり、本件訂正は認められ、本件特許に係る願書に添付した明細書は全文訂正明細書となったのであるから、甲第1号証の明細書についての記載に替え、全文訂正明細書の記載に基づき検討を行う。

(2)対比
本件特許発明と引用発明とを、機能や作用を考慮して対比する。
・後者の「筒状インサート1」は、管であるダクトなどの中空成形物の内面に一体成形されることとなるから、前者の「止水材」とは、「管内面に一体成形される所定の部材」との概念で共通する。

・後者の「金型6、7」は、前者の「外金型」に相当する。
次に、後者の「筒状インサート1を上端嵌合保持部3に取り付けた上下動可能なインサートホルダー2」が前者の「内金型」に相当するかについて検討する。
甲第13号証の3頁左下欄10ないし11行には、請求人が口頭審理において述べたように「金型6、7の型締めが行なわれ、」との記載があるところ、この記載からは金型6、7を閉じることは理解できるが、それにより、筒状インサート1とパリソン10とが、インサートホルダー2と金型6、7との間で押圧されることまでは認めることができない。
また、甲第20号証に示されたA1の部分では、金型6、7と、インサートホルダー2の上端嵌合保持部3との間に、筒状インサート1と押出ダイ8から押出されたパリソン10とを位置させることが示されているところ、インサートホルダー2が内金型であるならば、A1の部分のみではなく、筒状インサート1の長さ全体に亘ってインサートホルダー2が設けられるはずであるが、筒状インサート1のA1の部分以外に対してはインサートホルダー2が設けられていない。
よって、後者の「インサートホルダー2」が前者の「内金型」に相当するとは認めることができない。
そして、後者の「インサートホルダー2」については、その上端嵌合保持部3に筒状インサート1を取り付けるのであるから、筒状インサート1を支持する「支持部材」であると認められ、前者の「内金型」についても、止水材を全周にわたり巻き付けていることから、止水材を支持する「支持部材」であるとも認められる。
そうすると、後者の「筒状インサート1を上端嵌合保持部3に取り付けた上下動可能なインサートホルダー2」と、前者の「止水材を全周にわたり巻き付けた内金型」とは、「管内面に一体成形される所定の部材を取り付けた支持部材」との概念で共通する。
次に、後者の「単層成形機の押出ダイ8から押出したパリソン10」は、前者の「ブロー成形機のダイより押し出したパリソン」に相当する。
よって、後者の「金型6、7と、筒状インサート1を上端嵌合保持部3に取り付けた上下動可能なインサートホルダー2との間に、単層成形機の押出ダイ8から押出したパリソン10を位置させ、」との態様と、前者の「外金型と、止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、」との態様とは、「外金型と、管内面に一体成形される所定の部材を取り付けた支持部材との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、」との概念で共通する。

・後者の「金型6、7を型締めした後、インサートホルダー2の上端に開口した吹込ノズル4により吹込まれる空気によりブロー成形を行う」態様と、前者の「内金型と外金型とでパリソンを挟んで閉じる」態様とは、「所定の成形を行う」との概念で共通する。
また、後者の「筒状インサート1とパリソン10が一体化する」態様は、これにより、筒状インサート1が管であるダクトなどの中空成形物の内面に一体成形されるのであるから、後者の上記態様と前者の「止水材を管内面に一体成形する」態様とは、「所定の部材を管内面に一体成形する」との概念で共通する。
よって、後者の「金型6、7を型締めした後、インサートホルダー2の上端に開口した吹込ノズル4により吹込まれる空気によりブロー成形を行うことにより、筒状インサート1とパリソン10が一体化する」態様と、前者の「内金型と外金型とでパリソンを挟んで閉じることにより止水材を管内面に一体成形する」態様とは、「所定の成形を行うことにより所定の部材を管内面に一体成形する」との概念で共通する。

・後者の「ダクトなどの中空成形物を型成形する単層成形機を用いた2層中空成形法」は、樹脂であるパリソンを用いて管であるダクトなどの中空成形物を型成形するものであるから、後者の上記構成と前者の「樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法」とは、「樹脂管の製造方法」との概念で共通する。

したがって両者は、
「外金型と、管内面に一体成形される所定の部材を取り付けた支持部材との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、所定の成形を行うことにより前記所定の部材を管内面に一体成形する樹脂管の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
管内面に一体成形される所定の部材に関し、本件特許発明では、連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体、水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体、連続気泡ポリオレフィン発泡体、連続気泡ゴム発泡体、水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体、吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布の何れかである、止水材であるのに対して、引用発明では、予め他のブロー成形機又は射出成形機等により所定形状に型成形されたものでダクトなどの中空成形物の剛性向上のために設けられる、合成樹脂製の筒状インサートである点。
[相違点2]
管内面に一体成形される所定の部材を取り付けた支持部材に関し、本件特許発明では、止水材を全周にわたり巻き付けた内金型であるのに対して、引用発明では、筒状インサートを上端嵌合保持部に取付けた上下動可能なインサートホルダーである点。
[相違点3]
所定の成形を行うことに関し、本件特許発明では、内金型と外金型とでパリソンを挟んで閉じることであるのに対して、引用発明では、金型を型締めした後、インサートホルダーの上端に開口した吹込ノズルにより吹込まれる空気によりブロー成形を行うことである点。
[相違点4]
樹脂管の製造方法に関し、本件特許発明では、製造対象物が樹脂スパイラル管ジョイントであるのに対して、引用発明では、製造対象物がダクトなどの中空成形物である点。

(3)判断
上記相違点について以下検討する。
ア 相違点1及び相違点4について
本件特許発明と引用発明とは上記相違点1及び4において相違するから、引用発明が本件特許発明の構成要件A及び構成要件Dを備えていないことは明らかである。
なお、請求人は、本件特許発明の構成要件A及び構成要件Dについて、引用発明との相違を認めて、相違は「製造方法」に係る本件特許発明の新規性の判断に影響するものではないとしているが(審判請求書についての手続補正書の38頁7?12行及び38頁19?26行を参照。)、本件特許発明の構成要件A及び構成要件Dは、全文訂正明細書の段落【0004】に記載された「即ち第1の目的は樹脂管ジョイントの輸送や取付時に止水材の破損を起こさず、しかも野外でのパイプ接続工事でも砂や砂利が付着しにくい止水材付き樹脂管ジョイントの製造方法を提供するものである。また第2の目的は接続パイプ内に樹脂管ジョイントが突出して水の流れや電線等の挿入を邪魔することのない樹脂管ジョイントの製造方法を提供するものである。」との課題を解決し、また、段落【0016】、段落【0022】及び段落【0025】に記載された効果(特に、段落【0025】に記載された「本発明の管内面に止水材を一体成形させた樹脂管ジョイントは従来の管外面に止水材が一体化されているものと異なり管内面に止水材が一体化されているため止水材が剥離したり、異物が付着したり、汚れたりあるいは破損することがない。また接続パイプを樹脂管ジョイントに接続した後、水あるいは電線あるいは配管等を入れた場合に従来と異なり本発明の樹脂管ジョイントがメスジョイントとなっているためジョイントが水の流れや配管のあるいは電線等の挿入を妨害することがない。また止水材をブロー成形法で一体成形することにより、手作業で管内面に止水材を後接着できなかった小口径の樹脂管ジョイントでも止水材を一体化することが可能となった。」との効果を奏するのに必要な事項と認められる。
よって、本件特許発明と引用発明との相違点1及び4は本質的な相違である。

イ 相違点2及び相違点3について
本件特許発明と引用発明とは上記相違点2及び相違点3において相違するところ、引用発明は、一般的なブロー成形を行うことにより筒状インサート1とパリソンを一体化するものであって、本件特許発明の構成要件B及び構成要件Cを備えていないことは明らかである。
そして、本件特許発明の構成要件B及び構成要件Cは、全文訂正明細書の段落【0016】、段落【0022】及び段落【0025】に記載された効果(特に、段落【0025】に記載された「また止水材をブロー成形法で一体成形することにより、手作業で管内面に止水材を後接着できなかった小口径の樹脂管ジョイントでも止水材を一体化することが可能となった。」との効果)を奏するのに必要な事項と認められる。
よって、本件特許発明と引用発明との相違点2及び3は本質的な相違である。

ウ そうすると、本件特許発明は、引用発明(甲第13号証に記載された発明)と同一であるとはいえない。

7-5 まとめ
以上のとおり、本件特許発明は、本件出願前に日本国内において頒布された甲第13号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当しない。
したがって、無効理由5は理由がない。


8 無効理由6(特許法第29条第2項)について
8-1 甲号証
(1)甲第13号証(特開平1-159230号公報)に記載された事項
本件出願の出願日前に発行された刊行物である甲第13号証には、7-1(1)に記載したように、次の事項からなる引用発明が記載されている。
「筒状インサート1が、予め他のブロー成形機又は射出成形機等により所定形状に型成形されたものでダクトなどの中空成形物の剛性向上のために設けられる、合成樹脂製のものであり、金型6、7と、前記筒状インサート1を上端嵌合保持部3に取付けた上下動可能なインサートホルダー2との間に、単層成形機の押出ダイ8から押出したパリソン10を位置させ、前記金型6、7を型締めした後、前記インサートホルダー2の上端に開口した吹込ノズル4により吹込まれる空気によりブロー成形を行うことにより、前記筒状インサート1と前記パリソン10が一体化する、ダクトなどの中空成形物を型成形する単層成形機を用いた2層中空成形法。」

(2)甲第15号証(実願平2-88087号(実開平4-44589号)のマイクロフィルム)に記載された事項
甲第15号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「本考案は、各種管端の接続、例えば螺旋波形管同士、直管同士或いは螺旋波形管と直管等々の接続において使用される管継手に関し、特に水密封止体が付設された管継手に関する。」(2頁4?7行)

イ 「即ち、本考案の日的は、水密封止体を接着剤を用いて管継手に貼着する手作業を省略すると共に、場合によっては時間と人手を要する適正な接着剤の選定操作も不要とする水密封止体付き管継手を提供することにある。
・・・
尚、本考案は従来水密封止が特に難しかった螺旋波形管の接続に使用する管継手について、極めて優れた特性のものを提供することも重要な目的である。」(4頁10行?5頁3行)

ウ 「上記水密封止用繊維シートの片面表層部を上記短管部へ融着させる手段としては、例えば射出成形法がある。また、短管部の外表面に形成する場合にはブロー成形法を用いることも可能である。例えば、射出成型法を用いる場合にあっては、金型の芯材上に繊維シートを予め巻き付け、または金型の内表面に繊維シートを仮貼着した後、短管部のインゼクシヨン成型を行う。ブロー成型法による場合は、目的とする形状例えば螺旋波形を有する成型用型に予め円筒状に形成された前記繊維シートを内嵌した後、空気を送り込んで該繊維シートを該成型用型の内周面に当て付け、その中に短管部形成用素材を封入し、その内部に空気を圧挿して該短管部形成用素材を膨張加圧する。
この操作により、短管部素材は、該成型用型の形状例えば螺旋波形に成形されると同時に、その外周面部に、該繊維シートの片面表層部の繊維を埋め込んだ状態で融着する。更に、複数の短管部が中央筒を介して一体的に繋ながっている管継手を一工程で成型することもでき、或いは同形状の短管一個毎または複数個分の長さで成型したのち夫々を、要すれば裁断の後、該中央筒に接合して一体化することもできる。
上記短管部を構成する熱可塑性材料の例としては、硬質ポリ塩化ビニール、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。」(5頁19行?7頁5行)

エ 「管継手(A)は、第2図及び第3図に示した如く接続対象管端に螺合されるべき硬質ポリ塩化ビニールから成る2種の短管部(1),(2)の夫々の内周面(1a),(2a)を備えていて、一方の短管部(1)は、断面が台形状の螺旋凹凸条を備えた形状であり、他方の短管部(2)は断面が半円形の螺旋凹凸条を備えた形状である。」(10頁3?10行)

オ 「本考案管継手における重要な構成要件は、本例ではポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)長繊維からなる第1図(ロ)の不織布が前記の水密封止用繊維シート(8)として、上記両短管部(1),(2)の内周面(1a),(2a)へ射出成形手段により融着されている点にある。該不織布からなる該繊維シート(8)は、その繊維(9)の表面及び繊維間に吸水膨張性の樹脂素材の粉末(10)を保持していて、例えば第1図(ロ)のような長方形のシートを矢印(Y)、(Y’)のように巻いて鎖線(S)の如き円筒状にして、成形金型の芯金の周面に仮付けしておく。
次いで該短管部(1)を形成するための円筒状空洞を形成する半割り金型(図示せず)を用いてその空洞内に成形用樹脂を射出し、短管部(1)の成形と同時に短管部(1)の内周面において繊維と融着接合させる。」(11頁2?18行)

カ 「このように水密封止用繊維シート(8)を短管部(1)、(2)の外周面に形成する場合には、射出成形手段に限らず、ブロー成形手段によって短管部(1)、(2)を成形することも可能である。」(14頁18行?15頁2行)

キ 「本例では、短管部(1),(2)間で材質硬度を相異させてあるため、この場合には熱硬化性材料によるモールド成形、一例としては生ゴムテープをマンドレルに巻き両短管部の加硫量を変え加熱加圧下に成型するといった方法をとることができる。
従って、この場合の水密封止用の繊維シート(8)は生ゴム巻回前にマンドレルへ巻き付けておき、該マンドレルも左右2分割方式のものが好ましい。 第8図の例では短管部(1),(2)を別途作製したのちに接着剤(A)により接合一体化したものである。故に、一方の短管部(1)は射出成形で他方の短管部(2)は加硫成形で、夫々最適条件のもとに製作できるメリットがある。」(15頁19行?16頁8行)

ク 「<考案の効果>
以上の記載から既に明らかなように、本考案の管継手は旧来法を改善した前記既出願の管継手とは、上記水密封止用繊維シート材を使用する点において同様であるが、該繊維シート材を上記短管部の周面に接着剤を用いで貼着するものではなく、短管部を成型するに当たって、短管部の成型と同時に短菅部形成用の村料の一部を繊維シート材の繊維内に入り込ませて両者を一体化するようにしたものであるから、両者を確実に一体化させることが容易にでき、満足できる貼着カを有する接着剤の選択と該接着剤による貼着操作とを要することなく、能率的に製造することができ、しかも繊維シートと短管部との固着をより一層強固確実に一体的に取什けることができ、製品の信頼性向上に寄与するばかりでなく、製造コストの低減並びに管接続工事費の節減を計ることができるという効果を有する。」(17頁8行?18頁6行)

ケ 第1図(イ)及び第2図には、管継手Aにおいて、水密封止用繊維シート8を短管部(1)、(2)の内周面(1a)、(2a)に設けたことが示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、甲第15号証には、次の事項からなる発明が記載されていると認めることができる。
「水密封止用繊維シート(8)が、繊維(9)の表面及び繊維間に吸水膨張性の樹脂素材の粉末(10)を保持する不織布からなる繊維シートであり、前記水密封止用繊維シートを短管部(1)、(2)の内周面(1a)、(2a)へ融着させた、樹脂からなる螺旋波形管の接続に使用する管継手。」

(3)甲第20号証(甲第13号証に記載の発明の説明図)に記載された事項
7-1(2)に記載したとおり。

(4)甲第1号証(特許第3955913号公報)に記載された事項
7-1(3)に記載したとおり。

8-2 請求人の主張
(1)甲第13号証に記載されたインサート1は、本件特許発明の止水材に相当しないことを認める。
(これについて、第1回口頭審理調書6-1-1を参照。)

(2)本件特許発明に係る外金型1は、甲第13号証(特開平1-159230号公報)に係る金型6、7に該当する。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の42頁26?28行を参照。)

(3)インサートホルダー2の甲第20号証に示されたA1の部分は内金型といえる。
(これについて、第1回口頭審理調書6-1-2を参照。)

(4)金型6、7の内面の凹凸に対応して、インサートホルダー2の外周面にも凹凸があるはずである。
(これについて、第1回口頭審理調書6-1-2を参照。)

(5)特許権者主張の本件製造方法に係る内金型2は、甲第13号証(特開平1-159230号公報)に係るインサートホルダー2に相当する。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の43頁5?7行を参照。)

(6)甲第13号証の第3ページ左下欄5行目-左下欄10行目には、「まず、インサート1がインサートホルダー2にセットされる。次いでインサートホルダー2はエアシリンダー5の作動により金型間の所定位置に上昇し、ダイ8からパリソン10が押出されインサート1の外側を包むと(第2図)、」
との記載があり、甲第13号証の第2図(甲第14号証に示す左下図)を参照すると、甲第13号証には、本件特許発明の構成要件(B)の構成が全て開示されている。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の44頁13?19行及び請求人による陳述要領書17頁24行?29行を参照。)

(7)インサートホルダー2について、金型6、7と共に、インサート1とパリソン10とを押圧することは、甲第13号証の第3頁左下欄10行(下から6行目)?同欄11行に「金型6、7の型締めが行なわれ」と記載されていることに基づく。
(これについて、第1回口頭審理調書6-1-2を参照。)

(8)甲第13号証の第3ページ左下欄10行目-左下欄11行目には、
「金型6、7の型締めが行なわれ、・・・」
との記載があり、甲第13号証の第3図(甲第14号証に示す右下図)を参照すると、甲第13号証には、特許権者主張の本件製造方法に係る構成要件(C)の構成が全て開示されている。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の44頁20?24行及び請求人による陳述要領書17頁24行?29行を参照。)

(9)本件特許発明の構成要件(A)の止水材5が不織布などであるのに対して、甲第13号証に記載のインサート1が合成樹脂製である点で相違する。すなわち、樹脂成形品の素材において両者は相違する。また、本件特許発明の構成要件(D)の製品が樹脂スパイラル管ジョイント6であるのに対して、甲第13号証に記載の製品Aが2層中空成形品である点で相違する。すなわち、樹脂成形品の製品形状において両者は相違する。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の44頁26行?45頁2行を参照。)

(10)甲第13号証を本件特許発明の進歩性を判断する主引例として、両者の一致点、相違点を判断すると、本件特許発明と、主引例である甲第13号証とは、構成要件Bおよび構成要件Cにおいて一致し、構成要件Aおよび構成要件Dにおいて相違している。
(これについて、請求人による陳述要領書19頁20行?23行を参照。)

(11)甲第15号証の第11ページ2行目-7行目には、
「本考案管継手における重要な構成要件は、本例ではポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)長繊維からなる第1図(ロ)の不織布が前記の水密封止用繊維シート(8)として、上記両短管部(1),(2)の内周面(1a),(2a)へ射出成形手段により融着されている点にある。」
と記載され、甲第15号証には、本件特許発明の構成要件(A)の構成が全て開示されている。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の45頁7?13行及び請求人による陳述要領書17頁30行?18頁5行を参照。)

(12)甲第15号証の第10ページ3行目-10行目には、
「管継手(A)は、第2図及び第3図に示した如く接続対象管端に螺合されるべき硬質ポリ塩化ビニールから成る2種の短管部(1),(2)の夫々の内周面(1a),(2a)を備えていて、一方の短管部(1)は、断面が台形状の螺旋凹凸条を備えた形状であり、他方の短管部(2)は断面が半円形の螺旋凹凸条を備えた形状である。」
と記載され、甲第15号証には、本件特許発明の構成要件(D)の構成が全て開示されている。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の45頁15?20行及び請求人による陳述要領書17頁30行?18頁5行を参照。)

(13)甲第13号証には、本件特許発明の構成要件(B)及び構成要件(C)が全て開示されている。また、甲第15号証には、本件特許発明の構成要件(A)及び構成要件(D)が全て開示されている。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の45頁23?26行及び請求人による陳述要領書17頁24行?18頁5行を参照。)

(14)答弁書の10頁10?14行及び同書10頁28?29行における主張については、阻害要因とならない。
(これについて、第1回口頭審理調書6-3-1を参照。)

(15)同じ筒状の2層構造であるから、組合せは容易である。
(これについて、第1回口頭審理調書6-3-2を参照。)

(16)本件特許発明は製造方法であるから、製品の相違は阻害要因ではない。
(これについて、第1回口頭審理調書6-3-2を参照。)

(17)甲第13号証及び甲第15号証は、いずれも樹脂成形に関する発明が記載された公開公報であって、両者は技術分野が共通するから、当業者が両者を組み合わせる動機付けが存在する。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の45頁27?29行及び請求人による陳述要領書18頁6?7行を参照。)

(18)本件特許発明は、出願前に頒布された刊行物である甲第13号証及び甲第15号証にそれぞれ記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件特許発明は、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない。
(これについて、審判請求書についての手続補正書の46頁5?9行及び請求人による陳述要領書18頁8?10行を参照。)

8-3 被請求人の主張
本件特許発明のように「止水材が、連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体、水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体、連続気泡ポリオレフィン発泡体、連続気泡ゴム発泡体、水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体、吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布の何れかであり」、かつ「外金型と、前記止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、前記内金型と前記外金型とで前記パリソンを挟んで閉じることにより前記止水材を管内面に一体成形する」ことは、当業者が甲第13号証並びに甲第15号証の発明に基づいて容易に想到し得るものではない。
よって、本件特許発明が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとした請求人の主張は失当である。
(これについて、被請求人による答弁書の11頁1?12行を参照。)

8-4 当審の判断
(1)明細書について
請求人は、甲第1号証(特許第3955913号公報)の記載(すなわち、特許明細書の記載)に基づき、特許法第29条第2項の規定に基づく無効理由を主張しているが、上述したとおり、本件訂正は認められ、本件特許に係る願書に添付した明細書は全文訂正明細書となったのであるから、甲第1号証の明細書についての記載に替え、全文訂正明細書の記載に基づき検討を行う。

(2)引用発明について
当審において、平成23年1月18日付け審理事項通知書の5頁38ないし39行に記載されているように「甲第13号証と甲第15号証の何れに記載された発明を主として引用発明とするのか。(甲第13号証と甲第15号証の何れを主引用例とするのか。)」との質問をしたところ、請求人による陳述要領書の19頁20ないし23行において、「すなわち、甲第13号証を本件特許発明の進歩性を判断する主引例として、両者の一致点、相違点を判断すると、本件特許発明と、主引例である甲第13号証とは、構成要件Bおよび構成要件Cにおいて一致し、構成要件Aおよび構成要件Dにおいて相違している。」としているので、甲第13号証に記載された引用発明に基づき、対比及び判断を行う。

(3)対比
本件特許発明と引用発明とを対比した場合の一致点・相違点は、7-4(2)のとおりである。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。
ア 相違点1及び4について
(ア)甲第15号証には、「本考案管継手における重要な構成要件は、本例ではポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)長繊維からなる第1図(ロ)の不織布が前記の水密封止用繊維シート(8)として、上記両短管部(1),(2)の内周面(1a),(2a)へ射出成形手段により融着されている点にある。該不織布からなる該繊維シート(8)は、その繊維(9)の表面及び繊維間に吸水膨張性の樹脂素材の粉末(10)を保持していて、例えば第1図(ロ)のような長方形のシートを矢印(Y)、(Y’)のように巻いて鎖線(S)の如き円筒状にして、成形金型の芯金の周面に仮付けしておく。 次いで該短管部(1)を形成するための円筒状空洞を形成する半割り金型(図示せず)を用いてその空洞内に成形用樹脂を射出し、短管部(1)の成形と同時に短管部(1)の内周面において繊維と融着接合させる。」(11頁2?18行)と記載されており、また、甲第15号証の第1図(イ)及び第2図には、管継手Aにおいて、水密封止用繊維シート(8)を短管部(1)、(2)の内周面(1a)、(2a)に設けたことが示されている。
これら記載によると、甲第15号証には、水密封止用繊維シート(8)が、繊維(9)の表面及び繊維間に吸水膨張性の樹脂素材の粉末(10)を保持する不織布からなる繊維シートであり、前記水密封止用繊維シートを短管部(1)、(2)の内周面(1a)、(2a)へ融着させることが記載されているものと認められる。

(イ)また、甲第15号証には、「本考案は、各種管端の接続、例えば螺旋波形管同士、直管同士或いは螺旋波形管と直管等々の接続において使用される管継手に関し、特に水密封止体が付設された管継手に関する。」(2頁3?6行)との記載、「尚、本考案は従来水密封止が特に難しかった螺旋波形管の接続に使用する管継手について、極めて優れた特性のものを提供することも重要な目的である。」(4頁20行?5頁3行)との記載、「この操作により、短管部素材は、該成型用型の形状例えば螺旋波形に成形されると同時に、その外周面部に、該繊維シートの片面表層部の繊維を埋め込んだ状態で融着する。更に、複数の短管部が中央筒を介して一体的に繋ながっている管継手を一工程で成型することもでき、或いは同形状の短管一個毎または複数個分の長さで成型したのち夫々を、要すれば裁断の後、該中央筒に接合して一体化することもできる。 上記短管部を構成する熱可塑性材料の例としては、硬質ポリ塩化ビニール、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。」(5頁19行?7頁5行)との記載、及び、「管継手(A)は、第2図及び第3図に示した如く接続対象管端に螺合されるべき硬質ポリ塩化ビニールから成る2種の短管部(1),(2)の夫々の内周面(1a),(2a)を備えていて、一方の短管部(1)は、断面が台形状の螺旋凹凸条を備えた形状であり、他方の短管部(2)は断面が半円形の螺旋凹凸条を備えた形状である。」(10頁3?10行)との記載がされている。
これら記載によると、甲第15号証には、樹脂からなる螺旋波形管の接続に使用する管継手が記載されているものと認められる。

(ウ)そうすると、甲第15号証には、「水密封止用繊維シート(8)が、繊維(9)の表面及び繊維間に吸水膨張性の樹脂素材の粉末(10)を保持する不織布からなる繊維シートであり、前記水密封止用繊維シートを短管部(1)、(2)の内周面(1a)、(2a)へ融着させた、樹脂からなる螺旋波形管の接続に使用する管継手。」が記載されているものと認められる。
ここで、「繊維(9)の表面及び繊維間に吸水膨張性の樹脂素材の粉末(10)を保持する不織布」は本件特許発明の「吸水性繊維不織布」に相当し、「水密防止用繊維シート」は本件特許発明の「止水材」に相当するものと認められ、甲第15号証には、上記相違点1に係る本件特許発明の構成に相当する構成が記載されているものと認められる。
また、「樹脂からなる螺旋波形管の接続に使用する管継手」は本件特許発明の「樹脂スパイラル管ジョイント」に相当するものと認められ、甲第15号証には、上記相違点4に係る本件特許発明の構成に相当する構成が記載されているものと認められる。

(エ)そこで、引用発明において、甲第15号証に記載された「樹脂からなる螺旋波形管の接続に使用する管継手」を製造するように構成し得るか否かについて検討を行う。
甲第13号証に記載された引用発明は、「ダクトなどの中空成形物を型成形する単層成形機を用いた2層中空成形法」であるところ、製造対象物であるダクトなどの中空成形物としては、筒状の2層構造であれば、特定の用途に限られるものではないものと認められ、一方、甲第15号証に記載された「樹脂からなる螺旋波形管の接続に使用する管継手」においても、短管部の内周面に水密防止用繊維シートが設けられた筒状の2層構造を有するものであるから、引用発明において、甲第15号証に記載された「樹脂からなる螺旋波形管の接続に使用する管継手」を製造するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得ることと認められる。
そして、甲第15号証における「ブロー成型法による場合は、目的とする形状例えば螺旋波形を有する成型用型に予め円筒状に形成された前記繊維シートを内嵌した後、空気を送り込んで該繊維シートを該成型用型の内周面に当て付け、その中に短管部形成用素材を封入し、その内部に空気を圧挿して該短管部形成用素材を膨張加圧する。」(6頁7?13行)との記載によれば、水密封止用繊維シート(止水材)は、引用発明の筒状インサート1と置換した場合、予め円筒状に形成されるため、引用発明の筒状インサート1と同様に支持部材であるインサートホルダー2に直立して支持することが可能であり、また、空気を送り込むことにより金型6、7側に当て付けることがことが可能であるから、水密封止用繊維シート(止水材)を筒状インサート1と置換することが技術的に困難であるとは認められない。

(オ)そうすると、引用発明において、管内面に一体形成される部材である「筒状インサート1」を「吸水性繊維不織布である止水材」とし、上記相違点1に係る本件特許発明の構成とすること、及び、製造対象物である「ダクトなどの中空生成物」を「樹脂からなる螺旋波形管の接続に使用する管継手」とし、上記相違点4に係る本件特許発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものと認められる。

イ 相違点2及び相違点3について
(ア)甲第15号証には、管継手の製造方法に関して、次の記載がされている。
・「上記水密封止用繊維シートの片面表層部を上記短管部へ融着させる手段としては、例えば射出成形法がある。また、短管部の外表面に形成する場合にはブロー成形法を用いることも可能である。例えば、射出成型法を用いる場合にあっては、金型の芯材上に繊維シートを予め巻き付け、または金型の内表面に繊維シートを仮貼着した後、短管部のインゼクシヨン成型を行う。ブロー成型法による場合は、目的とする形状例えば螺旋波形を有する成型用型に予め円筒状に形成された前記繊維シートを内嵌した後、空気を送り込んで該繊維シートを該成型用型の内周面に当て付け、その中に短管部形成用素材を封入し、その内部に空気を圧挿して該短管部形成用素材を膨張加圧する。
この操作により、短管部素材は、該成型用型の形状例えば螺旋波形に成形されると同時に、その外周面部に、該繊維シートの片面表層部の繊維を埋め込んだ状態で融着する。更に、複数の短管部が中央筒を介して一体的に繋ながっている管継手を一工程で成型することもでき、或いは同形状の短管一個毎または複数個分の長さで成型したのち夫々を、要すれば裁断の後、該中央筒に接合して一体化することもできる。
上記短管部を構成する熱可塑性材料の例としては、硬質ポリ塩化ビニール、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。」(5頁19行?7頁5行)
・「本考案管継手における重要な構成要件は、本例ではポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)長繊維からなる第1図(ロ)の不織布が前記の水密封止用繊維シート(8)として、上記両短管部(1),(2)の内周面(1a),(2a)へ射出成形手段により融着されている点にある。該不織布からなる該繊維シート(8)は、その繊維(9)の表面及び繊維間に吸水膨張性の樹脂素材の粉末(10)を保持していて、例えば第1図(ロ)のような長方形のシートを矢印(Y)、(Y’)のように巻いて鎖線(S)の如き円筒状にして、成形金型の芯金の周面に仮付けしておく。 次いで該短管部(1)を形成するための円筒状空洞を形成する半割り金型(図示せず)を用いてその空洞内に成形用樹脂を射出し、短管部(1)の成形と同時に短管部(1)の内周面において繊維と融着接合させる。」(11頁2?18行)
・「このように水密封止用繊維シート(8)を短管部(1)、(2)の外周面に形成する場合には、射出成形手段に限らず、ブロー成形手段によって短管部(1)、(2)を成形することも可能である。」(14頁18行?15頁2行)
・「本例では、短管部(1),(2)間で材質硬度を相異させてあるため、この場合には熱硬化性材料によるモールド成形、一例としては生ゴムテープをマンドレルに巻き両短管部の加硫量を変え加熱加圧下に成型するといった方法をとることができる。
従って、この場合の水密封止用の繊維シート(8)は生ゴム巻回前にマンドレルへ巻き付けておき、該マンドレルも左右2分割方式のものが好ましい。 第8図の例では短管部(1),(2)を別途作製したのちに接着剤(A)により接合一体化したものである。故に、一方の短管部(1)は射出成形で他方の短管部(2)は加硫成形で、夫々最適条件のもとに製作できるメリットがある。」(15頁19行?16頁8行)

(イ)これら記載によると、甲第15号証には、管継手(本件特許発明の「樹脂スパイラル管ジョイント」に相当。以下、括弧内は同様。)の内周面に水密封止用繊維シート(止水材)を設けるにあたり、熱可塑性の材料を用いた成形手段として、射出成形法が示されているのみである。
そして、水密封止用繊維シート(止水材)を巻いて円筒状にして、成形金型の芯金に仮付け(金型の芯材上に繊維シート(止水材)を予め巻き付け)することが示されているが、この射出成形法は円筒状空洞を形成する半割り金型を用いてその空洞内に成型用樹脂を射出するものであって、パリソンを用いるものではないから、成形金型の芯金(金型の芯材)は、パリソンを外金型と共に挟んで閉じるための内金型とは明らかに異なる。よって、この射出成形法は、本件特許発明の止水材を全周にわたり巻き付けた内金型に相当する構成を備えるものではない。また、この射出成形法は、パリソンを用いるものではないから、明らかに本件特許発明の内金型と外金型とでパリソンを挟んで閉じることに相当する構成を備えるものではない。
また、水密封止用繊維シート(止水材)を管継手(樹脂スパイラル管ジョイント)に設けるにあたり、他に、ブロー成形法を用いることが記載されているが、一般的なブロー成形法であって、しかも、管の外周面に水密封止用繊維シート(止水材)に設けるものであるから、本件特許発明の止水材を全周にわたり巻き付けた内金型に相当する構成を備えるものではなく、また、本件特許発明の内金型と外金型とでパリソンを挟んで閉じることに相当する構成を備えるものではないことは明らかである。
さらに、甲第15号証には、生ゴムテープをマンドレルに巻き両短管部の加硫量を変え加熱加圧下に成型するといった方法をとる熱硬化性材料によるモールド成形において、水密封止用の繊維シート(止水材)を生ゴム巻回前にマンドレルへ巻き付けておくことが示されているが、この熱硬化性材料によるモールド成形は生ゴムテープを加熱加圧下に成型するものであって、パリソンを用いるものではないから、マンドレルは、パリソンを外金型と共に挟んで閉じるための内金型とは明らかに異なる。よって、この熱硬化性材料によるモールド成形は、本件特許発明の止水材を全周にわたり巻き付けた内金型に相当する構成を備えるものではない。また、この熱硬化性材料によるモールド成形は、パリソンを用いるものではないから、明らかに本件特許発明の内金型と外金型とでパリソンを挟んで閉じることに相当する構成を備えるものではない。
したがって、甲第15号証には、本件特許発明の止水材を全周にわたり巻き付けた内金型に相当する構成、及び、内金型と外金型とでパリソンを挟んで閉じることに相当する構成は記載されていないといわざるを得ない。

(ウ)そうすると、上記相違点2及び相違点3に係る本件特許発明の構成は、甲第13号証に記載された引用発明及び甲第15号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものとは認められない。

ウ 効果について
そして、本件特許発明は、段落【0015】に記載された「これらの樹脂スパイラル管は多くの口径があり、多品種の樹脂スパイラル管ジョイントを用意する必要があるがインジェクション方法では金型が高価につくことから、結局樹脂スパイラル管ジョイントが高価となる。」との課題を解決するものであると共に、段落【0016】、段落【0022】及び段落【0025】に記載された効果(特に、段落【0025】に記載された「また止水材をブロー成形法で一体成形することにより、手作業で管内面に止水材を後接着できなかった小口径の樹脂管ジョイントでも止水材を一体化することが可能となった。」との効果を奏するものである。

エ よって、本件特許発明は、本件出願前に日本国内において頒布された甲第13号証及び甲第15号証に記載された各発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

8-5 まとめ
以上のとおり、本件特許発明は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
したがって、無効理由6は理由がない。


9 小括
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては本件特許を無効とすることはできない。


第6 無効2010-800153について

1 請求人の主張の概要及び証拠方法
請求人は、「第3955913号特許を無効とする、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、以下の無効理由を主張し、証拠として、甲第1ないし11号証を提出した。
・無効理由(特許法第17条の2第3項)
甲第10号証の補正書で行われた補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内で行われたものではなく、新規事項を追加する補正であって、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。したがって、本件特許は同法第123条第1項第1号に該当し、無効とされるべきものである。

請求人が提出した甲号証は、以下のとおりである。
甲第1号証:特許第3955913号公報
甲第2号証:特開2003-74770号公報
甲第3号証:平成17年7月12日付け早期審査に関する事情説明書
甲第4号証:平成17年10月11日付け手続補正書
甲第5号証:平成17年12月8日付け手続補正書
甲第6号証:平成17年12月8日付け審判請求書
甲第7号証:平成18年9月7日付け補正の却下の決定
甲第8号証:平成18年11月13日付け手続補正書
甲第9号証:平成18年11月13日付け意見書
甲第10号証:平成19年2月9日付け手続補正書
甲第11号証:「図解プラスチック用語辞典 第2版」、2000年4月2
8日、日刊工業新聞社、714?715頁

2 被請求人の主張の概要及び証拠方法
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、請求人の主張は何れも失当であると主張し、証拠として、以下の乙第1ないし10号証を提出した。

乙第1号証:特許第3723538号公報
乙第2号証:特開2003-251686号公報
乙第3号証:特開2006-26899号公報
乙第4号証:平成13年8月31日付けで提出した願書に添付された明細
書、図面及び要約書
乙第5号証:平成18年9月7日付け拒絶理由通知書
乙第6号証:平成17年10月31日付け拒絶査定
乙第7号証:平成18年6月2日付け前置報告書
乙第8号証:平成18年12月11日付け拒絶理由通知書
乙第9号証:平成19年2月21日付け審決
乙第10号証:乙第3号証に係る特許出願の出願人が、平成21年(ワ)第
27223号損害賠償等請求事件において平成22年3月2
5日付けで東京地方裁判所に提出した被告準備書面(3)

3 無効理由について
3-1 甲号証
(1)甲第1号証(特許第3955913号公報)に記載された事項
「止水材が、連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体、水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体、連続気泡ポリオレフィン発泡体、連続気泡ゴム発泡体、水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体、吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布の何れかであり、外金型と、前記止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、前記内金型と前記外金型とで前記パリソンを挟んで閉じることにより前記止水材を管内面に一体成形することを特徴とする樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法。」(【請求項1】)

(2)甲第2号証(特開2003-74770号公報)に記載された事項
ア 「ブロー成形にて止水材を管内面に一体成形してなる請求項1記載の樹脂管ジョイント。」(【請求項2】)

イ 「ブロー成形機よりパリソンを押し出した後、パリソン及びパリソン内部に位置する止水材を円形に固定してなる内金型を挟んで外金型を閉じることによりブロー成形する止水材を管内面に一体成形してなる樹脂管ジョイントの製造方法。」(【請求項4】)

ウ 「【産業上の利用分野】本発明は土木分野や建築分野あるいは電設分野等で使用する樹脂管ジョイントに関するものであり、更に詳しくはブロー成形時に止水材を一体成形してなる樹脂管ジョイント並びにリング状波管(俗称独立山管)ジョイントに関するものである。」(段落【0001】)

エ 「【課題を解決するための手段】請求項1に記載の本発明は止水材を管内面に一体成形した樹脂管ジョイントであり、請求項2に記載の本発明は一体成形される方法がブロー成形であることである。」(段落【0005】)

オ 「請求項3に記載の本発明はブロー成形にて管内面に一体成形された止水材が連続気泡の疎水性ウレタン発泡体あるいは水膨潤性ウレタン発泡体/非発泡体あるいは連続気泡ポリオレフィン発泡体あるいは連続気泡ゴム発泡体あるいは水膨潤性ゴム発泡体/非発泡体あるいは吸水性繊維不織布あるいは疎水性繊維不織布のいずれかであることである。」(段落【0006】)

カ 「次に本発明の止水材付き樹脂管ジョイント並びにその製造方法について更に詳細に説明する。本発明の止水材付き樹脂管ジョイントとは管内面に止水材がで一体成形された樹脂管ジョイントである。ここで一体成形とは樹脂管ジョイントを成形時に止水材を接合するものを指し、具体的にはインジェクション成形あるいはブロー成形時にその溶融あるいは軟化樹脂が接着性を有している硬化前に止水材を一体化することを云う。本発明の樹脂管ジョイントは一般にポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が使用されるが、これら樹脂に限定されるものではなく、樹脂管ジョイントとして適当な物理強度と耐久性能を有している熱可塑性樹脂であればいかなるものであっても良い。本発明の樹脂管ジョイントはスパイラルパイプを接続する樹脂スパイラル管ジョイントに加え独立山パイプを接続する樹脂リング状波管ジョイントも含むが、以下特に指定はしない限り樹脂スパイラル管ジョイントに絞り説明する。」(段落【0009】)

キ 「次に本発明の樹脂スパイラル管ジョイントに一体化される止水材はゴム発泡体、ポリウレタン発泡体、ポリオレフィン発泡体あるいは水膨潤性ウレタン発泡体/非発泡体、水膨潤性オレフィン、水膨潤性ゴム発泡体/非発泡体あるいは吸水性繊維不織布あるいは疎水性繊維不織布等がある。
ポリウレタン発泡体、ポリオレフィンあるいはゴム発泡体は独立気泡体であっても連続気泡体であっても使用可能であるが、好ましくは連続気泡体が良い。・・・
本発明に使用されるゴム発泡体も単に汎用の独立気泡体のみならずポリオレフィン発泡体同様に吸水性樹脂を充填した水膨潤性ゴム発泡体並びに非発泡性の水膨潤性ゴムも使用可能である。
・・・
本発明に使用されるポリウレタン発泡体としては・・・あるいはポリイソプレンポリオールとポリイソシアネートから製造された疎水性独立気泡ポリウレタンや疎水性連続気泡ポリウレタンが使用可能である。ポリアクリル酸ソーダーを代表とする重合並びに部分架橋させたいわゆる電解質系吸水性樹脂並びに親水性ポリウレタン、超高分子量ポリエチレンオキサイド等の非電解質系吸水性樹脂を充填した独立気泡あるいは連続気泡の水膨潤性ポリウレタン並びに非発泡性の水膨潤性ウレタンも使用できる。
・・・
又本発泡に使用する疎水性繊維とはポリエチレン繊維あるいはポリプロピレン繊維あるいはポリエチレンプロピレン繊維等を指すがこれに限定されず、疎水性繊維であれば何であっても良い。」(段落【0010】?【0014】)

ク 「本発明の管内面に止水材を一体成形してなる樹脂スパイラル管ジョイントとは樹脂スパイラル管ジョイントの製造時に止水材を一体化するものでありブロー成形法あるいはインジェクション成形法共に可能であるが、ブロー成形法で製造した樹脂スパイラル管ジョイントが好ましい。これらの樹脂スパイラル管は多くの口径があり、多品種の樹脂スパイラル管ジョイントを用意する必要があるがインジェクション方法では金型が高価につくことから、結局樹脂スパイラル管ジョイントが高価となる。」(段落【0015】)

ケ 「特にブロー成形法あるいはインジェクション法にて製造された管内面止水材付き一体成形樹脂スパイラル管ジョイントは後工程で接着したものに比較して止水材が破損することが無いと共に後工程で止水材を貼ることができない小口径の樹脂スパイラル管ジョイントにも止水材を一体成形することができる。」(段落【0016】)

コ 「【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1はブロー成形法による成形実施例である。図1は成形前のブロー成形機の樹脂押し出しダイ3、外金型1、止水材5を固定した内金型2の関係を示す。外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意。されている。」(段落【0017】)

サ 「図2は外金型を閉じる直前の状態を示すものである。即ちブロー成形機のダイ3の隙間よりパリソン4を押し出す。パリソン4の押し出しと止水材5を付けた内金型2の関係はパリソン4が先に押し出されてから内金型2を下部より上昇させても、あるいは内金型2を上昇させた後パリソン4を押し出してもどちらでも良い。」(段落【0018】)

シ 「図3は止水材6がセットされたコアー金型を挟んで外金型1を閉じた状態を示す。パリソン4は樹脂スパイラル管ジョイント6となるが、この時当然止水材5付き内金型2の直径よりパリソン4の直径の方が大きいため、パリソン4の一部は外金型1より外部に押し出されることになるが、この押し出された樹脂は再度使用することができる。」(段落【0019】)

ス 「図3のブロー成形に於いて止水材5が連続気泡樹脂発泡体あるいは連続気泡ゴム発泡体あるいは不織布の場合には、これら連続気泡体の一部あるいは不織布にパリソン4が含浸するので止水材5は本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6と十分に接合される。しかしながらパリソンの含浸量が多いと止水材の厚さが薄くなって止水力が低下することがあるが、この場合にはエアーノズル9より空気を送ってパリソンの含浸量を適当に調整することができる。また成形された本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6を内金型より取り外す時にエアーノズル9よりエアーを出すととによって取り外しが容易になる。」(段落【0020】)

セ 「図3で成形された止水材を一体化した樹脂スパイラル管ジョイントは外金型を開放した後取り外されるが、成形サイクルを上げるため内金型は製品が付いた状態で取り外し、別の止水材付き内金型をセットして次の成形にすすむのが良い。製品の内金型からの取り出しは別工程で行うのが好ましい。」(段落【0021】)

ソ 「更に本発明の方法で製造された管内面に止水材を一体成形した樹脂スパイラル管ジョイントは小口径の樹脂スパイラル管ジョイントでも可能であり、特に小口径パイプの接続による抵抗を大幅に低減することができる。」(段落【0022】)

タ 「図6は本発明のリング状波管ジョイントの接続概略断面図である。図7は図6のリング状波管ジョイントのA-A’断面図である。本発明のリング状波管ジョイント10も本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6と同様に管内面に止水材5が一体化されている。本発明のリング状波管ジョイントはインジェクション成形法でもブロー成形法でも可能であり、ブロー成形の内金型のツメの部分は溝を削っておくことにより製造される。また接続はネジ込むのではなくツメ部分に抵抗して押し込むことにより接続される。本発明のリング状波管ジョイントも止水材が管内面であるため破損せず、しかも汚れも付かず、又本発明のジョイントがメスであることから水の抵抗や管の挿入の抵抗とならない。」(段落【0023】)

チ 「【発明の効果】本発明の管内面に止水材を一体成形させた樹脂管ジョイントは従来の管外面に止水材が一体化されているものと異なり管内面に止水材が一体化されているため止水材が剥離したり、異物が付着したり、汚れたりあるいは破損することがない。また接続パイプを樹脂管ジョイントに接続した後、水あるいは電線あるいは配管等を入れた場合に従来と異なり本発明の樹脂管ジョイントがメスジョイントとなっているためジョイントが水の流れや配管のあるいは電線等の挿入を妨害することがない。また止水材をブロー成形法で一体成形することにより、手作業で管内面に止水材を後接着できなかった小口径の樹脂管ジョイントでも止水材を一体化することが可能となった。」(段落【0025】)

ツ 「【図1】 本発明の管内面に止水材をブロー成形法で一体成形する工程に於いて樹脂スパイラル管ジョイントの成形前の止水材付き内金型並びに外金型の関係を示す概略断面図である。
【図2】 本発明の管内面に止水材をブロー成形法で一体成形する工程に於いて樹脂スパイラル管ジョイントの成形前のパリソン、止水材付き内金型並びに外金型の関係を示す概略断面図である。
【図3】 本発明の管内面に止水材をブロー法で一体成形する工程に於いて外金型を閉じた成形後を示す概略断面図である。」(【図面の簡単な説明】)

テ 図1には、外金型1が開放された状態が示されている。

ト 図2には、外金型1と内金型2との間に、ダイ3から押し出されたパリソン4が位置していることが示されている。

ナ 図3には、内金型2と外金型1とでパリソンを挟んで閉じることが示されている。

(3)甲第3号証(平成17年7月12日付け早期審査に関する事情説明書)に記載された事項
ア 「これに対し、本願発明ではブロー成形によって管内面に止水材を一体成形するのであって、これにより、止水材が剥離したり、異物が付着したり汚れたり或いは破損することはない。」(2頁26?28行)

イ 「本願発明はブロー成形でも射出成形のような管継手内面に膨張体を一体化きるのを見出したものであり、特定の内金型を併用することにより、目的を達成できる。」(2頁44?45行)

ウ 「そして、本願発明では継手管の内表面に止水材をブロー成形のよって一体化することにより先に述べたように安価に成形しうると共に、止水材が剥離したり、異物が付着したり汚れたり或いは破損することはない等の効果を奏するのである。」(2頁47?49行)

(4)甲第10号証(平成19年2月9日付け手続補正書)に記載された事項
ア 「【手続補正1】
【補正対象書類名】 明細書
【補正対象項目名】 特許請求の範囲
【補正方法】 変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 止水材が、連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体、水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体、連続気泡ポリオレフィン発泡体、連続気泡ゴム発泡体、水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体、吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布の何れかであり、外金型と、前記止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、前記内金型と前記外金型とで前記パリソンを挟んで閉じることにより前記止水材を管内面に一体成形することを特徴とする樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法。」(1頁14?26行)

イ 「【手続補正2】
【補正対象書類名】 明細書
【補正対象項目名】 0005
【補正方法】 変更
【補正の内容】
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願発明の要旨は、止水材が、連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体、水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体、連続気泡ポリオレフィン発泡体、連続気泡ゴム発泡体、水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体、吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布の何れかであり、外金型と、前記止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、前記内金型と前記外金型とで前記パリソンを挟んで閉じることにより前記止水材を管内面に一体成形することを特徴とする樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法である。」(1頁28?41行)

(5)甲第11号証(「図解プラスチック用語辞典第2版」、2000年4月28日、日刊工業新聞社)に記載された事項
「ブロー成形 blow mo(u)lding 合せ金型内において,加熱により軟化している熱可塑性プラスチックのパリソンまたはシートを空気圧などを用いてふくらませ,金型に密着させると同時に冷却して中空体を得る成形方法をいう。」(714?715頁)

3-2 請求人の主張
(1)本件特許に係る明細書等に記載されている「ブロー成形」なる用語は、それ自体学術用語であって、かつ、本件特許に係る明細書においては別段その定義もされていない。
したがって、本件特許発明における「ブロー成形」は、特許法施行規則第24条に規定する様式第29の備考8、同備考8但書及び同備考7、並びに、審査基準の「第2(審決注:ローマ数字)部 第2章 1.5.1 請求項に係る発明の認定」の(1)ないし(4)に記載された原則に基づき、その有する普通の意味、すなわち甲第11号証(「図解プラスチック用語辞典 第2版」、2000年4月28日 日刊工業新聞社)の第714?715頁に、「合せ金型内において、加熱により軟化している熱可塑性プラスチックのパリソンまたはシートを空気圧などを用いてふくらませ、金型に密着させると同時に冷却して中空体を得る成形方法をいう。」と説明されているとおりのものを意味すると解するほかない。
「ブロー成形法」および「ブロー法」という用語は、結局、「ブロー成形」と同義であり、また「ブロー成形機」という用語は(とくに「ブロー成形」と異なる成形を行なう成形方法ないし製造方法である旨の断りもなく使用する以上)、「ブロー成形」を行なう製造装置と解するほかない。
(これについて、審判請求書の6頁26行?7頁6行、請求人による陳述要領書の3頁30行?4頁13行及び第1回口頭審理調書の2-2を参照。)

(2)被請求人は、本件特許発明に係る審査経過及び拒絶査定不服審判において如何なる解釈も主張していない「ブロー成形法」なる用語を、本審判においてはじめて前面に押し出して、それは「ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法」を意味するとの独自の解釈を主張しているのであるが、その解釈の根拠も意味内容も不明である。
「ブロー成形法」の定義は、当初明細書等に記載されていない。
被請求人は、明細書の部分的な記載を引用して都合よく解釈している。
(これについて、請求人による陳述要領書の4頁23行?5頁2行及び第1回口頭審理調書の2-2を参照。)

(3)図1ないし図3は一般的なブロー成形の図である。
また、段落【0017】ないし【0021】はブロー成形の説明である。
したがって、構成要件B及び構成要件Cは、実質的に当初明細書等には記載されていない。
(これについて、第1回口頭審理調書の2-1-1及び2-1-2を参照。)

(4)甲第10号証の補正書での補正後の請求項1に記載の発明は、「外金型と、前記止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、前記内金型と前記外金型とで前記パリソンを挟んで閉じることにより前記止水材を管内面に一体成形する」との構成要件B及び構成要件Cで規定される製造方法であって、「ブロー成形」以外の製造方法であると解される。
(これについて、審判請求書の7頁7?10行及び20頁21?25行、並びに、請求人による陳述要領書の2頁17?22行を参照。)

(5)甲第2号証(本件特許発明に係る出願当初の特許請求の範囲、明細書および図面)には、本願発明として「ブロー成形法」で一体成形することが一貫して記載されており、「ブロー成形法」以外の製造方法に係る発明は全く記載されていない。更に、甲第3号証(早期審査に関する事情説明書)には、本願発明が、「ブロー成形法」で一体成形することであると一貫して説明されている。
(これについて、審判請求書の20頁26行?21頁2行及び請求人による陳述要領書の2頁23?25行を参照。)

(6)よって、甲第10号証の補正書で行われた補正は、出願当初の特許請求の範囲、明細書、図面に記載された事項の範囲内においてしたものではなく、新規事項を追加する補正であって、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(これについて、審判請求書の21頁3?5行及び請求人による陳述要領書の2頁26?28行を参照。)

3-3 被請求人の主張
(1)特許発明の出願当初の特許請求の範囲、明細書及び図面(甲第2号証)及び早期審査に関する事情説明書(甲第3号証)において、「ブロー成形法」は「ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法」の意味で使用されている。
(これについて、答弁書の7頁1?4行、7頁23?26行及び8頁24?29行、並びに、被請求人による陳述要領書の9頁18?22行)

(2)本件の請求項1に係る特許発明は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす甲第10号証の手続補正書で行われた補正をした特許出願に対してされたものであるため、その特許は維持されるべきである。
(これについて、答弁書の14頁17?19行及び被請求人による陳述要領書の2頁26?28行を参照。)

3-4 当審の判断
ア 全文訂正明細書の請求項1に記載された本件特許発明は、甲第10号証(平成19年2月9日付け手続補正書)による補正に基づくものであり、甲第1号証(特許第3955913号公報)の請求項1にも記載されている。
また、甲第2号証(特開2003-74770号公報)の記載内容は、本件出願の日から甲第2号証の発行までの間に明細書又は図面についての補正はなされていないことから、乙第4号証の当初明細書等の記載内容と同じである。
そこで、甲第2号証の記載を当初明細書等の記載であるとして、請求人の主張に基づき、本件特許発明の構成要件B及び構成要件Cが当初明細書等に記載されているか以下検討を行う。

イ まず、本件特許発明の構成要件Bが当初明細書等に記載されているかについて検討する。
当初明細書等の段落【0017】には、「図1は成形前のブロー成形機の樹脂押し出しダイ3、外金型1、止水材5を固定した内金型2の関係を示す。外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意。されている。」との記載がされ、段落【0018】には、「図2は外金型を閉じる直前の状態を示すものである。即ちブロー成形機のダイ3の隙間よりパリソン4を押し出す。」との記載がされ、段落【0017】の記載において説明された図1には、外金型1が開放された状態が示され、また、段落【0018】の記載において説明された図2には、外金型1と内金型2との間に、ダイ3から押し出されたパリソン4が位置していることが示されている。
これらによると、図1の成形前の状態において、外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意され、図2の外金型1を閉じる直前の状態において、外金型1と内金型2との間に、ブロー成形機のダイ3より押し出されたパリソン4が位置することが記載されていることから、当初明細書等には、「外金型と、止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ」ること、すなわち、構成要件Bが実質的に記載されているものと認められる。

ウ 次に、本件特許発明の構成要件Cが当初明細書等に記載されているかについて検討する。
当初明細書等の段落【0017】には、「外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意。されている。」との記載がされ、段落【0019】には、「図3は止水材6がセットされたコアー金型を挟んで外金型1を閉じた状態を示す。」との記載がされ、また、段落【0019】の記載において説明された図3には、内金型2と外金型1とでパリソンを挟んで閉じることが示されている。
さらに、段落【0020】には、「しかしながらパリソンの含浸量が多いと止水材の厚さが薄くなって止水力が低下することがあるが、この場合にはエアーノズル9より空気を送ってパリソンの含浸量を適当に調整することができる。また成形された本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6を内金型より取り外す時にエアーノズル9よりエアーを出すととによって取り外しが容易になる。」との記載がされている。
これらによると、樹脂スパイラル管ジョイントの管内面に止水材5を一体成形するにあたり、エアーノズル9から送られる空気は必須ではなく、図3の外金型1を閉じた成形後において、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2を挟んで外金型1が閉じた状態とされ、その際、パリソン4を内金型2と外金型1とで挟んで閉じることにより、止水材5が管内面に一体成形されることになるから、当初明細書等には、「内金型と外金型とでパリソンを挟んで閉じることにより止水材を管内面に一体成形する」こと、すなわち、構成要件Cが実質的に記載されているものと認められる。

エ 次に、請求人の主張によるものではないが、本件特許発明の構成要件Aが発明の詳細な説明に記載されているかについて一応検討する。
当初明細書等における段落【0010】ないし【0014】には止水材の説明がなされているところ、本件特許発明における止水材の各材料が次のとおり示されている。
・当初明細書等の段落【0013】の「本発明に使用されるポリウレタン発泡体としては・・・疎水性連続気泡ポリウレタンが使用可能である。」との記載によれば、本件特許発明の「連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体」が使用可能であることが示されている。
・当初明細書等の段落【0010】の「次に本発明の樹脂スパイラル管ジョイントに一体化される止水材はゴム発泡体、ポリウレタン発泡体、ポリオレフィン発泡体あるいは水膨潤性ウレタン発泡体/非発泡体、水膨潤性オレフィン、水膨潤性ゴム発泡体/非発泡体あるいは吸水性繊維不織布あるいは疎水性繊維不織布等がある。」との記載によれば、本件特許発明の「水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体」、「水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体」及び「吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布」の何れかが使用可能であることが示されている。
ここで、当初明細書等の段落【0012】の「本発明に使用されるゴム発泡体も・・・吸水性樹脂を充填した水膨潤性ゴム発泡体並びに非発泡性の水膨潤性ゴムも使用可能である。」との記載によっても、本件特許発明の「水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体」が使用可能であることが示されている。
・当初明細書等の段落【0010】の「ポリウレタン発泡体、ポリオレフィンあるいはゴム発泡体は独立気泡体であっても連続気泡体であっても使用可能であるが、好ましくは連続気泡体が良い。」との記載によれば、本件特許発明の「連続気泡ポリオレフィン発泡体」及び「連続気泡ゴム発泡体」の何れかが使用可能であることが示されている。
そうすると、本件特許発明の構成要件Aである「止水材が、連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体、水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体、連続気泡ポリオレフィン発泡体、連続気泡ゴム発泡体、水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体、吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布の何れかであり」との事項は、当初明細書等に記載されているものと認められる。

オ 次に、 本件特許発明の構成要件Dが発明の詳細な説明に記載されているかについても一応検討する。
当初明細書等には、その段落【0009】の「次に本発明の止水材付き樹脂管ジョイント並びにその製造方法について更に詳細に説明する。」との記載及び「本発明の樹脂管ジョイントはスパイラルパイプを接続する樹脂スパイラル管ジョイントに加え独立山パイプを接続する樹脂リング状波管ジョイントも含むが、以下特に指定はしない限り樹脂スパイラル管ジョイントに絞り説明する。」との記載、段落【0016】の「特にブロー成形法あるいはインジェクション法にて製造された管内面止水材付き一体成形樹脂スパイラル管ジョイントは後工程で接着したものに比較して止水材が破損することが無いと共に後工程で止水材を貼ることができない小口径の樹脂スパイラル管ジョイントにも止水材を一体成形することができる。」との記載、段落【0020】の「図3のブロー成形に於いて・・・これら連続気泡体の一部あるいは不織布にパリソン4が含浸するので止水材5は本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6と十分に接合される。」との記載、並びに、段落【0022】の「更に本発明の方法で製造された管内面に止水材を一体成形した樹脂スパイラル管ジョイントは小口径の樹脂スパイラル管ジョイントでも可能であり、特に小口径パイプの接続による抵抗を大幅に低減することができる。」との記載によれば、樹脂スパイラル管ジョイントが製造されことが示されており、「樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法」が記載されているものと認められる。
よって、本件特許発明の構成要件Dは、当初明細書等に記載されているものと認められる。

カ 次に、「ブロー成形」、「ブロー法」、「ブロー成形法」及び「ブロー成形機」の各用語の意味について検討する。
当初明細書等において、上記各用語の定義が記載されていないところ、上記各用語を直ちに一般的な意味と解するのではなく、当初明細書等の記載内容から上記各用語の意味を検討することとなる。
そこで、樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法についての説明は、段落【0017】ないし【0021】及び図1ないし3に記載があるのみであるから、段落【0017】ないし【0021】の記載及び図1ないし3の記載に基づいて、上記各用語の意味を解釈することとする。
そして、段落【0017】ないし【0021】及び図1ないし3には、本件特許発明の構成要件B及び構成要件Cが実質的に記載されているものと認められることは上述したとおりであるところ、構成要件B及び構成要件Cからなる工程が甲第11号証に説明されているような一般的な意味の「ブロー成形」でないことは、当該工程において空気を用いることが必須ではなく、パリソン4を内金型2と外金型1とで挟んで閉じるという一般的な意味の「ブロー成形」には採用されない技術事項を備えていることより明らかであるから、上記各用語の定義が当初明細書等に記載されていないとしても、段落【0003】に記載された従来例についての「ブロー成形」を除き、当初明細書等に記載された「ブロー成形」、「ブロー法」及び「ブロー成形法」の各用語を甲第11号証に説明されているような一般的な意味の「ブロー成形」と解することはできず、また、「ブロー成形機」という用語を一般的な意味の「ブロー成形」を行なう製造装置と解することはできない。
そこで、構成要件B及び構成要件Cからなる工程についてみると、一般的な意味の「ブロー成形」と同様に、成形機のダイ3からパリソンを押し出すことで、パリソンを形成していることから、当初明細書等に記載の「ブロー成形」、「ブロー法」及び「ブロー成形法」の各用語は、段落【0003】に記載された従来例についての「ブロー成形」を除き、被請求人の主張するとおり「ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法」を意味し、また、「ブロー成形機」は「ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法」に用いられる成形機を意味するものと解するのが自然である。

キ そうすると、当初明細書等において、「ブロー成形」、「ブロー法」、「ブロー成形法」及び「ブロー成形機」の各用語が記載され、各用語の定義が記載されていないとしても、当初明細書等には、甲第11号証に説明されているような一般的な意味の「ブロー成形法」が一貫して記載されているとはいえない。
また、甲第3号証において、本願発明が、一般的な意味の「ブロー成形法」で一体成形することであると一貫して説明されているものともいえない。

ク よって、本件特許発明の構成要件A、構成要件B、構成要件C及び構成要件Dは、当初明細書等に記載されており、また、当初明細書等において、「ブロー成形」、「ブロー法」、「ブロー成形法」及び「ブロー成形機」の各用語が記載され、各用語の定義が記載されていないとしても、構成要件B及び構成要件Cが当初明細書等に記載されていないとすることはできないのであるから、甲第10号証で行われた補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、当初明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものと認められる。

ケ ここで、請求人は、甲第10号証による補正に至るまでの途中の書類である甲第4号証ないし甲第9号証を提出するが、これらの記載を考慮しても、構成要件A、構成要件B、構成要件C及び構成要件Dが当初明細書等に記載されていないとすることはできない。

コ なお、請求人は、請求人による口頭審理陳述要領書の4頁23ないし30行において、「被請求人は、「本件特許発明の出願当初の特許請求の範囲、明細書及び図面において、『ブロー成形法』とは、『ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法』の意味」で使用されていると主張しているが(平成22年11月24日付けの無効2010-800153審判事件答弁書の7-3.「ブロー成形法」の技術的意義 (2)甲第2号証におけるブロー成形法の技術的意義)、被請求人の主張は、被請求人独自の解釈を導き出すのに都合のよい記載を寄せ集めて、牽強付会の関連付けないし意味付けをしているに過ぎず、かかる主張において引用されている記載をもって、「ブロー成形法」なる用語の定義の記載とはとうてい認められない。」との主張をし、さらに、口頭審理においても、「被請求人は、明細書の部分的な記載を引用して都合よく解釈している。」と主張(第1回口頭審理調書の2-2を参照。)をするが、上述したとおり、全文訂正明細書の段落【0017】ないし【0021】の記載及び図1ないし3の記載から、「ブロー成形法」は被請求人の主張するとおり「ブロー成形のようにパリソンを形成して行う方法」を意味するものと解するのが自然であるから、請求人のこれら主張は採用することができない。

3-5 まとめ
以上のとおり、甲第10号証で行われた補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内で行われたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
したがって、本件特許は、同法第123条第1項第1号に該当しないから、無効とすることはできない。

4 小括
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては本件特許を無効とすることはできない。


第7 むすび
上記のとおりであるから、無効2010-800139及び無効2010-800153については、その請求はいずれも成り立たない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、いずれも、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
樹脂管ジョイント並びにその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
止水材が、連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体、水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体、連続気泡ポリオレフィン発泡体、連続気泡ゴム発泡体、水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体、吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布の何れかであり、外金型と、前記止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、前記内金型と前記外金型とで前記パリソンを挟んで閉じることにより前記止水材を管内面に一体成形することを特徴とする樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は土木分野や建築分野あるいは電設分野等で使用する樹脂管ジョイントに関するものであり、更に詳しくはブロー成形時に止水材を一体成形してなる樹脂管ジョイント並びにリング状波管(俗称独立山管)ジョイントに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より樹脂管は上下水道管、雨水配水管あるいは電気配管等の土木並びに建築分野で多用されており、ポリエチレン樹脂やプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂が使用されている。
これらの樹脂管は、数メートル乃至数十メートルの長さで樹脂管ジョイントと云われる接続ジョイントを使用して接続され離れた場所に水や電気あるいは光等を伝える働きをしている。
この場合、接続ジョイントには必ず水の漏水あるいは水の浸入を防ぐため止水材(パッキン)を用いて止水される。
【0003】
図5は従来の樹脂スパイラル管ジョイントの接続例である。樹脂スパイラル管ジョイント8の管外表面には止水材5が接着されている。本接合は樹脂スパイラル管ジョイント8がオスとなり、接合する接続パイプ7がメスとなって接合される。
止水材5は樹脂スパイラル管ジョイントのブロー成形時にブロー成形外金型の表面に固定され、ブロー成形にて一体化されるかあるいはスパイラル管ジョイントを製造後、後工程として止水材が接着されている。一方止水材を管内面に貼ることも考えられるが、目標の場所にきちんと貼ることが困難であると共に管が細い場合には管内に手を入れることができず止水材を貼ることができない。
本従来の樹脂スパイラル管ジョイントは止水材がスパイラル管に一体化されているため、いちいちゴムパッキン等をはめて止水する方法に比較して作業性が良いが、本止水材を外表面に有するスパイラル管ジョイントは下記の欠点を有する。
(1)止水材が外表面に出ているため輸送時やジョイント取付時に破損しやすいこと並びにジョイント取付時に砂や砂利が付き止水性能がおちること、更に樹脂スパイラル管ジョイントの端部81が管内にオス状態で突出しているため、例えば水の流れの抵抗となることや、あるいは電線や配管を挿入するとき電線や配管の先端がジョイント端部81に当たり挿入を邪魔することなどの問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前述の様な欠点にかんがみてなされたものであり前述の欠点を無くした樹脂管ジョイントの製造方法を提供するものである。即ち第1の目的は樹脂管ジョイントの輸送や取付時に止水材の破損を起こさず、しかも野外でのパイプ接続工事でも砂や砂利が付着しにくい止水材付き樹脂管ジョイントの製造方法を提供するものである。また第2の目的は接続パイプ内に樹脂管ジョイントが突出して水の流れや電線等の挿入を邪魔することのない樹脂管ジョイントの製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願発明の要旨は、止水材が、連続気泡疎水性発泡ウレタン発泡体、水膨潤性ウレタンよりなる発泡体又は非発泡体、連続気泡ポリオレフィン発泡体、連続気泡ゴム発泡体、水膨潤性ゴムよりなる発泡体又は非発泡体、吸水性繊維不織布或いは疎水性繊維不織布の何れかであり、外金型と、前記止水材を全周にわたり巻き付けた内金型との間に、ブロー成形機のダイより押し出したパリソンを位置させ、前記内金型と前記外金型とで前記パリソンを挟んで閉じることにより前記止水材を管内面に一体成形することを特徴とする樹脂スパイラル管ジョイントの製造方法である。
【0009】
次に本発明の止水材付き樹脂管ジョイント並びにその製造方法について更に詳細に説明する。本発明の止水材付き樹脂管ジョイントとは管内面に止水材が一体成形された樹脂管ジョイントである。ここで一体成形とは樹脂管ジョイントを成形時に止水材を接合するものを指し、具体的にはブロー成形時にその溶融あるいは軟化樹脂が接着性を有している硬化前に止水材を一体化することを云う。本発明の樹脂管ジョイントは一般にポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が使用されるが、これら樹脂に限定されるものではなく、樹脂管ジョイントとして適当な物理強度と耐久性能を有している熱可塑性樹脂であればいかなるものであっても良い。本発明の樹脂管ジョイントはスパイラルパイプを接続する樹脂スパイラル管ジョイントに加え独立山パイプを接続する樹脂リング状波管ジョイントも含むが、以下特に指定はしない限り樹脂スパイラル管ジョイントに絞り説明する。
【0010】
次に本発明の樹脂スパイラル管ジョイントに一体化される止水材はゴム発泡体、ポリウレタン発泡体、ポリオレフィン発泡体あるいは水膨潤性ウレタン発泡体/非発泡体、水膨潤性オレフィン、水膨潤性ゴム発泡体/非発泡体あるいは吸水性繊維不織布あるいは疎水性繊維不織布等がある。
ポリウレタン発泡体、ポリオレフィンあるいはゴム発泡体は独立気泡体であっても連続気泡体であっても使用可能であるが、好ましくは連続気泡体が良い。これは本樹脂スパイラル管ジョイントをメスとして、接続パイプをオス配管として接続するのであるが、螺旋状に接続パイプをネジ込むに当たり連続気泡体は容易に圧縮変形され、ネジり込みが容易にできるからである。これに対して独立気泡体の場合にはネジ込むに当たり独立気泡体が圧縮変形され難いため接続に時間を要する。しかしながら止水材が独立気泡体の場合には水あるいは界面活性剤等の滑剤を接続配管あるいは止水材に塗ることにより接続目的を達成することができる。
本発明で使用される水膨潤性止水材は連続気泡体であっても独立気泡体であっても非発泡体であっても良い。これら水膨潤性止水材は水と接触して膨潤するため必ずしも樹脂管ジョイント接続時に止水材によって密閉されている必要がなく非発泡体の止水材でも止水材厚さを薄くすることができ、これにより容易に挿入が可能である。本水膨潤性止水材使用の場合には水が来た直後にはパッキンと接続パイプとの間の隙間から少量の水が浸入あるいは漏れるが、直ちに膨潤して止水することになる。
【0011】
本発明に使用されるポリオレフィン発泡体としては汎用のポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリエチレンプロピレン発泡体等の疎水性発泡体が使用可能であるが他に吸水性樹脂等の充填剤を充填した水によって膨潤する水膨潤性オレフィン発泡体並びに非発泡性の水膨潤性オレフィンも使用することができる。
【0012】
本発明に使用されるゴム発泡体としてはSBRゴム、EPDMゴムあるいはCRゴム等が使用可能である。
本発明に使用されるゴム発泡体も単に汎用の独立気泡体のみならずポリオレフィン発泡体同様に吸水性樹脂を充填した水膨潤性ゴム発泡体並びに非発泡性の水膨潤性ゴムも使用可能である。
ここで吸水性樹脂とはポリアクリル酸ゾーダーを代表とする重合並びに部分架橋した電解質系吸水性樹脂あるいは親水性ポリウレタン、超高分子量ポリエチレンオキサイド等の非電解質系吸水性樹脂等が使用可能である。
【0013】
本発明に使用されるポリウレタン発泡体としては汎用のポリオキシアルキレンポリオールの様なポリエーテルあるいは汎用のポリオキシアルキレングリコールとアジピン酸等とのジカルボン酸ポリエステルとポリイソシアネートから製造される親水性独立気泡ポリウレタン並びにポリオールが疎水性である例えばダイマー酸とグリコールより製造されたダイマー酸ポリエステルポリオール、あるいはポリブタジエンポリオール、あるいはポリイソプレンポリオールとポリイソシアネートから製造された疎水性独立気泡ポリウレタンや疎水性連続気泡ポリウレタンが使用可能である。ポリアクリル酸ソーダーを代表とする重合並びに部分架橋させたいわゆる電解質系吸水性樹脂並びに親水性ポリウレタン、超高分子量ポリエチレンオキサイド等の非電解質系吸水性樹脂を充填した独立気泡あるいは連続気泡の水膨潤性ポリウレタン並びに非発泡性の水膨潤性ウレタンも使用できる。
【0014】
本発泡に使用する吸水性繊維とは水によって膨潤する繊維を指し、この場合膨潤によって繊維と繊維の隙間が密閉されることによって止水する。
又本発泡に使用する疎水性繊維とはポリエチレン繊維あるいはポリプロピレン繊維あるいはポリエチレンプロピレン繊維等を指すがこれに限定されず、疎水性繊維であれば何であっても良い。
【0015】
本発明の管内面に止水材を一体成形してなる樹脂スパイラル管ジョイントとは樹脂スパイラル管ジョイントの製造時に止水材を一体化するものであり、ブロー成形法で製造した樹脂スパイラル管ジョイントが好ましい。
これらの樹脂スパイラル管は多くの口径があり、多品種の樹脂スパイラル管ジョイントを用意する必要があるがインジェクション方法では金型が高価につくことから、結局樹脂スパイラル管ジョイントが高価となる。
【0016】
特にブロー成形法あるいはインジェクション法にて製造された管内面止水材付き一体成形樹脂スパイラル管ジョイントは後工程で接着したものに比較して止水材が破損することが無いと共に後工程で止水材を貼ることができない小口径の樹脂スパイラル管ジョイントにも止水材を一体成形することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1はブロー成形法による成形実施例である。
図1は成形前のブロー成形機の樹脂押し出しダイ3、外金型1、止水材5を固定した内金型2の関係を示す。
外金型1は開放された状態で、止水材5を全周に渡り巻き付けた内金型2が用意されている。
【0018】
図2は外金型を閉じる直前の状態を示すものである。
即ちブロー成形機のダイ3の隙間よりパリソン4を押し出す。パリソン4の押し出しと止水材5を付けた内金型2の関係はパリソン4が先に押し出されてから内金型2を下部より上昇させても、あるいは内金型2を上昇させた後パリソン4を押し出してもどちらでも良い。
【0019】
図3は止水材5がセットされたコアー金型を挟んで外金型1を閉じた状態を示す。パリソン4は樹脂スパイラル管ジョイント6となるが、この時当然止水材5付き内金型2の直径よりパリソン4の直径の方が大きいため、パリソン4の一部は外金型1より外部に押し出されることになるが、この押し出された樹脂は再度使用することができる。
【0020】
図3のブロー成形に於いて止水材5が連続気泡樹脂発泡体あるいは連続気泡ゴム発泡体あるいは不織布の場合には、これら連続気泡体の一部あるいは不織布にパリソン4が含浸するので止水材5は本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6と十分に接合される。
しかしながらパリソンの含浸量が多いと止水材の厚さが薄くなって止水力が低下することがあるが、この場合にはエアーノズル9より空気を送ってパリソンの含浸量を適当に調整することができる。
また成形された本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6を内金型より取り外す時にエアーノズル9よりエアーを出すととによって取り外しが容易になる。
【0021】
図3で成形された止水材を一体化した樹脂スパイラル管ジョイントは外金型を開放した後取り外されるが、成形サイクルを上げるため内金型は製品が付いた状態で取り外し、別の止水材付き内金型をセットして次の成形にすすむのが良い。製品の内金型からの取り出しは別工程で行うのが好ましい。
【0022】
図4は本発明の樹脂スパイラル管ジョイントの接続例である。
本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6の管内面には止水材5が一体成形されている。本接合は本発明の樹脂スパイラル管ジョイント8がメスとなり、接合する接続パイプがオスとなって接合される。
本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6は止水材が破損したり、砂等が付着することが無く樹脂スパイラル管ジョイントの端部61が管内に突出していないため水などの流れの抵抗になることもなく又電線などの挿入の邪魔とならない。
更に本発明の方法で製造された管内面に止水材を一体成形した樹脂スパイラル管ジョイントは小口径の樹脂スパイラル管ジョイントでも可能であり、特に小口径パイプの接続による抵抗を大幅に低減することができる。
【0023】
図6は本発明のリング状波管ジョイントの接続概略断面図である。
図7は図6のリング状波管ジョイントのA-A’断面図である。
本発明のリング状波管ジョイント10も本発明の樹脂スパイラル管ジョイント6と同様に管内面に止水材5が一体化されている。
本発明のリング状波管ジョイントはインジェクション成形法でもブロー成形法でも可能であり、ブロー成形の内金型のツメの部分は溝を削っておくことにより製造される。また接続はネジ込むのではなくツメ部分に抵抗して押し込むことにより接続される。本発明のリング状波管ジョイントも止水材が管内面であるため破損せず、しかも汚れも付かず、又本発明のジョイントがメスであることから水の抵抗や管の挿入の抵抗とならない。
【0024】
本発明の樹脂管ジョイントは一般に円形の管ジョイントとしてネジり込みあるいは押し込みで使用されるが、本発明の変形として本樹脂管ジョイントを管の長さ方向に一ヶ所切断し、取り付け時に接続パイプに巻き付けてバンドなどで固定する方法も可能であり本発明の範囲に含まれる。
【0025】
【発明の効果】
本発明の管内面に止水材を一体成形させた樹脂管ジョイントは従来の管外面に止水材が一体化されているものと異なり管内面に止水材が一体化されているため止水材が剥離したり、異物が付着したり、汚れたりあるいは破損することがない。また接続パイプを樹脂管ジョイントに接続した後、水あるいは電線あるいは配管等を入れた場合に従来と異なり本発明の樹脂管ジョイントがメスジョイントとなっているためジョイントが水の流れや配管のあるいは電線等の挿入を妨害することがない。
また止水材をブロー成形法で一体成形することにより、手作業で管内面に止水材を後接着できなかった小口径の樹脂管ジョイントでも止水材を一体化することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の管内面に止水材をブロー成形法で一体成形する工程に於いて樹脂スパイラル管ジョイントの成形前の止水材付き内金型並びに外金型の関係を示す概略断面図である。
【図2】本発明の管内面に止水材をブロー成形法で一体成形する工程に於いて樹脂スパイラル管ジョイントの成形前のパリソン、止水材付き内金型並びに外金型の関係を示す概略断面図である。
【図3】本発明の管内面に止水材をブロー法で一体成形する工程に於いて外金型を閉じた成形後を示す概略断面図である。
【図4】本発明の樹脂スパイラル管ジョイントを用いて接続パイプを接続した状態を示す概略断面図である。
【図5】従来の止水材を管外面に付けた樹脂スパイラル管ジョイントを用いて接続パイプを接続した状態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の樹脂リング状波管ジョイントの接続概略断面図である。
【図7】図6の樹脂リング状波管ジョイントのA-A’断面図である。
【符号の簡単な説明】
1.外金型
2.内金型
3.ダイ
4.パリソン
5.止水材
6.本発明の樹脂スパイラル管ジョイント
61.本発明の樹脂スパイラル管ジョイントの端部
7.接続パイプ
8.従来の樹脂スパイラル管ジョイント
81.従来の樹脂スパイラル管ジョイントの端部
9.エアーノズル
10.本発明の樹脂リング状波管ジョイント
11.本発明の樹脂リング状波管ジョイントのツメ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2011-05-16 
出願番号 特願2001-309207(P2001-309207)
審決分類 P 1 113・ 536- YA (F16L)
P 1 113・ 537- YA (F16L)
P 1 113・ 853- YA (F16L)
P 1 113・ 113- YA (F16L)
P 1 113・ 852- YA (F16L)
P 1 113・ 121- YA (F16L)
P 1 113・ 1- YA (F16L)
P 1 113・ 561- YA (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩谷 一臣谷口 耕之助  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 冨江 耕太郎
槙原 進
登録日 2007-05-18 
登録番号 特許第3955913号(P3955913)
発明の名称 樹脂管ジョイント並びにその製造方法  
代理人 金子 早苗  
代理人 安田 久  
代理人 堀内 美保子  
代理人 堀内 美保子  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 中村 誠  
代理人 金子 早苗  
代理人 和田 慎也  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 倉内 義朗  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 尾崎 雅俊  
代理人 中村 誠  
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