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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A63F
審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  A63F
管理番号 1264540
審判番号 無効2010-800131  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-07-28 
確定日 2012-10-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3655293号発明「遊技機の基板収納ボックス」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第一.手続の経緯
本件特許第3655293号の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)についての主な手続は、以下のとおりである。

・平成 9年 4月14日:特願平9-111873号出願(原出願)
・平成15年 4月17日:本件出願(特願2003-112587号)
・平成17年 3月11日:特許の設定登録
・平成22年 7月28日:本件無効審判請求
・平成22年10月14日:被請求人より答弁書及び訂正請求書提出
・平成22年12月28日:被請求人より弁駁書提出
・平成23年 4月11日:審理事項通知書
・平成23年 5月24日:請求人より口頭審理陳述要領書提出
・平成23年 5月24日:被請求人より口頭審理陳述要領書提出
・平成23年 6月 7日:口頭審理

第二.訂正請求について
1.訂正事項
訂正請求書による訂正の請求(以下「訂正請求」という。)は、本件特許明細書を、訂正請求書に添付した明細書(以下「本件訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものであって、次の訂正事項1?5を含んでいる。

訂正事項1:本件特許明細書、請求項1記載の
「該ボックス」を「該基板収納ボックス」と訂正する。

訂正事項2:本件特許明細書、請求項1記載の
「前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部と、前記固着手段とを各々複数設け、」を、
「複数の固着手段を設けるとともに当該固着手段による固着をするための複数の固着部を設け、さらに、前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部を前記複数の固着部に対応させて複数設け、」と訂正する(下線部が訂正箇所)。

訂正事項3:本件特許明細書、請求項1記載の
「前記固着手段による固着と、前記切断部の切断による固着の解除とを複数回繰り返し実行可能に構成され、」を、
「前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成され、」と訂正する(下線部が訂正箇所)。

訂正事項4:本件特許明細書、段落【0004】記載の
「請求項1に係る発明は、電子部品とコネクタとを実装する回路基板を封止状態で収納する基体及び蓋体を備えた遊技機の基板収納ボックスにおいて、該基板収納ボックスを破壊するかあるいは該ボックスの一部を切断しない限り前記回路基板の封止状態を解除できない固着手段によって前記基体及び前記蓋体を固着することで前記回路基板の封止状態を実現し、前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部と、前記固着手段とを各々複数設け、前記固着手段による固着と、前記切断部の切断による固着の解除とを複数回繰り返し実行可能に構成され、前記回路基板は、コネクタの実装面に該コネクタと電子部品とを接続する結線パターンが形成され、前記蓋体は、前記封止状態において前記回路基板のコネクタ実装領域と電子部品実装領域との間に位置する仕切り壁を備え、前記仕切り壁の先端部分を前記封止状態において前記回路基板に沿うようにコネクタ実装領域側に折曲形成し、前記コネクタ実装領域にある前記結線パターンを被覆する被覆部を前記蓋体に対して一体に設けたことを特徴とするものである。このように構成することにより、基板収納ボックスの封止状態で、外部に露出するコネクタ実装領域の結線パターンを被覆部で被覆することにより、結線パターンを利用した不正行為が防止できる。また、封止状態とするための固着手段を複数設けると共に、該複数の固着手段のうち1つの固着手段を切り離して封止状態を解除するために切断される切段部を設けたので、基板収納ボックスを遊技機に取り付けた状態で基板収納ボックスを複数回開閉することができるようになっているため、出荷納入後に回路基板を検査する場合でも、基板収納ボックスを破壊することなく簡単に回路基板を検査することができる。また、検査後に基板収納ボックスを閉塞する際には、固着手段を取り付けることにより、再度防犯効果の高い基板収納ボックスに復元することができる。」を、
「請求項1に係る発明は、電子部品とコネクタとを実装する回路基板を封止状態で収納する基体及び蓋体を備えた遊技機の基板収納ボックスにおいて、該基板収納ボックスを破壊するかあるいは該基板収納ボックスの一部を切断しない限り前記回路基板の封止状態を解除できない固着手段によって前記基体及び前記蓋体を固着することで前記回路基板の封止状態を実現し、複数の固着手段を設けるとともに当該固着手段による固着をするための複数の固着部を設け、さらに、前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部を前記複数の固着部に対応させて複数設け、前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成され、前記回路基板は、コネクタの実装面に該コネクタと電子部品とを接続する結線パターンが形成され、前記蓋体は、前記封止状態において前記回路基板のコネクタ実装領域と電子部品実装領域との間に位置する仕切り壁を備え、前記仕切り壁の先端部分を前記封止状態において前記回路基板に沿うようにコネクタ実装領域側に折曲形成し、前記コネクタ実装領域にある前記結線パターンを被覆する被覆部を前記蓋体に対して一体に設けたことを特徴とするものである。このように構成することにより、基板収納ボックスの封止状態で、外部に露出するコネクタ実装領域の結線パターンを被覆部で被覆することにより、結線パターンを利用した不正行為が防止できる。また、前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成したので、基板収納ボックスを遊技機に取り付けた状態で基板収納ボックスを複数回開閉することができるようになっているため、出荷納入後に回路基板を検査する場合でも、基板収納ボックスを破壊することなく簡単に回路基板を検査することができる。また、検査後に基板収納ボックスを閉塞する際には、前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着により、再度防犯効果の高い基板収納ボックスに復元することができる。」と訂正する(下線部が訂正箇所)。

訂正事項5:本件特許明細書、段落【0057】記載の
「請求項1に係る発明は、電子部品とコネクタとを実装する回路基板を封止状態で収納する基体及び蓋体を備えた遊技機の基板収納ボックスにおいて、該基板収納ボックスを破壊するかあるいは該ボックスの一部を切断しない限り前記回路基板の封止状態を解除できない固着手段によって前記基体及び前記蓋体を固着することで前記回路基板の封止状態を実現し、前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部と、前記固着手段とを各々複数設け、前記固着手段による固着と、前記切断部の切断による固着の解除とを複数回繰り返し実行可能に構成され、前記回路基板は、コネクタの実装面に該コネクタと電子部品とを接続する結線パターンが形成され、前記蓋体は、前記封止状態において前記回路基板のコネクタ実装領域と電子部品実装領域との間に位置する仕切り壁を備え、前記仕切り壁の先端部分を前記封止状態において前記回路基板に沿うようにコネクタ実装領域側に折曲形成し、前記コネクタ実装領域にある前記結線パターンを被覆する被覆部を前記蓋体に対して一体に設けたことにより、基板収納ボックスの封止状態で、外部に露出するコネクタ実装領域の結線パターンを被覆部で被覆することで、結線パターンを利用した不正行為が防止できる。また、封止状態とするための固着手段を複数設けると共に、該複数の固着手段のうち1つの固着手段を切り離して封止状態を解除するために切断される切段部を設けたので、基板収納ボックスを遊技機に取り付けた状態で基板収納ボックスを複数回開閉することができるようになっているため、出荷納入後に回路基板を検査する場合でも、基板収納ボックスを破壊することなく簡単に回路基板を検査することができる。また、検査後に基板収納ボックスを閉塞する際には、固着手段を取り付けることにより、再度防犯効果の高い基板収納ボックスに復元することができる。」を、
「請求項1に係る発明は、電子部品とコネクタとを実装する回路基板を封止状態で収納する基体及び蓋体を備えた遊技機の基板収納ボックスにおいて、該基板収納ボックスを破壊するかあるいは該基板収納ボックスの一部を切断しない限り前記回路基板の封止状態を解除できない固着手段によって前記基体及び前記蓋体を固着することで前記回路基板の封止状態を実現し、複数の固着手段を設けるとともに当該固着手段による固着をするための複数の固着部を設け、さらに、前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部を前記複数の固着部に対応させて複数設け、前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成され、前記回路基板は、コネクタの実装面に該コネクタと電子部品とを接続する結線パターンが形成され、前記蓋体は、前記封止状態において前記回路基板のコネクタ実装領域と電子部品実装領域との間に位置する仕切り壁を備え、前記仕切り壁の先端部分を前記封止状態において前記回路基板に沿うようにコネクタ実装領域側に折曲形成し、前記コネクタ実装領域にある前記結線パターンを被覆する被覆部を前記蓋体に対して一体に設けたことにより、基板収納ボックスの封止状態で、外部に露出するコネクタ実装領域の結線パターンを被覆部で被覆することで、結線パターンを利用した不正行為が防止できる。また、前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成したので、基板収納ボックスを遊技機に取り付けた状態で基板収納ボックスを複数回開閉することができるようになっているため、出荷納入後に回路基板を検査する場合でも、基板収納ボックスを破壊することなく簡単に回路基板を検査することができる。また、検査後に基板収納ボックスを閉塞する際には、前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着により、再度防犯効果の高い基板収納ボックスに復元することができる。」と訂正する(下線部が訂正箇所)。

2.訂正請求についての請求人の主張
(1)弁駁書における主張
a.訂正された発明について(弁駁書2頁、6(1)(1-1))
本件訂正明細書の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明」という。)は、以下のとおりのものである。(当審注:構成分けの記号(A.?H.)は、被請求人が答弁書において追加したもの。)
A. 電子部品とコネクタとを実装する回路基板を封止状態で収納する基体及び蓋体を備えた遊技機の基板収納ボックスにおいて、
B. 該基板収納ボックスを破壊するかあるいは該基板収納ボックスの一部を切断しない限り前記回路基板の封止状態を解除できない固着手段によって前記基体及び前記蓋体を固着することで前記回路基板の封止状態を実現し、
C. 複数の固着手段を設けるとともに当該固着手段による固着をするための複数の固着部を設け、さらに、前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部を前記複数の固着部に対応させて複数設け、
D. 前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成され、
E. 前記回路基板は、コネクタの実装面に該コネクタと電子部品とを接続する結線パターンが形成され、
F. 前記蓋体は、前記封止状態において前記回路基板のコネクタ実装領域と電子部品実装領域との間に位置する仕切り壁を備え、
G. 前記仕切り壁の先端部分を前記封止状態において前記回路基板に沿うようにコネクタ実装領域側に折曲形成し、前記コネクタ実装領域にある前記結線パターンを被覆する被覆部を前記蓋体に対して一体に設けた
H. ことを特徴とする遊技機の基板収納ボックス。

b.訂正事項2?5の訂正要件違反(弁駁書3?5頁6(1)(1-3))
構成Cでは、構成Aで発明対象とした基板収納ボックスにおいて、「複数の固着手段」、「複数の固着部」及び「固着部に対応する切断部」のそれぞれが基板収納ボックスのどこに設けられているのかが全く不明である。
すなわち、構成Cの記載は、「複数の固着手段」、「複数の固着部」及び「固着部に対応する切断部」のそれぞれが基板収納ボックスのいずれの部位に設けられてもよいという広義の構成となっている。
仮に段落【0021】に記載されている、取付片部83a?83cや連結部85a?85cが「固着部」や「切断部」だとした場合には、本件特許明細書に開示されている基板収納ボックスにおける、それらの配置位置に関する実施形態は一つの実施形態のみである。
同様に、構成Dにおいても、「複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着」、「一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除」、及び「前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成」なる各構成が基板収納ボックスのどの部位でおこなわれるものであるのか、「固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成」とは具体的にどのように繰り返し実行可能なのか、に関しても、多種多様な各構成の部位や実施可能な構成を包含する記載ぶりとなっている。
その一方で、これらに関する本件特許明細書における実施形態は、被請求人が指摘する段落【0040】や【0042】で開示される一つの実施形態があるに過ぎない。
以上より、訂正事項2,3及び実質的にこれらと同様の訂正内容である訂正事項4,5はいずれも、本件特許明細書に記載した事項の範囲を超えてする訂正であり、特許法134条の2第5項で準用する同法126条3項に規定された要件に違反するものである。

(2)口頭審理陳述要領書における補足(2?3頁5.(1)(1.2))
「固着手段」に関しては、本件特許明細書の符号の説明で「140 ワンウェイネジ(固着手段)」との記載があり、その実施形態としてワンウェイネジのみが記載されているが、「固着部」、「切断部」に関しては、その用語の意味を明確に説明する記載は本件特許明細書には一切ない。
さらに、「固着部」なる用語に関しては、本件特許明細書にその記載は一切なく、訂正事項2?5で初めて導入された新規な構成要件である。
したがって、用語の意味も不明りょうな新規な用語を訂正事項として導入している当該訂正部分もまた、本件特許明細書に記載した事項の範囲を超えてする訂正である。
なお、以下、口頭審理陳述要領書のことを単に「陳述要領書」という。

(3)口頭審理での陳述事項(第1回口頭審理調書)
訂正後の特許請求の範囲に記載されている「固着手段」、「固着部」及び「切断部」は、本件実施例に照らせば、それぞれ「ワンウェイネジ」、「取付片部」及び「連結部」に相当する。

3.訂正請求についての被請求人の主張
(1)訂正事項2について(陳述要領書3?4頁6(1)(1-1))
本件特許明細書の段落【0046】及び【0047】の記載から、「固着手段」は、本件実施例ではワンウェイネジとして開示されている。また、段落【0029】には「取付穴132?134の近傍には、それぞれ装備用のワンウェイネジ140を挿通状態で装備しておく装備穴135?137が穿設されている。」と記載されているように、本件実施例には、ワンウェイネジが複数設けられた基板収納ボックスが開示されている。
固着手段による固着をするための複数の固着部は、本件実施例中において、複数の取付片部として記載され、本件特許明細書の段落【0039】【0040】及び【0042】には、固着手段を構成するワンウェイネジによる固着をするための取付穴が形成された取付片部が開示されている。
複数の切断部が、「前記複数の固着部に対応させて」設けられている点は、例えば本件特許明細書の段落【0022】に開示されている。

(2)訂正事項3について(陳述要領書4?6頁6(1)(1-2))
訂正事項3は、訂正前の「前記固着手段による固着と、前記切断部の切断による固着の解除とを複数回繰り返し実行可能」な構成が、「複数の固着手段および固着部のうちの一部の固着と、当該一部の固着部に対応する切断部の切断とを、固着部及び切断部を異ならせて行なうこと」によって実現される構成であることを限定したものである。
このような構成は、本件特許明細書の段落【0039】及び【0040】に詳細に説明されている。

(3)訂正事項4,5について(陳述要領書6頁6(1)(1-3))
訂正事項4,5に係る訂正は、訂正事項1?3との整合を図るために、本件特許明細書の段落【0004】及び【0057】の記載を訂正するものである。それゆえ、訂正事項4,5の訂正の根拠は、訂正事項1?3の訂正の根拠と同じである。

4.訂正の適否
(1)訂正事項1について
本件特許明細書の請求項1に記載された「該ボックス」は、この記載だけが同請求項1に記載されている「該基板収納ボックス」及び「前記基板収納ボックス」とは異なる表記となっているため、「基板収納ボックス」を意味するものか否かかが明りょうでなかった。
しかるに、本件特許明細書の請求項1全体の記載からみて、「該ボックス」は「基板収納ボックス」を意味するものであることが明らかである。
よって、「該ボックス」を「該基板収納ボックス」と訂正する訂正事項1は、特許法134条の2第1項3号に規定される「明りようでない記載の釈明」を目的とするものであるとともに、特許法134条の2第5項で準用する同法126条3項及び4項に規定された要件を満たしているといえる。

(2)訂正事項2について
口頭審理において請求人も認めているように、本件訂正発明の「固着手段」、「固着部」及び「切断部」は、本件特許明細書に記載された実施例に照らせば、それぞれ「ワンウェイネジ」、「取付片部」及び「連結部」に相当する。
そして、訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0032】における「取付片部83aの取付穴86aを本体枠116の取付穴131にワンウェイネジ(ビス)140で止め(図8(A)参照)」との記載及び同段落【0039】における「取付片部83bの取付穴86bとこれに対応する本体枠116の取付穴132とがワンウェイネジ140によって共締めされる。」との記載に基づいて、本件特許発明の「固着手段」を複数設けるという構成に「当該固着手段による固着をするための複数の固着部を設け」という構成を付加し、さらに、同段落【0022】における「取付片部83aに対応する連結部84a・85a」、「取付片部83bに対応する連結部84b・85b」及び「取付片部83cに対応する連結部84c・85c」との記載に基づいて、本件特許発明の「切断部を複数設け」という構成を「切断部を前記複数の固着部に対応させて複数設け」という構成に限定するものである。
また、本件特許明細書の段落【0048】における「上記実施形態では、締まる方向にしか回らないワンウェイネジ140で取付片部83a?83cを締め付ける構成となっているが、これに代えて破断取付ネジやリベット等の締結部材で取付片部83a?83cを締め付ける構成としてもよく、さらには蓋体とボックス本体とを固着する第一及び第二の固着手段を溶着用の溶剤あるいは接着剤としてもよい。」との記載、同段落【0049】における「上記実施形態では、ワンウェイネジ140を取り付けるための取付穴86a?86dを回路基板ボックス62の上面側に設けているがこれに限らず、回路基板ボックス62の側面側に設けた構成としてもよい。」との記載及び同段落【0050】における「取付片部の材質は、金属や合成樹脂などいずれの材質であってもよいが、望ましくは切断させ易い合成樹脂がよい。また、切り離し可能な取付片部は、必ずしも蓋体側に設ける必要はなく、ボックス本体側に設けたり、あるいは蓋体とボックス本体との両側に設けた構成としてもよい。」との記載によれば、本件特許明細書に開示される発明の形態は一つの実施形態のみであるということはできない。
すなわち、本件特許明細書の記載によれば、本件訂正発明の「複数の固着手段」、「複数の固着部」及び「固着部に対応する切断部」については、その形態等や設置位置に相当の自由度のあることが明らかであるから、本件訂正発明の構成が本件特許明細書に記載した事項の範囲を超えているとはいえない。
そうすると、訂正事項2は、特許法134条の2第1項1号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるとともに、特許法134条の2第5項で準用する同法126条3項及び4項に規定された要件を満たしているといえる。

(3)訂正事項3について
上記訂正事項2についての項で述べたとおり、本件訂正発明の「固着手段」、「固着部」及び「切断部」は、それぞれ本件特許明細書に記載された「ワンウェイネジ」、「取付片部」及び「連結部」に相当する。
そして、訂正事項3のうち、「前記固着手段による固着」を「前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着」と限定する点、及び「複数回繰り返し実行可能」を「前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能」と限定する点は、本件特許明細書の段落【0039】の「先ず、図10(A)に示す回路基板ボックス62の閉塞状態において、・・・刻印「1」を目印に各連結部84a・85aをニッパー等の切断工具で切断する。これにより、取付片部83aは、蓋体80から完全に分離され・・・その後、回路基板ボックス62を閉塞するときには、図10(C)に示すように、蓋体80をボックス本体110に被せた状態で、・・・取り出したワンウェイネジ140を刻印「2」を目印に取付片部83bの取付穴86bに螺着する。これにより、取付片部83bの取付穴86bとこれに対応する本体枠116の取付穴132とがワンウェイネジ140によって共締めされる。・・・回路基板ボックス62が再度閉塞状態に復元される。」との記載及び同段落【0040】の「その後、回路基板ボックス62を再度検査(2回目の検査)する場合には、・・・刻印「2」を目印に各連結部84b・85bを切断する。これにより、取付片部83bを蓋体80から分離させて回路基板ボックス62を開放する。後は同様に、・・・取り出したワンウェイネジ140(装備穴136のワンウェイネジ140)を刻印「3」を目印に取付片部83cの取付穴86cに螺着して新しいホログラムシール106cを貼着する。これにより、回路基板ボックス62が再度閉塞状態に復元される。・・・」との記載に基づいている。
さらに、訂正事項3のうち、「前記切断部」を「当該一部の固着部に対応する前記切断部」と限定する点は、上記した本件特許明細書の段落【0022】、【0039】及び【0040】の各記載に基づいている。
また、上記訂正事項2についての項で述べたとおり、本件特許明細書の段落【0048】?【0050】の記載によれば、本件特許明細書に開示される発明の形態は一つの実施形態のみであるということはできず、本件訂正発明の「複数の固着手段」、「複数の固着部」及び「固着部に対応する切断部」という構成が本件特許明細書に記載した事項の範囲を超えているとはいえない。
そうすると、訂正事項3は、特許法134条の2第1項1号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるとともに、特許法134条の2第5項で準用する同法126条3項及び4項に規定された要件を満たしているといえる。

(4)訂正事項4及び5について
訂正事項4及び5は、訂正後の特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載が整合するように、本件特許明細書の段落【0004】及び【0057】の記載を訂正するものであって、全て上記訂正事項2及び3に対応するものとなっている。
よって、訂正事項4及び5は、特許法134条の2第1項3号に規定される「明りようでない記載の釈明」を目的とするものであるとともに、特許法134条の2第5項で準用する同法126条3項及び4項に規定された要件を満たしているといえる。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正事項1?5は、いずれも特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的としており、かつ、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。
したがって、本件訂正は、特許法134条の2ただし書き、及び同条5項において準用する同法126条3項、4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。

第三.請求人の主張(訂正請求に関するものを除く。)
1.概要
(1)審判請求書の主張
本件特許発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法123条1項2号により無効とすべきものである(5頁下から2行?6頁2行)。
証拠方法として甲第1?4号証(以下「甲1?4」という。)を提出。

(2)弁駁書の主張
甲第5号証(以下「甲5」という。)を追加提出。
仮に本件訂正が認められたとしても、本件訂正発明は甲1?3及び甲5に記載の技術常識に基づき容易に発明をすることができたものである(5頁20行?14頁末行)。

(3)陳述要領書の主張
甲第6?17号証(以下「甲6?17」という。)を追加提出。
本件訂正発明の構成Dは甲6?10に開示されるように技術常識であり、同構成Gも甲11?17に開示されるように技術常識である(3頁6行?9頁14行及び9頁15行?14頁下から4行)。

2.証拠方法
甲1 :特開平6-269539号公報
甲2 :特開平6-319850号公報
甲3 :特開平8-64026号公報
甲4 :特開平6-52653号公報
甲5 :特開平8-230904号公報
甲6 :特開平7-319368号公報
甲7 :特開平4-292850号公報
甲8 :特開平5-347487号公報
甲9 :特開平3-115995号公報
甲10:実公平5-4667号公報
甲11:特開平8-52258号公報
甲12:特開平8-299554号公報
甲13:実願平7-14675号(実開平8-1267号)のCD-ROM
(陳述要領書の11頁及び15頁には、実開平8-1267号公報とあるが誤記と認める。)
甲14:特開平8-107960号公報
甲15:特開平8-131619号公報
甲16:特開平7-250963号公報
甲17:特開平6-218095号公報

3.進歩性について
(1)本件訂正発明(弁駁書2頁、6(1)(1-1))
上記第二.2.(1)記載のとおりであるが再掲する。
A. 電子部品とコネクタとを実装する回路基板を封止状態で収納する基体及び蓋体を備えた遊技機の基板収納ボックスにおいて、
B. 該基板収納ボックスを破壊するかあるいは該基板収納ボックスの一部を切断しない限り前記回路基板の封止状態を解除できない固着手段によって前記基体及び前記蓋体を固着することで前記回路基板の封止状態を実現し、
C. 複数の固着手段を設けるとともに当該固着手段による固着をするための複数の固着部を設け、さらに、前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部を前記複数の固着部に対応させて複数設け、
D. 前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成され、
E. 前記回路基板は、コネクタの実装面に該コネクタと電子部品とを接続する結線パターンが形成され、
F. 前記蓋体は、前記封止状態において前記回路基板のコネクタ実装領域と電子部品実装領域との間に位置する仕切り壁を備え、
G. 前記仕切り壁の先端部分を前記封止状態において前記回路基板に沿うようにコネクタ実装領域側に折曲形成し、前記コネクタ実装領域にある前記結線パターンを被覆する被覆部を前記蓋体に対して一体に設けた
H. ことを特徴とする遊技機の基板収納ボックス。

(2)本件特許発明の進歩性について(審判請求書6?15頁、7(4))
本件特許発明の構成要件A,B,C,E,F,H(当審注:上記訂正後の各構成とほぼ対応、ただし構成要件Cには固着部の構成がない。)に相当する構成は甲1に記載され、構成要件Dに相当する構成は甲2に記載され、構成要件Gに相当する構成は甲3に記載されている。
そして、甲1と甲2は、ともに遊技機の回路基板収納ボックスに関する発明を記載するものであり、甲3は遊技機ではないものの、回路基板とカバーからなるユニットケースを記載するものであるから、甲1に記載される係止垂下片66(切断部に相当)と、係止手段である係止垂下片66及び係止突起57(固着手段に相当)に対して、構成要件Dに該当する甲2記載の構成を適用することは、当業者が適宜なし得ることであり、かつ、甲1に記載される仕切片61に対して、構成要件Gに該当相当する甲3記載の構成を適用することも当業者が適宜なし得ることである。
また、本件特許発明の作用効果は、各甲号証に記載の構成の奏する効果が単に寄せ集められたに過ぎないものであって、格別のものではない。

(3)構成C,Dについて(弁駁書5?11頁、6(2)(2-1))
被請求人は、甲2(特開平6-319850号公報)には本件訂正発明の構成Dの記載がない旨主張しているが、甲2の段落【0009】【0010】及び【0011】の記載より、甲2には『固着手段の・・固着と、・・前記切断部の切断による固着の解除とを・・複数回繰り返し実行可能に構成され、』の訂正前の構成が開示されている。
そして、一般に、技術分野を問わず、部材の固着を行う場合、複数の固着部を設け、そのうちの一部の固着と、当該一部の固着部に対応する切断部の切断による固着の解除を固着部及び切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能とすることは、技術常識である。
例えば、甲5(特開平8-230904号公報)に『複数の固着部』に相当する「接着剤層40」、「接着剤層42」と、『固着部に対応する切断部』に相当する「フラップ20」、「フラップ20b」が開示されており、「接着剤層40」によるフラップ20と第1シート片12の固着および「フラップ20」の切断による固着の解除と、「接着剤層42」によるフラップ20bと第1シート片12の固着および「フラップ20b」の切断による固着の解除は、本件訂正発明の構成C及びDに相当するものである。
そして、本件訂正発明の構成C,Dにおける各構成は、いずれも抽象概念的な記載内容からなることに鑑みれば、甲5が本件訂正発明と技術分野を異にするものであるとしても、甲5に記載の技術思想に基づいて構成C,Dのごとき抽象的な構成を想起することに何等の技術的な困難性はない。
よって、当業者が甲2記載のものを甲1記載のものに適用するに当たり、甲5で例示する技術常識に基づいて、甲2で開示される爪35を備えた複数の固定ピン31と、これが挿入される貫通孔29,30を複数回の繰返し用に異ならせて設定し、繰返しごとに固有の貫通孔29,30に対して固有の固定ピン31を固着することと、その解除を複数回繰り返し実行可能に構成したことは容易になし得たことである。
被請求人は、甲2には構成Dの「前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成され、」は記載されていないと主張するが、この主張は、甲5に記載の技術常識を完全に看過したものである。
また、被請求人は、答弁書の6頁18行?7頁17行において、甲1に対して甲2を適用できたとしても、せいぜい、甲1の“係止突起57と係止垂下片66とからなる係止手段および係止垂下片66”を、甲2に記載の固定ピン31に置換したものしか想到しない。すると、置換発明においては、固定ピンの破壊・交換を繰り返すことで基板収納ボックス50の開封・再封止が可能となるものの、開封・再封止を繰り返しても開封の痕跡が基板収納ボックス50に全く残らない旨主張するが、この主張も甲5のような技術常識を完全に看過したものである。

(4)構成Dについての補足(陳述要領書3?9頁、5.(2))
構成Dが技術常識であることを示す証拠として、甲6?10を提示する。

(5)構成Gについて(弁駁書11?14頁、6(2)(2-2))
被請求人は自作した【参考資料】を用いて甲3(特開平8-64026号公報)の認定を展開し、【参考資料】の平面図において幅Bから壁厚を除いた長さLの部分が“折曲形成部”であり、側面カバー部52bが構成Gの被覆部に相当するとの請求人の主張は誤りである旨主張する。
しかし、甲3の図3からも明らかなように、壁Cが折曲形成された先端部分は連続一体となって側面カバー52bまで続いており、この全範囲でその下方の基板51を被覆する被覆部を形成している構造のものと認定するのが自然であり、被請求人の認定は不合理で恣意的である。
被請求人は答弁書の9頁18、19行において、甲3には結線パターンを被覆する点について一切説明されていない旨主張するが、審判請求書の14頁13?22行で説明するとおり、回路部品と自己鎖錠形電線接続装置が結線パターンもしくはプリント配線等で繋がれていることは明らかであり、側面カバー部52bが端子台28,29,30、38の周囲を完全に覆っていることに鑑みれば、側面カバー部52bが、その結線パターンもしくはプリント配線を被覆する被覆部に相当するものであることは明らかである。
また、被請求人は答弁書の10頁11?17行において、甲3の記載からは回路部品と端子台28,29,30とを接続する結線パターンが基板51の表面側にあるのか裏面側にあるのか不明であり、結線パターンが基板51の裏面側にあるならば、側面カバー52bは結線パターンを全く覆わないものとなると主張しているが、結線パターンが基板51の表面、裏面のいずれの面にあったとしても、不正行為を図ろうとする側面カバー部52bの外側から見れば、これが結線パターンを完全に覆うものであることに何等疑いの余地はない。
さらに、被請求人は答弁書の10頁24行?11頁2行において、甲3には端子台と電子回路部品との間の結線パターンを側面カバー52bで被覆して不正行為から保護する思想は一切記載されておらず、半田クラックの発生を防止できさえすればいいのであるから、甲3に接した当業者が側面カバー部52bが結線パターンを覆う被覆部として機能していることを想定できないことは明白であると主張するが、不正行為に関しては甲1が課題として掲げており、甲3に不正行為に関する直接的な記載がないとしても、甲1に記載の課題を前提として、甲3に記載されたカバーするという機能を有する構成を適用することに、何等技術的困難性を要するものではない。

(6)構成Gについての補足(陳述要領書9?14頁、5.(3))
構成Gに関し、遊戯機の回路基板において、回路部品側に結線パターンを設けることが技術常識であることを示す証拠として、甲11?17を提示する。

(7)結論(弁駁書14?15頁、6(2)(2-2-4)及び6(3))
仮に、訂正が認められたとしても、本件訂正発明は、甲1?3の各記載及び技術常識である甲5の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、本件訂正発明は特許法29条2項の規定により特許を受けられないものであるから、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。

第四.被請求人の主張(訂正請求に関するものを除く。)
1.概要
(1)答弁書の主張
「本件無効審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」(3頁、6 答弁の趣旨)
甲1記載の発明に対して甲2記載の構成を適用して、甲1記載の発明が構成Dを具備するように構成することは、想到容易であるとはいえない。(7頁中段)
甲1記載の発明に対して甲3記載の構成を適用して、甲1記載の発明が構成Gを具備するように構成することは、想到容易であるとはいえない。(11頁中段)

(2)陳述要領書の主張
甲1への甲5の適用を考慮したとしても、相違点1に係る構成は、想到容易とはいえない。(11頁中段)
甲1に甲3を組み合せたとしても、当業者が相違点2に係る構成を、容易に想到し得たとすることはできない。(14頁下段)

2.進歩性について(陳述要領書6?14頁)
(1)本件訂正発明と甲1記載の発明との相違点(6頁、6(2))
審理事項通知書に記載されている本件訂正発明と甲1に記載されている発明との相違点についての認定(次の相違点1及び2)に異論はない。
[相違点1]
答弁書の3頁に記載された構成要件D「前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成され」の点。
[相違点2]
答弁書の4頁に記載された構成要件G「前記仕切り壁の先端部分を前記封止状態において前記回路基板に沿うようにコネクタ実装領域側に折曲形成し、前記コネクタ実装領域にある前記結線パターンを被覆する被覆部を前記蓋体に対して一体に設けた」点。

(2)相違点1について(6?11頁、6(3))
請求人は、甲5の記載に基づき「一般に、技術分野を問わず、部材の固着を行う場合、複数の固着部を設け、そのうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する切断部の切断による固着の解除を固着部及び切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能とすること」が技術常識であると主張する。
しかし、甲5には文書等を収納するための袋に関する発明のみが記載されており、これをもって請求人の主張する点が技術常識であるとはいえないから、技術常識を根拠にして相違点1に係る構成の容易想到を導く請求人の主張は前提において失当である。
また、甲2には基板ケース14の取外しの際には、2つの固定ピン31の双方を破壊する一方、基板ケース14の再取付けの際には、破壊した双方の固定ピン31を別のものに交換する、遊技用回路基板ケースの固定構造が開示されている。
ところが、甲2の段落【0005】や【0006】の記載からして、甲2に記載の発明は、基板ケースを着脱可能とするための手法として、基板ケースや箱体を壊すのではなく、特殊な取り外し阻止部材のみの破壊・交換による手法を提案するものであって、基板ケースの生起の着脱の際に、基板ケースあるいは箱体を破壊する構成などまったく想定されていない。
すると、仮に請求人の主張する技術常識を考慮しても、甲2記載の発明を基板ケースあるいは箱体を破壊することによって基板ケースの着脱をするものと理解することはないから、請求人の主張は失当である。
さらに、甲5の技術思想を訂正発明に取り入れるとする請求人の主張(弁駁書8頁8?11行)における、「訂正発明」は「甲第1号証」の誤記と解されるが、そのように理解した場合、請求人の主張は甲1に対して甲2ではなく甲5を組み合せて容易に想到可能という主張をしていることになるから、実質的に審判請求書の要旨の変更に該当する。
また、本件訂正発明の構成C,Dが抽象概念的であれば、甲5が本件訂正発明と技術分野を異にするものであっても、甲5から抽象的構成を想起できるという請求人の主張も、甲5から抽出される構成が抽象概念的であればあるほど、甲1に記載された具体的な基板ボックスの構造に対して抽象概念をどのように応用すれば、本件訂正発明のような構成を得られるのかという観点において、当業者に極めて高度の創作力を要求することになるはずであるから、容易想到性の判断において排除されるべき後知恵的な主張であるといえる。

(3)相違点2について(11?14頁、6(4))
請求人は、甲3の図3に示される壁Cから端子台28,29,30を越えて基板51の側面をもカバーする部分までが本件の被覆部に相当する構成であると認定しているが、本件訂正発明の被覆部は結線パターンを被覆すると規定されており、甲3の図3において「コネクタと電子部品との間」に該当する箇所は、「壁Cと端子台28,29,30との間」であるから、被請求人の答弁書9頁4?6行の主張に何ら不合理な点あるいは恣意的な点はない。
また、請求人は、甲3記載の「側面カバー部52b」が基板51を完全に被覆する構成において、結線パターンが基板の表面、裏面のいずれの面にあったとしても、不正行為を図ろうとする側面カバー部52bの外側から見れば、これが結線パターンを完全に覆うものであることに何等疑いの余地はないのであると主張する。(弁駁書14頁1?4行)
しかし、甲3には「側面カバー部52b」が基板51を完全に被覆しているとの記載はなく、甲3の図1及び図3に示されるとおり、「側面カバー部52b」は基板51の裏面側をカバーしていない。図3において基板51の下方に位置するものは符号3で示される照明器具のシャーシに過ぎない。
さらに、甲3には「側面カバー部52bの外側から見て、不正行為を図ろうとする可能性があること」について記載されていない。そもそも、甲3は照明器具の端子台の取付構造に関する発明であるから、側面カバー部52bの外側からの不正行為など想定されるはずもない。また、甲1には遊技制御回路基板を取り出すことができないようにして、該基板に不正な処理を施すことができないようにすることは記載されているものの、仕切り壁によって仕切られるコネクタの実装面に関する不正行為について一切記載がない。このため、仮に、甲1に甲3を組み合わせたとしても、当業者が相違点2に係る構成に容易に想到し得たとすることはできない。

3.口頭審理での陳述事項(第1回口頭審理調書)
遊技機の回路基板において、回路部品側に結線パターンを設けることは周知技術である。

第五.本件訂正発明
訂正請求は、上記第二.4.に記載したとおり適法なものであるので、本件訂正発明は本件訂正明細書及び図面の記載からみて、その訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 電子部品とコネクタとを実装する回路基板を封止状態で収納する基体及び蓋体を備えた遊技機の基板収納ボックスにおいて、
該基板収納ボックスを破壊するかあるいは該基板収納ボックスの一部を切断しない限り前記回路基板の封止状態を解除できない固着手段によって前記基体及び前記蓋体を固着することで前記回路基板の封止状態を実現し、
複数の固着手段を設けるとともに当該固着手段による固着をするための複数の固着部を設け、さらに、前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部を前記複数の固着部に対応させて複数設け、
前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成され、
前記回路基板は、コネクタの実装面に該コネクタと電子部品とを接続する結線パターンが形成され、
前記蓋体は、前記封止状態において前記回路基板のコネクタ実装領域と電子部品実装領域との間に位置する仕切り壁を備え、
前記仕切り壁の先端部分を前記封止状態において前記回路基板に沿うようにコネクタ実装領域側に折曲形成し、前記コネクタ実装領域にある前記結線パターンを被覆する被覆部を前記蓋体に対して一体に設けたことを特徴とする遊技機の基板収納ボックス。」

第六.甲1?17
請求人が証拠方法として提出した甲1?17は、上記第三.2.に記載したとおりである。
1.甲1記載の発明
甲1(特開平6-269539号公報)には、図面とともに以下の記載がある。
【0017】次に、本実施例の要部を構成する基板収納ボックス50の構成について図1乃至図4を参照して説明する。図1は、基板収納ボックス50の断面図と拡大部分断面図であり、図2は、基板収納ボックス50の分解斜視図であり、図3は、基板収納ボックス50の平面図であり、図4は、基板収納ボックス50の側面図である。しかして、基板収納ボックス50は、遊技制御回路基板70を収納支持する箱体51と、該箱体51の上面を閉塞するカバー体60とから組付構成され、そのように組付構成された基板収納ボックス50は、前記機構板41の裏面に止着される取付台80に着脱自在に取り付け得るようになっている。以下、各組付構成部品毎に説明する。
【0021】一方、上記した箱体51の上面を閉塞するカバー体60は、透明な合成樹脂によって一体的に成形されるもので、その後方部が下方向に曲折された仕切片61となっている。この仕切片61の位置は、カバー体60を箱体51に装着したときに図3に示すように、遊技制御回路基板70のコネクタ実装領域72が外部に現れて接続開口62を形成するような位置で曲折される。これにより、箱体51にカバー体60を組付構成した状態で接続開口62に臨むコネクタに外部からの配線を接続することができる。・・・
【0022】上記した押え部材67と係止垂下片66の詳細な説明をする前に、遊技制御回路基板70の構造について簡単に説明すると、遊技制御回路基板70は、周知のようにプリント配線基板によって構成され、その上面が電子部品の実装面とされ、その実装面の大部分が電子部品実装領域71として使用され、後方の一部がコネクタ実装領域72とされる。また、遊技制御回路基板70には、その前方左右に前記支持位置決め突起55に対応する係止穴74が形成され、その後方左右に前記止め突起56に対応する止め穴75が形成されている。
【0024】一方、係止垂下片66の作用について説明すると、係止垂下片66は、箱体51の側壁内側に設けられる係止突起57に対応するもので、図1(B)に示すように、係止垂下片66は、カバー体60に形成された貫通穴66bを貫通して一旦上方に突出された後U字状の曲折されてカバー体60の上面と一体的に接続されて形成され、その下端に外側に突設する爪部66aが形成されている。一方、係止突起57は、その上面が傾斜面57aとなっており、その下部が鋭角的に切り込まれた係合面57bとなっている。しかして、カバー体60を箱体51の上方から装着すると、係止垂下片66の爪部66aが傾斜面57aに沿って弾性変形しながら下方に移動し、遂には、爪部66aと係合面57bとが係合した状態となる。この状態で係止垂下片66と係止突起57の係合状態は、係止垂下片66の爪部66aを内側に移動させなければならないが、基板収納ボックス50の外側からこのような移動操作はできないので、一旦カバー体60を箱体51に装着した後には、簡単にカバー体60を箱体51から外すことはできない。しかして、これを外そうと思えば、図1(B)に示すB-B線をニッパ等で切断して図1(C)に示すように、係止垂下片66をカバー体60から分離させなければならない。
【0025】このように、本実施例においては、基板収納ボックス50が遊技制御回路基板70を含む箱体51やカバー体60の複数の構成部品によって組み付け構成されると共に、最終組付構成部品であるカバー体60を組み付けたときに外部から解除することができない係止垂下片66と係止突起57とからなる係止手段によって係止されているので、内部に収納される遊技制御回路基板70を取り出すには、カバー体60の一部である係止垂下片66を切断する以外に方法はなく、仮にカバー体60の一部である係止垂下片66が切断されていれば、不正な処理工作が行われたことが直ちに分かる。なお、上記した係止垂下片66をカバー体60の裏面に直接(貫通穴66bを形成することなく)形成しても良く、この場合には、係止垂下片66部分のカバー体60を破壊しなければ、カバー体60と箱体51の係合状態を解除することができない。また、係止垂下片66が多数形成されている場合には、カバー体60のほぼ全部を破壊しなければ係合状態を解除することができない。

これらの記載及び図面等からみて、甲1には、
「 上面が電子部品実装領域71とコネクタ実装領域72とされる遊技制御回路基板70を収納支持する箱体51と、該箱体51の上面を閉塞するカバー体60とから組付構成された基板収納ボックス50において、
前記カバー体60を組み付けたときに外部から解除することができない係止垂下片66と係止突起57とからなる係止手段によって係止されているので、内部に収納される遊技制御回路基板70を取り出すには、カバー体60の一部である係止垂下片66を切断する以外に方法はなく、
前記係止垂下片66は多数形成されており、
前記係止垂下片66は、前記カバー体60に形成された貫通穴66bを貫通して一旦上方に突出された後U字状に曲折されてカバー体60の上面と一体的に接続されて形成され、
前記遊技制御回路基板70は、プリント配線基板によって構成され、その上面が電子部品の実装面とされ、その実装面の大部分が電子部品実装領域71として使用され、後方の一部がコネクタ実装領域72とされ、
前記カバー体60は、その後方部が下方向に曲折された仕切片61となっており、該仕切片61は、前記カバー体60を前記箱体51に装着したときに前記コネクタ実装領域72が外部に現れて接続開口62を形成するような位置で曲折されている基板収納ボックス50。」
の発明(以下「甲1発明」という。)が開示されていると認められる。

2.甲2記載の発明
甲2(特開平6-319850号公報)には、段落【0009】?【0012】及び【図6】等からみて、
「 遊技機のキャビネット6に対して、開閉手段36を開閉操作不能な状態で固定される基板ケース14において、
該基板ケース14の蓋板20に、前記基板ケース14内に入り込む板材27を一体形成し、固定ピン31をその先端側の爪35が前記基板ケース14内に入り込む状態で、背板11,ケース本体19及び板材27に亘って挿入し、該固定ピン31は、ピン軸34の挿入端側に軸芯方向に向けて弾性変形可能な爪35がその先端部分を前記ピン軸34の外周面よりも外方に突出させる状態で一体成形され、前記固定ピン31を前記爪35側から挿入するにともなって、その爪35が軸芯方向に向けて弾性変形し、前記爪35の先端部分が貫通孔30から抜けると復帰変形して、その先端部分が前記板材27に係止することで、前記基板ケース14及び前記キャビネット6から取り外し不能に装着され、前記基板ケース14内の回路基板13を不正目的でなく取替えたり修理する際には、前記固定ピン31の軸芯に沿ってドリル等で孔を明けて、前記爪35の基部を壊してしまうことで前記先端部分の前記板材27に対する係止を解除し、所定の作業を終えてから、別の固定ピン31を使用して再固定する基板ケース14。」
の発明(以下「甲2発明」という。)が開示されていると認めることができる。

3.甲3記載の発明
甲3(特開平8-64026号公報)には、段落【0015】、【0019】?【0021】及び【図1】?【図3】等からみて、
「 端子台28,29,30,38などの回路部品を搭載した基板51と、前記基板51の裏面側で半田付けした端子台と、前記端子台28,29,30,38を搭載した前記基板51側で、かつ、少なくとも前記端子台28,29,30,38を除く回路部品を搭載した面を覆う下面を開口したカバー52とからなるユニットケースにおいて、
前記カバー52は、中央部に下面開口の略箱状をなす中央カバー部52aと、この中央カバー部52aの長手方向の両端にカバー部52aの開口端側に連続して端子台28,29,30,38 を覆うようにした下面開口の略箱状をなす側面カバー部52bとからなり、略T字形状をなす形状をしており、
前記側面カバー部52bには、直方体の形状をした前記端子台28,29,30の外側周面28a,29a,30a と係合するように、前記端子台28,29,30の高さより少し背が低く、前記外側周面28a,29a,30a と略同一形の長方形状の係合孔70,71,72を有する隔壁70a,71a,72a を設け、前記端子台38の外側周面38a と係合する係合孔73を設け、
前記カバー52の外端面と前記端子台28,29,30との間に隙間を設けたユニットケース。」
の発明(以下「甲3発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.甲4記載の技術
甲4(特開平6-52653号公報)には、段落【0002】及び【図10】等からみて、プリント基板13の表面に形成された配線パターン14を介して、インターフェースコネクタ12とロジックLSI15とを接続する技術が記載されている。

5.甲5記載の技術
甲5(特開平8-230904号公報)には、段落【0012】?【0021】及び【図1】?【図3】等からみて、矩形の第1シート片12と、該第1シート片12とほぼ同大の矩形の第2シート片14と、該第2シート片14の一側縁18から外方に延設したフラップ20とからなり、前記フラップ20における袋の開口端32近傍に断続状の切込み線よりなる折畳み線21が配され、前記フラップ20の内面におけるフラップ自由端26と前記折畳み線21との中間部分においては、断続状の切込み線よりなる切取り線34が袋幅方向に延び、前記フラップ20における前記自由端26側の部分20aに第1の接着剤層40が配され、前記フラップ20における基部側の部分20bに第2の接着剤層42が配され、これら接着剤層40,42は剥離紙41,43によって覆われている袋が記載されている。
そして、この袋を使用する場合、まず前記剥離紙41を取り除き、前記折畳み線21を介してフラップ20を折り、前記フラップ20を前記第1シート片12の上に重ねて封緘し、前記切取り線34の個所において前記フラップ20を切断し、前記自由端26側の部分20aを前記第1シート片12上に接着した状態で残したまま、前記フラップ20の基部側の部分20bを上方に展開し、この袋を再利用しようとする場合には、前記剥離紙43を剥離して接着剤層42を露出させ、この接着剤層42を介して、前記前記フラップ20の基部側の部分20bを第1シート片12に接着させることが記載されている。

6.甲6記載の技術
甲6(特開平7-319368号公報)には、段落【0022】?【0024】、【0030】?【0033】及び【図1】、【図5】等からみて、第1容器枠体12aと、これに結合し得る第2容器枠体12bとからなるトナー容器12において、双方の容器枠体12a及び12bには、それぞれ複数の固着タブ12a2及び12b2が各々対向するように設けてあり、前記複数の固着タブ12a2及び12b2のうちからいくつかの対を選択的に固着することによって両容器枠体12a、12bを結合でき、固着された固着タブ12a2、12b2をカッター等によって切断するだけで前記第1容器枠体12aと前記第2容器枠体12bとに分解することができ、さらに、分解後に前記前記複数の固着タブ12a2及び12b2のうち未使用の固着タブ12a2、12b2を選択的に固着することによって再結合を行う技術が記載されている。

7.甲7記載の技術
甲7(特開平4-292850号公報)には、段落【0008】?【0013】及び【図1】?【図5】等からみて、電槽11と蓋12とで構成された容器において、前記電槽11の周壁11aの上端部全周には外向きのフランジ21が形成され、前記蓋12の周壁12aの下端部全周には外向きのフランジ22が形成され、前記フランジ21は斜め下方に階段状に延び、前記フランジ22も斜め下方に階段状に延びており前記フランジ21に上から噛合うように当接するようになっており、両フランジ21、22とも3段に形成され、前記フランジ21の上面21aと前記フランジ22の下面22aのみを接着又は溶着により接合すれば、気密的容器を構成でき、電槽11と蓋12を解体する際には、両フランジ21、22の接合部、即ち前記上面21aと前記下面22aの部分のみを切断すればよく、その後フランジ21の上面21bとフランジ22の下面22bのみを接合すれば、再度、気密的容器を構成できる技術が記載されている。

8.甲8記載の技術
甲8(特開平5-347487号公報)には、段落【0008】?【0016】及び【図1】、【図2】等からみて、箱形の上ケース(蓋)1と下ケース2とからなる金属筐体において、上ケース1は根元切欠き部1a-1を備えた複数の接合用舌片1aを有し、そのうちのいくつかが選択されて先端が下ケース2の側面にロー付けされることで接合され、上ケース1を開放する場合は、ロー付けされた接合用舌片1aの根元切欠き部1a-1をニッパなどの刃物で切断し、つぎにその上ケース1を再使用し組み立てる場合は、隣の接合用舌片1aを利用し接合する技術が記載されている。

9.甲9記載の技術
甲9(特開平3-115995号公報)には、〔課題を解決するための手段〕、〔作用〕、〔実施例〕の項及び第1図?第3図等からみて、照明ケース1に導光体7を固定する構造において、照明ケース1の前面開口部に段差部4を周設し、この段差部4の水平な載置受面4Aにピン状の本固定用突部5とピン状の予備固定用突部5Aとを二組前方に向かって突設し、導光体7に一方の組の本固定用突部5と予備固定用突部5Aとに対応して円孔8,8Aを形成すると共に、他方の組の突部5,5Aに対応して長溝9,9Aを形成しておき、照明ケース1の段差部4に導光体7を嵌置し、円孔8及び長溝9に挿通する本固定用突部5の先端を熱溶着または圧着して固定し、その後不良が見つかった場合には、本固定用突部5の熱溶着または圧着部分を除去して導光体7を照明ケース1から離脱すると共に本固定用突部5をきれいに除去し、不良箇所の修正後、導光体7の円孔8A及び長溝9Aに予備固定用突部5Aを挿通した状態で導光体7を段差部4に嵌置し、円孔8A及び長溝9Aに挿通ずる予備固定用突部5Aの先端を熱溶着または圧着して潰し、照明ケース1の段差部4に導光体7を再固定する技術が記載されている。

10.甲10記載の技術
甲10(実公平5-4667号公報)には、〔考案が解決しようとする問題点〕、〔問題点を解決するための手段〕、〔作用〕、〔実施例〕の項及び第1図等からみて、前面パネル1に押釦2を溶着する構造において、前面パネル1に正規の溶着用ダボ3と予備の溶着用ダボ3′を設け、また押釦2に正規の溶着用ダボ穴4と予備の溶着用ダボ穴4′を設け、最初の溶着時には正規の溶着用ダボ3だけを用いて溶着し、その後押釦2を交換するときは前面パネル1のダボ3をニッパ等で切断し分離してから、予備の溶着用ダボ3′を利用して同じ前面パネル1に押釦2を溶着する技術が記載されている。

11.甲11記載の技術
甲11(特開平8-52258号公報)には、段落【0016】等からみて、パチンコ機において、配線基板24,25,26の片面若しくは両面に各種の電気部品への配線パターンを形成する技術が記載されている。

12.甲12記載の技術
甲12(特開平8-299554号公報)には、段落【0007】及び【図1】、【図2】等からみて、パチンコ機において、基板2の前後表面にプリント配線を適宜施すと共に、後面にトランジスタ、抵抗などのチップ素子7…を配設して電気回路を形成する技術が記載されている。

13.甲13記載の技術
甲13(実願平7-14675号(実開平8-1267号)のCD-ROM)には、段落【0049】及び【図3】等からみて、基板3の両面にプリント配線を施し、電子部品は一方の面のみに実装する技術が記載されている。

14.甲14記載の技術
甲14(特開平8-107960号公報)には、段落【0010】及び【図1】等からみて、パチンコ機において、パターン印刷が施された片面プリント配線基板からなる制御基板12のパターン面に、複数の電子部品12aを実装する技術が記載されている。

15.甲15記載の技術
甲15(特開平8-131619号公報)には、段落【0010】及び【図1】等からみて、パチンコ機において、プリント基板50の正面側に配線パターン59を形成すると共に、該配線パターン59と電気的に接続されたコネクタピン53及びコネクタピン53に挿入される照明用ランプ52を設ける技術が記載されている。

16.甲16記載の技術
甲16(特開平7-250963号公報)には、段落【0020】、【0021】及び【図2】等からみて、パチンコ機において、中継基板7等が取付けられているセット板1の裏面の平らな面には、中継基板7,9の電線10と、メイン回路の電線11とを中継する配線12をメッキ法によってプリントする技術が記載されている。

17.甲17記載の技術
甲17(特開平6-218095号公報)には、段落【0017】、【0027】及び【図1】、【図2】等からみて、遊技機において、遊技制御基板53の表面側及び裏面側に配線パターン254を形成するとともに、コネクタ63、64、65、66A、67Bを設ける技術が記載されている。

第七.本件訂正発明と甲1発明との対比
そこで、本件訂正発明と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「遊技制御回路基板70」は、本件訂正発明の「回路基板」に相当し、以下同様に、
「箱体51」は「基体」に、
「カバー体60」は「蓋体」に、
「基板収納ボックス50」は「遊技機の基板収納ボックス」に、
「係止突起57」は「固着部」に、
「仕切片61」は「仕切り壁」に、それぞれ相当する。
また、甲1の記載全体から見て、次のことがいえる。
a.甲1発明の「遊技制御回路基板70」は、上面が電子部品実装領域71とコネクタ実装領域72とされているから、電子部品とコネクタとを実装するものであるといえる。
また、甲1発明の「カバー体60」は、遊技制御回路基板70を収納支持する箱体51の上面を閉塞するのであるから、甲1発明の「箱体51」及び「カバー体60」は、遊技制御回路基板70を封止状態で収納するものといえる。

b.甲1発明において「カバー体60の一部である係止垂下片66を切断する」こと及び「内部に収納される遊技制御回路基板70を取り出す」ことは、本件訂正発明において、基板収納ボックスの一部を切断すること及び回路基板の封止状態を解除することに相当し、甲1発明は「内部に収納される遊技制御回路基板70を取り出すには、カバー体60の一部である係止垂下片66を切断する以外に方法はなく」というものであるから、甲1発明の「係止垂下片66」は、本件訂正発明の「基板収納ボックスの一部を切断しない限り前記回路基板の封止状態を解除できない固着手段」に相当するものといえる。
また、甲1発明の「係止垂下片66」は、箱体51とカバー体60とを組み付けるためのものであるから、本件訂正発明の「前記基体及び前記蓋体を固着することで前記回路基板の封止状態を実現」するに相当する機能を有している。

c.甲1発明の「係止垂下片66」は多数形成されているから、それに対応する「係止突起57」も当然多数形成されている。
よって、甲1発明は本件訂正発明の「複数の固着手段を設けるとともに当該固着手段による固着をするための複数の固着部を設け」に相当する構成を有しているといえる。

d.段落【0024】の記載等からみて、甲1発明の「係止垂下片66」における「貫通穴66bを貫通して一旦上方に突出された後U字状に曲折されてカバー体60の上面と一体的に接続されて形成され」ている部分は、本件訂正発明の「前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部」に相当する。
そして、該部分は多数形成されている係止垂下片66の一部であって、多数の係止突起57に対応させて設けられていることも明らかなので、甲1発明は本件訂正発明の「前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部を前記複数の固着部に対応させて複数設け」に相当する構成を有しているといえる。

e.甲1発明の「前記カバー体60を前記箱体51に装着したとき」は、本件訂正発明において「前記封止状態」としたときに相当し、甲1発明において「仕切片61」が「前記コネクタ実装領域72が外部に現れて接続開口62を形成するような位置で曲折されている」ということは、本件訂正発明において「仕切り壁」が「前記回路基板のコネクタ実装領域と電子部品実装領域との間に位置する」ことと実質的に同じ構成であるといえる。
そうすると、甲1発明は本件訂正発明の「前記蓋体は、前記封止状態において前記回路基板のコネクタ実装領域と電子部品実装領域との間に位置する仕切り壁を備え」に相当する構成を有するものということができる。

以上を総合すると、両者は、
「 電子部品とコネクタとを実装する回路基板を封止状態で収納する基体及び蓋体を備えた遊技機の基板収納ボックスにおいて、
該基板収納ボックスを破壊するかあるいは該基板収納ボックスの一部を切断しない限り前記回路基板の封止状態を解除できない固着手段によって前記基体及び前記蓋体を固着することで前記回路基板の封止状態を実現し、
複数の固着手段を設けるとともに当該固着手段による固着をするための複数の固着部を設け、さらに、前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部を前記複数の固着部に対応させて複数設け、
前記蓋体は、前記封止状態において前記回路基板のコネクタ実装領域と電子部品実装領域との間に位置する仕切り壁を備える遊技機の基板収納ボックス。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本件訂正発明が「前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成され」ているのに対し、甲1発明は全部の係止垂下片66を切断しなければ係合状態を解除することができず、固着と固着の解除を複数回繰り返し実行可能なものではない点。

[相違点2]本件訂正発明は「前記仕切り壁の先端部分を前記封止状態において前記回路基板に沿うようにコネクタ実装領域側に折曲形成し、前記コネクタ実装領域にある前記結線パターンを被覆する被覆部を前記蓋体に対して一体に設けた」ものであるのに対し、甲1発明はそのような構成になっていない点。

第八.当審の判断
1.[相違点1]について
甲2発明は、第六.2.に記載したとおり、次の構成のものである。
「 遊技機のキャビネット6に対して、開閉手段36を開閉操作不能な状態で固定される基板ケース14において、
該基板ケース14の蓋板20に、前記基板ケース14内に入り込む板材27を一体形成し、固定ピン31をその先端側の爪35が前記基板ケース14内に入り込む状態で、背板11,ケース本体19及び板材27に亘って挿入し、該固定ピン31は、ピン軸34の挿入端側に軸芯方向に向けて弾性変形可能な爪35がその先端部分を前記ピン軸34の外周面よりも外方に突出させる状態で一体成形され、前記固定ピン31を前記爪35側から挿入するにともなって、その爪35が軸芯方向に向けて弾性変形し、前記爪35の先端部分が貫通孔30から抜けると復帰変形して、その先端部分が前記板材27に係止することで、前記基板ケース14及び前記キャビネット6から取り外し不能に装着され、前記基板ケース14内の回路基板13を不正目的でなく取替えたり修理する際には、前記固定ピン31の軸芯に沿ってドリル等で孔を明けて、前記爪35の基部を壊してしまうことで前記先端部分の前記板材27に対する係止を解除し、所定の作業を終えてから、別の固定ピン31を使用して再固定する基板ケース14。」
そして、甲1発明及び甲2発明は、ともに遊技機の基板を収納するための蓋を備えた箱である点で共通しているので、甲1発明のカバー体60を箱体51に組み付けるための、係止垂下片66と係止突起57とからなる係止手段に代えて、甲2発明の固定ピン31を箱体51及びカバー体60に一体形成した板材に亘って挿入する構成とすることは当業者にとって容易であるが、そのような構成では本件訂正発明のように、固着手段、固着部及び切断部を、それぞれ複数設けて、「前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能」なものとはならない。
また、甲2発明が、蓋板20と基板ケース14との固定を一旦解除した後、再固定できるようになっていることに鑑み、甲1発明のカバー体60と箱体51との組み付けを一旦解除した後、再組み付けできないかと、当業者が思い至ることは容易かもしれない。
ここで、甲1発明の係止垂下片66と係止突起57とからなる係止手段と同様の手段を複数用いて、蓋又はカバーと本体との固定を一旦解除した後、再固定できるようにする技術が周知であるなら、相違点1に係る本件訂正発明の構成を導き出せるといえるが、そのような技術が周知であることを示す証拠は提示されていない。すなわち、請求人が提示した、甲5?甲10に示された固定に関する構成は、いずれも甲1発明の係止垂下片66と係止突起57とからなる係止手段とは形態が大きく異なっている。
次に、甲5?甲10記載の技術について吟味する。
まず、甲5記載の技術及び甲10記載の技術は、それぞれ袋の封緘に関する技術及びパネルへの押釦取り付けに関する技術であるから、甲1発明への適用は到底考えられるものではない。
また、甲6?甲9記載の技術は、容器又はケース本体に蓋状のものを固定した後、固定を解除し再固定する技術ではあるものの、いずれも単なる再利用が目的であって、不正防止を目的としたものではないので、甲1発明とは目的が異なっている。
そして、固定に関する手段についても上記のとおり、その形態が大きく異なっているから、甲6?甲9記載の技術を甲1発明に採用することには飛躍があるといわざるを得ない。
なお、甲6?甲9記載の技術を甲1発明に採用できるとしてみても、甲6記載の技術における複数の固着タブ12a2及び12b2は、固着手段と固着部という関係になく(段落【0030】によれば、固着するために溶着等の手段を用いている。)、甲7記載の技術におけるフランジ21、22は、固着手段と固着部という関係になく(段落【0010】によれば、固着するために接着又は溶着の手段を用いている。)、甲8記載の技術における複数の接合用舌片1aと下ケース2の側面は、固着手段と固着部という関係になく(段落【0011】によれば、固着するためにロー付けの手段を用いている。)、甲9記載の技術における本固定用突部5及び予備固定用突部5Aと円孔8,8A並びに他方の組の突部5,5Aと長溝9,9Aは、固着手段と固着部という関係にない(2頁左下欄によれば、熱溶着または圧着の手段を用いている。)。
さらに、甲6?甲9記載の技術の固定に関する構成は、それぞれ形態が異なっているから、どのようなものが周知の構成といい得るのかについても明らかでない。
したがって、相違点1に係る本件訂正発明の構成は、請求人が提出した証拠である甲1、甲2及び甲5?10に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。

2.[相違点2]について
甲3発明は、上記第六.3.に記載したとおり、次の構成のものである。
「 端子台28,29,30,38などの回路部品を搭載した基板51と、前記端子台28,29,30,38を搭載した前記基板51側で、かつ、少なくとも前記端子台28,29,30,38を除く回路部品を搭載した面を覆う下面を開口したカバー52とからなるユニットケースにおいて、
前記端子台28,29,30,38は、前記基板51の裏面側で半田付けしてあり、
前記カバー52は、中央部に下面開口の略箱状をなす中央カバー部52aと、この中央カバー部52aの長手方向の両端にカバー部52aの開口端側に連続して端子台28,29,30,38 を覆うようにした下面開口の略箱状をなす側面カバー部52bとからなり、略T字形状をなす形状をしており、
前記側面カバー部52bには、直方体の形状をした前記端子台28,29,30の外側周面28a,29a,30a と係合するように、前記端子台28,29,30の高さより少し背が低く、前記外側周面28a,29a,30a と略同一形の長方形状の係合孔70,71,72を有する隔壁70a,71a,72a を設け、前記端子台38の外側周面38a と係合する係合孔73を設け、
前記カバー52の外端面と前記端子台28,29,30との間に隙間を設けたユニットケース。」
すなわち、側面カバー部52bは、端子台28,29,30,38 を覆うようにはなっているが、端子台28,29,30,38は、基板51の裏面側で半田付けしてあり、端子台28,29,30,38と基板51に搭載されている回路部品との接続は、基板51の裏面側でなされているものと認められるから、側面カバー部52bはその接続部分を覆うものということはできない。
そして、甲3発明において、カバー52の外端面と端子台28,29,30との間に隙間を設けて、図3に示されるB寸法が大きくとられているのは、段落【0021】に記載されているように、端子台の凸部28b,29b,30b が中央カバー部52aの壁Cに引掛かって、係合孔70,71,72に挿入しにくくなるのを防止するためである。
また、甲1にも、遊技制御回路基板70の仕切片61よりコネクタ側を覆うことについては記載されていない。
そうしてみると、甲11?甲17記載の技術に照らして、遊技機の回路基板において、回路部品側に結線パターンを設けることが周知技術であるとしても、甲1発明に該周知技術を採用して、遊技制御回路基板70のコネクタ実装領域72(本件訂正発明の「コネクタの実装面」に相当)に、コネクタと電子部品とを接続するプリント配線を形成するのが当業者にとって容易といえるにとどまり、その上で仕切片61をコネクタ実装領域72側に折り曲げて、コネクタと電子部品とを接続するプリント配線を覆うことを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、上記相違点2に係る本件訂正発明の構成は、請求人が提出した証拠である甲1、甲3及び甲11?甲17に基づいて当業者が容易に想到できたものとはいえない。

3.まとめ
上記相違点1及び2に係る本件訂正発明の構成により、本件特許明細書の【0057】に記載されるように「出荷納入後に回路基板を検査する場合でも、基板収納ボックスを破壊することなく簡単に回路基板を検査することができる。また、検査後に基板収納ボックスを閉塞する際には、固着手段を取り付けることにより、再度防犯効果の高い基板収納ボックスに復元することができる。」及び「基板収納ボックスの封止状態で、外部に露出するコネクタ実装領域の結線パターンを被覆部で被覆することで、結線パターンを利用した不正行為が防止できる。」という甲1発明?甲3発明では得られない格別の効果を奏するものである。
よって、本件訂正発明は、甲1?17に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

第九.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件訂正発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技機の基板収納ボックス
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】電子部品とコネクタとを実装する回路基板を封止状態で収納する基体及び蓋体を備えた遊技機の基板収納ボックスにおいて、
該基板収納ボックスを破壊するかあるいは該基板収納ボックスの一部を切断しない限り前記回路基板の封止状態を解除できない固着手段によって前記基体及び前記蓋体を固着することで前記回路基板の封止状態を実現し、
複数の固着手段を設けるとともに当該固着手段による固着をするための複数の固着部を設け、さらに、前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部を前記複数の固着部に対応させて複数設け、
前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成され、
前記回路基板は、コネクタの実装面に該コネクタと電子部品とを接続する結線パターンが形成され、
前記蓋体は、前記封止状態において前記回路基板のコネクタ実装領域と電子部品実装領域との間に位置する仕切り壁を備え、
前記仕切り壁の先端部分を前記封止状態において前記回路基板に沿うようにコネクタ実装領域側に折曲形成し、前記コネクタ実装領域にある前記結線パターンを被覆する被覆部を前記蓋体に対して一体に設けたことを特徴とする遊技機の基板収納ボックス。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品とコネクタとを実装する回路基板を封止状態で収納する基体及び蓋体を備えた遊技機の基板収納ボックスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、パチンコ遊技機やスロットマシンには、多くの回路基板が設けられている。特に、遊技動作を制御する遊技制御回路基板には、マイクロコンピュータを構成するMPU、ROM、RAM等の電子素子が多数実装されている。そして、遊技動作を制御するプログラムが格納されるROMを交換することにより、多くの場合、異なる遊技内容を実現することが可能である。このため、遊技制御回路基板は、通常、基板収納ボックス内に封止状態で設けられ、ROM交換などの不正行為を防止するようになっていた。また、回路基板に実装されたコネクタと外部配線との接続は、特開平7-88226号公報の基板収納ボックスのように、ボックスの外壁面に穿設された挿通穴に外部配線を挿通して、ボックス内でコネクタに接続するものが提案されている。しかしながら、このような構成では、外部配線の取り付け部分(コネクタ)がボックス内にあるため、回路基板の故障等による交換や回路基板の検査等でコネクタから外部配線を取り外す場合、その取り外し作業が非常に困難なものとなっていた。そこで、回路基板の封止状態において回路基板のコネクタ実装領域のみを外部に露出して設けることにより、外部配線の取り付け作業及び取り外し作業を容易にした基板収納ボックスが提案された。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記コネクタ実装領域を外部に露出して設けた基板収納ボックスでは、コネクタの結線パターンの一部も外部に露出していた。このため、回路基板は基板収納ボックス内に収納したまま、露出した結線パターンを利用して回路基板を改造する不正行為が行われていた。本発明は、上記した事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、回路基板のコネクタ実装領域を外部に露出して設けた基板収納ボックスにおいて、コネクタの結線パターンを被覆することで、結線パターンを利用した不正行為が防止できる遊技機の基板収納ボックスを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、電子部品とコネクタとを実装する回路基板を封止状態で収納する基体及び蓋体を備えた遊技機の基板収納ボックスにおいて、該基板収納ボックスを破壊するかあるいは該基板収納ボックスの一部を切断しない限り前記回路基板の封止状態を解除できない固着手段によって前記基体及び前記蓋体を固着することで前記回路基板の封止状態を実現し、複数の固着手段を設けるとともに当該固着手段による固着をするための複数の固着部を設け、さらに、前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部を前記複数の固着部に対応させて複数設け、前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成され、前記回路基板は、コネクタの実装面に該コネクタと電子部品とを接続する結線パターンが形成され、前記蓋体は、前記封止状態において前記回路基板のコネクタ実装領域と電子部品実装領域との間に位置する仕切り壁を備え、前記仕切り壁の先端部分を前記封止状態において前記回路基板に沿うようにコネクタ実装領域側に折曲形成し、前記コネクタ実装領域にある前記結線パターンを被覆する被覆部を前記蓋体に対して一体に設けたことを特徴とするものである。このように構成することにより、基板収納ボックスの封止状態で、外部に露出するコネクタ実装領域の結線パターンを被覆部で被覆することにより、結線パターンを利用した不正行為が防止できる。また、前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成したので、基板収納ボックスを遊技機に取り付けた状態で基板収納ボックスを複数回開閉することができるようになっているため、出荷納入後に回路基板を検査する場合でも、基板収納ボックスを破壊することなく簡単に回路基板を検査することができる。また、検査後に基板収納ボックスを閉塞する際には、前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着により、再度防犯効果の高い基板収納ボックスに復元することができる。
【0005】
【0006】
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、図1及び図2を参照して弾球遊技機1の全体の構成について説明する。図1は、実施形態に係る弾球遊技機1の正面図であり、図2は、弾球遊技機1の背面図である。
【0008】
弾球遊技機1は、縦長な方形状に枠組み形成される外枠2と、該外枠2の一側に開閉自在に軸支され且つ弾球遊技機1の主要構成部のほぼすべてが集約して設けられる枠基体3と、該枠基体3の前面上部に開閉自在に設けられるガラス板保持枠4と、から構成されている。枠基体3に設けられる主要構成部としては、ガラス板保持枠4、遊技盤40、上皿12、灰皿21を含む下皿18、操作ハンドル22、機構板50、打球発射装置71がある。また、図示の実施形態では、弾球遊技機1の側方に遊技者に遊技玉を貸し出すためのユニット装置としてのカードユニット装置30が付設されている。
【0009】
ガラス板保持枠4には、後述する遊技盤40の遊技領域をほぼ透視し得る円形透視窓5が開設され、該円形透視窓5の裏面からガラス板が装着されている。また、ガラス板保持枠4には、円形透視窓5の外周に沿って、その上部に装飾LED7が、その左右両側方に装飾蛍光灯6a・6bが設けられている。この装飾LED7や装飾蛍光灯6a・6bは、遊技状態に応じて点灯又は点滅されるものであり、特別の遊技状態の発生時や継続時を遊技者に報知すると共に遊技の雰囲気を盛り上げるものである。また、ガラス板保持枠4の軸支側上部には、払い出すべく景品玉が不足したことを報知する玉切れLED8や、入賞玉の発生に基づいて所定個数の景品玉が払い出されたことを報知する払出LED9が設けられ、更に、ガラス板保持枠4の上部左右に遊技の進行に応じた効果音を発生するスピーカ10a・10bが設けられている。なお、上記した構成のうち、装飾LED7や玉切れLED8及び払出LED9は、複数のLEDがプリント配線基板上に実装されるように構成されるものであるが、このプリント配線基板を金属ベースプリント配線基板で構成することにより、LEDから発生される熱の放熱効果を高めることができる。
【0010】
次に、ガラス板保持枠4の下部で開閉自在に取り付けられる上皿12の構成について説明すると、上皿12は、合成樹脂製の上皿開閉板11の表面に複数の合成樹脂製部材を組合せた皿部材を固着することにより構成されている。上皿開閉板11には、その開放側の上端に玉抜き操作レバー16が設けられている。この玉抜き操作レバー16は、左右方向に移動可能に設けられ、図示しないスプリングの付勢力に抗して一方向に移動させることにより、上皿12に貯留されていた玉を上皿開閉板11の裏面に形成される玉抜き路(図示しない)を流下させて下皿18に誘導するものである。また、上皿12には、その内部に圧電ブザー17が内蔵されている。この圧電ブザー17は、遊技玉の貸出異常が生じたとき(例えば、ピッ、ピッ、ピッという連続音)、あるいは遊技玉の貸出時(例えば、100円相当の遊技玉が払い出される毎にピーという音)に、その旨を報知する報知音が発生されるものである。
【0011】
上記した上皿12について、さらに詳細に説明すると、上皿12は、その上流側に形成される賞球払出口14とその下流側に形成される打球供給口15とを連絡するように貯留整列路13が形成されており、その貯留整列路13の中程底面裏面に上皿玉検出器(図示しない)が設けられている。この上皿玉検出器は、上皿12に残留する打玉を検出するものである。また、上皿12には、弾球遊技機1に隣接して設けられるカードユニット装置30を介して遊技玉を借り受ける際に操作する操作部が設けられている。なお、この操作部は、玉貸スイッチ、返却スイッチ、自動玉貸スイッチ、度数表示LED、及び自動玉貸表示LED(共に図示しない)から構成されている。玉貸スイッチは、カードユニット装置30によって遊技玉を借り受ける際に操作するものである。返却スイッチは、遊技終了の際にカードユニット装置30のカード挿入口33に差し込まれたカードを返却するためのものである。度数表示LEDは、カードユニット装置30のカード挿入口33に差し込まれたカードの残額が表示されるものである。また、自動玉貸スイッチは、借り受けるべき遊技玉を前記玉貸スイッチを操作して行うマニュアルモードと、上皿12の打玉の残量が前記上皿玉検出器によって検出されなくなったときに自動的に遊技玉を払い出す自動モードと、のいずれかのモードに設定するものであり、自動モータが選択設定されているときには、自動玉貸表示LEDが点灯している。
【0012】
しかして、後述する遊技盤40の遊技内容において大当り遊技状態が発生すると、短時間に多量の入賞玉を獲得するチャンスがある。このように大当り遊技状態という遊技者にとって極めて大きなチャンスは、上皿12の残留玉がほとんどなくなった時点で発生する場合もあり、このような場合、続けて打玉を発射させて打玉を可変入賞球装置42の特定入賞領域に入賞させる必要があるにも拘らず、打玉が上皿12に残存しないので、慌てて玉貸スイッチを操作して遊技玉を借り受けなければならない。しかし、玉貸スイッチを操作してから遊技玉が払い出され、しかもその玉が発射されて可変入賞球装置42の特定入賞領域に到達するまでに多少の時間がかかるため、その時間の間に有利なチャンス(継続権の成立)を逃してしまうという不都合があるが、本実施形態においては、自動玉貸スイッチを自動モードに設定しておけば、上皿玉検出器が打玉の不存在を検出した時点で自動的に遊技玉を上皿12に払い出すので、上記したような不都合は生じない。なお、上皿12として上記した制御を行わないならば、上皿玉検出器及び自動玉貸スイッチを省略したものでも良い。
【0013】
また、枠基体3の下部に取り付けられる下皿18は、前記上皿12から溢れた賞球であって余剰玉通路(図示しない)を介して余剰玉払出口19から排出される余剰の賞球を貯留するものであり、その下皿18の前面壁には、玉抜き操作レバー20がスライド可能に取り付けられるようになっている。この玉抜き操作レバー20を操作することにより、下皿18に貯留されていた賞球を下方に玉抜きして持ち運び可能な玉箱に移し替えることができる。また、下皿の左側には、灰皿21が設けられ、右側には、操作ハンドル22が設けられている。操作ハンドル22は、後述する打球発射装置71の発射装置モータ72の駆動を開始せしめるメインスイッチ及びタッチアンテナ(共に図示しない)を内蔵していると共に、弾発力を調節するものである。
【0014】
弾球遊技機1の正面構造は、概ね上記した通りであるが、図示の実施形態では、弾球遊技機1にカードユニット装置30が隣接されている。このカードユニット装置30は、前記上皿12の上面に設けられる前述した操作部を操作することにより作動されるものである。しかして、カードユニット装置30は、使用可能状態であるか否かを表示する使用可能表示器31と、当該カードユニット装置30がいずれの側の弾球遊技機1に対応しているか否かを表示する連結台方向表示器32と、記録媒体としての磁気カードを挿入するカード投入口33とが設けられている。そして、このように構成されるカードユニット装置30は、独自の制御回路によって制御されるものであるが、上皿12に設けられる玉貸スイッチ、返却スイッチ、及び度数表示LEDや、後述する制御基板ボックス64内に収納された賞球払出制御基板63と接続されている。なお、カードユニット装置30を弾球遊技機1に内蔵しても良い。なお、本実施形態においては、遊技者に遊技玉を貸し出すためのユニット装置としてカードユニット装置30を例示したが、例えば、紙幣等を挿入し得るユニット装置であっても良い。
【0015】
次に、遊技盤40の正面構造について説明すると、遊技盤40は、前記枠基体3の裏面側に一体的に形成される遊技盤収納枠(図示しない)に収納固定されるべく、ほぼ正方形状の合板により形成され、その表面には、円形うず巻き状に誘導レール(図示しない)が取り付けられ、該誘導レールの内側が遊技領域とされて発射された打玉が落下するものである。遊技領域には、図示の場合、ドラム状可変表示装置41や可変入賞球装置42やドラム状可変表示装置41の可変表示を許容する始動入賞口43が設けられると共に、単に打玉を入賞とする入賞口44・45、打玉の流下方向及び速度を変化せしめる風車又は多数の障害釘が設けられ、また、遊技領域の最下方には、いずれの入賞領域にも入賞しない打玉が取り込まれるアウト口46が設けられている。
【0016】
一方、弾球遊技機1の裏面側には、図2に示すように、機構板50が開閉自在に設けられている。機構板50の中央には窓開口51が開設され、該窓開口51からは、前記遊技盤40の裏面に取り付けられた入賞玉集合カバー体52が貫通されている。入賞玉集合カバー体52には、中継基板53と、ドラム表示制御回路基板54を備えた前記ドラム状可変表示装置41と、が設けられている。なお、各基板53・54は、相互間で接続されている。また、中継基板53には、遊技盤40上の各種電気部品が接続されると共に、後述する遊技制御回路基板61が接続されている。一方、ドラム表示制御回路基板54には、前記可変表示装置41を構成する各種電気部品(ドラムモータ、ドラムランプ、ドラムセンサ等)が接続されると共に、遊技制御回路基板61が接続されている。
【0017】
また、前記機構板50には、発生した入賞玉に基づいて所定個数の賞球を払い出す玉タンク55と、賞球払出装置56と、玉タンク55内の玉を賞球払出装置56に送る玉整列レール57、カーブ樋58、及び通路体59と、玉止め部材60a及び入賞玉排出ソレノイド60bを備えた入賞玉処理装置60と、遊技制御回路基板61を収納した回路基板ボックス62と、賞球払出制御基板63を収納した制御基板ボックス64と、ユニット中継基板65を収納した中継基板ボックス66と、ターミナル基板67を収納したターミナル基板ボックス68と、が設けられている。遊技制御回路基板61は、CPU、RAM、及びROMを備えてドラム式可変表示装置41や可変入賞球装置42等の遊技装置の遊技動作を制御するものである。賞球払出制御基板63は、賞球払出装置56の動作を制御するものである。ユニット中継基板65は、弾球遊技機1とカードユニット装置30との配線を中継するものである。ターミナル基板67は、遊技制御回路基板61に電源を供給するものである。また、弾球遊技機1の裏面には、上記した機構板50以外の領域に、装飾制御基板69を収納した制御基板ボックス70と、発射装置モータ72を備えた打球発射装置71とが設けられている。装飾制御基板69は、遊技制御回路基板61からの指令又はデータに基づいて弾球遊技機1の前面に設けられる電気的装飾部品(ランプ等)の動作を制御するものである。
【0018】
なお、上記した各種基板及び装置には、所定の配線を接続するためのコネクタが設けられており、特に、ターミナル基板ボックス68に収納されるターミナル基板67は、遊技制御回路基板61に電源を供給するだけでなく、弾球遊技機1に設けられる各種電気的装置、例えば、上記した各基板及び打球発射装置71にも電源を供給すると共に、弾球遊技機1の内部での信号線の中継、あるいは弾球遊技機1と外部との信号線の中継を行うための端子も設けられている。
【0019】
次に、各種制御用の回路基板を収納してなる基板ボックスの構成について回路基板ボックス62を例に挙げて説明する。回路基板ボックス62は、図3に示すように、前記遊技制御回路基板61を内部に収納する蓋体80及びボックス本体110の組付体からなり、この組付体が取付台150を介して前記機構板50に取り付けられて構成される。先ず、ボックス62内に収納される遊技制御回路基板61について図6を参照して説明する。回路基板61は、図6に示すように、長方形状のプリント配線基板によって構成されており、その上面の大部分はROM等の電子部品73を実装する電子部品実装領域74として形成される一方、幅方向一側の領域がコネクタ75を実装するコネクタ実装領域76として形成されている。また、回路基板61には、幅方向一側の両端に止め穴77が穿設される一方、幅方向他側の両端には係合穴78が穿設されている。なお、回路基板61の上面及び下面における止め穴77の外周には、メッキ部(図示しない)が設けられている。このメッキ部は、回路基板61を後述の本体枠116にビス119止めする際、回路基板61のグランドライン(図示しない)と本体枠116とを導通させるためのものであり、ボックス62内で発生する静電気から回路基板61を保護するようになっている。また、各実装領域74・76が形成された回路基板61の上面には、電子部品73とコネクタ75を電気的に接続する結線パターン79が形成されている(図7参照)。
【0020】
また、上記した回路基板61のコネクタ実装領域76には、図6に示すように、透明合成樹脂製の被覆部材156が取り付けられるようになっている。被覆部材156は、断面L字の長板形状をなし、その断面L字の長辺を構成する部分がコネクタ実装領域76への取付部となっている。具体的には、ビス139で回路基板61と共締めする取付穴157が長手方向の両端に穿設され、各取付穴157間には、コネクタ実装領域76に並設されたコネクタ75を個々に挿通する挿通穴158が複数穿設されている。一方、断面L字の短辺を構成する部分は、後で詳述する回路基板61の封止状態を解除して初めて被覆部材156の取り外しを可能にする規制部159となっている。
【0021】
蓋体80は、図4に示すように、透視性を有する上板81と、金属製の蓋枠93と、透視性及び導電性を有する導電板100と、を備えている。上板81は、透明合成樹脂の長方形板からなり、その下面側の外周端部には、所定間隔を置いて複数の溶着突起82が突設されている。また、上板81の長手方向の両端側には、複数(実施形態中では、3つ)の取付片部83a?83cが並設されている。取付片部83a?83cは、各々、上板81の側壁を構成する部分と、上板81の上壁を構成する部分と、を有した断面L字状をなし、上板81の側壁構成部分においては、各取付片部83a?83c間を連結する連結部84a?84cが一体成形され、上板81の上壁構成部分においては、各取付片部83a?83c間を連結する連結部85a?85cが一体成形されている。なお、各取付片部83a?83c間には、スリット状の溝が形成されており、連結部84a?84c・85a?85cは、取付片部83a?83cの外壁面から突出した状態で設けられている(図8参照)。また、取付片部83a?83cの上壁構成部分には、それぞれ取付穴86a?86cが穿設されており、取付片部83cの隣接部であり且つ上板81の幅方向一側の両端隅角部には、取付穴86dが穿設されている。一方、上板81の幅方向他側の中央部には、取付穴88を穿設した取付突起87が突設されている。上板81の上面には、凹部90・92が形成されており、凹部90には、弾球遊技機1の機種名を記した機種名シール84が貼着され、凹部92には、回路基板61を検査した際に書き込む「検査者」「検査日」の各項目を記した検査履歴シール91が貼着されている。
【0022】
なお、上記した各取付穴86a?86d・88の上方部分は、ボックス本体110との組み付け状態で組み付け用のビスを蓋枠93の外壁面に入り込ませるような凹形状をなしている(図8(A)参照)。このため、ビスの頭部を切断してビス止めを解除する不正行為が防止できる。また、各連結部84a?84c・85a?85cには、それぞれ回路基板ボックス62の開放手順を示唆するための刻印「1?3」が施されている(図7及び図10参照)。具体的には、取付片部83aに対応する連結部84a・85aには「1」の刻印が施され、取付片部83bに対応する連結部84b・85bには「2」の刻印が施され、取付片部83cに対応する連結部84c・85cには「3」の刻印が施されている。
【0023】
蓋枠93は、上面に開口部94を有し、該開口部94以外となる残りの上面領域には、上板81側の複数の溶着突起82を個々に挿通する挿通穴95が複数穿設され、幅方向一側の中央部には、ビス104によって取付穴88と共締めされる取付穴96が穿設されている。また、蓋枠93の外周縁部には、全周に亘って側壁が垂下形状されている。蓋枠93の長手方向両端の側壁は、ボックス本体110との組み付け状態で後述する取付片130の先端部分と当接する当接壁97として形成されている(図8参照)。蓋枠93の幅方向一側の側壁は、回路基板ボックス62内に収納される回路基板61の電子部品実装領域74とコネクタ実装領域76とを蓋枠93の内外に仕切る仕切り壁98として形成されている(図7参照)。また、仕切り壁98の両端側には、ボックス本体110との組み付け状態で後述する係合爪138を係止する係止穴99が穿設されている。
【0024】
導電板100は、上板81と同様に透明合成樹脂の長方形板からなり、その上面側には黒色塗装を施した導電性繊維101が全域に接合して設けられている。導電板100の外周端部には、蓋枠93に穿設された挿通穴95と同様に、上板81側の溶着突起82を個々に挿通する挿通穴102が複数穿設されている。ここで、導電性繊維について簡単に説明すると、導電性繊維は、大きく分けて金属製(銅、黄銅、ニッケル、アルミニューム等のフィラメントを網状に織ったものと、合成繊維に導電性粒子(銅、カーボン等)を塗布又は含浸させたものと、があり、いずれの種類の導電性繊維においても、電磁シールド効果及び光線透過率の見地から、50?250メッシュ(特に、100?200メッシュがよい)程度で、その開口率10?90%(特に、30?80%がよい)であることが望ましい。そして、メッシュという構造上、どうしても透視性が悪くなるが、本実施形態では、これを抑制するために、導電性繊維101を金属色を避けた濃色(実施形態中では、黒色)にすることで透視性を向上させている。
【0025】
なお、本実施形態では、透明合成樹脂板に導電性繊維101を接合することで導電板100を構成しているが、導電板の構成はこれに限定するものではなく、透明合成樹脂板に導電性繊維を埋設して導電板(俗にCRTフィルターなどともいう)を構成してもよい。この場合、その透明合成樹脂板を濃色とすることにより透視性を向上させることができる。また、透明導電層の形成によって導電板を構成してもよい。この透明導電層について簡単に説明すると、透明導電層は、金、白金、銀、錫、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、あるいはアンチモン等の金属や酸化インジウムあるいは酸化錫等の金属酸化物、又はこれらの混合物を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD等の方法により導電性と透視性を有する厚みの層として樹脂材等の表面に形成されるものである。透明導電層の厚みは、通常5?1000nm程度であり、その電気伝導性は、10000Ω/□以下、好ましくは1000Ω/□以下の電気抵抗率が適当である。
【0026】
しかして、蓋体80は、図5(A)(B)に示すように、蓋枠93の挿通穴95及び導電板100の挿通穴102を挿通した上板81の溶着突起82が超音波溶着されることで、上板81、蓋枠93、及び導電板100の組付体として構成されている。また、このような溶着突起82の溶着により、導電板100の導電性繊維101は、蓋枠93と確実に導通される。なお、溶着突起82の溶着において、上板81(溶着突起82)と導電板100とを同一素材で形成した場合には、溶着突起82の溶着部分が導電板100に混じり合い、より一層強固な溶着が可能になる。また、蓋体80の組み付け方法は、超音波溶着以外にも熱溶着したり、溶剤又は接着剤を用いてもよい。また、このような蓋体80の組み付け状態において、上板81の上面と蓋枠93の側面との間には、長方形状のホログラムシール106aが貼着され、これによって蓋体80の組み付け状態が担保されるようになっている。
【0027】
一方、ボックス本体110は、図6に示すように、透視性を有する底板111と、金属製の本体枠116と、を備えている。底板111は、透明合成樹脂の長方形板からなり、その上面側には、回路基板61の下面を支承するためのフランジ片112が四隅近傍部及び幅方向両端の中央部に立設されている。なお、幅方向一側の二隅近傍部に立設されたフランジ片112には、後述する係合片124との干渉を逃がすためのスリット部113が形成されている。一方、幅方向他側の二隅近傍部に立設されたフランジ片112の近傍には、後述する取付片122を貫通する貫通穴114が穿設されている。また、長手方向一側のほぼ中央部には、切欠部115が穿設されている。この切欠部115は、回路基板ボックス62を取付台150に取り付けた状態で後述する係合突起154との干渉を逃がすための切り欠きである。
【0028】
本体枠116は、下面に開口部117を有すると共に、その外周縁部には全周に亘って側壁を有する形状となっている。開口部117の内周縁部には、その幅方向両側に断面L字状をなす係合片118が所定の条設長さで形成され、内周縁部の長手方向一側には、係止穴120を穿設した係止片119が形成されている。また、開口部117以外となる残りの下面領域には、楕円形状をなす複数の軽減穴121が穿設されている。下面領域における幅方向一側の両端には、取付穴123を穿設した取付片122が形成され、下面領域における幅方向他側の両端には、係合突起125を備えた係合片124が形成されている。また、上記した係合片118は、後で詳述する取付台150への取り付け時に取付台150側の係合レール151と係合し易いように先端部分が若干下方に折曲されている。
【0029】
一方、本体枠116の幅方向一側壁には、蓋体80側の取付穴88と対応する取付穴127を穿設した取付突片126が内向側に折曲形成されると共に、複数の放熱穴128が穿設されている。本体枠116の幅方向の両側壁には、その長手方向の両端部に補強片129が延設されている。この補強片129は、延設部分から内向側に折曲されることで本体枠116の長手方向両側壁を内側から押さえ、本体枠116の強度を向上するようになっている。また、側壁間の隙間を塞ぐので、側壁間を広げて不正に改造しようとしてもできない。なお、このような補強片は、本体枠116に限らず蓋枠93側に設けてもよい。本体枠116の長手方向の両側壁の上端部分は、内向側に折曲された取付片130として形成されており、該取付片130には、蓋体80側の取付穴86a?86dと個々に対応する取付穴131?134が穿設されている。取付穴132?134の近傍には、それぞれ装備用のワンウェイネジ140を挿通状態で装備しておく装備穴135?137が穿設されている。また、取付片130の一側端部には、蓋体80側の係止穴99と係合する係合爪138が形成されている。
【0030】
しかして、上記した蓋体80及びボックス本体110は、以下に示す組み付けによって回路基板61を収納した組付体(回路基板ボックス62)として構成される。先ず、回路基板61と底板111とを重畳して本体枠116に装着し、回路基板61の係合穴78に係合片124の係合突起125を挿通する。次に、回路基板61のコネクタ75を挿通穴158に挿通させて被覆部材156をコネクタ実装領域76に装着し、被覆部材156の取付穴157と回路基板61の止め穴77を取付片122の取付穴123にビス139で共締めする。これにより、被覆部材156及び回路基板61が底板111を挟んで本体枠116にビス139止めされた状態となる(図11(B)参照)。なお、このような回路基板61の取り付け固定において、止め穴77と取付穴123との穴位置を合せる際、回路基板61が若干ズレることで係合突起125と係合穴78とが係合し、ビス止めされない回路基板61の幅方向一側も固定される。また、コネクタ実装領域76は、図7及び図11(A)に示すように、その上面に被覆部材156が取り付けられることで、コネクタ75以外の部分、言い換えれば結線パターン79を形成した部分が被覆部材156によって被覆される。
【0031】
次に、上面が開放しているボックス本体110に蓋体80を被せる。このとき、ボックス本体110側の係合爪138は、図4及び図6に示すように、D方向への挿入によって蓋体80側の係止穴99に係止され、ボックス本体110及び蓋体80の位置決め的な取り付けが行われる。また、蓋枠93の仕切り壁98は、回路基板61の電子部品実装領域74とコネクタ実装領域76とを蓋体80の内外に仕切った状態にある。これにより、蓋体80を取り外すことなく、コネクタ75への配線取り付け及び配線取り外しが可能になる。また、この状態で、仕切り壁98の先端部分は、被覆部材156の取付部上面と当接することにより、規制部159が蓋体80の内側に配される。
【0032】
そして、図4及び図6に示すB方向において、上板81の取付穴88及び蓋枠93の取付穴96を本体枠116の取付穴127にビス104止めし、そのビス104止め部分を長方形状のホログラムシール106bで封印する。また、図4及び図6に示すA・C方向において、取付片部83aの取付穴86aを本体枠116の取付穴131にワンウェイネジ(ビス)140で止め(図8(A)参照)、そのビス140止め部分を長方形状のホログラムシール106cで封印する。これにより、蓋体80とボックス本体110との内部空間に回路基板61を封止状態で収納した組付体(回路基板ボックス62)が構成される。なお、このような回路基板61の封止状態において、外部に露出して設けられるコネクタ実装領域76は、結線パターン79が被覆部材156で被覆されている。このため、コネクタ実装領域76を外部に露出して設けた構成でも、結線パターン79を利用した不正行為を防止することができる。
【0033】
また、上記した蓋体80とボックス本体110との組み付け状態において、各装備穴135?137に挿通されたワンウェイネジ140は、その上方から蓋体80が覆いかぶさるようにして取り付けられることで、装備穴135?137から外れることなくボックス62内に収納されている。即ち、このような収納状態で、蓋体80の各取付片部83b・83c及び取付穴86d近傍の上壁面が個々にワンウェイネジ140の飛び出しを阻止している。なお、ワンウェイネジ140の装備方法は、実施形態中に記載のものに限定しない。例えば、ボックス62の組み付け状態で、ワンウェイネジ140の頭部を蓋体80(取付片部など)によって完全に押え込む構成としたり、あるいはワンウェイネジ140の径と装備穴135?137の径をほぼ同一にした構成としてもよい。このような構成とした場合には、回路基板ボックス62の閉塞状態で、装備されたワンウェイネジ140のガタ付きを押えることができる。
【0034】
ここで、ワンウェイネジ140について説明する。ワンウェイネジ140は、ネジ締め方向にしか回らない特殊なネジであり、一旦締め付けるとネジを破壊しない限り取り外すことができない。具体的には、図9(A)(B)に示すように、その頭部141に設けられたネジ溝が当接面部142と凹部143と中心穴部144とから構成されている。そして、図9(C)(D)に示す特殊マイナスドライバー145でネジ140締めを行う場合には、ドライバー145の中心軸部146を中心穴部144に差し込み、この状態からドライバー145の当接片部147を当接面部142に当接させて一方向(図9(A)の時計回り方向)に頭部141を回転させることでネジ140締めを行う。一方、ドライバー145で頭部141を他方向(図9(A)の反時計回り方向)に回転させてネジ140を取り外そうとした場合には、ドライバー145が凹部143に入り込んで滑ってしまい頭部141を回転させることができずにネジ140の取り外しが行えない。なお、通常のマイナスドライバーでも頭部141を一方向に回転させてネジ140締めすることは可能であるが、特殊マイナスドライバー145のように、中心軸部146をワンウェイネジ140の中心穴部144に差し込んでワンウェイネジ140との位置決めを行った方が締め付け作業が容易に行える。
【0035】
また、上記した蓋体80及びボックス本体110の組み付けを行うビス104・140は、それぞれ螺着状態で蓋枠93の外壁面に入り込む構成となっている。このため、ビス104・140止め部分を封印するホログラムシール106b・106cは、突起のない平坦面上に貼付され、シール106b・106cの剥れ及び損傷が防止できると共に、シール106b・106cに対する不正行為の判別が容易になる。ここで、ホログラムシールについて簡単に説明すると、ホログラムシールは、ホログラム層と光反射層と接着剤層とを備え、ホログラム層に形成されるホログラム図柄を偽造困難な図柄に構成することで、不正行為に伴うシールの貼り替えを防止するようになっている。このホログラム図柄は、ホログラムシールの表面に入射したコヒーレント光(レーザー光)がホログラム層のエンボス面を透して光反射層に入り、光反射層からホログラム干渉光としてホログラムシールの外方に反射されることで形成される。また、ホログラムシールを剥した場合は、もう一度貼り直してもホログラム図柄が元の形状にならないので、剥した痕跡が残る。
【0036】
以上のように、回路基板ボックス62は、蓋体80とボックス本体110とのビス104・140止め部分をホログラムシール106b・106cで封印することにより回路基板61の被覆状態を担保している。また、ボックス62内に設けられた導電板100によって電磁シールド効果を奏し得るようになっている。さらに、回路基板ボックス62は、その上壁面を構成する上板81と導電板100、及び下壁面を構成する底板111をそれぞれ透視性を有する素材から形成することで、回路基板61の実装面(上面)及びハンダ面(下面)を外部から透視できるようにしている。このため、回路基板61に不正な工作(例えば、ジャンパー配線を接続したり、電子部品を実装したりする不正工作)が施された場合には、直ちにその不正工作が判るようになっている。
【0037】
次に、上記した回路基板ボックス62を機構板50に取り付けるための取付台150について図3を参照して説明する。取付台150は、図3に示すように、合成樹脂(金属でもよい)によって形成された長方形板からなり、その基板中央には断面逆L字状をなす一対の係合レール151が所定間隔を置いて条設されている。なお、係合レール151の条設方向は、取付台150の長辺部に沿った左右方向となっている。取付台150の各長辺部(前後端縁)には、基板面に対して直交するガイド片152が突設されている。取付台150の右側端部には、弾性変形する解除レバー153が形成されており、該解除レバー153の基部には、ボックス本体110側の係止穴120と係合する係合突起154が突設されている。また、取付台150の基板面には、機構板50側の取付ボス(図示しない)に取付台150をビス止めするための止め穴155が穿設されている。
【0038】
しかして、上記した取付台150は、止め穴155を介して機構板50にビス止めされることで機構板50上の所定部位に固定される。また、この取付台150に回路基板ボックス62を取り付けるときには、取付台150に対してボックス62を左側方からスライド装着させる。このとき、取付台150側の係合レール151は、ボックス62側の係合片118と係合した状態にあり、ガイド片152は、ボックス62のスライド移動を案内する。そして、このようなボックス62のスライド移動によって取付台150側の解除レバー153が下方に弾性変形し、遂には、ボックス62側の係止穴120が取付台150側の係合突起154と係合してボックス62の装着が完了する。一方、回路基板ボックス62を取付台150から取り外すときには、解除レバー153を下方に押して係止穴120と係合突起154との係合を解除し、この状態からボックス62を左側方にスライドさせることで簡単に取り外すことができる。即ち、回路基板ボックス62は、機構板50にビス止め固定された取付台150に対して着脱自在な構成となっている。
【0039】
次に、上記した回路基板ボックス62を回路基板61の検査(出荷納入後にROMが正規のものか否かを検査する)のために開放し、その後再度閉塞状態に復元する手順を図10に基づいて説明する。先ず、図10(A)に示す回路基板ボックス62の閉塞状態において、ホログラムシール106bを剥してビス104を取り外す。また、取付片部83aのビス140止め部分に貼着されたホログラムシール106cを剥した後、刻印「1」を目印に各連結部84a・85aをニッパー等の切断工具で切断する。これにより、取付片部83aは、蓋体80から完全に分離され且つワンウェイネジ140によってボックス本体110に固着された状態となる。即ち、ボックス本体110に対する蓋体80の固着が全て解除されて、回路基板ボックス62の開放が可能になる。そして、図10(B)に示すように、ボックス本体110から蓋体80を取り外して回路基板61の検査を行う。また、このような蓋体80の取り外し(連結部84a・85aの切断)によって、各装備穴135?137に挿通されたワンウェイネジ140は、取り出し可能な状態となり、このうち装備穴135に挿通されたワンウェイネジ140をボックス62の復元用に取り出す。その後、回路基板ボックス62を閉塞するときには、図10(C)に示すように、蓋体80をボックス本体110に被せた状態で、取付穴88・96・127をビス104で共締めし、そのビス104止め部分に新しいホログラムシール106bを貼着する。また、取り出したワンウェイネジ140を刻印「2」を目印に取付片部83bの取付穴86bに螺着する。これにより、取付片部83bの取付穴86bとこれに対応する本体枠116の取付穴132とがワンウェイネジ140によって共締めされる。そして、この取付片部83bのビス140止め部分に新しいホログラムシール106cを貼着することで、回路基板ボックス62が再度閉塞状態に復元される。
【0040】
その後、回路基板ボックス62を再度検査(2回目の検査)する場合には、ホログラムシール106bを剥してビス104を取り外すと共に、刻印「2」を目印に各連結部84b・85bを切断する。これにより、取付片部83bを蓋体80から分離させて回路基板ボックス62を開放する。後は同様に、ビス104で共締めした部分に新しいホログラムシール106bを貼着し、また、各連結部84b・85bの切断に伴って取り出したワンウェイネジ140(装備穴136のワンウェイネジ140)を刻印「3」を目印に取付片部83cの取付穴86cに螺着して新しいホログラムシール106cを貼着する。これにより、回路基板ボックス62が再度閉塞状態に復元される。それ以降、回路基板ボックス62を検査(3回目の検査)する場合には、ホログラムシール106bを剥してビス104を取り外すと共に、刻印「3」を目印に各連結部84c・85cを切断することで、取付片部83cを蓋体80から分離させて回路基板ボックス62を開放する。また、回路基板ボックス62の復元時には、ビス104で共締めした部分に新しいホログラムシール106bを貼着し、各連結部84c・85cの切断に伴って取り出したワンウェイネジ140(装備穴137のワンウェイネジ140)を最後に残った取付穴86dに螺着して新しいホログラムシール106cを貼着する。
【0041】
ところで、上記した回路基板ボックス62の閉塞状態においては、連結部84a?84c・85a?85cを切断して取付片部83a?83cと上板81との連結を解除しない限り、回路基板ボックス62が開放できないようになっている。従って、回路基板61の検査以外で連結部84a?84c・85a?85cが切断されるような場合は、この切断により回路基板61に不正が行われたことが即座に且つ確実に判別できるため、回路基板ボックス62の防犯効果を高めることができる。また、回路基板ボックス62の構成では、上板81の溶着突起82を切り離しても、導電板100が回路基板61上に落ち込むため、溶着突起82を切り離した隙間から回路基板61に細工をしようとしても導電板100がそれを阻止する。また、ホログラムシール106a?106cを剥した場合には、ホログラムシール106a?106cの痕跡がしっかりと残るため不正が行われたことが即座に分かる。
【0042】
以上のように、回路基板ボックス62は、ワンウェイネジ140によりボックス本体110と蓋体80とを固着状態に取り付ける取付片部83a?83cと、該取付片部83a?83cを切り離してボックス本体110と蓋体80との固着状態を解除する連結部84a?84c・85a?85cと、を備えることで、回路基板ボックス62を弾球遊技機1に取り付けた状態でボックス62を複数回開閉することができるようになっている。このため、出荷納入後に回路基板61を検査する場合でも、ボックス62を破壊することなく簡単に回路基板61を検査することができる。また、検査後にボックス62を閉塞する際には、取付穴86b?86dにワンウェイネジ140を螺着することにより、再度防犯効果の高い回路基板ボックス62に復元することができる。
【0043】
また、前記ワンウェイネジ140は、回路基板ボックス62に複数装備されるので、検査後の復元作業毎にワンウェイネジを用意する必要がなく、回路基板ボックス62の復元作業が行い易くなる。また、前記ボックス本体110及び前記蓋体80を固着状態とする前記取付片部83a?83dの外壁面が平坦になるようにし、その外壁面にホログラムシール106cを貼着したので、回路基板ボックス62の閉塞状態をホログラムシール106cで担保することができる。さらに、そのホログラムシール106cは、突起のない平坦面上に貼付されるのでシール106cの剥れ及び損傷が防止できると共にシール106cに対する不正行為の判別が容易になる。
【0044】
また、上記した回路基板ボックス62に封止状態で収納される回路基板61は、コネクタ75の実装面に該コネクタ75の結線パターン79が形成され且つ当該回路基板61の封止状態で外部に露出するコネクタ実装領域76を備え、該コネクタ実装領域76には、結線パターン79を被覆する被覆部材156が設けられている。このため、回路基板61をボックス62内に封止した状態で、回路基板61と接続する外部配線の取り付け作業及び取り外し作業が容易に行え、然も外部に露出して設けられるコネクタ実装領域76の結線パターン79が被覆部材156によって被覆されるので、結線パターン79を利用した不正行為が防止できる。また、コネクタを挿通する挿通穴が穿設された被覆部材で結線パターンを被覆する構成は、機種毎にコネクタの位置や設定数等が変更になる場合でも、そのコネクタ用の挿通穴を穿設した被覆部材を作ることで対応できるので、低コストで様々な機種の結線パターンを被覆することができる。また、この構成では、挿通穴を被覆部材の様々な位置を穿設することができるので、コネクタ実装領域におけるコネクタの設計自由度を向上することができる。例えば、コネクタ実装領域でコネクタを二段に設けた場合でもその結線パターンを容易に被覆することができる。
【0045】
また、前記被覆部材156は、透明合成樹脂から形成されているので、結線パターン79を被覆部材156で被覆したまま、結線パターン79の状態を確認することができる。このため、仮に結線パターン79に不正な細工が施された場合でも、その不正が即座に判別できる。なお、被覆部材156の材質は、透明合成樹脂に限定せず、不透明な合成樹脂や金属であってもよい。また、被覆部材156の取り付け方法は、実施形態中に記載のものに限定しない。例えば、被覆部材156に回路基板61との位置決め穴を設けて取り付けてもよい。
【0046】
また、前記被覆部材156は、前記回路基板61の封止状態を解除して初めて当該被覆部材156の取り外しを可能にする規制部159を備えたので、回路基板61の封止状態を解除しない限り被覆部材156が取り外せない構成となり、より確実に結線パターン79を利用した不正行為が防止できる。なお、実施形態中では、規制部159を立壁形状のものとしているが、これに限定するものではない。例えば、蓋体80の内側に設けたビス止め部や係合部を規制部としてもよい。また、規制部を設けることなく被覆部材156をワンウェイネジ等の固着手段(破壊しない限りその固着が解除できないもの)で取り付けたり、あるいはホログラムシール等の封印部材で被覆部材156の取り付け部分を封印することで、被覆部材156の取り付け状態を担保してもよい。なお、回路基板ボックス62の封止を利用した方がコスト安になる。
【0047】
また、前記ボックス本体110及び前記蓋体80をワンウェイネジ140によって固着することで前記回路基板61を封止したので、回路基板ボックス62を破壊するか、あるいはボックス62の一部(取付片部83a?83c)を切断しない限り、回路基板61の封止状態を解除することができない。このため、被覆部材156の不正な取り外しをより一層困難なものにすることができ、ひいては結線パターン79を利用した不正行為がより一層確実に防止できる。
【0048】
なお、上記した実施形態は、本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、締まる方向にしか回らないワンウェイネジ140で取付片部83a?83cを締め付ける構成となっているが、これに代えて破断取付ネジやリベット等の締結部材で取付片部83a?83cを締め付ける構成としてもよく、さらには蓋体とボックス本体とを固着する第一及び第二の固着手段を溶着用の溶剤あるいは接着剤としてもよい。また、取付穴86b?86dに取り付けられるワンウェイネジ140は、必ずしも回路基板ボックス62に装備させる必要はなく、検査時に支給するものであってもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、ワンウェイネジ140を取り付けるための取付穴86a?86dを回路基板ボックス62の上面側に設けているがこれに限らず、回路基板ボックス62の側面側に設けた構成としてもよい。即ち、回路基板ボックス62を弾球遊技機1に取り付けた状態で、ボックス62の開閉作業が行えればよい。但し、実施形態中のように取付穴86a?86dを回路基板ボックス62の上面側に設けた場合には、取付穴86a?86dが作業者と対向する位置になるので、より一層作業が容易に行える。また、回路基板ボックス62は、機構板50に取り付けられているがこれに限らず、遊技盤40の裏面に直接的に取り付けられる構成としてもよい。
【0050】
また、取付片部の材質は、金属や合成樹脂などいずれの材質であってもよいが、望ましくは切断させ易い合成樹脂がよい。また、切り離し可能な取付片部は、必ずしも蓋体側に設ける必要はなく、ボックス本体側に設けたり、あるいは蓋体とボックス本体との両側に設けた構成としてもよい。また、取付片部の個数についても特に限定せず、1回だけ再固着できて検査が1回だけ行えるものであってもよい。但し、取付片部を多く並設すればする程、回路基板ボックスの検査回数をより多くすることができる。
【0051】
また、上記した実施形態(第一実施形態)では、外部に露出したコネクタ実装領域76の結線パターン79を被覆部材156で被覆しているが、この構成に限定するものではない。以下、その他の構成を第二乃至第四の実施形態として図12乃至図15を参照して説明する。なお、以下の説明では、第一実施形態と同様の構成部材には同一の符号を付記すると共にその詳細な説明は省略する。先ず、第二実施形態の回路基板ボックス160では、図12及び図13(A)に示すように、コネクタ実装領域76を蓋体80の外側に仕切る仕切り壁98の先端部分に被覆部98aを延設している。この被覆部98aは、仕切り壁98の壁面に対して垂直且つ外側に折曲形成され、回路基板ボックス160の組み付け状態で先端部分がコネクタ75の一側壁と当接する延設長さに形成されている。しかして、回路基板ボックス160は、その組み付け状態で、外部に露出するコネクタ実装領域76の結線パターン79を被覆部98aで被覆して、結線パターン79を利用した不正行為を防止するようになっている。また、第二実施形態の構成では、コネクタの配設位置を変えなければ1パターンの蓋枠93(被覆部98a)で各種基板ボックスの結線パターンを被覆することができるので、特別に被覆部材も設ける必要がなくコストの低減を招来することができる。なお、被覆部98aを延設した仕切り壁98(蓋枠93)の材質は、特に限定するものではないが、結線パターン79を被覆部98aで被覆したまま、結線パターン79の状態が確認できる透明合成樹脂で形成することが望ましい。また、第二実施形態では、結線パターンを被覆するための被覆部を蓋体に設けているが、これに限定せず、基体(ボックス本体)及び蓋体の少なくとも一方に被覆部を設けた構成とすればよい。
【0052】
また、第三実施形態の回路基板ボックス170では、図13(B)及び図14に示すように、回路基板61’に実装されたコネクタ75の基部に被覆部75aを形成している。この被覆部75aは、仕切り壁98の外壁側に折曲形成され、回路基板ボックス170の組み付け状態で先端部分が仕切り壁98の外壁面と当接する長さに形成されている。しかして、回路基板ボックス170は、その組み付け状態で、外部に露出するコネクタ実装領域76の結線パターン79を被覆部75aで被覆して、結線パターン79を利用した不正行為を防止するようになっている。また、コネクタ75は、回路基板61’の裏面側にハンダ付けされ、そのハンダ面は回路基板ボックス170の組み付け状態でボックス本体110に覆い隠されている。このため、コネクタ75を回路基板61’から取り外そうとした場合には、回路基板61’の封止状態を解除しなければならず、コネクタ75のみを回路基板61’から取り外すことはできない。
【0053】
なお、前記第一乃至第三の実施形態は、回路基板の上下両面を被覆する構成となっているので、コネクタの結線パターンを上下両方に形成することができる。このため、結線パターンの設計自由度が増し、回路基板の設計を容易にすることができる。
【0054】
また、第四実施形態の回路基板ボックス180では、図15に示すように、回路基板6”に実装されたコネクタ75の結線パターン79をコネクタ75の実装面とは反対側の面(コネクタ75のハンダ面)に形成している。しかして、回路基板ボックス180は、コネクタ75が実装されたコネクタ実装領域76を外部に露出して配置する一方、コネクタ75の結線パターン79をボックス本体110に覆い隠して配置することにより、結線パターン79を利用した不正行為を防止するようになっている。なお、第四実施形態では、結線パターンを基体(ボックス本体)で被覆しているが、これに限定せず、基体(ボックス本体)及び蓋体の少なくとも一方で結線パターンを被覆した構成とすればよい。
【0055】
なお、上記した第一乃至第四の実施形態では、コネクタの結線パターンを全て被覆する構成となっているが、これに限らず不正改造に関与しないグランドライン等の一部を露出してもよい。また、各実施形態では、本発明の基板収納ボックスを弾球遊技機用の遊技制御回路基板を収納する回路基板ボックスとしているが、これに限定するものではない。例えば、賞球払出制御基板などを収納する基板収納ボックスでもよい。即ち、内部の回路基板に対する不正行為を防止する必要がある基板収納ボックスであればよい。また、遊技機としては、弾球遊技機以外の遊技機(例えば、スロットマシンやコインゲーム等)であってもよい。さらには、各種構成部材を形成する素材については、取り分け実施形態中に記載のものに限定するものではない。例えば、透視性を有する上板を透明合成樹脂ではなく、ガラス素材から形成してもよい。
【0056】
なお、以上説明した実施形態から把握できる発明として以下のものがある。
(1)回路基板を封止状態で収納する基体及び蓋体を備えた遊技機の基板収納ボックスにおいて、前記回路基板は、コネクタの実装面に該コネクタの結線パターンが形成され且つ当該回路基板の封止状態で外部に露出するコネクタ実装領域を備え、前記コネクタには、前記コネクタ実装領域のうち少なくとも前記結線パターンを被覆する被覆部を設けたことを特徴とする。このように構成することにより、回路基板をボックス内に封止した状態で、回路基板と接続する外部配線の取り付け作業及び取り外し作業が容易に行える。また、この構成では、回路基板ボックスの組み付け状態で、外部に露出するコネクタ実装領域の結線パターンをコネクタの被覆部で被覆することにより、結線パターンを利用した不正行為が防止できる。
【0057】
【発明の効果】
以上、説明したところから明らかなように、請求項1に係る発明は、電子部品とコネクタとを実装する回路基板を封止状態で収納する基体及び蓋体を備えた遊技機の基板収納ボックスにおいて、該基板収納ボックスを破壊するかあるいは該基板収納ボックスの一部を切断しない限り前記回路基板の封止状態を解除できない固着手段によって前記基体及び前記蓋体を固着することで前記回路基板の封止状態を実現し、複数の固着手段を設けるとともに当該固着手段による固着をするための複数の固着部を設け、さらに、前記封止状態を解除するために切断される前記基板収納ボックスの一部としての切断部を前記複数の固着部に対応させて複数設け、前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成され、前記回路基板は、コネクタの実装面に該コネクタと電子部品とを接続する結線パターンが形成され、前記蓋体は、前記封止状態において前記回路基板のコネクタ実装領域と電子部品実装領域との間に位置する仕切り壁を備え、前記仕切り壁の先端部分を前記封止状態において前記回路基板に沿うようにコネクタ実装領域側に折曲形成し、前記コネクタ実装領域にある前記結線パターンを被覆する被覆部を前記蓋体に対して一体に設けたことにより、基板収納ボックスの封止状態で、外部に露出するコネクタ実装領域の結線パターンを被覆部で被覆することで、結線パターンを利用した不正行為が防止できる。また、前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着と、当該一部の固着部に対応する前記切断部の切断による固着の解除とを、前記固着部及び前記切断部を異ならせて複数回繰り返し実行可能に構成したので、基板収納ボックスを遊技機に取り付けた状態で基板収納ボックスを複数回開閉することができるようになっているため、出荷納入後に回路基板を検査する場合でも、基板収納ボックスを破壊することなく簡単に回路基板を検査することができる。また、検査後に基板収納ボックスを閉塞する際には、前記複数の固着手段のうちの一部の固着手段による前記複数の固着部のうちの一部の固着部の固着により、再度防犯効果の高い基板収納ボックスに復元することができる。
【0058】
【0059】
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施形態における弾球遊技機を示す正面図である。
【図2】
弾球遊技機を示す背面図である。
【図3】
回路基板ボックス及び取付台を示す斜視図である。
【図4】
蓋体を示す分解斜視図である。
【図5】
同図(A)(B)はそれぞれ溶着突起の溶着状態を示す説明図である。
【図6】
被覆部材と回路基板とボックス本体を示す分解斜視図である。
【図7】
回路基板ボックスを示す平面図である。
【図8】
同図(A)は蓋体の取付片部がボックス本体にビス止めされた状態を示す部分断面図であり、同図(B)は回路基板ボックス内に装備用のワンウェイネジが収納された状態を示す部分断面図である。
【図9】
同図(A)(B)はそれぞれワンウェイネジを示す説明図であり、同図(C)(D)はそれぞれ特殊マイナスドライバーを示す説明図である。
【図10】
同図(A)?(C)はそれぞれ回路基板ボックスの復元手順を示す側面図である。
【図11】
同図(A)は被覆部材によって回路基板の結線パターンが被覆された状態を示す縦断面図であり、同図(B)は被覆部材が回路基板と共締めされた状態を示す縦断面図である。
【図12】
第二実施形態の回路基板ボックスを示す平面図である。
【図13】
同図(A)ば第二実施形態における回路基板の結線パターンが被覆された状態を示す縦断面図であり、同図(B)は第三実施形態における回路基板の結線パターンが被覆された状態を示す縦断面図である。
【図14】
第三実施形態の回路基板ボックスを示す平面図である。
【図15】
第四実施形態の回路基板ボックスを示す平面図である。
【符号の説明】
1 弾球遊技機(遊技機)
40 遊技盤
50 機構板
61・61’・61” 遊技制御回路基板(回路基板)
62・160・170・180 回路基板ボックス(基板収納ボックス)
75 コネクタ
75a 被覆部
76 コネクタ実装領域
79 結線パターン
80 蓋体
81 上板
82 溶着突起
83a?83c 取付片部
84a?84c・85a?85c 連結部
86a?86d 取付穴
89 機種名シール
91 検査履歴シール
93 蓋枠
98 仕切り壁
98a 被覆部
100 導電板
101 導電性繊維
106a?106c ホログラムシール
110 ボックス本体(基体)
111 底板
116 本体枠
130 取付片
131?134 取付穴
135?137 装備片
140 ワンウェイネジ(固着手段)
145 特殊マイナスドライバー
150 取付台
156 被覆部材
157 取付穴
158 挿通穴
159 規制部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2011-07-08 
出願番号 特願2003-112587(P2003-112587)
審決分類 P 1 113・ 854- YA (A63F)
P 1 113・ 851- YA (A63F)
P 1 113・ 121- YA (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 仁志  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 澤田 真治
吉村 尚
登録日 2005-03-11 
登録番号 特許第3655293号(P3655293)
発明の名称 遊技機の基板収納ボックス  
代理人 中田 雅彦  
代理人 塚本 豊  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  
代理人 深見 久郎  
代理人 塚本 豊  
代理人 森田 俊雄  
代理人 中田 雅彦  
代理人 石川 滝治  
代理人 平木 祐輔  
代理人 関谷 三男  

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