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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2009800253 審決 特許
無効2008800115 審決 特許
平成24行ケ10299審決取消請求事件 判例 特許
平成22行ケ10350審決取消請求事件 判例 特許
不服20082566 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23D
審判 全部無効 特174条1項  A23D
審判 全部無効 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  A23D
審判 全部無効 2項進歩性  A23D
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23D
審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  A23D
管理番号 1264541
審判番号 無効2011-800064  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-04-18 
確定日 2012-10-09 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4601685号発明「焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第4601685号の請求項に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4601685号の出願についての手続の概要は,以下のとおりである。なお,以下,本件無効審判請求人であるかどや製油株式会社を「請求人」といい,日清オイリオグループ株式会社を「被請求人」という。

平成20年 5月28日 特許出願
平成22年10月 8日 特許権の設定登録(請求項の数4)
平成23年 4月18日 無効審判請求(請求人)
(甲第1号証の1?甲第1号証の2,甲第2?7号証)
平成23年 7月12日 答弁書(被請求人)(乙第1号証)
平成23年 7月12日 訂正請求書(被請求人)
平成23年 8月19日 弁駁書提出(請求人)
(甲第1号証の3?甲第1号証の6,甲第8?10号証)
平成23年10月27日付け 通知書(当審)
平成23年11月22日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成23年11月22日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
(乙第2?5号証)
平成23年12月8日 口頭審理

第2 平成23年7月12日付け訂正請求について
1 訂正事項
平成23年7月12日付け訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)は,以下を訂正事項とするものである。
(なお,本件訂正請求による訂正前の本件特許の請求項1?4に係る発明を以下「本件特許発明1?4」といい,本件訂正請求による訂正前の明細書を「本件特許明細書」という。)

(a)訂正事項1
請求項1(本件特許発明1)の「焙煎ごま油が65?70質量%になるように焙煎ごま油及び菜種油を配合し」を
「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し」と訂正するものである。

(b)訂正事項2
請求項2(本件特許発明2)の「焙煎ごま油が65?70質量%になるように焙煎ごま油及び菜種油を配合し」を
「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し」と訂正するものである。

(c)本件特許明細書の段落【0007】の「焙煎ごま油が65?70質量%になるように焙煎ごま油及び菜種油を配合し」を
「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し」と訂正するものである(2箇所)。

(d)本件特許明細書の段落【0010】の「焙煎ごま油が50質量%より大になるように焙煎ごま油及び精製油を配合し」を
「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し」と訂正するものである。

(e)本件特許明細書の段落【0013】の「本実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物において,焙煎ごま油は,50質量%より大となるように配合される。60質量%以上95質量%以下配合されることが好ましい。より好ましくは,65質量%以上90質量%以下であり,さらに好ましくは,70質量%以上90質量%以下である。」を
「本実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物において,焙煎ごま油は,65?70質量%となるように配合される。」と訂正するものである。

(f)本件特許明細書の段落【0016】の「べに花油を用いる場合には,ハイオレイックべに花油が好ましく,9.5質量%以上50質量%未満配合されることが好ましい。より好ましくは,10質量%以上40質量%以下であり,さらに好ましくは,20質量%以上35質量%以下である。」を削除するものである。

(g)本件特許明細書の段落【0017】の「ひまわり油を用いる場合には,10質量%以上50質量%未満配合されることが好ましい。より好ましくは,20質量%以上40質量%以下であり,さらに好ましくは,20質量%以上35質量%以下である。」を削除するものである。

2 当審の本件訂正請求についての判断
(1)各訂正事項について
(ア)訂正事項(a)及び(b)について
上記訂正事項(a)及び(b)は,「菜種油」について「精製油としての菜種油」と訂正し,さらに,「精製油としての菜種油」の配合量を「30?35質量%」と特定したものである。
そして,本件特許明細書の
「【0014】
(精製油)
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物に配合される精製油は,植物油であることが好ましい。特に,菜種油,べに花油,ひまわり油から選ばれる1種以上であることが好ましい。中でも菜種油が好ましい。」
「【0029】
焙煎ごま油(日清オイリオグループ株式会社製)と,精製菜種油(以下菜種油という,日清オイリオグループ株式会社製),精製ハイオレイックべに花油(以下ハイオレイックべに花油という,日清オイリオグループ株式会社製)及び精製ひまわり油(以下ひまわり油という,日清オイリオグループ株式会社製)とを表1?3に記載の配合割合で混合し,焙煎ごま油配合油脂組成物を調合した(実施例1?16及び参考例1?3)。また,比較例として表4に記載の比較例1(焙煎ごま油のみ)及び比較例2?6(焙煎ごま油と大豆油とを調合)を用意した。
【0030】
実施例1?16,参考例1?3及び比較例1?6について,トリグリセリド組成,脂肪酸組成,ステロール含量及びトコフェロール含量を測定した結果を表1?4に示す。
【0031】


との記載からみて,「菜種油」を「精製油としての菜種油」であることを明確にし,さらに,「精製油としての菜種油」の配合量を明確にしたものといえるから,特許法第134条の2第1項第3号の「明りょうでない記載の釈明」に該当するものである。また,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(イ)訂正事項(c)?(g)について
当審は,上記訂正事項(c)?(e)も,上記訂正事項(a)及び(b)の訂正により訂正された特許請求の範囲の記載に合わせて,明細書中の「焙煎ごま油」及び/又は「精製油としての菜種油」の配合量を特定するものであるから,特許法第134条の2第1項第3号の「明りょうでない記載の釈明」に該当するものである。また,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
また,訂正事項(f)及び(g)も,出願手続時の補正により,特許請求の範囲外となった「べに花油」及び「ひまわり油」の配合量等の記載を削除して,特許請求の範囲の記載に合わせるものであるから,特許法第134条の2第1項第3号の「明りょうでない記載の釈明」に該当するものである。また,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(2)請求人の主張について
平成23年8月19日付け弁駁書において,請求人は,「本件特許の明細書において,「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合」したものとして開示されているのは,「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを64.1質量%以上65.1質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上36.7質量%以下含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-6.0℃以下-6.4℃以上」であると認められ,本件訂正(訂正事項1および2を含む訂正)の結果としての発明は,願書に添付した明細書において具体例を開示して記載するもの(実施例4,5)から特許出願時の技術常識を参酌してみて自明であるということはできず,願書に添付した明細書に開示されていない新規の事項を含むものである」こと等を主張して(平成23年8月19日付け弁駁書の第2頁下から第9行?第6頁第2行を参照),特許法第126条第3項及び第4項で規定する要件を満たすものではない旨主張し,平成23年11月22日付け口頭審理陳述要領書においても同様の主張をしている(平成23年11月22日付け口頭審理陳述要領書の第4頁第25行?第6頁第14行を参照)。
しかしながら,「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し」たものであって,「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下」の範囲内にある「焙煎ごま油配合油脂組成物」自体は,上記のとおり,願書に添付した明細書の段落【0029】?【0031】の【表1】実施例4、5として記載されていたといえるから,本件訂正は,新たな技術的事項を導入するものではなく,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

また,請求人は,平成23年11月22日付け口頭審理陳述要領書において,上記訂正事項(a),(b)について,「「明りょうでない記載」とは,その文理上は,それ自体意味の明らかでない記載など,明細書,特許請求の範囲又は図面の記載に不備を生じさせている記載をいう。「菜種油」はそれ自体意味の明らかな記載である・・・」旨主張している(第3頁第9?12行)。
しかしながら,「菜種油」は「未精製菜種油」,「精製菜種油」,「菜種サラダ油」を包含する概念であるが(平成23年4月18日付け審判請求書の第7頁第3?11行を参照),他方,特許明細書の記載からは,「菜種油」は「精製油としての菜種油」のみを指すと解され(前記の段落【0014】,【0029】?【0031】等),「菜種油」の意義について,「未精製菜種油」,「精製菜種油」,「菜種サラダ油」を包含する概念であるのか,「精製油としての菜種油」のみを指すのか,特許請求の範囲の記載と特許明細書の記載が整合しておらず不明りょうであったところ,後者を指すものとして明りょうにしたものであるから,「明りょうでない記載の釈明」に該当するものといえる。

さらに,請求人は,平成23年11月22日付け口頭陳述要領書において,上記訂正事項(a),(b)について,「被請求人が「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるとして訂正した訂正事項(a)及び(b)について,合議体があえて「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものであると認定することは,恣意を抑制しているとはいえない。・・・訂正事項(a)及び(b)について被請求人は「特許請求の範囲の減縮」のみを訂正の事由としているものとして,訂正の可否の判断がなされるべきである」旨主張している(第4頁第5?23行)。
しかしながら,特許法第134条第1項第1?3号の訂正の目的について,訂正請求をした者の意図にかかわらず,いずれかに該当すれば訂正請求は認められるべきものである。

したがって,上記請求人のいずれの主張も採用することはできない。


第3 本件特許訂正発明について
「第2 平成23年7月12日付け訂正請求について」で検討したとおり,平成23年7月12日付け訂正請求書による訂正は適法なものであるから,本件特許の請求項1?4に係る発明(以下「本件特許訂正発明1?4」といい,併せて「本件特許訂正発明」という。なお,本件特許の明細書を「本件特許訂正明細書」という。)は,次の技術的事項により特定されるものとして,以下検討する。

「【請求項1】焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し,トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,
一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下であることを特徴とする焙煎ごま油配合油脂組成物。
【請求項2】焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し,トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含むことを特徴とする焙煎ごま油配合油脂組成物。
【請求項3】請求項1又は請求項2に記載の焙煎ごま油配合油脂組成物を用いて製造した食品。
【請求項4】 前記食品が,炒め物,和え物,スープ,ドレッシングであることを特徴とする請求項3に記載の食品。」


第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張
請求人は,特許第4601685号の請求項1?4に係る発明についての特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,審判請求書,弁駁書,口頭審理(平成23年11月22日付け口頭審理陳述要領書及び第1回口頭審理調書を含む)において,下記「2 証拠方法」に示した証拠を提出して,次に示す無効理由を主張している。
無効理由について,これまでの主張を整理すると次のとおりである。

(無効理由1)
本件特許は,補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから,同法第123条第1項第1号に該当し,無効とされるべきものである。

(無効理由2)
本件特許の請求項1?4に係る特許は,特許法第36条第6項第1号および第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とされるべきものである。

(無効理由3)
本件特許は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とされるべきものである。

(無効理由4)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は,特許出願前の周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同条の規定に違反してされたものであるから,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とされるべきものである。

2 証拠方法
甲第1号証の1 ボーソー油脂株式会社の食用調合油のJAS表示包装紙
甲第1号証の2 ボーソー油脂株式会社の業務用食用油シリーズのカタログ
甲第1号証の3 甲1号証の2と同一のカタログの鮮明複写
甲第1号証の4 甲1号証の2と同一のカタログの部分拡大の鮮明拡大複写
甲第1号証の5 カタログ冊子「BOSO OIL&FAT」事業概要,ボーソー油脂株式会社
甲第1号証の6 甲1号証の5と同一のカタログの部分拡大の鮮明拡大複写
甲第2号証 食品機能性の科学編集委員会編「食品機能性の科学」,株式会社産業技術サービスセンター,第851-853頁
甲第3号証 特開2007-23620号公報
甲第4号証 特開平4-11838号公報
甲第5号証 新谷いさお(当審注:「員」の右に「力」と書く。),「食品油脂の科学」初版第1刷,株式会社幸書房,1989年10月20日,第38頁
甲第6号証 食用植物油脂の日本農林規格(最終改正平成16年9月28日農林水産省告示 第1772号),第1?13頁
甲第7号証 実験成績証明書
甲第8号証 ボーソー油脂株式会社船橋工場の格付け担当者からのJAS表示包装等の印刷使用届(平成16年5月19日),申請番号第51?57号
甲第9号証 (財)日本油脂検査協会からのJAS表示包装等の印刷使用届の承認通知書(平成16年5月26日),申請番号49?56号
甲第10号証 食用植物油脂品質表示基準(改正 平成16年9月28日農林水産省告示第1773号),第1?3頁

3 各甲号証の記載内容
各甲号証には,以下の事項が記載されている。

(1)甲第1号証の1について
ボーソー油脂株式会社の食用調合油のJAS表示包装紙(甲第1号証の1)には,以の下の事項が記載されている。

(甲1-1-1)原材料を「食用ごま油・食用なたね油」とし,「ごま油60%」を含むと表示されている「調合胡麻油」の包装紙が記載されている。

(2)甲第1号証の2?甲第1号証の4について
ボーソー油脂株式会社の業務用食用油シリーズのカタログ(甲第1号証の2?甲第1号証の4)には,以下の事項が記載されている。

(甲1-2-1)原材料を「食用ごま油・食用なたね油」とし,「ごま油60%」を含むと表示されている「調合胡麻油」の製品が記載されている。(甲第1号証の2の第2頁目,甲第1号証の3の第2頁目,甲1号証の4)

(甲1-2-2)上記「調合胡麻油」製品について,「原料」が「ゴマ油,ナタネ油」,「用途」について「中華料理,揚げ物調理に。」と,「特徴」について「ゴマ油特有のふくよかな香りと酸化安定性の良さを生かして,風味,耐熱性に優れた菜種油をブレンド致しました。」と記載されている(甲第1号証の2の第2頁目,甲第1号証の3の第2頁目,甲1号証の4)

(甲1-2-3)「ボーソー油脂株式会社」のあゆみにおいて,平成7年2月に「胡麻のブレンド油(美珠麻油・調合胡麻油)を発売する。」と記載されている。(甲第1号証の2の第1頁目,甲第1号証の3の第3頁目)

(甲1-2-4)「

」(甲第1号証の2の第1頁目,甲第1号証の3の第3頁目)

(3)甲第1号証の5?甲第1号証の6について
カタログ冊子「BOSO OIL&FAT」事業概要,ボーソー油脂株式会社(甲第1号証の5?甲第1号証の6)には,以下の事項が記載されている。

(甲1-5-1)ボーソー油脂株式会社の「BOSO OIL&FAT」事業概要の一例として,原材料を「食用ごま油・食用なたね油」とし,「ごま油60%」を含むと表示されている「調合胡麻油」の写真が掲載されている。(甲第1号証の5の第7頁,甲第1号証の6)

(甲1-5-2)「調合胡麻油(美珠麻油)」について,「ゴマ油は特有の香りと酸化安定の良さを持っています。その中に風味,耐熱性に優れたキャノーラ油(菜種油)をブレンドした調理専用油です。ゴマ油独特の風味,うま味やコクが欠かせない中国料理のほかレストラン,食堂,惣菜用とお好みに応じて幅広くご利用いただけます。」と記載されている。(甲第1号証の5の第4頁)

(甲1-5-3)本カタログ冊子が,「平成11年11月刷り」であることが記載されている。(甲第1号証の5の第13頁)

(4)甲第2号証について
本件特許の出願前である2008年4月20日に頒布された刊行物である,食品機能性の科学編集委員会編「食品機能性の科学」,株式会社産業技術サービスセンター,第851?853頁(甲第2号証)には,以下の事項が記載されている。

(甲2-1)「大和朝廷の税制「租庸調」の「調」にはゴマなど灯明原料の油糧種子が納税対象品となっていたが,ゴマは炒った時の香ばしい香りが万人に好まれ,いち早く食用化された油である。東アジアでは,種子を炒って搾油する「焙煎ゴマ油」がゴマ油(Sesame Oil)であり,独特の香りと色(褐色),高い酸化安定性を特徴とする。」(第851頁右欄第19?25行)

(甲2-2)「2.2.1 ゴマ油の種類と脂溶性機能成分リグナン類
市販ゴマ油の種類を図2.2.1にまとめた。ゴマ油は,2通りの製法の油,ゴマ油とゴマサラダ油が農林規格で認められている(表2.2.1)。ゴマサラダ油(B)は一般油と同じ精製法であり,無味,無臭,淡黄色で機能性リグナン類を含む。一方,(焙煎)ゴマ油は,種子の焙煎条件(温度と時間)により,色,香り,味の異なる千差万別の油になる。これらの(焙煎)ゴマ油にゴマサラダ油をブレンドしたゴマ油(C)や,他の油とゴマ油をブレンドした調合ゴマ油(D)もあり,スーパーには,色,香りや名称の異なるゴマ油が並んでいる。」(第851頁右欄第37行?第852頁左欄第5行)

(甲2-3)「ゴマ油は未精製油のため,種子のリグナン類がそのまま油に溶出しているが,ゴマサラダ油では,セサモリンが脱色時の酸性白土により分解され,セサモールとなるが,油という非水系に加温という工程で,セサモールは図2.2.2のような分子内転移反応でセサミノールに変換する。」(第852頁左欄第8?13行)

(甲2-4)「

」(第852頁左欄)

(5)甲第3号証について
本件特許に係る出願の出願前の平成19年9月20日に頒布された刊行物である特開2007-236206号公報(甲第3号証)には,以下の事項が記載されている。

(甲3-1)「ここで,「焙煎油」とは,日本農林規格(JAS規格)における食用ごま油の規格における分類であるごま油,精製ごま油,ごまサラダ油のうちの「ごま油」に相当するものをいう。より具体的には,ロビボンド法(日本油脂化学協会,基準油脂分析法2.2.1.1)で測定した下記式(1)のロビボンド色相値において,Yが20?70,Rが10?17,Bが0.5?1.5の範囲で,かつ,ロビボンド色相値(20℃)が150?220である焙煎油が好ましい。」(段落【0047】)

(6)甲第4号証について
本件特許に係る出願の出願前の平成4年1月16日に頒布された刊行物である特開平4-11838号公報(甲第4号証)には,以下の事項が記載されている。

(甲4-1)「1)ゴマ,オリブ,落花生,又はココナッツ等の呈味性油脂と酸化安定化油を混合したものであって,リノール酸の含有量が35重量%以下であり,且つオレイン酸25重量%以上を含有してなる油脂組成物。
2)酸化安定化油が,植物性油脂を脱酸,分別,硬化,脱臭等で精製加工することにより酸化安定性を賦与してなる液状油脂である特許請求の範囲第1項記載の油脂組成物。
3)ゴマ,オリブ,落花生,又はココナッツ等の呈味性油脂と酸化安定化油とを重量比で20:80?70:30の割合で混合してなる特許請求の範囲第1項又は第2項記載の油脂組成物。」(特許請求の範囲)

(甲4-2)「ゴマ,オリブ,落花生,ココナッツ等の呈味性油脂は,それらに特有の風味,香りを有しており,この風味,香りを生かすべく少ないながらも一部で食品に利用されている。」(第1頁右欄第4?7行)

(甲4-3)「ここで,ゴマ,オリブ,落花生,ココナツツ等の呈味性油脂とは,精製されていないゴマ,オリブ,落花生,ココナツツ等の原油が用いられるものであり」(第2頁右上欄第4?7行)

(甲4-4)「更に詳しくは,例えばゴマ風味を有する油脂組成物では,リノール酸の含有量が35重量%以下であり,且つオレイン酸の含有量が50重量%以上となるように調整される。これは,この範囲内になるようにゴマ原油と酸化安定化油とを配合することにより,風味安定性が向上するとともに,常温で液体の油脂組成物となるものである。」(第2頁左下欄第2?8行)

(甲4-5)「前記酸化安定化油は,油脂を脱酸,硬化,脱臭等で精製加工することにより,酸化安定性を阻害する遊離脂肪酸,リノール酸の含有量を減少させ,且つ,分別処理によりオレイン酸含有量を増加させることにより得られるものである。これらの精製加工操作を行うことにより,基本的には全ての油脂を酸化安定化油として用いることができるものであるが,油脂の種類によっては,当該油脂本来の含有するリノール酸量,オレイン酸量,又はこれらの油脂の持つ味,香り等の影響により,精製工程,コスト等に問題が残るものもある。このような理由から,本発明に用いられる酸化安定化油の原料油脂としては,植物性油脂を用いることが好ましく,例えば,ナタネ油,パーム油,ライス油,サフラワー油,とうもろこし油,大豆油等を用いることが好ましい。これらの油脂を用い,脱酸,脱臭,更には硬化分別処理等の精製加工を行うことにより,目的とする好ましい酸化安定化油を比較的容易に得ることができるのである。尚,この場合における分別処理は,リノール酸をオレイン酸に変化させる硬化処理において多少発生する飽和脂肪酸を除去するために行うものである。」(第2頁右下欄第15行?第3頁左上欄第16行)

(甲4-6)「前記ゴマ,オリブ,落花生,ココナッツ等の呈味性油脂と酸化安定化油との混合割合としては,ゴマ,オリブ,落花生,ココナッツ等の呈味性油脂:酸化安定化油を,重量比で20:80?70:30の範囲とする。これは,ゴマ,オリブ,落花生,ココナッツ等の呈味性油脂の混合割合が70以上の場合には,得られる油脂組成物の風味安定性,酸化安定性が悪くなるためである。一方,これらの呈味性油脂の混合割合が20以下の場合には,ゴマ,オリブ,落花生,ココナッツ等の呈味性油脂の持つ風味が発現し難くなるためである。
前記ゴマ,オリブ,落花生,ココナッツ等の呈味性油脂と酸化安定化油との混合割合を20:80,及び70:30とした場合の組成物中のリノール酸とオレイン酸の含有量は例えば別表2の如くである。」(第3頁左上欄第18行?右上欄第13行)

(甲4-7)「(実施例1)
ナタネ油を常法により精製,硬化,分別加工することにより,リノール酸2.5重量%,オレイン酸90重量%を含有するナタネ油の酸化安定化油を得た。この酸化安定化油と,ゴマ原油とを80:20の割合とし,25℃の温度でスタティクミキサーにて均一になるまで混合することにより,A.O.M.が60Hrsのゴマ風味を有する液状の油脂組成物を得た。」(第3頁右下欄下から第4行?第4頁左上欄第5行)

(甲4-8)「(応用例1)
前記実施例1?4で得られた油脂組成物並びに比較例1?4の原油を炒め物に利用し,10名のパネラ-により官能試験を行った。
その結果を別表5に示す。
尚,原材料配合及び調理方法は以下のとおりである。
「原材料配合」
・・・
上記原材料に対して,実施例1?4で得られた油脂組成物,又は比較例1?4の原油を8.0重量%使用した。
「調理方法」
・・・
別表5から明らかなように,いずれの場合においても,10名のパネラ-の内,8名以上が本発明に係るゴマ,オリブ,落花生,ココナツツ等の風味を有する油脂組成物を使用した場合の方が原油を使用したに較べて好ましい味であるという結果になった。」(第4頁右上欄第16行?右下欄第3行)

(甲4-9)「

」(第5頁・別表2)

(7)甲第5号証について
本件特許に係る出願の出願前の1989年(平成元年)10月20日に頒布された刊行物である新谷いさお(当審注:「員」の右に「力」と書く。),「食品油脂の科学」初版第1刷,株式会社幸書房,第38頁(甲第5号証)の図1.7には,以下の事項が記載されているといえる。

(甲5-1)なたね油100%のときの曇点が,約-11℃であること

(8)甲第6号証について
食用植物油脂の日本農林規格(最終改正平成16年9月28日農林水産省告示 第1772号),第1?13頁(甲第6号証)には,以下の事項が記載されている。

(甲6-1)「食用ごま油」について,「ごまから採取した油であって,食用に適するように処理したものをいう。」と,「食用なたね油」について,「あぶらな又はからしなの種子から採取した油であって,食用に適するように処理したものをいう。」と記載されている。(第142頁)

(甲6-2)「食用ごま油」の規格について,「ごま油」,「精製ごま油」,「ごまサラダ油」に区分されること,それぞれの規格の「基準」が記載されている。(第152頁)

(甲6-3)「食用なたね油」の規格について,「なたね油」,「精製なたね油」,「なたねサラダ油」に区分されること,それぞれの規格の「基準」が記載されている。(第153頁)

(9)甲第7号証について
井藤龍平氏らによる,高焙煎ゴマ油,中焙煎ゴマ油又は低焙煎ゴマ油と,精製菜種油とを配合した焙煎ゴマ油配合油脂組成物について,配合量を変えて,風味の評価,脂肪酸組成,リノール酸量,曇点を測定した実験の手順,実験結果(甲第7号証)について,以下の事項が記載されている。

(甲7-1)「第2.試料
1.原料ごま
・・・
2.焙煎ごま油の製造工程
選別機を用いて異物や夾雑物を原料ごまから除去した後,焙煎機「(株)浜田製作所 重油焚間接加熱型二重筒式ロータリーキルン」を用いて焙煎を行った。その後,冷却(注:高焙煎ごま油は冷却なし),蒸煮,圧搾,濾過を行った。静置後,濾過を繰り返し行い,焙煎ごま油を得た。・・・
・・・
なお,中焙煎ごま油,高焙煎ごま油は,それぞれ製造ロットの異なる試料を用い,中焙煎油1,2,3,4(当審注:○の中に,1,2,3,4と記載されている。),高焙煎油1,2,3(当審注:○の中に,1,2,3と記載されている。)とした。

3.精製ごま油の製造工程
・・・

4.精製菜種油試料
一般的な精製による食用菜種油(菜種白絞油;J-オイルミルズ(株)製)を用いた。

5.焙煎ごま油配合油組成物の調整
高焙煎ごま油(高焙煎油),中焙煎ごま油(中焙煎油),低焙煎ごま油(低焙煎油)をそれぞれ,精製菜種油に,配合表1に示すように配合し,焙煎ごま油配合油組成物を製造した。
なお,配合表Aに示す,各焙煎ごま油と精製菜種油の配合割合は,特許第4601685号明細書の【表1】記載の配合割合に準じて以下の配合1?配合6(特許明細書記載の実施例1?6に同じ),参考1(該特許明細書記載の参考例1と同じ)とした。
さらに,配合表Bに示すように,中焙煎油については,焙煎ごま油64%?61%の1%毎の配合割合の下記の配合7?10を製造し試料に加え,さらに各焙煎ごま油100%のものを配合11とした。
・・・

」(第2頁第1行?第3頁)

(甲7-2)「第3.焙煎ごま油配合油組成物の風味の評価
1.風味の評価方法
特許第4601685号明細書の段落【0041】の記載の方法に準じて,上記配合表Aに基づいて配合した各高焙煎ごま油,中焙煎ごま油,低焙煎ごま油配合油組成物,配合表Bに基づいて配合した中焙煎ごま油の配合油組成物,および配合表Cに基づいて配合した中焙煎ごま油,精製ごま油,および精製菜種油の混合である焙煎ごま油配合油組成物についての生風味の評価を行った。
風味の評価は,5名のパネルで5段階の風味総合評価を行い,5名の評価の平均値を評価値とした。
基準試料(評価5)は,中焙煎油1(当審注:○の中に,1と記載されている。)100%品とし,これを全ての風味の評価の基準とした。高焙煎油は突出した強い香味があるが甘い芳香などの他のフレーバーは感じ難い,一方,中焙煎油は全体的なボリューム感で強い焙煎香味とともに甘い芳香を合わせ持ち,風味が良い(強い)と感じるので,この中焙煎油を風味の基準用油とした。

○風味の評価基準
5:優れている
4:やや優れている
3:普通
2:やや劣っている
1:劣っている

2.風味の評価の結果
上記配合表Aおよび配合表Bに基づく焙煎ごま油配合油組成物の風味の評価の結果を,表(1)に示す。・・・

」(第3頁下から第6行?第4頁)

(甲7-3)「第7.上記表のまとめ
以上の試験結果に基づき,焙煎ごま油配合油組成物などの特性を表(15)から表(18)にまとめて以下に示す。

」(第9頁?第10頁)

(10)甲第8号証について
ボーソー油脂株式会社船橋工場の格付け担当者からのJAS表示包装等の印刷使用届(平成16年5月19日)(甲第8号証)には,以下の事項が記載されているといえる。

(甲8-1)申請番号「54」として,「調合油脂名」が「胡麻・ナタネ」であり,「容器の形態」が「16.5kg缶」のものについて,「印刷枚数」が「100,000」,「使用期間」が「H16.6?H21.5」として使用したい旨を届け出た「JAS表示包装等の印刷使用届」が記載されているといえる。

(11)甲第9号証について
(財)日本油脂検査協会からのJAS表示包装等の印刷使用届の承認通知書(平成16年5月26日)(甲第9号証)には,以下の事項が記載されているといえる。

(甲9-1)申請番号「54」として,「調合油脂名」が「ゴマ・タネ」であり,「容器の形態」が「16.5kg缶」のものについて,印刷使用届けが適正と認められた旨通知した「JAS表示包装等の印刷使用届の承認通知書」が記載されているといえる。

(12)甲第10号証について
食用植物油脂品質表示基準(改正 平成16年9月28日農林水産省告示第1773号),第1?3頁(甲第10号証)には,以下の事項が記載されている。

(甲10-1)「第4条 加工食品品質表示基準第6条各号に掲げるもののほか,次に掲げる事項は,これを表示してはならない。ただし,(1)に掲げる事項については食用植物油脂の日本農林規格(昭和44年3月31日農林省告示第523号)第3条から第14条まで及び第17条から第19条までに規定する規格による格付が行われたものに表示する場合,(3)に掲げる事項については当該原料油脂の含有率が30%以上60%未満のものであって当該原料油脂を含む旨の用語を付した商品名を表示してあるもの又は当該原料油脂の含有率が60%以上のものであって当該原料油脂の油脂名に「調合」の文字を冠した商品名を表示してあるもので,当該原料油脂の含有率を容器又は包装の主要部分(商品名,絵その他の表示からみて容器の表示の中央部分と認められる部分を中心とした同一視野の部分をいう。)に表示してあるものに表示する場合は,この限りでない。」(第2頁)


第4 被請求人の主張と証拠方法
1 被請求人の主張
「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め,平成23年7月12日付け訂正請求書を提出して,「本件特許の明細書及び特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを求める」とともに,答弁書,口頭審理(平成23年11月22日付け口頭審理陳述要領書及び第1回口頭審理調書を含む)において,下記「2 証拠方法」に示した証拠を提出して,請求人の主張する無効理由1?5には理由がない,と反論している。

2 証拠方法
乙第1号証 社団法人日本植物油協会ホームページ「植物油に関する用語集」1?2頁
乙第2号証 ボーソー油脂株式会社の業務用食用油シリーズのカタログ
乙第3号証 はぎ(当審注:「くさかんむり」の下左に「のぎへん」,下右に「亀」と書く。)原昌司ら,「焙煎ゴマ油の焙煎温度および品質劣化が極微弱発光現象に及ぼす影響」,日本食品科学工学会誌,第50巻,第7号,(2003年7月),303頁?309頁
乙第4号証 阿部芳郎監修「油脂・油糧ハンドブック」,幸書房(昭和63年5月25日),120?121頁,218?219頁
乙第5号証 食用精製加工油脂の日本農林規格(最終改正 平成20年7月23日)

3 各乙号証の記載内容
各乙号証には,以下の事項が記載されている。

(1)乙第1号証について
社団法人日本植物油協会ホームページ「植物油に関する用語集」1?2頁(乙第1号証)には,以下の事項が記載されている。

(乙1-1)「精製油 粗油には,揚げ物や生食には好ましくないさまざまな不純物が含まれている。この不純物を除去することを精製といい,脱ガム,脱酸,脱色,脱臭等の工程がある。この精製工程を経たものを精製油という。
なお,オリーブ油及びごま油は,独特の香りや風味を生かすため,このような精製工程を経ず,濾過などによる不純物の除去にとどめているものが多い。」(「精製油」の欄)

(乙1-2)「サラダ油 精製油に更に脱ロウ工程を経て,植物油に含まれるロウ分を除去したもの。風味がよく冷蔵庫等の冷たいところでも結晶が析出したり固化することがないようにされた油で,JAS(日本農林規格)では0℃の温度で5.5時間清澄であることとされている。生食だけではなくマヨネース,ドレッシングなどの材料に用いられる。
なお,油糧種子の品種改良によって含まれるロウ分が低下したことから,脱ロウ工程が不要となったものもある。」(「サラダ油」の欄)

(乙1-3)「精製工程 搾油により得られた粗油から,油以外の不純物を除去する工程で,次の順番で行われる。
脱ガム 精製の第1工程である。油中にはリン脂質を主成分とするガム質(澱)が含まれている。このガム質を除去するため,粗油に少量の水を加えて攪拌するとガム質は油から分離するので,それを遠心分離して除去する。
脱酸 主に油中に含まれる遊離脂肪酸を除去する工程。脱ガムを行った粗油に少量の燐酸,続いてカセイソーダを添加・攪拌し,遊離脂肪酸と反応させてセッケンを生成させて,遠心分離機でセッケン分を除去する。この除去された物質をソーダ油滓と称する。
脱色 油脂中のカロチノイド系やクロロフィル系等の色素を除去する。 油脂を軽度の真空状態で活性白土と接触させ,有色素成分を吸着させた後,油と活性白土をろ過して分離する。
(活性白土) アルミナとシリカを主成分とする粘土鉱物を,酸処理により吸着能力を高めたもの。脱色力が強くなる。
(廃白土) 脱色で使用された使用済み活性白土。セメント原料,有機肥料製造時の発酵促進等に使用される。
脱臭 油脂中の好ましくない臭い成分を除去する。油脂を高温,高真空化で水蒸気を吹き込み,有臭成分を除去する。この工程により油の色調や風味安定性が向上する。
脱ロウ 油脂を低温で保持した場合に析出する成分(ロウ分)を除去する。サラダ油の製造に必要な工程。油脂を緩やかに攪拌しながら,徐々に冷却し,固化した成分析出させ,ろ過して除去する。JASのサラダ油の規格では0℃で5.5時間,清澄な状態を保っていることとされている。」(「精製工程」の欄)

(2)乙第2号証について
ボーソー油脂株式会社の業務用食用油シリーズのカタログ(乙第2号証)には,以下の事項が記載されている。

(乙2-1)ボーソー油脂株式会社の業務用食用油シリーズとして,サラダ油,白絞油,ブレンド油の製品が列記されている。(乙第2号証の第2頁)

(3)乙第3号証について
本件特許に係る出願の出願前の平成15年7月に頒布された刊行物であるはぎ(当審注:「くさかんむり」の下左に「のぎへん」,下右に「亀」と書く。)原昌司ら,「焙煎ゴマ油の焙煎温度および品質劣化が極微弱発光現象に及ぼす影響」,日本食品科学工学会誌,第50巻,第7号,303頁?309頁(乙第3号証)には,以下の事項が記載されている。

(乙3-1)「搾油前にゴマを焙煎する「焙煎ゴマ油」は日本,韓国,中国などの東洋独自の製造方法であり,焙煎によりセサモリンがセサモールに変化することで,極めて高い酸化安定性を示すことが知られている。」(第303頁左欄第3?6行)

(乙3-2)「さらに焙煎ゴマ油の有する抗酸化性が非常に高いことから,AOM試験や重量法による酸化安定性評価には,1週間から10日程度を要して,迅速に品質評価できる計測手法の開発が望まれている。」(第304頁左欄第1?4行)

(乙3-3)「また,セサモールの発光に及ぼす影響を検討するため,市販の焙煎ゴマ油(純正ごま油:かどや製油脂)1gに,セサモールを溶媒に溶かし,1mlを添加した。」(第304頁右欄第22?25行)

(4)乙第4号証について
本件特許に係る出願の出願前の昭和63年5月25日に頒布された刊行物である阿部芳郎監修「油脂・油糧ハンドブック」,幸書房,120?121頁,218?219頁(乙第4号証)には,以下の事項が記載されている。

(乙4-1)「AOM試験結果を図7.6に示した^(16-17))。大豆油,なたね油,とうもろこし油,綿実油,こめ油などのAOM値が13-21時間程度である^(18))のに対して,焙煎した”ごま油”が100時間でも過酸化物価(POV)はわずかであり,著しく優れた酸化安定性を持つことが分かる。精製したごま油では,それ程著しい酸化安定性はみられない。」(第121頁第5?8行)

(乙4-2)「酸化安定性の指標としてAOM値が用いられている。AOM値とは,油脂20mLを97.8℃に保ち,その油脂の中に2.33mL/sで空気を吹き込んだ時に油脂が酸化されて生じる過酸化物の量である。具体的には,過酸化物価が100meq/kgになるまでに要する時間をいう。したがって,その時間が長いほど酸化安定性が良いことになる。」(第218頁第2?5行)

(5)乙第5号証について
食用精製加工油脂の日本農林規格(最終改正 平成20年7月23日)(乙第5号証)には,以下の事項が記載されている。

(乙5-1)「食品精製加工油脂」の定義として,「動物油脂(水産動物油を含む。以下同じ。),植物油脂又はこれらの混合油脂(以下「原料油脂」という。)に水素添加,分別又はエステル交換を行って,融点を調整し,又は酸化安定性を付与したものであって,かつ,食用に適するように精製(脱酸,脱色,脱臭等をいう。)をしたものをいう。」と記載されている(第2条)。


第5 無効理由1について
1 請求人の主張について
平成23年4月18日付け審判請求書において,以下の事項を主張している。

(ア)平成22年3月25日付け手続補正の「脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上を含み」を追加する補正について,「補正の根拠に「実施例5」を挙げていながら,トリグリセリド量および曇点については補正前のままであ」り,「リノール酸を35.6質量%以上と規定することは,実施例6を含まないことの規定であるから,「焙煎ごま油が60質量%以上」および「曇点-7℃以下」の根拠がなくなったことであり,出願時とは異なる技術思想の導入であ」るから,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした補正であるとはいえない。(第5頁第10行?第6頁第12行を参照)

(イ)平成22年8月3日付け手続補正の「精製油」を「菜種油」とした補正について,「「菜種油」は未精製菜種油,精製菜種油,および菜種サラダ油を包含する概念である。・・・それらの当業界の技術常識に基づくと,平成22年8月3日付けの手続補正書による補正により,「焙煎ごま油および菜種油を配合し」に補正された結果,焙煎ごま油に配合されるものが精製菜種油のみならず未精製菜種油,および菜種サラダ油をも包含する「菜種油」に変更されたことがわかる。したがって,「菜種油」にする補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内においてした補正であるとは言えない。」(第6頁第13行?第7頁第18行を参照)

(ウ)平成22年8月3日付け手続補正の「焙煎ごま油が60質量%以上になるよう」を「焙煎ごま油65?70質量%になるよう」とした補正について,「これは実施例4および実施例5を根拠にした補正である。したがって,根拠となる実施例4および5に即した特許請求の範囲の記載としなければならない。・・・請求項1に係る発明において,リノール酸35.6質量%であって,曇点-5℃のものが存在していることを示している。このことは実施例5と矛盾し,当業界の技術常識に反する組成物を包含しており,出願時とは異なる技術思想というべきであり」,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした補正であるとはいえない。(第7頁第19行?32行を参照)

2 被請求人の主張について
上記請求人の主張(ア)?(ウ)について,被請求人は,平成23年7月12日付け答弁書において以下のように主張している。

(1)上記主張(ア)について
平成22年3月25日付け手続補正の「脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上を含み」を追加する補正について,「当該補正事項は,本願明細書の段落【0022】,実施例4,5(表1)を根拠として導くことができるものであ」る。(第4頁第4?13行を参照)

(2)上記主張(イ)について
平成22年8月3日付け手続補正の「精製油」を「菜種油」とした補正について,平成23年7月12日付け「訂正請求書により,「菜種油」を「精製油としての菜種油」に訂正を行った。・・・請求人の主張する無効理由は解消した。」(第4頁第14?23行を参照)

(3)上記主張(ウ)について
平成22年8月3日付け手続補正の「焙煎ごま油が60質量%以上になるよう」を「焙煎ごま油65?70質量%になるよう」とした補正について,「当該補正事項は,本願明細書の実施例4,5(表1)を根拠として導くことができるものであ」る。(第5頁第10?18行を参照)

3 当審の判断
(1)上記主張(ア)について,
平成22年3月25日付け手続補正の「脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上を含み」を追加する補正について,出願当初明細書には以下の記載がある。
「【0022】
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は,リノール酸を30質量%以上52質量%以下含むことが好ましい。より好ましくは,32質量%以上44質量%以下であり,さらに好ましくは,34質量%以上40質量%以下である。」
「【0029】
焙煎ごま油(日清オイリオグループ株式会社製)と,精製菜種油(以下菜種油という,日清オイリオグループ株式会社製),・・・とを表1?3に記載の配合割合で混合し,焙煎ごま油配合油脂組成物を調合した(実施例1?16及び参考例1?3)。また,比較例として表4に記載の比較例1(焙煎ごま油のみ)及び比較例2?6(焙煎ごま油と大豆油とを調合)を用意した。
【0030】
実施例1?16,参考例1?3及び比較例1?6について,トリグリセリド組成,脂肪酸組成,ステロール含量及びトコフェロール含量を測定した結果を表1?4に示す。
【0031】


この補正の「脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上」の数値範囲は,段落【0022】の範囲に含まれるものであり,また,段落【0031】の実施例4及び5の「焙煎ごま油配合油脂組成物」も「脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上」になっているから,新規事項の追加とはいえず,請求人の主張する無効理由はない。

(2)上記主張(イ)について
平成22年8月3日付け手続補正の「精製油」を「菜種油」とした補正について,平成23年7月12日付け訂正請求書により,「菜種油」を「精製油としての菜種油」に訂正されたことにより,請求人の主張する無効理由はなくなったといえる。

(3)上記主張(ウ)について
平成22年8月3日付け手続補正の「焙煎ごま油が60質量%以上になるよう」を「焙煎ごま油65?70質量%になるよう」とした補正について,出願当初明細書には以下の記載がある。
「【請求項1】
焙煎ごま油が50質量%より大になるように焙煎ごま油及び精製油を配合し,トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含むことを特徴とする焙煎ごま油配合油脂組成物。
【請求項2】
前記精製油が植物油であることを特徴とする請求項1に記載の焙煎ごま油配合油脂組成物。
【請求項3】
前記植物油が菜種油,べに花油,ひまわり油から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項2に記載の焙煎ごま油配合油脂組成物。
【請求項4】
一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の焙煎ごま油配合油脂組成物。
【請求項5】
前記焙煎ごま油は60質量%以上95質量%以下配合され,かつ,トリオレインを5質量%以上25質量%以下含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の焙煎ごま油配合油脂組成物。」
「【0029】
焙煎ごま油(日清オイリオグループ株式会社製)と,精製菜種油(以下菜種油という,日清オイリオグループ株式会社製),・・・とを表1?3に記載の配合割合で混合し,焙煎ごま油配合油脂組成物を調合した(実施例1?16及び参考例1?3)。また,比較例として表4に記載の比較例1(焙煎ごま油のみ)及び比較例2?6(焙煎ごま油と大豆油とを調合)を用意した。
【0030】
実施例1?16,参考例1?3及び比較例1?6について,トリグリセリド組成,脂肪酸組成,ステロール含量及びトコフェロール含量を測定した結果を表1?4に示す。
【0031】


この補正における「焙煎ごま油65?70質量%」の数値範囲は,出願当初明細書の請求項1の「焙煎ごま油が50質量%より大」の範囲に含まれるものであり,「焙煎ごま油65?70質量%」の数値は,出願当初明細書の段落【0029】?【0031】の【表1】の実施例4,5に記載されており,新たな技術的事項を導入するものではないから,新規事項の追加とはいえず,請求人の主張する無効理由はない。

なお,請求人は,平成23年11月22日付け口頭審理陳述要領書において,平成23年10月27日付け通知書における合議体の暫定的な見解に対して,「特許請求の範囲の記載を構成要件「焙煎ごま油65?70質量%になるよう」が他の構成要件「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下である」と相互にどのような関係を有するかを考慮することなく,新規事項の追加に当たらないと判断したのであり,妥当でない。・・・「焙煎ごま油が65?70質量%と菜種油」からなる組成物において,曇点-5℃のものは当業界の技術常識から見て存在しえないのであり,当業界の技術常識に反する組成物を包含している」旨主張している(第7頁第7?25行)。
しかしながら,仮に「焙煎ごま油が65?70質量%と菜種油」からなる組成物において,曇点-5℃のものは当業界の技術常識から見て存在しえないとしても,願書に最初に添付した明細書には,段落【0029】?【0031】の【表1】の実施例4,5として,「焙煎ごま油が65?70質量%と菜種油」であって,「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下」の範囲内にある「焙煎ごま油配合油脂組成物」自体は記載されていたといえる。そうすると,この補正は,新たな技術的事項を導入するものではなく,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえるから,請求人のこの主張を採用することはできない。


第6 無効理由2について
1 請求人の主張について
請求人は,平成23年4月18日付け審判請求書において,以下の事項を主張している。

(ア)「菜種油が未精製油,精製油に左右されない根拠が示されていない。」(第8頁第11?17行を参照)

(イ)「焙煎ごま油がごまの煎り具合に左右されない根拠が示されていない。」(第8頁第18?最終行を参照)

(ウ)「焙煎ごま油が未精製,半精製に左右されない根拠が示されていない。」(第9頁第1行?下から第5行を参照)

(エ)「焙煎ごま油および菜種油の配合において,請求項で規定する数値範囲内のデータがあまりに少ない。」「「菜種油」としては,未精製油,および菜種サラダ油が包含されるのにもかかわらずこれらの油を配合する例がない。また,焙煎ごま油として,焙煎ごま油(日清オイリオグループ株式会社)を用いる例が示されているだけであり,この例が「焙煎ごま油」の範囲をすべてカバーするとは言えない。」(第9頁下から第4行?第10頁第9行を参照)

(オ)「焙煎ごま油配合油脂組成物を「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下である」と規定する数値範囲のデータがあまりに少ない。」(第9頁第10?24行を参照)

(カ)「「焙煎ごま」について,ごまの煎り具合の規定,「油」について,未精製油であるのか半精製油であるのかの規定がないため,食用油としてのごま油との関係が明確でなく,・・・本件特許の焙煎ごま油配合油脂組成物の発明の範囲が明確でない。」(第11頁第3?29行を参照)

(キ)「本件特許の請求項1に係る発明について,課題が解決できたことが明確にされていない。」「焙煎ごま油(・・・)と,精製菜種油(・・・)を表1に記載の配合割合で混合し,焙煎ごま油油脂組成物を調合した実施例1?6が示されているが,このうち本件特許の請求項1に係る発明の実施例に当たるのは実施例4,5のみである。・・・このように,焙煎ごま油及び菜種油の配合において,・・・実施例4・・・実施例5・・・が示されているだけであり,「菜種油」として,未精製油,および菜種サラダ油を配合する例がないことを併せると,本件特許の請求項1に係る発明について,課題を解決できたことが明確に記載されているとはいえない。」(第11頁第30行?第12頁第16行を参照)

さらに,請求人は,平成23年8月19日付け弁駁書において,上記の主張の他,以下の事項を主張している。

(ク)本件特許訂正発明について,「その成分組成を採用することにより得られる組成物の性質を確認した具体例としては実施例4および5が記載されているにすぎず」,本件特許訂正発明1?2の範囲に含まれるが実施例4及び5の範囲にない「「トリグリセリド組成としてトリグリセリド組成を構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上64.1より少ない質量%,または,65.1質量%より多い質量%80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を36.7質量%より多い質量%含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下-6.0℃より高い,あるいは-6.4℃より低い」という性質を有することを確認しておらず,「トリグリセリド組成としてトリグリセリド組成を構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上64.1より少ない質量%,または,65.1質量%より多い質量%80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を36.7質量%より多い質量%含む」という性質を有することを確認しておらず(請求項2),また,その性質を確認する他の実施例の開示もない。・・・本件特許の請求項1ないし4に係る特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない」(第8頁第13行?第10頁第20行を参照)
本件特許訂正発明の「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリド」,「リノール酸」,「曇点」の数値限定の意義について,「・・・数値限定のもつ技術的意義が明らかでないことは訂正前も訂正後も変わりがない。・・・特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」(第10頁第21行?第11頁第14行を参照)

2 被請求人の主張について
上記請求人の主張(ア)?(キ)について,被請求人は,平成23年7月12日付け答弁書において以下のように主張している。

(1)上記主張(ア)について
平成23年7月12日付けの「訂正請求書により,「菜種油」を「精製油としての菜種油」に訂正を行った。これにより,請求人の主張する無効理由は解消した。」(第6頁第3?10行を参照)

(2)上記主張(イ)について
「本件特許発明1が本件特許発明の効果(・・・)を奏することは本願明細書の実施例4及び5にてサポートされていることは明らかであるから,請求人の主張は失当である。ごまの煎り具合を変えた焙煎ごま油を使用した場合にも本件特許発明の効果を奏することは本願明細書の開示から当業者は容易に理解できる。」(第6頁第11?18行を参照)

(3)上記主張(ウ)について
「本件特許発明1が本件特許発明の効果(・・・)を奏することは本願明細書の実施例4及び5にてサポートされていることは明らかであるから,請求人の主張は失当である。本件特許発明における「焙煎ごま油」とは,本願明細書の段落【0011】及び【0012】に記載された通りのものであって,当該「焙煎ごま油」を使用した場合に本件特許発明の効果を奏することは当業者は容易に理解できる。」(第6頁第19行?第7頁第1行を参照)

(4)上記主張(エ)について
平成23年7月12日付けの訂正請求書により,「「精製油としての菜種油」に訂正を行い,かつ,実施例4及び5に基づき,「精製油としての菜種油」の配合量を「30?35質量%」に限定する訂正を併せて行い,・・・本件特許発明1が本件特許発明の効果(・・・)を奏することは本願明細書の実施例4及び5にサポートされていることは明らかであるから,請求人の主張は失当である。」(第8頁第3?12行を参照)

(5)上記主張(オ)について
「請求項1の「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように」に規定される数値範囲の上限及び下限に相当する実施例4及び5が本願明細書に開示されており,当該実施例4及び5は本願明細書の表1及び表5より「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下である」の範囲内であるから,データとして充分であること言うことができる。(第8頁第13?下から第2行を参照)

(6)上記主張(カ)について
「本件特許発明における「焙煎ごま油」とは,本願明細書の段落【0011】及び【0012】に記載された通りのものであって,かつ,本願明細書の段落【0002】及び【0006】等において「焙煎ごま油」は「精製油」と区別されていることから明らかな通り,本件特許発明における「焙煎ごま油」は「精製油」ではないし,これを含むものではない。」(第9頁第14?23行を参照)

(7)上記主張(キ)について
平成23年7月12日付けの訂正請求書により,「「菜種油」を「精製油としての菜種油に訂正を行った。これにより,請求人の「菜種油」に関する主張は根拠がなくなった。また,実施例4および5に基づき,「精製油としての菜種油」の配合量を「30?35質量%」に限定する訂正を併せて行った。従って,実施例4および5により本件特許発明1が本件特許発明の効果を奏することが明らかにされており,本件特許発明1が課題を解決できたことは明確に記載されている。」(第9頁下から第2行?第10頁第13行を参照)

3 当審の判断
(1)上記主張(ア)について
平成23年7月12日付け訂正請求書による訂正により,「菜種油」を「精製油としての菜種油」に訂正されたことにより,「菜種油」が「精製油」であることが明らかになったのであるから,上記主張(ア)については理由がなくなったといえる。

(2)上記主張(イ)について
本件特許訂正発明の課題は,明細書の段落【0006】に記載されているように「本発明の目的は,精製油をブレンドしても焙煎ごま油の風味を維持できる焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品を提供する」こと,すなわち,ごまの煎り具合が異なる「焙煎ごま油」に対して,「菜種油」等の「精製油」をブレンドしても,そのごまの煎り具合に応じた「焙煎ごま油」の風味を維持できることであるから,本件特許訂正発明の課題との関係では,「焙煎ごま油」の煎り具合は問題にならないといえる。
そして,本件特許訂正発明により上記課題が解決できることは,本件特許訂正明細書の段落【0029】?【0031】の実施例4,5(表1)に記載されているといえるから,特許法第36条第6項第1号違反であるとはいえない。

(3)上記主張(ウ),(カ)について
「焙煎ごま油」の意義について,本件特許訂正明細書には,以下の記載がある。

「【0002】
食用油には風味を付ける為に焙煎した焙煎油と,風味のほとんどない精製油がある。焙煎油としてはごま油が通常用いられ,一部業務用に焙煎菜種油(油揚げ用など)が使用されている。
【0003】
焙煎ごま油は,精製油の風味付けのために0?30質量%の範囲で精製油に加えられることがある(特許文献1参照)。」
「【0006】
従って,本発明の目的は,精製油をブレンドしても焙煎ごま油の風味を維持できる焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品を提供することである。」
「【0012】
一般的な製造工程としては,例えば,原料種子を選別した後,焙煎し,その後,圧搾,ろ過,静置,(ろ過及び静置の繰り返し),仕上げろ過の工程を経る。焙煎は公知の種々の方法により行なうことができる。」

本件特許訂正明細書において,段落【0002】の「食用油には風味を付ける為に焙煎した焙煎油と,風味のほとんどない精製油がある」,段落【0006】の「焙煎ごま油は,精製油の風味付けのために・・・精製油に加えられる」との記載からみて,「食用油には風味を付ける為に焙煎した焙煎油」は,「風味のほとんどない精製油」に対するものであるといえ,「精製油」を含まないものであり,「半精製油」ではないと解するのが自然である。
また,段落【0012】の「一般的な製造工程としては,例えば,原料種子を選別した後,焙煎し,その後,圧搾,ろ過,静置,(ろ過及び静置の繰り返し),仕上げろ過の工程を経る。焙煎は公知の種々の方法により行なうことができる。」の記載についても,上記摘記事項(乙1-1)の「・・・この不純物を除去することを精製といい,脱ガム,脱酸,脱色,脱臭等の工程がある。この精製工程を経たものを精製油という。なお,オリーブ油及びごま油は,独特の香りや風味を生かすため,このような精製工程を経ず,濾過などによる不純物の除去にとどめているものが多い」との記載からみて,段落【0012】において,「一般的な製造工程」として例示されている工程は,「「脱ガム,脱酸,脱色,脱臭等の工程」である「精製工程」を実施するものではないから,本件特許訂正発明の「焙煎ごま油」を「未精製油」と解するのが自然であるといえる。
そうすると,本件特許訂正発明の「焙煎ごま油」は「未精製油」と解するのが自然であり,本件特許訂正明細書中に「焙煎ごま油が未精製,半精製に左右されない根拠」を示す必要はないといえるから,上記主張(ウ),(カ)も理由がない。

なお,請求人は,平成23年11月22日付け陳述要領書において,平成23年10月27日付け通知書における合議体の暫定的な見解に対して,「本件特許訂正発明の「焙煎ごま油」の意味は一義的には定まらず,そこで,本件特許訂正明細書の記載を参酌すると,段落【0002】の「食用油としてのごま油」,段落【0011】の「市販の焙煎ごま油を用いても良い」,段落【0012】の「一般的な製造工程」と記載されており,ここでも一般的な「食用油としてのごま油」の用語の意義と同じ説明がなされていることから,本件特許訂正発明の「焙煎ごま油」の意味が「未精製油」であることは明らかというには無理がある」旨主張している(第8頁第8?14行)。
しかしながら,段落【0002】には,「食用油には,・・・焙煎油と,・・・精製油がある」こと,「焙煎油としてはごま油が通常用いられる・・・」ことが記載されているのみであり,本件特許訂正発明の「焙煎ごま油」を「未精製油」であると解しても矛盾が生じるものではなく,むしろ上述したように,「未精製油」であると解するのが自然である。
さらに,段落【0012】の「一般的な製造工程」についても,上記で検討したように,段落【0012】には「例えば,原料種子を選別した後,焙煎し,その後,圧搾,ろ過,静置,(ろ過及び静置の繰り返し),仕上げろ過の工程を経る」と記載されており,「一般的な製造工程」として例示されている工程は,「脱ガム,脱酸,脱色,脱臭等の工程」である「精製工程」を実施するものではないから,本件特許訂正発明の「焙煎ごま油」を「未精製油」と解するのが自然であるといえる。
また,段落【0011】の「本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物に配合される焙煎ごま油は,特に限定されるものではなく,公知の方法により製造された焙煎ごま油を用いることができる。市販の焙煎ごま油を用いても良い。」の記載についても,上記摘記事項(乙1-1)の「・・・ごま油は,独特の香りや風味を生かすため,このような精製工程を経ず,濾過などによる不純物の除去にとどめているものが多い」との記載からみて,「市販の焙煎ごま油」の中には「未精製」のものもあるといえるから,本件特許訂正発明の「焙煎ごま油」を「未精製油」と解することと矛盾するものではない。
したがって,請求人の上記主張を採用することはできない。

(4)上記主張(エ),(オ),(キ),(ク)について
上記請求人の主張(エ),(オ),(キ),(ク)について,平成23年7月12日付け訂正請求書による訂正により,「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し・・・」と訂正されて,「菜種油」が「精製油」であること,「焙煎ごま油配合油脂組成物」が「焙煎ごま油が65?70質量%」と「精製油としての菜種油が30?35質量%」の配合物であることが明確になった。
さらに,本件特許訂正明細書の段落【0029】?【0031】の【表1】の実施例4,5には,上記の上限・下限の配合物において,「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下」の範囲内にある態様も開示されており,これらの記載からみれば,「焙煎ごま油が65?70質量%」と「精製油としての菜種油が30?35質量%」の配合物であれば,「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下」の範囲内になることは,当業者であれば容易に理解できることといえる。
また,本件特許訂正発明の課題は,明細書の段落【0006】の「本発明の目的は,精製油をブレンドしても焙煎ごま油の風味を維持できる焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品を提供する」ことであるが,本件特許訂正明細書の段落【0029】?【0031】の【表1】の実施例4,5,段落【0041】及び段落【0042】の【表6】の実施例4,5において,「焙煎ごま油」及び「精製油としての菜種油」の配合量の上限・下限値において,上記課題が解決されることが開示されており,「焙煎ごま油が65?70質量%」と「精製油としての菜種油が30?35質量%」の配合物であれば,上記課題が解決できることは当業者であれば容易に理解できるといえる。
そして,上述のとおり,本件特許明細書をみれば,本件特許訂正発明により上記課題を解決できることは当業者であれば容易に理解できるのであるから,本件特許訂正発明を特定する他の事項である「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリド」,「リノール酸」,「曇点」の上限値,下限値を示す全ての実施例がないからといって,特許法第36条第6項第1号,特許法第36条第6項第2号の要件を満たさないとすることはできない。
したがって,本件特許訂正発明は,特許法第36条第6項第1号,同法同条第6項第2号の要件を満たすものといえる。

なお,請求人は,平成23年11月22日付け口頭審理陳述要領書において,平成23年10月27日付け通知書における合議体の暫定的な見解に対して,「・・・比べるべき二つの「対象」は「組成物を構成する成分,配合割合」の組成物と「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下である」性質の組成物であり,それらは同じものでなければならないところ,合議体の認定は,一つの「対象」はもう一つの「対象」に包含されることが予測できることであると認定するものであり,同一であると認定するものではないから,論理的でない」旨主張している(第9頁第3?11行)。
しかしながら,本件特許訂正発明1は,「焙煎ごま油配合油脂組成物」に係る発明であり,「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し」たものであること,及び「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下である」ことを発明特定事項としたものであるものである。そして,「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し」た組成物と「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下である」組成物とを厳密に一致させるべき理由はなく,むしろ,上記2つの発明特定事項により特定された「焙煎ごま油配合油脂組成物」として,特許法第36条第6項第1号,同法同条第6項第2号の要件を満たすか否かを判断すべきものである。
したがって,請求人のこの主張も採用することはできない。


第7 無効理由3について
1 請求人の主張について
平成23年4月18日付け審判請求書において,請求人は,以下の事項を主張している。

(1)「発明の詳細な説明には,焙煎ごま油を特定する要素である「ごまの煎り具合」,あるいは未精製であるのか精製ごま油を配合したものであるのかについて,食用油としてのごま油との関係で明示することはなく,焙煎ごま油(・・・・)と,精製菜種油(・・・)との組み合わせのみについて,ならびに,実施例4は・・・,実施例5は・・・の組成物の実施例があるだけである。そして表6の風味の評価が菜種油が未精製,精製に左右されない根拠が示されていないこと,焙煎ごま油でのごま油の煎り具合に左右されないこと,未精製油であるのか精製ごま油を配合したものであるのかに左右されないことの裏付けは明細書中には見あたらない・・・」(第13頁第1?16行を参照)
「本件明細書には,実施例において,焙煎ごま油(・・・)を用いたと記載されているが,「脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇天が-5℃以下である」組成物を得る方法も不明であるばかりか,焙煎ごま油は,種子の焙煎条件(温度と時間)により,色,香り,味の異なる千差万別の油になることは当業者に周知の技術事項である(甲第2号証,甲第7号証の実験成績証明書参照)。・・・したがって,特に焙煎ごま油の風味を効果のベースとする発明の効果は,単なる配合割合で決まるものではないので,種子の種類,および,種子の焙煎条件や焙煎度が全く不明である,また,精製ごま油を配合したかどうかも分からない,本件明細書の記載からは,いかにして明細書記載の効果を奏する油脂組成物が製造しうるかは不明であり,当業者は追試もできない。未精製菜種油,精製菜種油,および菜種サラダ油の組み合わせを考慮すると追試されるべき数は膨大である。・・・」(第13頁第17行?下から第3行を参照)

さらに,平成23年8月19日付け弁駁書において,上記の主張の他,以下の事項を主張している。

(2)「・・・「菜種油」を「精製油としての菜種油」に,その菜種油の配合量を「30?35質量%」に限定した場合であって,「トリグリセリド組成としてトリグリセリド組成を構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上64.1より少ない質量%,または,65.1質量%より多い質量%80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を36.7質量%より多い質量%含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下-6.0℃より高い,あるいは-6.4℃より低い」数値の範囲に調整する手段の記載がなされていない場合が広範に含まれている・・・」(第12頁第1?20行を参照)

2 被請求人の主張について
上記請求人の主張(1)について,被請求人は,平成23年7月12日付け答弁書において以下のように主張している。

(1)平成23年7月12日付け訂正請求により,「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し」と訂正されて,「請求項において明確に配合量が規定されているところ,当業者は容易にその実施をすることが可能であり,何ら多大な試行を要するものではない。」(第10頁第17行?第11頁第3行を参照)

3 当審の判断
平成23年7月12日付け訂正請求書による訂正により,「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し・・・」と訂正されて,「菜種油」が「精製油」であること,「焙煎ごま油配合油脂組成物」が「焙煎ごま油が65?70質量%」と「精製油としての菜種油が30?35質量%」の配合物であることが明確になった。
また,上記「第6 無効理由2について」「3 当審の判断」(3)で検討したように,本件特許訂正発明の「焙煎ごま油」は「未精製油」と解するのが自然である。
さらに,上記「第6 無効理由2について」「3 当審の判断」(4)で検討したように,本件特許訂正発明の課題は,本件特許訂正明細書の段落【0006】の「本発明の目的は,精製油をブレンドしても焙煎ごま油の風味を維持できる焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品を提供する」こと,すなわち,ごまの煎り具合が異なる「焙煎ごま油」に対して,「菜種油」等の「精製油」をブレンドしても,そのごまの煎り具合に応じた「焙煎ごま油」の風味を維持できることであり,本願特許訂正発明の課題との関係では,「焙煎ごま油」の煎り具合は問題にならないといえる。
また,本件特許訂正明細書の段落【0029】?【0031】の【表1】の実施例4,5,段落【0041】及び段落【0042】の【表6】の実施例4,5において,上記の上限・下限の配合物において,上記課題が解決されることが開示されており,「焙煎ごま油が65?70質量%」と「精製油としての菜種油が30?35質量%」の配合物であれば,上記課題が解決できることは当業者であれば容易に理解できるといえる。
また,本件特許訂正明細書の段落【0029】?【0031】の【表1】の実施例4,5を参酌すれば,「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下」の範囲の物性を有する「焙煎ごま配合油脂組成物」を得ることが実施可能に記載されていると認められる。さらに,甲第7号証の上記摘記事項(7-3)の実験結果からも,本件特許訂正明細書が本件特許訂正発明を実施可能に記載されていることが裏付けられるし,「焙煎ごま油」を選択することにより「トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリド」,「リノール酸」,「曇点」の値をある程度変えることも可能であるといえる。
したがって,本件特許訂正明細書は,当業者に多大な試行を強いるものではなく,特許法第36条第4項第1号の要件を満たすといえ,無効理由3に理由はない。

なお,請求人は,平成23年11月22日付け口頭審理陳述要領書において,平成23年10月27日付け通知書における合議体の暫定的な見解に対して,「合議体が,前者の「「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し」によって特定される組成物は,後者の「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下である」性質の組成物に包含されるという認定は,前者はすべて後者に包含されるが,後者は前者に当たらない組成物も包含することを認めるものであるから,妥当なものとはいえない。前者の「・・・」によって特定される組成物であれば,課題が解決できることは当業者であれば予測できるが,後者の「・・・」性質の組成物であれば,課題が解決できることは当業者であっても予測できるとはいえない。合議体は・・・実施例4,5で示される組成物の属性は,訂正発明で規定されるような広範囲に変えることは技術常識からみて不可能である。・・・むしろ,甲7号証の実験結果は,訂正発明で規定されるような広範囲に変えることはできないことを示しているのである。・・・」旨主張している(第9頁第16行?第10頁最終行)。
しかしながら,本件特許訂正発明1は,「焙煎ごま油配合油脂組成物」に係る発明であり,「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し」たものであること,及び「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下である」ことの2つの発明特定事項により特定された「焙煎ごま油配合油脂組成物」として,特許法第36条第4項第1号の要件を満たすか否かを判断すべきである。
そして,本件特許訂正明細書が,上記2つの発明特定事項により特定された「焙煎ごま油配合油脂組成物」について実施可能に記載されていることは上記で検討したとおりであり,特許法第36条第4項第1号の要件を満たさないとはいえないから,請求人のこの主張も採用することはできない。


第8 無効理由4について
1 請求人の主張について
平成23年4月18日付け審判請求書において,本件特許発明は,特許法第29条第2項に違反してなされたものと主張し,平成23年8月19日付け弁駁書において,本件特許訂正発明は,特許法第29条第2項に違反してなされたものと主張している。

2 被請求人の主張について
上記請求人の主張について,被請求人は,平成23年7月12日付け答弁書において,本件特許訂正発明は特許法第29条第2項に違反しているものではない旨主張している。

3 当審の判断
(1)本件特許訂正発明1について
(ア)甲第1号証の2?甲第1号証の4について
甲第1号証の2は,「ボーソー油脂株式会社」が作成した「業務用食油シリーズ」のカタログであるところ,一般に,「カタログ」は,頒布を目的として作成される刊行物であるといえる。
そして,甲第1号証の上記摘記事項(甲1-2-4)には,「ボーソーグループ」の各社,あるいは,「ボーソー油脂株式会社」の住所表記の郵便番号として「〒254」,「〒350-12」,「〒940」,「〒891-01」等と,3桁又は5桁の郵便番号が記載されている。
一方,郵政事業株式会社の発表データ等を基にして作成された (株)読売情報開発大阪作成の「郵便番号月別更新内容一覧」(http://yuusuke.info/henkou.htm)をみると,本件特許出願の10年以上前である1998年2月2日に郵便番号が7桁化されたとある。一般に,カタログにおける住所や郵便番号の表記は当該カタログに接した顧客から連絡を受ける際の重要な情報であり,カタログにおいて,このような重要な情報を郵便番号が7桁化された後も,長く3桁又は5桁の郵便番号として表記することは通常考えられない。
そうすると,甲第1号証の2は,遅くとも本件特許の出願日である2008年5月28日の時点では,既に作成され,日本国内において頒布されたといえるから,本件特許の「特許出願前に日本国内において,頒布された刊行物」であるといえる。また,甲第1号証の2と同じものである甲第1号証の3,及びその拡大コピーである甲第1号証の4も同様である。

(イ)甲第1号証の2?甲第1号証の4に記載された発明について
甲第1号証の2の上記摘記事項(甲1-2-1)には,「食用ごま油60%および食用なたね油からなる調合胡麻油」の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

(ウ)対比
本件特許訂正発明1と引用発明とを対比すると,両者は,
「ごま油と菜種油とを配合した,ごま油配合油脂組成物」という点で一致し,以下の点で相違する。

相違点1:「ごま油」と「菜種油」について,本件特許訂正発明1では,「ごま油」として「焙煎ごま油」,「菜種油」として「精製油としての菜種油」を用いるのに対し,引用発明では,どのような「ごま油」,「菜種油」か明らかでない点。

相違点2:「焙煎ごま油油脂組成物」の配合について,本件特許訂正発明1では,焙煎ごま油の配合量が65?70質量%,精製油としての菜種油の配合量が30?35質量%であるのに対し,引用発明では,「食用ごま油」の配合量が60%である点。

相違点3:「焙煎ごま油油脂組成物」の成分について,本件特許訂正発明1では,「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下である」のに対し,引用発明では,これらの物性値が明らかでない点。

(ウ)判断
上記相違点1?3について,検討する。
(a)相違点1について
まず,「焙煎ごま油」について,甲第4号証の上記摘記事項(甲4-3),(甲4-4)には,ゴマの呈味性油脂として,精製されていないゴマの原油,すなわち,未精製油を用いることが記載されており,さらに,乙第1号証の上記摘記事項(乙1-1)には,技術常識として,「ごま油は,独特の香りや風味を生かすため,このような精製工程を経ず,濾過などによる不純物の除去にとどめているものが多い」ことが,甲第2号証の上記摘記事項(甲2-3)には,「ゴマ油は未精製油のため・・・」と記載されており,未精製のゴマ油は,本件特許に係る出願の前から,一般的なものであったといえる。
また,香りのよいゴマ油として「焙煎ごま油」は周知のものであるといえ(甲第2号証の上記摘記事項(甲2-1),(甲2-2),(甲2-4),乙第3号証の上記摘記事項(乙3-1)を参照。),焙煎されたごま油自体も,本件特許に係る出願の前から市販されていたと認められる(乙第3号証の上記摘記事項(乙3-3)の他,本件特許訂正明細書の段落【0011】を参照)。
甲第1号証の上記摘記事項(甲1-2-2)には,引用発明の「調合胡麻油」について,「ゴマ特有のふくよかな香りと・・・」と記載されているから,引用発明において,ゴマ特有の香りをより豊かにすること等を目的として,「食用ごま油」として,焙煎された未精製のごま油を用いることは,当業者であれば容易に想到し得たことといえる。

次に,「精製油としての菜種油」について,甲第4号証の上記摘記事項(甲4-5),(甲4-7)には,酸化安定化油として,精製された菜種油を用いることが記載されており,「菜種油」として精製されたもの自体は,本件特許に係る出願以前から,周知のものであったといえる((甲6-3)には,「食用なたね油」の規格の1つとして,「精製なたね油」が記載されている。また,本件特許訂正明細書の段落【0029】の実施例では,市販された精製菜種油を用いているものである。)。
甲第4号証の上記摘記事項(甲4-5),(甲4-7)によれば,「菜種油」の「精製加工」として,「脱酸」,「脱臭」に加えて,「硬化」,「分別加工処理」を行うことが記載されており,上記摘記事項(甲4-5)によれば,「硬化処理」とは「リノール酸をオレイン酸に変化させる」処理であり,「分別処理」とは「オレイン酸含有量を増加させる」,「硬化処理において多少発生する飽和脂肪酸を除去するために行う」処理であるといえる。甲第4号証においては,上記摘記事項(甲4-4)及び(甲4-5)の記載からみて,風味安定性を向上させること等を目的として,特に「リノール酸」の含有量を減少させ「オレイン酸」の含有量を増加,すなわち,「硬化処理」,「分別加工処理」を行っているものと認められるが,「硬化処理」,「分別加工処理」にはコストがかかることから,引用発明において,精製コスト等を勘案して,特に「酸化安定化油」の「リノール酸」の含量を減少させ,「オレイン酸」の含有量を増加するように「硬化処理」,「分別加工処理」を行った菜種油ではなく,本件特許訂正明細書の段落【0029】に記載された市販等されている精製菜種油を用いることは,当業者が適宜になし得たことといえる。
そして,特に「硬化」,「分別加工処理」を行わない「精製された菜種油」も,本件特許に係る出願の前において,一般的なものであったと認められる。
(この点について,例えば,国際公開08/32852号の第7頁第17?20行には,「・・・上記非硬化油としては,特に制限はなく,例えば,・・・,菜種油・・・などの任意の食用油,・・・などが挙げられ・・・」と記載されている。
また,特開平10-191885号公報の段落【0030】には,「製造例1の大豆油の場合と同条件で精製処理して精製菜種油を製造した」こと,段落【0026】には,「製造例1・・・脱ガム処理を行い,・・・脱酸処理を行った。・・・脱色処理を行った。・・・脱臭処理を行った。・・・脱臭油を再度濾別して精製大豆油・・・を得た」ことが記載されており,硬化処理,分別加工処理を行っていない「精製菜種油」が記載されているといえる。
特開昭60-27337号公報の第4頁左下欄第15?16行には「一方脂肪の残部は非水素添加形の油(a)」が,同頁右下欄第1?3行には,「油(a)は好ましくは・・・ナタネ-,・・・から成る群から選択される油である」ことが記載されており,非水素添加,すなわち硬化処理を行っていない「ナタネ油」が記載されているといえる。
特開昭55-144081号公報の第1頁右欄の第10?20行には,「今一例として,・・・ナタネ油・・・を選び・・・。ここで用いた油脂はいずれも常法により脱酸,脱色,脱臭したもので,抗酸化剤は一切添加していない。・・・」と記載されており,硬化処理や分別加工処理を行っていない精製処理がされた「ナタネ油」が記載されているといえる。)
そうすると,引用発明において,「食用なたね油」として,特に硬化・分別加工処理を行ったものでない,あるいは,市販等されている一般的な「精製油としての菜種油」を用いることも当業者が容易に想到し得たことといえる。

(b)相違点2について
甲第4号証の上記摘記事項(甲4-1)及び(甲4-6)には,ゴマ油と菜種油を20:80?70:30の割合で配合することが記載されており,さらに,上記摘記事項(甲4-9)には,上記摘記事項(甲4-3),(甲4-5)及び(甲4-6)とを併せてみると,呈味性油脂である精製されていないゴマの原油と,精製加工されたナタネ油等の酸化安定化油を,70:30で配合することが記載されているから,ゴマの原油と精製された菜種油を,65:35?70:30で配合することは格別な配合割合であるとは認められない。
したがって,引用発明において,ゴマの風味を向上させること等を目的として,「食用ごま油」の量を「60%」から増やして,「食用ごま油」:「食用菜種油」の配合量を65:35?70:30とすることも,当業者が容易に想到し得たことであるといえる。

(c)相違点3について
本件特許訂正発明1において,「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下である」ことは,「焙煎ごま油」と,「精製油としての菜種油」を配合した結果にすぎず,さらに,本件特許訂正明細書の段落【0018】?【0023】をみても,「トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリド」,「リノール酸」の量や,「曇点」の上限値を特定したことによる技術的意義を見いだすことはできない。
したがって,引用発明において,「食用ごま油」として,精製されていない「焙煎ごま油」を用い,「食用なたね油」として,特に硬化・分別加工処理を行ったものでない又は市販等されている一般的な「精製油としての菜種油」を用い,それらの配合量を65:35?70:30とすれば,「トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み,かつ,脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み,一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下」になると認められる。

(d)本件特許訂正発明1の効果について
本件特許訂正発明1の効果について,本件特許訂正明細書の段落【0044】には「実施例1?5,7,9,13において,焙煎ごま油のみからなる比較例1と遜色ない風味を実現できた。」と記載されており,比較例1は,本件特許訂正明細書の段落【0029】の「また,比較例として表4に記載の比較例1(焙煎ごま油のみ)及び比較例2?6(焙煎ごま油と大豆油とを調合)を用意した。」の記載からみて,「焙煎ごま油」のみからなるものであるから,「焙煎ごま油」に「菜種油」を配合しても,「焙煎ごま油」のみからなるものと比較して,遜色ない風味を実現することであるといえる。
そして,段落【0042】の【表6】を,段落【0031】と併せてみると,「焙煎ごま油」92.1質量%と「菜種油」7.9質量%からなる実施例1,「焙煎ごま油」90質量%と「菜種油」10質量%からなる実施例2,「焙煎ごま油」80質量%と「菜種油」20質量%からなる実施例3,「焙煎ごま油」70質量%と「菜種油」30質量%からなる実施例4,「焙煎ごま油」65質量%と「菜種油」35質量%からなる実施例5,「焙煎ごま油」60質量%と「菜種油」40質量%からなる実施例6の,段落【0041】に記載される5名のパネルによる5段階の風味の評価は,それぞれ「5.0」,「4.9」,「4.8」,「5.0」,「5.0」,「4.2」となっている。
「焙煎ごま油」と「精製油としての菜種油」を配合した「焙煎ごま油油脂組成物」において,「焙煎ごま油」の割合が多ければ,「焙煎ごま油」の風味が維持できることは当業者にとって自明な事項であり(甲第7号証の上記摘記事項(甲7-2)の表(1)からも裏付けられる。),「焙煎ごま油が65?70質量%,精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合」した上記実施例4及び実施例5の風味の評価結果は上記自明な事項に反して若干優れているとはいえるものの,段落【0041】に記載される5名のパネルによる5段階の風味の評価は感覚的・相対的な評価にすぎず(甲第7号証の上記摘記事項(甲7-2)の表(1)の「中1(当審注:○の中に,1と記載されている。)」,「中2(当審注:○の中に,2と記載されている。)」,「中3(当審注:○の中に,3と記載されている。)」の結果を,(甲7-1)の配合表A?Bと併せてみると,「中焙煎ごま油」を70%配合した「配合4(70)」及び65%配合した「配合5(65)」の場合も含めて,「焙煎ごま油」の割合が多ければ,「焙煎ごま油」の風味が維持できるという結果となっている。),格別顕著なものとまでは評価することができない。
したがって,本件特許訂正発明1の「精製油をブレンドしても焙煎ごま油の風味を維持できる」という効果は,当業者が実験等により確認したにすぎないものであり,格別顕著なものとまでは評価することができず,当業者が予測し得る範囲内のものである。

(エ)被請求人の主張
被請求人は,平成23年11月22日付け口頭審理陳述要領書において,ごま油についてのAOM試験や,精製菜種油についての硬化処理の有無及びヨウ素価からみて「上記I.(3)で述べたとおり,甲第4号証に記載の「精製されていないゴマの原油」は本件特許発明の「焙煎ごま油」ではないし,甲第4号証に記載の酸化安定化油は本件特許発明の「精製油としての菜種油」ではないから,刊行物記載発明に甲第4号証を組み合わせても本件特許発明の構成を得ることができない」(第8頁第14?18行及び第4頁第10行?第6頁第18行),「風味のよいゴマ油として「焙煎ごま油」が一般的なものであるとしても,「風味の良いゴマ油」=(イコール)「焙煎ごま油」ではなく,風味のよいゴマ油としては,焙煎ごま油と風味は異なるものであるが,甲第4号証のゴマの呈味製油脂のように,未焙煎の精製されていないゴマ原油も存在している。・・・」(第8頁第19?25行),「甲第1号証の「食用ごま油」は,ごま油業界の実情から「精製ごま油」を含有するものである蓋然性が極めて高いものと言える。このような状況において,ごま油業界の実情に反して甲第1号証の「食用ごま油」を本件特許発明の「焙煎ごま油」のみとする動機付けは無く,置換を示唆する記載も一切,無い。」(口頭陳述要領書の第8頁第26行?第9頁第3行),「甲第1号証の2に「風味,耐熱性に優れた菜種油をブレンド致しました」と記載されている通り,甲第1号証の調合胡麻油は,菜種油が「風味,耐熱性」を目的としてブレンドされたものであるところ,種々のバランスを考慮して商品化された甲第1号証の調合胡麻油において,菜種油の配合量を減らして30?35質量%の数値範囲内とする動機付けは無く,そのような変更を加えることを示唆する記載も一切,無い。」(第9頁第24行?第10頁第1行),と主張する。
しかしながら,仮に,甲第1号証の2?4の「食用ごま油」,「食用なたね油」,甲第4号証の「ゴマの原油」,「酸化安定化油」である「ナタネ油」が,本件特許訂正発明1の「焙煎ごま油」,「精製油としての菜種油」と異なるものであるとしても,甲第1号証の2?4の上記摘記事項(甲1-2-2)には,引用発明の「調合胡麻油」について「ゴマ特有のふくよかな香りと・・・」と,甲第4号証の上記摘記事項(甲4-2)には「ゴマ,オリブ,落花生,ココナツツ等の呈味性油脂は,それらに特有の風味,香りを有しており,この風味,香りを生かすべく・・・」と記載されているように,ゴマ特有の風味や香りを保持し,生かそうとすること自体は当該技術分野において,一般的な課題であったといえる。さらに,上記(ウ)(a),(b)でも検討したように,「焙煎ごま油」が風味のよいゴマ油としてよく知られていたことは事実であり,さらに,精製されていない焙煎ごま油や,特に硬化処理・分別加工処理されていない精製菜種油は,本件特許に係る出願の日以前からよく知られたものであると認められるから,引用発明において,「食用ごま油」,「食用なたね油」として,精製されていない「焙煎ごま油」,特に硬化処理・分別加工処理されていない,あるいは市販等されている一般的な「精製油としての菜種油」を用いることは当業者が容易に想到し得たことといえる。

また,被請求人は,平成23年7月12日付け答弁書において,「甲第4号証に記載の発明が「リノール酸の含有量を35重量%より大」にする発明との間に組合せの阻害事由がある・・・」(第15頁第7?8行),平成23年11月22日付け口頭審理陳述要領書において,「甲第1号証にも甲第4号証にも,本件特許発明の課題は開示されておらず,本件特許発明の効果を奏するにあたっての好ましいリノール酸の含量(油脂組成物中の含量)について開示も示唆もされていない。また,本件特許発明の効果を奏し,かつ低温でもクリアな(一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下である)焙煎ごま油油脂組成物が得られることを甲第1号証及び甲第4号証は一切,開示も示唆もしていない。」(第10頁第14?19行)と主張する。
しかしながら,上記(ウ)(c)で検討したように,本件特許訂正発明1において,「リノール酸」が「35.6質量%以上」となるのは「焙煎ごま油」と「精製油としての菜種油」を65:35?70:30になるように配合した結果にすぎない。そして,上記(ウ)(a)(b)で検討したように,引用発明において,「食用ゴマ油」として焙煎された未精製の「焙煎ごま油」を用い,「食用菜種油」として特に硬化・分別加工処理を行ったものでない,あるいは,市販等されている一般的な「精製油としての菜種油」を用いること,「食用ごま油」:「食用菜種油」の配合量を65:35?70:30とすることは当業者が容易に想到し得たことであり,このように「焙煎ごま油」と「精製油としての菜種油」を配合すれば,「リノール酸」の量は「35.6重量%以上」に,「曇点」は「-5℃以下」になると認められる。そして,このことは,本件特許訂正明細書の段落【0029】,段落【0031】の【表1】の他,甲第7号証の上記摘記事項(7-3)からも裏付けられる。

(オ)まとめ
以上のとおり,本件特許訂正発明1は,引用発明及び甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件特許訂正発明2について
本件特許訂正発明2は,本件特許訂正発明1の「一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下である」構成を有しない発明であり,その他は,発明を特定するために必要な事項をとして本件特許訂正発明1の構成を全て有するのであるから,本件特許訂正発明2は本願特許訂正発明1を包含するものである。
したがって,本件特許訂正発明2は,上記(1)で検討したのと同様の理由により,引用発明及び甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件特許訂正発明3,4について
本件特許訂正発明3は,本件特許訂正発明1?2に記載の「焙煎ごま油配合油脂組成物」を用いて製造した食品に係る発明であり,本件特許訂正発明4は,本件特許訂正発明3の「食品」について,「炒め物,和え物,スープ,ドレッシング」に特定した発明である。
しかしながら,甲第4号証の上記摘記事項(甲4-8)には,ゴマ原油と精製されたナタネ油を配合した油脂組成物を用いた「炒め物」が記載されており,「炒め物」は「食品」であることは明らかであるし,ゴマ油を配合した食用油を,和え物,スープ,ドレッシングの調理に用いることも一般的に行われていることである。
したがって,本件特許訂正発明3,4は,引用発明及び甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。


第9 むすび
上記「第8 無効理由4について」「3 当審の判断」に記すとおり,本件特許訂正発明についての本件特許は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人の負担とすべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品
【技術分野】
【0001】
本発明は、焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品に関するものであり、特に、精製油をブレンドしても焙煎ごま油の風味を維持できる焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食用油には風味を付ける為に焙煎した焙煎油と、風味のほとんどない精製油がある。焙煎油としてはごま油が通常用いられ、一部業務用に焙煎菜種油(油揚げ用など)が使用されている。
【0003】
焙煎ごま油は、精製油の風味付けのために0?30質量%の範囲で精製油に加えられることがある(特許文献1参照)。
【0004】
また、焙煎油は製造コストが比較的高く商品価格が高めになってしまうことから、焙煎ごま油に大豆油を加えて調合した「調合ごま油」が市販されている。
【特許文献1】特開2005-105248号公報(段落〔0027〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、焙煎ごま油と大豆油とを調合した「調合ごま油」は、焙煎ごま油の風味を維持することが難しかった。
【0006】
従って、本発明の目的は、精製油をブレンドしても焙煎ごま油の風味を維持できる焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、焙煎ごま油が65?70質量%、精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合しトリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを60質量%以上80質量%以下含み、かつ、脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み、一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下であることを特徴とする焙煎ごま油配合油脂組成物を提供する。また、本発明は、上記目的を達成するために、焙煎ごま油が65?70質量%、精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合しトリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み、かつ、脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含むことを特徴とする焙煎ごま油配合油脂組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記目的を達成するために、上記本発明の焙煎ごま油配合油脂組成物を用いて製造した食品を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、精製油をブレンドしても焙煎ごま油の風味を維持できる焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
〔本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物〕
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、焙煎ごま油が65?70質量%、精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し、トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含む。
【0011】
(焙煎ごま油)
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物に配合される焙煎ごま油は、特に限定されるものではなく、公知の方法により製造された焙煎ごま油を用いることができる。市販の焙煎ごま油を用いても良い。
【0012】
一般的な製造工程としては、例えば、原料種子を選別した後、焙煎し、その後、圧搾、ろ過、静置、(ろ過及び静置の繰り返し)、仕上げろ過の工程を経る。焙煎は公知の種々の方法により行なうことができる。
【0013】
本実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物において、焙煎ごま油は、65?70質量%となるように配合される。
【0014】
(精製油)
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物に配合される精製油は、植物油であることが好ましい。特に、菜種油、べに花油、ひまわり油から選ばれる1種以上であることが好ましい。中でも菜種油が好ましい。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
(トリグリセリド組成)
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含む。好ましくは、当該トリグリセリドを60質量%以上70質量%以下含む。
【0019】
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、トリオレインを5質量%以上25質量%以下含むことが好ましい。より好ましくは、6質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは、13質量%以上16質量%以下である。
【0020】
(脂肪酸組成)
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、飽和脂肪酸を10質量%以上16質量%以下含むことが好ましい。より好ましくは、12質量%以上15.5質量%以下であり、さらに好ましくは、12質量%以上15質量%以下である。
【0021】
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、オレイン酸を40質量%以上55質量%以下含むことが好ましい。より好ましくは、42質量%以上52質量%以下であり、さらに好ましくは、43質量%以上50質量%以下である。
【0022】
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、リノール酸を30質量%以上52質量%以下含むことが好ましい。より好ましくは、32質量%以上44質量%以下であり、さらに好ましくは、34質量%以上40質量%以下である。
【0023】
(曇点)
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下であることが好ましい。より好ましくは、当該曇点が-6℃以下である。
【0024】
(トコフェロール含量)
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、トコフェロール含量が40?50mg/100g油であることが好ましい。
【0025】
〔本発明の実施の形態に係る食品〕
本発明の実施の形態に係る食品は、上記の焙煎ごま油配合油脂組成物を用いて製造した食品である。
【0026】
食品としては、例えば、チャーハン等の妙め物、ほうれん草のナムル等の和え物、スープ、ドレッシングが挙げられる。調理は、公知の一般的な方法により行なうことができる。
【0027】
〔本発明の実施の形態の効果〕
本発明の実施の形態によれば、精製油をブレンドしても焙煎ごま油の風味を維持できる焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品を提供することができるので、焙煎ごま油に比べて安価に焙煎ごま油とほぼ同等の風味の調合油を消費者に提供できる。また、本発明の実施の形態によれば、低温(例えば、-5℃)で焙煎ごま油よりも見た目がクリアな(曇りが無い)焙煎ごま油配合油脂組成物を提供できる。
【0028】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
焙煎ごま油(日清オイリオグループ株式会社製)と、精製菜種油(以下菜種油という、日清オイリオグループ株式会社製)、精製ハイオレイックべに花油(以下ハイオレイックべに花油という、日清オイリオグループ株式会社製)及び精製ひまわり油(以下ひまわり油という、日清オイリオグループ株式会社製)とを表1?3に記載の配合割合で混合し、焙煎ごま油配合油脂組成物を調合した(実施例1?16及び参考例1?3、但し実施例1?3,6?9,12,13,16は曇点が-5℃以下ではない点又は焙煎ごま油の配合量の点において実施例ではなく参考例であり、実施例6,10?12はリノール酸の含有量が35.6%以上ではない点において実施例ではなく参考例であり、実施例7?16は配合した精製油が菜種油ではない点において実施例ではなく参考例である)。また、比較例として表4に記載の比較例1(焙煎ごま油のみ)及び比較例2?6(焙煎ごま油と大豆油とを調合)を用意した。
【0030】
実施例1?16、参考例1?3及び比較例1?6について、トリグリセリド組成、脂肪酸組成、ステロール含量及びトコフェロール含量を測定した結果を表1?4に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
〔曇点の測定〕
以下の方法により、実施例1?16、参考例1?3及び比較例1?6について曇点の測定を行なった。測定結果を表5に示す。
【0036】
<曇点の測定方法>
4mLの試料を入れた試験管を一分間に0.5℃ずつ降温し、試料の一部に曇りを認めた時の温度を曇点とした。
【0037】
【表5】

【0038】
表5より、実施例1?16及び参考例1?3はいずれも焙煎ごま油のみからなる比較例1に比べて曇点が低いので、低温で焙煎ごま油よりもクリアな焙煎ごま油配合油脂組成物が得られたことが判る。
【0039】
また、同混合率で比較した場合の曇点低下率が焙煎ごま油に大豆油をブレンドした比較例2?6よりも実施例1?16及び参考例1?3の方が概ね高くなることが判った。
【0040】
〔風味の評価〕
以下の方法により、実施例1?7,9?16、参考例1?3及び比較例1?6について風味の評価を行なった。評価結果を表6に示す。
【0041】
<風味の評価方法>
実施例1?16、参考例1?3及び比較例2?6で調合した焙煎ごま油配合油脂組成物(以下、評価対象油脂組成物という)と比較例1の焙煎ごま油(以下、評価対象油という)の生風味を評価した。風味の評価は、5名のパネルで5段階の風味総合評価を行なった。
○風味の評価基準
5:優れている
4:やや優れている
3:普通
2:やや劣っている
1:劣っている
【0042】
【表6】

【0043】
表6より、実施例1?16及び参考例1?3はいずれも焙煎ごま油と大豆油からなる比較例2?6に比べて風味が良好な焙煎ごま油配合油脂組成物が得られたことが判る。
【0044】
また、実施例1?5,7,9,13において、焙煎ごま油のみからなる比較例1と遜色ない風味を実現できた。
【0045】
〔調理した食品についての風味の評価〕
1.ほうれん草のナムル
<風味の評価方法>
実施例3?6,11,15、参考例1及び比較例2,4,5で調合した焙煎ごま油配合油脂組成物(以下、評価対象油脂組成物という)と比較例1の焙煎ごま油(以下、評価対象油という)を用いて、ほうれん草のナムルを調理し、その風味を評価した。風味の評価は、5名のパネルで5段階の風味総合評価を行なった。評価結果を表7に示す。
○風味の評価基準
5:優れている
4:やや優れている
3:普通
2:やや劣っている
1:劣っている
【0046】
<ほうれん草のナムルの調理法>
ほうれん草1把を洗い、沸騰したお湯で2分間茹でた。ほうれん草を室温程度にまで冷まし、5cm程度の長さに切り、水気をきった後、ねぎのみじん切り、醤油小さじ2杯、砂糖小さじ1/2杯を入れ、さらに、評価対象油脂組成物のいずれか又は評価対象油を大さじ1杯加えて和えた。
【0047】
【表7】

【0048】
表7より、実施例3?6,11,15及び参考例1の評価対象油脂組成物はいずれも焙煎ごま油と大豆油からなる比較例2,4,5に比べて風味が良好な食品(ほうれん草のナムル)を得ることができる焙煎ごま油配合油脂組成物であることが判る。
【0049】
また、実施例3?5,11,15の焙煎ごま油配合油脂組成物を使用した場合に、比較例1の焙煎ごま油を使用した場合と同等に良好な風味の食品(ほうれん草のナムル)を得ることができた。
【0050】
2.わかめスープ
<風味の評価方法>
実施例3,9,13及び比較例2で調合した焙煎ごま油配合油脂組成物(以下、評価対象油脂組成物という)と比較例1の焙煎ごま油(以下、評価対象油という)を用いて、わかめスープを調理し、その風味を評価した。風味の評価は、5名のパネルで5段階の風味総合評価を行なった。評価結果を表8に示す。
○風味の評価基準
5:優れている
4:やや優れている
3:普通
2:やや劣っている
1:劣っている
【0051】
<わかめスープの調理法>
8gの乾燥わかめを水、またはぬるま湯で戻しておき、小さめに刻んだ。また、ねぎ20gをみじん切りにした。これらのわかめとねぎ、鶏がらスープ(顆粒)25g、醤油小さじ2杯、塩1g、及びこしょう少々を水2,400mLに入れ、温めた。評価対象油脂組成物のいずれか又は評価対象油をスープ50g当たりに0.3g入れた。
【0052】
【表8】

【0053】
表8より、実施例3,9,13の評価対象油脂組成物はいずれも焙煎ごま油と大豆油からなる比較例2に比べて風味が良好な食品(わかめスープ)を得ることができる焙煎ごま油配合油脂組成物であることが判る。
【0054】
また、実施例3の焙煎ごま油配合油脂組成物を使用した場合に、比較例1の焙煎ごま油を使用した場合と同等に良好な風味の食品(わかめスープ)を得ることができた。
【0055】
3.チャーハン
<風味の評価方法>
実施例5,11,15及び比較例4で調合した焙煎ごま油配合油脂組成物(以下、評価対象油脂組成物という)と比較例1の焙煎ごま油(以下、評価対象油という)を用いて、チャーハンを調理し、その風味を評価した。風味の評価は、5名のパネルで5段階の風味総合評価を行なった。評価結果を表9に示す。
○風味の評価基準
5:優れている
4:やや優れている
3:普通
2:やや劣っている
1:劣っている
【0056】
<チャーハンの調理法>
フライパンを加熱し、精製菜種油を小さじ1杯加え、卵を入れた。さらに、精製菜種油を小さじ1杯入れ、長ネギ40g、ご飯200gを加え炒めた。焼き豚を40g加え、塩、コショウを少々、醤油を小さじ1杯加えた。最後に評価対象油脂組成物のいずれか又は評価対象油を小さじ1杯加え、炒めた。
【0057】
【表9】

【0058】
表9より、実施例5,11,15の評価対象油脂組成物はいずれも焙煎ごま油と大豆油からなる比較例4に比べて風味が良好な食品(チャーハン)を得ることができる焙煎ごま油配合油脂組成物であることが判る。
【0059】
また、実施例5の焙煎ごま油配合油脂組成物を使用した場合に、比較例1の焙煎ごま油を使用した場合と同等に良好な風味の食品(チャーハン)を得ることができた。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎ごま油が65?70質量%、精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し、トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み、かつ、脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含み、
一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が-5℃以下であることを特徴とする焙煎ごま油配合油脂組成物。
【請求項2】
焙煎ごま油が65?70質量%、精製油としての菜種油が30?35質量%になるように焙煎ごま油及び精製油としての菜種油を配合し、トリグリセリド組成としてトリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含み、かつ、脂肪酸組成としてリノール酸を35.6質量%以上含むことを特徴とする焙煎ごま油配合油脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の焙煎ごま油配合油脂組成物を用いて製造した食品。
【請求項4】
前記食品が、炒め物、和え物、スープ、ドレッシングであることを特徴とする請求項3に記載の食品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2011-12-15 
出願番号 特願2008-140172(P2008-140172)
審決分類 P 1 113・ 537- ZA (A23D)
P 1 113・ 852- ZA (A23D)
P 1 113・ 121- ZA (A23D)
P 1 113・ 854- ZA (A23D)
P 1 113・ 536- ZA (A23D)
P 1 113・ 55- ZA (A23D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長谷川 茜  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 杉江 渉
秋月 美紀子
登録日 2010-10-08 
登録番号 特許第4601685号(P4601685)
発明の名称 焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品  
代理人 須藤 晃伸  
代理人 岩永 勇二  
代理人 岩瀬 眞紀子  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 岩永 勇二  
代理人 平田 忠雄  
代理人 植野 浩志  
代理人 平田 忠雄  
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