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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H01L
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1264598
審判番号 無効2011-800162  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-09-07 
確定日 2012-10-12 
事件の表示 上記当事者間の特許第3511970号発明「窒化物半導体発光素子」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第3511970号(以下「本件特許」という。平成16年1月16日登録、請求項の数は5である。)の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とすることを求める事案である。

第2 手続の経緯
本件審判の経緯は、以下のとおりである。

平成23年 9月 7日 審判請求
平成23年12月20日 審判事件答弁書提出(被請求人)
平成24年 3月14日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成24年 3月16日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成24年 3月29日 口頭審理
平成24年 4月12日 上申書提出(請求人)

第3 本件発明
本件特許の請求項に係る発明は、次の各請求項に記載されたとおりのものと認められる。
「【請求項1】 導電性基板上に、電極を介して光の取り出し側とする窒化物半導体が接着してなり、該窒化物半導体の最下層はp型層であり、最上層がn型層であって、該n型層には部分電極が設けられていることを特徴とする窒化物半導体発光素子。
【請求項2】 前記電極が、窒化物半導体表面に形成されたオーミック電極及び/又は導電性基板表面に形成されたオーミック電極を含むことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項3】 前記導電性基板を接着する窒化物半導体層面が、前記p型層であり、前記電極及び/又は導電性材料が、p型層のほぼ全面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項4】 前記電極が導電性材料を多層構造に積層されたことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項5】 前記電極及び/又は導電性材料が、窒化物半導体の発光波長を反射できることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子。」
(以下、請求項1ないし5のそれぞれに係る発明を、「本件発明1」ないし「本件発明5」といい、これらを総称して「本件発明」という。)

第4 請求人の主張の概要及び証拠方法
1 無効理由1
本件発明1ないし5は、甲第1号証(特開平5-251739号公報)に記載された発明と同一であり、又は、少なくとも当該発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

2 無効理由2
本件発明1ないし5は、甲第2号証(特開平4-29374公報)に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

3 甲号証
請求人が提出した甲号証は、以下のとおりである。

(1)甲第1号証 特開平5-251739号公報
(2)甲第2号証 特開平4-29374公報
(3)甲第3号証 平成5年11月30日付日経産業新聞
(4)甲第4号証 日経エレクトロニクス 1994年2月28日発行、第602号、93?102頁「青色発光ダイオード、ダブルヘテロ構造で1cd実現」
(5)甲第5号証 特開昭61-182292号公報
(6)甲第6号証 特開昭61-59886号公報
(以上、審判請求書に添付して提出。)
(7)甲第7号証 特開平4-199752号公報
(8)甲第8号証 平木昭夫監修「高輝度青色発光のための電子材料技術」株式会社サイエンスフォーラム、1991(平成3)年12月30日発行、44頁?45頁
(9)甲第9号証 特開平4-242985号公報
(10)甲第10号証 特開平6-268259号公報
(11)甲第11号証 特開平6-326416号公報
(以上、口頭審理陳述要領書に添付して提出。)

第5 被請求人の主張の概要
1 無効理由1に対して
本件発明1ないし5は、甲第1号証に記載された発明と同一ではなく、当業者が容易に想到できたものでもない。

2 無効理由2に対して
本件発明1ないし5は、甲第2号証といかなる周知技術とに基づいても、当業者が容易に想到できたものではない。

第6 無効理由についての当審の判断
1 無効理由1について
(1)甲号証の記載
ア 甲第1号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開平5-251739号公報)には、以下の記載がある(下線は、審決で付した。以下同じ。)。

(ア)「【0044】次に本発明の実施例1を図面を参照して説明する。図4は本発明の実施例1に係る半導体発光素子である発光ダイオードの概略構造を示す断面図である。図4に示すように基本的構造は一方の電極を有する化合物半導体結晶14と、この結晶の他方の面上にオーミック電極13、更にそのオーミック電極13の上の共晶合金12及び発光層2の両側に電流拡散層3、厚膜層10を有する光半導体ウェーバ15の厚膜層10側にオーミック電極11と電流拡散層側3にオーミック電極5が存在し、前記化合物半導体結晶14と光半導体結晶15とが前記共晶合金によって機械的にも電気的にも結合されている。」

(イ)「【0045】次に上記半導体発光素子の製造方法について具体的に説明する。
【0046】各半導体層は有機金属気相成長法(MOVPE法)により成長させた。
【0047】原料にはトリメチルインジウム(TMI)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)をIII 族元素のソースとして、アルシン(AsH_(3 ))とフォスフィン(PH_(3) )をV族元素のソースとして用いた。
【0048】またP型ドーパントとしてZn、n型ドーパントとしてSiを用いたが、これらはそれぞれジメチル亜鉛(DMZ)、シラン(SiH_(4 ))をソースとしてドープした。
【0049】これらの反応性ガスを水素をキャリアガスとして石英製反応管に輸送して、SiCコーティングしたグラファイトサセプタ上に設置したp-GaAs光半導体結晶基板にエピタキシャル結晶成長をさせた。
【0050】反応管内部の圧力は30?100Torrであり、基板は800℃程度に加熱される。
【0051】p-GaAs基板にはZnをドープした、キャリア濃度が1×10^(19)cm^(-3)程度のものを用いた。基板の面方位は(100)である。初めにp-GaAs基板の上にp-GaAs(Znドープ、3×10^(18)cm^(-3))バッファ層を0.5μm程度成長させる。この上に順次p-In_(0.5) Ga_(0.2 )Al_(0.3 )P保護膜層(Znドープ、5×10^(17)cm^(-3))を0.15μm、p-GaAsコンタクト層(Znドープ、3×10^(18)cm^(-3))を0.1μm,p-Ga_(0.2) Al_(0.8) As電流拡散層(Znドープ 4×10^(18)cm^(-3))3を7μm程度、p-In_(0.5) Al_(0.5) P)、クラッド層(Znドープ、5×10^(17)cm^(-3))22を1μm程度、アンドープIn_(0.5 )Ga_(0.21)Al_(0.29)P活性層20を0.6μm程度、n-In_(0.5 )Al_(0.5 )Pクラッド層(Siドープ、5×10^(17)cm^(-3))を1μm程、n-Ga_(0.2) Al_(0.8 )As厚膜層(Siドープ、4×10^(18)cm^(-3))を7μ程度、n-GaAsコンタクト層(Siドープ 4×10^(18)cm^(-3))を0.1μm成長させ、最後にn-In_(0.5 )Ga_(0.2 )Al_(0.3) P保護膜層(Siドープ、4×10^(18)cm^(-3))を0.15μm成長させる。
【0052】次にこのようにして得られたInGaAlP緑色LED用光半導体結晶15のn-In_(0.5 )Ga_(0.2 )Al_(0.3) P保護膜層(オーミック電極形成を容易にするためのn-GaAsコンタクト層の面を清浄に保つために設けている)をリン酸で70℃30秒エッチングして除去し(リン酸はGaAsをエッチングしないので制御良くInGaAlP保護膜層のみエッチ・オフできる)、真空蒸着法によりn-GaAsコンタクト層にAuGe合金層(Ge濃度0.5wt%)11を0.5μm蒸着した後に480℃10分間Ar雰囲気中でシンタリングしてオーミックコンタクトを形成する。
【0053】ついでこれを写真触刻法により所定の形状(例えば直径70μm,ピッチが180μmの電極パターン)にエッチングして電極11を形成する。また、電極11以外の露出しているn-GaAsコンタクト層をアンモニア水と過酸化水素水からなるエッチング液で除去する。
【0054】一方、厚さ250μm程度のn-GaP結晶(Sドープ 3×1017cm^(-3))の両面にAuGe合金層(Ge濃度0.5wt%)9,13を0.5μm蒸着した後500℃20分間Ar雰囲気中でシンタリングしてオーミックコンタクトを形成する。そして一方のAuGe合金層13の上に真空蒸着法によりAuGe共晶合金12(Ge濃度12wt%)を1μm程度蒸着する。ついで両面のAuGe合金を写真触刻法により前記電極11と同じパターンに成形する。
【0055】このようにして電極形成された光半導体結晶15のn側電極11とGaP半導体結晶14の共晶合金12を密着させた後、水素雰囲気中で400℃5分熱処理をする。この処理によりAuGe共晶合金12が溶け(共晶温度356℃)電極11と融着する。
【0056】次にこのAuGe合金の融着により接着一体化したウェーハをアンモニア水と過酸化水素水のエッチング液によりp-GaAs半導体結晶基板のみを除去する。更にリン酸で70℃30秒エッチングしてp-In_(0.5) Ga_(0.2 )Al_(0.3 )P保護膜層を除去し、真空蒸着法によりp-GaAsコンタクト層にAuBe合金層を0.3μm蒸着した後、480℃10分間Ar雰囲気中でシンタリングしてオーミックコンタクトを形成する。更にワイヤポンディングが容易にならしめるためにAuBe合金層の上にAuを1μm程度蒸着した後、所定の形状にエッチングしてP側電極5を形成する。
【0057】また電極5以外の露出しているp-GaAsコンタクト層はアンモニア水と過酸化水素水からなるエッチング液で除去する。しかる後に所定のピッチでダイシングして個々のペレットに分離する。
【0058】このようにしてGaAs基板を除去してなる高効率InGaAlP緑色LED・半導体発光素子が完成する。このLEDではダブルヘテロ構造部の活性層で発生した光はP側電極5側、n-厚膜層10側及び側面に向うことになる。n-厚膜層10側に向かった光はn-厚膜層10と空気との界面で1部が反射され、残りは半導体結晶14に向う。半導体結晶14に入射した光も半導体結晶が透明であるので有効に外に放射される。この効果は電極11,13、及び9の面積が小さい程有効となる(電極は光を吸収するので)。これにより輝度が著しく向上し、2cd程度の緑色LEDが実現する。」
ここで、図4は次のものである。


(ウ)「【0059】なお、上記実施例において、InGaAlP保護膜層、GaAsコンタクト層を形成してあるが、これらの層は本発明においては本質的な事項ではなく、これらの層がなくても特性上問題ない。また半導体結晶としてn-GaPを採用しているが、p-GaPを使用しても良い。この場合は図4に示されている導電型はすべて逆になる。またn型電極としてはAuGeの他にAuSi、AuSn等としても良く、P型電極としてはAuBeの他にAuZnがある。共晶合金としてはAuGe以外にAuSiがある。またAu系以外の金属や合金のうち適切なものを使用しても本発明の効果を阻害するものではない。更にGaAlAs厚膜層についても同様でなくても良い。」

(エ)「【0061】つぎに図5を参照して本発明の実施例2を説明する。
【0062】これは金属反射層18を設けるという点が先に説明した図4の実施例1とは基本的に異なるが、効果は同様である。光半導体発光素子15の光半導体結晶であるnー厚膜層10側に本発明の実施例1で記載した通りの方法で所定の形状をもった電極11を形成した後、真空蒸着法にてAgを1μm程度蒸着し、このAgを光の反射そうとして利用する。一方、半導体結晶14には実施例1での説明したのと同様に、オーミック電極14と16とを共晶合金12で接合構造を形成するが、この場合は発光層2から放射された光が金属反射層18で反射するので特定の形状にする必要はなく、写真触刻法にてパターニングしない。
【0063】それ以外の工程は本発明の実施例1と同様である。
【0064】本発明の実施例2の特徴は従来例2で説明した半導体反射層と同じ効果を金属反射層18により出現させるという点で、半導体反射層よりも製造バラツキを少なくさせることが出来ることが優れている。
【0065】金属反射層18の材料としては前記のAgの他にAu Al Ni等の他に金属を用いても良いがAgは反射率の点で優れており、Auは化学的安定性で優れている。
・・・
【0068】そこで図5に示す発明実施例2によって構成された半導体発光デバイスは、一方を光半導体結晶基板14例えばn-GaPと、もう一方をnー厚膜層10例えばn-GaP結晶若しくは、光半導体エピタキシャル結晶成長層・p-GaPエピタキシャル層の上にnーIn_(0.5 )(Ga_(1-x )Al_(x) )_(0.5) P・グラッド層21,pーIn_(0.5) (Ga_(1-x) Al_(x) )_(0.5) P・グラッド層22を成長させ、活性層20とにより発光層を形成する。更にpー電流拡散層を構築した、光半導体発光素子(LEDウェーハー)15とで、半導体発光デバイスを構成するわけであるが、nー厚膜層10に、所定の形に形状化したオーミック電極11(水玉電極)を形成し、該オーミック電極面上全面に金属若しくは合金から成る金属反射層18を形成、更に、この金属反射層18と光半導体結晶基板14上に形成したオーミック電極・全面電極17とを合金熱溶融により共晶合金化したオーミック電極上構築物が形成される。そこでnー厚膜層10例えば光半導体エピタキシャル結晶成長層上に形成された前記オーミック電極の形状は、前記共晶合金化したオーミック電極上構築物が特定の形状を有する必要がなく、且つ前記オーミック電極形成面上全面に施された金属若しくは合金から成る反射層がAu,Al,Ag又は、反射率の高い金属並びに合金であることを特徴とする半導体発光デバイスである。」
ここで、図5は、次のものである。


(オ)「【0069】第三の発明は少なくとも一つ以上の発光層を構成する半導体エピタキシャル結晶成長層を有する半導体発光素子同志若しくは少なくとも一つ以上の発光層を構成する半導体エピタキシャル結晶成長層発光層を有する半導体発光素子と光半導体結晶基板をベースとした半導体発光素子との接合を金属によって共晶合金接合によって成る半導体発デバイスの各発光層により中間色を発光するものである。そこで、次に図6を参照して発明実施例3ついて説明する。
【0070】これは図4の光半導体結晶14のかわりに、GaAsP赤色LED(ピーク波長650nm程度)ウェーハ・半導体発光素子23を接合するという点が先に説明した図4の実施例とは基本的に異なっている。
【0071】このGaAsP赤色LED(ピーク波長650nm程度)ウェーハ・半導体発光素子23は例えば図6で示すように、このGaAsP赤色LEDウェーハ・半導体発光素子23を構成するベースとなるn-GaP光半導体結晶基板24上に図6-25n-GaAsPエピ層と図6-26のp-GaAsPエピ層を積層成長させ、図6-25n-GaAsPエピ層と図6-26のp-GaAsPエピ層とで発光層を形成する。
【0072】このGaAsP赤色LEDウェハー・半導体発光素子23は図4で先に説明した方法によりGaP緑色LED(ピーク波長565nm程度)ウェハー・半導体発光素子27と接合される。」
ここで、図6は、次のものである。


(カ)「【0074】次に図7を参照して本発明実施例4について説明する。
【0075】これは図4の半導体結晶14のかわりに、n-GaAsPエピ層光半導体エピタキシャル結晶成長層34をGaAs半導体結晶上に成長させた後エッチングによりGaAs半導体結晶を除去し、n-GaAsPエピ層光半導体エピタキシャル結晶成長層34上にn-GaAsPエピ層光半導体エピタキシャル結晶成長層25とp-GaAsPエピ層光半導体エピタキシャル結晶成長層26とを積層させ発光層を形成させる。これによりGaAsP赤色LEDウエーハー36を形成する点が、先に説明した図4の本発明実施例1とは、基本的に異なっており、もう1方のn-GaPエピ層・光半導体エピタキシャル結晶成長層33をベースとしてなるGaP緑色LEDウエーハー(ピーク波長565nm程度)35は、図6の本発明実施例3でのn-GaP結晶基板28から構成された(GaP)緑色LEDウエーハー27とは基本的にn-GaP結晶基板28とn-GaPエピ層光半導体エピタキシャル結晶成長層33並びにn-GaP結晶基板24とn-GaAsPエピ層光半導体エピタキシャル結晶成長層34との対比点で異なっている。
【0076】そこで、図7の本発明実施例4でのGaAsP赤色LED(ピーク波長650nm程度)ウェーハ36はn-GaPエピタキシャル結晶成長層34からなり、図6の実施例3でのn-GaP結晶基板24から構成されたGaAsP赤色LED(ピーク波長650nm程度)ウェーハ23とは基本的に特性も異なっくる。
【0077】図7の本発明実施例4での半導体発光素子・GaAsP赤色LED(ピーク波長650nm程度)ウェーハ36は、n-GaAsPエピタキシャル結晶成長層34上に成長・積層構成された図7-25のn-GaAsPエピタキシャル結晶成長層と図7-26のp-GaAsPエピタキシャル結晶成長層とで発光層を形成する。
【0078】又このGaAsP赤色LEDウェハー36である半導体発光素子ともう1方の半導体発光素子・(GaP)緑色LED(ピーク波長565nm程度)ウェーハ35はn-GaP光半導体エピタキシャル結晶成長層33上に積層で構成された図7のn-GaPエピタキシャル結晶成長層29と図7のp-GaAsPエピタキシャル結晶成長層30とで発光層を形成する。
【0079】この様にして構成したGaAsP赤色LEDウェハー36(ピーク波長650nm程度)である半導体発光素子とGaP緑色LEDウエ-ハー(ピーク波長565nm程度)35である半導体発光素子とを金属間結合による共晶合金接合で半導体発光素子同志の結合を行なつた半導体発光デバイスを製造した。
【0080】該半導体発光デバイス製造方法は第7の発明である前記半導体発光素子の光半導体エピタキシャル結晶成長層33上に形成したオーミック電極ともう一方の前記半導体発光素子の光半導体エピタキシャル結晶成長層・p-GaAsPエピタキシャル層26上にオーミック電極を形成し、更に各オーミック電極上に共晶合金化構築物を形成するため、該共晶合金化構築物と同形に形状化させたp-GaAsPエピタキシャル層26とnーGaPエピタキシャル層33のオーミック電極とを熱処理によって融着させることになる。
【0081】これによって該オーミック電極同志を金属間結合により共晶合金接合させ成る半導体発光デバイス製造方法である。図4,図6,図7の11,12,13の共晶合金化構築物の形成方法がこれである。
【0082】図7で先に説明した方法によりGaP緑色LED(ピーク波長565nm程度)ウェハーである光半導体発光素子(LEDウェーハー)35は、図7の光半導体エピタキシャル結晶成長層・p-GaPエピタキシャル層33上にn-GaPエピタキチャル結晶成長層29,p-GaPエピタキチャル結晶成長層30で挟んだいわゆる薄い光導波路であるN/GaP発光層を形成する。
【0083】このようにして得られた半導体発光デバイス・チップは赤と緑の中間色のLEDとなる。そして接合面から第3の電極を取り出すことにより1個のチップで赤から緑色までの光を任意に取り出すことができるという特徴を持つ。又 青色LEDではGaN,SiCエピタキチャル結晶成長層を使用する。」

イ 甲第7号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証(特開平4-199752号公報)には、以下の記載がある。

「半導体基板上に複数のエピタキシャル成長層を形成した化合物半導体発光素子において、前記半導体基板が硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)又はそれらの混晶の単結晶であり、該基板上の緩衝層を介したアルミニウム(Al)、インジウム(In)又はガリウム(Ga)の窒化物半導体又はそれらの窒化物半導体の混晶からなる発光層からなることを特徴とする化合物半導体発光素子。」(1頁左下欄5行?13行)、
「窒化物半導体の積層膜で形成される発光層は金属元素のアルミニウム(Al)とインジウム(In)の窒化物の混晶、又は、ガリウム(Ga)の窒化物か、又は、その窒化物と上記窒化物との混晶の窒化物半導体層の組み合せで形成される。又、本発明の化合物半導体発光素子の基板には硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛又はそれらの混晶の硫化・セレン化亜鉛(ZnSSe)の単結晶で形成されていて、この化合物半導体基板と前記窒化物半導体発光層の間に硫化・酸化亜鉛(ZnS_(1-x)O_(x))層を介在させ、この介在層の組成に傾斜をもたせて両面での格子定数を整合させた緩衝層にするものである。」(3頁右下欄下から5行?4頁左上欄8行)
「又、上記の緩衝層の上面にエピタキシャル成長させたZnO層上に、GaNあるいはAl_(1-y)In_(y)N(0.1≦y)の組成又はその混晶からなる窒化物半導体の発光層を形成するものである。」(4頁左上欄下から5行?末行)
「以上で説明した本発明の化合物半導体発光素子は、次に説明する特徴により、従来の発光素子がもつ課題を解決している。・・・第3に、従来の発光素子において、電気的特性を一定にできなかった課題を、従来の絶縁性サファイヤ基板でなく、低抵抗のZnS,ZnSe又はZnSSe等の基板を用いて対向配置の電極構造にすることで発光素子としての電気的特性(駆動電圧,消費電力,発光輝度・効率等)を著しく向上させると共に、素子間の電気的特性のバラツキを減少させることができた。」(4頁右上欄9行?右下欄10行)

ウ 甲第8号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第8号証(「高輝度青色発光のための電子材料技術」)には、次の記載がある。

「エピタキシャル成長用の基板結晶材料の選択は、デバイス化だけでなく、初期成長過程を理解する上でも重要である。表-3に格子整合性を考慮したGaN用基板の候補をリストアップした。」(44頁右欄下から10行?同7行))
表-3は次のものである。


エ 甲第9号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第9号証(特開平4-242985号公報)には、以下の記載がある。

「【請求項1】 n型導電性を示す窒化ガリウム系化合物半導体((Al_( )Ga_(1- ))In_(1- )N:0≦x≦1,0≦y≦1)から成るn層と、p型導電性を示す窒化ガリウム系化合物半導体((Al_( ’)Ga_(1- ’))_( ’)In_(1- ’)N:0≦x’≦1,0≦y’≦1)(x=x’またはx≠x’,y=y’ または y≠y’)から成るp層とが接合された少なくとも1つのpn接合を有する窒化ガリウム系化合物半導体レーザダイオード。」、
「【請求項8】 サファイア、Si、6H-SiC又はGaN から成る基板を有することを特徴とする特許請求の範囲請求項1に記載の窒化ガリウム系化合物半導体レーザダイオード。」
「【0040】
【実施例】・・・以下基板としてサファイア,Si,6H-SiC及びGaN を用いた場合各々について成長手順を示す。
・・・
【0049】(3)6H-SiC 基板の場合
6H-SiC基板上に作成したレーザダイオードを図3に示す。低抵抗n型6H-SiCの(0001)面基板16を有機洗浄の後、王水系エッチャントによりエッチングの後、結晶成長部に設置する。成長炉を真空排気の後、水素を供給し、1200℃まで昇温する。次に、成長炉に水素を供給し基板温度を1040℃にして、TMG,SiH_(4)及びNH_(3)を供給してn型GaN緩衝層17を0.5?1μm程度成長する。次に、TMAを加え、n型GaN緩衝層17の上にn型GaAN層18(n層)を成長する。
【0050】次に、n型GaAN層18の上に、前記のSi基板を用いたレーザダイオードと同一構造に、同一ガスを用いて、同一成長条件で、それぞれ、GaN層19を0.5μm、MgドープGaAlN層20(p層)を0.5μmの厚さに形成した。次に、MgドープGaAlN層20上にSiO2層22を堆積した後、縦1mm、横50μmの短冊状に窓22Aを開け、真空チャンバに移して、MgドープGaAlN層20(p層)に電子線を照射した。・・・」

オ 甲第10号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第10号証(特開平6-268259号公報)には、次の記載がある。

「【0008】本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の構造を示す断面図を図1に示す。下から順に、基板1の上に、バッファ層2と、n型窒化ガリウム系化合物半導体層3と、n型Ga_(1-Y)Al_(Y)Nクラッド層4(0<Y<1)と、n型In_(Z)Ga_(1-Z)N(0<Z<1)活性層5と、Mgドープp型Ga_(1-X)Al_(X)N(0<X<0.5)クラッド層6と、Mgドープp型GaNコンタクト層7とが順に積層された構造を有する。なお、8はMgドープp型GaNコンタクト層7に設けられた電極、9はn型窒化ガリウム系化合物半導体層3に設けられた電極である。基板1にはサファイア、ZnO、SiC、Si等が使用される。バッファ層2にはAlN、GaN、GaAlN等が使用される。
【0009】前記、窒化ガリウム系化合物半導体発光素子において、n型窒化ガリウム系化合物半導体層3の種類は特に限定するものなく、GaN、GaAlN、InGaN、InAlGaN等、ノンドープ(無添加)の窒化ガリウム系化合物半導体、またはノンドープの窒化ガリウム系化合物半導体に、例えばSi、Ge、Te、Se等のn型ドーパントをドープしてn型特性を示すように成長した層を用いることができる。」

カ 甲第11号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第11号証(特開平6-326416号公報)には、次の記載がある。

「【請求項1】 立方晶SiC基板と、この立方晶SiC基板の(111)面上に形成されたGa_(x) Al_(y) In_(1-x-y) N(0≦x≦1,0≦y≦1)層とを具備することを特徴とする化合物半導体素子。」

(2)甲第1号証に記載された発明
ア 前記(1)ア(ア)によれば、甲第1号証には、実施例1として「一方の電極を有する化合物半導体結晶14と、この結晶の他方の面上にオーミック電極13、更にそのオーミック電極13の上の共晶合金12及び発光層2の両側に電流拡散層3、厚膜層10を有する光半導体ウェーハ15の厚膜層10側にオーミック電極11と電流拡散層側3にオーミック電極5が存在し、前記化合物半導体結晶14と光半導体結晶15とが前記共晶合金によって機械的にも電気的にも結合されている、半導体発光素子である発光ダイオード。」が記載されているものと認められる。
そして、同(イ)によれば、上記発光ダイオードにおける、「一方の電極」、「化合物半導体結晶14」、「オーミック電極13」、「共晶合金12」、「発光層2」、「電流拡散層3」、「厚膜層10」、「『光半導体ウェーバ15』ないし『光半導体結晶15』」、「オーミック電極11」及び「オーミック電極5」は、具体的にはそれぞれ、「n側電極9」、「n-GaP半導体結晶14」、「オーミック電極13」、「共晶合金12」、「p-In_(0.5) Al_(0.5) Pクラッド層22、アンドープIn_(0.5 )Ga_(0.21)Al_(0.29)P活性層20及びn-In_(0.5 )Al_(0.5 )Pクラッド層21からなる発光層2」、「p-Ga_(0.2) Al_(0.8) As電流拡散層3」、「n-Ga_(0.2) Al_(0.8 )As厚膜層10」、「InGaAlP緑色LED用光半導体結晶15」、「オーミック電極11」及び「所定の形状にエッチングして形成したP側電極5」であるものと認められる。
更に同(ウ)によれば、半導体結晶14としてp-GaPを使用してもよいこと、この場合は、導電型はすべて逆になることが理解できる。

イ 前記(1)ア(エ)によれば、甲第1号証には、金属反射層18を設けるという点が実施例1と異なる実施例2が記載されており、同実施例においては、光半導体ウェーハ15の厚膜層10側に形成したオーミック電極11(水玉電極)の面上全面に金属反射層18が形成され、更に、この金属反射層18と光半導体結晶基板14上に形成した全面電極であるオーミック電極17とが共晶合金12によって結合されているものと認められる。

ウ 以上によれば、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「p側電極を有するp-GaP半導体結晶と、この結晶の他方の面上にオーミック電極、更にそのオーミック電極の上の共晶合金、並びに、n-In_(0.5) Al_(0.5) Pクラッド層、アンドープIn_(0.5 )Ga_(0.21)Al_(0.29)P活性層及びp-In_(0.5 )Al_(0.5 )Pクラッド層からなる発光層の両側にn-Ga_(0.2) Al_(0.8) As電流拡散層、p-Ga_(0.2) Al_(0.8 )As厚膜層を有するInGaAlP緑色LED用光半導体結晶の厚膜層側にオーミック電極と金属反射層がこの順に存在するとともに、電流拡散層側に所定の形状にエッチングして形成したn側電極が存在し、前記p-GaP半導体結晶のオーミック電極とInGaAlP緑色LED用光半導体結晶の厚膜層側に存在する金属反射層とが前記共晶合金によって機械的にも電気的にも結合されている、半導体発光素子である発光ダイオード。」(以下「甲1発明」という。)

ウ 請求人は、以下のように主張する(審判請求書8頁?10頁)。

(ア)甲第1号証には、前記(2)ア(ア)ないし(ウ)にある実施例1(以下「実施例1」という)の光半導体結晶について、「半導体結晶としてn-GaPを採用しているが、p-GaPを使用しても良い。この場合は図4に示されている導電型はすべて逆になる。」((2)ア(ウ))との記載があることから、甲第1号証には、基板であるp-GaPからなる光半導体結晶14上に、水玉電極11・13及び共晶合金12からなる電極によって接合して成ることを特徴とする半導体が接着してなり、該半導体の最下層はp型層であり、最上層がn型層である半導体発光素子が開示されているといえる。

(イ)前記(2)ア(オ)及び(カ)にある実施例3(以下「実施例3」という。)について、甲第1号証には、「青色LEDではGaN、SiCエピタキチャル結晶成長層を使用する。」(【0083】)との記載があり、金属によって接合される2個の半導体発光素子のうちいずれか一方が、GaNエピタキチャル結晶成長層を有する半導体発光素子(以下「GaN半導体発光素子」という。)である構成が開示されている。

(ウ)甲第1号証には、前記(2)ア(カ)のとおり、半導体発光素子と光半導体結晶を接合する(実施例1)場合及び半導体発光素子同士を接合する(実施例3)場合のいずれにも無差別に使用できる方法として、オーミック電極(水玉電極)11・13の間に共晶合金化構築物(共晶合金12)を形成するという方法が開示されており、上記の共晶合金化構築物(共晶合金12)について、AuGe、AuSi等のAu系の金属若しくは合金、又はAu系以外の適切な金属若しくは合金からなることが記載されている。
また、前記(2)ア(オ)から明らかなように、実施例3は、実施例1の光半導体結晶14を半導体発光素子で置換した構成であるから、実施例1は、実施例3において、共晶合金12によって接合された2つの半導体発光素子のうちいずれか一方を光半導体結晶基板14で置換した構成も実質的に開示しているということもできる。
したがって、甲第1号証には、光半導体結晶14と接合される半導体発光素子15が、GaN半導体発光素子である構成が実質的に開示されているということができる。

(エ)甲第1号証には、前記(2)ア(イ)にある実施例2(以下「実施例2」という。)のように、実施例1における半導体発光素子15と光半導体結晶14の接合面にAg、Au、Al、Ni等の金属又は合金からなる金属反射層18を付加した半導体発光デバイスが記載されている。実施例2は、光の取り出し側にないオーミック電極を全面電極とすることができ、図5には、かかる全面電極の形成面上全面に金属反射層18を施した構成が開示されている。
また、実施例2は、接合面の構成を除いて、実施例1と構成上何ら異なるところがないのであるから実施例2においても、実施例1と同じように、光半導体結晶基板14の材料がp-GaPであり、半導体発光素子15がGaN半導体発光素子である構成が実質的に開示されているということができる(実施例2のうち、このような構成を有する半導体発光デバイスを、以下、「引用発明1」という)。
引用発明1は、p-GaPよりなる光半導体結晶基板14と接着する層面となるp型層が最下層、その反対側の層面であるn型層が最上層となる。
また、最上層の該n型層には、図5の「5p型電極」のような部分電極が設けられることとなる(ただし、引用発明1においては、部分電極の導電型はn型となる)。

(オ)したがって、引用発明1は、本件発明1との対比の観点からは、次の構成からなることが明らかである(以下「構成1-1a」?「構成1-1f」という)。
1-1a 基板であるp-GaPよりなる光半導体結晶14上に、
1-1b 共晶合金12からなる金属反射層18の電極を介して光の取り出し側とするGaN半導体発光素子が接着してなり、
1-1c 該GaN半導体発光素子の最下層はp型層であり、
1-1d 最上層がn型層であって、
1-1e 該n型層には部分電極5が設けられていることを特徴とする
1-1f 半導体発光デバイス。

エ 上記ウの請求人の主張について検討する。

(ア)請求人が上記ウ(イ)において指摘する、甲第1号証の【0083】(前記(1)ア(カ)を参照。)に記載された「GaN,SiCエピタキチャル結晶成長層」を使用する「青色LED」について検討するに、「エピタキチャル結晶成長層」との表現に照らすならば、p-GaAs光半導体結晶基板にエピタキシャル結晶成長をさせて得られたInGaAlP緑色LED用光半導体結晶15(前記(1)ア(イ)、【0049】?【0052】を参照。)、すなわち、甲1発明における「InGaAlP緑色LED用光半導体結晶」や、GaP緑色LEDウェハー・半導体発光素子27(前記(1)ア(オ)、【0072】を参照。)と同様に用いることを意図したものとひとまず推測できる。

(イ)しかし、「GaN,SiCエピタキチャル結晶成長層」を使用する「青色LED」をどのように用いて、化合物半導体結晶14(前記(1)ア(ア)を参照。)や、GaAsP赤色LEDウェーハ・半導体発光素子23(前記(1)ア(オ)、【0070】を参照。)などと結合するのかなど、それ以上の具体的な説明は甲第1号証には認められないのであって、「GaN,SiCエピタキチャル結晶成長層」を使用する「青色LED」を用いる場合に、甲1発明の各層がどのようなものとされ、p、nの導電型がどのようなものとされるのか当業者が理解し得るものとは認められない。
したがって、金属によって接合される2個の半導体発光素子のうちいずれか一方が、GaNエピタキチャル結晶成長層を有する半導体発光素子(請求人のいう「GaN半導体発光素子」)である構成が甲第1号証に開示されていると当業者が理解し得るとは認められないし、甲第1号証には、光半導体結晶14と接合される半導体発光素子15が、GaN半導体発光素子である構成が実質的に開示されているということもできない。

(ウ)請求人は、甲第1号証には、光半導体結晶14と接合される半導体発光素子15が、GaN半導体発光素子である構成が実質的に開示されていることを前提として、甲第1号証には引用発明1(上記ウ(オ)を参照。)が実質的に開示されていると主張するが、以上の検討によれば、前提において採用できない。

(3)本件発明1と甲1発明との対比、判断
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明における「p-GaP半導体結晶」は、本件発明1の「導電性基板」に相当する。

(イ)甲1発明は、「InGaAlP緑色LED用光半導体結晶」が「発光層の両側」に「n-Ga_(0.2) Al_(0.8) As電流拡散層」、「p-Ga_(0.2) Al_(0.8 )As厚膜層」を有し、「厚膜層側」に「金属反射層」が存在するものであるから、「電流拡散層」側が「光の取り出し側」になるものと認められる。
そして、甲1発明は、「p-GaP半導体結晶のオーミック電極とInGaAlP緑色LED用光半導体結晶の厚膜層側に存在する金属反射層とが前記共晶合金によって機械的にも電気的にも結合されている」ものであるから、甲1発明は「導電性基板上に、電極を介して光の取り出し側とする半導体が接着してな」るものといえ、この点において、本件発明1と甲1発明とは、共通するものといえる。

(ウ)甲1発明の「p-Ga_(0.2) Al_(0.8 )As厚膜層」、「n-Ga_(0.2) Al_(0.8) As電流拡散層」及び「所定の形状にエッチングして形成したn側電極」は、それぞれ、本件発明1の「(最下層である)p型層」、「(最上層である)n型層」及び「(n型層に設けられた)部分電極」に相当する。

(エ)甲1発明の「半導体発光素子である発光ダイオード」は、「半導体発光素子」である点において、本件発明1と共通するものといえる。

(オ)以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「導電性基板上に、電極を介して光の取り出し側とする半導体が接着してなり、該半導体の最下層はp型層であり、最上層がn型層であって、該n型層には部分電極が設けられている半導体発光素子。」
である点において一致し、
「半導体が、本件発明では、『窒化物半導体』であるのに対して、甲1発明では、『InGaAlP緑色LED用光半導体結晶』である点」(以下「相違点」という。)
で相違するものと認められる。

イ 判断
(ア)相違点について検討するに、甲1発明において、「InGaAlP緑色LED用光半導体結晶」を「窒化物半導体」に置換することについて、当業者が容易に想到し得たと認めるに足る根拠は、本件各証拠を通じてみても、見いだすことができない。

(イ)請求人は、甲第7ないし第11号証を挙げ、甲第7号証には、GaN成長用の基板として低抵抗の基板(ZnS、ZnSe、又はその混晶)を使用することで、発光素子の上下に電極を有するGaN系発光素子が実現できることが記載され、甲第8ないし第11号証には、GaN成長用の基板としてSiC半導体その他種々の材料を使用することが記載されている旨主張する(口頭審理陳述要領書11頁?13頁)が、上記各甲号証の記載をもって、「GaN,SiCエピタキチャル結晶成長層」を使用する「青色LED」を用いる場合に、甲1発明の各層がどのようなものとされ、p、nの導電型がどのようなものとされるのか当業者が理解し得るものとは認められないし、甲1発明において、「InGaAlP緑色LED用光半導体結晶」を「窒化物半導体」に置換することについて、当業者が容易に想到し得たと認めることもできない。

ウ 小括
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

(4)本件発明2ないし5について
本件発明2ないし5は、本件発明1の特定事項をすべて含み、更に特定事項を付加したものであるところ、上記(3)で検討したとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということもできないから、本件発明2ないし5が、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということもできないことは明らかである。

2 無効理由2について
(1)甲号証の記載
ア 甲第2号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開平4-29374公報)には、以下の記載がある。

(ア)「第1図はこの発明による面出射型半導体発光素子の作製方法の一例を示しており、第2図は作製された面出射型半導体発光素子の構造および動作状態を示している。
GaAs基板1上にn-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層2、Ga_(0.6)Al_(0.4)As活性層3およびp-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層4を順次成長させる(第1図(A))。この構造はDH構造であるから内部発光効率が高い。
p-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層4上にオーミック電極を形成し、その最上層にはAuが露出するようにしておく。
そして、このオーミック電極上にp-Si基板5を置き、加熱することにより、Si基板5とp-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層4とを接着させる(第1図(B))。SiとAuは第2図に示すような状態図に従って合金化するからAuとSiを直接接触させながら熱処理することによりp-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層4とSi基板5を接着することができる。クラッド層4とSi基板5との接合面はAuとSiの合金化領域6となる。
最後にGaAs基板1をエッチング等により除去する(第1図(C))。
そして、第2図に示すように、この素子を上下反転し、Si基板5の下面に電極7を、クラッド層2上面の一部に電極8を設ける。」(3頁右上欄5行?左下欄6行)
ここで、第2図は、次のものである。


(イ)「さらに、AuSi合金化領域は活性層3で発光する光に対して反射体として働くから(第2図参照)光の取出し効率の点でも優れている。」(3頁左下欄下から5行?同3行)

(ウ)「この発明による面出射型半導体発光素子はGaAs系の材料に限定されないのはいうまでもない。また1面出射型発光素子であればレーザ・ダイオード(LD)でもLEDでもよく、アレー化してもよい。上記実施例ではSi基板と接着する層がクラッド層となっているが、光を透過する層であればクラッド層とSi基板との間に介在させてもよい。」(3頁左下欄下2行?右下欄6行)

イ 甲第3号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証(平成5年11月30日付日経産業新聞)には、以下の記載がある。

「日亜化学、窒化ガリウム使う」(右上見出し)、
「日亜化学工業(徳島県阿南市、小川英治社長)は明るさ千ミリカンデラの青色発光ダイオード(LED)を開発し、九四年一月から量産に乗り出す。」(前文1行?2行)、
「日亜化学の開発した青色LEDは電流二十ミリアンペア、電圧三・六ボルトで、光度千ミリカンデラ。発光する波長は四百五十ナノ(一ナノは十億分の一)メートルで純度の高い青色をしている。素材には窒化ガリウムを使った。」(本文第1段1行?7行)

ウ 甲第4号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証(「青色発光ダイオード、ダブルヘテロ構造で1cd実現」)には、次の記載がある。

(ア)「日亜化学工業が光度1cdのGaN青色発光ダイオードを開発した。・・・従来、GaNはp型膜の形成が難しいため、実用が困難とされてきた。今回、Mgをドーパントに使い、熱処理を施すことによってp型GaN膜の形成ができた。これで、発光層をAlGaN層で挟むダブル・ヘテロ構造ができるようになった。次の開発課題は、青色半導体レーザの実現。ダブルヘテロ構造がすでに完成しているため、レーザもあと一歩で実現できる段階にある。」(93頁要約1行?7行)

(イ)「開発したInGaN/AlGaNダブルヘテロ構造高輝度青色発光ダイオードの構造を図8に示す。まずサファイア基板上にGaNバッファ層を約+550゜Cで成長させ、その上に約+1000゜Cでn型GaN、n型AlGaN、ZnドープInGaN、p型AlGaN、p型GaNを順次成長させる。成長後p型AlGaN、p型GaNを低抵抗p型にするため熱的アニーリングをする。次にp型GaNの一部をn型GaNが露出するまでエッチングし、p型GaN、n型GaNにそれぞれ電極を形成する。」(99頁中欄下から1行?右欄13行)

(ウ)「今回開発したGaN青色発光ダイオードがレーザ発振するために欠けている条件は、発光がバンド間発光でない点と光の共振面がない点である。・・・共振面に関しては、一般的な半導体レーザのように、劈開面を共振面として使うことができない。GaNが劈開性を持っていないためである。劈開性を利用せず、エッチングなどの方法により共振面を作る必要があろう。」(102頁左欄13行?末行)

エ 甲第5号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証(特開昭61-182292号公報)には、以下の記載がある。

「本発明はこのような従来技術の問題を考慮して成されたもので、ケミカルエッチングによる良好な共振器端面が形成できしかも量産性の高い半導体レーザーの製造方法の提供を目的としている。」(2頁右上欄下から6行?同3行)、
「本発明は共振器端面の形成は垂直面の得られ易い結晶方位を用い、素子の分離は基板結晶のへき開方位に合わせて行うことを特徴としている。その方法としては第1の半導体基板上に活性層を含む半導体多層膜を形成し、そのケミカルエッチングによって垂直面の得られ易い結晶方位を第2の半導体基板のへき開方位に合わせて半導体の接着を行い、第1の半導体基板は選択的に除去するものである。その後、半導体多層膜はケミカルエッチングによって垂直端面を形成し、第2の半導体基板をへき開方向に分離せしめるものである。」(2頁右上欄下から1行?左下欄10行)、
「以上説明してきたように、本発明は良好なエッチング垂直面が容易に得られ、素子の分離も容易に行える特徴を有する。このため本発明では大量にウェハーを処理することも可能となり、半導体レーザーの低価格化等にも有効である。本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば使用材料、加工条件等は適用する対象によって決定すればよく、また半導体レーザーの層構成や電流狭窄方法等についても同様である。要するに本発明はその主旨と範囲を逸脱することなく種々の変形が可能である。」(3頁右上欄3行?13行)

オ 甲第6号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証(特開昭61-59886号公報)には、以下の記載がある。

「以下、本発明の一実施例を第1図(a)?(d)を用いて詳記する。第1図(a)は・・・n-GaAs基板1上に第1層2のn-Al_(X1)Ga_(1-X1)As、活性層となる第2層3のP-Al_(X2)Ga_(1-X2)As、第3層4のP-Al_(X3)Ga_(1-X3)As、第4層5のn-Al_(X4)Ga_(1-X4)Asを順次液相成長させ、P型不純物拡散領域6a、6bを選択拡散している。次に第1図(b)に示す様にP型電極7と金鍍金部8の形成が行われた後でシリコンウェハー或いは溶融合金をメタライズしたシリコンウェハー16に金鍍金部8側を下にして金シリコン(AuSi)、金-錫(AuSn)等の溶融合金材17を介してダイボンドを行う。AuとSiの共晶温度は400℃位であり、AuSn等では280℃位で強固に固定される。この際シリコンウェハーはヒートシンクとなる。この様に熱伝導性(導電性)を与えたウェハー部材或いは熱伝導部材(導電部材)を固定した後にn-GaAs基板1を選択エッチング9する。この状態では従来方法に比べてシリコン16で強化されているために割れ、反りが激減する。次に第1図(c)に示す様にN型電極10をパターニングする場合に形成する光取出し部11の直径は130μm程度にするがこの際P型不純物拡散領域6a、6bの中心と合わせる為の背面マスクアライメントの位置合わせ精度は反りがないために精度を向上出来る。本発明の場合には上記マスクアライメントに於いてはシリコンウェハー16の一部をエッチングすることで行い得る。次にn側電極10側からダイサーによってシリコンウェハー16に達する迄切溝12を形成する。この状態では各チップは完全に分離されていないがP側電極7は各チップ毎に分離されているので各チップ毎に発光状態等の特性チェックを行えるのでシリコンウェーハ台16に一体に形成された状態で特性チェック出来るためにチェックの自動化が極めて行い易い状態となる。また、チェック時のウェハーの折れも防止出来る。
上述の如き特性チェック後にクラッキングすることで第1図(d)に示す様に完全にチップ化されてステム14にシリコンウェハー16は取り付けられ、ワイヤ13のボンデングが行われる。個々に分離されたチップもシリコンウェハーと一体であり強度も充分であってP側電極7よりの電極取り出しもシリコンウェハー16が導電性を付与または導電性であるために電極取り出しも特に工夫する必要はない。」(2頁右下欄1行?3頁右上欄5行)、
「第1図(a)?(d)は本発明の光半導体装置の製造方法を示す側断面図・・・である。
1・・・基板、2・・・第1層、3・・・活性層となる第2層、4・・・第3層、5・・・第4層、6、6a、6b・・・ P型不純物拡散層、7・・・P型電極、8・・・金鍍金部、9・・・エッチング部、10・・・ n型電極、11・・・光取出し部、12・・・切溝、13・・・ワイヤボンド部、14・・・ステム、15・・・溶融合金、16・・・ シリコンウェハー、17・・・溶融合金」(3頁右上欄下から5行?左下欄9行)
ここで、第1図は次のものである。


(2)甲第2号証に記載された発明
ア 前記(1)ア(ア)によれば、甲第2号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「GaAs基板1上にn-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層2、Ga_(0.6)Al_(0.4)As活性層3及びp-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層4を順次成長させ、p-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層4上にオーミック電極を形成し、その最上層にはAuが露出するようにしておき、このオーミック電極上にp-Si基板5を置き、加熱することにより、クラッド層4とp-Si基板5との接合面をAuとSiの合金化領域6としてSi基板5とp-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層4とを接着させ、GaAs基板1をエッチング等により除去し、この素子を上下反転し、p-Si基板5の下面に電極7を、クラッド層2上面の一部に電極8を設けた面出射型半導体発光素子。」(以下「甲2発明」という。)

(3)本件発明1と甲2発明との対比、判断
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。

(ア)甲2発明における「p-Si基板5」は、本件発明1の「導電性基板」に相当する。

(イ)前記(1)ア(イ)のとおり、甲2発明の「AuSi合金化領域6」は活性層3で発光する光に対して反射体として働くものであるから、「n-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層2、Ga_(0.6)Al_(0.4)As活性層3及びp-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層4」は、「p-Si基板5」に対して光の取り出し側になるものと認められる。
そして、甲1発明は、「p-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層4上にオーミック電極を形成し、その最上層にはAuが露出するようにしておき、このオーミック電極上にp-Si基板5を置き、加熱することにより、クラッド層4とp-Si基板5との接合面をAuとSiの合金化領域6としてSi基板5とp-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層4とを接着させ」るものであるから、甲1発明は「導電性基板上に、電極を介して光の取り出し側とする半導体が接着してな」るものといえ、この点において、本件発明1と甲2発明とは、共通するものといえる。

(ウ)甲2発明の「p-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層4」、「n-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層2」及び「(クラッド層2上面の一部に設けた)電極8」は、それぞれ、本件発明1の「(最下層である)p型層」、「(最上層である)n型層」及び「(n型層に設けられた)部分電極」に相当する。

(エ)甲1発明の「面出射型半導体発光素子」は、「半導体発光素子」である点において、本件発明1と共通するものといえる。

(オ)以上によれば、本件発明1と甲2発明とは、
「導電性基板上に、電極を介して光の取り出し側とする半導体が接着してなり、該半導体の最下層はp型層であり、最上層がn型層であって、該n型層には部分電極が設けられている半導体発光素子。」
である点において一致し、
「半導体が、本件発明では、『窒化物半導体』であるのに対して、甲2発明では、『n-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層2、Ga_(0.6)Al_(0.4)As活性層3及びp-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層4』である点」(以下「相違点」という。)
で相違するものと認められる。

イ 判断
(ア)相違点について検討するに、前記(1)ア(ウ)によれば、甲2発明の面出射型半導体発光素子は、GaAs系の材料に限定されないものとされていることが認められる。
しかし甲2発明において、「n-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層2、Ga_(0.6)Al_(0.4)As活性層3及びp-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層4」を「窒化物半導体」に置換することについて、当業者が容易に想到し得たと認めるに足る根拠は、本件各証拠を通じてみても、見いだすことができない。

(イ)請求人は、甲第3及び第4号証を挙げ、本件特許の出願日当時、GaN、AlGaN等の窒化物材料を用いたLEDすなわち窒化物半導体発光素子は周知技術であったこと、甲第4号証に記載の「青色半導体レーザの実現」、「エッチングなどの方法により共振面を作る」という課題(前記(1)ウ(ア)及び(ウ)を参照。)については、甲第5号証(前記(1)エを参照。)に、劈開性を有する新たな基板を接合するという解決手段が開示されるところ、甲2発明の「p-Si基板5」の材料であるシリコン単結晶が劈開性を有することは技術常識であるから、甲第4号証に記載された「青色半導体レーザの実現」等の課題を解決する手段として、甲第4号証に記載された窒化物半導体発光素子に甲2発明を適用することは、当業者の通常の創作能力の発揮に止まること、甲第6号証(前記(1)オを参照。)には、半導体発光素子のp型層(P型不純物拡散層6)にP型電極7及び導電性材料(金鍍金部8・溶融合金17)を介して導電性基板(シリコンウェハー16)が接着されており、該半導体発光素子の上面及び下面に電極(n型電極10・P型電極7)が設けられている点で甲2発明と異ならない光半導体装置が開示されており、かかる光半導体装置について、「P側電極7よりの電極取り出しもシリコンウェハー16が導電性を付与または導電性であるために電極取り出しも特に工夫する必要」がなく電極の取り出しが容易であるという作用効果があることが明記され、「上下より電極を取り出せる構造を有する・・・窒化物半導体素子」という本件各発明の主たる目的(本件特許明細書【0007】)が、窒化物半導体発光素子に甲2発明を適用することによって達成できることは明らかであり、窒化物半導体発光素子に引用発明2を適用することは、当業者の通常の創作能力の発揮に止まることを主張する(審判請求書18頁?24頁)。
しかし、甲第3及び第4号証(前記(1)イ及びウを参照。)は、GaN、AlGaN等の窒化物材料を用いたLEDすなわち窒化物半導体発光素子を概括的に紹介するにとどまるものであり、上記各甲号証の記載を見ても、窒化物半導体をどのようにして甲2発明に適用できるのか想定し難い。したがって、甲第5ないし第6号証の記載事項にかかわらず、甲2発明において、「n-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層2、Ga_(0.6)Al_(0.4)As活性層3及びp-Ga_(0.3)Al_(0.7)Asクラッド層4」を「窒化物半導体」に置換することについて、当業者が容易に想到し得たと認めることはできない。

ウ 小括
よって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(4)本件発明2ないし5について
本件発明2ないし5は、本件発明1の特定事項をすべて含み、更に特定事項を付加したものであるところ、上記(3)で検討したとおり、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、本件発明2ないし5が、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできないことは明らかである。

第7 むすび
以上のとおり、本件発明1ないし5が、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。
また、本件発明1ないし5が、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
したがって、本件発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号又は第29条第2項の規定に違反してなされたものということはできず、同法第123条第1項第2号に該当しないから、請求人が主張する理由によって、本件発明についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-17 
結審通知日 2012-05-21 
審決日 2012-06-05 
出願番号 特願2000-67673(P2000-67673)
審決分類 P 1 113・ 113- Y (H01L)
P 1 113・ 121- Y (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小原 博生近藤 幸浩吉野 三寛道祖土 新吾  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 吉野 公夫
松川 直樹
登録日 2004-01-16 
登録番号 特許第3511970号(P3511970)
発明の名称 窒化物半導体発光素子  
代理人 吉澤 敬夫  
代理人 言上 恵一  
代理人 池上 慶  
代理人 吉村 誠  
代理人 田村 啓  
代理人 黒田 健二  
代理人 鮫島 睦  

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