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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1264795
審判番号 不服2010-13049  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-15 
確定日 2012-10-17 
事件の表示 特願2007- 17564「コンテンツ検索方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月23日出願公開、特開2007-213574〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・手続補正の内容・先行技術

1.手続の経緯の概要
本願は、
2006年2月6日(以下「優先日」と記す。)付けの大韓民国での出願を基礎とする、パリ条約に基づく優先権主張を伴って、
平成19年1月29日付けで出願されたものであって、
出願と同日付けで審査請求がなされ、
平成21年9月17日付けで拒絶理由通知(同年同月29日発送)がなされ、
同年12月25日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
平成22年2月5日付けで拒絶査定(同年同月16日謄本送達)がなされ、
同年6月15日付けで審判請求がされると共に、同日付けで手続補正書が提出されたものである。

なお、
同年7月16日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、
平成23年11月28日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(同年同月29日発送)がなされ、これに対して
平成24年2月29日付けで回答書が提出されている。


2.手続補正の内容

(1)平成21年12月25日付け手続補正
上記平成21年12月25日付けの手続補正書は特許請求の範囲を以下のとおりに補正するものである。
「【請求項1】
コンテンツ検索装置が、
検索対象のコンテンツから抽出された特徴ベクトルから類型された複数の特徴ベクトル類型と、前記複数の特徴ベクトル類型毎にさらに類型された複数の特徴値類型と、をディスプレイ部に表示するステップと、
前記ディスプレイ部に表示され、前記複数の特徴ベクトル類型と前記複数の特徴値類型の中から、選択された基準特徴値類型を取得するステップと、
選択された基準特徴値類型に応じて、当該基準特徴値類型に類型された特徴ベクトルとマッピングされた少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定するステップと、
前記配列順序に応じて前記プレビュー情報をディスプレイ部に表示するステップとを含み、
表示される前記プレビュー情報がイメージを含む場合、当該イメージをプレビュー情報に含んで表示される、
コンテンツ検索方法。
【請求項2】
前記検索対象のコンテンツから内容基盤の特徴を示す互いに異なる複数の前記特徴ベクトルを抽出するステップをさらに含み、前記複数の特徴ベクトル類型は各々前記互いに異なる複数の特徴ベクトルを示す、請求項1に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項3】
前記抽出された特徴ベクトル毎に前記特徴ベクトルを構成する特徴値のダイナミックレンジを均一化するステップをさらに含む、請求項2に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項4】
前記均一化するステップは、前記特徴値の標準偏差を正規化するステップを含む、請求項3に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項5】
前記基準特徴値類型が変更された場合、
前記変更された基準特徴値類型に応じて前記プレビュー情報の配列順序を再決定するステップと、
前記再決定された配列順序に応じて前記プレビュー情報をディスプレイ部に表示するステップとをさらに含む、請求項1に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項6】
前記特徴ベクトル類型が変更された場合、
前記変更された特徴ベクトル類型を構成する複数の特徴値類型を取得するステップと、
前記変更された特徴ベクトル類型を構成する複数の特徴値類型のうち、選択された基準特徴値類型を再取得するステップと、
前記再取得された基準特徴値類型に応じて前記プレビュー情報の配列順序を再決定するステップと、
前記再決定された配列順序に応じて前記プレビュー情報をディスプレイ部に表示するステップとをさらに含む、請求項1に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項7】
前記基準特徴値類型を再取得するステップは、
基準プレビュー情報の前記変更された基準特徴ベクトル類型に含まれる特徴値類型のうち最も高い数値を有する特徴値を示す基準特徴値類型を選択するステップを含む、請求項6に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項8】
前記配列順序が変更されても、前記プレビュー情報のうち選択された基準プレビュー情報を維持させるステップをさらに含む、請求項1に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項9】
前記提供されるプレビュー情報は、1次元の配列で表示される、請求項1に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項10】
前記プレビュー情報の検索位置に関する情報を提供するステップをさらに含む、請求項1に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項11】
複数の特徴ベクトル類型と前記複数の特徴ベクトル類型のうち選択された基準特徴ベクトル類型とを構成する複数の特徴値類型を提供する制御部と、
前記複数の特徴値類型のうち選択された基準特徴値類型に応じて少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定する整列部と、
前記配列順序に応じて前記プレビュー情報を提供するプレビュー情報提供部と、
前記制御部の制御により複数の特徴ベクトル類型と前記複数の特徴ベクトル類型の中から選択された基準特徴ベクトル類型を構成する複数の特徴値類型をディスプレイし、前記プレビュー情報をディスプレイするディスブレイ部を含み、
前記ディスプレイ部は、前記プレビュー情報がイメージを含む場合、当該イメージをプレビュー情報に含んで表示する、コンテンツ検索装置。
【請求項12】
前記コンテンツから内容基盤の特徴を示す互いに異なる複数の特徴ベクトルを抽出する特徴ベクトル抽出部をさらに含み、
前記複数の特徴ベクトル類型は各々前記互いに異なる複数の特徴ベクトルを示す、請求項11に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項13】
前記特徴ベクトル抽出部は、前記抽出された特徴ベクトル毎に前記特徴ベクトルを構成する特徴値のダイナミックレンジを均一化する、請求項12に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項14】
前記特徴ベクトル抽出部は、前記特徴値の標準偏差を正規化して、前記ダイナミックレンジを均一化する、請求項13に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項15】
前記基準特徴値類型が変更された場合、
前記整列部は、前記変更された基準特徴値類型に応じて前記プレビュー情報の配列順序を再決定し、
前記プレビュー情報提供部は、前記再決定された配列順序に応じて前記プレビュー情報を提供する、請求項11に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項16】
前記基準特徴ベクトル類型が変更された場合、
前記制御部は、前記変更された基準特徴ベクトル類型を構成する複数の特徴値類型を提供し、前記変更された基準特徴ベクトル類型を構成する複数の特徴値類型のうち基準特徴値類型を再選択して、
前記整列部は、前記再選択された基準特徴値類型に応じて前記プレビュー情報の配列順序を再決定し、
前記プレビュー情報提供部は、前記再決定された配列順序に応じて前記プレビュー情報を提供する、請求項11に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項17】
前記制御部は、基準プレビュー情報の前記変更された基準特徴ベクトル類型に含まれる特徴値類型のうち最も高い数値を有する特徴値を示す基準特徴値類型を前記基準特徴値類型として選択する、請求項16に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記配列順序が変更されても、前記プレビュー情報のうち選択された基準プレビュー情報を維持させる、請求項11に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項19】
前記制御部は、前記提供されるプレビュー情報が1次元の配列で表示されるように制御する、請求項11に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項20】
前記制御部は、前記プレビュー情報の検索位置に関する情報を提供する、請求項11に記載のコンテンツ検索装置。」

(2)平成22年6月15日付け手続補正
上記平成22年6月15日付けの手続補正書は特許請求の範囲を以下のとおりに補正しようとするものである。
「 【請求項1】
コンテンツ検索装置が、
検索対象のコンテンツから抽出された複数の特徴ベクトル類型と、前記複数の特徴ベクトル類型から選択された基準特徴ベクトル類型を構成する複数の特徴値類型と、をディスプレイ部に表示するステップと、
前記抽出された特徴ベクトル毎に前記特徴ベクトルを構成する特徴値のダイナミックレンジを均一化するステップと、
前記ディスプレイ部に表示され、前記複数の特徴ベクトル類型と前記複数の特徴値類型の中から、選択された基準特徴値類型を提供するステップと、
前記複数の特徴値類型のうち選択された基準特徴値類型に応じて、当該基準特徴ベクトルとマッピングされた少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定するステップと、
前記配列順序に応じて前記プレビュー情報をディスプレイ部に表示するステップとを含み、
表示される前記プレビュー情報がイメージを含む場合、当該イメージをプレビュー情報に含んで表示される、
コンテンツ検索方法。
【請求項2】
前記検索対象のコンテンツから内容基盤の特徴を示す互いに異なる複数の前記特徴ベクトルを抽出するステップをさらに含み、
前記複数の特徴ベクトル類型は各々前記互いに異なる複数の特徴ベクトルを示す、請求項1に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項3】
前記均一化するステップは、前記特徴値の標準偏差を正規化するステップを含む、請求項1に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項4】
前記基準特徴値類型が変更された場合、
前記変更された基準特徴値類型に応じて前記プレビュー情報の配列順序を再決定するステップと、
前記再決定された配列順序に応じて前記プレビュー情報をディスプレイ部に表示するステップとをさらに含む、請求項1に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項5】
前記特徴ベクトル類型が変更された場合、
前記変更された特徴ベクトル類型を構成する複数の特徴値類型を取得するステップと、
前記変更された特徴ベクトル類型を構成する複数の特徴値類型のうち、選択された基準特徴値類型を再取得するステップと、
前記再取得された基準特徴値類型に応じて前記プレビュー情報の配列順序を再決定するステップと、
前記再決定された配列順序に応じて前記プレビュー情報をディスプレイ部に表示するステップとをさらに含む、請求項1に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項6】
前記基準特徴値類型を再取得するステップは、
基準プレビュー情報の前記変更された基準特徴ベクトル類型に含まれる特徴値類型のうち最も高い数値を有する特徴値を示す基準特徴値類型を選択するステップを含む、請求項5に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項7】
前記配列順序が変更されても、前記プレビュー情報のうち選択された基準プレビュー情報を維持させるステップをさらに含む、請求項1に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項8】
前記提供されるプレビュー情報は、1次元の配列で表示される、請求項1に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項9】
前記プレビュー情報の検索位置に関する情報を提供するステップをさらに含む、請求項1に記載のコンテンツ検索方法。
【請求項10】
複数の特徴ベクトル類型と前記複数の特徴ベクトル類型のうち選択された基準特徴ベクトル類型とを構成する複数の特徴値類型を提供する制御部と、
前記複数の特徴値類型のうち選択された基準特徴値類型に応じて少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定する整列部と、
前記配列順序に応じて前記プレビュー情報を提供するプレビュー情報提供部と、
前記制御部の制御により複数の特徴ベクトル類型と前記複数の特徴ベクトル類型の中から選択された基準特徴ベクトル類型を構成する複数の特徴値類型をディスプレイし、前記プレビュー情報をディスプレイするディスブレイ部を含み、
前記コンテンツから内容基盤の特徴を示す互いに異なる複数の特徴ベクトルを抽出する特徴ベクトル抽出部をさらに含み、
前記特徴ベクトル抽出部は、前記抽出された特徴ベクトル毎に前記特徴ベクトルを構成する特徴値のダイナミックレンジを均一化し、
前記ディスプレイ部は、前記プレビュー情報がイメージを含む場合、当該イメージをプレビュー情報に含んで表示する、コンテンツ検索装置。
【請求項11】
前記特徴ベクトル抽出部は、前記特徴値の標準偏差を正規化して、前記ダイナミックレンジを均一化する、請求項10に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項12】
前記基準特徴値類型が変更された場合、
前記整列部は、前記変更された基準特徴値類型に応じて前記プレビュー情報の配列順序を再決定し、
前記プレビュー情報提供部は、前記再決定された配列順序に応じて前記プレビュー情報を提供する、請求項10に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項13】
前記基準特徴ベクトル類型が変更された場合、
前記制御部は、前記変更された基準特徴ベクトル類型を構成する複数の特徴値類型を提供し、前記変更された基準特徴ベクトル類型を構成する複数の特徴値類型のうち基準特徴値類型を再選択して、
前記整列部は、前記再選択された基準特徴値類型に応じて前記プレビュー情報の配列順序を再決定し、
前記プレビュー情報提供部は、前記再決定された配列順序に応じて前記プレビュー情報を提供する、請求項10に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項14】
前記制御部は、基準プレビュー情報の前記変更された基準特徴ベクトル類型に含まれる特徴値類型のうち最も高い数値を有する特徴値を示す基準特徴値類型を前記基準特徴値類型として選択する、請求項13に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記配列順序が変更されても、前記プレビュー情報のうち選択された基準プレビュー情報を維持させる、請求項10に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記提供されるプレビュー情報が1次元の配列で表示されるように制御する、請求項10に記載のコンテンツ検索装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記プレビュー情報の検索位置に関する情報を提供する、請求項10に記載のコンテンツ検索装置。」


3.先行技術

(1)引用文献
本願の出願前であるとともに上記優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶査定の理由である上記平成21年9月17日付けの拒絶理由通知において引用された、下記引用文献には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)


<引用文献1>
特開2003-6227号公報(平成15年1月10日出願公開)

<引用文献記載事項1-1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 任意数の検索対象から、二以上の該検索対象を検索表示するための情報検索方法であって、上記各検索対象はデータベースに蓄積され、該検索対象は、該検索対象の名称などを含む説明事項と、二以上の特徴量を具備し、任意の二以上の特徴量をそれぞれ軸とした座標空間に、各検索情報の具備する特徴量と一致する位置に該検索情報の該説明事項を配列した抽出画面を作成し、抽出画面を表示させるとともに該説明事項を選択させることで、選択された該説明事項を含む検索対象を選択したものとみなし、上記軸となる上記特徴量の種類、範囲、及び間隔は常時変更が可能であり、それぞれの変更が生じたと同時に、再配列及び表示を行うことを特徴とする情報検索方法。」

<引用文献記載事項1-2>
「【0022】座標配列情報表示画面601は、情報配列基準入力・表示画面部分621と、衣装情報配列表示画面部分631と、全体マップ生成・表示画面部分641と、選択候補情報一覧表示画面部分651を具備する。情報配列基準入力・表示画面部分621は図1の実現例における、座標横軸における特徴量の扱いを偏差値で行うかどうかを指示するチェックボックス20、座標横軸における情報表示領域枠の特徴量の中心値21、座標横軸における各情報表示領域枠の特徴量の値の幅22、座標横軸における配列の基準となる特徴量の種類23、座標空間全体のうち横方向のどの範囲を画面に表示するかを指示するスクロールバー24および座標縦軸における特徴量の扱いを偏差値で行うかどうかを指示するチェックボックス30、座標縦軸における情報表示領域枠の特徴量の中心値31、座標縦軸における各情報表示領域枠の特徴量の値の幅32、座標縦軸における配列の基準となる特徴量の種類33、座標空間全体のうち縦方向のどの範囲を画面に表示するかを指示するスクロールバー34の画面要素により構成される部分に相当し、情報を配列する座標の基準となる特徴量、情報の配置間隔などを設定するほか、座標全体における画面の表示域の設定、および各設定値の表示を行う画面部分である。20から24と、30から34は情報表示領域枠群にどの情報を配置するかを決定する、各座標軸の特徴量についての設定を行う項目群である。20から24は横軸に対応する特徴量についての設定を行い、30から34は縦軸に対応する特徴量についての設定を行う。24および34は座標空間全体中のどの範囲を表示するかを各軸について指定し、かつ表示するスクロールバーである。23および33は各軸がどの種の特徴量に対応しているかを設定するコンボボックスであり、選択されている特徴量を変更すると情報表示領域枠群への情報配置が新たな特徴量を基準としたものに再配置され、同時に画面上の情報表示状況も変更される。22および32は各情報表示領域枠に存在しえる情報の各特徴量における値の幅を指定および表示するリストボックス(選択式画面項目)であり、右端にある上向きの黒三角が示されたボタンおよび下向きの黒三角ボタンをクリックすることにより、値範囲の増減を指定することができる。この値が大きいと一つの情報表示領域枠に対応する特徴量の範囲が大きくなることで多くの情報が配置される傾向が大きくなり、また小さいと一つの情報表示領域枠が対応する特徴量の範囲が小さくなることで多くの情報が配置される傾向は小さくなるが広大な範囲に情報が分散して配置される傾向が大きくなる。21および31は画面に表示される情報表示領域枠群の中央に位置する行もしくは列に存する情報の特徴量の値の始値を指定および表示するリストボックスであり、この値を変更することで情報表示領域枠群に配置される情報も変更再配置される。実際に中央の行もしくは列に配置される情報は21および31で指定された値を始値として、そこから22および32で指定された値を足した値未満までの範囲に各軸に対応する特徴量がおさまるものということになる。20および30は情報配置において各軸に対応する特徴量の値そのものによって座標位置を決定するか、もしくは各特徴量の偏差値によって座標位置を決定するか指定、表示するチェックボックスである。」

<引用文献記載事項1-3>
「【0023】衣装情報配列表示画面部分631は図1の実現例における情報表示領域枠1、情報表示領域枠内の文字情報表示2、情報表示領域枠内の画像情報表示3、仮選択した情報に付加される模様つき枠の例4、仮選択した情報に付加される模様つき枠の例5、1つの情報表示領域枠に複数の情報が配置された際表示される表示情報切り替えスイッチボタン6、情報表示領域枠を何行および何列に並べ画面に表示するかを指示選択するコンボボックス12、縦の座標軸、同時に横の座標軸の中心位置とその特徴量の値を示す項目13、情報表示領域枠群の中央の情報表示領域枠16の画面要素により構成される部分に相当し、衣装情報を621で設定した基準に応じて配列表示する画面部分である。情報表示領域枠1は、候補表示生成手段531にて生成された候補表示画面を表示するための領域であり、ある一定の特徴量範囲を持った情報が0件もしくは1件もしくは複数件配置され、配置が1件以上である場合には表示される。この画面例では同様の情報表示領域枠が五行×五列の計二十五領域表示されている。文字情報表示部2は、各情報表示領域枠内の文字情報表示部であり、ここに表示される文字情報は情報表示領域枠に対応する座標域に配置された情報のうちの一つがもつ情報の一部もしくは全部であり、一部である場合どの文字情報を表示するかの設定は別途可能とする。3は各情報表示領域枠内の画像表示部であり、ここに表示される画像は情報表示領域枠に対応する座標域に配置された情報のうちの一つがもつ情報のうち一部もしくは全部の画像情報の、原寸もしくは縮小画像である。ある情報表示領域枠内にある時点で表示されている文字情報と画像情報は同一の情報についてのものである。6は画像切り替えスイッチであり、これが表示された情報表示領域枠には複数件の情報が配置され、現在表示されている情報はそのうちの一つであることを示しており、スイッチを操作することによって別の情報へ表示を切り替えることができる。13は座標の縦軸であり、また座標横軸の中心位置と値も示す。この例では座標横軸の中心は“50”という値であることを示している。12はこの画面に表示する情報表示領域枠の配置行数および配置列数を指定および表示するコンボボックス(選択式画面項目)であり、先に説明したとおり情報表示領域枠が現在五行×五列の計二十五領域表示されているのはこのコンボボックスの設定によっている。12のコンボボックス右端にある下向きの黒い三角形が示されたボタンをマウスカーソルによりクリックすると図2のように項目下部にこの項目に設定しえる選択肢が表示され、この状態からマウスカーソルにて適切な選択肢をクリックすると、1の画面情報表示領域枠の数量および配列が変更される。」


<引用文献2>
椎谷 秀一、他4名,「画像の色特徴を用いた商品検索サービス」,情報処理学会研究報告 2002-GN-42,社団法人情報処理学会,平成14年1月24日,第2002巻 第6号,p37?42

<引用文献記載事項2-1>
「3.2 画像からの代表色自動抽出
衣類や花といった商品を購入する場合には,あらかじめ欲しい商品の色が決まっている場合が多く,色を表すキーワードで商品検索を行うことのメリットは大きい.
しかし,商品の説明テキストの中に必ずしも色に関する記述があるとは限らない.また,たとえ色に関する記述があったとしても,主観性を完全に排除することは難しく,データを入力する人とユーザとの間の色認知に関する主観の差が大きい場合には,ユーザの欲しい情報と検索結果との間にズレが生じてしまう.
我々は以上のような問題点を解決するために,商品画像から商品に使われている代表的な色(代表色)を自動的に抽出し,この代表色情報を利用して検索を行う手法を提案する.
代表色を抽出するには商品画像から背景部分を除去し,残った商品部分に多く使われている色を計算する.これにより,背景の色や商品のワンポイントで使われている色の影響を削除でき,商品を配置するのに適した情報が得られる.
代表色の抽出処理は,背景除去と代表色抽出の2ステップからなる.
背景除去は,商品画像から背景領域を除去し,商品が写っている領域(物体領域)を抽出する処理である.
まず,画像の各水平ラインにおいて,隣り合う画素間の画素値の差を計算する.この画素値の差の最大値が閾値以上の場合,その部分が商品と背景との境と考える(図3).このとき,商品画像では中央になるべく大きく商品が写るように撮影されている場合が多いことを考えて,中心からの距離に応じて画素値の差に重み付けを行う.同じ処理を各垂直ラインでも行い,それぞれで背景として抽出された領域をマージしたものを背景領域とする.
代表色抽出は,物体領域内に多く利用されている色を抽出する処理である.
HSI(色相・彩度・明度)色空間を複数の部分色空間に分割し,物体画像の各画素をその画素値に対応した部分色空間に割り振る.部分色空間に含まれる画素の数が一定数以上ある場合,その部分色空間に含まれる画素の色の平均を代表色とする.このとき,画素数が一定数以上の部分色空間が複数ある場合には,それらすべてを代表色とする.したがって,複数の商品が写っていたりストライプ模様などの商品が写っていたりする場合には複数の代表色が存在する(図4(A)).また,複雑な柄物などの色が明確に特定できない商品では代表色が存在しない場合もある(図4(B)).」(39頁右欄本文下から13行目?40頁右欄本文2行目)

<引用文献記載事項2-2>
「画面の右下には,商品の並べ替えを行うためのボタンが用意されている.「商品情報」タグにある商品名・価格・取扱い店舗・メーカーの各ボタンでそれぞれ商品名順,価格順(昇順),取扱い店舗名順,メーカー名順に変更される.また,「カラー」のタグを選択すると,商品が色順で配置される.
商品は代表色によって前述した「赤・茶・黄・緑・青・紫・白・黒・その他」の9個の色カテゴリに分類される.商品の色順配置では各色カテゴリが順に並んでおり,各色カテゴリの位置に色ボタンによってジャンプできる.青い商品が欲しいのであれば,青ボタンを押すことで青カテゴリの商品位置にアクセスできる.図5は「バラ」で検索した結果を色順で配置し,赤ボタンを押して赤いバラを表示させている画面である.」(41頁左欄下から7行目?同頁右欄本文9行目)


(2)参考文献記載事項
本願の出願前であるとともに上記優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記参考文献には、下記参考文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<参考文献1>
特開平11-175535号公報(平成11年7月2日出願公開)

<参考文献記載事項1-1>
「【0011】図1は本実施例のグラッフィック・ユーザー・インターフェイス(以下、GUIと略称する)を示した模式図である。図の例は、画像から多次元色特徴量(RGB)と多次元微分特徴量(Diff)を抽出し、参照画像あるいは例示画像あるいは検索結果の画像について各特徴量で主成分分析を行い、その最大固有値を持つ固有ベクトルから順に4つまでを選択可能にしたものである。」

<参考文献記載事項1-2>
「【0012】ブラウジング表示画面102のX軸として、X軸特徴量選択ボタン111により多次元色特徴量(RGB)を選択し、X軸主成分選択ボタン112により、その第一主成分が選択されている状態を示すものである。Y軸も同様にしてY軸特徴量選択ボタン110とY軸主成分選択ボタン109により多次元微分特徴量(Diff)の第一主成分が選択されている。図では、選択されているボタンにドットが付されてこの状態を示しているが、この表示は多くのパソコンで行われているボタン表示とするのが見やすい。」



第2.平成22年6月15日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年6月15日付けの手続補正を却下する。


[理由]
1.本件補正の内容
平成22年6月15日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、特許請求の範囲について、上記第1.2.(1)記載の特許請求の範囲から、上記第1.2.(2)記載の特許請求の範囲に補正しようとするものであり、形式的には以下の補正事項よりなるものととらえることができる。

<本件補正後の請求項1に係る補正事項1>
請求項1の
「検索対象のコンテンツから抽出された特徴ベクトルから類型された複数の特徴ベクトル類型と、前記複数の特徴ベクトル類型毎にさらに類型された複数の特徴値類型と、をディスプレイ部に表示するステップ」を
「検索対象のコンテンツから抽出された複数の特徴ベクトル類型と、前記複数の特徴ベクトル類型から選択された基準特徴ベクトル類型を構成する複数の特徴値類型と、をディスプレイ部に表示するステップ」
に変更する補正。

<本件補正後の請求項1に係る補正事項2>
請求項1に「前記抽出された特徴ベクトル毎に前記特徴ベクトルを構成する特徴値のダイナミックレンジを均一化するステップと、」との記載を追加する補正。

<本件補正後の請求項1に係る補正事項3>
請求項1の
「前記ディスプレイ部に表示され、前記複数の特徴ベクトル類型と前記複数の特徴値類型の中から、選択された基準特徴値類型を取得するステップ」との記載における「取得」を「提供」に変更する補正。

<本件補正後の請求項1に係る補正事項4>
請求項1の
「選択された基準特徴値類型に応じて、当該基準特徴値類型に類型された特徴ベクトルとマッピングされた少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定するステップ」との記載における「選択された基準特徴値類型」を
「前記複数の特徴値類型のうち選択された基準特徴値類型」に
変更する補正。

<本件補正後の請求項1に係る補正事項5>
請求項1の
「選択された基準特徴値類型に応じて、当該基準特徴値類型に類型された特徴ベクトルとマッピングされた少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定するステップ」との記載における「当該基準特徴値類型に類型された特徴ベクトル」を
「当該基準特徴ベクトル」に
変更する補正。

<本件補正後の請求項3に係る補正事項>
本件補正前の請求項4の「請求項3に記載のコンテンツ検索方法。」との記載を「請求項1に記載のコンテンツ検索方法。」と変更したものを本件補正後の請求項3とする補正。

<本件補正後の請求項4?9に係る補正事項>
補正前の請求項5?10と同じ記載を、それぞれ本件補正後の請求項4?9に記載する補正。

<本件補正後の請求項10に係る補正事項>
本件補正前の請求項11に「前記コンテンツから内容基盤の特徴を示す互いに異なる複数の特徴ベクトルを抽出する特徴ベクトル抽出部をさらに含み、」「前記特徴ベクトル抽出部は、前記抽出された特徴ベクトル毎に前記特徴ベクトルを構成する特徴値のダイナミックレンジを均一化し、」との記載を追加し、本件補正後の請求項10とする補正。

<本件補正後の請求項11に係る補正事項>
本件補正前の請求項14の「請求項13に記載のコンテンツ検索装置。」との記載を「請求項10に記載のコンテンツ検索装置。」と変更したものを本件補正後の請求項11とする補正。

<本件補正後の請求項12?17に係る補正事項>
本件補正前の請求項15?20の「請求項11に記載のコンテンツ検索装置。」との記載を「請求項10に記載のコンテンツ検索装置。」と変更したものを本件補正後の請求項12?17とする補正。

<本件補正前の請求項を削除する補正事項>
本件補正前の請求項18?20を削除する補正。


2.新規事項追加禁止要件について

上記本件補正後の請求項1に係る補正事項1について検討するに、該補正事項によって、本件補正後の請求項1に記載されることとなった「検索対象のコンテンツから抽出された複数の特徴ベクトル類型」という発明を特定するための事項(以下「発明特定事項」と記す。)、換言すれば「複数の特徴ベクトル類型」が「検索対象のコンテンツから抽出され」るという技術的事項は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」と記す。)には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。
なお、「コンテンツ」と「特徴ベクトル類型」の関係に関連する記載としては、当初明細書等の段落【0029】に、「第1ディスプレイ領域210に表示される特徴ベクトルリストは、特徴ベクトル抽出部120がコンテンツから抽出する特徴ベクトルの種類(以下、特徴ベクトル類型という)を並べたものであって、・・・」と、同段落【0043】に「ここで、特徴ベクトルリストは、特徴ベクトル抽出部120がコンテンツから抽出する特徴ベクトルの種類を示し・・・・」とあり、ここでの「特徴ベクトル抽出部120がコンテンツから抽出する」との修飾節は、文法上は「特徴ベクトル」のみを修飾するとの解釈と「特徴ベクトルの種類」を修飾するとの解釈の双方の解釈が可能ではある。
しかしながら、当初明細書等の他の箇所の記載(例えば、段落【0016】の「特徴ベクトル抽出部120は、コンテンツ格納部110に格納されたコンテンツから特徴ベクトルを抽出する。」、段落【0021】の「特徴ベクトル管理部130は、特徴ベクトル抽出部120が抽出した特徴ベクトルを格納して管理する。」、段落【0040】の「新しいコンテンツが格納部110に格納されれば(S310)、特徴ベクトル抽出部120は格納されたコンテンツを分析して特徴ベクトルを抽出する(S320)。」等の記載)や当該技術分野における技術常識を考慮すれば、「特徴ベクトル抽出部」が抽出するのは「特徴ベクトル」であって「特徴ベクトルの類型」でないことは明らかであるから、上記修飾節が「特徴ベクトルの類型」を修飾するとの解釈は妥当でない。
また、他に「特徴ベクトル類型」を「検索対象のコンテンツから抽出」することを示唆する記載は見当たらない。
したがって、「特徴ベクトル類型」を「検索対象のコンテンツから抽出」するという技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても、到底導き出し得るものではなく、本件補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてするものではない。

よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。


3.目的要件について
本件補正は、審判の請求と同時にする補正と認められ、上記第1.2(2)のとおり特許請求の範囲についてする補正であるから、以下に、本件補正における特許請求の範囲についてする補正の目的について検討する。


3-1.本件補正後の請求項1に係る補正について

(1)本件補正後の請求項1に係る補正事項1に関する検討
ア.原審拒絶査定の備考において
『2.特許法第36条第6項第2号
[請求項1-10について]
請求項1に記載された「類型された」に対応する具体的な状況あるいは情報処理が明らかでない。すなわち、「類型」は「一定種類に属する多数の個別形式を包摂する形式。」(広辞苑第五版)などを意味する名詞であって、その動詞形「類型する」は通常使用されていないから、「類型する(される)」ことがどのような動作を表現しているのか明らかでない。
したがって、請求項1-10に係る発明は、依然として、明確でない。』
との拒絶理由が指摘されている。

イ.また、本件審判請求書の【請求の理由】「3.本願発明が特許されるべき理由 」「(1)補正の内容、根拠」「<1>補正後の請求項1」の『「類型された」なる記載、また当該記載に対応する具体的な状況あるいは情報処理が明らかでないとされる指摘に対し、この点明確にすべく、請求項1において適宜補正を行いました。』と説明されている

ウ.上記ア.、イ.等を考慮すれば、上記本件補正後の請求項1に係る補正事項1は、原審の拒絶査定で指摘された拒絶理由を回避するために、特許請求の範囲の記載を明確にすることを意図してなされた補正と認められる。

エ.したがって、上記本件補正後の請求項1に係る補正事項1を検討する限りにおいては、本件補正後の請求項1に係る補正は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明瞭でない記載の釈明(以下、単に「不明瞭な記載の釈明」と記す。)を目的とするものと認められる。


(2)本件補正後の請求項1に係る補正事項2に関する検討

ア.本件補正後の請求項1に係る補正事項2によって、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明が備えていなかった「前記抽出された特徴ベクトル毎に前記特徴ベクトルを構成する特徴値のダイナミックレンジを均一化するステップ」を有するものとなる。

イ.該補正事項に関して、請求人は審判請求書の【請求の理由】「3.本願発明が特許されるべき理由 」「(1)補正の内容、根拠」「<1>補正後の請求項1」において『「前記抽出された特徴ベクトル毎に前記特徴ベクトルを構成する特徴値のダイナミックレンジを均一化するステップと、」との補正は、補正前の請求項3の内容に限定したものです。』と説明している。

ウ.そこでまず、本件補正後の請求項1に係る発明を本件補正前の請求項3に係る発明に対応するものと仮定して、その補正の目的を検討するに、本件補正前の請求項3に係る発明は、「前記抽出された特徴ベクトル毎に前記特徴ベクトルを構成する特徴値のダイナミックレンジを均一化するステップ」を有するものの、該請求項3は同請求項2を引用するものである。
そして、本件補正後の請求項1に係る発明には、本件補正前の請求項2に記載の「前記検索対象のコンテンツから内容基盤の特徴を示す互いに異なる複数の前記特徴ベクトルを抽出するステップをさらに含み、前記複数の特徴ベクトル類型は各々前記互いに異なる複数の特徴ベクトルを示す」との発明特定事項に対応する発明特定事項を有していない。
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明を本件補正前の請求項3に係る発明に対応するものと仮定すると、本件補正後の請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項3から、本件補正前の請求項2に記載の発明特定事項を削除すると言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とするものとなる。

エ.次に本件補正後の請求項1に係る発明を本件補正前の請求項1に係る発明に対応するものと仮定して、その目的を検討するに、当該「ダイナミックレンジを均一化するステップ」を追加する補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の範囲を減縮するものではあるものの、当該ステップに対応する発明特定事項は本件補正前の請求項1には見当たらない。
したがって、これは本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの(以下、単に「限定的減縮」と記す。)に該当しない。
また、これが請求項の削除にも、誤記の訂正にも、不明瞭な記載の釈明にも該当しないことは明らかである。
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明を本件補正前の請求項1に係る発明に対応するものと仮定しても、本件補正後の請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項をも目的とするものとなる。

オ.本件補正後の請求項1に係る発明を本件補正前の請求項2、4?10に係る発明に対応するものと仮定すると、本件補正後の請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項2、4?10に係る発明に、上記「ダイナミックレンジを均一化するステップ」を追加すると共に、本件補正前の請求項2、4?10に記載の発明特定事項を削除すると言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項をも目的とするものとなる。

カ.なお、本件補正後の請求項1に係る発明を本件補正前の請求項11?20に係る発明に対応するものと仮定すると、本件補正後の請求項1に係る補正は発明のカテゴリーの変更(「コンテンツ検索装置」と言う物の発明から「コンテンツ検索方法」と言う方法の発明への変更)と言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とするものとなる。

キ.よって、本件補正後の請求項1に係る補正事項2を含む本件補正後の請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項をも目的とするものである。


(3)本件補正後の請求項1に係る補正事項3に関する検討

ア.上記本件補正後の請求項1に係る補正事項3は「取得」を「提供」に変更する補正であるから、これが請求項の削除に該当しないことは明らかである。

イ.「提供」は「取得」の下位概念に該当するものではないので、上記本件補正後の請求項1に係る補正事項3は限定的減縮に該当しないことも明らかである。

ウ.本件補正前の「取得」なる用語は当該分野において通常用いられている用語であり、その字句どおりの「取得」を意味するものと解釈しても特段の支障はないので、これを明らかな字句・語句の誤りと認めることはできず、上記本件補正後の請求項1に係る補正事項3は誤記の訂正にも該当しない。

エ.本件補正前の「取得」との記載が、他の記載との関連において不合理を生じている等、その本来の意味が字句どおりの「取得」を意味するものではないとする理由は見当たらず、しかも、該「取得」なる記載に関して、これが明瞭でない記載である事に起因する拒絶理由が通知されているわけでもない。したがって、上記本件補正後の請求項1に係る補正事項3は不明瞭な記載の釈明にも該当しない。

オ.よって、上記本件補正後の請求項1に係る補正事項3からみても、本件補正後の請求項1に係る補正は特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項をも目的とするものであると言える。


(4)本件補正後の請求項1に係る補正事項4に関する検討

ア.上記本件補正後の請求項1に係る補正事項4は、本件補正前の請求項1に記載の発明特定事項である「選択された基準特徴値類型」に「前記複数の特徴値類型のうち」なる限定を付して下位概念化し、しかもこれによって格別利用分野や課題が変更されるものではない。

イ.したがって、上記本件補正後の請求項1に係る補正事項4のみを検討する限りにおいては、本件補正後の請求項1に係る補正は、限定的減縮を目的とするものと言える。


(5)本件補正後の請求項1に係る補正事項5に関する検討
上記(1)の本件補正後の請求項1に係る補正事項1に関する検討と同様に、上記本件補正後の請求項1に係る補正事項5を検討する限りにおいては、本件補正後の請求項1に係る補正は、不明瞭な記載の釈明を目的とするものと言える。


3-2.本件補正後の請求項3に係る補正について

(1)上記本件補正後の請求項3に係る補正事項によって本件補正後の請求項3には、本件補正後の請求項1に係る発明に本件補正前の請求項4記載の限定と同様の限定がなされた発明が記載されることとなる。

(2)本件補正前の請求項4は本件補正前の請求項3を引用する従属請求項であるところ、該本件補正前の請求項3は本件補正前の請求項2を引用する従属請求項であるから、本件補正後の請求項3に係る発明を本件補正前の請求項4に係る発明に対応するものと仮定すると、本件補正後の請求項3に係る補正は、本件補正前の請求項4に係る発明から、本件補正前の請求項2に記載の発明特定事項を削除すると言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項をも目的とすることとなる。

(3)また、本件補正前の請求項1?3、5?9は、本件補正後の請求項3に記載の発明特定事項である「前記均一化するステップは、前記特徴値の標準偏差を正規化するステップを含む」との事項に対応する発明特定事項を有しておらず、本件補正前の請求項1?3、5?9に係る発明を本件補正後の請求項3に係る発明に対応するものと仮定しても、本件補正後の請求項3に係る補正は、新たな発明特定事項を追加すると言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とするものとなる。

(4)なお、本件補正後の請求項3に係る発明を本件補正前の請求項11?20に係る発明に対応するものと仮定すると、本件補正後の請求項3に係る補正は発明のカテゴリーの変更と言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とするものとなる。

(5)よって、本件補正後の請求項3に係る補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とするものである。


3-3.本件補正後の請求項4?9に係る補正について

(1)上記本件補正後の請求項4?9に係る補正事項によって、本件補正後の請求項4?9には、本件補正後の請求項1に係る発明に、それぞれ本件補正前の請求項5?10に記載の限定と同様の限定がなされた発明が記載されることとなる。

(2)本件補正前の請求項5?10に係る発明を、それぞれ、本件補正後の請求項4?9に係る発明に対応したものと仮定して、本件補正後の請求項4?9に係る補正の目的について検討するに、本件補正前の請求項5?10はいずれも本件補正前の請求項1を直接引用する従属請求項であるから、本件補正前の請求項5?10に係る発明は本件補正前の請求項3に記載の発明特定事項に対応する発明特定事項を有するものではない。
したがって、本件補正前の請求項5?10に係る発明を、それぞれ、本件補正後の請求項4?9に係る発明に対応したものと仮定すると、本件補正後の請求項4?9に係る補正は、本件補正前の請求項5?10に係る発明に、本件補正前の請求項3に記載の発明特定事項を追加すると言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とすることとなる。

(3)また、上記以外のいずれの対応を仮定しても、本件補正後の請求項4?9に係る補正は、発明特定事項の削除や新たな発明特定事項の追加(例えば、本件補正前の請求項6を本件補正後の請求項4に対応したものと仮定すると、本件補正前の請求項6記載の発明特定事項の削除と、本件補正後の請求項4に記載の発明特定事項の追加をすることになる。)あるいは発明のカテゴリーの変更と言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とすることになる。

(4)よって、本件補正後の請求項4?9に係る補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とするものである。


3-4.本件補正後の請求項10に係る補正について

(1)上記本件補正後の請求項10に係る補正事項によって、本件補正後の請求項10には、本件補正前の請求項11に係る発明に、さらに、本件補正前の請求項10に係る発明が備えていなかった「前記コンテンツから内容基盤の特徴を示す互いに異なる複数の特徴ベクトルを抽出する特徴ベクトル抽出部をさらに含み、」「前記特徴ベクトル抽出部は、前記抽出された特徴ベクトル毎に前記特徴ベクトルを構成する特徴値のダイナミックレンジを均一化し、」との発明特定事項を備えた発明が記載されることとなる。

(2)この点に関して、請求人は審判請求書の【請求の理由】「3.本願発明が特許されるべき理由 」「(1)補正の内容、根拠」「<2>補正後の請求項10 」において『「前記コンテンツから内容基盤の特徴を示す互いに異なる複数の特徴ベクトルを抽出する特徴ベクトル抽出部をさらに含み、」、「前記抽出された特徴ベクトル毎に前記特徴ベクトルを構成する特徴値のダイナミックレンジを均一化するステップと、」との補正は、補正前の請求項12、13の内容に限定したものです。』と説明している。

(3)そこでまず、本件補正後の請求項10に係る発明を本件補正前の請求項13に係る発明に対応するものと仮定して、その補正の目的を検討するに、本件補正前の請求項13は、同請求項12を引用する従属請求項であり、同請求項12には「前記コンテンツから内容基盤の特徴を示す互いに異なる複数の特徴ベクトルを抽出する特徴ベクトル抽出部をさらに含み」との発明特定事項の記載があり、さらに同請求項13には「前記特徴ベクトル抽出部は、前記抽出された特徴ベクトル毎に前記特徴ベクトルを構成する特徴値のダイナミックレンジを均一化する」との発明特定事項も記載されている。
しかしながら、本件補正前の請求項12には「前記複数の特徴ベクトル類型は各々前記互いに異なる複数の特徴ベクトルを示す」との発明特定事項も記載されているところ、本件補正後の請求項10に係る発明はこれに対応する発明特定事項を有するものではない。
したがって、本件補正後の請求項10に係る発明を本件補正前の請求項13に係る発明に対応するものと仮定すると、本件補正後の請求項10に係る補正は、本件補正前の請求項13から、本件補正前の請求項12に記載の「前記複数の特徴ベクトル類型は各々前記互いに異なる複数の特徴ベクトルを示す」との限定を削除すると言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とすることになる。

(4)本件補正後の請求項10に係る発明を本件補正前の請求項12に係る発明に対応するものと仮定しても、本件補正後の請求項10に係る補正は、本件補正前の請求項12に係る発明の有する「前記複数の特徴ベクトル類型は各々前記互いに異なる複数の特徴ベクトルを示す」との発明特定事項を削除すると言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない補正事項を含むことになる。

(5)次に本件補正後の請求項10に係る発明を本件補正前の請求項11に係る発明に対応するものと仮定して、その補正の目的を検討するに、本件補正後の請求項10に記載される「特徴ベクトル抽出部」は本件補正前の請求項11には記載されていなかった手段であり、これを追加する補正は特許請求の範囲を減縮するものではあるものの、限定的減縮には該当しないものである。また、これが請求項の削除にも、誤記の訂正にも、明瞭でない記載の釈明にも該当しないことは明らかである。
したがって、本件補正後の請求項10に係る発明を本件補正前の請求項11に係る発明に対応するものと仮定しても、本件補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない補正事項を含むことになる。

(6)本件補正後の請求項10を本件補正前の請求項14?20に対応するものと仮定すると、本件補正後の請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項14?20に記載の発明特定事項を削除すると言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とすることになる。

(7)なお、本件補正後の請求項10に係る発明を本件補正前の請求項1?10に係る発明に対応するものと仮定すると、本件補正後の請求項10に係る補正は発明のカテゴリーの変更と言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項をも目的とするものとなる。

(8)よって、本件補正後の請求項10に係る補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とするものである。


3-5.本件補正後の請求項11に係る補正について

(1)上記本件補正後の請求項11に係る補正事項によって、本件補正後の請求項11には、本件補正後の請求項10に係る発明に、本件補正前の請求項14に記載の限定と同様の限定がなされた発明が記載されることとなる。

(2)まず、本件補正後の請求項11に係る発明を本件補正前の請求項14に係る発明に対応するものと仮定して、その補正の目的を検討するに、本件補正前の請求項14は同請求項13を引用し、同請求項13は同請求項12を引用していたのであるから、本件補正後の請求項11に係る補正は、本件補正前の請求項14に係る発明から本件補正前の請求項12に記載の「前記複数の特徴ベクトル類型は各々前記互いに異なる複数の特徴ベクトルを示す」との発明特定事項を削除すると言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とすることになる。

(3)本件補正後の請求項11に係る発明を本件補正前の請求項12又は13に係る発明に対応するものと仮定しても、本件補正後の請求項11に係る補正は、本件補正前の請求項12又は13に係る発明から「前記複数の特徴ベクトル類型は各々前記互いに異なる複数の特徴ベクトルを示す」との限定を削除すると言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とすることになる。

(4)本件補正後の請求項11に係る発明を本件補正前の請求項11に係る発明に対応するものと仮定しても、本件補正後の請求項11に係る補正は、本件補正前の請求項11に係る発明に「特徴ベクトル抽出部」と言う新たな構成要素を追加すると言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とすることになる。

(5)本件補正後の請求項11に係る発明を本件補正前の請求項15?20に係る発明に対応するものと仮定すると、本件補正後の請求項11に係る補正は、本件補正前の請求項15?20に係る発明から、本件補正前の請求項15?20に記載の限定を削除すると言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とするものとなる。

(6)本件補正後の請求項11に係る発明を本件補正前の請求項1?10に係る発明に対応するものと仮定すると、本件補正後の請求項11にかかる補正は、発明のカテゴリーの変更と言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とするものとなる。

(7)よって、本件補正後の請求項11にかかる補正は特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とするものである。


3-6.本件補正後の請求項12?17に係る補正について

(1)上記本件補正後の請求項12?17に係る補正事項によって、本件補正後の請求項12?17には、本件補正後の請求項10に係る発明に、本件補正前の請求項15?20に記載の限定と同様の限定がなされた発明が記載されることとなる。

(2)本件補正前の請求項15?20はいずれも本件補正前の請求項11を引用する従属請求項であり、本件補正前の請求項15?20に係る発明は本件補正前の請求項13、14に記載の発明特定事項を有するものではない。

(3)したがって、本件補正前の請求項15?20に係る発明を、それぞれ、本件補正後の請求項12?17に係る発明に対応したものと仮定すると、本件補正後の請求項12?17に係る補正は、本件補正後の請求項12?17に係る発明に、新たな発明特定事項(本件補正前の請求項13に記載の発明特定事項の一部及び請求項14に記載の発明特定事項)を追加すると言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とすることになる。

(4)また、上記外のいずれの対応を仮定しても、本件補正後の請求項12?17に係る補正は、発明特定事項の削除や新たな発明特定事項の追加あるいは発明のカテゴリーの変更と言う、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とすることになる。

(5)よって、本件補正後の請求項12?17に係る補正は特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項を目的とするものである。


3-7.本件補正前の請求項の削除について
本件補正後の各請求項と本件補正前の請求項との対応関係に関しては、上記3-1?3-6で適法なものとなる対応関係が見いだせないこと等からみても、上記本件補正前の請求項を削除する補正事項が本件補正前のいずれの請求項を削除することによるものであるのかを明確に特定し得るものではないものの、該補正事項が本件補正前のいずれかの請求項を削除することを意図してなされたものであることは理解できる。
したがって、上記本件補正前の請求項を削除する補正事項のみを検討する限りにおいては、本件補正は特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものと認めることができる。


3-8.小結
以上の本件補正の目的についての検討をまとめると、
上記本件補正前の請求項を削除する補正事項を検討する限りにおいては、本件補正は特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものと認められ、
上記本件補正後の請求項1に係る補正事項4を検討する限りにおいては、本件補正は同条同項第2号の特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものと認められ、
上記本件補正後の請求項1に係る補正事項1、同補正事項5を検討する限りにおいては、本件補正は同条同項第4項の明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものと認められるものの、
他の、補正事項(上記本件補正後の請求項1に係る補正事項2、同補正事項3、本件補正後の請求項3に係る補正事項、本件補正後の請求項4?9に係る補正事項、本件補正後の請求項10に係る補正事項、本件補正後の請求項11に係る補正事項、及び、本件補正後の請求項12?17に係る補正事項)を検討すると、本件補正は特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない事項をも目的とするものである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げられる事項を目的とするものに限られるものではなく、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。


4.独立特許要件について
本件補正は上記2.、3.で述べたとおりのものであるが、本件補正が限定的減縮を目的とするものと仮定して、本件補正後の請求項1、10に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。


4-1.記載要件(特許法第36条)について

4-1-1.サポート要件(特許法第36条第6項第1号)
上記2.で述べたとおり、本件補正後の請求項1に係る補正事項1によって本件補正後の請求項1に記載されることとなる「検索対象のコンテンツから抽出された複数の特徴ベクトル類型」という発明特定事項は、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。
そして、平成21年12月25日付けの手続補正においても、本件補正においても、明細書に対する補正はされていないので、上記「検索対象のコンテンツから抽出された複数の特徴ベクトル類型」という技術的事項は、本件補正後においてもその明細書の発明の詳細な説明には記載されていない。
してみると、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正後の発明の詳細な説明に記載されていないものである。

4-1-2.実施可能要件・委任省令要件(特許法第36条第4項第1号)
上記4-1-1.のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正後の発明の詳細な説明に記載されていないものであるから、本件補正後の発明の詳細な説明は、当業者が本件補正後の請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであると共に、本件補正後の請求項1に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものでもある。

4-1-3.明確性要件(特許法第36条第6項第2号)
上記本件補正後の請求項1に係る補正事項5によって本件補正後の請求項1には「当該基準特徴ベクトル」との記載がなされることとなるが、この記載よりも前に「基準特徴ベクトル」なる記載は無く、この「当該」は何を示しているのか不明なものである。
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は明確なものではない。

4-1-4.小結
以上のとおり、本件補正後の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載は、本件補正後の請求項1に係る発明に関して、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていないものである。


4-2.進歩性(特許法第29条第2項)について

4-2-1.本件補正発明
本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」と記す。)は、上記第1.2(2)において【請求項1】として記載したとおりのものである。

4-2-2.先行技術
本願の出願前であると共に上記優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である上記第1.3.で挙げた引用文献及び参考文献には、それぞれ、上記第1.3.で摘記した引用文献記載事項及び参考文献記載事項が記載されている。


4-2-3.引用発明の認定

(1)引用文献1には上記引用文献記載事項1-1記載のとおりの「任意数の検索対象から、二以上の該検索対象を検索表示するための情報検索方法であって、上記各検索対象はデータベースに蓄積され、該検索対象は、該検索対象の名称などを含む説明事項と、二以上の特徴量を具備し、任意の二以上の特徴量をそれぞれ軸とした座標空間に、各検索情報の具備する特徴量と一致する位置に該検索情報の該説明事項を配列した抽出画面を作成し、抽出画面を表示させるとともに該説明事項を選択させることで、選択された該説明事項を含む検索対象を選択したものとみなし、上記軸となる上記特徴量の種類、範囲、及び間隔は常時変更が可能であり、それぞれの変更が生じたと同時に、再配列及び表示を行うことを特徴とする情報検索方法」が記載されている。

(2)上記引用文献記載事項1-2における「23および33は各軸がどの種の特徴量に対応しているかを設定するコンボボックスであり、選択されている特徴量を変更すると情報表示領域枠群への情報配置が新たな特徴量を基準としたものに再配置され、同時に画面上の情報表示状況も変更される。」との記載等から、「上記特徴量の種類の変更は、各軸がどの種の特徴量に対応しているかを設定するコンボボックスにおいて選択されている特徴量を変更することでなされるもの」であると言える。

(3)上記引用文献記載事項1-3における「3は各情報表示領域枠内の画像表示部であり、ここに表示される画像は情報表示領域枠に対応する座標域に配置された情報のうちの一つがもつ情報のうち一部もしくは全部の画像情報の、原寸もしくは縮小画像である。」との記載から、「上記説明事項は検索対象の情報がもつ情報のうち一部もしくは全部の画像情報の原寸もしくは縮小画像を含むもの」であると言える。

(4)よって、引用文献1には、下記引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「任意数の検索対象から、二以上の該検索対象を検索表示するための情報検索方法であって、上記各検索対象はデータベースに蓄積され、該検索対象は、該検索対象の名称などを含む説明事項と、二以上の特徴量を具備し、任意の二以上の特徴量をそれぞれ軸とした座標空間に、各検索情報の具備する特徴量と一致する位置に該検索情報の該説明事項を配列した抽出画面を作成し、抽出画面を表示させるとともに該説明事項を選択させることで、選択された該説明事項を含む検索対象を選択したものとみなし、上記軸となる上記特徴量の種類、範囲、及び間隔は常時変更が可能であり、それぞれの変更が生じたと同時に、再配列及び表示を行う情報検索方法であって、
上記特徴量の種類の変更は、各軸がどの種の特徴量に対応しているかを設定するコンボボックスにおいて選択されている特徴量を変更することでなされるものであり、
上記説明事項は検索対象の情報がもつ情報のうち一部もしくは全部の画像情報の原寸もしくは縮小画像を含むものである
情報検索方法。」


4-2-4.対比
以下、本件補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明は「情報検索方法」であるところ、該「情報検索」は情報の内容すなわち「コンテンツ」を検索することでもあるから、引用発明も本件補正発明と同様に「コンテンツ検索方法」とも言えるものである。

(2)引用発明における「特徴量の種類」は、本件補正発明における「特徴ベクトル類型」や「特徴値類型」に対応付けられるものであるところ、両者とも「特徴の類型」と言えるものである。
そして、引用発明における「特徴量の種類の変更」は「各軸がどの種の特徴量に対応しているかを設定するコンボボックスにおいて選択されている特徴量を変更することでなされる」のであるから、引用発明においても「複数」の「特徴量の種類」が「コンボボックス」のリストとして表示されることは明らかである。
したがって、引用発明と本件補正発明とは、「複数の特徴の類型をディスプレイ部に表示するステップ」を含んでいる点で共通する。

(3)引用発明においては「特徴量」を「軸」とした表示がなされるのであるから、その「特徴量の種類」は「基準」として用いられるものであるとも言える。また、その「特徴量」は「特徴値」とも言えるも言えるものである。そして、「コンボボックス」はそこにリスト表示された選択肢を選択することで入力を行うためのものであるから、該「コンボボックス」による「特徴量の種類の変更」は「基準特徴値類型を提供する」ことであるとも言える。
してみると、引用発明における「特徴量の種類の変更」は、本件補正発明における「基準特徴値類型を提供するステップ」に対応付けられるものであり、引用発明と本件補正発明とは「前記ディスプレイ部に表示され、前記複数の特徴の類型の中から、選択された基準特徴値類型を提供するステップ」を含む点で共通するといえる。

(4)引用発明においては、その「再配列及び表示」に際しても「任意の二以上の特徴量をそれぞれ軸とした座標空間に、各検索情報の具備する特徴量と一致する位置に該検索情報の該説明事項を配列した抽出画面を作成」することがなされることは明らかであり、これは本件補正発明における「決定するステップ」に対応付けることができ、引用発明と本件補正発明とは「前記複数の特徴の類型のうち選択された基準特徴値類型に応じて、マッピングされた少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定するステップ」を含む点で共通すると言える。

(5)引用発明における「抽出画面を表示させる」ことは、本件補正発明における「表示するステップ」に対応付けられるものであるところ、前者の「抽出画面」は「任意の二以上の特徴量をそれぞれ軸とした座標空間に、各検索情報の具備する特徴量と一致する位置に該検索情報の該説明事項を配列した」ものであるから、引用発明も本件補正発明と同様に「前記配列順序に応じて前記プレビュー情報をディスプレイ部に表示するステップ」を含んでいるといえる。

(6)引用発明における「説明事項」は、本件補正発明における「プレビュー情報」に対応付けられるものであるところ、前者は「検索対象の情報がもつ情報のうち一部もしくは全部の画像情報の原寸もしくは縮小画像を含むもの」であるから、引用発明も本件補正発明と同様に「表示される前記プレビュー情報がイメージを含む場合、当該イメージをプレビュー情報に含んで表示される」ものであると言える。

(7)本件補正後の請求項1における「コンテンツ検索装置が」との主部に対応する述部が何であるのかは、該請求項の記載からは明確ではないが、本願発明の詳細な説明の記載や技術常識などを勘案すれば、これは各ステップの処理主体が「コンテンツ検索装置」であることを表現することを意図したものと理解することができる。
一方、引用発明においても、「抽出画面」の「作成」や「表示」「再配列」等の処理主体は、コンピュータなどによって実現される検索装置であることは明らかであるから、引用発明も本件補正発明と同様に上記各ステップを「コンテンツ検索装置が」行うものであると言える。

(8)よって、本件補正発明は、下記の本件補正発明と引用発明との一致点で引用発明と一致し、下記の本件補正発明と引用発明との相違点で引用発明と相違する。

<本件補正発明と引用発明との一致点>
「コンテンツ検索装置が、
複数の特徴の類型をディスプレイ部に表示するステップと、
前記ディスプレイ部に表示され、前記複数の特徴の類型の中から、選択された基準特徴値類型を提供するステップと、
前記複数の特徴の類型のうち選択された基準特徴値類型に応じて、マッピングされた少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定するステップと、
前記配列順序に応じて前記プレビュー情報をディスプレイ部に表示するステップとを含み、
表示される前記プレビュー情報がイメージを含む場合、当該イメージをプレビュー情報に含んで表示される、コンテンツ検索方法。」

<本件補正発明と引用発明との相違点1>
本件補正発明における「ディスプレイ部に表示するステップ」で表示される複数の類型は、「検索対象のコンテンツから抽出された複数の特徴ベクトル類型と、前記複数の特徴ベクトル類型から選択された基準特徴ベクトル類型を構成する複数の特徴値類型」であり、
同「提供するステップ」で提供される基準特徴値類型は「前記複数の特徴ベクトル類型と前記複数の特徴値類型」の中から選択されたものであり、
同「決定するステップ」で決定される配列順序は前記複数の「特徴値類型」のうち選択された基準特徴値類型に応じたものである。
(これに対し、引用発明における「特徴量の種類」は単に「コンボボックス」で選択されるのみで、本件補正発明の如き「複数の特徴ベクトル類型」を表示し、これから「基準特徴ベクトル類型」を選択し、さらに、該「基準特徴ベクトル類型を構成する複数の特徴値類型」を表示し、これから「基準特徴値類型」を選択すると言う操作はなされない。)

<本件補正発明と引用発明との相違点2>
本件補正発明は「前記抽出された特徴ベクトル毎に前記特徴ベクトルを構成する特徴値のダイナミックレンジを均一化するステップ」を有する。
(これに対し、引用文献1には特徴量のダイナミックレンジの均一化を行う旨の記載は無い。)

<本件補正発明と引用発明との相違点3>
本件補正発明における決定するステップは、「基準特徴ベクトルと」マッピングされた少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定するものである。
(これに対し引用文献1には「基準特徴ベクトル」なるものとマッピングされた少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定する旨の記載はない。)


4-2-5.判断
以下、上記相違点について検討する。

(1)本件補正発明と引用発明との相違点1について
「検索対象のコンテンツから抽出された複数の特徴ベクトル類型」なる事項は上記2.で論じたとおり発明の詳細な説明に記載されておらず、このためその技術的な意味も明確なものではないものの、本件審判請求書の【請求の理由】「3.本願発明が特許されるべき理由 」「(1)補正の内容、根拠」「<1>補正後の請求項1」の『「類型された」なる記載、また当該記載に対応する具体的な状況あるいは情報処理が明らかでないとされる指摘に対し、この点明確にすべく、請求項1において適宜補正を行いました。』との記載や、上記平成21年12月25日付けの意見書の【意見の内容】2、(補正の内容及び根拠)の『請求項1の「検索対象のコンテンツから抽出された特徴ベクトルから類型された複数の特徴ベクトル類型と、前記複数の特徴ベクトル類型毎にさらに類型された複数の特徴値類型と、をディスプレイ部に表示するステップと、」との補正は、段落番号0030-0032、0063-0066等の記載に基づくものです。』との記載等を参酌すると、「複数の特徴ベクトル類型」に対応する「特徴ベクトル」が「検索対象のコンテンツから抽出された」ものである旨を表現しようとしたものと解し得るものである。
しかるに、コンテンツの特徴量をコンテンツから抽出することは、当業者にとっては常套の周知慣用技術にすぎないものである(必要があれば上記引用文献記載事項2-1、参考文献記載事項1-1等参照)。
また、本件補正における「特徴ベクトル」との用語の定義も必ずしも明確なものではないところ、その発明の詳細な説明の記載等を参酌するに、これは複数の成分で表される特徴量、あるいは、複数のカテゴリーに分類できる特徴量を意味するものとして用いられている用語であると解するのが妥当である。
しかるに、コンテンツから抽出される特徴量としては、色のように複数の成分を有する、あるいは、複数のカテゴリーに分類される特徴量があることは当業者の技術常識にほかならないものであり、このような特徴量を選択肢とするのであれば、該特徴量の種類の選択に加えて、その成分やカテゴリーの種類をも選択できるように構成することも、当業者が適宜採用する周知慣用技術にすぎないものである(必要があれば上記引用文献記載事項2-2、参考文献記載事項1-2等参照)。
してみると、引用発明における特徴量として、検索対象のコンテンツから抽出された特徴量であって、「特徴ベクトル」なるものとして表現される特徴量を採用し、コンボボックスによる特徴量の種類の選択操作に加えて、その成分やカテゴリーの種類の選択操作もコンボボックスの如き選択手段で行えるようにすること、すなわち、上記本件補正発明と引用発明との相違点1に係る構成を採用することは、当業者が適宜になし得た設計変更にすぎないものである。

(2)本件補正発明と引用発明との相違点2について
特徴量のダイナミックレンジを均一化する所謂正規化は、証拠を挙げるまでもなく、当業者が当然に採用する周知慣用技術にすぎないものであり、該正規化は抽出された全ての特徴量に対してなされる必要があることも明らかである。
してみると、引用発明における特徴量として、検索対象のコンテンツから抽出された特徴量を採用した場合には、該特徴量毎に特徴量の正規化を行うこと、すなわち、上記本件補正発明と引用発明との相違点2に係る構成を採用することも、当業者が当然に想到する設計事項にすぎないものである。

(3)本件補正発明と引用発明との相違点3について
本件補正発明における「当該基準特徴ベクトルとマッピングされた少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定する」との発明特定事項の意味も明確なものではないところ、平成21年12月25日付けの意見書の【意見の内容】2、(補正の内容及び根拠)の『請求項1の「選択された基準特徴値類型に応じて、当該基準特徴値類型に類型された特徴ベクトルとマッピングされた少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定するステップと、」との補正は、段落番号0045等の記載に基づくものです。』等の記載を参酌すれば、該発明特定事項は本願明細書の段落【0045】に記載される如き「基準特徴値類型に応じてプレビュー情報の配列順序を決定する」こと、及び、「検索された特徴値の大きさ順に各コンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定すること」を表現しようとするために追加された記載であると解することができ、該発明特定事項における「特徴ベクトル」とマッピングされる旨の記載は、この「基準特徴値類型」の「特徴値」が「特徴ベクトル」を構成する特徴値であることを意味すると解することができる。
してみると、上記本件補正発明と引用発明との相違点3は同相違点1に係る構成を採用することにより必然的に採用される事項にすぎないものである。

(4)以上のとおりであるから、本件補正発明の構成は引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、当該構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


4-2-6.本件補正後の請求項10に係る発明について
本件補正後の請求項10に係る発明は、その表現上の相違はあるものの、上記本件補正後の請求項1に係る発明との間に格別な実質的相違点は見当たらず、これも引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


4-3.小結
上記4-1.のとおり、本件補正後の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載は、本件補正後の請求項1に係る発明に関して、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明は、この理由によって特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

上記4-2.のとおり、本件補正後の請求項1及び10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

よって、本件補正が仮に平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的としたものであるとしても、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。


5.むすび
上記2.のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

上記3.のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

上記4.のとおり、本件補正が仮に平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的としたものであるとしても、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。



第3.本件審判請求の成否について

1.手続の経緯、本願発明の認定
本願の手続の経緯は上記第1.1記載のとおりのものであり、さらに、平成22年6月15日付けの手続補正は上記第2.のとおり却下された。
したがって、本願の特許請求の範囲は、上記第1.2(1)に記載した、平成21年12月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載のとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」と記す。)は上記第1.2(1)に【請求項1】として記載したとおりのものである。


2.先行技術・引用発明の認定
本願の出願前であるとともに上記優先日前に頒布又は又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶査定の理由である上記平成21年9月17日付けの拒絶理由通知において引用された文献である、上記第1.3.(1)で挙げた引用文献には、上記第1.3.(1)で摘記した引用文献記載事項が記載されている。
また、本願の出願前であるとともに上記優先日前に頒布又は又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記第1.3.(2)で挙げた参考文献には、上記第1.3.(2)で摘記した参考文献記載事項が記載されている。
そして、上記引用文献1には上記第2.4-2-3.(4)で認定した引用発明が記載されていると認められる。


3.対比
以下、本願発明と引用発明とを比較する。

(1)引用発明と本願発明との比較においても、上記第2.4-2-4.(1)と同様のことが言えるので、引用発明も本願発明と同様に「コンテンツ検索方法」と言えるものである。

(2)引用発明と本願発明との比較においても、上記第2.4-2-4.(2)と同様のことが言えるので、引用発明と本願発明とは「複数の特徴の類型をディスプレイ部に表示するステップ」を含んでいる点で共通する。

(3)上記第2.4-2-4.(3)で述べたように、引用発明における「特徴量の種類の変更」においては「変更」後の「特徴量の種類」が「提供」されるところ、該「提供」された「特徴量の種類」を「取得」する事もなされることは明らかであるから、引用発明と本願発明とは「前記ディスプレイ部に表示され、前記複数の特徴の類型の中から、選択された基準特徴値類型を取得するステップ」を含んでいる点で共通すると言える。

(4)引用発明と本願発明との比較においても、上記第2.4-2-4.(4)と同様のことが言えるので、引用発明と本願発明とは「選択された基準特徴値類型に応じて、マッピングされた少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定するステップ」を含む点で共通すると言える。

(5)引用発明と本願発明との比較においても、上記第2.4-2-4.(5)と同様のことが言えるので、引用発明も本願発明と同様に「前記配列順序に応じて前記プレビュー情報をディスプレイ部に表示するステップ」を含んでいると言える。

(6)引用発明と本願発明との比較においても、上記第2.4-2-4.(6)と同様のことが言えるので、引用発明も本願発明と同様に「表示される前記プレビュー情報がイメージを含む場合、当該イメージをプレビュー情報に含んで表示される」ものであると言える。

(7)引用発明と本願発明との比較においても、上記第2.4-2-4.(7)と同様のことが言えるので、引用発明も本願発明と同様に上記各ステップを「コンテンツ検索装置が」行うものであると言える。

(8)よって、本願発明は、下記一致点で引用発明と一致し、下記相違点を有する点で引用発明と相違する。

<一致点>
「コンテンツ検索装置が、
複数の特徴の類型をディスプレイ部に表示するステップと、
前記ディスプレイ部に表示され、前記複数の特徴の類型の中から、選択された基準特徴値類型を取得するステップと、
選択された基準特徴値類型に応じて、マッピングされた少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定するステップと、
前記配列順序に応じて前記プレビュー情報をディスプレイ部に表示するステップとを含み、
表示される前記プレビュー情報がイメージを含む場合、当該イメージをプレビュー情報に含んで表示される、コンテンツ検索方法。」

<相違点1>
本願発明における「ディスプレイ部に表示するステップ」で表示される類型は、「検索対象のコンテンツから抽出された特徴ベクトルから類型された複数の特徴ベクトル類型と、前記複数の特徴ベクトル類型毎にさらに類型された複数の特徴値類型」であり、
同「取得するステップ」で提供される基準特徴値類型は「前記複数の特徴ベクトル類型と前記複数の特徴値類型」の中から、選択されたものである。

<相違点2>
本願発明における「決定するステップ」における「マッピング」は「当該基準特徴値類型に類型された特徴ベクトル」に対してなされるものである。

4.判断
以下に、上記相違点について検討する
(1)相違点1について
本願発明における「検索対象のコンテンツから抽出された特徴ベクトルから類型された複数の特徴ベクトル類型」との記載の意味は本願特許請求の範囲の記載のみからは明確なものではないものの、上記平成21年12月25日付けの意見書の【意見の内容】2、(補正の内容及び根拠)において、その根拠とされる本願の発明の詳細な説明等を参酌すれば、「複数の特徴ベクトル類型」に対応する「特徴ベクトル」が「検索対象のコンテンツから抽出された」ものである旨を表現しようとしたものと解し得るものである。
また、本願発明における「前記複数の特徴ベクトル類型毎にさらに類型された複数の特徴値類型」との記載の意味も本願特許請求の範囲の記載のみからは明確なものではないものの、その発明の詳細な説明の記載等を参酌するに、これは複数の成分で表される量、あるいは、複数のカテゴリーに分類できる特徴量である「特徴ベクトル」の「類型」を表示・選択し、さらに該「特徴ベクトル」を構成する複数の成分または複数のカテゴリーである「特徴値」の「類型」を表示することを意味すると解するのが妥当である。
してみると、上記相違点1は上記第2.4-2-4.(8)で認定した「本件補正発明と引用発明との相違点1」に比し実質的な差はなく、引用発明においてこれを採用することは、上記第2.4-2-5.(1)で述べたように当業者が適宜になし得た設計変更にすぎないものである。

(2)相違点2について
本願発明における「当該基準特徴値類型に類型された特徴ベクトルとマッピングされた少なくとも1つ以上のコンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定する」との発明特定事項の意味も明確なものではないところ、これも、平成21年12月25日付けの意見書の記載等を参酌すれば、本願明細書の段落【0045】の記載される如き「基準特徴値類型に応じてプレビュー情報の配列順序を決定する」こと、及び、「検索された特徴値の大きさ順に各コンテンツのプレビュー情報の配列順序を決定すること」を表現しようとするために追加された記載であると解することができ、該発明特定事項における「当該基準特徴値類型に類型された特徴ベクトル」とマッピングされる旨の記載は、この「基準特徴値類型」の「特徴値」が「特徴ベクトル」を構成する特徴値であることを意味すると解することができる。
してみると、上記相違点2は上記第2.4-2-4.(8)で認定した「本件補正発明と引用発明との相違点3」に比し実質的な差はなく、引用発明においてこれを採用することは、上記第2.4-2-5.(3)で述べたように上記相違点1に係る構成を採用することにより必然的に採用される事項にすぎない。

(3)以上のとおりであるから、本願発明の構成は引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
また、当該構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本願の請求項11に係る発明は、その表現上の相違はあるものの、上記本願の請求項1に係る発明との間に格別な実質的相違点は見当たらず、これも引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
上記のとおり、本願請求項1、11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願を拒絶すべきものとした原審の拒絶査定は妥当なものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-16 
結審通知日 2012-05-22 
審決日 2012-06-05 
出願番号 特願2007-17564(P2007-17564)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 537- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 536- Z (G06F)
P 1 8・ 571- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 波内 みさ  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石井 茂和
殿川 雅也
発明の名称 コンテンツ検索方法および装置  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  

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