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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1264720
審判番号 不服2010-27978  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-10 
確定日 2012-10-10 
事件の表示 特願2007-557046「障害復旧フレームワーク」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月31日国際公開、WO2006/091400、平成20年 9月11日国内公表、特表2008-537203〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、2006年2月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年2月23日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年8月22日に特許法第184条の5第1項に規定される書面が提出されるとともに、同法第184条の4第1項で規定される、国際出願日における明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の翻訳文が提出され、同年9月20日付けで審査請求がなされ、平成22年3月10日付けで拒絶理由通知(同年3月16日発送)がなされ、同年5月31日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年8月5日付けで拒絶査定(同年8月10日謄本発送)がなされ、これに対し、同年12月10日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。そして、平成23年1月6日付けで審査官から前置報告がなされ、同年6月2日付けで当審より審尋(同年6月7日発送)がなされ、同年8月25日付けで回答書が提出されたものである。
そして、平成23年10月11日付けで前記平成22年12月10日付け手続補正を却下する旨の補正の却下の決定(同年10月25日発送)がなされるとともに、同日付けで拒絶理由通知(同年10月18日発送)がなされ、これに対し、平成24年3月29日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記平成24年3月29日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「内部コンピュータネットワークと通信する複数のプライマリサーバーと、
前記内部コンピュータネットワークと通信する複数のバックアップサーバーと、
前記内部コンピュータネットワークと通信するDRサーバーと、
前記DRサーバー上に格納されるフェイルオーバースクリプトとを具備し、
前記複数のプライマリサーバーは、それぞれが、前記内部コンピュータネットワークに対してサービスを提供するアプリケーションを実行し、
前記複数のバックアップサーバーは、それぞれが、前記アプリケーションを実行するように構成され、
前記フェイルオーバースクリプトは、前記DRサーバー上で実行される際に、前記バックアップサーバー上でフェイルオーバー操作を実行し、かつ、前記内部コンピュータネットワークと通信するコンピュータから起動されて、前記DRサーバー上で実行を開始し、
前記DRサーバー上に格納される設定ファイルをさらに具備し、
前記設定ファイルは、前記アプリケーションの前記フェイルオーバー操作の情報を具備し、
前記情報は、前記フェイルオーバー操作の対象となるプライマリサーバーとバックアップサーバーとを特定するコマンドを含むことを特徴とするシステム。」

3.引用文献

当審が拒絶理由通知において引用した特開2001-290669号公報 (平成13年10月19日公開、以下、「引用文献」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。

A 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一のサーバに障害が発生したときに、その一のサーバが提供していたサービスを他のサーバに引き継がせるようにしたフェールオーバ管理システム、フェールオーバ管理装置、フェールオーバ管理方法、さらにはこれらを実現するためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。」

B 「【0020】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1には、本実施形態による非対称型のフェールオーバ管理システムの概略構成を示す。このシステムでは、OS(オペレーティングシステム)として、UNIXオペレーティングシステムの1つであるSolaris(米Sun Microsystems社)を使用しているものとする。
…(中略)…
【0023】上記サーバAは、RAID1のRAIDコントローラ1aに接続されている。通常は、このサーバAにサービスディスクDのオーナ権があり、サーバAがネットワーク2に対してサービスaを提供している。すなわち、サーバAの物理アドレスをc1、RAIDコントローラ1aのSCSIターゲットIDをt0、サービスディスクDの物理アドレスをd0と表せば、c1t0d0といった論理アドレスがサーバAに設定され、サービスディスクDを用いたサービスaがサーバAによって提供される。なお、このサーバAが、本発明でいう一のサーバを構成するものである。
【0024】また、上記サーバBは、RAID1のRAIDコントローラ1bに接続されている。通常は、このサーバBからはサービスディスクDが見えないように設定され、サーバBは待機中となっている。すなわち、サーバBの物理アドレスをc1、RAIDコントローラ1bのSCSIターゲットIDをt0と表せば、c1t0d0といった論理アドレスはサーバBに設定されず、サーバBからサービスディスクDにはアクセスできないようになっている。なお、このサーバBが、本発明でいう他のサーバを構成するものである。」

C 「【0028】図2には、上記サーバBの機能構成を表すブロック図を示す。サーバBは、デーモン監視部51と、オーナ権移行処理部52と、リンク処理部53と、オーナ権リリース処理部54と、スクリプトファイル55の記憶部とを有する。
【0029】デーモン監視部51は、上述した監視ネットワーク4、5を介してサーバAの故障発生を監視するものである。オーナ権移行処理部52は、デーモン監視部51での監視結果に基づいて、上記サービスディスクDのオーナ権を自己に移行させる指令として、前述の''trespass''といったコマンドをスクリプトファイル55の記述に従って発行し、サービスディスクDのオーナ権をサーバBに移行させる処理を行うものである。
【0030】上記スクリプトファイル55には、上記オーナ権移行処理部52及びリンク処理部53で行われる処理を含む一連の処理の流れがスクリプト形式で記述されるとともに、上記サービスディスクDとサーバBとの物理的接続関係を示した物理アドレス56と上記サービスディスクDとサーバBとの論理的接続関係を示した論理アドレス57とのひもづけに関するリンク情報が記述されている。このリンク情報は、単純にリストの形で記述してもよいし、数が多くなるような場合はテーブルの形で記述してもよい。」

D 「【0034】オーナ権リリース処理部54は、詳しくは後述するが、サービスディスクDのオーナ権をリリースする指令として、''autotrespass''といったコマンドを発行し、それまでサーバBが保持していたオーナ権の解放処理を行うものである。このオーナ権リリース処理部54は、例えば、故障したサーバAが復旧した際に、サービスディスクDのオーナ権をサーバAに返すために手動で起動される。」

E 「【0040】そこで、本実施形態では、図示しないキーボード操作等によって、サーバBのオーナ権リリース処理部54でオーナ権リリース指令(コマンド''autotrespass'')を発行させるようにしている。…(後略)」

F 「【0041】このように、一のサーバAを通常状態でサービスaを提供するプライマリサーバ、他のサーバBを待機系のサーバとすることにより、サーバAからサーバBの方向に対するフェールオーバだけが発生するようにし…(後略)」

G 「【0050】ここまでは、2台のサーバを有するフェールオーバ管理システムについて説明したが、サーバの数は2台に限定されるものではない。例えば、図5に示すシステムでは、サーバAがサービスaを提供し、サーバBがサービスbを提供し、さらにサーバCがサービスa、bの待機中となっている。そして、サーバA、Bに障害が発生した場合には、既に説明したようにしてサーバCにサービスディスクDa、Dbのオーナ権を移行させて、サーバCがそのサービスa、bを引き継ぐようにしている。」

(ア)上記Bの「サーバAがネットワーク2に対してサービスaを提供している。…(中略)…。なお、このサーバAが、本発明でいう一のサーバを構成するものである。」との記載、及び上記Fの「一のサーバAを通常状態でサービスaを提供するプライマリサーバ」との記載、及び上記Gの「サーバの数は2台に限定されるものではない。例えば、図5に示すシステムでは、サーバAがサービスaを提供し、サーバBがサービスbを提供し、さらにサーバCがサービスa、bの待機中となっている。」との記載からすると、引用文献には、
ネットワークと通信する複数のプライマリサーバを具備し、
前記複数のプライマリサーバは、それぞれが、前記ネットワークに対してサービスを提供
する態様が記載されていると認められる。

(イ)上記Aの「一のサーバに障害が発生したときに、その一のサーバが提供していたサービスを他のサーバに引き継がせるようにした」との記載、上記Bの「通常は、…(中略)…、サーバBは待機中となっている。…(中略)…。なお、このサーバBが、本発明でいう他のサーバを構成するものである。」との記載、上記Fの「一のサーバAを通常状態でサービスaを提供するプライマリサーバ、他のサーバBを待機系のサーバとする」との記載、及び関連する図面(特に【図1】等)を参照すると、引用文献には、
ネットワークと通信する待機系のサーバを具備し、
(プライマリサーバに障害が発生したときに、)前記待機系のサーバは、サービスを提供
する態様が記載されていると認められる。

(ウ)上記Cの「サーバBは、…(中略)…、オーナ権移行処理部52と、…(中略)…、スクリプトファイル55の記憶部とを有する。…(中略)…。オーナ権移行処理部52は、…(中略)…、前述の''trespass''といったコマンドをスクリプトファイル55の記述に従って発行し、サービスディスクDのオーナ権をサーバBに移行させる処理を行うものである。…(中略)…上記スクリプトファイル55には、上記オーナ権移行処理部52及びリンク処理部53で行われる処理を含む一連の処理の流れがスクリプト形式で記述される」との記載、及び上記Fの「一のサーバAを通常状態でサービスaを提供するプライマリサーバ、他のサーバBを待機系のサーバとすることにより、サーバAからサーバBの方向に対するフェールオーバ」との記載からすると、引用文献には、
待機系のサーバ上に記憶されるスクリプトを具備し、
前記スクリプトは、前記待機系のサーバ上で実行される際に、前記待機系のサーバ上でフェールオーバ操作を実行する
態様が記載されていると認められる。

(エ)上記Fの「一のサーバAを通常状態でサービスaを提供するプライマリサーバ、他のサーバBを待機系のサーバとすることにより、サーバAからサーバBの方向に対するフェールオーバ」との記載、及び上記Cの「サーバBは、…(中略)…、スクリプトファイル55の記憶部とを有する。…(中略)…上記スクリプトファイル55には、上記オーナ権移行処理部52及びリンク処理部53で行われる処理を含む一連の処理の流れがスクリプト形式で記述されるとともに、上記サービスディスクDとサーバBとの物理的接続関係を示した物理アドレス56と上記サービスディスクDとサーバBとの論理的接続関係を示した論理アドレス57とのひもづけに関するリンク情報が記述されている。」との記載からすると、引用文献には、
待機系のサーバ上に記憶されるスクリプトファイルを具備し、
前記スクリプトファイルは、フェールオーバ操作の情報を具備し、
前記情報は、フェールオーバ操作の対象となる待機系のサーバへの接続関係を示すアドレス情報を含む
態様が記載されていると認められる。

以上、(ア)ないし(エ)で指摘した事項から、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)

ネットワークと通信する複数のプライマリサーバと、
前記ネットワークと通信する待機系のサーバと、
前記待機系のサーバ上に記憶されるスクリプトとを具備し、
前記複数のプライマリサーバは、それぞれが、前記ネットワークに対してサービスを提供し、
前記待機系のサーバは、前記サービスを提供するように構成され、
前記スクリプトは、前記待機系のサーバ上で実行される際に、前記待機系のサーバ上でフェールオーバ操作を実行し、
待機系のサーバ上に記憶されるスクリプトファイルをさらに具備し、
前記スクリプトファイルは、前記フェールオーバ操作の情報を具備し、
前記情報は、前記フェールオーバ操作の対象となる待機系のサーバへの接続関係を示すアドレス情報を含むことを特徴とするシステム。

4.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「ネットワーク」、「複数のプライマリサーバ」、「待機系のサーバ」、及び「記憶」は、それぞれ、本願発明の「内部コンピュータネットワーク」、「複数のプライマリサーバー」、「バックアップサーバー」、及び「格納」に相当する。また、引用発明の「スクリプト」は、プライマリサーバから待機系のサーバにフェールオーバを行うための一連の処理を記述したものであることから、本願発明の「フェイルオーバースクリプト」に相当する。そして、引用発明の「待機系のサーバ」と本願発明の「DRサーバー」は、ともに、“内部コンピュータネットワークと通信するサーバ”である点で共通する。

引用発明の「前記複数のプライマリサーバは、それぞれが、前記ネットワークに対してサービスを提供し」における「サービスを提供」することは、上記Bに「このシステムでは、OS(オペレーティングシステム)として、UNIXオペレーティングシステムの1つであるSolaris(米Sun Microsystems社)を使用しているものとする。」と記載される当該システムの動作環境からみて、UNIXオペレーティングシステム上で実行されるアプリケーションによってサービスを提供することに他ならない。してみれば、引用発明の「前記複数のプライマリサーバは、それぞれが、前記ネットワークに対してサービスを提供し」は、本願発明の「前記複数のプライマリサーバーは、それぞれが、前記内部コンピュータネットワークに対してサービスを提供するアプリケーションを実行し」に相当するといえる。

そして、引用発明の「前記待機系のサーバは、前記サービスを提供する」は、本願発明の「前記バックアップサーバーは、前記アプリケーションを実行する」に相当するといえる。

引用発明の「フェールオーバ操作」は、本願発明の「フェイルオーバー操作」に相当する。してみれば、引用発明と本願発明とは、ともに、“前記フェイルオーバースクリプトは、前記バックアップサーバー上でフェイルオーバー操作を実行”する点で共通する。

引用発明の「スクリプトファイル」は、フェールオーバ処理に関する情報を具備していることから、本願発明の「設定ファイル」に相当する。

引用発明は、UNIXオペレーティングシステム上で実行されるアプリケーションによってサービスを提供するものに他ならないから、引用発明の「前記スクリプトファイルは、前記フェールオーバ操作の情報を具備」は、本願発明の「前記設定ファイルは、前記アプリケーションの前記フェイルオーバー操作の情報を具備」に相当するといえる。

引用発明の(サーバへの)「接続関係を示すアドレス情報」は、フェールオーバ操作の対象となるサーバへの接続に関する情報である。そして、本願発明の(フェイルオーバー操作の対象となるサーバー)を「特定するコマンド」も、フェールオーバー操作の対象となるサーバーへの接続に関する情報に他ならない。してみれば、引用発明と本願発明は、ともに、“前記情報は、前記フェールオーバー操作の対象となるサーバーへの接続に関する情報を含む”点で共通するといえる。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)

内部コンピュータネットワークと通信する複数のプライマリサーバーと、
前記内部コンピュータネットワークと通信するバックアップサーバーと、
前記内部コンピュータネットワークと通信するサーバ上に格納されるフェイルオーバースクリプトとを具備し、
前記複数のプライマリサーバーは、それぞれが、前記内部コンピュータネットワークに対してサービスを提供するアプリケーションを実行し、
前記バックアップサーバーは、前記アプリケーションを実行するように構成され、
前記フェイルオーバースクリプトは、前記バックアップサーバー上でフェイルオーバー操作を実行し、
設定ファイルをさらに具備し、
前記設定ファイルは、前記アプリケーションの前記フェイルオーバー操作の情報を具備し、
前記情報は、前記フェイルオーバー操作の対象となるサーバーへの接続に関する情報を含むことを特徴とするシステム。

(相違点1)

バックアップサーバーに関して、本願発明は、「複数のバックアップサーバー」「を具備し、」「前記複数のバックアップサーバーは、それぞれが、前記アプリケーションを実行するように構成され」ているものであるのに対して、引用発明は、複数の待機系のサーバを具備することについて明記されていない点。

(相違点2)

フェイルオーバースクリプトの格納及び実行に関して、本願発明は、DRサーバーがフェイルオーバースクリプトを格納し実行するのに対して、引用発明では、待機系のサーバがフェールオーバーを実行するためのスクリプトを記憶し実行する点。

(相違点3)

フェイルオーバーの実行に関して、本願発明は、「前記バックアップサーバー上でフェイルオーバー操作を実行し、かつ、前記内部コンピュータネットワークと通信するコンピュータから起動されて、前記DRサーバー上で実行」されるものであるのに対して、引用発明では、待機系のサーバ自身がフェールオーバー処理を実行する点。

(相違点4)

フェイルオーバー操作の情報を具備する設定ファイルに関して、本願発明の設定ファイルは「DRサーバー上に格納」され、「フェイルオーバー操作の対象となるプライマリサーバーとバックアップサーバーとを特定するコマンドを含む」ものであるのに対し、引用発明のスクリプトファイル(本願発明の「設定ファイル」に相当)は、待機系のサーバ上に記憶され、フェールオーバ操作の対象となる待機系のサーバへの接続関係を示すアドレス情報を含むものである点。

5.判断

上記相違点1ないし相違点4について検討する。

(1)相違点2について

故障したコンピュータ及び待機コンピュータとは別のシステム管理ワークステーションが有するスクリプトを実行することにより、故障からの回復を行う技術は周知の技術(必要であれば、特開2000-99359号公報(特に、段落【0016】等)参照。以下、「周知技術1」という。)である。
そして、サーバが有する複数機能の一部をDRサーバ等の別のサーバで実現するように構成することは、引用文献等を示すまでもなく、当該技術分野において慣用的に行われている周知技術に過ぎない。
してみれば、引用発明における待機系のサーバが有するフェールオーバを実行するためのスクリプトを記憶し実行するという機能の一部を、ネットワークと通信するDRサーバ上で実現させるように構成することは、当業者であれば、適宜なし得たことである。

よって相違点2は格別のものではない。

(2)相違点1及び相違点4について

複数の待機系装置を備え、どの装置にアプリケーションの処理を引き継がせるか、事前に登録しておくフェールオーバ方法は、周知の技術(必要であれば、特開2000-215076号公報(特に、段落【0004】等)参照。以下、「周知技術2」という。)である。
してみれば、引用発明においても、前記周知技術2を適用し、複数のプライマリサーバを具備するのと同様に、複数の待機系のサーバを具備し、複数の待機系のサーバのそれぞれが、サービスを提供するように構成することは、当業者が適宜なし得たことである。

また、上記「(1)相違点2について」で検討したように、設定ファイル等のファイルの格納場所については、当業者が必要に応じて適宜決定しうる設計事項にすぎず、引用発明におけるスクリプトファイルをDRサーバ上に格納するように構成することに、何ら技術的困難性はない。
さらに、複数のサーバを具備した構成において、当該複数のサーバからフェールオーバ操作の対象となるサーバを特定することは、前記周知技術2にも記載されるように、当該技術分野における常套手段にすぎない。そして、複数の装置に対して、障害迂回操作の対象となる装置を特定するコマンドについても、周知の技術(必要であれば、国際公開2004/102535号公報(特に、17頁29行?18頁1行等)参照。以下、「周知技術3」という。)である。
してみれば、引用発明においても、複数のプライマリサーバ及び複数の待機系のサーバを具備し、当該複数のサーバからフェールオーバ操作の対象となるサーバを特定する際に、前記周知技術3を適用し、引用発明のスクリプトファイルが含むサーバへの接続関係を示す情報として、フェールオーバ操作の対象となるプライマリサーバ及び待機系のサーバを特定するためのコマンドを含むスクリプトファイルをDRサーバ上に格納するように構成することについても、当業者が容易に想到し得たものである。

よって相違点1及び相違点4は格別のものではない。

(3)相違点3について

ネットワークと通信するコンピュータから障害対応を行うサーバーを操作する技術は、引用文献等を示すまでもなく、当該技術分野において慣用的に行われている周知慣用技術に過ぎない。
また、上記Dに「オーナ権リリース処理部54は、例えば、故障したサーバAが復旧した際に、サービスディスクDのオーナ権をサーバAに返すために手動で起動される。」と記載され、上記Eに「本実施形態では、図示しないキーボード操作等によって、サーバBのオーナ権リリース処理部54でオーナ権リリース指令(コマンド''autotrespass'')を発行させるようにしている。」と記載されるように、引用文献1のフェールオーバ管理システムにおいても、サーバBからサーバAにサービスを戻す処理については、キーボード操作等によって、手動で起動している。
してみれば、引用発明においても、当該周知慣用技術を用いて、ネットワークと通信するコンピュータからスクリプトを起動してフェールオーバ操作を実行するよう構成することは、当業者であれば、適宜なし得たことである。

よって相違点3は格別のものではない。

(4)小括

上記で検討したごとく、相違点1ないし相違点4は格別のものではなく、そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び周知技術から当業者が当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。

6.むすび

以上のとおり、本願発明は、本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-08 
結審通知日 2012-05-15 
審決日 2012-05-28 
出願番号 特願2007-557046(P2007-557046)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 漆原 孝治  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 田中 秀人
殿川 雅也
発明の名称 障害復旧フレームワーク  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  

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