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審決分類 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない D04H
審判 訂正 特36条4項詳細な説明の記載不備 訂正しない D04H
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない D04H
管理番号 1265364
審判番号 訂正2012-390068  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2012-05-29 
確定日 2012-10-29 
事件の表示 特許第4743676号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
以下に、経緯を整理して示す。

平成13年 7月25日 出願(特願2001-224044号)
(特許法第41条に基づく優先日、平成1
2年 8月 3日)
平成23年 5月20日 設定登録(特許第4743676号)
平成23年 9月 1日付け 無効審判請求書
(無効2011-800153号)
平成24年 3月27日付け 無効審判審決
(平成24年 4月 4日発送)
平成24年 5月 2日 知的財産高等裁判所出訴
(平成24年(行ケ)第10164号)
平成24年 5月29日付け 本件訂正審判請求書
平成24年 6月20日付け 手続中止通知書(審判長より)
平成24年 7月11日付け 上申書(手続中止解除の申出)
平成24年 7月19日付け 手続中止解除通知書(審判長より)
平成24年 7月19日付け 訂正拒絶理由通知書
(平成24年 7月23日発送)
平成24年 8月10日付け 意見書
平成24年 8月10日付け 手続補正書(審判請求書の補正)

第2 請求の趣旨
本件審判の請求の要旨は、特許第4743676号発明の明細書を、審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記[訂正事項1]ないし[訂正事項6]のとおり訂正することを求めるものである。

[訂正事項1]
特許請求の範囲の請求項1の「短繊維集合体からなり、前記マトリックス繊維のうち」を、「短繊維集合体からなり、前記短繊維集合体は繊維径の大きい短繊維と繊維径の小さい短繊維を混合したものであり、前記マトリックス繊維のうち」と訂正する。

[訂正事項2]
特許請求の範囲の請求項1の「一方の表面が1mm未満の厚さで膜状化している」を、「一方の表面が、熱的処理および機械的処理を同時に行うことで、1mm未満の厚さで膜状化している」と訂正する。

[訂正事項3]
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

[訂正事項4]
段落【0006】の「短繊維集合体からなり、前記マトリックス繊維のうち」を、「短繊維集合体からなり、前記短繊維集合体は繊維径の大きい短繊維と繊維径の小さい短繊維を混合したものであり、前記マトリックス繊維のうち」と訂正する。

[訂正事項5]
段落【0006】の「一方の表面が1mm未満の厚さで膜状化している」を、「一方の表面が、熱的処理および機械的処理を同時に行うことで、1mm未満の厚さで膜状化している」と訂正する。

[訂正事項6]
段落【0008】の「上記構成において、該繊維集合体における低融点繊維の含量が5?95wt%であることが好ましい。」を削除する。

第3 訂正拒絶の理由
一方、平成24年 7月19日付けで通知した訂正の拒絶の理由の概要は、次のとおりと認める。

「訂正事項2及び5は、以下に述べる理由から、願書に添付した明細書又は図面(以下、「特許明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、訂正事項2及び5を有する本件訂正は、特許法第126条第3項の規定に適合しない。
また、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明」という。)は、以下に述べる理由から、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合しない。

2-1 特許法第126条第3項について
審判請求書の(4-1)(II)(3?4頁)において請求人が訂正事項2に対応すると主張する、特許明細書の段落【0021】の「膜状化させるには、熱的処理によって繊維どうしの結合を強める方法や、機械的処理によって繊維どうしの絡み合いを強める方法がある。また、上記熱的処理および機械的処理を同時に行うことで、より精密な通気量制御が可能となる。」との記載は、「膜状化」させる方法の一例として、「熱的処理」及び「機械的処理」を「同時」に行うことを記載したものにすぎず、「1mm未満」の厚さに膜状化させる方法の一例として記載したものとは認められない。
また、特許明細書の段落【0028】における「上記のような赤外線ヒータ、熱板あるいは熱ローラ等、熱的処理による膜状化の場合、膜状層の厚さは1mm未満となる。」との記載から、特許明細書に「熱的処理による膜状化の場合、膜状層の厚さが1mm未満となる」ことが記載されていると認められるとしても、「熱的処理および機械的処理を同時に行う」ことについて、特許明細書には、段落【0021】以外に記載はないため、特許明細書には「熱的処理および機械的処理を同時に行うことで、1mm未満の厚さで膜状化している」ことが記載されているとは認められず、「熱的処理及び機械的処理を同時」に行えば膜状層の厚さが「1mm未満」となることが技術常識であるとも認められないから、「熱的処理および機械的処理を同時に行うことで、1mm未満の厚さで膜状化している」ことが、特許明細書に記載された事項から自明な事項であるとも認められない。
したがって、訂正事項2は、特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
また、訂正事項5についても、同様の理由により、特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
よって、訂正事項2及び5を有する本件訂正は、特許法第126条第3項の規定に適合しない。

2-2 特許法第126条第5項について
訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1における「一方の表面が、熱的処理および機械的処理を同時に行うことで、1mm未満の厚さで膜状化している」ことについて、訂正明細書には「熱的処理および機械的処理を同時に行うことで、1mm未満の厚さで膜状化」する際の温度、針深度等の処理条件や実施例が何ら記載されておらず、また、熱的処理及び機械的処理を「同時」に行うことが、通常行われていることであるとも認められない。
したがって、訂正明細書は、当業者が訂正発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず、特許法第36条第4項第1号に規定された要件を満たしていない。
よって、訂正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合しない。」

第3 当審の判断
1 特許法第126条第3項について
請求人は、平成24年 8月10日付け意見書(以下、単に「意見書」という。)の3頁11?22行において、次のとおり主張している。

「特許明細書の段落【0021】の記載全体の文脈から明らかなように、『膜状化させるには、熱的処理によって繊維どうしの結合を強める方法や、機械的処理によって繊維どうしの絡み合いを強める方法がある。また、上記熱的処理および機械的処理を同時に行うことで、より精密な通気量制御が可能となる。』との記載は、その直前の『さらに、繊維集合体の積層方向の一方の表面を1mm未満の厚さに膜状化させる。』との記載を受けたものであり、『膜状化させるには、』との文言は『1mm未満の厚さに膜状化させるには』を意味する。
そして、『膜状化させるには、熱的処理によって繊維どうしの結合を強める方法や、機械的処理によって繊維どうしの絡み合いを強める方法がある。また、上記熱的処理および機械的処理を同時に行うことで、より精密な通気量制御が可能となる。』との記載は、『繊維集合体の積層方向の一方の表面を1mm未満の厚さに膜状化する』ための方法を具体的に列挙したものである。」

そこで、特許明細書の記載内容を検討すると、「膜状化」については、特許明細書の段落【0021】?【0029】に、以下のとおり記載されている。

「【0021】
さらに、繊維集合体の積層方向の一方の表面を1mm未満の厚さに膜状化させる。
膜状化させるには、熱的処理によって繊維どうしの結合を強める方法や、機械的処理によって繊維どうしの絡み合いを強める方法がある。また、上記熱的処理および機械的処理を同時に行うことで、より精密な通気量制御が可能となる。
【0022】
繊維集合体の積層方向の一方の表面(断熱材の片面)に薄い膜を形成させることにより、熱が入射してきた場合、表皮に相当する膜部分によって伝熱が遮断される。また表面部分を膜状化させることにより、密度の低い自立しにくい繊維集合体も硬度が増して自立可能となるうえ、曲げ強さや衝撃強さ等の機械的強度も向上する。さらに硬化膜により繊維の絡まりが少なくなり、施工時の鋲打ちが容易になるなどの効果がある。
【0024】
熱的処理の場合、例えばカーディングを行って不織布とした後の工程で、赤外線ヒータの輻射熱による間接的な加熱処理を上下両面から施す。このとき片面の加熱温度をもう一方の片面より高くすることにより、繊維集合体の積層方向の一方の表面を膜状化させることが可能である。
【0025】
また熱板あるいは熱ローラによる接触加熱で、表面を膜状化させることも可能である。この場合、カーディングを行って不織布とした後の工程で、熱板あるいは熱ローラでプレスを行い繊維集合体の積層方向の一方の表面を膜状化させる。
【0026】
赤外線ヒータ等による間接加熱、あるいは熱板等による接触加熱のいずれの場合も、表面を加熱処理して溶融せしめる温度は110?220℃であることが好ましい。この範囲内であると、表面を膜状化させるのに十分であるほか、マトリックス繊維に与える影響も少ない。このためマトリックス繊維のポリマー劣化等が引き起こす物性変化などが抑制され好ましい。
【0027】
さらに本発明の断熱材を巾方向にカッティングする際、カット面に熱板を接触させることで断熱材の積層方向に平行な側面の表面を膜状化させることも可能である。通常、断熱材の切断した側面はそのまま使用されることが多いが、側面にも膜状層を形成させることによって、毛羽が抑制され見栄えのある商品となる。また、側面からの雨水の浸入もしにくくなるため好ましい。
【0028】
上記のような赤外線ヒータ、熱板あるいは熱ローラ等、熱的処理による膜状化の場合、膜状層の厚さは1mm未満となる。この場合、厚さが薄いことにより施工時の鋲打ちがより容易となるため好ましい。
【0029】
機械的処理の場合、繊維集合体をニードリングによって繊維どうしの絡み合いを強める方法により膜状化させても良い。膜状化させることにより、表皮材が不要となり経済的である。」

特許明細書の段落【0021】?【0029】をみると、「1mm未満の厚さに膜状化させる」旨が明記されている箇所は、段落【0021】の冒頭の「さらに、繊維集合体の積層方向の一方の表面を1mm未満の厚さに膜状化させる。」及び段落【0028】の「上記のような赤外線ヒータ、熱板あるいは熱ローラ等、熱的処理による膜状化の場合、膜状層の厚さは1mm未満となる。」の2箇所のみである。
そして、特許明細書の段落【0021】?【0029】において、「1mm未満の厚さに膜状化させる」旨が明記されている箇所が、段落【0021】の冒頭及び段落【0028】の2箇所のみであること、そして、熱的処理についてのみ、段落【0028】において膜状層の厚さが明記されていることを考慮すると、段落【0021】?【0029】には、「熱的処理による膜状化の場合は、膜状層の厚さは1mm未満となる」ことが明記されていると認められるとしても、「熱的処理および機械的処理を同時に行う」ことによる膜状化については、文脈からして、膜状層の厚さについて何ら明記されていないとするのが妥当であると言わざるを得ない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
また、特許明細書には、「熱的処理および機械的処理を同時に行う」ことにより膜状層を形成した実施例がないし、特許明細書全体を考慮しても、「熱的処理および機械的処理を同時に行う」ことで生じる膜状層の厚さが、熱的処理によってのみ定まるものであると解すべき理由もない。
さらに、「熱的処理および機械的処理を同時に行うことで生じる膜状層の厚さは1mm未満となる」ことが技術常識であるとの根拠も、請求人から示されていない。

したがって、特許明細書全体の文脈を考慮すれば、「熱的処理および機械的処理を同時に行うことで生じる膜状層の厚さは1mm未満となる」ことは、特許明細書に記載した事項の範囲内にないと認められる。

なお、段落【0021】における「さらに、繊維集合体の積層方向の一方の表面を1mm未満の厚さに膜状化させる。」との記載は、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)にはなかった記載であって、本件出願の審査段階において、当初明細書の段落【0020】及び段落【0028】の記載を根拠として、平成22年12月 3日付け手続補正により追加されたものである。したがって、請求人が主張するような、「特許明細書の段落【0021】における『膜状化させるには、・・・より精密な通気量制御が可能となる。』との記載が、その前の『さらに、繊維集合体の積層方向の一方の表面を1mm未満の厚さに膜状化させる。』との記載を受けたものであり、『膜状化させるには、』との文言は『1mm未満の厚さに膜状化させるには』を意味する」という解釈は、当初明細書における段落【0021】の記載からみても、当初明細書に記載した事項の範囲内であるとはいえないし、上記手続補正が認められたことからも、段落【0021】の記載は請求人の上記主張のとおりに解すべきものではない。
仮に、当該補正後の段落【0021】の記載を、請求人の上記主張のとおりに解すべきならば、段落【0021】に「さらに、繊維集合体の積層方向の一方の表面を1mm未満の厚さに膜状化させる。」との記載を追加する補正は、当初明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとなるから、当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではないというべきものであり、本件特許は特許法第123条第1項第1号の無効理由を内在するものとなる。

以上のとおり、訂正事項2は、特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
また、訂正事項5についても、同様の理由により、特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
よって、訂正事項2及び5を有する本件訂正は、特許法第126条第3項の規定に適合しない。

2 特許法第126条第5項について
請求人は、意見書の4頁下から4行?6頁4行において、次のとおり主張している。

「特許明細書の段落【0021】において、『繊維集合体の一方の表面を1mm未満の厚さに膜状化する』方法として、『熱的処理および機械的処理を同時に行う』方法が挙げられ、そして、この方法によれば『より精密な通気量制御が可能となる』点を明示している。
ところで、熱的処理による1mm未満の厚さの膜状化は、『繊維を混綿し、カーディングを行ってウェブを作製した後、赤外線ヒータの輻射熱による間接的な加熱処理を両面より施し、特に片面の加熱温度をもう一方の片面より高くすることにより片側表面を膜状化』(特許明細書の実施例2?5)することによって行い、機械的処理による1mm未満の厚さの膜状化は『繊維を混綿し、カーディングを行ってウェブを作製した後、ニードルパンチを片面から施すことにより片側表面を膜状化』(特許明細書の実施例6)することによって行う。
そして、赤外線ヒータおよびニードルパンチ機の構造及び動作に鑑み、熱的処理と機械的処理を『同時』に行う場合、製造ラインに沿って赤外線ヒータとニードルパンチ機を隣接配置する構成に想到することは、当業者にとって極めて自然かつ自明なことである。
こうして、熱的処理および機械的処理を同時に行うことによる1mm未満の厚さの膜状化は、『繊維を混綿し、カーディングを行ってウェブを作製した後、赤外線ヒータの輻射熱による間接的な加熱処理を両面より施し、特に一方の片面の加熱温度を他方の片面より高くすることにより行い、その隣接する下流側において、ニードルパンチを該一方の片面に施すことにより片側表面を膜状化』することによってなし得ることは、当業者に容易に理解され得る。また、この同時処理の場合、特許明細書中において特記されてない以上、当業者は、加熱処理の際の加熱温度および機械的処理の針深度等の処理条件が、加熱処理のみの実施例および機械的処理のみの実施例と同一であると解するのが妥当である。
すなわち、熱的処理および機械的処理を同時に行うことで繊維集合体の一方の表面を1mm未満の厚さで膜状化する実施例が、特許明細書中に記載されていないのは紛れもない事実であるが、『熱的処理および機械的処理を同時に行うことで繊維集合体の一方の表面を1mm未満の厚さで膜状化すること』は、熱的処理のみの実施例と機械的処理のみの実施例を組み合わせるだけで実施可能であり、よって、熱的処理および機械的処理を同時に行う実施例が特許明細書に記載されていないからといって、『訂正明細書は、当業者が訂正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない』と判断されるのは、発明保護の観点からして、いささか特許権者に酷にすぎると解する。」

そこで、訂正明細書の記載内容を検討すると、上記「1」で述べたとおり、段落【0021】における「熱的処理及び機械的処理を同時に行う」ことが、「繊維集合体の積層方向の一方を1mm未満の厚さに膜状化させる」方法の一つとして挙げられているとは認められないので、以下で、訂正明細書における「熱的処理」と「機械的処理」の記載が、それを「同時」に行うことで「繊維集合体の積層方向の一方を1mm未満の厚さに膜状化させる」ことができる程度に明確かつ十分に記載したものであるか否かについて検討する。

訂正明細書における「機械的処理」についての記載について検討すると、上記「1」で述べたとおり、段落【0021】における「膜状化させるには、」との文言が「1mm未満の厚さに膜状化させるには」を意味するとは認められないため、段落【0021】の記載からは、訂正明細書に記載された「機械的処理」による方法が「繊維集合体の一方の表面を1mm未満の厚さで膜状化」する方法の一つであるとは認められない。
また、段落【0029】には、「機械的処理」として「ニードリング」が例示されているが、その処理条件(針深度等)や実現できる膜状層の厚さ等については何ら記載がなく、機械的処理の一つである「ニードルパンチ」により一方の表面を膜状化した実施例である実施例6についても、その処理条件、膜状層の厚さ等は不明であるし、訂正明細書に記載された「機械的処理」が「1mm未満の厚さ」で膜状化し得るものであることが技術常識であるとの根拠も、請求人から示されていない。
したがって、訂正明細書における「機械的処理」についての記載は、「繊維集合体の一方の表面を1mm未満の厚さで膜状化」することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

また、訂正明細書の記載全体を考慮しても、「熱的処理および機械的処理を同時に行う」ことで生じる膜状層の厚さが、熱的処理によってのみ定まるものであるとも認められない。

したがって、訂正明細書における「熱的処理および機械的処理を同時に行う」ことが、請求人の上記主張のとおり、例えば「繊維を混綿し、カーディングを行ってウェブを作製した後、赤外線ヒータの輻射熱による間接的な加熱処理を両面より施し、特に一方の片面の加熱温度を他方の片面より高くすることにより行い、その隣接する下流側において、ニードルパンチを該一方の片面に施すことにより片側表面を膜状化する」ような、「熱的処理」手段と「機械的処理」手段とを、同一製造ライン上に、その流れ方向に隣接配置することによって、繊維集合体に「熱的処理」と「機械的処理」の両方を施すことを意味し、「熱的処理のみの実施例と機械的処理のみの実施例を組み合わせるだけで実施可能である」ものであり、訂正明細書における「熱的処理」についての記載が、「1mm未満の厚さで膜状化する」ことができる程度に明確かつ十分に記載したものであると認められるとしても、訂正明細書における「機械的処理」についての記載が、「1mm未満の厚さで膜状化する」ことができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは認められない以上、訂正明細書には、「熱的処理」及び「機械的処理」を「同時」に行えば膜状層の厚さが「1mm未満」となることが明確かつ十分に記載されているとは認められないから、請求人による上記主張は採用できない。

以上のとおり、訂正明細書は、「熱的処理および機械的処理を同時に行うことで、1mm未満の厚さで膜状化」することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、当業者が訂正発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず、特許法第36条第4項第1号に規定された要件を満たしていない。
よって、訂正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合しない。

第4 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第3項及び第5項の規定に適合しないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-03 
結審通知日 2012-09-05 
審決日 2012-09-19 
出願番号 特願2001-224044(P2001-224044)
審決分類 P 1 41・ 536- Z (D04H)
P 1 41・ 841- Z (D04H)
P 1 41・ 856- Z (D04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 斎藤 克也  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 河原 英雄
一ノ瀬 薫
登録日 2011-05-20 
登録番号 特許第4743676号(P4743676)
発明の名称 断熱材  
代理人 特許業務法人みのり特許事務所  

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